JP2020204466A - 空調システムの施工方法及び空調システムの設計方法 - Google Patents

空調システムの施工方法及び空調システムの設計方法 Download PDF

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Abstract

【課題】空調機を設置するための部屋が不要であり、空調機、排気口、給気口を離して配置しやすく、空調機からの吹出気流がショートサーキットしにくい空調システムの施工方法及び空調システムの設計方法を提供すること。
【解決手段】本発明の空調システムの施工方法及び空調システムの設計方法は、建物1には、複数の部屋に隣接するリターン区画を形成し、部屋には、送風機40a、40b、40c、40d、41a、41b、41c、41dから送られる空気を吹き出す吸気部9a、9b、9c、9d、18a、18b、18c、18dを設け、部屋とリターン区画との間には、部屋からリターン区画に向けた排出気流を形成する排気部52を設け、リターン区画に、複数台の送風機40a、40b、40c、40d、41a、41b、41c、41dと少なくとも1台の空調機30aとを設置することを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、建物内の複数の部屋を1つのエアコンディショナーと、送風機で空調する空調システムの施工方法及び空調システムの設計方法に関する。
従来、この種の空調システムは、建物内部に空調機室を設け、この空調機室に吸い込んだ空気をエアコンディショナーで温度調節し、送風機で複数の部屋に送風するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
以下、その空調システムについて図8を参照しながら説明する。
図8に示すように、建物の屋根裏に空調機室101が設置されており、この空調機室101は床面116との間に開口部を設けた垂れ壁106を垂下することで、混合部133と分散室200の二部屋に区切られている。
空調機室101の一方の部屋である混合部133の一側壁111には、外部空気吸込口としての屋根裏空気吸込口400と外気導入口311とを設け、また通風口としてのガラリ115が床面116に設けられている。また一側壁111にはエアコン102が設置されている。ガラリ115は空調機室101から住宅内に送風された空気を再び空調機室101に戻すために住宅内の空間に連通している。
空調機室101の他方の部屋である分散室200には、垂れ壁106と並行になる格子状の給気送風機取り付け壁144が設けられている。給気送風機取り付け壁144には、給気送風機104が取り付けられている。給気送風機取り付け壁144に対して垂れ壁106のある側と反対の側、すなわち給気送風機取り付け壁144と壁面112bとの間は、給気送風機104に接続され室内の各部屋へと配設される給気ダクト(図示せず)の配管スペース202となり、空調機室101の壁面112bや床面116には、空調対象の居室の数だけ給気ダクトの通る通し孔(図示せず)が形成されている。
給気送風機104は直流モータで駆動され、給気送風機104のファン吸気口である吸気口141から空調機室101内の空気が吸引されて住宅の複数の部屋に送風される。空調機室101と部屋との間では空気が循環する。エアコン102が駆動されることで、エアコンからの空気は混合部133に流出する。給気送風機104が駆動されることで、屋根裏空気吸込口400からは屋根裏からの空気が空調機室101に流出し、外気導入口311からは外気が空調機室101に流出する。このようにして、住宅の複数の部屋は、一つのエアコン102と複数の給気送風機104とを用いて空調している。
特開2012−57880号公報
このような従来の空調システムでは、エアコン即ち空調機を設置するために、専用の部屋として空調機室を設けることが必要である。また空調機室への吸込空気即ち吸込気流と空調機の吹出空気即ち吹出気流を混合するために空調室内に混合部を設ける必要があり、さらに、(先行特許文献でも段落番号0046に記述されている通り)エアコン、排気口、給気口の位置が近すぎて、狭い範囲で空気が循環してしまう現象であるショートサーキットを防止するため、空調機、排気口、給気口の設置位置をできるだけ離す工夫が必要になる。このように、空調機室にはある程度の大きさの容積が必要で、施工も容易ではない。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、空調機を設置するための部屋が不要であり、空調機、排気口、給気口を離して配置しやすく、空調機からの吹出気流がショートサーキットしにくい空調システムの施工方法及び空調システムの設計方法を提供することを目的としている。
本発明の空調システムの施工方法は上記目的を達成するために、建物には、複数の部屋に隣接するリターン区画を形成し、部屋には、送風機から送られる空気を吹き出す吸気部を設け、部屋とリターン区画との間には、部屋からリターン区画に向けた排出気流を形成する排気部を設け、リターン区画に、複数台の送風機と少なくとも1台の空調機とを設置するものである。
この手段により、リターン区画に設置された空調機で複数の部屋を空調することができ、また、空調機を設置するために専用の空調機室を設けることが不要な空調システムが得られる。
また他の手段は、建物内の階段室や廊下をリターン区画としたものである。
これにより、リターン区画は空調機を設置するためのある程度の容積が確保されているので、リターン区画に空調機、排気口、吸気口を離して配置しやすい空調システムが得られる。
また他の手段は、空調機からの吹出気流の吹出方向を避けて送風機の吸込口を設けたものである。
これにより、空調機からの吹出気流がショートサーキットしにくい空調システムが得られる。
また他の手段は、空調機からの吹出気流の吹出口の下方に送風機を設置するとともに、空調機からの吹出気流の吹出方向を略水平としたものである。
これにより、空調機からの吹出空気がショートサーキットしにくい空調システムが得られる。
また他の手段は、空調機の上方に少なくとも1つ以上の排気部を設けたものである。
これにより、空調機からの吹出気流がショートサーキットしにくい空調システムが得られる。
また他の手段は、複数の送風機の合計送風量を空調機の空調風量よりも多くしたものである。
これより、専用の空調機室が不要で、リターン区画に空調機、排気口、吸気口を離して配置しやすい空調システムが得られる。
本発明の空調システムの設計方法は上記目的を達成するために、建物についての空調負荷計算によって空調機の空調能力を決定する空調能力決定ステップと、部屋のそれぞれの容積から、それぞれの部屋に送風する送風量を決定する送風量決定ステップと、送風量決定ステップで決定したそれぞれの部屋への送風量を合算した合計送風量を算出する合計送風量算出ステップと、合計送風量算出ステップで決定した合計送風量から、空調機の最適空調風量を決定する空調風量決定ステップとを有し、送風量決定ステップで決定した送風量から、それぞれの部屋に送風する送風機を選定し、空調能力決定ステップで決定した空調能力を備え、空調風量決定ステップで決定した最適空調風量以下の空調風量を風量設定できる空調機を選定するものである。
この手段により、建物内には、複数の部屋と、リターン区画とを有し、部屋には、送風機から送られる空気を吹き出す吸気部を設け、部屋には、部屋からリターン区画に向けた排出気流を形成する排気部を設け、リターン区画に、複数台の送風機と少なくとも1台の空調機とを設置し、リターン区画の空気を、吸気部から部屋に導き、部屋の空気を、排気部からリターン区画に導く空調システムに用いる送風機と空調機とを最適に選定できる。
また、他の手段は、空調能力決定ステップで決定した空調能力を備えた空調機が、空調風量決定ステップで決定した最適空調風量以下の空調風量を風量設定できない場合には、空調機で設定できる最少空調風量が合計送風量の70%以下となるように送風機を選定するものである。
この手段により、建物内には、複数の部屋と、リターン区画とを有し、部屋には、送風機から送られる空気を吹き出す吸気部を設け、部屋には、部屋からリターン区画に向けた排出気流を形成する排気部を設け、リターン区画に、複数台の送風機と少なくとも1台の空調機とを設置し、リターン区画の空気を、吸気部から部屋に導き、部屋の空気を、排気部からリターン区画に導く空調システムに用いる送風機と空調機との選定において、特に部屋の合計容積が小さいために送風機が必要とする合計送風量が小さい場合に、空調風量と合計送風量とを最適に設計できる。
また他の手段は、風量を調整できる風量調整手段を備えた送風機を選定するものである。
この手段により、空調システムの施工後においては、風量調整手段を用いて風量を増加しまたは減少させて部屋毎の空調負荷の変動に対応して空調能力を調整することができる。
本発明によれば空調機室を設けることが不要で施工を簡単に行うことができ、空調機、排気口、吸気口が配置しやすく、これらの施工工事がしやすいという効果のある空調システムを提供できる。
また、空調機からの吹出気流がショートサーキットしにくく、拡散・混合されて、複数の部屋に均等な温湿度の空調空気を供給でき、部屋ごとの温湿度の差が少ないという効果のある空調システムを提供できる。
本発明の実施の形態1における空調システムの構成を示す建物の1階平面図 同建物の2階平面図 同建物の2階階段室部分の拡大平面図 同建物の2階階段室部分のA−A断面図 同建物の2階階段室部分のB−B断面図 本発明の実施の形態2における空調システムの構成を示す建物の平面図 同建物の廊下部分のC−C断面図 従来の空調システムの空調室を示す斜視図
本発明の第1の実施の形態による空調システムの施工方法は、建物には、複数の部屋に隣接するリターン区画を形成し、部屋には、送風機から送られる空気を吹き出す吸気部を設け、部屋とリターン区画との間には、部屋からリターン区画に向けた排出気流を形成する排気部を設け、リターン区画に、複数台の送風機と少なくとも1台の空調機とを設置するものであり、リターン区画で運転される空調機によって建物内の複数の部屋から排出された空気がリターン区画内で温湿度を調整されて建物内の複数の部屋へ送風機で送風されることで、建物内の空調を行うことができる。
本発明の第2および第3の実施の形態による空調システムの施工方法は、建物内の階段室や廊下をリターン区画としたものであり、リターン区画で建物内の空気調和を行うことができるので、専用の空調機室を設けることが不要であり、空調機を設置するためのある程度の容積を確保することができる。
本発明の第4の実施の形態による空調システムの施工方法は、空調機からの吹出気流の吹出方向を避けて上記送風機の吸込口を設けたものであり、空調機からの吹出気流が直接送風機に吸引されず、ショートサーキットしにくく、リターン区画内で拡散・混合することができる。
