JP2020170686A - 電解液及び二次電池 - Google Patents

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佑介 杉山
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寛 岩田
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裕介 渡邉
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智也 山路
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Abstract

【課題】電池特性に優れる二次電池を提供するために、好適な電解液を提供する。【解決手段】電解質及び下記一般式(A)で表される鎖状エーテルを含有することを特徴とする電解液。一般式(A) R1(OCH2(CH2)mCH2)nOR2R1及びR2はそれぞれ独立にフッ素で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基である。mは1又は2である。nは1以上の整数である。【選択図】なし

Description

本発明は、二次電池に用いられる電解液、及び、当該電解液を備える二次電池に関するものである。
一般に、二次電池は、主な構成要素として、正極、負極及び電解液を備える。正極には、充放電に関与する正極活物質が具備されており、負極には、充放電に関与する負極活物質が具備されている。そして、電解液としては、電解質を非水溶媒に溶解した溶液が採用されるのが一般的である。
ここで、非水溶媒としてはエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状カーボネートを併用するのが一般的である。実際に、特許文献1〜特許文献3には、非水溶媒としてエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート及び環状カーボネートであるエチレンカーボネートを併用した電解液を備えるリチウムイオン二次電池が具体的に記載されている。
また、非水溶媒の一部として、フルオロエチレンカーボネートやジフルオロエチレンカーボネートなどのフッ素含有環状カーボネートを採用することも知られている。実際に特許文献4には、二次電池における電解液の非水溶媒として、フルオロエチレンカーボネートやジフルオロエチレンカーボネートなどのフッ素含有環状カーボネートを用いることで、二次電池の容量維持率が好適化したことが記載されている(表17を参照。)。
非水溶媒として、鎖状エーテルである1,2−ジメトキシエタンを採用することも知られている。特許文献5には、1,2−ジメトキシエタンを非水溶媒として用いた電解液、及び、当該電解液を備えるリチウムイオン二次電池が具体的に記載されている。
特開2015−185509号公報 特開2015−179625号公報 国際公開第2014/080608号 特開2009−32492号公報 特開2019−36455号公報
上述のとおり、二次電池に用いられる電解液についての研究が精力的に行われている。そして、産業界からは、電池特性に優れる二次電池が求められている。
本発明はかかる事情に鑑みて為されたものであり、電池特性に優れる二次電池を提供するために、好適な電解液を提供することを目的とする。
本発明者は、二次電池の電池特性をさらに向上させるための技術について検討した。二次電池の電池特性を向上させるためには、正極、負極及び電解液のそれぞれの充放電条件下での特性を理解することが重要である。
本発明者は、まず、負極と電解液との関係について検討を行った。
従来、一般的に使用されていたカーボネート系の溶媒は、負極表面での還元分解にて、負極の表面にSEI(Solid Electrolyte Interphase)被膜を形成することが知られている。SEI被膜は、負極活物質と電解液との直接接触を防止できるが、カーボネート系の溶媒を原料として生成されたSEI被膜には、CO基が存在すると考えられる。
ここで、例えば、酸化に対して比較的耐性の低いSi含有負極活物質を備える二次電池の場合には、SEI被膜におけるCO基の酸素がSi含有負極活物質を酸化すると推定される。また、Si含有負極活物質は、充放電時の膨張及び収縮の程度が大きいため、SEI被膜が破壊されて、SEI被膜で被覆されていない新たな箇所(以下、かかる箇所を「新生面」という。)が生じ得る。ここで、新生面におけるSi含有負極活物質がカーボネート系の溶媒と接触することで、Si含有負極活物質が酸化することが懸念される。
そこで、本発明者は、電解液の非水溶媒として、負極表面での還元分解が生じ難く、酸化能力も低いと考えられるエーテルを採用することを指向した。しかし、具体的なエーテルとしてテトラヒドロフランを採用したところ、リチウムイオン二次電池の容量維持率は悪化した。
本発明者は、テトラヒドロフランによる不具合は、テトラヒドロフランにおけるラジカル発生に関連があるのではないかと考えた。一般に、酸素とアルキル鎖で挟まれたCH基においては、隣接する酸素と隣接するアルキル鎖が及ぼす隣接基相互作用に因り、ラジカルが安定化されるため、ラジカルが生じ易いと考えられている。テトラヒドロフランにおいては、2位のCH基が最もラジカルが生じ易い箇所である。
そこで、本発明者は、テトラヒドロフランよりもラジカル発生し難いと考えられるエーテルを探索したところ、6員環の環状エーテルである4−メチルテトラヒドロピランにたどり着いた。そして、電解液の非水溶媒として4−メチルテトラヒドロピランを採用したリチウムイオン二次電池を製造し、試験したところ、好適な電池特性を示すことが確認された。
電解液は、正負極間をリチウムイオンなどの電荷担体が移動する際の媒体となる。円滑に電荷担体が移動するためには、イオン伝導度に優れる電解液を採用するのが好ましいといえる。
本発明者が非水溶媒として6員環の環状エーテルである4−メチルテトラヒドロピランを採用した電解液のイオン伝導度を測定したところ、そのイオン伝導度が比較的低いことを知見した。
そこで、本発明者は、イオン伝導度に優れる電解液を提供すべく、好適なエーテルを再探索したところ、鎖状エーテルである1,3−ジメトキシプロパンにたどり着いた。そして、電解液の非水溶媒として1,3−ジメトキシプロパンを採用したリチウムイオン二次電池を製造し、試験したところ、好適な電池特性を示すことが確認された。
これらの知見に基づき、本発明は完成された。
本発明の電解液は、電解質及び下記一般式(A)で表される鎖状エーテルを含有することを特徴とする。
一般式(A) R(OCH(CH)CH)OR
及びRはそれぞれ独立にフッ素で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基である。mは1又は2である。nは1以上の整数である。
本発明の電解液を備える二次電池は電池特性に優れる。
ゴーシュ型配座の1,2−ジメトキシエタンにおいて生じる相互作用の分子モデルである。 アンチ型配座の1,2−ジメトキシエタンにおいて生じる相互作用の分子モデルである。 1,3−ジメトキシプロパンがゴーシュ−アンチ型配座を形成した場合の分子モデルである。 1,3−ジメトキシプロパンがアンチ−アンチ型配座を形成した場合の分子モデルである。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限a及び上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
本発明の電解液は、電解質及び下記一般式(A)で表される鎖状エーテルを含有することを特徴とする。
一般式(A) R(OCH(CH)CH)OR
及びRはそれぞれ独立にフッ素で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基である。mは1又は2である。nは1以上の整数である。
