JP2020193233A - 水性液剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤において、保存剤を配合することなく、少なくとも静菌作用が認められる水準以上の保存効力を備えさせる製剤技術を提供することである。【解決手段】ブリモニジン及び/又はその塩と、エデト酸及び/又はその塩と、緩衝剤とを含む水性液剤は、保存剤を実質的に含まなくても、少なくとも静菌作用が認められる水準の保存効力を備え得る。【選択図】なし

Description

本発明は、ブリモニジン及び/又はその塩を含み、少なくとも静菌作用が認められる水準以上の保存効力を備えた水性液剤に関する。
点眼液や洗眼液等の水性液剤には、微生物の繁殖を防止するために、通常、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン等の保存剤が配合されている。しかしながら、保存剤は、細菌の繁殖を防止できる一方、刺激性や細胞毒性を示すことがあることが知られている(非特許文献1参照)。
従来、保存剤を含まない水性液剤において保存時の細菌の繁殖を防止するために、一旦外側に浸出した水性液剤の容器内への逆流を防止する機構、及び/又は異物(微生物等の)の容器内への侵入を防止する機構を有するマルチドーズ型容器(以下、「マルチドーズ型保存剤フリー容器」と表記することがある)に収容して使用されている(例えば、特許文献1〜4等参照)。
一方、ブリモニジン及びその塩は、アドレナリンα2受容体作動薬として知られており、眼房水産生抑制と共にぶどう膜強膜流出路を介した眼房水の流出を促進することによって、眼圧を低下させる作用があり、従来、緑内障や高眼圧症の治療に使用されている。
日本の眼科、第58巻、第10号、945〜950頁、1987年
特開2016−132465号公報 特開2005−343549号公報 特開2004−51170号公報 特開2002−80055号公報
本発明の目的は、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤に関する製剤技術を提供することである。
本発明者は、ブリモニジン及び/又はその塩と、エデト酸及び/又はその塩と、緩衝剤とを含む水性液剤は、保存剤を実質的に含まなくても、少なくとも静菌作用が認められる水準以上の保存効力を備え得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. ブリモニジン及び/又はその塩と、エデト酸及び/又はその塩と、緩衝剤とを含み、保存剤を実質的に含まない、水性液剤。
項2. 緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、及びトリス緩衝剤よりなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の水性液剤。
項3. エデト酸及び/又はその塩の濃度が0.005〜0.5w/v%である、項1又
は2に記載の水性液剤。
項4. ブリモニジン及び/又はその塩の濃度が0.05〜0.2w/v%である、項1〜3のいずれかに記載の水性液剤。
項5. pHが6〜8である、項1〜4のいずれかに記載の水性液剤。
項6. 点眼液である、項1〜5のいずれかに記載の水性液剤。
項7. 一旦外側に浸出した水性液剤の容器内への逆流を防止する機構、及び/又は異物の容器内への混入を防止する機構を有するマルチドーズ型容器に収容されている、項1〜6のいずれかに記載の水性液剤。
項8. ブリモニジン及び/又はその塩がブリモニジン酒石酸塩であり、
ブリモニジン及び/又はその塩の濃度が0.05〜0.2w/v%であり、
緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、及びトリス緩衝剤よりなる群から選択される少なくとも1種であり、
エデト酸及び/又はその塩がエデト酸ナトリウム二水和物であり、
エデト酸及び/又はその塩の濃度が0.005〜0.5w/v%であり、
pHが6〜8であり、且つ
一旦外側に浸出した水性液剤の容器内への逆流を防止する機構、及び/又は異物の容器内への混入を防止する機構を有するマルチドーズ型容器に収容されている、水性液剤。
項9. ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤に保存効力を付与する方法であって、
保存剤を実質的に含まず、ブリモニジン及び/又はその塩と、エデト酸及び/又はその塩と、緩衝剤を含む水性液剤を調製する工程を含む、
保存効力の付与方法。
項10. 緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、及びトリス緩衝剤よりなる群から選択される少なくとも1種である、項9に記載の付与方法。
項11. 水性液剤におけるエデト酸及び/又はその塩の濃度が0.005〜0.5w/v%である、項9又は10に記載の付与方法。
項12. ブリモニジン及び/又はその塩の濃度が0.05〜0.2w/v%である、項9〜11のいずれかに記載の付与方法。
項13. 水性液剤のpHが6〜8である、項9〜12のいずれかに記載の付与方法。
項14. 水性液剤が点眼液である、項9〜13のいずれかに記載の付与方法。
