JP2020177548A - スペクトル要素法に用いる解析モデルの要素条件決定方法 - Google Patents

スペクトル要素法に用いる解析モデルの要素条件決定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高精度な解析が可能なスペクトル要素法において、必要な解析精度を確保しつつも計算コストを抑えることが可能な要素条件の決定方法を提供する。【解決手段】解析モデルの固有周波数と、参照モデルの参照固有周波数との目標相対誤差を設定するステップと、解析方向の長さを含む解析パラメータを設定するステップと、解析領域を伝搬する波の波長を算出するステップと、要素次数候補群に含まれる各要素次数候補について予測使用メモリ容量を算出する、予測使用メモリ容量算出ステップと、予測使用メモリ容量の群から最小予測使用メモリ容量を抽出するステップと、最小予測使用メモリ容量に該当する長さに含まれる要素数候補と要素次数候補とを、解析モデルの要素条件として決定するステップとを含む。【選択図】図3

Description

本発明は、スペクトル要素法に用いる解析モデルの要素条件決定方法に関する。
建築構造物において発生する環境振動や固体音等は、居住者等の快適性に重大な影響を及ぼすものである。そのため、従来、構造物を建造する前に環境振動や固体音等の影響を予測するための技術が種々提案されている。このような技術の一例として、建築構造物を一次元のビーム要素や二次元のシェル要素で数理モデル(解析モデル)化し、当該建築構造物を波が伝搬したときの固有周波数や周波数応答関数を計算する方法をあげることができる。
解析モデルの作成方法として、特許文献1には、有限要素法(Finite Element Method, FEM)における、要素の分割数を適切に設定する方法が開示されている。
特開平04−340479号公報
ところで有限要素法では、解析領域を、線、多角形あるいは多面体の要素に分割し、その端や頂点に節点を設けるのが一般的であるが、このような方法で高い解析精度を得るためには、多くの要素数と節点数を要する。少ない要素数と節点数で高精度の解析を行う方法としては、スペクトル要素法(Spectral Element Method, SEM)が知られている。有限要素法とスペクトル要素法のどちらにおいても、要素内部の任意の点における変位は、節点変位と内挿関数の線形和で表される。節点は、頂点だけでなく、要素内部にも設定することができる。なお、要素内部に設定された節点は中間節点と呼ばれ、中間節点を有する要素は高次要素と呼ばれている。中間節点を多く持つ高次要素によるモデルからは、中間節点を持たないまたは中間節点の少ない低次要素によるモデルに比べて、精度の高い解析結果を得ることができる。
スペクトル要素法は、中間節点を2以上設定した高次要素を有限要素法よりも容易に使用できるが、反面、中間節点の数(要素次数)を不必要に増加させれば計算コストを増大させてしまうおそれがある。つまり、スペクトル要素法においては、要素数と要素次数の両方を適切に設定する必要がある。
以上のことから、本発明は、高精度な解析が可能なスペクトル要素法において、必要な解析精度を確保しつつも計算コストを抑えることが可能な要素条件の決定方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明に係るスペクトル要素法に用いる解析モデルの要素条件決定方法は、前記解析モデルの固有周波数と、参照モデルの参照固有周波数との目標相対誤差を設定するステップと、前記解析モデルにおける、解析方向の長さを含む解析パラメータを設定するステップと、前記解析パラメータに基づいて、解析領域を伝搬する波の波長を算出するステップと、要素次数候補群に含まれる各要素次数候補について、予測使用メモリ容量を算出する、予測使用メモリ容量算出ステップと、前記予測使用メモリ容量の群から、最小予測使用メモリ容量を抽出するステップと、前記最小予測使用メモリ容量に該当する前記長さに含まれる要素数候補と前記要素次数候補とを、前記解析モデルの要素条件として決定するステップとを含み、前記予測使用メモリ容量算出ステップは、誤差曲線の関数の群から、前記要素次数候補に対応する前記誤差曲線の関数を選択するステップと、前記誤差曲線の関数と前記目標相対誤差に基づいて、前記波長に含まれる要素数候補を算出するステップと、前記波長に含まれる要素数候補に基づいて前記長さに含まれる要素数候補を算出するステップと、前記長さに含まれる要素数候補と前記要素次数候補とに基づいて予測使用メモリ容量を算出するステップとを含む。
