JP2020176050A - リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物及び、リチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物及び、リチウムイオン二次電池 Download PDF

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寛子 大下
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Abstract

【課題】特にナトリウムの含有量を確実に低減させて、焼結凝集を抑制し、さらなる電池特性の向上が可能な正極活物質である、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物及びリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。【解決手段】リチウム、ニッケル、コバルト、アルミニウムを含む一次粒子が凝集した二次粒子、又は前記一次粒子と前記二次粒子で構成されたリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物であって、前記リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物に含まれるナトリウム含有量が、0.0005質量%未満であり、前記リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の平均粒径を、前駆体であるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の平均粒径で除した比が、0.95〜1.05であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、ニッケル、コバルト、アルミニウムを含む一次粒子が凝集した二次粒子、又は一次粒子と二次粒子で構成されたリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物及び、リチウムイオン二次電池に関する。本出願は、2019年4月16日に出願された特願2019−077521を基礎として優先権を主張するものであり、この出願を参照することにより、本出願に援用される。
近年、スマートフォンやタブレット端末及びノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する、小型で軽量な非水系電解質二次電池をはじめ、ハイブリット自動車や電気自動車用の電池として、高出力の二次電池の開発ニーズが拡大している。
この様なニーズに対応出来る二次電池として、リチウムイオン二次電池が挙げられる。リチウムイオン二次電池は、正極及び負極のほか、電解液などで構成され、正極及び負極の活物質は、リチウムを脱離や挿入することの可能な材料が用いられている。リチウムイオン二次電池は、現在も、研究・開発が盛んに行われているが、このうち、層状又はスピネル型のリチウム金属複合酸化物を正極活物質に用いたリチウムイオン二次電池では、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
この中でも、リチウムニッケルコバルト複合酸化物は、電池容量のサイクル特性が良く、低抵抗で高出力が得られる材料として注目されており、近年では、搭載スペースに制約を受ける電気自動車用電源やハイブリッド車用電源にも好適であり、車載用電源として重要視されている。一般的に、リチウムニッケルコバルト複合酸化物は、前駆体となるニッケルコバルト複合水酸化物をリチウム化合物と混合し、焼成する工程によって製造する。
このニッケルコバルト複合水酸化物には、製造工程で用いる原料や薬剤由来の硫酸根、塩素根、ナトリウムなど不純物が含まれる。これらの不純物は、ニッケルコバルト複合水酸化物とリチウム化合物とを混合し、焼成する工程において、副反応などを誘発してリチウムとの反応を悪化させるために、層状構造であるリチウムニッケルコバルト複合酸化物の結晶性を低下させる。
不純物の影響で、結晶性が低くなったリチウムニッケルコバルト複合酸化物は、正極活物質として電池を構成する際、固相内でのリチウムの拡散を阻害して電池容量が低下する。また、これらの不純物は、充放電反応には殆ど寄与しないため、電池の構成において、正極材料の不可逆容量に相当する分は、負極材料を余計に電池に使用せざるを得ない。その結果、電池全体としての重量当り、若しくは体積当りの容量が小さくなり、不可逆容量として負極に余分なリチウムが蓄積されることから、安全性の面からも問題となっている。
更に、ナトリウムをはじめ、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが、リチウムサイトに固溶することで、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の粒子が焼結凝集し易くなり、これを用いて作製したリチウムイオン二次電池は、反応性が悪化し、出力特性及び電池容量が低下する。
不純物としては、硫酸根や塩素根、ナトリウムなどが挙げられ、これまでに、それらの不純物を除去する技術が開示されている。
例えば、特許文献1には、ニオブ含有遷移金属複合水酸化物を得る晶析工程を行い、得られたニオブ含有遷移金属複合水酸化物を、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩水溶液で洗浄することにより、硫酸根や塩素根を低減させることが開示されている。
また、特許文献2には、晶析反応からニッケルマンガンコバルト複合水酸化物を製造する工程において、pH調整に用いるアルカリ溶液を、アルカリ金属水酸化物と炭酸塩の混合溶液とすることで、不純物である硫酸根、塩素根、炭酸根を低減させることが開示されている。
また、特許文献3〜4には、晶析工程で得られた粒子内部に空隙構造を有するニッケルマンガン複合水酸化物粒子又はニッケル複合水酸化物粒子を、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩水溶液で洗浄することにより、硫酸根や塩素根、ナトリウムを低減させることが開示されている。
また、特許文献5には、ニッケルアンミン錯体、コバルトアンミン錯体及びM元素源を混合して得たニッケル−コバルト−M元素含有水溶液又は水性分散液を加熱して、ニッケルアンミン錯体及びコバルトアンミン錯体を熱分解させ、硫酸根、塩素根、ナトリウム、鉄などの不純物含有量が少ないニッケル−コバルト−M元素含有複合化合物を用いることが開示されている。
特開2015−122269号公報 特開2016−117625号公報 国際公開第2015/146598号 特開2015−191848号公報 国際公開第2012/020768号
しかしながら、特許文献1〜2については、ナトリウムの除去について全く触れられていない。また、特許文献3〜4については、空隙率が3%程度の中実レベルの前駆体においても、依然として、ナトリウムが0.001〜0.015質量%残存しており、ナトリウム低減が不十分である。更に特許文献5については、熱分解によってニッケル−コバルト−M元素含有複合化合物を得ているため、粒子の球状や粒度分布、比表面積の観点から、正極活物質とした際に、十分な電池特性となるかが疑問視される。特にアルミニウムを含むニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物に着眼したものではなく、また、不純物除去し、更なる電池特性の向上や、焼結凝集の抑制に関する記載も見当たらない。
そこで本発明の目的は、充放電反応にも殆ど寄与しない不純物のうち、特にナトリウムの含有量を確実に低減させて、焼結凝集を抑制し、さらなる電池特性の向上が可能な正極活物質である、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物及びリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係るリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物は、リチウム、ニッケル、コバルト、アルミニウムを含む一次粒子が凝集した二次粒子、又は前記一次粒子と前記二次粒子で構成されたリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物であって、前記リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物に含まれるナトリウム含有量が、0.0005質量%未満であり、前記リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の平均粒径を、前駆体であるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の平均粒径で除した比が、0.95〜1.05であることを特徴とする。
このようにすれば、焼結凝集が抑制され、充填性が高く、高容量化が可能なリチウムイオン二次電池の正極活物質である、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を提供することが出来る。
このとき、本発明の一態様では、前記リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物に含まれる硫酸根含有量が0.15質量%以下、塩素根含有量が0.005質量%以下、かつLi席占有率が99.0%以上としてもよい。
このようにすれば、硫酸根、塩素根及びナトリウムの含有量を確実に低減させ、高容量化が可能なリチウムイオン二次電池の正極活物質である、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を提供することができる。
このとき、本発明の一態様では、無作為に選択した100個以上の前記リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の粒子を、走査型電子顕微鏡により観察した際に、二次粒子の凝集が観察される個数が、観察した全二次粒子数に対して、5%以下としてもよい。
このようにすれば、焼結凝集が抑制され、充填性が高く、高容量化が可能なリチウムイオン二次電池の正極活物質である、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を提供することが出来る。
このとき、本発明の一態様では、前記リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物に含まれるカリウム、カルシウム、マグネシウムの少なくともいずれか1つ以上の物質の含有量が、0.0005質量%未満としてもよい。
このようにすれば、より不純物の含有量を低減させ、高容量化が可能なリチウムイオン二次電池の正極活物質である、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を提供することができる。
このとき、本発明の他の態様では、少なくとも、上記リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を含む正極を備えることを特徴とするリチウムイオン二次電池としてもよい。
このようにすれば、ナトリウムの含有量を確実に低減させて、焼結凝集を抑制し、充填性が高く、高容量化が可能なリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を含む正極を備えたリチウムイオン二次電池を提供することが出来る。
