JP2020176956A - 距離計測装置および距離計測方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】距離測定の測定時間を短縮すること。【解決手段】距離計測装置は、基準クロック信号の1周期をn次M系列信号で変調した照射光を照射する光射出部と、前記照射光が物体で反射した反射光を受光する光受光部と、前記1周期の照射光が照射された後のnクロックに相当する期間の前記光受光部からの受光信号を用いて、前記物体までの距離を計算する距離測定部と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、距離計測装置および距離計測方法に関する。
自動運転車等のセンシング技術の一つとしてライダー(LiDAR: Light Detection And Ranging)が注目されている。ライダーは、光を送出し、その光が物体で反射して戻ってくるまでの時間を測ることにより、物体までの距離を測る方式である。様々な環境の下で、長距離の測定も求められ、測定の際、外来光によるノイズを低減することが求められており、その目的で光源を変調する方式も使われている。送出された光が戻るまでの時間測定は、所定ビット長(ビット数)のPN(Pseudo Noise)系列信号を用いて変調した変調光を用いることによって行われている(特許文献1)。しかしながら、従来の技術では測定時間が長いという問題があり、高速の測定時間が要求される用途には使用が難しかった。
特開2000−121726号公報
本発明の第1の態様による距離計測装置は、基準クロック信号の1周期をn次M系列信号で変調した照射光を照射する光射出部と、前記照射光が物体で反射した反射光を受光する光受光部と、前記1周期の照射光が照射された後のnクロックに相当する期間の前記光受光部からの受光信号を用いて、前記物体までの距離を計算する距離測定部と、を備える。
本発明の第2の態様による距離計測方法は、基準クロック信号の1周期をn次M系列信号で変調した照射光を照射し、前記照射光が物体で反射した反射光を受光し、前記1周期の照射光が照射された後のnクロックに相当する期間の受光信号を用いて、前記物体までの距離を計算する。
第1の実施形態による距離計測装置の構成の一例を示すブロック図である。 スキャン方式の光学系を説明する模式図である。 変調光の生成と物体からの反射光の関係を説明する模式図である。 変調光の照射タイミングと物体からの反射光の受光タイミングを説明する模式図である。 物体までの距離算出方法を説明する模式図である。 変調光の照射タイミングと距離が異なる物体からの反射光の受光タイミングを説明する模式図である。 従来の技術による変調光の照射タイミングと物体からの反射光の受光タイミングを説明する模式図である。 スキャン方式の距離計測装置による距離測定の流れを説明するフローチャートである。 図9(a)は、時刻t0から時刻t3までの間に送信部から照射される変調光の光強度を示す模式図である。図9(b)は、時刻t3から時刻t4までの間に受信部で受信される変調光(戻り光)の受信強度を示す模式図である。 第2の実施形態による距離計測装置を説明する模式図である。 受光素子の受光面(撮像面)における物体の像を示す模式図である。 フラッシュ方式の光学系を説明する模式図である。 フラッシュ方式の距離計測装置による距離測定の流れを説明するフローチャートである。 M系列の性質を説明する図である。
一般に、ライダーにより取得した時間情報は3次元マップの生成に用いられる。具体的には、複数の測定点で集めた複数の時間情報を点群データとして処理することにより、3次元マップが生成される。
時間情報を複数の測定点で得る方式は、以下の2方式に大別される。
1.スキャン方式
2.フラッシュ方式
スキャン方式は、発光/受光する方向を走査することによって、複数の測定点についての時間情報を順番に得る方式である。ある測定点に向けてポイント状に光を照射し、その測定点からの戻り光を受光して時間情報を得ると、次の測定点に対して同様の動作を繰り返す。
これに対してフラッシュ方式は、発光/受光を面状に行うことにより、複数の測定点についての時間情報をほぼ同時に得る方式である。複数の測定点をカバーするように面状に光を照射し、各測定点からの戻り光を面状の受光センサでほぼ同時に受光して時間情報を得る。
本実施の形態による距離計測装置は、スキャン方式とフラッシュ方式のどちらにも適用することができる。そのため、第1の実施形態としてスキャン方式を説明し、第2の実施形態としてフラッシュ方式を説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施形態による距離計測装置の構成の一例を示すブロック図である。距離計測装置1は、制御部10と、送信符号生成部20と、クロック信号発生部30と、送信部40と、発光側の光学系50と、受光側の光学系55と、受信部60と、計時部70と、距離算出部80とを有する。距離計測装置1は、所定ビット長のPN符号を用いて変調した変調光を物体100の方向へ向けて送出(照射)してから、物体100等で反射された光が受信部60で受信されるまでの時間に基づき、距離計測装置1から物体100までの距離を算出する。
制御部10は、CPU、ROM、RAM等により構成され、制御プログラムに基づいて距離計測装置1の各部の動作を制御する。送信符号生成部20は、送信部40の光源を変調するためのPN系列(疑似雑音系列)の1種であるM系列の符号を生成する。次数nのM系列の周期は、P=2−1の形で表される。そして、次数nのM系列は、そのM系列を構成するP個の符号のうち任意の位置から順にn個取り出した符号で表される値が全て異なるという性質を有する。送信符号生成部20は、制御部10から指示された次数nのM系列の符号を、クロック信号発生部30が発生する基準クロック信号に同期して生成する。
本実施の形態では、測定する最長距離Lmを距離レンジと称する。制御部10は、例えば、測定レンジとして設定する最長距離Lm(距離計測装置1からの距離)を光が往復する時間T=2×Lm/Cと、上記M系列の周期を示すPの値(=2−1)とを対応させるように、次式(1)により次数nを決定する。