項15. 水性液剤が一旦外側に浸出した水性液剤の容器内への逆流を防止する機構、及び/又は異物の容器内への混入を防止する機構を有するマルチドーズ型容器に収容されている、項9〜14のいずれかに記載の付与方法。
項16. 水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の濃度が0.05〜0.2w/v%であり、
緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、及びトリス緩衝剤よりなる群から選択される少なくとも1種であり、
エデト酸及び/又はその塩がエデト酸ナトリウム二水和物であり、
水性液剤におけるエデト酸及び/又はその塩の濃度が0.005〜0.5w/v%であり、
水性液剤のpHが6〜8であり、且つ
更に、調製した水性液剤を、一旦外側に浸出した水性液剤の容器内への逆流を防止する機構、及び/又は異物の容器内への混入を防止する機構を有するマルチドーズ型容器に収容する工程を含む、保存効力の付与方法。
項17. ブリモニジン及び/又はその塩と、エデト酸及び/又はその塩と、緩衝剤とを含み、保存剤を実質的に含まない、水性液剤が、
一旦外側に浸出した水性液剤の容器内への逆流を防止する機構、及び/又は異物の容器内への混入を防止する機構を有するマルチドーズ型容器に収容されている、
ことを特徴とする、医薬製品。
本発明の水性液剤によれば、ブリモニジン及び/又はその塩と、エデト酸及び/又はその塩との相乗作用によって、保存剤を実質的に含んでいなくても、少なくとも静菌作用が認められる水準以上の保存効力を備えることができる。そのため、本発明の水性液剤は、マルチドーズ型保存剤フリー容器に収容して使用しても、ノズルの外側表面での液残りによって生じ得る微生物汚染を防ぐことができ、点眼操作等によって投与される水性液剤の安全性をより高度に確保することができる。
1.定義
本明細書において、「水性液剤」とは、水を基剤として含み液状を呈する製剤である。
本明細書において、「ブリモニジン」とは、アドレナリンα2受容体作動薬として公知の化合物であり、5−ブロモ−N−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)キノキサリン−6−アミンを指す。
本明細書において、「エデト酸」とは、別名エチレンジアミン四酢酸とも称される公知の化合物である。
本明細書において、「緩衝剤」とは、水性液剤の水素イオン濃度(pH)の変動を和らげる作用を持つ化合物又は混合物のことを指す。
本明細書において、「保存剤」とは、保存効力を有する成分であって、点眼剤で許容される濃度で該当の成分のみを含む水溶液にした場合、当該水溶液が第十七改正日本薬局方参考情報「保存効力試験法」においてカテゴリー「IA」で定められた判定基準に基づいて「適合」と判断されるものを指す。但し、本発明において、保存剤には、ホウ酸緩衝剤は包含されない。
本明細書において、「保存剤を実質的に含まない」とは、保存剤の濃度が、保存剤のみでは保存効力を発揮し得ない濃度であることを指し、具体的には、保存剤のみを含む水溶液にした場合、当該水溶液が第十七改正日本薬局方 参考情報「保存効力試験法」においてカテゴリー「IC」で定められた基準に基づいて「適合」となる保存剤の最小濃度よりも少ないことを指す。
本明細書において、「マルチドーズ型容器」とは、複数回分の使用量の水性液剤が充填され、繰返し使用される容器を指す。マルチドーズ型容器には、一旦外側に浸出した水性液剤の容器内への逆流を防止する機構又は異物の容器内への混入を防止する機構を有するマルチドーズ型容器(即ち、マルチドーズ型保存剤フリー容器)と、当該機構を有していないマルチドーズ型容器がある。マルチドーズ型保存剤フリー容器は、一旦外側に浸出した水性液剤の容器内への逆流を防止する機構又は異物の容器内への混入を防止する機構として、通常、逆流防止弁、マイクロフィルター、特殊な二重構造ボトル等の構造を有している(例えば、特許文献1〜4)。
本明細書において、「ユニットドーズ型容器」とは、単回分の使用量の水性液剤が充填され、1回の点眼で使い終わる容器を指す。
本明細書において、「医薬製品」とは、水性液剤が任意の容器に収容されている状態にある製品を指す。
本明細書において、「保存効力を付与する方法」とは、第十七改正日本薬局方 参考情
報「保存効力試験法」においてカテゴリー「IC」で定められた基準に基づいて「適合」とならない水性液剤に、同試験においてカテゴリー「IC」で定められた基準に基づいて「適合」となる水性液剤にする方法を意味する。また、「IC」で定められた基準に基づいて「適合」と判断された効力のことを「日局IC適合保存効力」と表記することがある。
本明細書において、「静菌作用」とは、第十七改正日本薬局方 参考情報「保存効力試験法」に基づく試験において、細菌又は真菌の生菌数を減少させないが、少なくとも増加もさせない程度の作用である。また、「少なくとも静菌作用が認められる水準以上の保存効力を備える」とは、前記の「IC」で定められた基準に基づいて「適合」と判断されることと同義である。
2.水性液剤