本発明によれば、特にナトリウムの含有量を確実に低減させて、焼結凝集を抑制し、さらなる電池特性の向上が可能な正極活物質である、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物及びリチウムイオン二次電池を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係るニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の断面SEM写真であり、内部構造が中実構造であることを示す図である。 図2は、本発明の一実施形態に係るニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の製造方法の概略を示す工程図である。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、特にアルミニウムを含むニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の製造において、晶析工程における反応雰囲気を制御し、晶析工程で用いるアルカリ溶液をアルカリ金属水酸化物と炭酸塩との混合溶液とすることに加えて、晶析工程で得られた遷移金属複合水酸化物を、洗浄工程で炭酸水素塩(重炭酸塩)含有の洗浄液である炭酸水素アンモニウム溶液を用いて洗浄することによって、不純物である硫酸根、塩素根及びナトリウムを、より効率良く、より低濃度に低減出来るとの知見を得て、本発明を完成したものである。また、上記の様に、ナトリウムの含有量を確実に低減させた、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を、前駆体として用いることによって、焼結凝集が抑制され、充填性が高く、高容量化が可能なリチウムイオン二次電池の正極活物質である、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物が得られるとの知見を得て、本発明を完成したものである。以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。本発明の一実施形態に係るニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の製造方法、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物及びリチウムイオン二次電池について、下記の順に説明する。
1.ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物
2.リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物
3.ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の製造方法
3−1.晶析工程
3−1−1.核生成工程
3−1−2.粒子成長工程
3−2.洗浄工程
4.リチウムイオン二次電池
<1.ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物>
本発明の一実施形態に係るニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物は、ニッケル、コバルト、アルミニウムを含む一次粒子が凝集した二次粒子、又は前記一次粒子と前記二次粒子で構成された、正極活物質の前駆体である。
そして、上記ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物に含まれるナトリウム含有量が、0.0005質量%未満であることを特徴とする。以下、本発明の一実施形態に係るニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物について具体的に説明する。
[粒子の組成]
ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物は、その組成が、一般式:Ni1−x−yCoAl(OH)2+a(但し、0.05≦x≦0.35、0.01≦y≦0.20、x+y<0.40、0≦a≦0.5)で表される様に、調整されることが好ましい。
上記一般式において、コバルト含有量を示すxは、0.05≦x≦0.35が好ましい。コバルトを適度に添加することで、サイクル特性の向上や充放電に伴うリチウムの脱離挿入による結晶格子の膨張収縮挙動をより低減出来る。コバルト含有量が少な過ぎてxが0.05未満であると、期待する効果を得ることが出来にくいため好ましくない。一方、コバルト含有量が多過ぎてxが0.35を超えると、初期放電容量の低下が大きくなる可能性があり、更に、コスト面で不利となる問題もあるため好ましくない。従って、コバルト含有量を示すxは、0.05≦x≦0.35が好ましく、電池特性やコストをより考慮すると、0.07≦x≦0.25が好ましく、実質的には、0.10≦x≦0.20とすることがより好ましい。
また、アルミニウム含有量を示すyは、0.01≦y≦0.2が好ましい。この範囲内で、アルミニウムを添加すると、電池が正極活物質として用いられた際に、耐久特性や安全性をより向上させることが出来る。特に、アルミニウムは、粒子内部へ均一に分布する様に調整されていれば、粒子全体で上記効果を得られるため、同じ添加量でより大きな効果が発揮され、容量低下を抑制出来るという利点がある。アルミニウム添加量が少な過ぎて、yが0.01未満になると、期待する効果を得にくいため好ましくない。一方、0.2を超えると、アルミニウム添加量が多過ぎて、Redox反応に貢献する金属元素が減少し、電池容量が低下する場合があるため好ましくない。
その他、粒子の組成に関する分析方法は、特に限定されないが、例えば、酸分解−ICP発光分光分析法などによる、化学分析手法から求めることが出来る。
[粒子構造]
ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物は、複数の一次粒子が凝集して形成された、球状の二次粒子により構成される。二次粒子を構成する一次粒子の形状としては、板状、針状、直方体状、楕円状、菱面体状などの様々な形状を採り得る。また、複数の一次粒子の凝集状態も、ランダムな方向に凝集する場合のほか、中心から放射状に粒子の長径方向が凝集する場合も本発明に適用することは可能である。
凝集状態としては、板状や針状の一次粒子が、ランダムな方向に凝集して二次粒子を形成していることが好ましい。この様な構造の場合は、一次粒子間にほぼ均一な空隙が生じて、リチウム化合物と混合して焼成する際に、溶融したリチウム化合物が二次粒子内へ行き渡り、リチウムの拡散が十分に行われるからである。
なお、一次粒子及び二次粒子の形状観察方法は、特に限定されないが、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて観察することにより測定出来る。
[粒子内部構造]
本発明の一実施形態に係るニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物は、中実構造を有しており、二次粒子内部に中空構造や多孔構造を持たない。二次粒子内部に空隙が無いため、最も粒子強度に優れる。よって、正極活物質の長寿命化となる。
また、この中実構造は、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)で断面を観察することによって確認出来る。
[平均粒径(MV)]
ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物は、粒子の平均粒径が3〜20μmに調整されていることが好ましい。平均粒径が3μm未満の場合には、正極を形成した時に、粒子の充填密度が低下して正極の容積当りの電池容量が低下する場合があるため好ましくない。その一方、平均粒径が20μmを超えると、正極活物質の比表面積が低下し、電池の電解液との界面が減少することにより正極の抵抗が上昇して電池の出力特性が低下する場合があるため好ましくない。従って、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物は、粒子の平均粒径を3〜20μm、好ましくは3〜15μm、より好ましくは4〜12μmとなる様に調整すれば、この正極活物質を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池において、容積当りの電池容量を大きくすることができ、安全性が高く、サイクル特性が良好である。
また、平均粒径の測定方法は、特に限定されないが、例えば、レーザー回折・散乱法を用いて測定した体積基準分布から求めることが出来る。
[不純物含有量]
一般的に、ニッケルコバルト複合水酸化物やニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物は、不純物として硫酸根、塩素根、ナトリウムのほか、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを含有する。これらの不純物は、リチウムとの反応を悪化させる原因となり、充放電反応にも殆ど寄与しないため、可能な限り除去し、その含有量を低減することが好ましい。また、詳細は後述するが、アルミニウムを含むニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を製造する際、硫酸塩ではなくアルミン酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを使用することが好ましく、アルミニウムを含まないニッケルコバルト複合水酸化物を製造する場合よりも、晶析時のナトリウム濃度が高くなり、洗浄によるナトリウムの除去が困難となる。従来から、これらの不純物を除去する技術が開示されているが、それらの技術では未だ不十分である。
そこで本発明の一実施形態に係るニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物に含まれるナトリウム含有量が、0.0005質量%未満であることを特徴とする。このようにすれば、ナトリウムの含有量を確実に低減させ、高容量化が可能なリチウムイオン二次電池の正極活物質の前駆体である、ニッケル、コバルト、アルミニウムを含むニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を提供することができる。
上述したように、従来技術ではナトリウムが0.001〜0.015質量%残存しており、それではナトリウム低減が不十分である。また、従来技術には、ナトリウム含有量がある数値以下と記載している文献があるが、本発明の一実施形態に係るニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物や後述するリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物のように、ナトリウム含有量が0.0005質量%未満と極めて低い濃度となる複合水酸化物や複合酸化物は実際には開示されていない。後述する製造方法によって、ナトリウム含有量が0.0005質量%未満と極めて低い濃度を達成できる。そうすることによって、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物にした時の焼結凝集を抑制することができる。
