温度管理が必要とされる物品は、輸送させる際や倉庫等で保管させる際において、その物品の品質を劣化させないように、物品に応じて細分化された温度領域において温度管理がされている。輸送車両の管理温度を例に説明すると、常温輸送であれば1℃から30℃の温度領域で輸送され、定温輸送であれば15℃から25℃の温度領域に調温されて輸送されている。定温輸送が必要とされる物品としては、過度の温度低下により固化される油脂類・塗料等が例としてあげられる。
冷蔵輸送であれば2℃から8℃の温度領域に調温されて輸送され、冷凍輸送であれば−25℃から−15℃の温度領域に調温されて輸送されている。冷蔵輸送が必要とされる物品としては、凍結を避けて冷蔵させる必要のある薬品、具体的には注射剤や輸血バック等が挙げられる。冷凍輸送が必要とされる物品としては、医療用原薬や冷凍食品等が挙げられる。これらの物品は、倉庫に物品が保管される際においても、同様の温度領域に調温管理されている。
しかし、従来の温度管理技術においては、物品を保管する空間の温度を代表的な一点において検知し、温度調整用の機器を作動させているにすぎず、梱包体に梱包された物品そのものの温度については検知していなかった。そのため、代表的な一点における温度と、物品の管理基準温度とが一致されていても、梱包体に梱包された物品そのものの温度は、管理基準温度の領域から外れている可能性があり、品質を十分に保証することは困難であった。
2018年には、新たに「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」には、流通過程における医薬品の品質管理の基準が作成された。このガイドラインによれば、輸送車両及び温度管理用の機器について「製品の品質及び包装の品質等に影響を及ぼさないよう適切に装備されていること」と定められている。このため、医薬品の輸送に関しては、従来よりも高い精度で物品の温度を検知させ、適正な温度のまま輸送されたことを保証することができる技術の開発が急務となっている。
医薬品を輸送させる際には、医薬品の輸送に先立って、輸送車両の搬送空間を空の状態のまま、予め所定温度に冷却又は保温(以下、調温という)させている。調温によって、薬品の温度と搬送空間の温度とは、略一致されているとみなされている。しかし、薬品を収納させた梱包体を搬入する際には搬出入開口を開放させるため、外気の流入によって、一部の搬送空間の温度が物品の管理基準温度から大きく外れることがある。この際の搬送空間の温度変化は、数十分といった短時間で元の温度にまで復帰されるものではあるが、梱包体の内部温度の実態からは外れることがあり、代表的な一点における温度計測によって、全ての梱包体の内部温度を推定させることには限界があった。
前記ガイドラインにおいても、代表的な一点の温度を計測させるのではなく、一定の容積の空間において複数の位置の温度を計測し、温度分布図を作成することを推奨している。このことから、梱包体に収納された物品の温度変化を正確に計測させるには、温度計を各々の梱包体に同梱させることが好適であるといえる。
しかし、医薬品運搬用の梱包体は、医薬品の品質保証の観点から、医薬品以外の物品を同梱させるには梱包体の梱包形態を見直す必要がある。このため、複数の温度計を各々の梱包体の天面に載置する、梱包体の保管される空間の壁・床等に設置せざるを得なかった。この場合には、温度計が梱包体表面や雰囲気からの直接の熱伝導による影響を受けやすく、梱包体の内部温度とはかい離された温度が計測されているにとどまっていた。この課題を解決させる技術として、梱包体の内部温度を疑似的に測定させる技術が開示されている。
特許文献1には、密封容器に収容された血液等の温度を、温度センサーを血液に直接浸漬させなくても検知させることができる疑似負荷容器の技術が開示されている。この文献に記載の技術によれば、疑似負荷容器に水または生理食塩水を蓄えさせ、密封容器に収容された血液と熱的に等価とさせている。そして、疑似負荷容器の表面に温度センサーを接しさせて計測させた温度を血液等の温度とみなしている。
しかし、特許文献1に記載の技術によっても、血液を収容する密封容器を梱包する梱包体には、疑似負荷容器を同梱できないという課題があった。また、前記密封容器を保冷庫に直接収容させると、保冷庫内の温度分布の変化によって、疑似負荷容器と密封容器の温度が異なりやすいという課題があった。
特許文献2には、保冷車両の運転手が、荷台内の梱包体が適温に保たれているかを容易に確認することが可能な収容ユニット及び温度管理システムの技術が開示されている。この文献に記載の技術によれば、温度測定モジュールを収容させることができない梱包体の温度を、梱包体と類似した内部環境とされたダミーパッケージにより推測するとされている。より具体的には、ダミーパッケージを梱包体の近傍に存置させ、その内部温度を梱包体の内部温度とみなして温度管理・記録をし、運転手の手持ち端末に測定情報が伝達されている。
しかし、特許文献2に記載の技術によれば、ダミーパッケージの内部を梱包体と類似した内部環境とさせるために、ダミーパッケージの形状だけでなく、その中の物品の大きさ・形状・配置等も類似させておく必要があった。そうすると、ダミーパッケージを製造する手間がかかると共に、ダミーパッケージと梱包体とが混同されやすく、誤ってダミーパッケージが流通される可能性があるという課題があった。
