(実施形態1)
(1)概要
本実施形態に係る監視システム100の概要について、図1を参照して説明する。
監視システム100は、特定回路C1における配線C11の状態を監視するためのシステムである。特に、監視システム100は、特定回路C1における配線C11の異常を検知し、検知結果に応じた出力を行うように構成されている。これにより、監視システム100では、例えば、配線C11の異常の発生時に、ユーザに報知したり、特定回路C1を電気的に遮断したりすることが可能である。
本開示でいう「配線の異常」は、特定回路C1に含まれる配線C11に生じ得る異常を意味し、配線C11における絶縁劣化又は半断線等の異常、例えば、配線C11がより線であれば、より線を構成する複数本の素線のうちの一部の素線が断線した状態等を含む。具体的には、配線C11の異常は、配線C11が一対の電線で構成される場合に、一対の電線間が短絡することでアーク(いわゆるパラレルアーク)が発生することを含む。また、配線C11の異常は、配線C11が一対の電線で構成される場合に、一対の電線のうちの一方が半断線することでアーク(いわゆるシリーズアーク)が発生することを含む。その他、例えば、配線C11に定格電流を超える過電流又は短絡電流が流れている状態、又は配線C11に漏電が生じている状態等も、配線C11の異常に含まれる。本実施形態では一例として、「配線の異常」は、配線C11におけるパラレルアーク(短絡)とシリーズアーク(半断線)との少なくとも一方であることと仮定する。
本実施形態では、監視システム100は、分電盤1の分電盤用キャビネット10(図2参照)に収容されている。つまり、監視システム100は分電盤1に含まれている。言い換えれば、本実施形態に係る分電盤1は、監視システム100と、監視システム100を収容する分電盤用キャビネットと、を備えている。
ここで、本実施形態に係る監視システム100は、図1に示すように、検知部712と、推定部715と、出力部713と、を備えている。検知部712は、特定回路C1における配線C11の異常を検知する。推定部715は、特定回路C1に含まれる機器に関する機器情報を推定する。出力部713は、検知部712の検知結果及び推定部715の推定結果の少なくとも一方に応じた出力を行う。
本開示でいう「機器情報」は、特定回路C1に含まれる機器に関する情報であって、例えば、機器の種類と電力と電流と電圧との少なくとも1つに係る情報を含む。本開示でいう「機器」は、特定回路C1に含まれる種々の機器を含み、一例として、電気機器23,24、又は配線器具(スイッチ装置又はコンセント(アウトレット)等)等である。そのため、機器情報は、一例として、これらの機器(電気機器23,23又は配線器具等)の種類、定格電力、定格電流又は定格電圧といった種々の情報を含み得る。さらに、機器の種類には、機器の具体的な種類(空調機器かテレビ受像器か、又は品番等)だけでなく、機器が熱源であるか否かといった大まかな種類も含まれる。本開示でいう「熱源」は、電気ストーブのようにそれ自体の温度が高くなる装置だけでなく、IHクッキングヒータのように物体を加熱する装置も含む。
要するに、本実施形態に係る監視システム100によれば、特定回路C1における配線C11の異常を検知する検知部712に加えて、特定回路C1に含まれる機器に関する機器情報を推定する推定部715が設けられている。つまり、監視システム100では、例えば、パラレルアーク又はシリーズアーク等の配線C11の異常を検知するだけでなく、特定回路C1に含まれる機器の種類等の機器情報を推定まで行うことができる。したがって、監視システム100によれば、単に過電流又は漏電といった予め決められた異常を検出するだけの構成に比較して、より多様な監視が可能になる。
また、本実施形態に係る監視システム100は、可変部714を更に備えている。可変部714は、推定部715の推定結果に応じて、検知部712及び出力部713の少なくとも一方に関する対象項目を変化させる。
本開示でいう「対象項目」は、検知部712及び出力部713の少なくとも一方に関する種々のパラメータ、アルゴリズム、動作のタイミング又はコンテンツ等の項目である。例えば、検知部712に関する対象項目には、検知部712での、配線の異常が発生しているか否かの判定に係る感度(判定のための閾値等を含む)、又は判定アルゴリズム等が含まれる。また、出力部713に関する対象項目には、出力部713での検知部712の検知結果に応じた出力を行うタイミング、出力する内容(出力の態様及び出力するメッセージ内容等を含む)、又は出力先等が含まれる。
そのため、可変部714が、このような対象項目を変化させることにより、例えば、どのような場合に配線の異常と判定するか、また、配線の異常の発生時にどのような出力を行うか、を変化させることができる。
すなわち、可変部714が検知部712に関する対象項目を変化させれば、例えば、特定回路C1を流れる電流にどのよう特徴が現れると配線C11の異常と判定するか、その判定基準を調整できる。よって、特定回路C1を流れる電流に同一の特徴が現れる場合であっても、検知部712に関する対象項目を変化させれば、検知部712に、配線C11の異常が発生していると判定させたり、配線C11の異常が発生していないと判定させたりすることができる。
また、可変部714が出力部713に関する対象項目を変化させれば、例えば、配線C11の異常と判定された場合に、何をどのように出力するか、を調整できる。よって、配線C11に異常が同様に発生した場合であっても、出力部713に関する対象項目を変化させれば、出力部713に、異常を即座に報知させたり、一定時間経過後に異常を報知させたりすることができる。
要するに、本実施形態に係る監視システム100によれば、対象項目が可変であることで、例えば、どのような場合に配線C11の異常と判定するか、また、配線C11の異常の発生時にどのような出力を行うか、を変化させることができる。つまり、検知部712及び出力部713の少なくとも一方に関する対象項目を変化させることで、例えば、パラレルアーク又はシリーズアーク等の配線C11の異常を検知するに際して、異常の判定の仕方、及び/又は、異常発生時の出力の仕方を、調整できる。したがって、監視システム100によれば、配線C11の異常の監視について柔軟性を持たせることができ、結果的に、単純な過電流又は漏電等のみでなく、パラレルアーク又はシリーズアーク等の異常を含め、必要に応じて、より多様な異常の検知が可能となる。
しかも、本実施形態では、可変部714は、推定部715の推定結果(機器情報)に応じて、対象項目を変化させるので、特定回路C1に含まれる機器に応じて、自動的に対象項目を変化させることができる。一例として、特定回路C1に含まれる機器が熱源であると、可変部714では、検知部712における異常の検知感度が高くなるように、対象項目としての検知感度を変化させることが可能である。
(2)構成
以下、本実施形態に係る監視システム100及び分電盤1の構成について、さらに詳細に説明する。
(2.1)前提
監視システム100を含む分電盤1は、例えば、戸建て住宅又は集合住宅の住戸等の施設500に設置されて使用される。分電盤1が設置される施設500は、戸建て住宅又は集合住宅の各住戸に限定されず、非住宅の施設(例えば、工場、商業用ビル、オフィスビル、病院又は学校等)であってもよい。
以下の説明では、特に断りがない限り、図2においてX軸方向を左右方向、Z軸方向を上下方向と規定する。また、X軸方向及びZ軸方向とそれぞれ直交する方向を前後方向と規定する。さらに、X軸方向の正の向きを右側、Z軸方向の正の向きを上側と規定する。ただし、これらの方向は一例であり、分電盤用キャビネット10及び分電盤1の使用時の方向を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
本開示でいう「特定回路」は、検知部712での異常の検知対象となる配線C11を含む回路であって、例えば、分電盤1の内部に設置されている主幹ブレーカ3、分岐ブレーカ4、感震ブレーカ5、及び連系ブレーカ6を含み得る。また、特定回路C1は、分岐ブレーカ4の二次側に電気的に接続されるコンセント22若しくは電気機器24、又は分岐ブレーカ4の二次側に直接、電気的に接続される電気機器23を含み得る。さらに、特定回路C1は、連系ブレーカ6の二次側に電気的に接続される分散電源21を含み得る。以下では、主幹ブレーカ3、分岐ブレーカ4、感震ブレーカ5及び連系ブレーカ6のように、回路(特定回路C1)を遮断する機能を有する機器を特に区別しない場合、これらの機器の各々を「開閉器2」ともいう。
例えば、分電盤1の分電盤用キャビネット10(図2参照)内に、主幹ブレーカ3と、複数の分岐ブレーカ4と、が含まれる場合においては、主幹ブレーカ3の二次側端子につながっている幹線の電力が、分電盤1にて複数の分岐回路に分配されることになる。本開示でいう「分岐回路」は、幹線と電気的に接続され、分電盤1にて幹線から複数に分岐される個々の回路を意味する。このような分岐回路は、分岐ブレーカ4、配線C11、配線器具(スイッチ装置又はコンセント(アウトレット)等)及び電気機器23,24を含んでいる。特定回路C1は、主幹ブレーカ3の二次側端子につながる幹線であってもよし、複数の分岐回路の各々であってもよい。本実施形態では一例として、複数の分岐回路の各々が特定回路C1である場合について説明する。さらに、分散電源21(図1参照)を含む回路についても、特定回路C1に含まれることとして説明する。この特定回路C1は、連系ブレーカ6、配線C11及び分散電源21を含んでいる。
本開示でいう「出力」は、種々の態様による出力を含み、例えば、出力部713は、検知部712の検知結果に応じてユーザに報知したり、開閉器2又は電気機器23,24を制御したりすることが可能である。ユーザに報知する場合であっても、その出力の態様は様々であって、例えば、情報端末400(図1参照)への送信、表示(発光を含む)、音(音声を含む)出力、非一時的記録媒体への記録(書き込み)及び印刷(プリントアウト)等がある。
また、本開示でいう「推定」は、おしはかって定める(決める)ことを意味し、特に、人があれこれ考えて決めることに限らず、ある事実に基づいて何らかの決定を行うこと全般を含む。そのため、例えば、コンピュータシステムに対して入力情報が入力された場合に、コンピュータシステムが、入力情報に基づいて演算を行って何らかの情報を出力情報として出力していれば、コンピュータシステムで出力情報が「推定」されたことになる。すなわち、推定部715であれば、機器情報に相関のある何らかの情報(例えば電流波形)が入力され、この情報に基づいて機器情報を決定することにより、機器情報を推定することになる。このとき、推定部715は、一例として、入力された情報について、ある判定条件に照らして判断することにより、機器情報を決定(推定)することができる。
(2.2)全体構成
次に、本実施形態に係る監視システム100及び分電盤1の構成について、図1及び図2を参照して説明する。
上述した通り、本実施形態に係る分電盤1は、監視システム100と、分電盤用キャビネット10と、を備えている。本実施形態では、監視システム100は、分電盤用キャビネット10に収容されている監視ユニット7を主構成とする。
分電盤用キャビネット10は、図2に示すように、複数の開閉器2と、監視ユニット7と、電流計測装置8と、バックアップ電源9と、を収容する。ここで、複数の開閉器2は、主幹ブレーカ3と、複数の分岐ブレーカ4と、感震ブレーカ5と、連系ブレーカ6と、を含んでいる。分電盤用キャビネット10が、監視ユニット7、電流計測装置8及びバックアップ電源9を収容することは必須ではなく、監視ユニット7、電流計測装置8及びバックアップ電源9の少なくとも一部が分電盤用キャビネット10外にあってもよい。
分電盤用キャビネット10は、前面が開口した箱状のボディ11(図2参照)と、ボディ11の開口を塞ぐカバーと、を備えている。図2においては、カバーの図示を省略している。分電盤用キャビネット10は、例えば建物の壁110(図2参照)等、建物を構成する部材に取り付けられる。分電盤用キャビネット10は、壁110に設けられた取付孔に一部又は全体が埋め込まれた状態で取り付けられてもよい。分電盤用キャビネット10は、例えば、平均的な身長の子供では手が届かないような高さ位置であって、平均的な身長の大人であれば操作が可能なような高さ位置に設けられる。
