JP2020173151A - 測定方法および測定装置 - Google Patents

測定方法および測定装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2020173151A
JP2020173151A JP2019074658A JP2019074658A JP2020173151A JP 2020173151 A JP2020173151 A JP 2020173151A JP 2019074658 A JP2019074658 A JP 2019074658A JP 2019074658 A JP2019074658 A JP 2019074658A JP 2020173151 A JP2020173151 A JP 2020173151A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
conjugate
substance
accommodating portion
mixed solution
magnetic field
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019074658A
Other languages
English (en)
Inventor
祐輝 串田
Yuki Kushida
祐輝 串田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd
Original Assignee
Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd filed Critical Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd
Priority to JP2019074658A priority Critical patent/JP2020173151A/ja
Publication of JP2020173151A publication Critical patent/JP2020173151A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Investigating, Analyzing Materials By Fluorescence Or Luminescence (AREA)

Abstract

【課題】より正確に溶液中における標的物質の濃度を測定する測定方法、および測定装置を提供する。【解決手段】混合溶液29中における標的物質61の濃度を測定する測定方法であって、標的物質61、磁性体65および標識物質63を結合させて結合体60を形成する結合ステップと、混合溶液29に第1磁場勾配を印加して結合体60を検出板21の表面に引き寄せる印加ステップと、混合溶液29に対して希釈液を加えることにより、標識物質63の濃度を低下させる希釈ステップと、第1磁場勾配によって検出板21の表面に引き寄せられた結合体60が近接場に応じて発する蛍光または散乱光を検出することにより標的物質61の濃度を測定する測定ステップと、を含む。【選択図】図6B

Description

本開示は、近接場を利用して、液体中に存在する標的物質の濃度を光学的に測定する測定方法および当該測定方法を実施可能な測定装置に関する。
近年、溶液中に存在する微小な標的物質、特にDNA、RNA等の核酸、またはタンパク質等、ウイルス、細菌等の生体関連物質を検出し、定量する方法が開発されている。当該方法として、特許文献1には、近接場(言い換えると、近接場光)を用いてこれらの標的物質を検出する光学的検出方法が開示されている。特許文献1に開示された光学的検出方法では、検出対象となる標的物質を、標識する標識物質および外力により近接場が照射される範囲に誘導させて検出を行う。
国際公開第2017/187744号
しかしながら、特許文献1に開示された従来の方法においては、標的物質の検出の際に偽陰性または偽陽性が発生し、標的物質の溶液中における濃度の測定の正確さに欠ける場合がある。そこで、本開示は、より正確に溶液中における標的物質の濃度を測定する測定方法、および測定装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本開示に係る測定方法の一態様においては、検出板の表面に形成された近接場を用いて、標的物質と磁性体と標識物質とを含む混合溶液中における前記標的物質の濃度を測定する測定方法であって、前記標的物質、前記磁性体および前記標識物質を結合させて結合体を形成する結合ステップと、前記混合溶液に第1磁場勾配を印加して前記結合体を前記検出板の表面に引き寄せる印加ステップと、前記混合溶液に対して希釈液を加えることにより、前記標識物質の濃度を低下させる希釈ステップと、前記第1磁場勾配によって前記検出板の表面に引き寄せられた前記結合体が前記近接場に応じて発する蛍光または散乱光を検出することにより前記標的物質の濃度を測定する測定ステップと、を含む。
また、本開示に係る測定装置の一態様においては、検出板の表面に形成される近接場を用いて、標的物質と磁性体と標識物質とを含む混合溶液中における前記標的物質の濃度を測定する測定装置であって、前記混合溶液を収容し、前記混合溶液中において前記標的物質、前記磁性体および前記標識物質を結合させて結合体を形成するための第1収容部と、前記混合溶液に、前記標識物質の濃度を低下させる希釈液を加える希釈液投入口を有し、前記希釈液が加えられた混合溶液を前記検出板上に収容する第2収容部と、前記第2収容部に収容された前記混合溶液に第1磁場勾配を印加して、前記結合体を前記検出板の表面に引き寄せる印加部と、前記第1磁場勾配によって前記検出板の表面に引き寄せられた前記結合体が前記近接場に応じて発する蛍光または散乱光を検出することにより、前記標的物質の濃度を測定する測定部と、を備える。
本開示に係る測定方法等により溶液中における標的物質の濃度がより正確に測定される。
図1は、実施の形態に係る測定装置の概略構成図である。 図2は、実施の形態に係る測定装置によって検出される結合体について説明する図である。 図3Aは、実施の形態に係る混合溶液について説明する第1の図である。 図3Bは、実施の形態に係る混合溶液について説明する第2の図である。 図3Cは、実施の形態に係る混合溶液について説明する第3の図である。 図4は、実施の形態に係る測定方法について説明するフローチャートである。 図5Aは、実施の形態の変形例1に係る溶液保持部の斜視図である。 図5Bは、実施の形態の変形例1に係る溶液保持部の図5Aのv−v線における断面図である。 図6Aは、実施の形態の変形例2に係る溶液保持部の斜視図である。 図6Bは、実施の形態の変形例2に係る溶液保持部の図6Aのvi−vi線における断面図である。 図7は、実施例に係る結合体の計数について説明する図である。
(本開示の基礎となった知見)
特許文献1には、近接場を用いて検出板の表面上の標的物質を含む結合体による蛍光または散乱光を光信号として検出する標的物質の光学的検出方法であって、前記結合体は少なくとも前記標的物質と磁性粒子の結合によって形成され、前記結合体を前記表面に平行な方向または前記表面から遠ざける方向に移動させるか或いは前記結合体の姿勢を変化させる第1の磁場を印加する第1の結合体変動工程および前記検出板の裏面側に配される磁場印加部からの第2の磁場の印加により前記結合体を前記表面上に引き寄せるとともに前記第2の磁場を印加した状態で前記磁場印加部を前記検出板の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向に移動させ、前記磁場印加部の移動に追従させて前記結合体を移動させるかまたは前記結合体の姿勢を変化させる第2の結合体変動工程のいずれかで実施される結合体変動工程によって生じる前記光信号の低減または変動を計測して、前記標的物質を検出することを特徴とする、光学的検出方法が開示されている。