特許文献3には、輸送途上にある物品が受けるストレスを把握させ、前記ストレスを管理させる輸送品質管理システムの技術が開示されている。この文献に記載の技術によれば、実梱包体の一部を、ダミー梱包体に置き換え、ダミー梱包体に収容されたストレスセンサにより、輸送中に物品がうける振動・温度・湿度などの環境要因によるストレスを検知させている。
しかし、特許文献3に記載の技術によれば、ダミー梱包体は、管理対象の物品の一部または全部がセンサモジュールに置き換えられ、センサモジュールが管理対象の物品と同一の環境とされている。ダミー梱包体の内部環境を、実梱包体と類似したものとするためには、ダミー梱包体の中の物の大きさ・配置等を実梱包体と類似させる必要があった。そうすると、特許文献2に記載の技術と同様に、ダミーパッケージを製造する手間がかかると共に、ダミーパッケージと梱包体とが混同されやすく、誤ってダミーパッケージが流通される可能性があるという課題があった。
特許文献4には、梱包体の内部温度を疑似的に計測する技術ではないが、複数の温度センサを設けることにより、冷凍庫内のきめ細かな温度調整が可能とされた冷凍車の技術が開示されている。この文献に記載の技術によれば、複数の温度センサが、冷蔵庫の内壁に分散して設けられ、各々の温度センサの位置において冷凍庫内の各部の温度を測定し、測定温度に基づいて空調機が温度調整されている。また、梱包体の内部温度を測定させる場合には、前記内壁に設けられた温度センサの先端部を梱包容器内に挿入させ、直接に、梱包体の中の生鮮品等の物品の冷凍温度を測定させている。
しかし、特許文献4に記載の技術によれば、梱包体が密閉され温度センサを挿入させることができない場合や、温度センサを梱包体に挿入させることが許容されていない場合には適用できないという課題があった。また、温度センサを梱包体に挿入させない場合には、冷凍庫内の雰囲気温度を計測させるにとどまり、梱包体の内部温度と近い温度を計測させることはできなかった。
そこで、本願の発明者は、梱包体の中に温度計測手段を同梱できない場合であっても、梱包体の内部温度を計測することができる技術を鋭意研究し、梱包体の内部温度を疑似的に計測・記録し、改変できないデータ形式で出力させる疑似計測手段を発明するに至った。
本発明が解決しようとする課題は、梱包体の中に温度計測手段を同梱できなくても、温度管理条件が定められている医薬品等の物品が梱包されている梱包体の中の温度を計測させる疑似計測手段を提供することである。また前記疑似計測手段を使って、物品を保管させる空間を調温するために必要な時間を特定させる調温時間特定手段、梱包体を保管するに適した特定保管空間を特定させる空間特定手段、梱包体の内部温度の変化をモニタリングすることができる温度モニタリングシステムを提供することである。
本発明は、筐体からなる疑似計測手段の平坦な蓋が梱包体の表面に接した状態で装着され、梱包体の内部温度を疑似的に計測させることを最も主要な特徴としている。そして、筐体に添着された計測手段が脱着容易とされ、改変できないデータ形式で記録された計測記録が取得容易とされ、モニタリングが容易とされていることを特徴としている。
本発明の第1の発明は、温度管理が必要とされる物品を梱包させる梱包体に接して、前記梱包体の内部温度を疑似的に計測させる疑似計測手段であって、前記疑似計測手段は、温度を計測させ、記録させ、出力させる計測手段と、前記計測手段を添着させる筐体とからなり、前記筐体は、開閉可能な平坦な蓋を有すると共に、前記筐体の内部空間の大きさが、前記計測手段と筐体内面とが離間される大きさとされ、前記計測手段は、開放された前記蓋の内面に面ファスナーを介して添着されると共に、前記蓋が閉じられた状態で、前記筐体のいずれの内面からも離間された状態とされ、前記疑似計測手段が、前記平坦な蓋が前記梱包体に接した状態で装着され、前記計測手段が筐体内温度を計測して、前記筐体内温度を疑似的に前記梱包体の内部温度として記録させると共に、記録させた前記筐体内温度を改変できないように出力させることを特徴としている。
ここで、温度管理が必要とされる物品とは、主に医薬品、血液製剤等をいうが、生鮮食品や冷凍食品であってもよく限定されない。梱包体とは、物品が箱などに荷造りされたものをいう。また、物品とは、物単体に限定されず、複数の物が一つの箱に詰められた状態であってもよい。疑似的に計測とは、梱包体の内部に温度計測器を存置させて内部温度を計測するのではなく、梱包体の外部から内部温度を計測することをいう。
計測手段は公知の温度検知手段であればよく、形態は限定されない。また、計測手段を温度計測に先立って作動させておくと、計測させる際に、人為的な過誤によって温度計測試験を失敗することがなく好適である。この場合には、計測開始時刻から計測終了時刻までの期間における温度の記録情報を抽出させればよい。
筐体の平坦な蓋の内面に、計測手段が面ファスナーを介して添着され、平坦な蓋が梱包体に接する状態で装着される。筐体内に断熱材を詰め込んでから蓋を閉じる際にも、筐体の蓋の内面が視認できるため計測手段の添着忘れが防止される。これにより、蓋を閉じる前に計測手段が正常に作動されていることの確認が容易となる。また、面ファスナーで添着しているため、計測手段から記録させた内部温度を出力させる際に、計測手段の脱着が容易である。筐体の大きさは限定されないが、梱包体と明確に区別できる大きさとされると、疑似計測手段が誤って流通されることがなく好適である。