また、上記ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物に含まれる硫酸根含有量が、0.2質量%以下、かつ塩素根含有量が0.01質量%以下であることが好ましい。このようにすれば、硫酸根、塩素根及びナトリウムの含有量を確実に低減させ、電池特性の向上が可能なリチウムイオン二次電池の正極活物質の前駆体である、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を提供することができる。
上記ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物に含まれるカリウム、カルシウム、マグネシウムの少なくともいずれか1つ以上の物質の含有量が、0.0005質量%未満であることが好ましい。このようにすれば、より不純物の含有量を低減させ、かつ空隙率を高めたさらなる電池特性の向上が可能なリチウムイオン二次電池の正極活物質の前駆体である、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を提供することができる。
各不純物の含有量については、例えば、以下に示す分析方法を用いて求めることが出来る。ナトリウムのほか、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどは、酸分解−原子吸光分析法や、酸分解−ICP発光分光分析法などにより求めることが出来る。また、硫酸根は、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の全硫黄含有量を、燃焼赤外線吸収法や、酸分解−ICP発光分光分析法などで分析して、この全硫黄含有量を硫酸根(SO 2−)に換算することにより求めることが出来る。また、塩素根は、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を直接、又は蒸留操作で含まれる塩素根を塩化銀などの形で分離し、蛍光X線(XRF)分析法で分析することにより求めることが出来る。
[粒度分布]
ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物は、その粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が、0.55以下となる様に調整されていることが好ましい。
仮に、粒度分布が広範囲になっており、その粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.55を超える場合は、平均粒径に対して粒径が非常に小さい微粒子や、平均粒径に対して非常に粒径の大きい粒子(大径粒子)が、多く存在し易くなる。
この様な、前駆体の段階における粒度分布の特徴は、焼成工程後に得られる正極活物質にも、大きな影響を及ぼす。微粒子が多く存在する正極活物質を用いて正極を形成した場合は、微粒子の局所的反応に起因して発熱する恐れがあり、安全性が低下する場合があるだけでなく、比表面積が大きい微粒子が選択的に劣化するので、サイクル特性が悪化する場合があるため好ましくない。その一方、大径粒子が多く存在する正極活物質を用いて正極を形成した場合には、電解液と正極活物質との反応面積が十分に取れず、反応抵抗の増加による電池出力が低下する場合があるため好ましくない。
故に、前駆体であるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の粒度分布において、〔(d90−d10)/平均粒径〕が、0.55以下であることが好ましく、正極活物質とした際の微粒子や大径粒子の割合が少なくなるので、この正極活物質を正極に用いたリチウムイオン二次電池では、より安全性に優れ、良好なサイクル特性及び電池出力を得ることが出来る。
なお、粒度分布の広がりを示す指標〔(d90−d10)/平均粒径〕では、d10は各粒径における粒子数を粒径が小さいほうから累積した時、その累積体積が全粒子の合計体積の10%となる粒径を意味している。これに対して、d90は各粒径における粒子数を粒径が小さいほうから累積した時、その累積体積が全粒子の合計体積の90%となる粒径を意味している。平均粒径や、d90、d10を求める方法は、特に限定されないが、例えば、レーザー回折・散乱法を用いて測定した体積基準分布から求めることが出来る。
[比表面積]
ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物は、比表面積が15〜60m/gとなる様に調整されていることが好ましい。比表面積が15〜60m/gの範囲であれば、リチウム化合物と混合して焼成する際に、溶融したリチウム化合物と接触出来る粒子表面積がより十分に得られるからである。
一方、比表面積が15m/gを下回ると、リチウム化合物と混合し焼成する際に溶融したリチウム化合物との接触が不十分となり、得られるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の結晶性が低下し、正極材料としてリチウムイオン二次電池を構成する際に、固相内でのリチウム拡散を阻害して電池容量が低下する懸念性がある。また、比表面積が60m/gを超えると、リチウム化合物と混合し焼成する際に、結晶成長が進み過ぎて、層状化合物であるリチウム遷移金属複合酸化物のリチウム層にニッケルが混入するカチオンミキシングが起こり、充放電容量が減少する場合があるため好ましくない。なお、もっと詳細に言うなら、上述した電池特性を更に安定させるため、比表面積が30〜50m/gとなる様に、調整されていることがより好ましい。
特にアルミニウムを含むニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物は、アルミニウムを含まない場合と比べ、粒子表面の凹凸状態の他、一次粒子の大きさや凝集具合が異なる。よって、本発明の一実施形態に係るニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の比表面積は、上記のように30〜50m/gとすることが好ましい。
比表面積の測定方法は、特に限定されないが、例えば、BET多点法や、BET1点法による、窒素ガス吸着・脱離法などにより求めることが出来る。
図1に、本発明の一実施形態に係るニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の断面SEM写真を示す。このように、本発明の一実施形態に係るニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物は、図1に示すように内部構造が中実構造となっている。
本発明の一実施形態に係るニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物によれば、特にナトリウムの含有量を確実に低減させ、高容量化が可能なリチウムイオン二次電池の正極活物質の前駆体である、ニッケル、コバルト、アルミニウムを含むニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を提供することができる。また、上記の様に、ナトリウムの含有量を確実に低減させた、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を、前駆体として用いることによって、焼結凝集が抑制され、充填性が高く、高容量化が可能なリチウムイオン二次電池の正極活物質である、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物が得られる。
<2.リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物>
本発明の一実施形態に係るリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物は、リチウム、ニッケル、コバルト、アルミニウムを含む一次粒子が凝集した二次粒子、又は前記一次粒子と前記二次粒子で構成される。そして、上記リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物に含まれるナトリウム含有量が、0.0005質量%未満であることを特徴とする。
また、上記リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物に含まれる硫酸根含有量が0.15質量%以下、塩素根含有量が0.005質量%以下、かつLi席占有率が99.0%以上であることが好ましい。
上記リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の平均粒径を、前駆体であるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の平均粒径で除した比、即ち、「リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物のMV/ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物のMV」(これ以降、「MV比」とも称する)を、焼結凝集を示す指標として評価することが出来る。そのMV比の範囲としては、0.95〜1.05であり、0.97〜1.03であることが好ましい。
このMV比が、上記の範囲である場合、正極活物質は、焼結凝集に伴う、二次粒子同士の凝集が殆ど発生していない、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物から構成されていることになる。この様な正極活物質を用いた二次電池は、充填性が高く、高容量であり、また、特性のばらつきが少なく均一性に優れたものとなる。
その一方、MV比が1.05を超える場合、焼結凝集に伴い、比表面積及び充填性が低下することがある。この様な正極活物質を用いた二次電池は、反応性が悪化することにより、出力特性及び電池容量が低下することがある。また、繰り返して充放電を行った場合、正極において、二次粒子同士が凝集している強度の弱い部分から、選択的に崩壊が起こり、サイクル特性を大きく損なう恐れもあるため、安全に見積もるならば、1.05以下であり、1.03以下であることが好ましい。
更に、MV比が0.95未満である場合、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の製造工程において、二次粒子から一次粒子の一部が欠落して、粒径が減少したことが考えられ、これにより、粒度分布が広くなることがあるため、0.95以上であり、0.97以上であることが好ましい。
なお、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物のMVは、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を製造する際に、前駆体として用いたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物のMVを意味する。また、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物のMVは、解砕工程を行う場合、解砕工程を行った後のリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物のMVを意味する。なお、それぞれの粒子のMVは、レーザー回折・散乱方式の粒度分析測定装置で測定することができ、各粒径における粒子数を、粒径の小さい側から累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の平均値となる粒径を意味する。
