JP2020200452A - 多糖誘導体 - Google Patents

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洋一郎 伊森
Yoichiro Imori
洋一郎 伊森
隆儀 齋藤
Takayoshi Saito
隆儀 齋藤
聖史 小林
Kiyoshi Kobayashi
聖史 小林
貴大 矢野
Takahiro Yano
貴大 矢野
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Abstract

【課題】洗浄時の皮脂汚れの洗浄性を向上することができると共に、繊維の吸水性及び柔軟性を向上させることができる、多糖誘導体に関する。【解決手段】カチオン性基、及び炭素数が2以上の炭化水素基(R)を有する、多糖誘導体であって、前記炭化水素基(R)が、直接に、又は酸素原子を有する炭化水素基により、ヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基と結合し、ヒドロキシアルキル化多糖がヒドロキシエチル化多糖及びヒドロキシプロピル化多糖から選ばれる少なくとも一種であり、前記ヒドロキシアルキル化多糖の1質量%水溶液の粘度が1500mPa・s以上100000mPa・s以下である、多糖誘導体。【選択図】なし

Description

本発明は多糖誘導体に関する。
多糖誘導体は、洗浄剤組成物等の配合成分に用いられ、その用途は多岐にわたる。
例えば、特許文献1には、洗濯用仕上げ剤として有用な剤として、多糖類又はその誘導体のヒドロキシル基の水素原子の一部又は全てが、次の基(A)、(B)及び(C)で置換されている多糖誘導体が記載されている。
(A)ヒドロキシル基が置換していてもよく、またオキシカルボニル基(−COO−又は−OCO−)又はエーテル結合が挿入されていてもよい炭素数10〜43の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基又はアシル基
(B)カルボキシメチル基又はその塩
(C)特定のカチオン基
特許文献2には、傷んだ毛髪であっても、洗浄時、及びすすぎ時の毛髪のすべり性に優れ、乾燥後の毛髪にしっとり感を与えることができる水性毛髪洗浄剤を提供することを課題として、次の成分(A)、(B)及び(C)並びに水を含有し、水で20質量倍に希釈したときの25℃におけるpHが2以上6以下である、水性毛髪洗浄剤が記載されている。
(A)アニオン界面活性剤
(B)アンヒドログルコース由来の主鎖を有し、該アンヒドログルコース単位あたりのカチオン化オキシアルキレン基の置換度が0.01以上1.0以下であり、グリセロール基の置換度が0.5以上5.0以下であり、また、炭素数3以上18以下の炭化水素基を含有する基の置換度が0以上0.2以下であるカチオン性基含有セルロースエーテル
(C)炭素数4以上12以下のアルキル基又はアルケニル基を有するモノアルキルグリセリルエーテル又はモノアルケニルグリセリルエーテル
特許文献3には、a)持続性ポリマーと、b)水混和性の極性溶媒とを含み、前記持続性ポリマー及び前記水混和性の極性溶媒の溶液の溶媒に対する持続性ポリマーの濃度が約0.1質量%〜約20質量%の範囲であり、サイズ排除クロマトグラフィーによって決定される前記持続性ポリマーの分子量(Mw)が、約50キロダルトンを上回り約800キロダルトン以下までの範囲であり、前記持続性ポリマーのカチオン置換度が約0.001単位を上回り、前記持続性ポリマーが、多糖類、及びカチオン性モノマーを含有する合成ポリマーからなる群から選択される、ケラチン表面への持続的効果をもたらすためのパーソナルケア組成物添加剤が開示されている。
特開2000−178303号公報 特開2015−168666号公報 特表2013−529644号公報
衣料用の洗浄成分として、洗浄時に皮脂汚れの洗浄性を向上させると共に、繊維の吸水性及び柔軟性を向上させることができる、洗浄成分が求められている。
しかしながら、従来の剤では、充分な性能を発揮することができていない。
本発明は、洗浄時の皮脂汚れの洗浄性を向上することができると共に、繊維の吸水性及び柔軟性を向上させることができる、多糖誘導体に関する。
本発明者等は、特定の多糖誘導体により、上記の課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は以下の<1>及び<2>に関する。
<1> カチオン性基、及び炭素数が2以上の炭化水素基(R)を有する、多糖誘導体であって、前記炭化水素基(R)が、直接に、又は酸素原子を有する炭化水素基により、ヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基と結合し、ヒドロキシアルキル化多糖がヒドロキシエチル化多糖及びヒドロキシプロピル化多糖から選ばれる少なくとも一種であり、前記ヒドロキシアルキル化多糖の1質量%水溶液の粘度が1500mPa・s以上100000mPa・s以下である、多糖誘導体。
<2> 1質量%水溶液の粘度が1500mPa・s以上100000mPa・s以下のヒドロキシアルキル化多糖に、炭素数が2以上の炭化水素基(R)を導入した後、カチオン化剤と反応させる、<1>記載の多糖誘導体の製造方法。
本発明によれば、洗浄時に皮脂汚れの洗浄性能を向上することができると共に、繊維の吸水性及び柔軟性を向上させることができる、多糖誘導体が提供される。
以下の説明において、「洗浄性能」とは、洗浄時の皮脂汚れを除去する性能を意味し、「吸水性能」とは、繊維に処理した後の繊維の吸水性能を意味し、「柔軟性」とは、繊維に処理した後の繊維の柔軟性(柔らかさ)を意味する。
[多糖誘導体]
本発明の多糖誘導体はカチオン性基、及び炭素数が2以上の炭化水素基(R)(以下、単に「炭化水素基(R)」ともいう。)を有する、多糖誘導体であって、前記炭化水素基(R)が、直接に、又は酸素原子を有する炭化水素基により、ヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基と結合し、ヒドロキシアルキル化多糖がヒドロキシエチル化多糖及びヒドロキシプロピル化多糖から選ばれる少なくとも一種であり、前記ヒドロキシアルキル化多糖の1質量%水溶液の粘度が1500mPa・s以上100000mPa・s以下である。
本発明者らは、本発明の多糖誘導体を含む洗浄剤組成物などを、衣類等の布帛に処理することにより、洗浄時に皮脂汚れの洗浄性を向上させると共に、繊維の吸水性及び柔軟性を向上させることができることを見出した。その詳細な作用機構は不明であるが、一部は以下のように推定される。
本発明の多糖誘導体はカチオン性基を有することで、疎水性繊維が有するアニオン性基との静電的相互作用や衣類等をアニオン性界面活性剤の存在下に処理する場合には、布帛表面に吸着したアニオン性界面活性剤との静電的相互作用等により多糖誘導体が布帛表面に吸着する。更に、本発明の多糖誘導体は炭素数が2以上の炭化水素基(R)を有することで、特に布帛が疎水性である場合に疎水性の相互作用によって布帛表面に付着する。このように、カチオン性基と炭化水素基(R)とを有することで、布帛への吸着性が向上する。
布帛表面に本発明の多糖誘導体が吸着することで、布帛表面を親水化すると共に、撥油性が向上すると考えられる。これにより、皮脂汚れが布帛表面に強固に付着することが抑制され、洗浄時に皮脂汚れの洗浄性が向上するものと考えられる。
本発明の多糖誘導体は、疎水性繊維が有するアニオン性基との静電的相互作用により、繊維表面に均一に吸着し、また、多糖誘導体が高分子量であることから、一度繊維に吸着すると繊維から脱離しにくく、多糖誘導体の吸着量が増え、多糖誘導体の効果で繊維の吸水性がより向上するものと推定される。同様に、繊維表面に付着して、すすぎ後に残留することで多糖誘導体の効果で繊維の風合い、特に柔軟性を維持することができるものと推定される。
なお、本発明の多糖誘導体は、疎水性繊維で形成された布帛に特に有効であるが、これに限定されるものではない。また、アニオン性界面活性剤の存在下で布帛を処理することが好ましいが、これに限定されるものではなく、アニオン性界面活性剤の非存在下であっても、布帛に対して吸着性を示すことが確認されている。
<ヒドロキシアルキル化多糖>
本発明の多糖誘導体は、1質量%水溶液の粘度が1500mPa・s以上100000mPa・s以下であるヒドロキシアルキル化多糖に、カチオン性基及び炭化水素基(R)が結合している。
また、ヒドロキシアルキル化多糖は、ヒドロキシエチル化多糖及びヒドロキシプロピル化多糖から選ばれる少なくとも一種である。なお、ヒドロキシアルキル化とはモノヒドロキシアルキル化の意味である。
本発明に用いられるヒドロキシアルキル化多糖としては、セルロース、グアーガム、スターチ等の多糖、又はこれらにメチル基等の置換基が導入された多糖に、更に、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基から選択される少なくとも1つを有するものが挙げられる。
ヒドロキシアルキル化多糖の例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシエチルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルメチルスターチ等が挙げられる。
多糖は、好ましくはセルロース又はグアーガム、より好ましくはセルロースである。
ヒドロキシアルキル化多糖は、好ましくはヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、より好ましくはヒドロキシエチルセルロースである。
(ヒドロキシアルキル基)
本発明において、ヒドロキシアルキル化多糖は、多糖にヒドロキシアルキル基が導入されている。該ヒドロキシアルキル基は、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基から選択される少なくとも1つであり、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基のみを有することがより好ましく、ヒドロキシエチル基のみを有することが更に好ましい。
ヒドロキシアルキル基の置換度は、水への溶解性の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上、より更に好ましくは1.5以上である。そして、洗浄性能向上の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは5以下、より更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2.7以下である。