従来、マルチドーズ型保存剤フリー容器には該当しない通常のマルチドーズ型容器に収容する点眼液については、第十七改正日本薬局方 参考情報「保存効力試験法」においてカテゴリー「IA」で定められた判定基準に基づいて「適合」とされる保存効力を有していることが必要とされているが、マルチドーズ型保存剤フリー容器に収容する点眼液では、同判定基準を満たす保存効力は必要とされていない。しかしながら、水性液剤をマルチドーズ型保存剤フリー容器に収容して頻回使用すると、ノズルの外側表面に水性液剤が付着したまま残存することがある。ノズルの外側表面に残存した水性液剤は、微生物に汚染される場合があり、このような状態で頻回使用すると、点眼操作等によって投与される水性液剤の無菌状態を確保できなくなる。そのため、マルチドーズ型保存剤フリー容器に収容する水性製剤では、保存剤を配合していなくても、少なくとも静菌作用が認められる水準以上の保存効力を有していることが望ましい。
しかしながら、従来、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤において、保存剤を配合することなく保存効力を高める製剤技術については報告されておらず、従来技術では、マルチドーズ型保存剤フリー容器に収容した際にノズルの外側表面に水性液剤が残存することによって生じる微生物汚染の懸念を払拭できていない。
これに対して、本発明者は、ブリモニジン及び/又はその塩と、エデト酸及び/又はその塩と、緩衝剤とを含み、保存剤を実質的に含まない水性液剤は、ブリモニジン及び/又はその塩と、エデト酸及び/又はその塩との相乗作用により保存効力が向上し、保存剤を使用しなくても、第十七改正日本薬局方 参考情報「保存効力試験法」においてカテゴリー「IC」で定められた判定基準に基づいて「適合」とされる保存効力を有することを見出した。
1つの態様において、本発明は、ブリモニジン及び/又はその塩と、エデト酸及び/又はその塩と、緩衝剤とを含み、保存剤を実質的に含まない、水性液剤を提供する。
本発明で使用されるブリモニジンの塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、具体的には、酒石酸塩、酢酸塩等の有機酸塩;塩酸塩等の無機酸塩等が挙げられる。また、ブリモニジン又はその塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。ブリモニジン又はその塩の中でも、好ましくはブリモニジン酒石酸塩が挙げられる。
本発明の水性液剤において、ブリモニジン又はその塩のいずれか一方を単独で使用してもよく、またこれらを組み合わせて使用してもよい。
本発明の水性液剤において、ブリモニジン又はその塩の濃度は、特に制限されず、水性液剤の用途、適用対象となる患者の症状の程度、1回当たりの適用量等に応じて適宜設定
すればよいが、例えば0.05〜0.2w/v%、好ましくは0.1〜0.2w/v%、特に好ましくは0.1w/v%が挙げられる。本明細書において、ブリモニジン又はその塩の濃度は、ブリモニジン酒石酸塩に換算された濃度である。
本発明で使用されるエデト酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、エデト酸一ナトリウム、エデト酸二ナトリウム(EDTA)、エデト酸四ナトリウム等のエデト酸ナトリウム塩が挙げられる。また、エデト酸の塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。また、エデト酸又はその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。エデト酸又はその塩の中でも、より一層優れた保存効力を備えさせるという観点から、好ましくはエデト酸ナトリウム二水和物が挙げられる。
本発明の水性液剤において、エデト酸又はその塩のいずれか一方を単独で使用してもよく、またこれらを組み合わせて使用してもよい。
本発明の水性液剤において、エデト酸又はその塩の濃度としては、より一層優れた保存効力を備えさせるという観点から、通常0.001〜0.5w/v%、好ましくは0.005〜0.05w/v%、更に好ましくは0.003〜0.02w/v%、特に好ましくは0.005〜0.01w/v%が挙げられる。本明細書において、エデト酸又はその塩の濃度は、エデト酸二ナトリウム二水和物に換算された濃度である。
本発明で使用される緩衝剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、アミノ酸緩衝剤等が挙げられる。
ホウ酸緩衝剤としては、具体的には、ホウ酸及び/又はその塩が挙げられる。ホウ酸としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸、テトラホウ酸等が挙げられる。これらのホウ酸の中でも、好ましくはオルトホウ酸及びテトラホウ酸が挙げられる。これらのホウ酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ホウ酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として、特に制限されないが、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩;トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン等の有機アミン塩等が挙げられる。また、ホウ酸/又はその塩は、ホウ砂等のように、水和物の形態であってもよい。
ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸及びその塩の中から、1種を選択して単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。ホウ酸及びその塩の中でも、より優れた保存効力を備えさせるという観点から、好ましくはホウ酸及びホウ砂の少なくとも1種、更に好ましくはオルトホウ酸及びホウ砂の少なくとも1種が挙げられる。
また、ホウ酸緩衝剤の好適な一態様として、ホウ酸とホウ砂を組み合わせが挙げられる。このようにホウ酸とホウ砂を組み合わせて使用することによって、より一層優れた保存効力を備えさせることが可能になる。ホウ酸とホウ砂を組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、ホウ酸100質量部当たり、ホウ砂が0〜100質量部、好ましく20〜80質量部、更に好ましくは40〜60質量部が挙げられる。
ホウ酸緩衝剤の使用量については、緩衝作用の観点から、ホウ酸又はその塩の濃度として、通常0.1〜2w/v%、更に好ましくは0.5〜1.5w/v%、更に好ましくは0.7〜1.0w/v%、特に好ましくは0.4〜0.6w/v%が挙げられる。本明細書において、ホウ酸又はその塩の濃度は、ホウ酸に換算された濃度である。
リン酸緩衝剤としては、具体的には、リン酸及び/又はその塩が挙げられる。リン酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム等のリン酸水素二アルカリ金属塩;リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等のリン酸二水素アルカリ金属塩;リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム等のリン酸三アルカリ金属塩等が挙げられる。また、リン酸の塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよく、例えば、リン酸水素二ナトリウムの場合であれば十二水和物の形態、リン酸二水素ナトリウムの場合であれば二水和物の形態等であってもよい。
リン酸緩衝剤として、リン酸及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。リン酸及びその塩の中でも、より優れた保存効力を備えさせるという観点から、好ましくはリン酸塩、更に好ましくはリン酸水素二アルカリ金属塩及びリン酸二水素アルカリ金属塩の少なくとも1種、特に好ましくはリン酸水素二ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウムの少なくとも1種が挙げられる。
また、リン酸緩衝剤の好適な一態様として、リン酸水素二アルカリ金属塩とリン酸二水素アルカリ金属塩を組み合わせが挙げられる。このようにリン酸水素二アルカリ金属塩とリン酸二水素アルカリ金属塩を組み合わせて使用することによって、より一層優れた保存効力を備えさせることが可能になる。リン酸水素二アルカリ金属塩とリン酸二水素アルカリ金属塩を組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、リン酸水素二アルカリ金属塩100質量部当たり、リン酸二水素アルカリ金属塩が1〜120質量部、好ましく5〜80質量部、更に好ましくは10〜40質量部が挙げられる。
リン酸緩衝剤の使用量については、緩衝作用の観点から、リン酸又はその塩の濃度が、通常0.1〜5w/v%、好ましくは1〜3w/v%、更に好ましくは1.5〜2.0w/v%が挙げられる。本明細書において、リン酸緩衝剤の濃度は、リン酸に換算された濃度である。
トリス緩衝剤としては、具体的には、トロメタモール及び/又はその塩が挙げられる。トロメタモールの塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、酢酸塩等の有機酸塩;塩酸塩、スルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。
トリス酸緩衝剤として、トロメタモール及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。トロメタモール及びその塩の中でも、より優れた保存効力を備えさせるという観点から、好ましくはトロメタモールが挙げられる。
トリス緩衝剤の使用量については、緩衝作用の観点から、通常0.1〜2w/v%、好ましくは0.3〜1.75w/v%、更に好ましくは0.5〜1.5w/v%が挙げられる。本明細書において、トリス緩衝剤の濃度は、トロメタモールに換算された濃度である。
クエン酸緩衝剤としては、具体的には、クエン酸及び/又はその塩が挙げられる。クエン酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、クエン酸の塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。クエン酸緩衝剤として、クエン酸及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
酒石酸緩衝剤としては、具体的には、酒石酸及び/又はその塩が挙げられる。酒石酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、酒石酸の塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。酒石酸緩衝剤として、酒石酸及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