かかる要素条件決定方法によれば、理想的な要素条件における解析結果と実際の解析結果との相対誤差を微小な範囲に抑制し、かつ、使用メモリ容量を低減する要素条件を決定できる。
さらに、本発明に係る要素条件決定方法は、前記参照モデルにおける参照パラメータを設定するステップと、前記参照パラメータに基づいて、参照領域を伝搬する波の参照波長を算出するステップと、最大要素次数と、前記参照波長に含まれる最大要素数とを設定するステップと、前記最大要素次数と前記最大要素数と前記参照パラメータとに基づいて、スペクトル要素法を用いて前記参照固有周波数を解析により算出するステップと、試行要素次数の群に含まれる各前記試行要素次数について、相対誤差算出ステップを実行し、算出された相対誤差と算出に用いられた試行要素数との群に基づいて前記誤差曲線の関数を算出するステップとを含み、前記相対誤差算出ステップは、前記試行要素数の群に含まれる各前記試行要素数について、前記試行要素次数と当該試行要素数とに基づいて、スペクトル要素法を用いて試行固有周波数を解析により算出し、当該試行固有周波数と前記参照固有周波数との前記相対誤差を算出することが好ましい。
かかる要素条件決定方法によれば、目標相対誤差に基づいて、1波長あたりの要素数とこれに対応する要素次数とを算出することができる。1波長あたりの要素数とこれに対応する要素次数が判明すれば、参照領域の解析領域において形状寸法が異なる場合や、物性が異なるため領域を伝搬する波の波長が異なる場合であっても、当該解析領域に必要な要素条件を算出することができる。
さらに、本発明に係る要素条件決定方法は、前記試行要素次数の群に含まれる各前記試行要素次数について、算出された前記相対誤差と算出に用いられた前記試行要素数との群に対して、非線形最小二乗法を適用することにより、前記誤差曲線の関数を算出することを特徴とすることが好ましい。
かかる要素条件決定方法によれば、要素数が限りなく増加すれば相対誤差は限りなく0に近づき、要素数が限りなく減少すれば相対誤差は限りなく増加するという法則に則った曲線で近似された誤差曲線の関数を得ることができる。
本発明に係る要素条件の決定方法は、高精度な解析が可能なスペクトル要素法において、必要な解析精度を確保しつつも計算コストを抑えることを可能とする。
参照領域の概略図である。 解析に用いる要素の概略図である。 誤差曲線の関数の群の算出方法のフローチャートである。 誤差曲線の関数の群のグラフの一例である。 使用メモリ容量を最小にする要素条件の決定方法のフローチャートである。
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。
以降、本明細書で要素条件と述べるときは、スペクトル要素法で用いる数理モデルにおける要素数および要素次数を指すものとする。
最初に、本実施形態で実施する要素条件決定方法の大要を説明する。
解析精度の向上を図る上で、解析精度の高低を表す指標が必要である。本実施形態では、事前にサンプルとなる領域(以降、参照領域と称する)に対して理想的な要素条件による高計算コストの解析を行っておき、この解析結果の固有周波数(以降、参照固有周波数と称する)との相対誤差を解析精度と定義する。
具体的には以下のように行う。まず、参照領域に対して、参照固有周波数をスペクトル要素法によって算出する。
本実施形態において、ある要素条件に基づく解析精度とは、当該要素条件に基づいて算出した固有周波数と、参照固有周波数との相対誤差の大小のことである。参照領域について、複数の要素条件を設定し、各要素条件に基づいてスペクトル要素法を用いて固有周波数を解析により算出する。そして、固有周波数と参照固有周波数との相対誤差を算出し、この「要素条件と相対誤差の組」のデータの群について近似曲線の関数(以降、誤差曲線関数と称する)を算出しておく。この誤差曲線関数によれば、解析領域に対してある要素条件を適用するとき、当該要素条件から導かれるべき固有周波数と参照固有周波数との相対誤差を、解析前に予測することができる。
予測された相対誤差(以降、予測相対誤差と称する)が所定値以下となるような要素条件を選択することで、必要な解析精度を確保することができる。予測相対誤差が所定値以下となる要素条件は複数存在すると考えられるが、その中から使用メモリ容量が最も少ない要素条件を選択することで、計算コストを低減することができる。
以下に、このようにして必要な解析精度を確保し、かつ計算コストを低減する要素条件決定方法について詳細を記載する。
図1に、本実施形態における誤差曲線関数の算出に用いる参照領域である梁を示す。