また、分電盤用キャビネット10は、分電盤用キャビネット10が壁110に取り付けられた状態でカバーの前面を覆う蓋体を更に備える。蓋体は、閉位置と開位置との間で移動可能な状態でカバーに取り付けられる。閉位置は、カバーの前面を覆う位置である。開位置は、カバーの前面の少なくとも一部を覆わない位置である。蓋体は、ある方向からカバーを見た場合にカバーの前面の一部を覆っていればよく、本実施形態では、閉位置にある蓋体は、カバーを前方から見た場合にカバーの前面の略全体を覆っている。
分電盤用キャビネット10の内部には、図2に示すように、主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4、感震ブレーカ5、連系ブレーカ6、監視ユニット7及び電流計測装置8が収容されている。主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4、感震ブレーカ5、連系ブレーカ6、監視ユニット7及び電流計測装置8は、ボディ11に直接又は取付用の部品等を介して取り付けられている。図2は、分電盤用キャビネット10の内部における主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4、感震ブレーカ5、連系ブレーカ6、監視ユニット7及び電流計測装置8の配置を示しているが、これらの配置は一例であり、適宜変更が可能である。また、図2ではバックアップ電源9の図示を省略しているが、バックアップ電源9は分電盤用キャビネット10の内部の適宜の位置に配置されていればよい。
主幹ブレーカ3は、分電盤用キャビネット10の内部において、左右方向の中央よりもやや左側の位置に配置されている。分電盤用キャビネット10の内部での主幹ブレーカ3の位置は、例えば中央よりも右側等、他の位置であってもよい。主幹ブレーカ3は、一次側端子と二次側端子との間に電気的に接続された接点31(図1参照)を備える。主幹ブレーカ3は、接点31をオン又はオフにするための操作レバーを前面に備えている。また、主幹ブレーカ3は、例えば接点31に漏電電流が流れる異常状態を検出する検出部32(図1参照)を備えている。主幹ブレーカ3は、検出部32にて接点31に漏電電流が流れる異常状態を検出すると、接点31を開極させる。これにより、主幹ブレーカ3は、主幹ブレーカ3の二次側の回路への電力供給を遮断し、回路を保護している。また、主幹ブレーカ3は、検出部32にて短絡電流又は過負荷電流等の過電流を検出すると、接点31を開極させる。また、主幹ブレーカ3の検出部32は、単相三線式配線における中性線の欠相状態を検出する機能を有する。そして、主幹ブレーカ3は、検出部32が中性線の欠相状態を検出すると、接点31を開極させる。主幹ブレーカ3は、所定の制限値を超える電流が流れると、接点31を開極させるリミッタ機能を備えていてもよい。
主幹ブレーカ3の二次側端子には、単相三線式配線における第1電圧極(L1相)の導電バー、第2電圧極(L2相)の導電バー、及び中性極(N相)の導電バーが接続されている。各導電バーは、導電部材により左右方向に長い長尺板状に形成されており、分電盤用キャビネット10の内部において、上下方向の中央であって主幹ブレーカ3の右側の位置に配置されている。
複数の分岐ブレーカ4は、各導電バーの上側と下側とに分かれて、それぞれ複数個ずつ左右方向に並ぶように配置されている。本実施形態では、図2に示すように、各導電バーの上側には、12個の分岐ブレーカ4が左右方向に並ぶように配置されている。また、各導電バーの下側には、11個の分岐ブレーカ4が左右方向に並ぶように配置されている。
各分岐ブレーカ4は、一対の一次側端子と、一対の二次側端子と、を備えている。各分岐ブレーカ4は、一次側端子と二次側端子との間に電気的に接続される接点を有している。各分岐ブレーカ4の前面には、各分岐ブレーカ4が内蔵する接点をオン又はオフにするための操作レバーが設けられている。
分岐ブレーカ4には、100V用と200V用とがある。100V用の分岐ブレーカ4が備える一対の一次側端子は、第1電圧極の導電バー及び第2電圧極の導電バーのうちの一方と、中性極の導電バーとにそれぞれ電気的に接続される。200V用の分岐ブレーカ4が備える一対の一次側端子は、第1電圧極の導電バーと、第2電圧極の導電バーとにそれぞれ電気的に接続される。また、分岐ブレーカ4の二次側端子には、対応する配線C11が電気的に接続される。各分岐ブレーカ4の二次側端子に接続された配線C11には、例えば、照明器具、給湯設備等の電気機器23、コンセント22(図1参照)又は壁スイッチ等の配線器具が負荷として1つ以上接続される。したがって、分電盤1は、分岐ブレーカ4の二次側端子に配線C11を介して接続された電気機器23、又はコンセント22に接続された電気機器24(例えば空調機器又はテレビ受像器等)等に電力を供給することができる。
また、分岐ブレーカ4は、分岐ブレーカ4が内蔵する接点に、短絡電流又は過負荷電流等の過電流が流れる異常状態を検出する検出部41(図1参照)を備えている。分岐ブレーカ4は、検出部41にて接点に過電流が流れる異常状態を検出すると、接点を開極させる。これにより、分岐ブレーカ4は、分岐ブレーカ4の二次側の回路への電力供給を遮断し、回路を保護している。また、検出部41は、分岐ブレーカ4に接続された配線C11の漏電状態を検出する機能を備えている。そして、分岐ブレーカ4は、検出部41が漏電の発生を検出すると、接点を開極させる。
感震ブレーカ5は、導電バーの下側において、分岐ブレーカ4と左右方向に並ぶように配置されている。感震ブレーカ5は、分電盤用キャビネット10に加わる振動を検出する感震センサ51を有している。感震センサ51が所定の基準値(例えば震度「5」の地震動)を超える大きさの振動を検出すると、感震ブレーカ5は回路を遮断する遮断動作を行う。感震ブレーカ5は、例えば第1電圧極又は第2電圧極と中性極との間を比較的低抵抗のインピーダンス要素を介して電気的に接続することで疑似的な漏電状態を発生させる。感震ブレーカ5が疑似的な漏電状態を発生させると、主幹ブレーカ3の検出部32が、感震ブレーカ5が発生させた疑似的な漏電状態を検出し、接点31を開極させる。これにより、地震等によって分電盤用キャビネット10に基準値を超える大きさの振動が加わると、主幹ブレーカ3の二次側に接続された回路への電力供給を遮断することができる。
連系ブレーカ6には、施設500に設けられた分散電源21が接続される。連系ブレーカ6は、主幹ブレーカ3の二次側端子に電気的に接続された導電バーと、分散電源21との間に電気的に接続される。連系ブレーカ6の接点がオンになると、分散電源21が系統電源20と連系して負荷に電力を供給することができる。一方、連系ブレーカ6の接点がオフになると、分散電源21が系統電源20から解列される。連系ブレーカ6は、例えば漏電の発生を検出する検出機能を有している。連系ブレーカ6が検出機能にて漏電の発生を検出すると、連系ブレーカ6は遮断動作を行い、分散電源21を系統電源20から解列させる。連系ブレーカ6は、短絡電流等の過電流を検出する検出機能を備えていてもよく、この場合に、連系ブレーカ6が過電流を検出すると、連系ブレーカ6が遮断動作を行うように構成されてもよい。
電流計測装置8は、複数の分岐ブレーカ4の各々に電気的に接続された負荷(電気機器23,24等)に流れる電流を計測するように構成されている。電流計測装置8は、例えば、基板と、複数のコイルと、を有している。基板は、左右方向に長い板状である。基板には、複数の孔が形成されている。複数の孔には、導電バーから延びて分岐ブレーカ4の一次側端子に接続される端子がそれぞれ挿入される。コイルは、例えばロゴスキコイルであり、基板の孔の周りに形成されている。本実施形態では、電流計測装置8は、複数の分岐ブレーカ4及び連系ブレーカ6の各々に流れる電流を計測する。ここにおいて、電流計測装置8(電流センサ)は、分電盤1が設置される施設500で使用されるエネルギーを管理するエネルギーマネジメントシステムに用いられるセンサと共用される。
バックアップ電源9は、ニッケル水素電池又はリチウムイオン電池等の二次電池であるバッテリ91と、バッテリ91を充電する充電回路と、を含む。バックアップ電源9の充電回路は、例えば、主幹ブレーカ3の一次側から電力の供給を受けて、バッテリ91を充電する。バックアップ電源9は、例えば、系統電源20が停電した場合に、バッテリ91を電源として監視ユニット7等に電力を供給する。したがって、系統電源20が停電した場合でも、監視ユニット7は、バックアップ電源9から電力の供給を受けて動作することができる。系統電源20の正常時には、監視ユニット7は、主幹ブレーカ3の一次側、つまり系統電源20から電力の供給を受けて動作する。
ここで、開閉器2は、通信部201を更に備えている。通信部201は、監視ユニット7の通信部72(後述する)と通信可能に構成されている。本開示でいう「通信可能」とは、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又はネットワーク若しくは中継器等を介して間接的に、信号を授受できることを意味する。すなわち、開閉器2(通信部201)と監視ユニット7(通信部72)とは、互いに信号を授受することができる。ここでは、複数の開閉器2の各々には固有のアドレスが設定されている。つまり、通信部201は、開閉器2に設定されたアドレス(メモリ等に記憶されたアドレス)を用いて、監視ユニット7と通信を行う。
本実施形態では、通信部201と監視ユニット7とは、互いに双方向に通信可能であって、通信部201から監視ユニット7への信号の送信、及び監視ユニット7から通信部201への信号の送信の両方が可能である。
また、本実施形態では、通信部201は、電流計測装置8の基板を、監視ユニット7との間の通信経路の少なくとも一部に用いる。言い換えれば、基板の導電層が、通信部201と監視ユニット7との間の通信経路の一部を構成する。通信部201と基板との間の通信方式は、例えば、RS−485、又は有線LAN(Local Area Network)等の通信規格に準拠した有線通信を適宜採用可能である。
ところで、監視ユニット7は、複数の分岐回路の電流と電力との少なくとも一方を計測する計測機能、及び分電盤用キャビネット10の外部に配置されたコントローラ25と通信可能に構成されている。
監視ユニット7は、監視システム100の主構成となるので、監視ユニット7において監視システム100に関連する構成の詳細については「(2.3)監視システムの構成」の欄で説明する。
コントローラ25は、HEMS(Home Energy Management System)に対応する機器(以下、HEMS対応機器という)の制御又は監視を行う。ここに、HEMS対応機器は、例えばスマートメータ、太陽光発電装置、蓄電装置、燃料電池、電気自動車、空調装置、照明器具、給湯装置、冷蔵庫、電動カーテン、電動シャッタ又はテレビジョン受像機等を含む。HEMS対応機器は、これらの機器に限定されない。本実施形態では、電気機器23,24は、いずれもHEMS対応機器として、コントローラ25と通信可能に構成されている。
また、監視ユニット7は、施設500の外部にある管理サーバ300とも通信可能に構成されている。監視ユニット7は、直接的又はルータ等を介して間接的にインターネット等のネットワーク200に接続され、ネットワーク200を介して管理サーバ300と通信可能になる。これにより、監視ユニット7は、管理サーバ300だけでなく、ネットワーク200に接続される情報端末400等とも通信可能となる。情報端末400は、例えば、施設500の住人(ユーザ)が所有するスマートフォン又はタブレット端末等の携帯端末である。
管理サーバ300又は情報端末400と、監視ユニット7との間の通信は、例えば、コントローラ25を介して行われてもよい。すなわち、コントローラ25がネットワーク200に接続されることで、監視ユニット7は、コントローラ25経由で、ネットワーク200に接続されている管理サーバ300又は情報端末400と通信可能になる。