ヒドロキシアルキル基の置換度は、水への溶解性の観点及び洗浄性能向上の観点から、好ましくは0.1以上10以下、より好ましくは0.5以上8以下、更に好ましくは1以上5以下、より更に好ましくは1.5以上3以下、より更に好ましくは1.5以上2.7以下である。
ヒドロキシアルキル基の置換度とは、例えば、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基のみを有する場合には、いずれかの基の置換度である。一方、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基の双方を有する場合には、ヒドロキシエチル基の置換度と、ヒドロキシプロピル基の置換度の合計である。
本発明において、X基の置換度とは、X基のモル平均置換度(MS)であり、多糖誘導体又は多糖の主鎖を構成する構成単糖単位1モルあたりのX基の平均置換モル数を意味する。例えば、ヒドロキシアルキル化多糖がヒドロキシエチルセルロースの場合には、「ヒドロキシエチル基の置換度」は、アンヒドログルコース単位1モルに対して導入された(結合している)ヒドロキシエチル基の平均モル数を意味する。
本発明のヒドロキシアルキル化多糖は、置換基としてグリセロール基を有していてもよい。高い洗浄性能を得る観点から、グリセロール基の置換度は、好ましくは0.5未満、より好ましくは0.1未満、更に好ましくは0.0であり、グリセロール基を有しないことがより更に好ましい。
グリセロール基を有するヒドロキシアルキル化多糖は、多糖にグリセロール化剤を作用させることによって得られ、該グリセロール化剤としては、グリシドール;3−クロロ−1,2−プロパンジオール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール等の3−ハロ−1,2−プロパンジオール;グリセリン;グリセリンカーボネートが挙げられる。これらの中では、塩が副生しないこと、及び反応性の観点から、グリシドールが好ましい。
(1質量%水溶液の粘度)
本発明において、ヒドロキシアルキル化多糖の1質量%水溶液の粘度は、1500mPa・s以上100000mPa・s以下であって、洗浄性能及び吸水性能を向上させる観点から、1500mPa・s以上、好ましくは1600mPa・s以上、より好ましくは1800mPa・s以上、更に好ましくは2000mPa・s以上、より更に好ましくは3000mPa・s以上であり、柔軟性向上の観点から、より更に好ましくは4000mPa・s以上である。
そして、水溶液としての取り扱い性の観点から、100000mPa・s以下、好ましくは70000mPa・s以下、より好ましくは50000mPa・s以下、更に好ましくは30000mPa・s以下、より更に好ましくは20000mPa・s以下、より更に好ましくは10000mPa・s以下、より更に好ましくは8000mPa・s以下、より更に好ましくは6000mPa・s以下である。
ヒドロキシアルキル化多糖の1質量%水溶液の粘度は、洗浄性能、吸水性能及び柔軟性を向上させる観点から、1500mPa・s以上100000mPa・s以下、好ましくは1600mPa・s以上70000mPa・s以下、より好ましくは1800mPa・s以上50000mPa・s以下、更に好ましくは2000mPa・s以上30000mPa・s以下、より更に好ましくは2000mPa・s以上20000mPa・s以下、より更に好ましくは2000mPa・s以上10000mPa・s以下、より更に好ましくは3000mPa・s以上8000mPa・s以下、より更に好ましくは4000mPa・s以上6000mPa・s以下である。
ヒドロキシアルキル化多糖の1質量%水溶液の粘度は、実施例に記載の方法により測定され、25℃における粘度である。
(重量平均分子量)
本発明において、ヒドロキシアルキル化多糖の重量平均分子量は、洗浄性能及び吸水性能を向上させる観点から、好ましくは80万超、より好ましくは85万以上、更に好ましくは90万以上、より更に好ましくは95万以上、より更に好ましくは100万以上である。
そして、水溶液としての取り扱い性の観点から、好ましくは300万以下、より好ましくは250万以下、更に好ましくは200万以下、より更に好ましくは180万以下、より更に好ましくは160万以下、より更に好ましくは150万以下である。
ヒドロキシアルキル化多糖の重量平均分子量は、洗浄性能、吸水性能及び柔軟性を向上させる観点から、好ましくは80万超300万以下、より好ましくは85万以上250万以下、更に好ましくは90万以上200万以下、より更に好ましくは95万以上180万以下、より更に好ましくは100万以上160万以下、より更に好ましくは100万以上150万以下である。
ヒドロキシアルキル化多糖の重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定される。また、ヒドロキシアルキル化多糖として、製品を入手して使用する場合には、製造社の公表値を使用してもよい。
<カチオン性基>
本発明の多糖誘導体は、上述したヒドロキシアルキル化多糖にカチオン性基が導入されている。ここでカチオン性基とは、4級アンモニウム塩又はプロトンを付加することで4級アンモニウム塩に転換が可能な3級アミンを意味する。
カチオン性基の置換度(MS)は、洗浄性能を向上させる観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.02以上、より更に好ましくは0.05以上、より更に好ましくは0.07以上である。
カチオン性基の置換度(MS)は、吸水性能及び柔軟性を向上させる観点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.6以下、より更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.4以下、より更に好ましくは0.3以下、より更に好ましくは0.2以下、より更に好ましくは0.15以下である。
カチオン性基の置換度(MS)は、洗浄性能、吸水性、及び柔軟性を向上させる観点から、好ましくは0.001以上1以下、より好ましくは0.001以上0.8以下、更に好ましくは0.001以上0.6以下、より更に好ましくは0.001以上0.5以下、より更に好ましくは0.005以上0.5以下、より更に好ましくは0.01以上0.4以下、より更に好ましくは0.02以上0.3以下、より更に好ましくは0.05以上0.2以下、より更に好ましくは0.07以上0.15以下である。
カチオン性基の置換度は、実施例に記載の方法により測定される。
ヒドロキシアルキル化多糖に導入されたカチオン性基は、全体として、以下の式(2−1)又は式(2−2)で表されることが好ましい。

(式(2−1)及び式(2−2)中、R21〜R23はそれぞれ独立に、炭素数1以上24以下の炭化水素基を示し、Xはアニオンを示し、tは0以上3以下の整数を示し、*はヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
21〜R23はそれぞれ独立に、炭素数1以上24以下の炭化水素基を示し、炭素数1以上4以下の直鎖又は分岐の炭化水素基であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基が例示される。これらの中でも、メチル基又はエチル基が好ましく、R21〜R23の全てがメチル基又はエチル基であることがより好ましく、R21〜R23の全てがメチル基であることが更に好ましい。
式(2−1)及び式(2−2)中、tは0以上3以下の整数を示し、好ましくは1以上3以下の整数、より好ましくは1又は2、更に好ましくは1である。
はアニオンを示し、第4級アンモニウムカチオンの対イオンである。具体的には、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭素数1以上3以下のカルボン酸イオン(ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン)、及びハロゲン化物イオンが例示される。
これらの中でも、製造の容易性及び原料入手容易性の観点から、Xは、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、及びハロゲン化物イオンから選択される一種以上、より好ましくはハロゲン化物イオンである。ハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンが挙げられるが、得られる多糖誘導体の水溶性及び化学的安定性の観点から、好ましくは塩化物イオン及び臭化物イオンから選択される一種以上、より好ましくは塩化物イオンである。
は一種単独であってもよく、二種以上であってもよい。
<炭化水素基(R)>
本発明の多糖誘導体は、ヒドロキシアルキル化多糖に炭化水素基(R)が導入されている。
本発明の多糖誘導体における炭化水素基(R)の置換度(MS)は、洗浄性能を向上させる観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.003以上、更に好ましくは0.005以上、より更に好ましくは0.008以上、より更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.015以上である。本発明の多糖誘導体における炭化水素基(R)の置換度(MS)は、水への溶解性の観点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.3以下、より更に好ましくは0.1以下、より更に好ましくは0.08以下、より更に好ましくは0.06以下、より更に好ましくは0.05以下、より更に好ましくは0.04以下、より更に好ましくは0.03以下である。
炭化水素基(R)の置換度(MS)は、洗浄性能を向上させる観点及び水への溶解性の観点から、好ましくは0.001以上1以下、より好ましくは0.001以上0.5以下、更に好ましくは0.001以上0.3以下、より更に好ましくは0.001以上0.1以下、より更に好ましくは0.001以上0.05以下、より更に好ましくは0.003以上0.05以下、より更に好ましくは0.003以上0.04以下、より更に好ましくは0.005以上0.04以下、より更に好ましくは0.005以上0.03以下、より更に好ましくは0.008以上0.03以下、より更に好ましくは0.01以上0.03以下、より更に好ましくは0.015以上0.03以下である。