また、無作為に選択した100個以上のリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した際に、二次粒子の凝集が観察される個数が、観察した全二次粒子数に対して、5%以下であってもよく、3%以下であってもよく、2%以下であってもよい。二次粒子の凝集が観察される個数が上記範囲である場合、二次粒子の焼結凝集が十分に抑制されていることを示す。また、正極活物質のMVが上述した範囲である場合、二次粒子の凝集が観察される個数を容易に上記範囲とすることが出来る。なお、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する際の倍率は、例えば、1000倍程度である。
二次粒子の凝集が観察される個数が、観察した全二次粒子数に対して、5%以下である場合、正極活物質は、焼結凝集に伴う、二次粒子同士の凝集が殆ど発生していない、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物から構成していることになる。この様な正極活物質を用いた二次電池は、充填性が高く、高容量であり、また、特性のばらつきが少なく均一性に優れたものとなる。
その一方、二次粒子の凝集が観察される個数が、観察した全二次粒子数に対して、5%を超える場合、焼結凝集に伴い、比表面積及び充填性が低下することがある。この様な正極活物質を用いた二次電池は、反応性が悪化することにより、出力特性及び電池容量が低下することがある。また、繰り返して充放電を行った場合、正極において、二次粒子同士が凝集している強度の弱い部分から、選択的に崩壊が起こり、サイクル特性を大きく損なう恐れもあるため、安全に見積もるならば、5%以下であることが好ましい。
上記リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物に含まれるカリウム、カルシウム、マグネシウムの少なくともいずれか1つ以上の物質の含有量が、0.0005質量%未満であることが好ましい。このようにすれば、より不純物の含有量を低減させ、高容量化が可能なリチウムイオン二次電池の正極活物質である、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を提供することができる。
ここでリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物は、後述する水洗処理により、若干量であるが、リチウムが洗い流される場合がある。また、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物に不純物が多いほど、リチウム原料との焼成反応のときに悪影響を及ぼし、結晶性が悪化すると共に、上記水洗処理時にリチウムがロスしやすくなる。従って、アルミニウムを含むリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物は、Liで席占有率を示す。ゆえに本発明の一実施形態に係るリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物のLi席占有率は、99.0%以上であることが好ましい。このようにすれば電池特性がより向上する。
上記のニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物は、リチウム化合物と混合し焼成することでリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を生成することが出来る。そして、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物は、リチウムイオン二次電池用の正極活物質の原料として用いることが出来る。
正極活物質として用いられるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物は、前駆体であるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物と、炭酸リチウム(LiCO:融点723℃)や、水酸化リチウム(LiOH:融点462℃)のほか、硝酸リチウム(LiNO:融点261℃)、塩化リチウム(LiCl:融点613℃)、硫酸リチウム(LiSO:融点859℃)などのリチウム化合物との混合後、焼成工程を経ることで得られる。
リチウム化合物に関しては、取り扱いの容易さや品質の安定性を考慮すると、炭酸リチウム、又は水酸化リチウムを用いることが特に好ましい。
この焼成工程では、リチウム化合物の構成成分ともなる、炭酸根、水酸基、硝酸根、塩素根、硫酸根は揮発するが、ごく一部は正極活物質に残存する。その他、ナトリウムなどの不揮発成分や、粒度分布や、比表面積については、前駆体であるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の特徴を、ほぼ引き継ぐこととなる。
また、上記の焼成工程後に、アルミニウムを含むリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を水洗処理する。
本発明の一実施形態に係るリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物によれば、特にナトリウムの含有量を確実に低減させ、高容量化が可能なリチウムイオン二次電池の正極活物質を提供することができる。
<3.ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の製造方法>
次に本発明の一実施形態に係るニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の製造方法について、図2を用いて説明する。本発明の一実施形態に係るニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の製造方法は、ニッケル、コバルト、アルミニウムを含む一次粒子が凝集した二次粒子、又は前記一次粒子と前記二次粒子で構成された、正極活物質の前駆体の製造方法である。そして、図2に示すように、晶析工程S10と洗浄工程S20とを有する。
晶析工程S10では、ニッケル、コバルト、アルミニウムを含む原料溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む溶液と、アルカリ溶液とを添加して得られた反応溶液中で晶析し、遷移金属複合水酸化物を得る。そして、洗浄工程S20では、上記晶析工程S10で得られた上記遷移金属複合水酸化物を、洗浄液で洗浄する。
また、上記晶析工程S10における上記アルカリ溶液は、アルカリ金属水酸化物と炭酸塩との混合溶液であり、上記混合溶液の上記アルカリ金属水酸化物に対する上記炭酸塩のモル比である[CO 2−]/[OH]が、0.002〜0.050であり、上記晶析工程S10では、非酸化性雰囲気で晶析を行い、上記洗浄工程S20における上記洗浄液は、濃度が0.05mol/L以上の炭酸水素アンモニウム溶液であることを特徴とする。以下、工程ごとに詳細に説明する。
<3−1.晶析工程>
晶析工程S10では、ニッケル、コバルト、アルミニウムを含む原料溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む溶液と、アルカリ溶液とを添加して得られた反応溶液中で晶析し、遷移金属複合水酸化物を得る。
また、晶析工程S10は、更に核生成工程S11と、粒子成長工程S12とを有することが好ましい。核生成工程S11では、液温25℃を基準に測定するpHが12.0〜14.0となる様、アルカリ溶液を添加し反応溶液中で核生成を行い、粒子成長工程S12では、核生成工程S11で形成された核を含有する反応溶液中に、液温25℃を基準に測定するpHが10.5〜12.0となる様、アルカリ溶液を添加することが好ましい。詳細は後述する。
従来の連続晶析法では、核生成反応と核成長反応とが、同じ反応槽内で同時に進行するため、得られる前駆体の粒度分布が広範囲となっていた。これに対して、本発明におけるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の製造方法は、主として核生成反応が生じる時間(核生成工程)と、主として粒子成長反応が生じる時間(粒子成長工程)とを明確に分離することで、両工程を同じ反応槽内で行ったとしても、狭い粒度分布を持つ遷移金属複合水酸化物が得られる。また、アルカリ溶液を、アルカリ金属水酸化物と炭酸塩の混合溶液とすることで、不純物である硫酸根などを低減することが出来る。
以下に、本発明におけるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の製造方法で用いる材料や、条件について詳細に説明する。
[ニッケル、コバルト、アルミニウムを含む原料溶液]
ニッケル、コバルト、アルミニウムを含む原料溶液に用いられる、ニッケル塩、コバルト塩などの金属塩としては、水溶性の化合物であれば、特に限定するものではないが、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などを使用することが出来る。例えば、硫酸ニッケル、硫酸コバルトを用いるのが好ましい。
原料溶液の濃度は、金属塩の合計で1.0〜2.6mol/Lとすることが好ましく、1.0〜2.2mol/Lとすることがより好ましい。1.0mol/L未満であると、得られる水酸化物スラリー濃度が低く、生産性に劣る。一方、2.6mol/Lを超えると、−5℃以下で結晶析出や凍結が起こり、設備の配管を詰まらせる恐れがあり、配管の保温若しくは加温を行わなければならず、コストが掛かる。
更に、原料溶液を反応槽に供給する量は、晶析反応を終えた時点での晶析物濃度が、概ね30〜250g/L、更には80〜150g/Lになる様にすることが好ましい。晶析物濃度が30g/L未満の場合には、一次粒子の凝集が不十分になることがあり、250g/Lを超える場合には、添加する原料溶液の反応槽内での拡散が十分でなく、粒子成長に偏りが生じることがある。
[アルミニウム供給体]
晶析工程で用いるアルミニウム供給体には、アルミン酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを含む溶液を使用することが好ましい。それ以外の化合物、例えば、硫酸アルミニウムを用いた場合には、水酸化ニッケルや水酸化コバルトに比べて、水酸化アルミニウムがより低いpHで析出するため、水酸化アルミニウムが単独で析出し易く、粒度分布が狭く粒径が整ったニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得ることは出来ない。
アルミニウム供給体は、例えば、所定量のアルミン酸ナトリウムを水に溶解して水溶液とし、水酸化ナトリウムを所定量添加することで得られる。この時、アルミニウム供給体のナトリウムは、アルミニウムに対するモル比で、1.0〜3.0であることがより好ましい。ナトリウム量、つまり水酸化ナトリウム量が、モル比で1.0〜3.0の範囲を外れた場合には、アルミニウム供給体の安定性が低下し、反応槽に添加された直後、或いは、添加される前に、水酸化アルミニウムが微細粒子として析出し易くなる。その結果、水酸化ニッケル及び水酸化コバルトとの共沈反応が起こり難くなり、粒度分布が広く粒径がばらついたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物が生成すると共に、粒子のアルミニウムの分散が不均一になるなどの問題が生じる可能性があるため好ましくない。
アルミニウムを、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物に、均一に分散させるためには、ニッケル及びコバルトを含む原料溶液と、アルミニウム供給体を反応槽に同時に添加すればよい。この際、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を、目標とする組成比にするべく、ニッケル、コバルト、アルミニウムの金属濃度と、原料溶液及びアルミニウム供給体の添加流量を調整する。