本発明の第5の実施の形態による空調システムの施工方法は、空調機からの吹出気流の吹出口の下方に送風機を設置するとともに、空調機からの吹出気流の吹出方向を略水平としたものであり、空調機からの吹出空気が直接送風機に吸引されず、ショートサーキットしにくく、リターン区画内で拡散・混合することができる。
本発明の第6の実施の形態による空調システムの施工方法は、空調機の上方に少なくとも1つ以上の排気部を設けたもので、建物内から排気された空気が空調機に吸引されるので、空調機の運転制御を室温に近い温度を検出して行わせることができる。
本発明の第7の実施の形態による空調システムの施工方法は、複数の送風機の合計送風量を空調機の空調風量よりも多くしたものであり、リターン区画には空調機の空調風量以上の送風量が建物内の部屋から排出され流入するので、ショートサーキットが起こりにくく、空調機からの吹出空気と部屋からの流入空気をリターン区画内で混合することができる。
本発明の第8の実施の形態による空調システムの設計方法は、建物についての空調負荷計算によって空調機の空調能力を決定する空調能力決定ステップと、部屋のそれぞれの容積から、それぞれの部屋に送風する送風量を決定する送風量決定ステップと、送風量決定ステップで決定したそれぞれの部屋への送風量を合算した合計送風量を算出する合計送風量算出ステップと、合計送風量算出ステップで決定した合計送風量から、空調機の最適空調風量を決定する空調風量決定ステップとを有し、送風量決定ステップで決定した送風量から、それぞれの部屋に送風する送風機を選定し、空調能力決定ステップで決定した空調能力を備え、空調風量決定ステップで決定した最適空調風量以下の空調風量を風量設定できる空調機を選定するものであり、送風機と空調機とを最適に選定できる。
本発明の第9の実施の形態による空調システムの設計方法は、空調能力決定ステップで決定した空調能力を備えた空調機が、空調風量決定ステップで決定した最適空調風量以下の空調風量を風量設定できない場合には、空調機で設定できる最少空調風量が合計送風量の70%以下となるように送風機を選定するものであり、特に部屋の合計容積が小さいために送風機が必要とする合計送風量が小さい場合に、空調風量と合計送風量とを最適に設計できる。
本発明の第10の実施の形態による空調システムの設計方法は、風量を調整できる風量調整手段を備えた送風機を選定するものであり、空調システムの施工後においては、風量調整手段を用いて風量を増加しまたは減少させて部屋毎の空調負荷の変動に対応して空調能力を調整することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の一実施の形態における空調システムの構成を示す建物の1階平面図、図2は同建物の2階平面図である。
図1に示すように、建物1の1階には玄関2、リビング3、キッチン4が配置され、トイレ5、浴室6、洗面脱衣室7等が設けられている。リビング3には、2階に上がる階段8が設けられている。そして、建物1の1階天井には、1階の室内に送風する吹出グリル(吸気部)9a、9b、9c、9dが設けられている。吹出グリル9a、9b、9c、9dには、1階用送風ダクト10a、10b、10c、10dの一端がそれぞれ接続されている。1階用送風ダクト10a、10b、10c、10dの他端は2階に配設されている。なお、吹出グリル9a、9b、9c、9dは、天井に代えて床に設けてもよい。吹出グリル9a、9b、9c、9dを床に設ける場合には、1階用送風ダクト10a、10b、10c、10dは床下に配設する。
図2に示すように、建物1の2階には、1階からの階段8と廊下11とで構成される階段室12が配置されている。建物1の2階の部屋A13、部屋B14、及び部屋C15は、階段室12に隣接して配置される。部屋A13には納戸A16が設けられている。部屋B14には納戸B17が設けられている。そして、建物1の2階天井62には、2階の室内に送風する吹出グリル(吸気部)18a、18b、18c、18dが設けられている。吹出グリル(吸気部)18a、18bは、2階の部屋A13の天井62に設けられている。吹出グリル(吸気部)18cは、2階の部屋B14の天井62に設けられている。吹出グリル(吸気部)18dは2階の部屋C15の天井62に設けられている。
吹出グリル(吸気部)18a、18b、18c、18dには、2階用送風ダクト19a、19b、19c、19dの一端がそれぞれ接続されている。なお、吹出グリル18a、18b、18c、18dは、天井62に代えて床に設けてもよい。吹出グリル18a、18b、18c、18dを床に設ける場合には、2階用送風ダクト19a、19b、19c、19dは2階の床下に配設する。
図3は本実施の形態における空調システムの建物の2階の階段室部分の拡大平面図、図4は図3のA−A矢視図、図5は図3のB−B矢視図である。
図3〜図5に示すように、階段室12は、階段8の側壁20と、階段8を1階から上がったところの壁A21と、2階の各部屋A13、B14、C15との間の仕切壁22と、及び壁A21に対向して設けられた壁B23と、で囲われている。壁A21と壁B23の間隔は約3.8mであり、階段8及び廊下11の幅は約0.9mである。なお、建築設計図面における柱の中心寸法を用い、壁の厚みを考慮しない寸法を記載したため、寸法に“約”を追記している。以下の寸法表示でも同様である。
廊下11の階段8側には手摺24が取り付けられている。手摺24は、横桟25と縦桟26とで構成されている。縦桟26と縦桟26との間は、スリット27になっている。階段8の1階空間側にも同様の手摺28が取り付けられている。
階段室12の壁B23の上方には、側壁20に寄せて空調機30aが設置されている。この空調機30aは室外機(図示せず)と接続されるセパレート型のエアコンディショナーの壁掛型室内機である。この空調機30aには空調風量として、強風、中風、弱風のように室内機の送風量を設定する機能がある。空調機30aの上面31には、吸込気流32aが吸入される吸入口を設けている。また、空調機30aの前面下部には、吹出気流33aを吹き出す吹出口を設けている。吹出口には、上下方向風向制御板34を設けている。上下方向風向制御板34は、吹出気流33aを略水平方向に吹き出すように設定する。ここで、略水平方向とは、水平方向から15度以内の下向きを含む。また、吹出口には、水平方向風向制御板(図示せず)を設けている。水平方向風向制御板は、吹出気流33aを側壁20と略並行に壁A21に向かって吹き出すように設定する。
壁B23には、1階用送風機40a、40b、40c、40dと2階用送風機41a、41b、41c、41dとが取り付けられている。1階用送風機40a、40b、40c、40dと2階用送風機41a、41b、41c、41dとは空調機30aの下方に配置している。1階用送風機40は4台、2階用送風機41は4台設置され、1台の1階用送風機40には1本の1階用送風ダクト10を接続し、1台の2階用送風機41には1本の2階用送風ダクト19を接続している。
1階用送風機40及び2階用送風機41の内部には、シロッコファン42が設けられており、階段室12から空気を吸い込み、吸い込まれた空気は、1階用送風ダクト10および2階用送風ダクト19内を流れて建物1内の各部屋に吹き出している。階段室12から空気を吸い込むことで、吸込気流43が発生する。吸い込まれた空気は、吹出気流44として1階用送風ダクト10および2階用送風ダクト19内を流れる。
1階用送風機40a、40b、40c、40dと2階用送風機41a、41b、41c、41dは風量調整手段を備えている。風量調整手段は、例えばファンの回転数を変えるノッチ切換スイッチや吹出グリル9a〜9dの吹出口の開口面積を調整するシャッター(図示省略)である。
2階の各部屋A13、B14、C15には、階段室12からの入り口となるドアー50の下側隙間51とともに、仕切壁22の空調機30aよりも高い天井62付近に排気部52が設けられている。下側隙間51や排気部52には、2階の排出気流53が形成される。1階の各部屋には、階段室12と連通する開口部が設けられている。この開口部が階段室12への排出部55に相当し、この開口部には、1階の排出気流56が形成される。
よって、階段室12は、リビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14、部屋C15で構成される建物1内の複数の部屋から排出された空気が合流するリターン区画となる。すなわち、リターン区画となる階段室12は、リビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14、及び部屋C15と隣接している。
リビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14、及び部屋C15それぞれに送風する送風量は、リビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14、及び部屋C15のそれぞれの容積から決定する(送風量決定ステップ)。そして、送風量決定ステップで決定したリビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14、及び部屋C15へのそれぞれの送風量を合算した合計送風量(以下合計送風量:Vhという)を算出する(合計送風量算出ステップ)。送風量決定ステップで決定した送風量から、リビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14、及び部屋C15のそれぞれに送風する送風機の送風能力及び台数を選定する。なお、本実施の形態では、送風用ダクトは送風機の一部を構成する。すなわち、送風機の選定に用いる送風量は、送風用ダクトを経由し吹出グリル(吸気部)から吹き出される送風量である。空調のために必要な送風量は、部屋2.5mあたり少なくとも13m/h以上、理想的には20m/h程度が望ましく、部屋の大きさや負荷に応じて送風量を調整する。本実施の形態では、部屋A13は部屋B14より大きいため、2つの吹出グリル18a、18bを設け、送風機41a、41bで送風している。なお、送風機には送風調整手段を設けるので、1部屋に1台以上の送風機を設ける方が使い勝手がよくなる。
空調機30aの空調能力は、建物1についての空調負荷計算によって決定する(空調能力決定ステップ)。
すなわち、空調負荷計算は、壁・窓・天井等から侵入する伝達熱、窓ガラスを透過する日射の輻射熱、在室者からの発生熱と水分、照明や機械器具からの発生熱、取入れ外気や隙間風による熱量や水分を空調負荷として計算する(山田治夫,“冷凍および空気調和”,日本,株式会社養賢堂,1975年3月20日,p.240−247)。そして、この負荷計算結果に余裕をもたせ、能力でラインアップされている空調機の中から、建物1全体の空調機30aを選択し、建物1全体を空調する。
空調機30aの最適空調風量(以下最適空調風量:Vqという)は、合計送風量算出ステップで算出した合計送風量:Vhから決定する(空調風量決定ステップ)。