本発明において炭化水素基(R)は、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、該脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であっても、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよいが、より好ましくは飽和脂肪族炭化水素基、更に好ましくは直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、より更に好ましくは直鎖状のアルキル基である。
好ましいカチオン性基の置換度(MS)と炭化水素基(R)の置換度(MS)との組み合わせは下記の通りである。
好ましくはカチオン性基の置換度(MS)が0.001以上1以下、かつ、炭化水素基(R)の置換度(MS)が0.001以上1以下;より好ましくはカチオン性基の置換度(MS)が0.001以上0.6以下、かつ、炭化水素基(R)の置換度(MS)が0.001以上0.3以下;更に好ましくはカチオン性基の置換度(MS)が0.001以上0.5以下、かつ、炭化水素基(R)の置換度(MS)が0.001以上0.1以下;より更に好ましくはカチオン性基の置換度(MS)が0.001以上0.4以下、かつ、炭化水素基(R)の置換度(MS)が0.001以上0.05以下;より更に好ましくはカチオン性基の置換度(MS)が0.02以上0.3以下、かつ、炭化水素基(R)の置換度(MS)が0.003以上0.04以下;より更に好ましくはカチオン性基の置換度(MS)が0.05以上0.2以下、かつ、炭化水素基(R)の置換度(MS)が0.008以上0.03以下;より更に好ましくはカチオン性基の置換度(MS)が0.07以上0.15以下、かつ、炭化水素基(R)の置換度(MS)が0.015以上0.03以下である。
炭化水素基(R)の炭素数は、洗浄性能を向上させる観点から、2以上、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは8以上、より更に好ましくは10以上である。そして、洗浄性能を向上させる観点から、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは15以下、より更に好ましくは14以下である。
炭化水素基(R)の炭素数は、洗浄性能を向上させる観点から、好ましくは2以上22以下、より好ましくは4以上22以下、更に好ましくは4以上18以下、より更に好ましくは6以上16以下、より更に好ましくは8以上16以下、より更に好ましくは8以上15以下、より更に好ましくは8以上14以下、より更に好ましくは10以上14以下である。
炭素数2以上の炭化水素基(R)の置換度(MS)中、炭素数9以上の炭化水素基(R)の置換度(MS9R)の割合(MS9R/MS)は、洗浄性能を向上させる観点から、好ましくは0.25以上1以下、より好ましくは0.5以上1以下、更に好ましくは0.9以上1以下であり、1であってもよい。
本発明において、炭化水素基(R)は、直接に、又は酸素原子を有する炭化水素基により、ヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基と結合している。
すなわち、炭化水素基(R)は、ヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基と、下記式(1)に示される連結基Zを介して結合していることが好ましい。

(式(1)中、Zは単結合又は酸素原子を有する二価の炭化水素基を表し、Rは炭素数2以上の炭化水素基を示し、*はヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
式(1)中のRの好ましい態様は、前述の炭化水素基(R)と同様である。Rは、炭化水素基の炭素数が最大となるように定義される。従って、式(1)中のRと結合するZ中の原子は、例えば酸素原子、カーボネート炭素、水酸基が置換している炭素原子、ヒドロキシアルキル基が置換している炭素原子等である。
Zは、単結合又は酸素原子を有する二価の炭化水素基を表す。ここで、前記炭化水素基は、アルキレン基であることが好ましく、アルキレン基の一部のメチレン基がエーテル結合、カルボニル炭素(−C(=O)−)で置換されていてもよく、アルキレン基の一部の水素原子が、水酸基、ヒドロキシアルキル基で置換されていてもよい。酸素原子を有する二価の炭化水素基は、好ましくはエステル基及び/又はエーテル基を含み、より好ましくはエーテル基を含む。ここで、Zが酸素原子を有する二価の炭化水素基である場合、Zは好ましくは炭素原子、水素原子及び酸素原子のみから構成されており、例えば、窒素原子を含まないことが好ましい。
Zが酸素原子を有する二価の炭化水素基(以下、炭化水素基(Z)ともいう。)である場合、炭化水素基(Z)は、エポキシ基由来の基又はオキシグリシジル基由来の基を有することが好ましく、洗浄性能向上の観点から、オキシグリシジル基由来の基を有することがより好ましい。炭化水素基(Z)の炭素数は、好ましくは1以上130以下であり、より好ましくは1以上13以下であり、更に好ましくは1以上3以下である。
式(1)で表される基は、下記式(1−1−1)〜(1−4)のいずれかで表される基であることがより好ましい。

(式(1−1−1)〜式(1−4)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、炭素数2以上4以下のアルキレン基を示し、Rは炭素数2以上の炭化水素基を示し、*はヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示し、n1は−R11−O−の平均付加モル数を示し、n2は−R12−O−の平均付加モル数を示し、n1及びn2は0以上30以下である。)
式(1−1−1)〜式(1−4)中、Rは式(1)中のRと同義であり、好ましい態様も同じである。式(1)中のZは、式(1−1−1)〜式(1−4)からRを除いた基である。
式(1−1−1)〜式(1−4)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、炭素数2以上4以下のアルキレン基を示し、好ましくは炭素数2又は3、すなわち、エチレン基又はプロピレン基である。R11及びR12が複数存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。n1及びn2は0以上30以下であり、好ましくは0以上20以下、より好ましくは0以上10以下、更に好ましくは0以上5以下であり、0であってもよい。
式(1−1−1)及び式(1−1−2)は、グリシジル((ポリ)アルキレンオキシ)ヒドロカルビルエーテルに由来する基であり、式(1)中のZがオキシグリシジル基又は(ポリ)アルキレンオキシグリシジル基に由来する基である。式(1−1−1)又は式(1−1−2)で表される基は、炭化水素基(R)の導入剤(以下、「疎水化剤」ともいう。)として、グリシジル((ポリ)アルキレンオキシ)ヒドロカルビルエーテル、好ましくはグリシジル((ポリ)アルキレンオキシ)アルキルエーテル、より好ましくはグリシジルアルキルエーテルを使用することによって得られる。
式(1−2−1)及び式(1−2−2)は、式(1)中のZがエポキシ基に由来する基である。式(1−2−1)及び式(1−2−2)で表される基は、炭化水素基(R)の導入剤として、末端エポキシ炭化水素、好ましくは末端エポキシアルカンを使用することで得られる。
更に、式(1−3)は、炭化水素基(R)が直接にヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基と結合している場合である。式(1−3)で表される基は、疎水化剤として、ハロゲン化炭化水素を使用することで得られる。
式(1−4)は、Zがカルボキシ基等に由来する基を含有する。式(1−4)で表される基は、炭化水素基(R)の導入剤として、R−(O−R12n2−C(=O)−OH、R−(O−R12n2−C(=O)−A(Aはハロゲン原子を示す。)、R−(O−R12n2−C(=O)−O−C(=O)−(R12−O)n2−R等を使用することで得られる。
これらの中でも、多糖誘導体の合成時に塩の副生がなく、洗浄性能向上の観点から、式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−2−1)又は式(1−2−2)で表される基であることが好ましく、より好ましくは式(1−1−1)又は式(1−1−2)で表される基である。
本発明において、多糖誘導体の炭化水素基(R)の置換度(MS)とカチオン性基の置換度(MS)の比(MS/MS)は、洗浄性能、吸水性能、及び柔軟性を向上させる観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.05以上、より更に好ましくは0.1以上、より更に好ましくは0.16以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.6以下、より更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.3以下、より更に好ましくは0.2以下である。
多糖誘導体の炭化水素基(R)の置換度(MS)とカチオン性基の置換度(MS)の比(MS/MS)は、洗浄性能、吸水性能、及び柔軟性を向上させる観点から、好ましくは0.001以上1以下、より好ましくは0.005以上0.8以下、更に好ましくは0.005以上0.6以下、より更に好ましくは0.01以上0.5以下、より更に好ましくは0.05以上0.5以下、より更に好ましくは0.1以上0.3以下、より更に好ましくは0.16以上0.2以下である。
本発明において、炭化水素基(R)及びカチオン性基は、洗浄性能、吸水性能、及び柔軟性を向上させる観点から、ヒドロキシアルキル化多糖の有する、異なる水酸基の酸素原子と結合していることが好ましい。すなわち、一つの側鎖上に炭化水素基(R)及びカチオン性基を有する多糖誘導体ではないことが好ましい。炭化水素基(R)及びカチオン性基が、多糖誘導体の異なる側鎖上に結合していることが好ましい。
本発明において、多糖誘導体は、アニオン性基を有していてもよいが、多糖誘導体におけるアニオン性基の置換度(MS)とカチオン性基の置換度(MS)の比(MS/MS)は、洗浄性能を向上させる観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.7以下、より更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1以下、より更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.3以下、より更に好ましくは0.1以下であり、0以上であってもよく、0であることがより更に好ましい。
