JP2020192809A - 繊維強化樹脂基材、一体化成形品および繊維強化樹脂基材の製造方法 - Google Patents

繊維強化樹脂基材、一体化成形品および繊維強化樹脂基材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】特性の異なる複数の樹脂を強固に複合化した繊維強化樹脂基材を提供する。【解決手段】次の構成要素[A]、[B]および[C]を含む繊維強化樹脂基材であって、[A]強化繊維2;[B]熱可塑性樹脂(b)6;[C]熱可塑性樹脂(c)7;構成要素[A]は一方向に配列しており、該繊維強化樹脂基材において、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域が存在し、繊維強化樹脂基材の片側の表面に構成要素[B]を含む樹脂領域が存在しており、構成要素[B]および構成要素[C]のHansen溶解度パラメーターの距離Ra(bc)が式(1)を満たし、Ra(bc)={4(δDB−δDC)2+(δPB−δPC)2+(δHB−δHC)2}1/2≧8式(1)、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域との境界面9をまたいで両樹脂領域に含まれる構成要素[A]が存在する、繊維強化樹脂基材。【選択図】図2

Description

本発明は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂が強化繊維に含浸されてなる繊維強化樹脂基材、一体化成形品および繊維強化樹脂基材の製造方法に関する。
炭素繊維やガラス繊維などの強化繊維と組み合わせた繊維強化複合材料は、軽量でありながら、強度や剛性などの力学特性に優れているため、航空・宇宙、自動車、鉄道車両、船舶、土木建築およびスポーツ用品などの数多くの分野に応用されている。中でも、リサイクル性や成形性、耐衝撃特性などの観点からマトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いた繊維強化複合材料も開発が加速している。しかしながら、これらの繊維強化複合材料は、複雑な形状を有する部品や構造体を単一の成形工程で製造するには不向きであり、そのような用途においては、繊維強化複合材料からなる部材を作製し、次いで、別の部材と一体化する工程が必要である。このとき、必要に応じて異なる特性を有する樹脂を組み合わせることもある。繊維強化複合材料と別の部材を一体化する手法として、ボルト、リベット、ビスなどの機械的接合を使用する接合方法や、接着剤を使用する接合方法が用いられている。機械的接合方法では、穴あけなど接合部分をあらかじめ加工する工程を必要とするため、製造工程の長時間化および製造コストの増加につながり、また、穴をあけるため、材料強度が低下するという問題があった。接着剤を使用する接合方法では、接着剤の準備や接着剤の塗布作業を含む接着工程および硬化工程を必要とするため、製造工程の長時間化につながり、接着強度においても、信頼性に十分な満足が得られないという課題があった。また2色成形など異なる種類の熱可塑性樹脂からなる成形品を得る方法があるが、相溶性の低い樹脂の組み合わせの場合、嵌め合いなどの形状設計による一体化が主流であり、設計自由度が低いという課題もあった。
ここで、特許文献1には、所定方向に引き揃えられた補強繊維シート層に異なる熱可塑性樹脂からなる複数の樹脂領域が形成されたプリプレグシート材が示されている。特許文献2には、強化繊維から構成される不織布に複数の異なる熱可塑性樹脂が含浸された繊維強化樹脂シートが示されている。また、特許文献3には、強化繊維を構成する材料と融点差を有する熱可塑性樹脂により構成された熱可塑性樹脂プリプレグが示されている。
熱可塑性樹脂をマトリックスに用いた繊維強化複合材料は、溶着により部材間を接合する方法を適用することができるため、部材間の接合に要する時間を短縮できる可能性がある。一方で、近年になって製品に求められる形状が複雑化し、さらに要求特性に応じた様々な部材を一体化させる必要が生じるようになった。このような成形品の製造において、生産性の向上と製品収率の向上、すなわち廃棄率の低減技術が求められるようになっている。
熱可塑性樹脂をマトリックスに用いた繊維強化複合材料は、溶着により部材間を接合する方法を適用することができるため、部材間の接合に要する時間を短縮できる可能性がある。一方で、近年になって製品に求められる形状が複雑化し、さらに要求特性に応じた様々な部材を一体化させる必要が生じるようになった。このような成形品の製造において、生産性の向上と製品収率の向上、すなわち廃棄率の低減技術が求められるようになっている。
特開2012−246442号公報 国際公開第2014/103658号パンフレット 国際公開第2013/8720号パンフレット
しかし、特許文献1に示されるプリプレグシート材は、樹脂領域の間の境界部分が強化繊維シート層の内部に入り込んだ状態としているが、その状態について言及されておらず、異なる樹脂の接合状態は十分ではなかった。特許文献2に示される繊維強化樹脂シートは、2種類の熱可塑性樹脂で形成される界面層の凹凸形状について規定されており、接合強度としては十分となる可能性は高いが、強化繊維からなる不織布を用いているため接合強度の安定性(バラツキが小さい)が十分ではなかった。特許文献3に示される熱可塑性樹脂プリプレグは、実質的には同種(分子構造以外が同種)の熱可塑性樹脂の組み合わせであり、要求特性の異なる樹脂の組み合わせからなる複合材料を得ると言う目的を満足することはできなかった。
またこれらの文献に記載の複合材料の手法は、ある特定の温度で異なる樹脂を同時に溶融させて強化繊維に含浸させるため、樹脂の組み合わせが限定されることや、一方の樹脂が熱分解などにより劣化して健全な状態の繊維強化複合材料を得ることが困難となる場合もあった。
そこで、本発明の目的は、特性の異なる複数の樹脂を強固に複合化した繊維強化樹脂基材を提供することにある。
かかる課題を解決するために本発明の繊維強化樹脂基材は、次の構成を有する。すなわち、
次の構成要素[A]、[B]および[C]を含む繊維強化樹脂基材であって、
[A]強化繊維;
[B]熱可塑性樹脂(b);
[C]熱可塑性樹脂(c);
構成要素[A]は一方向に配列しており、
該繊維強化樹脂基材において、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域が存在し、
繊維強化樹脂基材の片側の表面に構成要素[B]を含む樹脂領域が存在しており、
構成要素[B]および構成要素[C]のHansen溶解度パラメーターの距離Ra(bc)が式(1)を満たし、
Ra(bc)={4(δDB−δDC)+(δPB−δPC)+(δHB−δHC)1/2≧8 式(1)
Ra(bc):構成要素[B]と構成要素[C]のHansen溶解度パラメーターの距離;
δDB:構成要素[B]の分子間の分散力によるエネルギー;
δDC:構成要素[C]の分子間の分散力によるエネルギー;
δPB:構成要素[B]の分子間の双極子相互作用によるエネルギー;
δPC:構成要素[C]の分子間の双極子相互作用によるエネルギー;
δHB:構成要素[B]の分子間の水素結合によるエネルギー;
δHC:構成要素[C]の分子間の水素結合によるエネルギー;
構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域との境界面をまたいで両樹脂領域に含まれる構成要素[A]が存在する、繊維強化樹脂基材。
また、本発明は、上記の繊維強化樹脂基材に、別の部材を接合してなる一体化成形品を含む。
さらに、本発明の繊維強化樹脂基材の製造方法は、次の構成を有する。すなわち、
次の構成要素[A]、[B]および[C]を含む繊維強化樹脂基材の製造方法であって、
[A]強化繊維;
[B]熱可塑性樹脂(b);
[C]熱可塑性樹脂(c);
少なくとも以下の引出工程、第1の含浸工程および第2の含浸工程が構成要素[A]を走行させながら、連続でこの順に実施されてなり、
<引出工程>連続した構成要素[A]を引き揃えて構成要素[A]が一方向に配列した連続強化繊維シートを得た後、得られた構成要素[A]を含む連続強化繊維シートを、後段の工程に向かって繊維方向に供給する工程;
<第1の含浸工程>前記連続強化繊維シートの一方の面から構成要素[B]を含浸させ、前記連続強化繊維シートの第1の表面に構成要素[B]を存在させた繊維強化樹脂中間体を得る工程;
<第2の含浸工程>前記第1の表面とは反対の第2の表面から構成要素[C]を含浸させ、繊維強化樹脂基材を得る工程;
構成要素[B]および構成要素[C]のHansen溶解度パラメーターの距離Ra(bc)が式(3)を満たす繊維強化樹脂基材の製造方法:
Ra(bc)={4(δDB−δDC)+(δPB−δPC)+(δHB−δHC)1/2≧8 式(3)
Ra(bc):構成要素[B]と構成要素[C]のHansen溶解度パラメーターの距離
δDB:構成要素[B]の分子間の分散力によるエネルギー;
δDC:構成要素[C]の分子間の分散力によるエネルギー;
δPB:構成要素[B]の分子間の双極子相互作用によるエネルギー;
δPC:構成要素[C]の分子間の双極子相互作用によるエネルギー;
δHB:構成要素[B]の分子間の水素結合によるエネルギー;
δHC:構成要素[C]の分子間の水素結合によるエネルギー。
