JP2020182905A - 油吸着剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、食品用としても用いることができる、油吸着性に優れた新規な油吸着剤を提供することを目的とする。【解決手段】特定の性質を有する多孔質蛋白素材を有効成分として含有する油吸着剤が、油吸着性に優れることを見出した。【選択図】なし

Description

本発明は、油吸着剤に関する。
魚介類や肉類を金網等で焼いて調理する際に、それらの被調理物から滲出して滴り落ちる油が調理器具を汚したり、発火して被調理物を過度に焼いてしまったりすることが問題となる。
また、家庭においても、しばしば天ぷらやフライなどで揚げ物がされているが、大量の廃油が下水等に流される場合があり、環境汚染の原因にもつながる。また、垂れこぼし等による余分な油の処理も問題である。
一方、タンカー等の座礁による重油流出事故で、流出した油類による環境汚染は深刻な問題となっている。又、産業界においても含油排水の処理は深刻な問題であり、活性汚泥等の生物処理の維持管理上及び公害防止の観点から、油水混合系からの油類の除去は重要である。
このような問題を解決するため、様々な検討がされてきている。
例えば、結晶性アルミノ珪酸塩を主成分とする多孔質粒状物を含む成形体からなる油吸着剤に関する技術(特許文献1)、水中に脂肪族カルボン酸金属塩を完全に溶解させた後、撹拌、徐冷することによって析出形成させた繊維状集合結晶体よりなる天ぷら廃油の固形化材に関する技術(特許文献2)、難水溶性の無機及び有機多孔質体粒子から選ばれる1種に、融点40℃以上の難水溶性親油有機化合物を均質に被覆または沈着させて得られる複合粒子からなる油水系の油吸着剤に関する技術(特許文献3)が開示されている。
特開平10−102048号公報 特開2002−265982号公報 特開2002−316147号公報
引用文献1〜3の技術では油吸着性が十分とはいえず、さらなる改良が望まれている。
本発明は、食品用としても用いることができる、油吸着性に優れた新規な油吸着剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題の解決に対し鋭意検討を重ねた結果、特定の性質を有する顆粒状蛋白素材を有効成分として含有する油吸着剤が、油吸着性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)粉末状植物性蛋白素材を含み、下記A〜Dの特徴を有する多孔質蛋白素材を有効成分として含有する油吸着剤、
A.蛋白質含量が乾燥重量あたり50重量%以上、
B.NSIが50以下、
C.嵩比重が0.2g/cm以下、
D.吸油倍率が3倍以上
(2)多孔質蛋白素材のA、Dの要件が、
A.蛋白質含量が乾燥重量あたり75重量%以上、
D.吸油倍率が4倍以上、
である、(1)記載の油吸着剤、
(3)多孔質蛋白素材のDの要件が、
D.吸油倍率が5倍以上、
である、(1)または(2)記載の油吸着剤、
(4)粉末状植物性蛋白素材を含み、下記A〜Dの特徴を有する多孔質蛋白素材を有効成分として含有する油吸着剤を油中に添加、または油を該油吸着剤に添加する、油の吸着方法、
A.蛋白質含量が乾燥重量あたり50重量%以上、
B.NSIが50以下、
C.嵩比重が0.2g/cm以下、
D.吸油倍率が3倍以上、
である。
本発明により、油吸着性に優れた新規な油吸着剤を提供することができる。
実施例の試験1で得られた試験品3,4およびその原料である分離大豆蛋白の粒子を顕微鏡で100倍と300倍で観察した図面代用写真である。試験品4では原料の粉末状大豆蛋白の粒子から大きく組織が変化し、不定形に粗大化し、多孔質の顆粒となっていることがわかる。
(油吸着剤)
本発明の油吸着剤は、粉末状植物性蛋白素材を含み、下記A〜Dの特徴を有する多孔質蛋白素材を有効成分として含有することを特徴とする。
A.蛋白質含量が乾燥重量あたり50重量%以上、
B.NSIが50以下、