多糖誘導体におけるアニオン性基の置換度(MS)は、洗浄性能を向上させる観点から、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.04以下、より更に好ましくは0.01以下、より更に好ましくは0.001以下、0以上であってもよく、0であることが更に好ましい。
多糖誘導体がアニオン性基を有する場合、該アニオン性基としては、硫酸エステル基、スルホン酸基、カルボキシメチル基等が例示される。
カルボキシメチル化反応(カルボキシメチル基の導入反応)は、ヒドロキシアルキル化多糖に塩基性化合物の存在下、モノハロゲン化酢酸及び/又はその金属塩を反応させることにより行われる。
モノハロゲン化酢酸及びモノハロゲン化酢酸金属塩としては、具体的には、モノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸カリウム、モノブロモ酢酸ナトリウム、モノブロモ酢酸カリウム等が例示される。これらモノハロゲン化酢酸及びその金属塩は単独あるいは二種以上を組み合せても使用することができる。
好ましい多糖誘導体の炭化水素基(R)の置換度(MS)とカチオン性基の置換度(MS)の比(MS/MS)とアニオン性基の置換度(MS)とカチオン性基の置換度(MS)の比(MS/MS)の組み合わせは下記の通りである。
好ましくは多糖誘導体の炭化水素基(R)の置換度(MS)とカチオン性基の置換度(MS)の比(MS/MS)が0.001以上1以下、かつ、アニオン性基の置換度(MS)とカチオン性基の置換度(MS)の比(MS/MS)が3以下、より好ましくは(MS/MS)が0.005以上0.8以下、かつ、(MS/MS)が1.5以下、更に好ましくは(MS/MS)が0.005以上0.6以下、かつ、(MS/MS)が1以下、より更に好ましくは(MS/MS)が0.05以上0.5以下、かつ、(MS/MS)が0.5以下、より更に好ましくは(MS/MS)が0.1以上0.3以下、かつ、(MS/MS)が0.3以下である。
以上の観点から、好ましくはカチオン性基の置換度(MS)が0.001以上1以下、炭化水素基の置換度(MS)が0.001以上1以下、炭化水素基(R)の置換度(MS)とカチオン性基の置換度(MS)の比(MS/MS)が0.001以上1以下、かつ、アニオン性基の置換度(MS)とカチオン性基の置換度(MS)の比(MS/MS)が3以下;
より好ましくはカチオン性基の置換度(MS)が0.001以上0.6以下、炭化水素基の置換度(MS)が0.001以上0.3以下、炭化水素基(R)の置換度(MS)とカチオン性基の置換度(MS)の比(MS/MS)が0.005以上0.8以下、かつ、アニオン性基の置換度(MS)とカチオン性基の置換度(MS)の比(MS/MS)が1.5以下;
更に好ましくはカチオン性基の置換度(MS)が0.001以上0.5以下、炭化水素基の置換度(MS)が0.001以上0.1以下、炭化水素基(R)の置換度(MS)とカチオン性基の置換度(MS)の比(MS/MS)が0.005以上0.6以下、かつ、アニオン性基の置換度(MS)とカチオン性基の置換度(MS)の比(MS/MS)が1以下;
より更に好ましくはカチオン性基の置換度(MS)が0.02以上0.3以下、炭化水素基(R)の置換度(MS)が0.003以上0.04以下、炭化水素基(R)の置換度(MS)とカチオン性基の置換度(MS)の比(MS/MS)が0.05以上0.5以下、かつ、アニオン性基の置換度(MS)とカチオン性基の置換度(MS)の比(MS/MS)が0.5以下である。
本発明の多糖誘導体の好ましい一態様としては、カチオン性基及び炭素数4以上15以下の炭化水素基(R)を有する多糖誘導体であり、カチオン性基の置換度(MS)が0.001以上0.4以下であり、炭化水素基の置換度(MS)が0.001以上0.05以下である多糖誘導体であり、前記炭化水素基(R)が、直接に、又は酸素原子を有していてもよい炭化水素基により、ヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基と結合し、ヒドロキシアルキル化多糖がヒドロキシエチル化多糖及びヒドロキシプロピル化多糖から選ばれる少なくとも一種であり、前記ヒドロキシアルキル化多糖は、1質量%水溶液の粘度が1500mPa・s以上100000mPa・s以下である、多糖誘導体である。
本発明の多糖誘導体の他の好ましい態様としては、カチオン性基及び炭化水素基(R)を有する多糖誘導体であって、炭化水素基(R)がエーテル基を含む連結基により、ヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基に結合した多糖誘導体であり、ヒドロキシアルキル化多糖がヒドロキシエチル化多糖及びヒドロキシプロピル化多糖から選ばれる少なくとも一種であり、前記ヒドロキシアルキル化多糖は、1質量%水溶液の粘度が1500mPa・s以上100000mPa・s以下である、多糖誘導体である。
<用途>
本発明の多糖誘導体は、衣類等の布帛に処理することにより、洗浄時の皮脂汚れの洗浄性を向上することができると共に、繊維の吸水性及び柔軟性を向上させることができる。
本発明の多糖誘導体は、衣類用洗浄剤組成物に添加することが好ましい。着衣前に、予め衣類を処理することで、洗浄時の皮脂汚れの洗浄性を向上することが期待できる。また、繊維の吸水性及び柔軟性を向上させることができる。衣類用洗浄剤組成物が、本発明の多糖誘導体を、その構成成分として含有していてもよく、また、別途に添加してもよく、特に限定されない。
本発明の多糖誘導体は、洗浄性能、吸水性能、及び柔軟性を向上させる観点から、衣類等の布帛に対して処理する際の水溶液中の濃度が、好ましくは0.01mg/L以上、より好ましくは0.1mg/L以上、更に好ましくは0.3mg/L以上、より更に好ましくは0.5mg/L以上であり、そして、経済性の観点から、好ましくは10,000mg/L以下、より好ましくは1,000mg/L以下、更に好ましくは500mg/L以下、より更に好ましくは100mg/L以下である。
[多糖誘導体の製造方法]
<ヒドロキシアルキル化多糖>
ヒドロキシアルキル化多糖は、多糖と、ヒドロキシアルキル化剤とを、塩基性化合物の存在下で反応させることによって得られる。
以下、多糖がセルロースである場合を例にとって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。セルロースは一般に高い結晶性を有し、反応性に乏しいため、反応前にその結晶性を低下させ、反応性を改善させる処理を行うことが好ましい。
ヒドロキシアルキル化セルロースの製造方法としては、例えば、以下の方法(i)〜(iii)を挙げることができる。
方法(i):一般にアルセル化又はマーセル化と呼ばれる活性化方法、すなわち、原料セルロースと大量の水、及び大過剰のアルカリ金属水酸化物を混合して、アルカリセルロースを得たのち、ヒドロキシアルキル化剤と反応させる方法。
方法(ii):セルロースを、例えば、テトラブチルアンモニウムフルオリドを含むジメチルスルホキシド、パラホルムアルデヒドを含むジメチルスルホキシド、塩化リチウムを含むジメチルアセトアミド等の溶剤、「セルロースの事典、編者:セルロース学会、発行所:株式会社朝倉書店」、Macromol.Chem.Phys.201,627−631(2000)等に記載されるセルロースの溶解が可能な溶剤を用い、原料セルロースを溶解させ、その後原料セルロースとヒドロキシアルキル化剤とを反応させる方法。
方法(iii):前記(i)や(ii)の方法のように、過剰のアルカリやセルロースを溶解可能な特殊な溶剤を用いず、粉末状、又は綿状の原料セルロースとヒドロキシアルキル化剤とをアルカリ共存下に反応させる方法。
以下、多糖誘導体の製造に用いられるヒドロキシアルキル化剤、カチオン化剤、疎水化剤(炭化水素基(R)の導入剤)、及び活性化方法等について述べる。
(ヒドロキシアルキル化剤)
本発明の多糖誘導体の製造に使用されるヒドロキシアルキル化剤の具体例としては、エポキシアルカン、アルキルグリシジルエーテル、アルキルハロヒドリンエーテル等が挙げられる。これらの中でも、反応時に塩の生成がない観点から、エポキシアルカン及びアルキルグリシジルエーテルから選ばれる一種以上が好ましく、エポキシアルカンがより好ましい。
ヒドロキシアルキル化剤としてはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドから選ばれる一種以上が好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
ヒドロキシアルキル化多糖は、市販されており、市場から入手したヒドロキシアルキル化多糖を使用してもよい。
具体的には、ヒドロキシエチルセルロースとしては、Natrosolシリーズ(Ashland社)、CELLOSIZEシリーズ(ダウ・ケミカル社)が例示される。また、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースは、信越化学工業株式会社、日本曹達株式会社、住友精化株式会社、三晶株式会社、ダイセルファインケム株式会社、東京化成工業株式会社等からも入手可能である。
<カチオン化剤>
本発明の多糖誘導体の製造に用いられるカチオン化剤としては、下記式(3)又は式(4)で表される化合物等が挙げられる。
式(3)及び(4)中、R21〜R23及びその好ましい態様は、前記式(2−1)及び(2−2)のR21〜R23と同様である。t及びその好ましい態様は、前記式(2−1)及び(2−2)のtと同様である。X及びその好ましい態様は、前記式(2−1)及び(2−2)のXと同様である。Aはハロゲン原子を示す。R21〜R23は互いに同一であっても異なっていてもよい。
前記式(3)又は(4)で表される化合物の具体例としては、グリシジルトリメチルアンモニウム、グリシジルトリエチルアンモニウム、グリシジルトリプロピルアンモニウムのそれぞれ塩化物、臭化物又はヨウ化物や、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウム、又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリプロピルアンモニウムのそれぞれ塩化物、3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウム、又は3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルトリプロピルアンモニウムのそれぞれ臭化物や、3−ヨード−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、3−ヨード−2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウム、又は3−ヨード−2−ヒドロキシプロピルトリプロピルアンモニウムのそれぞれヨウ化物が挙げられる。