本発明の繊維強化樹脂基材は、特性の異なる組み合わせからなる樹脂、特に互いに相溶性の低い複数の熱可塑性樹脂を複合化したものであるため、従来技術では困難であった異なる特性の組み合わせを有する基材を得ることが可能である。また本発明の繊維強化樹脂基材を用いることで従来技術では得ることが困難であった複数の部材が強固に一体化された一体化成形品を提供することが可能である。さらに、本発明の繊維強化樹脂基材の製造方法を用いることで、従来技術では複合化することが困難であった樹脂の組み合わせであっても、熱分解などの劣化をさせることなく複合化して繊維強化樹脂基材を製造することが可能である。
本発明に係る繊維強化樹脂基材の模式図である。 本発明に係る繊維強化樹脂基材の観察断面の模式図である。 本発明に係る繊維強化樹脂基材の製造方法の模式図である。 本発明の製造方法における連続繊維強化シートの模式図である。 本発明の製造方法における繊維強化樹脂中間体の模式図である。 本発明に係る繊維強化樹脂基材の模式図である。 本発明に係る繊維強化樹脂基材の接合強度試験片の作製方法の模式図である。 本発明に係る異なる樹脂からなる部材が接合された一体化成形品の模式図である。
以下、本発明の繊維強化樹脂基材について説明する。
本発明の繊維強化樹脂基材は、少なくとも次の構成要素[A]、[B]および[C]を含む。
(構成要素[A])
本発明で用いる構成要素[A]の強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、玄武岩繊維などがある。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上併用して用いてもよい。これらの強化繊維は、表面処理が施されているものであっても良い。表面処理としては、金属の被着処理、カップリング剤による処理、サイジング剤による処理、添加剤の付着処理などがある。これらの強化繊維の中には、導電性を有する強化繊維も含まれている。
強化繊維としては、比重が小さく、高強度、高弾性率である炭素繊維が好ましく使用される。炭素繊維の市販品としては、“トレカ(登録商標)”T800G−24K、“トレカ(登録商標)”T800S−24K、“トレカ(登録商標)”T700G−24K、“トレカ(登録商標)”T700S−24K、“トレカ(登録商標)”T300−3K、および“トレカ(登録商標)”T1100G−24K(以上、東レ(株)製)などが挙げられる。
構成要素[A]において、強化繊維は一方向に配列されている。なお、構成要素[A]は、一方向に配列した強化繊維の層が複数層積層されてなる積層物であっても良い。この場合、各層内において強化繊維は一方向に配列されていればよく、異なる層に含まれる強化繊維は、異なる方向を向いていてもよい。一方向に配列した強化繊維を用いることにより、軽量で、耐久性が高く、かつ、溶着工程における変形が小さい成形品が得られることから好ましい。
構成要素[A]をこのような形態や配列とすることで、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域との境界面により形成される断面曲線を、後述の好ましい構造要件を満たすものとして容易に形成可能であり、また均質に形成することができる。これによって、強化繊維が構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域との境界面をまたいで存在するようにすることができる。また、繊維強化樹脂基材と別の部材を一体化した際に、接合強度のバラツキを低減することも可能である。
これらの形態は、後述のように、強化繊維から構成される複数本の強化繊維束を引き揃えて一方向に配列させることにより得ることが可能である。強化繊維束は、同一の形態の複数本の繊維から構成されていても、あるいは、異なる形態の複数本の繊維から構成されていても良い。一つの強化繊維束を構成する強化繊維数は、通常、300〜60,000であるが、基材の製造を考慮すると、好ましくは、300〜48,000であり、より好ましくは、1,000〜24,000である。上記の上限のいずれかと下限のいずれかとの組み合わせによる範囲であってもよい。
構成要素[A]の強化繊維について、JIS−R7608(2004)の樹脂含浸ストランド試験法に準拠して測定したストランド引張強度が5.5GPa以上であると、引張強度に加え、優れた接合強度を有する繊維強化樹脂基材が得られるため好ましい。
本発明の繊維強化樹脂基材における構成要素[A]の含有率は、好ましくは30〜90質量%であり、より好ましくは35〜85質量%であり、さらに好ましくは40〜80質量%である。上記の上限のいずれかと下限のいずれかとの組み合わせによる範囲であってもよい。構成要素[A]の質量含有率が30質量%以上であると、構成要素[A]の強化繊維が、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域との境界面をまたいで存在する構造(アンカリング構造)を形成して存在し、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域を強固な接合状態とすることが可能となる。また、構成要素[A]の含有率が90質量%以下であると、熱可塑性樹脂の含浸不良が生じにくく、得られる繊維強化樹脂基材のボイドが少なくなりやすい。
[含浸率]
本発明の繊維強化樹脂基材は、含浸率が80%以上であることが好ましい。かかる含浸率は、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。ここで、含浸率とは、構成要素[A]に、構成要素[B]および構成要素[C]から選ばれる樹脂がどの程度含浸しているかの割合である。含浸率が大きいほど、繊維強化樹脂基材中に含まれる空隙が少ないことを意味し、良外観、高力学特性の繊維強化樹脂基材を得ることができる。含浸率の測定方法としては、繊維強化樹脂基材に樹脂がどの程度含浸しているかの割合ではなく、むしろ、樹脂が含浸していない部分(空隙部と呼ぶ)の割合を測定し、求めることができる。得られた繊維強化樹脂基材の長尺方向と直交する断面の観察において、繊維強化樹脂基材の総断面積をA0、繊維強化樹脂基材中の空隙部の断面積をA1としたときに以下の式(4)によって含浸率を求められる。
含浸率=(A0−A1)/A0・・・(4)。
本発明の繊維強化樹脂基材において、単位面積あたりの構成要素[A]の質量が30〜2,000g/mであることが好ましい。単位面積あたりの構成要素[A]の質量が30g/m以上であると、繊維強化樹脂積層体成形の際に所定の厚みを得るための積層枚数を少なくすることができ、作業が簡便となりやすい。一方で、単位面積あたりの構成要素[A]の質量が2,000g/m以下であると、繊維強化樹脂基材のドレープ性が向上しやすくなる。また、単位面積あたりの構成要素[A]の質量は、好ましくは300g/m以下である。かかる範囲とすることで、後述の第1の含浸工程における構成要素[B]および第2の含浸工程における構成要素[C]が含浸しやすくなり、製造速度を高速にすることができる。
(構成要素[B]、構成要素[C])
構成要素[B]を構成する熱可塑性樹脂(b)および構成要素[C]を構成する熱可塑性樹脂(c)としては、後述するHansen溶解度パラメーターの距離Ra(bc)の関係を満たす組み合わせであること以外は特に制限はない。熱可塑性樹脂(b)および熱可塑性樹脂(c)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、液晶ポリエステル等のポリエステル系樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂、ウレタン樹脂の他や、ポリオキシメチレン、ポリアミド6、ポリアミド66等の脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、脂環式ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニルや、ポリフェニレンスルフィド等のポリアリーレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、変性ポリスルホン、ポリエーテルスルホンや、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン等のポリアリーレンエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルニトリル、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂などが挙げられる。また、これら熱可塑性樹脂は、上述の樹脂の共重合体や変性体、および/または2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよい。耐熱性が良好であることおよび熱変形を起こしにくいという観点から、ガラス転移温度が80℃以上の結晶性の熱可塑性樹脂やガラス転移温度が160℃以上の非晶性の熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂(b)および熱可塑性樹脂(c)としては、これらの中でも、成形加工性と耐熱性や力学特性とのバランスから、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、ポリアミド、ポリオキシメチレン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンおよびポリアリーレンエーテルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂であることが好ましい。
さらに、熱可塑性樹脂(b)および熱可塑性樹脂(c)には、用途等に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で適宜、他の充填材や添加剤を含有しても良い。例えば、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤などが挙げられる。
本発明の繊維強化樹脂基材における、構成要素[B]および構成要素[C]の目付は、10g/m以上であると好ましい。目付が10g/m以上あると、後述の別の部材との溶着接合において、充分な厚みの溶着接合領域が得られ、優れた接合強度を発現する。より好ましくは20g/m以上である。ここで目付とは、繊維強化樹脂基材1mあたりに含まれる構成要素[B]または構成要素[C]の質量(g)を指す。
本発明の繊維強化樹脂基材における構成要素[B]および構成要素[C]の含有率は、それぞれ好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは20〜40質量%である。上記の上限のいずれかと下限のいずれかとの組み合わせによる範囲であってもよい。構成要素[B]および構成要素[C]の含有率が10質量%以上であると、構成要素[B]および構成要素[C]の含浸不足が生じにくく、得られる繊維強化基材のボイドが少なくなりやすい。また、構成要素[B]および構成要素[C]を強固に複合化することが可能となる。また、構成要素[B]および構成要素[C]の含有率が50質量%以下であると、構成要素[B]および構成要素[C]の熱可塑性樹脂に構成要素[A]がアンカリング構造を形成して存在しやすくなるため、強固に複合化することが可能となる。
さらに本発明の繊維強化樹脂基材は、熱可塑性樹脂(b)と熱可塑性樹脂(c)との関係において、以下の式(2)を満たすことが好ましい。
50≦ΔT≦200 ・・・ 式(2)
ΔT:TbとTcの差の絶対値
Tb:熱可塑性樹脂(b)が結晶性樹脂の場合はその融点、非晶性樹脂の場合はそのガラス転移温度[℃]
Tc:熱可塑性樹脂(c)が結晶性樹脂の場合はその融点、非晶性樹脂の場合はそのガラス転移温度[℃]。
本明細書では、上記Tb、Tcを合わせて溶融温度という。本発明の繊維強化樹脂基材を熱可塑性樹脂からなる別の部材と接合する際に、溶着で接合を行うと熱可塑性樹脂は溶融状態で混ざり合うことで別の部材との接合強度が向上できるため好ましい。本発明の繊維強化樹脂基材においては、熱可塑性樹脂(b)と熱可塑性樹脂(c)とのそれぞれを別の部材と溶着させる場合、熱可塑性樹脂(b)に別の部材を溶着する工程における加工温度(以下、「溶着温度」と省略する。)と熱可塑性樹脂(c)における溶着温度の差を大きくすることで、溶着工程における設計自由度が向上できるため好ましい。ここで、溶着温度として、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合はその融点以上、非晶性樹脂の場合はそのガラス転移温度以上が好ましく用いられる。したがって、TbとTcとの間の差ΔTが50℃以上であると、上記両面における溶着温度の差を十分大きくすることが可能となり、好ましい。また、TbとTcとの間の差ΔTが200℃以下であると、上記両面のそれぞれを溶着させる際に、一方の溶着温度で、もう一方の表面が熱分解してしまうことを抑えることが可能となり、好ましい。上記両面をある一定の溶着温度において溶着させる場合、上記両面の熱分解をより抑えつつ、溶着に十分な温度を接合部に付与可能とする観点から、TbとTcとの間の差ΔTは50℃以上150℃以下が好ましい。設計自由度を高める観点から、TbとTcとの間の差ΔTは100℃以上とすることが好ましい。後述する本発明の製造方法によれば、このような溶着温度差の大きい樹脂の組み合わせの場合でも、強固な接合状態を有する繊維強化樹脂基材を得ることが可能となる。
ここでの融点および/またはガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて求めることができる。容積50μlの密閉型サンプル容器に1〜5mgのサンプルを詰め、昇温速度10℃/分で昇温し、30〜400℃の範囲で検出されるDSC曲線の段差をガラス転移点、発熱ピークを融点の指標とし、それぞれの温度をガラス転移温度および融点とする。
構成要素[B]の溶融温度Tb、構成要素[C]の溶融温度Tcの少なくとも一方が250℃以下であることが好ましい。強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させる工程や別の部材と一体化する工程において、熱溶着による一体化を容易とする観点から、より好ましくは230℃以下、さらに好ましくは210℃以下である。溶融温度の下限については、特に限定されないが、得られる繊維強化樹脂基材の耐熱性の観点から、100℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましい。
(Hansen溶解度パラメーター)
本発明の繊維強化樹脂基材は、構成要素[B]を構成する熱可塑性樹脂(b)と構成要素[C]を構成する熱可塑性樹脂(c)との関係において、それぞれの熱可塑性樹脂のHansen溶解度パラメーターの距離Ra(bc)が式(1)を満たすことが必須である。
Ra(bc)={4(δDB−δDC)+(δPB−δPC)+(δHB−δHC)1/2≧8 ・・・ 式(1)
Ra(bc):構成要素[B]と構成要素[C]のHansen溶解度パラメーターの距離
δDB:構成要素[B]の分子間の分散力によるエネルギー
δDC:構成要素[C]の分子間の分散力によるエネルギー
δPB:構成要素[B]の分子間の双極子相互作用によるエネルギー
δPC:構成要素[C]の分子間の双極子相互作用によるエネルギー
δHB:構成要素[B]の分子間の水素結合によるエネルギー
δHC:構成要素[C]の分子間の水素結合によるエネルギー。
Hansen溶解度パラメーターの距離Ra(bc)を構成する各項の値は、Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP)ver.5.0.06により求めることもできるが、ここでは、溶解度の異なる各種溶媒を用いてサンプルの溶解度を求め、この溶解度の情報をHSPiPによって解析することでHansen溶解度パラメーターを計算する。ただし、式中、δD、δPおよびδHは、それぞれHansen溶解度パラメーターにおける分散項、極性項、水素結合項を表す。なお、ここでの溶解性の異なる各種溶媒としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルイソブチルケトン、酢酸n−ブチル、トルエン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、クロロホルム、酢酸メチル、アセトン、1,4−ジオキサン、ピリジン、N−メチルピロリドン、ヘキサフルオロイソプロパノール、1−ブタノール、アセトニトリル、ジエチレングリコール、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、エタノール、ジメチルスルホキシド、メタノール、2−アミノエタノール、シクロヘキサノン、1,1,2,2−テトラブロモエタンなどが例示でき、ここから選択することができる。
上記Hansen溶解度パラメーターの距離Ra(bc)が8以上であるということは、構成要素[B]と構成要素[C]との間の親和性が非常に低いということを示す。したがって、従来の技術では、このような構成要素[B]と構成要素[C]との間で強固な接合状態を得ることはできなかった。本発明においては、構成要素[A]が前記のアンカリング構造をとることにより、従来不可能であった熱可塑性樹脂の組み合わせ、特にそれぞれの熱可塑性樹脂のHansen溶解度パラメーターの距離Ra(bc)が大きい値を示す組み合わせの場合においても、構成要素[B]と[C]との境界面に容易に強固な接合状態を得ることが可能である。このとき、距離Ra(bc)は、樹脂の組み合わせの設計自由度を高める観点から、10以上であることが好ましい。距離Ra(bc)の上限については特に限定されないが、30以下であれば、樹脂の組み合わせの設計自由度の高さを満足することができる。
かかる構成要素[B]である熱可塑性樹脂(b)を含む樹脂領域は、本発明では繊維強化樹脂基材の片側の表面に存在している。熱可塑性樹脂(b)は表面以外にも存在していてもよい。一方、構成要素[C]である熱可塑性樹脂(c)を含む樹脂領域は、熱可塑性樹脂(b)を含む樹脂領域が存在する表面と反対側の表面に存在していることが好ましい。
構成要素[B]を含む樹脂領域または構成要素[C]を含む樹脂領域は、強化繊維樹脂基材の一方の表面の全面に存在していても良いし、一部分に存在していても良い。
また構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域がそれぞれ層状をなして隣接することにより境界面を形成していることが好ましい。これにより、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域の接合強度が高まり、また繊維強化樹脂基材の均質性が高くなるので好ましい。
本発明の強化繊維樹脂基材において、構成要素[A]を構成する強化繊維、特に炭素繊維との接着性を高める観点から、構成要素[B]のδHBおよび構成要素[C]のδHCがいずれも1.0以上であることが好ましい。δHBおよびδHCは2.0以上であることがより好ましい。