蓋が平坦とされているため、蓋が梱包体の平坦な外面に接し、梱包体からの温度が、蓋の内面に添着された計測手段に伝わりやすい。蓋が閉じられた状態で、計測手段が筐体のいずれの面からも離間された状態とされ、梱包体を存置させる空間の温度が短時間の間に変動して元に戻る場合には、空間の温度の変動の影響を計測手段が受けにくい。記録させた筐体内温度が改変できないようにとは、読み取り専用のデータ形式とさせればよく、データの拡張子は限定されない。
本発明の第1の発明の疑似計測手段によれば、梱包体の中に温度計測器を同梱しなくても、梱包体の内部温度が計測できるという、従来にない有利な効果を奏する。また、梱包体からの温度が計測手段に伝達されやすいことにより、筐体内温度が梱包体の内部温度に近似され、梱包体の内部温度を疑似的に計測させることができるという有利な効果を奏する。
本発明の第2の発明は、第1の発明の疑似計測手段であって、独立気泡を筋状に配した気泡緩衝材からなる対流抑制手段を有し、前記対流抑制手段が、前記筐体と前記計測手段との隙間に格納され、前記梱包体の周囲の空間からの前記計測手段への熱の伝達が抑制された状態とされていることを特徴としている。
第2の発明によれば、筐体内に気泡緩衝材が格納されているため、筐体内の対流が抑制され、梱包体を存置させる空間からの熱の影響が緩和され、筐体内の温度が梱包体内の温度により近い状態とされるという有利な効果を奏する。また、気泡緩衝材は独立気泡が筋状に配されており、独立気泡と独立気泡の隙間においては僅かに気体が流れ、予め疑似計測手段を梱包体に装着して温度調整させる場合には、疑似計測手段と梱包体との温度を近い温度とさせやすい。
本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明の疑似計測手段であって、前記面ファスナーが添着された状態の、前記面ファスナーの厚さが3mm以上8mm以下とされていることを特徴としている。ここで、面ファスナーの材質は限定されない。面ファスナーが添着された状態の、前記面ファスナーの厚さが3mm以上8mm以下とされているため、計測手段の脱着が容易であるとともに、筐体の中に対流抑制手段を格納させる場合にも、計測手段がずれにくく、外れにくいという効果を奏する。
本発明の第4の発明は、梱包体を保管させる位置の位置温度が、前記梱包体を保管させるに適した保管温度となるまでの調温時間を特定させる調温時間特定手段であって、複数の疑似計測手段と演算処理手段とを含み、各々の疑似計測手段が、第1から第3の発明のいずれかの前記疑似計測手段とされ、前記梱包体を保管させる空間内の複数の位置に、前記梱包体に接して分散されて配され、前記位置温度を継続的に記録し、前記演算処理手段が、継続的に記録された前記位置温度を演算処理させ、前記空間が開放された状態から閉鎖された後、各々の前記位置温度が、所定の温度範囲となる時間を前記調温時間として特定させることを特徴としている。
ここで、調温とは保冷に限定されず、保温であってもよい。物品の管理温度と外気温との関係により、保冷又は保温のいずれかが選択されればよい。所定の温度範囲とは、物品の種類に応じて決定されればよい。
梱包体を保管させる空間に、梱包体を運び込む際には、搬出入開口が開放され、搬出入開口を通して、保管空間が保管空間外からの熱の影響を受けることになる。搬出入開口が開放された状態から閉鎖された後、例えば、A位置とB位置は20分、C位置は15分、D位置は10分、E位置は30分で所定の温度範囲となる場合には、A位置とB位置の調温時間は20分、C位置の調温時間は15分、D位置の調温時間は10分、E位置の調温時間は30分と特定される。
第4の発明の調温時間特定手段によれば、搬出入開口が開放された状態から閉鎖された後、保管空間の複数の位置のそれぞれが所定の温度範囲となるまでの調温時間を特定できるという有利な効果を奏する。また、過去の調温時間の記録から、より適切な温度管理ができるように空調機の駆動条件を見直すこともできる。
本発明の第5の発明は、梱包体を保管させる位置の位置温度が、前記梱包体を保管させるに適した温度とされる特定保管空間を特定させる空間特定手段であって、複数の疑似計測手段と演算処理手段とを含み、各々の疑似計測手段が、第1から第3のいずれかの前記疑似計測手段とされ、前記演算処理手段が、継続的に記録された前記位置温度を演算処理させ、前記空間が開放状態とされた状態から閉鎖された後、第4の発明の調温時間特定手段により特定された前記調温時間が、予め設定された設定時間以内となる前記保管させる位置を前記特定保管空間として特定させることを特徴としている。
輸送手段の荷室内には、空調用噴出し口、物品搬出入開口等があり、それらの周囲は、コールドポイント、ホットポイントとなり、調温時間が長くなりやすい。調温時間が短い位置のみを、梱包体を保管させるに適した特定保管空間とさせれば、搬送までの準備時間を短縮できる。梱包体を調温時間が短い特定保管空間に存置させれば、空調機の駆動や外気の流入によって梱包体が影響を受けにくく、物品が適切な温度領域で管理され、品質が保証されやすい。