特許文献1に開示された光学的検出方法では、近接場を用いて検出板の表面上の標的物質を含む結合体(つまり対象物質)による蛍光または散乱光を光信号として検出する、標的物質の光学的検出方法が開示されている。
より具体的には、この光学的検出方法では、結合体は少なくとも標的物質と磁性粒子との結合によって形成されている。また、結合体を検出板の表面に平行な方向もしくは表面から遠ざける方向に移動させるか、または結合体の姿勢を変化させる磁場勾配を印加する第1の結合体変動工程を実施する。または検出板の裏面側に配される磁場印加部からの磁場勾配の印加により結合体を検出板の表面上に引き寄せるとともに、磁場勾配を印加した状態で磁場印加部を検出板の表面の面内方向と平行な方向の移動ベクトル成分を持つ方向に移動させる。このような磁場印加部の移動に追従させて結合体を移動させる、または結合体の姿勢を変化させる第2の結合体変動工程を実施する。
つまり、特許文献1に開示された光学的検出方法は、いずれかの結合体変動工程の実施によって生じる光信号の低減または変動を計測して、標的物質を検出することを特徴とする検出方法である。
特許文献1に開示された従来の光学的検出方法においては、磁性体と標識物質とが標的物質を介して結合した結合体を形成させることが必要となる。このとき、溶液中に存在する標的物質が低濃度であると、結合体の形成反応のための分子衝突が生じにくくなるため、結合体の形成に多大な時間を要する。なお、結合体の形成反応のための反応時間が不十分であると、結合体を形成していない標的物質が残留し、検出されない標的物質が発生する。つまり、偽陰性が発生する。
また、上記従来の方法は、実際に使用される場面として、人または環境中等から取得された検体に対して、病原体の有無および濃度、または感染性物質の有無または濃度等の検出を行うことが想定される。したがって、多数の検体をハイスループットに処理できることが望ましく、結合体の形成反応における反応時間は可能な限り短縮されることが求められる。
溶液中に存在する標的物質が低濃度であっても、磁性体と、標識物質とが高濃度であれば、結合体の形成反応における反応速度を短縮することは可能である。しかしながら、磁性体および標識物質が高濃度に存在する反応系においては、未反応の磁性体および標識物質が多量に残留してしまう。特に、標識物質が多量に存在する系において結合体の検出を試みると、結合体を形成していないにも関わらず、近接場が照射される範囲に存在する標識物質の量が多くなり、標識物質の発する光により背景光の上昇が生じ得る。また、結合体を形成していないにも関わらず、結合体として検出されてしまう誤検出も生じる。つまり、偽陽性が発生する。
以上のような、偽陰性および偽陽性の発生のために、従来の方法における結合体の検出には誤検出が生じる場合があり、溶液中における標的物質の濃度の測定の正確さに欠ける。
本開示は、上記の課題を解決しようとするものであり、結合体の形成反応における反応時間を短縮し、かつ、偽陰性の発生を抑制するとともに、背景光の上昇および偽陽性の発生を抑制できる標的物質の濃度の測定方法、および当該測定方法を実施可能な測定装置を提供することを目的とする。
(本開示の概要)
本開示における測定方法は、上記の目的を達成するために以下の特徴を有する。
(1)検出板の表面に形成された近接場を用いて、標的物質と磁性体と標識物質とを含む混合溶液中における標的物質の濃度を測定する測定方法であって、標的物質、磁性体および標識物質を結合させて結合体を形成する結合ステップと、混合溶液に第1磁場勾配を印加して結合体を検出板の表面に引き寄せる印加ステップと、混合溶液に対して希釈液を加えることにより、標識物質の濃度を低下させる希釈ステップと、第1磁場勾配によって検出板の表面に引き寄せられた結合体が近接場に応じて発する蛍光または散乱光を検出することにより標的物質の濃度を測定する測定ステップと、を含む。
これにより、標的物質と磁性体と標識物質とを結合させて結合体を形成した混合溶液に希釈液を加えてから標的物質の濃度を測定することができる。したがって、結合体の形成の際に磁性体および標識物質の濃度が高い混合溶液が用いられても、標的物質の濃度測定の際に標識物質の濃度が低い混合溶液を用いることができる。その結果、標的物質が低濃度であっても結合体の形成反応における反応速度を改善できるとともに、未反応の標識物質による背景光の上昇、および偽陽性の発生を抑制できる。よって、結合体が発する蛍光または散乱光を高精度に検出でき、溶液中における標的物質の濃度をより正確に測定することができる。
なお、標的物質の濃度の測定は、特許文献1と同様に結合体の計数に基づいて行われる。つまり、標的物質の濃度は、所定の容量の混合溶液中に存在する計数された結合体と等量であるとして計数される標的物質の個数濃度で表される。また、ここでの濃度の測定には、所定の容量の混合溶液中の個数濃度が0個か否かの有無の検出も含まれる。
(2)また、例えば本開示における測定方法では、印加ステップは、希釈ステップの開始よりも前に開始され、希釈ステップは、印加ステップにより第1磁場勾配が印加されている期間中に終了してもよい。
これにより、第1磁場勾配の印加中に混合溶液の希釈を行うことができる。混合溶液の希釈では、混合溶液の体積が増加し、混合溶液に含まれる粒子が拡散される。したがって、希釈液が加えられる前に第1磁場勾配を印加して結合体を移動させ、かつ、希釈液が加えられている間に第1磁場勾配を印加し続けて結合体の拡散を抑制することで、結合体を検出板の表面に引き寄せるために要する時間の増加を抑制することができる。
(3)また、例えば本開示における測定方法は、測定ステップでは、第1磁場勾配が印加される方向と交差する方向の第2磁場勾配を印加し、当該第2磁場勾配によって移動する蛍光または散乱光を検出することにより、結合体の濃度を測定してもよい。
これにより、結合体の検出の際に、第2磁場勾配により移動する蛍光または散乱光を結合体に基づくものとして検出することができる。結合体は、磁性体を含んでいるため第2磁場勾配によって移動し、かつ、標識物質を含んでいるため近接場に応じて蛍光または散乱光を発する。一方で、標識物質のみでは、蛍光または散乱光を発するが、移動しない。また、磁性体は、移動するが蛍光または散乱光を発しない。このような差異に基づき、結合体を効率的に検出することができ、溶液中における標的物質の濃度をより正確に測定することができる。
(4)また、例えば本開示における測定方法では、測定ステップは、希釈ステップが終了した後に開始されてもよい。
これにより、希釈液の添加が終了した後に結合体の発する蛍光または散乱光の検出が行われる。希釈液の添加に伴う対流は結合体の位置を変化させる可能性がある。このような結合体の位置の変化は、結合体の誤検出につながり得る。よって、希釈液の添加が終了し、対流が生じていない希釈液が加えられた混合溶液において、結合体の発する蛍光または散乱光をより正確に検出することができる。つまり、より正確に溶液中における標的物質の濃度を測定することができる。
本開示における測定方法は、上記の目的を達成するために以下の特徴を有する。