これらの中では、原料の入手の容易性及び化学的安定性の観点から、グリシジルトリメチルアンモニウム又はグリシジルトリエチルアンモニウムの塩化物又は臭化物;3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムの塩化物;3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム又は3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムの臭化物から選ばれる一種以上が好ましく、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド及び3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドから選ばれる一種以上がより好ましく、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライドが更に好ましい。
これらのカチオン化剤は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
使用するカチオン化剤の量は、所望するカチオン性基の置換度(MS)と反応収率とを考慮して適宜選択すればよいが、多糖誘導体の水溶性、及び本発明の効果を得る観点から、ヒドロキシアルキル化多糖の構成単糖単位1モルに対し、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.03モル以上、更に好ましくは0.05モル以上、より更に好ましくは0.1モル以上であり、上記の観点及び多糖誘導体の製造コストの観点から、好ましくは30モル以下、より好ましくは25モル以下、更に好ましくは10モル以下、より更に好ましくは1モル以下、より更に好ましくは0.5モル以下である。
カチオン化剤の添加方法は一括、間欠、連続のいずれでもよい。
<炭化水素基(R)の導入剤>
本発明の多糖誘導体の製造に用いられる炭化水素基(R)の導入剤(疎水化剤)としては、前記式(1)で表される基を導入できるものであればよい。
前記式(1−1−1)及び式(1−1−2)で表される基を導入しうる導入剤としては、下記式(5)又は(6)で表される化合物が挙げられる。
式(5)及び(6)中、R及びその好ましい態様は、前記式(1)のRと同様である。Aはハロゲン原子を示し、塩素原子が好ましい。R11及びその好ましい態様は、前記式(1−1−1)及び(1−1−2)のR11及びその好ましい態様と同様である。また、n1及びその好ましい態様は、前記式(1−1−1)及び(1−1−2)のn1及びその好ましい態様と同様である。
前記式(5)で表される化合物の具体例としては、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ペンチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、ヘプチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、ノニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、ペンタデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、ヘプタデシルグリシジルエーテル、オクタデシルグリシジルエーテル等のアルキル基を有するグリシジルエーテル;ブテニルグリシジルエーテル、ペンテニルグリシジルエーテル、ヘキセニルグリシジルエーテル、ヘプテニルグリシジルエーテル、オクテニルグリシジルエーテル、ノネニルグリシジルエーテル、デセニルグリシジルエーテル、ウンデセニルグリシジルエーテル、ドデセニルグリシジルエーテル、トリデセニルグリシジルエーテル、テトラデセニルグリシジルエーテル、ペンタデセニルグリシジルエーテル、ヘキサデセニルグリシジルエーテル、ヘプタデセニルグリシジルエーテル、オクタデセニルグリシジルエーテル等のアルケニル基を有するグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、ラウリルグリシジルエーテル、セチルグリシジルエーテル等の、炭化水素基を有する炭素数5以上25以下のアルキルグリシジルエーテルが好ましい。
前記式(6)で表される化合物の具体例としては、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル−ドデシルエーテル等の、炭化水素基を有する炭素数5以上25以下の3−ハロ−2−ヒドロキシ−プロピルアルキルエーテル等が挙げられる。
これらの中では、疎水化剤とヒドロキシアルキル化多糖との反応時に塩の副生がない点、疎水化剤の入手の容易性及び化学的安定性の観点から、前記式(5)で表される化合物が好ましい。
これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
前記式(1−2−1)及び式(1−2−2)で表される基を導入しうる導入剤としては、下記式(7)又は(8)で表される化合物等が挙げられる。
式(7)及び(8)中、R及びその好ましい態様は、前記式(1)のRと同様である。Aはハロゲン原子を示し、塩素原子であることが好ましい。
前記式(7)で表される化合物の具体例としては、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシオクタデカン等の、炭化水素基を有する炭素数4以上24以下の1,2−エポキシアルカンが挙げられる。前記式(8)で表される化合物の具体例としては、1−クロロ−2−ヒドロキシテトラデカン等の、炭化水素基を有する炭素数4以上24以下の1−ハロ−2−ヒドロキシアルカン等が挙げられる。
これらの中では、疎水化剤とヒドロキシアルキル化多糖との反応時に塩の副生がない点、疎水化剤の入手の容易性及び化学的安定性の観点から、前記式(7)で表される化合物が好ましい。
これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
前記式(1−3)で表される基を導入しうる疎水化剤としては、下記式(9)で表される化合物等が挙げられる。
式(9)中、R及びその好ましい態様は、前記式(1)のRと同様である。Aはハロゲン原子を示し、塩素原子であることが好ましい。
前記式(9)で表される化合物の具体例としては、前記所望の炭素数を有するハロゲン化アルカンが挙げられる。
前記式(1−4)で表される基を導入しうる疎水化剤としては、下記式(10)〜(12)で表される化合物等が挙げられる。
式(10)〜式(12)中、R及びその好ましい態様は、前記式(1)のRと同様である。Aはハロゲン原子を示し、塩素原子であることが好ましい。
式(10)〜式(12)中、R12、n2及びその好ましい態様は、式(1−4)のR12及びn2と同様である。
前記式(10)〜式(12)で表される化合物の具体例としては、前記所望の炭素数を有する脂肪酸、脂肪酸ハライド、脂肪酸無水物が挙げられる。
使用する疎水化剤の量は、所望する炭化水素基(R)の置換度(MS)と反応収率とを考慮して適宜選択すればよいが、多糖誘導体の水溶性、及び本発明の効果を得る観点から、ヒドロキシアルキル化多糖の構成単糖単位1モルに対し、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.03モル以上であり、上記の観点及び多糖誘導体の製造コストの観点から、好ましくは5モル以下、より好ましくは3モル以下、更に好ましくは1モル以下、より更に好ましくは0.5モル以下、より更に好ましくは0.2モル以下である。
疎水化剤の添加方法は一括、間欠、連続のいずれでもよい。
<多糖誘導体の製造方法>
本発明の多糖誘導体の製造方法は、ヒドロキシアルキル化多糖を、前述したカチオン化剤及び炭化水素基(R)の導入剤(疎水化剤)と反応させて、カチオン性基及び炭化水素基(R)を導入することが好ましい。
本発明の多糖誘導体の製造方法は、製造の容易性及び得られる多糖誘導体の透明性の観点から、1質量%水溶液の粘度が1500mPa・s以上100000mPa・s以下のヒドロキシアルキル化多糖に、前述の炭素数が2以上の炭化水素基(R)を導入した後、前述のカチオン化剤と反応させることが、より好ましい。すなわち、1質量%水溶液の粘度が1500mPa・s以上100000mPa・s以下のヒドロキシアルキル化多糖に前述の疎水化剤を反応させて、炭素数が2以上の炭化水素基(R)を導入した後、前述のカチオン化剤と反応させて、カチオン性基を導入することがより好ましい。
更に好ましくは、本発明の多糖誘導体の製造方法は、製造の容易性及び得られる多糖誘導体の透明性の観点から、アルカリ化合物の存在下、ヒドロキシアルキル化多糖に前述の疎水化剤を反応させて、炭素数が2以上の炭化水素基(R)を導入した後、洗浄工程を有さずに、カチオン化剤と反応させて、カチオン性基を導入する製造方法である。
これらの反応は、いずれもアルカリ化合物共存下で行うことが好ましい。該反応で用いられるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン化合物類等が挙げられる。これらの中では導入反応の反応速度の観点から、アルカリ金属水酸化物、又はアルカリ土類金属水酸化物が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが更に好ましい。これらのアルカリ化合物は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
アルカリ化合物の添加方法に特に限定はなく、一括添加でも、分割添加でもよい。また、アルカリ化合物は固体状態で添加してもよく、水溶液としてから添加してもよい。
カチオン性基及び炭化水素基の導入反応において、それぞれに用いられるアルカリ化合物の量は、アルカリ化合物が一価の塩基化合物の場合は、反応剤の反応選択性の観点から、原料多糖の構成単糖単位1モル(原料多糖がセルロースである場合、アンヒドログルコース単位(AGU)1モル)に対して、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.05モル以上、更に好ましくは0.1モル以上であり、同様の観点から、好ましくは10モル以下、より好ましくは5モル以下、更に好ましくは3モル以下、より更に好ましくは2モル以下、より更に好ましくは1.0モル以下、より更に好ましくは0.8モル以下、より更に好ましくは0.5モル以下である。
