JP2020196924A - 電気防食用バックフィル - Google Patents

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Abstract

【課題】コンクリート中に埋設された鋼材の電気防食に有用で、施工の安全性に優れる電気防食用バックフィルを提供すること。【解決手段】電気防食用バックフィル1は、コンクリート構造物11のコンクリート12中に埋設された鋼材13に防食電流を流す電気防食用電極14の近傍に設けられるもので、電解質を含む電解液と、該電解液を保持する液保持材とを含有する。電気防食用バックフィル1は、1)前記電解質が酢酸マグネシウムを含むか、又は2)前記電解質が酢酸塩を含み、前記電解液が多価アルコールを含有する。【選択図】図2

Description

本発明は、コンクリート構造物のコンクリート中に埋設された鋼材の電気防食に使用される電気防食用バックフィルに関する。
コンクリート中に鉄筋等の鋼材が埋設されたコンクリート構造物においては、酸素、水、塩化物イオン等の内部浸透によって鋼材に腐食生成物が発生し、その腐食生成物の体積膨張によってコンクリートにひび割れが発生することで、鋼材の腐食が更に加速されて鋼材の断面減少等が引き起こされ、最終的にコンクリート構造物の強度等の諸性能が低下する。そこで従来、コンクリート中の鋼材の腐食を防止する様々な手段が開発されており、斯かる手段の一つに電気防食方法がある。
電気防食方法には、流電陽極方式と外部電源方式がある。流電陽極方式は、鋼材例えば鉄筋に対して、電気化学的に卑な電位を有する亜鉛、アルミニウムのような金属を流電陽極としてコンクリート構造物のコンクリート表面に設置し、流電陽極と鋼材との電位差を利用して両者の間に電池を構成し、鋼材に直流電流を供給する方式である。流電陽極は、鋼材の犠牲となって腐食することから犠牲陽極とも呼ばれる。外部電源方式は、コンクリート構造物のコンクリート表面又は該表面に設けられた溝などに電気防食用電極を設置し、コンクリート中の鋼材を陰極として、直流電源装置を用いて電気防食用電極から陰極に直流電流を供給することにより、陰極の電位を卑方向に変化させ、陰極である鋼材を防食する方式である。
流電陽極方式の電気防食方法においては従来、陽極活性化剤を含む液とこれを保持する保持材とを含むバックフィルを用い、流電陽極とコンクリートとの隙間を埋めるようにバックフィルを配置することで、流電陽極の電極電位の安定化、流電陽極の局部的溶解の防止等を図り、流電陽極からコンクリート中の鋼材に十分な電流が供給されるようにすることが知られている(例えば特許文献1〜4)。バックフィルの陽極活性化剤としては一般に潮解性を有する電解質が使用され、代表的な電解質として、塩化マグネシウム等の塩化物系と、水酸化ナトリウム等の強アルカリ系とが知られている。
特許文献5には、陽極電位を長期的に安定させて低接地抵抗を維持する等の目的で、塩化物系の電解質を含むバックフィルに、グリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコールを含有させることが記載されている。
特開2017−181363号公報 特開2017−66655号公報 特開2016−3342号公報 特許第4574013号公報 特開2008−57015号公報
塩化マグネシウム等の塩化物系電解質は、潮解性が高いためにバックフィルの保水性の向上効果に優れ、長期的な電流の供給を可能とする。しかし、これを用いたバックフィルをコンクリート構造物の電気防食に使用した場合には、バックフィル中の塩化物系電解質がコンクリート中に拡散するおそれがあり、流電陽極が消失した後は鋼材の腐食を加速させる。また、水酸化ナトリウム等の強アルカリ系電解質は、流電陽極の不動態化を抑制し、流電陽極の使用期間を長期にさせる能力が高い反面、アルカリシリカ反応を起こし、コンクリートの膨張やそれに伴うひび割れなどが生じるおそれがあり、また、皮膚腐食性が高いため、これを用いたバックフィルは施工の安全性に欠ける。
本発明の課題は、従来技術が有する欠点を解消し得る電気防食用バックフィルを提供することにあり、詳細には、コンクリート中に埋設された鋼材の電気防食に有用で、施工の安全性に優れる電気防食用バックフィルを提供することである。