最適空調風量:Vqは、合計送風量:Vhの50%以下の風量であり、多くても70%以下の風量であり、空調機30aが空調負荷に対応して能力を発揮できる風量である。
空調機30aは、空調能力決定ステップで決定した空調能力を備え、空調風量決定ステップで決定した最適空調風量:Vq以下の空調風量を風量設定できる機種を選定する。
空調対象とする部屋の合計容積が小さい場合は、空調機30aで設定できる最少空調風量が、空調風量決定ステップで決定した最適空調風量:Vqより多い場合がある。この場合には、合計送風量:Vhの70%以下の風量を空調機30aで設定できるように送風機の合計送風量:Vhを増やす。
すなわち、空調機30aの空調能力を維持するため、空調機30aの空調風量を必要以上に下げるのではなく、合計送風量:Vhが空調機30aで設定できる最少空調風量が合計送風量:Vhの50%以下となるよう建物1内への送風量を部屋2.5mあたり20m/h以上に増やして対応するものである。
なお、建物内部への送風量を増やす方法として、各部屋への送風量を増やすだけでなく、室外との気密断熱性を確保した床下空間や屋根裏空間にも送風し、床下空間や屋根裏空間からリターン区画との間に開口部を設けて空調した空気を循環させることも有効である。建物内の通風箇所や送風機の送風量が多すぎても建物自体の空調負荷が変動するわけではないので空調能力に影響することは程んどない。
本実施の形態では、建物1の床面積は約97.7m、天井高さは2.5mであり、4kW相当の冷房能力をもつ空調機30aを設置しており、弱風モードでは冷房運転時700m/hが貫流ファンによって送風される。各室に送風する1階用送風機40、2階用送風機41とも、1台あたりの送風量2が中ノッチで150m/h程度のものを設定する。本実施の形態での建物1内へ送風される合計送風量:Vhは1200m/h程度になり、空調機30aの空調風量よりも多い。すなわち、本実施の形態では合計送風量:Vhの58%の風量が空調機30aで設定できる空調風量(弱風モード)として設計している。なお、本実施の形態では説明していないが、例えば床下への300m/h程度の送風を追加すると、合計送風量:Vhは1500m/h程度になるので、空調機30aの空調風量700m/hは合計送風量:Vhの46%に低下する。
上記構成において、空調機30aを建物1の内部の温度を設定して運転すると、吸込気流32aの温度を検出して冷房または暖房の空調運転を行う。空調された空気は空調機30aの吹出気流33aとなり、略水平方向に、そして側壁20と略並行に壁A21に向かって吹き出す。また、1階用送風機40及び2階用送風機41が運転されると、送風機の吸込気流43と吹出気流44が発生する。
空調機30aの吹出気流33aの風速3〜5m/sに対し、送風機(換気扇)の吸込気流43の風速は0.4m/s程度であり、送風機(換気扇)の吸込気流43は、空調機30aの吹出気流33aの風速より遅い。さらに、空調機30aの吹出気流33aは貫流ファンで送風されるため気流が遠くまで到達しやすく、シロッコファン42の運転により周囲の空気が吸い込まれて発生する送風機の吸込気流43には吸い込まれにくい。従って、空調機30aの吹出気流33aの大半は、拡散しながら壁A21付近に到達し、反転して階段8に沿って壁B23の方向に戻り、送風量の多い送風機の吸込気流43に合流して混合される。よって、空調機30aからの吹出気流33aの吹出方向を避けて1階用送風機40、2階用送風機41の吸込口を設けると、階段室12内をほぼ循環して拡散していく空調循環気流45が形成され、ショートサーキットが起こりにくくなる。
なお、冷房時よりも暖房時の方が吹出気流33aの比重が軽く上昇しやすいので、吹出気流33aが略水平方向に送風されるように、暖房時の吹出気流33aの方向は、冷房時の吹出気流33aの方向よりも下向きにしておくことが望ましい。
建物1の複数の部屋に送風されると、2階の部屋A13、B14、C15からの一部は2階の排出気流53として、また1階の各部屋からは1階の排出気流56として階段室12に戻る。このとき、排気部52は天井62付近に開口しているので、2階の排出気流53の大半は天井62に沿って空調機30aに向かって流れる空調戻り気流57を形成し、空調機30aの吸込気流32aに合流する。よって、空調機30aは各部屋の温度に近い空気温度を検出して運転制御される。排気部52は階段室12に導通しておればどこに設けても構わないが、階段室12の天井62に近く空調機30aに近いところに設ける方が、排出気流53がより多く空調機30aに吸い込まれ、吸込気流32aの温度が室温に近くなるので、空調機30aを運転するときの設定温度と建物1内の実温度の差が少なく運転制御される。
空調循環気流45は反転するまでは排出気流53や吸込気流43に対向して流れ、周囲の空気を巻き込み拡散していく。従って、空調循環気流45の温度は、流れていくにつれて、冷房時は空調機30aの吹出気流33a温度より上がり、暖房時は吹出気流33a温度より下がる。
空調循環気流45は、主に階段室12の階段8側に形成され、空調戻り気流57は主に階段室12の2階の廊下11側に形成される。さらに、建物1の部屋に送風される送風量が空調風量より多いので、階段室12内では空調機30aの吹出気流33aと、1階の排出気流56と2階の排出気流53とが混合される。混合されることで、空調循環気流45の温度と各部屋の温度差はさらに少なくなる。
手摺24また手摺28のスリット27を空気が流通して、この混合を助ける。1階の排出気流56の一部は、階段8と廊下11の境から空調戻り気流57にも合流する。また、廊下11に1階からの気流が合流しやすくするために、建物1の1階と2階を導通する通気スリットを設けてもよい(図示省略)。
本実施の形態の空調システムでは、各部屋に吹き出す吹出気流44の温度と各部屋の室温との温度差は、空調機30aの吹出気流33aの温度と各部屋との温度差より少なくなるので、部屋内にいる人は吹出気流44の室温との温度差によるストレスを感じにくくなるので快適性が高まる。
なお、インバーターで圧縮機の回転数を制御するエアコンは、室内の送風量が一定のときは空調負荷が少ない場合に吹出温度と室温との差が少なくなるように運転する。よって、空調機30aの圧縮機がインバーター式の場合、夏冬以外の中間期など空調負荷の少ない場合には部屋への送風量を少なくしても快適性は損なわれないので、合計送風量:Vhを少なくし、空調風量が合計送風量:Vh70%以上となっても構わない。
空調機30aと1階用送風機40、2階用送風機41全てが壁B23に設置されていなくてもよい。送風機の一部を階段室12の1階部分に設けることもできるし、仕切り壁22に設けることもできる。
空調機30aの水平方向風向制御板により吹出気流33aの向きを調整し、送風機の吸込気流43に合流する空調循環気流45を形成でき、空調循環気流45を形成する空間以外の空間に空調戻り気流57の風路を形成すればよく、空調機30aを仕切壁22に設けてもよい。平面視すると長方形のリターン区画の長辺方向に空調循環気流45が形成されればよい。
なお、空調機30aを、壁B23と仕切壁22とにそれぞれ設けてもよく、空調機30a以外にも温水放熱機などの暖房時の熱源を設けてもよい。2台の機器からの吹出気流が合流して階段室12内を循環し、1階用送風機40、2階用送風機41に吸い込まれればよいので、例えば太陽熱で温水を作り熱源とするような発展した空調システムにも、本設計・施工方法は応用できる。
本実施の形態の空調システムでは、空調風量より各部屋への合計送風量:Vhが多いので、各部屋からリターン区画へ戻った空気の一部は、空調機30aに吸い込まれ、残りの空気は空調機30aの吹出空気とリターン区画で十分に混合されて空調され各部屋に戻る。
送風機の風量調整手段で送風量を調節すれば、部屋の空調負荷の変動に送風機ごとに対応することができる。
階段室12の容積は約16.2mであり、空調機30aが空調循環気流45を形成して空調するので、専用の空調機室を設けることが不要となる。空調循環気流45が形成されれば、リターン区画の容積はこれ以下であっても構わないが、普通の階段室の容積はリターン区画の容積としても充分であり、空調機30aと1階用送風機40、2階用送風機41および排気部52、排出部55を構成しやすい。
(実施の形態2)
図6は本発明の実施の形態2における空調システムの構成を示す建物の平面図、図7は同建物の廊下部分のC−C断面図である。
図6及び図7に示すように、建物61は玄関2を有する平屋建てであり、リビング3、キッチン4が配置され、トイレ5、浴室6、洗面脱衣室7が設けられている。また、建物61には、部屋A63及び部屋B64が配置されている。部屋A63には納戸A65が設けられている。建物61のそれぞれの部屋A63、部屋B64、及びリビング3は、廊下66でつながっている。
各部屋A63及び部屋B64の天井62または床63には、室内に送風する吹出グリル(吸気部)68a、68b、68c、68d、68e、68fが設けられている。吹出グリル68a、68b、68c、68d、68e、68fには、送風ダクト63a、63b、64c、64d、64e、63fの一端がそれぞれ接続されている。送風ダクト63a、63b、63fは天井用送風ダクト82として天井62に配設され、送風ダクト64c、64d、64eは床下用送風ダクト83として床下に配設されている。
廊下66は、天井62、床63、玄関ドアー70を取り付ける玄関壁71、リビング3との仕切壁A72、キッチン4との仕切壁B73、トイレ5との仕切壁C74、空調機30bを取り付ける壁D75、部屋A63との仕切壁E76、および部屋B64との仕切壁F77で囲われた空間である。
廊下66の壁D75の上方には、仕切壁E76に寄せて空調機30bが設置されている。この空調機30bは室外機(図示せず)と接続されるセパレート型のエアコンディショナーの壁掛型室内機である。空調機30bの上面には、吸込気流32aが吸入される吸入口を設けている。また、空調機30bの前面下部には、吹出気流33bを吹き出す吹出口を設けている。吹出口には、上下方向風向制御板34を設けている。上下方向風向制御板34は、吹出気流33bを略水平方向に吹き出すように設定する。また、吹出口には、水平方向風向制御板(図示せず)を設けている。水平方向風向制御板は、吹出気流33bを仕切壁E76と略並行に玄関壁71に向かって吹き出すように設定する。
天井用送風機80と床下用送風機81とは空調機30bの下方に配置している。天井用送風機80は3台、床下用送風機81は3台設置されている。1台の天井用送風機80には1本の天井用送風ダクト82を接続し、1台の床下用送風機81には1本の床下用送風ダクト83を接続している。天井用送風機80及び床下用送風機81の内部には、シロッコファン(図示せず)が設けられており、廊下66から空気を吸い込み、吸い込まれた空気は、天井用ダクト82と床下用ダクト83内を流れて建物61内の各部屋A63、部屋B64、リビング3、及びキッチン4に吹き出している。廊下66から空気を吸い込むことで、吸込気流43が発生する。吸い込まれた空気は、吹出気流44として天井用送風ダクト82および床下用送風ダクト83を流れる。