本実施形態に係る分電盤1では、監視ユニット7は、電流計測装置8が計測した複数の分岐回路(特定回路C1)の各々に流れる電流値を、電流計測装置8から受け取る。さらに、監視ユニット7は、主幹電流計測装置が計測した電流値を主幹電流計測装置から受け取る。監視ユニット7は、電流計測装置8、及び主幹電流計測装置が計測した電流値のそれぞれを電力値(瞬時電力値)に変換する。監視ユニット7は、収集した瞬時電力のデータを所定時間にわたって積算した電力量のデータを演算する機能を有している。したがって、コントローラ25は、複数の分岐回路の各々での瞬時電力や電力量に基づいてHEMS対応機器を制御又は監視することができる。
また、監視ユニット7は、太陽光発電装置、蓄電装置、及び電気自動車に電気的に接続される電力変換装置のうちの少なくとも1つとの間で通信する機能(通信機能)を有している。電力変換装置は、分電盤1から電気自動車への単方向充電を行うための電力変換の他、双方向に電力変換を行うことで電気自動車の蓄電池の充電と放電との両方に用いられる構成であってもよい。
また、監視ユニット7は、ガスメータと水道メータとの少なくとも一方との通信機能を有している。監視ユニット7と太陽光発電装置、蓄電装置、及び電力変換装置との間の通信方式は、例えば、RS−485等の通信規格に準拠した有線通信である。監視ユニット7とガスメータ、水道メータとの間の通信方式は、有線通信に限らず、無線通信であってもよい。監視ユニット7は、例えば、貯湯型の給湯装置等と通信可能であってもよい。
(2.3)監視システムの構成
次に、監視システム100の構成について図1を用いて説明する。
本実施形態では、既に述べたように、監視システム100は、分電盤用キャビネット10に収容される監視ユニット7を主構成としている。そこで、以下では、監視ユニット7の説明と併せて、監視システム100について説明する。
まず、監視ユニット7の配置に関して、監視ユニット7は、例えば、分電盤用キャビネット10の内部において、主幹ブレーカ3の左側に配置されている(図2参照)。監視ユニット7は、主幹ブレーカ3の一次側から電力の供給を受けて動作するので、主幹ブレーカ3が遮断動作を行った場合でも動作が可能である。系統電源20が停電した場合には、監視ユニット7は、バックアップ電源9から電力の供給を受けるので、系統電源20の停電時でも動作が可能である。
監視ユニット7は、電流計測装置8と電気的に接続されている。さらに、監視ユニット7には、主幹ブレーカ3に流れる電流を計測する主幹電流計測装置が電気的に接続されている。そして、監視ユニット7は、電流計測装置8及び主幹電流計測装置が計測した電流の値に基づいて電力値を演算する機能(計測機能)を有している。電流計測装置8は、複数の分岐回路の各々に流れる電流を計測するので、監視ユニット7では、電流計測装置8が計測した電流値に基づいて、各分岐回路の電流と電力との少なくとも一方を計測する。
また、監視ユニット7は、上述したように、HEMS対応機器の制御又は監視を行うように構成されたコントローラ25との間で通信する機能(通信機能)を有している。本実施形態では、上述したように、電気機器23,24は、いずれもHEMS対応機器として、コントローラ25と通信可能に構成されている。つまり、電気機器23,24は、いずれもコントローラ25による制御又は監視の対象である。
監視ユニット7とコントローラ25との間の通信方式は、例えば、920MHz帯の特定小電力無線局(免許を要しない無線局)、Wi-Fi(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の通信規格に準拠した、電波を媒体とした無線通信である。監視ユニット7とコントローラ25との間の通信方式は、有線LAN等の通信規格に準拠した有線通信であってもよい。また、監視ユニット7とコントローラ25との間の通信における通信プロトコルは、例えば、Ethernet(登録商標)、ECHONET Lite(登録商標)等である。コントローラ25とHEMS対応機器(電気機器23,24を含む)との間の通信方式についても、監視ユニット7とコントローラ25との間の通信方式と同様に、適宜の通信方式を採用可能である。上記より、監視ユニット7は、コントローラ25を経由することで、HEMS対応機器(電気機器23,24)とも間接的に通信可能である。
ここで、本実施形態では、監視ユニット7とコントローラ25との間、及び監視ユニット7と管理サーバ300又は情報端末400との間のいずれにおいても、双方向の通信が可能である。したがって、例えば、監視ユニット7からコントローラ25を介してHEMS対応機器に信号を送信することもでき、反対に、HEMS対応機器からコントローラ25を介して監視ユニット7に信号を送信することもできる。
また、上述したように、監視ユニット7は、ネットワーク200を介して管理サーバ300又は情報端末400とも通信可能である。監視ユニット7と、管理サーバ300又は情報端末400との間においても、双方向の通信が可能である。
より詳しくは、監視ユニット7は、図1に示すように、情報処理部71と、通信部72と、通知部73と、記憶部74と、操作受付部75と、を備えている。
情報処理部71は、例えば、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしての1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを主構成とする。コンピュータシステムの1以上のメモリに記録されたプログラムを1以上のプロセッサが実行することによって、情報処理部71としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
情報処理部71は、計測部711、検知部712、出力部713、可変部714及び推定部715の機能を備える。
計測部711は、分電盤1内の主幹ブレーカ3及び分岐ブレーカ4の少なくとも一方を通過する電力を計測する。本実施形態の監視ユニット7は、主幹ブレーカ3に流れる電流を計測する主幹電流計測装置、及び電流計測装置8と電気的に接続されている。ここに、主幹電流計測装置は、例えばカレントトランス(CT)からなる電流センサを備えている。計測部711は、電流計測装置8が計測した複数の分岐ブレーカ4及び連系ブレーカ6の各々に流れる電流値を、電流計測装置8から受け取る。さらに、計測部711は、主幹電流計測装置が計測した電流値(つまり幹線に流れる電流値)を主幹電流計測装置から受け取る。計測部711は、電流計測装置8、及び主幹電流計測装置が計測した電流値のそれぞれを電力値(瞬時電力値)に変換する。また、計測部711は、収集した瞬時電力のデータを所定時間にわたって積算した電力量のデータを演算する機能を有している。
検知部712は、特定回路C1に含まれる配線C11における異常を検知する。本実施形態では、上述したように、複数の分岐回路の各々が特定回路C1である。さらに、特定回路C1は、連系ブレーカ6、配線C11及び分散電源21からなる回路も含んでいる。そのため、検知部712での配線C11の異常の検知対象となる特定回路C1は、複数存在する。
本実施形態では、検知部712は、特定回路C1ごとに、配線C11における異常を検知する。検知部712は、各特定回路C1を流れる電流に基づいて、各特定回路C1における配線C11の異常を検知する。本実施形態では、検知部712は、監視ユニット7に設けられている。そして、監視ユニット7は、上述のように、電流計測装置8が計測した電流値を取得している。このため、検知部712では、複数の特定回路C1の各々に流れる電流に基づいて、個々の特定回路C1に含まれる配線C11の異常を検知することが可能である。つまり、監視ユニット7は、計測機能(複数の分岐回路の電流と電力との少なくとも一方を計測する機能)において用いる電流値を、検知部712での配線C11の異常の検知にも利用する。
本実施形態では一例として、検知部712での検知結果は、出力部713から、情報端末400に送信される。さらに、検知部712の検知結果は、出力部713にて、記憶部74に書き込まれる。
ここにおいて、本実施形態では、検知部712は、配線C11の異常として、少なくともアークの発生を検知することが可能である。具体的には、検知部712は、アーク短絡保護遮断器(AFCI:Arc Fault Circuit Interrupter)と同様の技術により、配線C11でアークが発生しているか否かを判定することができる。すなわち、アーク短絡保護遮断器では、電子回路を使用して、配線C11で発生するアークに特有の電流特性及び電圧特性を認識し、配線C11で発生するアークを検知できる。これと同様の原理により、検知部712は、特定回路C1の配線C11でアークが発生しているか否かを判定することが可能である。
ここで、配線C11で発生し得るアークには、既に述べたように、パラレルアークと、シリーズアークと、の2種類が存在する。以下に、パラレルアーク及びシリーズアークについて、図3A〜図4Bを参照して簡単に説明する。図4A及び図4Bは、横軸を時間、縦軸を電流として、それぞれパラレルアーク及びシリーズアークが生じた場合に配線C11を流れる電流波形の一例を示している。
パラレルアークは、例えば図3Aに示すように、配線C11を構成する一対の電線C10の導体が接触する等して短絡することにより発生し得る。図3Aにおける点線の矢印I1は、パラレルアークの発生時において配線C11を流れる電流の経路を模式的に表している。パラレルアークの発生時において配線C11を流れる電流の大きさは、例えば、数十〔A〕〜数百〔A〕である。パラレルアークは、例えば、施設500にある器物(一例として家具等)の端縁に配線C11が引っ掛かることで被覆C12が損傷したり、ステップル等の金属製の部材で配線C11を挟み込んだりすることで生じ得る。また、パラレルアークは、例えば配線C11に過電流が流れて被覆C12が溶融したり、動物が配線C11をかじって被覆C12が損傷したりすることでも生じ得る。その他、パラレルアークは、配線C11が長期的に紫外線を浴び続けることで被覆C12が絶縁劣化した場合にも生じ得る。
図4Aは、パラレルアークの発生時において配線C11を流れる電流の波形の一例を示す。図4Aに示すように、パラレルアークの発生時においては、配線C11には、断続的にパルス電流が流れる。つまり、パラレルアークの発生時においては、配線C11に流れる電流の波形には、パラレルアークの発生に伴う固有のパターンが含まれる。したがって、検知部712は、例えば電流計測装置8が計測した配線C11を流れる電流の波形と、上記のパターンとを比較することにより、配線C11にパラレルアークが発生しているか否かを判定することが可能である。
シリーズアークは、例えば図3Bに示すように、配線C11を構成する一対の電線C10のうちの一方が半断線することにより発生し得る。図3Bにおける点線の矢印I2は、シリーズアークの発生時において配線C11を流れる電流の経路を模式的に表している。シリーズアークの発生時において配線C11を流れる電流の大きさは、数〔A〕〜十数〔A〕である。そのため、シリーズアークの発生時において配線C11を流れる電流の大きさは、異常の発生していない正常時において配線C11に接続される負荷(例えば、電気機器23,24)に流れる電流の大きさよりも小さくなることもある。シリーズアークは、例えば配線C11が繰り返し曲げられたり、配線C11が過度な力で引っ張られたりすることで生じ得る。
図4Bは、シリーズアークの発生時において配線C11を流れる電流の波形の一例を示す。図4Bに示すように、シリーズアークの発生時においては、配線C11には、負荷(例えば、電気機器23,24)に供給される電流に対して、シリーズアークに特有の高周波成分が重畳された電流が流れる。つまり、シリーズアークの発生時に配線C11を流れる電流は、図4Bに例示するようなシリーズアークに特有の高周波成分を含み得る。したがって、検知部712は、例えば電流計測装置8が計測した配線C11を流れる電流の高周波成分に基づいて、配線C11にシリーズアークが発生しているか否かを判定することが可能である。
