JP2020505929A - 抗体ドメインの好ましい対形成 - Google Patents

抗体ドメインの好ましい対形成 Download PDF

Info

Publication number
JP2020505929A
JP2020505929A JP2019541726A JP2019541726A JP2020505929A JP 2020505929 A JP2020505929 A JP 2020505929A JP 2019541726 A JP2019541726 A JP 2019541726A JP 2019541726 A JP2019541726 A JP 2019541726A JP 2020505929 A JP2020505929 A JP 2020505929A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
domain
antibody
abm
domains
amino acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2019541726A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7123063B2 (ja
Inventor
リューカー,フロリアン
ベーニッシュ,マキシミリアン
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Merck Patent GmbH
Original Assignee
Merck Patent GmbH
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Merck Patent GmbH filed Critical Merck Patent GmbH
Publication of JP2020505929A publication Critical patent/JP2020505929A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7123063B2 publication Critical patent/JP7123063B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/46Hybrid immunoglobulins
    • C07K16/468Immunoglobulins having two or more different antigen binding sites, e.g. multifunctional antibodies
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/18Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans
    • C07K16/28Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants
    • C07K16/2863Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants against receptors for growth factors, growth regulators
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/18Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans
    • C07K16/28Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants
    • C07K16/2803Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants against the immunoglobulin superfamily
    • C07K16/2809Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants against the immunoglobulin superfamily against the T-cell receptor (TcR)-CD3 complex
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/10Immunoglobulins specific features characterized by their source of isolation or production
    • C07K2317/14Specific host cells or culture conditions, e.g. components, pH or temperature
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/20Immunoglobulins specific features characterized by taxonomic origin
    • C07K2317/21Immunoglobulins specific features characterized by taxonomic origin from primates, e.g. man
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/30Immunoglobulins specific features characterized by aspects of specificity or valency
    • C07K2317/31Immunoglobulins specific features characterized by aspects of specificity or valency multispecific
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/50Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments
    • C07K2317/51Complete heavy chain or Fd fragment, i.e. VH + CH1
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/50Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments
    • C07K2317/515Complete light chain, i.e. VL + CL
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/50Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments
    • C07K2317/52Constant or Fc region; Isotype
    • C07K2317/522CH1 domain
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/90Immunoglobulins specific features characterized by (pharmaco)kinetic aspects or by stability of the immunoglobulin
    • C07K2317/94Stability, e.g. half-life, pH, temperature or enzyme-resistance

Abstract

少なくともVH及びCH1抗体ドメインを含む抗体重鎖(HC)に会合した、VL及びCL抗体ドメインから構成される抗体軽鎖(LC)の同種のLC/HC二量体を含む抗原結合分子(ABM)であって、会合は、VLとVHドメインとの、及びCLとCH1ドメインとの対形成によるものであり、CLドメインの18位及びCH1ドメインの26位のアミノ酸は反対の極性のものであり、ナンバリングはIMGTに従う抗原結合分子。

Description

本発明は、ヒト抗体ドメイン配列を含む抗原結合分子(ABM)、特に、少なくともVH及びCH1抗体ドメインを含む抗体重鎖に会合した、VL及びCL抗体ドメインから構成される抗体軽鎖の同種の二量体を含む抗原結合分子であって、その会合は、VLドメインとVHドメインとの、及びCLドメインとCH1ドメインとの対形成によるものであり、好ましい対形成は、CLドメイン及びCH1ドメインにおける特定の点突然変異によって支持される、抗原結合分子に関する。
モノクローナル抗体は、治療用抗原結合分子として広く使用されている。基本的な抗体構造について、天然のIgG1免疫グロブリンを例として用いて、本明細書で説明する。
2本の等しい重鎖(H)及び2本の等しい軽鎖(L)が結合して、Y字型の抗体分子を形成する。各重鎖は4つのドメインを有する。アミノ末端可変ドメイン(VH)は、Y字の先端にある。これらに3つの定常ドメイン:CH1、CH2、及びY字の柄の端部に当たるカルボキシ末端側のCH3が続く。短いストレッチであるスイッチ部分が、重鎖可変領域と定常領域を結びつける。ヒンジが、CH2及びCH3(Fcフラグメント)を残りの抗体(Fabフラグメント)と結びつける。天然の抗体分子内のヒンジ部分をタンパク質分解切断することにより、1つのFcと2つの等しいFabフラグメントが生成され得る。軽鎖は、スイッチにより分けられた2つのドメイン、可変ドメイン(VL)と定常ドメイン(CL)から構成される。
ヒンジ領域内のジスルフィド結合は、2本の重鎖を結びつける。軽鎖は、追加のジスルフィド結合により重鎖と連結している。Asn結合した炭水化物部分が、免疫グロブリンのクラスに応じて、定常ドメインの異なる位置で結合している。IgG1の場合、ヒンジ領域内の2つのジスルフィド結合が、Cys235とCys238の対の間で2本の重鎖を一体化している。軽鎖は、CH1ドメインにおけるCys220(EUインデックスのナンバリング)又はCys233(Kabatによるナンバリング)と、CLドメインにおけるCys214(EUインデックス及びKabatナンバリング)との間の2つの追加のジスルフィド結合によって重鎖にカップリングされる。炭水化物部分が、各CH2のAsn306に結合して、Y字の柄の部分に特徴的な膨らんだ部分を生成する。
このような特徴は、重要な機能的意義を有する。重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域はいずれも、N末端領域、すなわちY字の「先端部分」にあり、抗原と反応するように配置されている。分子のこの先端部分は、アミノ酸配列のN末端が位置する側である。Y字の柄の部分は、エフェクター機能、例えば補体の活性化、及びFc受容体との相互作用、又はADCC及びADCP等に効果的に関与するように構成される。柄のCH2及びCH3ドメインは、エフェクタータンパク質との相互作用を促進するように膨らんでいる。アミノ酸配列のC末端は、先端部分とは反対側に位置し、Y字の「根元」と呼ばれる場合もある。
ラムダ(λ)及びカッパ(κ)と呼ばれる2種類の軽鎖が抗体中に見出される。所定の免疫グロブリンは、κ鎖又はλ鎖のいずれか一方を有し、それぞれ1つ有することはない。機能的な差異は、λ又はκの軽鎖を有する抗体の間で見出されない。
抗体分子内の各ドメインは、圧縮された逆平行βバレル内で、相互に緊密にパックされた2つのβシートからなる類似した構造を有する。この保存的構造は、免疫グロブリンフォールドと呼ばれる。定常ドメインの免疫グロブリンフォールドは、4本のストランドからなるシートに対向してパックされた3本のストランドからなるシートを含む。このフォールドは、各シートのβストランド間の水素結合により、内部の対向するシートの残基間の疎水結合により、及びシート間のジスルフィド結合により安定化している。3本のストランドからなるシートは、ストランドC、F、及びGを含み、また4本のストランドからなるシートは、ストランドA、B、E、及びDを有する。文字A〜Gは、免疫グロブリンフォールドのアミノ酸配列に沿って、βストランドの連続的な位置を表す。
可変ドメインのフォールドは、4本及び5本のストランドからなる2つのシート内に配置された9本のβストランドを有する。5本のストランドからなるシートは、定常ドメインの3本のストランドからなるシートと構造的に相同であるが、余分なストランドC’及びC’’を含む。残りのストランド(A、B、C、D、E、F、G)は、定常ドメインの免疫グロブリンフォールド内のカウンターパートと同一のトポロジー及び類似した構造を有する。ジスルフィド結合は、定常ドメインの場合と同様に、対向するシート内のストランドBとFとを結びつける。
免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖両方の可変ドメインは、3つの高頻度可変性ループ、又は相補性決定領域(CDR)を含む。Vドメインの3つのCDR(CDR1、CDR2、CDR3)は、βバレル構造の一方の端部に密集している。CDRは、免疫グロブリンフォールドのβストランドB−C、C’−C’’、及びF−Gを結びつけるループである。CDR内の残基は、免疫グロブリン分子毎に変化し、各抗体に抗原特異性を付与する。
抗体分子の先端部分に位置するVL及びVHドメインは、6個のCDR(ドメイン毎に3個)が、抗原と特異的結合するための表面(又はキャビティ)を構成する際に協力し合うように、緊密にパックされている。従って、抗体の天然の抗原結合部位は、軽鎖可変ドメインのストランドB−C、C’−C’’、及びF−G、並びに重鎖可変ドメインのストランドB−C、C’−C’’、及びF−Gを結びつけるループから構成される。
天然の免疫グロブリン内のCDRループではない、又はCDRループにより決定される抗原結合ポケットの一部分ではないループ、並びに任意選択的にCDRループ領域内の隣接したループは、抗原結合又はエピトープ結合特異性を有さないが、免疫グロブリン分子及び/又はそのエフェクター全体の正しいフォールディング、又はその他の機能に寄与し、従って構造的ループと呼ばれる。
先行技術文書では、既存の抗原結合部位を操作し、これにより新規の結合特性を導入するために、免疫グロブリン様スキャフォールドがこれまで採用されてきたことが示されている。ほとんどの場合、CDR領域が、抗原との結合を目的として改変されてきた、換言すれば、免疫グロブリンフォールドの場合、その結合アフィニティー又は特異性を変化させるために、天然の抗原結合部位のみが修飾された。操作がなされたそのような免疫グロブリンの異なるフォーマットについて記載する、膨大な量の文献が存在するが、該免疫グロブリンは、ファージ粒子表面上に提示された、又は様々な原核生物又は真核生物の発現系において可溶性に発現した一本鎖Fvフラグメント(scFv)又はFabフラグメントの形態で高頻度に発現する。
抗体構築物は、2つの異なる標的を認識する改善された治療法のために現在開発中である。
Davisら(Protein Engineering、Design & Selection 2010年、第23巻(4)、195〜202頁)は、ストランド交換設計ドメイン(SEED)CH3ヘテロ二量体(heterodiomer)を用いて、二重特異性で非対称性の融合タンパク質の設計を支援するヘテロ二量体Fcプラットフォームについて記載する。このようなヒトIgG及びIgA CH3ドメインの誘導体は、ヒトIgA配列とIgG配列との交互に反復したセグメントから構成される相補的なヒトSEED CH3ヘテロ二量体を作り出す。SEED操作は、国際公開第2007/110205A2号及び欧州特許第1999154B1号に更に記載されている。国際公開第2010/136172A1号は、抗体のFc部分のC末端に繋がった1つ又は2つの一本鎖Fabを含む、トリ又はテトラ特異的抗体について開示する。
Beckら(Nature Reviews Immunology、第10巻、5号、2010年5月1日、345〜352頁)は、次世代治療用抗体について記載し、特に異なる種類の二重特異性抗体に言及している。
Ridgwayら(Protein Engineering、第9巻、7号、1996年、617〜621頁)は、重鎖をヘテロ二量体化させるための抗体CH3ドメインの「ノブ・イントゥ・ホール(knobs into-holes)」エンジニアリングについて記載する。
Von Kreudensteinら(Landes Bioscience、第5巻、5号、2013年、646〜654頁)は、安定性を目的として改変されたヘテロ二量体Fcに基づく二重特異性抗体スキャフォールドについて記載する。
Liuら(Journal of Biological Chemistry 2015年、第290巻:7535〜7562頁)は、静電的機構によって一価の二重特異性ヘテロ二量体IgG抗体を作製する戦略を記載している。正しい軽鎖(LC)と重鎖(HC)との対形成を有する抗HER2及び抗EGFR抗体に由来するヘテロ二量体IgG分子は、一過性であり、安定的にトランスフェクトされた哺乳動物細胞によって産生された。LCとHCとの特異的な対形成は、VH−VL及びCH1−CL界面で極性又は疎水性残基を切り替えることによって駆動された。操作された変異体の各々は、それらの中でVH及びVLドメインにおける一連の点突然変異によって特徴付けられた。さらに、点突然変異は、CH1ドメインにおいて操作され、例えば、K147Dであり、CL(Cカッパ又はCκ)ドメインにおいて操作され、例えば、T180K(EUインデックスによるナンバリング)であった。いくつかの変異体は、とりわけCH1ドメインの147位及びCκドメインの180又は131位に点突然変異を含有していた。
国際公開第2014/081955号はさらに、以下のドメイン:第1及び第2のCH3ドメイン、CH1ドメイン、CLドメイン、VHドメイン及びVLドメインの各々に1つ又は複数の置換を含むこのようなヘテロ二量体抗体を開示する。
Lewisら(Nature Biotechnology、2014年、第32巻:191〜198頁)は、直交Fabインターフェースの構造に基づく設計による二重特異性IgG抗体の生成について記載する。改善されたHC−LCの対形成を有する二重特異性IgGが産生された。可変ドメインが重鎖及び軽鎖の特異的な会合を支配することが見出された。2つの異なる設計は、VH、VL、CH1及びCLドメインの各々において点突然変異を用いていた。設計の1つは、とりわけCH1ドメインの146位及びCラムダドメインの129位に点突然変異を含有していた(Kabatによるナンバリング)。
Dillonら(MAbs、2016;DOI:10.1080/19420862.2016.1267089)は、単一の哺乳動物細胞における異なるアイソタイプ及び起源の種の二重特異性IgGの産生、ならびに以前に記載された選好的な重鎖へテロ二量体化のためのノブ−イントゥ−ホール突然変異と組み合わせて、選択的Fabアーム会合を容易にする設計について記載する。
上記の設計の二重特異性抗体は、必然的に、VH及びVLドメインに位置される主な点突然変異を含む一連の点突然変異を組み合わせてIgG構造を安定化させる。正しい対形成がCH1及びCLドメインのみの点突然変異によって既に支持されている二重特異性抗体を設計することが望ましい。
VH及びVLドメインのフレームワークを変化させずに、HCとLCとの正しい対形成を支持する、抗体重鎖及び軽鎖の改善された対形成を提供することが本発明の目的である。このような改善された対形成は、二重特異性抗体の産生を容易にする。
本目的は、本発明の主題により解決される。
本発明によれば、少なくともVH及びCH1抗体ドメインを含む抗体重鎖(HC)に会合した、VL及びCL抗体ドメインから構成される抗体軽鎖(LC)の同種のLC/HC二量体を含む抗原結合分子(ABM)であって、会合は、VLドメインとVHドメインとの、及びCLドメインとCH1ドメインとの対形成によるものであり、CLドメインの18位及びCH1ドメインの26位のアミノ酸は反対の極性のものであり、ナンバリングはIMGTに従う、抗原結合分子が提供される。
具体的には、同種のLC/HC二量体は、同種の(ドメイン)対を形成するように対形成される同種のドメインによって特徴付けられる。特に、LC/HC二量体は同種のものであることが理解され、これは、単量体CL及びCH1ドメインが同種の又は合致する対応物であり、好ましくは互いに認識して、野生型ドメインと比較して一対のCL及びCH1ドメインを生成するためである。具体的には、本明細書に記載されるCLドメインは、好ましくは同種のCH1ドメインと対形成している。本明細書に記載されるCH1ドメインは、好ましくは同種のCLドメインと対形成している。
具体的な態様によれば、ABMは、好ましくは引力によって互いに対形成するが、好ましくは、反発力のために非同種の又は野生型である他の対応するドメインとは対形成しない、同種のCL及びCH1抗体ドメインによって特徴付けられる。これにより、野生型抗体ドメインであるか、又はそれぞれの点突然変異を介して非同種にされている(会合の可能性を減少させるために反発している)対応抗体ドメインの誤った対形成は大いに減少する。
具体的には、同種のCLドメイン及びCH1ドメインは、特に、
a)CLドメインの18位のアミノ酸残基は正極性のものであり、特にR、H、若しくはKのいずれかであり、CH1ドメインの26位のアミノ酸残基は負極性のものであり、特にD若しくはEのいずれかである;又は
b)CLドメインの18位のアミノ酸残基は負極性のものであり、特にD若しくはEのいずれかであり、CH1ドメインの26位のアミノ酸残基は正極性のものであり、特にR、H、又はKのいずれかである
となるように、列挙されたアミノ酸位置で反対の極性によって特徴付けられる。
具体的には、ABMは、CLドメインの18位での点突然変異、及びCH1ドメインの26位での点突然変異のいずれか又はその両方である1つ又は2つの点突然変異を含む。
他に指示がない限り、本明細書において、位置はIMGTシステムに従ってナンバリングされる(Lefrancら、1999年、Nucleic Acids Res.、第27巻:209〜212頁)。特許請求の範囲において指示される位置のナンバリングは、以下の表に指示されるように、Kabat及びKabatのEUインデックスによるナンバリングに対応する。Kabatナンバリングスキームの説明は、Kabat,EAら、Sequences of proteins of immunological interest(NIH publication no.91−3242、第5版(1991年))に見出すことができる。
Figure 2020505929
指示された位置は、驚くべきことに、HCとLCが改善されたアフィニティーで会合する(対形成する)Fabアームを構築するときに優性であることが判明した。従来技術の構築物は、異なる位置に配置されたCH1及びCL点突然変異の異なる対を含み、それは優性なVH及びVL点突然変異以外に操作された。指示されたCL及びCH1位置に反対の極性を確立することによって、突然変異したCL及びCH1ドメインの同種の対(本明細書では、同種のドメイン又は同種の対として理解される)が好ましくは産生される。同時に、誤った同種の対形成、又は野生型CLドメインとCH1ドメインとの対形成が著しく減少する。
具体的には、ABMは、以下のように特徴付けられる:

a)CLドメインは、少なくとも点突然変異T18X(Xは、R、H、若しくはKのいずれかである)を含有する、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCカッパであり;
b)CH1ドメインは、少なくとも点突然変異K26X(Xは、D若しくはEのいずれかである)を含有する、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;又は

a)CLドメインは、少なくとも点突然変異K18X(Xは、D又はEのいずれかである)を含有する、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCラムダであり;
b)CH1ドメインは、26位のKが他のいずれのアミノ酸によっても置換されていないか、若しくは少なくとも点突然変異K26X(Xは、R又はHのいずれかである)を含有する、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;又は

a)CLドメインは、18位のKが他のいずれのアミノ酸によっても置換されていないか、若しくは少なくとも点突然変異K18X(Xは、R又はHのいずれかである)を含有する、配列番号2に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCラムダであり;
b)CH1ドメインは、少なくとも点突然変異K26X(Xは、D又はEのいずれかである)を含有する、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
ナンバリングはIMGTに従う。
具体的には、CL及びCH1ドメインは、ヒト起源のもの、具体的には、ヒトIgG又はIgG1分子のもの、特に、天然に存在するヒト配列と少なくとも90%の配列同一性及び1つ又は複数の点突然変異、例えば本明細書に記載されているものによって特徴付けられ、具体的には、ヒトIgG、IgM又はIgE構造中のそれぞれのドメインの構造、特にヒトIgG1構造に類似する抗体ドメインのベータ−バレル構造によってさらに特徴付けられる機能的に活性な変異体である。
本明細書に記載されるCカッパ、Cラムダ、又はCH1ドメインのいずれかの機能的に活性な変異体は、具体的には、対応の合致する抗体ドメインと対形成することができる抗体ドメイン構造によって特徴付けられ、特に、