例えば設定時間を20分と設定すれば、前記A位置、前記B位置、前記C位置、前記D位置が特定保管空間とされ、設定時間を15分と設定すれば、前記C位置、前記D位置が特定保管空間とされる。搬送物品が多い場合には、設定時間を長くして、搬送空間において広い空間を特定保管空間として指定すればよい。第5の発明によれば、物品の管理温度に応じた設定時間により、物品を搬送させるに適した特定保管空間を決定させることができるという有利な効果を奏する。
本発明の第6の発明は、保管倉庫の内部空間の温度モニタリングシステムであって、少なくとも一つの疑似計測手段と演算処理手段と表示手段とを含み、前記疑似計測手段が、第1から第3の前記疑似計測手段とされ、前記演算処理手段が、前記梱包体を保管中に継続的に記録させた前記筐体内温度を演算処理させ、前記表示手段が、前記筐体内温度の変化と、所定の管理温度とを一体に表示させることを特徴としている。
所定の管理温度とは、上限値と下限値の少なくともいずれかであればよい。内部空間が小さいコンテナであれば、疑似計測手段は一つであればよく、内部空間が広い場合には複数の梱包体に疑似計測手段を備えさせればよい。第6の発明によれば、継続的に記録させた筐体内温度の変化と所定の管理温度とが一体に表示されるため梱包体の内部温度のモニタリングが容易である。
本発明の第7の発明は、輸送体において梱包体が搬送される内部空間の温度モニタリングシステムであって、少なくとも一つの疑似計測手段と演算処理手段と表示手段とを含み、前記疑似計測手段が、第1から第3の前記疑似計測手段とされ、前記演算処理手段が、前記梱包体を輸送中に継続的に記録させた前記筐体内温度を演算処理させ、前記表示手段が、前記筐体内温度の変化と、所定の管理温度とを一体に表示させることを特徴としている。
ここで、輸送体は貨物自動車に限定されず、航空機であってもよく、コンテナであってもよい。所定の管理温度とは、上限値と下限値が定められていると好適であるが、上限値と下限値の少なくともいずれかであればよい。疑似計測手段が複数であれば、広い荷室でも対応可能であるが、荷室の内部空間が小さい場合には、疑似計測手段は一つでもよい。第7の発明によれば、継続的に記録させた筐体内温度の変化と所定の管理温度とが一体に表示されるため梱包体の内部温度のモニタリングが容易である。また、搬送中の全ての時間において梱包体の内部温度のモニタリングが容易である。
・本発明の第1の発明によれば、梱包体の中に温度計測器を同梱しなくても、梱包体の内部温度が計測できるという、従来にない有利な効果を奏する。また、梱包体からの温度が計測手段に伝達されやすいことにより、筐体内温度が梱包体の内部温度に近似され、梱包体の内部温度を疑似的に計測させることができるという有利な効果を奏する。
・本発明の第2の発明によれば、筐体内に気泡緩衝材が格納されているため、筐体内の対流が抑制され、梱包体を存置させる空間からの熱の影響が緩和され、筐体内の温度が梱包体内の温度により近い状態とされるという有利な効果を奏する。また、気泡緩衝材は独立気泡が筋状に配されており、独立気泡と独立気泡の隙間においては僅かに気体が流れ、予め疑似計測手段を梱包体に装着して温度調整させる場合には、疑似計測手段と梱包体との温度を均一とさせやすい。
・本発明の第3の発明によれば、計測手段の脱着が容易であるとともに、筐体の中に対流抑制手段を格納させる場合にも、計測手段がずれにくく、外れにくいという効果を奏する。
・本発明の第4の発明によれば、搬出入開口が開放された状態から閉鎖された後、保管空間の複数の位置のそれぞれが所定の温度範囲となるまでの調温時間を特定できるという有利な効果を奏する。
・本発明の第5の発明によれば、物品の管理温度に応じた設定時間により、物品を搬送させるに適した特定保管空間を決定させることができるという有利な効果を奏する。
・本発明の第6又は第7の発明によれば、継続的に記録させた筐体内温度の変化と所定の管理温度とが一体に表示されるため梱包体の内部温度のモニタリングが容易である
筐体からなる疑似計測手段の平坦な蓋が梱包体の表面に接した状態で装着され、梱包体の内部温度を疑似的に計測させるようにした。また、筐体の蓋に添着された計測手段を脱着容易とさせ、改変できないデータ形式で記録された温度記録情報を取得容易とさせ、モニタリングさせるようにした。以下の実施例においては、主として梱包体に収容される物品が、医薬品の注射剤とされ、梱包体を冷却させて調温させる場合を例に説明する。
実施例1においては、筐体と計測手段と面ファスナーとからなる疑似計測手段1を、図1を参照して説明する。図1は、疑似計測手段1を説明する説明図である。図1(A)図は、疑似計測手段1を説明する斜視図を示している。図1(B)図は、疑似計測手段1を梱包体100に装着させた状態を示している。図1(C)図は、図1(B)図のA−A位置における断面図を示している。図1(C)図においては、理解を容易にするため、梱包体に収容された医薬品101について一部のみを表示し、残部を斜線を付して示している。
疑似計測手段1をなす筐体10は、梱包体100の大きさよりも小さく、高さ約5cmの直方体形状とされ、梱包体100と誤認されない大きさとされている。筐体10は、厚さが約1mmの紙製からなっている。筐体10は、底部と底部から起立された側壁とからなる収容部11と、一つの側壁12から屈曲されて伸びる平坦な蓋20を有している。