(2n−1−1)×tck < 2×Lm/C ≦ (2−1)×tck (1)
ただし、符号Cは光速、符号tckは変調周期(=1/変調周波数F)を表す。
ここで、変調周波数Fを高くするほど距離測定の分解能が上がり、次数nを増やすほど最長距離Lmが長くなる。制御部10は、測定分解能と最長距離Lmとに基づいて次数nを決定する。
送信符号生成部20によって生成されたM系列の符号は、二値符号として送信部40および計時部70へ送出される。
なお、本実施の形態で扱う系列は、符号が「0」または「1」である二値系列をいう。
クロック信号発生部30は、基準発振器の周波数を分周するなどして、変調周波数Fとして例えば50MHz(すなわち変調周期tck=1/F=20ns)の基準クロック信号を生成する。基準クロック信号は、送信符号生成部20、送信部40、受信部60、および計時部70に供給される。
送信部40は、発光素子40aおよび駆動部40bを含む。本実施の形態では、距離計測装置1の光源として、例えば、上記変調周波数Fで変調発光させることが可能な波長約940nmの赤外光LD(LD: Laser Diode)を発光素子40aとして用いる。駆動部40bは、上記送信符号生成部20で生成された二値符号に従って発光素子40aをオンまたはオフさせることにより、上記基準クロック信号に同期する上記M系列の符号に基づくビット長Pの変調光を発光素子40aから出力させる。これにより、ビット長Pの変調光が時間(P×tck)の間照射される。出力された変調光は、発光側の光学系50を介して物体100の方向に進む。
なお、上記説明において発光素子40aをオンまたはオフさせると記載したが、実際には完全にオフにしなくても、発光する光の強度を低下させることで所定の消光比が得られればよい。
(スキャン方式の光学系)
光学系50および光学系55は、送信部40による発光と、受信部60による受光の方向を走査するスキャン光学系を構成する。図2は、スキャン方式の光学系を説明する模式図である。発光素子40aから出力された変調光は、発光側の光学系50を構成する走査ミラー50aに入射する。走査ミラー50aで反射された変調光は、測定視野200の中の測定点Oへ進む。測定点Oに対応する位置に物体100(図1)が存在すると、物体100で反射された変調光(戻り光)が再び走査ミラー50aに入射する。戻り光は走査ミラー50aで反射された後、受光側の光学系55を構成するミラー55a等により分離される。そして、受光レンズ55bを介して受信部60を構成する受光素子60aに入射される。
走査ミラー50aは、例えば水平方向および鉛直方向に二次元走査が可能に構成されている。これにより、発光素子40aから出力された変調光を、測定視野200の中の任意の測定点Oへ導くことができる。
図1の受信部60は、受光素子60aと、増幅部60bと、二値化部60cとを含む。本実施の形態では、受光素子60aとして、上記赤外域の変調光を受光可能なPD(PhotoDiode)を用いる。物体100等で反射した変調光(戻り光)は、上述した走査ミラー50aおよび受光側の光学系55を介して受光素子60aに入射される。すなわち、ビット長Pの変調光(戻り光)が時間(P×tck)の間入射される。受光素子60aは、受光した光の強さに応じた受信信号(光電流)を出力する。
増幅部60bは、受信信号を電圧値に変換して増幅し、増幅した受信信号を二値化部60cへ送出する。二値化部60cは、上記基準クロック信号に同期して、受信信号をHighレベルまたはLowレベルに二値化する。例えば、受信信号が基準電圧よりも高い場合はHighレベルとし、受信信号が基準電圧よりも低い場合にはLowレベルとする。二値化された受信信号は、計時部70へ送出される。
計時部70は、信号保持部70aと、検出部70bとを含む。信号保持部70aは、RAM等により構成され、受信部60から送出された受信信号を一時的に記憶する。信号保持部70aは、少なくとも上記M系列の次数nと同じビット長nの受信信号を、一時的に記憶することができる。換言すると、本実施の形態では1つの測定点Oにつき、Pビットの反射光(戻り光)のうちのnビット分の受信信号を信号保持部70aに一時的に記憶させる。
なお、信号保持部70aに記憶させるビット長nは、制御部10からの指示によって変更(例えば、nビットからmビット(n<m<P)に変更)することができる。
検出部70bは、信号保持部70aに記憶されているnビットの受信信号のビットパターンが、送信符号生成部20によって生成された、M系列を構成するP個の符号のビットパターンのどの区間(M系列上の位置)と一致するかを検出する。環境ノイズ(例えば、本実施の形態と同様の距離計測装置を搭載した他車からの光)の影響を軽減したい場合に好適である。検出部70bは、ビット長Pの二値符号の先頭から数えてMs番目と、Ms+1番目と、…、Ms+(n−1)番目と一致することを検出する。検出結果は、距離算出部80へ送出される。検出部70bによる検出の詳細は、後に図5を参照して詳しく説明する。
距離算出部80は、次式(2)により遅延時間dtを算出する。遅延時間dtは、変調光が距離計測装置1と物体100との間を往復する時間である。
dt=2×Lm/C−Ms×tck (2)
ただし、符号tckは変調周期である。
距離算出部80はさらに、次式(3)により距離計測装置1から物体100までの距離Lobを算出する。
Lob=dt×C/2 (3)
ただし、符号dtは遅延時間である。
以上の説明は、1つの測定点Oに対する動作である。制御部10は、送信部40が発光する方向および受信部60が受光する方向を走査することによって、複数の測定点Oについて時間情報としての遅延時間dtを算出させるとともに、各遅延時間dtに基づいて複数の測定点Oまでの距離Lobを算出させる。
なお、制御部10は、ある測定点Oについて発光および受光動作を行うことによって距離Lobの算出に必要なnビットの受信信号が信号保持部70aに一時的に記憶されると、計時部70による算出処理と並行して次の測定点Oに対する発光および受光動作を開始させることができる。
制御部10は、このように複数の測定点Oで集めた複数の距離Lobを点群データとして処理することにより、3次元マップ(奥行き(距離)情報を有する画像)を生成する。