a)CLドメイン変異体は、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、点突然変異T18X(Xは、R、H、若しくはKのいずれかである)を含有するCカッパ変異体であり;
b)点突然変異K26X(Xは、D若しくはEのいずれかである)を除いて、配列番号3として同定されたアミノ酸配列からなるCH1ドメイン
と対形成することができ;又は

a)CLドメイン変異体は、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、点突然変異K18X(Xは、D又はEのいずれかである)を含有するCラムダ変異体であり;
b)配列番号3、若しくは点突然変異K26X(Xは、R又はHのいずれかである)を除く配列番号3のいずれかとして同定されたアミノ酸配列からなるCH1ドメイン
と対形成することができ;又は

a)CLドメイン変異体は、18位のKが他のいずれのアミノ酸によっても置換されていないか、若しくは点突然変異K18X(Xは、R若しくはHのいずれかである)を含有する、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCラムダ変異体であり;
b)点突然変異K26X(Xは、D又はEのいずれかである)を除いて、配列番号3として同定されたアミノ酸配列からなるCH1ドメイン
と対形成することができる。
具体的には、Cカッパアミノ酸配列(本明細書において野生型又は親とも呼ばれる)は、配列番号1によって同定される。
具体的には、Cラムダアミノ酸配列(本明細書において野生型又は親とも呼ばれる)は、配列番号2によって同定される。
具体的には、CH1アミノ酸配列(本明細書において野生型又は親とも呼ばれる)は、配列番号3によって同定される。
具体的には、CLドメインは、1個以上の点突然変異、好ましくは最大10個の点突然変異、特に1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のいずれかの点突然変異を含むヒトIgG1のCL配列又はその操作された機能的に活性な変異体によって特徴付けられる。
具体的には、CH1ドメインは、1個以上の点突然変異、好ましくは最大10個の点突然変異、特に1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のいずれかの点突然変異を含むヒトIgG1のCH1配列又はその操作された機能的に活性な変異体によって特徴付けられる。
具体的には、CLドメイン及びCH1ドメインのいずれか又は各々は、1個以上の点突然変異、好ましくは最大10個の点突然変異、特に1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のいずれかの点突然変異を含む各ヒトIgG1配列又はその操作された機能的に活性な変異体によって特徴付けられる。
具体的には、二量体は、CLドメインとCH1ドメインとの間に少なくとも1つのドメイン間ジスルフィド架橋を含む。具体的には、ドメイン間ジスルフィド架橋は、CH1ドメインのCys220(EUインデックスナンバリング)又はCys233(Kabatに従うナンバリング)、及びCLドメインのCys214s(EUインデックス及びKabatナンバリング)を架橋している。
具体的には、CLドメインは、点突然変異F7Xをさらに含み、Xは、S、A、又はVのいずれかであり、CH1ドメインは、点突然変異A20Lをさらに含み、ナンバリングはIMGTに従う。このようなさらなる点突然変異は、同種のCLドメインとCH1ドメインとの好ましい対形成をさらに支持する。
具体的には、ABMのVLドメイン及びVHドメインは、VLドメインとVHドメインとを対形成するときにドメイン間接触を提供し、これにより抗原結合部位を形成する界面領域のアミノ酸の極性を変えるいずれの点突然変異をも含有しない。
具体的には、ABMは、VH/VLドメイン対から構成される機能的抗原結合部位を含み、標的と結合する能力を有するが、その時のアフィニティーは高く、KDは、10−6M、10−7M、10−8M、10−9M、又は10−10Mのいずれよりも低い。具体的には、ABMは、2つの異なる抗原を標的とする二重特異性又はヘテロ二量体抗体であり、この場合、各抗原は抗体により認識されるが、その時のKDは、10−6M、10−7M、10−8M、10−9M、又は10−10Mのいずれよりも低い。
具体的には、HCは、少なくとも1つのCH2ドメイン及び少なくとも1つのCH3ドメインをさらに含む。特に、HCは、CH2ドメインによって伸長され、さらにCH3ドメインによって伸長され、すなわち、CH2−CH3ドメインの配列は、CH2−CH3ドメインとそれぞれの鎖の二量体からなるFc領域を形成するように、CH2−CH3ドメインを含む別の抗体鎖とさらに対形成される。具体的には、HCは、リンカー又はヒンジ領域を使用して又は使用せずに、CH2ドメインをCH1ドメインのC末端に融合することによって伸長される。具体的には、HCは、リンカーを使用して又は使用せずに、CH3ドメインをCH2ドメインのC末端に融合することによってさらに伸長される。場合によっては、HCは、リンカーを使用して又は使用せずに、CH4ドメインをCH3ドメインのC末端に融合することによってさらに伸長される。
具体的には、ABMは、ヒンジ領域、好ましくはヒトヒンジ領域、例えば、配列番号4として同定されるアミノ酸配列を含む又はそれからなるなどのヒトIgG1ヒンジ領域を含む。
ドメインの結合は、特に組み換え融合又は化学結合による。特定の結合は、1つのドメインのC末端と別のドメインのN末端との結合を介し得るが、この場合、例えば末端領域内の1つ又は複数のアミノ酸残基がドメインサイズを短縮するために除去される、又はドメインの可撓性を高めるために延長される。
具体的には、短縮したドメイン配列は、例えば少なくとも1、2、3、4、又は5、最大6、7、8、9、又は10個のアミノ酸を除去するなどして、C末端及び/又はN末端領域において欠損を含む。
具体的には、リンカー又は免疫グロブリンのヒンジ領域若しくはヒンジ領域の少なくとも一部である連結配列、例えばペプチドリンカーが使用され得、これは、例えば、少なくとも1、2、3、4、又は5個のアミノ酸、最大10、15、又は20個のアミノ酸を含む。連結配列は、本明細書において「接合部」とも呼ばれる。ドメインは、リンカーによって、例えば、ドメイン間の天然の接合部を含むように、ドメインに隣接して天然に位置する免疫グロブリンドメインのN末端又はC末端領域に由来するアミノ酸配列を介して伸長され得る。或いは、リンカーは、ヒンジ領域に由来するアミノ酸配列を含有し得る。しかしながら、リンカーは同様に人工的な配列であり得、例えば、好ましくは5〜20個のアミノ酸の長さ、好ましくは8〜15個のアミノ酸の長さを有する、連続したGly及び/又はSerアミノ酸からなり得る。
具体的な態様によれば、ABMは、天然に存在する免疫グロブリン又は免疫グロブリン様のスキャフォールドの構造を含む抗体又は免疫グロブリンであり、このABMは、少なくとも1つ(好ましくは2つ)の抗原結合部位、及び適切な連結配列を使用して又は使用しないで重鎖及び軽鎖に連結された抗体ドメインから構成される構造によって特徴付けられ、HCは、LCと二量体化して少なくとも1つの抗原結合部位を形成し、任意選択的に2つのHCが二量体化してFc領域を形成する。
具体的には、ABMは、抗体Fab若しくは(Fab)フラグメント、又はFc部分若しくはFc領域を含む全長抗体のいずれかであり、好ましくはABMは、全長IgG、IgM又はIgE抗体、特にIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のいずれかである。具体的には、ABMは、任意の適切な順序で1つ若しくは2つのFabアーム又はFabフラグメント(Fab部分)を含む。具体的な実施形態によれば、ABMは、2つより多いFabアーム、例えば、3つ又は4つのFabアームをさらに含み得、少なくとも1つ又は1つのみのFabアームは、本明細書に記載される同種のLC/HC対ならびに同種のCL及びCH1ドメインを含む。具体的な実施形態によれば、他のFabアームは、野生型(天然に存在する)CLドメイン及びCH1ドメインを含む。
具体的な実施形態によれば、ABMは、1つの同種のLC/HC二量体のみを含み、HCは、CH2−CH3を含み、場合によりCH4をさらに含むFc鎖とさらに二量体化され、これによりFc領域が得られる。このようなABMは、具体的には、ただ1つのFabアーム及びFc領域によって特徴付けられる一価の単一特異性抗体である。
別の具体的な実施形態によれば、ABMは、少なくとも2つのLC/HC二量体を含み、LC/HC二量体のうちの1つのみが、本明細書に記載されるように、同種のLC/HC二量体ならびに同種のCLドメイン及びCH1ドメイン(すなわち、同種のCL/CH1対)によって特徴付けられる。或いは、ABMは、本明細書に記載される点突然変異によって特徴付けられる第1の同種のCL/CH1対を含む第1の同種のLC/HC二量体を含む第1のLC/HC二量体、及び本明細書に記載される点突然変異によって特徴付けられる第2の同種のCL/CH1対を含む第2の同種のLC/HC二量体から構成され、これらは、第1の同種のCLドメイン及びCH1ドメインが好ましくは互いに対形成し、第2の同種のCLドメイン及びCH1ドメインが好ましくは互いに対形成するように第1のCL/CH1対のそれとは異なる。しかしながら、第1の同種のCL/CH1対のCLドメインは、好ましくは、第2の同種のCL/CH1対のCH1ドメインと対形成せず(又はさらに反発し)、第1の同種のCL/CH1対のCH1ドメインは、好ましくは、第2の同種のCL/CH1対のCLドメインと対形成しない(又はさらに反発する)。
具体的な実施形態によれば、ABMは、2つの異なるFabアームを含み、これにより、それぞれが特異的な結合特性を有する2つの異なるFv構造を提供する。具体的には、ABMは、2つの異なる抗原又は抗原の2つの異なるエピトープを標的とするヘテロ二量体又は二重特異性抗体である。
本発明はさらに、異なる抗原又はエピトープを認識する第1及び第2のFabアームを含むヘテロ二量体又は二重特異性抗体を提供し、第1及び第2のFabアームの一方のみが本明細書に記載されるABMの同種のLC/HC二量体を含む。具体的には、ヘテロ二量体抗体は、二重特異性抗体若しくは免疫グロブリン、又はそれらの抗原結合フラグメント、例えば二重特異性の全長免疫グロブリン、又は(Fab)である。
具体的には、ABMは二重特異性抗体であり、第1の標的は、CD3、CD16又はHer2neuのいずれかであり、第2の標的はEGFRである。
Fabアームは、本明細書において、特に、任意のジスルフィド架橋を有するか又は有さない、VH−CH1ドメイン配列からなるHCとVL−CL(カッパ又はラムダ)ドメイン配列からなるLCの二量体、ヒンジドメイン、及び/又は抗体ドメインを結びつけるリンカー配列として理解される。Fabアームは、典型的には、抗体から切断された場合のFabフラグメント(又はFab部分)として理解される。Fabアームは、単一特異的及び一価的にのみ標的に結合することができる、VHドメインとVLドメインとの対形成によって形成された唯一の抗原結合部位によって具体的に特徴付けられる。
具体的には、二重特異性抗体の第1及び第2のFabアームの一方のみが、
a)CLドメインの点突然変異F7X(Xは、S、A、又はVのいずれかである);及び
b)CH1ドメインの点突然変異A20L
を含み、ナンバリングはIMGTに従う。
上記に指示された7位及び20位でのこのような点突然変異は、本明細書において、支持的な点突然変異として理解され、これは、実際にはアミノ酸残基の極性を変えないが、対応するアミノ酸残基の寸法と合致する立体的特徴を有する。
具体的には、上記で指示された支持的なF7X点突然変異(Xは、S、A、又はVのいずれかである)を含むCLドメインは、支持的なA20L点突然変異を含む対応するCH1ドメインを引き付け、好ましくはそれと対形成するが、野生型CH1ドメイン、又はA20L点突然変異を含有しないCH1ドメインと対形成するのは好ましくない。
具体的には、上記で指示された支持的なA20L点突然変異を含むCH1ドメインは、上記で指示された支持型F7X点突然変異(Xは、S、A、又はVのいずれかである)を含む対応するCLドメインを引き付け、好ましくはそれと対形成するが、野生型CLドメイン、又は上記で指示されたF7X点突然変異(Xは、S、A、又はVのいずれかである)を含有しないCLドメインと対形成するのは好ましくはない。
具体的には、ヘテロ二量体抗体は、

a)上記第1のFabアームは、上記で同定された点突然変異によって具体的に特徴付けられる、本明細書に記載される同種のLC/HC二量体を含み、特に、1つ又は2つの点突然変異は、反対の極性である、CLドメインの18位のアミノ酸残基、及びCH1ドメインの26位のアミノ酸残基が提供され、CLドメイン及びCH1ドメインは、上記で同定された支持的な点突然変異、特にCLドメイン中点突然変異F7X(Xは、S、A、若しくはVのいずれかである)、及びCH1ドメインの点突然変異A20Lをさらに含み;ならびに
b)上記第2のFabアームは、a)の点突然変異のいずれも含まない、又は