[アンモニウムイオン供給体]
反応溶液中のアンモニウムイオン供給体は、水溶性化合物ならば、特に限定するものではなく、アンモニア水、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、フッ化アンモニウムなどを使用することができ、例えば、アンモニア水、硫酸アンモニウムを用いるのが好ましい。
反応溶液中のアンモニウムイオン濃度は、好ましくは3〜25g/L、より好ましくは10〜20g/L、更に好ましくは5〜15g/Lとなる様に調節する。反応溶液中にアンモニウムイオンが存在することにより、金属イオン、特にニッケルイオンはアンミン錯体を形成し、金属イオンの溶解度が大きくなり、一次粒子の成長が促進され、緻密なニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物粒子が得られ易い。更には、金属イオンの溶解度が安定するため、形状及び粒径が整ったニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物粒子が得られ易い。そして、反応溶液中のアンモニウムイオン濃度を3〜25g/Lとすることで、より緻密で形状及び粒径が整った複合水酸化物粒子が得られ易い。
反応溶液中のアンモニウムイオン濃度が3g/L未満であると、金属イオンの溶解度が不安定になる場合があり、形状及び粒径が整った一次粒子が形成されず、ゲル状の核が生成して粒度分布が広くなることがある。これに対して、アンモニウムイオン濃度が25g/Lを超える濃度では、金属イオンの溶解度が大きくなり過ぎ、反応溶液中に残存する金属イオン量が増えることにより、組成のずれが起きる場合がある。なお、アンモニウムイオンの濃度は、イオン電極法(イオンメータ)によって測定することが出来る。
[アルカリ溶液]
アルカリ溶液は、アルカリ金属水酸化物と炭酸塩の混合溶液で調整される。アルカリ溶液は、アルカリ金属水酸化物と炭酸塩のモル比を表す[CO 2−]/[OH]が、0.002〜0.050である。また、0.005〜0.030であることがより好ましく、0.010〜0.025であることが更に好ましい。
アルカリ溶液を、アルカリ金属水酸化物と炭酸塩の混合溶液とすることで、晶析工程において得られるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物に、不純物として残留する硫酸根や塩素根などの陰イオンを、炭酸根と置換除去することが出来る。炭酸根は、硫酸根や塩素根などに比べて、強熱することで、より揮発し易く、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物とリチウム化合物を混合し、焼成する工程で優先的に揮発するため、正極材料であるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物には、殆ど残留しない。
[CO 2−]/[OH]が0.002未満であると、晶析工程において、原料由来の不純物である硫酸根や塩素根と炭酸イオンの置換が不十分となり、これらの不純物をニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物中に取り込み易くなる。一方、[CO 2−]/[OH]が0.050を超えても、原料由来の不純物である硫酸根や塩素根の低減は変わらず、過剰に加えた炭酸塩は、コストを増加させる。
アルカリ金属水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの中の1種以上であることが好ましく、水に溶解し易い化合物は添加量を制御し易く好ましい。
炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムの中の1種以上であることが好ましく、水に溶解し易い化合物は添加量を制御し易く好ましい。
また、アルカリ溶液を反応槽に添加する方法については、特に限定されるものではなく、定量ポンプなど、流量制御が可能なポンプで、反応溶液のpHが後述する範囲に保持される様に、添加すればよい。
[pH制御]
晶析工程S10では、液温25℃を基準に測定する反応溶液のpHが12.0〜14.0になる様に、アルカリ溶液を添加して、核生成を行う核生成工程S11と、この核生成工程S11において形成された核を含有する粒子成長用溶液を、液温25℃を基準に測定するpHが10.5〜12.0となる様に、アルカリ溶液を添加して、核を成長させる粒子成長工程S12とからなることがより好ましい。
つまり、核生成反応と粒子成長反応とが、同じ槽内において同じ時期に進行するのではなく、主として核生成反応(核生成工程S11)が生じる時間と、主として粒子成長反応(粒子成長工程S12)が生じる時間とを明確に分離したことを特徴としている。以下に核生成工程S11及び粒子成長工程S12を詳細に説明する。
<3−1−1.核生成工程>
核生成工程S11では、反応溶液のpHが、液温25℃基準で12.0〜14.0の範囲となる様に制御することが好ましい。pHが14.0を超える場合、生成する核が微細になり過ぎ、反応溶液がゲル化する場合がある。また、pHが12.0未満では、核形成と共に、核の成長反応が生じるので、形成される核の粒度分布の範囲が広くなり、不均質なものとなってしまう場合がある。
即ち、核生成工程S11において、12.0〜14.0の範囲に反応溶液のpHを制御することで、核の成長を抑制して、ほぼ核生成のみを起こすことができ、形成される核も均質かつ粒度分布の範囲がより狭いものとすることが出来る。
<3−1−2.粒子成長工程>
粒子成長工程S12においては、反応溶液のpHが、液温25℃基準で10.5〜12.0とすることが好ましく、より好ましくは11.0〜12.0の範囲である。pHが12.0を超える場合は、新たに生成される核が多くなり、微細二次粒子が生成するため、粒度分布が良好な水酸化物が得られない場合がある。また、pHが10.5未満では、アンモニウムイオンによる溶解度が高く、析出せずに液中に残る金属イオンが増えるため、生産効率が悪化する場合がある。
つまり、粒子成長工程S12において、10.5〜12.0の範囲に反応溶液のpHを制御することで、核生成工程S11で生成した核の成長のみを優先的に起こさせ、新たな核形成を抑制することができ、得られるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を、均質かつ粒度分布の範囲をより狭いものとすることが出来る。
なお、pHが12.0の場合には、核生成と核成長の境界条件であるため、反応溶液中に存在する核の有無により、核生成工程若しくは粒子成長工程のいずれかの条件とすることが出来る。即ち、核生成工程S11のpHを12.0より高くして多量に核生成させた後、粒子成長工程S12でpHを12.0とすると、反応水溶液中に多量の核が存在するため、核の成長が優先して起こり、より粒度分布が狭く比較的大きな粒径の上記水酸化物が得られる。
その一方、反応溶液中に核が存在しない状態、つまり、核生成工程S11においてpHを12.0とした場合には、成長する核が存在しないため、核生成が優先して起こり、粒子成長工程S12のpHを12.0より小さくすることで、生成した核が成長してより良好な水酸化物が得られる。
いずれの場合においても、粒子成長工程S12のpHを、核生成工程S11のpHより低い値で制御すればよく、核生成と粒子成長を明確に分離するためには、粒子成長工程S12のpHを、核生成工程S11のpHより0.5以上低くすることが好ましく、1.0以上低くすることがより好ましい。
以上の様に、核生成工程S11と粒子成長工程S12をpHにより明確に分離することで、核生成工程S11では核生成が優先して起こり、核の成長は殆ど生じず、逆に、粒子成長工程S12では核成長のみが生じ、殆ど新しい核は生成されない。これにより、核生成工程S11では、粒度分布の範囲が狭く均質な核を形成させることができ、また、粒子成長工程S12では、均質に核を成長させることが出来る。従って、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の製造方法では、粒度分布の範囲がより狭く均質なニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物粒子を得ることが出来る。
[反応溶液温度]
反応槽内において、反応溶液の温度は、好ましくは20〜80℃、より好ましくは30〜70℃、更に好ましくは35〜60℃に設定する。反応溶液の温度が20℃未満の場合には、金属イオンの溶解度が低いため、核発生が起こり易く制御が難しくなる。その一方、80℃を超える場合は、アンモニアの揮発が促進されるので、所定のアンモニア濃度を保つために、過剰のアンモニウムイオン供給体を添加しなければならならず、コスト高となる。
[反応雰囲気]
ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の粒径及び粒子構造は、晶析工程S10における反応雰囲気によっても制御される。従って、晶析工程S10では、非酸化性雰囲気で晶析を行う。晶析工程S10中の反応槽内の雰囲気を非酸化性雰囲気に制御した場合、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を形成する一次粒子の成長が促進されて、一次粒子が大きく緻密で、粒径が適度に大きな二次粒子が形成される。特に、晶析工程S10において、酸素濃度が5.0容量%以下、好ましくは2.5容量%以下、より好ましくは1.0容量%以下の非酸化性雰囲気とすることで、比較的大きな一次粒子からなる核生成されると共に、一次粒子の凝集により粒子成長が促進され、適度な大きさの二次粒子を得ることが出来る。よって、図1に示すような中実型のニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物となる。一方、晶析工程中の反応槽内の雰囲気を酸化性雰囲気に制御した場合、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を形成する一次粒子の成長が抑制され、微細一次粒子からなり、粒子中心部に空間、若しくは微細な空隙が多数分散する二次粒子が形成される。
ところで、非酸化性雰囲気とは、酸素濃度が5.0容量%以下、好ましくは2.5容量%以下、より好ましくは1.0容量%以下の酸素と、不活性ガスの混合雰囲気を示す。この様な非酸化性雰囲気に、反応槽内空間を保つための手段としては、窒素などの不活性ガスを、反応槽内空間部へ流通させること、更には反応溶液中に不活性ガスをバブリングさせることが挙げられる。なお晶析工程S10における、バブリングの好ましい流量は、3〜7L/分であり、より好ましくは5L/分程度である。
一方、酸化性雰囲気とは、酸素濃度が5.0容量%を超える、好ましくは10.0容量%以上、より好ましくは15.0容量%以上の雰囲気を示す。
本発明の一実施形態に係るニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物のような中実構造を造り込む場合には、晶析工程S10の間、反応槽内の雰囲気を不活性雰囲気又は酸素濃度を0.2容量%以下に制御した非酸化性雰囲気とすることが好ましい。
なお、上記に核生成工程S11及び粒子成長工程S12を説明したが、核生成及び粒子成長をさせながら、反応雰囲気の制御を同時進行で行う。
<3−2.洗浄工程>
洗浄工程S20では、上記晶析工程S10で得られた遷移金属複合水酸化物を、洗浄液で洗浄する。
[洗浄液種類]