本発明の強化繊維樹脂基材において、構成要素[A]と構成要素[B]のHansen溶解度パラメーターの距離Ra(ab)、構成要素[A]と構成要素[C]のHansen溶解度パラメーターの距離Ra(ac)のいずれかまたは両方が8未満であることが好ましい。このような関係とすることで、構成要素[B]と構成要素[C]がHansen溶解度パラメーターの距離Ra(bc)が大きい値を示す組み合わせでも、構成要素[A]を介して強固な接合状態を有する繊維強化樹脂基材とすることが可能である。さらに強固な接合状態を発現する観点から、上記距離Ra(ab)およびRa(ac)のいずれかまたは両方が7未満であることがより好ましく、6未満であることがさらに好ましい。
(繊維強化樹脂基材)
本発明の繊維強化樹脂基材の厚みについては、特に限定はされないが、取扱い性や軽量性の観点から0.1mm以上が好ましく、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.5m以上である。0.1mm以上の厚みとすることで、別の部材と一体化するための接合媒体の役割として用いる場合に設計自由度が高く、軽量化にも寄与できる。一方、繊維強化樹脂基材そのものを部材として用いる場合、厚みは1mm以上が好ましく、より好ましくは3mm以上、さらに好ましくは5mm以上である。厚みの上限については特に限定されないが、50mm以下の厚みであれば、接合媒体としても部材としても十分に活用することが可能である。
また構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域が、それぞれ層状をなして隣接している場合、要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域の厚みの比について、特に限定はされないが、繊維強化樹脂基材の量産性や平坦性の観点から1:9〜9:1が好ましく、より好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。用いる樹脂の線膨張係数や強化繊維の体積含有率から、得られる繊維強化樹脂基材が平坦になるように厚みの比を調整することもできる。
[粗さ平均長さ、粗さ平均高さ]
本発明の繊維強化樹脂基材においては、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域との境界面をまたいで両樹脂領域に含まれる構成要素[A]の強化繊維が存在する。また、図1に示すように繊維強化樹脂基材を平面視したとき、かかる構成要素[A]の繊維方向に対し、時計回りか反時計回りかを問わず45度の方向に、繊維強化樹脂基材に垂直な断面、すなわち、繊維強化樹脂基材がなす平面に対し垂直にカットして得られる断面を観察した場合において、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域の境界面が形成する断面曲線の、JIS B0601(2001)で定義される粗さ平均長さRSmが100μm以下であり、粗さ平均高さRcが3.5μm以上であることが、好ましい。粗さ平均高さRcは境界面のより強固な接着強度を発現する観点から10μm以上であることが好ましい。
図2に示すように、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域との境界面をまたいで両樹脂領域に含まれる構成要素[A]の強化繊維が存在することで、構成要素[C]を含む樹脂領域の強度が向上し、接合強度が向上する。
両樹脂領域の境界面をまたいで両樹脂領域に含まれる[A]の存在の確認は、平面方向に対し垂直にカットして得られる断面の観察によって確認することができる。一例を、図2を用いて示す。図2の観察断面8において、繊維強化樹脂基材の構成要素[B]を含む樹脂領域6は構成要素[C]を含む樹脂領域7と密着しており、構成要素[B]を含む樹脂領域6と構成要素[C]を含む樹脂領域7が密着している面は境界面9として図示されている。また、境界面9上には複数の構成要素[A]2が存在している。境界面9上の構成要素[A]2は、構成要素[B]を含む樹脂領域6にも、構成要素[C]を含む樹脂領域7にも接している。このように強化繊維の周囲に構成要素[B]および構成要素[C]が接している状態は、強化繊維が「境界面をまたいで両樹脂領域に含まれる」状態といえる。
境界面上に存在する構成要素[A]が構成要素[B]および構成要素[C]と化学的または/および物理的に結合することにより、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域との密着力が向上する。境界面上に存在する構成要素[A]の本数は1本以上あれば良い。本数の上限は、特に限定されないが、後述の方法によって観測される画像における500μm四方の範囲において200本以下が好ましい。
構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域との境界面は、繊維強化樹脂基材の平面視において、上記構成要素[A]の繊維方向に対し、時計回りか反時計回りかを問わず45度の方向に、繊維強化樹脂基材に垂直な断面を得た場合に、該断面において観察される。なお、この場合、該断面の構成要素[A]、[B]および[C]が全て存在する部分を観察することが好ましい。かかる断面で、当該境界面における樹脂領域の態様を観察することで、繊維方向およびこれと直交する方向の密着力を同時に評価することができる。
かかる断面観察において、当該境界面が形成する断面曲線の、JIS B0601(2001)で定義される粗さ平均長さRSmが100μm以下であると、構成要素[A]が、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域との境界面をまたぐように存在しやすくなり、上記の密着力向上効果が得られやすくなる。また、化学的または/および物理的な結合力のみならず、境界面における構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域との交絡という機械的な結合力も加わり、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域とが剥離しにくくなる。粗さ平均長さRSmの下限値は、特に限定されないが、応力集中による機械的な結合力の低下を忌避するという観点から、好ましくは15μm以上である。また、断面曲線の粗さ平均高さRcが3.5μm以上であることにより、交絡による機械的な結合力が高くなるとともに、構成要素[A]が、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域との境界面をまたぐように存在しやすくなり、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域との密着力が向上するので好ましい。断面曲線の粗さ平均高さRcは、構成要素[A]が両樹脂領域に含まれやすくなり密着力がより向上するため、10μm以上がより好ましく、特に好ましくは20μmである。上限値は、特に限定されないが、応力集中による機械的な結合力の低下を忌避するという観点から、好ましくは100μm以下である。
ここで、断面曲線の粗さ平均高さRcおよび粗さ平均長さRSmの測定方法としては、公知の手法を用いることができる。例えば、X線CTを用いて取得した断面画像から測定する方法、エネルギー分散型X線分光器(EDS)による元素分析マッピング画像から測定する方法、あるいは光学顕微鏡あるいは走査電子顕微鏡(SEM)あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察画像から測定する方法が挙げられる。観察において、構成要素[B]および/または構成要素[C]はコントラストを調整するために、染色されても良い。上記のいずれかの手法により得られる画像において、500μm四方の範囲において、断面曲線の粗さ平均高さRcおよび粗さ平均長さRSmを測定する。
断面曲線の粗さ平均高さRcおよび粗さ平均長さRSmの測定方法の一例を、図2を用いて示す。図2に示される観察画像8において、構成要素[B]を含む樹脂領域6は構成要素[C]を含む樹脂領域7と密着しており、観察画像8において成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域との境界面は境界面9として図示されている。また、境界面9上には複数の構成要素[A]2が存在している。
断面曲線の粗さ平均高さRcおよび粗さ平均長さRSmの測定方法の一例(断面曲線要素の測定方法1)を示す。長方形型の観察画像8の構成要素[C]を含む樹脂領域側の端部10を基準線として、構成要素[C]を含む樹脂領域7から構成要素[B]を含む樹脂領域6に向かって5μm間隔で垂基線11を描く。基準線から描かれる垂基線が初めて構成要素[B]と交わる点をプロットし、プロットされた点を結んだ線を断面曲線12とする。得られた断面曲線12につき、JIS B0601(2001)に基づくフィルタリング処理を行い、断面曲線12の粗さ平均高さRcおよび粗さ平均長さRSmを算出する。
(一体化成形品)
本発明における繊維強化樹脂基材は、構成要素[B]および/または構成要素[C]を介して別の部材と接合することによって一体化成形品とすることができる。
ここで、別の部材としては例えば、アルミニウム、鉄、マグネシウム、チタンおよびこれらとの合金等の金属材料からなるものでもよいし、前記繊維強化樹脂基材同士でもよいし、熱可塑性樹脂組成物からなるものでよい。強化繊維で強化された熱可塑性樹脂組成物を別の部材として用いると、金属材料を採用した場合には実現できない軽量性が得られるので好ましい。