a)上記第1のFabアームは、上記で同定された点突然変異によって具体的に特徴付けられる、本明細書に記載される同種のLC/HC二量体を含み、特に、1つ又は2つの点突然変異は、反対の極性である、CLドメインの18位のアミノ酸残基、及びCH1ドメインの26位のアミノ酸残基が提供され、CLドメイン及びCH1ドメインは、上記で同定された支持的な点突然変異、特にCLドメイン中点突然変異F7X(Xは、S、A、若しくはVのいずれかである)、及びCH1ドメインの点突然変異A20Lをさらに含まない;ならびに
b)上記第2のFabアームは、上記で同定された支持的な点突然変異、特にCLドメインの点突然変異F7X(Xは、S、A、又はVのいずれかである)、及びCH1ドメインの点突然変異A20Lを含む
によって特徴付けられる。
Aのこのような二重特異性構築物は、具体的には、2つのFabアームのうちの1つのみ(すなわち、第1のFabアーム)で操作される同種のLC/HC二量体の同種のCLドメインとCH1ドメインとの対形成が好ましく、操作によって、他のFabアーム(すなわち、第2のFabアーム)のHC又はLCのいずれかと対形成するか又は結合することが好ましくない、本明細書に記載される点突然変異によって特徴付けられる。
Bのこのような二重特異性構築物は、具体的には、CLドメインの18位及びCH1ドメインの26位での1つ又は2つの点突然変異によって、これらの位置で反対の極性のものであるアミノ酸残基が得られることによって特徴付けられる、本明細書に記載される同種のLC/HCに二量体を含む第1のFabアーム、
a)第1のFabアームのHCが第1のFabアームのLCと対形成するか又はそれに結合することが好ましく、第2のFabアームのLCと対形成するか又はそれに結合するが好ましくはなく;及び
b)第1のFabアームのLCが第1のFabアームのHCと対形成するか又はそれに結合することが好ましく、第2のFabアームのHCと対形成するか又はそれに結合するが好ましくはない;これは、
c)第2のFabアームのHCが第2のFabアームのLCと対形成するか又はそれに結合することが好ましく、第1のFabアームのLCと対形成するか又はそれに結合することが好ましくはなく;及び
d)第2のFabアームのLCが第2のFabアームのHCと対形成するか又はそれに結合することが好ましく、第1のFabアームのHCと対形成するか又はそれに結合することが好ましくはない
ことを意味する支持的な点突然変異を含む第2のFabアームによって特徴付けられる。
具体的な実施形態によれば、第1と第2のFabアームはともに、CLドメインの18位及びCH1ドメインの26位に1つ又は2つの点突然変異を含み、これにより、これらの位置で反対の極性のものであるアミノ酸残基が得られ、なおも第1及び第2のFabアームの点突然変異は異なり、これにより、
a)18位のアミノ酸残基はCH1ドメインを特異的に認識する正極性のものであり、26位のアミノ酸残基は負極性のものである、CLドメインを含む第1のFabアーム;及び
b)18位のアミノ酸残基はCH1ドメインを特異的に認識する負極性のものであり、26位のアミノ酸残基が正極性のものである、CLドメインを含む第2のFabアーム
を産生し、任意選択的に、支持的な点突然変異は、第1のFabアーム又は第2のFabアームのいずれかにある。
さらなる実施形態は、二重特異性構築物に言及し、
a)18位のアミノ酸残基はCH1ドメインを特異的に認識する正極性のものであり、26位のアミノ酸残基は負極性のものである、CLドメインを含む第1のFabアーム;及び
b)CLドメインの18位のアミノ酸残基及び/又はCH1ドメインの26位のアミノ酸残基は、電荷を有さないものであり、特にN、C、Q、G、S、T、W、若しくはYのいずれか;又は非極性のものであり、特にA、I、L、M、F、P若しくはVのいずれかである、第2のFabアーム
であり、任意選択的に、支持的な点突然変異は、第1のFabアーム又は第2のFabアームのいずれかにある。
具体的な態様によれば、本明細書に記載されるABM、特に本明細書に記載されるヘテロ二量体抗体は、CH2及びCH3ドメイン、及びに任意選択的にCH4ドメインをそれぞれ含む2つのHCであって、二量体化してFc領域となるHCを含む。
Fc領域は、具体的に、それぞれがCH2−CH3抗体ドメインの鎖を含むことによって特徴付けられるFc鎖の二量体によって特徴付けられ、その二量体はホモ二量体又はヘテロ二量体であり得、第1のFc鎖は、CH2及び/又はCH3ドメインにおける少なくとも1つの点突然変異において第2のFc鎖と異なる。
具体的には、Fc領域は、
a)ヒトIgA及びIgG CH3配列の交互セグメントから構成される鎖交換設計ドメイン(SEED)CH3ヘテロ二量体;
b)1つ若しくは複数のノブ若しくはホール突然変異、好ましくはT366Y/Y407’T、F405A/T394’W、T366Y:F405A/T394‘W:Y407’T、T366W/Y407’A及びS354C:T366W/Y349’C:T366’S:L368’A:Y407’Vのいずれか;
c)第2のCH3ドメインのシステイン残基に共有結合し、これによりドメイン間ジスルフィド架橋が導入され、好ましくは両方のCH3ドメインのC末端を連結する、第1のCH3ドメインのシステイン残基;
d)反発性の電荷がヘテロ二量体の形成を抑制する1つ若しくは複数の突然変異、好ましくはK409D/D399’K、K409D/D399’R、K409E/D399’K、K409E/D399’R、K409D:K392D/D399’K:E356’K又はK409D:K392D:K370D/D399’K:E356’K:E357’Kのいずれか;並びに/又は
e)ヘテロ二量体形成及び/若しくは熱安定性のために選択された1つ若しくは複数の突然変異、好ましくはT350V:L351Y:F405A:Y407V/T350V:T366L:K392L:T394W、
T350V:L351Y:F405A:Y407V/T350V:T366L:K392M:T394W、
L351Y:F405A:Y407V/T366L:K392M:T394W、
F405A:Y407V/T366L:K392M:T394W、又は
F405A:Y407V/T366L:T394Wのいずれか、
のうちの1つ又は複数を導入するように設計されている及び/又はこれにより特徴付けられる2つのCH3ドメインを含み、
但し、ナンバリングはKabatのEUインデックスに基づく。
このようなCH3突然変異は、好ましくは互いに対形成する2つの異なるFc鎖及びHC(少なくとも異なるCH3ドメインの配列によって異なる)をそれぞれ産生するように操作されて、これによりFc鎖又はHCのヘテロ二量体を得て、HCホモ二量体、すなわち同じ配列の2つのHCの二量体を産生する傾向を実質的に低下させる。
本明細書に記載するCH3点突然変異を規定する際には、「スラッシュ」は、各対の一方の鎖又は一方のドメイン上の点突然変異を、他方の鎖又は他方のドメインに由来する点突然変異から区別する;アミノ酸位置のナンバリングにおける「インデント」は、ヘテロ二量体の第2の鎖又は二量体を意味する。「コロン」は、複数ある鎖又はドメインのうちの1つの鎖又はドメイン上の点突然変異の組み合わせを、それぞれ特定する。
上記のように、ヘテロ二量体形成及び/又は熱安定性のために選択された突然変異、又はVon Kreudensteinら[8]の開示による更なる突然変異のいずれも利用可能である。
好ましくは、(i)ノブ突然変異;又は(ii)ホール突然変異、又は(iii)ノブ及びホール突然変異が1つの鎖又はドメイン上に改変され、またカウンターパートの(i)ホール突然変異、又は(ii)ノブ突然変異、又は(iii)ホール及びノブ突然変異が、ヘテロ二量体の他方の鎖上で改変される。
具体的には、1つ又は2つの改変されたCH3ドメインを含むCH3ドメインの対は、2つのCH3ドメインの対を結びつける2以上の(追加)ドメイン間ジスルフィド架橋(briges)を、例えば2、又は3個含み得る。
具体的には、異なる突然変異(上記a)に基づく)が、CH3ドメインの各対の両CH3ドメインにおいて、同種の(マッチングする)対を生成するために改変されるが、この場合、一方のドメインは、βシート領域内に接触表面の立体修飾を含むが、そのような接触表面は、相補的な立体修飾を通じて他方のドメインの各接触表面と選好的に結合する。そのような立体修飾は、例えば、「ノブ」又は「ホール」構造を生成するような、異なるアミノ酸残基及び側鎖に主に起因し、「ノブ・イントゥ・ホール」二量体を形成する相補性を有する。
具体的な態様によれば、Fc領域のCH3ドメインの各々は、配列番号5として同定されるアミノ酸配列又は配列番号5の機能的変異体を有するIgG型であり、これは、少なくとも2アミノ酸長の少なくとも1つのベータ鎖IgAセグメントを組み入れることによって鎖交換を得るように操作され、Fc領域は、好ましくは、第1のCH3ドメインのIgAセグメントと第2のCH3ドメインのIgAセグメントと対形成することにより、CH3ドメインの同種の対を含む。そのようなストランド交換CH3ドメインは、例えばそれぞれ異なる位置に配置し、そして非IgAセグメント、例えばIgGセグメントにより互いに分離している少なくとも1、2、3、4、又は5個の異なるIgAセグメントを組み込む、IgAアミノ酸配列及びIgGアミノ酸配列の交互に反復したセグメントを特に含み得る。
具体的な態様によれば、ABMは、任意選択的にFc領域において、Fcガンマ受容体結合部位及び/又はC1q結合部位を含むエフェクター機能コンピテント抗体である。
具体的には、抗体は、ADCC及び/又はCDC活性のいずれかにより特徴付けられる。
別の具体的な態様によれば、ABMは、Fcγ受容体及び/又はC1qとの結合が欠損しているFc領域を含むエフェクター陰性(EN)抗体である。
具体的には、抗体は、エフェクター欠損性であり(本明細書では、エフェクター陰性とも呼ばれる)、Fc領域を介したFcγ受容体又はCD16aとの結合は実質的に低下又は欠損している。
具体的には、エフェクター陰性抗体は、ヒトIgG2のCH2配列、又は改変されたその変異体により特徴付けられ、例えば「VH(1)−CH3_KNOB(T366Y)−CH2EN−CH3AG」(配列番号15)で用いられるような、C末端側CH3ドメインのN末端に融合した(ナンバリングはKabatのEUインデックスに基づく)、米国特許第8562986号に記載の修飾型ヒトIgG2のCH2ドメイン(F296A、N297Q)を含む。
具体的には、EN抗体は、実質的に低下したADCC及び/若しくはCDCを有する、又は一切有さない。
具体的には、ABMは、CH2ドメインとCH3ドメインとのインタージャンクションのFcRn結合部位、及び/又はCH2ドメインのN末端領域内のFcγ受容体結合部位、及び/又はCH2ドメインのN末端領域内のC1q結合部位を含む抗体のFc部分を含む。
具体的な態様によれば、ABMは、もしあれば、CH2ドメイン及び/又はCH3ドメインに配置するpH依存性のFcRn結合部位を含む。具体的には、FcRn結合部位は、pH依存性にFcRnと結合するアフィニティーを有し、そのときのKDは10−4M未満、又は10−5M、10−6M、10−7M、若しくは10−8M未満である。
具体的には、pH依存性にFcRnと結合する結合アフィニティーは、生理学的pH(pH7.4)における同結合アフィニティーと比較して、pH5〜6において、少なくとも1対数、好ましくは少なくとも2対数、又は3対数増加している。
更なる態様によれば、ABMは、pH依存性のFcRn結合を変化させるために改変される。例えば、少なくとも1つのCH3ドメインは、pH依存性のFcRn結合を低下させるためにFcRn結合部位に少なくとも1つの突然変異、具体的にはH433A若しくはH435A突然変異の少なくとも1つ、又はH433AとH435A突然変異の両方を含むように操作され、ナンバリングはKabatのEUインデックスによる。pH依存性のFcRn結合の低下は、pH依存性にFcRnと結合する結合アフィニティーが、生理学的pH(pH7.4)における同結合アフィニティーと比較して、pH5〜6において1対数を超えて低い、好ましくはほぼ同等又はそれ以下であり得る。
具体的な実施形態とは、本明細書に例示するABMのいずれか、又は実施例セクションに記載する重鎖及び軽鎖のいずれか、若しくは重鎖及び軽鎖の対のいずれかを含む抗体のいずれかを意味する。具体的には、本明細書に記載するABMは、実施例セクションに記載する重鎖及び軽鎖を含み得る、又はそれから構成され得る。
具体的には、本明細書に記載されるABMは、医療用、診断用又は分析用に提供される。
本発明はさらに、本明細書に記載されるABMを、好ましくは非経口又は粘膜製剤中に含み、任意選択的に薬学的に許容される担体又は賦形剤を含有する医薬製剤を提供する。
本発明はさらに、本明細書に記載されるABMをコードする単離された核酸を提供する。
本発明はさらに、本明細書に記載される核酸、及び任意選択的に核酸配列によってコードされるABMを発現するためのさらなる配列、例えば、調節配列を含むか若しくは組み込んでいる発現カセット又はプラスミドを提供する。
具体的には、発現カセット又はプラスミドは、本明細書に記載されるABM、又は本明細書に記載されるABMのHC及び/若しくはLCを発現するためのコード配列を含む。
具体的な例によれば、ABMは、1つ又は複数のHC及びLCからなり、HCの各々は、同じHCアミノ酸配列によって特徴付けられ、LCの各々は、同じLCアミノ酸配列によって特徴付けられ、HC及びLCのコード配列は、一価又はホモ二量体抗体を産生するために使用される。
別の具体的な例によれば、ABMは、2つの異なるHC及び2つの異なるLCからなり、2つの異なるHC及び2つの異なるLCのコード配列は、ヘテロ二量体又は二重特異性抗体を産生するために使用される。
本発明はさらに、本明細書に記載されるABMをコードする1つ又は複数の核酸分子を組み込んでいる、少なくとも1つの発現カセット又はプラスミドを含む産生宿主細胞を提供する。
具体的には、宿主細胞は、ABMを一過性に又は安定的に発現する。具体的な例によれば、宿主細胞は、真核宿主細胞、好ましくは酵母又は哺乳動物細胞のいずれかである。
本発明はさらに、本明細書に記載されるABMを産生する方法であって、本明細書に記載される宿主細胞は、上記ABMを産生する条件下で培養又は維持される、方法を提供する。
具体的には、ABMは、細胞培養上清から単離及び/又は精製され得る。具体的な例によれば、ABMは、2つの異なるHC及び2つの異なるLCを含むヘテロ二量体である二重特異性の全長抗体であり、ABMは、それぞれ同種のHC/LC対ならびに同種のCL及びCH1ドメインとの正しい対形成を含み、ABMは、宿主細胞によって産生され、最大ピーク強度を比較する質量分析法(LC−ESI−MS)により測定した場合、産生された抗体の10%未満、好ましくは5%未満が誤って対形成される。
二重特異性IgG BxMは、界面突然変異を有しない(左パネル)、又はMaB40の界面変異を有する(右パネル)のいずれかでExpi293Fにおいて一過性で産生された。両方の抗体を脱グリコシル化し、LC−ESI−MSにより分析した。B10v5の軽鎖及び重鎖は白色で示され、hu225Mの軽鎖及び重鎖は黒色で示される。検出された各鎖対形成変異体の相対存在量は、検出された全ての完全なIgGのパーセンテージとして指示される。BxM wtでは、Fabにおいてミスペアリングを有する両方の変異体は、かなりの量で検出可能である(最大ピーク強度を比較した場合、各々12%)。したがって、正しく対形成した変異体のピークはまた、軽鎖が位置を交換したミスペアリングの変異体を含有する。BxM MaB40の産生は、正しく対形成した変異体のみをもたらした。ミスペアリングの変異体は、界面操作により消失した。 精製されたBxM野生型及びBxM MaB40の分析用サイズ排除クロマトグラフィー。両方のIgGは、16.3分の予想時間に溶出する。SECプロファイルにおける界面操作の悪影響は検出できなかった。 二重特異性IgG BxOは、界面突然変異を有しない(BxO wt、左上パネル)、又はMaB40の界面突然変異を有する(BxO MaB40、右上パネル)のいずれかでHEK293−6Eにおいて一過性に産生された。B10v5 Fabにおける支持的な突然変異が導入され、二重特異性抗体であるBxO MaB5/40、BxO MaB21/40及びBxO MaB45/40の作成をもたらした(下の残りのパネル)。全ての抗体を脱グリコシル化し、LC−ESI−MSにより分析した。B10v5の軽鎖及び重鎖は白色で示され、OKT3の軽鎖及び重鎖は黒色で示される。検出された各鎖対形成変異体の相対存在量は、検出された全ての完全なIgGのパーセンテージとして指示される。BxO wtでは、Fabにおいてミスペアリングを有する両方の変異体は、様々な量で検出可能であり、40%を超えるミスペアリングの抗体が蓄積する。ミスペアリングは、BxO MaB40においてかなり低下したが、なお検出可能であった。MaB40の突然変異だけでなく、支持的な突然変異のいずれかのものも含有するBxOは、改善された対形成挙動を示した。検出された完全なIgGの90%超が、正しくBxOと対形成された。 精製されたBxO野生型、BxO MaB40、BxO MaB5/40及びBxO MaB45/40の分析用サイズ排除クロマトグラフィー。全てのIgGは、15.4分の予想時間に溶出する。SECプロファイルにおける界面操作の悪影響は検出できなかった。 配列:配列番号1:ヒトIgG1のCカッパドメインのアミノ酸配列;配列番号2:ヒトIgG1のCラムダドメインのアミノ酸配列;配列番号3:ヒトIgG1のCH1ドメインのアミノ酸配列;配列番号4:ヒトIgG1ヒンジ領域のアミノ酸配列;配列番号5:ヒトIgG1のCH3ドメインのアミノ酸配列
本明細書を通じて使用される具体的な用語は、以下の意味を有する。
本明細書で使用される用語「抗原結合分子」又はABMは、抗原又はそのエピトープを特定の結合アフィニティー及び/又はアビディティーで特異的に認識又は結合するポリペプチドである結合ドメインを含む分子を意味する。ABMの具体的な例によれば、結合ドメインは、単一ドメイン抗体、一本鎖可変ドメイン、Fdフラグメント、アルマジロリピートポリペプチド、フィブロネクチンIII型ドメイン、テネイシンIII型ドメイン、アンキリンリピートモチーフドメイン、リポカリン、クニッツ(Kunitz)ドメイン、Fyn由来SH2ドメイン、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメインスキャフォールド、操作された抗体模倣物、及び抗原結合機能性を保持する上記のいずれかの遺伝子操作された対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む免疫グロブリン型結合領域である。
ABMの具体的な実施形態は、抗体又はその抗原結合フラグメントを含むか又はそれからなる。
用語「抗体」は、本明細書で用いる場合、免疫グロブリン若しくは免疫グロブリン様分子である抗原結合ポリペプチド、或いは例えば1つ若しくは複数の抗体ドメインから構成され、また免疫グロブリン又は抗体と類似した抗原結合特性を担持する、モジュラー抗体フォーマットを提示するその他のタンパク質、特に、単一、又は二重、又は多重特異性の結合特性、或いは1価、2価、又は多価の結合特性を示し得るタンパク質、例えば、特に細胞関連のタンパク質若しくは血清タンパク質を含む自己抗原等の病原体起源又はヒト構造物の、例えば抗原、エフェクター分子、又は構造物のエピトープに対応する少なくとも2つの特異的結合部位を示し得るタンパク質として定義される。用語「抗体」及び「免疫グロブリン」は、本明細書では交換可能に用いられる。
抗体は、1つ若しくは複数のリンカー配列を有する、又は有さない免疫グロブリンの重鎖及び/又は軽鎖の定常ドメイン及び/又は可変ドメインとして理解される抗体ドメインから一般的に構成される又はそれを含む。抗体は、可変抗体ドメインの対、例えば1つ若しくは2つのVH/VLの対等を含む、結合配列又はヒンジ領域を有する、又は有さない可変及び/又は定常抗体ドメインの組み合わせから構成される又はそれを含むものと特に理解される。ポリペプチドは、ループ配列により連結した抗体ドメイン構造の少なくとも2つのβストランドからなるβバレル構造を含む場合には、抗体ドメインとして理解される。抗体ドメインは、天然型構造のドメインであり得る、或いは、例えば、抗原結合特性又はその他の任意の特性、例えば安定性又は機能的特性、例えばFc受容体FcRn及び/又はFcγ受容体との結合等を修飾するために、突然変異誘発又は誘導体生成により修飾され得る。
用語「抗体」には、本明細書で用いる場合、免疫グロブリン様構造の抗体を含む、完全長抗体が特に含まれる。特に、抗体は、完全長抗体、例えばIgGタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE、又はIgM抗体の完全長抗体であり得る。
この用語はさらに、抗体、抗体ドメイン、若しくは抗体フラグメントの誘導体、組み合わせ又は融合のいずれかを含む。
用語「全長抗体」は、具体的に重鎖の二量体を含む、抗体のFc領域又は少なくともFc部分の大部分を含む任意の抗体分子を指すために使用される。この用語「完全長抗体」は、本明細書では、特定の抗体分子が抗体フラグメントではないことを強調するのに用いられる。
本明細書によれば、抗体は、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子のフラグメントにより実質的にコードされる1つ若しくは複数のポリペプチドを含むタンパク質(又はタンパク質複合体)として一般的に理解される。よく知られた免疫グロブリン遺伝子として、κ、λ、α、γ、δ、ε、及びμ定常領域遺伝子、並びに免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖(LC)は、カッパ(VLドメイン及びCラムダドメインを含む)又はラムダ(VLドメイン及びCカッパドメインを含む)のいずれかとして分類される。重鎖(HC)は、γ、μ、α、δ、又はεとして分類されるが、それは次に免疫グロブリンクラスであるIgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEをそれぞれ定義する。
HC又はLCは、相互に結合してドメインの鎖を生成する少なくとも2つのドメインからそれぞれ構成される。抗体HCは、VH抗体ドメイン、及びVHにC末端で結合した少なくとも1つの抗体ドメインを含み、すなわち、少なくとも1つの抗体ドメインは、連結配列を使用して又は使用しないでVHドメインのC末端に結びつけられることが具体的に理解される。抗体LCは、VL抗体ドメイン、及びVLにC末端で結合した少なくとも1つの抗体ドメインを含み、すなわち、少なくとも1つの抗体ドメインは、連結配列を使用して又は使用しないでVLドメインのC末端に結びつけられる。