ここにおいて、検知部712は、特定回路C1に関する1以上の物理量からなる監視対象に基づいて異常を検知する。すなわち、本実施形態では、上述したように、検知部712は、特定回路C1を流れる電流に基づいて、特定回路C1における配線C11の異常を検知している。特定回路C1を流れる電流は、特定回路C1に関する物理量であるので、本実施形態では、少なくとも特定回路C1を流れる電流が監視対象に含まれることになる。また、検知部712は、特定回路C1を流れる電流だけでなく、特定回路C1に関する1以上の物理量を監視対象として、監視対象に基づいて配線C11の異常を検知することが可能である。
特定回路C1を流れる電流以外に、監視対象となり得る物理量としては、例えば、電圧、温度、色、音、匂い又は変形等がある。すなわち、特定回路C1の配線C11において、上述したアーク(パラレルアーク又はシリーズアーク)のような異常が発生すると、特定回路C1に関する電流以外の物理量にも何かしらの特徴が現れることがある。一例として、この種の配線C11の異常が発生した特定回路C1においては、配線C11に印加される電圧の波形に、異常の発生に伴う固有のパターンが含まれることがある。また、この種の配線C11の異常が発生した特定回路C1においては、例えば、配線C11の発熱等に伴い、配線C11について、温度変化、色変化(変色)、音(振動音等)、匂い又は変形等に固有の特徴が含まれることがある。
そこで、検知部712は、例えば、温度センサ、イメージセンサ、匂いセンサ又はその他の物理量センサの出力を用いて、電流と共に又は電流に代えて、電流以外の物理量からなる監視対象に基づいて異常を検知してもよい。このように、検知部712で用いられる監視対象としての物理量は、電流だけでなく、例えば、電圧、温度、色、音、匂い又は変形等の電流以外の物理量も含み得る。
さらに、本実施形態では、検知部712は、上述したような監視対象が異常を表す状態が、ある検知時間にわたって継続した場合に、初めて配線C11の異常が発生していると判定する。つまり、特定回路C1を流れる電流等の監視対象が異常を表す状態が、検知時間に達する前に解消された場合には、検知部712は、配線C11の異常が発生したとは判定しない。これにより、検知部712では、例えば、ノイズ等の影響で監視対象が異常を表す状態が一瞬だけ生じた場合に、誤って配線C11の異常と判定しにくくなり、配線C11の異常の検知精度が向上する。
出力部713は、検知部712の検知結果及び推定部715の推定結果の少なくとも一方に応じた出力を行う。本実施形態では、出力部713は、検知部712の検知結果と推定部715の推定結果との両方に応じた出力を行う。すなわち、出力部713は、基本的には、検知部712の検知結果に応じた出力処理を実行することで、出力部713の出力には、検知部712の検知結果が反映される。一方で、後述する可変部714は、推定部715の推定結果に応じて、検知部712及び出力部713の少なくとも一方に関する対象項目を変化させる。これにより、推定部715の推定結果は、検知部712及び出力部713の少なくとも一方に関する対象項目に反映される。そのため、出力部713としては、検知部712の検知結果に応じた出力処理を実行するだけで、結果的に、出力部713は、検知部712の検知結果及び推定部715の推定結果との両方に応じた出力を行うことになる。
出力部713は、検知部712の検知結果の報知と、特定回路C1の制御との少なくとも一方を出力処理として実行する。本実施形態では、出力部713は、ユーザに対する検知部712の検知結果の報知と、特定回路C1の制御との両方を実行し得るように構成されている。このような出力処理により、出力部713は、検知部712の検知結果及び推定部715の推定結果の両方に応じた出力を行う。
具体的には、検知部712の検知結果を報知するに際して、出力部713は、検知部712の検知結果を情報端末400に送信することで、情報端末400から検知結果をユーザに提示する。ただし、報知の態様はこれに限らない。
例えば、出力部713は、監視ユニット7に備え付けの表示装置(例えば、液晶ディスプレイ等)、又は監視ユニット7に接続された表示装置に文字列及び/又は画像を表示することにより、視覚的に、検知結果をユーザに提示してもよい。また、出力部713は、例えば、監視ユニット7に備え付けのLED(Light Emitting Diode)等の固体発光素子を含む光源を点灯させることにより、視覚的に、検知結果をユーザに提示してもよい。また、出力部713は、例えば、監視ユニット7に備え付けのスピーカ、又は監視ユニット7に接続されたスピーカから音(音声及びアラーム音等を含む)を出力することにより、聴覚的に、検知結果をユーザに提示してもよい。その他にも、出力部713は、例えば、記憶部74への記録(書き込み)、及び印刷(プリントアウト)等の態様により、検知部712の検知結果に応じた出力を行ってもよい。
本実施形態では、出力部713は、少なくとも配線C11の異常の発生時に、異常の詳細を示す詳細情報を、検知結果に含めて提示する処理を実行する。詳細情報は、例えば、配線C11の異常の種別を示す種別情報、及び配線C11の異常の発生場所に関する場所情報を含み得る。ここでいう種別情報は、少なくともパラレルアーク及びシリーズアークの2つの種別を含む。ここでいう発生情報は、例えば、複数の特定回路C1のうちの異常が発生した特定回路C1を識別する情報を含む。
また、詳細情報は、特定回路C1に含まれる機器に関する機器情報、及び配線C11の異常の時間に関する時間情報を含み得る。ここでいう機器情報は、異常が発生した特定回路C1に含まれる機器(例えば、電気機器23,24)の種類及び台数等の情報を含む。ここでいう時間情報は、配線C11の異常の発生タイミング(時刻)と、配線C11の異常が発生してから終了するまでの継続時間と、を表す情報を含む。詳細情報に含まれる機器情報は、推定部715の推定結果であってもよい。
さらに、詳細情報は、検知部712と出力部713との少なくとも一方の動作履歴に関する履歴情報、及び特定回路C1を流れる電流の波形に関する電流情報を含み得る。ここでいう履歴情報は、検知部712が作動(異常を検知)した時刻、及び/又は出力部713が作動(検知結果を出力)した時刻の情報を含む。ここでいう電流情報は、配線C11の異常の発生時において特定回路C1を流れる電流の波形の情報を含む。
また、出力部713は、特定回路C1の制御に際しては、特定回路C1を制御するための制御信号を特定回路C1へ出力する。つまり、出力部713は、複数の特定回路C1の各々を制御することが可能である。本開示でいう「特定回路C1の制御」は、特定回路C1への電力供給の遮断及び復旧、特定回路C1を流れる電流の制限、並びに特定回路C1に含まれる電気機器23,24の制御等を含み得る。一例として、出力部713は、いずれかの特定回路C1に含まれる開閉器2に制御信号を出力することで、この開閉器2に内蔵されている接点を開極させ、この特定回路C1への電力供給を遮断することが可能である。また、出力部713は、いずれかの特定回路C1に含まれる電気機器23,24に対して、直接的に又はコントローラ25経由で、制御信号を出力することで、この電気機器23,24を制御することが可能である。
特定回路C1の制御に際しても、出力部713は、検知部712の検知結果に応じて特定回路C1の制御を行う。本実施形態では一例として、出力部713は、検知部712にて配線C11の異常が検知されると、異常が検知された配線C11を含む特定回路C1の開閉器2に、特定回路C1への電力供給を遮断させるための制御信号を出力する。ここで、配線C11にてアークが発生すると、アークの発生に起因して電気火災等が生じる可能性がある。そこで、本実施形態では、配線C11の異常を検知した場合に、特定回路C1への電力供給を遮断することで、電気火災の発生を未然に防ぐことが可能である。
ただし、本実施形態では、後述する可変部714が、推定部715の推定結果に応じて、検知部712及び出力部713の少なくとも一方に関する対象項目を変化させている。そのため、出力部713の出力は、検知部712の検知結果だけでなく、推定部715の推定結果にも応じて決まることになる。例えば、可変部714が、推定部715の推定結果に応じて検知部712に関する対象項目を変化させるとすれば、出力部713が報知する検知部712の検知結果は、推定部715の推定結果に応じて変化することになる。また、例えば、可変部714が、推定部715の推定結果に応じて出力部713に関する対象項目を変化させるとすれば、出力部713は、検知部712にて配線C11の異常が検知されても、推定部715の推定結果によっては制御信号を出力しないことがある。つまり、出力部713は、検知部712にて配線C11の異常が検知されると無条件に制御信号を出力して特定回路C1への電力供給を遮断するのではなく、推定部715の推定結果を加味して制御信号を出力するか否かを決定する。
推定部715は、特定回路C1に含まれる機器に関する機器情報を推定する。つまり、推定部715の推定結果は機器情報である。上述したように、本実施形態では、機器情報は、機器の種類と電力と電流と電圧との少なくとも1つに係る情報を含んでいる。つまり、機器情報は、特定回路C1に含まれる種々の機器(電気機器23,23又は配線器具等)についての種類、定格電力、定格電流又は定格電圧といった種々の情報を含んでいる。また、本実施形態では、機器情報は、機器の台数又は使用年数等の情報も更に含み得る。
本実施形態では、推定部715は、このような機器情報を、定期的に又は不定期で推定する。推定部715で推定された機器情報は、記憶部74に書き込まれる。そして、記憶部74に記憶された機器情報、つまり推定部715の推定結果は、随時、可変部714等で使用される。
ここで、検知部712及び推定部715は、いずれも特定回路C1の電流波形に基づいて動作する。すなわち、検知部712は、上述したように、アーク短絡保護遮断器と同様の原理で、配線C11で発生するアークに特有の電流特性及び電圧特性を認識し、配線C11で発生するアークを検知する。そのために、検知部712では、少なくとも特定回路C1の電流波形を用いて、配線C11の異常の検知を行っている。言い換えれば、検知部712は、特定回路C1の電流波形に基づいて動作している。これと同様に、推定部715においても、特定回路C1に含まれる各機器に固有の電流特性及び電圧特性を認識し、特定回路C1に含まれる機器に関する情報(機器情報)を推定する。そのために、推定部715では、少なくとも特定回路C1の電流波形を用いて、機器情報の推定を行っている。言い換えれば、推定部715は、特定回路C1の電流波形に基づいて動作している。
具体的には、検知部712及び推定部715の各々は、電流計測装置8が計測した電流値を随時取得することにより、特定回路C1の電流波形を取得する。一例として、検知部712及び推定部715の各々は、電流計測装置8が計測した電流値を所定のサンプリング周期でサンプリングすることで再現される、デジタル信号からなる電流波形に基づいて動作する。このため、検知部712では、複数の特定回路C1の各々に流れる電流に基づいて、個々の特定回路C1に含まれる配線C11の異常を検知することが可能である。また、推定部715では、複数の特定回路C1の各々に流れる電流に基づいて、個々の特定回路C1に含まれる機器に関する機器情報を推定することが可能である。
ところで、本実施形態では、推定部715は、特定回路C1ごとに機器情報を推定する。すなわち、本実施形態では、特定回路C1は複数ある。そして、これら複数の特定回路C1に関して、検知部712は、特定回路C1ごとに、配線C11における異常を検知する。そこで、推定部715についても、検知部712と同様に、特定回路C1ごとに、特定回路C1に含まれる機器に関する機器情報を推定する。そのため、一例として、推定部715は、ある特定回路C1については「熱源あり」との機器情報を推定し、別の特定回路C1については「熱源なし」との機器情報を推定するように、特定回路C1によって異なる機器情報を推定できる。
可変部714は、検知部712及び出力部713の少なくとも一方に関する対象項目を変化させる。上述したように、「対象項目」は、検知部712及び出力部713の少なくとも一方に関する種々のパラメータ、アルゴリズム、動作のタイミング又はコンテンツ等の項目である。