ここで、別の部材は、構成要素[B]および/または構成要素[C]との溶着性の観点から、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。別の部材に含まれる熱可塑性樹脂と、繊維強化樹脂基材の該別の部材と接合する(接する)部分に含まれる熱可塑性樹脂とが同種の樹脂であることが好ましい。さらに、別の部材には、用途等に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で適宜、他の充填材や添加剤を含有しても良い。例えば、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤などが挙げられる。
別の部材の形態は、リブ、ボス、立ち壁などが例示できるが、特にリブ構造を繊維強化樹脂基材に接合することが成形品の軽量性と力学特性の両立の観点から好ましい。かかるリブ構造は、繊維強化樹脂基材上に直線状に配置する例や、交差させたクロスリブとして配置する例が挙げられる。
本発明の繊維強化樹脂基材に別の部材を接合する手法としては、特に制限はなく、例えば、熱溶着、振動溶着、超音波溶着、抵抗溶着、誘導溶着、レーザー溶着、インサート射出成形、アウトサート射出成形などを挙げることができる。特に高速で生産性に優れることからインサート射出成形やアウトサート射出成形などの射出成形を用いることが好ましい。
本発明の一体化成形品の接合部の強度は、後述する繊維強化樹脂基材と別の部材との接合強度に基づいて測定した引張接合強度が、試験環境温度が23℃のとき、10MPa以上が好ましく、より好ましくは、15MPa以上である。高温での力学特性が求められる用途では、例えば、試験環境温度が80℃のときにも高い接合強度を発現することが好ましい。
(繊維強化樹脂基材の製造方法)
本発明に係る繊維強化樹脂基材の製造方法では、後述の引出工程、第1の含浸工程および第2の含浸工程が、構成要素[A]を走行させながら、連続でこの順に実施されてなる。
ここで、構成要素[A]を走行させながら連続で実施されるとは、図3に示すように、ロールまたはベルトを用いて、構成要素[A]を、止めることなく各工程に連続的に供することである。各工程が連続で順に実施されることで、基材の製造コストを下げることができる。
<引出工程>
本発明に係る引出工程は、連続した構成要素[A]を引き揃えて一方向に配列した強化繊維連続強化繊維シートを得た後、得られた構成要素[A]を含む連続強化繊維シートを、後段の工程に向かって繊維方向に供給する工程である。例としては、クリール等に配置された構成要素[A]のボビンから糸条を解舒して引き揃え、シート状の連続強化繊維シートを得て、次工程へ導く工程である。構成要素[A]を引き揃える前または/および後に開繊工程を含んでいても良い。また、引き揃えた後に織機を通して、横糸に補助繊維糸条を用いて織物としたものを連続強化繊維シートとして導いてもよい。この時の補助繊維は、構成要素[A]と同一の繊維でも、別の繊維でもよい。連続強化繊維シートを糸条から直接得ることで、整経または部分整経(ビーミング)を経る場合よりも製造コストが抑えられるため好ましい。連続強化繊維シートに含まれる構成要素[A]を一方向に配列することで、繊維方向に対して優れた比強度を有し、低コストの繊維強化樹脂基材が得られる。
本発明の引出工程で得られる連続強化繊維シートについて図4を用いて説明する。図4に示される連続繊維強化シート13は、構成要素[A]2を含んでおり、その断面は断面Aに示される。連続繊維強化シートは第1の表面19と第2の表面20という相対する2つの表面を有しており、後述の第1の含浸工程および第2の含浸工程において、これらの面から構成要素[B]および構成要素[C]のそれぞれが含浸される。ただし、本発明の範囲は図4に例示される工程に限定されるものではない。
構成要素[A]の糸条は、同一の形態の複数本の繊維から構成されていても、あるいは、異なる形態の複数本の繊維から構成されていても良い。一つの構成要素[A]の糸条を構成する強化繊維数は、通常、300〜60,000であるが、基材の製造を考慮すると、好ましくは、300〜48,000であり、より好ましくは、1,000〜24,000である。上記の上限のいずれかと下限のいずれかとの組み合わせによる範囲であってもよい。
<第1の含浸工程>
本発明に係る製造方法は、引出工程の後に、連続強化繊維シートの一方の面から構成要素[B]を含浸させ、第1の表面に構成要素[B]が存在する繊維強化樹脂中間体を得る工程を含む。第1の含浸工程において得られる繊維強化樹脂中間体について、図4および図5を用いて説明する。構成要素[B]6は図4断面Aにおける第1の表面19より連続強化繊維シート13に含浸され、図5の断面Bのような断面を有する繊維強化樹脂中間体14が得られる。ここで、繊維強化樹脂中間体14の第1の表面19は構成要素[B]6が覆っている。ただし、本発明の範囲は図4、図5に例示される工程に限定されるものではない。
第1の含浸工程において、第1の表面に構成要素[B]が存在する状態としては、特に限定されないが、第1の表面上に構成要素[B]が配置されていることが好ましい。ここで、構成要素[B]が配置されているとは、第1の表面の80%以上が覆われていることを意味している。表面の80%以上が構成要素[B]で覆われていることで、得られる繊維強化樹脂基材に接合性を付与することができる。さらに、第1の表面が構成要素[B]で完全に覆われている繊維強化樹脂中間体を得る工程がより好ましい。かかる工程とすることで、後述の第2の含浸工程において構成要素[C]が含浸する際に、第1の表面に構成要素[C]が露出する、または/および回り込むことを防ぐことができるため好ましい。
<含浸>
構成要素[B]を連続強化繊維シートの一方の面から含浸させて繊維強化樹脂中間体を得る方法については、特に限定はないが、構成要素[B]をフィルムや不織布といったシート形状で連続繊維強化シートの第1の表面に積層し、続いて構成要素[B]を加熱して溶融状態とし、連続繊維強化シートに含浸させた上で冷却することにより繊維強化樹脂中間体を得る方法、構成要素[B]を溶融状態で連続繊維強化シートの第1の表面に付着させ、続いて連続繊維強化シートに含浸させた上で冷却することにより繊維強化樹脂中間体を得る方法などが挙げられる。構成要素[B]をシート形状で積層する方法は、構成要素[B]の目付を安定させることができるため好ましい。構成要素[B]を溶融した状態で連続繊維強化シートに付与する方法は、製造コストの面から好ましい。
シート形状とした構成要素[B]を第1の表面に積層した後、加熱する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、遠赤外線ヒータ、高温オーブン、誘導加熱を用いた非接触の加熱方法、加熱したロールまたはベルトに接触させることにより加熱する方法などを挙げることができる。中でも、遠赤外線ヒータあるいは高温オーブンの槽の中を通して加熱する方法が、温度コントロールの観点からは好ましい。
溶融した構成要素[B]を第1の表面に付着させる方法について特に限定は無いが、公知の方法を用いることができる。中でも、ディッピングもしくはコーティングが好ましい。
ここで、ディッピングとは、例えば、ポンプを用いて構成要素[B]を溶融バスに供給し、該溶融バス内に連続繊維強化シートを通過させる方法をいう。連続繊維強化シートを溶融バスに浸すことで、確実に構成要素[B]を前記連続繊維強化シートに付着させることができる。
また、コーティングとは、例えば、リバースロール、正回転ロール、キスロール、アプリケータ、スプレイ、カーテンなどのコーティング手段を用いて、連続繊維強化シートに構成要素[B]を塗布する方法をいう。ここで、リバースロール、正回転ロール、キスロールとは、ポンプで溶融させた構成要素[B]をロールに供給し、連続繊維強化シートに構成要素[B]の溶融物を塗布する方法をいう。リバースロールは、2本のロールが互いに逆方向に回転し、ロール上に溶融した構成要素[B]を塗布する方法であり、正回転ロールは、2本のロールが同じ方向に回転し、ロール上に溶融した構成要素[B]を塗布する方法である。通常、リバースロール、正回転ロールでは、連続繊維強化シートを2本のロールで挟んで連続繊維強化シート上に構成要素[B]を転写させ、さらに別のロールで挟むことにより構成要素[B]を確実に付着させる方法が用いられる。一方で、キスロールは、連続繊維強化シートと1本のロールが接触しているだけで、構成要素[B]を付着させる方法である。そのため、キスロールは比較的樹脂の粘度の低い場合の使用が好ましい。いずれのロール方法を用いても、加熱溶融した構成要素[B]の所定量を塗布させ、前記連続繊維強化シートを接着させながら走らせることで、連続繊維強化シートの単位長さ当たりに所定量の構成要素[B]を付着させることができる。スプレイは、霧吹きの原理を利用したもので、溶融した構成要素[B]を霧状にして連続繊維強化シートに吹き付ける方法である。カーテンは、溶融した構成要素[B]を小孔から自然落下させ連続繊維強化シートに塗布する方法、または溶融槽からオーバーフローさせ連続繊維強化シートに塗布する方法である。塗布に必要な量を調節しやすいため、構成要素[B]の損失を少なくできる。アプリケータは、溶融した構成要素[B]を小孔から吐出し、連続繊維強化シートを接触させながら走らせることで、連続繊維強化シートの単位長さ当たりに所定量の構成要素[B]を付着させる方法である。構成要素[B]の粘度の影響を受けにくく、製造速度を上げられるという観点からは、アプリケータが好ましく用いられる。
溶融した構成要素[B]を連続繊維強化シートに含浸させる際に加圧を行ってもよい。加圧する方法について特に限定は無いが、リバースロール、正回転ロール、キスロール、アプリケータまたはベルトによって構成要素[B]を加熱する場合には、加熱と同時に圧力を加える方法が挙げられる。または、構成要素[B]の連続繊維強化シートへの付着・溶融後に、ロールやベルトからなる加圧部を設ける方法が挙げられる。なお、溶融した構成要素[B]の粘度が低い場合には加圧は必ずしも必要としない。
