詳細な説明
本開示のいくつかの態様は、EZH2阻害剤による、EZH2(zeste2ポリコーム抑制複合体2のエンハンサー)機能に依存する細胞増殖性障害、例えば癌の処置に関して有用な処置様式、例えば方法、戦略、組成物、組み合わせ、及び剤形を提供する。本開示のいくつかの態様は、細胞増殖性障害の状態のサブタイプ、例えば特定の癌のサブタイプがEZH2機能に依存し、したがってEZH2阻害剤で効果的に処置できるという認識に基づいている。いくつかの実施形態では、EZH2依存性サブタイプは、幹細胞、幹様細胞、前駆細胞、又は未成熟細胞に由来する過剰増殖性細胞又は細胞集団、例えば、癌細胞又は癌細胞集団の存在によって特徴付けられ、少なくとも1つの過剰増殖性細胞又は細胞集団、例えば少なくとも1つの癌細胞は、癌細胞をEZH2機能に依存させる遺伝子病変及び/又はエピジェネティック病変を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子病変又はエピジェネティック病変は、1つ以上のSWI/SNF複合体メンバー、例えば、INI−1(SMARCB1、SWI/SNF関連、マトリックス関連、アクチン依存性クロマチン調節因子、サブファミリーb、メンバー1としても知られる)、SMARCA2(SWI/SNF関連、マトリックス関連、アクチン依存性クロマチン調節因子、サブファミリーa、メンバー2;時にはBRM、SNF2L2、又はSNF2LAとも呼ばれる)、及び/又はSMARCA4(SWI/SNF関連、マトリックス関連、アクチン依存性クロマチン調節因子、サブファミリーa、メンバー4;時にはブラフマーホモログ、BRG1、CSS4、MRD16、RTPS2、SNF2L4、又はSNF2LBとも呼ばれる)機能の喪失をもたらす。例えば、いくつかの実施形態では、細胞増殖性障害は、SMARCA2及び/又はSMARCA4の機能の喪失をもたらす遺伝子病変又はエピジェネティック病変によって特徴付けられる。
本開示のいくつかの態様は、特定の細胞増殖性障害、例えばSMARCA2及び/又はSMARCA4の機能の喪失を示すいくつかの癌がEZH2機能に依存し、したがってEZH2阻害剤による処置に感受性があるという認識に基づいている。例えば、本開示のいくつかの態様は、幹細胞由来、幹様細胞由来、又は前駆細胞由来とSMARCA2機能又はSMARCA4機能の喪失とによって特徴付けられる固形腫瘍の処置のための処置様式、例えば方法、戦略、組成物、組み合わせ、及び剤形を提供する。
機能の喪失又は疾患若しくは障害の状態に関連しない配列変異体及びアイソフォームを含む、SWI/SNF複合体メンバーのゲノム配列、mRNA配列、及びタンパク質配列は、当業者に公知である。SMARCA2及びSMARCA4の例示的で非限定的な配列は、本明細書中、例えば以下の「例示的な配列」のセクションで示される。追加の適切な配列、例えば他の種の配列及び機能的配列変異体は、当業者に公知であり、本開示は、これに関して限定されない。
本開示のいくつかの態様は、SMARCA4及びSMARCA2機能の喪失によって特徴付けられる特定の細胞増殖性障害では、SMARCA4の機能が遺伝子変異、典型的にはSMARCA4遺伝子の2対立遺伝子変異の結果として失われるが、SMARCA2機能の喪失は、遺伝子変異に関連するのではなくエピジェネティックサイレンシングに関連しているという認識に基づいている。したがって、本開示のいくつかの態様は、EZH2阻害剤による処置に感受性の細胞増殖性障害のいくつかの実施形態では、SMARCA2機能の喪失が、例えばSMARCA2調節配列の過剰メチル化によるSMARCA2遺伝子発現のエピジェネティックダウンレギュレーション又はサイレンシングの結果であることを提供する。本開示のいくつかの態様は、細胞をEZH2阻害剤、例えばタゼメトスタットに接触させることによって、過剰増殖性細胞、例えば遺伝子変異によって媒介されるSMARCA4機能の喪失も示す悪性細胞におけるエピジェネティックに抑制されたSMARCA2発現を再活性化することを含む方法を提供する。典型的には、そのような過剰増殖性細胞におけるEZH2阻害及びSMARCA2再活性化は、細胞の生存及び/又は増殖の阻害をもたらす。いくつかの臨床実施形態では、EZH2阻害剤による、SMARCA2機能及びSMARCA4機能の喪失によって特徴付けられる過剰増殖性疾患を有する患者の処置は、過剰増殖の阻害及び/又は過剰増殖性細胞の消失をもたらす。
SWI/SNF複合体のメンバーをコードする遺伝子の障害は、様々な癌で既に報告されている。図1は、そのような障害が報告されたいくつかの例示的な悪性適応症を記載する。例えば遺伝子病変に基づいたSMARCA2及び/又はSMARCA4の喪失は、例えば、いくつかの固形腫瘍適応症、例えば、特定の悪性ラブドイド腫瘍(例えば、悪性ラブドイド腫瘍卵巣(MRTO)、高カルシウム血症型の卵巣の小細胞癌(SCCOHT);例えば、全内容が参照により本明細書に組み込まれ、2016年9月26日に提出されたPCT出願PCT/US2016/053673号明細書を参照)、及び特定の肺癌サブタイプ(例えば、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、腺肉腫、扁平上皮肉腫)などを含む、様々な細胞増殖性疾患で観察された。SMARCA2及び/又はSMARCA4の機能の喪失によって特徴付けられる他の細胞増殖性障害は、当業者に公知であるか、又は本開示に基づいて日常的な実験のみで当業者が確認可能であろう。本開示は、これに関して限定されない。
以下の表1Aは、NSCLC原発性腫瘍におけるSMARCA2/SMARCA4喪失の頻度の概要を提供する。
観察された3〜10%のSMARCA2/SMARCA4二重喪失の頻度は、米国だけで年間7,000〜23,000件のNSCLC症例に相当する。本開示のいくつかの態様は、SMARCA4及びSMARCA2タンパク質の喪失が、特定の癌、例えばNSCLCにおいて、コード遺伝子が機能喪失変異を含む頻度よりも著しく高いという驚くべき発見に基づいている。
原因となるゲノム変異のないタンパク質機能の喪失は、ゲノム配列分析によって検出することができない。したがって、DNA配列分析に基づいてSMARCA2及び/又はSMARCA4の機能の喪失に関連する過剰増殖性疾患を分類するための従来の方法は、偽陰性の結果になりやすく、典型的には、SMARCA2/SMARCA4機能の二重喪失の頻度を過小評価する。本開示のいくつかの態様は、SMARCA2及び/又はSMARCA4のタンパク質発現レベル又はタンパク質機能を分析することによって、例えば癌を有する対象から得られた腫瘍生検において、過剰増殖性細胞又は細胞集団におけるSMARCA2及びSMARCA4の状態を正確に決定する方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、癌、例えば肺癌を有する対象から得られた生体試料におけるSMARCA2及び/又はSMARCA4タンパク質のレベルを検出すること、及びこのレベルを参照レベル又は対照レベル、例えば健康な非悪性細胞で観察又は見込まれるレベルと比較することを含む患者層別化方法が提供される。
いくつかの実施形態では、この方法は、免疫学に基づく方法、例えば、免疫組織化学、ウェスタンブロット、ELISA、又は他の適切なアッセイによって、対象から得られた試料におけるSMARCA2及び/又はSMARCA4タンパク質のレベルを検出することを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、例えば、試料におけるSMARCA2及び/又はSMARCA4の酵素活性を決定するアッセイによって、タンパク質動態アッセイに基づいてSMARCA2及び/又はSMARCA4活性のレベルを検出することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、従来のDNA配列決定ベースの方法よりも高い精度で、例えば対象から得られた悪性細胞において、SMARCA2/SMARCA4二重喪失を示す過剰増殖細胞又は細胞集団を検出することができる。
いくつかの実施形態では、この方法は、SMARCA2及び/又はSMARCA4のタンパク質レベルが、参照レベル又は対照レベルと比較して減少した場合に、EZH2阻害剤による処置に感受性があると癌、例えばNSCLCなどの肺癌を分類することを含む。例えば、いくつかの実施形態では、方法は、SMARCA2及び/又はSMARCA4タンパク質のタンパク質レベルが参照又は対照レベルと比較して減少した場合は、癌を、EZH2阻害剤による処置に感受性があると分類することを含む。いくつかの実施形態では、癌がSMARCA2/SMARCA4二重喪失を示し、SMARCA2の機能又はSMARCA4の機能、又はその両方がそれぞれのコード遺伝子における機能の喪失の変異なしで失われた場合は、癌は、EZH2阻害剤による処置に感受性があると分類される。例えば、いくつかの実施形態では、この方法は、SMARCA4遺伝子のゲノム変異に基づいたSMARCA4機能の喪失、及びSMARCA2遺伝子のゲノム変異に関連しないSMARCA2機能の喪失によって特徴付けられる癌を、EZH2阻害剤による処置に感受性があると分類することを含む。別の例として、いくつかの実施形態では、この方法は、SMARCA2遺伝子のゲノム変異に基づいたSMARCA2機能の喪失、及びSMARCA4遺伝子のゲノム変異に関連しないSMARCA4機能の喪失によって特徴付けられる癌を、EZH2阻害剤による処置に感受性があると分類することを含む。
いくつかの実施形態では、EZH2阻害剤、例えばタゼメトスタットを、SMARCA2/SMARCA4二重喪失を示す過剰増殖性細胞を有する対象に投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、幹細胞由来、幹様細胞由来、又は前駆細胞由来であり、かつSMARCA2/SMARCA4二重喪失を示す固形腫瘍を有し、SMARCA2及び/又はSMARCA4の喪失は、それぞれのコード遺伝子の機能喪失変異と関連しない。例えば、いくつかの実施形態では、この方法は、SMARCA4遺伝子のゲノム変異に基づくSMARCA4機能の喪失、及びSMARCA2遺伝子のゲノム変異に関連しないSMARCA2機能の喪失によって特徴付けられる癌、例えば肺癌、例えばNSCLCなどを有する対象にEZH2阻害剤を投与することを含む。別の例として、いくつかの実施形態では、この方法は、SMARCA2遺伝子のゲノム変異に基づくSMARCA2機能の喪失、及びSMARCA4遺伝子のゲノム変異に関連しないSMARCA4機能の喪失によって特徴付けられる癌を有する対象にEZH2阻害剤を投与することを含む。
本開示のいくつかの態様は、EZH2阻害が、SMARCA2及び/又はSMARCA4の機能の喪失、例えば、細胞における少なくとも1つの機能喪失病変がエピジェネティック病変であるSMARCA2及びSMARCA4の二重喪失によって特徴付けられる細胞の過剰増殖状態を阻害又は消失させ得ることを提供する。対象における細胞の過剰増殖状態は、典型的には、細胞増殖性障害、例えば癌状態又は前癌状態に関連している。本明細書で提供される処置様式で処置することができる細胞増殖性障害としては、すべての形態の細胞増殖性障害、例えば、癌、前癌又は前癌状態、良性腫瘍又は病変、悪性腫瘍又は病変、及び転移性病変が挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞増殖性障害は、過形成、化生、又は異形成によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、細胞増殖性疾患は、原発性腫瘍によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、原発性腫瘍は固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、原発性腫瘍は液性腫瘍である。いくつかの実施形態では、細胞増殖性疾患は、悪性腫瘍又は腫瘍によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、細胞増殖性疾患は、続発性腫瘍又は転移性腫瘍によって特徴付けられる。
本開示のいくつかの態様は、SMARCA2及び/又はSMARCA4の機能の喪失、例えば、細胞における少なくとも1つの機能喪失病変がエピジェネティック病変であるSMARCA2機能及びSMARCA4機能の二重喪失によって特徴付けられる肺の細胞増殖性障害の処置に適した処置様式を提供する。肺の細胞増殖性障害は、肺の細胞が関与する細胞増殖性障害である。肺の細胞増殖性障害としては、肺細胞に影響を及ぼすすべての形態の細胞増殖性障害を挙げることができる。肺の細胞増殖性障害としては、肺癌、肺の前癌又は前癌状態、肺の良性腫瘍又は病変、及び肺の悪性腫瘍又は病変、及び肺以外の体内の組織及び器官の転移性病変を挙げることができる。一態様では、本開示の組成物は、肺癌又は肺の細胞増殖性障害を処置するために使用してもよいし、又はそのような目的に適した候補を特定するために使用してもよい。肺癌としては、あらゆる形態の肺の癌を挙げることができる。肺癌としては、悪性肺新生物、上皮内癌、典型的なカルチノイド腫瘍、及び非定型カルチノイド腫瘍を挙げることができる。肺癌としては、小細胞肺癌(「SCLC」)、非小細胞肺癌(「NSCLC」)、扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、大細胞癌、腺扁平上皮癌、及び中皮腫を挙げることができる。肺癌としては、「瘢痕癌」、気管支肺胞癌、巨細胞癌、紡錘細胞癌、及び大細胞神経内分泌癌を挙げることができる。肺癌としては、組織学的不均一性及び超微細構造不均一性を有する肺新生物(例えば、混合細胞型)を挙げることができる。
肺の細胞増殖性障害としては、肺細胞に影響を及ぼす細胞増殖性障害のすべての形態を挙げることができる。肺の細胞増殖性障害としては、肺癌、肺の前癌状態を挙げることができる。肺の細胞増殖性障害としては、肺の過形成、化生、及び異形成を挙げることができる。肺の細胞増殖性障害としては、アスベスト誘発過形成、扁平上皮化生、及び良性反応性中皮化生を挙げることができる。肺の細胞増殖性障害としては、円柱上皮の重層扁平上皮での置換、及び粘膜異形成を挙げることができる。タバコの煙及びアスベストなどの吸入された有害環境要因にさらされた個人は、肺の細胞増殖性障害を発症するリスクが高くなり得る。個人に肺の細胞増殖性障害を発症させやすくし得る従来の肺疾患としては、慢性間質性肺疾患、壊死性肺疾患、強皮症、リウマチ様疾患、サルコイドーシス、間質性肺炎、結核、反復性肺炎、特発性肺線維症、肉芽腫、石綿肺、線維化性肺胞炎、及びホジキン病を挙げることができる。
本開示のいくつかの態様は、肺癌、例えば、SMARCA2及び/又はSMARCA4の機能の喪失、例えば、細胞における少なくとも1つの機能喪失病変がエピジェネティック病変であるSMARCA2機能及びSMARCA4機能の二重喪失によって特徴付けられる肺癌の処置に適した処置様式を提供する。肺癌は、世界中の癌関連死の最も一般的な原因である。米国だけで年間約225,000件の肺癌診断の新規症例がある。肺癌の約85〜90%は、非小細胞肺癌(NSCLC)として特徴付けられ、多様な遺伝子ドライバー変異を示す。肺癌の処置は、化学療法から標的療法に進化してきた。しかしながら、新しい処置様式、例えば方法、戦略、組成物、組み合わせ、及び剤形、並びに効率的な患者層別化のための多数の満たされていない臨床上の要求が今なお存在する。これは、後期化学療法を受けている患者に特に当てはまる。ごく最近開発された分子標的療法は、腺癌(例えば、非扁平上皮癌)の処置に最も適しているが、他の肺癌サブタイプには効果的な標的治療を利用することができない。
NSCLCの患者の層別化及び臨床管理のための例示的なパラダイムの概要が、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、Thomas et al. Nature Reviews 2016に記載されている。以下の図式1は、第1選択、第2選択、又は第3選択の処置におけるいくつかの例示的な処置様式の概要を説明するためにThomasらのものから作成された。以下の図式は、臨床医によって使用される特定の例示的な処置様式を示すためにここに含められたものであり、本開示の範囲を限定するものではなく、他の適切な患者層別化及び処置様式が当業者に公知であることを理解されたい。
従来の標的処置様式の初期治療レジメンでは良好な反応がしばしば観察されるが、そのような療法に対する耐性が、大部分の症例で最終的に発現し、抵抗性又は難治性疾患を発症する患者の処置の選択肢は限られている。新しい標的処置様式、例えば免疫チェックポイント阻害剤は、特定の肺癌適応症に対して開発されているが、第1選択の処置、及び標準的な治療処置戦略に耐性のある肺癌の処置に効果的な処置選択肢のための要求が今なお存在する。
本開示のいくつかの態様は、SMARCA2及び/又はSMARCA4の機能の喪失、例えば、細胞における少なくとも1つの機能喪失病変がエピジェネティック病変であるSMARCA2及びSMARCA4の二重喪失によって特徴付けられる血液系の細胞増殖性障害の処置に適した処置様式を提供する。血液系の細胞増殖性障害は、血液系の細胞が関与する細胞増殖性障害である。本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物に適した血液系の細胞増殖性障害としては、リンパ腫、白血病、骨髄性新生物、肥満細胞性新生物、骨髄異形成、良性単クローン性免疫グロブリン血症、リンパ腫様肉芽腫症、リンパ腫様丘疹症、真性赤血球増加症、慢性骨髄性白血病、原発性骨髄線維症、及び本態性血小板血症を挙げることができる。血液系の細胞増殖性障害としては、血液系の細胞の過形成、異形成、及び化生を挙げることができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物は、本開示の血液癌又は本開示の血液細胞増殖性障害からなる群から選択される癌を処置するために使用される。本開示の血液癌としては、多発性骨髄腫、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、小児リンパ腫、及びリンパ球及び皮膚起源のリンパ腫を含む)、白血病(小児白血病、有毛細胞白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病(chronic myelocytic leukemia)、慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia)、及び肥満細胞白血病を含む)、骨髄性新生物、及び肥満細胞新生物を挙げることができる。
本開示のいくつかの態様は、癌の処置に適した処置様式を提供する。いくつかの実施形態では、癌は、SMARCA2及び/又はSMARCA4の機能の喪失、例えば、細胞における少なくとも1つの機能喪失病変がエピジェネティック病変であるSMARCA2及びSMARCA4の二重喪失によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、癌は、幹細胞由来、幹様細胞由来、又は前駆細胞由来の細胞によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、癌は低分化癌である。いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、癌は、続発性腫瘍又は転移性腫瘍によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、癌は、化学療法に抵抗性又は難治性である。いくつかの実施形態では、癌は、第1選択、第2選択、及び/又は第3選択の処置に抵抗性又は難治性である。いくつかの実施形態では、癌は免疫細胞に由来する。いくつかの実施形態では、癌は、リンパ腫の形態、例えば、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。いくつかの実施形態では、癌は、副腎皮質癌、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、肛門直腸癌、肛門管癌、虫垂癌、小児小脳星状細胞腫、小児大脳星状細胞腫、基底細胞癌、皮膚癌(非メラノーマ性)、胆道癌、肝外胆管癌、肝内胆管癌、膀胱癌(bladder cancer)、膀胱癌(urinary bladder cancer)、骨及び関節癌、骨肉腫及び悪性線維性組織球腫、脳癌、脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小脳星状細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視覚路及び視床下部神経膠腫、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍、胃腸、神経系癌、神経系リンパ腫、中枢神経系癌、中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、小児癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、リンパ系腫瘍、菌状息肉腫、Seziary症候群、子宮内膜癌、食道癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃癌(gastric(stomach)cancer)、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍神経膠腫、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内黒色腫、眼癌、島細胞腫瘍(膵内分泌部)、カポジ肉腫、腎臓癌、腎癌、腎臓癌、喉頭癌、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞白血病、口唇及び口腔癌、肝癌、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、Waldenstramマクログロブリン血症、髄芽腫、メラノーマ、眼内(眼)メラノーマ、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、中皮腫、転移性頸部扁平上皮癌、口癌、舌癌、多発性内分泌腫瘍症候群、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性障害、上咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌(oral cancer)、口腔癌(oral cavity cancer)、中咽頭癌、卵巣癌、上皮性卵巣癌、卵巣低悪性度腫瘍、膵癌、島細胞 膵癌、副鼻腔及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎盂及び尿管移行上皮癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、カポジ肉腫、軟部組織肉腫、類上皮肉腫、滑膜肉腫、子宮癌、子宮肉腫、皮膚癌(非メラノーマ性)、皮膚癌(メラノーマ)、メルケル皮膚癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、腎盂及び尿管並びに他の泌尿器の移行上皮癌、妊娠性絨毛性腫瘍、尿道癌、子宮内膜子宮癌、子宮肉腫、子宮体部癌、腟癌、外陰癌、又はウィルムス腫瘍である。