一般的に、鎖状エーテルのうち、電解液の非水溶媒として汎用されるのは、1,2−ジメトキシエタンである。以下、1,2−ジメトキシエタンと比較して、一般式(A)で表される鎖状エーテルが、電解液の非水溶媒として優れる理由を説明する。
本発明者の検討の結果、1,2−ジメトキシエタンは、正極側での酸化反応が容易に進行する環境下における耐性が低いことが判明した。分子軌道法計算プログラムGaussianを用いて、1,2−ジメトキシエタンのHOMOの分子軌道を解析したところ、エチレン鎖の1位のC−H結合のHOMOと2位のC−H結合のHOMOが相互作用することを本発明者は知見した。
酸化反応が容易に進行する環境下において、相互作用するHOMOを有する水素が1,2−ジメトキシエタンから電子を伴い離脱することで、1,2−ジメトキシエタンの酸化分解が進行すると考えられる。
本発明者は、1,2−ジメトキシエタンにおいて、エチレン鎖の1位のC−H結合のHOMOと2位のC−H結合のHOMOが相互作用する理由を、以下のとおり、考察した。
1,2−ジメトキシエタンにおいては、ゴーシュ効果により、ゴーシュ型配座が安定な立体配座である。ゴーシュ効果に係る立体電子効果について説明すると、1位の炭素に結合するメトキシ基に対してアンチの位置にある2位のC−H結合の軌道と、1位の炭素のC−O結合の反結合性軌道との間に相互作用(超共役)が生じる。かかる相互作用の分子モデルを図1に示す。
ここで、かかる相互作用の結果、1位の炭素の電子密度が増加して、1位のC−H結合のHOMOのエネルギー準位が上昇する。そして、エネルギー準位が上昇した1位のC−H結合のHOMOと、2位のC−H結合のうち、超共役に関与していないC−H結合のHOMOとが相互作用する。図1の分子モデルにおいては、紙面の手前側の水素のHOMO同士が相互作用する。
また、1,2−ジメトキシエタンがアンチ型配座となった場合でも、1位及び2位のC−H結合の反応活性が上昇すると考えられる。図2に、アンチ型配座となった1,2−ジメトキシエタンの分子モデルを示す。
図2に示すとおり、アンチ型配座においては、1位のメトキシ基の酸素の非共有電子対と2位のC−O結合の反結合性軌道が相互作用し、同様に、2位のメトキシ基の酸素の非共有電子対と1位のC−O結合の反結合性軌道が相互作用すると考えられる。その結果、エチレン鎖の1位及び2位の炭素の電子密度が増加して、1位及び2位のC−H結合の反応活性が上昇する。
他方、一般式(A)で表される鎖状エーテルは、プロピレン鎖の1位と3位、又は、ブチレン鎖の1位と4位にC−O結合を有する。そして、プロピレン鎖の1位と3位のC−H結合、又は、ブチレン鎖の1位と4位のC−H結合は、いずれも酸素とアルキル鎖で挟まれたCH基に関する結合なので、最も酸化されやすい箇所と考えられる。以下、1,3−ジメトキシプロパンを例に説明する。
分子軌道法計算プログラムGaussianを用いて、1,3−ジメトキシプロパンのHOMOの分子軌道を解析したところ、プロピレン鎖の1位のC−H結合のHOMOと3位のC−H結合のHOMOは、相互作用しないことを本発明者は知見した。
1,3−ジメトキシプロパンがいかなる立体配座を形成したとしても、プロピレン鎖の1位及び3位におけるC−H結合のHOMO同士は、距離が離れているので相互作用できないといえる。
また、1,3−ジメトキシプロパンについても、メトキシ基の酸素の非共有電子対とC−O結合の反結合性軌道との相互作用を考察する。
図3は、1,3−ジメトキシプロパンがゴーシュ−アンチ型配座を形成した場合の分子モデルである。仮に、3位のメトキシ基の酸素の非共有電子対と1位のC−O結合の反結合性軌道とが相互作用できたとしても、当該非共有電子対と当該反結合性軌道の距離が離れているので、比較的弱い相互作用に留まると考えられる。さらに、図3に示すとおり、仮に、3位のメトキシ基の酸素の非共有電子対と1位のC−O結合の反結合性軌道とが相互作用できたとしても、1位のメトキシ基の酸素の非共有電子対と3位のC−O結合の反結合性軌道との相互作用は不可能である。
1,3−ジメトキシプロパンがゴーシュ−ゴーシュ型配座、又は、アンチ−アンチ型配座を形成した場合には、メトキシ基の酸素の非共有電子対とC−O結合の反結合性軌道との距離は、いずれも、ゴーシュ−アンチ型配座よりも離れることになる。そのため、メトキシ基の酸素の非共有電子対とC−O結合の反結合性軌道との相互作用は不可能であるといえる。
参考までに、図4に、1,3−ジメトキシプロパンがアンチ−アンチ型配座を形成した場合の分子モデルを示す。
したがって、プロピレン鎖のC−O結合を有する1位及び3位におけるC−H結合は、比較的安定であり、酸化に対する耐性に優れるといえる。ブチレン鎖のC−O結合を有する1位及び4位におけるC−H結合についても同様である。
よって、1,2−ジメトキシエタンと比較して、一般式(A)で表される鎖状エーテルは、電解液の非水溶媒として優れると考えられる。
一般式(A)において、R及びRはそれぞれ独立にフッ素で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基である。アルキル基の炭素数としては、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2がさらに好ましい。
一般式(A)において、mは1が好ましい。また、一般式(A)において、nとしては1、2、3、4、5、6を例示できる。
本発明の電解液において用いられる非水溶媒全体に対する一般式(A)で表される鎖状エーテルの割合は、特に限定されない。非水溶媒全体に対する一般式(A)で表される鎖状エーテルの割合として、5〜100体積%、10〜99体積%、20〜90体積%、30〜80体積%、40〜70体積%、50〜60体積%を例示できる。
なお、一般式(A)で表される鎖状エーテルとしては、1種類を用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
本発明の電解液には、一般式(A)で表される鎖状エーテル以外の非水溶媒を併用してもよい。併用される非水溶媒としては、アルキル基で置換されていてもよい6員環の環状エーテル(以下、単に「6員環の環状エーテル」ということがある。)が好ましい。
6員環の環状エーテルは、ラジカルを発生し難いため、充放電時の負極での還元分解に対する耐性が高いと考えられる。その理由は以下のとおりである。
6員環の環状エーテルにおいて最もラジカルを発生しやすい箇所、換言すれば、最も水素ラジカルが離脱しやすい炭素は、6員環の環状エーテルを構成する炭素のうち、エーテルの酸素に隣接する炭素であるといえる。
6員環の環状エーテルには、熱エネルギー的に安定なchair−formやboat−formなどの立体配座が存在する。そして、各立体配座を相互に変換することもできる。かかる立体配座は、環を構成する炭素がsp混成軌道を有していることにより、形成される。
しかし、ラジカルが生じた炭素は、それまでのsp混成軌道から、sp混成軌道へと変換する。sp混成軌道における3つの結合は、同一の平面上に存在するのが理想的である。
そうすると、6員環の環状エーテルにラジカルが発生した場合には、ラジカルを有する炭素がsp混成軌道を有することになるため、熱エネルギー的に安定なchair−formやboat−formなどの立体配座をとることが出来ず、熱エネルギー的に不安定な立体構造にならざるを得ない。
かかる熱エネルギー的に不安定な立体構造が、6員環の環状エーテルをラジカル化するためのエネルギー障壁となっていると考えられる。
アルキル基で置換されていてもよい6員環の環状エーテルとしては、環を構成する6元素のうち5つが炭素であり、1つが酸素のものが好ましい。
6員環の炭素に結合し得るアルキル基としては、炭素数1〜6のものが好ましく、炭素数1〜4のものがより好ましく、炭素数1〜2のものがさらに好ましい。
6員環の炭素に結合し得るアルキル基は、エーテルの酸素に隣接しない炭素に結合するのが好ましい。