蓋20の中央部には、計測手段30を脱着可能に添着させる面ファスナー40が備えられている。面ファスナー40は、両面テープにより蓋20に固着される。また、蓋の先端部21には、蓋が閉じられた際に、前記一つの側壁12に向かい合う側壁13に組み付けられる鍔部22が備えられる。蓋20の側方には折り返されてなる補強部23を有している。これにより、蓋29が閉じられた際に、蓋の内外を貫通させる隙間があきにくく、外気が筐体10内に流入されにくい。
蓋20を有している側壁12の、側方の一対の側壁14,14の各々の頂部には、第2鍔部15,15が備えられる。蓋20が閉じられた状態においては、二つの第2鍔部15が内方に水平に折り曲げられて、筐体10の変形を防止させている。これにより、テープ等により蓋20を閉塞させなくても、筐体の形状が維持され、計測手段30の動作確認と温度計測後の取り外しが容易となる。
前記一対の側壁14から第2の鍔部15の先端にかけて、底の角隅部16から先方に向けて45度の方向に谷折り線17が備えられ、未使用時には筐体を平坦に折り畳み可能とさせている。また、筐体10の底部外面18には、識別ラベル19が貼着され、複数の疑似計測手段が同時に使用される際に、自他を識別できるようにされている(図1(B)図参照)。例えば、識別ラベル19に、ID:0001、ID:0002、・・・といった疑似計測手段を識別させる通し番号を記せばよい。
面ファスナー40,41は、材質が、例えば樹脂製とされるが、係合の形態は限定されない。例えば、係合部がマッシュルーム型の面ファスナーであれば、係合力が強く、運送に伴う揺れがあっても蓋から計測手段が剥がれにくい。
温度を計測させる計測手段30には、マッシュルーム型の面ファスナー41が両面テープにより添着され、面ファスナー40,41同士を係合させ、計測手段30を蓋20に添着させた際に、蓋20と計測手段30との間が約5mm離間される。
計測手段30は、蓋20に面ファスナー41により添着され、筐体10のいずれの内面からも離間された状態とされている。これにより筐体10に梱包体100を存置させている空間からの熱が伝わっても、計測手段30には熱が伝わりにくく、計測手段30は前記空間からの影響を受けにくい。一方、蓋20と計測手段30との離間距離は、面ファスナー40,41の厚さのみであるため、梱包体100の内部温度と、計測手段30に計測される筐体内温度は近似した状態とされる。
計測手段30は、温度を経時的に測定させて、測定させた温度を記録し、記録させた温度を改変できないデータ形式で出力させるものであればよく、限定されない。例えば、データの出力用にUSB端子31を有し、電子計算機に接続させるだけで、改変できないデータ形式で出力させるようにすればよい。また、計測手段30の表面には、作動状況を確認できる表示部32が備えられ、筐体の蓋20をあけた状態で作動状態を容易に確認できると好適である。
計測手段30は、電源が印加されると、記録させた温度を出力させるまでは常に作動状態とされる。計測手段の温度測定時刻と対応させられるように、物品の温度管理の開始時刻と終了時刻を記録させればよい。なお、計測手段30が常に作動状態とされているため、万が一、開始時刻・終了時刻の記録漏れがあっても、温度が急激に変化された時点をもって、梱包体100の調温が開始又は終了された時刻と判断することもできる。
疑似計測手段1は、筐体10の蓋20の内面に計測手段30を添着させてから、計測手段が作動されていることを確認し、蓋20を閉じ、疑似計測手段1の天地を逆転させ、梱包体100に蓋を面接触されるように装着させる(図1(B)図、(C)図参照)。なお、疑似計測手段1は、梱包体100に接着テープ等により貼着させればよく、装着の形態は限定されない。
実施例2においては、対流抑制手段50を備えた疑似計測手段2を、図2を参照して説明する。図2(A)図は疑似計測手段2を説明する斜視図を示し、図2(B)図は、図1(C)図と同様の位置における疑似計測手段2及び梱包体100の断面図を示している。
疑似計測手段2は、実施例1で説明した疑似計測手段1に、対流抑制手段50をなす気泡緩衝材51を格納させた点のみが異なっている。疑似計測手段2の使用態様は、実施例1で説明した疑似計測手段と同一である。気泡緩衝材51とは、一方の面に独立気泡52が形成されるように、樹脂製のシート体が貼り合わされてなり、前記独立気泡52,52,・・・が筋状に配列されている緩衝材とされる(図2(A)図参照)。気泡緩衝材は、独立気泡が筋状に伸びていればよく、独立気泡の配列・形状は限定されない。
対流抑制手段50は、複数の気泡緩衝材51が積層されてなり、筐体の収容部11に気泡緩衝材51が格納される(図2(A)図参照)。筐体の蓋20が閉じられると、筐体10と計測手段30との隙間に気泡緩衝材51が詰まった状態とされ、筐体内全体の空気の対流が抑制される(図2(B)図参照)。また、隣合う独立気泡52,52の間の筋状の隙間53を通して、測定手段30の周囲に僅かに空気が流れるため、対流が抑制された状態であっても、内部の温度が均一になりやすい。
疑似計測手段2においては、積層された気泡緩衝材51により熱の伝達が抑制されるため、計測手段30に蓋を除く筐体10の内面から熱が伝わりにくい。一方、蓋20と計測手段30との間には面ファスナー40,41が配されるのみであり、蓋20からの熱の伝わりやすさは、実施例1で説明した疑似計測手段と同等のままである。