本発明者は、コンクリート構造物に害を及ぼすおそれのある塩化物イオンを含まず、且つ人体に対する毒性の低いバックフィル用陽極活性化剤について種々検討を重ねた結果、酢酸マグネシウムが目的の特性を有することを見出した。酢酸マグネシウムは従来、道路融雪剤や肥料などに使用されており、人体に対する毒性は低い。また、酢酸マグネシウムについて更に検討を重ねた結果、バックフィルの内容物として、酢酸マグネシウムとグリセリン等の多価アルコールとを併用することで、酢酸マグネシウムの欠点である潮解性の低さが解消され、高い保水性を有し、流電陽極の活性化能に優れるバックフィルが得られることを見出した。
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、コンクリート構造物のコンクリート中に埋設された鋼材に防食電流を流す電気防食用電極の近傍に設けられる電気防食用バックフィルであって、電解質を含む電解液と、該電解液を保持する液保持材とを含有し、前記電解質が酢酸マグネシウムを含む、電気防食用バックフィルである。
また本発明は、前記知見に基づきなされたもので、コンクリート構造物のコンクリート中に埋設された鋼材に防食電流を流す電気防食用電極の近傍に設けられる電気防食用バックフィルであって、電解質を含む電解液と、該電解液を保持する液保持材とを含有し、前記電解質が酢酸塩を含み、前記電解液が多価アルコールを含有する、電気防食用バックフィルである。
本発明によれば、コンクリート中に埋設された鋼材の電気防食に有用で、施工の安全性に優れる電気防食用バックフィルが提供される。
図1は、酢酸マグネシウム水溶液の平衡質量パーセント濃度と相対湿度との関係を示すグラフである。 図2は、本発明の電気防食用バックフィルの一実施形態の適用例を示す図であり、コンクリート構造物の電気防食構造の一例の模式的な断面図である。 図3は、実施例及び比較例の通電試験で作製した電気防食構造の模式的な断面図である。 図4(a)は、実施例及び比較例の通電試験期間中の温湿度のグラフ、図4(b)は通電試験における発生電流密度のグラフ、図4(c)は通電試験における陽極電位のグラフである。 図5(a)及び図5(b)は、それぞれ、実施例及び比較例の通電試験における陽極電位のグラフである。
本発明の電気防食用バックフィル(以下、単に「バックフィル」ともいう。)は、コンクリート構造物のコンクリート中に埋設された鋼材に防食電流を流す電気防食用電極の近傍に設けられるものであり、電解質を含む電解液と、該電解液を保持する液保持材とを含有する。本発明のバックフィルには、1)電解質として酢酸マグネシウムを含有する点を主たる特徴の1つとするもの(以下、「第1のバックフィル」ともいう。)と、2)電解質として酢酸塩を含有し、更に多価アルコールを含有する点を主たる特徴の1つとするもの(以下、「第2のバックフィル」ともいう。)とが包含される。
先ず、第1のバックフィルについて説明する。第1のバックフィルは、酢酸マグネシウム(電解質)を含む電解液と、該電解液を保持する液保持材とを含有する。電解液は、典型的には、溶媒として水を含有し、電解質水溶液である。
電解液における酢酸マグネシウムの含有量は、第1のバックフィルと併用される電気防食用電極が長期間安定的に低電位となるように設定される。一般に、バックフィルにおける電解液の電解質濃度が低いと、バックフィルの吸湿能力が不十分となって電解液の保持量を長期間にわたって保持することが困難となるため、電気防食用電極(流電陽極)が高電位となりやすい。一方、斯かる電解質濃度が高いと、電気防食用電極は安定的に高電位となりやすいが、該電解質濃度が過多となると、電解液がバックフィルの外部に漏出するおそれがある。以上を考慮すると、電解液における酢酸マグネシウムの含有量は、該電解液の全質量に対して、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
電解液は、酢酸マグネシウム及び溶媒(典型的には水)に加えて更に多価アルコールを含有することが好ましい。これにより、酢酸マグネシウムの欠点である潮解性の低さが解消され、バックフィルに高い保水性を付与することが可能となり、延いては、第1のバックフィルと併用される電気防食用電極(流電陽極)の電位を一層長期的に安定させ、低接地抵抗を維持することが可能となる。多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンアルコール、ポリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3―ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2―ヘキサンジオール、マルチトール、ソルビトール等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの多価アルコールの中でも特にグリセリンは、バックフィルの保水性を長期間にわたって高いレベルに維持し得ることから、本発明で好ましく用いられる。