<測定の流れ>
上述した距離計測装置1による測定動作について、図3を参照して説明する。図3は、変調光の生成と物体100からの反射光の関係を説明する模式図である。横軸は時間を示しており、時刻t0において測定が始まるものとする。図3には、M系列の次数nが4(すなわちP=15)の場合を例示する。図示する波形は、上から順に基準クロック信号、M系列信号、M系列に基づく変調光S、および変調光Sが物体100で反射された反射光R1を示す。4次のM系列の場合、基準クロック信号のクロック数15がM系列の1周期に対応する。また、基準クロック信号の1クロックΔtは、上述した変調周期tckに相当する。
送信部40は、時刻t0から時間T(=2×Lm/C)の間に、測定点Oに対して上記M系列の符号に基づいて変調されたビット長Pの変調光Sを照射する。
受信部60は、送信部40で変調光Sの照射が開始された時刻t0から時間T(=2×Lm/C)が経過後の時刻t3より、受信部60を稼働させる。受信部60の稼働時間trは、次式(4)で表される。
tr=n×tck (4)
ただし、符号nは上記M系列の次数である。符号tckは変調周期である。
M系列の次数nは、上式(1)を満たすように決定されているので、M系列の符号に基づいて変調されたビット長Pの変調光Sは、時刻t3に末尾ビット(=Pビット目)の出力が終了する。本実施の形態では、送信部40で変調光Sの照射が終了する時刻t3に受信部60が稼働を開始する。送信部40は、受信部60が稼働されている稼働時間trの間は変調光Sの照射を休止する。
距離計測装置1から至近距離L1に物体100が位置する場合、この物体100で反射されたビット長Pの反射光(戻り光)R1の先頭ビット(=1ビット目)は、送信部40で変調光Sの出力が開始された時刻t0から間もない時刻t1に距離計測装置1へ到達する。
反射光(戻り光)R1は、ビット長Pであるので時刻t1から時間T(=2×Lm/C)が経過するまで続く。送信部40は、稼働時間trが終了すると、時刻t4から時間T(=2×Lm/C)の間に、上記M系列の符号に基づいて変調されたビット長Pの変調光Sを次の測定点Oに対して照射する。以降も同様の動作を繰り返す。
<照射タイミングと受光タイミング>
図4は、変調光の照射タイミングと物体100からの反射光の受光タイミングを説明する模式図である。図3を参照して説明したように、送信部40が時刻t0から時間T(=2×Lm/C)の間にビット長Pの変調光Sを照射する。また、受信部60が時刻t3より時刻t4までの稼働時間trの間に反射光R1を受信する。図4に示すタイミングで受信部60が受信する反射光R1は、反射光(戻り光)R1のうち末尾寄りnビット分である。
受信部60で受信された、反射光(戻り光)R1の末尾寄りnビット分の受信信号に基づいて、距離計測装置1から物体100までの距離L1を算出する方法について、図5を参照して説明する。図5において、図3と同様に横軸が時間を示しており、時刻t0において測定が始まるものとする。また、M系列の次数nが4(すなわちP=15)の場合を例示する点も図3と同様である。
<距離算出手順>
距離計測装置1は、以下の手順(1)から手順(5)を行うことによって距離L1を算出する。
手順(1)
距離計測装置1は、反射光(戻り光)R1の受信信号m1のビットパターン「0110」を検出する。
手順(2)
距離計測装置1は、照射光(変調光S)から上記ビットパターン「0110」の位置を検出する。
手順(3)
距離計測装置1は、上記ビットパターン「0110」がM系列の何番目かを判定する。図5の例ではMs=12(12番目)である。
手順(4)
距離計測装置1は、変調光Sの12番目を照射(時刻t1A)してから受光する(時刻t3)までの遅延時間dtを、上式(3)を用いて計算する。図5の例では、dt=4Δtである。
手順(5)
距離計測装置1は、上式(4)を用いて距離L1(Lob)を計算する。図5の例では、L1=2Δt×Cである。
上記手順(1)から手順(5)をさらに詳細に説明する。計時部70は、遅延時間dtを測定するために、上記検出部70bによって、受信部60で受信された反射光(戻り光)R1の受信信号のビットパターンが変調光Sの変調波形のビットパターンのどの区間と一致するかを検出する。換言すると、信号保持部70aに記憶されているnビットの受信信号のビットパターンが、M系列を構成するP個の符号のビットパターンと一致する部分を特定する。
先ず、4次のM系列の1例として先頭ビット(図5に向かって左)から順番に、1,1,0,1,0,1,1,1,1,0,0,0,1,0,0となる系列を選ぶ。
図5の例では、変調光Sの先頭ビットから数えて1番目と、2番目と、3番目と、4番目の4ビットからなる信号を(Ms=1)と称する。また、例えば先頭ビットから数えて7番目と、8番目と、9番目と、10番目の4ビットからなる信号を(Ms=7)と称する。同様に、先頭ビットから数えて12番目と、13番目と、14番目と、15番目の4ビットからなる信号を(Ms=12)と称する。変調光Sにおいて、(Ms=1)は、1,1,0,1であり、(Ms=7)は、1,1,1,0であり、(Ms=12)は、0,1,0,0である。
信号保持部70aは、上記手順(1)として、P(=15)ビットの反射光(戻り光)R1のうちのn(=4)ビット分の受信信号を一時的に記憶する。これにより、4ビットの受信信号m1(=0,1,0,0)が記憶される。
検出部70bは、上記手順(2)として、M系列を構成するP(=15)個の符号の中から、信号保持部70aに記憶されている4ビットの受信信号と一致する区間(M系列上の位置)を検出する。
また、検出部70bは、上記手順(3)として、信号保持部70aに記憶されている4ビットの受信信号m1(=0,1,0,0)が、M系列における12番目(Ms=12)と一致することから、Ms=12とする。
距離算出部80は、上記手順(4)として、検出部70bによって検出されたMs=12を上式(2)に代入することによって、遅延時間dt=4×Δtを得る。上述したように、符号Δtは基準クロック信号の1クロックに相当する。
距離算出部80はさらに、上記手順(5)として、上式(3)に遅延時間dtを代入することによって距離L1(Lob)を算出する。