いくつかの実施形態では、本開示の戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物で処置することができる癌は充実性腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、本開示の戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物で処置することができる癌は、上皮起源の細胞を含むか、又はこれに由来する。いくつかの実施形態では、本開示の戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物で処置することができる癌は原発腫瘍である。いくつかの実施形態では、本開示の戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物で処置することができる癌は二次性腫瘍である。いくつかの実施形態では、癌は転移性である。
本開示のいくつかの態様は、American Joint Committee on Cancer (AJCC)TNM分類体系に従ってステージ分類された癌の処置に適した処置様式を提供し、ここで、腫瘍(T)には、TX、T1、T1mic、Tla、T1b、T1c、T2、T3、T4、T4a、T4b、T4c、又はT4dのステージが割り当てられ;所属リンパ節(N)には、NX、N0、N1、N2、N2a、N2b、N3、N3a、N3b、又はN3cのステージが割り当てられ;そして遠隔転移(M)には、MX、M0、又はMlのステージが割り当てられ得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される様式での処置に適した癌は、American Joint Committee on Cancer (AJCC)分類に従ってステージI、ステージIIΑ、ステージIIΒ、ステージIIIA、ステージIIIB、ステージIIIC、又はステージIVとしてステージ分類された癌である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される様式での処置に適した癌は、AJCC分類に従ってグレードGX(例えば、グレードを評価できない)、グレード1、グレード2、グレード3、又はグレード4としてグレードが割り当てられる。いくつかの実施形態では、処置されるべき癌は、AJCC病理学的分類(pN)に従ってpNX、pN0、PN0(I−)、PN0(I+)、PN0(mol−)、PN0(mol+)、PN1、PN1(mi)、PN1a、PN1b、PN1c、pN2、pN2a、pN2b、pN3、pN3a、pN3b、又はpN3cのステージ分類される。
本開示のいくつかの態様は、直径が約2センチメートル以下であると決定された腫瘍を含む癌の処置に適した処置様式を提供する。いくつかの実施形態では、処置されるべき癌は、直径が約2〜約5センチメートルであると決定された腫瘍を含み得る。いくつかの実施形態では、処置されるべき癌は、直径が約3センチメートル以上であると決定された腫瘍を含み得る。いくつかの実施形態では、処置されるべき癌は、直径が5センチメートルを超えていると決定された腫瘍を含み得る。いくつかの実施形態では、処置されるべき癌は、顕微鏡的外観によって、及び高分化、中分化、低分化、又は未分化として分類され得る。いくつかの実施形態では、処置されるべき癌は、有糸分裂数(例えば、細胞分裂の量)又は核多形性(例えば、細胞の変化)に関連するとして顕微鏡的外観によって分類され得る。いくつかの実施形態では、処置されるべき癌は、壊死の領域(例えば、死にかけている又は変性している細胞の領域)に関連するとして顕微鏡的外観によって分類され得る。いくつかの実施形態では、処置されるべき癌は、異常な核型を有する、異常な数の染色体を有する、又は外観が異常な1つ以上の染色体を有するとして分類され得る。いくつかの実施形態では、処置されるべき癌は、異数体、3倍体、4倍体であるか、又は変化した倍数体を有するとして分類され得る。いくつかの実施形態では、処置されるべき癌は、染色体転座、又は染色体全体の欠失若しくは重複、又は染色体の一部の欠失、重複、若しくは増幅の領域を有するとして分類され得る。
いくつかの実施形態では、処置されるべき癌は、DNAサイトメトリー、フローサイトメトリー、又はイメージサイトメトリーによって評価することができる。いくつかの実施形態では、処置されるべき癌は、細胞分裂の合成期(例えば、細胞分裂のS期)において10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%の細胞を有するとして分類することができる。いくつかの実施形態では、処置されるべき癌は、低S期画分又は高S期画分を有するとして分類することができる。
いくつかの実施形態では、本開示は、癌の処置に有用な処置様式を提供する。癌の処置は、腫瘍サイズの縮小をもたらし得る。腫瘍サイズの縮小は、「腫瘍退縮」と呼ばれることもある。好ましくは、本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物による処置後、腫瘍サイズは、処置前のサイズと比較して5%以上縮小する;より好ましくは、腫瘍サイズは10%以上縮小する;より好ましくは20%以上縮小する;より好ましくは30%以上縮小する;より好ましくは40%以上縮小する;より一層好ましくは50%以上縮小する;最も好ましくは75%以上縮小する。腫瘍サイズは、再現性のある任意の測定手段によって測定することができる。腫瘍サイズは、腫瘍の直径として測定することができる。
癌の処置は、腫瘍体積の減少をもたらし得る。好ましくは、本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物による処置後、腫瘍体積は、処置前のサイズに対して5%以上減少する;より好ましくは、腫瘍体積は10%以上減少する;より好ましくは20%以上減少する;より好ましくは30%以上減少する;より好ましくは40%以上減少する;より一層好ましくは50%以上減少する;最も好ましくは75%以上減少する。腫瘍体積は、任意の再現性のある測定手段によって測定することができる。
いくつかの実施形態では、癌の処置は、腫瘍の数の減少をもたらす。好ましくは、本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物による処置後、腫瘍の数は、処置前の数に対して5%以上減少する;より好ましくは、腫瘍の数は10%以上減少する;より好ましくは20%以上減少する;より好ましくは30%以上減少する;より好ましくは40%以上減少する;より一層好ましくは50%以上減少する;最も好ましくは75%以上減少する。腫瘍の数は、任意の再現性のある測定手段によって測定することができる。腫瘍の数は、肉眼又は指定倍率で見える腫瘍を数えることで測定することができる。好ましくは、指定倍率は、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、又は50倍である。
いくつかの実施形態では、癌の処置は、原発性腫瘍部位から離れた他の組織又は器官における転移性病変の数の減少をもたらし得る。好ましくは、本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物による処置後、転移病変の数は、処置前の数と比較して5%以上減少する;より好ましくは、転移病変の数は10%以上減少する;より好ましくは20%以上減少する;より好ましくは30%以上減少する;より好ましくは40%以上減少する;より一層好ましくは50%以上減少する;最も好ましくは75%以上減少する。転移性病変の数は、任意の再現性のある測定手段によって測定することができる。転移性病変の数は、肉眼又は指定倍率で見える転移性病変を数えることで測定することができる。好ましくは、指定倍率は、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、又は50倍である。
いくつかの実施形態では、癌の処置は、担体のみが投与された集団と比較して、処置された対象の集団の平均生存期間の延長をもたらし得る。好ましくは、本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物による処置後、平均生存期間は、30日以上;より好ましくは60日以上;より好ましくは90日以上;最も好ましくは120日以上延長される。集団の平均生存期間の延長は、任意の再現性のある手段によって測定することができる。集団の平均生存期間の延長は、例えば、活性化合物による処置の開始後の集団の平均生存期間を計算することによって測定することができる。集団の平均生存期間の延長は、例えば、活性化合物による処置の最初の回の完了後の集団の平均生存期間を計算することによって測定することもできる。
いくつかの実施形態では、癌の処置は、処置されていない対象の集団と比較して、処置された対象の集団の平均生存期間の延長をもたらし得る。好ましくは、本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物による処置後、平均生存期間は、30日以上;より好ましくは60日以上;より好ましくは90日以上;最も好ましくは120日以上延長される。集団の平均生存期間の延長は、任意の再現性のある手段によって測定することができる。集団の平均生存期間の延長は、例えば、活性化合物による処置の開始後の集団の平均生存期間を計算することによって測定することができる。集団の平均生存期間の延長は、例えば、活性化合物による処置の最初の回の完了後の集団の平均生存期間を計算することによっても測定することができる。
いくつかの実施形態では、癌の処置は、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、類似体、又は誘導体ではない薬物による単剤療法を受けた集団と比較して、処置された対象の集団の平均生存期間の延長をもたらし得る。好ましくは、本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物による処置後、平均生存期間は30日以上;より好ましくは60日以上;より好ましくは90日以上;最も好ましくは120日以上延長される。集団の平均生存期間の延長は、任意の再現性のある手段によって測定することができる。集団の平均生存期間の延長は、例えば、活性化合物による処置開始後の集団の平均生存期間を計算することによって測定することができる。集団の平均生存期間の延長は、例えば、活性化合物による処置の最初の回の完了後の集団の平均生存期間を計算することによっても測定することができる。
いくつかの実施形態では、癌の処置は、担体のみが投与された集団と比較して、処置された対象の集団の死亡率の低下をもたらし得る。癌の処置は、処置されていない集団と比較して、処置された対象の集団の死亡率の低下をもたらし得る。癌の処置は、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、類似体、又は誘導体ではない薬物との単独療法を受けた集団と比較して、処置された対象の集団の死亡率の低下をもたらし得る。好ましくは、本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物による処置後、死亡率は、2%以上;より好ましくは5%以上;より好ましくは10%以上;最も好ましくは25%以上低下する。処置された対象の集団の死亡率の低下は、任意の再現性のある手段によって測定することができる。集団の死亡率の低下は、例えば、活性化合物による処置の開始後の単位時間あたりの集団の疾患関連死の平均数を計算することによって測定することができる。集団の死亡率の低下は、例えば、活性化合物による処置の最初の回の完了後の単位時間あたりの集団の疾患関連死の平均数を計算することによっても測定することができる。
いくつかの実施形態では、癌の処置は、腫瘍成長速度の低下をもたらし得る。好ましくは、本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物による処置後、処置後、腫瘍成長速度は、処置前の数字と比較して少なくとも5%低下する、より好ましくは、腫瘍成長速度は少なくとも10%低下する;より好ましくは少なくとも20%低下する;より好ましくは少なくとも30%低下する;より好ましくは少なくとも40%低下する;より好ましくは少なくとも50%低下する;より一層好ましくは少なくとも50%低下する;最も好ましくは少なくとも75%低下する。腫瘍成長速度は、任意の再現性のある測定手段によって測定することができる。腫瘍成長速度は、単位時間あたりの腫瘍の直径の変化に従って測定することができる。
いくつかの実施形態では、癌の処置は、腫瘍の再成長の低下をもたらし得る。好ましくは、本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物による処置後、処置後、腫瘍の再成長は5%未満である;より好ましくは、腫瘍の再成長は10%未満;より好ましくは20%未満;より好ましくは30%未満;より好ましくは40%未満;より好ましくは50%未満;より一層好ましくは50%未満;最も好ましくは75%未満である。腫瘍の再成長は、任意の再現性のある測定手段によって測定することができる。腫瘍の再成長は、例えば、処置された後の以前の腫瘍の収縮後の腫瘍の直径の増加を測定することによって測定される。腫瘍の再成長の低下は、処置が中止された後に腫瘍が再発しないことによって示される。
いくつかの実施形態では、細胞増殖性障害の処置は、細胞増殖の速度の低下をもたらし得る。好ましくは、本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物による処置後、処置後、細胞増殖の速度は、少なくとも5%低下する;より好ましくは少なくとも10%;より好ましくは少なくとも20%;より好ましくは少なくとも30%;より好ましくは少なくとも40%;より好ましくは少なくとも50%;より一層好ましくは少なくとも50%;最も好ましくは少なくとも75%低下する。細胞増殖の速度は、任意の再現性のある測定手段によって測定することができる。細胞増殖の速度は、例えば、単位時間あたりの組織試料中の分裂細胞の数を測定することによって測定される。
いくつかの実施形態では、細胞増殖性障害の処置は、増殖細胞の割合の低下をもたらし得る。好ましくは、本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物による処置後、処置後、増殖細胞の割合は、少なくとも5%;より好ましくは少なくとも10%;より好ましくは少なくとも20%;より好ましくは少なくとも30%;より好ましくは少なくとも40%;より好ましくは少なくとも50%;より一層好ましくは少なくとも50%;最も好ましくは、少なくとも75%低下する。増殖細胞の割合は、任意の再現性のある測定手段によって測定することができる。好ましくは、増殖細胞の割合は、例えば、組織試料中の非分裂細胞の数に対する分裂細胞の数を定量することによって測定される。増殖細胞の割合は、有糸分裂指数に相当し得る。
いくつかの実施形態では、細胞増殖性障害の処置又は予防は、細胞増殖の領域又はゾーンのサイズの減少をもたらし得る。好ましくは、本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物による処置後、処置後、細胞増殖の領域又はゾーンのサイズは、処置前のサイズに対して少なくとも5%減少する;より好ましくは少なくとも10%減少する;より好ましくは少なくとも20%減少する;より好ましくは少なくとも30%減少する;より好ましくは少なくとも40%減少する;より好ましくは少なくとも50%減少する;より一層好ましくは少なくとも50%減少する;最も好ましくは少なくとも75%減少する。細胞増殖の領域又はゾーンのサイズは、任意の再現性のある測定手段によって測定することができる。細胞増殖の領域又はゾーンのサイズは、細胞増殖の領域又はゾーンの直径若しくは幅として測定することができる。
いくつかの実施形態では、細胞増殖性障害の処置又は予防は、異常な外観又は形態を有する細胞の数又は割合の低下をもたらし得る。好ましくは、本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物による処置後、処置後、異常な形態を有する細胞の数は、処置前の数に対して少なくとも5%低下する;より好ましくは少なくとも10%低下する;より好ましくは少なくとも20%低下する;より好ましくは少なくとも30%低下する;より好ましくは少なくとも40%低下する;より好ましくは少なくとも50%低下する;より一層好ましくは少なくとも50%低下する;最も好ましくは少なくとも75%低下する。異常な細胞の外観又は形態は、任意の再現性のある測定手段によって測定することができる。異常な細胞の形態は、例えば倒立組織培養顕微鏡を使用して、顕微鏡によって測定することができる。異常な細胞の形態は、核多形性の形をとり得る。
いくつかの実施形態では、細胞増殖性障害の処置は、過剰増殖性細胞の死をもたらし得、好ましくは、細胞死は、過剰増殖性細胞集団の細胞数の少なくとも10%の減少をもたらす。より好ましくは、細胞死は、少なくとも20%の減少;より好ましくは少なくとも30%の減少;より好ましくは少なくとも40%の減少;より好ましくは少なくとも50%の減少;最も好ましくは少なくとも75%の減少を意味する。集団の細胞数は、任意の再現性のある手段によって測定することができる。集団の細胞数は、蛍光活性化細胞選別(FACS)、免疫蛍光顕微鏡法、及び光学顕微鏡法によって測定することができる。細胞死を測定する方法は、Li et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 100(5): 2674−8, 2003に示されている通りである。いくつかの実施形態では、細胞死は、アポトーシスによって生じる。
いくつかの実施形態では、EZH2阻害剤をそれを必要とする対象に投与することによる細胞増殖性障害、例えば癌の処置は、以下の1つ以上をもたらす:1つ以上の細胞周期(例:G1、G1/S、G2/M)にある細胞の蓄積、又は細胞の老化の誘導、又は腫瘍細胞の分化の促進による癌細胞の増殖の防止;好ましくは正常細胞での著しい量の細胞死を伴わない、細胞傷害性、壊死、又はアポトーシスを介した癌細胞の細胞死の促進。
本開示の方法の特定の実施形態では、本明細書で提供される処置様式、例えば処置戦略、処置方法、分子アッセイ、組成物、及び組み合わせが、それを必要とする対象、例えば、細胞増殖性障害を有する対象に適用又は投与される。いくつかの実施形態では、対象は癌と診断されている。いくつかの実施形態では、対象は成人である。いくつかの実施形態では、対象は小児対象である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
特定の実施形態では、対象は成人であり、治療有効量のEZH2阻害剤、例えばタゼメトスタットが対象に投与され、この治療有効量は、約100mg〜約1600mgである。特定の実施形態では、対象は成人であり、EZH2阻害剤の治療有効量は、約100mg、約200mg、約400mg、約800mg、又は約1600mgである。特定の実施形態では、対象は成人であり、EZH2阻害剤の治療有効量は、約800mgであり、例えば、1日2回400mgの用量で800mg/日、経口投与される。
特定の実施形態では、対象は小児であり、EZH2阻害剤、例えばタゼメトスタットは、230mg/m2〜600mg/m2(両端の値を含む)の用量で1日2回(BID)投与することができる。特定の実施形態では、対象は小児であり、EZH2阻害剤、230mg/m2〜305mg/m2(両端の値を含む)の用量で1日2回(BID)投与される。特定の実施形態では、対象は小児であり、EZH2阻害剤、240mg/m2の用量で1日2回(BID)投与される。特定の実施形態では、対象は小児であり、EZH2阻害剤、300mg/m2の用量で1日2回(BID)投与される。特定の実施形態では、対象は小児であり、EZH2阻害剤、成人対象への1日2回1600mgの投与後に、定常状態(AUCss)における曲線下面積(AUC)の約60%の用量で投与される。特定の実施形態では、対象は小児であり、EZH2阻害剤、1日当たり約600mg/m2の用量で投与される。特定の実施形態では、対象は小児であり、EZH2阻害剤、1日当たり少なくとも600mg/m2の用量で投与される。特定の実施形態では、対象は小児であり、EZH2阻害剤、成人対象への1日2回800mgの投与後に、定常状態(AUCss)における曲線下面積(AUC)の約80%の用量で投与される。特定の実施形態では、対象は小児であり、EZH2阻害剤、約390mg/m2の用量で1日2回(BID)投与される。特定の実施形態では、対象は小児であり、EZH2阻害剤、少なくとも390mg/m2の用量で1日2回(BID)投与される。特定の実施形態では、対象は小児であり、EZH2阻害剤、300mg/m2〜600mg/m2の用量で1日2回(BID)投与される。
いくつかの実施形態、例えば対象が小児であるいくつかの実施形態では、EZH2阻害剤は、経口懸濁液として製剤化する。
本開示のいくつかの態様は、それを必要とする対象に治療有効量のEZH2阻害剤を投与することによって、細胞増殖性障害、例えば本明細書に記載の癌の処置に適した併用処置様式を提供する。いくつかのそのような併用処置の実施形態では、本明細書で提供される処置様式には、EZH2阻害剤を、それを必要とする対象、例えば細胞増殖障害を有する対象に投与することを含む方法が含まれ、この対象は、追加の治療薬が、EZH2阻害剤の投与に時間的に近接して既に投与された、又は投与されている。いくつかの実施形態では、EZH2阻害剤及び追加の治療薬を対象に投与することを含む処置様式が提供される。いくつかの実施形態では、時間的に近接した投与は、EZH2阻害剤及び追加の治療薬の、任意の順序での互いに数時間以内又は数日以内の連続投与、又は特定の期間にわたるEZH2阻害剤(例えば1日2回)及び追加の治療薬(例えば、1週間に1回)の投与計画(例えば、少なくとも1週間、少なくとも1か月、少なくとも1回の処置など)における重複を指す。