構成要素[B]が連続繊維強化シートへ含浸されることで得られる繊維強化樹脂中間体は、冷却されることが好ましい。冷却する方法について特に限定は無いが、公知の方法を用いることができる。例えば、温調槽、送風機による非接触冷却、または温調されたロールまたはベルトに接触させることによる接触冷却を利用できる。中でも、温調されたロールまたはベルトに接触させる方法が、温度コントロールの観点から好ましく、構成要素[B]の溶融後の加圧工程を兼ねることができるため、好ましい。
<繊維強化樹脂中間体の温度>
第1の含浸工程後、第2の含浸工程前の繊維強化樹脂中間体の温度は、70〜180℃であることが好ましい。かかる範囲とすることで、後述の第2の含浸工程において構成要素[C]が繊維強化樹脂中間体の熱により熱分解または反応暴走することが起きにくく、かつ、構成要素[C]が適度に加熱されるため、繊維強化樹脂中間体への含浸性が向上する。熱分解または反応暴走を確実に防ぐという観点から、繊維強化樹脂中間体の温度は、より好ましくは150℃以下である。また、含浸性を向上させる観点から、下限は90℃以上であることがより好ましい。
<第2の含浸工程>
本発明に係る製造方法は、第1の含浸工程を開始した後に、第1の表面とは反対の第2の表面から構成要素[C]を含浸させ、繊維強化樹脂基材を得る工程を含む(第2の含浸工程)。第2の含浸工程において得られる繊維強化樹脂基材について、図5および図6を用いて説明する。構成要素[C]7は図5の断面Bにおける第2の表面20より連続強化繊維シート13に含浸され、図6の断面Cのような断面を有する繊維強化樹脂基材1が得られる。ここで、繊維強化樹脂基材1の第1の表面19は構成要素[B]6で覆われ、第2の表面20は構成要素[C]で覆われている。ただし、本発明の範囲は図5、図6に例示される工程に限定されるものではない。なお、第1の含浸工程の完了前に第2の含浸工程を開始してもよい。
[含浸]
構成要素[C]を繊維強化樹脂中間体の第1の表面とは反対の第2の表面から含浸させる方法については、特に限定はないが、構成要素[C]をシート形状で繊維強化樹脂中間体の第2の表面に積層し、続いて加熱して溶融状態とし、続いて冷却することにより繊維強化樹脂中間体を得る方法、構成要素[C]を溶融状態で繊維強化樹脂中間体の第2の表面に付与し、続いて冷却することにより得る方法が挙げられる。構成要素[C]をフィルムや不織布のシート形状で積層する方法は、構成要素[C]の目付を安定させることができるため好ましい。構成要素[C]を溶融した状態で繊維強化樹脂中間体に付与する方法は、製造コストの面から好ましい。
<引取工程>
第2の含浸工程の後に、繊維強化樹脂基材を引き取る工程を含んでもよい。引取工程では、巻取部に繊維強化基材を巻き取っても良く、巻き取らずにATP装置やAFP装置、スリット装置、カット装置などの装置に導入し、別の工程に連続的に供しても良い。巻き取る場合には、繊維強化樹脂基材の第2の表面に離型紙や保護フィルムを供給しても良い。離型紙や保護フィルムを供給することで、繊維強化樹脂基材の第2の表面が巻き取り時の内層にある繊維強化樹脂基材の第1の表面と密着や粘着することを防ぐことができるため、好ましい。
引取時の繊維強化樹脂基材の速度は、0.1m/min以上であることが好ましい。かかる範囲とすることで、連続的に繊維強化樹脂基材を得ることができる。生産性の観点からより好ましくは、1m/min以上であり、構造部材のプロセス要求の観点からより好ましくは5m/min以上である。
本発明の繊維強化樹脂基材の製造方法では、構成要素[B]の構成要素[A]への含浸と構成要素[C]の構成要素[A]への含浸を別々に行うことが可能である。異なる種類の熱可塑性樹脂を強化繊維に含浸させる場合、異なる樹脂の両方が成形可能な温度を選定し、その成形温度で異なる種類の樹脂を同時に含浸させる方法が例示されている(特許文献1、2)。同時に含浸させる場合、成形圧力を樹脂に合わせて調整することはできないことから、両樹脂の境界位置を制御することは非常に困難であり、限られた樹脂の組み合わせとなるため好ましくない。本発明の製造方法は、第1の含浸工程および第2の含浸工程において、成形温度を変更することにより、樹脂粘度、成形圧力を任意に設定することが可能であり、製造条件の設計自由度が多く、構成要素[B]と構成要素[C]の境界位置を容易に調整できる点で好ましい
(用途)
本発明の繊維強化樹脂基材および一体化成形品は、航空機構造部材、風車羽根、自動車外板およびICトレイやノートパソコンの筐体などのコンピューター用途さらにはゴルフシャフトやテニスラケットなどスポーツ用途に好ましく用いられる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、組成比の単位「部」は、特に注釈のない限り質量部を意味する。また、各種特性の測定は、特に注釈のない限り温度23℃、相対湿度50%の環境下で行った。
(1)生産性
製造時の引き取り速度、構成要素[A]の破断回数、工程数などから、単位時間当たりの生産可能な数量を総合的に判断し、A(特に良好)、B(良好)、C(普通)、D(劣る)の4段階で相対的に評価した。
(2)粗さ平均長さRSmおよび粗さ平均高さRc
上記で作製した繊維強化樹脂基材を用いて測定した。繊維強化樹脂基材に含まれる構成要素[A]から選んだ任意の強化繊維の繊維方向に対し、繊維強化樹脂基材の平面視における45度の角度にて、繊維強化樹脂基材を平面方向に対し垂直にカットして断面を得た。該断面について、光学顕微鏡を用いて、1000倍の倍率で画像を撮影した。得られた画像中の任意の500μm四方の観察範囲において、前記断面曲線要素の測定方法2により得られる断面曲線要素のJIS B0601(2001)で定義される、粗さ平均長さRSmおよび粗さ平均高さRcを測定した。
(3)繊維強化樹脂基材の接合強度(構成要素[B]と構成要素[C]の接合強度)
図7に示すように繊維強化樹脂基材の両表面に接着剤を用いて金属部材を貼りつけ、ISO19095に記載の重合せ試験片(タイプB)を作製した。得られた試験片、“インストロン”(登録商標)5565型万能材料試験機(インストロン・ジャパン(株)製)および試験片保持具を使用して、ISO19095(2015)規格に従い、繊維強化樹脂基材の接合強度を評価した。接合強度は、以下のとおり評価した。
15MPa以上:A
10MPa以上15MPa未満:B
5MPa以上10MPa未満:C
5MPa未満:D。
(4)含浸率
繊維強化樹脂基材において、構成要素[A]の繊維方向と直交する断面において、光学顕微鏡を用いて500倍の断面画像を撮影し、前記式(4)に基づき、含浸率を測定した。
(5)外観
得られた繊維強化樹脂基材の強化繊維の乱れについて、目視による判断を行った。強化繊維が引出工程から引取工程への流れ方向とほぼ平行に乱れがない場合をA(良好)、湾曲するなどわずかに乱れがある場合をB(繊維乱れ小)、波状に繊維が蛇行するなど大きな乱れがある場合をC(繊維乱れ大)の3段階で評価した。
(6)使用した材料、器具
[炭素繊維(1)]
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体を用いて、紡糸、焼成処理、および表面酸化処理を行い、総単糸数12,000本の連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維の特性は次に示す通りであった。
単繊維径:7μm
密度:1.8g/cm
引張強度:4600MPa
引張弾性率:220GPa。
[ガラス繊維(1)]
集束処理を施した総単糸数1,600本の連続した連続E−ガラス繊維を使用した。この連続E−ガラス繊維の特性は次に示す通りであった。
単繊維径:13μm
引張強度:3400MPa
引張弾性率:72GPa
引張伸度:3%
密度:2.6g/cm
[強化繊維マット(1)]
炭素繊維(1)をカートリッジカッターで5mmにカットし、チョップド炭素繊維を得た。水と界面活性剤(ナカライテクス(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名))とからなる濃度0.1質量%の分散液を作製し、この分散液とチョップド炭素繊維とから、強化繊維マットの製造装置を用いて、強化繊維マット(1)を製造した。製造装置は、分散槽としての容器下部に開口コックを有する直径1000mmの円筒形状の容器と、分散槽と抄紙槽とを接続する直線状の輸送部(傾斜角30°)を備えている。分散槽の上面の開口部には撹拌機が付属し、開口部からチョップド炭素繊維および分散液(分散媒体)を投入可能である。抄紙槽が、底部に幅500mmの抄紙面を有するメッシュコンベアを備える槽であり、炭素繊維基材(抄紙基材)を運搬可能なコンベアをメッシュコンベアに接続している。抄紙は分散液中の炭素繊維濃度を0.05質量%として行った。抄紙した炭素繊維基材を200℃の乾燥炉で30分間乾燥し、強化繊維マット(1)を得た。得られたマットの目付は100g/mであった。
[PA6樹脂、PA6樹脂フィルム]
PA6樹脂として、“アミラン(登録商標)”CM1001(東レ(株)製)を使用した。またPA6樹脂を用いて、目付100g/mのフィルム(融点225℃)を作製した。
[PP樹脂、PP樹脂フィルム]
未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J105G)80質量%と、酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”QB510)20質量%とからなる樹脂を使用した。またPP樹脂を用いて、目付け100g/mのフィルム(融点165℃)を作製した。