カチオン性基の導入反応及び炭化水素基の導入反応を同時に行う場合に用いられるアルカリ化合物の好ましい量も、上記カチオン性基の導入反応及び炭化水素の導入反応においてそれぞれに用いられるアルカリ化合物の量と同じである。
ヒドロキシアルキル基の導入反応、カチオン性基の導入反応、又は炭化水素基(R)の導入反応において用いられるアルカリ化合物がアルカリ土類金属水酸化物などの多価塩基である場合、用いられるアルカリ化合物の量の好ましい範囲は、上記それぞれの反応におけるアルカリ化合物の好ましい量の範囲を、該多価塩基価数で除した範囲である。例えば用いられるアルカリ化合物が水酸化カルシウム(二価の塩基)である場合、水酸化カルシウムの量は、反応選択性の観点から、原料セルロースのAGU1モルに対して、好ましくは0.005モル以上、より好ましくは0.025モル以上、更に好ましくは0.05モル以上であり、同様の観点から、好ましくは5モル以下、より好ましくは2.5モル以下、更に好ましくは1.5モル以下、より更に好ましくは1モル以下、より更に好ましくは0.5モル以下、より更に好ましくは0.4モル以下、より更に好ましくは0.25モル以下である。
すなわち、アルカリ化合物は、ヒドロキシアルキル化多糖の構成単糖単位1モルに対して(ヒドロキシアルキル化多糖が、ヒドロキシアルキル化セルロースである場合には、原料セルロースのアンヒドログルコース単位(AGU)1モルに対して)、好ましくは0.01モル当量以上、より好ましくは0.05モル当量以上、更に好ましくは0.1モル当量以上であり、好ましくは10モル当量以下、より好ましくは5モル当量以下、更に好ましくは3モル当量以下、より更に好ましくは2モル当量以下、より更に好ましくは1モル当量以下、より更に好ましくは0.8モル当量以下、より更に好ましくは0.5モル当量以下である。
アルカリ化合物のモル当量は、アルカリ化合物が水酸化ナトリウム等の一価の塩基化合物の場合には、モル数と同じであり、アルカリ化合物が水酸化カルシウム等の二価の塩基化合物の場合には、モル数に価数を乗じた値となる。
アルカリ化合物とカチオン化剤とのモル当量比(アルカリ化合物/カチオン化剤)は、反応性の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上であり、得られる多糖誘導体の透明性を向上させる観点から、好ましくは2以下、より好ましくは1.8以下である。なお、カチオン化剤が多価の場合も同様に計算する。
本発明において、ヒドロキシアルキルセルロースは、粉末セルロース又は綿状セルロースと、前述したヒドロキシアルキル化剤とを反応させて、ヒドロキシアルキル基の導入反応を行うことにより得ることができる。
以下、ヒドロキシアルキル基の導入反応(ヒドロキシアルキル化反応)、炭化水素基(R)の導入反応(疎水化反応)、及びカチオン性基の導入反応(カチオン化反応)を総称して、「多糖誘導体製造時の反応」ともいう。
多糖誘導体製造時の各反応において、それぞれヒドロキシアルキル化剤、カチオン化剤及び炭化水素基(R)の導入剤の添加時の形態に特に制限はない。ヒドロキシアルキル化剤、カチオン化剤及び炭化水素基の導入剤が液体状態である場合はそのまま用いてもよいし、水や非水溶剤等の、ヒドロキシアルキル化剤やカチオン化剤や炭化水素基の導入剤の良溶剤で希釈した形で用いてもよい。
希釈に用いる非水溶剤としては、イソプロパノール、tert−ブタノール等の2級又は3級の炭素数3以上4以下の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の炭素数3以上6以下のケトン;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。
多糖誘導体製造時の各反応は、前記方法(ii)においては、反応時にセルロースの溶解が可能な溶剤を用い、原料セルロースを溶解させて反応を行うが、方法(i)及び(iii)においても、ヒドロキシアルキル化剤、カチオン化剤及び炭化水素基の導入剤の反応収率の観点から、非水溶剤の存在下に行うこともできる。その非水溶剤としては、上記と同じ非水溶剤を用いることができる。
炭化水素基(R)の導入反応(疎水化反応)とカチオン性基の導入反応(カチオン化反応)の間に、洗浄工程を有していてもよいが、製造の容易性の観点から、洗浄工程を有さないことが好ましい。アルカリ化合物とカチオン化剤とのモル比(アルカリ化合物/カチオン化剤)を、前述の範囲内にすることで、疎水化反応の後、洗浄工程により、過剰のアルカリ化合物を除去する必要がなく、カチオン化反応させることができる。なお、洗浄工程とは、炭化水素基(R)を導入した反応中間体を、熱水、イソプロピルアルコール、アセトン等の溶剤で洗浄することで、未反応の炭化水素基(R)の導入剤や、中和等によりアルカリ化合物を塩として除去する工程である。洗浄工程後、ろ過や乾燥の後、アルカリ化合物を再添加して、カチオン化反応させることができる。
上記多糖誘導体製造時の各反応に用いる装置としては、フラスコ、SUS反応槽、及び撹拌が可能なレディゲミキサー等のミキサーや、粉体、高粘度物質、樹脂等の混錬に用いられる、いわゆるニーダー等の混合機を挙げることができる。
多糖誘導体製造時の各反応の反応時の温度は、反応速度の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上である。また、ヒドロキシアルキル化剤、炭化水素基の導入剤、又はカチオン化剤の分解抑制の観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは100℃以下である。
炭化水素基を導入する(疎水化反応における)反応温度は、反応性の観点から、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上であり、分解抑制の観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは100℃以下である。
カチオン化剤と反応させる反応温度は、反応性の観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは40℃以上であり、得られる多糖誘導体の透明性の観点から、好ましくは55℃未満、より好ましくは53℃以下、更に好ましくは51℃以下である。
多糖誘導体製造時の各反応は、着色、及び単糖単位由来の主鎖の分子量低下を抑制する観点から、それぞれ必要に応じて窒素等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
反応終了後は、酸を用いてアルカリ化合物を中和することができる。ヒドロキシアルキル化反応、カチオン化反応及び炭化水素基の導入反応を別個に行う際には、各反応間で中和を行うこともできるが、中和塩の生成を抑制する観点から、全ての反応の終了後に行うことが好ましい。酸としては、硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸、酢酸、乳酸等の有機酸を用いることができる。
多糖誘導体製造時の全ての反応終了後に得られた多糖誘導体は、必要に応じて、濾過等により分別したり、熱水、含水イソプロピルアルコール、含水アセトン溶剤等で洗浄して未反応のヒドロキシアルキル化剤、カチオン化剤、炭化水素基の導入剤、並びにこれらの反応剤由来の副生物、中和等により副生した塩類を除去してから使用することもできる。その他、精製方法としては、再沈殿精製、遠心分離、透析等一般的な精製方法を用いることができる。
実施例及び比較例で使用した測定方法は以下の通りである。
[置換度(モル平均置換度(MS))の測定]
・前処理
粉末状の多糖誘導体1gを100gの水に溶かした後、水溶液を透析膜(スペクトラ/ポア7(分画分子量1,000)、フナコシ株式会社製)に入れ、2日間透析を行った。得られた水溶液を、凍結乾燥機(FDU1100、東京理化器械株式会社製)を用いて凍結乾燥することで精製多糖誘導体を得た。
<ケルダール法によるカチオン性基質量の算出>
精製した多糖誘導体の200mgを精秤し、硫酸10mLとケルダール錠(メルク株式会社製)1錠を加え、ケルダール分解装置(K−432、BUCHI社製)にて加熱分解を行った。分解終了後、サンプルにイオン交換水30mLを加え、自動ケルダール蒸留装置(K−370、BUCHI社製)を用いてサンプルの窒素含量(質量%)を求めることで、カチオン性基の質量を算出した。
<Zeisel法による炭化水素基(アルキル基)質量の算出>
以下に、実施例1(炭化水素基の導入剤として、ラウリルグリシジルエーテルを使用)の場合を例に、炭化水素基(R)であるアルキル基質量の算出方法を説明する。他の導入剤を使用した場合も、検量線用の試料(ヨードアルカンや炭化水素基の導入剤など)を適宜選択することによって測定可能である。
精製した多糖誘導体200mg、アジピン酸(東京化成工業株式会社製)220mgを10mLバイアル(マイティーバイアルNo.3、株式会社マルエム製)に精秤し、内標溶液(テトラデカン(富士フイルム和光純薬株式会社製)/o−キシレン(東京化成工業株式会社製)=1/25(v/v)) 3mL及びヨウ化水素酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)3mLを加えて密栓した。また、多糖誘導体の代わりに1−ヨードドデカン(富士フィルムワコーケミカル株式会社製)を2、4、又は9mg加えた検量線用の試料を調製した。各試料をスターラーチップにより撹拌しながら、ブロックヒーター(Reacti−ThermIII Heating/Stirring Module、PIERCE社製)を用いて160℃、2時間の条件で加熱した。試料を放冷した後、上層(o−キシレン層)を回収し、ガスクロマトグラフィー(GC−2010 plus、株式会社島津製作所製)にて、1−ヨードドデカン量を分析した。
・GC分析条件
カラム:HP−1(長さ:30m、液相膜厚:0.25μm、内径:32mm、アジレント社製)
スプリット比:20
カラム温度:100℃(2分間保持)→昇温10℃/分→300℃(15分間保持)
インジェクター温度:300℃
検出器:FID
検出器温度:330℃
打ち込み量:2μL
GCにより得られた1−ヨードドデカンの検出量から、サンプル中のアルキル基の質量を求めた。
<ヒドロキシアルキル基質量の測定>