<物体の距離と反射光の受光タイミング>
本実施の形態では、信号保持部70aに記憶されるnビットの受信信号のビットパターンが、物体100までの距離によって異なる。図6は、距離計測装置1から異なる距離L1、L2およびLmに位置する物体100からの反射光の受光タイミングを説明する模式図である。図6において、上述した至近距離L1と、最長距離Lmの中ほどの中距離L2と、最長距離Lmとに位置する物体100で反射されたビット長Pの反射光(戻り光)が例示される。
至近距離L1に位置する物体100で反射されたビット長Pの反射光(戻り光)R1の先頭ビット(=1ビット目)は、図4を参照して説明した通り、送信部40で変調光Sの出力が開始された時刻t0から間もない時刻t1に距離計測装置1へ到達する。図6において受信部60で受信される反射光R1は、反射光(戻り光)R1のうち末尾寄りnビット分である。
また、中距離L2に位置する物体100で反射されたビット長Pの反射光(戻り光)R2の先頭ビット(=1ビット目)は、送信部40で変調光Sの出力が開始された時刻t0と時刻t3との間の時刻t2に距離計測装置1へ到達する。図6において受信部60で受信される反射光R2は、反射光(戻り光)R2のうち中寄りnビット分である。
さらにまた、最長距離Lmに位置する物体100で反射されたビット長Pの反射光(戻り光)R3の先頭ビット(=1ビット目)は、時刻t3に距離計測装置1へ到達する。図6において受信部60で受信される反射光R3は、反射光(戻り光)R3のうち先頭寄りnビット分である。
このように、受信部60で受信される反射光R1、反射光R2、反射光R3の受信信号のビットパターンは、距離計測装置1から物体100までの距離の違いによって異なる。距離計測装置1では、物体100までの距離の違いによって受信部60で受信される受信信号のビットパターンが異なる点に着目して、上述した手順(1)から手順(5)を行うことにより、物体100までの距離L1、距離L2、距離Lmを算出する。
<測定時間>
次に、図7を参照して、本実施の形態と従来の技術とを測定時間の観点で比較する。図7は、従来の技術による距離計測装置による測定動作を説明する図であり、1つの測定点Oに対する測定の流れを時間軸上に例示した模式図である。図6と同様に、横軸は時間を示しており、時刻t0において測定が始まるものとする。時刻t0から時間T(=2×Lm/C)の間に、送信部から測定点Oに対して上記M系列の符号に基づいて変調されたビット長Pの変調光Sが照射される点は、本実施の形態(図6)と同様である。
従来の距離計測装置では、距離計測装置から至近距離L1に物体100が位置する場合、距離計測装置から中距離L2に物体100が位置する場合、距離計測装置から最長距離Lmに物体100が位置する場合のいずれも、物体100で反射されたビット長Pの反射光(戻り光)が全て受光される。そのため、受信部の稼働時間trは次式(5)で表される。
tr=2×P×tck
=4×L/C (5)
ただし、符号Pは上記M系列の周期である。符号tckは変調周期である。
従来の距離計測装置から至近距離L1に物体100が位置する場合、この物体100で反射されたビット長Pの反射光(戻り光)R1の先頭ビット(=1ビット目)は、変調光Sの出力が開始された時刻t0から間もない時刻t1に距離計測装置へ到達する。そのため、変調光Sの出力が開始された時刻t0から受信部の稼働が開始される。反射光(戻り光)R1はビット長Pであるので、少なくとも時刻t1から時間T(=2×Lm/C)が経過するまで受信部を稼働させる必要がある。
従来の距離計測装置から中距離L2に物体100が位置する場合、この物体100で反射されたビット長Pの反射光(戻り光)R2の先頭ビット(=1ビット目)は、上記時刻t0と上記時刻t3との間の時刻t2に距離計測装置へ到達する。
反射光(戻り光)R2はビット長Pであるので、少なくとも時刻t2から時間T(=2×Lm/C)が経過するまで受信部を稼働させる必要がある。
従来の距離計測装置から最長距離Lmに物体100が位置する場合、この物体100で反射されたビット長Pの反射光(戻り光)R3の先頭ビット(=1ビット目)は、時刻t3に距離計測装置へ到達する。
反射光(戻り光)R3はビット長Pであるので、時刻t3から時間T(=2×Lm/C)が経過する時刻t5まで受信部を稼働させる必要がある。
以上をまとめると、従来の距離計測装置の受信部の稼働時間trは、上式(5)のとおり(4×Lm/C)である。
これに対して、本実施の形態による距離計測装置1の受信部60で受信する反射光(戻り光)R1〜R3のうちのnビットは、従来の距離計測装置の受信部で受信される反射光(戻り光)R1〜R3のPビットと比べるとはるかに短い。例えば、M系列の次数nが10である場合にはP=1023ビットに対してn=10ビットは1/100程度である。よって、距離計測装置1の受信部60の稼働時間trは、時間T(=2×Lm/C)の1パーセント程度にまで短縮できる。この結果、受信部60に入射した外来光ノイズが電気信号に変換される確率は100分の1にでき外来光ノイズに強い装置になる。
さらに、送信部40が変調光の出力を開始した時刻t0から受信部60が稼働を終了する時刻t4までの時間を距離計測装置1の測定時間mt1と定義すると、測定時間mt1は、実質的に時刻t0から時間T(=2×Lm/C)が経過後の時刻t3までの時間と等しいといえる。
一方で、従来の距離計測装置の受信部の稼働時間trは、上述のように(4×Lm/C)である。また、従来の距離計測装置の送信部が変調光の出力を開始した時刻t0から受信部が稼働を終了する時刻t5までの時間を従来の距離計測装置の測定時間mt2と定義すると、測定時間mt2は、時刻t0から(4×Lm/C)が経過する時間である。
以上のことから、距離計測装置1の測定時間mt1は、従来の距離計測装置の測定時間mt2に比べて約1/2に短縮することができる。
<フローチャートの説明>
図8は、スキャン方式の距離計測装置1による距離測定の流れを説明するフローチャートである。図8のフローチャートに基づくプログラムは、制御部10により実行される。ステップS10において、制御部10は、送信符号生成部20に送信符号を生成させる。送信符号生成部20は、上述したように、制御部10から指示された次数nのM系列の符号を、クロック信号発生部30が発生する基準クロック信号に同期して生成する。