天井用送風機80と床下用送風機81は風量調整手段を備えている。風量調整手段は、例えばファンの回転数を変えるノッチ切換スイッチや吹出グリル68a〜68fの吹出口の開口面積を調整するシャッター(図示省略)である。
天井用送風機80及び床下用送風機81は、壁D75と並行な仕切壁G84に設けている。つまり、壁D75と仕切壁G84との間は送風用区画部85であり、壁D75の下方には廊下66から送風用区画部85に連通する送風用開口部86を形成している。この送風用開口部86が実質天井用送風機80及び床下用送風機81の廊下66からの空気吸入部に相当するので、このような構成にすれば、空調機30bの下方に天井用送風機80、床下用送風機81に設けてなくても構わない。また、送風用区画部85の内壁には吸音材を設ける。
廊下66から部屋A63及び部屋B64への入り口となるドアー87の下側隙間88とともに、仕切壁E76と仕切壁F77の空調機30bよりも高い天井62付近に排気部52が設けられている。下側隙間88や排気部52には、排出気流89が形成される。リビング3と連通する開口部が廊下66への排出部90に相当し、この開口部には、リビング3からの排出気流91が形成される。
よって、廊下66は、複数の部屋すなわちリビング3、キッチン4、部屋A63及び部屋B64からの排出された空気が合流するリターン区画となる。また、リターン区画となる廊下66は、リビング3、キッチン4、部屋A63、及び部屋B64と隣接している。
リビング3、キッチン4、部屋A63、及び部屋B64それぞれに送風する送風量は、リビング3、キッチン4、部屋A63、及び部屋B64のそれぞれの容積から決定する(送風量決定ステップ)。そして、送風量決定ステップで決定したリビング3、キッチン4、部屋A63、及び部屋B64へのそれぞれの送風量を合算した合計送風量:Vhを算出する(合計送風量算出ステップ)。送風量決定ステップで決定した送風量から、リビング3、キッチン4、部屋A63、及び部屋B64のそれぞれに送風する送風機の送風能力及び台数を選定する。なお、本実施の形態では、送風用ダクトは送風機の一部を構成する。すなわち、送風機の選定に用いる送風量は、ダクトを経由し吹出グリル(吸気部)から吹き出される送風量である。空調のために必要な送風量は、部屋2.5mあたり少なくとも13m/h以上、理想的には20m/h程度が望ましく、部屋の大きさや負荷に応じて送風量を調整し、部屋が大きい場合は送風機を2台以上設置即ち吹出グリルを2か所以上設けることもある。
空調機30bの空調能力は、建物61についての空調負荷計算によって決定する(空調能力決定ステップ)。
空調機30bの最適空調風量:Vqは、合計送風量算出ステップで算出した合計送風量:Vhから決定する(空調風量決定ステップ)。
空調機30bは、空調能力決定ステップで決定した空調能力を備え、空調風量決定ステップで決定した最適空調風量:Vq以下の空調風量を風量設定できる機種を選定する。
空調対象とする部屋の合計容積が小さい場合は、空調機30bで設定できる最少空調風量が、空調風量決定ステップで決定した最適空調風量:Vqより多い場合がある。この場合には、合計送風量:Vhの70%以下の風量を空調機30bで設定できるように送風機の合計送風量:Vhを増やす。
すなわち、空調機30bの空調能力を維持するため、空調機30bの空調風量を必要以上に下げるのではなく、空調機30bで設定できる最少空調風量が合計送風量:Vhの50%以下となるよう建物61内への送風量を部屋2.5あたり20m/h以上に増やして対応するものである。送風機の送風量が多すぎても空調能力に影響することはない。
本実施の形態の高気密高断熱住宅では、建物61の床面積は約79.3m、天井高さ2.5mであり、3.6kW相当の冷房能力をもつ空調機30bを設置しており、弱風モードでは冷房運転時510m/hが貫流ファンによって送風される。各室に送風する天井用送風機80と床下用送風機81とも、1台あたりの送風量が中ノッチで150m/h程度のものを設定する。本実施の形態での建物61内へ送風される合計送風量:Vhは900m/h程度になり、空調機30bの空調風量よりも多い。
すなわち、本実施の形態では合計送風量:Vhの57%の風量が空調機30bで設定できる空調風量(弱風モード)として設計している。
上記構成において、空調機30bの空調温度を設定して運転すると、吸込気流32aの温度を検出して冷房または暖房の空調運転を行う。空調された空気は空調機30bの吹出気流33bとなり、略水平方向に、そして仕切壁E76と略並行に玄関壁71に向かって吹き出す。また、天井用送風機80、床下用送風機81が運転され、送風機の吸込気流43と吹出気流44が発生する。
本実施の形態においては、天井用送風機80、床下用送風機81を送風用区画部85の奥に設置し、送風用区画部85には吸音材が設けてあるので、天井用送風機80、床下用送風機81の運転音が廊下66に漏れにくい。なお、送風ダクト63a、63b、63f、送風ダクト64c、64d、64eも吸音ダクトを用いる。
空調機30bの吹出気流33bの風速3〜5m/sに対し、送風機(換気扇)の吸込気流43の風速は0.4m/s程度であり、送風機(換気扇)の吸込気流43は、空調機30bの吹出気流33bの風速より遅い。
よって、空調機30bの吹出気流33bの大半は玄関壁71付近に到達し、反転して床63に沿って壁D75の方向に戻り、送風機の吸込気流43に合流する。よって、空調機30bからの吹出気流33bの吹出方向を避けて送風用開口部86を設けると、廊下66内には空調循環気流92が形成され、ショートサーキットが起こりにくくなる。
なお、空調機30bと玄関壁71との距離と空調機30bの空調風量の設定によっては、吹出気流33bのほんどが玄関壁71に到達せずに拡散し、送風機の吸込気流43に合流して空調循環気流92を形成することもあり得る。
建物61の部屋A63、部屋B64、リビング3、及びキッチン4に送風されると、排出気流89、排出気流91として廊下66に戻る。このとき、排気部52は天井62付近に開口しているので、排出気流89の大半は天井62に沿って空調機30bに向かって流れる空調戻り気流93を形成し、空調機30bの吸込気流32aに合流する。空調戻り気流93の一部はリビング3から天井62付近を流れる排出気流91よっても形成される。そして、空調機30bは部屋A63、部屋B64、及びリビング3の温度に近い空気温度を検出して運転制御される。
空調循環気流92は反転するまでは排出気流89や空調戻り気流93に対向して流れ、周囲の空気を巻き込み拡散していく。従って、空調循環気流92の温度は、流れる距離が長くなるにつれて、冷房時は空調機30bの吹出気流33bの温度より上がり、暖房時は吹出気流33bの温度より下がる。
空調機30bの吹出気流33bと周囲の空気との混合により、部屋A63、部屋B64、及びリビング3に吹き出す吹出気流44の温度と、部屋A63、部屋B64、及びリビング3の室温との差は、空調機30bの吹出気流33bの温度と、部屋A63、部屋B64、及びリビング3の室温との差より小さくなるので、室内にいる人は吹出気流44の温度差によるストレスを感じにくくなるので快適性が高まる。
また、建物61の外から玄関ドアー70を開けて室内に入った時に、冷房時には部屋A63、部屋B64、及びリビング3の温度よりも低く、暖房時には部屋A63、部屋B64、及びリビング3の温度よりも高い温度の空調循環気流92に触れるので、屋外で感じていた暑さや寒さを玄関2で和らげることができ、また玄関ドアー70から侵入する外気が直接に部屋A63、部屋B64、及びリビング3に侵入することを防ぐこともできる。
また、高気密高断熱住宅等では、常時換気のために熱交換換気装置が設置されるが、この換気装置の室外空気吹出口も玄関2の天井62に設ければ、空調循環気流92と混合して部屋A63及び部屋B64に送られ、玄関ドアー70が開いたときは熱交換換気装置から吹き出す室外空気は静圧が高く、玄関ドアー70の開口部から室外に流出しやすいので、外気の侵入をより少なくすることができる。
なお、建物が大きい場合は、建物内を分割してゾーンに分け、上記実施の形態1と上記実施の形態2を組み合わせて使うこともできる。
実施の形態1、実施の形態2ともに、建物内で人の移動空間を利用している。これらの空間は居住者が長く居るところではないので、空調機や送風機の性能を発揮しやすいように機器を配置できるし、これらの機器の運転音も居住者に影響しにくい場所である。さらに、送風機も収納しやすい。
さらに、空調機30aは階段室12の廊下11の上方に設置され、略水平方向へ吹き出すので、階段室12を行き来する人が吹出気流33aに直接当たることもない。
階段室や廊下などの居住者の移動空間を用いて容易に室内すべてを空調することができ、また建物内を空調機の能力に合わせて複数のゾーンに分け空調できるので、床面積の大きい商業施設や病院などの建物の空調にも適用できる。
1 建物
12 階段室
9a、9b、9c、9d 吹出グリル(吸気部)
18a、18b、18c、18d 吹出グリル(吸気部)
30a 空調機
33 空調機の吹出気流
41a、41b、41c、41d 2階用送風機
40a、40b、40c、40d 1階用送風機
52 排気部
55 排出部
61 建物
66 廊下
68a、68b、68c、68d、68e、68f 吹出グリル
30b 空調機
80 天井用送風機
81 床下用送風機
90 排出部
本発明は、建物内の複数の部屋を1つのエアコンディショナーと送風機で空調する空調システムの施工方法及び空調システムの設計方法に関する。
従来、この種の空調システムは、建物内部に空調機室を設け、この空調機室に吸い込んだ空気をエアコンディショナーで温度調節し、送風機で複数の部屋に送風するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
以下、その空調システムについて図8を参照しながら説明する。
図8に示すように、建物の屋根裏に空調機室101が設置されており、この空調機室101は床面116との間に開口部を設けた垂れ壁106を垂下することで、混合部133と分散室200の二部屋に区切られている。
空調機室101の一方の部屋である混合部133の一側壁111には、外部空気吸込口としての屋根裏空気吸込口400と外気導入口311とを設け、また通風口としてのガラリ115が床面116に設けられている。また一側壁111にはエアコン102が設置されている。ガラリ115は空調機室101から住宅内に送風された空気を再び空調機室101に戻すために住宅内の空間に連通している。