エーテルの酸素に隣接する炭素にアルキル基が結合した場合には、当該炭素はO−CH(アルキル基)−CHとの構造になる。ここで、酸素とアルキル鎖で挟まれたCH基においては、隣接する酸素と隣接するアルキル鎖が及ぼす隣接基相互作用に因り、ラジカルが安定化されるため、ラジカルが生じ易いと考えられている。よって、エーテルの酸素に隣接する炭素にアルキル基が結合した6員環の環状エーテルは、比較的ラジカルが発生しやすいと推定される。
本発明の電解液に含まれる非水溶媒全体に対する一般式(A)で表される鎖状エーテル及び6員環の環状エーテルの合計量の割合として、50〜100体積%、70〜95体積%、80〜90体積%を例示できる。
その他の併用される非水溶媒としては、一般式(A)以外の鎖状エーテル、6員環の環状エーテル以外の環状エーテル、環状カーボネート、環状エステル、鎖状カーボネート、鎖状エステルを例示できる。
一般式(A)以外の鎖状エーテルとしては、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンを例示できる。6員環の環状エーテル以外の環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランを例示できる。環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートを例示できる。環状エステルとしては、ガンマブチロラクトン、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンを例示できる。鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネートを例示できる。鎖状エステルとしては、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステルを例示できる。
本発明の電解液に使用される非水溶媒としては、上記具体的な溶媒の化学構造のうち一部又は全部の水素がフッ素に置換した化合物を採用しても良い。
本発明の電解液において、電解質としては、リチウムイオン二次電池などの二次電池に用いられるものを採用すればよい。電解質は、1種類を用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
リチウムイオン二次電池に用いられる電解質としては、ホウ酸リチウム塩、スルホンイミドリチウム塩、スルホン酸リチウム塩、リン酸リチウム塩、過塩素酸リチウム塩などのリチウム塩を例示できる。リチウム塩としては、分子内にフッ素を含有するものが好ましい。
ホウ酸リチウム塩として、一般式(1)のホウ酸リチウム塩を例示できる。
一般式(1) LiBF4−m
一般式(1)において、mは0、1、2、3、4のいずれかである。RはCである。n、a、bはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+bを満たす。
スルホンイミドリチウム塩として一般式(2)のスルホンイミドリチウム塩を例示できる。
一般式(2) (RSONLi
一般式(2)において、Rは、それぞれ独立に、Cである。n、a、bはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+bを満たす。また、2つのRは、互いに結合して環を形成しても良く、その場合は、2n=a+bを満たす。
スルホン酸リチウム塩として一般式(3)のスルホン酸リチウム塩を例示できる。
一般式(3) RSOLi
一般式(3)において、RはCである。n、a、bはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+bを満たす。
リン酸リチウム塩として、一般式(4)のリン酸リチウム塩を例示できる。
一般式(4) LiPF6―y(X)
一般式(4)において、yは0〜5の整数である。Xはそれぞれ独立にCl、Br、I、CN、Cから選択される。n、a、bはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+bを満たす。
一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)及び一般式(4)において、nは0、1、2、3、4、5、6のいずれかが好ましい。また、aは0、1、2のいずれかが好ましい。
ホウ酸リチウム塩としては、具体的に、LiBF、LiBF(C)、LiB(C、LiBF(CHF)、LiBF(CF)、LiBF(C)、LiBF(C)、LiBF(CFを例示できる。
スルホンイミドリチウム塩としては、具体的に、(FSONLi、(CFSONLi、(CSONLi、FSO(CFSO)NLi、FSO(CSO)NLi、(SOCFCFSO)NLi、(SOCFCFCFSO)NLi、FSO(CHSO)NLi、FSO(CSO)NLiを例示できる。
スルホン酸リチウム塩としては、具体的に、FSOLi、CFSOLi、CSOLi、CSOLi、CSOLi、C11SOLi、C13SOLi、CHSOLi、CSOLi、CSOLi、CFCHSOLi、CFSOLiを例示できる。
リン酸リチウム塩としては、具体的に、LiPF、LiPO、LiPF(C、LiPF(C)、LiP(Cを例示できる。
本発明の電解液における電解質全体、又は、ホウ酸リチウム塩、スルホンイミドリチウム塩、スルホン酸リチウム塩若しくはリン酸リチウム塩それぞれの濃度としては、0.1〜4mol/L、0.3〜3mol/L、0.5〜2.5mol/L、0.7〜2mol/L、0.9〜1.5mol/Lを例示できる。
本発明の電解液には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、公知の添加剤を配合してもよい。
本発明の電解液を備える二次電池を本発明の二次電池といい、本発明の電解液を備えるリチウムイオン二次電池を本発明のリチウムイオン二次電池という。以下、本発明の二次電池の代表例として、本発明のリチウムイオン二次電池についての説明を行う。
本発明のリチウムイオン二次電池は、具体的には、本発明の電解液と、正極と、負極と、セパレータを備える。
正極は、集電体と集電体の表面に形成された正極活物質層とを具備する。
集電体は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子伝導体をいう。集電体の材料は、使用する活物質に適した電圧に耐え得る金属であれば特に制限はない。集電体の材料としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
正極の電位をリチウム基準で4V以上とする場合には、正極用集電体としてアルミニウムを採用するのが好ましい。
具体的には、正極用集電体として、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものを用いるのが好ましい。ここでアルミニウムは、純アルミニウムを指し、純度99.0%以上のアルミニウムを純アルミニウムと称する。純アルミニウムに種々の元素を添加して合金としたものをアルミニウム合金と称する。アルミニウム合金としては、Al−Cu系、Al−Mn系、Al−Fe系、Al−Si系、Al−Mg系、Al−Mg−Si系、Al−Zn−Mg系が挙げられる。
また、アルミニウム又はアルミニウム合金として、具体的には、例えばJIS A1085、A1N30等のA1000系合金(純アルミニウム系)、JIS A3003、A3004等のA3000系合金(Al−Mn系)、JIS A8079、A8021等のA8000系合金(Al−Fe系)が挙げられる。
正極活物質層は、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る正極活物質、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を含む。正極活物質層には、正極活物質が正極活物質層全体の質量に対して、60〜99質量%で含まれるのが好ましく、70〜95質量%で含まれるのがより好ましい。結着剤及び導電助剤としては、負極で説明するものを適宜適切な量で採用すればよい。