ステップS20において、制御部10は、送信部40に変調光Sの照射を開始させる。送信部40は、上述したように、基準クロック信号に同期するM系列の符号に基づくビット長Pの変調光Sを発光素子40aから出力させる。
ステップS30において、制御部10は、タイムアップしたか否かを判定する。制御部10は、送信部40で変調光Sの出力を開始させた時刻t0から時間T(=2×Lm/C)が経過した場合にタイムアップと判断し、ステップS30を肯定判定してステップS40へ進む。制御部10は、時刻t0から時間T(=2×Lm/C)が経過していない場合にはステップS30を否定判定してタイムアップを待つ。
ステップS40において、制御部10は、受信部60を稼働させて反射光Rの受信を開始させる。ステップS50において、制御部10は、受信部60でnビットの受信が終了したか否かを判定する。制御部10は、受信部60を稼働させた時刻t3から稼働時間Trが経過した場合にステップS50を肯定判定してステップS60へ進む。制御部10は、時刻t3から稼働時間trが経過していない場合にはステップS50を否定判定して稼働時間trの経過を待つ。
なお、制御部10は、時刻t3から稼働時間Trが経過するのを待つ代わりに、信号保持部70aにnビットの受信信号が記憶されたか否かを判断することによって、ステップS50の判定を行ってもよい。
ステップS60において、制御部10は、検出部70bに検出処理を行わせる。検出部70bは、受信部60で受信された反射光(戻り光)R1〜R3の受信信号が、M系列を構成するP個の符号のどの区間と一致するかを検出する。
ステップS70において、制御部10は、距離算出部80に距離算出処理を行わせる。距離算出部80は、検出部70bの検出結果に基づき、遅延時間dtおよび距離Lobを算出する。
ステップS80において、制御部10は、他に測定点があるか否かを判断する。制御部10は、全ての測定点Oに対する測定処理を終了しておらず、他に測定点Oが存在する場合にはステップS80を肯定判定してステップS20へ戻る。制御部10は、全ての測定点Oに対して測定処理を終了した場合にステップS80を否定判定して図8による処理を終了する。ステップS20へ戻った場合、制御部10は、上記スキャン光学系を次の測定点Oへ走査し、新たな測定点Oに対して同様の動作を繰り返す。
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)距離計測装置1は、基準クロック信号の1周期Pを、例えば10次のM系列信号で変調した変調光Sを照射する光射出部としての送信部40と、照射した変調光Sが物体100で反射した反射光を受信する光受光部としての受信部60と、1周期Pの変調光Sが照射された後の10クロックに相当する期間の受信部60からの受信信号を用いて、物体100までの距離を計算する距離測定部としての距離算出部80とを備える。
このように構成したので、距離の計算に用いる信号が、物体100で反射された1周期P(1023ビット)の反射光(戻り光)の1パーセント程度の10ビットになり、1023ビットの信号の全てを距離の計算に用いる従来の技術と比べて、測定時間を大幅に短縮することができる。
(2)距離測定部としての計時部70は、受信信号のビットパターンを特定し、特定したビットパターンに相当する変調光Sの区間を検出する。計時部70はさらに、1周期P(1023ビット)のM系列上の位置を特定し、M系列上の位置から、変調光Sが送信部40から照射されて、反射光が受信部60で受信されるまでの遅延時間dtを上式(2)により計算し、この遅延時間dtから物体100までの距離を上式(3)により計算する。
このように構成したので、計時部70の信号保持部70aに記憶されている10ビットの受信信号のビットパターンが、1023ビットの変調光Sの符号のどの区間と一致するかを検出することによって、変調光Sが距離計測装置1と物体100との間を往復する時間、すなわち遅延時間dtを適切に求めることができる。また、受信部60に入射した外来光ノイズが電気信号に変換される確率は低くなり、環境ノイズの影響を受けにくくすることができる。
(3)受信部60は、測定レンジとして設定する最長距離Lm(距離計測装置1からの距離)からの反射光が返るとき(時刻t3)より受信を開始するように構成したので、変調光Sの照射が開始された時刻t0から受信を開始する従来技術に比べて受信時間が短縮されるから、受信部60に入射した外来光ノイズが電気信号に変換される確率は低くなる。受信部60で消費される電力を削減することにも効果がある。
なお、受信部60は、測定レンジとして設定する最長距離Lmよりも短い距離からの反射光が返る時刻(時刻t3より前)から受信を開始してもよい。受信部60は、時刻t3より前から受信を開始した場合でも時刻t4まで受信を続ける。
(4)送信部40は、変調光Sの照射時間を、測定レンジとして設定する最長距離Lmに位置する物体100との間を光が往復する時間とほぼ一致させる。このように構成したので、受信部60に、変調光Sの照射が終了する時刻t3より受信を開始させることができる。
(5)受信部60は、1周期P(1023ビット)の反射光の一部(10ビット)の受信信号を受信する。このように構成したので、1023ビットの反射光を全て受信する従来技術に比べて受信時間が短縮されるから、受信部60に入射した外来光ノイズが電気信号に変換される確率は低くなる。受信部60で消費される電力を削減することにも効果がある。
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(変形例1)