洗浄工程S20では、炭酸塩、炭酸水素塩(重炭酸塩)、水酸化物のアルカリ金属塩やアンモニウム塩を基とした洗浄液で洗浄する。好ましくは、炭酸塩、炭酸水素塩(重炭酸塩)、若しくは、それらの混合物を、水で溶解した洗浄液を用いて、遷移金属複合水酸化物を洗浄する。
そのようにすることで、不純物である硫酸根や塩素根などの陰イオンを、洗浄液中の炭酸イオンや炭酸水素イオン(重炭酸イオン)との置換反応を利用して、効率良く除去することが出来る。また、炭酸塩や炭酸水素塩(重炭酸塩)を用いることで、水酸化物を用いた場合に比べて、ナトリウムなどのアルカリ金属の混入も抑制することが出来る。その他、空隙構造を有する遷移金属複合水酸化物において、水酸化物を用いた場合は、粒子内部の不純物を除去することが困難であり、この点でも、炭酸塩や炭酸水素塩(重炭酸塩)を用いたほうが効果的である。
炭酸塩としては、炭酸カリウムを選択するのが好ましく、炭酸水素塩(重炭酸塩)としては、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウムを選択するのが好ましい。また、炭酸塩や炭酸水素塩(重炭酸塩)のうち、アンモニウム塩を選択することによって、不純物であるナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの陽イオンを、洗浄液中のアンモニウムイオンとの置換反応を利用して、効率良く除去することが出来る。更に、アンモニウム塩のうち、炭酸水素アンモニウム(重炭安)を選択することによって、ナトリウムなどの陽イオンを、最も効率良く除去することが出来る。
何故なら、ナトリウムなどの陽イオンとアンモニウムイオンとの置換反応のみならず、これに加えて、炭酸水素アンモニウム(重炭安)が持つ、他の塩よりも優れた性質、即ち、洗浄液とした際の炭酸ガスの発泡効率の高さが、ナトリウムなどの陽イオンを除去するのに、大きく寄与しているものと考えられる。
[濃度及びpH]
洗浄液である炭酸水素アンモニウム溶液の濃度は、0.05mol/L以上とする。濃度が0.05mol/L未満の場合、不純物である硫酸根、塩素根、ナトリウムの除去効果が低下する恐れがある。また、濃度が0.05mol/L以上なら、これらの不純物の除去効果は変わらない。それ故に、炭酸水素アンモニウム(重炭安)を過剰に加えると、コスト増加や排水基準などの環境負荷にも影響を及ぼすので、上限濃度を1.0mol/L程度に設定することが好ましい。
なお、炭酸水素アンモニウム溶液のpHは、濃度が0.05mol/L以上ならば、特に調整する必要は無く、成り行きのpHで構わない。仮に、濃度が0.05〜1.0mol/Lであるなら、そのpHは、おおよそ8.0〜9.0の範囲内となる。
[液温]
洗浄液である炭酸水素アンモニウム溶液の液温は、特に限定されないが、15〜50℃が好ましい。液温が上記範囲であれば、不純物との置換反応や、炭酸水素アンモニウムから発生する炭酸ガスの発泡効果がより良好であり、不純物の除去が効率的に進む。
[液量]
洗浄液である炭酸水素アンモニウム溶液の液量は、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物1kgに対し、1〜20Lである (スラリー濃度としては、50〜1000g/Lである)ことが好ましい。1L未満では 、十分な不純物の除去効果が得られない場合がある。また、20Lを超える液量を用いても、不純物の除去効果は変わらず、過剰な液量では、コスト増加や排水基準などの環境負荷にも影響を及ぼし、排水処理における排水量の負荷増加の要因ともなる。
[洗浄時間]
炭酸水素アンモニウム溶液による洗浄時間は、不純物を十分除去出来れば、特に限定されないが、通常は0.5〜2時間である。
[洗浄方法]
洗浄方法としては、1)炭酸水素アンモニウム溶液にニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を添加し、スラリー化して撹拌洗浄を行った後、濾過する一般的な洗浄方法や、若しくは、2)中和晶析により生成したニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を含むスラリーを、フィルタープレスなどの濾過機に供給して、炭酸水素アンモニウム溶液を通液する、通液洗浄を行うことが出来る。通液洗浄は、不純物の除去効果が高く、濾過と洗浄を同一の設備で連続的に行うことが可能で、生産性が高いため、より好ましい。
また、炭酸水素アンモニウム溶液での洗浄後は、置換反応によって洗い出された不純物を含む洗浄液が、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物に付着している場合があるため、最後に水洗することが好ましい。更に、水洗した後は、濾過したニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の付着水を乾燥する、乾燥工程(不図示)を行うことが好ましい。
上記洗浄工程S20を経て得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物は、ニッケル、コバルト、アルミニウムを含む一次粒子が凝集した二次粒子、又は上記一次粒子と上記二次粒子で構成された、正極活物質の前駆体であり、上記ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物に含まれるナトリウム含有量が、0.0005質量%未満であることを特徴とする。
本発明の一実施形態に係るニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の製造方法によれば、特にナトリウムの含有量を確実に低減させ、高容量化が可能なリチウムイオン二次電池の正極活物質の前駆体である、ニッケル、コバルト、アルミニウムを含むニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の製造方法を提供することができる。
<4.リチウムイオン二次電池>
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、上述したリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を含む正極を備えることを特徴とする。また、上記リチウムイオン二次電池は、一般のリチウムイオン二次電池と同様の構成要素により構成されることができ、例えば、正極、負極及び非水系電解質を含む。なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基に、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
(a)正極
先に述べた正極活物質であるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を用い、例えば、以下のようにして、リチウムイオン二次電池の正極を作製する。まず、粉末状の正極活物質、導電剤、結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭、粘度調整等の目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合剤ペーストを作製する。正極合材ペースト中のそれぞれの成分の混合比は、例えば、溶剤を除いた正極合剤の固形分の全質量を100質量部とした場合、一般のリチウムイオン二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を60〜95質量部とし、導電剤の含有量を1〜20質量部とし、結着剤の含有量を1〜20質量部とすることが好ましい。
得られた正極合剤ペーストを、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して、溶剤を飛散させる。必要に応じ、電極密度を高めるべく、ロールプレス等により加圧することもある。このようにして、シート状の正極を作製することができる。シート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断等をして、電池の作製に供することができる。ただし、正極の作製方法は、例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。
正極の導電剤としては、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)や、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)などのカーボンブラック系材料などを用いることができる。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。
なお、必要に応じ、正極活物質、導電剤、活性炭を分散させ、結着剤を溶解する溶剤を正極合剤に添加する。溶剤としては、具体的には、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。また、正極合剤には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することができる。
(b)負極
負極には、金属リチウムやリチウム合金等、あるいは、リチウムイオンを吸蔵及び脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合剤を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、コークス等の炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極結着剤としては、正極同様、PVDF等の含フッ素樹脂等を用いることができ、これらの活物質及び結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
(c)セパレータ
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
(d)非水系電解質
非水系電解質としては、非水系電解液を用いることができる。非水系電解液は、例えば、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものを用いてもよい。また、非水系電解液として、イオン液体にリチウム塩が溶解したものを用いてもよい。なお、イオン液体とは、リチウムイオン以外のカチオンおよびアニオンから構成され、常温でも液体状を示す塩をいう。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートおよびトリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホンやブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチルやリン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO、およびそれらの複合塩などを用いることができる。さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤などを含んでいてもよい。
また、非水系電解質としては、固体電解質を用いてもよい。固体電解質は、高電圧に耐えうる性質を有する。固体電解質としては、無機固体電解質、有機固体電解質が挙げられる。
無機固体電解質として、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質等が用いられる。