正極活物質としては、層状岩塩構造の一般式:LiNiCo(MはMn及びAlから選択される。DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素である。a、b、c、d、e、fは0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、1.7≦f≦3を満足する。)で表されるリチウム複合金属酸化物、LiMnOを挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn等のスピネル構造の金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物と層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO、LiMVO又はLiMSiO(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePOFなどのLiMPOF(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBOなどのLiMBO(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。また、正極活物質として、リチウムイオンを含まないものを用いても良い。例えば、硫黄単体、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiSなどの金属硫化物、V、MnOなどの酸化物、ポリアニリン及びアントラキノン並びにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物を正極活物質として採用してもよい。リチウムイオンを含まない正極活物質材料を用いる場合には、正極及び/又は負極に、公知の方法により、予めリチウムを添加しておくのが好ましい。
高容量及び耐久性などに優れる点から、正極活物質として、層状岩塩構造の一般式:LiNiCo(MはMn及びAlから選択される。DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素である。a、b、c、d、e、fは0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、1.7≦f≦3を満足する。) で表されるリチウム複合金属酸化物を採用することが好ましい。
上記一般式において、b、c、dの値は、上記条件を満足するものであれば特に制限はないが、0<b<1、0<c<1、0<d<1であるものが良く、また、b、c、dの少なくともいずれか一つが0.1≦b≦0.95、0.01≦c≦0.5、0.01≦d≦0.5の範囲であることが好ましく、0.3≦b≦0.9、0.03≦c≦0.3、0.03≦d≦0.3の範囲であることがより好ましく、0.5≦b≦0.9、0.05≦c≦0.2、0.05≦d≦0.2の範囲であることがさらに好ましい。
a、e、fについては、上記一般式で規定する範囲内の数値であればよく、好ましくは0.5≦a≦1.5、0≦e<0.2、1.8≦f≦2.5、より好ましくは0.8≦a≦1.3、0≦e<0.1、1.9≦f≦2.1をそれぞれ例示することができる。
高容量及び耐久性などに優れる点から、正極活物質として、スピネル構造のLiMn2―y(Aは、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、Geから選ばれる少なくとも1の元素、及び、Niなどの遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素から選択される。0<x≦2.2、0≦y≦1)を例示できる。xの値の範囲としては、0.5≦x≦1.8、0.7≦x≦1.5、0.9≦x≦1.2を例示でき、yの値の範囲としては、0≦y≦0.8、0≦y≦0.6を例示できる。具体的なスピネル構造の化合物として、LiMn、LiMn1.5Ni0.5を例示できる。
具体的な正極活物質として、LiFePO、LiFeSiO、LiCoPO、LiCoPO、LiMnPO、LiMnSiO、LiCoPOFを例示できる。他の具体的な正極活物質として、LiMnO−LiCoOを例示できる。
後述する具体的な評価結果からみて、正極活物質としては、リチウム基準で4V以上の電位にて充放電を行うものであるのが好ましい。そのような正極活物質として、上記の層状岩塩構造の一般式:LiNiCoで表されるリチウム複合金属酸化物、スピネル構造のLiMn2―yなどを例示できる。好ましい正極活物質が充放電するリチウム基準の電位としては、4〜5.5V、4.1〜5V、4.2〜4.8V、4.3〜4.5Vを例示できる。
負極は、集電体と集電体の表面に形成された負極活物質層とを具備する。
集電体としては、正極で説明したものを適宜適切に採用すればよい。
負極活物質層は、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る負極活物質、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を含む。
負極活物質としては、リチウムイオン二次電池に使用可能なものを採用すればよい。後述する具体的な評価結果からみて、好適な負極活物質として、黒鉛やSi含有負極活物質を例示できる。
Si含有負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得るSi含有材料が使用可能である。
Si含有材料の具体例として、Si単体や、SiO(0.3≦x≦1.6)を例示できる。SiOのxが下限値未満であると、Siの比率が過大になるため、充放電時の体積変化が大きくなりすぎてリチウムイオン二次電池のサイクル特性が低下する場合がある。一方、xが上限値を超えると、Si比率が過小になってエネルギー密度が低下する。xの範囲は0.5≦x≦1.5であるのがより好ましく、0.7≦x≦1.2であるのがさらに好ましい。
Si含有材料の具体例として、国際公開第2014/080608号などに開示されるシリコン材料(以下、単に「シリコン材料」という。)を挙げることができる。
シリコン材料は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するものである。シリコン材料は、例えば、CaSiと酸とを反応させてポリシランを主成分とする層状シリコン化合物を合成する工程、さらに、当該層状シリコン化合物を300℃以上で加熱して水素を離脱させる工程を経て製造されるものである。
シリコン材料の製造方法を、酸として塩化水素を用いた場合の理想的な反応式で示すと以下のとおりとなる。
3CaSi+6HCl → Si+3CaCl
Si → 6Si+3H
ただし、ポリシランであるSiを合成する上段の反応では、副生物や不純物除去の観点から、通常、反応溶媒として水が用いられる。そして、Siは水と反応し得るため、上段の反応を含む層状シリコン化合物を合成する工程において、層状シリコン化合物がSiのみを含むものとして製造されることはほとんどなく、層状シリコン化合物はSi(OH)(Xは酸のアニオン由来の元素若しくは基、s+t+u=6、0<s<6、0<t<6、0<u<6)で表されるものとして製造される。なお、上記の化学式においては、残存し得るCaなどの不可避不純物については、考慮していない。そして、当該層状シリコン化合物を加熱して得られるシリコン材料も、酸素や酸のアニオン由来の元素を含む。