図1は、酢酸マグネシウム水溶液の平衡質量パーセント濃度と相対湿度との関係を示すグラフである。図1中の点線は、酢酸マグネシウム水溶液の飽和濃度を示し、該点線よりも下方は、酢酸マグネシウム水溶液が溶液状態を維持し得る領域、該点線よりも上方は、酢酸マグネシウム水溶液が溶液状態を維持し得ない領域(酢酸マグネシウム水溶液の乾燥・固化が進行する領域)である。バックフィルの電解液としては、常時溶液状態が維持されることが理想的であるが、図1に示すとおり、酢酸マグネシウムを単体で含む電解液(MgAc)は、相対湿度が75%RH以上の環境でないと溶液状態を維持できない。これに対し、酢酸マグネシウムに加えて更にグリセリンを含有する電解液(MgAc:Gly)は、MgAcに比べて平衡質量パーセント濃度が低下しており、また、その低下率はグリセリンの含有量に比例することがわかる(図1中の比率は、酢酸マグネシウムとグリセリンとの含有質量比を示す。)。これは、グリセリンの添加によって電解液の吸湿性が向上することを意味する。このように、バックフィルの成分として酢酸マグネシウム(電解質)とグリセリン(多価アルコール)とを併用することで、酢酸マグネシウムの長所(低毒性、低アルカリ性)を活かしつつ、酢酸マグネシウムの欠点である潮解性の低さが解消されバックフィルに高い保水性を付与することが可能となる。
電解液における多価アルコールの含有量は、該電解液の全質量に対して、好ましくは25〜80質量%、より好ましくは50〜70質量%である。斯かる含有量が少なすぎると、多価アルコールを使用する意義に乏しく、斯かる含有量が多すぎると、多価アルコール(グリセリン)は非導電性であることから、第1のバックフィルと併用される電気防食用電極(流電陽極)の自然電位が上がり、陽極活性が低下することが懸念される。本発明者の知見によれば、電解液における多価アルコール(グリセリン)の含有量の増加に伴って流電陽極の自然電位が高まる傾向は見られるが、斯かる含有量が前記の好ましい範囲にあれば、流電陽極の分極特性自体に大きな変化は見られない。
電解液には、必要に応じ、酢酸マグネシウム(電解質)及び多価アルコール以外の他の成分を含有させることができ、例えば、ベタイン、クエン酸等の吸湿性アミノ酸が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
電解液のpHは、好ましくは12以下、より好ましくは9〜10である。電解液のpHは、酢酸マグネシウム(電解質)の濃度を調整することで調整可能である。従来のバックフィルではpH13以上の電解液が使用される場合があるところ、このような強アルカリ性の電解液は、アルカリシリカ反応によるコンクリートの膨張やそれに伴うひび割れなどの劣化現象を起こすことが懸念される。これに対し、第1のバックフィルでは、電解質として酢酸マグネシウムを用いることで電解液のpHが従来よりも低くなされており、斯かる懸念が払拭されている。
第1のバックフィルにおける液保持材としては、電解液を保持し得るものであればよく、例えば、ベントナイト、セメント、吸水シート等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ベントナイトとしては、カルシウム型、ナトリウム型のどちらも用いることができる。セメントとしては、例えば、ポルトランドセメント、フライアッシュセメント、高炉セメント、シリカセメント、耐硫酸塩セメント、中庸熱セメント、超速硬性セメント、アルミナセメント等が挙げられる。吸水シートとしては、例えば、セルロース繊維等の吸水性繊維を主体とする繊維集合体が挙げられ、該繊維集合体の形態としては、例えば、不織布、紙、あるいはこれらの2種以上を積層してなる複合シートが挙げられる。
第1のバックフィルにおいて、液保持材の単位面積当たりの電解液保持量は、液保持材の種類、厚み等により異なることから一概に決定できないが、通常好ましくは50〜200g/dm、より好ましくは50〜100g/dmである。