参照領域とは、誤差曲線関数の算出のためのサンプルとなる領域であり、梁、スラブ等の任意の領域を選択可能であるが、この中でも梁等の細長い領域が好ましい。この理由は以下である。すなわち、細長い領域ほどその剛性を理論値よりも大きく評価してしまう数値解析上の問題(ロッキング現象)があり、正確な解析には大きな要素数および要素次数を要する。このような領域について誤差曲線関数を算出すれば、要素数および要素次数の減少と上記相対誤差の増大との相関が大きく、要素条件および要素次数の減少による解析精度への影響を高い精度で表す誤差曲線の関数が得られるからである。
本実施形態では、解析対象をソリッド要素で数理モデル化する場合を考える。ソリッド要素によれば、ビーム要素やシェル要素とは異なり、解析対象の厚みも考慮した解析を行うことができる。
本実施形態の数理モデルに適用する直方体形状の要素の概略図を図2に示す。一例として、図2には要素次数が2である2次要素を示す。2次要素とは、節点1と節点1との間に中間節点2を1つ備えた要素である。頂点の白丸が節点1を、頂点の間の黒丸が中間節点2を、hが要素長を示す。なお、本実施形態の数理モデルではより多くの中間節点2を備えた3次要素以上の高次要素も取り扱うことができる。
図3に、本実施形態で実施する誤差曲線関数の算出方法のフローチャートを示す。本実施形態の誤差曲線関数の算出方法では、ステップS101からステップS112を実行する。まず、ステップS101では、参照領域について参照パラメータを設定する。
本実施形態でいう参照パラメータとは、参照領域のヤング率と、密度と、厚さと、解析方向の長さとを含むパラメータである。なお、参照領域の縦、横、高さの形状寸法において、最も長い辺を参照領域の「長さ」とし、最も短い辺を「厚さ」とする。例として、本実施形態では、ヤング率2.7×1010Pa、密度2400kg/m、厚さ0.5m、解析方向の長さ6mの参照領域を解析する。
ステップS102では、参照固有周波数の解析による算出に用いる理想的な要素条件、すなわち最大要素次数と、参照固有周波数における波の波長(以降、参照波長とも称する)あたりの最大の要素数(以降、単に最大要素数とも称する)とを設定する。ここでいう理想的な要素条件とは、参照領域について、メモリを大量に使用する代わりに高い解析精度を得られると、経験則等から推測される要素次数および参照波長あたりの要素数のことである。1波長に含まれる要素の数は、要素のサイズが大きければ少なくなり、要素のサイズが小さければ多くなる。
本実施形態では、最大要素次数が11、最大要素数が20である参照領域について、誤差曲線関数を算出する。
ステップS103では、最大要素次数、最大要素数、参照パラメータに基づいて、参照領域についてスペクトル要素法を用いて参照固有周波数を解析により算出する。
ステップS104では、参照パラメータとステップ103で解析により算出した参照固有周波数とに基づいて、参照波長を以下の式に基づいて算出する。参照波長をλ、参照固有周波数をf、参照領域のヤング率をE、密度をρ、解析方向の長さをxとする。
Figure 2020177548
参照固有周波数と参照波長とが算出できたら、ステップS105〜S108において、理想的な要素条件未満の参照波長あたりの要素数(以降、試行要素数とも称する)および要素次数(以降、試行要素次数とも称する)に基づいて、誤差曲線関数算出のための試行データ(以降、試行固有周波数とも称する)を取得していく。
ステップS105では、試行要素次数と試行要素数に最小値を設定する。すなわち、試行要素次数を2、試行要素数を1に設定する。試行要素次数が最大要素次数以下である場合(ステップS106:Yes)、かつ、試行要素数が最大要素数以下であるとき(ステップS107:Yes)、ステップS108では、試行要素次数と試行要素数と参照パラメータから、スペクトル要素法を用いて試行固有周波数を解析により算出する。
ステップS109では、試行固有周波数と参照固有周波数との相対誤差を以下の式で算出する。ここで、rが相対誤差を、fが試行固有周波数を、frefが参照固有周波数を示す。
Figure 2020177548
ステップS110では、試行要素数に1を加算した後、再び試行要素数の判定(ステップS107)に戻る。試行要素数が最大要素数を超えたとき(ステップS107:No)、ステップS111では、ステップS109で算出した(最大要素数−1)個の相対誤差の群から、横軸を相対誤差、縦軸を試行要素数とする近似曲線の関数を算出する。この近似曲線を誤差曲線関数と称する。誤差曲線関数の算出方法は種々考えられるが、ここでは一例として、非線形最小二乗法を用いて、以下の双曲線関数で近似するものとする。