既述のとおり、シリコン材料は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有する。リチウムイオンが効率的に吸蔵及び放出されるためには、板状シリコン体は厚さが10nm〜100nmの範囲内のものが好ましく、20nm〜50nmの範囲内のものがより好ましい。板状シリコン体の長手方向の長さは、0.1μm〜50μmの範囲内のものが好ましい。また、板状シリコン体は、(長手方向の長さ)/(厚さ)が2〜1000の範囲内であるのが好ましい。板状シリコン体の積層構造は走査型電子顕微鏡などによる観察で確認できる。また、この積層構造は、原料のCaSiにおけるSi層の名残りであると考えられる。
シリコン材料には、アモルファスシリコン及び/又はシリコン結晶子が含まれるのが好ましい。特に、上記板状シリコン体において、アモルファスシリコンをマトリックスとし、シリコン結晶子が当該マトリックス中に点在している状態が好ましい。シリコン結晶子のサイズは、0.5nm〜300nmの範囲内が好ましく、1nm〜100nmの範囲内がより好ましく、1nm〜50nmの範囲内がさらに好ましく、1nm〜10nmの範囲内が特に好ましい。なお、シリコン結晶子のサイズは、シリコン材料に対してX線回折測定を行い、得られたX線回折チャートのSi(111)面の回折ピークの半値幅を用いたシェラーの式から算出される。
シリコン材料に含まれる板状シリコン体、アモルファスシリコン及びシリコン結晶子の存在量や大きさは、主に加熱温度や加熱時間に左右される。加熱温度は、350℃〜950℃の範囲内が好ましく、400℃〜900℃の範囲内がより好ましい。
Si含有負極活物質は、粒子の集合体である粉末状のものが好ましい。Si含有負極活物質の平均粒子径は、1〜30μmの範囲内が好ましく、2〜20μmの範囲内がより好ましい。平均粒子径が小さすぎるSi含有負極活物質を用いると、製造作業が困難になる場合がある。他方、平均粒子径が大きすぎるSi含有負極活物質を用いた負極を具備するリチウムイオン二次電池は、好適な充放電ができない場合がある。
なお、本明細書における平均粒子径とは、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置で試料を測定した場合におけるD50を意味する。
Si含有負極活物質として、Si含有負極活物質を炭素層で被覆した炭素層被覆−Si含有負極活物質を採用してもよい。炭素層被覆−Si含有負極活物質は、炭素層とSi含有負極活物質とが一体化しているものが好ましい。そのような炭素層被覆−Si含有負極活物質の製造方法としては、Si含有負極活物質及び炭素粉末の混合物に対して、強い圧力を付した上で撹拌して一体化するメカニカルミリング法や、炭素源から生じる炭素をSi含有負極活物質に蒸着させるCVD(chemical vapor deposition)法を例示できる。
Si含有負極活物質の表面を薄い炭素層で均一に被覆できる点から、CVD法が好ましい。そして、CVD法のうち、炭素源である気体状態の有機物を熱で分解して炭素を発生させる熱CVD法が好ましい。
熱CVD法を用いて炭素層被覆−Si含有負極活物質を製造する、熱CVD工程について具体的に説明する。詳細に述べると、熱CVD工程は、非酸化性雰囲気下及び加熱条件下にて、Si含有負極活物質を有機物と接触させて、Si含有負極活物質の表面に有機物が炭素化してなる炭素層を形成させる工程である。熱CVD工程を行う場合には、ホットウォール型、コールドウォール型、横型、縦型などの型式の、流動層反応炉、回転炉、トンネル炉、バッチ式焼成炉、ロータリーキルンなどの公知のCVD装置を用いればよい。
有機物としては、非酸化性雰囲気下での加熱によって熱分解して炭化し得るものが用いられ、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、エチレン、プロピレン、アセチレンなどの不飽和脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、エチルベンゼン、ジフェニルメタン、ナフタレン、フェノール、クレゾール、ニトロベンゼン、クロルベンゼン、インデン、ベンゾフラン、ピリジンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル類、脂肪酸類などから選択される一種又は混合物が挙げられる。
熱CVD工程における処理温度は、有機物の種類によって異なるが、有機物が熱分解する温度より50℃以上高い温度とすることが望ましい。しかし、加熱温度が過度に高いと、系内に遊離炭素(煤)が発生する場合があるので、遊離炭素(煤)が発生しない条件を選択することが好ましい。形成される炭素層の厚さは、処理時間によって制御することができる。
熱CVD工程は、Si含有負極活物質を流動状態にして行うことが望ましい。このようにすることで、Si含有負極活物質の全表面を有機物と接触させることができ、より均一な炭素層を形成することができる。Si含有負極活物質を流動状態にするには、流動床を用いるなど各種方法があるが、Si含有負極活物質を撹拌しながら有機物と接触させるのが好ましい。例えば、内部に邪魔板をもつ回転炉を用いれば、邪魔板に留まったSi含有負極活物質が回転炉の回転に伴って所定高さから落下することで撹拌され、その際に有機物と接触して炭素層が形成されるので、Si含有負極活物質の全体にいっそう均一な炭素層を形成することができる。
炭素層被覆−Si含有負極活物質の炭素層は非晶質及び/又は結晶質であり、そして、当該炭素層はSi含有負極活物質粒子の表面全体を被覆しているのが好ましい。炭素層の厚みは、1nm〜100nmの範囲内が好ましく、5〜50nmの範囲内がより好ましく、10〜30nmの範囲内がさらに好ましい。
負極活物質層には、負極活物質が負極活物質層全体の質量に対して、60〜99質量%で含まれるのが好ましく、70〜95質量%で含まれるのがより好ましい。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴムなどの公知のものを採用すればよい。
また、国際公開第2016/063882号に開示される、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などのカルボキシル基含有ポリマーをジアミンなどのポリアミンで架橋した架橋ポリマーを、結着剤として用いてもよい。
架橋ポリマーに用いられるジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の含飽和炭素環ジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
負極活物質層中の結着剤の配合割合は、質量比で、負極活物質:結着剤=1:0.005〜1:0.3であるのが好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)、および各種金属粒子などが例示される。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどが例示される。これらの導電助剤を単独又は二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。
負極活物質層中の導電助剤の配合割合は、質量比で、負極活物質:導電助剤=1:0.01〜1:0.5であるのが好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助剤が多すぎると活物質層の成形性が悪くなるとともに電極のエネルギー密度が低くなるためである。
集電体の表面に正極活物質層又は負極活物質層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に正極活物質又は負極活物質を塗布すればよい。具体的には、正極活物質又は負極活物質、結着剤、溶剤、並びに必要に応じて導電助剤を混合してスラリーにしてから、当該スラリーを集電体の表面に塗布後、乾燥する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。
セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、公知のものを採用すればよく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の具体的な製造方法について述べる。
例えば、正極と負極とでセパレータを挟持して電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極の積層体を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極の集電体および負極の集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までを、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に本発明の電解液を加えてリチウムイオン二次電池とするとよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、高電位条件下での充放電に対する耐久性に優れる。よって、本発明のリチウムイオン二次電池は、高電位まで充電されるのが好ましい。ここでの高電位とは、リチウム基準で4V以上の電位を意味する。高電位の範囲としては、リチウム基準で4〜5.5V、4.1〜5V、4.2〜4.8V、4.3〜4.5Vを例示できる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にリチウムイオン二次電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、例えば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。車両にリチウムイオン二次電池を搭載する場合には、リチウムイオン二次電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。リチウムイオン二次電池を搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、本発明のリチウムイオン二次電池は、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、実施例及び比較例などを示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
(参考例1)
4−メチルテトラヒドロピランにLiBFを溶解して、LiBFの濃度が1.5mol/Lである参考例1の電解液を製造した。
参考例1の電解液を用いて、参考例1のリチウムイオン二次電池を以下のとおり製造した。
撹拌条件下の0℃の濃塩酸溶液に、CaSiを加えて1時間反応させた。反応液に水を加え、濾過を行い、黄色の粉体を濾取した。黄色の粉体を水洗し、さらにエタノール洗浄した後に、減圧乾燥して、層状ポリシランを含有する層状シリコン化合物を得た。次いで、層状シリコン化合物をアルゴン雰囲気下、800℃で加熱して、水素を離脱させて、シリコン材料を製造した。プロパンガス雰囲気下、シリコン材料を880℃で加熱することで、炭素層被覆−Si含有負極活物質である炭素被覆シリコン材料を製造した。
重量平均分子量80万のポリアクリル酸をN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、ポリアクリル酸が10質量%で含有されるポリアクリル酸溶液を製造した。また、4,4’−ジアミノジフェニルメタン0.2g(1.0mmol)を0.4mLのN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶液を製造した。撹拌条件下、ポリアクリル酸溶液7mL(アクリル酸モノマー換算で、9.5mmolに該当する。)に、4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶液の全量を滴下して、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。その後、ディーンスターク装置を用いて、混合物を130℃で3時間撹拌して脱水反応を進行させることで、結着剤溶液を製造した。
Si含有負極活物質として炭素被覆シリコン材料72.5質量部、導電助剤としてアセチレンブラック13.5質量部、結着剤として固形分が14質量部となる量の上記結着剤溶液、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリーを製造した。負極用集電体として厚み10μmの銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を80℃、15分間乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを除去した。その後、プレスすることで、厚み25μmの負極活物質層が形成された負極を製造した。
負極を径11mmに裁断し、評価極とした。厚さ500μmの金属リチウム箔を径13mmに裁断し対極とした。セパレータとしてガラスフィルター(ヘキストセラニーズ社)及び単層ポリプロピレンであるcelgard2400(ポリポア株式会社)を準備した。対極、ガラスフィルター、celgard2400、評価極の順に、2種のセパレータを対極と評価極で挟持し電極体とした。この電極体をコイン型電池ケースCR2032(宝泉株式会社)に収容し、さらに参考例1の電解液を注入して、コイン型電池を得た。これを参考例1のリチウムイオン二次電池とした。
(参考例2)
4−メチルテトラヒドロピランに(FSONLiを溶解して、(FSONLiの濃度が1.5mol/Lである参考例2の電解液を製造した。
参考例2の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例2のリチウムイオン二次電池を製造した。
(参考例3)
4−メチルテトラヒドロピランに(CFSONLiを溶解して、(CFSONLiの濃度が1.5mol/Lである参考例3の電解液を製造した。
参考例3の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例3のリチウムイオン二次電池を製造した。
(参考例4)
4−メチルテトラヒドロピランに(CSONLiを溶解して、(CSONLiの濃度が1.5mol/Lである参考例4の電解液を製造した。
参考例4の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例4のリチウムイオン二次電池を製造した。
(参考例5)
4−メチルテトラヒドロピランにCFSOLiを溶解して、CFSOLiの濃度が1.5mol/Lである参考例5の電解液を製造した。
参考例5の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例5のリチウムイオン二次電池を製造した。
(参考例6)
4−メチルテトラヒドロピランにCSOLiを溶解して、CSOLiの濃度が1.5mol/Lである参考例6の電解液を製造した。
参考例6の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例6のリチウムイオン二次電池を製造した。
(参考例7)
LiBFを含有する参考例1の電解液に対して、LiBFと等モルの(ジフルオロメチル)トリメチルシランを加えて反応液とし、これを室温で12時間撹拌した後に、50℃で8時間撹拌した。反応液を冷却して、LiBF(CHF)を濃度1.5mol/Lで含有する参考例7の電解液とした。
参考例7の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例7のリチウムイオン二次電池を製造した。
なお、上記の反応における反応式は以下のとおりである。副生するFSiMeは低沸点なので反応系外に移動する。
LiBF+(CHF)SiMe → LiBF(CHF)+FSiMe
(参考例8)