第1のバックフィルの含水率は、主として電解液における電解質(酢酸マグネシウム)の濃度によって設定され、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜40質量%である。バックフィルの含水率が低すぎると、バックフィルの製造時においてその構成成分を均一分散させることが困難となり、製造容易性や施工性の低下を招くおそれがあり、逆に、バックフィルの含水率が高すぎると、バックフィルの流動性が高くなり、バックフィルが外部へ漏出するおそれがある。
第1のバックフィルは、水溶性高分子を含有しないことが好ましい。その理由は以下のとおりである。すなわち水溶性高分子は、高分子鎖の網目構造を形成し、この網目中に水分子を取り込むことによって水分保持機能を発現する。しかし、酢酸マグネシウム等の酢酸塩を含む電解液と水溶性高分子とが併存すると、水溶性高分子はその網目中に水分子を十分に取り込むことができず、水溶性高分子の水分保持機能が低下することが知られている。特に、水溶性高分子の存在する系にマグネシウムやカルシウムなどの多価カチオンが含まれる場合は、それ自身が水分子を強く溶媒和するため、水溶性高分子の水分保持機能が一層低下する。そこで、第1のバックフィルは水溶性高分子を含有しないことが好ましい。ここでいう水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、ゼラチン、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルアミン、ポリビニルピロリドンが挙げられる。
第1のバックフィルの抵抗率は、好ましくは20〜200Ω・cm、より好ましくは20〜100Ω・cmである。バックフィルの抵抗率が斯かる特定範囲内にあることにより、電気防食用電極の電位を長期に安定させるという効果が奏される。前述のように構成された第1のバックフィルは、抵抗率が前記の好ましい範囲になり得る。
次に、第2のバックフィルについて説明する。ただし、第2のバックフィルについては、第1のバックフィルと異なる構成を説明し、第2のバックフィルにおける説明しない構成については、前述した第1のバックフィルの説明が適宜適用される。
第2のバックフィルは、酢酸塩(電解質)を含む電解液と、該電解液を保持する液保持材と、多価アルコールとを含有する。液保持材及び多価アルコールについては、前述したとおりである。第2のバックフィルは、多価アルコールを必須成分とする代わりに、電解質が酢酸マグネシウムに限定されず、これを含むより広い概念の酢酸塩である点で、第1のバックフィルと異なる。
第2のバックフィルにおける酢酸塩(電解質)としては、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸リチウム等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの酢酸塩の中でも特に酢酸マグネシウムが好ましい。電解液における酢酸塩の含有量については、前述した電解液における酢酸マグネシウムの含有量と同様の範囲に設定することが好ましく、具体的には、該電解液の全質量に対して、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは10〜30質量%である。
本発明のバックフィル(第1及び第2のバックフィル)は、常法に従って製造することができる。典型的には、先ず、酢酸マグネシウム(酢酸塩)の電解液を調製する。通常、電解液の溶媒には水が用いられる。電解液を調製する際には、溶媒を加熱して酢酸マグネシウム(酢酸塩)を完全に溶解させることが好ましい。電解液に多価アルコールを含有させる場合は、一旦、酢酸マグネシウム(酢酸塩)を溶媒に溶解させて酢酸塩溶液を得、該酢酸塩溶液に多価アルコールを添加することが好ましい。次に、調製した電解液を液保持材に保持させることで、本発明のバックフィルが得られる。電解液を液保持材に保持させる方法は特に制限されず、典型的には、電解液を液保持材に塗布するか、又は電解液中に液保持材を浸漬して含浸させる。電解液は液保持材の全体に均一に存在することが好ましい。
図2には、前述した本発明のバックフィルの、コンクリート構造物への適用例が示されている。なお、図面は基本的に模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合がある。