ここで、Nは試行要素数、rはステップS109で算出した相対誤差を示し、係数aとbは0以上の定数であり、ここでは非線形最小二乗法によって求められる値である。相対誤差が無限に漸近するとき試行要素数が0に漸近し、相対誤差が0に漸近するとき試行要素数が無限に漸近するものと仮定している。
Figure 2020177548
ステップS112では、試行要素次数に1を加算した後、再び試行要素次数の判定(ステップS106)に戻る。このようにして、試行要素次数ごとに誤差曲線関数を算出していく。
試行要素次数が最大要素次数を超えたとき(ステップS106:No)、試行すべき全ての試行要素次数について誤差曲線関数を算出し終えたものとして、誤差曲線関数の算出処理を終了する。
本実施形態の全ての試行要素次数1〜10についての各誤差曲線関数のグラフを、1波長あたりの要素数1〜10、相対誤差10−4〜10の範囲で示したものを図4に示す。図中では、例として、要素次数2の誤差曲線関数にのみ、当該誤差曲線関数の算出に使用した要素数と相対誤差の関係をプロットしてある。
要素次数と、1波長あたりの要素数と、相対誤差との関係を示す誤差曲線関数によれば、目標相対誤差に基づいて、1波長あたりの要素数とこれに対応する要素次数とを算出することができる。1波長あたりの要素数とこれに対応する要素次数が判明すれば、参照領域の解析領域において形状寸法が異なる場合や、物性が異なるため領域を伝搬する波の波長が異なる場合であっても、当該解析領域に必要な要素数と対応する要素次数とを算出することができる。
なお、ここでは要素数、要素次数ともに1ずつ大きくしながら、2以上最大要素次数未満の試行要素次数と、1以上最大要素数未満の試行要素数とについて誤差曲線を算出したが、誤差曲線の算出方法はこれに限らない。試行要素次数、試行要素数に、最大要素次数、最大要素数を含めてもよい。また、解析対象の特性によっては、試行要素数、試行要素次数の最大値を本実施形態の例より小さくしてもよい。試行要素次数の増加幅は2以上の値でもよいし、試行要素数の増加幅は1未満または1より大きい値でもよい。逆に、試行要素数、試行要素次数を、最大要素数、最大要素次数から減じていくことで、高精度が望める要素条件だけを用いて誤差曲線関数を算出してもよい。さらには、最大要素数の代わりに、最小要素サイズ、つまり最小の要素長h(図2参照)を規定し、これを増減させるようにしてもよい。なお、参照波長あたりの要素数は、参照波長λを要素長hで除算することにより導かれる。
誤差曲線の算出には、上記に列挙した以外の手段をとってもよい。
このような誤差曲線関数は、建築物の部材(梁、スラブ等)ごとに算出してもよいし、構造形式(ラーメン構造、壁構造等)ごとに算出してもよいし、それ以外の単位で算出してもよい。部材別に多くのパターンの誤差曲線関数を算出すれば、前述の予測相対誤差(以降、図5で詳細に解説する)の正確性を向上させることができる。一方、建築物を包括する、あるいはあるタイプの建築物を包括する誤差曲線関数を算出すれば、誤差曲線関数の算出に要する計算コストを低減することができる。
次に、図4に示した誤差曲線に基づいて、解析精度を確保しつつ使用メモリ容量を最小とするような解析モデルを作成する。
図5に本実施形態における、解析領域おける使用メモリ容量を最小にする要素条件の決定方法のフローチャートを示す。本実施形態の要素条件の決定方法では、ステップS201からステップS211を実行する。本実施形態では、一つの解析領域につき、当該解析領域の縦、横、高さそれぞれを解析方向として3回の解析を行うが、図5のフローチャートではこの内の、横方向を解析方向とする場合について説明する。
まず、ステップS201では、解析結果の固有周波数と、理想的な要素条件における解析によって算出されるであろう固有周波数との相対誤差の許容値を設定する。この許容値(許容される最大の相対誤差)を目標相対誤差と称する。本実施形態は、目標相対誤差を10−2と設定する。
ステップS202では、解析領域について、解析パラメータを設定する。解析パラメータとは、解析領域を伝搬する波の解析対象とする周波数(以降、解析周波数とも称する)と、解析領域のヤング率と、密度と、厚さと、解析方向の長さ(以降、単に長さとも言う)である。解析領域の厚さは、解析領域における解析方向を除いた二辺のうち、短い方の辺の長さとする。ここでは、縦0.7m、横6m、高さ0.5m、ヤング率2.7×1010Pa、密度2400kg/mの梁に対して、解析周波数を63Hz、横方向を解析方向、高さ方向を厚さとして解析を行う例について説明する。