空調機室101の他方の部屋である分散室200には、垂れ壁106と並行になる格子状の給気送風機取り付け壁144が設けられている。給気送風機取り付け壁144には、給気送風機104が取り付けられている。給気送風機取り付け壁144に対して垂れ壁106のある側と反対の側、すなわち給気送風機取り付け壁144と壁面112bとの間は、給気送風機104に接続され室内の各部屋へと配設される給気ダクト(図示せず)の配管スペース202となり、空調機室101の壁面112bや床面116には、空調対象の居室の数だけ給気ダクトの通る通し孔(図示せず)が形成されている。
給気送風機104は直流モータで駆動され、給気送風機104のファン吸気口である吸気口141から空調機室101内の空気が吸引されて住宅の複数の部屋に送風される。空調機室101と部屋との間では空気が循環する。エアコン102が駆動されることで、エアコンからの空気は混合部133に流出する。給気送風機104が駆動されることで、屋根裏空気吸込口400からは屋根裏からの空気が空調機室101に流出し、外気導入口311からは外気が空調機室101に流出する。このようにして、住宅の複数の部屋は、一つのエアコン102と複数の給気送風機104とを用いて空調している。
特開2012−57880号公報
このような従来の空調システムでは、エアコン即ち空調機を設置するために、専用の部屋として空調機室を設けることが必要である。また空調機室への吸込空気即ち吸込気流と空調機の吹出空気即ち吹出気流を混合するために空調室内に混合部を設ける必要があり、さらに、(先行特許文献でも段落番号0046に記述されている通り)エアコン、排気口、給気口の位置が近すぎて、狭い範囲で空気が循環してしまう現象であるショートサーキットを防止するため、空調機、排気口、給気口の設置位置をできるだけ離す工夫が必要になる。このように、空調機室にはある程度の大きさの容積が必要で、施工も容易ではない。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、空調機を設置するための部屋が不要であり、空調機、排気口、給気口を離して配置しやすく、空調機からの吹出気流がショートサーキットしにくい空調システムの施工方法及び空調システムの設計方法を提供することを目的としている。
本発明の空調システムの施工方法は上記目的を達成するために、建物には、複数の部屋に隣接するリターン区画を形成し、部屋には、送風機から送られる空気を吹き出す吸気部を設け、部屋とリターン区画との間には、部屋からリターン区画に向けた排出気流を形成する排気部を設け、リターン区画に、少なくとも1台の空調機と、空調機の吹出方向を避けて複数台の送風機の吸込口設け、送風機と吸込部とをダクトで接続し、複数の送風機の合計送風量を空調機の空調風量よりも多くして、リターン区画にて、空調機からの吹出気流を拡散させながら送風機の吸込気流に合流させて混合し、各部屋に吹き出す吹出気流温度と室温との温度差を、空調機の吹出気流温度と各部屋の室温との温度差より少なくしたものである。
この手段により、リターン区画に設置された空調機で複数の部屋を空調することができ、また、空調機を設置するために専用の空調機室を設けることが不要な空調システムが得られる。また、空調機からの吹出気流がショートサーキットしにくい空調システムが得られる。また、専用の空調機室が不要で、リターン区画に空調機、排気口、吸気口を離して配置しやすい空調システムが得られる。
また他の手段は、建物内の階段室や廊下をリターン区画としたものである。
これにより、リターン区画は空調機を設置するためのある程度の容積が確保されているので、リターン区画に空調機、排気口、吸気口を離して配置しやすい空調システムが得られる。
また他の手段は、空調機からの吹出気流の吹出口の下方に送風機を設置するとともに、空調機からの吹出気流の吹出方向を略水平としたものである。
これにより、空調機からの吹出空気がショートサーキットしにくい空調システムが得られる。
また他の手段は、空調機の上方に少なくとも1つ以上の排気部を設けたものである。
これにより、空調機からの吹出気流がショートサーキットしにくい空調システムが得られる。
本発明の空調システムの設計方法は上記目的を達成するために、建物についての空調負荷計算によって空調機の空調能力を決定する空調能力決定ステップと、部屋のそれぞれの容積から、それぞれの部屋に送風する送風量を決定する送風量決定ステップと、送風量決定ステップで決定したそれぞれの部屋への送風量を合算した合計送風量を算出する合計送風量算出ステップと、合計送風量算出ステップで決定した合計送風量から、合計送風量より少ない空調機の最適空調風量を決定する空調風量決定ステップとを有し、送風量決定ステップで決定した送風量から、それぞれの部屋に送風する送風機を選定し、空調能力決定ステップで決定した空調能力を備え、空調風量決定ステップで決定した最適空調風量以下の空調風量を風量設定できる空調機を選定するものである。
この手段により、建物内には、複数の部屋と、リターン区画とを有し、部屋には、送風機から送られる空気を吹き出す吸気部を設け、部屋には、部屋からリターン区画に向けた排出気流を形成する排気部を設け、リターン区画に、複数台の送風機と少なくとも1台の空調機とを設置し、リターン区画の空気を、吸気部から部屋に導き、部屋の空気を、排気部からリターン区画に導く空調システムに用いる送風機と空調機とを最適に選定できる。
また、他の手段は、空調能力決定ステップで決定した空調能力を備えた空調機が、空調風量決定ステップで決定した最適空調風量以下の空調風量を風量設定できない場合には、空調機で設定できる最少空調風量が合計送風量の70%以下となるように送風機を選定するものである。
この手段により、建物内には、複数の部屋と、リターン区画とを有し、部屋には、送風機から送られる空気を吹き出す吸気部を設け、部屋には、部屋からリターン区画に向けた排出気流を形成する排気部を設け、リターン区画に、複数台の送風機と少なくとも1台の空調機とを設置し、リターン区画の空気を、吸気部から部屋に導き、部屋の空気を、排気部からリターン区画に導く空調システムに用いる送風機と空調機との選定において、特に部屋の合計容積が小さいために送風機が必要とする合計送風量が小さい場合に、空調風量と合計送風量とを最適に設計できる。
また他の手段は、風量を調整できる風量調整手段を備えた送風機を選定するものである。
この手段により、空調システムの施工後においては、風量調整手段を用いて風量を増加しまたは減少させて部屋毎の空調負荷の変動に対応して空調能力を調整することができる。
本発明によれば空調機室を設けることが不要で施工を簡単に行うことができ、空調機、排気口、吸気口が配置しやすく、これらの施工工事がしやすいという効果のある空調システムを提供できる。
また、空調機からの吹出気流がショートサーキットしにくく、拡散・混合されて、複数の部屋に均等な温湿度の空調空気を供給でき、部屋ごとの温湿度の差が少ないという効果のある空調システムを提供できる。
本発明の実施の形態1における空調システムの構成を示す建物の1階平面図 同建物の2階平面図 同建物の2階階段室部分の拡大平面図 同建物の2階階段室部分のA−A断面図 同建物の2階階段室部分のB−B断面図 本発明の実施の形態2における空調システムの構成を示す建物の平面図 同建物の廊下部分のC−C断面図 従来の空調システムの空調室を示す斜視図
本発明の第1の実施の形態による空調システムの施工方法は、建物には、複数の部屋に隣接するリターン区画を形成し、部屋には、送風機から送られる空気を吹き出す吸気部を設け、部屋とリターン区画との間には、部屋からリターン区画に向けた排出気流を形成する排気部を設け、リターン区画に、少なくとも1台の空調機と、空調機の吹出方向を避けて複数台の送風機の吸込口設け、送風機と吸込部とをダクトで接続し、複数の送風機の合計送風量を空調機の空調風量よりも多くして、リターン区画にて、空調機からの吹出気流を拡散させながら送風機の吸込気流に合流させて混合し、各部屋に吹き出す吹出気流温度と室温との温度差を、空調機の吹出気流温度と各部屋の室温との温度差より少なくしたものであり、リターン区画で運転される空調機によって建物内の複数の部屋から排出された空気がリターン区画内で温湿度を調整されて建物内の複数の部屋へ送風機で送風されることで、建物内の空調を行うことができる。また、空調機からの吹出気流が直接送風機に吸引されず、ショートサーキットしにくく、リターン区画内で拡散・混合することができる。また、ショートサーキットが起こりにくく、空調機からの吹出空気と部屋からの流入空気をリターン区画内で混合することができる。
本発明の第2および第3の実施の形態による空調システムの施工方法は、建物内の階段室や廊下をリターン区画としたものであり、リターン区画で建物内の空気調和を行うことができるので、専用の空調機室を設けることが不要であり、空調機を設置するためのある程度の容積を確保することができる。
本発明の第4の実施の形態による空調システムの施工方法は、空調機からの吹出気流の吹出口の下方に送風機を設置するとともに、空調機からの吹出気流の吹出方向を略水平としたものであり、空調機からの吹出空気が直接送風機に吸引されず、ショートサーキットしにくく、リターン区画内で拡散・混合することができる。
本発明の第5の実施の形態による空調システムの施工方法は、空調機の上方に少なくとも1つ以上の排気部を設けたもので、建物内から排気された空気が空調機に吸引されるので、空調機の運転制御を室温に近い温度を検出して行わせることができる。
本発明の第6の実施の形態による空調システムの設計方法は、建物についての空調負荷計算によって空調機の空調能力を決定する空調能力決定ステップと、部屋のそれぞれの容積から、それぞれの部屋に送風する送風量を決定する送風量決定ステップと、送風量決定ステップで決定したそれぞれの部屋への送風量を合算した合計送風量を算出する合計送風量算出ステップと、合計送風量算出ステップで決定した合計送風量から、合計送風量より少ない空調機の最適空調風量を決定する空調風量決定ステップとを有し、送風量決定ステップで決定した送風量から、それぞれの部屋に送風する送風機を選定し、空調能力決定ステップで決定した空調能力を備え、空調風量決定ステップで決定した最適空調風量以下の空調風量を風量設定できる空調機を選定するものであり、送風機と空調機とを最適に選定できる。
本発明の第7の実施の形態による空調システムの設計方法は、空調能力決定ステップで決定した空調能力を備えた空調機が、空調風量決定ステップで決定した最適空調風量以下の空調風量を風量設定できない場合には、空調機で設定できる最少空調風量が合計送風量の70%以下となるように送風機を選定するものであり、特に部屋の合計容積が小さいために送風機が必要とする合計送風量が小さい場合に、空調風量と合計送風量とを最適に設計できる。
本発明の第8の実施の形態による空調システムの設計方法は、風量を調整できる風量調整手段を備えた送風機を選定するものであり、空調システムの施工後においては、風量調整手段を用いて風量を増加しまたは減少させて部屋毎の空調負荷の変動に対応して空調能力を調整することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の一実施の形態における空調システムの構成を示す建物の1階平面図、図2は同建物の2階平面図である。