以下に、実施例1(ヒドロキシアルキル基として、ヒドロキシエチル基)の場合を例に、ヒドロキシアルキル基質量の算出方法を説明する。他のヒドロキシアルキル化多糖を使用した場合も、検量線用の試料(ヨードアルカン)を適宜選択することによって測定可能である。
精製した多糖誘導体65mg、アジピン酸(東京化成工業株式会社製)65mgを10mLバイアル(マイティーバイアルNo.3、株式会社マルエム製)に精秤し、内標溶液(n−オクタン(富士フイルム和光純薬株式会社製)/o−キシレン(東京化成工業株式会社製)=1/100(v/v)) 2mL及びヨウ化水素酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)2mLを加えて密栓した。また、多糖誘導体の代わりにヨードエタン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を83、96、又は107mg加えた検量線用の試料を調製した。各試料をスターラーチップにより撹拌しながら、ブロックヒーター(Reacti−ThermIII Heating/Stirring Module、PIERCE社製)を用いて170℃、2時間の条件で加熱した。試料を放冷した後、上層(o−キシレン層)を回収し、ガスクロマトグラフィー(GC−2014、株式会社島津製作所製)にて、ヨードエタン量を分析した。
・GC分析条件
カラム:パックドカラム(液相:Silicone SE−30(30%)、担体:Chromosorb W 60/80 AW−DMCS、ガラス製(長さ:3.1m、内径:2.6mm))、信和化工株式会社製
カラム温度:60℃(5分間保持)→昇温10℃/分→230℃(5分間保持)
インジェクター温度:210℃
検出器:FID
検出器温度:230℃
打ち込み量:1μL
GCにより得られたヨードエタンの検出量から、サンプル中のヒドロキシエチル基の質量を求めた。
<カチオン性基、アルキル基、及びヒドロキシアルキル基の置換度(モル平均置換度)の算出>
上述のカチオン性基と炭化水素基(R)であるアルキル基の質量及び全サンプル質量からヒドロキシエチルセルロース(HEC)骨格の質量を計算し、それぞれ物質量(mol)に変換することで、カチオン性基の置換度(MS)、及びアルキル基の置換度(MS)を算出した。
ヒドロキシアルキル基についても同様にして置換度を算出した。
<誘導結合プラズマ(ICP)発光分析によるアニオン性基質量の算出>
得られた精製多糖誘導体0.1gを分解容器に採取し、硫酸(精密分析用、富士フイルム和光純薬株式会社製)4mL及び硝酸(原子吸光分析用、関東化学株式会社製)、過酸化水素(原子吸光分析用、富士フイルム和光純薬株式会社)を適宜添加して湿式分解を行い、超純水で100mLにメスアップした液を試料測定原液とし、この溶液を25倍希釈して試料測定溶液とした(硫酸含有量も検量線と同程度に調整した)。
検量線溶液調製:原子吸光分析用標準液(Na:1000mg/L、原子吸光分析用標準液1000mg/L、関東化学株式会社)を用いて、0.1〜20mg/Lの検量線溶液を調製した。それぞれの溶液に硫酸濃度が4%となるように、硫酸を添加した。
調製した試料を、ICP発光分光分析装置にて、以下の条件でNa含有量の測定を行った。
(分析条件)
・分析装置:iCAP 6500Duo、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製
・測定波長:Na 589.582nm
・RFパワー:950W
・クーラントガス流量:12L/分
・ネブライザー流量:0.70L/分
・補助ガス流量:0.5L/分
・ポンプ流量:50r.p.m
サンプルのNa含有量(質量%)を求めることで、アニオン性基の質量を算出した。
<アニオン性基の置換度(モル平均置換度)の算出>
上述のアニオン性基の質量及び全サンプル質量からHEC骨格の質量を計算し、それぞれ物質量(mol)に変換することで、アニオン性基の置換度(MS)を算出した。
[重量平均分子量の測定]
ヒドロキシエチルセルロース(HEC)の重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により、ポリエチレングリコール換算及びヒドロキシエチルセルロース(Natrosol 250HR(分子量100万)、Natrosol 250MR(分子量72万)、ASHLAND社製)を基準として、以下の条件で測定を行った。
測定条件は、以下の通りである。
・カラム:TSKgel α−M(東ソー株式会社製)
・溶離液:50mmol/L LiBr、1%CHCOOH、エタノール/水=3/7
・温度:40℃
・流速:0.6mL/分
[粘度の測定]
ヒドロキシエチルセルロース(HEC)の1質量%水溶液を調製後、スクリュー管(50mL)に入れ、25℃の恒温槽にて1時間静置した。その後、B型粘度計(BII形粘度計、東機産業株式会社製)にてローターNo.3又は4を用いて回転数30rpmで測定した。
<多糖誘導体の合成>
実施例1
ヒドロキシエチルセルロース(HEC)(CELLOSIZE QP100MH、1質量%水溶液における粘度:5000mPa・s、重量平均分子量:140万、ヒドロキシエチル基の置換度:2.4、The Dow Chemical Company社製)90gを温度計及びポリテトラフルオロエチレン製の撹拌羽根(羽根径:8cm)付き硼珪酸ガラス棒を取り付けた撹拌機を備えた1Lセパラブルフラスコに入れ、窒素フローを行った。イソプロピルアルコール(以下IPAという)389.7g、及びイオン交換水70.4gを加え、200rpmで5分間撹拌した後、48%水酸化ナトリウム水溶液10.2gを加え、更に15分間撹拌した。次に、ラウリルグリシジルエーテル(以下、「LA−EP」ともいう、エポゴーセーLA(D)、四日市合成株式会社製)3.6gを加え、80℃で13時間アルキル化反応を行った。更にグリシジルトリメチルアンモニウムクロライド(以下、「GMAC」ともいう、SY−GTA80、阪本薬品工業株式会社製)17.2gを加え、50℃で1.5時間カチオン化反応を行った。その後、90%酢酸水溶液10.2gを加え、30分撹拌することで中和反応を行った。
得られた懸濁液を500mLの遠沈管2本に均等に移し替え、高速冷却遠心機(CR21G III、日立工機株式会社製)を用いて遠心分離を行った。上澄みをデカンテーションにより取り除き、取り除いた上澄みと同量の85%IPA水溶液を加え、再分散を行った。
再度、遠心分離と再分散の操作を繰り返し、3回目の遠心分離を行った後に沈殿物を取り出した。得られた沈殿物を、真空乾燥機(VR−420、株式会社東洋製作所製)を用いて80℃で12時間減圧乾燥し、エクストリームミル(MX−1200XTM、WARING社製)により解砕することで、実施例1の粉末状の多糖誘導体(セルロース誘導体)を得た。
実施例2〜5、及び比較例1〜3
実施例2〜5及び比較例1〜3の多糖誘導体に関しては、上記実施例1と同様の方法で、以下の変更を加えて多糖誘導体を得た。
実施例2:ヒドロキシエチルセルロース(HEC)(CELLOSIZE QP100MH、1質量%水溶液における粘度:5000mPa・s、重量平均分子量:140万、ヒドロキシエチル基の置換度:2.4、The Dow Chemical Company社製)の代わりに、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)(Natrosol 250HR(重量平均分子量:100万、1質量%水溶液における粘度:2000mPa・s、ヒドロキシエチル基の置換度:2.5)、ASHLAND社製)を使用した。
実施例3:ラウリルグリシジルエーテル(LA−EP)の代わりに、ブチルグリシジルエーテル(四日市合成株式会社製、DY−BP(商品名))を使用した。
実施例4:ラウリルグリシジルエーテル(LA−EP)の代わりに、セチルグリシジルエーテル(四日市合成株式会社製、CE−EP(商品名))を使用した。
実施例5:ラウリルグリシジルエーテル(LA−EP)の代わりに、1,2−エポキシテトラデカン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を使用した。
比較例1:ヒドロキシエチルセルロース(HEC)(CELLOSIZE QP100MH、1質量%水溶液における粘度:5000mPa・s、重量平均分子量:140万、ヒドロキシエチル基の置換度:2.4、The Dow Chemical Company社製)の代わりに、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)(CELLOSIZE QP15000H(重量平均分子量:80万、1質量%水溶液における粘度:1350mPa・s、ヒドロキシエチル基の置換度:2.1)The Dow Chemical Company社製)を使用した。
比較例2:カチオン化剤(グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド、GMAC)を使用しなかった。
比較例3:疎水化剤(ラウリルグリシジルエーテル、LA−EP)を使用しなかった。
実施例6
実施例1で合成した粉末状のセルロース誘導体10gを1Lセパラフラスコに入れ、窒素フローを行った。IPA43.3g、イオン交換水4.8gを加え、100r.p.m.で5分間撹拌した後、48%水酸化ナトリウム水溶液5.4gを加え、更に15分間撹拌した。次に、モノクロロ酢酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社)0.8gを加え、70℃で2.5時間カルボキシメチル化反応を行った。その後、酢酸3.5gを加え、30分撹拌することで中和反応を行った。
得られた懸濁液を50mLの遠沈管2本に均等に移し替え、高速冷却遠心機(日立工機株式会社、CR21G III)を用いて遠心分離を行った。上澄みをデカンテーションにより取り除き、取り除いた上澄みと同量の85%IPA水溶液を加え、再分散を行った。再度、遠心分離と再分散の操作を繰り返し、3回目の遠心分離を行った後に沈殿物を取り出した。得られた沈殿物を真空乾燥機(アドバンテック社、VR−420)を用いて80℃で一晩減圧乾燥し、エクストリームミル(ワーリング社、MX−1200XTM)により解砕することで、粉末状の多糖誘導体を得た。
比較例4