酢酸緩衝剤としては、具体的には、酢酸及び/又はその塩が挙げられる。酢酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩等が挙げられる。また、酢酸の塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。酢酸緩衝剤として、酢酸及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
アミノ酸緩衝剤としては、具体的には、酸性アミノ酸及び/又はそれらの塩が挙げられる。酸性アミノ酸としては、具体的には、アスパラギン酸、グルタミン酸が挙げられる。酸性アミノ酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。アミノ酸緩衝剤として、酸性アミノ酸及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの緩衝剤の中でも、より一層優れた保存効力を備えさせるという観点から、好ましくはホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤が挙げられる。
本発明の水性液剤では、保存剤を実質的に含まないが、保存剤のみを含む水溶液にした場合に、当該水溶液が第十七改正日本薬局方 参考情報「保存効力試験法」においてカテゴリー「IC」で定められた基準に基づいて「適合」となる保存剤の最小濃度よりも少ない程度の量の保存剤を含んでいてもよい。
保存剤としては、具体的には、亜塩素酸ナトリウム等の亜塩素酸塩;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の第四級アンモニウム塩;ソルビン酸、ソルビン酸カリウム等のソルビン酸及びその塩;メチルパラベン、パラオキシ安息香酸プロピル等のパラオキシ安息香酸エステル;安息香酸及びその塩;クロルクレゾール、フェネチルアルコール、塩化ポリドロニウム、チメロサール、クロロブタノール、クロルヘキシジン、ポリヘキサニド等が該当する。
本発明の水性液剤において許容される保存剤の濃度については、保存の種類等に応じて異なるが、具体的には、0.001w/v%未満、好ましくは0.0005w/v%以下、更に好ましくは0.0001w/v%以下、特に好ましくは0w/v%が挙げられる。
本発明の水性液剤では、ブリモニジン及び/又はその塩と、エデト酸及び/又はその塩と、緩衝剤とを含むことによって、少なくとも静菌作用が認められる水準以上の保存効力を備えることが可能になっている。そのため、本発明の水性液剤では、前記成分以外に、ブリモニジン及び/又はその塩との共存下で保存効力を向上させる成分については、実質的に含んでなくてもよい。
例えば、ドルゾラミド及び/又はその塩は、pHが6.0以上の水性液剤においてブリモニジン及び/又はその塩と共存すると、保存効力を向上させ得ることが知られているので、本発明の水性液剤の一態様として、ドルゾラミド及び/又はその塩を実質的に含まないことが挙げられる。ドルゾラミドの塩としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩;酢酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸との塩;アルカリ金属との塩、アルカリ土類金属との塩、有機アミンとの塩、ハロゲン化物等が該当する。また、「ドルゾラミド及び/又はその塩を実質的に含まない」とは、具体的には、ドルゾラミド及び/又はその塩の濃度が、0.1w/v%未満、好ましくは0.05w/v%以下、更に好ましくは0.01w/v%以下、特に好ましくは0w/v%が挙げられる。
本発明の水性液剤には、前記成分の他に、必要に応じて、等張化剤、多価アルコール、界面活性剤、粘稠剤、キレート剤(エデト酸及びその塩以外)、清涼化剤、安定化剤、pH調整剤等の添加剤を含有してもよい。
等張化剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール;塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等の金属塩等が挙げられる。これらの等張化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
多価アルコールとしては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
界面活性剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、チロキサポール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オクトキシノール等の非イオン性界面活性剤;アルキルジアミノエチルグリシン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤;アルキル硫酸塩、N−アシルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等の陰イオン界面活性剤;アルキルピリジニウム塩、アルキルアミン塩等の陽イオン界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
