以下に本発明の実施の形態の緩衝器について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品(部分)か対応する部品(部分)を示す。
図1に示す本発明の一実施の形態に係る緩衝器Aは、トラック(図示せず)のキャビンとシャシとの間に介装されるものであり、以下の説明では、緩衝器Aがトラックに取り付けられた状態での上下を、特別な説明がない限り、単に「上」「下」という。なお、本発明に係る緩衝器の取付対象は適宜変更できる。例えば、本発明に係る緩衝器は、トラック以外の車両に利用されたり、車両における車体と車軸との間に介装されたりしてもよく、さらには、車両以外に利用されていてもよい。
つづいて、本実施の形態に係る緩衝器Aの具体的な構造について説明する。緩衝器Aは、アウターシェル1と、このアウターシェル1内に軸方向へ移動可能に挿入されて上端がアウターシェル1外へ突出するロッド2とを有する緩衝器本体Dと、この緩衝器本体Dの外周に設けられるコイルスプリングSと、このコイルスプリングSの上端を支持するアッパスプリングガイド3と、コイルスプリングSの下端を支持するロアスプリングガイド4とを備える。
そして、ロッド2の上端がブラケットB1を介してキャビンに連結されるとともに、アウターシェル1がその下端を塞ぐボトムキャップ10に設けたブラケットB2を介してシャシに連結される。また、後に詳述するように、アッパスプリングガイド3がロッド2に対して位置決めされる一方で、ロアスプリングガイド4はアウターシェル1に対して位置決めされる。
これにより、トラックが凹凸のある路面を走行する等してシャシがキャビンに対して上下に振動すると、ロッド2がアウターシェル1に出入りして緩衝器本体Dが伸縮する。すると、アッパスプリングガイド3とロアスプリングガイド4が遠近してこれらの間に介装されるコイルスプリングSが伸縮する。このように、緩衝器本体DとコイルスプリングSが一体となって伸縮することを、緩衝器Aが伸縮するという。
緩衝器本体Dは、本実施の形態では液圧ダンパであり、アウターシェル1内に作動油等の液体が収容されるとともに、ピストン(図示せず)が摺動自在に挿入されている。さらに、このピストンにロッド2が連結されていて、ロッド2がアウターシェル1に出入りするとピストンがアウターシェル1内を移動して液体が流れ、その液体の流れに抵抗が付与される。これにより、緩衝器本体Dは伸縮時に上記抵抗に起因する減衰力を発揮する。
このように、本実施の形態では、緩衝器本体Dのアウターシェル1が液圧ダンパのシリンダ、ロッド2が液圧ダンパのピストンを保持するピストンロッドとして機能する。この場合、液圧ダンパが単筒型でピストンがアウターシェル1の内周に摺接しても、液圧ダンパが複筒型でピストンがアウターシェル1内に設けた内筒の内周に摺接してもよい。さらには、液圧ダンパが片ロッド型でロッド2がピストンの片側へ延びていても、液圧ダンパが両ロッド型でロッド2がピストンの両側へ延びていてもよい。
また、緩衝器本体Dが液圧ダンパである場合であって、この液圧ダンパがシリンダ外へ突出するピストンロッドの外周を覆うカバーを備え、このカバーにシリンダが出入りする場合には、カバーをアウターシェル1、シリンダをロッド2として利用して、カバーの外周にロアスプリングガイド4を装着するとともにシリンダの外周にアッパスプリングガイド3を装着してもよい。さらに、緩衝器本体Dは、液圧以外の電磁力、摩擦力を利用して減衰力を発生するダンパであっても、コイルスプリングSを支える単なるガイドであってもよい。
また、緩衝器Aをトラック等の取付対象に取り付ける向きは図示する限りではなく、適宜変更できる。例えば、緩衝器Aは図1中上下を逆向きにして取付対象に取り付けられてもよい。つまり、図1に示すロアスプリングガイド4がコイルスプリングSの上端を支持するアッパスプリングガイドとして利用され、図1に示すアッパスプリングガイド3がコイルスプリングSの下端を支持するロアスプリングガイドとして利用されてもよい。