これにより、気温が高い季節に、梱包体の存置される空間が開放された場合のように、筐体の周囲の温度環境が大きく変わりやすい状態でも、筐体10の内部温度が、急激に変動されにくく、梱包体100の内部温度に近似された状態が保たれやすい。
実施例3においては、梱包体100を輸送車両200に搬入してから所定の温度域に安定するまでの調温時間を特定させる調温時間特定手段3を、図3を参照して説明する。図3(A)図は、各々の疑似計測手段が記録させた温度記録情報を、温度記録線として出力させた図を示している。図3(B)図は、輸送車両の搬送空間201に、複数の疑似計測手段2が分散して配される位置を説明する斜視図を示している。
調温時間特定手段3においては、搬送空間201内の温度が安定した状態から、扉202を開放して、梱包体100を搬入し、扉202を閉じて所定の温度域に安定するまでの時間を特定させている。注射剤などの医薬品の場合には、管理温度が2℃から8℃とされているため、確実に品質を保証できるように、所定の温度域を、実施例3では2℃から4℃に設定させることにしたが、所定の温度域は限定されない。
調温時間特定手段3は、複数の疑似計測手段2と演算処理手段60(図6参照)を含んでいる。実施例3においては、疑似計測手段を実施例2で説明した疑似計測手段2としているが限定されず、疑似計測手段1であってもよく、2種類の疑似計測手段を併用してもよい。演算処理手段は、複数の疑似計測手段2から出力されたデータを統合させるように演算処理させ、一つの温度変化の線グラフ(図3(A)図参照)として、モニターなどに表示させることができればよく、限定されない。例えば、演算処理手段は、電子計算機の中央演算処理装置であればよい。
疑似計測手段2が配される輸送車両200は、搬送空間の前方に空調用噴出し口203が配され、後方に梱包体の搬入用の扉202が配されている(図3(B)図参照)。疑似計測手段が配置される位置・数は限定されず、調温させる空間の広さ、空調用噴出し口からの距離等に応じて決定されればよい。例えば、梱包体が搬送空間の前後方向に5列、左右方向に2列、高さ方向に2段に配列されている場合には、疑似計測手段を梱包体の前後方向・左右方向ごとに交互に配置させればよい。
実施例3においては、後方の扉202に近い位置をa位置とし、前方の空調用噴出し口203側に向かって、順に、b位置、c位置、d位置、e位置としている(図3(B)図参照)。各々の疑似計測手段の識別情報は、a位置からe位置まで、順に、ID:0001からID:0005を付した。各々の疑似計測手段は、それが装着された梱包体100の内部温度を模擬的に計測し、それぞれの梱包体の中の物品の品温とさせている。
まず、輸送車両の搬送空間201を空の状態のまま、所定の温度域として2℃から4℃の温度域となるように調温させている。そして、梱包体100を搬入する際に、搬送空間の扉202を約10分間に亘って開放させた。梱包体100が搬入されて扉202が閉鎖された時刻を基準にし、前記の各位置において、搬入の際に上がった梱包体の温度が4℃にまで戻る調温時間を特定させる。具体的には、各々の疑似計測手段2から出力された温度記録情報を演算処理させ、温度変化の推移を温度記録線として表示させ、基準時から4℃にまで戻る時間を特定させている(図3(A)図参照)。
a位置においては、調温時間が約14分と特定され(図3(A)図a参照)、b位置においては調温時間が約12分と特定され(図3(A)図b参照)、c位置においては、調温時間が約9分と特定され(図3(A)図c参照)、d位置においては調温時間が約5分と特定され(図3(A)図d参照)、e位置においては、調温時間が約4分と特定された(図3(A)図e参照)。
実施例4においては、梱包体を保管させるに適した特定保管空間を特定させる空間特定手段4を、図4及び図5を参照して説明する。搬送空間に存置される左右一列に並んだ4つの梱包体を一つのグループとして、各グループに一つの疑似計測手段を装着させ、各グループの梱包体の内部温度を計測させている。図4(B)図は、各グループごとに、着色又は斜線を付して示している。図4(A)図は、複数の疑似計測手段が記録させたそれぞれの温度記録線を、重ねて一体に表した線グラフを示している。図5は、演算処理手段が特定保管空間を特定させるフローと、その説明図を示している。
空間特定手段4は、実施例3で測定された温度記録情報に基づいて、演算処理手段60(図6参照)により特定保管空間を特定させている。具体的には、物品の種類と管理温度とに応じ、所定の設定時間を記憶手段62(図6参照)に予め記憶させておく。設定時間は、10分又は20分等としておけばよい。線グラフに表示された温度記録線が、例えば10分以内に4℃まで下がっている場合には、その位置を、所定の設定時間を10分とした場合の特定保管空間として特定させる(図4(A)図参照)。同一のグループの物品保管空間は、疑似計測手段2が装着されていない梱包体102を存置させても、予め疑似計測手段を装着させた梱包体100を存置させた場合と同等の温度変化が想定される。
所定の設定時間を10分に設定させた場合を、図4(A)図を使って具体的に説明する。4℃にまで温度が低下されるまでに、a位置は約14分、b位置は約12分、c位置は約9分、d位置は約5分、e位置は約4分であった。そうすると、所定の設定時間を10分とした場合には、c位置からe位置までが、特定保管空間として特定される。設定時間を20分に設定させた場合には、全ての位置について調温時間が20分よりも短くなり、全ての位置が特定保管空間として特定される。