粘稠剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等の水溶性高分子;ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース類等が挙げられる。これらの粘稠剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
キレート剤(エデト酸及びその塩以外)としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、クエン酸、コハク酸、アスコルビン酸、トリヒドロキシメチルアミノメタン、ニトリロトリ酢酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸、これら塩等が挙げられる。塩の形態としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。これらのキレート剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
清涼化剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、l−メントール、ボルネオール、カンフル、ユーカリ油等が挙げられる。これらの清涼化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
安定化剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリビニルピロリドン、亜硫酸塩、モノエタノールアミン、シクロデキストリン、デキストラン、アスコルビン酸、タウリン、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。これらの安定化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
pH調整剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、塩酸、酢酸、ホウ酸、アミノエチルスルホン酸、イプシロン−アミノカプロン酸等の酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリが挙げられる。これらのpH調整剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの添加剤の濃度は、使用する添加剤の種類や水性液剤に付与すべき特性等に応じて適宜設定すればよい。
更に、本発明の水性液剤には、ブリモニジン及び/又はその塩以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、緑内障や高眼圧症に対して治療効果を示す薬理成分が含まれていてもよい。
このような薬理成分としては、例えば、タフルプロスト、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン等のプロスタグランジン類;ピロカルピン塩酸塩等の副交感神経刺激薬;ジスチグミン臭化物等の抗コリンエステラーゼ薬;ジピベフリン塩酸塩等の交感神経刺激薬;ベタキソロール塩酸塩等のβ1遮断薬;チモロールマレイン酸塩等のβ遮断薬;ニプラジロール、レボブノロール塩酸塩等のα1・β遮断薬;ブナゾシン塩酸塩等のα1遮断薬等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの薬理成分の濃度は、使用する薬理成分の種類や付与すべき薬効等に応じて適宜設定すればよい。
本発明の水性液剤のpHについては、特に制限されないが、例えば、pH6〜8が挙げられる。本発明の水性液剤のpHとして、より一層優れた保存効力を備えさせるという観点から、好ましくはpH7〜8、更に好ましくはpH7が挙げられる。
本発明の水性液剤の浸透圧比については、特に制限されないが、例えば、0.5〜4、好ましくは0.7〜1.3、更に好ましくは0.9〜1.1が挙げられる。当該浸透圧比は、0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧に対する比率であり、浸透圧は第十七改正日本薬局方に規定されている「浸透圧法(オスモル濃度測定法)」に準じて測定される。
本発明の水性液剤は、前述する成分を含むことにより、少なくとも静菌作用が認められる水準以上の保存効力を有することが可能になっている。本発明の水性製剤が有する保存効力として、具体的には、第十七改正日本薬局方 参考情報「保存効力試験法」においてカテゴリー「IC」で定められた基準に基づいて「適合」と判断されるものである。日局IC適合保存効力は、第十七改正日本薬局方 参考情報「保存効力試験法」に準拠した試験方法で判定でき、具体的な試験方法は後述する試験例の欄に示す通りである。
本発明の水性液剤の製剤形態については、特に制限されず、水溶液状、懸濁液状、乳液状等のいずれであってもよいが、好ましくは水溶液状が挙げられる。
本発明の水性液剤は、点眼液、洗眼液等の眼科用製剤等として使用することができる。特に、本発明の水性液剤は、ブリモニジン及び/又はその塩の作用によって、眼房水の産生を抑制して、眼圧を低下させることができるので、点眼液として提供され、緑内障又は高眼圧症の治療するための水性液剤として好適に使用できる。