つづいて、コイルスプリングSは、圧縮ばねであり、圧縮されると弾性変形してその変形量が大きくなるほど大きな弾性力を発揮する。そして、このコイルスプリングSによってアッパスプリングガイド3が押し上げられる方向へ、ロアスプリングガイド4が押し下げられる方向へ付勢される。このように、コイルスプリングSは、アッパスプリングガイド3とロアスプリングガイド4を離間させる方向へ付勢する。
アッパスプリングガイド3は、アウターシェル1外へ突出するロッド2の上端部外周に設けられている。さらに、ロッド2の上端部外周には、キャップ20が装着されており、このキャップ20の下端がアッパスプリングガイド3の上端に当接する。その一方、キャップ20の上端は、ロッド2の上端に溶接されたブラケットB1に当接する。これにより、コイルスプリングSでアッパスプリングガイド3が上方へ付勢されると、アッパスプリングガイド3がキャップ20を介してブラケットB1に支えられる。すると、アッパスプリングガイド3のロッド2に対する軸方向の位置決めがなされるとともに、ロッド2がコイルスプリングSにより上向きに付勢される。
本実施の形態では、アッパスプリングガイド3とキャップ20は、それぞれ環状であって切割を有し、平面視でC字状となっている。このため、ブラケットB1の大きさがアッパスプリングガイド3とキャップ20の内側を通過できない大きさであっても、アッパスプリングガイド3とキャップ20の切割を広げれば、ロッド2にブラケットB1を取り付けた後からアッパスプリングガイド3とキャップ20をロッド2の外周であってブラケットB1の下側に装着できる。
また、本実施の形態では、アウターシェル1外へ突出するロッド2の外周がカバー21で覆われている。このカバー21は、その上端に設けられたフランジ部21aがコイルスプリングSとアッパスプリングガイド3に挟まれており、アッパスプリングガイド3に吊り下げた状態に保持される。そのカバー21の内径は、ブラケットB1の通過を許容する径となっており、ロッド2にブラケットB1を取り付けた後からカバー21をロッド2の外周に配置できる。
つづいて、ロアスプリングガイド4は、筒部4aと、この筒部4aの上端から径方向外側へ張り出す環状のシート部4bとを含み、全体としての形状が環状となっている。そして、ロアスプリングガイド4は、アウターシェル1の外周に摺動自在に装着されており、アウターシェル1で支えられつつアウターシェル1の軸方向へ移動したり、回転したりできる。
また、シート部4bの外周部には、ロアスプリングガイド4を回転するための工具を引っ掛ける係合溝4cが周方向に複数形成されている。さらに、筒部4aの下端にはカム面4dが形成されており、アウターシェル1の外周に溶接された支持部材11がそのカム面4dに突き当たる。これにより、コイルスプリングSでロアスプリングガイド4が下方へ付勢されると、ロアスプリングガイド4が支持部材11を介してアウターシェル1に支えられる。すると、ロアスプリングガイド4のアウターシェル1に対する軸方向の位置決めがなされるとともに、アウターシェル1がコイルスプリングSにより下向きに付勢される。
また、前述のように、ロッド2はコイルスプリングSにより下向きに付勢される。つまり、コイルスプリングSによりロッド2が上向きに、アウターシェル1が下向きに付勢されるので、コイルスプリングSによってロッド2がアウターシェル1から退出する方向、即ち、緩衝器Aが伸長方向へ付勢され、キャビンがコイルスプリングSにより弾性支持される。
また、本実施の形態では、シート部4bにスプリングシート40が積層されており、シート部4bは、このスプリングシート40を介してコイルスプリングSの下端を支えている。そのスプリングシート40は、環状であって切割を有し、平面視でC字状となっている。このため、ブラケットB1の大きさがスプリングシート40の内側を通過できない大きさであっても、スプリングシート40の切割を広げれば、ロッド2にブラケットB1を取り付けた後からスプリングシート40をアウターシェル1の外周に装着できる。しかし、スプリングシート40を廃し、コイルスプリングSの下端を直接シート部4bに突き当ててもよい。
