JP2020203292A - スポット溶接方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、第1実施形態によれば、スポット溶接方法に関する。スポット溶接方法は、スポット溶接継ぎ手の製造方法ということもできる。本実施形態によるスポット溶接方法は、鉄やアルミニウムを主成分とする2枚以上の金属板を重ね合わせて溶接する方法であり、以下に詳述する、第一通電工程と、冷却工程と、第二通電工程とを少なくとも含む。
本実施形態の第1態様による溶接条件は、溶接対象である金属板が2枚の場合であって、金属板が裸鋼板であり、板隙がない溶接条件の場合である。板隙がない溶接条件とは、無加圧の状態で溶接箇所が接触する程度に重ね合わせることができる金属板を溶接する場合をいう。この場合、第一通電工程は、20〜25kAで、5〜10msecとすることが好ましい。冷却工程は、9〜10msecとすることが好ましい。第二通電工程の初期通電電流値は第一電流値の70〜80%とすることができ、初期通電電流値から、5〜10msec単位、0.5〜1kA単位で、ナゲット成長電流値まで電流値を下げるように制御することが好ましい。第二通電工程のナゲット成長電流値(最終通電電流値)は、初期通電電流値の80〜90%程度とすることができる。具体的には、第二通電工程の初期通電電流値は10〜15kA、最終通電電流値は10〜13kA、第二通電工程の総通電時間は、40〜80msecとすることが好ましい。本態様においては、他の態様と比較して、第二通電工程の総通電時間を短くすることが好ましい。
本実施形態の第2態様による溶接条件は、溶接対象である金属板が2枚の場合であって、2枚の金属板が裸鋼板であり、板隙がある溶接条件の場合である。板隙がある溶接条件とは、溶接前に2枚の金属板を重ね合わせた際に、溶接部の周囲に空隙が生じる場合、例えば、溶接部の周囲約30mm以内に、約1mm程度の空隙が生じる場合をいうことができ、実験上は、例えば、重ね合せる2枚の金属板の間に1mmの導電性の金属を挟み込んだ条件で溶接を行うことをいうものとする。この場合、第一通電工程は、12〜19kAで、4〜10msecとすることが好ましい。冷却工程は、第一通電工程の電流値が15kA以上の場合は9〜10msec、15kA未満の場合は4〜5msecとすることが好ましい。第二通電工程の初期通電電流値は第一電流値の50〜70%とすることができ、初期通電電流値から、10〜30msec単位、0.5〜1kA単位で、ナゲット成長電流値まで電流値を下げるように制御することが好ましい。第二通電工程のナゲット成長電流値(最終通電電流値)は、第二通電工程の初期通電電流値の80〜95%程度とすることができる。具体的には、第二通電工程の初期通電電流値は10〜12kA、最終通電電流値は9〜10kA、第二通電工程の総通電時間は、80〜100msecとすることが好ましい。
本実施形態の第3態様による溶接条件は、溶接対象である金属板が2枚の場合であって、2枚の金属板が両者ともめっき鋼板であり、板隙がない溶接条件の場合である。めっき鋼板とは、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板などをさすものとする。この場合、第一通電工程は、18〜23kAで、5〜10msecとすることが好ましい。冷却工程は、9〜10msecとすることが好ましい。第二通電工程の初期通電電流値は第一電流値の60〜70%とすることができ、第二通電工程の初期通電電流値から、10〜40msec単位、0.5〜1kA単位で、ナゲット成長電流値まで電流値を下げるように制御することが好ましい。第二通電工程のナゲット成長電流値(最終通電電流値)は、第二通電工程の初期通電電流値の75〜85%程度とすることができる。具体的には、第二通電工程の初期通電電流値は12〜15kA、最終通電電流値は11〜13kA、第二通電工程の総通電時間は、80〜100msecとすることが好ましい。
本実施形態の第4態様による溶接条件は、溶接対象である金属板が2枚の場合であって、2枚の金属板が両者ともがめっき鋼板であり、板隙がある溶接条件の場合である。この場合、第一通電工程は、20〜23kAで、4〜5msecとすることが好ましい。冷却工程は、9〜12msecとすることが好ましい。第二通電工程の初期通電電流値は第一電流値の40〜50%程度とすることができ、第二通電工程の初期通電電流値から、10〜40msec単位、0.5〜1kA単位で、ナゲット成長電流値まで電流値を下げるように制御することが好ましい。第二通電工程のナゲット成長電流値(最終通電電流値)は、初期通電電流値の80〜90%程度とすることができる。具体的には、第二通電工程の初期通電電流値は10〜12kA、最終通電電流値は9〜11kA、第二通電工程の総通電時間は、80〜100msecとすることが好ましい。