送信部40から照射するビット長Pの変調光Sの光強度を、ビット長Pの先頭ビット(=1ビット目)から末尾ビット(=Pビット目)まで一定にする場合、距離計測装置1から至近距離L1に位置する物体100で反射されたビット長Pの反射光(戻り光)は、最長距離Lmに位置する物体100で反射されたビット長Pの反射光(戻り光)に比べて光の強度が高くなる。このため、受信部60における受信信号のレベルは、物体100が距離計測装置1の近くにあるほど大きく、物体100が距離計測装置1から遠方にあるほど小さくなる。一般に、受信信号のレベルが大きく変化するよりも、受信信号のレベルがほぼ一定である方が、受信部60における回路の負担が小さい。具体的には、大きな受信信号から小さな受信信号まで広い入力範囲に対応させるよりも、同程度のレベルの受信信号のみに対応させる方が、回路の構成を簡単にすることができる。
変形例1では、受信部60における受信信号のレベルがほぼ一定となるように、送信部40から照射される変調光Sの光強度を時間経過とともに変化させる。図9(a)は、時刻t0から時刻t3までの時間T(=2×Lm/C)の間に、送信部40から照射されるビット長Pの変調光Sの光強度を示す模式図である。送信部40は、測定点Oに対してM系列の符号に基づいて変調されたビット長Pの変調光Sを照射する際に、図9(a)に示すように、変調光Sの変調パルスの光強度を、先頭ビット(図に向かって左)寄りほど大きくして、末尾ビット(図に向かって右)に向かって単調に減少させる。具体的には、物体100までの距離の2乗に反比例させるように光強度を減少させる。
図6を参照して説明したように、距離計測装置1から至近距離L1に物体100が位置する場合、反射光(戻り光)R1の末尾寄りnビット分が受信部60で受信される。また、距離計測装置1から中距離L2に物体100が位置する場合、反射光(戻り光)R2の中寄りnビット分が受信部60で受信される。さらにまた、距離計測装置1から最長距離Lmに物体100が位置する場合、反射光(戻り光)R3の先頭寄りnビット分が受信部60で受信される。
このように、受信部60で受信される反射光(戻り光)のビット位置が、距離計測装置1から物体100までの距離によって異なるという本実施の形態の特徴に合わせて、送信部40から照射する変調光Sの変調パルスの光強度を図9(a)に示すごとく減少させる。
図9(b)は、時刻t3から時刻t4までの稼働時間Trの間に、受信部60の受光素子60aで受信される変調光(戻り光)の受信強度を示す模式図である。送信部40から照射される変調光Sの変調パルスの光強度を時間経過とともに減少させることにより、受信部60における受信信号のレベルをほぼ一定にすることができる。このように構成することにより、受信部60の回路の負担を軽減することができる。
(変形例2)
受信部60が反射光(戻り光)を受信するとき、例えば、本実施の形態と同様の距離計測装置を搭載した他車からの変調光等に起因するノイズによってビット誤りが生じてしまう場合を想定する。受信信号にビット誤りが生じると、計時部70による時間測定が困難になる。具体的には、受信部60で受信された反射光(戻り光)の受信信号のビットパターンが、ビット誤りにより変調光Sの変調波形のビットパターンと一致しなくなってしまう。このような事態に対処するため、変形例2において、計時部70に対して符号誤りの訂正、検出機能をもたせてもよい。
M系列は、周期性、均一性、連なり性、自己相関性等の種々の性質を有することが知られている(吉谷清澄;「PN系列−特にM系列について」,電波研究所季報 第17巻第90号(1971年5月),pp249−263)。変形例2では、M系列が上記性質に基づいて誤り訂正能力を有することに着目し、ノイズによってビット誤りが生じた場合に誤ったビットパターンを訂正する。
上述した実施の形態では、M系列の次数nが10である場合において、受信部60が反射光(戻り光)の10ビット分を受信するようにしたが、変形例2においては、受信部60が、例えば反射光(戻り光)の21ビット分(10ビットに11ビットを加える)を受信する。具体的には、上式(4)のnに21を代入し、稼働時間trを延ばす。稼働時間trを延ばすことによって、反射光(戻り光)のうちの21ビット分を受信部60で受信することになる。
10ビットに11ビットを加えて21ビット分の受信を行う場合、21ビットのうちの2ビットまでのビット誤りであれば訂正が可能となる。また、21ビットのうちの3ビットのビット誤りであればその検出が可能になる。このように、受信部60で受信する反射光(戻り光)のビット数を増やすことによって、符号誤りの訂正、符号誤りの検出機能を持たせることができる。
なお、10ビットより長い21ビット分を受信することにしても、反射光(戻り光)のビット長P=1023ビットに対してn=21ビットは2/100程度である。よって、距離計測装置1の受信部60の稼働時間trは、時間T(=2×Lm/C)の2パーセント程度に過ぎず、測定時間が大きく伸びることはない。このように、M系列の誤り訂正、誤り検出能力を用いて、本実施の形態と同様の距離計測装置からの変調光等に起因するノイズの影響を避けることができる。
<第2の実施の形態>
第2の実施形態では、フラッシュ方式の距離計測装置について説明する。
(概要)
はじめに、図10、図11を参照して第2の実施形態の概要を説明する。
図10は、第2の実施形態による距離計測装置1Aを説明する模式図である。送信部40は、物体100aおよび物体100bを照らす光を面状に照射する。受信部60は、物体100a、100bからの反射光(戻り光)を、光学系50を介して受光する。受信部60は、面状の受光素子60aを有しており、各物体100a、100bからの戻り光を画像として撮像する。
図11は、受光素子60aの受光面(撮像面)における物体100a、100bの像を示す模式図である。図11では、光学系50により物体100a、100bの像の上下左右が反転している。受信部60は、M系列の次数nと同じn回の撮像を行うことにより、図11に示すような画像をnフレーム取得する。
計時部70は、受信部60で取得されたnフレームの画像に基づいて、各測定点O(図12)におけるnビットの受信信号を得る。
(フラッシュ方式の光学系)
以下、フラッシュ方式の距離計測装置1Aについて、図1、図12を参照して詳細に説明する。制御部10は、スキャン方式の場合(第1の実施形態)と同様に、測定分解能と最長距離Lmとに基づいてM系列の次数nを決定する。送信部40における駆動部40bは、送信符号生成部20で生成された二値符号に従って発光素子40aをオンまたはオフさせることにより、基準クロック信号に同期するM系列の符号に基づくビット長Pの変調光を発光素子40aから出力させる。これにより、ビット長Pの変調光が時間(P×tck)の間照射される。