本実施形態では、可変部714は、少なくとも検知部712における異常の検知感度を対象項目として変化させる。つまり、可変部714によって変化させられる対象項目は、少なくとも、検知部712における異常の検知感度を含んでいる。そのため、可変部714が検知部712における異常の検知感度を変化させれば、例えば、特定回路C1を流れる電流にどのよう特徴が現れると配線C11の異常と判定するか、その判定基準を調整できる。よって、特定回路C1を流れる電流に同一の特徴が現れる場合であっても、検知部712に関する対象項目を変化させれば、検知部712に、配線C11の異常が発生していると判定させたり、配線C11の異常が発生していないと判定させたりすることができる。その結果、検知部712では、検知感度を高くして、異常時に誤って正常と判断する「失報」を低減したり、検知感度を低くして、正常時に誤って異常と判断する「誤報」を低減したりすることが可能である。
より詳細には、可変部714によって変化させられる対象項目としての検知感度は、特定回路C1における電流と電圧との少なくとも一方の大きさに係るパラメータを含んでいる。ここでいう、電流と電圧との少なくとも一方の大きさに係るパラメータは、例えば、検知部712にて配線C11の異常を判定するために電流及び/又は電圧の大きさについて設定される閾値、さらには電流及び/又は電圧の波形における振幅等である。本実施形態では、上述したように、検知部712は、特定回路C1を流れる電流に基づいて、特定回路C1における配線C11の異常を検知している。そのため、例えば、特定回路C1を流れる電流の大きさに係るパラメータ(閾値又は振幅等)が、可変部714によって変化させられることにより、検知部712での異常の検知感度が変化する。一例として、パラレルアークを検知するための電流の閾値が小さくなるほどパラレルアークは検知されやすくなるので、検知部712における異常の検知感度が高くなる。反対に、パラレルアークを検知するための電流の閾値が大きくなるほどパラレルアークは検知されにくくなるので、検知部712における異常の検知感度が低くなる。
また、可変部714によって変化させられる対象項目としての検知感度は、検知部712での異常の検知のための時間に係るパラメータを更に含んでいる。ここでいう、異常の検知のための時間に係るパラメータは、例えば、検知部712にて配線C11の異常を判定するために要する検知時間、さらには配線C11の異常の発生を検知する時間帯等である。本実施形態では、上述したように、検知部712は、監視対象が異常を表す状態が、ある検知時間にわたって継続した場合に、初めて配線C11の異常と判定する。そのため、例えば、異常の判定に要する検知時間の長さが、可変部714によって変化させられることにより、検知部712での異常の検知感度が変化する。一例として、検知時間が短くなるほど配線C11の異常は検知されやすくなるので、検知部712における異常の検知感度が高くなる。反対に、検知時間が長くなるほど配線C11の異常は検知されにくくなるので、検知部712における異常の検知感度が低くなる。一例として、検知時間が、0(ゼロ)秒、10秒、1分、5分といった複数段階の時間から選択可能である場合、検知時間が0秒である場合に検知部712における異常の検知感度が最も高く、10秒、1分、5分の順に異常の検知感度が低くなる。
また、上述したように、本実施形態では、検知部712は、特定回路C1に関する1以上の物理量からなる監視対象に基づいて異常を検知する。そこで、可変部714によって変化させられる対象項目としての検知感度は、監視対象の種類に係るパラメータを含んでいてもよい。すなわち、監視対象となり得る物理量としては、上述したように、特定回路C1を流れる電流以外に、例えば、電圧、温度、色、音、匂い又は変形等がある。そこで、可変部714は、対象項目としての検知感度として、これら電流、電圧、温度、色、音、匂い又は変形等の複数種類の物理量の中から、異常を検知するための監視対象として用いる物理量の種類を変化させる。一例として、可変部714は、監視対象の種類に係るパラメータを変化させることで、検知部712で用いられる監視対象としての物理量が、電流のみである状態と、電流に加えて温度等を含む状態と、を切り替える。
さらに、本実施形態では、可変部714は、少なくとも出力部713の出力態様を対象項目として変化させる。つまり、可変部714によって変化させられる対象項目は、少なくとも、出力部713の出力態様を含んでいる。そのため、可変部714が出力部713の出力態様を変化させれば、例えば、配線C11の異常と判定された場合に、何をどのように出力するか、を調整できる。よって、配線C11に異常が同様に発生した場合であっても、出力部713に関する対象項目を変化させれば、出力部713に、異常を即座に報知させたり、一定時間経過後に異常を報知させたりすることができる。
より詳細には、可変部714によって変化させられる対象項目としての出力態様は、出力部713による出力処理の内容を含んでいる。ここでいう、出力部713による出力処理の内容は、例えば、検知部712の検知結果の報知と特定回路C1の制御との別、さらには検知結果を伝えるために表示する文字列及び又は画像等の内容等である。本実施形態では、上述したように、出力部713は、検知部712の検知結果の報知と、特定回路C1の制御との両方を、出力処理として実行可能である。そのため、例えば、出力処理の内容が、可変部714によって変化させられることにより、出力部713が、検知部712の検知結果の報知と、特定回路C1の制御とのいずれを出力処理として実行するかが変化する。一例として、検知部712の検知結果の報知が出力処理の内容として選択されていれば、配線C11の異常の発生時に、出力部713は、異常を報知する。一方、特定回路C1の制御が出力処理の内容として選択されていれば、配線C11の異常の発生時に、出力部713は、特定回路C1の制御を行う。
また、可変部714によって変化させられる対象項目としての出力態様は、出力部713による出力処理のタイミングを更に含んでいる。ここでいう、出力処理のタイミングは、例えば、検知部712での異常の検知タイミングを基準として、検知部712の検知結果の報知及び/又は特定回路C1の制御といった出力処理を実行するタイミングを意味する。本実施形態では、上述したように、出力部713は、検知部712の検知結果の報知と、特定回路C1の制御との両方を、出力処理として実行可能である。そのため、例えば、出力処理のタイミングが、可変部714によって変化させられることにより、出力部713が、検知部712の検知結果の報知及び/又は特定回路C1の制御を実行するタイミングが変化する。一例として、出力処理のタイミングが早くなれば、配線C11の異常の発生時点から、異常の報知及び/又は特定回路C1の制御が実行されるまでの時間が短くなる。反対に、出力処理のタイミングが遅くなれば、配線C11の異常の発生時点から、異常の報知及び/又は特定回路C1の制御が実行されるまでの時間が長くなる。
また、可変部714は、可変部714に入力される入力情報に応じて、対象項目を変化させる。すなわち、可変部714に入力情報が入力されることで、この入力情報に応じて、可変部714にて対象項目が変化する。本開示でいう「入力情報」は、可変部714にて、対象項目をどのように変化させるかを決定する情報であって、例えば、下記のような情報を含み得る。入力情報には、以下に列挙する全ての情報が含まれていてもよいし、全ての情報が含まれていなくてもよい。つまり、入力情報には、以下に列挙する複数の情報のうち1以上の情報が含まれていればよい。
入力情報は、特定回路C1に含まれる機器に関する機器情報を少なくとも含んでいる。上述したように、本実施形態では、機器情報は、機器の種類と電力と電流と電圧との少なくとも1つに係る情報を含んでいる。つまり、入力情報は、特定回路C1に含まれる種々の機器(電気機器23,23又は配線器具等)についての種類、定格電力、定格電流又は定格電圧といった種々の機器情報を含んでいる。また、本実施形態では、機器情報は、機器の台数又は使用年数等の情報も更に含み得る。すなわち、対象項目をどのように変化させるかを決定するための入力情報には、これらの機器に関する情報(機器情報)が含まれることで、可変部714は、特定回路C1に含まれる機器に応じて、自動的に対象項目を変化させることができる。一例として、特定回路C1に含まれる機器が熱源であると、可変部714では、検知部712における異常の検知感度が高くなるように、対象項目としての検知感度を変化させることが可能である。
ここにおいて、入力情報としての機器情報は、推定部715にて推定される。つまり、入力情報としての機器情報は推定部715の推定結果である。言い換えれば、可変部714は、推定部715の推定結果に応じて、検知部712及び出力部713の少なくとも一方に関する対象項目を変化させることになる。
また、入力情報は、後述する操作受付部75が受け付けた操作信号に関する情報を含み得る。本開示でいう「操作信号」は、操作受付部75にて受け付けられる、ユーザの操作に応じた信号である。すなわち、対象項目をどのように変化させるかを決定するための入力情報には、ユーザの操作に応じた操作信号に関する情報が含まれ得る。操作信号に関する情報(以下、「操作情報」ともいう)が入力情報に含まれることで、可変部714は、ユーザの操作に応じて、対象項目を手動で変化させることができる。一例として、ユーザが特定の操作を行うことで、可変部714では、検知部712における異常の検知感度が高くなるように、対象項目としての検知感度を変化させることが可能である。
ここにおいて、ユーザが操作により入力可能な情報には、施設500の建物に関する情報が含まれていることが好ましい。すなわち、アーク等の配線C11の異常が生じる確率は、施設500の建物の築年数、構造(例えば木造又は鉄筋コンクリート)又は仕様(例えば戸建、集合住宅、2階建て又は3階建て)等によって変化し得る。そこで、施設500の建物の築年数、構造又は仕様等に応じて、可変部714にて対象項目を変化させることで、配線C11の異常の検知精度の向上を図ることができる。一例として、施設500の建物の築年数が基準年数(例えば5年)を超える場合、可変部714では、検知部712における異常の検知感度が高くなるように、対象項目としての検知感度を変化させる。また、施設500の建物の構造が木造であれば場合、可変部714では、鉄筋コンクリートの場合に比較して、検知部712における異常の検知感度が高くなるように、対象項目としての検知感度を変化させる。これらの施設500の建物に関する情報をユーザが入力するための具体的な手段としては、例えば、情報端末400に表示される設定画面上で、施設500の建物に関する種々の情報を入力(選択を含む)すればよい。
また、入力情報は、検知部712とは別のセンサの検知結果に関する情報を含み得る。本開示でいう「センサ」は、検知部712以外の種々のセンサを含み、一例として、感震ブレーカ5内の感震センサ51、人感センサ又は明るさセンサ等のセンサである。すなわち、対象項目をどのように変化させるかを決定するための入力情報には、これらのセンサの検知結果に関する情報が含まれ得る。センサの検知結果に関する情報(以下、「センサ情報」ともいう)が入力情報に含まれることで、可変部714は、センサで検知し得る様々な状況に応じて、自動的に対象項目を変化させることができる。一例として、明るさセンサにて検知される照度が所定の基準値(例えば夕方の照度)を下回ると、可変部714では、検知部712における異常の検知感度が高くなるように、対象項目としての検知感度を変化させることが可能である。
特に、入力情報は、感震センサ51の検知結果に関する情報を含むことが好ましい。すなわち、アーク等の配線C11の異常は、地震が原因で生じることがある。そこで、地震の発生を検知する感震センサ51の検知結果に連動するように、可変部714にて対象項目を変化させることで、配線C11の異常の検知精度の向上を図ることができる。一例として、感震センサ51が所定の基準値(例えば震度「5」の地震動)を超える大きさの振動を検出すると、可変部714では、検知部712における異常の検知感度が高くなるように、対象項目としての検知感度を変化させる。また、地震の発生から一定期間(例えば1週間)のみ限定的に、可変部714は、検知部712における異常の検知感度が高くなるように、対象項目としての検知感度を変化させてもよい。さらに、施設500の建物に蓄積された地震によるダメージに応じて、可変部714は、対象項目を変化させてもよい。一例として、感震センサ51が検出した振動のエネルギーを累積し、可変部714では、この累積値が大きくなるほどに検知部712における異常の検知感度が高くなるように、対象項目としての検知感度を変化させることが好ましい。