(5)検出板の表面に形成される近接場を用いて、標的物質と磁性体と標識物質とを含む混合溶液中における標的物質の濃度を測定する測定装置であって、混合溶液を収容し、混合溶液中において標的物質、磁性体および標識物質を結合させて結合体を形成するための第1収容部と、混合溶液に、標識物質の濃度を低下させる希釈液を加える希釈液投入口を有し、希釈液が加えられた混合溶液を検出板上に収容する第2収容部と、第2収容部に収容された混合溶液に第1磁場勾配を印加して、結合体を検出板の表面に引き寄せる印加部と、第1磁場勾配によって検出板の表面に引き寄せられた結合体が近接場に応じて発する蛍光または散乱光を検出することにより、標的物質の濃度を測定する測定部と、を備える。
これにより、標的物質と磁性体と標識物質とを結合させた結合体を第1収容部内において形成できる。結合体の形成の際に、高濃度の磁性体および標識物質を用いた場合、標的物質が低濃度であっても結合体の形成反応における反応速度を改善できる。さらに、結合体を形成後、未反応の標識物質を含む混合溶液は、希釈液投入口から希釈液が加えられ、第2収容部によって検出板上に収容される。希釈液が加えられた混合溶液では、標識物質の濃度が低下している。したがって、結合体が発する蛍光または散乱光を検出する際に、未反応の標識物質による背景光の上昇、および偽陽性の発生を抑制できる。よって、結合体が発する蛍光または散乱光を高精度に検出でき、より正確に溶液中における標的物質の濃度を測定することができる。
(6)また、例えば本開示における測定装置は、さらに、第1収容部を第2収容部につなぐ管を備えてもよい。
これにより、第1収容部において結合体が形成された混合溶液を、管を介して第2収容部へと送液できる。管を介して送液された混合溶液に対して、希釈液投入口から希釈液が加えられることで、混合溶液に含まれる標識物質の濃度が低下される。したがって、結合体が発する蛍光または散乱光を検出する際に、未反応の標識物質による背景光の上昇、および偽陽性の発生を抑制できる。よって、結合体が発する蛍光または散乱光を高精度に検出でき、より正確に溶液中における標的物質の濃度を測定することができる。
(7)また、例えば本開示における測定装置では、第1収容部は、第2収容部の一部分であってもよい。
これにより、第1収容部と第2収容部とが一体化され、測定装置を小型化できる。
(8)また、例えば本開示における測定装置では、第2収容部は、第1収容部として、有底筒状の下収容部を備え、第2収容部は、さらに、下収容部上に配置され、下収容部の上開口を介して下収容部に接続された筒状の上収容部を備えてもよい。
これにより、下収容部において結合体を形成させた後、希釈液が加えられた混合溶液における希釈液分の水位の上昇を上収容部にて受容することができる。
(9)また、例えば本開示における測定装置では、平面視において、上収容部は、下収容部よりも大きくてもよい。
これにより、下収容部において結合体を形成させた後、希釈液が加えられた混合溶液における希釈液分の水位の上昇を上収容部において受容しつつ、上収容部および下収容部の上下方向における高さを低く抑えることができる。したがって、結合体が発する蛍光または散乱光の伝播が混合溶液中で減衰されることを抑制できる。よって、高感度に結合体の検出を行うことができる。
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROM等の記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
(実施の形態)
本開示の実施の形態について以下、図面を用いて詳細に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置、および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
なお、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化して説明する。
また、本明細書において、平行などの要素間の関係性を示す用語、および、矩形などの要素の形状を示す用語、ならびに、数値、および、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の誤差等の差異も含むことを意味する表現である。
はじめに、本開示の実施の形態に係る測定装置の概要について図1および図2を用いて説明する。図1は、実施の形態に係る測定装置の概略構成図である。なお、図1において溶液保持部20は、検出板21の板面と直交する面で切断した断面を示している。
[測定装置]
図1に示すように、本実施の形態に係る測定装置101は、光照射部10と溶液保持部20と光検出部30と磁場印加部40とを備える。測定装置101では、光照射部10から照射された照射光15により溶液保持部20内に近接場を形成し、溶液保持部20内に保持された混合溶液に含まれる結合体(対象物質)が近接場に照射されることで発する蛍光または散乱光を光検出部30によって検出することで結合体を検出する。ここで、磁場印加部40により、溶液保持部20内における結合体の位置を制御することで、結合体を近接場に照射される位置に誘導する。また、磁場印加部40は、さらに、結合体を移動させることにより、結合体が発生する蛍光、または散乱光を移動させる。これにより、光検出部30では、結合体に対応して移動する光点(動光点)が検出される。
[光照射部]
光照射部10は、光源11と光導入部13とを備える。光源11としては、一例としてレーザ光源を用いることができる。なお、光源11は、LEDが用いられてもよく、フィラメント電球または放電現象を利用したランプ等が用いられても良い。光源11は、標識物質を励起する、または標識物質により散乱される所定の波長の光を含む照射光15を発する構成であれば、どのような形態で実現されてもよい。また、光源11は、さらに、所定の波長の光を含む照射光15を分光により取り出す分光装置を備えてもよい。
光導入部13は、光源11が発した照射光15が入射される光学部材である。光導入部13は、屈折および/または反射により入射された照射光15の光路を規定する導光機能を有する。また、光導入部13は、照射光15が入射される入射面とは異なる面において、後述する検出板21の裏面と接合されている。裏面から入射した照射光15が検出板21の表面で全反射されるように設計されている。光導入部13は、例えば、公知のプリズム等により実現される。
[溶液保持部]
溶液保持部20は、検出板21と溶液保持槽23とカバーガラス25とを備える。検出板21は、前述したように裏面において光導入部13に接合されている。また、検出板21は、光透過性を有する板状部材である。検出板21の裏面と光導入部13とは、これらが接合される接合層において照射光15の損失が極力生じないように密着されていることが望ましい。接合層は、一例として、接着剤を用いて実現され、当該接着材により、光導入部13と検出板21とが接着される。なお、接合層は、屈折率マッチングオイル等で実現されてもよく、当該屈折率マッチングオイル等により、光導入部13と検出板21とが単に光学的に接触されてもよい。
検出板21の表面および裏面は、互いに背向し、かつ平行である。光導入部13から接合層を介して裏面に入射された照射光15は、検出板21の内部を通り、前述したように検出板21の表面で全反射される。この際に、検出板21の表面における、照射光15が反射される側と反対側にエバネセント場、または増強電場等の近接場が形成される。近接場は、検出板21の表面から遠ざかるにつれて急激に減衰する性質を有する。つまり、近接場は、検出板21の表面近傍にのみ形成される。なお、検出板21の構成としては、特に制限はなく、検出板21は、目的に応じて適宜選択されてもよい。したがって、検出板21は、単層で構成されてもよく、電場増強を目的とした積層体で構成されてもよい。