また、筒部4aの下端に形成されたカム面4dは、上方へ窪む複数の凹面a,b,c,dが段階的に高さを変えつつ周方向に連なる形状となっており、凹面a,b,c,dの何れかに支持部材11が嵌る。そして、係合溝4cに工具を引っ掛けてロアスプリングガイド4をアウターシェル1の周方向へ回転し、支持部材11の嵌る凹面a,b,c,dを変更すると、ロアスプリングガイド4のアウターシェル1に対する軸方向位置(高さ)が変更される。これにより、緩衝器Aの収縮量に対するコイルスプリングSの収縮量、即ち、コイルスプリングSが発揮する弾性力が変更される。
また、本実施の形態では、高さの異なる四つの凹面a,b,c,dを含む一続きのカム面4dが周方向に並べて二面配置されるとともに、図示しないが支持部材11も二つ設けられ、各カム面4dにおける同じ高さの凹面に各支持部材11が嵌る。さらに、一続きのカム面4dの両端には、それぞれストッパe,fが設けられている。これにより、ロアスプリングガイド4の下端には、ストッパf、凹面a,b,c,d、ストッパe、ストッパf、凹面a,b,c,d、ストッパeがこの順に周方向に並ぶ。そして、一つの支持部材11が一つのカム面4dを超えて他のカム面4dへ移動するのがストッパe,fによって阻止される。
また、ロアスプリングガイド4は、図2に示すように、一つのカム面4dに連なるストッパe,fと、他のカム面4dに連なるストッパe,fとの境界部分で周方向に分割可能となっている。これにより、ロアスプリングガイド4の分割体である第一分割部材5と第二分割部材6のそれぞれにカム面4dと、その両端に連なるストッパe,fが設けられる。
さらに、第一分割部材5と第二分割部材6は、それぞれ、円弧状の本体5a,6aと、この本体5a,6aの周方向の両端に連なる係合部5b,5c,6b,6cとを含み、これらでロアスプリングガイド4の筒部4aを構成する。これにより、各係合部5b,5c,6b,6cがロアスプリングガイド4の筒部4aとなる部分において、ストッパe,fが形成される部分に位置する。また、ロアスプリングガイド4を回転するための工具を引っ掛ける係合溝4cは、第一分割部材5と第二分割部材6の周方向の両端を避けて形成されている。換言すると、係合溝4cは、ロアスプリングガイド4の分割部となる第一分割部材5と第二分割部材6の境界にかからない位置に形成されている。
また、本実施の形態では、第一分割部材5と第二分割部材6が同一形状を有している。さらに、第一分割部材5と第二分割部材6の周方向の一端に形成される係合部5b,6bを第一の係合部5b,6b、他端に形成される係合部5c,6cを第二の係合部5c,6cとすると、第一の係合部5b,6bは、それぞれ上下逆L字状で、本体5a,6aとの間に下方へ開口する凹部5d,6dを形成する爪5e,6eを含む。その一方、第二の係合部5c,6cは、それぞれL字状で、本体5a,6aとの間に上方へ開口する凹部5f,6fを形成する爪5g,6gを含む。
そして、第一分割部材5の第一の係合部5bの爪5eが第二分割部材6の第二の係合部6cの凹部6fに嵌り、第一分割部材5の第二の係合部5cの爪5gが第二分割部材6の第一の係合部6bの凹部6dに嵌り、第二分割部材6の第一の係合部6bの爪6eが第一分割部材5の第二の係合部5cの凹部5fに嵌り、第二分割部材6の第二の係合部6cの爪6gが第一分割部材5の第一の係合部5bの凹部5dに嵌る。このように、第一分割部材5の第一の係合部5bと第二分割部材6の第二の係合部6cが互いに噛み合い、第一分割部材5の第二の係合部5cと第二分割部材6の第一の係合部6bが互いに噛み合うことで、第一分割部材5と第二分割部材6が一つのロアスプリングガイド4として一体化される。