図12は、フラッシュ方式の光学系を説明する模式図である。送信部40の発光素子40aから出力された変調光は、発光側の光学系50(図1)を介して測定視野200の全体に照射される。すなわち、測定視野200における複数の測定点Oをカバーするように変調光が面状に照射される。
測定視野200からの変調光(戻り光)は、受光側の光学系55としての受光レンズ55bによって受信部60の受光素子60aの受光面に結像する。受光素子60aは、例えば、赤外域の変調光を受光可能な複数のAPD(Avalanche PhotoDiode)を、画素として二次元状に配置した撮像素子である。APDは、光電流を増倍する作用を備えた高速かつ高感度のフォトダイオードである。APDは一般のフォトダイオードに比べてS/N比が高く、微弱光検出に適している。
受信部60は、送信部40で変調光Sの照射が開始された、図3の時刻t0から時間T(=2×Lm/C)が経過後の時刻t3より稼働し、受光素子60aによって赤外光画像を1フレーム当たりナノ秒オーダで撮像する。例えば、図3の時刻t3から時刻t4までの稼働時間Trの間に、M系列の次数nと同じn回の撮像を、基準クロック信号に同期してtck間隔で行う。
フラッシュ方式の距離計測装置1Aは、測定視野200からの変調光(戻り光)を赤外光画像として取得するので、1フレーム撮像するごとに複数の測定点Oについての時間情報をほぼ同時に得ることができる。測定点Oに対応する位置に物体100aが存在すると、物体100aで反射された変調光(戻り光)が、受光素子60aの受光面において測定点Oに対応する画素位置(Sa,Sb)に配置されたAPDに入射される。
受信部60は、図3の時刻t3になると、送信部40の変調光の照射と同期したタイミングで受光素子60aの全画素をほぼ同時に駆動して撮像を行う。受信部60は、受光素子60aの各画素位置(Sa,Sb)に配置されたAPDにより光を光電変換して電荷を生成し、生成した電荷に基づく信号を読出し、受光素子60aをクリア(生成した電荷を排出)する。このような撮像動作を、tck間隔でn回繰り返す。
受信部60は、n回の撮像によって得られたnフレームの画像を、二値化部60c(図1)によってnフレームの二値化画像に変換する。例えば、画像信号の値が基準値よりも高い場合は白、画像信号の値が基準値よりも低い場合には黒とする。二値化されたnフレームの画像は、計時部70へ送出される。
計時部70は、nフレームの二値化画像のデータを、信号保持部70aに一時的に記憶させる。各フレームの二値化画像において、同じ画素位置(Sa,Sb)のデータは同じ測定点Oからの反射光(戻り光)の波形を示す。すなわち、各フレームの二値化画像において、図11における物体100aの像に対応する画素位置では物体100aの像が写り、物体100bの像に対応する画素位置では物体100bの像が写る。そのため、nフレームの二値化画像からそれぞれ同じ画素位置(Sa,Sb)のデータを抽出すると、その画素位置(Sa,Sb)に対応する測定点O(図12)についてのnビットの受信信号が得られる。
例えば、M系列の次数nが4(すなわちP=15)である場合の4フレームの二値化画像において、それぞれ画素位置(Sa,Sb)のデータが白、白、黒、白である場合、その画素位置(Sa,Sb)に対応する測定点Oについての4ビットの受信信号は、1,1,0,1になる。
計時部70の検出部70bは、第1の実施の形態と同様に、M系列を構成するP個の符号の中から上記4ビットの受信信号と一致する区間を検出する検出処理を行う。
<フローチャートの説明>
図13は、フラッシュ方式の距離計測装置1Aによる距離測定の流れを説明するフローチャートである。図13のフローチャートに基づくプログラムは、制御部10により実行される。図8のフローチャートと比べると、S40、S50、S80の処理が、それぞれS40A、S50A、S80Aに置き換えられる点において相違する。以下、相違点を中心に説明する。
(S40に代えて実行するS40A)
制御部10は、ステップS40Aにおいて、受信部60を稼働させて送信部40の変調光の照射と同期したタイミングで受光素子60aに撮像を開始させる。受信部60は、受光素子60aの各画素位置(Sa,Sb)に配置されたAPDにより光を光電変換して電荷を生成し、生成した電荷に基づく信号を読出し、受光素子60aをクリアする撮像動作を、tck間隔で繰り返し、複数フレームの画像を撮像する。
(S50に代えて実行するS50A)
制御部10は、ステップS50Aにおいて、受信部60でnフレームの撮像が終了したか否かを判定する。制御部10は、受信部60によってnフレームの撮像が終了した場合にステップS50Aを肯定判定してステップS60へ進む。制御部10は、受信部60によるnフレームの撮像が終了していない場合には、ステップS50Aを否定判定してnフレームの撮像の終了を待つ。
なお、制御部10は、信号保持部70aにnフレームの二値化画像のデータが記憶されたか否かを判断することによって、ステップS50Aの判定を行ってもよい。
(S80に代えて実行するS80A)
制御部10は、ステップS80Aにおいて、終了するか否かを判断する。制御部10は、測定処理を終了する場合にステップS80Aを肯定判定して図13による処理を終了する。一方、制御部10は、新たに変調光を照射して測定処理を繰り返す場合には、ステップS80Aを否定判定してステップS20へ戻る。ステップS20へ戻った場合、制御部10は、S20、S30、S40A、S50A、S60、S70、S80Aの処理を繰り返す。
上述した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、距離の計算に用いる信号が、物体100で反射された1周期P(1023ビット)反射光の1パーセント程度の10ビットになり、1023ビットの信号の全てを距離の計算に用いる従来の技術と比べて、測定時間を大幅に短縮することができる。また、受信部60の受信時間が短縮されるから、受信部60に入射した外来光ノイズが電気信号に変換される確率が低くなる。さらに受信部60で消費される電力を削減することにも効果がある。