C.嵩比重が0.2g/cm以下、
D.吸油倍率が3倍以上。
本発明の油吸着剤は吸油性に優れており、後述する吸油倍率の試験において、吸油倍率が3倍以上という特徴を有する。
また、本発明の油吸着剤は、有効成分として含有する多孔質蛋白素材を、必要に応じて分級したものを使用することもできる。分級の程度は特に制限されないが、例えば、試験篩い(ISO 3310-1規格準拠)に相当するものを用いて分級したときに、粒度分布が、5.5meshパス/10meshオン、10meshパス/20meshオンまたは20meshパス/42meshオン等のものを用いることができる。
油吸着の対象となる油の種類は特に限定されない。例えば、植物性油としては、大豆油、綿実油、菜種油、コーン油、サフラワー油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、米油、ごま油、シア脂、オリーブ油、またはこれらの油のエステル交換油、分別油、硬化油が挙げられる。また、動物性油としては、牛脂、豚脂、乳脂、魚油等が挙げられる。また、軽油、重油、パラフィン油、ナフサ、ワックス等の炭化水素系化合物を多量に含む石油系及び鉱物系の油、シリコーン油等も挙げられる。また、これらの油が2種以上混合された油も、油吸着の対象となる。
本発明の油吸着剤の添加量の目安としては、本発明の油吸着剤は、後述する油吸着の試験において、吸油倍率が3倍以上という能力を有するので、この能力を基にして吸着すべき油の量に応じて、適宜添加量を設定すれば良い。
本発明の油吸着剤の使用方法は、状況に応じて適宜、適切な方法を選択すれば良い。
例えば、天ぷらの廃油を吸着させる場合、天ぷら廃油中に本発明の油吸着剤を適正な量を投入することで、油吸着することができる。その後、油吸着したものを回収すれば良い。
また、食品をフライした後に、油を切るためにシートや紙などにフライ品を置くことがあるが、本発明の油吸着剤を例えば、トレーなどに敷き詰めて、その上にフライ品を載せることでフライ品からたれ落ちる油を吸着することができる。
また、工場排水に含まれる油分、海洋に流出される油に対しては、本発明の油吸着剤を添加し、その後回収する。
(多孔質蛋白素材)
以下、本発明の多孔質蛋白素材の特徴を具体的に説明する。
なお、「多孔質」とは、木炭やゼオライトのように多数の細孔を持つことをいう。
○蛋白質
本発明の多孔質蛋白素材は、蛋白質を乾燥重量あたり50重量%以上含有することが特徴である。該蛋白質含量は、下限として乾燥重量あたり55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、特に75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、又は90重量%以上であることができる。また該含量は、乾燥重量あたり99重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下又は80重量%以下であることができる。
なお、蛋白質の含量は、ケルダール法により分析される窒素量に6.25の窒素換算係数を乗じて求めるものとする。
○水溶性(低水溶性)
本発明の多孔質蛋白素材は、低水溶性を示す。その水溶性の指標としては、水溶性窒素指数(Nitrogen Solubility Index:NSI)を用いることができ、NSIが低いほど低水溶性である。低水溶性の指標として、本発明の多孔質蛋白素材は、NSIが50以下、好ましくは45以下、40以下、好ましくは35以下、より好ましくは30以下が適当である。
なお、NSIは所定の方法に基づき、全窒素量に占める水溶性窒素(粗蛋白)の比率(重量%)で表すことができ、本発明においては以下の方法に準じて測定された値とする。