図1に示すように、建物1の1階には玄関2、リビング3、キッチン4が配置され、トイレ5、浴室6、洗面脱衣室7等が設けられている。リビング3には、2階に上がる階段8が設けられている。そして、建物1の1階天井には、1階の室内に送風する吹出グリル(吸気部)9a、9b、9c、9dが設けられている。吹出グリル9a、9b、9c、9dには、1階用送風ダクト10a、10b、10c、10dの一端がそれぞれ接続されている。1階用送風ダクト10a、10b、10c、10dの他端は2階に配設されている。なお、吹出グリル9a、9b、9c、9dは、天井に代えて床に設けてもよい。吹出グリル9a、9b、9c、9dを床に設ける場合には、1階用送風ダクト10a、10b、10c、10dは床下に配設する。
図2に示すように、建物1の2階には、1階からの階段8と廊下11とで構成される階段室12が配置されている。建物1の2階の部屋A13、部屋B14、及び部屋C15は、階段室12に隣接して配置される。部屋A13には納戸A16が設けられている。部屋B14には納戸B17が設けられている。そして、建物1の2階天井62には、2階の室内に送風する吹出グリル(吸気部)18a、18b、18c、18dが設けられている。吹出グリル(吸気部)18a、18bは、2階の部屋A13の天井62に設けられている。吹出グリル(吸気部)18cは、2階の部屋B14の天井62に設けられている。吹出グリル(吸気部)18dは2階の部屋C15の天井62に設けられている。
吹出グリル(吸気部)18a、18b、18c、18dには、2階用送風ダクト19a、19b、19c、19dの一端がそれぞれ接続されている。なお、吹出グリル18a、18b、18c、18dは、天井62に代えて床に設けてもよい。吹出グリル18a、18b、18c、18dを床に設ける場合には、2階用送風ダクト19a、19b、19c、19dは2階の床下に配設する。
図3は本実施の形態における空調システムの建物の2階の階段室部分の拡大平面図、図4は図3のA−A矢視図、図5は図3のB−B矢視図である。
図3〜図5に示すように、階段室12は、階段8の側壁20と階段8を1階から上がったところの壁A21、2階の各部屋A13、B14、C15との間の仕切壁22、及び壁A21に対向して設けられた壁B23とで囲われている。壁A21と壁B23の間隔は約3.8mであり、階段8及び廊下11の幅は約0.9mである。なお、建築設計図面における柱の中心寸法を用い、壁の厚みを考慮しない寸法を記載したため、寸法に“約”を追記している。以下の寸法表示でも同様である。
廊下11の階段8側には手摺24が取り付けられている。手摺24は、横桟25と縦桟26とで構成されている。縦桟26と縦桟26との間は、スリット27になっている。階段8の1階空間側にも同様の手摺28が取り付けられている。
階段室12の壁B23の上方には、側壁20に寄せて空調機30aが設置されている。この空調機30aは室外機(図示せず)と接続されるセパレート型のエアコンディショナーの壁掛型室内機である。この空調機30aには空調風量として、強風、中風、弱風のように室内機の送風量を設定する機能がある。空調機30aの上面31には、吸込気流32aが吸入される吸入口を設けている。また、空調機30aの前面下部には、吹出気流33aを吹き出す吹出口を設けている。吹出口には、上下方向風向制御板34を設けている。上下方向風向制御板34は、吹出気流33aを略水平方向に吹き出すように設定する。ここで、略水平方向とは、水平方向から15度以内の下向きを含む。また、吹出口には、水平方向風向制御板(図示せず)を設けている。水平方向風向制御板は、吹出気流33aを側壁20と略並行に壁A21に向かって吹き出すように設定する。
壁B23には、1階用送風機40a、40b、40c、40dと2階用送風機41a、41b、41c、41dとが取り付けられている。1階用送風機40a、40b、40c、40dと2階用送風機41a、41b、41c、41dとは空調機30aの下方に配置している。1階用送風機40は4台、2階用送風機41は4台設置され、1台の1階用送風機40には1本の1階用送風ダクト10を接続し、1台の2階用送風機41には1本の2階用送風ダクト19を接続している。
1階用送風機40及び2階用送風機41の内部には、シロッコファン42が設けられており、階段室12から空気を吸い込み、吸い込まれた空気は、1階用送風ダクト10および2階用送風ダクト19内を流れて建物1内の各部屋に吹き出している。階段室12から空気を吸い込むことで、吸込気流43が発生する。吸い込まれた空気は、吹出気流44として1階用送風ダクト10および2階用送風ダクト19内を流れる。
1階用送風機40a、40b、40c、40dと2階用送風機41a、41b、41c、41dは風量調整手段を備えている。風量調整手段は、例えばファンの回転数を変えるノッチ切換スイッチや吹出グリル9a〜9dの吹出口の開口面積を調整するシャッター(図示省略)である。
2階の各部屋A13、B14、C15には、階段室12からの入り口となるドアー50の下側隙間51とともに、仕切壁22の空調機30aよりも高い天井62付近に排気部52が設けられている。下側隙間51や排気部52には、2階の排出気流53が形成される。1階の各部屋には、階段室12と連通する開口部が設けられている。この開口部が階段室12への排出部55に相当し、この開口部には、1階の排出気流56が形成される。
よって、階段室12は、リビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14、部屋C15で構成される建物1内の複数の部屋から排出された空気が合流するリターン区画となる。すなわち、リターン区画となる階段室12は、リビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14、及び部屋C15と隣接している。
リビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14、及び部屋C15それぞれに送風する送風量は、リビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14、及び部屋C15のそれぞれの容積から決定する(送風量決定ステップ)。そして、送風量決定ステップで決定したリビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14、及び部屋C15へのそれぞれの送風量を合算した合計送風量(以下合計送風量:Vhという)を算出する(合計送風量算出ステップ)。送風量決定ステップで決定した送風量から、リビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14、及び部屋C15のそれぞれに送風する送風機の送風能力及び台数を選定する。なお、本実施の形態では、送風用ダクトは送風機の一部を構成する。すなわち、送風機の選定に用いる送風量は、送風用ダクトを経由し吹出グリル(吸気部)から吹き出される送風量である。空調のために必要な送風量は、部屋2.5mあたり少なくとも13m/h以上、理想的には20m/h程度が望ましく、部屋の大きさや負荷に応じて送風量を調整する。本実施の形態では、部屋A13は部屋B14より大きいため、2つの吹出グリル18a、18bを設け、送風機41a、41bで送風している。なお、送風機には送風調整手段を設けるので、1部屋に1台以上の送風機を設ける方が使い勝手がよくなる。
空調機30aの空調能力は、建物1についての空調負荷計算によって決定する(空調能力決定ステップ)。
すなわち、空調負荷計算は、壁・窓・天井等から侵入する伝達熱、窓ガラスを透過する日射の輻射熱、在室者からの発生熱と水分、照明や機械器具からの発生熱、取入れ外気や隙間風による熱量や水分を空調負荷として計算する(山田治夫,“冷凍および空気調和”,日本,株式会社養賢堂,1975年3月20日,p.240−247)。そして、この負荷計算結果に余裕をもたせ、能力でラインアップされている空調機の中から、建物1全体の空調機30aを選択し、建物1全体を空調する。
空調機30aの最適空調風量(以下最適空調風量:Vqという)は、合計送風量算出ステップで算出した合計送風量:Vhから決定する(空調風量決定ステップ)。
最適空調風量:Vqは、合計送風量:Vhの50%以下の風量であり、多くても70%以下の風量であり、空調機30aが空調負荷に対応して能力を発揮できる風量である。
空調機30aは、空調能力決定ステップで決定した空調能力を備え、空調風量決定ステップで決定した最適空調風量:Vq以下の空調風量を風量設定できる機種を選定する。
空調対象とする部屋の合計容積が小さい場合は、空調機30aで設定できる最少空調風量が、空調風量決定ステップで決定した最適空調風量:Vqより多い場合がある。この場合には、合計送風量:Vhの70%以下の風量を空調機30aで設定できるように送風機の合計送風量:Vhを増やす。
すなわち、空調機30aの空調能力を維持するため、空調機30aの空調風量を必要以上に下げるのではなく、合計送風量:Vhが空調機30aで設定できる最少空調風量が合計送風量:Vhの50%以下となるよう建物1内への送風量を部屋2.5mあたり20m/h以上に増やして対応するものである。
なお、建物内部への送風量を増やす方法として、各部屋への送風量を増やすだけでなく、室外との気密断熱性を確保した床下空間や屋根裏空間にも送風し、床下空間や屋根裏空間からリターン区画との間に開口部を設けて空調した空気を循環させることも有効である。建物内の通風箇所や送風機の送風量が多すぎても建物自体の空調負荷が変動するわけではないので空調能力に影響することは程んどない。
本実施の形態では、建物1の床面積は約97.7m、天井高さは2.5mであり、4kW相当の冷房能力をもつ空調機30aを設置しており、弱風モードでは冷房運転時700m/hが貫流ファンによって送風される。各室に送風する1階用送風機40、2階用送風機41とも、1台あたりの送風量2が中ノッチで150m/h程度のものを設定する。本実施の形態での建物1内へ送風される合計送風量:Vhは1200m/h程度になり、空調機30aの空調風量よりも多い。すなわち、本実施の形態では合計送風量:Vhの58%の風量が空調機30aで設定できる空調風量(弱風モード)として設計している。なお、本実施の形態では説明していないが、例えば床下への300m/h程度の送風を追加すると、合計送風量:Vhは1500m/h程度になるので、空調機30aの空調風量700m/hは合計送風量:Vhの46%に低下する。