より具体的には、まず、図3(a)に示すように、軸方向位置を合せた第一分割部材5と第二分割部材6を直径方向へずらし、第一の係合部5b,6bの爪5e,6eが第二の係合部5c,6cの凹部5f,6fによって本体5a,6aと爪5g,6gとの間にできる隙間に向かい、第二の係合部5c,6cの爪5g,6gが第一の係合部5b,6bの凹部5d,6dによって本体5a,6aと爪5e,6eとの間にできる隙間に向かうよう配置する。
次に、第一分割部材5と第二分割部材6とをロアスプリングガイド4の直径方向へスライドさせて、図3(b)に示すように、第一の係合部5b,6bの爪5e,6eを第二の係合部5c,6cの凹部5f,6fに嵌めるとともに、第二の係合部5c,6cの爪5g,6gを第一の係合部5b,6bの凹部5d,6dに嵌める。このように、第一分割部材5の係合部5b,5cと第二分割部材6の係合部6b,6cが互いに噛み合うように第一分割部材5と第二分割部材6を組み立てることにより、ロアスプリングガイド4が形成される。
そして、ロアスプリングガイド4が組み立てられて、第一分割部材5の係合部5b,5cと第二分割部材6の係合部6b,6cが噛み合った状態では、第一分割部材5の第一の係合部5bの爪5eの下端(先端)が第二分割部材6の凹部6fの底に当接し、第一分割部材5の第二の係合部5cの爪5gの上端(先端)が第二分割部材6の凹部6dの底に当接し、第二分割部材6の第一の係合部6bの爪6eの下端(先端)が第一分割部材5の凹部5fの底に当接し、第二分割部材6の第二の係合部6cの爪6gの上端(先端)が第一分割部材5の凹部5dの底に当接する。このような状態では、第一分割部材5と第二分割部材6の軸方向の離間が阻止される。
また、第一分割部材5の係合部5b,5cと第二分割部材6の係合部6b,6cが噛み合った状態では、第一分割部材5の第一の係合部5bの爪5eが第二分割部材6の本体6aと爪6gとで周方向の両側から挟まれ、第一分割部材5の第二の係合部5cの爪5gが第二分割部材6の本体6aと爪6eとで挟まれ、第二分割部材6の第一の係合部6bの爪6eが第一分割部材5の本体5aと爪5gとで周方向の両側から挟まれ、第二分割部材6の第二の係合部6cの爪6gが第一分割部材5の本体5aと爪5eとで挟まれる。このような状態では、互いに噛み合う係合部5b,6cと係合部5c,6bが周方向へ離間できなくなる。
その一方、第一分割部材5の係合部5b,5cと第二分割部材6の係合部6b,6cが噛み合った状態であっても、ロアスプリングガイド4の内周が支えられていない状態では、互いに噛み合う係合部5b,6cと係合部5c,6bがロアスプリングガイド4の中心側と、中心から離れる側へずれることはできる。つまり、第一分割部材5の係合部5b,5cと第二分割部材6の係合部6b,6cが噛み合った状態であっても、ロアスプリングガイド4の内周側に隙間があれば、組立時の上記スライド方向に第一分割部材5と第二分割部材6をスライドさせれば、ロアスプリングガイド4が分解される。
そのスライド方向とは、第一分割部材5と第二分割部材6の境界を通り、ロアスプリングガイド4の中心へ向かう直線を分離線Lとしたとき、この分離線Lに沿う方向のことである。このため、ロアスプリングガイド4の内周側に隙間がある場合、互いに噛み合う係合部5b,6cと係合部5c,6bが分離線Lに沿う方向の相対移動が許容され、互いに噛み合う係合部5b,6cと係合部5c,6bが分離線Lに沿う方向へ相対移動するように第一分割部材5と第二分割部材6をスライドさせれば、ロアスプリングガイド4が分解されるといえる。
これに対して、ロアスプリングガイド4を組み立てた状態でアウターシェル1の外周に装着すると、ロアスプリングガイド4の内周がアウターシェル1で支えられる。これにより、互いに噛み合う係合部5b,6cと係合部5c,6bの分離線Lに沿う方向への相対移動も阻止される。このため、ロアスプリングガイド4をアウターシェル1の外周に装着した状態では、第一分割部材5の係合部5b,5cと第二分割部材6の係合部6b,6cの噛み合いにより、第一分割部材5と第二分割部材6の径方向の離間が阻止されるので、ロアスプリングガイド4が分解しない。