すなわち、試料3gに60mlの水を加え、37℃で1時間プロペラ攪拌した後、1400×gにて10分間遠心分離し、上澄み液(I)を採取する。次に、残った沈殿に再度水100mlを加え、再度37℃で1時間プロペラ撹拌した後、遠心分離し、上澄み液(II)を採取する。(I)液および(II)液を合わせ、その混合液に水を加えて250mlとする。これを濾紙(NO.5)にて濾過した後、濾液中の窒素含量をケルダール法にて測定する。同時に試料中の窒素量をケルダール法で測定し、濾液として回収された窒素量(水溶性窒素)の試料中の全窒素量に対する割合を重量%として表したものをNSIとする。
○嵩比重
本発明の多孔質蛋白素材は、嵩比重が小さいことが特徴であり、具体的には0.2g/cm以下であり、好ましくは0.15g/cm以下、より好ましくは0.12g/cm以下、さらに好ましくは0.1g/cm以下、最も好ましくは0.1g/cm未満である。
○吸油倍率
本発明の多孔質蛋白素材は、吸油性が従来の組織状大豆蛋白と比較して高いことも特徴である。吸油性の高さを表す指標として、吸油倍率を用いることができる。本発明の多孔質蛋白素材は、吸油倍率が3重量倍以上であり、特に4重量倍以上が好ましく、5重量倍以上又は6重量倍以上であることもできる。これに対して従来の市販の組織状大豆蛋白では約0.8〜1.7重量倍程度で、あまり吸油性は高くなかったが、本発明の多孔質蛋白素材は、従来の組織状大豆蛋白よりも3倍以上の吸油倍率を示しうる。なお、吸油倍率は以下の方法により測定する。
・吸油倍率の測定条件
試料10gに80℃のパーム油100gを加える。20分間吸油後、30meshのザルで水を切り、吸油後の試料の重量(Xg)を測定する。そして次の式により吸油倍率(Z)を求める。
Z=(X−10)/10
○形態(顆粒状、不定形、平均粒子径、色調)
本発明の多孔質蛋白素材は、典型的には、顆粒状である。本発明において「顆粒」とは粉末よりも粒径の大きい粒を意味する。
顆粒の大きさは特に限定されないが、国際規格「ISO 3301-1」に準拠した篩いにより、全顆粒重量の90重量%以上が、42メッシュにオンするものであることが適当である。ただし、本発明の多孔質蛋白素材は適宜粉砕して用いることもでき、その場合はより細かい顆粒状ないし粉末状となる。
本発明の多孔質蛋白素材は、粉体の加圧加熱処理により、粉体同士が集合、結着し、粗大化した粒子となるためか、典型的には特定の決まった形状を有さない、いわゆる不定形の顆粒であることが特徴である。一方、定形の顆粒としては、二軸エクストルーダーで製造される組織状蛋白素材や、押出し造粒された顆粒などがある。組織状蛋白素材は、装置内で原料と水を混練しつつ形成させた生地を加圧加熱処理して膨化させつつ、装置の先端に取り付けられた定形のダイから常圧下に押し出し、その出口において一定間隔で定形的に切断成形して得られる。そのため、本発明の多孔質蛋白素材は二軸エクストルーダーで製造される組織状蛋白素材とは形状において区別される。
○吸水倍率
本発明の多孔質蛋白素材は、吸水性が従来の組織状大豆蛋白と比較して高いことも特徴となり得る。吸水性の高さを表す指標として、吸水倍率を用いることができる。本発明の多孔質蛋白素材は、吸水倍率が7.5重量倍以上であり、特に8重量倍以上が好ましく、8.5重量倍以上又は9重量倍以上であることもできる。これに対して従来の市販の組織状大豆蛋白では約3.3〜7.4重量倍程度である。なお、吸水倍率は以下の方法により測定する。
・吸水倍率の測定条件
試料10gに80℃の水100gを加える。20分間吸水後、30meshのザルで水を切り、吸水後の試料の重量(Xg)を測定する。そして次の式により吸水倍率(Y)を求める。
Y=(X−10)/10
本発明の多孔質蛋白素材は、色調が従来の組織状蛋白素材よりも白く明るい色調であることも特徴となり得る。すなわち、多孔質蛋白素材の粉砕物を色差計によって反射光で色調を測定したとき、Hunter-Lab表色系における明度(L値)は75〜100、より好ましくは80〜95、さらに好ましくは84〜90である。そして褐色度(a値)は−5〜1.5であり、好ましくは−4〜0であり、より好ましくは−3〜−0.3であり、さらに好ましくは−2〜−0.7である。さらに黄色度(b値)は0〜18であり、好ましくは5〜17であり、より好ましくは10〜16であり、さらに好ましく12〜15.6である。上記のL値の範囲とa値の範囲はそれぞれ何れを選択し、組合せてもよい。