次に、演算処理手段が特定保管空間を特定させるフローを、図5を参照して説明する。図5(A)図は、演算処理手段のフローを示している。図5(B)図は、演算処理手段が、図4(A)図に示す線グラフをフィルタ処理させた後の状態を示している。
演算処理手段は、予め設定された温度域と設定時間とにより、計測手段から入力された温度記録情報に2回のフィルタをかけ、特定保管空間となる位置を特定させる。まず、ステップ1にて、所定の温度域を設定させる設定処理がされ、例えば2℃から4℃の温度域が設定される(S1)。ステップ2にて、所定の設定時間を設定させる設定処理がされ、例えば10分が設定される(S2)。ステップ3にて、全ての計測手段から温度記録情報を入力させる入力処理がされる(S3)。ステップ3は、使用された疑似計測手段の数に応じて繰り返される。実施例4においては、ステップ3が5回繰り返される。
ステップ4にて、線グラフの縦軸が温度を示し、線グラフの横軸が時間軸を示すように、温度記録情報に記録された温度及び時間から線グラフを作成させる(S4)。ステップ5にて、2℃よりも低い温度域と、4℃よりも高い温度域をフィルタにより除去させる(S5)。ステップ6にて、更に、0分より前の時刻の領域と、10分よりも後の時刻の領域をフィルタにより除去させる(S6)。
2回のフィルタ処理により、基準時から10分以内、かつ、2℃から4℃の範囲にある温度記録線が抽出される。具体的には、c位置、d位置、e位置の温度記録線が抽出され、これらの位置のみが特定保管空間として特定される。そして、ステップ7において、ステップ4にて作成された温度記録線に、ステップ5,6にてフィルタさせた範囲に斜線を付した表示を重ねて、モニターに一体に表示させる(S7)(図5(B)図参照)。モニターには、疑似計測手段が置かれた各位置を表示させる模式図300を表示させてもよい(図4(A)図参照)。
実施例5においては、流通過程における梱包体の温度変化をモニタリングする温度モニタリングシステム5,6を、図6及び図7を参照して説明する。図6(A)図は、流通過程において温度計測が完了されてから、モニタリングさせる場合のブロック図を示している。図6(B)図は、流通過程において温度計測をさせながら、随時、モニタリングさせる場合のブロック図を示している。図7は、表示手段に表示された温度モニタリングの表示を示している。図7は、夏季において、物品を2℃から8℃で冷蔵輸送させた場合の温度記録線を示している。
ここで、温度モニタリングとは、梱包体の内部温度を、疑似計測手段により連続的又は断続的に測定・記録させ、温度記録情報を時系列で表示させて監視させることをいう。流通過程とは、輸送車両等によって搬送されている搬送期間に限定されず、物が製造されてから使用されるまでの全ての期間において、例えば輸送車両に積み込まれるまでの期間、荷卸しされてから開梱されるまでの期間を含むようにするとよい。
温度モニタリングシステム5(図6(A)図参照)は、少なくとも一つの疑似計測手段2と、演算処理手段60と、表示手段70とからなる。演算処理手段60は、公知の電子計算機とされ、入力手段61と、記憶手段62と、前記表示手段70とに接続されている。
入力手段61は、前記所定の温度と前記所定の設定時間とを入力させ、記憶手段62に記憶させる。演算処理手段60は、温度逸脱の有無が容易に監視できるように、計測手段30から出力された温度記録情報を温度記録線として表示させる(図7参照)。温度記録線とさせる演算処理のフローは、実施例4のステップ3からステップ4と同様であり、ここでは説明を省略する。表示手段70は、視覚により温度記録情報を確認できる状態として表示させればよく、電子計算機に接続されたモニターの画面であってもよく、印刷機により出力されたものであってもよい。
表示手段70には、温度モニタリングの表示として、例えば、一つの疑似計測手段の温度記録情報から作成された温度記録線90と所定の管理温度とが一体に、線グラフとして表示される(図7参照)。温度記録情報から作成させた複数の温度記録線を重ねて、一つの線グラフとさせて表示させると、より好適である(図3(A)図参照)。線グラフには、温度の計測開始時点からの経過時刻を表示させてもよく、使用される地域における日時を表示させてもよい。
計測手段30には、温度を計測させる温度計測手段33と、計測させた温度を記録させる温度記録手段34と、温度記録手段に記憶された温度記録情報を読取専用のデータ形式で出力させる出力手段35とが備えられている。更に、疑似計測手段の個体を識別させる識別情報を記憶させる識別情報記憶手段36が備えられている(図6(A)図参照)。前記識別情報は、出力手段35により温度記録情報と共に、演算処理手段60に出力される。
この識別情報は、筐体の外面に貼付された識別ラベル19(図1(B)図参照)に記載された識別番号、例えばID:0001に対応させている。特定の識別ラベルが貼付された疑似計測手段を、予め定められた位置に配置させることにより、識別情報から疑似計測手段が存置された位置情報を特定させることができる。例えば、識別情報記憶手段に、搬送空間のa位置(図4(B)図参照)に対応するID:0001を記憶させると共に、識別ラベルにID:0001と記載させる。その疑似計測手段をa位置に配置させて温度を計測させることにより、計測手段に記録された温度記録情報と、位置情報とが紐づけされる。疑似計測手段の配置場所は、指示書により示されればよいが、筐体の外面に図示されてもよい。