溶液保持槽23は、検出板21に積層される板状の部材であり、例えば樹脂等によって構成される。溶液保持槽23は、検出板21と同様の外形を有する。また、溶液保持槽23は、シートの内部(面内方向における内部)において、シートの両主面を貫通してくりぬかれたくりぬき部を有する。溶液保持槽23は、検出板21に積層されることで、検出板21の表面と、くりぬき部の外周(つまり溶液保持槽23の内側面)とに囲まれた容器形状を形成する。検出板21と、溶液保持槽23とは、これらの境界から液体が漏れ出ないように密着している。本実施の形態において溶液保持槽23のくりぬき部は、溶液保持槽23を平面視した場合に円形である。したがって検出板21と、溶液保持槽23とによって形成される容器形状は、円柱状の空間27である。なお、くりぬき部の形状は、円形に限定されず多角形状等のいかなる形状であってもかまわない。くりぬき部の形状等の溶液保持槽23の構成については、変形例において後述する。
カバーガラス25は、溶液保持槽23にさらに積層される板状の部材である。カバーガラス25は、透光性の材料によって形成されていれば形状に限定はない。カバーガラス25は、検出板21と溶液保持槽23とによって形成された空間27の蓋の役割を担うため、平面視において前述したくりぬき部を覆うことができる形状、および大きさである。
このようにして、検出板21、溶液保持槽23、およびカバーガラス25によって空間27は、略密閉可能となる。ここで、空間27には測定装置101によって検出される混合溶液29が充填される(図3A〜図3C参照)。つまり、混合溶液29が溶液保持部20に充填された状態で、混合溶液29に含まれ得る結合体の検出が行われる。混合溶液29は、カバーガラス25を開くことで空間27に導入される。つまり、カバーガラス25は、空間27にアクセス可能な開口を覆う。当該開口は、結合体を含み得る混合溶液29が導入される導入部の一例である。なお、空間27と外部とを連通する細孔を設けてもよく、この場合には、当該細孔が導入部となる。
なお、検出板21と、溶液保持槽23と、カバーガラス25とは、一体化されたデバイスを形成していてもよい。当該デバイスは、使い捨て方式、または洗浄等の工程を経て繰り返し使えるリサイクル方式であってもよい。
[光検出部]
空間27内で発生した光は、カバーガラス25を介して外部に透過し、溶液保持部20に対向して配置された光検出部30において受光される。光検出部30は、集光性を有する集光部材31と一部の波長の光を選択的に透過させるフィルタ33とイメージセンサ35とが筐体37に内蔵された受光装置である。集光部材31は、例えば屈折式のレンズであり、光検出部30が受光した光をイメージセンサ35に集光する。集光部材31は単一のレンズによって構成されてもよく、複数のレンズを用いて構成されてもよい。
フィルタ33は、例えば、結合体が発する蛍光または散乱光の主要な波長成分のみを透過させ、その他を吸収または反射する光学特性を有する。これにより、結合体が発した蛍光または散乱光のみを高精度に検出することができる。イメージセンサ35は、フォトダイオードを用いるもの、および光電子増倍管を組み合わせたもの等の、公知の受光装置であってもかまわない。なお、光検出部30によって検出される領域が検出板21の表面の2次元面であるため、イメージセンサ35としてCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の2次元センサを用いることで、より多くの情報を得ることが可能となり好適である。
また、筐体37は、金属または樹脂等で構成される。筐体37には、カバーガラス25に対向する面に開口を有し、当該開口から受光された光がイメージセンサ35に入射する。筐体37には、上記の開口から受光された光の光路に沿って、集光部材31、フィルタ33、イメージセンサ35がこの順に配置され、それぞれの位置関係が一定に保たれるように保持部が形成されている。なお、筐体37は、集光部材31に入射する光を除き、その他の外光が筐体37の内部に入り込まないよう、遮光性を有する材料によって形成されている。
[磁場印加部]
磁場印加部40は、第1磁場印加部41と第2磁場印加部43とを備える。
第1磁場印加部41は、第1磁場勾配を発生し、光導入部13および検出板21を介して空間27に対して当該第1磁場勾配を印加する。つまり、第1磁場印加部41は、空間27に収容された混合溶液29に対して第1磁場勾配を印加する印加部の一例である。第1磁場印加部41は、例えばネオジム磁石等の永久磁石によって構成されるが、第1磁場印加部41の材料に特に限定はない。第1磁場印加部41は、酸化鉄等を主成分とするフェライト磁石、またはアルミニウム、ニッケル、およびコバルト等を主成分とするアルニコ磁石等で構成されてもよい。
第2磁場印加部43は、第1磁場勾配が印加される第1方向と交差する第2方向に第2磁場勾配を発生し、溶液保持槽23を介して空間27に対して当該第2磁場勾配を印加する。つまり、第2磁場印加部43は、空間27に収容された混合溶液29に対して第2磁場勾配を印加する。第2磁場印加部43は、例えばネオジム磁石等の永久磁石によって構成されるが、第2磁場印加部43の材料に特に限定はない。第2磁場印加部43は、酸化鉄等を主成分とするフェライト磁石、またはアルミニウム、ニッケル、およびコバルト等を主成分とするアルニコ磁石等で構成されてもよい。
第1磁場勾配は、混合溶液29に印加されると、混合溶液29内に存在する強磁性体または常磁性体等の磁性体を検出板21の表面に引き寄せる。また、第1磁場勾配は、検出板21の表面と交差する方向に印加される。したがって第2磁場勾配は、第1磁場勾配と交差し、検出板21の表面に沿う方向に印加される。よって、第2磁場勾配は、混合溶液29に印加されると、混合溶液29内に存在する強磁性体または常磁性体等の磁性体を検出板21の表面に沿って移動させる。
ここで、磁性体の移動とは、印加される磁場勾配の方向に沿って磁性体の位置が変化することをいう。また、磁性体を含む結合体も同様に印加される磁場勾配の方向に沿って位置が変化し、このような位置の変化を結合体の移動として説明する。
[結合体]
図2は、実施の形態に係る測定装置によって検出される結合体について説明する図である。
図2に示すように、本実施の形態において、結合体60は、標的物質61、磁性体65、標識物質63からなる。標的物質61は、例えば、タンパク質、脂質、糖、核酸等であり、検出したい対象のウイルス粒子、微生物、細菌等の産生する、またはこれらを構成する生体関連物質である。磁性体65は、常磁性等の磁性を有する粒子である。磁性体65は、このような磁性を有するため、第1磁場勾配、および第2磁場勾配によって引き寄せられる。
また、磁性体65は、前述した標的物質61と結合する性質を有する。これは例えば、磁性体65の表面に配置された抗体67によって実現される。なお、標的物質61と磁性体65との結合形態は、これに限らず、磁性体65を第1磁場勾配および第2磁場勾配により引き寄せる際に解離しない結合強度を有する結合形態であればどのような形態であってもよい。結合形態は、標的物質61に合わせて適宜選択されればよい。
標識物質63は、結合体60を標識し、検出可能にする物質であり、例えば光の照射により励起されて蛍光を発する蛍光体により実現される。つまり、標識物質63によって結合体60が蛍光を発生する。なお、標識物質63は、散乱光を発する光散乱性の物質であってもよい。