上記構成において、空調機30aを建物1の内部の温度を設定して運転すると、吸込気流32aの温度を検出して冷房または暖房の空調運転を行う。空調された空気は空調機30aの吹出気流33aとなり、略水平方向に、そして側壁20と略並行に壁A21に向かって吹き出す。また、1階用送風機40及び2階用送風機41が運転されると、送風機の吸込気流43と吹出気流44が発生する。
空調機30aの吹出気流33aの風速3〜5m/sに対し、送風機(換気扇)の吸込気流43の風速は0.4m/s程度であり、送風機(換気扇)の吸込気流43は、空調機30aの吹出気流33aの風速より遅い。さらに、空調機30aの吹出気流33aは貫流ファンで送風されるため気流が遠くまで到達しやすく、シロッコファン42の運転により周囲の空気が吸い込まれて発生する送風機の吸込気流43には吸い込まれにくい。従って、空調機30aの吹出気流33aの大半は、拡散しながら壁A21付近に到達し、反転して階段8に沿って壁B23の方向に戻り、送風量の多い送風機の吸込気流43に合流して混合される。よって、空調機30aからの吹出気流33aの吹出方向を避けて1階用送風機40、2階用送風機41の吸込口を設けると、階段室12内をほぼ循環して拡散していく空調循環気流45が形成され、ショートサーキットが起こりにくくなる。
なお、冷房時よりも暖房時の方が吹出気流33aの比重が軽く上昇しやすいので、吹出気流33aが略水平方向に送風されるように、暖房時の吹出気流33aの方向は、冷房時の吹出気流33aの方向よりも下向きにしておくことが望ましい。
建物1の複数の部屋に送風されると、2階の部屋A13、B14、C15からの一部は2階の排出気流53として、また1階の各部屋からは1階の排出気流56として階段室12に戻る。このとき、排気部52は天井62付近に開口しているので、2階の排出気流53の大半は天井62に沿って空調機30aに向かって流れる空調戻り気流57を形成し、空調機30aの吸込気流32aに合流する。よって、空調機30aは各部屋の温度に近い空気温度を検出して運転制御される。排気部52は階段室12に導通しておればどこに設けても構わないが、階段室12の天井62に近く空調機30aに近いところに設ける方が、排出気流53がより多く空調機30aに吸い込まれ、吸込気流32aの温度が室温に近くなるので、空調機30aを運転するときの設定温度と建物1内の実温度の差が少なく運転制御される。
空調循環気流45は反転するまでは排出気流53や吸込気流43に対向して流れ、周囲の空気を巻き込み拡散していく。従って、空調循環気流45の温度は、流れていくにつれて、冷房時は空調機30aの吹出気流33a温度より上がり、暖房時は吹出気流33a温度より下がる。
空調循環気流45は、主に階段室12の階段8側に形成され、空調戻り気流57は主に階段室12の2階の廊下11側に形成される。さらに、建物1の部屋に送風される送風量が空調風量より多いので、階段室12内では空調機30aの吹出気流33aと、1階の排出気流56と2階の排出気流53とが混合される。混合されることで、空調循環気流45の温度と各部屋の温度差はさらに少なくなる。
手摺24また手摺28のスリット27を空気が流通して、この混合を助ける。1階の排出気流56の一部は、階段8と廊下11の境から空調戻り気流57にも合流する。また、廊下11に1階からの気流が合流しやすくするために、建物1の1階と2階を導通する通気スリットを設けてもよい(図示省略)。
本実施の形態の空調システムでは、各部屋に吹き出す吹出気流44の温度と各部屋の室温との温度差は、空調機30aの吹出気流33aの温度と各部屋との温度差より少なくなるので、部屋内にいる人は吹出気流44の室温との温度差によるストレスを感じにくくなるので快適性が高まる。
なお、インバーターで圧縮機の回転数を制御するエアコンは、室内の送風量が一定のときは空調負荷が少ない場合に吹出温度と室温との差が少なくなるように運転する。よって、空調機30aの圧縮機がインバーター式の場合、夏冬以外の中間期など空調負荷の少ない場合には部屋への送風量を少なくしても快適性は損なわれないので、合計送風量:Vhを少なくし、空調風量が合計送風量:Vh70%以上となっても構わない。
空調機30aと1階用送風機40、2階用送風機41全てが壁B23に設置されていなくてもよい。送風機の一部を階段室12の1階部分に設けることもできるし、仕切り壁22に設けることもできる。
空調機30aの水平方向風向制御板により吹出気流33aの向きを調整し、送風機の吸込気流43に合流する空調循環気流45を形成でき、空調循環気流45を形成する空間以外の空間に空調戻り気流57の風路を形成すればよく、空調機30aを仕切壁22に設けてもよい。平面視すると長方形のリターン区画の長辺方向に空調循環気流45が形成されればよい。
なお、空調機30aを、壁B23と仕切壁22とにそれぞれ設けてもよく、空調機30a以外にも温水放熱機などの暖房時の熱源を設けてもよい。2台の機器からの吹出気流が合流して階段室12内を循環し、1階用送風機40、2階用送風機41に吸い込まれればよいので、例えば太陽熱で温水を作り熱源とするような発展した空調システムにも、本設計・施工方法は応用できる。
本実施の形態の空調システムでは、空調風量より各部屋への合計送風量:Vhが多いので、各部屋からリターン区画へ戻った空気の一部は、空調機30aに吸い込まれ、残りの空気は空調機30aの吹出空気とリターン区画で十分に混合されて空調され各部屋に戻る。
送風機の風量調整手段で送風量を調節すれば、部屋の空調負荷の変動に送風機ごとに対応することができる。
階段室12の容積は約16.2mであり、空調機30aが空調循環気流45を形成して空調するので、専用の空調機室を設けることが不要となる。空調循環気流45が形成されれば、リターン区画の容積はこれ以下であっても構わないが、普通の階段室の容積はリターン区画の容積としても充分であり、空調機30aと1階用送風機40、2階用送風機41および排気部52、排出部55を構成しやすい。
(実施の形態2)
図6は本発明の実施の形態2における空調システムの構成を示す建物の平面図、図7は同建物の廊下部分のC−C断面図である。
図6及び図7に示すように、建物61は玄関2を有する平屋建てであり、リビング3、キッチン4が配置され、トイレ5、浴室6、洗面脱衣室7が設けられている。また、建物61には、部屋A63及び部屋B64が配置されている。部屋A63には納戸A65が設けられている。建物61のそれぞれの部屋A63、部屋B64、及びリビング3は、廊下66でつながっている。
各部屋A63及び部屋B64の天井62または床63には、室内に送風する吹出グリル(吸気部)68a、68b、68c、68d、68e、68fが設けられている。吹出グリル68a、68b、68c、68d、68e、68fには、送風ダクト63a、63b、64c、64d、64e、63fの一端がそれぞれ接続されている。送風ダクト63a、63b、63fは天井用送風ダクト82として天井62に配設され、送風ダクト64c、64d、64eは床下用送風ダクト83として床下に配設されている。
廊下66は、天井62、床63、玄関ドアー70を取り付ける玄関壁71、リビング3との仕切壁A72、キッチン4との仕切壁B73、トイレ5との仕切壁C74、空調機30bを取り付ける壁D75、部屋A63との仕切壁E76、および部屋B64との仕切壁F77で囲われた空間である。
廊下66の壁D75の上方には、仕切壁E76に寄せて空調機30bが設置されている。この空調機30bは室外機(図示せず)と接続されるセパレート型のエアコンディショナーの壁掛型室内機である。空調機30bの上面には、吸込気流32aが吸入される吸入口を設けている。また、空調機30bの前面下部には、吹出気流33bを吹き出す吹出口を設けている。吹出口には、上下方向風向制御板34を設けている。上下方向風向制御板34は、吹出気流33bを略水平方向に吹き出すように設定する。また、吹出口には、水平方向風向制御板(図示せず)を設けている。水平方向風向制御板は、吹出気流33bを仕切壁E76と略並行に玄関壁71に向かって吹き出すように設定する。
天井用送風機80と床下用送風機81とは空調機30bの下方に配置している。天井用送風機80は3台、床下用送風機81は3台設置されている。1台の天井用送風機80には1本の天井用送風ダクト82を接続し、1台の床下用送風機81には1本の床下用送風ダクト83を接続している。天井用送風機80及び床下用送風機81の内部には、シロッコファン(図示せず)が設けられており、廊下66から空気を吸い込み、吸い込まれた空気は、天井用ダクト82と床下用ダクト83内を流れて建物61内の各部屋A63、部屋B64、リビング3、及びキッチン4に吹き出している。廊下66から空気を吸い込むことで、吸込気流43が発生する。吸い込まれた空気は、吹出気流44として天井用送風ダクト82および床下用送風ダクト83を流れる。
天井用送風機80と床下用送風機81は風量調整手段を備えている。風量調整手段は、例えばファンの回転数を変えるノッチ切換スイッチや吹出グリル68a〜68fの吹出口の開口面積を調整するシャッター(図示省略)である。
天井用送風機80及び床下用送風機81は、壁D75と並行な仕切壁G84に設けている。つまり、壁D75と仕切壁G84との間は送風用区画部85であり、壁D75の下方には廊下66から送風用区画部85に連通する送風用開口部86を形成している。この送風用開口部86が実質天井用送風機80及び床下用送風機81の廊下66からの空気吸入部に相当するので、このような構成にすれば、空調機30bの下方に天井用送風機80、床下用送風機81に設けてなくても構わない。また、送風用区画部85の内壁には吸音材を設ける。
廊下66から部屋A63及び部屋B64への入り口となるドアー87の下側隙間88とともに、仕切壁E76と仕切壁F77の空調機30bよりも高い天井62付近に排気部52が設けられている。下側隙間88や排気部52には、排出気流89が形成される。リビング3と連通する開口部が廊下66への排出部90に相当し、この開口部には、リビング3からの排出気流91が形成される。
よって、廊下66は、複数の部屋すなわちリビング3、キッチン4、部屋A63及び部屋B64からの排出された空気が合流するリターン区画となる。また、リターン区画となる廊下66は、リビング3、キッチン4、部屋A63、及び部屋B64と隣接している。
リビング3、キッチン4、部屋A63、及び部屋B64それぞれに送風する送風量は、リビング3、キッチン4、部屋A63、及び部屋B64のそれぞれの容積から決定する(送風量決定ステップ)。そして、送風量決定ステップで決定したリビング3、キッチン4、部屋A63、及び部屋B64へのそれぞれの送風量を合算した合計送風量:Vhを算出する(合計送風量算出ステップ)。送風量決定ステップで決定した送風量から、リビング3、キッチン4、部屋A63、及び部屋B64のそれぞれに送風する送風機の送風能力及び台数を選定する。なお、本実施の形態では、送風用ダクトは送風機の一部を構成する。すなわち、送風機の選定に用いる送風量は、ダクトを経由し吹出グリル(吸気部)から吹き出される送風量である。空調のために必要な送風量は、部屋2.5mあたり少なくとも13m/h以上、理想的には20m/h程度が望ましく、部屋の大きさや負荷に応じて送風量を調整し、部屋が大きい場合は送風機を2台以上設置即ち吹出グリルを2か所以上設けることもある。