LiBFを含有する参考例1の電解液に対して、LiBFと等モルの(トリフルオロメチル)トリメチルシランを加えて反応液とし、これを室温で12時間撹拌した後に、50℃で8時間撹拌した。反応液を冷却して、LiBF(CF)を濃度1.5mol/Lで含有する参考例8の電解液とした。
参考例8の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例8のリチウムイオン二次電池を製造した。
なお、上記の反応における反応式は以下のとおりである。副生するFSiMeは低沸点なので反応系外に移動する。
LiBF+(CF)SiMe → LiBF(CF)+FSiMe
(参考例9)
LiBFを含有する参考例1の電解液に対して、LiBFと等モルの(ペンタフルオロエチル)トリメチルシランを加えて反応液とし、これを室温で6時間撹拌した後に、60℃で8時間撹拌した。反応液を冷却して、LiBF(C)を濃度1.5mol/Lで含有する参考例9の電解液とした。
参考例9の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例9のリチウムイオン二次電池を製造した。
なお、上記の反応における反応式は以下のとおりである。副生するFSiMeは低沸点なので反応系外に移動する。
LiBF+(C)SiMe → LiBF(C)+FSiMe
(参考例10)
LiBFを含有する参考例1の電解液に対して、LiBFと等モルの(ヘプタフルオロプロピル)トリメチルシランを加えて反応液とし、これを室温で6時間撹拌した後に、60℃で8時間撹拌した。反応液を冷却して、LiBF(C)を濃度1.5mol/Lで含有する参考例10の電解液とした。
参考例10の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例10のリチウムイオン二次電池を製造した。
なお、上記の反応における反応式は以下のとおりである。副生するFSiMeは低沸点なので反応系外に移動する。
LiBF+(C)SiMe → LiBF(C)+FSiMe
(参考例11)
LiBFを含有する参考例1の電解液に対して、LiBFの2倍モルに相当する(トリフルオロメチル)トリメチルシランを加えて反応液とし、これを室温で12時間撹拌した後に、50℃で8時間撹拌した。反応液を冷却して、LiBF(CFを濃度1.5mol/Lで含有する参考例11の電解液とした。
参考例11の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例11のリチウムイオン二次電池を製造した。
なお、上記の反応における反応式は以下のとおりである。副生するFSiMeは低沸点なので反応系外に移動する。
LiBF+2(CF)SiMe → LiBF(CF)+2FSiMe
(参考比較例1)
フルオロエチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比1:9で混合して混合溶媒とした。混合溶媒にLiPFを混合して、LiPFの濃度が2mol/Lである参考比較例1の電解液を製造した。
参考比較例1の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考比較例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
(参考比較例2)
テトラヒドロフランにLiBFを溶解して、LiBFの濃度が1.5mol/Lである参考比較例2の電解液を製造した。
参考比較例2の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考比較例2のリチウムイオン二次電池を製造した。
(参考比較例3)
シクロペンチルメチルエーテルにLiBFを溶解して、LiBFの濃度が2mol/Lである参考比較例3の電解液を製造した。
参考比較例3の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考比較例3のリチウムイオン二次電池を製造した。
(参考比較例4)
テトラヒドロフランに(FSONLiを溶解して、(FSONLiの濃度が2mol/Lである参考比較例4の電解液を製造した。
参考比較例4の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考比較例4のリチウムイオン二次電池を製造した。
(参考比較例5)
1,2−ジメトキシエタンに(FSONLiを溶解して、(FSONLiの濃度が2mol/Lである参考比較例5の電解液を製造した。
参考比較例5の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考比較例5のリチウムイオン二次電池を製造した。
(評価例1)
各リチウムイオン二次電池に対して、0.2mAで0.01Vまで充電し、0.2mAで1.0Vまで放電を行うとの初回充放電を行った。さらに、各リチウムイオン二次電池に対して、0.5mAで0.01Vまで充電し、0.5mAで1.0Vまで放電を行うとの充放電サイクルを20回繰り返した。
なお、本評価例では、Si含有負極活物質がリチウムを吸蔵する印加を充電といい、Si含有負極活物質がリチウムを放出する印加を放電という。
以下の式で、初期効率と容量維持率を算出した。結果を表1に示す。
初期効率(%)=100×(初回放電容量)/(初回充電容量)
容量維持率(%)=100×(20サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)
なお、以下の表において、MTHPとは4−メチルテトラヒドロピランの略称であり、FECとはフルオロエチレンカーボネートの略称であり、DECとはジエチルカーボネートの略称であり、THFとはテトラヒドロフランの略称であり、CPMEとはシクロペンチルメチルエーテルの略称であり、DMEとは1,2−ジメトキシエタンの略称である。
Figure 2020170686
参考比較例1のリチウムイオン二次電池の容量維持率の結果と他の参考比較例の結果からみて、参考比較例1のリチウムイオン二次電池は、主にフルオロエチレンカーボネートの分解物で形成されるSEI被膜の存在に因り、他の参考比較例のリチウムイオン二次電池よりも優れた容量維持率を示したと考えられる。
しかしながら、参考例のリチウムイオン二次電池の方が参考比較例1のリチウムイオン二次電池よりも優れた容量維持率を示したことから、参考比較例1のリチウムイオン二次電池においては、SEI被膜がSi含有負極活物質と電解液との直接接触を防止したものの、SEI被膜に含まれるCO基などの酸化性の成分に因り、Si含有負極活物質が酸化して、劣化したと推定される。
電解質がLiBFである参考例1、参考比較例2及び参考比較例3、並びに、電解質が(FSONLiである参考例2、参考比較例4及び参考比較例5の結果からみて、エーテルであっても、その化学構造の違いに因り、電池性能に大きな影響を与えることがわかる。
以上の結果から、6員環の環状エーテルは、還元条件下での耐久性に優れるといえる。
(実施例1)
一般式(A)で表される鎖状エーテルである1,3−ジメトキシプロパンに、(FSONLi及びLiBF(C)を溶解して、(FSONLiの濃度が1mol/Lであり、LiBF(C)の濃度が0.1mol/Lである実施例1の電解液を製造した。
実施例1の電解液を用いて、実施例1−Pのリチウムイオン二次電池及び実施例1−Nのリチウムイオン二次電池を、以下のとおり製造した。
正極活物質としてのLiNi0.8Co0.1Al0.1、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン及び導電助剤としてのアセチレンブラックを、LiNi0.8Co0.1Al0.1とポリフッ化ビニリデンとアセチレンブラックとの質量比が94:3:3となるように混合し、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドンを添加してスラリーとした。このスラリーを、集電体としてのアルミニウム箔の表面にドクターブレードを用いて塗布し、乾燥することで、溶剤を揮発により除去して、正極活物質層を形成した。表面に正極活物質層を形成したアルミニウム箔を、ロ−ルプレス機を用いて圧縮し、アルミニウム箔と正極活物質層とを密着させた接合物を得た。接合物を120℃で6時間、真空乾燥機で加熱して、正極を製造した。