本実施形態の第5態様による溶接条件は、溶接対象である金属板が3枚の場合であって、3枚の金属板の全てが裸鋼板であり、板隙がない溶接条件の場合である。この場合、第一通電工程は、24〜25kAで、9〜10msecとすることが好ましい。冷却工程は、9〜10msecとすることが好ましい。第二通電工程の初期通電電流値は第一電流値の50〜60%とすることができ、初期通電電流値から、5〜10msec単位、0.5〜1kA単位で、ナゲット成長電流値まで電流値を下げるように制御することが好ましい。第二通電工程のナゲット成長電流値(最終通電電流値)は、初期通電電流値の60〜70%程度とすることができる。具体的には、第二通電工程の初期通電電流値は14〜15kA、最終通電電流値は10〜11kA、第二通電工程の総通電時間は、50〜80msecとすることが好ましい。本態様においては、他の態様と比較して、第二通電工程の総通電時間を短くすることが好ましい。
本実施形態の第6態様による溶接条件は、溶接対象である金属板が3枚の場合であって、3枚の金属板の全てが裸鋼板であり、板隙がある溶接条件の場合である。板隙がある溶接条件とは、先の第2態様と同様に定義することができ、実験上は、例えば、上層/中層/下層と三層に重ね合せた金属板の、上層と中層の間、中層と下層の間に、それぞれ1mmのスペーサを挟み込んだ条件で溶接を行うことをいうものとする。なお、ここでいう、上層、中層、下層とは溶接を実施する際の金属板の相対的な位置関係を指称するものであり、本発明を限定するものではない。この場合、第一通電工程は、15〜17kAで、7〜10msecとすることが好ましい。冷却工程は、7〜10msecとすることが好ましい。第二通電工程の初期通電電流値は第一電流値の60〜70%とすることができ、初期通電電流値から、5〜30msec単位、0.5〜1kA単位で、ナゲット成長電流値まで電流値を下げるように制御することが好ましい。第二通電工程のナゲット成長電流値(最終通電電流値)は、初期通電電流値の80〜90%程度とすることができる。具体的には、第二通電工程の初期通電電流値は10〜11kA、最終通電電流値は9〜10kA、第二通電工程の総通電時間は、70〜120msecとすることが好ましい。
本実施形態の第7態様による溶接条件は、溶接対象である金属板が3枚の場合であって、少なくとも一枚の金属板、例えば最も薄い金属板がめっき鋼板であり、板隙がない溶接条件の場合である。めっきの態様は、第2態様と同様とする。この場合、第一通電工程は、16〜18kAで、9〜10msecとすることが好ましい。冷却工程は、7〜10msecとすることが好ましい。第二通電工程の初期通電電流値は第一電流値の50〜60%とすることができ、初期通電電流値から、5〜20msec単位、0.5〜1kA単位で、ナゲット成長電流値まで電流値を下げるように制御することが好ましい。第二通電工程のナゲット成長電流値(最終通電電流値)は、初期通電電流値の80〜90%程度とすることができる。具体的には、第二通電工程の初期通電電流値は11〜12kA、最終通電電流値は9〜10kA、第二通電工程の総通電時間は、70〜100msecとすることが好ましい。
本実施形態の第8態様による溶接条件は、溶接対象である金属板が3枚の場合であって、少なくとも一枚の金属板、例えば最も薄い金属板がめっき鋼板であり、板隙がある溶接条件の場合である。板隙の態様は、第6態様と同様とする。この場合、第一通電工程は、15〜16kAで、7〜8msecとすることが好ましい。冷却工程は、7〜10msecとすることが好ましい。第二通電工程の初期通電電流値は第一電流値の40〜70%とすることができ、初期通電電流値から、10〜40msec単位、0.5〜1kA単位で、ナゲット成長電流値まで電流値を下げるように制御することが好ましい。第二通電工程のナゲット成長電流値(最終通電電流値)は、初期通電電流値の80〜90%程度とすることができる。具体的には、第二通電工程の初期通電電流値は10〜11kA、最終通電電流値は9〜10kA、第二通電工程の総通電時間は、80〜120msecとすることが好ましい。
本発明は、第2実施形態によれば、スポット溶接継ぎ手であって、第1実施形態の溶接方法により製造されたスポット溶接継ぎ手である。本実施形態による溶接継ぎ手は、先に詳述した方法により製造されることで、表面溶融、表面散り、中散りがなく、十分なナゲット径並びに引張強度を備えている。また、本実施形態によるスポット溶接継ぎ手は、疲労試験の結果、ナゲットの周囲で破断しナゲットが完全に抜けるプラグ破断を生ずるものである。
板厚が1.0〜1.4mm、590〜1180MPa高張力鋼を2枚用意し、これらを用いて、2枚合わせ板組のスポット溶接継ぎ手を作製した。スポット溶接には、水冷可能なR100の電極チップを備える、図1に示す装置を用いた。板材の仕様、通電、冷却条件、並びに得られた継手のナゲット径を表1に示す。本実施例Aにおいては、上下とも、同じ板厚、同じ材質の金属板を用い、試料番号6は亜鉛めっき鋼板、それ以外は裸鋼板を用いた。表1中の板厚は、一枚の板厚を示す。いずれの試料においても、第一通電工程の開始から、第二通電工程の終了までは、100msecとし、この間、加圧力は変化させず、試料番号2は、6kN、それ以外は4kNとした。表1中、板隙有とは、溶接する2枚の金属板間に、厚さが1mmのコの字状の治具を、溶接箇所を三方から囲む態様で配置し、2枚の金属板間でこの治具を挟みこみ、加圧して溶接を行ったことを示す。板隙無とは、2枚の金属板間を密着させて溶接を行ったことを示す。母材強度は、溶接される高張力鋼の強度を示す。