[PPS樹脂、PPS樹脂フィルム]
PPS樹脂として、融点280℃の結晶性ポリアリーレンスルフィドを使用した。またPPS樹脂を用いて、目付け100g/mのフィルム(融点280℃)を作製した。
[PEKK樹脂、PEKK樹脂フィルム]
PEKK樹脂として、融点300℃のポリエーテルケトンケトン樹脂を使用した。またPEKK樹脂を用いて、目付け100g/mのフィルムを作製した。
[PEEK樹脂、PEEK樹脂フィルム]
PEEK樹脂として、融点343℃のポリエーテルエーテルケトン樹脂を使用した。またPEEK樹脂を用いて、目付け100g/mのフィルムを作製した。
[PA6射出樹脂]
PA6射出樹脂として、“アミラン(登録商標)”CM1011G−45(東レ(株)製)を使用した。
[PP射出樹脂]
炭素繊維(1)と前述したPP樹脂とを、2軸押出機(日本製鋼所(株)製、TEX−30α)を用いてコンパウンドし、繊維含有量30質量%の射出成形用ペレットを製造した。
(7)製造工程
[引出工程−1]
前記炭素繊維(1)または前記ガラス繊維(1)をボビンから引き出して、単位面積当たりの繊維質量が100g/m、および幅が20mmとなるようにシート状に一方向に整列させた連続強化繊維シートとして連続的に引き出した。
[引出工程−2]
前記強化繊維マット(1)製造時のコンベヤ走行方向を0°方向として、単位面積当たりの繊維質量が100g/m、幅が20mmとなるようにシート状にトリムした強化繊維マット(1)を連続的に引き出した。
[第1の含浸工程−1]
引出工程において連続的に引き出された連続強化繊維シートの一方の表面に、構成要素[B]として表1または2に記載の樹脂フィルムを配置して、IRヒータで加熱して構成要素[B]を溶融させ、連続強化繊維シート片面全面に付着させた。これを(構成要素[B]の融点−100℃)の表面温度に設定したニップロールで加圧して、構成要素[B]を連続強化繊維シートに含浸させ、冷却して繊維強化樹脂中間体を得た。
[第1の含浸工程−2]
引出工程において連続的に引き出された連続強化繊維シートの第1の表面に構成要素[B]として表1に記載の樹脂フィルムを配置し、第2の表面に構成要素[C]として表1に記載の樹脂フィルムを配置し、2つの樹脂フィルムで連続強化繊維シートを挟みこむようにした。これらをIRヒータで加熱して連続強化繊維シートを走行させつつ構成要素[B]および構成要素[C]を溶融または軟化させ、連続強化繊維シートに付着させ、構成要素[B]または構成要素[C]の融点またはガラス転移温度のうちどちらか低い値を示す温度より100℃低い表面温度に設定したニップロールで加圧して、構成要素[B]および構成要素[C]を連続強化繊維シートに含浸させ、冷却して繊維強化樹脂基材を得た。
[第2の含浸工程−1]
第1の含浸工程−1により得られた連続強化繊維シートの第1の表面に構成要素[B]が含浸した繊維強化樹脂中間体の第2の表面に構成要素[C]として表1または2に記載の樹脂フィルムを積層した。これらをIRヒータで加熱して構成要素[C]を溶融または軟化させ、走行する連続強化繊維シートの第2の表面に付着させた。構成要素[C]の融点またはガラス転移温度のうちどちらか低い値を示す温度より100℃低い表面温度に設定したニップロールで加圧して、構成要素[C]を連続強化繊維シートに含浸させ、冷却して繊維強化樹脂基材を得た。
[引取工程−1]
上記工程により得られた繊維強化樹脂基材をドラムワインダーで巻き取った。
[引取工程−2]
上記工程により得られた繊維強化樹脂基材を1m長さ毎にカットした。
なお、表中の繊維強化樹脂基材の構成において、例えば[B]/[A]/[C]は、構成要素[B]、構成要素[A]および構成要素[C]がこの順に積層され、繊維強化樹脂基材の一方の表面に構成要素[B]が存在し、もう一方の表面に構成要素[C]が存在することを示す。各実施例で得られた繊維強化樹脂基材の構成において、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域がそれぞれ層状をなして隣接することにより境界面を形成していた。
(実施例1)
材料として表1に記載の構成要素[A]、[B]および[C]、製造工程として表1に記載の工程からなるロールツーロールの連続製造装置により、速度5.0m/minにて繊維強化樹脂基材を製造した。得られた繊維強化樹脂基材の特性を表1に示す。
(実施例2)
構成要素[B]としてPPS樹脂を、構成要素[C]としてPA6樹脂を用いること、使用する樹脂に伴い、各種成形温度を表1に記載のTb、Tcの値に従って変更すること以外は実施例1と同様にして繊維強化樹脂基材を製造した。得られた繊維強化樹脂基材の特性を表1に示す。
(実施例3)
構成要素[B]としてPEKK樹脂を、構成要素[C]としてPA6樹脂を用いること、使用する樹脂に伴い、各種成形温度を表1に記載のTb、Tcの値に従って変更すること以外は実施例1と同様にして繊維強化樹脂基材を製造した。得られた繊維強化樹脂基材の特性を表1に示す。
(実施例4)
構成要素[B]としてPPS樹脂を用いること、使用する樹脂に伴い、各種成形温度を表1に記載のTb、Tcの値に従って変更すること以外は実施例1と同様にして繊維強化樹脂基材を製造した。得られた繊維強化樹脂基材の特性を表1に示す。
(実施例5)
構成要素[B]としてPEEK樹脂を、構成要素[C]としてPA6樹脂を用いること、使用する樹脂に伴い、各種成形温度を表1に記載のTb、Tcの値に従って変更すること以外は実施例1と同様にして繊維強化樹脂基材を製造した。得られた繊維強化樹脂基材の特性を表1に示す。
(実施例6)
構成要素[B]としてPEEK樹脂を用いること、使用する樹脂に伴い、各種成形温度を表1に記載のTb、Tcの値に従って変更すること以外は実施例1と同様にして繊維強化樹脂基材を製造した。得られた繊維強化樹脂基材の特性を表2に示す。
(実施例7)
構成要素[B]と構成要素[C]を同時に含浸させる第1の含浸工程−2のみで繊維強化樹脂基材を得ること以外は実施例1と同様にして繊維強化樹脂基材を製造した。得られた繊維強化樹脂基材の特性を表2に示す。
(実施例8)
構成要素[A]を3層用いて、繊維強化樹脂基材の構成を[B]/[A]/[B]/[A]/[C]/[A]/[C]とすること以外は、実施例1と同様にして繊維強化樹脂基材を製造した。得られた繊維強化樹脂基材の特性を表2に示す。
(実施例9)
構成要素[A]としてガラス繊維を用いること以外は実施例1と同様にして繊維強化樹脂基材を製造した。得られた繊維強化樹脂基材の特性を表2に示す。
(参考例1)
実施例1で得られた繊維強化樹脂基材を切り出し、射出成形金型間に配置した。金型を閉じ、構成要素[B]側にはPA6射出樹脂、構成要素[C]側にはPP射出樹脂となるように2種類の射出材料を用いて2色成形を行った。これにより、PA6からなる別の部材が構成要素[B]を介して接合され、PPからなる別の部材が構成要素[C]を介して接合された一体化成形品を得た。
(比較例1)
構成要素[A]を用いないこと以外は実施例7と同様にして非強化樹脂基材を製造した。得られた非強化樹脂基材の特性を表3に示す。
(比較例2)
構成要素[A]として強化繊維マットを用いる(炭素繊維の形態がランダム)こと以外は実施例1と同様にして繊維強化樹脂基材を製造した。得られた繊維強化樹脂基材の特性を表3に示す。
(比較例3)
実施例1と同様の材料を準備した。第1の含浸工程−2において第2の表面に構成要素[B]を配置したこと(連続強化繊維シートの両表面ともに構成要素[B]となる)以外は、実施例1と同様にして、構成要素[A]および[B]からなる繊維強化樹脂(I)を得た。これとは別に、第1の含浸工程−1において第1の表面に構成要素[C]を配置したこと(連続強化繊維シートの両表面ともに構成要素[C]となる)以外は、実施例1と同様にして、構成要素[A]および[C]からなる繊維強化樹脂(II)を得た。得られた繊維強化樹脂(I)と繊維強化樹脂層(II)を積層したものを、構成要素[C]のみが溶融する温度にIRヒータで加熱して走行させつつ、構成要素[C]の融点よりも100℃低い表面温度に設定したニップロールで加圧して融着させ、繊維強化樹脂基材を得た。
(参考例2)
構成要素[B]と構成要素[C]の両方にPP樹脂を用いること以外は実施例7と同様にして繊維強化樹脂基材を製造した。得られた繊維強化樹脂の特性を表3に示す。得られた繊維強化樹脂基材を切り出し、参考例1と同様に射出成形金型間に配置した。金型を閉じ、一方の表面側にPA6射出樹脂、もう一方の表面側にPP射出樹脂となるように2種類の射出材料を用いて2色成形を行った。このとき、PA6射出樹脂は繊維強化樹脂と溶着が出来ず、剥離した。
Figure 2020192809
Figure 2020192809
Figure 2020192809
<検討>
実施例1〜9と比較例1〜3の比較により、本発明により得られる繊維強化樹脂基材が、一般的には相溶性が非常に低く、複合化が困難であった樹脂の組み合わせを複合化可能としたことが示された。特に、実施例1や実施例4〜6では、複数の樹脂を同時に溶融させる含浸方法(例えば、特許文献2に記載)では、一方の樹脂が分解してしまう融点またはガラス転移温度の差が100℃以上も離れた樹脂の組み合わせにおいても、樹脂を分解・劣化させることなく複合化を可能とした。また実施例8では、強化繊維の使用量を増やすことで厚みの厚い繊維強化樹脂基材が得られることが示された。一方、比較例1では、構成要素[A]である強化繊維を欠くため、これらの樹脂が容易に剥離し、複合化することが不可能であった。さらに比較例2では、実施例で連続的に巻き取り可能であった樹脂の組み合わせであったにも関わらず、強化繊維が引きちぎれ、断続的な製造となった。また得られた繊維強化樹脂基材を観察するとアンカリング深さ(上記粗さ平均高さRcなど)のバラツキが大きいことが示された。比較例3では、実施例1と同じ材料構成であっても、強化繊維が繊維強化熱可塑性樹脂(I)および繊維強化熱可塑性樹脂(II)の境界面をまたいで存在していなかったため、各層が容易に剥離してしまい、目的の基材を得ることができなかった。