定義には、可変領域(例えば、dAb、Fd、Vl、Vk、Vh、VHH等)及び定常領域の重鎖及び軽鎖のドメイン、又は天然抗体の個々のドメイン、例えばCH1、CH2、CH3、CH4、Cl、及びCk等、並びに構造的ループにより連結した抗体ドメインの少なくとも2本のβストランドからなるミニドメインが更に含まれる。一般的に、特異的CDR構造を通じて抗原結合部位を有する抗体は、VH/VLドメイン対のCDRループを通じて標的抗原と結合することができる。
用語「抗体」には、異なる標的抗原に対する及び/又は立体配置が異なる抗体ドメインを含むその他の抗体を実質的に含まない単離された形態の抗体が特に含まれるものとする。更に、単離された抗体は、単離された抗体と、例えば少なくとも1つのその他の抗体、例えばモノクローナル抗体又は異なる特異性を有する抗体フラグメント等との組み合わせを含有する組み合わせ調製物に含まれ得る。
用語「抗体」は、ヒト種、例えば哺乳動物、例えばマウス、ウサギ、ヤギ、ラクダ、ラマ、ウシ及びウマ、又はトリ、例えばニワトリなどの動物起源の抗体に適用され、この用語は、特に、動物起源の配列、例えば、ヒト配列に基づく組換え抗体を含む。
用語「抗体」は、ヒト抗体に特に適用される。
用語「ヒト」には、抗体において用いられる場合、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体が含まれるものと理解される。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、ランダム又は部位特異的in vitro突然変異誘発性により又はin vivo体細胞突然変異により導入された突然変異)を、例えばCDR内に含み得る。ヒト抗体として、ヒト免疫グロブリンライブラリから、又は1つ若しくは複数のヒト免疫グロブリンについて遺伝子導入された動物から単離された抗体が挙げられる。
ヒト抗体は、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、及びIgMからなる群より選択される、又はそれに由来するのが好ましい。
マウス抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG2C、IgG3、及びIgMからなる群より選択される、又はそれに由来するのが好ましい。
用語「抗体」は、キメラの抗体、例えば異なる種を起源とする配列、例えばマウス及びヒトを起源とする配列等を有するキメラ抗体に更に適用される。
用語「キメラ」とは、抗体において用いられる場合、重鎖及び軽鎖の各アミノ酸配列の一部分が、特定の種に由来する、又は特定のクラスに属する免疫グロブリン内の対応する配列と相同である一方、鎖の残りのセグメントは別の種又はクラスの対応する配列と相同である分子を意味する。一般的に、軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は、哺乳動物の1つの種に由来する免疫グロブリンの可変領域を模倣する一方、定常部分は、他方に由来する免疫グロブリンの配列と相同である。例えば、可変領域は、容易に入手可能なB細胞又はヒト以外の宿主生物に由来するハイブリドーマを、例えばヒト細胞調製物に由来する定常領域と組み合わせて利用する現在知られているソースに由来し得る。
用語「抗体」は、ヒト化した抗体に更に適用され得る。
用語「ヒト化」とは、抗体において用いられる場合、ヒト以外の種から得られた免疫グロブリンに実質的に由来する抗原結合部位を有する分子を意味し、分子の残りの免疫グロブリン構造は、ヒト免疫グロブリンの構造及び/又は配列に基づく。抗原結合部位は、定常ドメインと融合した完全な可変ドメイン、又は可変ドメイン内の該当するフレームワーク領域とグラフト結合した相補性決定領域(CDR)のみを含み得る。抗原結合部位は、野生型であり得る、又は例えば1つ若しくは複数のアミノ酸置換により修飾され得る、好ましくはヒト免疫グロブリンとより密接に類似するように修飾され得る。ヒト化免疫グロブリンのいくつかの形態は、すべてのCDR配列を保存する(例えば、6つすべてのCDRを含有するマウス抗体由来のヒト化マウス抗体)。その他の形態は、オリジナルの抗体に関して変更が加えられた1つ又は複数のCDRを有する。
具体的な実施形態によれば、本明細書に記載されるABMに含まれる全ての抗体ドメインは、少なくとも60%の配列同一性、又は少なくとも70%、80%、90%若しくは95%の配列同一性を有するヒト起源のもの又はそのヒト化若しくは機能的に活性な変異体であり、好ましくは、抗体ドメインの起源は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、又はIgE抗体のいずれかである。具体的には、全ての抗体ドメインは、同じ基本的な免疫グロブリンフォールドに由来するが、bシートフォーマットは異なり得るが、特にVドメインでは結びつけるループは確かに可変である。
用語「抗体」は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、特に組み換え抗体に更に適用され、該用語には、組み換え手段により調製、発現、作製、又は単離されるすべての抗体及び抗体構造が含まれ、例えば異なる起源に由来する遺伝子又は配列を含む、動物、例えばヒトを含む哺乳動物に由来する抗体、例えばキメラ抗体、ヒト化抗体、又はハイブリドーマ由来の抗体等が挙げられる。更なる事例として、抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離された抗体、又は組み換え体から単離された抗体、抗体若しくは抗体ドメインのコンビナトリアルライブラリ、又は抗体遺伝子配列をその他のDNA配列にスプライシングする工程と関係する任意のその他の手段により調製、発現、作製、又は単離された抗体が挙げられる。
用語「抗体」には、新規の抗体、又は既存の、例えば天然由来の抗体の機能的に活性な変異体が含まれるものと理解される。抗体の変異体、特に抗体様分子の変異体、又は抗体変異体という用語は、そのような分子の誘導体もやはり含むべきものと更に理解される。
誘導体とは、1つ若しくは複数の抗体の任意の組み合わせ、及び/又は抗体の任意のドメイン若しくはミニドメインが、任意の位置で、1つ若しくは複数のその他のタンパク質、例えばその他の抗体若しくは抗体フラグメント等のほか、リガンド、酵素、毒素等と融合し得る融合タンパク質である。本明細書に記載されるABM又は抗体は、具体的には、単離されたポリペプチドとして、又は、例えば、組換え、融合又はコンジュゲーション技術を通じて、他のペプチド又はポリペプチドとの組み合わせ分子として、使用することができる。ペプチドは、抗体ドメイン配列と相同であるのが好ましく、また少なくともアミノ酸5個分の長さであるのが好ましく、少なくとも10個分、又は更に少なくともアミノ酸50個分若しくは100個分の長さであるのがより好ましく、また抗体ドメインのループ領域を少なくとも部分的に構成する。
抗体の誘導体は、様々な化学的技法、例えば共有結合カップリング、静電相互作用、ジスルフィド結合等により、その他の物質との会合又は結合によっても取得可能である。抗体に結合したその他の物質は、脂質、炭水化物、核酸、有機分子及び無機分子、又は任意のこれらの組み合わせであり得る(例えば、PEG、プロドラッグ、又は薬物)。誘導体は、同一のアミノ酸配列を有するが、全体的に若しくは部分的に非天然の又は化学的に修飾されたアミノ酸からなる抗体も含む。具体的な実施形態では、抗体は、生物学的に許容される化合物との特異的相互作用を可能にする追加タグを含む誘導体である。使用可能なタグに関して、抗体がその標的と結合する際に、その結合に対して悪影響を有さない又は悪影響が許容可能である限り、特別な制限は存在しない。適するタグの例として、His−タグ、Myc−タグ、FLAG−タグ、ストレップ−タグ、カルモジュリン−タグ、GST−タグ、MBP−タグ、及びS−タグが挙げられる。別の具体的な実施形態では、抗体は、標識を含む誘導体である。用語「標識」とは、本明細書で用いる場合、検出可能な化合物又は組成物を意味し、「標識」抗体が生成するように抗体と直接又は間接的にコンジュゲートされている。標識は、そのものが検出可能、例えば放射性同位体標識若しくは蛍光標識であり得る、又は酵素標識の場合は、基質化合物若しくは組成物の検出可能な化学変化を触媒し得る。
抗体の誘導体は、例えば、親抗原結合(例えば、CDR)又はフレームワーク(FR)配列等の親抗体又は親抗体配列に由来し、例えば、in silico若しくは組み換えエンジニアリングにより取得された突然変異体又は変異体、又は化学的誘導体生成若しくは合成によるそれ以外のものである。
用語「変異体」は、本明細書で用いる場合、本明細書に記載するような、任意の「突然変異体」、「同族体」、又は「誘導体」を特に含むものとする。用語「変異体」は、具体的には、特定の機能性によって特徴付けられる機能的に活性な変異体を包含する。
本明細書に記載されるABM又は抗体の機能性は、特に、特定の抗原結合特性(特にエピトープ特異性)ならびにCLドメインとCH1ドメインとの好ましい対形成によって特徴付けられ、CLドメインの18位のアミノ酸、及び/又はCH1ドメインの26位のアミノ酸は、反対の極性によって特徴付けられる(ナンバリングはIMGTによる)。抗体定常ドメインの機能的変異体の機能性は、本明細書では、抗体ドメイン対を生成するために、対応する抗体ドメインと対形成する能力として理解される。特に、本明細書に記載されるCLドメイン及びCH1ドメインの機能的変異体は、好ましい対形成のための優性な点突然変異を含み、ここで、CLドメインの18位のアミノ酸及び/又はCH1ドメインの26位のアミノ酸は、反対の極性によって特徴付けられ(「優性な点突然変異」;IMGTによるナンバリング)、任意選択的に、さらなる点突然変異は、CL/CH1二量体を生成するための好ましい対形成を支持するが、対形成の可能性を減少させない。
用語「変異体」は、ミュータント抗体又は抗体のフラグメント等の抗体を特に意味するものとし、例えば、特にインサートを除去、交換し、特定の抗体アミノ酸配列又は領域に導入する、或いは例えば、抗体安定性、エフェクター機能、若しくは半減期を改変するために定常ドメインにおいて、又は、例えば当技術分野において利用可能なアフィニティー成熟技法により、抗原結合特性を改善するために、可変ドメインにおいて、アミノ酸配列を化学的に誘導化する突然変異誘発法により取得される。任意の公知の突然変異誘発法が採用され得るが、これには、例えばランダム化技法により取得されるような、所望の位置での点突然変異が含まれる。場合によっては、位置は、例えば任意の可能性のあるアミノ酸を用いて、又は抗体配列をランダム化するのに好ましいアミノ酸を選択することによりランダムに選択される。用語「突然変異誘発」とは、ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列を変化させるための、当技術分野でよく知られた任意の技法を意味する。好ましい種類の突然変異誘発として、エラープローンPCR突然変異誘発、飽和突然変異誘発、又はその他の部位特異的突然変異誘発が挙げられる。
用語「機能的変異体」は、本明細書では「機能的に活性な変異体」とも呼ばれ、例えば、1つ若しくは複数のアミノ酸の挿入、除去、又は置換、或いはアミノ酸配列内の1つ若しくは複数のアミノ酸残基の化学的誘導体生成、或いはヌクレオチド配列内の、又は例えば、CDR若しくはFR配列内の配列の遠位末端部のいずれか若しくは両方におけるヌクレオチドの化学的誘導体生成による親配列の修飾に起因する配列(例えば、親抗体に由来する)を含み得るが、その修飾は、この配列の活性に影響を及ぼさない、特に損なわない。選択された標的抗原に対して特異性を有する結合部位の場合、抗体の機能的に活性な変異体は、事前に決定された結合特異性をなおも有するが、但し、例えば、特定のエピトープに対する微細特異性、アフィニティー、アビディティー、Kon又はKoffレート等を変化させるために変更され得る。例えば、アフィニティー成熟型抗体は、機能的に活性な変異体抗体として特に理解される。従って、アフィニティー成熟型抗体内の修飾されたCDR配列は、機能的に活性な変異体として理解される。
機能的活性は、例えば、標的抗原との結合特異性、及び/又は分子に求められるin vivo半減期、及び/又はpH依存性のFcRn結合を測定するアッセイ法において、親分子と対比しながら変異体の構造及び機能により決定されるのが好ましく、例えば、抗体の機能性測定による標準アッセイ法において決定される。
抗原が細胞表面上で発現する場合、抗体の機能的な活性は、抗原結合に関して、ELISAアッセイ法、BIAcoreアッセイ法、Octet BLIアッセイ法、又はFACSに基づくアッセイ法で一般的に測定される。
機能的に活性な変異体は、例えば、親抗体、例えば、IgG1構造等の抗体の特異的天然構造を有するモノクローナル抗体の配列を変化させて、標的抗原の認識において同一の特異性を有するが、親構造とは異なる構造を有する変異体を取得する、例えば、抗体ドメインのいずれかを改変して特異的突然変異を導入する、二重特異性構築物を生成する、又は親分子のフラグメントを生成すること等により取得可能である。
一般的に、親の抗体又は配列は、抗原結合部位近傍の配列領域内又は結合部位内に、抗原結合を損なわない突然変異が組み込まれた変異体であって、好ましくは抗原結合能力を含め、親抗体と類似した生物活性を有する、例えば抗原を標的とする特異的結合アッセイ法又は機能的試験により測定したときに、実質的に同一の生物活性を有する変異体を生成するように改変可能である。
用語「実質的に同一の生物活性」とは、本明細書で用いる場合、実質的に同一の活性、すなわち同等の抗体又は親抗体について測定したときの活性の少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、例えば、少なくとも100%、又は少なくとも125%、又は少なくとも150%、又は少なくとも175%、又は例えば、最大200%として表わされる活性を意味する。
本明細書に記載する好ましい変異体は、抗原結合に関して機能的に活性であり、好ましくは個々の抗原と特異的に結合するが、標的抗原ではないその他の抗原と有意に結合しない能力を有するが、例えば、そのときのKd値の差異は、少なくとも2対数、好ましくは少なくとも3対数である。機能的に活性な変異体による抗原結合は、一般的に損なわれず、親の抗体若しくは配列、又は例えば、Kd値の差異が2対数未満、好ましくは3対数未満の配列変異体を含む抗体の結合アフィニティーと実質的にほぼ等しい結合アフィニティーに対応するが、但し、アフィニティーが改善しさえする、例えばKd値の差異が少なくとも1対数、好ましくは少なくとも2対数となる可能性も有する。
好ましい実施形態では、親抗体の機能的に活性な変異体は、
a)抗体の生物学的に活性なフラグメントであり、該フラグメントは、分子の配列のうちの少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%、及び最も好ましくは少なくとも97%、98%、又は99%を含み、
b)少なくとも1つのアミノ酸が置換、付加、及び/又は除去された抗体に由来し、機能的に活性な変異体は、分子又はその一部分に対して配列相同性を有し、例えば、少なくとも50%の配列相同性、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、なおもより好ましくは少なくとも90%、なおいっそうより好ましくは少なくとも95%、及び最も好ましくは少なくとも97%、98%、又は99%の配列相同性を有する抗体等であり、並びに/或いは
c)抗体又はその機能的に活性な変異体、及びポリペプチド又はヌクレオチド配列とは異種の少なくとも1つの更なるアミノ酸又はヌクレオチドから構成される。
一実施形態では、本明細書に記載されるABM又は抗体の機能的に活性な変異体は、上記される変異体と本質的に同一であるが、異なる種の相同配列に由来するという点で、それぞれ、そのポリペプチド又はコードするヌクレオチド配列と相違する。これらは、天然由来の変異体又は類似体と呼ばれる。
用語「機能的に活性な変異体」には、天然由来の対立遺伝子変異体、並びに突然変異体、又は任意のその他の非天然由来の変異体も含まれる。当技術分野において公知なように、対立遺伝子変異体は、ポリペプチドの生物学的機能を本質的に変化させない1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠損、又は付加を有するものとして特徴づけられる、交互に入れ替わった形態の(ポリ)ペプチドである。
機能的に活性な変異体は、ポリペプチド又はヌクレオチド配列中、例えば1つ又は複数の点突然変異の配列変更によって得ることができ、本明細書に記載されるように使用される場合、配列変更は、未変更ポリペプチド又はヌクレオチド配列の機能を保持又は改善する。そのような配列変更として、(保存的な)置換、付加、除去、突然変異、及び挿入を挙げることができるが、但しこれらに限定されない。
特定の機能的に活性な変異体は、CDR変異体である。CDR変異体には、CDR領域内の少なくとも1つのアミノ酸が修飾されたアミノ酸配列が含まれ、上記修飾は、アミノ酸配列の化学的又は部分的な変更であり得るが、そのように修飾しても、変異体は、修飾前の配列の生物学的特徴を保持することが可能である。CDRアミノ酸配列の部分的な変更は、1つから数個のアミノ酸、例えば、1、2、3、4、若しくは5個のアミノ酸の除去又は置換による、又は1つから数個のアミノ酸、例えば、1、2、3、4、若しくは5個のアミノ酸の付加又は挿入による、又は1つから数個のアミノ酸、例えば、1、2、3、4、若しくは5個のアミノ酸の化学的誘導体生成による、又はその組み合わせによる可能性がある。アミノ酸残基内の置換は、保存的な置換、例えば1つの疏水性アミノ酸と代替的疏水性アミノ酸との置換であり得る。
保存的な置換は、アミノ酸の側鎖及び化学的特性に関連するアミノ酸のファミリー内で生ずる置換である。そのようなファミリーの例として、塩基性側鎖、酸性側鎖、非極性脂肪族側鎖、非極性芳香族側鎖、非荷電極性側鎖、小型の側鎖、大型の側鎖を有するアミノ酸等が挙げられる。
点突然変異とは、異なるアミノ酸に関する1つ又は複数の一重(非連続的)又は二重のアミノ酸の置換若しくは交換、欠失又は挿入において、非改変アミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列の発現を引き起こすポリヌクレオチドの改変と特に理解される。
特定の態様によれば、抗体のCLドメイン及びCH1ドメインとの好ましい対形成について本明細書に記載されるCLドメイン及びCH1ドメインの点突然変異は、CLドメインの18位のアミノ酸残基の極性及び/又はCH1ドメインの26位のアミノ酸残基を反対の極性に変化させることであり、ナンバリングはIMGTに従う。具体的な実施形態を以下に指す:
a)CLドメインの18位のアミノ酸残基が正極性のものである場合、CH1ドメインの26位のアミノ酸残基は負極性のものである;又は
b)CLドメインの18位のアミノ酸残基が負極性のものである場合、CH1ドメインの26位のアミノ酸残基は正極性のものである。
上記された点突然変異は、本明細書において「優性な」点突然変異と呼ばれ、これは、指示された位置における反対の極性のこのような点突然変異によって、たとえCLドメイン若しくはCH1ドメインにおいて、又は隣接するVL若しくはVHドメインにおいて、さらなる点突然変異がない場合でも、このような点突然変異を有するCLドメインとCH1ドメインとの好ましい対形成によって特徴付けられるAMB又は抗体を産生することができるためである。
優性な点突然変異以外に、LCとHCとの好ましい対形成をさらに改善するさらなる点突然変異が存在し得、例えば、その突然変異は、本明細書において「支持的な」点突然変異と呼ばれる。このような支持的な点突然変異は、CL及び/若しくは対応するCH1ドメインのいずれか、又はVL及び/若しくは対応するVHドメインのいずれかにおいて操作され得る。例示的な支持的な点突然変異は、以下の通りである:CLドメインの点突然変異F7X(Xは、S、A、又はVのいずれかである);及び対応するCH1ドメインの点突然変異A20L、ナンバリングはIMGTに従う。典型的には、支持的な点突然変異は、アミノ酸残基の置換によって特徴付けられる保存的な点突然変異であり、アミノ酸残基の極性はこのような置換によって変化しない。
本明細書に記載されるABM又は抗体の変異体は、同じ極性及び/又は電荷のアミノ酸の交換を指す点突然変異を含み得る。これに関して、アミノ酸は、64個のトリプレットコドンによってコードされている20個の天然アミノ酸を指す。これらの20個のアミノ酸は、中性電荷、正電荷、及び負電荷を持つものに分割することができる。
20個の天然アミノ酸をそれぞれの3文字表記と1文字表記、及び極性とともに以下の表に示す。
Figure 2020505929
ポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列の同一性のパーセント(%)」は、配列相同性の最大パーセントを達成するように、また配列相同性の一部として保存的置換を一切考慮せずに配列の位置合わせを行い、そして必要な場合にはギャップを導入した後に、所定のポリペプチド配列内のアミノ酸残基と一致する候補配列内のアミノ酸残基の百分率(%)として定義される。当業者は、比較の対象となる配列の全長にわたり、一致性が最大となるのに必要とされる任意のアルゴリズムを含め、一致性を測定するしかるべきパラメーターを決定することができる。
ABM又は抗体変異体には、例えば、糖鎖工学により生成される特定のグリコシル化パターンを有する同族体、類似体、フラグメント、修飾体、又は変異体が含まれるものと特に理解され、抗体変異体は機能的であり、例えば、特定の標的に結合し、機能的特性を有するなど、また機能的同等物として役に立つ可能性がある。ABM又は抗体は、グリコシル化されても、またグリコシル化されなくてもよい。例えば、本明細書に記載するような組み換えABM又は抗体は、抗体を発現する宿主細胞により決定される分子の特異的グリコシル化が可能となるように、適する哺乳動物細胞内で発現され得る。
抗体ドメイン、特にCL又はCH1ドメイン等の定常抗体ドメインの「βシート」又は「βストランド」という用語は、本明細書では以下のように理解される。抗体ドメインは、少なくとも2つ又は3つのバックボーン水素結合により横方向に連結した少なくとも2本のβストランドから一般的に構成され、一般的に捻じられた、ひだ状のシートを形成する。βストランドは、一般的に長さが3〜10個のアミノ酸からなる単一の連続的なアミノ酸のストレッチであり、そのように延長型の立体構造を採るが、また少なくとももう一方のストランドとのバックボーン水素結合に関与してβシートを形成する。βシート内では、βストランドの大部分は、他方のストランドに隣接して配置し、そして広範な水素結合ネットワークをその近傍のストランドと形成し、その場合、一方のストランドのバックボーン内のN−H基が、隣接したストランドのバックボーン内のC=O基と水素結合を形成する。