図2に示すバックフィル1は、本発明のバックフィル(第1又は第2のバックフィル)の一実施形態であり、コンクリート構造物11の流電陽極方式による電気防食に適用されており、コンクリート構造物11とともに電気防食構造10を構成している。コンクリート構造物11は、コンクリート12と、コンクリート12中に埋設された鋼材13とを含んで構成されている。コンクリート構造物11は、典型的には鉄筋コンクリート構造物であり、その場合の鋼材13は鉄筋である。コンクリート構造物11は、例えば、橋、橋桁、橋脚、ボックスカルバート、擁壁、桟橋、護岸等であり得る。本発明でいうコンクリートとは、セメントペースト、セメントモルタル、及びセメントコンクリートを総称するものである。
電気防食構造10は、図2に示すように、コンクリート構造物11と、コンクリート構造物11の外部に配置され、鋼材13に防食電流を流す電気防食用電極14と、コンクリート12中における鋼材13の近傍に配置され、鋼材13の電位を測定する参照電極15と、各部を電気的に接続する接続手段とを含んで構成されている。前記接続手段は、鋼材13、電気防食用電極14及び参照電極15それぞれから延びるリード線16が接続箱17内で結線されて構成されている。
電気防食用電極14は、コンクリート12中の鋼材13に対して電気化学的に卑な電位を有する金属からなる板状物であり、アンカーボルト、リベット等の固定具18により、コンクリート12の表面上に固定されている。電気防食用電極14としては、流電陽極あるいは犠牲陽極として一般に使用されているものを特に制限無く用いることができ、例えば、アルミニウム又はその合金、亜鉛又はその合金、マグネシウム又はその合金等が挙げられる。
バックフィル1は、図2に示すように、電気防食用電極14とコンクリート構造物11のコンクリート12との間に介在配置されており、電気防食構造10の一構成部材である。バックフィル1の周囲における電気防食用電極14とコンクリート12との間には、ウレタン樹脂等の樹脂製の緩衝材19が配置されている。バックフィル1の厚さは特に制限されず、通常10mm程度である。
電気防食構造10は、その構成部材の1つであるバックフィル1に含まれる電解質が、人体に対する毒性が低く、また、コンクリートの劣化に繋がるコンクリート中性化が従来品に比べて抑制された酢酸マグネシウム(酢酸塩)であるため、施工の安全性に優れ、コンクリート構造物のコンクリートの劣化を招かずに、コンクリート中の鉄筋等の鋼材の電気防食を行うことができる。また、バックフィル1は、酢酸マグネシウム(酢酸塩)とともに多価アルコールを含有することで高い保水性を有し、電気防食用電極(流電陽極)の活性を長期にわたって維持することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、斯かる実施例に制限されない。
〔実施例1〜6及び比較例1〜2〕
下記表1に示す成分を混合して電解液を調製し、該電解液中に液保持材を浸漬して含浸させて、バックフィルを調製した。液保持材として、市販の吸水シート(王子キノクロス株式会社製、商品名「ハトシート」)を用いた。
Figure 2020196924
〔試験例〕
各実施例及び比較例のバックフィルについて、屋外にて下記方法により通電試験を実施し、その際の陽極電位及び発生電流密度をそれぞれ測定した(電解質として酢酸カリウムを用いたものについては陽極電位測定のみ)。その結果を図4及び図5に示す。
<通電試験>
図3には、通電試験で作製した電気防食構造が示されている。なお、以下の図面の記載において、前述した構成と同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。コンクリート試験体として、図3に示すように、直径φが16mmの鉄筋(鋼材)13をかぶり厚さ11Tが42mmで内部に有する、鉄筋コンクリート11を用いた。鉄筋コンクリート11は、厚さ11Tが100mm、鉄筋13の長手方向と同方向の長さ11Lが200mm、該長さ11Lと直交する方向(図3の紙面に対して直交する方向)の長さが100mmであった。鉄筋コンクリート11の表面に、評価対象のバックフィル1を介して亜鉛陽極板14を固定し、コンクリート構造物11の電気防食構造10を作製した。バックフィル1の厚み1Tは10mmであった。亜鉛陽極板14は、厚さ14Tが10mm、鉄筋13の長手方向と同方向の長さ14Lが100mm、該長さ14Lと直交する方向(図3の紙面に対して直交する方向)の長さが50mmであった。作製した電気防食構造10を用い、その鉄筋コンクリート11中の鉄筋13と亜鉛陽極板14とをリード線16で結線し、亜鉛陽極板14から鉄筋13に流れる発生電流密度を経時的に測定した。参照電極15には、飽和塩化カリウムを内部溶液とする銀−塩化銀電極(SSE)を用い、SSEをバックフィル層1に差し込んで陽極電位を経時的に測定した。