いくつかの実施形態では、本開示は、単剤療法アプローチと比較して、SMARCA2及び/又はSMARCA4の喪失によって特徴付けられる細胞増殖性疾患、例えば癌を有する対象の臨床結果及び/又は予後を改善するのに有用な併用療法戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される併用療法アプローチは、単剤療法と比較して、所望の臨床結果(例えば、部分的又は完全な疾患の寛解、腫瘍成長の抑制、疾患の安定)を達成するために必要な期間の短縮をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される併用療法アプローチは、単剤療法と比較して、より良い臨床結果をもたらす(例えば、完全な寛解対部分的な寛解、疾患の安定対疾患の進行、再発リスクの低下)。
本明細書で使用される「併用処置」、「併用療法」、及び「連携療法」という用語は、互換的に使用され、一般に、本明細書で提供されるEZH2阻害剤及び追加の治療薬を特徴とする処置様式を指す。典型的には、併用処置様式は、治療薬併用の同時作用から有益な効果を提供することを目的とした特定の処置計画の一部である。併用の有益な効果としては、限定されるものではないが、治療薬の併用から生じる薬物動態学的又は薬力学的相互作用を挙げることができる。これらの治療薬の併用投与は、典型的には、規定された期間(通常は、選択される併用に応じて数分間、数時間、数日間、又は数週間)にわたって行われる。いくつかの実施形態では、併用処置は、各治療薬が異なる時間に投与される2つ以上の治療薬の連続的な投与、並びにこれらの治療薬又はその少なくとも2つの実質的に同時の投与を含む。実質的に同時の投与は、例えば、固定比の各治療薬を有する単一剤形又は複数の治療薬の別個の剤形を対象に投与することによって達成することができる。各治療薬の連続投与又は実質的に同時の投与は、限定されるものではないが、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、及び粘膜組織を介した直接投与を含む、任意の適切な経路によって達成することができる。治療薬は、同じ経路又は異なる経路によって投与することができる。治療薬は、同じ投与間隔又は異なる投与間隔に従って投与することができる。例えば、選択された併用の第1の治療薬は静脈内注射によって投与されてもよい一方、併用の他の治療薬は経口投与してもよい。あるいは、例えば、すべての治療薬を経口投与してもよいし、又はすべての治療薬を静脈内注射によって投与してもよい。
いくつかの実施形態では、併用療法は、他の生物活性成分及び非薬物療法(例えば、外科手術又は放射線処置)とのさらなる併用での上記の治療薬の投与も包含する。併用療法が非薬物処置をさらに含む場合、非薬物処置は、治療薬と非薬物処置の併用の相互作用から有益な効果が達成される限り、任意の適切な時点で行うことができる。例えば、適切な場合には、非薬物処置が治療薬の投与から一時的に、ことによると数日間、又はたとえ数週間行われなくても、依然として有益な効果が達成される。
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、化学療法薬(抗新生物薬又は抗増殖薬とも呼ばれる)、例えば、アルキル化剤;抗生物質;代謝拮抗剤;解毒剤;インターフェロン;ポリクローナル又はモノクローナル抗体;EGFR阻害剤;HER2阻害剤;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;ホルモン;有糸分裂阻害剤;MTOR阻害剤;マルチキナーゼ阻害剤;セリン/トレオニンキナーゼ阻害剤;チロシンキナーゼ阻害剤;VEGF/VEGFR阻害剤;タキサン又はタキサン誘導体、アロマターゼ阻害剤、アントラサイクリン、微小管標的薬、トポイソメラーゼ毒薬、分子標的又は酵素の阻害剤(例えば、キナーゼ又はタンパク質メチルトランスフェラーゼ)、シチジン類似体薬若しくは任意の化学療法薬、免疫チェックポイント阻害剤、又は当業者に公知の任意の抗新生物薬若しくは抗増殖薬である。
本明細書で提供される併用処置様式による使用に適した例示的なアルキル化剤としては、限定されるものではないが、シクロホスファミド(Cytoxan; Neosar)、クロラムブシル(Leukeran)、メルファラン(Alkeran);カルムスチン(BiCNU);ブスルファン(Busulfex);ロムスチン(CeeNU)、ダカルバジン(DTIC−Dome);オキサリプラチン(Eloxatin);カルムスチン(Gliadel);イホスファミド(Ifex);メクロレタミン(Mustargen);ブスルファン(Myleran);カルボプラチン(Paraplatin);シスプラチン(CDDP; Platinol);テモゾロミド(Temodar);チオテパ(Thioplex);ベンダムスチン(Treanda);又はストレプトゾシン(Zanosar)が挙げられる。
例示的かつ適切な抗生物質としては、限定されるものではないが、ドキソルビシン(Adriamycin)、ドキソルビシンリポソーム(Doxil);ミトキサントロン(Novantrone);ブレオマイシン(Blenoxane);ダウノルビシン(Cerubidine);ダウノルビシンリポソーム(DaunoXome);ダクチノマイシン(Cosmegen);エピルビシン(Ellence);イダルビシン(Idamycin);プリカマイシン(Mithracin);マイトマイシン(Mutamycin);ペントスタチン(Nipent);又はバルルビシン(Valstar)が挙げられる。
例示的な代謝拮抗剤としては、限定されるものではないが、フルオロウラシル(Adrucil)、カペシタビン(Xeloda);ヒドロキシ尿素(Hydrea);メルカプトプリン(Purinethol);ペメトレキセド(Alimta);フルダラビン(Fludara);ネララビン(Arranon);クラドリビン(Cladribine Novaplus);クロファラビン(Clolar);シタラビン(Cytosar−U);デシタビン(Dacogen);シタラビンリポソーム(DepoCyt);ヒドロキシ尿素(Droxia);プララトレキサート(Folotyn);フロクスウリシン(FUDR);ゲムシタビン(Gemzar);クラドリビン(Leustatin);フルダラビン(Oforta);メトトレキサート(MTX; Rheumatrex);メトトレキサート(Trexall);チオグアニン(Tabloid);TS−1又はシタラビン(Tarabine PFS)が挙げられる。
例示的な解毒剤としては、限定されるものではないが、アミフォスチン(Ethyol)又はメスナ(Mesnex)が挙げられる。
例示的なインターフェロンとしては、限定されるものではないが、インターフェロンα−2b(Intron A)又はインターフェロンα−2a(Roferon−A)が挙げられる。
例示的なポリクローナル又はモノクローナル抗体としては、限定されるものではないが、トラスツズマブ(Harceptin)、オファツムマブ(Arzerra);ベバシズマブ(Avastin);リツキシマブ(Rituxan);セツキシマブ(Erbitux);パニツムマブ(Vectibix);トシツモマブ/ヨウ素131トシツモマブ(Bexxar);アレムツズマブ(Campath);イブリツモマブ(Zevalin; In−111; Y−90 Zevalin);ゲムツズマブ(Mylotarg);エクリズマブ(Soliris)又はデノスマブが挙げられる。
例示的なEGFR阻害剤としては、限定されるものではないが、ゲフィチニブ(Iressa)、ラパチニブ(Tykerb);セツキシマブ(Erbitux);エルロチニブ(Tarceva);パニツムマブ(Vectibix)、PKI−166;カネルチニブ(CI−1033);マツズマブ(EMD 72000)又はEKB−569が挙げられる。
例示的なHER2阻害剤としては、限定されるものではないが、トラスツズマブ(Herceptin)、ラパチニブ(Tykerb)、又はAC−480が挙げられる。
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤としては、限定されるものではないが、ボリノスタット(Zolinza)が挙げられる。
例示的なホルモンとしては、限定されるものではないが、タモキシフェン(Soltamox; Nolvadex)、ラロキシフェン(Evista);メゲストロール(Megace);ロイプロリド(Lupron; Lupron Depot; Eligard; Viadur);フルベストラント(Faslodex);レトロゾール(Femara);トリプトレリン(Trelstar LA; Trelstar Depot);エキセメスタン(Aromasin);ゴセレリン(Zoladex);ビカルタミド(Casodex);アナストロゾール(Arimidex);フルオキシメステロン(Androxy; Halotestin);メドロキシプロゲステロン(Provera; Depo−Provera);エストラムスチン(Emcyt);フルタミド(Eulexin);トレミフェン(Fareston);デガレリクス(Firmagon);ニルタミド(Nilandron);アベレリクス(abarelix)(Plenaxis);又はテストラクトン(Teslac)が挙げられる。
例示的な有糸分裂阻害剤としては、限定されるものではないが、パクリタキセル(Taxol; Onxol; Abraxane)、ドセタキセル(Taxotere);ビンクリスチン(Oncovin; Vincasar PFS);ビンブラスチン(Velban);エトポシド(Toposar; Etopophos; VePesid);テニポシド(Vumon);イキサベピロン(Ixempra);ノコダゾール;エポチロン;ビノレルビン(Navelbine)、カンプトテシン(CPT);イリノテカン(Camptosar);トポテカン(Hycamtin);アムサクリン又はラメラリンD(LAM−D)が挙げられる。
例示的なMTOR阻害剤としては、限定されるものではないが、エベロリムス(Afinitor)又はテムシロリムス(Torisel)、ラパミューン、リダフォロリムス;又はAP23573が挙げられる。
例示的なマルチキナーゼ阻害剤としては、限定されるものではないが、ソラフェニブ(Nexavar)、スニチニブ(Sutent);BIBW 2992;E7080;Zd6474;PKC−412;モテサニブ;又はAP24534が挙げられる。
例示的なセリン/トレオニンキナーゼ阻害剤としては、限定されるものではないが、ルボキシスタウリン、エリル/ファスジル塩酸塩;フラボピリドール;セリシクリブ(CYC202;Roscovitine);SNS−032(BMS−387032);Pkc412;ブリオスタチン;KAI−9803;SF1126;VX−680;Azd1152;Arry−142886(AZD−6244):SCIO−469;GW681323;CC−401;CEP−1347又はPD 332991が挙げられる。
例示的なチロシンキナーゼ阻害剤としては、限定されるものではないが、エルロチニブ(Tarceva)、ゲフィチニブ(Iressa);イマチニブ(Gleevec);ソラフェニブ(Nexavar);スニチニブ(Sutent);トラスツズマブ(Herceptin);ベバシズマブ(Avastin);リツキシマブ(Rituxan);ラパチニブ(Tykerb);セツキシマブ(Erbitux);パニツムマブ(Vectibix);エベロリムス(Afinitor);アレムツズマブ(Campath);ゲムツズマブ(Mylotarg);テムシロリムス(Torisel);パゾパニブ(Votrient);ダサチニブ(Sprycel);ニロチニブ(Tasigna);バタラニブ(Ptk787; ZK222584);CEP−701;SU5614;MLN518;XL999;VX−322;Azd0530;BMS−354825;SKI−606 CP−690;AG−490;WHI−P154;WHI−P131;AC−220;又はAMG888が挙げられる。
例示的なVEGF/VEGFR阻害剤としては、限定されるものではないが、ベバシズマブ(Avastin)、ソラフェニブ(Nexavar);スニチニブ(Sutent);ラニビズマブ;ペガプタニブ;又はバンデチニブが挙げられる。
例示的な微小管標的薬物としては、限定されるものではないが、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロン、及びナベルビンが挙げられる。
例示的なトポイソメラーゼ毒薬としては、限定されるものではないが、テニポシド、エトポシド、アドリアマイシン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリン、エピルビシン、及びイダルビシンが挙げられる。
例示的なタキサン又はタキサン誘導体としては、限定されるものではないが、パクリタキセル及びドセタキソールが挙げられる。
例示的かつ一般的な化学療法剤、抗新生物剤、抗増殖剤としては、限定されるものではないが、アルトレタミン(Hexalen)、イソトレチノイン(Accutane;Amnesteem;Claravis;Sotret);トレチノイン(Vesanoid);アザシチジン(Vidaza);ボルテゾミブ(Velcade);アスパラギナーゼ(Elspar);レバミゾール(Ergamisol);ミトタン(Lysodren);プロカルバジン(Matulane);ペグアスパラガーゼ(Oncaspar);デニロイキンディフティトックス(Ontak);ポルフィマー(Photofrin);アルデスロイキン(Proleukin);レナリドマイド(Revlimid);ベキサロテン(Targretin);サリドマイド(Thalomid);テムシロリムス(Torisel);三酸化ヒ素(Trisenox);ベルテポルフィン(Visudyne);ミモシン(Leucenol);(1Mテガフール−0.4M5−クロロ−2,4−ジヒドロキシピリミジン−1Mオキソン酸カリウム)又はロバスタチンが挙げられる。
いくつかの実施形態では、追加の治療薬が、サイトカイン、例えばG−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)である併用処置様式が提供される。別の態様では、本明細書で提供されるEZH2阻害剤は、放射線療法と併用して投与してもよい。放射線療法は、多剤療法の一部として本明細書で提供されるEZH2阻害剤及び本明細書に記載の別の化学療法薬と併用して施してもよい。さらに別の態様では、本明細書で提供されるEZH2阻害剤は、標準的な化学療法との併用、例えば、限定されるものではないが、CMF(シクロホスファミド、メトトレキサート、及び5−フルオロウラシル)、CAF(シクロホスファミド、アドリアマイシン、及び5−フルオロウラシル)、AC(アドリアマイシン及びシクロホスファミド)、FEC(5−フルオロウラシル、エピルビシン、及びシクロホスファミド)、ACT又はATC(アドリアマイシン、シクロホスファミド、及びパクリタキセル)、リツキシマブ、ゼローダ(カペシタビン)、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、TS−1(モル比1:0.4:1のテガフール、ギメスタット、及びオタスタットカリウム)、カンプトセシン−11(CPT−11、イリノテカン、又はCamptosar(商標))、CHOP(シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、オンコビン、及びプレドニゾン又はプレドニゾロン)、R−CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、オンコビン、プレドニゾン、又はプレドニゾロン)、又はCMFP(シクロホスファミド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、及びプレドニゾン)と併用して投与することができる。
いくつかの好ましい実施形態では、本明細書で提供されるEZH2阻害剤は、受容体キナーゼ又は非受容体キナーゼなどの酵素の阻害剤と共に投与することができる。受容体及び非受容体キナーゼは、例えば、チロシンキナーゼ又はセリン/トレオニンキナーゼである。本明細書に記載されるキナーゼ阻害剤は、小分子、ポリ核酸、ポリペプチド、又は抗体である。
例示的なキナーゼ阻害剤としては、限定されるものではないが、ベバシズマブ(VEGFを標的とする)、BIBW2992(EGFR及びErb2を標的とする)、セツキシマブ/アービタックス(Erb1を標的とする)、イマチニブ/グリベック(Bcr−Ablを標的とする)、トラスツズマブ(Erb2を標的とする)、ゲフィチニブ/イレッサ(EGFRを標的とする)、ラニビズマブ(VEGFを標的とする)、ペガブタニブ(VEGFを標的とする)、エルロチニブ/タルセバ(Erb1を標的とする)、ニロチニブ(Bcr−Ablを標的とする)、ラパチニブ(Erb1及びErb2/Her2を標的とする)、GW−572016/ラパチニブジトシレート(HER2/Erb2を標的とする)、パニツムマブ/ベクティビックス(EGFRを標的とする)、バンデチニブ(RET/VEGFRを標的とする)、E7080(RET及びVEGFRを含む複数を標的とする)、ハーセプチン(HER2/Erb2を標的とする)、PKI−166(EGFRを標的とする)、カネルチニブ/CI−1033(EGFRを標的とする)、スニチニブ/SU−11464/スーテント(EGFR及びFLT3を標的とする)、マツズマブ/Emd7200(EGFRを標的とする)、EKB−569(EGFRを標的とする)、Zd6474(EGFR及びVEGFRを標的とする)、PKC−412(VEGR及びFLT3を標的とする)、バタラニブ/Ptk787/ZK222584(VEGRを標的とする)、CEP−701(FLT3を標的とする)、SU5614(FLT3を標的とする)、MLN518(FLT3を標的とする)、XL999(FLT3を標的とする)、VX−322(FLT3を標的とする)、Azd0530(SRCを標的とする)、BMS−354825(SRCを標的とする)、SKI−606(SRCを標的とする)、CP−690(JAKを標的とする)、AG−490(JAKを標的とする)、WHI−P154(JAKを標的とする)、WHI−P131(JAKを標的とする)、ソラフェニブ/Nexavar(RAFキナーゼ、VEGFR−1、VEGFR−2、VEGFR−3、PDGFR−β、KIT、FLT−3、及びRETを標的とする)、ダサチニブ/スプリセル(BCR/ABL及びSrc)、AC−220(Flt3を標的とする)、AC−480(すべてのHERタンパク質、「panHER」を標的とする)、モテサニブ二リン酸(VEGF1−3、PDGFR、及びc−kitを標的とする)、デノスマブ(RANKLを標的とし、SRCを阻害する)、AMG888(HER3を標的とする)、及びAP24534(Flt3を含む複数を標的とする)が挙げられる。
例示的なセリン/トレオニンキナーゼ阻害剤としては、限定されるものではないが、ラパミューン(mTOR/FRAP1を標的とする)、デフォロリムス(mTORを標的とする)、サーティカン/エベロリムス(mTOR/FRAP1を標的とする)、AP23573(mTOR/FRAP1を標的とする)、Eril/塩酸ファスジル(RHOを標的とする)、フラボピリドール(CDKを標的とする)、セリシクリブ/CYC202/ロスコビトリン(Roscovitrine)(CDKを標的とする)、SNS−032/BMS−387032(CDKを標的とする)、ルボキシスタウリン(PKCを標的とする)、Pkc412(PKCを標的とする)、ブリオスタチン(PKCを標的とする)、KAI−9803(PKCを標的とする)、SF1126(PI3Kを標的とする)、VX−680(オーロラキナーゼを標的とする)、Azd1152(オーロラキナーゼを標的とする)、Arry−142886/AZD−6244(MAP/MEKを標的とする)、SCIO−469(MAP/MEKを標的とする)、GW681323(MAP/MEKを標的とする)、CC−401(JNKを標的とする)、CEP−1347(JNKを標的とする)、及びPD332991(CDKを標的とする)が挙げられる。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるようなEZH2阻害剤及び免疫チェックポイント阻害剤を含む併用処置様式が提供される。免疫チェックポイントタンパク質は、特定の細胞に対する免疫細胞(例えば、T細胞)の作用を阻害する。免疫チェックポイントシグナル伝達は、免疫系の標的細胞(例えば、感染した細胞や悪性細胞)と免疫系エフェクターの標的になっていない細胞(例えば、健康な細胞)とに対する対象の免疫応答のバランスをとる上で重要な役割を果たす。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、免疫系の監視及び破壊からの一部の癌細胞の回避は、異常な免疫チェックポイントシグナル伝達によって媒介され、癌細胞が、宿主の免疫細胞における1つ以上の免疫チェックポイントシグナル伝達経路を活性化させることによって宿主の免疫応答を調節又は無効にすると考えられている。さまざまな免疫チェックポイントシグナル伝達タンパク質、例えば、限定されるものではないが、CTLA4、PD−1、PD−L1、LAG3、B7−H3、及びTim3が特定されており、そのような免疫チェックポイントタンパク質を標的とする免疫チェックポイント阻害剤が開発されてきた。そのような免疫チェックポイント阻害剤は、それらが標的とする免疫チェックポイントシグナル伝達経路の活性を低下又は無効にし、したがって、例えば、適切な免疫系の監視から通常なら逃れる病的細胞に対する対象の免疫応答を高めることができる。例えば、いくつかの免疫チェックポイント阻害剤は、感染細胞又は癌細胞のT細胞媒介攻撃を防ぐ免疫チェックポイントシグナル伝達を効果的に阻害することが報告されている。したがって、本明細書に記載の免疫チェックポイント阻害剤は、免疫系の監視及び悪性細胞又は感染細胞を標的にするエフェクター機能(例えば、T細胞攻撃の形)を有効にする、又は支持する。本明細書で言及されるいくつかの免疫チェックポイント阻害剤は、免疫細胞(例えば、T細胞)上の1つ以上のチェックポイントタンパク質(複数可)に特異的に結合してその活性を阻害するモノクローナル抗体を含む。本開示の免疫チェックポイント阻害剤は、あらゆる種類の癌細胞に対する対象の免疫応答を高めるために使用することができる。