ちなみに、従来の二軸エクストルーダーで製造される組織状大豆蛋白の製品「フジニックPT-FL」(不二製油(株)製)の色調を一つ例示すると、L値が70.3、a値が2.4、b値が18.8であり、色調は明度が低く、褐色度の強い、本発明品とは格段に異なるものである。一方、粉末状分離大豆蛋白の製品「フジプロE」(不二製油(株)製)の色調を一つ例示すると、L値が83.4、a値が−0.64、b値が15.8であり、本発明の顆粒状蛋白素材は粉末状分離大豆蛋白と同等かそれ以上に明るく、褐色度が低いものとなり得る。なお、色調を測定するときのサンプルの粉砕物は、平均粒子径が60〜70μmとなるまで粉砕したものを用いる。
(多孔質蛋白素材の製造)
以下、本発明の多孔質蛋白素材の製造態様について、具体的に説明する。
○粉末状植物蛋白素材
本発明において「粉末状植物蛋白素材」は、原料である植物性原料から、蛋白質以外の成分、すなわち脂質、可溶性糖質、澱粉、不溶性繊維(オカラ)、ミネラルなどの一部又は全部を除去し、蛋白質の含量がより濃縮されたものを粉末化した蛋白素材をいう。その蛋白質含量は固形分中50重量%以上のものを用いることが好ましく、60重量%以上、70重量%以上、特に75重量%以上、80重量%以上又は90重量%以上のものを用いることもできる。
粉末状植物性蛋白素材は、種々の植物性原料から得ることができ、例えば大豆、エンドウ、緑豆、ヒヨコ豆、落花生、アーモンド、ルピナス、キマメ、ナタ豆、ツル豆、インゲン豆、小豆、ササゲ、レンズ豆、ソラ豆、イナゴ豆などの豆類や、ナタネ種子(特にキャノーラ品種)、ヒマワリ種子、綿実種子、ココナッツ等の種子類や、小麦、大麦、ライ麦、米、トウモロコシ等の穀類などの全粒物やその粉砕物が挙げられ、これらから油脂や澱粉を工業的に抽出した粕を用いることもできる。これらの植物性原料に通常含まれる主要な蛋白質は等電点がpH4.5付近に存在する。特に分離植物性蛋白として商業的に生産されている大豆、エンドウ、緑豆、ナタネ種子(キャノーラ種子)やこれらの油脂もしくは澱粉の抽出粕を用いることが好ましい。典型的な例として、大豆から得られる粉末状植物性蛋白素材としては、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、カードパウダー、脱脂豆乳粉末、低脂肪豆乳粉末等が挙げられ、さらにこれらの加水分解物も挙げられる。
粉末状植物性蛋白素材は、単一の種類を用いるだけでなく、複数の種類を所望の比率で粉混合し、原料として供してもよい。この場合、上述した粉末状植物性蛋白素材の固形分中の蛋白質含量は、該混合物の値を意味する。また例えば粉末状植物性蛋白素材と必要により粉末状動物性蛋白素材を用いたりすることができる。より具体的には粉末状大豆蛋白素材と粉末状乳蛋白素材を1:10〜10:1の比率で混合し、これを原料として供することもできる。
また、粉末状植物性蛋白素材以外の他の食品素材を適宜混合することもでき、これらの食品素材は粉末であることが好ましいが、粉体加圧加熱の操作において影響がない範囲であれば液状で混合してもよい。例えば、澱粉、水溶性食物繊維、糖類、塩類、調味料、酸味料、甘味料、苦味料、油脂、乳化剤、抗酸化剤、ビタミン類、微量栄養素、色素等が挙げられる。
ここでは大豆を例として分離大豆蛋白の典型的かつ非限定的な製造例を以下に挙げる。他の植物性原料を用いても下記の製造例に準じて植物性分離蛋白を製造することができる。
I)抽出工程
大豆原料として脱脂大豆を使用し、これに加水し攪拌等して懸濁液(スラリー)とし、蛋白質を水で抽出する。水は中性〜アルカリ性のpHとすることができ、塩化カルシウム等の塩を含むこともできる。これを遠心分離等の固液分離手段でオカラを分離し、蛋白質抽出液(いわゆる豆乳)を得る。この段階で加熱殺菌し、噴霧乾燥したものが、いわゆる脱脂豆乳粉末であり、これを粉末状植物性蛋白素材として用いることもできる。