酸化物系固体電解質としては、特に限定されず、酸素(O)を含有し、かつ、リチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有するものであれば用いることができる。酸化物系固体電解質としては、例えば、リン酸リチウム(LiPO)、LiPO、LiBO、LiNbO、LiTaO、LiSiO、LiSiO−LiPO、LiSiO−LiVO、LiO−B−P、LiO−SiO、LiO−B−ZnO、Li1+XAlTi2−X(PO(0≦X≦1)、Li1+XAlGe2−X(PO(0≦X≦1)、LiTi(PO、Li3XLa2/3−XTiO(0≦X≦2/3)、LiLaTa12、LiLaZr12、LiBaLaTa12、Li3.6Si0.60.4等が挙げられる。
硫化物系固体電解質としては、特に限定されず、硫黄(S)を含有し、かつ、リチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有するものであれば用いることができる。硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS−P、LiS−SiS、LiI−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiS−B、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiPO−P等が挙げられる。
なお、無機固体系電解質としては、上記以外のものを用いてよく、例えば、LiN、LiI、LiN−LiI−LiOH等を用いてもよい。
有機固体電解質としては、イオン伝導性を示す高分子化合物であれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、これらの共重合体などを用いることができる。また、有機固体電解質は、支持塩(リチウム塩)を含んでいてもよい。
(e)電池の形状、構成
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、例えば、上述したような正極、負極、セパレータ及び非水系電解質で構成される。また、リチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されず、円筒型、積層型等、種々のものとすることができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極及び負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解質を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、及び、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リード等を用いて接続し、電池ケースに密閉して、リチウムイオン二次電池を完成させる。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、上述の正極活物質から構成された正極を備えることにより、特にナトリウムの含有量を確実に低減させ、焼結凝集を抑制し、さらなる電池特性の向上が可能となる。
次に、本発明の一実施形態に係るニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の製造方法、ニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物及びリチウムイオン二次電池について、実施例により詳しく説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜16、比較例1〜8について、晶析工程で得られた遷移金属複合水酸化物を、洗浄、濾過、乾燥操作を経て、前駆体であるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物として回収した後、以下の方法で各種分析を行った。
[組成、カルシウム及びマグネシウム含有量]
組成、カルシウム及びマグネシウム含有量は、酸分解−ICP発光分光分析法で分析し、測定にはマルチ型ICP発光分光分析装置である、ICPE−9000(島津製作所社製)を用いた。
[ナトリウム及びカリウム含有量]
ナトリウム及びカリウム含有量は、酸分解−原子吸光分析法で分析し、測定には原子吸光分析装置である、原子吸光分光光度計240AA(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いた。
[硫酸根含有量]
硫酸根含有量は、酸分解−ICP発光分光分析法で全硫黄含有量を分析し、この全硫黄含有量を、硫酸根(SO 2−)に換算することにより求めた。なお、測定にはマルチ型ICP発光分光分析装置である、ICPE−9000(島津製作所社製)を用いた。
[塩素根含有量]
塩素根含有量は、試料を直接、又は蒸留操作で含まれる塩素根を塩化銀の形で分離して、蛍光X線分析法(XRF)で分析した。なお、測定には蛍光X線分析装置である、Axios(スペクトリス株式会社製)を用いた。
[平均粒径及び粒度分布]
平均粒径(MV)及び粒度分布〔(d90−d10)/平均粒径〕は、レーザー回折・散乱法を用いて測定した体積基準分布から求めた。なお、測定にはレーザー回折・散乱方式の粒度分布測定装置である、マイクロトラックMT3300EXII(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いた。
[比表面積]
比表面積は、BET1点法による、窒素ガス吸着・脱離法で分析し、測定にはガス流動方式の比表面積測定装置である、マックソーブ1200シリーズ(株式会社マウンテック製)を用いた。
[正極活物質の製造及び評価]
また、本発明のニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を原料とした正極活物質である、リチウム金属複合酸化物、もっと詳しく言えば、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物は、以下の方法で製造及び評価を行った。
[A、正極活物質の製造]
前駆体であるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を、空気(酸素:21容量%)気流中において、700℃で6時間の熱処理を行い、金属複合酸化物を回収した。更に、Li /Me=1.025となる様に、リチウム化合物である水酸化リチウムを秤量し、回収した金属複合酸化物と混合して、リチウム混合物を作製した。なお、混合操作にはシェーカーミキサー装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA−TypeT2C)を用いた。
次に、作製したリチウム混合物を、酸素(酸素:100容量%)気流中において、500℃で4時間仮焼し、更に730℃で24時間焼成し、冷却後に解砕して、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を得た。
[B、正極活物質の評価]
得られたリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物において、ナトリウム含有量、カリウム含有量、カルシウム含有量、マグネシウム含有量、硫酸根含有量、塩素根含有量の分析には、上述の分析方法及び分析機器を用いた。また、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の結晶性を示すLi席占有率は、X線回折分析装置(XRD)を用いて測定した回折パターンから、リートベルト解析を行うことで算出した。なお、測定にはX線回折分析装置X‘Pert−PRO(スペクトリス株式会社製)を用いた。Li席占有率は、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物のリチウム元素が、層状構造のリチウム層(Li席)中に占めるリチウム元素の存在割合を示す。Li席占有率は、電池特性と相関があり、Li席占有率が高い程、良好な電池特性を示す。
以下、実施例及び比較例の各条件について、説明する。
(実施例1)
実施例1では、晶析工程における晶析の反応槽(5L)内に、水を0.9L入れて撹拌しながら、槽内温度を50℃に設定し、反応槽に窒素ガスを流通させて窒素雰囲気とした。この時の反応槽内空間の酸素濃度は2.0容量%であった。
反応槽内の水中に、25%水酸化ナトリウム水溶液と、アンモニウムイオン供給体である25%アンモニア水を適量加えて、液温25℃を基準に測定するpHとして、槽内の反応溶液のpHが12.8となる様に調整した。また、反応溶液のアンモニウムイオン濃度は、10g/Lに調整した。
次に、硫酸ニッケル、塩化コバルトを水に溶かして、2.0mol/Lの原料溶液を作製した。この原料溶液では、各金属の元素モル比が、Ni:Co =0.84:0.16となる様に調整した。別途、アルミン酸ナトリウムの所定量を水に溶かして、その溶液に25%水酸化ナトリウム溶液を、アルミニウムに対するナトリウムのモル比が1.7となる様に添加し、アルミニウム供給体を作製した。更に、アルカリ金属水酸化物である水酸化ナトリウムと、炭酸塩である炭酸ナトリウムを、[CO 2−]/[OH]が0.025となる様、水に溶解してアルカリ溶液を作製した。
原料溶液を、反応槽内の反応溶液に12.9ml/分で加え、それと共にアンモニウムイオン供給体やアルカリ溶液も、反応溶液に一定速度で加えていき、反応溶液中のアンモニウムイオン濃度を10g/Lに保持した状態において、pHを12.8(核生成工程pH)に制御し、晶析を2分30秒間実施することで、核生成を行った。アルミニウム供給体の添加速度は、スラリーの金属元素モル比が、Ni:Co:Al=81:16:3となる様に調整した。
その後、反応溶液のpHが、液温25℃を基準に測定するpHとして11.6(粒子成長工程pH)になるまで、64%硫酸を添加した。液温25℃を基準に測定するpHとして、反応溶液のpHが11.6に到達した後に、原料溶液、アルミニウム供給体、アンモニウムイオン供給体、アルカリ溶液の供給を再開し、pHを11.6に制御したまま、晶析を4時間継続し粒子成長を行うことにより、遷移金属複合水酸化物を得た。
得られた遷移金属複合水酸化物を、フィルタープレス濾過機によって固液分離した後、濃度が0.05mol/Lの炭酸水素アンモニウム溶液を洗浄液に用い、遷移金属複合水酸化物1kgに対し、洗浄液を5Lの割合で、フィルタープレス濾過機に通液することにより不純物を除去し、その後、更に水を通液して水洗した。そして、水洗した遷移金属複合水酸化物の付着水を乾燥し、前駆体となるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(実施例2)
実施例2では、アルミニウム供給体の添加速度を、スラリーの金属元素モル比が、Ni:Co:Al=78:15:7となる様に調整した以外は、実施例1と同様にしてニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(実施例3)
実施例3では、アルミニウム供給体の添加速度を、スラリーの金属元素モル比が、Ni:Co:Al=74:14:12となる様に調整した以外は、実施例1と同様にしてニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(実施例4)
実施例4では、アルミニウム供給体の添加速度を、スラリーの金属元素モル比が、Ni:Co:Al=69:13:18となる様に調整した以外は、実施例1と同様にしてニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(実施例5)
実施例5では、アルカリ溶液を作製する際に、[CO 2−]/[OH]が0.003となる様に調整した以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(実施例6)