標識物質63は、磁性体65と同様に抗体67によって標的物質61に結合する。なお、標的物質61と磁性体65とを結合する抗体67、および標的物質61と標識物質63とを結合する抗体67は、同一の抗体であってもよく、異なる抗体であってもよい。また、標的物質61と標識物質63との結合形態は、これに限らず、磁性体65を第1磁場勾配および第2磁場勾配により引き寄せる際に解離しない結合強度を有する結合形態であればどのような形態であってもよい。結合形態は、標的物質61に合わせて適宜選択されればよい。
[希釈液の添加]
次に、図3A〜図3Cを用いて、本実施の形態における混合溶液29中における結合体60の動きについて説明する。図3Aは、実施の形態に係る混合溶液について説明する第1の図である。図3Aは、混合溶液29中において、結合体60が形成された状態を示している。つまり、空間27に対して標的物質61を含み得る試料溶液、標識物質63、および磁性体65が加えられた状態である。ここで、本実施の形態においては、試料溶液に含まれ得る標的物質61に対して、十分高濃度の標識物質63および磁性体65が加えられている。したがって、標的物質61は、標識物質63および磁性体65とともに迅速に結合体60を形成し、遊離状態の(単独で存在する)標的物質61が存在しないものとして説明する。
図3Aに示すように、白抜き円形で示した標的物質61に対して過剰に添加された、抗体67が結合された標識物質63は、標的物質61とは結合していない遊離状態で、混合溶液29中に白抜き三角形で示す遊離標識物質69として存在している。なお、標的物質61に対して過剰に添加された磁性体65も同様に混合溶液29中に遊離状態で存在しているが、磁性体65は、結合体60の検出に関与しないため図示を省略している。磁性体65については、後述する図3Bおよび図3Cにおいても同様に扱う。
図3Bは、実施の形態に係る混合溶液について説明する第2の図である。図3Bは、図3Aに示した結合体60の形成後に、当該結合体の検出のために第1磁場印加部41を用いて第1磁場勾配を印加している状態を示している。なお、実際には前述した光照射部10が存在するが、簡略化のために図示を省略している。
図3Bに示すように、第1磁場勾配(図中の複数の破線矢印)を混合溶液29に対して印加すると、混合溶液29に含まれる結合体60が検出板21の表面へと引き寄せられる。一方で、遊離標識物質69は、第1磁場勾配の印加前後では位置が変化しない。しかしながら、遊離標識物質69は、混合溶液29中に多数存在するため、この状態で近接場を用いた結合体60の検出を試みると検出板21近傍に存在する遊離標識物質69からも光が発生し背景光の上昇および偽陽性の発生が起こる。
よって、ここで遊離標識物質69の濃度を低下させるための希釈を行う。なお、希釈とは、成分濃度の異なる2つの溶液が混合され、当該成分濃度が変化することを指し、さらに、これらの2つの溶液が接触し、微小領域において局所的に成分濃度が変化したのみの状態も含む概念である。
図3Cは、実施の形態に係る混合溶液について説明する第3の図である。図3Cには、混合溶液29に対して希釈液が加えられ、混合溶液29に対して遊離標識物質69の濃度が低下した希釈混合溶液29aが形成される。ここで添加される希釈液は、遊離標識物質69の濃度を低下させるための溶液である。
つまり、混合溶液29よりも遊離標識物質69の濃度が低い溶液であればよい。より好ましくは、遊離標識物質69が含まれない溶液であり、かつ、結合体60等のその他の成分を含まない溶液であるとよい。また、希釈液としては、標的物質61および抗体67等の生理活性に影響しない溶液が好ましく、一例として、pH調整された緩衝液等が用いられる。
希釈混合溶液29aは、図中に2点鎖線で示す元の水位に対して、白抜き矢印で示す約2倍の水位に上昇しており、混合溶液29から2倍当量に希釈されたことが示されている。したがって、遊離標識物質69は、希釈の前後で拡散されて濃度が半分になっている。
さらにここで、希釈液を加える際に、第1磁場印加部41による第1磁場勾配の印加を維持している。これによれば、検出板21の表面に引き寄せた結合体60は、希釈の前後において位置が変化していない。つまり、結合体60は、第1磁場勾配を印加しておくことにより、希釈の前後で拡散されない。
前述したように、希釈液を加えたことにより液量(つまり体積)が2倍当量に増加している。第1磁場勾配を印加していなかった場合、結合体60は、拡散され、元の混合溶液29に比べ、検出のために第1磁場勾配により移動する距離が延びてしまう。つまり、検出板21の表面までの移動に要する時間が延びてしまう。よって、第1磁場勾配が印加されている期間中に希釈液を加える操作が終了することにより、結合体60が検出板21の表面まで移動するために要する時間を短縮することができる。
[動作]
次に、本実施の形態における測定装置101を用いた測定方法について図4を用いて説明する。図4は、実施の形態に係る測定方法について説明するフローチャートである。
本実施の形態における測定方法では、はじめに、標的物質61を含み得る試料溶液に対して、磁性体65および標識物質63を導入することで、結合体60を形成する結合ステップ(S101)が実施される。標的物質61、磁性体65、および標識物質63は、混合溶液29中にこれらが含まれることにより、磁性体65および標識物質63と結合した抗体67は、抗原である標的物質61の認識部位に特異的に結合して結合体60を形成する。
ここで、前述したように、標的物質61に対して、磁性体65および標識物質63を過剰に加えておくことにより、結合体60の形成反応のための分子衝突を生じやすくすることができ、反応速度を改善できる。したがって、結合体60の形成が迅速に完了するため、標的物質61の濃度の測定を高速化できる。また、結合体60の形成反応の途中で標的物質61の濃度の測定が開始されてしまう可能性が低下するため、偽陰性の発生が低減される。
結合体60が形成された後、混合溶液29に対して第1磁場印加部41を用いて、第1磁場勾配が印加される印加ステップ(S102)が開始される。混合溶液29内では、結合体60、および抗体67が結合され、標的物質61とは結合していない磁性体65の遊離成分は、第1磁場勾配に引き寄せられ検出板21の表面に集合する。
続いて、混合溶液29には希釈液が添加される希釈ステップ(S103)が実施され、標識物質63の濃度が低下される。これにより、結合ステップS101において標的物質61に対して、過剰に添加された標識物質63の濃度が、標的物質61の測定可能なレベルまで低減される。なお、図3Cにおいては、2倍当量に希釈される例を説明したが、希釈倍率は、混合溶液29に含まれる標識物質63の濃度に応じて適宜設定してもよい。つまり、希釈ステップS103においては、結合体60を計数可能なレベルまで標識物質63の濃度を低減するための希釈倍率となるよう希釈液が加えられる。
なお、図3Cにおいて前述したように、希釈ステップS103は、印加ステップS102の開始以降に開始され、当該印加ステップS102において第1磁場勾配が印加されている期間中に終了する。これによれば、混合溶液29中において結合体60を第1磁場勾配によって移動させ、結合体60を検出板21の表面近傍の位置に保持したまま混合溶液の希釈を実施できる。結合体60の移動距離が比較的短くなるため、結合体60の形成から標的物質61の濃度の測定までの間の時間を短縮することができる。また、混合溶液の希釈に伴う拡散により、結合体60が第1磁場勾配の影響範囲外へ離脱することを抑制することができ、偽陰性の発生を低減することができる。