温度記録情報と位置情報とが紐づけされているため、梱包体が存置された空間の温度分布を把握できる。例えば、温度記録情報から作成された複数の温度記録線を、一つの線グラフに重ねると共に、位置情報を一体に表示させれば、各位置の温度記録線の推移の差から温度分布を把握できる。
常時モニタリングを行う温度モニタリングシステム6(図6(B)図参照)においては、温度モニタリングシステム5の構成に加えて、疑似計測手段2の出力手段35に接続された送信手段80と、演算処理手段60に接続された受信手段81とを備えている。送信手段80および受信手段81は、公知の通信機器と公衆通信回線とにより、温度記録情報の送受信ができればよく、限定されない。疑似計測手段の出力手段35と、送信手段80とが接続される手段は限定されず、USB端子等により直接接続されてもよく、無線通信機器により接続されてもよい。また、演算処理手段60は、公知の公衆通信回線に接続された電子計算機であればよい。
温度モニタリングシステム6においては、送信手段80と受信手段81とが備えられることにより、流通過程にある梱包体について、温度計測をさせながら、温度記録情報を演算処理手段に入力させることができる。そして、演算処理手段60が、温度記録情報を、随時、温度記録線90(図7参照)として表示手段70に表示させることにより、流通過程にある梱包体についても温度モニタリングさせることができる。
次に、温度モニタリングの表示を図7を参照して説明する。冷蔵輸送においては、物品の管理温度が2℃から8℃とされた医薬品を冷蔵輸送させる場合の温度変化を、温度記録線90として表示させている(図7参照)。この温度モニタリングは、例えば夏季の特定日から、その翌日にかけての例を示している。
特定日の22時30分(図7のi参照)に輸送車両の搬送空間が開放され、荷積み作業が開始された。荷積み開始から約10分後に荷積みが完了され(図7のii参照)、搬送空間の扉が閉鎖され輸送が開始された。そして、翌日の9時20分(図7のiv参照)に、輸送車両が搬送先に到着され、荷卸し作業が開始され、約10分後に荷卸しが完了された(図7のv参照)。
この連続された流通過程の温度記録を、温度モニタリングシステム5と一つの疑似計測手段2とを使用してモニタリングさせた。疑似計測手段2は、温度変化が大きい搬送空間の扉の内側に配置された梱包体に装着させた。温度記録情報を演算処理手段により、流通過程における温度変化を温度記録線90として表示させた。表示手段には、前記温度記録線と所定の管理温度とを一体に表示させて、流通過程全体において温度逸脱がないかのモニタリングが容易とされている。
前記温度記録線によれば、荷積み作業に伴い、疑似計測手段に記録された温度が一時的に上昇されていたが、管理温度上限の8℃以下に収まっており、温度逸脱がないことが確認された。扉が閉鎖されてから約20分後(図7のiii参照)には、温度が2℃から4℃の安定した状態となり、輸送中においては温度が安定した状態が継続していることが確認された。搬送先に到着後、荷卸し作業に伴って温度上昇が確認されたが、荷積み作業中と同様に、管理温度上限の8℃以下に収まっており、温度逸脱がないことが確認された。
なお、疑似計測手段は、荷卸し作業の後に梱包体と共に搬送先の保冷倉庫に保管させ、所定の期間が経過されてから、梱包体から取り外され温度記録を出力させるようにしてもよい。この場合には、搬送先の倉庫において温度管理が適正に行われていたかもモニタリングさせることができる。同様に、荷積み作業の前において、疑似計測手段を梱包体と共に製造元の保冷倉庫に保管させ、製造元の保冷倉庫の温度もモニタリングさせてもよい。
塗料を保温輸送させる場合においては、塗料の管理温度が15℃から25℃とされているため、外気温に応じ、冷風又は温風により管理温度の範囲内で保温輸送されるが、その流通過程のモニタリングにおいても、上記と同様にモニタリングされればよい。
温度モニタリングは、運送業者が行ってもよく、運送業者とは異なる事業者が行ってもよい。例えば、流通過程における疑似計測手段の配置・輸送は運送業者が行い、疑似計測手段の回収および温度モニタリングは検査業者が行うように分担させ、温度モニタリングの結果を運送会社に送達させて情報共有させるとよい。なお、回収の際に、複数の筐体から計測手段を取り外し、一つの筐体に纏めて送達させれば、複数の計測手段を纏めて回収させやすい。予め筐体に配送伝票を同梱させれば、計測手段の回収がより容易となる。
また、梱包体が輸出される場合には、疑似計測手段を回収させなくてもよい。この場合には、海外の事業者が計測手段から未処理データを電子計算機に出力させ、未処理データのまま検査業者に公衆通信回線を使って送信させる。検査業者は、受信された未処理データを演算処理させ、疑似計測手段を回収させた場合と同様に、温度モニタリングさせる。
(その他)
・温度モニタリングシステムの実施例においては、理解が容易なように、主として流通過程における例に基づいて、経時的に連続させた温度変化を具体的に示したが、単なる例示に過ぎない。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。