上記構成によれば、以下のようにして緩衝器Aが組み立てられる。
まず、緩衝器本体Dを組み立てて、アウターシェル1の外周に支持部材11を溶接するとともに、ロッド2の上端とボトムキャップ10のそれぞれにブラケットB1,B2を溶接する。このように、支持部材11、ブラケットB1,B2等のアウターシェル1又はロッド2に固定すべき部材を固定した後、アウターシェル1の外周に塗装等の表面処理を施す。つづいて、上記緩衝器本体Dにロアスプリングガイド4、スプリングシート40、コイルスプリングS、カバー21、アッパスプリングガイド3、及びキャップ20をこの順に装着する。
より詳しくは、ロアスプリングガイド4を緩衝器本体Dに装着する場合、アウターシェル1外へ突出するロッド2の外周であってブラケットB1よりも下側で、第一分割部材5の係合部5b,5cと第二分割部材6の係合部6b,6cとを噛み合わせ、ロアスプリングガイド4を組み立てる。そして、このロアスプリングガイド4をアウターシェル1の外周であって支持部材11に当接する位置まで下ろす。このように、ロアスプリングガイド4がアウターシェル1の外周に装着された状態では、前述のように、アウターシェル1によって第一分割部材5と第二分割部材6の径方向の離間が阻止されてロアスプリングガイド4が分解しない。
次に、スプリングシート40を緩衝器本体Dに装着する場合、スプリングシート40の切割を広げ、この切割からアウターシェル1外へ突出するロッド2のブラケットB1より下側部分をスプリングシート40の内側へ挿入する。そして、スプリングシート40をアウターシェル1の外周であってロアスプリングガイド4に当接する位置まで下ろす。
次に、コイルスプリングS及びカバー21を緩衝器本体Dに装着する場合、ロッド2をブラケットB1側からコイルスプリングS及びカバー21の内側へ挿通し、コイルスプリングSの下端をアウターシェル1の外周であってスプリングシート40に当接する位置まで下ろす。なお、カバー21は、コイルスプリングSを緩衝器本体Dに装着する前にコイルスプリングSに装着されていても、コイルスプリングSを緩衝器本体Dに装着した後でコイルスプリングSに装着されてもよい。
次に、アッパスプリングガイド3及びキャップ20を緩衝器本体Dに装着する場合、アッパスプリングガイド3及びキャップ20の切割を広げ、この切割からアウターシェル1外へ突出するロッド2のブラケットB1より下側部分をアッパスプリングガイド3及びキャップ20の内側へ挿入する。そして、アッパスプリングガイド3にカバー21の上端を当接させるとともに、キャップ20をアッパスプリングガイド3の上端に当接させる。なお、キャップ20は、アッパスプリングガイド3に装着された状態でロッド2の外周に装着されても、アッパスプリングガイド3をロッド2に装着した後ロッド2の外周に装着されてもよい。
以下、本実施の形態に係る緩衝器Aの作用効果について説明する。
本実施の形態に係る緩衝器Aは、アウターシェル1と、このアウターシェル1内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド2とを有する緩衝器本体Dと、この緩衝器本体Dの外周に設けられるコイルスプリングSと、アウターシェル1の外周に周方向へ回転可能に装着されて、コイルスプリングSの軸方向の一端を支持する環状のロアスプリングガイド(スプリングガイド)4と、アウターシェル1の外周であって、ロアスプリングガイド4から見てコイルスプリングSとは反対側に固定されてロアスプリングガイド4を支える支持部材11とを備えている。