また、入力情報は、検知部712及び出力部713の少なくとも一方の動作履歴に関する情報を含み得る。本開示でいう「動作履歴」は、検知部712が作動(異常を検知)した時刻、及び/又は出力部713が作動(検知結果を出力)した時刻の情報を含む。すなわち、対象項目をどのように変化させるかを決定するための入力情報には、これらの動作履歴に関する情報が含まれ得る。動作履歴に関する情報(以下、「履歴情報」ともいう)が入力情報に含まれることで、可変部714は、検知部712及び/又は出力部713の動作履歴に応じて、自動的に対象項目を変化させることができる。一例として、所定期間(例えば、直前の1ヵ月間)に、検知部712が規定回数を超えて作動(異常を検知)している場合、可変部714では、検知部712における異常の検知感度が低くなるように、対象項目としての検知感度を変化させることが可能である。また、履歴情報には、誤検知か否かの情報が含まれてもよい。この場合において、例えば、検知部712が規定回数を超えて誤検知を行うと、可変部714では、検知部712における異常の検知感度が低くなるように、対象項目としての検知感度を変化させることが好ましい。
ところで、本実施形態では、可変部714は、特定回路C1ごとに対象項目を変化させる。すなわち、本実施形態では、検知部712での異常の検知対象となる配線C11を含む特定回路C1は複数ある。そして、これら複数の特定回路C1に関して、検知部712は、特定回路C1ごとに、配線C11における異常を検知する。そこで、可変部714についても、検知部712と同様に、特定回路C1ごとに対象項目を変化させる。そのため、一例として、可変部714は、ある特定回路C1については異常の検知感度が高くなるように、別の特定回路C1については異常の検知感度が低くなるように、対象項目としての検知部712における検知感度を変化させることが可能である。
通信部72は、施設500に設置されたコントローラ25等との間で通信を行う。上述したように、コントローラ25は、HEMS対応機器の制御又は監視を行う。つまり、コントローラ25は、監視ユニット7と通信を行うことによって、複数の分岐ブレーカ4に接続された複数の負荷(電気機器23,24等)の各々での瞬時電力や電力量を取得することができ、HEMS対応機器を制御又は監視することができる。
また、通信部72は、電流計測装置8とも通信可能に構成されている。さらに、既に述べたように、通信部72は、例えば、電流計測装置8の基板の導電層の一部を用いて、各開閉器2の通信部201との間で通信を行う。つまり、通信部72は、コントローラ25との通信機能に加えて、電流計測装置8及び開閉器2との通信機能を有している。通信部72は、例えば、コントローラ25との通信用と、電流計測装置8及び開閉器2との通信用とで、個別の通信モジュールを有していてもよい。
通知部73は、既に延べたように、ネットワーク200を介して、管理サーバ300及び情報端末400と通信する通信機能を有している。通知部73は、例えば、出力部713から出力される、検知部712の検知結果を、ユーザの有する情報端末400に送信する。これにより、検知部712の検知結果を受信した情報端末400では、検知結果をユーザに対して通知(報知)可能となる。一例として、通知部73は、検知部712にて配線C11の異常が検知されると、検知結果を含む信号を、情報端末400へ送信する。ユーザは、情報端末400を操作して、例えばメールを閲覧したり、情報端末400にインストールされている監視システム100用のアプリケーションを起動したりすることにより、検知部712の検知結果を知ることができる。
記憶部74は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の電気的に書き換え可能な不揮発性メモリ、又はRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリ等を備える。記憶部74は、少なくとも「対象項目」を記憶している。対象項目は、上述したように、検知部712及び出力部713の少なくとも一方に関する種々のパラメータ、アルゴリズム、動作のタイミング又はコンテンツ等の項目である。つまり、本実施形態においては、可変部714は、記憶部74に記憶されている対象項目を、変化させることになる。さらに、本実施形態では、記憶部74は、検知部712での検知結果を記憶する機能を有している。
操作受付部75は、ユーザの操作に応じた操作信号を受け付ける。すなわち、監視システム100は、ユーザの操作を受け付けることが可能である。操作受付部75は、一例として、監視ユニット7に設けられている、又は監視ユニット7に接続されている、メカニカルスイッチ、タッチパネルディスプレイ、キーボード、ポインティングデバイス又は音声入力等の入力デバイスから、操作信号を受け付ける。あるいは、操作受付部75は、例えば、情報端末400で発生する操作信号を受け付ける構成であってもよい。操作受付部75が受け付けた操作信号に関する情報は、上述したように、可変部714に入力される入力情報に含まれ得る。
(3)動作
以下、本実施形態に係る監視システム100の動作について図5を参照して説明する。図5は、監視システム100の動作、つまり監視システム100を用いた監視方法の一例を示すフローチャートである。
以下では、可変部714が、検知部712及び出力部713のそれぞれに関する対象項目を変化させる場合について説明する。特に、可変部714によって変化させられる検知部712に関する対象項目は、検知部712における異常の検知感度を含み、可変部714によって変化させられる出力部713に関する対象項目は、出力部713の出力態様を含むことと仮定する。
監視システム100は、まず、推定部715にて特定回路C1に含まれる機器に関する機器情報を推定する(S0)。このとき、推定部715は、上述したように、少なくとも特定回路C1の電流波形を用いて、機器情報の推定を行う。それから、監視システム100は、可変部714にて入力情報を取得する(S1)。入力情報は、上述したように、操作情報、センサ情報、機器情報及び履歴情報のうちの少なくとも1つの情報を含み得る。特に、本実施形態では、入力情報は少なくとも機器情報を含んでいる。機器情報は、推定部715の推定結果であるので、処理S1では、可変部714は、処理S0での推定部715の推定結果(機器情報)を、記憶部74から取得することになる。また、他の例として、入力情報が、操作信号に関する操作情報を含んでいる場合には、処理S1では、可変部714は、ユーザの操作に応じた操作信号を受け付ける操作受付部75から、入力情報を取得することになる。
次に、監視システム100は、可変部714にて、入力情報の解析を行い、検知部712に関する対象項目としての、検知部712における異常の検知感度について、変更の有無を判断する(S2)。検知感度の変更があれば(S2:Yes)、可変部714は、入力情報に応じて、検知部712における異常の検知感度を変化させ(S3)、変化後の検知感度を記憶部74に書き込む(S4)。
具体的には、例えば、特定回路C1に熱源が含まれている場合には、可変部714は、「熱源あり」との機器情報を入力情報として取得する。この場合、処理S3では、可変部714は、入力情報、つまり「熱源あり」との機器情報に応じて、検知部712における異常の検知感度が高くなるように、対象項目としての検知感度を変化させる。このとき、一例として、可変部714では、パラレルアークを検知するための電流の閾値を小さくすることで、検知部712における異常の検知感度を高くする。そして、処理S4では、可変部714は、対象項目として記憶部74に予め記憶されている検知感度を、変化後の検知感度に書き換える(更新する)。
その後、監視システム100は、可変部714にて、入力情報の解析を行い、出力部713に関する対象項目としての、出力部713の出力態様について、変更の有無を判断する(S5)。出力態様の変更があれば(S5:Yes)、可変部714は、入力情報に応じて、出力部713の出力態様を変化させ(S6)、変化後の出力態様を記憶部74に書き込む(S7)。
具体的には、例えば、ユーザが特定の操作を行うことで、処理S6では、可変部714は、出力部713による出力処理の内容を変更するように、対象項目としての出力態様を変化させる。このとき、一例として、可変部714では、出力処理の内容を、検知部712の検知結果の報知から、特定回路C1の制御に切り替えることで、出力部713による出力処理の内容を特定回路C1の制御に変更する。そして、処理S7では、可変部714は、対象項目として記憶部74に予め記憶されている出力態様を、変化後の出力態様に書き換える(更新する)。
その後、監視システム100は、検知部712にて、記憶部74から検知感度を読み出して(S8)、この検知感度を用いて、特定回路C1における配線C11の異常を検知する検知処理を実行する(S9)。つまり、可変部714にて検知感度が変化させられた場合には、記憶部74には、変化後の検知感度が記憶されているので、検知部712は、記憶部74から検知感度を読み出すことで、変化後の検知感度を用いて、検知処理を実行することができる。その後、検知部712では、特定回路C1における配線C11の異常の有無を判断する(S10)。具体的には、例えば、特定回路C1における配線C11にてシリーズアークが発生すると、検知部712は、電流計測装置8が計測した配線C11を流れる電流の高周波成分に基づいて、異常(シリーズアーク)の発生を検知することができる。
そして、異常があれば(S10:Yes)、監視システム100は、出力部713にて、記憶部74から出力態様を読み出して(S11)、この出力態様を用いて、検知処理の検知結果に応じた出力を行う出力処理を実行する(S12)。つまり、可変部714にて出力態様が変化させられた場合には、記憶部74には、変化後の出力態様が記憶されているので、出力部713は、記憶部74から出力態様を読み出すことで、変化後の出力態様を用いて、出力処理を実行することができる。
具体的には、例えば、出力態様として特定回路C1の制御が設定されている場合、処理S12では、出力部713は、特定回路C1を制御するための制御信号を特定回路C1へ出力する。一例として、出力部713は、異常が検知された配線C11を含む特定回路C1の開閉器2に、特定回路C1への電力供給を遮断させるための制御信号を出力する。これにより、異常が検知された配線C11を含む特定回路C1においては、開閉器2に内蔵されている接点を開極させ、この特定回路C1への電力供給を遮断することが可能である。
また、処理S2において、検知感度の変更がなければ(S2:No)、監視システム100は、処理S3,S4をスキップして、処理S5に移行する。処理S5において、出力態様の変更がなければ(S5:No)、監視システム100は、処理S6,S7をスキップして、処理S8に移行する。処理S10において、異常がなければ(S10:No)、監視システム100は、処理S11,S12をスキップして、一連の処理を終了する。
上述したような一連の処理S0〜S12によれば、検知部712は、推定部715の推定結果に応じて変化させた検知感度を用いて、異常の検知を行うことになる。すなわち、上述したように、本実施形態では、可変部714は、少なくとも検知部712における異常の検知感度を対象項目として変化させている。また、可変部714にて対象項目をどのように変化させるかを決定するための入力情報には、少なくとも推定部715での推定結果である機器情報が含まれている。そのため、可変部714は、推定部715の推定結果(機器情報)に応じて、対象項目としての検知感度を変化させることになる。そして、本実施形態では、まず推定部715にて機器情報を推定し(S0)、その推定結果(機器情報)を用いて可変部714にて検知感度を変化させた後で(S3)、検知部712が、変化後の検知感度を用いて検知処理を実行する(S9)。したがって、検知処理において、検知部712は、予め推定部715の推定結果に応じて変化させられた検知感度を用いて、異常の検知を行うことになる。