任意のチェックポイントタンパク質を標的とすることができるが、本開示の例示的な免疫チェックポイント阻害剤は、限定されるものではないが、CTLA4、PD−1、PD−L1、LAG3、B7−H3、Tim3、又はそれらの任意の組み合わせを含むタンパク質を標的とする、これらに結合する、及び/又はそれらの活性を阻害することができる。CTLA4を標的とする、これに結合する、及び/又はその活性を阻害する免疫チェックポイント阻害剤としては、イピリムマブ、チシリムマブ、AGEN−1884、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。PD−1及び/又はPD−L1を標的とする、これに結合する、及び/又はその活性を阻害する免疫チェックポイント阻害剤としては、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、BMS−936559、AMP−224、MEDI−0680、TSR−042、BGB−108、STI−1014、KY−1003、ALN−PDL、BGB−A317、KD−033、REGN−2810、PDR−001、SHR−1210、MGD−013、PF−06801591、CX−072、又はその組み合わせを挙げることができる。LAG3を標的とする、これに結合する、及び/又はその活性を阻害する免疫チェックポイント阻害剤としては、IMP−731、LAG−525、BMS−986016、GSK−2831781、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。B7−H3を標的とする、これに結合する、及び/又はその活性を阻害する免疫チェックポイント阻害剤としては、エノビリツズマブ(Enoblituzumab)、1241−8H9、DS−5573、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。Tim3を標的とする、これに結合する、及び/又はその活性を阻害する免疫チェックポイント阻害剤としては、MBG−453を挙げることができる。
本明細書で提供される併用処置様式での使用に適した例示的な免疫チェックポイント阻害剤としては、限定されるものではないが、イピリムマブ、チシリムマブ、AGEN−1884、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、BMS−936559、AMP−224、MEDI−0680、TSR−042、BGB−108、STI−1014、KY−1003、ALN−PDL、BGB−A317、KD−033、REGN−2810、PDR−001、SHR−1210、MGD−013、PF−06801591、CX−072、IMP−731、LAG−525、BMS−986016、GSK−2831781、エノビリツズマブ、1241−8H9、DS−5573、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
例えば、いくつかの実施形態では、細胞増殖性疾患、例えば特定の癌の処置のための併用療法の戦略、処置様式、及び方法が提供され、EZH2阻害剤は、タゼメトスタット又はその薬学的に許容される塩であり、免疫チェックポイント阻害薬はアテゾリズマブである。例えば、いくつかの実施形態では、それを必要とする対象、例えば、増殖性疾患(例えば、癌)を有するか、又はそれと診断されている対象に、治療有効量のタゼメトスタット又はその薬学的に許容される塩、及び治療有効量のアテゾリズマブを投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、細胞増殖性疾患は、肺の細胞増殖性疾患である。いくつかの実施形態では、肺の細胞増殖性疾患は肺癌である。いくつかの実施形態では、肺癌はNSCLCである。いくつかの実施形態では、肺癌はSCLCである。いくつかの実施形態では、肺癌は転移性肺癌である。いくつかの実施形態では、肺癌は、例えば、本明細書に記載されている、又は当技術分野で知られている、又は使用されている第1選択、第2選択、又は第3選択の肺癌処置に抵抗性又は難治性である。いくつかの実施形態では、肺癌は、SMARCA2及び/又はSMARCA4の機能の喪失によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、肺癌は、エピジェネティック病変によって媒介されるSMARCA2機能の喪失によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、肺癌は、遺伝子病変によって媒介されるSMARCA4機能の喪失によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、肺癌は、エピジェネティック病変によって媒介されるSMARCA2機能の喪失、及び遺伝子病変によって媒介されるSMARCA4機能の喪失によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、肺癌は、低分化腫瘍又は病変によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、肺癌は、上皮間葉転換の特徴によって特徴付けられる。
特定の実施形態では、本開示は、本明細書で提供されるEZH2阻害剤と免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせを対象に投与することを含む、それを必要とする対象の細胞増殖性障害、例えば癌を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、EZH2阻害剤はタゼメトスタットである。いくつかの実施形態では、EZH2阻害剤は、1日2回800mgの経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(商標))である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、アテゾリズマブは、3週間ごとに約60分間にわたって静脈内注入として1200mgの用量で投与される(アテゾリズマブに関する追加情報については、その内容が本書に組み込まれる、accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2016/761034s0001bl.pdfを参照)。
特定の実施形態では、本開示は、1日2回800mgの経口用量のタゼメトスタットと、3週間ごとの約60分にわたる静脈内注入としての1200mgの用量のアテゾリズマブ(TECENTRIQ(商標))との組み合わせをそれを必要とする対象に投与することを含む、対象の肺癌、例えばNSCLC、SCLC、中皮腫、又は任意の他の形態の肺癌を処置する方法を提供する。
特定の実施形態では、本開示は、1日2回800mgの経口用量のタゼメトスタットと、3週間ごとの60分にわたる静脈内注入としての1200mgの用量のアテゾリズマブ(TECENTRIQ(商標))との組み合わせをそれを必要とする対象に投与することを含む、対象の非ホジキンリンパ腫(又はその他の形態の血液癌)を処置する方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される処置様式は、例えば、本明細書に記載の方法又は当業者に公知の別の方法によって、例えば、本明細書に記載の方法又は当技術分野で公知の別の方法によって、対象の標的細胞又は組織のメチル化状態を監視することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される処置様式は、例えば、本明細書に記載の方法又は当業者に公知の別の方法によって、対象の標的細胞又は組織におけるSMARCA2及び/又はSMARCA4タンパク質の発現又はタンパク質機能の状態を監視することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される処置様式は、例えば、本明細書に記載の方法又は当業者に公知の別の方法によって、対象の免疫応答の状態を監視することを含む。
本明細書で提供される処置様式での使用に適した様々な小分子EZH2阻害剤は既に記載されている。本明細書で提供される処置様式での使用に適したEZH2阻害剤のいくつかの非限定的な例としては、参照によりそれぞれの全内容が本明細書に組み込まれる、米国特許第8,410,088号明細書、同第8,765,732号明細書、同第9,090,562号明細書、同第8,598,167号明細書、同第8,962,620号明細書、米国特許出願公開第2015/0065483号明細書、米国特許第9,206,157号明細書、同第9,006,242号明細書、同第9,089,575号明細書、米国特許出願公開第2015/0352119号明細書、国際公開第2014/062733号パンフレット、米国特許出願公開第2015/0065503号明細書、国際公開第2015/057859号パンフレット、米国特許第8,536,179号明細書、国際公開第2011/140324号パンフレット、国際公開第2014/124418号として公開された国際出願PCT/US2014/015706号明細書、国際公開第2013/120104号として公開された国際出願PCT/US2013/025639号明細書、米国特許出願公開第2015/0368229号として公開された米国特許出願第14/839,273号明細書に記載されているものが挙げられる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物における使用に適したEZH2阻害剤は、以下の式(I):
又はその薬学的に許容される塩を有し;式中、
R701は、H、F、OR707、NHR707、−(C≡C)−(CH2)n7−R708、フェニル、5員又は6員ヘテロアリール、C3〜8シクロアルキル、又は1〜3個のヘテロ原子を含む4〜7員ヘテロシクロアルキルであり、フェニル、5員又は6員ヘテロアリール、C3〜8シクロアルキル又は4〜7員ヘテロシクロアルキルはそれぞれ独立に、ハロ、C1〜3アルキル、OH、O−C1〜6アルキル、NH−C1〜6アルキル、及び1〜3個のヘテロ原子を含むC3〜8シクロアルキル又は4〜7員ヘテロシクロアルキルで置換されたC1〜3アルキルから選択される1つ以上の基で任意選択により置換され、ここで、O−C1〜6アルキル及びNH−C1〜6アルキルのそれぞれは、ヒドロキシル、O−C1〜3アルキル、又はNH−C1〜3アルキルで任意選択により置換され、O−C1〜3アルキル及びNH−C1〜3アルキルのそれぞれは、任意選択によりO−C1〜3アルキル又はNH−C1〜3アルキルでさらに置換され;
R702及びR703のそれぞれは独立に、H、ハロ、C1〜4アルキル、C1〜6アルコキシル、又はC6〜C10アリールオキシであり、それぞれは、1つ以上のハロで任意選択により置換され;
R704及びR705のそれぞれは独立に、C1〜4アルキルであり;
R706は、N(C1〜4アルキル)2で置換されたシクロヘキシルであり、ここで、C1〜4アルキルの一方又は両方は、C1〜6アルコキシで任意選択により置換される;又はR706はテトラヒドロピラニルであり;
R707は、ヒドロキシル、C1〜4アルコキシ、アミノ、モノ−又はジ−C1〜4アルキルアミノ、C3〜8シクロアルキル、及び1〜3ヘテロ原子を含む4〜7員ヘテロシクロアルキルから選択される1つ以上の基で任意選択により置換されたC1〜4アルキルであり、ここで、C3〜8シクロアルキル又は4〜7員ヘテロシクロアルキルはそれぞれ独立に、任意選択によりC1〜3アルキルでさらに置換され;
R708は、OH、ハロ、及びC1〜4アルコキシから選択される1つ以上の基で任意選択により置換されたC1〜4アルキル、1〜3個のヘテロ原子を含む4〜7員ヘテロシクロアルキル、又はO−C1〜6アルキルであり、ここで、4〜7員ヘテロシクロアルキルは、任意選択によりOH又はC1〜6アルキルでさらに置換されてもよく;そして
n7は0、1、又は2である。
いくつかの実施形態では、R706はN(C1〜4アルキル)2で置換されたシクロヘキシルであり、ここで、C1〜4アルキルのうち一方が非置換であり、他方がメトキシで置換されている。
いくつかの実施形態では、R706は、
である。
いくつかの実施形態では、化合物は以下の式IIの化合物である。
いくつかの実施形態では、R702はメチル又はイソプロピルであり、R703はメチル又はメトキシルである。
いくつかの実施形態では、R704はメチルである。
いくつかの実施形態では、R701はOR707であり、R707はOCH3又はモルホリンで任意選択的に置換されたC1〜3アルキルである。
いくつかの実施形態では、R701はH又はFである。
いくつかの実施形態では、R701はテトラヒドロピラニル、フェニル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル又はピラゾリルであり、その各々がメチル、メトキシ、モルホリンで置換されたエチル又はOCH2CH2OCH3で任意選択的に置換されている。
いくつかの実施形態では、R708はモルホリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ジアゼパン又はアゼチジンであり、その各々がOH又はC1〜6アルキルで任意選択的に置換されている。
いくつかの実施形態では、R708はモルホリンである。
いくつかの実施形態では、R708はC1〜6アルキルで置換されたピペラジンである。
いくつかの実施形態では、R708はメチル、t−ブチル又はC(CH3)2OHである。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物に使用することができるEZH2阻害剤は、以下の式III:
又はその薬学的に許容される塩を有することができる。
この式において:
R801はC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C3〜8シクロアルキル、1〜3個のヘテロ原子を含む4〜7員ヘテロシクロアルキル、フェニル又は5員又は6員ヘテロアリールであり、その各々がO−C1〜6アルキル−Rx又はNH−C1〜6アルキル−Rxで置換されており、ここで、Rxはヒドロキシル、O−C1〜3アルキル又はNH−C1〜3アルキルであり、Rxは、これがヒドロキシルである場合を除いて、O−C1〜3アルキル又はNH−C1〜3アルキルで任意選択的にさらに置換されており;あるいはR801は−Q2−T2で置換されたフェニルであり、ここで、Q2は結合又はハロ、シアノ、ヒドロキシル若しくはC1〜C6アルコキシで任意選択的に置換されたC1〜C3アルキルリンカーであり、T2は4員〜12員ヘテロシクロアルキルで任意選択的に置換されており;及びR801は任意選択的にさらに置換されており;
R802及びR803は各々独立にH、ハロ、C1〜4アルキル、C1〜6アルコキシル又はC6〜C10アリールオキシであり、各々が1つ又は複数のハロで任意選択的に置換されており;
R804及びR805は各々独立にC1〜4アルキルであり;並びに
R806は−Qx−Txであり、ここで、Qxは結合又はC1〜4アルキルリンカーであり、TxはH、任意選択的に置換されたC1〜4アルキル、任意選択的に置換されたC3〜C8シクロアルキル又は任意選択的に置換された4員〜14員ヘテロシクロアルキルである。
いくつかの実施形態では、Qx及びQ2は各々独立に結合又はメチルリンカーであり、Tx及びT2は各々独立にテトラヒドロピラニル、1つ、2つ又は3つのC1〜4アルキル基で置換されたピペリジニル、又はN(C1〜4アルキル)2で置換されたシクロヘキシルであり、ここで、C1〜4アルキルのうち一方又は両方がC1〜6アルコキシで任意選択的に置換されている。
いくつかの実施形態では、R806はN(C1〜4アルキル)2で置換されたシクロヘキシルであり、又はR806はテトラヒドロピラニルである。
いくつかの実施形態では、R806は、
である。
いくつかの実施形態では、R801は、フェニル又はO−C1−6アルキル−Rxで置換された5員若しくは6員ヘテロアリールであるか、又はR801は、CH2−テトラヒドロピラニルで置換されたフェニルである。
いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、本開示のいくつかの態様による化合物は、以下の式IVa又はIVb:
であり、式中、Z’はCH又はNであり、R807はC2〜3アルキル−Rxである。
いくつかの実施形態では、R807は−CH2CH2OH、−CH2CH2OCH3又はCH2CH2OCH2CH2OCH3である。
いくつかの実施形態では、R802はメチル又はイソプロピルであり、R803はメチル又はメトキシルである。
例えば、R804はメチルである。
いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、次式(V):
又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを有することができる。
この式において:
R2、R4及びR12は各々独立にC1〜6アルキルであり;
R6はC6〜C10アリール又は5員若しくは6員ヘテロアリールであり、その各々が1つ又は複数の−Q2−T2で任意選択的に置換されており、ここで、Q2は結合、又はハロ、シアノ、ヒドロキシル若しくはC1〜C6アルコキシで任意選択的に置換されたC1〜C3アルキルリンカーであり、T2はH、ハロ、シアノ、−ORa、−NRaRb、−(NRaRbRc)+A−、−C(O)Ra、−C(O)ORa、−C(O)NRaRb、−NRbC(O)Ra、−NRbC(O)ORa、−S(O)2Ra、−S(O)2NRaRb又はRS2であり、ここで、Ra、Rb及びRcは各々独立にH又はRS3であり、A−は薬学的に許容されるアニオンであり、RS2及びRS3は各々独立にC1〜C6アルキル、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル又は5員若しくは6員ヘテロアリールであり、あるいはRa及びRbは、それらが結合しているN原子と一緒に0又は1個の追加のヘテロ原子を有する4〜12員ヘテロシクロアルキル環を形成し、RS2と、RS3と、Ra及びRbで形成される4〜12員ヘテロシクロアルキル環との各々は、1つ又は複数の−Q3−T3で任意選択的に置換されており、ここで、Q3は結合、又はハロ、シアノ、ヒドロキシル又はC1〜C6アルコキシで各々任意選択的に置換されたC1〜C3アルキルリンカーであり、T3はハロ、シアノ、C1〜C6アルキル、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル、5員又は6員ヘテロアリール、ORd、COORd、−S(O)2Rd、−NRdRe及びC(O)NRdReからなる群から選択され、Rd及びReは各々独立にH又はC1〜C6アルキルであるか、又はQ3−T3はオキソであり;あるいは任意の2つの隣接する−Q2−T2は、それらが結合している原子と一緒に5員又は6員環を形成し、当該5員又は6員環は、N、O及びSから選択される1〜4個のヘテロ原子を任意選択的に含み、ハロ、ヒドロキシル、COOH、C(O)O−C1〜C6アルキル、シアノ、C1〜C6アルコキシル、アミノ、モノ−C1〜C6アルキルアミノ、ジ−C1〜C6アルキルアミノ、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル及び5員又は6員ヘテロアリールからなる群から選択される1つ又は複数の置換基で任意選択的に置換されており;
R7は−Q4−T4であり、ここで、Q4は結合、C1〜C4アルキルリンカー又はC2〜C4アルケニルリンカーであり、各リンカーはハロ、シアノ、ヒドロキシル又はC1〜C6アルコキシで任意選択的に置換されており、T4はH、ハロ、シアノ、NRfRg、−ORf、−C(O)Rf、−C(O)ORf、−C(O)NRfRg、−C(O)NRfORg、−NRfC(O)Rg、−S(O)2Rf又はRS4であり、ここで、Rf及びRgは各々独立にH又はRS5であり、RS4及びRS5は各々独立にC1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル又は5員若しくは6員ヘテロアリールであり、RS4及びRS5は各々1つ又は複数の−Q5−T5で任意選択的に置換されており、ここで、Q5は結合、C(O)、C(O)NRk、NRkC(O)、S(O)2又はC1〜C3アルキルリンカーであり、RkはH又はC1〜C6アルキルであり、T5はH、ハロ、C1〜C6アルキル、ヒドロキシル、シアノ、C1〜C6アルコキシル、アミノ、モノ−C1〜C6アルキルアミノ、ジ−C1〜C6アルキルアミノ、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル、5員若しくは6員ヘテロアリール又はS(O)qRqであり、ここで、qは0、1又は2であり、RqはC1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル又は5員若しくは6員ヘテロアリールであり、T5は、これがH、ハロ、ヒドロキシル又はシアノである場合を除いて、ハロ、C1〜C6アルキル、ヒドロキシル、シアノ、C1〜C6アルコキシル、アミノ、モノ−C1〜C6アルキルアミノ、ジ−C1〜C6アルキルアミノ、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル及び5員又は6員ヘテロアリールからなる群から選択される1つ又は複数の置換基で任意選択的に置換されており;あるいは−Q5−T5はオキソであり;並びに
R8はH、ハロ、ヒドロキシル、COOH、シアノ、RS6、ORS6又はCOORS6であり、ここで、RS6はC1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、4〜12員ヘテロシクロアルキル、アミノ、モノ−C1〜C6アルキルアミノ又はジ−C1〜C6アルキルアミノであり、RS6はハロ、ヒドロキシル、COOH、C(O)O−C1〜C6アルキル、シアノ、C1〜C6アルコキシル、アミノ、モノ−C1〜C6アルキルアミノ及びジ−C1〜C6アルキルアミノからなる群から選択される1つ又は複数の置換基で任意選択的に置換されており;あるいはR7及びR8は、それらが結合しているN原子と一緒に、0〜2個の追加のヘテロ原子を有する4〜11員ヘテロシクロアルキル環を形成し、R7及びR8で形成された4〜11員ヘテロシクロアルキル環は1つ又は複数の−Q6−T6で任意選択的に置換されており、ここで、Q6は結合、C(O)、C(O)NRm、NRmC(O)、S(O)2又はC1〜C3アルキルリンカーであり、RmはH又はC1〜C6アルキルであり、T6はH、ハロ、C1〜C6アルキル、ヒドロキシル、シアノ、C1〜C6アルコキシル、アミノ、モノ−C1〜C6アルキルアミノ、ジ−C1〜C6アルキルアミノ、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル、5員若しくは6員ヘテロアリール又はS(O)pRpであり、ここで、pは0、1又は2であり、RpはC1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル又は5員若しくは6員ヘテロアリールであり、T6は、これがH、ハロ、ヒドロキシル又はシアノである場合を除いて、ハロ、C1〜C6アルキル、ヒドロキシル、シアノ、C1〜C6アルコキシル、アミノ、モノ−C1〜C6アルキルアミノ、ジ−C1〜C6アルキルアミノ、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル及び5員又は6員ヘテロアリールからなる群から選択される1つ又は複数の置換基で任意選択的に置換されており;あるいは−Q6−T6はオキソである。