さらに、上記ロアスプリングガイド(スプリングガイド)4が周方向に二分割されて第一分割部材5と第二分割部材6とを有し、第一分割部材5と第二分割部材6の両端に、それぞれ係合部5c,5c,6b,6cが設けられている。そして、第一分割部材5の係合部5b,5cと第二分割部材6の係合部6b,6cが互いに噛み合い、ロアスプリングガイド4がアウターシェル1の外周に装着された状態で、第一分割部材5と第二分割部材6の径方向の離間を阻止する。
上記構成によれば、ロアスプリングガイド4が周方向に二分割されて、第一分割部材5と第二分割部材6とを有して構成される。このため、ロッド2にブラケットB1等のロアスプリングガイド4の内側を通過できない大きさの部材が固定されていても、ロアスプリングガイド4を第一分割部材5と第二分割部材6に分解すれば、ブラケットB1等をロッド2に固定し、アウターシェル1に表面処置を施した後からロアスプリングガイド4をアウターシェル1の外周に取り付けられる。
さらに、上記構成によれば、ロアスプリングガイド4がアウターシェル1の外周に装着された状態では、第一分割部材5の係合部5b,5cと第二分割部材6の係合部6b,6cの噛み合いにより、第一分割部材5と第二分割部材6の径方向の離間が阻止される。このため、ロアスプリングガイド4をアウターシェル1の周方向へ回転する場合であっても、ロアスプリングガイド4が分解してアウターシェル1から脱落するのを防止できる。
つまり、上記構成によれば、ロッド2に固定されるブラケットB1等の部材の大小によらず、その部材をロッド2に固定した後からでもロアスプリングガイド4をアウターシェル1の外周に装着できる。これにより、ブラケットB1等の部材をロアスプリングガイド4の装着前にロッド2に固定できるので、ブラケットB1等を溶接等の安価な方法でロッド2に固定して、アウターシェル1の外周に塗装等の表面処理をしてからロアスプリングガイド4を装着できる。このため、緩衝器Aの組立作業が容易で、コストを低減できる。
また、本実施の形態では、第一分割部材5と第二分割部材6との境界を通ってロアスプリングガイド4の中心へと向かい、そのロアスプリングガイド4の径方向に沿う直線が分離線Lであり、ロアスプリングガイド4がアウターシェル1の外周に装着されていない状態では、互いに噛み合う第一分割部材5の係合部5bと第二分割部材6の係合部6c、並びに第一分割部材5の係合部5cと第二分割部材6の係合部6bの分離線Lに沿う方向の相対移動が許容される。
ここでいう「ロアスプリングガイド4がアウターシェル1の外周に装着されていない状態」とは、ロアスプリングガイド4がアウターシェル1から軸方向へずらされる、又は取り外される等して、ロアスプリングガイド4の内周側に隙間ができた状態をいう。上記構成によれば、アウターシェル1外へ突出するロッド2の外周等の、アウターシェル1から軸方向へずれた位置でロアスプリングガイド4を分解したり組み立てたりできるので、ロアスプリングガイド4の着脱を容易にできる。
さらに、上記構成によれば、ロアスプリングガイド4がアウターシェル1の外周に装着された状態では、ロアスプリングガイド4の内周がアウターシェル1に当接し、互いに噛み合う第一分割部材5の係合部5bと第二分割部材6の係合部6c、並びに第一分割部材5の係合部5cと第二分割部材6の係合部6bの分離線Lに沿う方向の相対移動も阻止される。これにより、ロアスプリングガイド4がアウターシェル1の外周に装着された状態では、第一分割部材5と第二分割部材6の径方向の離間を阻止してロアスプリングガイド4の分解を防止できる。
また、本実施の形態のロアスプリングガイド4は、筒部4aと、この筒部4aのコイルスプリングS側の端部から径方向外側へ張り出す環状のシート部4bとを有する。さらに、各係合部5b,5c,6b,6cは、第一分割部材5又は第二分割部材6の筒部4aとなる円弧状の本体5a,6aの周方向の両端に連なって、その本体5a,6aとの間に軸方向の一方又は他方へ開口する凹部5d,5f,6d,6fを形成する爪5e,5g,6e,6gを含む。