ステップS203では、解析パラメータに基づいて、解析領域を伝搬する波の波長λ’を算出する。波長λ’の算出に用いる式は前出の数式1と同じである。波長λ’は数式1に上記の解析領域のパラメータを代入した以下の式により約6.9と算出される。解析周波数をf’、解析領域のヤング率をE’、密度をρ’、厚さをt’とする。
Figure 2020177548
以降、ステップS204〜S207で、目標相対誤差、解析パラメータ、解析領域を伝搬する波の波長に基づいて、解析精度を確保できる要素次数候補と当該要素次数候補に対応する要素数候補とを算出していく。
具体的には、まず、ステップS204で要素次数候補を2に設定する。要素次数候補が図1で定義した最大要素次数以下であるとき(ステップS205:Yes)、ステップS206では、要素次数候補に対応する誤差曲線関数(数式3および図4参照)を選択する。
ステップS207では、要素次数候補に対応する誤差曲線関数と、目標相対誤差とに基づいて、1波長あたりの要素数候補を算出する。この要素数候補が、要素次数候補に対応する誤差曲線関数から予測される要素数である。この予測される要素数とは、相対誤差が目標相対誤差以下になる1波長あたりの最小の要素数である。
ステップS208では、1波長あたりの要素数候補に基づいて、長さあたりの要素数候補を以下の式によって算出する。N’は、要素次数候補pに対応する、長さあたりの素数を示す。Nは、要素次数候補pに対応する、1波長あたりの要素数を示す。x’は長さを、λ’は波長を示す。なお、数式中の括弧は小数点以下を切り上げ、整数に丸め込むことを示す。
Figure 2020177548
ステップS209では、要素次数候補と、長さあたりの要素数候補から、予測使用メモリ容量を算出する。予測使用メモリ容量の算出には種々の方法を用いることができるが、ここでは以下の式を使用する。なお、pは要素次数候補を示し、mは要素次数候補pに対応する予測使用メモリ容量を示し、N’は要素次数候補pに対応する1波長あたりの最小の要素数を示す。
Figure 2020177548
予測使用メモリ容量を算出した後、ステップS210で要素次数候補を1増加させ、再び要素次数候補の判定に戻る(ステップS205)。このようにして、要素次数候補ごとに、相対誤差を目標相対誤差以下にする要素次数と、予測使用メモリ容量を算出していく。
要素次数候補が最大要素次数を超えた場合(ステップS205:No)、全ての要素次数候補について予測使用メモリ容量の算出が完了したと判断し、ステップS211に移行する。ステップS211では、ステップS209で算出してきた予測使用メモリ容量mの中から最小のものを選択し、この最小の予測使用メモリ容量に対応する要素次数候補と要素数候補の組み合わせを、解析モデルの要素次数および要素数に決定する。
表1に、本実施形態の誤差曲線関数に基づいて算出した要素条件と、当該要素条件における予測使用メモリ容量、実際のスペクトル要素法を用いた解析の使用メモリ容量、当該要素条件に基づく解析により算出した解析1次固有周波数、解析1次固有周波数と参照1次固有周波数との相対誤差、当該要素条件に基づく解析により算出した解析2次固有周波数、解析2次固有周波数と参照2次固有周波数との相対誤差の算出結果の一覧を示す。
参照1次固有周波数とは、参照領域について理想的な要素条件(本実施形態の場合は要素次数11、参照波長あたりの要素数20)で解析により算出した1次固有周波数の値である。参照2次固有周波数とは、参照領域について理想的な要素条件(本実施形態の場合は要素次数11、参照波長あたりの要素数20)で解析により算出した2次固有周波数の値である。
Figure 2020177548
予測使用メモリ容量は、要素次数1〜10について算出された10通りの誤差曲線関数(上述の数式3)に基づいて1波長あたりの要素数Nを求め、解析方向の長さあたりの要素数N’を求め、解析方向の長さあたりの要素数と要素次数とから予測使用メモリ容量を算出することにより算出される。
以下に、本実施形態の要素次数2誤差関数曲線に基づく具体例を示す。
本実施形態で設定された目標相対誤差は10−2であり、要素次数2の誤差曲線関数における定数aは2.36、定数bは0.350であった。したがって、要素次数2に対応する1波長あたりの要素数Nは、以下の式により約11.8と算出された。
Figure 2020177548
解析方向の長さあたりの要素数は、上述の数式5に基づいて算出された。具体的には、1波長あたりの本実施形態の解析方向の長さx’は6mであり、上述の数式4で算出したように解析領域を伝搬する波の波長λ’は6.9mであったので、要素次数2に対応する解析方向の長さあたりの要素数N’は以下の式により約11と算出された。