監視システム100は、上述した一連の処理S0〜S12を繰り返し実行する。図5のフローチャートは、監視システム100の動作の一例に過ぎず、処理を適宜省略又は追加してもよいし、処理の順番が適宜変更されていてもよい。例えば、検知感度を変化させるための処理S2〜S4と、出力態様を変化させるための処理S5〜S7とは、その順番が逆であってもよい。
また、監視システム100は、上述した処理S0〜S12を、特定回路C1ごとに行うことで、検知部712では、特定回路C1ごとに、配線C11における異常を検知することが可能である。さらに、可変部714では、特定回路C1ごとに対象項目を変化させることが可能である。同様に、推定部715では、特定回路C1ごとに機器情報を推定することが可能である。
(4)変形例
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。本開示において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、実施形態1に係る監視システム100と同様の機能は、監視方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
一態様に係る監視方法は、検知処理(図5の「S9」に相当)と、推定処理(図5の「S0」に相当)と、出力処理(図5の「S12」に相当)と、を有する。検知処理は、特定回路C1における配線C11の異常を検知する処理である。推定処理は、特定回路C1に含まれる機器に関する機器情報を推定する処理である。出力処理は、検知処理の検知結果及び推定処理の推定結果の少なくとも一方に応じた出力を行う処理である。一態様に係るプログラムは、上記の監視方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
本開示における監視システム100は、例えば、情報処理部71等にコンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における監視システム100としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
また、監視システム100の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていることは監視システム100に必須の構成ではなく、監視システム100の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。例えば、可変部714は、検知部712及び出力部713とは別の筐体に設けられていてもよい。また、可変部714等の機能は、例えば、サーバ等の、監視ユニット7とは別の装置に設けられていてもよい。さらに、監視システム100の少なくとも一部の機能、例えば、可変部714等の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
反対に、実施形態1において、複数の装置に分散されている少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。
また、出力部713は、検知部712の検知結果及び推定部715の推定結果の少なくとも一方に応じた出力を行っていればよく、検知部712の検知結果及び推定部715の推定結果の一方のみに応じた出力を行ってもよい。例えば、検知部712の検知結果のみに応じた出力を行う場合、出力部713は、検知部712の検知結果の報知と、検知部712の検知結果に応じた特定回路C1の制御との少なくとも一方を出力処理として実行すればよい。例えば、推定部715の推定結果のみに応じた出力を行う場合、出力部713は、推定部715の推定結果の報知と、推定部715の推定結果に応じた特定回路C1の制御との少なくとも一方を出力処理として実行すればよい。
さらに、出力部713が、検知部712の検知結果及び推定部715の推定結果の両方に応じた出力を行う場合において、検知部712の検知結果と、推定部715の推定結果とが、出力部713の出力に個別に反映されてもよい。つまり、出力部713は、検知部712の検知結果に応じた出力と、推定部715の推定結果に応じた出力とを個別に行ってもよい。この場合、例えば、出力部713は、検知部712の検知結果の報知と、推定部715の推定結果の報知との両方を出力処理として実行する。あるいは、出力部713は、検知部712の検知結果に応じた特定回路C1の制御と、推定部715の推定結果の報知との両方を出力処理として実行する。このように、出力部713が推定部715の推定結果に応じた出力を個別に行う場合においては、推定部715の推定結果を種々の用途に利用できる。すなわち、推定部715の推定結果を用いれば、例えば、複数の特定回路C1の中から熱源が含まれている特定回路C1を特定したり、特定回路C1に含まれる機器の寿命又はメンテナンス時期等を推定したりすることが可能である。このように、推定部715の推定結果は、検知部712の検知結果とは切り離してそれ単独でも有効利用される。
また、出力部713は、推定部715の推定結果を外部システム600に送信してもよい。外部システム600は、一例として、クラウド、又はコントローラ25等である。具体的には、出力部713は、通信部72を介してコントローラ25(外部システム600)に推定結果を送信してもよい。また、出力部713は、通知部73及びネットワーク200を介して、クラウドに推定結果を送信してもよい。この態様では、外部システム600は、例えば推定結果をビッグデータとして収集することで、特定回路C1に含まれる機器の寿命又はメンテナンス時期等を推定すること等が可能である。
また、監視システム100は、例えば、感震ブレーカ5と連携することにより、ある条件を満たす機器が含まれている特定回路C1のみを、感震ブレーカ5での遮断対象とすることも可能である。一例として、推定部715の推定結果によれば、熱源としての機器が含まれている特定回路C1を遮断対象として特定することが可能である。そこで、感震ブレーカ5は、地震等によって分電盤用キャビネット10に基準値を超える大きさの振動が加わった際に、このような遮断対象(熱源としての機器が含まれている特定回路C1)についてのみ、電力供給を遮断することができる。
また、出力部713は、検知部712の検知結果を外部システム600に送信してもよい。具体的には、出力部713は、通信部72を介してコントローラ25(外部システム600)に検知結果を送信してもよい。また、出力部713は、通知部73及びネットワーク200を介して、クラウドに検知結果を送信してもよい。この態様では、外部システム600は、例えば検知結果をビッグデータとして収集することで、配線C11の異常の発生の傾向、又は異常に対する措置等を研究するのに役立てることが可能である。
また、監視ユニット7は、通知部73を備えていなくてもよい。つまり、監視システム100は、インターネット等のネットワーク200を介して管理サーバ300及び情報端末400と通信する通信機能を有していなくてもよい。この態様では、ユーザに対する検知結果の報知は、分電盤1にて行われることになる。
また、各開閉器2は、検知部712としての機能を有していてもよい。この態様では、監視ユニット7は、検知部712の代わりに、各開閉器2での検知結果を収集する機能を有していればよい。つまり、監視ユニット7は、各開閉器2から収集した各検知部712の検知結果に応じて、出力部713を動作させるか否かを決定すればよい。
また、出力部713は、異常の発生時に、配線C11の異常から復旧するための手順を含む復旧情報を出力してもよい。一例として、出力部713は、いずれかの配線C11でアークが発生した場合、電気工事事業者への連絡先及び電気工事事業者への連絡を促す旨を復旧情報として提示してもよい。ここでいう「連絡先」は、例えば、電話番号、メールアドレス、又は電気工事事業者がホームページを開設している場合にはホームページのURL(Uniform Resource Locator)を含み得る。
また、検知部712は、例えば機械学習された分類器を用いて、配線C11の異常を検知する態様であってもよい。分類器は、特定回路C1ごとに、電流計測装置8で計測された電流を入力データとして、配線C11の異常の有無を出力する。分類器は、監視システム100の使用中において、再学習を実行可能であってもよい。
同様に、推定部715は、例えば機械学習された分類器を用いて、特定回路C1に含まれる機器に関する機器情報を推定する態様であってもよい。分類器は、特定回路C1ごとに、電流計測装置8で計測された電流を入力データとして、機器情報の推定結果を出力する。分類器は、監視システム100の使用中において、再学習を実行可能であってもよい。
分類器は、例えばSVM(Support Vector Machine)等の線形分類器の他、ニューラルネットワークを用いた分類器、又は多層ニューラルネットワークを用いた深層学習(ディープラーニング)により生成される分類器を含み得る。分類器が学習済みのニューラルネットワークを用いた分類器である場合、学習済みのニューラルネットワークは、例えばCNN(Convolutional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)、又はBNN(Bayesian Neural Network:ベイズニューラルネットワーク)等を含み得る。この場合、検知部712又は推定部715は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路に、学習済みのニューラルネットワークを実装することで実現される。
また、電流計測装置8はロゴスキコイルを有する態様に限定されず、例えば、変流器(カレントトランス)、ホール素子、GMR(Giant Magnetic Resistances)素子等の磁気抵抗素子、シャント抵抗等のセンサを有する態様でもよい。
また、実施形態1では、監視ユニット7の外部にバックアップ電源9が設けられているが、この構成に限らず、監視ユニット7にバックアップ電源9が内蔵されていてもよい。
また、実施形態1では、可変部714は、検知部712に関する対象項目(少なくとも検知感度)と、出力部713に関する対象項目(少なくとも出力態様)との、両方を変化させる機能を有するが、この構成に限らない。つまり、可変部714は、検知部712に関する対象項目(少なくとも検知感度)と、出力部713に関する対象項目(少なくとも出力態様)との、いずれか一方のみを変化させてもよい。例えば、可変部714が、検知部712に関する対象項目と、出力部713に関する対象項目とのうちの、検知部712に関する対象項目のみを変化させる場合、出力部713に関する対象項目は不変(固定)となる。
(実施形態2)
本実施形態に係る監視システム100Aは、図6に示すように、推定部715が管理サーバ300に設けられている点で、実施形態1に係る監視システム100とは相違する。以下、実施形態1と同様の構成については共通の符号を付して適宜説明を省略する。
図6では、監視システム100Aの要部のみを図示しており、監視ユニット7(図1参照)のうちの特に説明を要しない構成要素(通信部72、通知部73、記憶部74及び操作受付部75等)の図示を適宜省略している。また、監視システム100A以外の構成についても、図6では、1つの特定回路C1及び電流計測装置8以外の図示を適宜省略している。
すなわち、本実施形態では、監視システム100Aの構成要素は、施設500内に配置される監視ユニット7の情報処理部71と、施設500外に配置される管理サーバ300とに分散して設けられている。監視ユニット7の情報処理部71は、計測部711、検知部712、出力部713及び可変部714に加えて、波形処理部716を更に有している。