そして、互いに噛み合う第一分割部材5の係合部5bと第二分割部材6の係合部6cにおいて、第一分割部材5の係合部5bの爪5eが第二分割部材6の係合部6cの凹部6fに嵌合するとともに、第二分割部材6の係合部6cの爪6gが第一分割部材5の係合部5bの凹部5dに嵌合する。同様に、互いに噛み合う第一分割部材5の係合部5cと第二分割部材6の係合部6bにおいて、第一分割部材5の係合部5cの爪5gが第二分割部材6の係合部6bの凹部6dに嵌合するとともに、第二分割部材6の係合部6bの爪6eが第一分割部材5の係合部5cの凹部5fに嵌合する。
上記構成によれば、互いに噛み合う第一分割部材5の係合部5b,5cと第二分割部材6の係合部6b,6cにおいて、爪5eが爪6gと本体6aとで周方向の両側から挟まれ、爪5gが爪6eと本体6aとで周方向の両側から挟まれ、爪6eが爪5gと本体5aとで周方向の両側から挟まれ、爪6gが爪5eと本体5aとで周方向の両側から挟まれる。このとき、ロアスプリングガイド4がアウターシェル1の外周に装着されていない状態では、隣り合う爪(爪5eと爪6g、並びに、爪5gと爪6e)がロアスプリングガイド4の中心側と中心から離れる側へ直径方向にずれるのは許容されるので、第一分割部材5の係合部5b,5cと第二分割部材6の係合部6b,6cの分離線Lに沿う方向の相対移動を許容できる。
さらに、上記構成によれば、ロアスプリングガイド4が筒部4aとシート部4bとを備える場合であっても、ロアスプリングガイド4を円弧状の第一分割部材5と第二分割部材6を組み立てて形成できる。そして、第一分割部材5と第二分割部材6は、プレス加工で成形できるので、ロアスプリングガイド4を成形しやすく、ロアスプリングガイド4のコストを低減し、ひいては緩衝器Aのコストを低減できる。
また、本実施の形態では、第一分割部材5と第二分割部材6の周方向の一端に形成される係合部が第一の係合部5b,6b、他端に形成される係合部が第二の係合部5c,6cであり、第一分割部材5の第一の係合部5bと第二分割部材6の第二の係合部6cとが噛み合い、第一分割部材5の第二の係合部5cと第二分割部材6の第一の係合部6bとが噛み合う。そして、第一分割部材5と第二分割部材6が同一形状を有し、第一分割部材5と第二分割部材6それぞれの第一の係合部5b,6bの凹部5d,6dと第二の係合部5c,6cの凹部5f,6fが逆方向へ開口する。
より具体的には、本実施の形態では、第一の係合部5b,6bの凹部5d,6dが下方へ開口し、第二の係合部5c,6cの凹部5f,6fが上方へ開口する。このように、第一分割部材5と第二分割部材6がそれぞれ上下逆向きに開口する第一の係合部5b,6bと第二の係合部5c,6cを有するので、第一分割部材5の係合部5b,5cと第二分割部材6の係合部6b,6cを噛み合わせた状態では、第一分割部材5と第二分割部材6の軸方向の離間(分離)、即ち、第一分割部材5と第二分割部材6が軸方向に分解されるのも阻止できる。
さらに、本実施の形態では、第一分割部材5と第二分割部材6が同一形状である。ここでいう「同一形状」とは、製造上の誤差を含む概念であり、上記構成によれば、第一分割部材5と第二分割部材6を共通部品にできる。これにより、緩衝器Aを構成する部品の種類を削減できるとともに、第一分割部材5と第二分割部材6が別部品であるにも関わらず第一分割部材5同士、又は第二分割部材6同士を組み合わせてしまう等の誤組を防止できる。しかし、互いに噛み合う第一分割部材5の係合部5b,5cと第二分割部材6の係合部6b,6cの形状は、上記の限りではなく適宜変更できる。
例えば、第一分割部材5の第一、第二の係合部5b,5cが同一形状を有し、第二分割部材6の第一、第二の係合部6c,6cが同一形状を有していてもよい。より具体的には、第一分割部材5の第一、第二の係合部5b,5cの凹部5d,5fが上方へ開口するように爪5e,5gが形成されるとともに、第二分割部材6の第一、第二の係合部6b,6cの凹部6d,6fが上方へ開口するように爪6e,6gが形成されていてもよい。この場合、コイルスプリングSによって第一分割部材5と第二分割部材6の軸方向の分離が阻止される。