希釈ステップS103における混合溶液の希釈が完了した後、第1磁場勾配の印加を終了する。
本実施の形態における測定方法では、ここで、検出板21の表面に近接場を形成させる(S104)。測定装置101では、検出板21において近接場が形成されるよう、あらかじめ光導入部13等が配置されている。つまり、本ステップS104においては、光源11から照射光15を照射させる。これにより、照射光15は検出板21の表面において全反射され、近接場が形成される。
さらに、近接場の形成を継続しながら第2磁場印加部43を用いて、希釈混合溶液29aに対して第2磁場勾配を印加する(S105)。第1磁場勾配が、結合体60を検出板21の表面に引き寄せる方向の磁場勾配であったのに対して、第2磁場勾配は、第1磁場勾配の方向に交差する方向の磁場勾配である。第1磁場勾配は、言い換えると検出板21の表面に交差する方向の磁場勾配である。
また、第2磁場勾配は、一例として、検出板21の表面に沿う方向の磁場勾配である。希釈混合溶液29aに含まれる結合体60は、第2磁場勾配に沿って検出板21の表面に沿って移動する。ステップS104において、検出板21の表面には近接場が形成されているため、結合体60は、一例として、移動しながら近接場に応じて蛍光を発する。近接場に応じた蛍光とは、近接場の強度に応じた強度または近接場の有無に応じた発光の有無のいずれであってもよい。また、結合体60に含まれる標識物質63が散乱光を発する光散乱性の物質である場合は、上記の「蛍光」を「散乱光」と読み替えた同様の現象が生じる。
測定装置101は、光検出部30を用いて、ステップS105において結合体が発した蛍光または散乱光を検出する(S106)。検出された蛍光または散乱光は、イメージセンサ35によって画素ごとの電荷量に変換され、画像データとして取得される。画像データは、第2磁場勾配によって移動する結合体60の蛍光または散乱光を検出するため、連続的に取得された動画像データとして取得される。なお、露光時間を調整することにより、単独の画像データを用いて移動する結合体60の蛍光または散乱光を検出してもよい。
測定装置101または外部接続されたコンピュータを用いて取得された画像データについて画像解析を行うことで、画像データ内に含まれる移動する結合体60の蛍光または散乱光に基づく動光点の数が計数される。動光点の数は、結合体60の数に対応しているため、結合体60の数に置き換えることができる。また、さらに、結合体60の数を当該結合体に含まれる標的物質61の数に置き換えることで、標的物質61の数を算出することができる。よって、所定の容量の混合溶液29中に含まれる標的物質61の数により、標的物質61の濃度を得ることができる。
[変形例1]
以下では、さらに、実施の形態の変形例1について図5A、および図5Bを用いて説明する。図5Aは、実施の形態の変形例1に係る溶液保持部の斜視図である。また、図5Bは、実施の形態の変形例1に係る溶液保持部の図5Aのv−v線における断面図である。
本変形例は、実施の形態に対して溶液保持槽23の構成が異なる。よって、以下では、溶液保持槽23について中心に説明し、実施の形態と実質的に同等の箇所については説明を省略または簡略化して説明する。
図5Aの斜視図においては、簡略化のため、検出板21aおよび溶液保持槽23aのみを図示し、厚みを省略している。また、図5Bの断面図においては、検出板21aと溶液保持槽23aとカバーガラス25aに加え、光検出部30のブロック図を併せて図示している。
図5Aに示すように、本変形例における溶液保持槽23aは、第1収容部71および第2収容部73の2つの収容部を備える。第1収容部71は、内部に混合溶液29を収容し、混合溶液29中において結合体60を形成させる。第1収容部71は、一例として円柱形状である。第1収容部71の円柱における壁部には、混合溶液29を内部に導入するための開口が設けられている。
例えば、図中に示すように、標的物質61を含み得る試料溶液を導入するための試料溶液導入口77と、磁性体65を導入するための磁性体導入口79と、標識物質63を導入するための標識物質導入口81とがそれぞれ設けられていてもよい。また、試料溶液導入口77、磁性体導入口79、および標識物質導入口81はそれぞれ開口から、放射状に延びる管構造であってもよい。これによれば、試料溶液、磁性体65、および標識物質63を導入するための導入装置との接続性を向上できる。
また、第2収容部73は、混合溶液29に希釈液を加えるための希釈液投入口83を有し、希釈液が加えられた混合溶液29である希釈混合溶液29aを検出板21a上に収容する。つまり、第2収容部73は、検出板21aを底板とする容器を形成するための壁部である。当該壁部は、希釈混合溶液29aが収容される容器内部を覆うように検出板21aの外周に沿って形成されている。また、希釈液投入口83は、壁部の一部に形成された開口を介して接続された管構造である。なお、希釈液投入口83は、管構造を備えなくてもよく、単なる開口だけであってもよい。
また、第1収容部71と、第2収容部73とは、これらをつなぐ管75によって収容される混合溶液29が通流可能に構成される。
試料溶液導入口77、磁性体導入口79、および標識物質導入口81から導入された試料溶液、磁性体65、および標識物質63は、第1収容部71内において結合体60を形成する。このとき、実施の形態と同様に、磁性体65および標識物質63を試料溶液に含まれる標的物質61に対して過剰に加えることによって迅速に結合体60が形成される。
結合体60が形成された混合溶液29は、管75を通流して第2収容部へと送液される。このとき、例えば、第1収容部71が加圧状態にあり、管75に設けられたソレノイドバルブを開放することによって圧力差で送液されてもよい。また、第1収容部71に希釈液投入口83が設けられ、混合溶液29は、第1収容部71に追加で投入される希釈液によって、第2収容部73へと押し出されて送液されてもよい。第2収容部73は、図5Bに示すように検出板21aと壁部とカバーガラス25aとによって覆われ、カバーガラス25aを挟んで検出板21aと反対側に設置された光検出部30において結合体60の発する蛍光または散乱光が検出される。
なお、図5Aに示す形状を、実施の形態において説明した溶液保持槽23のくりぬき部として、切削により実現してもよく、当該形状の空間を形成するよう制御された三次元樹脂印刷を用いて実現してもよい。
[変形例2]
以下では、さらに、実施の形態の変形例2について図6A、および図6Bを用いて説明する。図6Aは、実施の形態の変形例2に係る溶液保持部の斜視図である。また、図6Bは、実施の形態の変形例2に係る溶液保持部の図6Aのvi−vi線における断面図である。
本変形例は、実施の形態に対して変形例1と同様に溶液保持槽23の構成が異なる。よって、以下では、溶液保持槽23について中心に説明し、実施の形態と実質的に同等の箇所については説明を省略または簡略化して説明する。
図6Aの斜視図においては、簡略化のため、検出板21bおよび溶液保持槽23bのみを図示し、厚みを省略している。また、図6Bの断面図においては、検出板21bと溶液保持槽23bとカバーガラス25bに加え、光検出部30のブロック図を併せて図示している。