図4(a)は試験期間中の温湿度のグラフ、図4(b)は発生電流密度のグラフ、図4(c)は陽極電位のグラフである。発生電流密度は大きいほど好ましく、陽極電位は低いほど好ましい。
発生電流密度に関し、試験開始から55日まで(期間1)は、実施例2(電解質が酢酸マグネシウム)及び比較例1(電解質が塩化マグネシウム)は経時的に低下しているのに対し、実施例1(電解質が酢酸マグネシウム且つグリセリン含有)は経時的に増加し、試験開始から20日経過時から実施例2を上回った。また、試験期間から55日以降(期間2)は、何れの例も発生電流密度が経時的に低下しているが、これは気温の低下が影響していると推察される。試験開始から90日経過時点では、実施例1は比較例1と同程度の発生電流密度であり、また、実施例2はやや発生電流密度が低いものの、実用上十分なレベルであった。
陽極電位に関し、実施例1及び2は比較例1よりもわずかに高いが、経時的な安定性の点においては、実施例1が最も優れていた。
以上から、バックフィルの電解質として酢酸マグネシウムを用いること、更にはグリセリンを併用することの有用性が明らかである。
図5(a)に示すとおり、実施例2及び比較例1は何れも陽極電位が経時的に安定しているのに対し、比較例2(電解質が酢酸カリウム)は陽極電位が経時的に上昇しており、実施例1及び比較例1に比べて陽極の活性化機能の経時安定性に劣る。しかしながら、図5(b)に示すとおり、比較例2のバックフィルにグリセリンを所定量添加した形態である実施例3〜6は、グリセリンの添加量に比例して陽極電位が低下しており、陽極の活性化機能の経時安定性が向上している。
以上から、バックフィルの電解質として酢酸塩を用い且つグリセリンを併用することの有用性が明らかである。
1 バックフィル
10 電気防食構造
11 コンクリート構造物
12 コンクリート
13 鋼材
14 電気防食用電極
15 参照電極
16 リード線
17 接続箱
18 固定具
19 緩衝材
図5(a)に示すとおり、実施例2及び比較例1は何れも陽極電位が経時的に安定しているのに対し、比較例2(電解質が酢酸カリウム)は陽極電位が経時的に上昇しており、実施例及び比較例1に比べて陽極の活性化機能の経時安定性に劣る。しかしながら、図5(b)に示すとおり、比較例2のバックフィルにグリセリンを所定量添加した形態である実施例3〜6は、グリセリンの添加量に比例して陽極電位が低下しており、陽極の活性化機能の経時安定性が向上している。
以上から、バックフィルの電解質として酢酸塩を用い且つグリセリンを併用することの有用性が明らかである。

Claims (6)

  1. コンクリート構造物のコンクリート中に埋設された鋼材に防食電流を流す電気防食用電極の近傍に設けられる電気防食用バックフィルであって、
    電解質を含む電解液と、該電解液を保持する液保持材とを含有し、
    前記電解質が酢酸マグネシウムを含む、電気防食用バックフィル。
  2. 前記電解液が多価アルコールを含有する、請求項1に記載の電気防食用バックフィル。
  3. コンクリート構造物のコンクリート中に埋設された鋼材に防食電流を流す電気防食用電極の近傍に設けられる電気防食用バックフィルであって、
    電解質を含む電解液と、該電解液を保持する液保持材とを含有し、
    前記電解質が酢酸塩を含み、前記電解液が多価アルコールを含有する、電気防食用バックフィル。
  4. 前記酢酸塩が酢酸マグネシウムである、請求項3に記載の電気防食用バックフィル。
  5. 前記多価アルコールがグリセリンである、請求項2〜4の何れか1項に記載の電気防食用バックフィル。
  6. 水溶性高分子を含有しない、請求項1〜5の何れか1項に記載の電気防食用バックフィル。
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