例えば、R6はC6〜C10アリール又は5員若しくは6員ヘテロアリールであり、その各々が独立に、1つ又は複数の−Q2−T2で任意選択的に置換されており、ここで、Q2は結合又はC1〜C3アルキルリンカーであり、T2はH、ハロ、シアノ、−ORa、−NRaRb,−(NRaRbRc)+A−、−C(O)NRaRb、−NRbC(O)Ra、−S(O)2Ra又はRS2であり、ここで、Ra及びRbは各々独立にH又はRS3であり、RS2及びRS3は各々独立にC1〜C6アルキルであり、あるいはRa及びRbは、それらが結合しているN原子と一緒に0又は1個の追加のヘテロ原子を有する4〜7員ヘテロシクロアルキル環を形成し、RS2と、RS3と、Ra及びRbで形成された4〜7員ヘテロシクロアルキル環との各々は独立に、1つ又は複数の−Q3−T3で任意選択的に置換されており、ここで、Q3は結合又はC1〜C3アルキルリンカーであり、T3はハロ、C1〜C6アルキル、4〜7員ヘテロシクロアルキル、ORd、−S(O)2Rd及びNRdReからなる群から選択され、Rd及びReは各々独立にH又はC1〜C6アルキルであり、又はQ3−T3はオキソであり;あるいは任意の2つの隣接する−Q2−T2は、それらが結合している原子と一緒に、N、O及びSから選択される1〜4個のヘテロ原子を任意選択的に含む5員又は6員環を形成する。
いくつかの実施形態では、化合物は、式(VI):
又はその薬学的に許容される塩であり、式中、Q2は、結合リンカー又はメチルリンカーであり、T2は、H、ハロ、−ORa、−NRaRb、−(NRaRbRc)+A−、又はS(O)2NRaRbであり、R7は、ピペリジニル、テトラヒドロピラン、シクロペンチル、又はシクロヘキシルであり、それぞれは、任意選択的に1つの−Q5−T5で置換され、R8はエチルである。
本開示のいくつかの態様は、式(VIa):
の化合物及びその薬学的に許容される塩若しくはエステルを提供し、式中、R7、R8、Ra、及びRbは、本明細書で定義される。
式(VIa)の化合物には、以下の特徴のうち1つ又は複数を含めることができる。
いくつかの実施形態では、Ra及びRbは各々独立にH、又は1つ若しくは複数の−Q3−T3で任意選択的に置換されたC1〜C6アルキルである。
いくつかの実施形態では、Ra及びRbのうち一方はHである。
いくつかの実施形態では、Ra及びRbは、それらが結合しているN原子と一緒に、N原子に加えて0又は1個のヘテロ原子を有する4〜7員ヘテロシクロアルキル環(例えば、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、トリアゾリジニル、ピペリジニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、1,4−ジアゼパニル、1,4−オキサゼパニル、2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、及び同種のもの)を形成し、その環は1つ又は複数の−Q3−T3で任意選択的に置換されている。
いくつかの実施形態では、Ra及びRbは、それらが結合しているN原子と一緒に、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、トリアゾリジニル、テトラヒロフラニル(tetrahyrofuranyl)、ピペリジニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、ピペラジニル又はモルホリニルを形成し、これらの環は1つ又は複数の−Q3−T3で任意選択的に置換されている。
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の−Q3−T3はオキソである。
いくつかの実施形態では、Q3は結合又は非置換若しくは置換のC1〜C3アルキルリンカーである。
いくつかの実施形態では、T3はH、ハロ、4〜7員ヘテロシクロアルキル、C1〜C3アルキル、ORd、COORd,−S(O)2Rd又はNRdReである。
いくつかの実施形態では、各々独立にH又はC1〜C6アルキルであるRd及びRe。
いくつかの実施形態では、R7はC3〜C8シクロアルキル又は4〜7員ヘテロシクロアルキルであり、各々が1つ又は複数の−Q5−T5で任意選択的に置換されている。
いくつかの実施形態では、R7はピペリジニル、テトラヒドロピラン、テトラヒドロ−2H−チオピラニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ピロリジニル又はシクロヘプチルであり、各々が1つ又は複数の−Q5−T5で任意選択的に置換されている。
いくつかの実施形態では、R7はシクロペンチル、シクロヘキシル又はテトラヒドロ−2H−チオピラニルであり、その各々が1つ又は複数の−Q5−T5で任意選択的に置換されている。
いくつかの実施形態では、Q5はNHC(O)であり、T5はC1〜C6アルキル又はC1〜C6アルコキシ、各々である。
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の−Q5−T5はオキソである。
いくつかの実施形態では、R7は1−オキシド−テトラヒドロ−2H−チオピラニル又は1,1−ジオキシド−テトラヒドロ−2H−チオピラニルである。
いくつかの実施形態では、Q5は結合であり、T5はアミノ、モノ−C1〜C6アルキルアミノ、ジ−C1〜C6アルキルアミノである。
いくつかの実施形態では、Q5はCO、S(O)2又はNHC(O)であり、T5はC1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシル、C3〜C8シクロアルキル又は4〜7員ヘテロシクロアルキルである。
いくつかの実施形態では、R8はH、又はハロ、ヒドロキシル、COOH、C(O)O−C1〜C6アルキル、シアノ、C1〜C6アルコキシル、アミノ、モノ−C1〜C6アルキルアミノ及びジ−C1〜C6アルキルアミノからなる群から選択される1つ又は複数の置換基で任意選択的に置換されているC1〜C6アルキルである。
いくつかの実施形態では、R8はH、メチル又はエチルである。
本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物における使用に適した式(I)〜(VIa)の他の化合物は、米国特許出願公開第20120264734号明細書に記載され、その内容を、その全体の参照により本明細書に援用する。式(I)〜(VIa)の化合物は、1つ以上の他の治療薬、例えば本明細書で提供される免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の一部としての投与に適している。
本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物のいくつかの実施形態では、EZH2阻害剤は化合物44
又はその薬学的に許容される塩である。化合物44は、タゼメトスタット、EPZ006438、又は6438とも呼ばれる。
本明細書に記載される化合物44又はその薬学的に許容される塩は、野生型及び突然変異型EZH2の両方の標的化において強力である。化合物44は、経口投与可能であり、且つ他のヒストンメチルトランスフェラーゼと比較してEZH2に対して高い選択性を有する(すなわち、Kiでは20,000倍を超える選択性)。重要なことに、化合物44は、in vitroで、遺伝的に定義された癌細胞を死滅させる標的メチルマーク阻害を有する。動物モデルはまた、標的メチルマークの阻害後に持続的なin vivo有効性を示した。
一部の実施形態では、化合物44又はその薬学的に許容される塩は、胚中心由来リンパ腫を処置するために毎日約100mg〜約3200mg、例えば、約100mg BID〜約1600mg BID(例えば、100mg BID、200mg BID、400mg BID、800mg BID、又は1600mg BID)の用量で対象に投与される。
いくつかの実施形態では、化合物44又はその薬学的に許容される塩は、本明細書で提供される免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて対象に(同時に又は連続して)投与される。
いくつかの実施形態では、本明細書に提示される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物に使用することができる化合物は:
、その立体異性体、又はその薬学的に許容される塩及び溶媒和物である。
いくつかの実施形態では、EZH2阻害剤は、以下の式:
を有するGSK−126、その立体異性体、その薬学的に許容される塩又は溶媒和物を含む、これらから本質的になる、又はこれらからなり得る。本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物のいくつかの実施形態では、EZH2阻害剤は、それぞれ参照によりその全開示内容が本明細書に組み入れられる米国特許第8,536,179号明細書(いくつかある化合物の中でも特にGSK−126を記載し、国際公開第2011/140324号パンフレットに対応する)に記載されているEZH2阻害剤である。
本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物のいくつかの実施形態では、EZH2阻害剤は、それぞれ参照によりその全開示内容が本明細書に組み入れられる、国際公開第2014/124418号として公開されている国際出願PCT/US2014/015706号明細書、国際公開第2013/120104号として公開されている国際出願PCT/US2013/025639号明細書、及び米国特許出願公開第2015/0368229号として公開されている米国特許出願第14/839,273号明細書に記載されているEZH2阻害剤である。本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物のいくつかの実施形態では、EZH2阻害剤は、式:
の化合物又はその薬学的に許容される塩である(例えば、その内容が本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2015/0368229号明細書を参照)。
いくつかの実施形態では、EZH2阻害剤は、化合物自体として、すなわち遊離塩基又は「裸の」分子として使用される小分子である。いくつかの実施形態では、EZH2阻害剤は、その塩、例えば、裸分子のモノ−HCl又はトリ−HCl塩、モノ−HBr又はトリ−HBr塩である。
本明細書で提供される戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物に適した代表的な化合物としては、表1に列挙されている化合物が挙げられる。以下の表では、
のそれぞれの出現は、
と解釈するべきである。
本明細書で使用する場合、「アルキル」、「C1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキル」又は「C1〜C6アルキル」は、C1、C2、C3、C4、C5又はC6直鎖(線状)飽和脂肪族炭化水素基、及びC3、C4、C5又はC6分岐飽和脂肪族炭化水素基を含むことを意図している。例えば、C1〜C6アルキルは、C1アルキル基、C2アルキル基、C3アルキル基、C4アルキル基、C5アルキル基及びC6アルキル基を含むことを意図している。アルキルの例として、以下に限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチル又はn−ヘキシルなど1〜6個の炭素原子を有する部分が挙げられる。
ある種の実施形態では、直鎖又は分岐アルキルは6個以下の炭素原子(例えば、直鎖のC1〜C6、分岐鎖のC3〜C6)を有し、一部の実施形態では、直鎖又は分岐アルキルは4個以下の炭素原子を有する。
本明細書で使用する場合、「シクロアルキル」という用語は、3〜30個の炭素原子(例えば、C3〜C10)を有する飽和又は不飽和の、非芳香族炭化水素単環又は多環(例えば、縮合環、架橋環又はスピロ環)系をいう。シクロアルキルの例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロへプテニル及びアダマンチルが挙げられるが、これに限定されるものではない。「ヘテロシクロアルキル」という用語は、別段の指定のない限り、1つ又は複数のヘテロ原子(O、N、S又はSeなど)を有する、飽和又は不飽和の非芳香族の、3〜8員単環系、7〜12員二環系(縮合環、架橋環又はスピロ環)又は11〜14員三環系(縮合環、架橋環又はスピロ環)をいう。ヘテロシクロアルキル基の例として、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、イソインドリニル、インドリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、トリアゾリジニル、テトラヒドロフラニル、オキシラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、ピラニル、モルホリニル、1,4−ジアゼパニル、1,4−オキサゼパニル、2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、2−オキサ−6−アザスピロ[3.3]ヘプタニル、2,6−ジアザスピロ[3.3]ヘプタニル、1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4.5]デカニル及び同種のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
「任意選択的に置換されたアルキル」という用語は、非置換アルキル、又は炭化水素骨格の1つ又は複数の炭素上の1つ又は複数の水素原子に置き換わる所定の置換基を有するアルキルをいう。こうした置換基として、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族部分若しくは芳香族複素環部分を挙げることができる。
「アリールアルキル」又は「アラルキル」部分とは、アリールで置換されたアルキル(例えば、フェニルメチル(ベンジル))である。「アルキルアリール」部分は、アルキルで置換されたアリール(例えば、メチルフェニル)である。
本明細書で使用する場合、「アルキルリンカー」は、C1、C2、C3、C4、C5又はC6直鎖(線状)飽和二価脂肪族炭化水素基、及びC3、C4、C5又はC6分岐飽和脂肪族炭化水素基を含むことを意図している。例えば、C1〜C6アルキルリンカーは、C1アルキルリンカー基、C2アルキルリンカー基、C3アルキルリンカー基、C4アルキルリンカー基、C5アルキルリンカー基及びC6アルキルリンカー基を含むことを意図している。アルキルリンカーの例として、以下に限定されるものではないが、メチル(−CH2−)、エチル(−CH2CH2−)、n−プロピル(−CH2CH2CH2−)、i−プロピル(−CHCH3CH2−)、n−ブチル(−CH2CH2CH2CH2−)、s−ブチル(−CHCH3CH2CH2−)、i−ブチル(−C(CH3)2CH2−)、n−ペンチル(−CH2CH2CH2CH2CH2−)、s−ペンチル(−CHCH3CH2CH2CH2−)又はn−ヘキシル(−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)など1〜6個の炭素原子を有する部分が挙げられる。
「アルケニル」は、上述のアルキルと長さが類似し、上述のアルキルへの置換が可能であるが、少なくとも1つの二重結合を含む不飽和脂肪族基を含む。例えば、「アルケニル」という用語は、直鎖アルケニル基(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル)、及び分岐アルケニル基を含む。ある種の実施形態では、直鎖又は分岐アルケニル基はその骨格に6個以下の炭素原子(例えば、直鎖に対してC2〜C6、分岐鎖に対してC3〜C6)を有する。「C2〜C6」という用語は、2〜6個の炭素原子を含むアルケニル基を含む。「C3〜C6」という用語は、3〜6個の炭素原子を含むアルケニル基を含む。
「任意選択的に置換されたアルケニル」という用語は、非置換アルケニル、又は1つ又は複数の炭化水素骨格の炭素原子上の1つ又は複数の水素原子に置き換わる所定の置換基を有するアルケニルをいう。こうした置換基として、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、ヘテロシクリル、アルキルアリール又は芳香族部分若しくは芳香族複素環部分を挙げることができる。
「アルキニル」は、上述のアルキルと長さが類似し、上述のアルキルへの置換が可能であるが、少なくとも1つの三重結合を含む不飽和脂肪族基を含む。例えば、「アルキニル」は、直鎖アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル)、及び分岐アルキニル基を含む。ある種の実施形態では、直鎖又は分岐アルキニル基はその骨格に6個以下の炭素原子(例えば、直鎖に対してC2〜C6、分岐鎖に対してC3〜C6)を有する。「C2〜C6」という用語は、2〜6個の炭素原子を含むアルキニル基を含む。「C3〜C6」という用語は、3〜6個の炭素原子を含むアルキニル基を含む。
「任意選択的に置換されたアルキニル」という用語は、非置換アルキニル、又は1つ又は複数の炭化水素骨格の炭素原子上の1つ又は複数の水素原子に置き換わる所定の置換基を有するアルキニルをいう。こうした置換基として、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール又は芳香族部分若しくは芳香族複素環部分を挙げることができる。
他の任意選択的に置換された部分(例えば任意選択的に置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリール)は、非置換部分、及び1つ又は複数の所定の置換基を有する部分の両方を含む。例えば、置換されたヘテロシクロアルキルとして、1つ又は複数のアルキル基で置換されているもの、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニル及び2,2,6,6−テトラメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジニルが挙げられる。
「アリール」は、少なくとも1つの芳香環を有するが、環構造に任意のヘテロ原子を有さない「結合された」環系、又は多環系を含む、芳香族性を有する基を含む。例として、フェニル、ベンジル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレニルなどが挙げられる。
「ヘテロアリール」基は、環構造に1〜4個のヘテロ原子を有すること以外は上記で定義したようなアリール基であり、「複素環アリール」又は「複素芳香族化合物」ということもある。本明細書で使用する場合、「ヘテロアリール」という用語は、炭素原子と、窒素、酸素及び硫黄からなる群から独立に選択される1つ又は複数のヘテロ原子、例えば1個若しくは1〜2個若しくは1〜3個若しくは1〜4個若しくは1〜5個若しくは1〜6個のヘテロ原子、又は、例えば1個、2個、3個、4個、5個若しくは6個のヘテロ原子とからなる安定な5員、6員若しくは7員単環式又は7員、8員、9員、10員、11員若しくは12員二環式芳香族複素環式環を含むことを意図している。窒素原子は置換されていても、あるいは置換されていなくてもよい(すなわち、N、あるいは、RがH又は定義された他の置換基であるNR)。窒素ヘテロ原子及び硫黄ヘテロ原子は、任意選択的に酸化されていてもよい(すなわち、N→O及びS(O)p、式中、p=1又は2)。芳香族複素環のS原子及びO原子の総数は、1以下である点に留意されたい。
ヘテロアリール基の例として、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン及び同種のものが挙げられる。
さらに、「アリール」及び「ヘテロアリール」という用語は、多環式、例えば、三環式、二環式アリール基及びヘテロアリール基、例えば、ナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフトリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、インドリジンを含む。
多環式芳香環の場合、全ての環が芳香族(例えば、キノリン)であってもよいが、環の1つのみが芳香族(例えば、2,3−ジヒドロインドール)であってもよい。また第2の環は縮合していても、あるいは架橋していてもよい。
シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリール環は、1つ又は複数の環位置(例えば、環形成炭素又はNなどのヘテロ原子)において上記のような置換基、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール又は芳香族部分若しくは芳香族複素環部分で置換されていてもよい。アリール及びヘテロアリール基はさらに、多環式系(例えば、テトラリン、メチレンジオキシフェニル)を形成するように、芳香族でない脂環式環又は複素環式環と縮合していても、あるいは架橋していてもよい。
本明細書で使用する場合、「炭素環(carbocycle)」又は「炭素環(carbocyclic ring)」は、そのいずれもが飽和でも、不飽和でも、あるいは芳香族でもよい、特定の数の炭素を有する任意の安定な単環式、二環式又は三環式環を含むことを意図している。炭素環は、シクロアルキル及びアリールを含む。例えば、C3〜C14炭素環は、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個又は14個の炭素原子を有する単環式、二環式又は三環式環を含むことを意図している。炭素環の例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘプテニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、アダマンチル、シクロオクチル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、フルオレニル、フェニル、ナフチル、インダニル、アダマンチル及びテトラヒドロナフチルがあるが、これに限定されるものではない。炭素環の定義には、架橋環も含まれ、例えば、[3.3.0]ビシクロオクタン、[4.3.0]ビシクロノナン、[4.4.0]ビシクロデカン及び[2.2.2]ビシクロオクタンがある。架橋環は、1個又は複数個の炭素原子が2個の隣接しない炭素原子を連結すると生じる。一部の実施形態では、架橋環は、1個又は2個の炭素原子である。架橋は常に単環式環を三環式環に変換する点に注意されたい。環が架橋されると、当該環について記載された置換基も架橋上に存在してもよい。さらに縮合環(例えば、ナフチル、テトラヒドロナフチル)及びスピロ環も含まれる。