図6Aに示すように、本変形例における溶液保持槽23bは、第1収容部および第2収容部が一体化された1つの収容部を備える。つまり、第1収容部は、第2収容部の一部分であってもよい。図6Aに示すように、第2収容部は、径が異なる2つの円柱形状が上下に重なる構造である。より詳しくは、第1収容部は、有底筒状の下収容部91を形成し、第2収容部は、下収容部91と、当該下収容部91上に配置され、下収容部91の上開口95を介して当該下収容部91に接続された筒状の上収容部93を備える。
下収容部91の底部は、検出板21bによって形成されている。つまり、本変形例においては、溶液保持槽23bの2種の径の円筒が接続された貫通構造の壁部と、底板としての検出板21bとによって容器形状が形成されている。また、下収容部91の壁部には、試料溶液、磁性体65、および標識物質63を導入可能な一体型の共通導入口97が配置される。一方で、上収容部93の壁部には、希釈液を加えるための希釈液投入口99が配置される。
溶液保持槽23bのこのような構造により、当該溶液保持槽23bを小型化できる。また、径の小さい第1収容部において混合溶液29を収容した際、混合溶液を形成させるために有利な液面の高さを確保できる。加えて、本変形例においては、上収容部93が大径化されている。言い換えると、平面視において、上収容部93は下収容部91よりも大きい。これによれば、希釈液投入口99から希釈液が投入された際、液面の高さを抑制しながらも、高い希釈率を実現でき、磁性体65、および標識物質63の高濃度化を実現できる。液面の高さを抑制することによって、結合体60が発する蛍光または散乱光の伝播が液中で減衰されることを抑制できる。よって、結合体60の形成をより迅速に行え、かつ、高感度に結合体60の検出を行うことができる。
なお、図6Aに示す形状を、実施の形態において説明した溶液保持槽23のくりぬき部として、切削により実現してもよく、当該形状の空間を形成するよう制御された三次元樹脂印刷を用いて実現してもよい。
[実施例]
さらに、以下では、本実施の形態における実施例について、図7を用いて説明する。図7は、実施例に係る結合体の計数について説明する図である。
本実施例において、混合溶液29の作製は以下のように行った。標的物質61には、インフルエンザウイルスの核タンパク質(NP:NucleoProtein)を用いた。また、磁性体65には、磁気応答性ビーズを用いた。なお、磁気応答性ビーズの表面は、抗体67としてNPと結合するラクダ科動物由来のVHH抗体を修飾した。標識物質63には、蛍光性ビーズを用い、表面を前述したVHH抗体とは異なるNPのエピトープに結合するVHH抗体で修飾した。
NP、磁気応答性ビーズ、および蛍光性ビーズを、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含むリン酸緩衝生理食塩水(以下PBS−T)中で所定時間混合して結合体を形成させた。なお、PBS−Tは、ウシ血清由来アルブミンを添加して調整した。NP、磁気応答性ビーズ、および蛍光性ビーズを混合後、溶液量が元の1000倍量となるようにPBS−Tをさらに加えて、本実施例における希釈混合溶液を調製した。つまり、後から加えたPBS−Tは、実施の形態における希釈液である。
実施の形態において説明した測定装置101を用いて、希釈混合溶液を空間27内に配置した後、第1磁場印加部41を用いて第1磁場勾配を希釈混合溶液に印加した。形成された結合体が検出板21の表面まで移動可能な十分な時間が経過した後、第1磁場勾配の印加を終了し、さらに、第2磁場印加部43を用いて第2磁場勾配を印加した。第2磁場勾配の印加を継続しながら、光検出部30において動画像を取得した。取得した動画像上において、移動する輝点(つまり動光点)の数を計数した。
また、実施例と比較するための比較例として、希釈液であるPBS−Tを加えない希釈混合溶液を調製した。より具体的には、実施例における結合体形成時の混合溶液に用いたNPと等濃度のNP、および実施例における結合体形成時の混合溶液に用いた磁気応答性ビーズ、および蛍光性ビーズを1000分の1の濃度で含むPBS−Tを所定時間混合して結合体を形成させた希釈混合溶液を調整し、実施例と同様の検出を行った。つまり、希釈液を加えるタイミング、およびNPの終濃度が実施例と比較して異なっているが、磁気応答性ビーズ、および蛍光性ビーズの終濃度は同等である。
図7に示すように、実施例における希釈混合溶液では、1057個の動光点が検出された。また、対照として、NPを含まない他は同様の系において希釈混合溶液の調整を行ったところ、26個の動光点が検出された。これは、磁気応答性ビーズと、蛍光性ビーズとが、それぞれに修飾されたVHH抗体を介して、または直接的に結合した非特異的結合体であり、偽陽性の一因と推察される。したがって、検出された1057個の動光点の中にも同程度の非特異的結合体が形成されていると考えられるため、差分の1031を結合体の計数結果とした。
一方で、比較例における希釈混合溶液では、33個の動光点が検出された。また、対照として、NPを含まない他は同様の系において希釈混合溶液の調整を行ったところ、3個の動光点が検出された。したがって、検出された33個の動光点の中にも3個の非特異的結合体が形成されていると考えられるため、差分の30を結合体の計数結果とした。
1000倍濃度の磁気応答性ビーズ、および蛍光性ビーズとともに結合体を形成することで、結合体の形成量に34倍以上の差が開いている。つまり、結合体形成時における磁性体および標識物質の濃度は、所定時間における結合体の形成量(言い換えると結合体の形成速度)に大きく寄与することが示された。
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態等について説明したが、本開示は、上記実施の形態等に限定されるものではない。
また、上記実施の形態等において測定装置を構成する構成要素について例示したが、測定装置が備える構成要素の各機能は、測定装置を構成する複数の部分にどのように振り分けられてもよい。
その他、実施の形態等に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態等における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
例えば、上記の実施の形態において、希釈液を加える操作を、マイクロピペッター等の装置を用いて操作者の手によって実施してもよい。
また、例えば、希釈ステップの後に印加ステップを実施して結合体の発する蛍光または散乱光を検出してもよい。
また、例えば、第2磁場勾配を印加せずに結合体の検出を行ってもよい。これは、標識物質の影響が十分に無視できる希釈倍率を適用することによって実現可能である。上記の変形例において2つの収容部を備える構成を説明したが3以上の収容部を備えてもよい。その際、各収容部において、一部の溶液が分取されて次の収容部に送液されることで希釈倍率が向上されてもよい。
また、例えば、希釈ステップにおいて希釈液が加えられている間に測定ステップが開始されてもよい。
また、例えば、希釈ステップを数段階行い、各希釈段階において結合体が発する蛍光または散乱光を検出してもよい。希釈倍率を上げることなく、各希釈段階において得られたデータから理論上の無限希釈時における偽陽性の影響を予測して検出結果の補正を行ってもよい。
本開示は、簡単、高速、かつ正確な標的物質の検出、観察、および制御等を目的とする装置に用いられる。
10 光照射部
11 光源
13 光導入部
15 照射光
20 溶液保持部
21、21a、21b 検出板
23、23a、23b 溶液保持槽
25、25a、25b カバーガラス
27 空間
29 混合溶液
29a 希釈混合溶液
30 光検出部
31 集光部材
33 フィルタ
35 イメージセンサ
37 筐体