II)酸沈殿工程
次に蛋白質抽出液に塩酸やクエン酸等の酸を添加し、該抽出液のpHを大豆蛋白質の等電点であるpH4〜5に調整し、蛋白質を不溶化させて酸沈殿させる。次に遠心分離等の固液分離手段により酸可溶性成分である糖質や灰分を含む上清(いわゆるホエー)を除去して、酸不溶性成分を含む「酸沈殿カード」を回収する。この段階で噴霧乾燥したものが、いわゆるカードパウダーであり、これを粉末状植物性蛋白素材として用いることもできる。
III)中和工程
次に酸沈殿カードに再度加水し、必要により該カードを水で洗浄後、「カードスラリー」を得る。そして該スラリーに水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリを加えて中和し、「中和スラリー」を得る。
IV)殺菌・粉末化工程
次に中和スラリーを加熱殺菌し、スプレードライヤー等により噴霧乾燥し、必要により流動層造粒を経て分離大豆蛋白を得る。
ただし、本発明における分離大豆蛋白は上記製造例にて製造されるものには限定されるものではない。大豆原料としては脱脂大豆の代わりに全脂大豆や部分脱脂大豆などの種々の大豆原料を用いることもできる。抽出手段も種々の抽出条件や装置を適用できる。蛋白質抽出液からホエーを除去する方法として酸沈殿を行う代わりに限外濾過膜等による膜濃縮を行うこともでき、その場合は中和工程は必ずしも必要ではない。さらに、大豆原料から予め酸性水やアルコールにより洗浄してホエーを除去した後に、中性ないしアルカリ性の水で蛋白質を抽出する方法を適用して製造することもできる。また、上記の何れかの段階にて蛋白質の溶液にプロテアーゼを作用させ、蛋白質を部分加水分解することもできる。
本発明の原料に用いる粉末状植物性蛋白素材は、高水溶性であるものを用いることができる。高水溶性の指標として、NSI(Nitrogen Solubility Index:窒素溶解指数)は少なくとも60以上であり、65以上、70以上、75以上、80以上、82以上、85以上、90以上、92以上、94以上又は96以上の場合もある。これらの比較的高いNSIを有する粉末状植物性蛋白素材は、水への分散性が良好ではなく、所謂「ママコ」と呼ばれるダマが水溶液の表面に浮いてしまい、水に素早く溶解させることが困難である。
○粉末状態での加圧加熱処理による顆粒化
本発明の粉末状植物性蛋白素材では、上記の粉末状植物性蛋白素材を、水系下ではなく、粉末状態で水蒸気による直接加熱方式で加圧加熱処理することが特徴である。かかる工程により、粉末状植物性蛋白素材が顆粒化され、本発明の多孔質蛋白素材を製造することができる。
加圧加熱処理における圧力は、多孔質蛋白素材が所望の品質となるように適宜設定することができるが、好ましくは0.3MPa以上又は0.4MPa以上とすることができ、また該加熱圧力は0.9MPa以下、0.8MPa以以下、0.7MPa以下、0.6MPa以下、0.5MPa以下又は0.4MPa以下とすることができる。さらに一つの好ましい態様として、0.3〜0.7MPaの範囲を選択できる。
加圧加熱処理における温度は、圧力に応じて変化するものであり、加圧状態であるため100℃を超える温度、態様によっては120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上、160℃以上又は170℃以上となり得る。温度の上限は設定されないが、通常は250℃以下である。
加圧加熱処理の加熱時間は、多孔質蛋白素材が所望の品質となるように、加熱温度との組合せを考慮して適宜設定することができるが、短時間の方が好ましく、1分以下、30秒以下、20秒以下、10秒以下、5秒以下、2秒以下、1秒以下、特に0.5秒以下又は0.3秒以下とすることができる。また該加熱時間は0.00001秒以上、0001秒以上又は0.001秒以上とすることができる。さらに一つの好ましい態様として、0.00001〜2秒や0.0001〜1秒、0.001〜0.5秒の範囲を選択できる。