本明細書で使用する場合、「複素環」又は「複素環基」には、少なくとも1つの環ヘテロ原子(例えば、N、O又はS)を含む任意の環状構造(飽和、不飽和又は芳香族)が含まれる。複素環にはヘテロシクロアルキル及びヘテロアリールが含まれる。複素環の例として、モルホリン、ピロリジン、テトラヒドロチオフェン、ピペリジン、ピペラジン、オキセタン、ピラン、テトラヒドロピラン、アゼチジン及びテトラヒドロフランが挙げられるが、これに限定されるものではない。
複素環式基の例として、アクリジニル、アゾシニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾール5(4H)−オン、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシンドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H−1,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリル及びキサンテニルがあるが、これに限定されるものではない。
「置換された」という用語は、本明細書で使用する場合、指定された原子上の任意の1つ又は複数の水素原子が、表記された基から選択された基で置き換えられていることを意味する。ただし、指定された原子の通常の原子価を超えず、且つ置換の結果、安定な化合物が得られるものとする。置換基がオキソ又はケト(すなわち、=O)である場合、原子上の2個の水素原子が置き換えられる。ケト置換基は芳香族部分には存在しない。環二重結合は、本明細書で使用する場合、隣接する2つの環原子間に形成される二重結合(例えば、C=C、C=N又はN=N)である。「安定な化合物」及び「安定な構造」とは、ある化合物が、反応混合物から有用な程度の純度に単離されること、及び有効な治療薬として製剤化することに耐えるのに十分に強いことを示すことを意図する。
置換基との結合が、環内の2つの原子を連結する結合を横切るように示される場合、そうした置換基は、環内のどの原子に結合してもよい。ある置換基について、そうした置換基が所定の式の化合物の残部に結合している原子を示さずに記載される場合、そうした置換基は当該式のどの原子を介して結合してもよい。置換基及び/又は可変基の組み合わせも許容されるが、そうした組み合わせの結果、安定な化合物が得られる場合に限られる。
任意の可変基(例えば、R1)が、ある化合物の任意の構成要素又は式に2回以上存在する場合、その各存在時の定義は、その他の全ての存在時の定義と無関係である。したがって、例えば、ある基が0〜2のR1部分で置換されているように示される場合、その基は、最大2つのR1部分で任意選択的に置換されていてもよく、各存在時のR1は、R1の定義から独立に選択される。さらに、置換基及び/又は可変基の組み合わせも許容されるが、そうした組み合わせの結果、安定な化合物が得られる場合に限られる。
「ヒドロキシ」又は「ヒドロキシル」という用語は、−OH又はO−を有する基を含む。
本明細書で使用する場合、「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードをいう。「過ハロゲン化」という用語は一般に、ある部分において全ての水素原子がハロゲン原子で置き換えられていることをいう。「ハロアルキル」又は「ハロアルコキシル」という用語は、1つ又は複数のハロゲン原子で置換されたアルキル又はアルコキシルをいう。
「カルボニル」という用語は、酸素原子に二重結合で連結された炭素を含む化合物及び部分を含む。カルボニルを含む部分の例として、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、無水物などがあるが、これに限定されるものではない。
「カルボキシル」という用語は、−COOH又はそのC1〜C6アルキルエステルをいう。
「アシル」は、アシルラジカル(R−C(O)−)又はカルボニル基を含む部分を含む。「置換アシル」は、1つ又は複数の水素原子が、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール又は芳香族部分若しくは芳香族複素環部分で置き換えられているアシル基を含む。
「アロイル」は、カルボニル基に結合したアリール又は芳香族複素環部分を有する部分を含む。アロイル基の例として、フェニルカルボキシ、ナフチルカルボキシなどが挙げられる。
「アルコキシアルキル」、「アルキルアミノアルキル」及び「チオアルコキシアルキル」は、1つ又は複数の炭化水素骨格の炭素原子が酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置き換えられている上記のようなアルキル基を含む。
「アルコキシ」又は「アルコキシル」という用語は、酸素原子に共有結合した置換及び非置換アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基を含む。アルコキシ基又はアルコキシルラジカルの例として、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基及びペントキシ基があるが、これに限定されるものではない。置換アルコキシ基の例として、ハロゲン化アルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族部分又は芳香族複素環部分などの基で置換されていてもよい。ハロゲン置換アルコキシ基の例として、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ及びトリクロロメトキシがあるが、これに限定されるものではない。
「エーテル」又は「アルコキシ」という用語は、2個の炭素原子又はヘテロ原子に結合した酸素を含む化合物又は部分を含む。例えば、この用語は、アルキル基に共有結合している酸素原子に共有結合したアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基をいう「アルコキシアルキル」を含む。
「エステル」という用語は、カルボニル基の炭素に結合している酸素原子に結合した炭素又はヘテロ原子を含む化合物又は部分を含む。「エステル」という用語は、アルコキシカルボキシ基、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニルなどを含む。
「チオアルキル」という用語は、硫黄原子と連結したアルキル基を含む化合物又は部分を含む。チオアルキル基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、カルボキシ酸、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族部分若しくは芳香族複素環部分などの基で置換されていてもよい。
「チオカルボニル」又は「チオカルボキシ」という用語は、硫黄原子に二重結合で連結された炭素を含む化合物及び部分を含む。
「チオエーテル」という用語は、2個の炭素原子又はヘテロ原子に結合した硫黄原子を含む部分を含む。チオエーテルの例として、アルクチオアルキル、アルクチオアルケニル及びアルクチオアルキニルがあるが、これに限定されるものではない。「アルクチオアルキル」という用語は、アルキル基に結合している硫黄原子に結合したアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を有する部分を含む。同様に、「アルクチオアルケニル」という用語は、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基が、アルケニル基に共有結合している硫黄原子に結合している部分をいう。アルクチオアルキニル」は、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基が、アルキニル基に共有結合している硫黄原子に結合している部分をいう。
本明細書で使用する場合、「アミン」又は「アミノ」は、非置換又は置換NH2をいう。「アルキルアミノ」は、−NH2の窒素が少なくとも1つのアルキル基に結合している化合物の基を含む。アルキルアミノ基の例として、ベンジルアミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、フェネチルアミノなどが挙げられる。「ジアルキルアミノ」は、−NH2の窒素が少なくとも2つの別のアルキル基に結合している基を含む。ジアルキルアミノ基の例として、ジメチルアミノ及びジエチルアミノがあるが、これに限定されるものではない。「アリールアミノ」及び「ジアリールアミノ」はそれぞれ、窒素が少なくとも1つ又は2つのアリール基に結合している基を含む。「アミノアリール」及び「アミノアリールオキシ」は、アミノで置換されたアリール及びアリールオキシをいう。「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」又は「アリールアミノアルキル」は、少なくとも1つのアルキル基及び少なくとも1つのアリール基に結合しているアミノ基をいう。「アルカミノアルキル」は、アルキル基にも結合している窒素原子に結合したアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基をいう。「アシルアミノ」は、窒素がアシル基に結合している基を含む。アシルアミノの例として、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基及びウレイド基があるが、これに限定されるものではない。
「アミド」又は「アミノカルボキシ」という用語は、カルボニル基又はチオカルボニル基の炭素に結合している窒素原子を含む化合物又は部分を含む。この用語は、カルボニル基又はチオカルボニル基の炭素に結合しているアミノ基に結合したアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を含む「アルカミノカルボキシ」基を含む。この用語はさらに、カルボニル基又はチオカルボニル基の炭素に結合しているアミノ基に結合したアリール部分又はヘテロアリール部分を含む「アリールアミノカルボキシ」基を含む。「アルキルアミノカルボキシ」、「アルケニルアミノカルボキシ」、「アルキニルアミノカルボキシ」及び「アリールアミノカルボキシ」という用語はそれぞれ、アルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分及びアリール部分が窒素原子に結合し、その窒素原子がカルボニル基の炭素に結合している部分を含む。アミドは、直鎖アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール又は複素環などの置換基で置換されていてもよい。アミド基上の置換基はさらに置換されていてもよい。
窒素を含む本開示の化合物は、他の本発明の化合物を得るため、酸化剤(例えば、3−クロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)及び/又は過酸化水素)を用いた処理によりN−オキシドに変換してもよい。したがって、図示し特許請求の範囲に記載されている全ての窒素含有化合物は、原子価及び構造が許容される場合、図示した化合物及びそのN−オキシド誘導体(N→O又はN+−O−と表記することがある)の両方を含むものと見なされる。さらに、他の例では、本開示の化合物中の窒素は、N−ヒドロキシ化合物又はN−アルコキシ化合物に変換してもよい。例えば、N−ヒドロキシ化合物は、酸化剤、例えばm−CPBAによる親アミンの酸化により調製することができる。図示し特許請求の範囲に記載されている全ての窒素含有化合物はさらに、原子価及び構造が許容される場合、図示した化合物とそのN−ヒドロキシ(すなわち、N−OH)誘導体及びN−アルコキシ(すなわち、N−OR(式中、Rは置換若しくは非置換C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルキニル、3〜14員炭素環又は3〜14員複素環である))誘導体との両方を包含する。
「異性」は、化合物が同一の分子式を有するものの、その原子の結合順序又はその原子の空間配置が異なることを意味する。原子の空間配置が異なる異性体は「立体異性体」と呼ばれる。互いに鏡像でない立体異性体は「ジアステレオ異性体」と呼ばれ、互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体は「エナンチオマー」と呼ばれ、光学異性体と呼ばれることもある。逆のキラリティーの各エナンチオマー型を等量含む混合物は「ラセミ混合物」と呼ばれる。
同一でない4つの置換基に結合した炭素原子は「キラル中心」と呼ばれる。
「キラル異性体」は、少なくとも1つのキラル中心を有する化合物を意味する。2つ以上のキラル中心を有する化合物は、個々のジアステレオマーとして存在しても、あるいは「ジアステレオマー混合物」と呼ばれるジアステレオマーの混合物として存在してもよい。1つのキラル中心が存在する場合、立体異性体は、そのキラル中心の絶対配置(R又はS)により特徴付けてもよい。絶対配置とは、キラル中心に結合した置換基の空間配置をいう。検討対象のキラル中心に結合した置換基は、Sequence Rule of Cahn,Ingold and Prelogに従いランク付けされる。(Cahn et al.,Angew.Chem.Inter.Edit.1966,5,385;errata 511;Cahn et al.,Angew.Chem.1966,78,413;Cahn and Ingold,J.Chem.Soc.1951(London),612;Cahn et al.,Experientia 1956,12,81;Cahn,J.Chem.Educ.1964,41,116)。
「幾何異性体」は、存在する原因が二重結合又はシクロアルキルリンカー(例えば、1,3−シルコブチル)の周りの回転障壁であるジアステレオマーを意味する。これら配置は、接頭辞シス及びトランス、又はカーン−インゴルド−プレローグ順位則に従い各基が分子の二重結合に関して同じ側又は反対側にあることを示すZ及びEにより、その名称により区別される。
本明細書で提供される小分子EZH2阻害剤は、異なるキラル異性体又は幾何異性体として図示し得ることが理解されよう。さらに、化合物がキラル異性体型又は幾何異性体型を有する場合、全ての異性体型が本開示の範囲に含まれることを意図しており、化合物の名称は任意の異性体型を除外するものではないことも理解されるべきである。
さらに、こうした構造及び本開示で考察された他の化合物は、その全てのアトロピック(atropic)異性体を含む。「アトロピック(atropic)異性体」は、2つの異性体の原子が空間で異なって配置されている立体異性体の1種である。アトロピック(atropic)異性体が存在する原因は、中心結合の周りの大きな基の回転障壁により引き起こされる回転の束縛である。こうしたアトロピック(atropic)異性体は典型的には混合物として存在するが、クロマトグラフィー技術の最近の進歩の結果、特定の場合、2つのアトロピック(atropic)異性体の混合物を分離することが可能になっている。
「互変異性体」は、2つ以上の構造異性体が平衡状態で存在し、ある異性体型から別の異性体型に容易に変換される、それらの構造異性体の1つである。この変換の結果、水素原子が、隣接する共役二重結合の変化を伴って形式的に移動する。互変異性体は、溶液中で互変異性体のセットの混合物として存在する。互変異性が可能である溶液においては、互変異性体の化学平衡に達する。互変異性体の正確な比率は、温度、溶媒及びpHを含むいくつかの要因によって異なる。互変異性化により相互変換可能な互変異性体の概念は、互変異性と呼ばれる。
考えられる様々なタイプの互変異性のうち、2つが一般に観察される。ケト−エノール互変異性では、電子及び水素原子の同時移動が起こる。環鎖互変異性は、糖鎖分子のアルデヒド基(−CHO)が同じ分子のヒドロキシ基(−OH)の1つと反応して、分子にグルコースに見られるような環式(環状)形態が生じた結果として起こる。
一般的な互変異性のペアとして、ケトン−エノール、アミド−ニトリル、ラクタム−ラクチム、複素環における(例えば、グアニン、チミン及びシトシンなどの核酸塩基における)アミド−イミド酸互変異性、イミン−エナミン及びエナミン−エナミンがある。ケト−エノール平衡の例は、以下に示すように、ピリジン−2(1H)−オンと対応するピリジン−2−オールとの間の平衡である。
本開示の化合物は異なる互変異性体として図示され得ることが理解されよう。さらに、化合物が互変異性型を有する場合、全ての互変異性型が本開示の範囲に含まれることを意図しており、化合物の名称は任意の互変異性体型を除外するものではないことも理解されるべきである。
本明細書に開示している式(I)〜(VIa)のEZH2阻害剤には、化合物それ自体と、該当する場合、その塩及びその溶媒和物も含まれる。塩は、例えば、アニオンと、アリール置換又はヘテロアリール置換されたベンゼン化合物上の正に荷電した基(例えば、アミノ)との間で形成させることができる。好適なアニオンとして、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、重硫酸イオン、スルファミン酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、クエン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、グルタミン酸イオン、グルクロン酸イオン、グルタル酸イオン、リンゴ酸イオン、マレイン酸イオン、コハク酸イオン、フマル酸イオン、酒石酸イオン、トシル酸イオン、サリチル酸イオン、乳酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン及び酢酸イオン(例えば、トリフルオロ酢酸イオン)が挙げられる。「薬学的に許容されるアニオン」という用語は、薬学的に許容される塩を形成するのに好適なアニオンをいう。同様に、塩はまた、カチオンと、アリール置換又はヘテロアリール置換されたベンゼン化合物上の負に荷電した基(例えば、カルボン酸イオン)との間で形成させることもできる。好適なカチオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、及びテトラメチルアンモニウムイオンなどのアンモニウムカチオンが挙げられる。アリール置換又はヘテロアリール置換されたベンゼン化合物として、第四級窒素原子を含むその塩も含まれる。塩形態において、化合物対塩のカチオン又はアニオンの比は、1:1でもよく、1:1以外の任意の割当量、例えば、3:1、2:1、1:2又は1:3でもよいことが理解されよう。
加えて、本開示のEZH2阻害化合物、例えば、化合物の塩は、水和若しくは非水和(無水)形態で存在しても、あるいは他の溶媒分子との溶媒和物として存在してもよい。水和物の非限定的な例として、一水和物、二水和物などが挙げられる。溶媒和物の非限定的な例として、エタノール溶媒和物、アセトン溶媒和物などが挙げられる。
「溶媒和物」は、化学量論量あるいは非化学量論量の溶媒を含む溶媒付加形態を意味する。一部の化合物は、結晶性固体状態で一定のモル比の溶媒分子を捕捉する傾向があり、したがって溶媒和物を形成する。溶媒が水の場合、形成される溶媒和物は水和物であり、溶媒がアルコールの場合、形成される溶媒和物はアルコラートである。水和物は1つの物質分子と1つ又は複数の水分子の組み合わせにより形成され、水はその分子状態をH2Oとして維持する。
本明細書で使用する場合、「アナログ」という用語は、別の化学化合物と構造的に類似しているが、組成がやや異なる(異なる元素の原子による1つの原子の置き換え、又は特定の官能基の存在、又は別の官能基による1つの官能基の置き換えのように)化学化合物をいう。したがって、アナログは、参照化合物と機能及び外観が類似又は同様であるが、構造又は起源が類似又は同様でない化合物である。
本明細書で使用される、「誘導体」という用語は、共通のコア構造を有するが、本明細書に記載するような様々な基で置換されている化合物をいう。例えば、式(I)で表される化合物は全て、アリール又はヘテロアリール置換ベンゼン化合物であり、共通のコアとして式(I)を有する。
本開示のいくつかの実施形態は、本EZH2阻害剤の化合物中に存在する原子の一部又は全ての同位体を包含する。同位体には、原子番号は同じであるが質量数が異なる原子が含まれる。一般的な例として、限定されるものではないが、水素の同位体には、トリチウム及び重水素が含まれ、炭素の同位体には、C−13及びC−14が含まれる。
本開示の特定の態様では、EZH2の阻害剤は、それが野生型EZH2のヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を阻害するよりも有効に変異型EZH2のヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を阻害するとき、変異型EZH2のヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を「選択的に阻害する」。例えば、一部の実施形態では、選択的阻害剤は、変異型EZH2に対するIC50が、野生型EZH2に対するIC50より少なくとも40パーセント低い。一部の実施形態では、選択的阻害剤は、変異型EZH2に対するIC50が野生型EZH2に対するIC50より少なくとも50パーセント低い。一部の実施形態では、選択的阻害剤は、変異型EZH2に対するIC50が野生型EZH2に対するIC50より少なくとも60パーセント低い。一部の実施形態では、選択的阻害剤は、変異型EZH2に対するIC50が野生型EZH2に対するIC50より少なくとも70パーセント低い。一部の実施形態では、選択的阻害剤は、変異型EZH2に対するIC50が野生型EZH2に対するIC50より少なくとも80パーセント低い。一部の実施形態では、選択的阻害剤は、変異型EZH2に対するIC50が野生型EZH2に対するIC50より少なくとも90パーセント低い。