本発明の水性液剤は、その用途に応じて、公知の調製法に従って製造すればよく、例えば、第十七改正日本薬局方 製剤総則に記載された方法を用いて製造することができる。
本発明の水性液剤を収容する容器については、当該水性製剤の用途に応じて、点眼容器、洗眼容器等を使用すればよい。
本発明の水性液剤は、マルチドーズ型容器であってもよく、ユニットドーズ型容器であってもよい。
また、マルチドーズ型容器の場合、保存中に収容されている水性液剤の無菌状態を維持するために、マルチドーズ型保存剤フリー容器を使用することが特に好ましい。保存剤を含まない従来の水性液剤では、マルチドーズ型保存剤フリー容器を使用しても、ノズルの外側表面に残存した水性液剤の微生物汚染が懸念されるが、本発明の水性液剤では、少なくとも静菌作用が認められる水準以上の保存効力を備えているので、マルチドーズ型保存剤フリー容器のノズルの外側表面に残存しても、前記微生物汚染を抑制することができる。
3.保存効力の付与方法
本発明は、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤に保存効力を付与する方法であって、水性液剤において、保存剤を実質的に含まず、ブリモニジン及び/又はその塩と、エデト酸及び/又はその塩と、緩衝剤とを含む水性液剤を調製する工程を含むことを特徴とする、保存効力の付与方法を提供する。
本発明の保存効力の付与方法によれば、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤に日局IC適合保存効力を付与することが可能になる。
本発明の保存効力の付与方法において、使用するブリモニジン及び/又はその塩の種類や濃度、エデト酸及び/又はその塩の種類や濃度、緩衝剤の種類や濃度、水性液剤に配合される他の添加剤や薬理成分の種類、水性液剤のpH、製剤形態、用途等については、前記「1.水性液剤」の欄に記載の通りである。
以下に、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、以下の試験例において、ホウ酸は、全てオルトホウ酸を使用した。
試験例1:保存効力の評価
第十七改正日本薬局方 参考情報「保存効力試験法」に準拠して、表1に示す組成の点眼液の保存効力の評価を行った。具体的な試験方法等は以下に示す通りである。
1.試験材料及び試験方法
1−1.検体の調製
表1〜3に示す組成の水性液剤(点眼液)を調製し、0.22μmフィルターでろ過したものを検体とした。なお、実施例1のホウ酸及びホウ砂の総量は、ホウ酸に換算した量として0.72g(濃度として0.72w/v%)であり、実施例2のリン酸水素二ナトリウム水和物及びリン酸二水素ナトリウムの総量は、リン酸に換算した量として1.8g(濃度として1.8w/v%)である。
1−2.試験菌
以下に示す3種の細菌及び2種の真菌を使用した。
(細菌)
・黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、S.aureus / ATCC 6538)
・大腸菌(Escherichia coli、E.coli / ATCC 8739)
・緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa、P.aeruginosa / ATCC 9027)
(真菌)
・カンジタ菌(Candida albicans、C.albicans / ATCC 10231)
・黒麹かび(Aspergillus brasiliensis、A.brasiliensis / ATCC 16404)
1−3.前培養
前記試験菌をそれぞれカンテン斜面培地の表面に接種して前培養した。前培養用のカンテン培地としては、細菌の場合はソイビーン・カゼイン・ダイジェストカンテン培地を、真菌の場合はサブロー・ブドウ糖カンテン培地を用いた。前培養は、細菌の場合は30〜35℃で18〜24時間、カンジタ菌は20〜25℃で44〜52時間、黒麹かびは20〜25℃で6〜10日間培養した。
1−4.混合試料の調製及び菌数測定
前記検体を10mLずつ5本の滅菌済みの共栓付試験管に分注し、前培養した各試験菌を1×105〜1×106CFU/mLとなるよう接種し、これらを混合試料とした。混合試料を20〜25℃、遮光保存した。なお、各試験菌は混合せず、菌種毎にそれぞれ単独に検体に接種して混合試料を調製した。
試験開始時、並びに試験開始から7、14、及び28日目に、各混合試料から1mLをサンプリングし、その液を生理食塩水9mLで希釈した。必要に応じ、さらに同様の希釈を2〜3回行い、各希釈液1mLを滅菌シャーレに分注した。次に、細菌の場合は0.1%レシチン及び0.7%ポリソルベート80を添加したソイビーン・カゼイン・ダイジェストカンテン培地を、真菌の場合は0.1%レシチン及び0.7%ポリソルベート80を添加したサブロー・ブドウ糖カンテン培地を加えて混釈した。そして、細菌の場合は30〜35℃で3〜5日間、真菌の場合は20〜25℃で5〜7日間培養した後に、生成コロニー数を測定し、混合試料1mL当たりの生菌数(cfu/mL)及び生菌数の対数減少値(log)を算出した。
Figure 2020193233
1−5.保存効力の判定