抗体定常ドメイン、例えばCL又はCH1ドメイン等の構造は、ループにより連結したβストランドからなる可変ドメインの構造と類似しており、その一部は、短いαヘリックス型ストレッチを含む。様々なFc結晶構造のb因子から理解されるように、フレームワークは、おおむね剛性であり、またループは比較的柔軟性である。抗体CL又はCH1ドメインは、βシート(A−B−C−D−E−F−G)を形成する7本のβストランドを一般的に有し、この場合、βストランドは、複数のループ、すなわちドメインのN末端側先端部分に位置する3つのループ(A−B、C−D、E−F)、及びドメインのN末端側先端部分に位置する更なる3つのループ(B−C、D−E、F−G)を介して結合している。ドメインの「ループ領域」は、ベータ鎖の領域間に位置するタンパク質の部分を指す(例えば、CLドメイン又はCH1ドメインの各々は、N末端からC末端に配向した7つのベータシートA〜Gを含む)。
好ましくは、一対の抗体ドメイン、例えば、CLドメインとCH1ドメインの対形成は、各々のドメインのA、B及び/又はE鎖を伴う結合表面(本明細書においては、結合界面と呼ぶ)を結びつけることによって(ヘテロ)二量体を産生する。CLドメインのベータシート領域とCH1ドメインのベータシート領域とのこのような接触により、二量体(CL/CH1と称される)が産生される。
具体的には、本明細書に記載さるCLドメイン及びCH1ドメインは、ヒトIgG1抗体のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
特に、Cカッパドメインは、配列番号1として同定されたアミノ酸配列、又はその機能的変異体、例えば、特定の配列同一性を有するものによって特徴付けられる。
特に、Cラムダドメインは、配列番号2として同定されたアミノ酸配列、又はその機能的変異体、例えば、特定の配列同一性を有するものによって特徴付けられる。
特に、CH1ドメインは、配列番号3として同定されたアミノ酸配列、又はその機能的変異体、例えば、特定の配列同一性を有するものによって特徴付けられる。
或いは、本明細書に記載されるCL及びCH1抗体ドメインは、ヒトIgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgD、又はそれらの機能的変異体、例えば、特定の配列同一性を有するもののいずれかのアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
抗体のFv部分は、典型的には、各々のドメインのC鎖、C’鎖及びF鎖を伴う結合表面(結合界面)を結びつけることによって(ヘテロ)二量体を産生するVLドメインとVHドメインの対として理解される。VLドメインのベータシート領域とVHドメインのベータシート領域のこのような接触により、二量体(VL/VHと称される)が産生される。
Fabアームは、本明細書において、第1及び第2の抗体鎖の対として理解され、第1の鎖は、VLドメインのC末端に連結される、VLドメイン及びCLドメインを含むか又はそれからなり(軽鎖、LC)、第2の鎖は、VHドメインのC末端に連結される、VHドメイン及びCH1ドメインを含むか又はそれからなり(重鎖、HC)、VLは、結合界面を介してVHに結びつけ(それと対形成し)、CLは、結合界面を介してCH1に結びつけ(それと対形成し)、これによりLC及びHCの(ヘテロ)二量体(LC/HCとも称される)を産生する。
抗体のFc部分は、本明細書において、各々がCH2ドメイン及び、抗体鎖の対(Fc鎖)として理解され、CH2ドメインのC末端に連結されているCH3ドメインを含む抗体鎖の対(Fc鎖)として理解される。各々の抗体鎖のCH2ドメインは、各々のCH2ドメインのA、B及び/又はE鎖を伴う結合表面(結合界面)を介して互いに結びつけ、各々の抗体鎖のCH3ドメインは、各々のCH3ドメインのA、B及び/又はE鎖を伴う結合表面(結合界面)を介して互いに結びつけ(それと対形成し)、これによりFc鎖の(ホモ)二量体を産生する。本明細書に記載されるFc部分は、IgG、IgA、IgD、IgE又はIgM由来であり得る。
本明細書に記載される一実施形態では、Fc部分は、突然変異したCH3ドメイン、例えば、1つ又は複数の突然変異、又はノブ若しくはホール突然変異を含むように、異種配列で置換された1つ又は複数のベータ鎖の少なくとも一部を有するものを含む。このような場合、Fc領域は、2つの異なるCH3ドメインの会合によって特徴付けられるFc鎖のヘテロ二量体を含む。
特異的ノブ突然変異は、βストランド構造の追加の突起を提供する1つ又は複数のアミノ酸を組み込むことにより2つのドメイン間で接触表面を増加させる1つ又は複数のアミノ酸置換、例えばT366Y、T366W、T394W、F405Aからなる群より選択されるCH3ノブ突然変異のうちの1つ又は複数である。特異的ノブ修飾とは、抗体のCH3ドメイン内の突然変異T366Wを指す(ナンバリングはKabatのEUインデックスに基づく)。ノブ突然変異は、例えばホール突然変異を組み込むように修飾された別の抗体ドメインに結合するためのマッチング(同種)表面を特に提供する。
特異的ホール突然変異は、βストランド構造の追加の陥凹部を提供する1つ又は複数のアミノ酸を組み込むことにより、2つのドメイン間で接触表面を増加させる1つ又は複数のアミノ酸置換、例えばT366S、L368A、及びY407Vからなる群より選択されるCH3ホール突然変異のうちの1つ又は複数である。特異的ホール修飾とは、抗体のCH3ドメイン内の突然変異T366S、L368A、Y407V、Y407Tのいずれかを指す(ナンバリングはKabatのEUインデックスに基づく)。ホール突然変異は、例えばノブ突然変異を組み込むように修飾された別の抗体ドメインに結合するためのマッチング(同種)表面を特に提供する。
マッチングするノブ・イントゥ・ホール突然変異として、例えばCH3ドメインの対の一方のCH3ドメイン上のT366Yと、これにマッチングする第2のCH3ドメイン上のY407’Tが挙げられ、本明細書ではT366Y/Y407’Tと呼ばれる。更なるマッチング突然変異として
T366Y/Y407’T、
F405A/T394’W、
T366Y:F405A/T394‘W:Y407’T、
T366W/Y407’A、及び/又は
S354C:T366W/Y349’C:T366’S:L368’A:Y407’V
が挙げられる。
特異的CH3突然変異には、例えばCH3βストランド内の1つ又は複数のセグメント又は配列が突然変異しており、オリジナルのCH3ドメインとは異なる抗体ドメイン、例えば異なるタイプ又はサブタイプの抗体ドメインのセグメント又は配列が組み込まれている場合、分子間のβストランドスワップが含まれる。特異的突然変異体は、ストランド交換により取得されるが、この場合、IgGタイプのCH3ドメインにIgAタイプのCH3ドメインの1つ又は複数のセグメント又は配列が組み込まれる。2つのストランド交換CH3ドメインが突然変異して同種の対を形成する場合、CH3ドメインそれぞれのIgAセグメント又は配列は、突然変異したCH3ドメインが、野生型CH3ドメインよりも選好的に相互に対をなすように、同種のドメイン間接触表面を生成する。セグメントスワップを組み込んだ抗体ドメインのそのような修飾の具体例として、ストランド交換設計ドメイン(SEED)を挙げることができる。そのような修飾は、非対称性又は二重特異性抗体、特に重鎖のSEED修飾型CH3ドメインを選好的に対形成させることによって二重特異性抗体を生成するのに利用可能である。これは、保存されたCH3ドメイン内の構造的に関連した配列の交換に基づく。SEED CH3ドメイン内のヒトIgA及びIgGに由来の交互に反復する配列は、AG及びGAと表される非対称性であるが相補的な2つのドメインを生成する。SEEDデザインは、AG及びGA SEED CH3ドメインのホモ二量体化を回避しつつ、AG/GAヘテロ二量体の効率的な生成を可能にする。
抗体ドメイン若しくはLC/HC、又はFc鎖の結びつけは、ドメイン内又はドメイン間のジスルフィド架橋によってさらに支持され得る。ジスルフィド結合は、2つのシステインのチオール基の酸化により通常形成され、これによりS原子が結合して2つのシステイン残基の間でジスルフィド架橋が形成される。
具体的な実施形態によれば、抗体ドメインは、追加のドメイン内ジスルフィド架橋によって抗体ドメインを、又は追加のドメイン間ジスルフィド架橋によって一対の抗体ドメインを安定化させるためにジスルフィド架橋を形成することができるシステイン残基を組み入れる突然変異を含む。具体的には、システインは、CH3ドメインのC末端領域内又はC末端に挿入され得る(アミノ酸付加又はアミノ酸置換による)。追加のシステイン修飾を有する一対のCH3は、CH3対間のジスルフィド結合形成によって安定化され、これによりCH3/CH3二量体を産生し得る。一部の実施形態では、ジスルフィド連結された抗体ドメインは、ホモ二量体又はヘテロ二量体、すなわち同一又は異なるドメインの対である。
抗体鎖又はドメインの正しい対形成を可能にするために、任意のCH3突然変異法が、特に利用可能であり、例えばノブ・イントゥ・ホール技術、SEED技術、電荷反発技術、ジスルフィド結合、又はクロス−mAb技術が、正しく会合しない分子の量を低減するために利用可能である。
抗体ドメインの「対」は、本明細書において2つの抗体ドメイン一式として理解され、この場合、一方は、その表面上又はキャビティ内に、他方のドメイン上の部位と特異的に結合する、従って相補的な部位を有する。抗体ドメインは会合(associate)及び会合(assemble)して、ベータシート領域の接触を介して一対の抗体ドメインを形成し得る。そのようなドメインの対は二量体とも呼ばれ、例えば静電相互作用、組み換え融合、又は共有結合により会合するが、例えば固体形態及び液状形態の両方において、2つのドメインを物理的に直接会合させる。本明細書において具体的に記載されているのは、本明細書において同定された位置での特定の点突然変異を介した同種の抗体ドメインの好ましい対となりうるCL/CH1二量体である。
「好ましい対形成」は、本明細書では、抗体ドメイン又は抗体鎖の二量体の形成として理解され、これにより抗体ドメイン又は抗体鎖の対が得られ、この対は、抗体ドメインの結合界面のアフィニティー又はアビディティーの増加、及びドメイン対又はHC/LC対の(熱)安定性の増加を介して形成される。同種の抗体ドメインは、本明細書に記載されるような、好ましくは同じ型の任意の野生型ドメイン全体で互いに対形成するような、界面領域における修飾によって産生され得る。
一対の抗体ドメインにおいて、抗体ドメインは、本明細書では、「対応する」ドメインと呼ばれる。本明細書に記載される抗体において、以下のドメインは、一対の抗体ドメインを適切に形成する対応物(スラッシュ(/)で分離された対応物)と見なされる:
VL/VH;
CL(Cラムダダ又はカッパ)/CH1;
CH2/CH2;
CH3/CH3。
用語「同種」とは、ドメインの対又はドメイン二量体に関して、各ドメイン上で、そのようなドメインの対を選好的に形成する接触表面が得られるようにする、マッチング結合ポイント又は構造を有するドメインとして理解される。具体的なドメインは、少なくとも1つのドメインがその同種の(対応する)結合パートナーに選好的に結合してドメイン対を生成するように修飾されている場合、「同種の」又は同種の対のドメインとして理解される。好ましくは、両方の同種のドメインは、合致する突然変異、例えば、反対の極性のアミノ酸残基を導入するための突然変異、ノブ−イントゥ−ホール突然変異、SEED突然変異、ジスルフィド架橋形成のための追加のシステイン残基、又は電荷反発技術を用いた修飾を取り込むように設計される。
用語「多価」とは、本明細書に記載するABM又は抗体に関して、同一の標的抗原に結合する、特にそのような標的抗原の同一の又は異なるエピトープと結合する少なくとも2つの結合部位を有する分子を指すものとする。該用語には、2価の抗体、又は例えば少なくとも2、3、4個、若しくはそれより多くの結合部位を通じて標的抗原と結合する2以上の結合価を有する分子が含まれるものとする。例えば、2価の抗体は、2つの対からなり、その両方とも同一の標的抗原と結合するVH/VLドメインを介した2つの抗原結合部位を有し得る。
用語「多重特異性」とは、本明細書に記載するABM又は抗体に関して、少なくとも2つの異なる標的抗原と特異的に結合する少なくとも2つの結合部位を有する分子を指すものとする。該用語には、二重特異性抗体、又は2つ以上の標的抗原と、例えば少なくとも2、3、4個、若しくはそれより多くの結合部位を通じて結合する2つ以上の特異性を有する分子が含まれるものとする。
例えば、二重特異性抗体は、VH/VLドメインの一方の対(Fv領域)を通じて1つの標的抗原と結合し、またVH/VLドメイン(Fv領域)の第2の対により別の標的抗原と結合し得る。二重特異性抗体は、典型的には、4つの異なる抗体鎖、すなわち、2つのHC及び2つのLCから構成され、そのため、2つの異なるCDR結合部位が、第1のHCと第1のLCとの、及び第2のHCと第2のLCのヘテロ二量体化(対形成)によって形成される。
本明細書で使用される「抗原」又は「標的」という用語は、特に、抗体の結合部位によって認識することができる全ての抗原及び標的分子(パラトープとも呼ばれる)を含む。本明細書に記載される結合分子によって標的化される具体的に好ましい抗原は、免疫学的又は治療的に関連性があることが既に証明されているか又はそうであり得る抗原、とりわけ臨床効果が試験されている抗原である。用語「標的」又は「抗原」は、本明細書で用いる場合、(ヒト又はその他の動物の)、自己抗原である腫瘍関連受容体及び可溶性の腫瘍関連抗原、例えば、腫瘍細胞上に位置する受容体、又はそのような腫瘍と関連して癌患者の循環系内に豊富に存在すサイトカイン若しくは又は増殖因子からなる群より選択される分子を特に含むものとする。更なる抗原は、病原体起源、例えば微生物又はウイルス性の病原体の抗原であり得る。
標的抗原は、標的分子全体、又はそのような分子のフラグメント、特に下部構造、例えば免疫学的に関連し、すなわち、天然抗体又はモノクローナル抗体によって認識可能でもある、「エピトープ」(例えばB細胞エピトープ、T細胞エピトープ)と一般的に呼ばれる標的のポリペプチド又は炭水化物構造として認識される。本明細書で使用される用語「エピトープ」とは、本明細書に記載されるABM若しくは抗体の結合部位に対する、特異的結合パートナーを完全に構成するか又は特異的結合パートナーの一部であり得る分子構造を特に指す。用語「エピトープ」は、ハプテンも意味する。化学的には、エピトープは、炭水化物、ペプチド、脂肪酸、有機物質、生体物質、又は無機物質、又はその誘導体及び任意のその組み合わせから構成され得る。エピトープがポリペプチドの場合、少なくとも3個のアミノ酸、好ましくは8〜50個のアミノ酸、及びより好ましくは約10〜20個のアミノ酸が、ペプチド内に通常含まれる。ペプチドの長さに重大な上限はなく、タンパク質のほぼ完全長ポリペプチド配列を含む場合もある。エピトープは、直鎖状又は高次構造エピトープであり得る。直鎖状エピトープは、ポリペプチドの一次配列又は炭水化物鎖からなる単一のセグメントから構成される。直鎖状エピトープは、連続性又は重複性であり得る。高次構造エピトープは、アミノ酸又は炭水化物から構成され、ポリペプチドのフォールディングにより一体化して三次構造を形成し、またアミノ酸は、直鎖状配列において必ずしも相互に隣接していない。特に、エピトープは、診断上関連する分子の少なくとも一部分である、すなわちサンプル中のエピトープの有無は、患者の疾患若しくは健康状態、又は製造におけるプロセスの状態、又は環境及び食物の状態と定性的又は定量的に相関する。エピトープは、治療上関連する分子、すなわち疾患の経過に変化をもたらす、特異的結合ドメインの標的対象となり得る分子の少なくとも一部分に相当し得る。
特定の実施形態は、天然に存在する抗原若しくはエピトープ、又はエピトープの合成(人工)抗原を指す。天然に存在する抗原の誘導体である人工抗原は、抗原性又は安定性が増加するという利点を有する可能性があり、これは、特定のABM又は抗体に対する結合パートナーとして認識されることに関連する。
本明細書で用いる場合、用語「特異性」又は「特異的結合」とは、不均質な分子集団内で目的の同種リガンドを判別する結合反応を意味する。したがって、指定された条件下(例えばイムノアッセイ条件下)で、本明細書に記載されるABM又は抗体は、その特定の標的に結合し、試料中に存在する他の分子に有意な量では結合しない。特異的結合とは、結合はターゲットアイデンティティーに関して選択的であることを意味し、選択に応じて結合アフィニティー又はアビディティーは高、中、又は低となる。選択的結合は、結合定数又は結合動力学が少なくとも10倍異なる場合に通常実現し、好ましくは、差異は少なくとも100倍、より好ましくは少なくとも1000倍である。
用語「可変結合領域」は「CDR領域」とも呼ばれるが、本明細書で用いる場合、抗原との結合相互作用能力のある可変構造を有する分子を意味する。そのような分子は、そのまま利用可能、又はより大きなタンパク質に組み入れ可能であり、従って結合機能を備えたそのようなタンパク質の特異的領域を形成する。可変構造は、結合タンパク質の天然のレパートリー、例えば免疫グロブリン又は抗体等に由来し得る。可変構造は、ランダム化技法、特に本明細書に記載する技法によっても生成可能である。これらは、突然変異誘発されたCDR又は非CDR領域(例えば、定常抗体ドメインの構造ループ領域)、抗体可変ドメイン又は定常ドメインのループ領域、特に抗体のCDRループを含む。典型的には、本明細書に記載されるABM又は抗体の結合構造は、このような可変結合領域によって形成される。
本明細書に記載されるABM又は抗体の目的で使用される「細胞傷害性」又は「細胞傷害活性」という用語は、抗原に結合した場合、プログラムされた細胞死を活性化し、アポトーシスを誘発する細胞抗原に対して指向される任意の特定分子を指す。特異的抗体は、エフェクター細胞に対するその活性により効果を有し、その結果、細胞傷害性T細胞、又は抗体依存性細胞毒性(ADCC)、補体依存性細胞毒性(CDC)、及び/又は細胞食作用(ADCP)に関与する細胞の活性化を引き起こす。特異的抗体は、アポトーシス誘発性のプログラム細胞死により、並びに/或いはADCC及び/又はCDC活性に関与するエフェクター細胞がFc受容体と結合することにより、抗体で被覆された標的細胞を殺傷する。
本明細書に記載されるABM又は抗体は、Fcエフェクター機能を示してもよく又は示さなくてもよい。Fcは、補体を導入することができ、また免疫複合体の形成による表面抗原の結合を通じて、標的抗原又は標的細胞の除去を支援する。
特定の抗体は、活性なFc部分又はFcエフェクター機能を欠損している場合もあり、従って抗体のFc部分を含まない、又はFcγ受容体結合部位を含まない抗体ドメインから構成され得る、或いは例えばFcエフェクター機能を低減する、特にADCC及び/又はCDC活性を無効にする又は低減する修飾により、Fcエフェクター機能を欠いている抗体ドメインを含み得る。修飾を組み込んで、Fcエフェクター機能を高める、特にADCC及び/又はCDC活性が増強するように、代替的抗体が改変され得る。
そのような修飾は、突然変異誘発、例えばFcγ受容体結合部位内の突然変異により、又は抗体フォーマットのADCC及び/又はCDC活性を阻害する誘導体又は薬剤により影響を受ける可能性があり、その結果、Fcエフェクター機能が低下又は増加する。
用語「抗原結合部位」又は「結合部位」とは、抗原結合に関与するABM又は抗体の部分を意味する。抗体の抗原結合部位は、典型的には、重(「H」)及び/又は軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域、又はその可変ドメインのアミノ酸残基によって形成される。重鎖及び軽鎖のV領域内の3つの高度に多様なストレッチは、「高度可変領域」と呼ばれ、フレームワーク領域として知られているより保存されたフランキングストレッチの間に挿入されている。抗原結合部位は、結合したエピトープ又は抗原の三次元表面に相補的な表面を提供するが、また高度可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」と呼ばれる。CDR内に組み込まれた結合部位は、本明細書では「CDR結合部位」とも呼ばれる。
用語「発現」とは、次のように理解される。発現産物、例えば本明細書に記載するようなABM又は抗体等の所望のコーディング配列、及び制御配列、例えば作動可能な結合内のプロモーター等を含有する核酸分子が、発現を目的として利用可能である。このような配列で形質転換又はトランスフェクトされた宿主は、コードされたタンパク質を生成する能力を有する。形質転換を有効にするために、ベクターに発現系を含めることができる;但し、関連するDNAも宿主染色体に組み込むことができる。特に該用語は、例えば、ベクターに担持され、宿主細胞に導入された外来DNAによりコードされるタンパク質発現用の、適する条件に置かれた宿主細胞及び適合するベクターを意味する。
コーディングDNAは、特定のポリペプチド又はタンパク質、例えば抗体等に対応する特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列である。プロモーターDNAは、コーディングDNAの発現を開始、規制、さもなければ媒介、又は制御するDNA配列である。プロモーターDNA及びコーディングDNAは、同一の遺伝子又は異なる遺伝子に由来し得るが、また、同一の又は異なる生物に由来し得る。組み換えクローニングベクターには、多くの場合、クローニング又は発現用の1つ若しくは複数の複製系、宿主内で選択するための1つ若しくは複数のマーカー、例えば抗生物質耐性、及び1つ若しくは複数の発現カセットが含まれる。
本明細書で用いられる「ベクター」は、クローン化された組み換えヌクレオチド配列、すなわち組み換え遺伝子の転写、及び適する宿主生物内でのそのmRNAの翻訳に必要とされるDNA配列として定義される。
「発現カセット」とは、定義された制限部位においてベクターに挿入可能な発現産物をコードするDNAのDNAコーディング配列又はセグメントを意味する。カセット制限部位は、正しいリーディングフレーム内へのカセットの挿入を保証するように設計される。一般的に、外来DNAは、ベクターDNAの1つ又は複数の制限部位に挿入され、次にベクターにより伝染性ベクターDNAと共に宿主細胞に搬送される。発現ベクター等の、挿入又は付加されたDNAを有するDNAのセグメント又は配列は、「DNA構築物」とも呼ばれる場合がある。