40 磁場印加部
41 第1磁場印加部
43 第2磁場印加部
60 結合体
61 標的物質
63 標識物質
65 磁性体
67 抗体
69 遊離標識物質
71 第1収容部
73 第2収容部
75 管
77 試料溶液導入口
79 磁性体導入口
81 標識物質導入口
83、99 希釈液投入口
91 下収容部
93 上収容部
95 上開口
97 共通導入口
101 測定装置

Claims (9)

  1. 検出板の表面に形成された近接場を用いて、標的物質と磁性体と標識物質とを含む混合溶液中における前記標的物質の濃度を測定する測定方法であって、
    前記標的物質、前記磁性体および前記標識物質を結合させて結合体を形成する結合ステップと、
    前記混合溶液に第1磁場勾配を印加して前記結合体を前記検出板の表面に引き寄せる印加ステップと、
    前記混合溶液に対して希釈液を加えることにより、前記標識物質の濃度を低下させる希釈ステップと、
    前記第1磁場勾配によって前記検出板の表面に引き寄せられた前記結合体が前記近接場に応じて発する蛍光または散乱光を検出することにより前記標的物質の濃度を測定する測定ステップと、を含む
    測定方法。
  2. 前記印加ステップでは、所定の期間にわたって前記第1磁場勾配が印加され、
    前記希釈ステップは、前記所定の期間内に行われる、
    請求項1に記載の測定方法。
  3. 前記測定ステップでは、前記第1磁場勾配と交差する方向に第2磁場勾配を印加し、当該第2磁場勾配によって移動する蛍光または散乱光を検出することにより、前記結合体の濃度を測定する
    請求項1又は2のいずれか一項に記載の測定方法。
  4. 前記測定ステップは、前記希釈ステップが終了した後に開始される
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の測定方法。
  5. 検出板の表面に形成される近接場を用いて、標的物質と磁性体と標識物質とを含む混合溶液中における前記標的物質の濃度を測定する測定装置であって、
    前記混合溶液を収容し、前記混合溶液中において前記標的物質、前記磁性体および前記標識物質を結合させて結合体を形成するための第1収容部と、
    前記混合溶液に、前記標識物質の濃度を低下させる希釈液を加える希釈液投入口を有し、前記希釈液が加えられた混合溶液を前記検出板上に収容する第2収容部と、
    前記第2収容部に収容された前記混合溶液に第1磁場勾配を印加して、前記結合体を前記検出板の表面に引き寄せる印加部と、
    前記第1磁場勾配によって前記検出板の表面に引き寄せられた前記結合体が前記近接場に応じて発する蛍光または散乱光を検出することにより、前記標的物質の濃度を測定する測定部と、を備える、
    測定装置。
  6. 前記測定装置は、さらに、
    前記第1収容部を前記第2収容部につなぐ管を備える、
    請求項5に記載の測定装置。
  7. 前記第1収容部は、前記第2収容部の一部分である、
    請求項5に記載の測定装置。
  8. 前記第2収容部は、前記第1収容部として、有底筒状の下収容部を備え、
    前記第2収容部は、さらに、前記下収容部上に配置され、前記下収容部の上開口を介して前記下収容部に接続された筒状の上収容部を備える、
    請求項7に記載の測定装置。
  9. 平面視において、前記上収容部は、前記下収容部よりも大きい、
    請求項8に記載の測定装置。
JP2019074658A 2019-04-10 2019-04-10 測定方法および測定装置 Pending JP2020173151A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019074658A JP2020173151A (ja) 2019-04-10 2019-04-10 測定方法および測定装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019074658A JP2020173151A (ja) 2019-04-10 2019-04-10 測定方法および測定装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2020173151A true JP2020173151A (ja) 2020-10-22

Family

ID=72830992

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019074658A Pending JP2020173151A (ja) 2019-04-10 2019-04-10 測定方法および測定装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2020173151A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20120088230A1 (en) System And Method For Cell Analysis
US10976255B2 (en) Optical detection method and optical detection device
US8456158B2 (en) Detecting method and dielectric particles containing magnetic material employed in the detecting method
EP2078952A2 (en) Rapid particle detection assay
EP3394597B1 (en) Optical detection of a substance in fluid
JP4381752B2 (ja) 光学的定量方法及び光学的定量装置
JP2683172B2 (ja) 検体測定方法及び検体測定装置
JP6225114B2 (ja) クラスタ検出に関する装置
US20120316077A1 (en) System And Method For Detection And Analysis Of A Molecule In A Sample
US11719700B2 (en) Upconversion for microscopy
US8570518B2 (en) Methods and materials for detection of target species
WO2018100780A1 (ja) 標的物質検出装置及び標的物質検出方法
JP2009080011A (ja) 蛍光検出方法
CN109804235B (zh) 目标物质检测装置及目标物质检测方法
JP5315381B2 (ja) 蛍光検出装置、蛍光検出用の試料セルおよび蛍光検出方法
EP2307871B1 (en) Fluid providing apparatus
JP2020173151A (ja) 測定方法および測定装置
JP6783154B2 (ja) 分析装置
JP2020190465A (ja) 測定方法および測定装置
JP2020134458A (ja) 較正方法及び検出装置
JP5602053B2 (ja) 被検物質検出方法並びにそれに用いられる被検物質検出チップおよび被検物質検出装置
JP7486205B2 (ja) 検出装置及び検出方法
JP2020193868A (ja) 検出方法及び検出装置
CN219891259U (zh) 用于蛋白流式检测的光学装置
JP7436475B2 (ja) 検出方法及び検出装置