板厚が1.2〜2.0mm、780MPaの高張力鋼からなる厚板2枚と、板厚が0.6mm、270MPaの薄板1枚を用意し、これらを用いて、3枚合わせ板組のスポット溶接継ぎ手を作製した。装置は実施例Aと同じものを用いた。板材の仕様は表2に、通電、冷却条件、並びに得られた継手のナゲット径は表3に示す。試料番号9〜12の下板は亜鉛めっき鋼板、それ以外は裸鋼板を用いた。いずれの試料においても、第一通電工程の開始から、第二通電工程の終了までは、100msecとし、この間、加圧力は変化させず、全ての試料について4kNとした。表中、板隙有とは、上板と中板、及び中板と下板のそれぞれの間に、実施例Aで記載したのと同じ治具を挟んで溶接を行ったことを示し、板隙無は、治具を使用せずに3枚の板を密着させて接合を行ったことを示す。表3より、いずれの溶接継ぎ手も、十分なナゲットが形成していたことがわかった。また、いずれの試料も、表面散り、及び中散りの発生は無く、表面溶融もなく、破断形態はプラグ破断であった。
比較例として、板厚が1.2mm、1180MPa高張力鋼からなる裸鋼板を2枚用意し、これらを用いて、実施例Aと同じ装置を用いて、2枚合わせ板組のスポット溶接継ぎ手を作製した。加圧力は6kNとし、電流値25〜15kA、通電時間20〜100msecの一段階の通電にて溶接を行った。冷却工程並びに第二通電は行わなかった。結果を表4に示す。その結果、ほとんどの条件にて表面溶融が発生し、散りの発生が見られ、ナゲットが形成していた条件は無かった。表中、金属板材質は、金属板の引張強度を示す。×は通電しても接合しなかったものを示す。
10 スポット溶接装置、11 サーボガン、12 固定アーム、13 電源・制御部
14 連結ロッド、15、18 シャンク、16 上部電極、17 下部電極
W 冷却水、Fa、Fb 加圧力、s 板−板間接触部、e 電極端接触部
Claims (11)
- 鉄を主成分とする2枚以上の金属板を重ね合わせて溶接するスポット溶接方法であって、
10kA以上25kAの以下の第一電流値で、2〜50msec通電する第一通電工程と、
5〜100msecの冷却工程と、
5kA以上25kA以下の第二電流値で、20〜200msec通電する第二通電工程と
を含む、方法。 - 前記金属板が、引張強さが200MPa〜1200MPaの鋼板である、請求項1に記載のスポット溶接方法。
- 前記第二通電工程における最終通電電流値を、初期通電電流値に対し、70〜95%とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスポット溶接方法。
- 前記第二通電工程における初期通電電流値を、前記第一電流値に対し、50〜80%とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスポット溶接方法。
- 前記第一通電工程、冷却工程、並びに前記第二通電工程を、50〜150msec以内に実施する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のスポット溶接方法。
- 前記第一通電工程または前記第二通電工程において、電流の出力制御を1msec〜10msec単位で行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載のスポット溶接方法法。
- 前記第一通電工程の開始から第二通電工程の完了までを、一定の加圧力下で実施する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のスポット溶接方法。
- 前記第二通電工程後に、焼き戻しのための第三通電工程を実施する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のスポット溶接方法。
- 前記2枚以上の金属板の少なくとも1枚がめっき皮膜を有する鋼板であり、
前記第一通電工程において、15kA以上23kA以下の第一電流値で、4〜10msec通電し、
前記冷却工程を、7〜12msec実施し、
前記第二通電工程において、9kA以上15kA以下の第二電流値で、70〜120msec通電する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のスポット溶接方法。 - 前記2枚以上の金属板がめっき皮膜を有さない裸鋼板であり、
前記第一通電工程において、12kA以上25kA以下の第一電流値で、4〜10msec通電し、
前記冷却工程を、4〜10msec実施し、
前記第二通電工程において、9kA以上15kA以下の第二電流値で、40〜120msec通電する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のスポット溶接方法。 - 請求項1〜10のいずれか1項に記載のスポット溶接方法により製造されたスポット溶接継ぎ手。
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