また、係合部5b,5c,6b,6cの形状と位置は、適宜変更できる。例えば、図4(a)に示すように、爪5e,5g,6e,6gの先端に本体5a,6a側へ突出する突部pが形成されていてもよい。さらに、図4(b)に示すように、爪5e,5g,6e,6gが本体5a,6aにおいて筒部4aとなる部分の軸方向の中間位置から延びて、対応する凹部5d,5f,6d,6fが側方へ開口していてもよい。さらに、図4(c)に示すように、爪5e,5g,6e,6gがシート部4bとなる部分と筒部4aとなる部分の両方に形成されていても、シート部4bとなる部分にのみ形成されていてもよい。
また、本実施の形態では、筒部4aのコイルスプリングSとは反対側(反コイルスプリング側)の端部にカム面4dが形成されている。さらに、このカム面4dは、筒部4aの周方向に並ぶ高さ違いの複数の凹面a,b,c,dを含み、これらの凹面a,b,c,dの何れかに支持部材11が選択的に嵌る。凹面a,b,c,dが高いとは、凹面a,b,c,dからシート部4bまでの距離が短いことをいい、上記構成によれば、ロアスプリングガイド4をアウターシェル1の周方向へ回転すると、支持部材11が嵌る凹面a,b,c,dが変更される。これにより、ロアスプリングガイド4によってコイルスプリングSを支える位置を変更できる。
また、上記したように、ロアスプリングガイド4にカム面4dを形成してコイルスプリングSの支持位置を変更する場合には、ロアスプリングガイド4がコイルスプリングSの荷重を受けた状態で回転操作される。このような場合には、ロッド2にブラケットB1を固定してからロアスプリングガイド4をアウターシェル1の外周に装着するため、ロアスプリングガイド4に切割を設けると、ロアスプリングガイド4の回転操作時に切割が広がってアウターシェル1から脱落する虞があるので、そのようにはできない。
このため、ロアスプリングガイド4にカム面4dを形成してコイルスプリングSの支持位置を変更する場合には、前述のように、ロアスプリングガイド4を第一分割部材5と第二分割部材6に分割し、これらの係合部5b,5c,6b,6cを噛み合わせてアウターシェル1の外周に装着した状態で、第一分割部材5と第二分割部材6の径方向の離間を阻止するのが特に有効である。
また、本実施の形態では、カム面4dが筒部4aの周方向に二面設けられており、ロアスプリングガイド4が隣り合うカム面4d,4dの間で第一分割部材5と第二分割部材6に分割されている。隣り合うカム面4d,4dの間は、ストッパe,fが設けられる等、ロアスプリングガイド4の筒部4aの軸方向長さが長い部分である。
このため、隣り合うカム面4d,4dの間でロアスプリングガイド4を分割し、その端部に係合部5b,5c,6b,6cを形成すると、爪5e,5g,6e,6gの幅及び長さを確保しやすく、係合部5b,5c,6b,6cを噛み合わせたときの連結強度を確保しやすい。しかし、ストッパe,fを廃し、ロアスプリングガイド4をアウターシェル1の周方向へ360度回転できるようにしてもよい。さらに、ロアスプリングガイド4を分割する位置も上記の限りではなく、適宜変更できる。
また、本実施の形態では、シート部4bの外周部に工具を引っ掛ける係合溝4cが形成されるとともに、その係合溝4cが第一分割部材5と第二分割部材6の境界にかからない位置に形成されている。このため、シート部4bに工具を引っ掛けてロアスプリングガイド4を回転する際に、互いに噛み合う係合部5b,5c,6b,6cが変形したり、破損したりするのを防止できる。しかし、係合溝4cを形成する位置は、適宜変更できる。また、係合溝4c及びカム面4dを廃してもよい。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。