Figure 2020177548
予測使用メモリ容量は、上述の数式6に基づいて算出された。具体的には、要素次数が2、解析方向の長さあたりの要素数が11であったので、予測使用メモリ容量は以下の式により220と算出された。要素次数3〜10についても同様の方法で算出された。
Figure 2020177548
本実施形態の要素条件は目標誤差を10−2として算出されているが、実際の解析結果においても全ての要素条件において相対誤差が10−2未満に抑えられていた。このことから、本実施形態の要素条件決定方法により、解析精度の高い要素条件を選択できていることが確認できた。
また、予測使用メモリ容量は、要素次数6、解析方向の長さあたりの要素数1の要素条件において最小となるが、実際の解析の使用メモリ容量も当該要素条件において最小になっていた。このことから、本実勢形態の要素条件決定方法が、使用メモリ容量を有意に低減する要素条件を選択していることが確認できた。
このように、本実施形態の要素条件決定方法によれば、理想的な要素条件による解析結果との相対誤差を任意の範囲に抑制しつつ、すなわち高い解析精度を確保しつつ、最小限の使用メモリ容量で解析対象を解析することができる。
本実施形態ではソリッド要素によって解析領域を数理モデル化しているが、形状の厚みを考慮できる反面、計算コストの大きなソリッド要素によるモデル化を選択できることも、本実施形態の要素条件決定方法による使用メモリ容量の低減による利点の一つである。
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜追加や変更が可能である。

Claims (3)

  1. スペクトル要素法に用いる解析モデルの要素条件決定方法であって、
    前記解析モデルの固有周波数と、参照モデルの参照固有周波数との目標相対誤差を設定するステップと、
    前記解析モデルにおける、解析方向の長さを含む解析パラメータを設定するステップと、
    前記解析パラメータに基づいて、解析領域を伝搬する波の波長を算出するステップと、
    要素次数候補群に含まれる各要素次数候補について、予測使用メモリ容量を算出する、予測使用メモリ容量算出ステップと、
    前記予測使用メモリ容量の群から、最小予測使用メモリ容量を抽出するステップと、
    前記最小予測使用メモリ容量に該当する前記長さに含まれる要素数候補と前記要素次数候補とを、前記解析モデルの要素条件として決定するステップとを含み、
    前記予測使用メモリ容量算出ステップは、
    誤差曲線の関数の群から、前記要素次数候補に対応する前記誤差曲線の関数を選択するステップと、
    前記誤差曲線の関数と前記目標相対誤差に基づいて、前記波長に含まれる要素数候補を算出するステップと、
    前記波長に含まれる要素数候補に基づいて前記長さに含まれる要素数候補を算出するステップと、
    前記長さに含まれる要素数候補と前記要素次数候補とに基づいて予測使用メモリ容量を算出するステップとを含むことを特徴とする要素条件決定方法。
  2. 前記参照モデルにおける参照パラメータを設定するステップと、
    前記参照パラメータに基づいて、参照領域を伝搬する波の参照波長を算出するステップと、
    最大要素次数と、前記参照波長に含まれる最大要素数とを設定するステップと、
    前記最大要素次数と前記最大要素数と前記参照パラメータとに基づいて、スペクトル要素法を用いて前記参照固有周波数を解析により算出するステップと、
    試行要素次数の群に含まれる各前記試行要素次数について、相対誤差算出ステップを実行し、算出された相対誤差と算出に用いられた試行要素数との群に基づいて前記誤差曲線の関数を算出するステップとを含み、
    前記相対誤差算出ステップは、
    前記試行要素数の群に含まれる各前記試行要素数について、前記試行要素次数と当該試行要素数とに基づいて、スペクトル要素法を用いて試行固有周波数を解析により算出し、当該試行固有周波数と前記参照固有周波数との前記相対誤差を算出することを特徴とする請求項1に記載の要素条件決定方法。
  3. 前記試行要素次数の群に含まれる各前記試行要素次数について、算出された前記相対誤差と算出に用いられた前記試行要素数との群に対して、非線形最小二乗法を適用することにより、前記誤差曲線の関数を算出することを特徴とする請求項2に記載の要素条件決定方法。
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