一部の実施形態では、変異型EZH2の選択的阻害剤は、野生型EZH2に対して阻害効果を実質的に発揮しない。
本開示の特定の態様では、阻害剤(例えば、本明細書で開示される化合物)は、H3−K27me2からH3−K27me3への変換を阻害する。一部の実施形態では、阻害剤はH3−K27のトリメチル化を阻害するといわれる。H3−K27me1からH3−K27me2への変換はH3−K27me2からH3−K27me3への変換に先行するため、H3−K27me1からH3−K27me2への変換の阻害剤は当然H3−K27me2からH3−K27me3への変換も阻害する。すなわちそれは、H3−K27のトリメチル化を阻害する。H3−K27me1からH3−K27me2への変換を阻害せずにH3−K27me2からH3−K27me3への変換を阻害することも可能である。このタイプの阻害もまた、H3−K27のジメチル化の阻害はしないにしても、H3−K27のトリメチル化を阻害することになる。
一部の実施形態では、阻害剤(例えば、本明細書で開示される化合物)は、H3−K27me1からH3−K27me2への変換及びH3−K27me2からH3−K27me3ヘの変換を阻害する。こうした阻害剤は、H3−K27me1からH3−K27me2への変換のみを直接阻害するものであってもよい。あるいは、こうした阻害剤は、H3−K27me1からH3−K27me2への変換及びH3−K27me2からH3−K27me3ヘの変換の両方を直接阻害するものであってもよい。
本開示の特定の態様では、EZH2阻害剤(例えば、本明細書で開示される化合物)は、ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を阻害する。ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性の阻害は、任意の好適な方法を用いて検出することができる。阻害は、例えば、ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性の速度によって、又はヒストンメチルトランスフェラーゼ活性の産物として、測定することができる。
いくつかの実施形態では、EZH2活性の測定可能な阻害、例えば適切な対照と比較して測定可能なEZH2阻害によって特徴付けられる戦略、処置様式、方法、組み合わせ、及び組成物が提供される。いくつかの実施形態では、EZH2阻害は、適切な対照、例えば、未処置対照細胞、組織、又は対象において観察又は予測されるEZH2活性と比較して、少なくとも10%の阻害である。いくつかの実施形態では、EZH2阻害剤の存在下でのEZH2酵素活性の割合は、EZH2阻害剤の非存在下での対応する酵素活性の90%以下である。いくつかの実施形態では、EZH2阻害剤の存在下でのEZH2阻害は、適切な対照、例えば阻害剤の非存在下での活性と比較して少なくとも20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、又は95%の阻害である。いくつかの実施形態では、阻害は、適切な対照と比較して少なくとも99%の阻害である。すなわち、阻害剤の存在下での酵素活性の割合は、阻害剤の非存在下での対応する活性の1%以下である。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される治療薬、例えばEZH2阻害剤、及び適用可能な場合は任意の追加の治療薬、例えば免疫チェックポイント阻害剤は、ヒト対象への投与に適した医薬製剤中で提供される。2つ以上の治療薬が使用される実施形態では、各治療薬を医薬製剤に別々に製剤化し、対象に別々に、例えば連続して投与することができる。いくつかのそのような実施形態では、異なる医薬組成物は、同じ経路、例えば非経口経路を介して、或いは異なる経路、例えば経腸及び非経口経路を介して投与することができる。例えば、本明細書で提供される併用処置様式のいくつかの実施形態では、EZH2阻害剤は、経口投与用に製剤化することができ、追加の治療薬、例えば免疫チェックポイント阻害剤は、非経口投与用に製剤化することができる。
EZH2阻害剤を含む適切な医薬組成物は、既に記載されており、例えば、限定されるものではないが、参照によりそれぞれの全内容が本明細書に組み込まれる、米国特許第8,410,088号明細書、同第8,765,732号明細書、同第9,090,562号明細書、同第8,598,167号明細書、同第8,962,620号明細書、米国特許出願公開第2015/0065483号明細書、米国特許第9,206,157号明細書、同第9,006,242号明細書、同第9,089,575号明細書、米国特許出願公開第2015/0352119号明細書、国際公開第2014/062733号パンフレット、米国特許出願公開第2015/0065503号明細書、国際公開第2015/057859号パンフレット、米国特許第8,536,179号明細書、国際公開第2011/140324号パンフレット、国際公開第2014/124418号として公開された国際出願PCT/US2014/015706号明細書、国際公開第2013/120104号として公開された国際出願PCT/US2013/025639号明細書、米国特許出願公開第2015/0368229号として公開された米国特許出願第14/839,273号明細書に記載されているものを含む。追加の適切な医薬組成物は、本開示及び当技術分野の一般的な知識に基づいて当業者には明らかであろう。
本開示はまた、式(I)〜(VIa)の化合物又はその薬学的に許容される塩と、本明細書に開示している1つ又は複数の他の治療剤、例えば、1つ又は複数の免疫チェックポイント阻害剤とを、薬学的に好適なキャリア又は賦形剤と混合して、本明細書に記載の疾患又は状態を処置又は予防するための用量で含む医薬組成物及び組み合わせも提供する。一態様では、本開示はまた、表Iの任意の化合物又はその薬学的に許容される塩と、1つ又は複数の治療剤とを、薬学的に好適なキャリア又は賦形剤と混合して、本明細書に記載の疾患又は状態を処置又は予防するための用量で含む医薬組成物も提供する。別の態様では、本開示はまた、化合物44
又はその薬学的に許容される塩と、1つ又は複数の治療剤とを、薬学的に好適なキャリア又は賦形剤と混合して、本明細書に記載の疾患又は状態を処置又は予防するための用量で含む医薬組成物も提供する。本開示の医薬組成物はまた、他の治療剤又は治療法と併用して、同時に、逐次的に又は交互に投与することもできる。
本開示の組成物の混合物又は組み合わせはまた、患者に、単純な混合物として、又は製剤化した好適な医薬組成物で投与することもできる。例えば、本開示の一態様は、治療有効用量の式(I)〜(VIa)のEZH2阻害剤又はその薬学的に許容される塩、水和物、エナンチオマー若しくは立体異性体と、1つ又は複数の他の治療剤と、薬学的に許容される希釈剤又はキャリアとを含む医薬組成物又は組み合わせに関する。
「医薬組成物」とは、本開示の化合物を、被検体への投与に好適な形態で含む製剤のことである。式(I)〜(VIa)の化合物、及び、該当する場合、本明細書に記載の1つ又は複数の他の治療剤は各々、個々に製剤化することもでき、活性成分を任意選択的に組み合わせて複数の医薬組成物に製剤化することもできる。したがって、各医薬組成物の剤形に基づいて1つ又は複数の投与経路が適切に選択され得る。あるいは、式(I)〜(VIa)の化合物と本明細書に記載の1つ又は複数の他の治療剤とを1つの医薬組成物に製剤化することができる。
一部の実施形態では、医薬組成物はバルク又は単位剤形である。単位剤形は、例えば、カプセル、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器の単一ポンプ又はバイアルなど種々の形態のいずれかである。単位用量の組成物における活性成分(例えば、開示された化合物又はその塩、水和物、溶媒和物又は異性体の製剤)の量は有効量であり、関連する個々の処置に応じて変化する。当業者であれば、患者の年齢及び状態によって投薬量を日常的に変える必要があることもあることを理解するであろう。投薬量はまた投与経路によって異なる。経口、経肺、直腸、非経口、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、吸入、口腔内、舌下、胸膜内、髄腔内、鼻腔内及び同種のものなど種々の経路を意図している。本開示の化合物の局所投与又は経皮投与用の剤形として、散剤、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液剤、パッチ剤及び吸入薬が挙げられる。一部の実施形態では、活性化合物は、滅菌条件下で薬学的に許容されるキャリアと、必要とされる任意の防腐剤、バッファー又は噴霧剤と混合される。
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」という語句とは、化合物、アニオン、カチオン、材料、組成物、キャリア及び/又は剤形が、適切な医学的判断の範囲内において、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を回避しつつ、合理的なベネフィット/リスク比に見合ってヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適であることをいう。
用語「薬学的に許容される賦形剤」は、医薬組成物の調製に有用であり、且つ一般に安全で無毒性であり、生物学的にもあるいは他の点でも望ましい賦形剤を意味し、動物用途のほか、ヒトの医薬用途に許容可能な賦形剤を含む。本明細書及び特許請求の範囲に使用される「薬学的に許容される賦形剤」は、そうした賦形剤の1種及び2種以上の両方を含む。
本開示の医薬組成物は、その目的の投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例として、非経口投与、例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口投与(例えば、吸入)、経皮投与(局所)、及び経粘膜投与が挙げられる。非経口用途、皮内用途又は皮下用途に使用される溶液又は懸濁液として、以下の成分:無菌希釈液、例えば食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒;抗菌薬、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム;キレート化剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;バッファー、例えばアセテート、シトレート又はホスフェート、及び張度調整剤、例えば塩化ナトリウム又はブドウ糖を挙げることができる。pHは、酸又は塩基、例えば塩酸又は水酸化ナトリウムで調整することができる。非経口調製物は、ガラス若しくはプラスチック製のアンプル、ディスポーザブルシリンジ又はマルチドーズバイアルに封入してもよい。
本開示の組成物、例えばEZH2阻害剤を含む製剤は、化学療法処置に現在使用されている多くの周知の方法で対象に投与することができる。例えば、癌の処置のために、EZH2阻害剤を含む製剤を腫瘍に直接注入してもよいし、血流若しくは体腔に注入してもよいし、又は経口投与してもよいし、又はパッチで皮膚を介して適用してもよい。EZH2阻害剤、及び適用可能な場合は任意の追加の治療薬に選択される用量は、効果的な処置を構成するのに十分である必要があるが、許容できない副作用を引き起こすほど高くはない。疾状の状態(例えば、癌及び前癌など)及び患者の健康状態は、好ましくは、処置中及び処置後の適正な期間、厳密に監視されるべきである。
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、特定された疾患又は状態を処置、改善、又は予防するか、又は所望の臨床効果、例えば検出可能な治療効果若しくは抑制効果を示す医薬品の量を指す。EZH2阻害剤及びいくつかの例示的な追加の治療薬の例示的で非限定的な有効量及び有効投与量範囲が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、所望の臨床効果は、例えば、当技術分野で公知の任意の適切なアッセイ方法によって直接検出することができる。いくつかの実施形態では、所望の臨床効果は、代理測定によって測定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、エピジェネティックに抑制されたSMARCA2及び/又はSMARCA4の発現の再活性化を監視して、適切な治療有効量のEZH2阻害剤を決定することができる。対象の正確な有効量は、対象の体重、大きさ、健康状態;状態の性質及び程度;投与のために選択される治療薬又は治療薬の組み合わせによって異なるであろう。所与の状況に対する治療有効量は、臨床医の技術及び判断の範囲内である日常的な経験によって決定することができる。好ましい態様では、処置されるべき疾患又は状態は癌である。別の態様では、処置されるべき疾患又は状態は細胞増殖性障害である。
ある種の実施形態では、併用される各医薬剤の治療有効量は、各薬剤を単独で用いる単剤療法と比較して、併用した場合の方が少ない。このように治療有効量が少なければ、治療レジメンの毒性が低くなり得る。
本明細書に記載の化合物の多く、例えば、様々なEZH2阻害剤及び様々な追加の治療薬について、治療有効量又は有効投与量範囲が報告されている。いくつかの実施形態では、例えば腫瘍細胞の細胞培養アッセイで、又は動物モデル、通常はラット、マウス、ウサギ、イヌ、若しくはブタで有効量を最初に推定することができる。動物モデルを使用して、適切な濃度範囲及び投与経路を決定することもできる。次いで、そのような情報を使用して、ヒトでの有用な用量及び投与経路を決定することができる。治療/予防の有効性及び毒性、例えばED50(集団の50%で治療に有効な用量)及びLD50(集団の50%に致死的な用量)は、細胞培養又は実験動物での標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比として表すことができる。大きい治療指数を示す医薬組成物が好ましい。投与量は、使用される剤形、患者の感受性、及び投与経路によってこの範囲内で変動し得る。
投薬量及び投与は、十分なレベルの活性剤を与えるか、又は所望の効果を維持するように調整される。考慮に入れてもよい因子として、病状の重症度、被検体の一般的な健康状態、被検体の年齢、体重及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬剤の組み合わせ、反応感受性、並びに治療に対する忍容性/反応が挙げられる。長時間作用性医薬組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス速度によって3〜4日毎、毎週あるいは2週に1回投与してもよい。
本発明の活性化合物を含む医薬組成物は、一般に知られた方法で、例えば、従来の混合プロセス、溶解プロセス、造粒プロセス、糖衣錠製造プロセス、研和プロセス、乳化プロセス、カプセル化プロセス、封入プロセス又は凍結乾燥プロセスによって製造することができる。医薬組成物は、活性化合物を薬学的に使用することができる調製物に加工しやすくする賦形剤及び/又は助剤を含む、1種若しくは複数種の薬学的に許容されるキャリアを用いて従来の方法で製剤化してもよい。言うまでもなく、適切な製剤は選択された投与経路によって異なる。
注射用途に好適な医薬組成物は、無菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び必要に応じて調製される無菌注射用溶液又は分散液用の無菌粉末を含む。静脈内投与では、好適なキャリアとして、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)又はリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は無菌でなければならず、シリンジ操作が容易である程度の流動性があるべきである。組成物は、製造及び保存条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの混入微生物の作用を防止しなければならない。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール並びに同種のもの)及びこれらの好適な混合物を含む溶媒又は分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には、必要とされる粒度の維持により、及び界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール及び同種のものの使用により達成することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えばマンニトール及びソルビトール、並びに塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の吸収の持続化は、組成物に吸収を遅らせる薬、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含ませることにより行うことができる。
無菌注射溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて上記に列挙した1つの成分又は成分の組み合わせと共に適切な溶媒に加え、続いて濾過滅菌を行うことにより調製することができる。一般に、分散液は、基本的な分散媒及び上記に列挙したものから必要とされる他の成分を含む無菌ビヒクルに活性化合物を加えることにより調製される。無菌注射溶液の調製用の無菌粉末の場合、調製方法は真空乾燥及びフリーズドライであり、これにより活性成分と任意の所望の追加成分との、前もって滅菌濾過した溶液から、活性成分と任意の所望の追加成分との粉末が得られる。
経口組成物は一般に、不活性希釈剤又は食用の薬学的に許容されるキャリアを含む。経口組成物はゼラチンカプセルに封入しても、あるいは錠剤に圧縮してもよい。経口治療投与の目的上、活性化合物を賦形剤と混合し、錠剤、トローチ剤又はカプセル剤の形態で使用してもよい。経口組成物はさらに、洗口剤として使用される液体キャリアを用いて調製してもよく、液体キャリア中の化合物は経口適用し、すすいで吐き出すか又は飲み込む。薬学的に適合する結合剤及び/又は補助剤を組成物の一部として含めてもよい。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤及び同種のものは、性質の類似した以下の成分又は化合物:バインダー、例えば微結晶性セルロース、トラガントゴム又はゼラチン;賦形剤、例えばデンプン又はラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、Primogel又はコーンスターチ;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム又はSterotes;流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えばスクロース又はサッカリン;又は着香剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジ香味料のいずれかを含んでもよい。
吸入による投与では、化合物は、好適な噴射剤、例えば、二酸化炭素などのガスを含む加圧容器若しくはディスペンサー、又はネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達される。
全身投与はまた、経粘膜又は経皮手段によるものでもよい。経粘膜又は経皮投与では、透過対象のバリアに適した浸透剤を製剤に使用する。こうした浸透剤は一般に当該技術分野において公知であり、例えば、経粘膜投与の場合、界面活性剤、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻スプレー又は坐剤の使用により達成することができる。経皮投与では、活性化合物を一般に当該技術分野において公知の軟膏、膏薬、ゲル又はクリームに製剤する。
活性化合物は、化合物の身体からの急速な排除を防ぐ薬学的に許容されるキャリア、例えばインプラント及びマイクロカプセル化送達系などの放出制御製剤と共に調製してもよい。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用してもよい。こうした製剤を調製するための方法は、当業者に明らかであろう。こうした材料はさらに、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から市販品として入手することができる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞を標的としたリポソームを含む)も、薬学的に許容されるキャリアとして使用することができる。これらは、例えば米国特許第4,522,811号明細書に記載されているような当業者に公知の方法に従い調製することができる。
投与のしやすさ及び投薬量の均一性のため、経口又は非経口組成物を投薬単位剤形で製剤化すると特に有利である。投薬単位剤形とは、本明細書で使用する場合、単位投薬量として処置対象の被検体に適した物理的に分離した単位をいい、各単位は、必要とされる薬学的キャリアと共に、所望の治療効果を発揮するように計算された所定量の活性化合物を含む。本開示の投薬単位剤形の規格は、活性化合物の特有の特徴及び達成されるべき個々の治療効果により決定され、それらに直接左右される。
治療用途のいくつかの実施形態では、本明細書で提供される治療薬の投与量は、選択される投与量に影響を与える他の要因の中でも、使用される特定の薬剤(複数可)、レシピエント患者の年齢、体重、及び臨床状態、並びに治療を施す臨床医又は開業医の経験及び判断によって異なる。一般に、有効成分(複数可)の用量は、腫瘍の成長を遅らせ、好ましくは退行させ、さらに、好ましくは癌の完全な退縮を引き起こすのに十分でなければならない。いくつかの実施形態では、投与量は、約0.01mg/kg/日〜約5000mg/kg/日の範囲であり得る。好ましい態様では、投与量は、約1mg/kg/日〜約1000mg/kg/日の範囲であり得る。一態様では、用量は、単回、分割、又は連続投与で、約0.1mg/日〜約50g/日の範囲;約0.1mg/日〜約25g/日;約0.1mg/日〜約10g/日;約0.1mg〜約3g/日;又は約0.1mg〜約1g/日であろう(この用量は、患者の体重(kg)、体表面積(m2)、及び年齢(年)に応じて調整することができる)。追加の適切な投与量は、本明細書のどこかで提供される。例えば、患者の腫瘍の退縮は、腫瘍の直径を基準に測定することができる。腫瘍の直径の減少は退縮を示す。退縮は、処置が終了した後に腫瘍が再発しないことによっても示される。本明細書で使用される「有効投与量様式」という用語は、対象又は細胞において所望の生物学的効果をもたらす活性化合物の量を指す。