各試験液の保存効力を、第十七改正日本薬局方 参考情報「保存効力試験法」の「4.判定」の「表3 製剤区分別判定基準」に記載されたカテゴリー1Cの基準に従って評価した。具体的には、(1)3種全ての細菌において、対数減少値(log)が14日後に接種菌数に比べ1.0log以上、且つ28日後の生菌数が14日後から増加せず、且つ(2)2種全ての真菌において、14日後及び28日後の生菌数が接種菌数から増加しない、を全て満たした場合を「適合」と判定し、それ以外を「不適合」と判定した。
2.試験結果
得られた結果を表1〜3に示す。ブリモニジン酒石酸塩及びエデト酸ナトリウム二水和物を含まず、且つホウ酸緩衝剤(ホウ酸及びホウ砂)を含む水性液剤(参考例1)では、日局IC適合保存効力を有していたが、ホウ酸緩衝剤と共にブリモニジン酒石酸塩又はエデト酸ナトリウム二水和物を配合した水性液剤では(比較例1及び2)では、保存効力が低下し、日局IC適合保存効力を具備できていなかった。これに対して、ホウ酸緩衝剤と共に、ブリモニジン酒石酸塩及びエデト酸ナトリウム二水和物を配合した水性液剤(実施例1)では、保存効力が向上し、日局IC適合保存効力を有していた。また、リン酸緩衝剤及びトリス緩衝剤を使用した場合であっても、ブリモニジン酒石酸塩及びエデト酸ナトリウム二水和物を配合した水性液剤では、保存効力が向上し、日局IC適合保存効力を具備できていた。
Figure 2020193233
Figure 2020193233
Figure 2020193233
試験例2:熱安定性の評価
表5に示す組成の水性液剤(点眼液)を調製した。0.22μmフィルターでろ過した後に、各水性液剤5mLを5mL容の無色ガラスアンプルに充填した。これらを卓上恒温恒湿器(NST-80、ナガノサイエンス株式会社)に入れ、遮光条件下、60℃で4週間保管した。保管前後のブリモニジン酒石酸塩含量を、高速液体クロマトグラフシステム(株式会社島津製作所)を用いて下記の条件に従い測定した。
<測定条件>
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:230 nm)
カラム: Symmetry C18, 4.6mm I.D.×150mm, 3.5μm, Waters
カラム温度:40℃温付近の一定温度
移動相A:4.3 mMリン酸水溶液/メタノール/アセトニトリル(容量比:84/8/8)混液
移動相B:4.3 mMリン酸水溶液/メタノール/アセトニトリル(容量比:40/30/30)混液
流量:1.0 mL/min
オートサンプラ内温度:5℃
移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比率を表4に示すように変えて直線濃度勾配制御した。
Figure 2020193233
次の算出式に従い、水性液剤中のブリモニジンの残存率を算出した。
Figure 2020193233
得られた結果を表5に示す。エデト酸ナトリウム二水和物を配合していない場合では、保存剤を含まない水性液剤(比較例9)は、点眼液に一般的に配合される保存剤を含む水性液剤(比較例7及び8)に比べてブリモニジンの残存率が低下していた。亜硫酸水素ナトリウム及びベンザルコニウム塩化物といった保存剤を配合することでブリモニジンの安定性を向上することができる。しかしながら、保存剤を配合しなくとも、エデト酸ナトリウム二水和物を配合した水性液剤では、ブリモニジン酒石酸塩の安定性が更に向上していた。即ち、本結果から、保存剤を実質的に含まず、ブリモニジン及び/又はその塩と、エデト酸及び/又はその塩とを含む水性液剤は、ブリモニジン及び/又はその塩の安定性の点でも優れていることが明らかとなった。
Figure 2020193233

Claims (7)

  1. ブリモニジン及び/又はその塩と、エデト酸及び/又はその塩と、緩衝剤とを含み、保存剤を実質的に含まず、且つドルゾラミド及び/又はその塩を含まず、
    一旦外側に浸出した水性液剤の容器内への逆流を防止する機構、及び/又は異物の容器内への混入を防止する機構を有するマルチドーズ型容器に収容されている、
    水性液剤。
  2. 緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、及びトリス緩衝剤よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の水性液剤。
  3. エデト酸及び/又はその塩の濃度が0.001〜0.5w/v%である、請求項1又は2に記載の水性液剤。
  4. ブリモニジン及び/又はその塩の濃度が0.05〜0.2w/v%である、請求項1〜3のいずれかに記載の水性液剤。
  5. pHが6〜8である、請求項1〜4のいずれかに記載の水性液剤。
  6. 点眼液である、請求項1〜5のいずれかに記載の水性液剤。
  7. ブリモニジン及び/又はその塩を含み、一旦外側に浸出した水性液剤の容器内への逆流を防止する機構、及び/又は異物の容器内への混入を防止する機構を有するマルチドーズ型容器に収容される水性液剤に保存効力を付与する方法であって、
    水性液剤は保存剤を実質的に含まず、且つドルゾラミド及び/又はその塩を含まず、
    ブリモニジン及び/又はその塩と、エデト酸及び/又はその塩と、緩衝剤とを含む水性液剤を調製する工程を含む、
    保存効力の付与方法。
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