加圧加熱処理の加熱方式には、大きな分類として直接加熱方式と間接加熱方式があるが、本発明は水蒸気による直接加熱方式を採用することが特徴である。かかる加圧加熱処理を行うことができる粉体加熱処理装置としては、気流式粉体殺菌装置である、「KPU」((株)大川原製作所)、「SKS-50」((株)セイシン企業)、「Sonic Stera」((株)フジワラテクノアート製)やこれらの改良タイプ等などがある。このように、過熱水蒸気等の水蒸気による直接加熱方式によって、粉末状植物性蛋白素材の粉末を直接水蒸気に曝露させて加圧加熱処理することにより、粉末状植物性蛋白素材が集合して顆粒化させることができる。
さらに、本発明では、直接加熱方式の加圧加熱処理の中で、粉末状植物性蛋白素材を粉末状態で垂直方向に落下させつつ、水蒸気による直接加熱方式で加圧加熱処理することが重要である。このような加熱方式を実施するための加熱加圧装置は、装置内に導入された粉体が垂直方向に落下できる閉鎖系の加熱空間が備えられており、その空間内を粉体が落下する間に加圧状態で水蒸気を接触させる機構を有する装置が好ましい。本発明においては、このような加圧加熱装置を「縦型タイプ」と称する。縦型タイプの態様として、国際公開WO2009/145198号に開示されるような粉粒体の殺菌装置を加圧加熱装置に応用することができ、具体的には市販の「Sonic Stera」((株)フジワラテクノアート製)を用いることができる。
これにより、吸油性に優れる多孔質蛋白素材の製造を可能とする。
一方、水蒸気により加圧加熱される閉鎖系の加熱空間が水平方向に配置されている、いわゆる「横型タイプ」の加圧加熱装置を用いて、水溶性の高い植物性蛋白素材を原料として粉体加熱をすると、装置内部に粉体が張り付いてしまい製造効率が非効率となる。
また、従来の組織状蛋白素材の製造に用いられていた二軸エクストルーダーは、粉体殺菌装置としても用いられているが、間接加熱方式の加圧加熱処理であり、水蒸気が直接粉体に曝露される加熱方式ではないため、本発明の加圧加熱処理とは方式が全く異なる方法である。
以上により製造された多孔質蛋白素材は、そのまま製品とすることができる。また必要によりさらに加工することができ、例えば適当な粒度に粉砕又は解砕することができる。また分級機に供して所望の粒度範囲の顆粒に分画して整粒した多孔質蛋白素材を得ることができる。
以下に実施例を記載することで本発明を説明する。尚、例中の部及び%は特に断らない限り重量基準を意味するものとする。
(試験1)
以下の通り、粉末状植物性蛋白素材を粉末状態で、水蒸気による直接加熱方式の加圧加熱処理を行った。
粉末状植物性蛋白素材のサンプルとして、市販の分離大豆蛋白「フジプロF」(不二製油(株)製)を用いた。本サンプルは、蛋白質含量が91.2%であり、NSIは98.6の高水溶性タイプであった。
加圧加熱装置としては、市販の「Sonic Stera」((株)フジワラテクノアート製)を用いた。本装置は、加熱空間内において粉体を垂直方向に落下させつつ水蒸気による直接加熱方式で加圧加熱処理ができる、縦型タイプの装置である。
表1の加熱処理条件により分離大豆蛋白に対して粉体加圧加熱処理を行い、得られた処理物の水分、NSI、嵩比重を測定し、表1にまとめた(試験品1〜4)。品質比較のため、上記分離大豆蛋白と、市販の組織状大豆蛋白A〜D(不二製油(株)製、二軸エクストルーダーで製造)についての各種データを掲載した。
(表1)
試験品1〜3の加熱処理条件では、粉末状ないし細かい顆粒が混じった状態で、NSIが60以上あり、嵩比重も分離大豆蛋白や組織状大豆蛋白と変わらないものであった。しかし、本発明品である試験品4の加熱処理条件になると、形状は「不定形」の顆粒状に変化し、NSIは40以下に低下し、嵩比重は0.2g/cm以下の小さいものになり、性状が試験品1〜3とは大きく異なるものとなった。
これに対して組織状大豆蛋白は二軸エクストルーダーの出口で一定の間隔でカッティングして成形されるため、形状が「略定形」の顆粒であり、嵩比重が試験品4よりも大きい傾向であった。