空調機30bの空調能力は、建物61についての空調負荷計算によって決定する(空調能力決定ステップ)。
空調機30bの最適空調風量:Vqは、合計送風量算出ステップで算出した合計送風量:Vhから決定する(空調風量決定ステップ)。
空調機30bは、空調能力決定ステップで決定した空調能力を備え、空調風量決定ステップで決定した最適空調風量:Vq以下の空調風量を風量設定できる機種を選定する。
空調対象とする部屋の合計容積が小さい場合は、空調機30bで設定できる最少空調風量が、空調風量決定ステップで決定した最適空調風量:Vqより多い場合がある。この場合には、合計送風量:Vhの70%以下の風量を空調機30bで設定できるように送風機の合計送風量:Vhを増やす。
すなわち、空調機30bの空調能力を維持するため、空調機30bの空調風量を必要以上に下げるのではなく、空調機30bで設定できる最少空調風量が合計送風量:Vhの50%以下となるよう建物61内への送風量を部屋2.5あたり20m/h以上に増やして対応するものである。送風機の送風量が多すぎても空調能力に影響することはない。
本実施の形態の高気密高断熱住宅では、建物61の床面積は約79.3m、天井高さ2.5mであり、3.6kW相当の冷房能力をもつ空調機30bを設置しており、弱風モードでは冷房運転時510m/hが貫流ファンによって送風される。各室に送風する天井用送風機80と床下用送風機81とも、1台あたりの送風量が中ノッチで150m/h程度のものを設定する。本実施の形態での建物61内へ送風される合計送風量:Vhは900m/h程度になり、空調機30bの空調風量よりも多い。
すなわち、本実施の形態では合計送風量:Vhの57%の風量が空調機30bで設定できる空調風量(弱風モード)として設計している。
上記構成において、空調機30bの空調温度を設定して運転すると、吸込気流32aの温度を検出して冷房または暖房の空調運転を行う。空調された空気は空調機30bの吹出気流33bとなり、略水平方向に、そして仕切壁E76と略並行に玄関壁71に向かって吹き出す。また、天井用送風機80、床下用送風機81が運転され、送風機の吸込気流43と吹出気流44が発生する。
本実施の形態においては、天井用送風機80、床下用送風機81を送風用区画部85の奥に設置し、送風用区画部85には吸音材が設けてあるので、天井用送風機80、床下用送風機81の運転音が廊下66に漏れにくい。なお、送風ダクト63a、63b、63f、送風ダクト64c、64d、64eも吸音ダクトを用いる。
空調機30bの吹出気流33bの風速3〜5m/sに対し、送風機(換気扇)の吸込気流43の風速は0.4m/s程度であり、送風機(換気扇)の吸込気流43は、空調機30bの吹出気流33bの風速より遅い。
よって、空調機30bの吹出気流33bの大半は玄関壁71付近に到達し、反転して床63に沿って壁D75の方向に戻り、送風機の吸込気流43に合流する。よって、空調機30bからの吹出気流33bの吹出方向を避けて送風用開口部86を設けると、廊下66内には空調循環気流92が形成され、ショートサーキットが起こりにくくなる。
なお、空調機30bと玄関壁71との距離と空調機30bの空調風量の設定によっては、吹出気流33bのほんどが玄関壁71に到達せずに拡散し、送風機の吸込気流43に合流して空調循環気流92を形成することもあり得る。
建物61の部屋A63、部屋B64、リビング3、及びキッチン4に送風されると、排出気流89、排出気流91として廊下66に戻る。このとき、排気部52は天井62付近に開口しているので、排出気流89の大半は天井62に沿って空調機30bに向かって流れる空調戻り気流93を形成し、空調機30bの吸込気流32aに合流する。空調戻り気流93の一部はリビング3から天井62付近を流れる排出気流91よっても形成される。そして、空調機30bは部屋A63、部屋B64、及びリビング3の温度に近い空気温度を検出して運転制御される。
空調循環気流92は反転するまでは排出気流89や空調戻り気流93に対向して流れ、周囲の空気を巻き込み拡散していく。従って、空調循環気流92の温度は、流れる距離が長くなるにつれて、冷房時は空調機30bの吹出気流33bの温度より上がり、暖房時は吹出気流33bの温度より下がる。
空調機30bの吹出気流33bと周囲の空気との混合により、部屋A63、部屋B64、及びリビング3に吹き出す吹出気流44の温度と、部屋A63、部屋B64、及びリビング3の室温との差は、空調機30bの吹出気流33bの温度と、部屋A63、部屋B64、及びリビング3の室温との差より小さくなるので、室内にいる人は吹出気流44の温度差によるストレスを感じにくくなるので快適性が高まる。
また、建物61の外から玄関ドアー70を開けて室内に入った時に、冷房時には部屋A63、部屋B64、及びリビング3の温度よりも低く、暖房時には部屋A63、部屋B64、及びリビング3の温度よりも高い温度の空調循環気流92に触れるので、屋外で感じていた暑さや寒さを玄関2で和らげることができ、また玄関ドアー70から侵入する外気が直接に部屋A63、部屋B64、及びリビング3に侵入することを防ぐこともできる。
また、高気密高断熱住宅等では、常時換気のために熱交換換気装置が設置されるが、この換気装置の室外空気吹出口も玄関2の天井62に設ければ、空調循環気流92と混合して部屋A63及び部屋B64に送られ、玄関ドアー70が開いたときは熱交換換気装置から吹き出す室外空気は静圧が高く、玄関ドアー70の開口部から室外に流出しやすいので、外気の侵入をより少なくすることができる。
なお、建物が大きい場合は、建物内を分割してゾーンに分け、上記実施の形態1と上記実施の形態2を組み合わせて使うこともできる。
実施の形態1、実施の形態2ともに、建物内で人の移動空間を利用している。これらの空間は居住者が長く居るところではないので、空調機や送風機の性能を発揮しやすいように機器を配置できるし、これらの機器の運転音も居住者に影響しにくい場所である。さらに、送風機も収納しやすい。
さらに、空調機30aは階段室12の廊下11の上方に設置され、略水平方向へ吹き出すので、階段室12を行き来する人が吹出気流33aに直接当たることもない。
階段室や廊下などの居住者の移動空間を用いて容易に室内すべてを空調することができ、また建物内を空調機の能力に合わせて複数のゾーンに分け空調できるので、床面積の大きい商業施設や病院などの建物の空調にも適用できる。
1 建物
12 階段室
9a、9b、9c、9d 吹出グリル(吸気部)
18a、18b、18c、18d 吹出グリル(吸気部)
30a 空調機
33 空調機の吹出気流
41a、41b、41c、41d 2階用送風機
40a、40b、40c、40d 1階用送風機
52 排気部
55 排出部
61 建物
66 廊下
68a、68b、68c、68d、68e、68f 吹出グリル
30b 空調機
80 天井用送風機
81 床下用送風機
90 排出部

Claims (10)

  1. 建物には、複数の部屋に隣接するリターン区画を形成し、
    前記部屋には、送風機から送られる空気を吹き出す吸気部を設け、
    前記部屋と前記リターン区画との間には、前記部屋から前記リターン区画に向けた排出気流を形成する排気部を設け、
    前記リターン区画に、複数台の前記送風機と少なくとも1台の空調機とを設置する
    ことを特徴とする空調システムの施工方法。
  2. 前記建物内の階段室を前記リターン区画としたことを特徴とする請求項1に記載の空調システムの施工方法。
  3. 前記建物内の廊下を前記リターン区画としたことを特徴とする請求項1に記載の空調システムの施工方法。
  4. 前記空調機からの吹出気流の吹出方向を避けて前記送風機の吸込口を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の空調システムの施工方法。
  5. 前記空調機からの吹出気流の吹出口の下方に前記送風機の吸込口を設置するとともに、前記空調機からの前記吹出気流の吹出方向が略水平であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の空調システムの施工方法。
  6. 前記空調機の上方に少なくとも1つ以上の排気部を設けたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の空調システムの施工方法。
  7. 複数の前記送風機の合計送風量が前記空調機の空調風量よりも多いことを特徴とする請求項1に記載の空調システムの施工方法。
  8. 建物内には、
    複数の部屋と、リターン区画とを有し、
    前記部屋には、送風機から送られる空気を吹き出す吸気部を設け、
    前記部屋には、前記部屋から前記リターン区画に向けた排出気流を形成する排気部を設け、
    前記リターン区画に、複数台の前記送風機と少なくとも1台の空調機とを設置し、
    前記リターン区画の前記空気を、前記吸気部から前記部屋に導き、
    前記部屋の前記空気を、前記排気部から前記リターン区画に導く
    空調システムの設計方法であって、
    前記建物についての空調負荷計算によって前記空調機の空調能力を決定する空調能力決定ステップと、
    前記部屋のそれぞれの容積から、それぞれの前記部屋に送風する送風量を決定する送風量決定ステップと、
    前記送風量決定ステップで決定したそれぞれの前記部屋への前記送風量を合算した合計送風量を算出する合計送風量算出ステップと、
    前記合計送風量算出ステップで決定した前記合計送風量から、前記空調機の最適空調風量を決定する空調風量決定ステップと
    を有し、
    前記送風量決定ステップで決定した前記送風量から、それぞれの前記部屋に送風する前記送風機を選定し、
    前記空調能力決定ステップで決定した前記空調能力を備え、前記空調風量決定ステップで決定した前記最適空調風量以下の空調風量を風量設定できる前記空調機を選定する
    ことを特徴とする空調システムの設計方法。
  9. 前記空調能力決定ステップで決定した前記空調能力を備えた前記空調機が、前記空調風量決定ステップで決定した前記最適空調風量以下の前記空調風量を風量設定できない場合には、前記空調機で設定できる最少空調風量が前記合計送風量の70%以下となるように前記送風機を選定する
    ことを特徴とする請求項8に記載の空調システムの設計方法。
  10. 風量を調整できる風量調整手段を備えた前記送風機を選定する
    ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の空調システムの設計方法。
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