ヒドロキシエチルセルロース(HEC)(CELLOSIZE QP100MH、1質量%水溶液における粘度:5000mPa・s、重量平均分子量:140万、ヒドロキシエチル基の置換度:2.4、The Dow Chemical Company社製)90gを1Lセパラフラスコに入れ、窒素フローを行った。イオン交換水73.0g、IPA404.2gを加え、200r.p.m.で5分間撹拌した後、48%水酸化ナトリウム水溶液10.6gを加え、更に15分間撹拌した。次に、GMAC14.5gを加え、50℃で1.5時間カチオン化反応を行った。更に、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルドデシルジメチルアンモニウムクロリド(四日市合成株式会社、CDDA)44.1gを加え、50℃で1.5時間反応を行った。その後、90%酢酸水溶液10.6gを加え、30分撹拌することで中和反応を行った。
得られた懸濁液を500mLの遠沈管2本に均等に移し替え、高速冷却遠心機(日立工機株式会社、CR21G III)を用いて遠心分離を行った。上澄みをデカンテーションにより取り除き、取り除いた上澄みと同量の85%IPA水溶液を加え、再分散を行った。再度、遠心分離と再分散の操作を繰り返し、3回目の遠心分離を行った後に沈殿物を取り出した。得られた沈殿物を、真空乾燥機(アドバンテック社、VR−420)を用いて80℃で一晩減圧乾燥し、エクストリームミル(ワーリング社、MX−1200XTM)により解砕することで、粉末状の多糖誘導体を得た。
なお、実施例1、2、4〜6、及びに比較例1、2で使用した多糖誘導体において、炭素数2以上の炭化水素基(R)の置換度(MS)中、炭素数9以上の炭化水素基の置換度(MS9R)の割合(MS9R/MS)は、1.0であった。
実施例及び比較例において合成した多糖誘導体を用いて、以下の評価を行った。
〔洗浄率向上性能の評価〕
<洗浄評価用の化学繊維の調製>
100mLのスクリュー管に、下記組成の処理液40mLとポリエステル布(6cm×6cm、ポリエステルファイユ、染色試材株式会社製)を5枚投入した。振とう器(型番:SA300、ヤマト科学株式会社製)を用い、300rpm、5分の条件で水平往復振とうし、ポリエステル布に処理液を処理した。処理後、2槽式洗濯機(PS−H45L形、株式会社日立製作所製)でポリエステル布を1分間脱水した。次に、100mLのスクリュー管に濯ぎ用のイオン交換水40mLと得られたポリエステル布を投入し、振とう器を用いて300rpm、3分の条件でポリエステル布を濯いだ。ポリエステル布を濯いだ後、2槽式洗濯機で1分間脱水し、24時間自然乾燥させ、洗浄評価用ポリエステル布を得た。
<処理液の組成>
(A)多糖誘導体:30mg/kg、又は0mg/kg
(B)界面活性剤(ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(エマール20C、花王株式会社製)/ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル(ブラウノン EL−1509、青木油脂工業株式会社製)=有効分で1/1(w/w)):80mg/kg
残部:イオン交換水
<汚染布の調製>
オレイン酸(ナカライテスク株式会社製)に0.02質量%のスダンIII(富士フイルム和光純薬株式会社製)を混合したモデル皮脂人工汚染液0.1mLを、前記洗浄評価用ポリエステル布(36cm)に均一に塗布し、恒温チャンバー(FMS−1000、東京理化器械株式会社製)を用いて40℃で1時間乾燥させた。
<洗浄試験>
界面活性剤(ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム/ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル=1/1(w/w))が150mg/kgとなるようにイオン交換水で濃度調整した洗浄液を調製した。洗浄試験用の1Lのステンレスビーカーに、洗浄液600mLと前記洗浄評価用ポリエステル布5枚を投入した。ターゴトメーター(MS−8212、株式会社上島製作所製)を用いて、85rpm、20℃、10分の条件で洗浄評価用ポリエステル布を洗浄し、多量の水で濯ぎ、2槽式洗濯機で脱水した後、24時間自然乾燥した。
〔洗浄率向上性能の評価〕
汚染前の洗浄評価用ポリエステル布、及び洗浄前後の洗浄評価用ポリエステル布の460nmにおける反射率を分光色彩計(SE−2000、日本電色工業株式会社製)にて測定し、次式によって洗浄率(%)を求めた。
洗浄率(%)=100×[(洗浄後の反射率−洗浄前の反射率)÷(原布の反射率−洗浄前の反射率)]
また、前記処理液の組成で(A)成分を0mg/kgとして調製したブランクの洗浄率との差から、次式によって洗浄率向上性能(%)を求めた。
洗浄率向上性能(%)=[(A)成分30mg/kgの洗浄率(%)−(A)成分0mg/kgの洗浄率(%)]
〔吸水性向上性能の評価〕
500mLのガラスビーカーに表1の多糖誘導体水溶液(多糖誘導体:1000mg/kg)を300g調製し、ポリエステル布(6cm×6cm、ポリエステルファイユ、染色試材株式会社製)を2枚投入した。2時間浸漬後、多量の水でポリエステル布を濯いだ後、2槽式洗濯機で1分間脱水し24時間自然乾燥した。得られたポリエステル布(2枚)へ食用青色1号(東京化成工業株式会社製)で染色した水0.3mLを塗布し均一に浸透する時間を測定し、2枚の平均値を求めた。なお、未処理のポリエステル布が要する浸透する時間は14.1秒である。浸透する時間が短いほど吸水性が高いことを示している。結果を表1に示す。
〔柔軟性の評価〕
5Lのガラスビーカーに表1の多糖誘導体水溶液(多糖誘導体:1000mg/kg)を2000g調製し、木綿タオル(TW−220、木綿100%、武井タオル株式会社製)を3時間浸漬させた。その後、2槽式洗濯機で1分間脱水し、多量の水で木綿タオルを濯いだ。2槽式洗濯機で1分間脱水した後、24時間自然乾燥した。得られた木綿タオルについて柔軟性の評価を下記評価基準に基づいて行った。
6人の専門パネラーにより上記処理タオルの柔軟性評価を行い、未処理タオルを基準とし、下記評価基準により、柔軟性評価を行った。
0:基準と同じ
1:基準よりやや柔らかい
2:基準より柔らかい
3:基準よりかなり柔らかい
得られた6人のパネラーの評価の平均値を表1に示す。
表1から明らかなように、本発明の多糖誘導体の処理により、洗浄性能を向上させると共に、繊維の吸水性及び柔軟性を向上させることが明らかとなった。
一方、比較例1に示すように、1質量%水溶液の粘度が1500mPa・s未満のヒドロキシアルキル化多糖にカチオン性基及び炭化水素基が結合した多糖誘導体では、十分な吸水率向上性能が得られなかった。また、カチオン性基を有しない比較例2の多糖誘導体、及び炭化水素基(R)を有しない比較例3の多糖誘導体では、十分な吸水率向上性能が得られず、また、柔軟性にも劣るものであった。更に、炭化水素基(R)が、4級窒素原子に結合している比較例4の多糖誘導体でも、十分な吸水率向上性能が得られず、また、柔軟性にも劣るものであった。これらの多糖誘導体では、繊維への吸着量の低下により、吸水性や柔軟性の向上効果が十分に得られなかったものと考えられる。
本発明によれば、洗浄性能を向上させることができると共に、繊維の吸水性及び柔軟性を向上させることができる。本発明の多糖誘導体は、衣類用の洗浄剤組成物に添加することにより、これらの組成物で処理された布帛に対して、洗浄性能の向上、柔軟性及び吸水性の向上という、極めて優れた効果を付与しうる。

Claims (11)

  1. カチオン性基、及び炭素数が2以上の炭化水素基(R)を有する、多糖誘導体であって、
    前記炭化水素基(R)が、直接に、又は酸素原子を有する炭化水素基により、ヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基と結合し、
    ヒドロキシアルキル化多糖がヒドロキシエチル化多糖及びヒドロキシプロピル化多糖から選ばれる少なくとも一種であり、
    前記ヒドロキシアルキル化多糖の1質量%水溶液の粘度が1500mPa・s以上100000mPa・s以下である、
    多糖誘導体。
  2. カチオン性基の置換度(MS)が0.001以上1以下である、請求項1に記載の多糖誘導体。
  3. 炭化水素基(R)の置換度(MS)が、0.001以上1以下である、請求項1又は2に記載の多糖誘導体。
  4. カチオン性基の置換度(MS)が0.001以上0.4以下であり、かつ、炭化水素基(R)の置換度(MS)が0.001以上0.05以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の多糖誘導体。
  5. 酸素原子を有する炭化水素基が、エステル基及び/又はエーテル基を含む、請求項1〜4いずれかに記載の多糖誘導体。
  6. 炭化水素基(R)が、式(1−1−1)〜式(1−4)のいずれかで表される基によりヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基と結合する、請求項1〜5のいずれかに記載の多糖誘導体。

    (式(1−1−1)〜式(1−4)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、炭素数2以上4以下のアルキレン基を示し、Rは炭素数2以上の炭化水素基を示し、*はヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示し、n1は−R11−O−の平均付加モル数を示し、n2は−R12−O−の平均付加モル数を示し、n1及びn2は0以上30以下である。)
  7. 炭化水素基(R)の炭素数が、4以上22以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の多糖誘導体。
  8. 多糖が、セルロース又はグアーガムである、請求項1〜7のいずれかに記載の多糖誘導体。
  9. カチオン性基が、式(2−1)又は式(2−2)で表される、請求項1〜8のいずれかに記載の多糖誘導体。

    (式(2−1)及び式(2−2)中、R21〜R23はそれぞれ独立に、炭素数1以上24以下の炭化水素基を示し、Xはアニオンを示し、tは0以上3以下の整数を示し、*はヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
  10. 炭化水素基(R)の置換度(MS)とカチオン性基の置換度(MS)の比(MS/MS)が、0.001以上1以下である、請求項1〜9のいずれかに記載の多糖誘導体。
  11. 1質量%水溶液の粘度が1500mPa・s以上100000mPa・s以下のヒドロキシアルキル化多糖に、炭素数が2以上の炭化水素基(R)を導入した後、カチオン化剤と反応させる、請求項1〜10のいずれかに記載の多糖誘導体の製造方法。
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