発現ベクターは、発現カセットを含み、また宿主細胞における自律複製のための起点又はゲノム組み込み部位、1つ又は複数の選択マーカー(例えば、抗生物質、例えばゼオシン(zeocin)、カナマイシン、G418、又はハイグロマイシン等に対する耐性を付与するアミノ酸合成遺伝子又は遺伝子)、いくつかの制限酵素切断部位、適するプロモーター配列、及び転写終結因子を通常更に含むが、これらの成分は作動可能に共に結合している。用語「ベクター」には、本明細書で用いる場合、自律複製ヌクレオチド配列、並びにゲノム組み込み用ヌクレオチド配列が含まれる。一般的な種類のベクターは「プラスミド」であり、それは一般的に、追加(外来)のDNAを容易に受け入れ可能な二本鎖DNAの自己完結型分子であるが、また適する宿主細胞に容易に導入可能である。プラスミドベクターは、多くの場合、コーディングDNA及びプロモーターDNAを含有し、また外来DNAの挿入に適する1つ又は複数の制限部位を有する。特に、用語「ベクター」又は「プラスミド」は、DNA又はRNA配列(例えば、外来遺伝子)を宿主細胞に導入可能であり、その結果宿主を形質転換させ、そして導入された配列の発現(例えば、転写及び翻訳)を促進する媒体を意味する。
用語「宿主細胞」とは、本明細書で用いる場合、特定の組み換えタンパク質、例えば本明細書に記載するようなABM又は抗体等を生成するように形質転換された初代対象細胞、及び子孫を指すものとする。すべての子孫が親細胞とまったく同一とは限らないが(計画的若しくは偶然の突然変異、又は環境の差異に起因して)、但し、該子孫が、当初形質転換された細胞の機能と同一の機能を保持する限り、そのように変化した子孫もその用語に含まれるものと理解すべきである。用語「宿主細胞株」とは、組み換え遺伝子を発現させて、組み換えポリペプチド、例えば組み換え抗体等を生成するのに用いられるような宿主細胞の細胞株を意味する。用語「細胞株」とは、本明細書で用いる場合、長期間にわたり増殖能力を獲得した特定の細胞型の確立されたクローンを意味する。そのような宿主細胞又は宿主細胞株は、細胞培養内で維持可能、及び/又は組み換えポリペプチドを生成するために培養可能である。
用語「単離された」又は「単離」とは、核酸、抗体、又はその他の化合物に関して本明細書で用いる場合、「実質的に純粋な」形態で存在するように、それが本来関連する環境から十分に分離された化合物を指すものとする。「単離された」とは、その他の化合物又は材料との人工的又は合成混合物、或いは基本的な活性を妨害しない、そして例えば、不完全な精製に起因して存在し得る不純物の存在の除外を必ずしも意味しない。特に、本明細書に記載されるABM又は抗体をコードする単離された核酸分子はまた、特定の宿主細胞における発現を改善するために天然に存在する核酸配列のコドン最適化変異体、又は化学合成されたものを含むことが意味される。
核酸を参照しながら、用語「単離された核酸」が時に用いられる。この用語は、DNAに適用される場合、配列から分離したDNA分子を意味するが、その場合、該DNA分子の起源となる生物の天然由来のゲノム内では、該DNA分子は該配列と隣接する。例えば、「単離された核酸」は、ベクター、例えばプラスミド又はウイルスベクター等に挿入された、或いは原核細胞若しくは真核細胞又は宿主生物のゲノムDNAに組み込まれたDNA分子を含み得る。RNAに適用される場合、用語「単離された核酸」は、上記で定義した単離されたDNA分子によりコードされるRNA分子を主に意味する。或いは、該用語は、天然の状態(すなわち、細胞又は組織内)ではその他の核酸と関連するRNA分子であるが、そのような核酸から十分に分離した該RNA分子を意味し得る。「単離された核酸」(DNA又はRNA)は、生物学的手段又は合成手段により直接生成し、そして生成期間中に存在するその他の成分から分離した分子を更に表す場合もある。
ポリペプチド又はタンパク質、例えば単離された抗体等を参照する際に、用語「単離された」とは、化合物が本来関連する物質、例えば天然の環境、又は化合物が調製される場合(例えば、細胞培養)であって、そのような調製が組み換えDNA技術によりin vitro若しくはin vivoで実施される場合、その環境において見出されるその他の化合物等を含まない、若しくは実質的に含まない該化合物を特に指すものとする。単離された化合物は、希釈剤、又はアジュバントと共に処方化され得るが、またなおも実用的な目的で単離され得る−例えば、ポリペプチド又はポリヌクレオチドは、診断又は治療で用いられる場合、薬学的に許容される担体又は賦形剤と混合され得る。
用語「組み換え」とは、本明細書で用いる場合、「遺伝子工学により調製される、又は遺伝子工学の結果」を意味するものとする。或いは、「設計された」という用語が使用される。例えば、抗体又は抗体ドメインは、それぞれの親配列を設計して、修飾された抗体又はドメインを生成することによって変異体を生成するように設計され得る。組み換え宿主は、発現ベクター又はクローニングベクターを特に含む、又は組み換え核酸配列を含むように、特に宿主にとって外来のヌクレオチド配列を利用して遺伝子改変されている。組み換えタンパク質は、宿主内で各組み換え核酸を発現することにより産生される。用語「組み換え抗体」には、本明細書で用いる場合、組み換え手段により調製、発現、作製、又は単離される抗体、例えば(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子が遺伝子導入された若しくは染色体導入された動物(例えば、マウス)から単離された抗体、又はそれから調製されたハイブリドーマ、(b)抗体を発現するように形質転換した宿主細胞から単離された、例えばトランスフェクトーマ由来の抗体、(c)組み換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、及び(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列を、その他のDNA配列にスプライシングする工程と関係する任意のその他の手段により調製、発現、作製、又は単離される抗体等が含まれる。そのような組み換え抗体は、例えば抗体成熟期間中に生ずる再配列及び突然変異を含めるように改変された抗体を含む。
所望の構造を有する抗体が識別されたら、そのような抗体は、例えばハイブリドーマ技法又は組み換えDNA技術を含む、当技術分野において周知の方法により生成可能である。
ハイブリドーマ法では、マウス又はハムスター等のその他の適する宿主動物が、免疫化で用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を産生する、又は産生する能力を有するリンパ球を誘発するように免疫化される。或いは、リンパ球は、in vitroで免疫化され得る。次に、適する融合剤、例えばポリエチレングリコール等を用いてリンパ球をミエローマ細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する。
ハイブリドーマ細胞が増殖する培養培地は、抗原に対するモノクローナル抗体の産生について分析される。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法により、又はin vitro結合アッセイ法、例えばラジオイムノアッセイ法(RIA)又は酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)等により測定される。
組み換えモノクローナル抗体は、例えば、必要とされる抗体鎖をコードするDNAを単離し、そして発現用のコーディング配列で組み換え宿主細胞をトランスフェクトすることにより、周知の組み換え発現ベクター、例えば本明細書に記載するABM又は抗体をコードするヌクレオチド配列を含む発現カセット(複数可)を用いて生成可能である。組み換え宿主細胞は、原核細胞及び真核細胞、例えば上記の細胞等であり得る。
特定の態様によれば、ヌクレオチド配列は、抗体をヒト化する、又は抗体のアフィニティー若しくはその他の特徴を改善する遺伝子操作で利用可能である。例えば、抗体がヒトを対象とした臨床トライアル及び治療で用いられる場合には、定常領域は、ヒト定常領域とより密接に類似させて免疫反応を避けるように改変され得る。標的抗原に対するアフィニティーがより高まるように抗体配列を遺伝子操作するのが望ましいと考えられる。標的抗原に対する抗体の結合能力をなおも維持しつつ、抗体に1つ又は複数のポリヌクレオチドの変化を生じさせ得ることは、当業者にとって明白である。
様々な手段による抗体分子の生成は、一般的によく理解されている。例えば、米国特許第6331415号(Cabillyら)は、抗体の組み換え生成の方法について記載するが、この場合、重鎖及び軽鎖は、単一のベクターから又は単一の細胞中の2つの別個のベクターから同時に発現される。Wibbenmeyerら、(1999年、Biochim Biophys Acta、第1430巻(2):191〜202頁)、並びにLee及びKwak(2003年、J. Biotechnology、第101巻:189〜198頁)は、大腸菌(E.coli)の分離培養物中に発現したプラスミドを用いて個別に生成した重鎖及び軽鎖からのモノクローナル抗体の製造について記載する。抗体の生成に関連する様々なその他の技法が、例えばHarlowら、ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、(1988年)に提示されている。
モノクローナル抗体は、培養物中の連続細胞系により抗体分子を生成する任意の方法を用いて生成される。モノクローナル抗体を調製するのに適する方法の例として、Kohlerら(1975年、Nature、第256巻:495〜497頁)のハイブリドーマ法、及びヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor、1984年、J.Immunol.、第133巻:3001頁;及びBrodeurら、1987、monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、(Marcel Dekker、Inc.、New York)、51〜63頁)が挙げられる。
本明細書に記載するABM又は抗体は、治療を必要としている対象への治療投与において利用可能である。
用語「対象」は、本明細書で用いる場合、温血哺乳動物、特にヒト又はヒト以外の動物を指すものとする。従って、用語「対象」は、特にイヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ウシ、ブタ、及び家禽を含む動物も指す場合がある。特に、本明細書に記載するABM又は抗体は、疾患状態の予防又は治療を必要とする対象又は患者を治療するために、医学的用途で提供される。用語「患者」には、予防上又は治療上の処置を受けるヒト及びその他の哺乳動物対象が含まれる。用語「処置」は、従って、予防上の処置と治療上の処置の両方が含まれるように意図される。
具体的には、本明細書に記載するABM又は抗体は、実質的に純粋な形態で提供される。用語「実質的に純粋な」又は「精製された」とは、本明細書で用いる場合、少なくとも50%(w/w)、好ましくは少なくとも60%、70%、80%、90%、又は95%の化合物、例えば核酸分子又は抗体等を含む調製物を指すものとする。純度は、化合物に適する方法により測定される(例えば、クロマトグラフィー法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法、HPLC分析法等)。
用語「治療有効量」は、化合物、例えば、本明細書に記載されるABM又は抗体の「有効量」又は「十分な量」という用語のいずれかと本明細書において交換可能に使用され、対象に投与された場合に、臨床結果を含む有益な又は所望の結果に十分な量又は活性であり、そのため、有効量又はその同義語は、それが適用されている文脈に依存する。
有効な量とは、そのような疾患又は障害を治療、予防、又は阻止するのに十分な化合物の量を意味するように意図されている。疾患という文脈において、本明細書に記載するABM又は抗体の治療上有効な量は、抗体とその標的抗原の相互作用から利益を得る疾患又は状態を治療、調節、軽減する、逆転させる、又はそれに影響を及ぼすのに特に用いられる。
そのような有効な量に対応する化合物の量は、様々な要因、例えば投与される薬物又は化合物、医薬製剤、投与経路、疾患又は障害の種類、治療される対象又は宿主の同一性等に応じて変化するものの、当業者によりルーチン的に決定可能である。
本明細書に記載されるABM又は抗体は、具体的には、医薬組成物に使用され得る。したがって、本明細書に記載されるABM又は抗体、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤、例えば、体液中の免疫グロブリンとともに天然には存在しないか、又は免疫グロブリンとともに天然に存在する人工担体又は賦形剤を含む医薬組成物が提供され、さらに、異なる量若しくは比率で担体又は賦形剤を含有する調製物中に提供される。
本明細書に記載される医薬組成物は、ボーラス注射若しくは注入として、又は持続注入によって投与することができる。そのような投与手段を円滑にするのに適する医薬担体は、当技術分野において周知されている。
薬学的に許容される担体として、本明細書に記載するABM又は抗体と生理学的に適合するあらゆるすべての適する固体又は液体の物質、溶媒、分散媒、コーティング物、等張性吸収遅延剤等が一般的に挙げられる。薬学的に許容される担体の更なる例として、無菌の水、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、並びにその任意の組み合わせが挙げられる。
1つのそのような態様では、抗体は、所望の投与経路に適する1つ又は複数の担体と併用可能であり、抗体は、例えば、ラクトース、スクロース、スターチ、アルカノン酸、ステアリン酸のセルロースエステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸及び硫酸のナトリウム塩及びカルシウム塩、アカシア、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidine)、ポリビニルアルコールのいずれかと混合され得るが、また任意選択的に、従来方式での投与用として更に錠剤化又はカプセル化される。或いは、免疫グロブリンは、生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースのコロイド溶液、エタノール、コーン油、ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、トラガカントガム、及び/又は様々なバッファーに溶解し得る。その他の担体、アジュバント、及び投与様式は、医薬品技術分野で周知されている。担体は、制御放出型材料又は時間遅延材料、例えばグリセリルモノステアレート若しくはグリセリルジステアレート等を単独で、又はワックス若しくは当技術分野において周知のその他の材料と共に含み得る。
追加の薬学的に許容される担体は、当技術分野において公知であり、また例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCESに記載されている。液状製剤は、液剤、乳剤又は懸濁剤であり得、また賦形剤、例えば懸濁剤、可溶化剤、界面活性剤、防腐剤、及びキレート剤等を含み得る。
本発明の抗体、及び1つ又は複数の治療上活性な薬剤が処方化される場合、医薬組成物が検討される。所望の純度を有する上記抗体を任意選択的な薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤と混合することにより、安定な製剤が、凍結乾燥された製剤又は水溶液の形態で保存用に調製される。In vivo投与用として用いられる製剤は、特に無菌状態であり、好ましくは無菌の水溶液の形態である。これは、滅菌濾過メンブレンを通過する濾過又はその他の方法により容易に実現される。本明細書に開示の免疫グロブリン及びその他の治療上活性な薬剤は、イムノリポソームとしても処方化され得る、及び/又はマイクロカプセル中に捕捉され得る。
本発明の抗体を含む医薬組成物の投与は、経口、皮下、静脈内、鼻腔内、耳内(intraotically)、経皮、粘膜、局所的、例えばゲル、軟膏、ローション、クリーム等、腹腔内、筋肉内、肺内、膣内、非経口、直腸、又は眼内を含む様々な方法において実施可能である。
非経口投与で用いられる代表的な製剤として、皮下、筋肉内、又は静脈内注射に適する製剤、例えば無菌の液体、乳剤又は懸濁剤が挙げられる。
本発明は、本明細書で提示する実施例に詳記するような代表的な抗体を特に提供する。例えば、分子の構造及び機能を改善するために、Fcを更に改変する場合、又は異なるCDR結合部位を含む、若しくは異なる特異性を有する抗体を生成する場合、特に2つの異なるFv領域を取得する場合、更なる抗体変異体が、例えば例示した免疫グロブリンの機能的変異体を含め可能性を有する。
上記説明は、下記の実施例を参照しながらより十分に理解される。但し、そのような実施例は、本発明の1つ又は複数の実施形態を実践する方法を代表するに過ぎず、発明の範囲を制限するものと読み取るべきでない。
実施例1:B10v5×hu225M SEED
IgG構造を有する二重特異性抗体が記載される。B10v5−Fabはヒトc−METに結合し、一方、hu225M−FabはヒトEGFR(上皮細胞増殖因子受容体)に結合する。hu225M軽鎖とhu225M重鎖との間の界面は、二重特異性IgGの両方の軽鎖をそれらの同種の重鎖に指向させる突然変異を有する。抗体のCH3ドメインは、重鎖のヘテロ二量体化を強化するためにSEEDドメイン(SEED−AG又はSEED−GAと呼ばれる、Davisら、2010年及び米国出願公開第2007/0287170A1号)によって置換される。LC−ESI−MS分析を用いて4つの鎖全ての正しい会合を確認する。以下では、この二重特異性IgGを説明するためにBxMという用語を使用する。
以下の全ての鎖は、哺乳動物系において発現させるためにベクターpTT5(National Research Council Canada)に別々にクローニングされた。
SEED−GAを有するhu225M重鎖をhu225M_HC_GA(配列番号6)と命名した:
MKLPVRLLVLMFWIPASLSEVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGFSLTNYGVHWMRQAPGQGLEWIGVIWSGGNTDYNTPFTSRVTITSDKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARALTYYDYEFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPPSEELALNELVTLTCLVKGFYPSDIAVEWLQGSQELPREKYLTWAPVLDSDGSFFLYSILRVAAEDWKKGDTFSCSVMHEALHNHYTQKSLDRSPGK
下線部:シグナルペプチドMKLPVRLLVLMFWIPASLS(配列番号7)
hu225M軽鎖をhu225M_LC(配列番号8)と命名した:
MKLPVRLLVLMFWIPASLSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSIGTNIHWYQQKPGKAPKLLIKYASESISGVPSRFSGSGYGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQQNYNWPTTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
下線部:シグナルペプチドMKLPVRLLVLMFWIPASLS(配列番号7)
SEED−AGを有するB10v5重鎖をB10v5_HC_AG(配列番号9)と命名した:
METDTLLLWVLLLWVPGSTGEVQLVQSGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKDRRITHTYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPFRPEVHLLPPSREEMTKNQVSLTCLARGFYPKDIAVEWESNGQPENNYKTTPSRQEPSQGTTTFAVTSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKTISLSPGK
下線部:シグナルペプチドMETDTLLLWVLLLWVPGSTG(配列番号10)
B10v5軽鎖をB10v5_LC(配列番号11)と命名した:
METDTLLLWVLLLWVPGSTGEPVLTQPPSVSVAPGETATIPCGGDSLGSKIVHWYQQRPGQAPLLVVYDDAARPSGIPERFSGSKSGTTATLTISSVEAGDEADYFCQVYDYHSDVEVFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHKSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
下線部:シグナルペプチドMETDTLLLWVLLLWVPGSTG(配列番号10)
hu225Mへの界面突然変異の導入
突然変異は、製造業者のプロトコルに従って、QuikChangeライトニング部位特異的突然変異誘発キット(#210519、Agilent Technologies)を用いた部位特異的突然変異誘発によって導入された。突然変異K26Dは、hu225M_HC_AGのCH1に導入され、突然変異T18Rは、hu225M_LCのCLに導入された。突然変異の導入の成功は、目的の遺伝子を配列決定することによって確認された。
突然変異K26Dを有するhu225M重鎖をhu225M_HC_resQ28_GA(配列番号12)と命名した:
MKLPVRLLVLMFWIPASLSEVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGFSLTNYGVHWMRQAPGQGLEWIGVIWSGGNTDYNTPFTSRVTITSDKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARALTYYDYEFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVDDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPPSEELALNELVTLTCLVKGFYPSDIAVEWLQGSQELPREKYLTWAPVLDSDGSFFLYSILRVAAEDWKKGDTFSCSVMHEALHNHYTQKSLDRSPGK
下線部:シグナルペプチドMKLPVRLLVLMFWIPASLS(配列番号7)
突然変異T18Rを有するhu225M軽鎖をhu225M_LC_MB40(配列番号13)と命名した:
MKLPVRLLVLMFWIPASLSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSIGTNIHWYQQKPGKAPKLLIKYASESISGVPSRFSGSGYGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQQNYNWPTTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGRASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
下線部:シグナルペプチドMKLPVRLLVLMFWIPASLS(配列番号7)
Expi293F(商標)細胞におけるBxM野生型及び突然変異BxM MaB40の発現と精製
BxMは、製造業者のプロトコルに従って、Expi293F(商標)細胞及びExpiFectamine(商標)293トランスフェクションキット(thermoFisher、A14525)を用いて発現させた。2つの異なるトランスフェクションが設定された:
Figure 2020505929
各鎖をコードするDNAは4つの異なるプラスミド上にあった。トランスフェクション中のプラスミドのモル比は、2:1:1:1(B10v5重鎖:B10v5軽鎖:hu225M重鎖:hu225M軽鎖)であった。
突然変異体BxM MaB40は、hu225MのCH1上に突然変異K26D(hu225M_HC_resQ28_GA、配列番号12)及びhu225MのCL上にT18R(hu225M_LC_MB40、配列番号13)を含有したが、BxM野生型はいずれの突然変異をも含有していなかった。培養物を遠心分離し、目的のタンパク質を含有する上清を0.22μmフィルターで濾過し、製造業者の説明書に従ってMontage抗体精製キット、及びPROSEP−A Media(Merck−Millipore、LSK2ABA20)を備えたSpinカラムを用いて精製した。精製されたBxM野生型及びBxM MaB40をAmicon ultra−15、10kDa MWCOを使用して濃縮し、次に、Slide−A−Lyser透析カセット0.5〜3ml、7,000MWCO(ThermoFisher、#66370)を使用してPBSに対して透析した。合計で、BxM野生型とBxM MaB40の両方は、独立して2回、発現、精製及び分析された。両方の繰り返しで同様の結果が得られた。
鎖対形成を分析するためのLC−ESI−MS分析
LC−ESI−MSシステムで測定する前に、両方の試料のN−グリカンをPNGase Fを用いて放出させた。可能性のある10個全ての鎖対形成変異体の質量を計算し、それらの存在について質量スペクトルを分析した。4つの異なる鎖を含有するが、両方の軽鎖がそれらの非同種の重鎖に結合しているミスペアリング変異体(すなわち、交換された軽鎖を有するBxM)は、正しく会合されたBxMと同じ質量を有し、したがって正しく対形成したBxMと区別することできない。しかしながら、一方又は両方の軽鎖のそれらの非同種の重鎖へのミスペアリングを検出することができない場合、交換された軽鎖を有するBxMの存在を統計的に排除することができる。同様に、両方の軽鎖のミスペアリングが少量(<5%の相対存在量)でのみ検出される場合、上記ミスペアリング変異体はごく僅かな量(<1%)でしか存在しない。
試料のいずれにおいても重鎖ホモ二量体は検出されなかった(図1)。BxM野生型では、両方の軽鎖がそれらの非同種の重鎖に類似した量で結合することができ(両方の場合で12%の相対存在量)、正しく対形成したBxMの76%しか生じなかった(軽鎖が交換されたBxMではカウントしていない)。BxMでは、MaB40のミスペアリングは検出できず、正しく対形成した二重特異性IgGのみが検出された。
結論として、界面突然変異の導入は、軽鎖と重鎖のミスペアリングの完全な消失をもたらした。
Figure 2020505929
サイズ排除クロマトグラフィーHPLC(HPLC−SEC)
SECを用いてBxM野生型及びBxM MaB40を分析した。両方のクロマトグラムは、IgGについて予想された15.6分に主ピークを示した。凝集の徴候は、突然変異体ならびに野生型において検出可能であった(図2)。
熱安定性を決定するための熱シフトアッセイ
リアルタイムPCRシステムStep One Plusを用いてサーマルシフトアッセイを行った。BxM野生型及びBxM MaB40の濃度はPBS中1μMであり、20×最終濃度の色素Sypro Orange(Invitrogen)を使用した。両方の試料を三重に測定した。BxM野生型のサーモグラムは、64.8℃及び74.5℃で2つの変性事象を明らかにした。BxM MaB40のサーモグラムは、64.6℃及び74.6℃で2つの変性事象を明らかにした。したがって、界面突然変異は、タンパク質の熱安定性を損なわない。
その抗原に対するBxMのアフィニティー
BxM野生型及びMaB40のアフィニティーは、プロテインAで被覆されたバイオセンサーを備えたOctetシステムを用いて分析された。抗原として、cMET及びEGFRの細胞外ドメインを用いた。アフィニティーを決定するために3つの異なる濃度の抗体を試験した。cMETに対するBxM wtのKDは0.35nMであり、EGFRに対しては5.3nMであった。cMETに対するBxM MaB40のKDは0.42nMであり、EGFRに対しては2.9nMであり、これは、界面突然変異が抗体のアフィニティーを損なわないことを裏付けている。
両抗原の同時結合
BxMがその両方の抗原に同時に結合する能力は、ストレプトアビジン被覆したバイオセンサーを備えたOctet Systemを用いて確認された。まず、バイオセンサーは、ビオチン化cMETを含有する溶液に浸された。クエンチング及び緩衝液交換の後、バイオセンサーは、BxM野生型又はBxM MaB40のいずれかを含有する溶液に浸された。両方の場合において、抗体によるその第1の抗原への結合が検出された。その後、バイオセンサーは、EGFRを含有する溶液に浸され、第2の抗原への結合を野生型及びMaB40について検出した。
HEK293−6Eの収量における界面突然変異の影響
BxM野生型及びBxM MaB40は、標準的な技術に従って、ポリエチレンイミン(PEI)を用いた一過性トランスフェクションを使用するHEK293−6E細胞(National Research Council Canada)において発現された。発現されたIgGをプロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、PBSに対して透析した。両方のタンパク質試料の吸光度を280nmで測定して濃度を決定した。合計で、両方のタンパク質を発現させ、精製し、独立して3回測定して、平均収量を計算した。BxM野生型の収量は57.3mg/L(±13.7標準偏差)であり、BxM MaB40の収量は58.9mg/L(±7.3標準偏差)であり、これは、界面操作がタンパク質収量に有害な影響を及ぼさないことを実証している。
実施例2:B10v5×OKT3 SEED
実施例1において記載したのと類似するIgG構造を有する二重特異性抗体が記載される。B10v5−Fabはヒトc−METに結合し、一方、OKT3−FabはヒトCD3に結合する。OKT3軽鎖とOKT3重鎖の間の界面は、実施例1において記載したのと同じ突然変異を有する。さらに、重鎖に対する軽鎖の正しい対形成をさらに強化するために、B10v5−Fabにおける突然変異を導入した。上記のように、SEED技術は、重鎖のヘテロ二量体化に適用された。LC−ESI−MS分析を使用して、4つ全ての鎖の正しい会合を確認した。以下では、この二重特異性IgGを説明するためにBxOという用語を使用する。
構築物のクローニング
B10v5重鎖(配列番号9)及び軽鎖(配列番号11)は実施例1に記載されている。
以下の全ての鎖は、哺乳動物系において発現させるためにベクターpTT5(National Research Council Canada)に別々にクローニングされた。
OKT3重鎖をOKT3_HC_GA(配列番号14)と命名した:
MKLPVRLLVLMFWIPASLSQVQLVQSGGGVVQPGRSLRLSCKASGYTFTRYTMHWVRQAPGKGLEWIGYINPSRGYTNYNQKVKDRFTISRDNSKNTAFLQMDSLRPEDTGVYFCARYYDDHYCLDYWGQGTPVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPPSEELALNELVTLTCLVKGFYPSDIAVEWLQGSQELPREKYLTWAPVLDSDGSFFLYSILRVAAEDWKKGDTFSCSVMHEALHNHYTQKSLDRSPGK
下線部:シグナルペプチドMKLPVRLLVLMFWIPASLS(配列番号7)
OKT3軽鎖をOKT3_LC(配列番号15)と命名した:
MKLPVRLLVLMFWIPASLSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASSSVSYMNWYQQTPGKAPKRWIYDTSKLASGVPSRFSGSGSGTDYTFTISSLQPEDIATYYCQQWSSNPFTFGQGTKLQITRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
下線部:シグナルペプチドMKLPVRLLVLMFWIPASLS(配列番号7)
OKT3及びB10v5への界面突然変異の導入
突然変異は、上記のように製造業者のプロトコルに従って、QuikChangeライトニング部位特異的突然変異誘発キット(#210519、Agilent Technologies)を用いた部位特異的突然変異誘発によって導入された。OKT3では、CH1に突然変異K26D、及びCLにT18Rが導入された。B10v5では、CH1に突然変異A20L、及びCLにF7S、F7A又はF7Vのいずれかが導入された。突然変異の導入の成功は、目的の遺伝子を配列決定することによって確認された。
突然変異K26Dを有するOKT3重鎖をOKT3_HC_resQ28_GA(配列番号16)と命名した:
MKLPVRLLVLMFWIPASLSQVQLVQSGGGVVQPGRSLRLSCKASGYTFTRYTMHWVRQAPGKGLEWIGYINPSRGYTNYNQKVKDRFTISRDNSKNTAFLQMDSLRPEDTGVYFCARYYDDHYCLDYWGQGTPVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVDDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPPSEELALNELVTLTCLVKGFYPSDIAVEWLQGSQELPREKYLTWAPVLDSDGSFFLYSILRVAAEDWKKGDTFSCSVMHEALHNHYTQKSLDRSPGK
下線部:シグナルペプチドMKLPVRLLVLMFWIPASLS(配列番号7)
突然変異T18Rを有するOKT3軽鎖をOKT3_LC_MB40(配列番号17)と命名した:
MKLPVRLLVLMFWIPASLSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASSSVSYMNWYQQTPGKAPKRWIYDTSKLASGVPSRFSGSGSGTDYTFTISSLQPEDIATYYCQQWSSNPFTFGQGTKLQITRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGRASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
下線部:シグナルペプチドMKLPVRLLVLMFWIPASLS(配列番号7)
突然変異A20Lを有するB10v5重鎖をB10v5_HC_resQ203_AG(配列番号18)と命名した:
METDTLLLWVLLLWVPGSTGEVQLVQSGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKDRRITHTYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTALLGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPFRPEVHLLPPSREEMTKNQVSLTCLARGFYPKDIAVEWESNGQPENNYKTTPSRQEPSQGTTTFAVTSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKTISLSPGK
下線部:シグナルペプチドMETDTLLLWVLLLWVPGSTG(配列番号10)
突然変異F7Sを有するB10v5軽鎖をB10v5_LC_MB9(配列番号19)と命名した:
METDTLLLWVLLLWVPGSTGEPVLTQPPSVSVAPGETATIPCGGDSLGSKIVHWYQQRPGQAPLLVVYDDAARPSGIPERFSGSKSGTTATLTISSVEAGDEADYFCQVYDYHSDVEVFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLSPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHKSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
下線部:シグナルペプチドMETDTLLLWVLLLWVPGSTG(配列番号10)
突然変異F7Aを有するB10v5軽鎖をB10v5_LC_MB21(配列番号20)と命名した:
METDTLLLWVLLLWVPGSTGEPVLTQPPSVSVAPGETATIPCGGDSLGSKIVHWYQQRPGQAPLLVVYDDAARPSGIPERFSGSKSGTTATLTISSVEAGDEADYFCQVYDYHSDVEVFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLAPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHKSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
下線部:シグナルペプチドMETDTLLLWVLLLWVPGSTG(配列番号10)
突然変異F7Vを有するB10v5軽鎖をB10v5_LC_MB45(配列番号21)と命名した:
METDTLLLWVLLLWVPGSTGEPVLTQPPSVSVAPGETATIPCGGDSLGSKIVHWYQQRPGQAPLLVVYDDAARPSGIPERFSGSKSGTTATLTISSVEAGDEADYFCQVYDYHSDVEVFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLVPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHKSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
下線部:シグナルペプチドMETDTLLLWVLLLWVPGSTG(配列番号10)
HEK293−6E細胞におけるBxO野生型、ならびに突然変異体BxO MaB40、BxO MaB5/40、BxO MaB21/40及びBxO MaB45/40の発現及び精製
二重特異性抗体は、標準的な技術に従って、ポリエチレンイミン(PEI)を用いた一過性トランスフェクションを使用するHEK293−6E細胞において発現された。4つの異なるトランスフェクションが設定された:
Figure 2020505929
各鎖をコードするDNAは4つの異なるプラスミド上にあった。トランスフェクション中のプラスミドのモル比は、2:1:1:1(B10v5重鎖:B10v5軽鎖:OKT3重鎖:OKT3軽鎖)であった。培養物をトランスフェクションの5日後に遠心分離により回収し、上清をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。全ての試料をPBSに対して透析した。
鎖対形成を分析するためのLC−ESI−MS分析
測定前に両方の試料のN−グリカンをPNGase Fを用いて放出させた。実施例1に記載したように分析を実施した。界面突然変異の導入は、重鎖に対する軽鎖の検出可能なミスペアリングにおいて顕著な減少をもたらした(図3)。
Figure 2020505929
Figure 2020505929
サイズ排除クロマトグラフィーHPLC(HPLC−SEC)
SECを用いてBxO野生型、BxO MaB5/40及びBXO MaB45/40を分析した。全てのクロマトグラムは、IgGについて予想された15.5分に主ピークを示した(図4)。凝集の兆候は、突然変異体ならびに野生型において類似した量で検出可能であった。
検討
実施例1は、hu225M Fabにおいて突然変異を有するか又は有しない、BxMと呼ばれる、IgG構造を有する二重特異性抗体の産生を記載する。LC−ESI−MSによるBxM野生型の分析は、軽鎖のそれらの同種の重鎖に対する正しい対形成を強化するためのいずれの操作もなしに、二重特異性IgGを産生する課題を実証する。両方の軽鎖は、それらの非同種の重鎖に、合わせて24%の量で結合することができ、これは、次に精製タンパク質試料の76%のみが正しく対形成した二重特異性IgGであったことを意味する。
突然変異体BxM MaB40を作製するために、両方ともhu225M Fabにおける2つの点突然変異であるCH1のK26D及びCLのT18Rのみが導入された。これらの突然変異は、誤った軽鎖−重鎖の対形成を完全に阻害するのに十分であった。以前の報告(Lewisら、2014年、Liuら、2015年)とは対照的に、可変ドメインの操作は必要ではなかった。したがって、本発明の突然変異は、他の様々な二重特異性抗体に広く適用できる可能性がある。さらに、可変ドメインにおけるいずれの突然変異をも除外することは、その抗原に対する抗体のアフィニティーに影響を及ぼす危険性を制限する。
さらなる調査は、BxM MaB40に導入された突然変異が、熱安定性ならびにタンパク質収量に有害な影響を及ぼさないことを明らかにした。さらに、BxM MaB40は、その両方の抗原に対して、BxM野生型のそれと類似したアフィニティーを有し、バイオレイヤー干渉法によって実証されるように、両方の抗原に同時に結合することができた。サイズ排除クロマトグラフィーは、BxM MaB40とBxM野生型の間に相違がないことを明らかにし、これは、突然変異が抗体の凝集又は分解の増加をもたらさないことを証明する。
同定された突然変異が一般的な用途のものであるかどうかを評価するために、実施例2に示すように異なる二重特異性抗体BxOを構築した。実施例1と同様に、突然変異を有しないBxO(野生型)は、OKT3 FabのCH1における突然変異K26D及びCLにおける突然変異T18Rを有するBxO(BxO MaB40と呼ばれる)と比較された。LC−ESI−MSによるBxO野生型の分析は、それらの非同種の重鎖に対する軽鎖のミスペアリングが、BxM野生型において検出されたミスペアリングよりも優勢であることを明らかにした。全体で、検出された40%を超えるIgGがFabにおいてミスペアリングを示し、60%未満の正しく対形成したBxOをもたらした。BxO MaB40の分析は、前述の突然変異の導入がまた軽鎖の対形成挙動にかなりの効果を有することを示した。BxO MaB40における検出された74%のIgGが正しく対形成していた。鎖の正しい会合をさらに強化するために、支持的な突然変異をBxOの他のFab、すなわちB10v5 Fabに導入し、BxO MaB 5/40、BxO MaB21/40及びBxO MaB45/40の作製をもたらした。支持的な突然変異を含有する3つの突然変異体全てにおいて、正しく対形成した二重特異性IgGの量は非常に改善された(LC−ESI−MSにおける>90%の相対量)。
サイズ排除クロマトグラフィーによるBxO野生型、BxO MaB5/40及びBXO MaB45/40の分析は、本突然変異が凝集又は分解に関して抗体に有害な影響を及ぼさないことを実証した。
実施例3:CH1とCLの間の境界における位置でのアミノ酸側鎖の表面露出
GETAREAプログラム(Fraczkiewiczら、1998年、J.Comp.Chem.、第19巻、319〜333頁)を用いて、タンパク質の溶媒接触可能表面積又は溶媒和エネルギーを計算した。野生型CH1及びCLドメインを有するヒト免疫不全ウイルス1型のgp41に対するヒトモノクローナル抗体FabフラグメントであるヒトIgG1 Fabフラグメント1DFB.pdbの原子座標(Heら、1992年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第89巻:7154〜7158頁)、インプットとしてプログラムに供給された。1.4オングストロームのプローブ半径が適用された。CH1ドメインの残基ALA20及びLYS26、ならびにCLドメインのPHE7及びTHR18についてのプログラムのアウトプットを以下の表Iに示す。
主鎖及び側鎖原子からの寄与は、それぞれ4列目及び5列目に列挙されている。次のカラムは、残基あたりの「ランダムコイル」値に対する側鎖表面積の比を列挙する。残基Xの「ランダムコイル」値は、30個のランダム立体配座の集合におけるトリペプチドGly−X−GlyにおけるXの平均溶媒接近可能表面積である。比率の値が50%を超える場合は、残基は溶媒に曝露されていると見なされ、比率が20%未満の場合は埋もれ、比率が少なくとも20%である場合は埋もれない。20個のアミノ酸についての「ランダムコイル」値を以下の表IIに列挙する。
Figure 2020505929
Figure 2020505929
上記の表Iに示される結果から、4つの残基のうち3つが埋もれ(比率(%)値が5%未満)、一方、CLドメインの残基THR18は比率(%)値が38.3であり、したがって、埋もれていないことが理解される。
CH/CH1界面内に埋もれていないCLドメインの突然変異位置THR18がCL/CH1ドメインの対形成の改善をもたらすことを見出したことは驚くべきことであった。本明細書にさらに記載されるように、改善された対形成は、CLドメインをCH1ドメインと対形成させる場合に特に見出され、CLドメインの18位のアミノ酸残基は、CH1ドメインの26位のアミノ酸残基と反対の極性を有する。
従来技術の工学的アプローチは、反対の極性を有する荷電残基によって置換されるべき重鎖及び軽鎖の界面に沿った残基対を選択するための特定の基準を適用したため、これはより驚くべきことであった。先行技術によるこのような基準(例えば、Liuら、Journal Of Biological Chemistry、2015年、第290巻:7535〜7562頁;及び国際公開第2014/081955A1号)によれば、全ての位置が埋もれることが不可欠であると考えられた。
したがって、CLドメインの18位は、この先行技術の規則の例外であり、CH1とCLの間の界面内に埋もれていないにもかかわらず、驚くべきことにCL/CH1ドメイン対の安定性に寄与する。