ここで、実施形態1と同様に、検知部712及び推定部715は、いずれも特定回路C1の電流波形、つまり特定回路C1を流れる電流I10の波形データに基づいて動作する。ただし、本実施形態では、検知部712での検知に用いられる電流波形D1は、推定部715での推定に用いられる電流波形D2に比べて情報量が多くなるように、2種類の電流波形D1,D2が使用されている。これにより、施設500内の検知部712で用いられる電流波形D1の情報量に比較して、施設500外の推定部715に送信される電流波形D2の情報量を低減でき、監視ユニット7と管理サーバ300との間の通信トラフィックを低減することができる。
本実施形態では、このような2種類の電流波形D1,D2を、波形処理部716を用いて生成する。すなわち、波形処理部716は、検知部712での検知に用いられる電流波形D1から、推定部715での推定に用いられる電流波形D2を生成する。ここで、波形処理部716は、電流波形D1を入力とし、入力された電流波形D1に対して適宜データを間引く間引き処理を行うことで、情報量が低減された電流波形D2を生成する。具体的には、波形処理部716は、サンプリングレートを変換することにより、電流波形D1から、サンプリング周波数を低くした(サンプリング周期を長くした)電流波形D2を生成する。つまり、本実施形態では、波形処理部716は、電流波形D1に対してダウンサンプリングを行うことで、情報量が低減された電流波形D2を生成する。
また、本実施形態では、2種類の電流波形D1,D2のうち、サンプリング周波数が相対的に高い(つまり情報量が相対的に多い)電流波形D1を、計測部711での計測に用いている。つまり、波形処理部716から出力される電流波形D2は、推定部715での推定のみに用いられている。
波形処理部716から出力される電流波形D2は、インターネット等のネットワーク200(図1参照)を介して管理サーバ300に送信される。そして、管理サーバ300内の推定部715は、電流波形D2を用いて機器情報の推定を行う。このとき、推定部715は、管理サーバ300内に構築されているデータベースを参照して、機器情報の推定を行ってもよいし、管理サーバ300外にあるデータベースを参照して、機器情報の推定を行ってもよい。
推定部715の推定結果(機器情報)は、インターネット等のネットワーク200を介して管理サーバ300から監視ユニット7に送信される。監視ユニット7は、受信した推定部715の推定結果(機器情報)を、例えば、情報処理部71の可変部714に入力情報として入力する。
また、実施形態2の変形例として、推定部715は、施設500外に配置される管理サーバ300以外のシステムに設けられていてもよい。一例として、施設500外に配置されるクラウド(クラウドコンピューティング)又は情報端末400等のシステムに、推定部715が設けられていてもよい。
また、実施形態2の他の変形例として、波形処理部716から出力される電流波形D2は、推定部715での推定以外に用いられてもよい。すなわち、波形処理部716にて、検知部712での検知に用いられる電流波形D1から生成された電流波形D2は、例えば、計測部711での電力の計測に用いられてもよい。
実施形態2で説明した種々の構成(変形例を含む)は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る監視システム(100,100A)は、検知部(712)と、推定部(715)と、出力部(713)と、を備える。検知部(712)は、特定回路(C1)における配線(C11)の異常を検知する。推定部(715)は、特定回路(C1)に含まれる機器(コンセント22、電気機器23,24)に関する機器情報を推定する。出力部(713)は、検知部(712)の検知結果及び推定部(715)の推定結果の少なくとも一方に応じた出力を行う。
この態様によれば、特定回路(C1)における配線(C11)の異常を検知する検知部(712)に加えて、特定回路(C1)に含まれる機器に関する機器情報を推定する推定部(715)が設けられている。つまり、監視システム(100,100A)では、例えば、パラレルアーク又はシリーズアーク等の配線(C11)の異常を検知するだけでなく、特定回路(C1)に含まれる機器の種類等の機器情報を推定まで行うことができる。したがって、監視システム(100,100A)によれば、単に過電流又は漏電といった予め決められた異常を検出するだけの構成に比較して、より多様な監視が可能になる。
第2の態様に係る監視システム(100,100A)は、第1の態様において、可変部(714)を更に備える。可変部(714)は、推定部(715)の推定結果に応じて、検知部(712)及び出力部(713)の少なくとも一方に関する対象項目を変化させる。
この態様によれば、対象項目が可変であることで、例えば、どのような場合に配線(C11)の異常と判定するか、また、配線(C11)の異常の発生時にどのような出力を行うか、を変化させることができる。つまり、検知部(712)及び出力部(713)の少なくとも一方に関する対象項目を変化させることで、例えば、アーク等の配線(C11)の異常を検知するに際して、異常の判定の仕方、及び/又は、異常発生時の出力の仕方を、調整できる。したがって、監視システム(100,100A)によれば、配線(C11)の異常の監視について柔軟性を持たせることができる。結果的に、単純な過電流又は漏電等のみでなく、パラレルアーク又はシリーズアーク等の異常を含め、必要に応じて、より多様な異常の検知が可能となる。しかも、可変部(714)は、推定部(715)の推定結果に応じて、対象項目を変化させるので、特定回路(C1)に含まれる機器に応じて、自動的に対象項目を変化させることができる。
第3の態様に係る監視システム(100,100A)では、第2の態様において、可変部(714)は、少なくとも検知部(712)における異常の検知感度を対象項目として変化させる。
この態様によれば、検知部(712)における異常の検知感度を変化させることができるので、例えば、検知感度を高くして失報を低減したり、検知感度を低くして誤報を低減したりすることが可能である。
第4の態様に係る監視システム(100,100A)では、第3の態様において、検知部(712)は、推定部(715)の推定結果に応じて変化させた検知感度を用いて、異常の検知を行う。
この態様によれば、推定部(715)の推定結果が反映された検知感度を用いて異常の検知が行われるため、検知部(712)の検知結果には、推定部(715)の推定結果が間接的に反映される。
第5の態様に係る監視システム(100,100A)では、第2〜4のいずれかの態様において、可変部(714)は、少なくとも出力部(713)の出力態様を対象項目として変化させる。
この態様によれば、出力部(713)の出力態様を変化させることができるので、例えば、配線(C11)の異常の発生時に、多様な措置をとることが可能となる。
第6の態様に係る監視システム(100,100A)では、第1〜5のいずれかの態様において、機器情報は、機器の種類と電力と電流と電圧との少なくとも1つに係る情報を含む。
この態様によれば、機器の種類と電力と電流と電圧との少なくとも1つに係る情報を推定部(715)で推定できる。
第7の態様に係る監視システム(100,100A)では、第1〜6のいずれかの態様において、検知部(712)及び推定部(715)は、いずれも特定回路(C1)の電流波形(D1,D2)に基づいて動作する。
この態様によれば、検知部(712)及び推定部(715)の動作に必要な処理の少なくとも一部の共用化を図りやすい。
第8の態様に係る監視システム(100,100A)では、第7の態様において、検知部(712)での検知に用いられる電流波形(D1)は、推定部(715)での推定に用いられる電流波形(D2)に比べて情報量が多い。
この態様によれば、検知部(712)での異常の検知の精度を保ちつつ、推定部(715)での推定に必要な電流波形(D2)に係るリソースを低減することができる。
第9の態様に係る監視システム(100,100A)は、第8の態様において、波形処理部(716)を更に備える。波形処理部(716)は、検知部(712)での検知に用いられる電流波形(D1)から、推定部(715)での推定に用いられる電流波形(D2)を生成する。
この態様によれば、検知部(712)での検知に用いられる電流波形(D1)と、推定部(715)での推定に用いられる電流波形(D2)とを得るための、少なくとも一部の構成を共用化することができる。
第10の態様に係る監視システム(100,100A)では、第1〜9のいずれかの態様において、出力部(713)は、検知部(712)の検知結果の報知と、特定回路(C1)の制御との少なくとも一方を出力処理として実行する。
この態様によれば、例えば、配線(C11)の異常の発生時に、検知部(712)の検知結果の報知、及び/又は特定回路(C1)の制御を行うことができる。
第11の態様に係る監視システム(100,100A)では、第1〜10のいずれかの態様において、出力部(713)は、推定部(715)の推定結果を外部システム(600)に送信する。
この態様によれば、推定部(715)の推定結果を外部システム(600)でも利用可能となる。
第12の態様に係る監視システム(100,100A)では、第1〜11のいずれかの態様において、特定回路(C1)は複数ある。推定部(715)は、特定回路(C1)ごとに機器情報を推定する。
この態様によれば、特定回路(C1)ごとに機器情報を推定することで、より多様な監視が可能となる。
第13の態様に係る監視方法は、検知処理と、推定処理と、出力処理と、を有する。検知処理は、特定回路(C1)における配線(C11)の異常を検知する処理である。推定処理は、特定回路(C1)に含まれる機器(コンセント22、電気機器23,24)に関する機器情報を推定する処理である。出力処理は、検知処理の検知結果及び推定処理の推定結果の少なくとも一方に応じた出力を行う処理である。
この態様によれば、特定回路(C1)における配線(C11)の異常を検知する検知処理に加えて、特定回路(C1)に含まれる機器に関する機器情報を推定する推定処理が設けられている。つまり、上記監視方法では、例えば、パラレルアーク又はシリーズアーク等の配線(C11)の異常を検知するだけでなく、特定回路(C1)に含まれる機器の種類等の機器情報を推定まで行うことができる。したがって、上記監視方法によれば、単に過電流又は漏電といった予め決められた異常を検出するだけの構成に比較して、より多様な監視が可能になる。
第14の態様に係るプログラムは、第13の態様に係る監視方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
この態様によれば、特定回路(C1)における配線(C11)の異常を検知する検知処理に加えて、特定回路(C1)に含まれる機器に関する機器情報を推定する推定処理が設けられている。つまり、上記プログラムでは、例えば、パラレルアーク又はシリーズアーク等の配線(C11)の異常を検知するだけでなく、特定回路(C1)に含まれる機器の種類等の機器情報を推定まで行うことができる。したがって、上記プログラムによれば、単に過電流又は漏電といった予め決められた異常を検出するだけの構成に比較して、より多様な監視が可能になる。
第15の態様に係る分電盤(1)は、第1〜12のいずれかの態様に係る監視システム(100,100A)と、監視システム(100,100A)を収容する分電盤用キャビネット(10)と、を備える。
この態様によれば、特定回路(C1)における配線(C11)の異常を検知する検知部(712)に加えて、特定回路(C1)に含まれる機器に関する機器情報を推定する推定部(715)が設けられている。つまり、分電盤(1)では、例えば、パラレルアーク又はシリーズアーク等の配線(C11)の異常を検知するだけでなく、特定回路(C1)に含まれる機器の種類等の機器情報を推定まで行うことができる。したがって、分電盤(1)によれば、単に過電流又は漏電といった予め決められた異常を検出するだけの構成に比較して、より多様な監視が可能になる。
上記態様に限らず、実施形態1及び実施形態2に係る監視システム(100,100A)の種々の構成(変形例を含む)は、上記監視方法又はプログラムにて具現化可能である。
第2〜12の態様に係る構成については、監視システム(100,100A)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。