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」は、親化合物がその酸性塩又は塩基性塩を作ることにより修飾された本開示の化合物の、例えば、本明細書に記載される小分子EZH2阻害剤の誘導体をいう。薬学的に許容される塩の、例えば、本明細書で提供されるEZH2阻害剤の例として、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩又は有機塩、及び同種のものがあるが、これに限定されるものではない。薬学的に許容される塩は、例えば、無毒性無機酸又は有機酸から形成された親化合物の従来の無毒性塩又は第四級アンモニウム塩を含む。例えば、そうした従来の無毒性塩として、2−アセトキシ安息香酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、1,2−エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリアルサニル酸、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバム酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、サブ酢酸(subacetic)、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸及び一般に存在するアミン酸、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニンなどから選択される無機酸及び有機酸から得られるものがあるが、これに限定されるものではない。
薬学的に許容される塩の他の例として、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ピルビン酸、マロン酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ−[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ムコン酸及び同種のものが挙げられる。本開示はさらに、親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、又はアルミニウムイオンに置き換えられている場合、あるいは有機塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン及び同種のものと配位している場合に形成される塩を包含する。
薬学的に許容される塩への言及には全て、同じ塩の溶媒付加体(溶媒和物)が含まれることを理解すべきである。
本開示の組成物はさらに、エステル、例えば、薬学的に許容されるエステルとして調製してもよい。例えば、化合物のカルボン酸官能基をその対応するエステル、例えば、メチル、エチル又は他のエステルに変換してもよい。さらに、化合物のアルコール基をその対応するエステル、例えば、アセテート、プロピオネート又は他のエステルに変換してもよい。
組成物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、経口的、経鼻的、経皮的、経肺的、吸入的、口腔的、舌下、腹腔内、皮下、筋肉内、静脈内、直腸、胸腔内、くも膜下腔内、及び非経口的に投与される。いくつかの実施形態では、化合物は経口投与される。当業者であれば、特定の投与経路の利点を認識しているであろう。
化合物を利用する投与レジメンは、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別及び医学的状態;処置対象の状態の重症度;投与経路;患者の腎機能及び肝機能;並びに利用される個々の化合物又はその塩など種々の因子に従い選択される。通常の知識を有する医師又は獣医師であれば、当該状態の進行を予防、防止又は停止するのに必要な薬剤の有効量を容易に判定し、処方することができる。
開示した本開示の化合物の製剤及び投与のための技術は、Remington:the Science and Practice of Pharmacy,19th edition,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1995)で確認することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物及びその薬学的に許容される塩は、薬学的に許容されるキャリア又は希釈薬と組み合わせて医薬調製物に使用される。好適な薬学的に許容されるキャリアとして、不活性な固体充填剤又は希釈薬、及び無菌水溶液又は有機溶液が挙げられる。本化合物は、本明細書に記載の範囲の所望の投薬量を与えるのに十分な量でそうした医薬組成物中に存在する。
本明細書に使用されるパーセンテージ及び比率は全て、他に記載がない限り、重量による。本発明の他の特徴と利点は様々な例から明らかである。提示した例は、本開示を実施する際に有用な様々な要素及び方法を説明するものである。こうした例は、特許請求の範囲に記載されている開示を限定するものではない。本開示に基づき、当業者であれば、本開示を実施するのに有用な他の要素及び方法を特定し、利用することができる。
いくつかの実施形態では、「それを必要とする対象」とは、EZH2媒介タンパク質メチル化が関与する障害を有する対象、又は一般的な集団と比較してそのような障害を発症するリスクが高い対象のことである。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、細胞増殖性疾患、例えば癌を有する。いくつかの実施形態では、対象は、SMARCA2及び/又はSMARCA4の機能の喪失によって特徴付けられる癌を有する。いくつかの実施形態では、対象は、SMARCA2/SMARCA4の機能の二重喪失によって特徴付けられる癌を有し、SMARCA2機能の喪失はエピジェネティック病変によって媒介される。いくつかの実施形態では、対象は、免疫系回避、例えば、免疫チェックポイントシグナル伝達を介した癌細胞の免疫系回避も関与する障害を有する。「対象」には哺乳動物が含まれる。哺乳動物は、例えば、あらゆる哺乳動物、例えば、ヒト、霊長類、トリ、マウス、ラット、家禽、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジ、又はブタであり得る。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
いくつかの実施形態では、対象は、癌若しくは前癌状態と診断されているか、その症状があるか、又はその発症リスクがあるヒト対象である。いくつかの実施形態では、対象は変異EZH2タンパク質を発現する。例えば、変異EZH2は1つ以上の変異を含み、この変異は、置換、点変異、ナンセンス変異、ミスセンス変異、欠失、又は挿入、又は本明細書に記載の任意の他のEZH2変異である。いくつかの実施形態では、対象は、野生型EZH2タンパク質を発現する。
それを必要とする対象は、難治性又は抵抗性の癌を有し得る。「難治性又は抵抗性の癌」とは、処置、例えば単剤療法、例えば化学療法剤のみの単剤療法での処置に反応しない癌を意味する。いくつかの実施形態では、癌は、その特定の種類の癌の標準的な治療処置に対して難治性又は抵抗性であり得る。癌は、処置の開始時に抵抗性であってもよいし、又は処置中に抵抗性になってもよい。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、最新の治療での寛解後に再発した癌を有する。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、癌処置のためのすべての既知の有効な治療を受けて失敗している。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、少なくとも1つの事前療法を受けている。特定の実施形態では、事前療法は単独療法である。特定の実施形態では、事前療法は併用療法である。
いくつかの実施形態では、それを必要とする被検体は、以前の療法の結果として二次癌を有してもよい。「二次癌」は、以前の発癌性療法、例えば化学療法によって、又はその結果として発生する癌を意味する。
被検体はまた、EZH2ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤又は他の任意の治療剤に対して耐性を示すこともある。
本明細書で使用する場合、「反応性」という用語は、「反応性のある」、「感受性である」及び「感受性」と同義であり、本開示の組成物を投与されたときに被検体が治療反応を示す、例えば、被検体の腫瘍細胞又は腫瘍組織がアポトーシス及び/若しくは壊死を起こし、且つ/又は成長、分裂若しくは増殖の低下を示すことを意味する。この用語はまた、被検体が、本開示の組成物を投与されたときに一般集団と比較して、治療反応を示す、例えば、被検体の腫瘍細胞又は腫瘍組織がアポトーシス及び/若しくは壊死を起こし、且つ/又は成長、分裂若しくは増殖の低下を示す確率が高くなること又は高いことを意味する。
用語「サンプル」は、被検体から得られた任意の生物学的サンプルを指し、以下に限定されるものではないが、細胞、組織サンプル、体液(粘液、血液、血漿、血清、尿、唾液及び精液があるが、これに限定されるものではない)、腫瘍細胞及び腫瘍組織がある。好ましくは、サンプルは、骨髄、末梢血細胞、血液、血漿及び血清から選択される。サンプルは、処置又は検査中の被検体から得てもよい。あるいはサンプルは、当該技術分野における通常の業務に従い医師が採取してもよい。
本明細書で使用する場合、「正常細胞」は、「細胞増殖障害」の一部として分類できない細胞である。正常細胞は、望ましくない状態又は疾患の発症をもたらし得る、制御不能な増殖又は異常増殖、又はその両方が見られない。好ましくは、正常細胞は、正常に機能する細胞周期チェックポイント制御機構を有する。
本明細書で使用する場合、「細胞を接触させること」は、化合物若しくは他の組成物が細胞と直接接触している、又は所望の生物学的効果を細胞に誘発するのに十分近い状態をいう。
本明細書で使用される「処置」又は「処置する」は、疾患、状態、又は障害に対処するための患者の管理及びケアを指し、EZH2阻害剤及び/又は免疫チェックポイント阻害剤を投与して、疾患、状態、若しくは障害の症状若しくは合併症を緩和する、又は疾患、状態、若しくは障害を取り除くことを含む。
本明細書に開示される技術の実施形態、利点、特徴、及び使用のいくつかは、以下の実施例からより完全に理解されるであろう。実施例は、本開示の利点の一部を例示し、特定の実施形態を説明することを意図しているが、本開示の全範囲を例示することを意図するものではなく、したがって、本開示の範囲を限定しない。
インビトロでの肺癌細胞株のEZH2阻害に対する感受性
SWI/SNF複合体タンパク質の状態は、様々な肺癌細胞株で決定された。試験したすべての肺癌細胞株の約1/3が、SWI/SNFメンバータンパク質の異常を示した。以下の表2Aは、1つ以上のSWI−SNF変化を有すると特定された31個の肺癌細胞株におけるSMARCA2及びSMARCA4タンパク質の状態を示している。濃い灰色は機能の喪失を示し、薄い灰色は正常な機能を示す。表2Aに示すように、31個のSWI/SNF機能喪失肺癌細胞株のうち10個は、SMARCA4の単一喪失を示し、表の上部に列挙された31株のうち8株は、SMARCA2/SMARCA4の二重喪失を示した。
以下の表2Bは、1つ以上のSWI−SNFの変化を有すると同定された33個の肺癌細胞株におけるSMARCA2及びSMARCA4タンパク質の状態を示している。濃い灰色は突然変異を示し、薄い灰色は機能の喪失を示し、空白は通常の機能を示す。
SWI/SNF改変細胞株を、インビトロでEZH2阻害剤タゼメトスタットを用いて処理し、細胞増殖を処理の14日後に評価した(図2を参照)。SMARCA2/SMARCA4二重喪失肺癌細胞株は、他のSWI/SNF異常を有する肺癌細胞株よりもEZH2阻害に対して感受性が高いことが分かった。
インビボでの肺癌異種移植片におけるEZH2阻害に対する感受性
SMARCA4単一喪失NSCLC細胞株及びSMARCA2/SMARCA4二重喪失NSCLC細胞株の両方を、NSCLC異種移植片モデルに関して臨床的に達成可能な用量(約250mg/kg体重)で、インビボでEZH2阻害剤タゼメトスタットを用いて処理した(図3及び図4)。インビトロデータと一致して、腫瘍成長の阻害は、SMARCA4単一喪失異種移植片よりもSMARCA2/SMARCA4二重喪失異種移植片でより顕著であった。4つのSMARCA2/SMARCA4二重喪失細胞株のうち2つでは、腫瘍の退縮が観察された(図3)。
議論
本明細書で提供されるデータは、肺癌のサブタイプであるSMARCA2/SMARCA4二重喪失NSCLCが、EZH2阻害により効果的に処置できることを実証している。SMARCA2/SMARCA4二重喪失を示すものを含む原発性NSCLC腫瘍は、典型的には、低分化腺癌タイプ(例えば、固形腺癌)であり、上皮間葉転換(EMT)の特徴(例えば、低いE−カドヘリン発現レベル及び高いビメンチン発現レベル)を頻繁に示す。これらの特徴は、ラブドイド腫瘍の特徴(例えば、低分化及び間葉様)と一致し、したがって、SMARCA2/SMARCA4二重喪失によって特徴付けられるNSCLCの以前は認識されていなかったラブドイド様サブタイプを示している。SMARCA2とSMARCA4の二重喪失は、NSCLC患者の生存率の低下と相関する(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Reisman et al. Cancer Res 2003を参照)。さらに、二重喪失腫瘍は、NSCLCに関連する他の変異(例えば、EGFR、KRAS、ALK融合)について陰性である頻度が高く、したがって療法に利用可能な選択肢が制限される。したがって、SMARCA2/SMARCA4二重喪失NSCLC腫瘍クラスは、まだ対処されていない医学的要求の高い肺癌のサブタイプを表す。本開示は、EZH2阻害が腫瘍成長の阻害及び/又はそのような腫瘍における望ましい臨床結果の誘発に有効であることを実証する。
例示的な配列
SMARCA2
>NM_001289396.1ホモサピエンスSWI/SNF関連、マトリックス関連、アクチン依存性クロマチン調節因子、サブファミリーa、メンバー2(SMARCA2)、転写変異体3、mRNA
>NM_139045.3ホモサピエンスSWI/SNF関連、マトリックス関連、アクチン依存性クロマチン調節因子、サブファミリーa、メンバー2(SMARCA2)、転写変異体2、mRNA
>NM_001289397.1ホモサピエンスSWI/SNF関連、マトリックス関連、アクチン依存性クロマチン調節因子、サブファミリーa、メンバー2(SMARCA2)、転写変異体4、mRNA
>NM_001289398.1ホモサピエンスSWI/SNF関連、マトリックス関連、アクチン依存性クロマチン調節因子、サブファミリーa、メンバー2(SMARCA2)、転写変異体5、mRNA
>NP_001276325.1推定包括的転写活性化因子SNF2L2アイソフォームa[ホモサピエンス]
>NP_620614.2推定包括的転写活性化因子SNF2L2アイソフォームab[ホモサピエンス]
>NP_001276326.1推定包括的転写活性化因子SNF2L2アイソフォームc[ホモサピエンス]
>NP_001276327.1推定包括的転写活性化因子SNF2L2アイソフォームd[ホモサピエンス]
SMARCA4
>NM_001128849.1ホモサピエンスSWI/SNF関連、マトリックス関連、アクチン依存性クロマチン調節因子、サブファミリーa、メンバー4(SMARCA4)、転写変異体1、mRNA
>NM_001128844.1ホモサピエンスSWI/SNF関連、マトリックス関連、アクチン依存性クロマチン調節因子、サブファミリーa、メンバー4(SMARCA4)、転写変異体2、mRNA
>NM_001128845.1ホモサピエンスSWI/SNF関連、マトリックス関連、アクチン依存性クロマチン調節因子、サブファミリーa、メンバー4(SMARCA4)、転写変異体4、mRNA
>NM_001128846.1ホモサピエンスSWI/SNF関連、マトリックス関連、アクチン依存性クロマチン調節因子、サブファミリーa、メンバー4(SMARCA4)、転写変異体5、mRNA
>NM_001128847.1ホモサピエンスSWI/SNF関連、マトリックス関連、アクチン依存性クロマチン調節因子、サブファミリーa、メンバー4(SMARCA4)、転写変異体6、mRNA
>NM_001128848.1ホモサピエンスSWI/SNF関連、マトリックス関連、アクチン依存性クロマチン調節因子、サブファミリーa、メンバー4(SMARCA4)、転写変異体7、mRNA
>NP_001122321.1転写活性化因子BRG1アイソフォームA[ホモサピエンス]
>NP_001122316.1転写活性化因子BRG1アイソフォームB[ホモサピエンス]
>NP_001122317.1転写活性化因子BRG1アイソフォームC[ホモサピエンス]
>NP_001122318.1転写活性化因子BRG1アイソフォームD[ホモサピエンス]
>NP_001122319.1転写活性化因子BRG1アイソフォームE[ホモサピエンス]
>NP_001122320.1転写活性化因子BRG1アイソフォームF[ホモサピエンス]
参考文献
本明細書、例えば、背景、要約、詳細な説明、実施例、及び/又は参考文献のセクションで言及されたすべての刊行物、特許、特許出願、特許公報、及びデータベースエントリ(例えば、配列データベースエントリ)は、個々の出版物、特許、特許出願、特許公報、及びデータベースエントリが参照により具体的かつ個別に本明細書に組み込まれるかのように、参照によりそれらの全内容が本明細書に組み込まれる。矛盾する場合は、本明細書のあらゆる定義を含む本出願が優先される。
等価物及び範囲
特段の記載がない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書では、単数形は、そうでないと明確に文脈に示されない限り複数形も含む。本明細書で言及されるすべての出版物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、参照により組み込まれる。本明細書で引用される参考文献は、特許請求された発明の先行技術であると認められない。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、及び例は、単に例示目的であり、限定することを意図したものではない。
当業者であれば、本明細書に記載の実施形態の多くの等価物を認識する、又は日常的な実験のみを使用してこれらを確認することができるであろう。本開示の範囲は、上記の説明に限定されることを意図するものではなく、添付の特許請求の範囲に示される。
「1つの(a)」、「1つの(an」)、及び「その(the)」などの冠詞は、それとは反対の指示がないか、又は文脈から明白でない限り、1つ以上を意味し得る。グループの2つ以上のメンバーの間に「又は」を含むクレーム又は説明は、それとは反対の指示がない限り、又は文脈から明白でない限り、グループのメンバーの1つ、2つ以上、又はすべてが存在する場合に満たされたことになる。2つ以上のグループのメンバーの間に「又は」を含むグループの開示は、グループのメンバーが唯1つ存在する実施形態、グループのメンバーが2つ以上存在する実施形態、及びグループのメンバーのすべてが存在する実施形態を提供する。簡潔にするために、これらの実施形態は、本明細書で個々に詳しく説明されていないが、これらの実施形態のそれぞれは、本明細書で提供され、かつ具体的に請求される、又は放棄され得ることを理解されたい。
本開示は、1つ以上のクレーム又は1つ以上の説明の関連部分からの1つ以上の制限、要素、条項、又は説明用語が別のクレームに導入されるすべての変形、組み合わせ、及び入れ替えを包含することを理解されたい。例えば、別のクレームに従属するクレームは、同じ基本クレームに従属する任意の他のクレームに見られる1つ以上の限定を含めるために修正することができる。さらに、クレームに組成物が記載されている場合、特段の記載がない限り、又は矛盾若しくは不一致が生じ得ることが当業者に明らかでない限り、本明細書に開示される作製又は使用する任意の方法に従った、又は当技術分野で公知の方法(存在する場合)に従った、組成物を作製又は使用する方法が含まれることを理解されたい。
要素が、例えばマーカッシュグループ形式でリストとして提示される場合、要素のあらゆる可能なサブグループも開示されること、及び任意の要素又は要素のサブグループをグループから排除できることを理解されたい。「含む」という用語は、オープンであることを意図しており、追加の要素又はステップの包含を許容することにも留意されたい。一般に、実施形態、製品、又は方法が、特定の要素、特徴、又はステップを含むとして言及される場合、そのような要素、特徴、又はステップからなるか、又はこれらから実質的になる実施形態、製品、又は方法も提供されることを理解されたい。簡潔にするために、これらの実施形態は、本明細書では個々に詳しく説明されていないが、これらの実施形態のそれぞれは、本明細書で提供され、かつ具体的に請求される、又は放棄され得ることを理解されたい。
範囲が与えられる場合、両端が含まれる。さらに、それとは反対の指示がないか、又は文脈及び/若しくは当業者の理解から明白でない限り、範囲として表される値は、文脈がそうではないと明確に示されていない限り、範囲の下限の単位の10分の1まで、いくつかの実施形態で述べられた範囲内の任意の特定の値をとり得ることを理解されたい。簡潔にするために、各範囲の値は、本明細書では個別に詳しく説明されていないが、これらの値のそれぞれは、本明細書で提供され、かつ具体的に請求される、又は放棄され得ることを理解されたい。また、それとは反対の指示がないか、又は文脈及び/若しくは当業者の理解から明白でない限り、範囲として表される値は、所与の範囲内の任意の部分的な範囲をとり得、部分的な範囲の両端は、範囲の下限の単位の10分の1と同じ精度で表されることを理解されたい。
加えて、本開示のどの特定の実施形態も、いずれか1つ以上のクレームから明示的に除外できることを理解されたい。範囲が与えられる場合、その範囲内の任意の値は、いずれか1つ以上のクレームから明示的に除外することができる。本発明の組成物及び/又は方法の任意の実施形態、要素、特徴、用途、又は態様は、いずれか1つ以上のクレームから除外することができる。簡潔にするために、1つ以上の要素、特徴、目的、又は態様が除外される実施形態のすべてが、本明細書で明示的に示されているわけではない。