実施例6では、アルカリ溶液を調整する際に、[CO 2−]/[OH]が0.048となる様に調整した以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(実施例7)
実施例7では、アルミニウム供給体作製において、アルミン酸ナトリウムを水に溶かした溶液に、25%水酸化ナトリウム溶液を、アルミニウムに対するナトリウムの比が1.0となる様に添加した以外は、実施例1と同様にしてニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(実施例8)
実施例8では、アルミニウム供給体作製において、アルミン酸ナトリウムを水に溶かした溶液に、25%水酸化ナトリウム水溶液を、アルミニウムに対するナトリウムの比が3.0となる様に添加した以外は、実施例1と同様にしてニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(実施例9)
実施例9では、核生成工程のpHを13.6とした以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(実施例10)
実施例10では、核生成工程のpHを12.3とした以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(実施例11)
実施例11では、粒子成長工程のpHを11.8とした以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(実施例12)
実施例12では、粒子成長工程のpHを10.6とした以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(実施例13)
実施例13では、アルカリ溶液を調整する際に、アルカリ金属水酸化物を水酸化カリウムとし、炭酸塩を炭酸カリウムとした以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(実施例14)
実施例14では、アルカリ溶液を調整する際に、炭酸塩を炭酸アンモニウムとし、アンモニウムイオン濃度を20g/Lに調整した以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(実施例15)
実施例15では、槽内温度を35℃に設定した以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(実施例16)
実施例16では、濃度が1.00mol/Lの炭酸水素アンモニウム溶液を洗浄液とした以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(比較例1)
比較例1では、アルカリ溶液の調整に水酸化ナトリウムのみを用い、[CO 2−]/[OH]を考慮しない様にした以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(比較例2)
比較例2では、アルカリ溶液を調整する際に、[CO 2−]/[OH]が0.001となる様に調整した以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(比較例3)
比較例3では、アルカリ溶液を調整する際に、[CO 2−]/[OH]が0.055となる様に調整した以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(比較例4)
比較例4では、洗浄工程を省いて、炭酸水素アンモニウム溶液による洗浄を行わない様にした以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(比較例5)
比較例5では、濃度が0.02mol/Lの炭酸水素アンモニウム溶液を洗浄液とした以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(比較例6)
比較例6では、炭酸アンモニウム溶液を洗浄液とした以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(比較例7)
比較例7では、炭酸水素ナトリウム溶液を洗浄液とした以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
(比較例8)
比較例8では、炭酸ナトリウム溶液を洗浄液とした以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
以上の条件及び結果を表1、表2及び表3に示す。
(総合評価)
表1、表2及び表3に示す通り、実施例1〜16では、前駆体であるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物において、晶析工程及び洗浄工程の各条件が、全て好ましい範囲内であった。それ故、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物だけに限らず、正極活物質であるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物に関しても、不純物除去において、ナトリウム含有量をはじめ、硫酸根含有量や塩素根含有量のほか、カリウム、カルシウム、マグネシウム含有量が、十分に低減されていた。更に、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物では、Li席占有率が99.0%を超えており、結晶性にも優れた結果となり、電池特性が向上した。
特に、ナトリウム含有量については、前駆体及び正極活物質のどちらも、全ての実施例データが、定量(分析)(0.0005質量%)未満という、非常に良好な結果を示した。また、カリウム、カルシウム、マグネシウムについても、ナトリウムと同様の結果が得られた。このため、正極活物質において、ナトリウムなどが、リチウムサイトに固溶することなく、焼結凝集の指標となるMV比は、0.95〜1.05の範囲内であり、更に、無作為に選択した100個以上の粒子を、走査型電子顕微鏡により観察した際に、二次粒子の凝集が観察される個数が、観察した全二次粒子数に対して、5%以下であった。
ここで、定量下限とは、ある分析方法による、目的成分の分析(定量)が可能な最小量、又は最小濃度を意味する。また、測定における目的成分の信号検出が可能な最小量(値)を検出限界、測定で得られる目的成分の信号において、信頼性が担保される最小量(値)を測定下限と言う。更に、分析試料を測定検体液に調製する過程で、元の分析試料から、どれだけ濃縮若しくは希釈されたかを示す希釈倍率を、測定下限に乗ずることにより、定量下限が求められる。
つまり、例えば、本発明でのナトリウム含有量及びカリウム含有量は、原子吸光分析装置の測定下限0.05μg/mLに対し、分析試料1gを酸分解して測定検体液100mLに調製(希釈倍率は100倍)したことから、定量下限は5ppm(μg/g)であり、即ち、0.0005質量%となる。また、本発明でのカルシウム含有量及びマグネシウム含有量は、ICP発光分光分析装置の測定下限0.05μg/mLに対し、分析試料1gを酸分解して測定検体液100mLに調製(希釈倍率は100倍)したことから、定量下限は5ppm(μg/g)であり、即ち、0.0005質量%となる。
これに対して、比較例1〜8では、アルカリ溶液を作製する際の[CO 2−]/[OH]や、洗浄液である炭酸水素アンモニウム溶液の濃度が、好ましい範囲で無かったり、炭酸水素アンモニウム溶液以外の洗浄液を用いたり、最適条件から逸脱していたことから、実施例の様な優れた効果は得られなかった。
以上より、特にナトリウムの含有量を確実に低減させて、焼結凝集が抑制され、さらなる電池特性の向上が可能な正極活物質である、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物及びリチウムイオン二次電池を提供することができた。
ところで、例えば、分析化学分野においては、分析・試験の基準となる標準物質を提供している試薬メーカーなどが、日々、更なる標準物質の高純度化に取り組んでおり、不純物を極力低減するための研究が行われている。このことからも、本発明が開示する、ナトリウムをはじめとする不純物の含有量を、可能な限り低減した、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物が、単に設計事項を変更したものでは無いことは、言うまでも無く明らかである。
なお、上記のように本発明の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。またリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物及びリチウムイオン二次電池の構成、動作も本発明の各実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
S10 晶析工程、S11 核生成工程、S12 粒子成長工程、S20 洗浄工程

Claims (5)

  1. リチウム、ニッケル、コバルト、アルミニウムを含む一次粒子が凝集した二次粒子、又は前記一次粒子と前記二次粒子で構成されたリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物であって、
    前記リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物に含まれるナトリウム含有量が、0.0005質量%未満であり、
    前記リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の平均粒径を、前駆体であるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の平均粒径で除した比が、0.95〜1.05であることを特徴とするリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物。
  2. 前記リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物に含まれる硫酸根含有量が0.15質量%以下、塩素根含有量が0.005質量%以下、かつLi席占有率が99.0%以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物。
  3. 無作為に選択した100個以上の前記リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の粒子を、走査型電子顕微鏡により観察した際に、二次粒子の凝集が観察される個数が、観察した全二次粒子数に対して、5%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物。
  4. 前記リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物に含まれるカリウム、カルシウム、マグネシウムの少なくともいずれか1つ以上の物質の含有量が、0.0005質量%未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物。
  5. 少なくとも、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を含む正極を備えることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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