参考例1では、実施例1で得られた繊維強化樹脂基材を媒体とし、図8(c)に示すような2種類の異なる樹脂からなる部材が接合された一体化成形品を得ることができた。この樹脂の組み合わせは、比較例1で示すように、従来技術では容易に剥離する組み合わせであり、本発明の繊維強化樹脂基材を用いることで、強固に一体化した一体化成形品を得られることが分かった。従来技術では、このような樹脂の組み合わせにおいて接合強度を担保するためには、図8(a)や(b)に示すような嵌め合いを形成する必要があったが、本発明の繊維強化樹脂基材を用いることで、このような必要がなく、形状などの設計自由度を高めることが可能である。また参考例2のように、繊維強化樹脂基材の両方の面に同種の樹脂を用いた場合は、参考例1のように異なる樹脂からなる部材を接合することはできなかった。
本発明に係る繊維強化樹脂基材は、異なる特性の組み合わせからなる樹脂、特に相溶性の低い複数の熱可塑性樹脂を複合化しているため、従来技術では困難であった、異なる特性の組み合わせを有する基材を得ることが可能である。また、本発明の繊維強化樹脂基材および一体化成形品は、航空機構造部材、風車の羽根、自動車構造部材およびICトレイやノートパソコンの筐体などのコンピューター用途等へ適用することで、構造体としての優れた性能を示す上、上記用途に係る製品の成形時間および成形コストを大きく低減させることが可能である。
A:断面A
B:断面B
C:断面C
1:繊維強化樹脂基材
2:構成要素[A](強化繊維)
3:構成要素[B](熱可塑性樹脂(b))および構成要素[C](熱可塑性樹脂(c))
4:繊維方向(基準軸)
5:観察断面(繊維強化樹脂基材がなす平面に対して垂直にカットして得られる断面)
6:構成要素[B]
7:構成要素[C]
8:観察断面
9:境界面
10:構成要素[C]の端部(基準線)
11:垂基線
12:断面曲線
13:連続繊維強化シート
14:繊維強化樹脂中間体
15:引出工程
16:第1の含浸工程
17:第2の含浸工程
18:引取工程
19:第1の表面
20:第2の表面
21:金属部材
22:試験片保持具
23:PA射出材料
24:PP射出材料

Claims (11)

  1. 次の構成要素[A]、[B]および[C]を含む繊維強化樹脂基材であって、
    [A]強化繊維;
    [B]熱可塑性樹脂(b);
    [C]熱可塑性樹脂(c);
    構成要素[A]は一方向に配列しており、
    該繊維強化樹脂基材において、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域が存在し、
    繊維強化樹脂基材の片側の表面に構成要素[B]を含む樹脂領域が存在しており、
    構成要素[B]および構成要素[C]のHansen溶解度パラメーターの距離Ra(bc)が式(1)を満たし、
    Ra(bc)={4(δDB−δDC)+(δPB−δPC)+(δHB−δHC)1/2≧8 式(1)
    Ra(bc):構成要素[B]と構成要素[C]のHansen溶解度パラメーターの距離;
    δDB:構成要素[B]の分子間の分散力によるエネルギー;
    δDC:構成要素[C]の分子間の分散力によるエネルギー;
    δPB:構成要素[B]の分子間の双極子相互作用によるエネルギー;
    δPC:構成要素[C]の分子間の双極子相互作用によるエネルギー;
    δHB:構成要素[B]の分子間の水素結合によるエネルギー;
    δHC:構成要素[C]の分子間の水素結合によるエネルギー;
    構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域との境界面をまたいで両樹脂領域に含まれる構成要素[A]が存在する、繊維強化樹脂基材。
  2. 前記繊維強化樹脂基材の平面視において、前記構成要素[A]の繊維方向に対し45度の方向に、繊維強化樹脂基材に垂直な断面を得た場合に、
    前記断面において、両樹脂領域の境界面が形成する断面曲線の、JIS B0601(2001)で定義される粗さ平均長さRSmが100μm以下であり、粗さ平均高さRcが3.5μm以上である、請求項1に記載の繊維強化樹脂基材。
  3. 構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域がそれぞれ層状をなして隣接することにより前記境界面を形成している、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂基材。
  4. 含浸率が80%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化樹脂基材。
  5. 式(2)を満たす、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化樹脂基材:
    50≦ΔT≦200 ・・・ 式(2)
    ΔT:TbとTcの差の絶対値;
    Tb:熱可塑性樹脂(b)が結晶性樹脂の場合はその融点、非晶性樹脂の場合はそのガラス転移温度[℃];
    Tc:熱可塑性樹脂(c)が結晶性樹脂の場合はその融点、非晶性樹脂の場合はそのガラス転移温度[℃]。
  6. 前記TbおよびTcの少なくとも一方が250℃以下である、請求項5に記載の繊維強化樹脂基材。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化樹脂基材に、別の部材を接合してなる一体化成形品。
  8. 別の部材が、繊維強化樹脂基材と、構成要素[B]および/または構成要素[C]を介して接合されてなる、請求項7に記載の一体化成形品。
  9. 次の構成要素[A]、[B]および[C]を含む繊維強化樹脂基材の製造方法であって、
    [A]強化繊維;
    [B]熱可塑性樹脂(b);
    [C]熱可塑性樹脂(c);
    少なくとも以下の引出工程、第1の含浸工程および第2の含浸工程が構成要素[A]を走行させながら、連続でこの順に実施されてなり、
    <引出工程>連続した構成要素[A]を引き揃えて構成要素[A]が一方向に配列した連続強化繊維シートを得た後、得られた構成要素[A]を含む連続強化繊維シートを、後段の工程に向かって繊維方向に供給する工程;
    <第1の含浸工程>前記連続強化繊維シートの一方の面から構成要素[B]を含浸させ、前記連続強化繊維シートの第1の表面に構成要素[B]を存在させた繊維強化樹脂中間体を得る工程;
    <第2の含浸工程>前記第1の表面とは反対の第2の表面から構成要素[C]を含浸させ、繊維強化樹脂基材を得る工程;
    構成要素[B]および構成要素[C]のHansen溶解度パラメーターの距離Ra(bc)が式(3)を満たす繊維強化樹脂基材の製造方法:
    Ra(bc)={4(δDB−δDC)+(δPB−δPC)+(δHB−δHC)1/2≧8 式(3)
    Ra(bc):構成要素[B]と構成要素[C]のHansen溶解度パラメーターの距離
    δDB:構成要素[B]の分子間の分散力によるエネルギー;
    δDC:構成要素[C]の分子間の分散力によるエネルギー;
    δPB:構成要素[B]の分子間の双極子相互作用によるエネルギー;
    δPC:構成要素[C]の分子間の双極子相互作用によるエネルギー;
    δHB:構成要素[B]の分子間の水素結合によるエネルギー;
    δHC:構成要素[C]の分子間の水素結合によるエネルギー。
  10. 得られた繊維強化樹脂基材において、
    構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域が存在し、
    構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域との境界面をまたいで両樹脂領域に含まれる構成要素[A]が存在し、
    前記繊維強化樹脂基材の平面視において、構成要素[A]の繊維方向に対し45度の方向に、繊維強化樹脂基材に垂直な断面を得た場合に、
    前記断面において、両樹脂領域の境界面が形成する断面曲線の、JIS B0601(2001)で定義される粗さ平均長さRSmが100μm以下であり、粗さ平均高さRcが3.5μm以上である、請求項9に記載の繊維強化樹脂基材の製造方法。
  11. 構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域がそれぞれ層状をなして隣接することにより前記境界面を形成している、請求項10に記載の繊維強化樹脂基材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2022107709A1 (ja) * 2020-11-20 2022-05-27 東レ株式会社 繊維強化樹脂基材、プリフォーム、一体化成形品および繊維強化樹脂基材の製造方法
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