(試験2) 顕微鏡観察
試験品3,4および原料の分離大豆蛋白について、卓上顕微鏡「Miniscope TM-1000」((株)日立ハイテクノロジーズ製)で観察を行った。図1に各サンプルを100倍と300倍で観察した粒子の写真を示した。写真でも明らかな通り、分離大豆蛋白と試験品3はほとんど変わらない粒子形状であったが、試験品4は粒子集まって不定形に粗大化していた。
(試験3) 吸水性・吸油性の比較
試験1で得られた試験品3,4、分離大豆蛋白、組織状大豆蛋白A〜Dと、パン粉の吸水性と吸油性を調べた。結果を表2に示した。
(表2)
試験品4は試験品3に比べて吸水倍率と吸油倍率が共に高かった。特に吸油倍率が2倍以上高くなっていた。また試験品4は分離大豆蛋白とは全く異なる吸水性と吸油性を持つものに性状が変わっており、市販の組織状大豆蛋白A〜Dと比較しても、吸水倍率と吸油倍率が共に高くなっていた。組織状大豆蛋白Dは比較的吸水性と吸油性が高いものであったが、試験品4はそれを上回る吸水性と吸油性を有しており、特に吸油倍率は3倍以上高くなっていた。そして、試験品4の吸水性と吸油性はパン粉のそれと比較しても大幅に高いものであった。
(試験4) 色調の比較
試験1で得られた試験品4、分離大豆蛋白、組織状大豆蛋白Dの色調(Hunter-Lab表色系)を色差計で測定し、明度(L値)、褐色度(a値)、黄色度(b値)を調べた。試験品4と組織状大豆蛋白Dは予め粉砕機「ミクロパウダーKGW G-015」(槇野産業(株)製)を用いて平均粒子径が60〜70μmとなるように微粉砕して分析に供した。結果を表3に示した。
(表3)
試験品4は組織状大豆蛋白Dと比較して、明度が非常に高く、褐色度は非常に低いものであり、黄色度も低いものであった。また、原料である分離大豆蛋白と比較しても同等の色調を有しており、むしろ明度がより高く、褐色度と黄色度はより低い傾向となっており、外観上も白く明るい色調が増す傾向であった。
(試験5) 分級試験
試験品4を試験篩い(ISO 3310-1規格準拠)を用いて分級し、粒度分布を測定した。また、各分級品についての吸水倍率と吸油倍率を測定した。結果を表4に示した。
(表4)
試験品4の全顆粒重量に占める42mesh(目開き0.355mm)にオンする顆粒重量の割合は、92.4%であり、90%以上であった。吸水倍率は粒子が細かいほど高く、20meshパスの分級品が最も高くなった。一方、吸油倍率は10meshパス/20meshオンの分級品が特に高くなった。
(試験6)他の素材の吸油性との比較
他の吸油性のある素材について、吸油性を調べた。各素材と吸油性の結果を表5に示した。
(表5)
表5に示すように、他の素材の吸油倍率は、試験品4と比較して低く、試験品4の吸油性が優れていることが確認された。

Claims (4)

  1. 粉末状植物性蛋白素材を含み、下記A〜Dの特徴を有する多孔質蛋白素材を有効成分として含有する油吸着剤。
    A.蛋白質含量が乾燥重量あたり50重量%以上、
    B.NSIが50以下、
    C.嵩比重が0.2g/cm以下、
    D.吸油倍率が3倍以上
  2. 多孔質蛋白素材のA、Dの要件が、
    A.蛋白質含量が乾燥重量あたり75重量%以上、
    D.吸油倍率が4倍以上、
    である、請求項1記載の油吸着剤。
  3. 多孔質蛋白素材のDの要件が、
    D.吸油倍率が5倍以上、
    である、請求項1または2記載の油吸着剤。
  4. 粉末状植物性蛋白素材を含み、下記A〜Dの特徴を有する多孔質蛋白素材を有効成分として含有する油吸着剤を油中に添加、または油を該油吸着剤に添加する、油の吸着方法。
    A.蛋白質含量が乾燥重量あたり50重量%以上、
    B.NSIが50以下、
    C.嵩比重が0.2g/cm以下、
    D.吸油倍率が3倍以上
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