Claims (15)

  1. 少なくともVH及びCH1抗体ドメインを含む抗体重鎖(HC)に会合した、VL及びCL抗体ドメインから構成される抗体軽鎖(LC)の同種の軽鎖/重鎖(LC/HC)二量体を含む抗原結合分子(ABM)であって、会合は、VLドメイン及びVHドメイン、並びにCLドメイン及びCH1ドメインの対形成によるものであり、CLドメインの18位及びCH1ドメインの26位のアミノ酸は反対極性のものであり、ナンバリングはIMGTに従う、前記抗原結合分子。

  2. a)CLドメインが、少なくとも点突然変異T18X(Xは、R、H、若しくはKのいずれかである)を含有する、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCカッパであり;
    b)CH1ドメインが、少なくとも点突然変異K26X(Xは、D若しくはEのいずれかである)を含有する、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む;又は

    a)CLドメインが、少なくとも点突然変異K18X(Xは、D又はEのいずれかである)を含有する、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCラムダであり;
    b)CH1ドメインが、26位のKが他のいずれのアミノ酸によっても置換されていないか、若しくは少なくとも点突然変異K26X(Xは、R又はHのいずれかである)を含有する、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む;又は

    a)CLドメインが、18位のKが他のいずれのアミノ酸によっても置換されていないか、若しくは少なくとも点突然変異K18X(Xは、R又はHのいずれかである)を含有する、配列番号2に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCラムダであり;
    b)CH1ドメインが、少なくとも点突然変異K26X(Xは、D又はEのいずれかである)を含有する、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
    請求項1に記載のABMであって、
    ナンバリングがIMGTに従う、前記ABM。
  3. 同種のLC/HC二量体が、CLドメイン及びCH1ドメインの間に少なくとも1つのドメイン間ジスルフィド架橋を含む、請求項1又は2に記載のABM。
  4. CLドメインが点突然変異F7Xをさらに含み、XがS、A、又はVのいずれかであり、CH1ドメインが点突然変異A20Lをさらに含み、ナンバリングがIMGTに従う、請求項1〜3のいずれか一項に記載のABM。
  5. VLドメイン及びVHドメインが、界面領域内のアミノ酸の極性を変化させるいずれの点突然変異をも含有しない、請求項1〜4のいずれか一項に記載のABM。
  6. HCが、少なくとも1つのCH2ドメイン及び少なくとも1つのCH3ドメインをさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のABM。
  7. 抗体Fab若しくは(Fab)フラグメント、又はFc部分を含む全長抗体のいずれかであり、好ましくはABMが全長IgG抗体である、請求項1〜5のいずれかに記載のABM。
  8. 異なる抗原又はエピトープを認識する第1及び第2のFabアームを含むヘテロ二量体抗体であって、第1及び第2のFabアームの一方のみが同種のLC/HC二量体を含むヘテロ二量体抗体である、請求項1〜6のいずれかに記載のABM。
  9. 第1及び第2のFabアームの一方のみが、
    a)CLドメインにおける点突然変異F7X(XはS、A、又はVのいずれかである);及び
    b)CH1ドメインにおける点突然変異A20L
    を含み、ナンバリングがIMGTに従う、請求項8に記載のABM。

  10. a)前記第1のFabアームが、請求項1又は2のいずれかにおいて特定される点突然変異によって特徴付けられる同種のLC/HC二量体を含み、CL及びCH1ドメインは請求項4において特定される点突然変異をさらに含み;
    b)前記第2のFabアームが、a)の点突然変異のいずれも含まない、又は

    a)前記第1のFabアームが、請求項1又は2のいずれかにおいて特定される点突然変異によって特徴付けられる同種のLC/HC二量体を含み、CL及びCH1ドメインは請求項4において特定される点突然変異をさらに含まず;
    b)前記第2のFabアームが、請求項4において特定される点突然変異を含む、
    請求項8又は9に記載のABM。
  11. CH2及びCH3ドメインをそれぞれ含む2つのHCであって、二量体化してFc領域となるHCをさらに含み、CH3ドメインが、
    a)ヒトIgA及びIgG CH3配列の交互セグメントから構成される鎖交換設計ドメイン(SEED)CH3ヘテロ二量体;
    b)1つ又は複数のノブ又はホール突然変異、好ましくはT366Y/Y407’T、F405A/T394’W、T366Y:F405A/T394’W:Y407’T、T366W/Y407’A、及びS354C:T366W/Y349’C:T366’S:L368’A:Y407’Vのいずれか;
    c)第2のCH3ドメインのシステイン残基に共有結合し、これによりドメイン間ジスルフィド架橋を導入する、好ましくは両方のCH3ドメインのC末端を連結する、第1のCH3ドメインにおけるシステイン残基;
    d)斥力電荷がヘテロ二量体形成を抑制する1つ又は複数の突然変異、好ましくはK409D/D399’K、K409D/D399’R、K409E/D399’K、K409E/D399’R、K409D:K392D/D399’K:E356’K又はK409D:K392D:K370D/D399’K:E356’K:E357’Kのいずれか;及び/又は
    e)ヘテロ二量体形成及び/又は熱安定性について選択された1つ又は複数の突然変異、好ましくは
    T350V:L351Y:F405A:Y407V/T350V:T366L:K392L:T394W、
    T350V:L351Y:F405A:Y407V/T350V:T366L:K392M:T394W、
    L351Y:F405A:Y407V/T366L:K392M:T394W、
    F405A:Y407V/T366L:K392M:T394W、又は
    F405A:Y407V/T366L:T394W
    のいずれか
    のうちの1つ又は複数を導入するように設計されており、
    ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う、請求項8〜10のいずれか1項に記載のABM。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載のABMをコードする単離された核酸。
  13. 請求項12に記載の核酸を組み込んでいる発現カセット又はベクター。
  14. 請求項12に記載の核酸、又は請求項13に記載の発現カセット若しくはベクターを含む宿主細胞。
  15. 前記ABMを発現する条件下で請求項14に記載の宿主細胞を培養することにより、請求項1〜11のいずれか一項に記載のABMを生成する方法。
JP2019541726A 2017-02-02 2018-02-02 抗体ドメインの好ましい対形成 Active JP7123063B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
EP17154388 2017-02-02
EP17154388.7 2017-02-02
PCT/EP2018/052624 WO2018141894A1 (en) 2017-02-02 2018-02-02 Preferred pairing of antibody domains

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020505929A true JP2020505929A (ja) 2020-02-27
JP7123063B2 JP7123063B2 (ja) 2022-08-22

Family

ID=57965749

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019541726A Active JP7123063B2 (ja) 2017-02-02 2018-02-02 抗体ドメインの好ましい対形成

Country Status (13)

Country Link
US (1) US20190352429A1 (ja)
EP (1) EP3577137A1 (ja)
JP (1) JP7123063B2 (ja)
KR (1) KR20190113870A (ja)
CN (1) CN110382537B (ja)
AU (1) AU2018214208A1 (ja)
BR (1) BR112019013648A2 (ja)
CA (1) CA3050988A1 (ja)
IL (1) IL268401A (ja)
MX (1) MX2019007984A (ja)
SG (1) SG11201905259SA (ja)
WO (1) WO2018141894A1 (ja)
ZA (1) ZA201903796B (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20180069839A (ko) 2015-10-08 2018-06-25 자임워크스 인코포레이티드 카파 및 람다 경사슬을 포함하는 항원-결합 폴리펩티드 구조체 및 이의 용도

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014150973A1 (en) * 2013-03-15 2014-09-25 Eli Lilly And Company Methods for producing fabs and bi-specific antibodies
WO2016087650A1 (en) * 2014-12-05 2016-06-09 Merck Patent Gmbh Domain-exchanged antibody

Family Cites Families (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4816567A (en) 1983-04-08 1989-03-28 Genentech, Inc. Recombinant immunoglobin preparations
AU777192B2 (en) * 1994-05-27 2004-10-07 Ariad Gene Therapeutics, Inc. Immunosuppressant target proteins
ES2442615T5 (es) * 2002-07-18 2023-03-16 Merus Nv Producción recombinante de mezclas de anticuerpos
SI1713503T1 (sl) * 2004-02-10 2013-12-31 The Regents Of The University Of Colorado, A Body Corporate Inhibicija faktorja B, alternativna komplementa pot in relevantni postopki
EP1999154B1 (en) 2006-03-24 2012-10-24 Merck Patent GmbH Engineered heterodimeric protein domains
BRPI0815567B8 (pt) 2007-07-17 2021-05-25 Merck Patent Gessellschaft Mit Beschraenkter Haftung anticorpos híbridos anti-alfa v-integrina projetados, proteína de fusão e composição farmacêutica
CN101348475B (zh) * 2007-07-20 2011-03-30 重庆人本药物研究院 一种奥利司他合成方法、中间体化合物及其制备方法
RU2570633C2 (ru) 2009-05-27 2015-12-10 Ф.Хоффманн-Ля Рош Аг Три- или тетраспецифические антитела
JP6167040B2 (ja) * 2010-11-05 2017-07-19 ザイムワークス,インコーポレイテッド Fcドメイン中に突然変異を有する、安定したヘテロ二量体抗体の設計
PL2773671T3 (pl) * 2011-11-04 2022-01-24 Zymeworks Inc. Projekt stabilnego przeciwciała heterodimerycznego z mutacjami w domenie fc
RU2639287C2 (ru) * 2012-06-27 2017-12-20 Ф. Хоффманн-Ля Рош Аг Способ отбора и получения высокоселективных и мультиспецифичных нацеливающих групп с заданными свойствами, включающих по меньшей мере две различные связывающие группировки, и их применения
UY35148A (es) * 2012-11-21 2014-05-30 Amgen Inc Immunoglobulinas heterodiméricas

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014150973A1 (en) * 2013-03-15 2014-09-25 Eli Lilly And Company Methods for producing fabs and bi-specific antibodies
WO2016087650A1 (en) * 2014-12-05 2016-06-09 Merck Patent Gmbh Domain-exchanged antibody

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
NATURE BIOTECHNOLOGY, vol. 32, no. 2, JPN6021044780, February 2014 (2014-02-01), pages 191 - 198, ISSN: 0004777538 *

Also Published As

Publication number Publication date
JP7123063B2 (ja) 2022-08-22
CN110382537A (zh) 2019-10-25
CN110382537B (zh) 2023-07-25
IL268401A (en) 2019-09-26
US20190352429A1 (en) 2019-11-21
BR112019013648A2 (pt) 2020-01-21
ZA201903796B (en) 2022-11-30
SG11201905259SA (en) 2019-08-27
KR20190113870A (ko) 2019-10-08
AU2018214208A1 (en) 2019-07-11
WO2018141894A1 (en) 2018-08-09
RU2019119391A3 (ja) 2021-05-25
MX2019007984A (es) 2019-10-15
EP3577137A1 (en) 2019-12-11
CA3050988A1 (en) 2018-08-09
RU2019119391A (ru) 2021-03-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10982008B2 (en) Domain-exchanged antibody
US10294307B2 (en) Methods for producing fabs and bi-specific antibodies
US11623963B2 (en) Cysteine engineered antigen-binding molecules
WO2020135556A1 (zh) 抗体融合蛋白、制备方法及其应用
US20240092899A1 (en) Bispecific antibody
CN107949570A (zh) 多特异性结合蛋白
JP7076571B2 (ja) 細胞エンゲージ結合分子
JP7123063B2 (ja) 抗体ドメインの好ましい対形成
TW202400642A (zh) 抗CD28x抗PSMA抗體
WO2022125986A1 (en) Orthogonal mutations for heterodimerization
KR20220017909A (ko) 단백질 다량체화를 위한 변이체 도메인 및 그의 분리
RU2792440C2 (ru) Предпочтительное спаривание доменов антител
RU2792440C9 (ru) Предпочтительное спаривание доменов антител
WO2016087648A1 (en) Immunoglobulins with incorporated heterologous ch3 domains resulting in a prolonged half-life
TW202346337A (zh) Ilt3及cd3結合劑以及其使用方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210201

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20211105

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20211112

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220121

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20220121

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220523

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220711

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220715

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220809

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7123063

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150