フラッシュ方式を採用したことにより、発光/受光を面状に行うことができる。そのため、複数の測定点Oについての時間情報を、ほぼ同時に得ることができる。この結果として、スキャン方式に比べて測定視野200に対する測定を高速で行うことができる。
(変形例3)
上述した第2の実施の形態の変形として、受信部60によるnフレームの撮像を、基準クロック信号2つ毎(一つおき)、または、3つ毎(二つおき)、またはそれ以上の間隔で行ってもよい。
図14は、M系列の性質を説明する図である。M系列は、M系列を構成する符号を一つおきに抽出した符号もM系列を構成する。M系列はさらに、M系列を構成する符号を二つおきに抽出した符号もM系列を構成する。M系列を構成する符号を三つおき以上で抽出する場合も同様である。
変形例3では、M系列の上記性質を利用して、受信部60によるnフレームの撮像動作をtck間隔で繰り返す代わりに、2×tck間隔、または、3×tck間隔で繰り返す。このように構成することにより、基準クロック信号2つ毎(一つおき)、または、基準クロック信号3つ毎(二つおき)に、測定視野200からの変調光(戻り光)を赤外光画像として撮像する。
制御部10は、例えば、受光素子60aによる撮像動作のサイクル(電荷生成、読出し、クリア)が変調周期tckよりも長い場合、nフレームの撮像を基準クロック信号2つ毎(一つおき)に行わせる。また、制御部10は、受光素子60aによる撮像動作のサイクルが2×tckよりも長い場合、nフレームの撮像を基準クロック信号3つ毎(二つおき)に行わせる。
撮像動作を2×tck間隔または3×tck間隔でn回繰り返すと、受信部60の稼働時間trは、上式(4)の2倍または3倍を必要とする。
M系列の次数nが4(すなわちP=15)である場合、図5に比べて稼働時間trを2倍に延ばすと、2倍に延ばした稼働時間trには基準クロック信号が8クロック含まれる。そのため、受信部60は、基準クロック信号2つ毎(換言すると一つおき)に撮像動作のサイクルを繰り返すことにより、2倍に延ばした稼働時間trの間に4回の撮像動作を行う。
同様に、M系列の次数nが4(すなわちP=15)である場合、図5に比べて稼働時間trを3倍に延ばすと、3倍に延ばした稼働時間trには基準クロック信号が12クロック含まれる。そのため、受信部60は、基準クロック信号3つ毎(換言すると二つおき)に撮像動作のサイクルを繰り返すことにより、3倍に延ばした稼働時間trの間に4回の撮像動作を行う。
以上説明した変形例3によれば、受光素子60aによる撮像動作のサイクルが変調周期tckよりも長い場合でも、適切に、フラッシュ方式の距離計測装置1Aによる距離測定を行うことができる。
なお、変形例3では、送信部40より、M系列の符号に基づく変調光が基準クロック信号に同期して出力され、受信部60による稼働時間trは、tck間隔で撮像動作を行う場合の2倍または3倍になる。
例えば、撮像動作を2×tck間隔で行う場合であって、M系列の次数nが10である場合、受信部60の稼働時間trは、n(=10)×2×tckである。この場合、距離計測装置1Aの受信部60の稼働時間trは1023ビット分の2パーセント程度に過ぎず、測定時間が大きく伸びることはない。
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
1、1A…距離計測装置、10…制御部、20…送信符号生成部、30…クロック信号発生部、40…送信部、50、55…光学系、60…受信部、70…計時部、80…距離算出部、100、100a,100b…物体

Claims (9)

  1. 基準クロック信号の1周期をn次M系列信号で変調した照射光を照射する光射出部と、
    前記照射光が物体で反射した反射光を受光する光受光部と、
    前記1周期の照射光が照射された後のnクロックに相当する期間の前記光受光部からの受光信号を用いて、前記物体までの距離を計算する距離測定部と、
    を備える距離計測装置。
  2. 請求項1に記載の距離計測装置において、
    前記距離測定部は、前記受光信号のビットパターンを特定し、前記ビットパターンに相当する前記照射光の区間を検出し、M系列上の位置を特定し、前記M系列上の位置から、前記照射光が照射されて、前記反射光が前記光受光部で受光されるまでの時間を計算し、前記時間から、前記距離を計算する距離計測装置。
  3. 請求項1または2に記載の距離計測装置において、
    前記光受光部は、測定レンジ距離からの前記反射光が返るときより前記受光を開始する距離計測装置。
  4. 請求項3に記載の距離計測装置において、
    前記光射出部は、前記照射光の照射時間を、前記測定レンジ距離に位置する前記物体との間を光が往復する時間とほぼ一致させる距離計測装置。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の距離計測装置において、
    前記光受光部は、1周期の前記反射光の一部を受光する距離計測装置。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載の距離計測装置において、
    前記光射出部は、前記照射光の強度を単調に減少させる距離計測装置。
  7. 請求項6に記載の距離計測装置において、
    前記光射出部は、前記照射光の強度を、照射開始から経過した時間の二乗に反比例させる距離計測装置。
  8. 請求項1から7のいずれか一項に記載の距離計測装置において、
    前記距離測定部は、前記受光信号のビットパターンの誤りを前記n次M系列信号の性質に基づいて訂正する距離計測装置。
  9. 基準クロック信号の1周期をn次M系列信号で変調した照射光を照射し、
    前記照射光が物体で反射した反射光を受光し、
    前記1周期の照射光が照射された後のnクロックに相当する期間の受光信号を用いて、前記物体までの距離を計算する、
    距離計測方法。
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