正極を評価極とした。厚さ500μmの金属リチウム箔を対極とした。セパレータとしてガラスフィルター(ヘキストセラニーズ社)を準備した。セパレータを対極と評価極で挟持し電極体とした。この電極体をコイン型電池ケースCR2032(宝泉株式会社)に収容し、さらに実施例1の電解液を注入して、コイン型電池を得た。これを実施例1−Pのリチウムイオン二次電池とした。
また、実施例1の電解液を用いた以外は、参考例1のリチウムイオン二次電池の製造方法と同様の方法で、実施例1−Nのリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例2)
一般式(A)で表される鎖状エーテルである1,3−ジメトキシプロパン及び6員環の環状エーテルである4−メチルテトラヒドロピランを、体積比50:50で混合して混合溶媒とした。混合溶媒に(FSONLi及びLiBF(C)を溶解して、(FSONLiの濃度が1mol/Lであり、LiBF(C)の濃度が0.1mol/Lである実施例2の電解液を製造した。
実施例2の電解液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2−Pのリチウムイオン二次電池及び実施例2−Nのリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例3)
一般式(A)で表される鎖状エーテルである1,3−ジメトキシプロパン及び6員環の環状エーテルである4−メチルテトラヒドロピランを、体積比30:70で混合して混合溶媒とした。混合溶媒に(FSONLi及びLiBF(C)を溶解して、(FSONLiの濃度が1mol/Lであり、LiBF(C)の濃度が0.1mol/Lである実施例3の電解液を製造した。
実施例3の電解液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3−Pのリチウムイオン二次電池及び実施例3−Nのリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例1)
1,2−ジメトキシエタンに、(FSONLi及びLiBF(C)を溶解して、(FSONLiの濃度が1mol/Lであり、LiBF(C)の濃度が0.1mol/Lである比較例1の電解液を製造した。
比較例1の電解液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1−Pのリチウムイオン二次電池及び比較例1−Nのリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例2)
1,2−ジメトキシエタン及び6員環の環状エーテルである4−メチルテトラヒドロピランを、体積比50:50で混合して混合溶媒とした。混合溶媒に(FSONLi及びLiBF(C)を溶解して、(FSONLiの濃度が1mol/Lであり、LiBF(C)の濃度が0.1mol/Lである比較例2の電解液を製造した。
比較例2の電解液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2−Pのリチウムイオン二次電池及び比較例2−Nのリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例3)
1,2−ジメトキシエタン及び6員環の環状エーテルである4−メチルテトラヒドロピランを、体積比30:70で混合して混合溶媒とした。混合溶媒に(FSONLi及びLiBF(C)を溶解して、(FSONLiの濃度が1mol/Lであり、LiBF(C)の濃度が0.1mol/Lである比較例3の電解液を製造した。
比較例3の電解液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例3−Pのリチウムイオン二次電池及び比較例3−Nのリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例4)
ジプロピルエーテルに(FSONLi及びLiBF(C)を溶解して、(FSONLiの濃度が1mol/Lであり、LiBF(C)の濃度が0.1mol/Lである比較例4の電解液を製造しようとした。しかし、(FSONLiがジプロピルエーテルに溶解しなかったため、比較例4の電解液は製造できなかった。
(比較例5)
ジプロピルエーテル及び6員環の環状エーテルである4−メチルテトラヒドロピランを、体積比50:50で混合して混合溶媒とした。混合溶媒に(FSONLi及びLiBF(C)を溶解して、(FSONLiの濃度が1mol/Lであり、LiBF(C)の濃度が0.1mol/Lである比較例5の電解液を製造した。
比較例5の電解液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例5−Pのリチウムイオン二次電池及び比較例5−Nのリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例6)
1,5−ジメトキシペンタンに(FSONLi及びLiBF(C)を溶解して、(FSONLiの濃度が1mol/Lであり、LiBF(C)の濃度が0.1mol/Lである比較例6の電解液を製造しようとした。しかし、(FSONLiが1,5−ジメトキシペンタンに溶解しなかったため、比較例6の電解液は製造できなかった。
(比較例7)
1,5−ジメトキシペンタン及び6員環の環状エーテルである4−メチルテトラヒドロピランを、体積比50:50で混合して混合溶媒とした。混合溶媒に(FSONLi及びLiBF(C)を溶解して、(FSONLiの濃度が1mol/Lであり、LiBF(C)の濃度が0.1mol/Lである比較例7の電解液を製造した。
比較例7の電解液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例7−Pのリチウムイオン二次電池及び比較例7−Nのリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例8)
6員環の環状エーテルである4−メチルテトラヒドロピランに、(FSONLi及びLiBF(C)を溶解して、(FSONLiの濃度が1mol/Lであり、LiBF(C)の濃度が0.1mol/Lである比較例8の電解液を製造した。
比較例8の電解液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例8−Pのリチウムイオン二次電池及び比較例8−Nのリチウムイオン二次電池を製造した。
(評価例2)
実施例1〜実施例3の電解液、及び、比較例1〜比較例3、比較例5、比較例7、比較例8の電解液につき、以下の条件で、イオン伝導度を測定した。結果を表2に示す。
<イオン伝導度>
白金極を備えたセルに電解液を封入し、25℃、10kHzでのインピーダンスを測定した。インピーダンスの測定結果から、イオン伝導度を算出した。測定機器はSolartron 147055BEC(ソーラトロン社)を使用した。
Figure 2020170686
表2から、非水溶媒として4−メチルテトラヒドロピランを100体積%で含有する比較例8の電解液は、イオン伝導度にやや劣ることがわかる。評価例1においては、4−メチルテトラヒドロピランを含有する電解液は他のエーテルを含有する電解液よりも優れた特性を示したものの、評価例2の結果から、4−メチルテトラヒドロピランを100体積%で含有する電解液には、イオン伝導度が劣ることに伴う欠点が存在することが示唆される。
他方、1,3−ジメトキシプロパンを含有する実施例1〜実施例3の電解液は、好適なイオン伝導度を示したといえる。
(評価例3)
実施例1−Nのリチウムイオン二次電池及び比較例8−Nのリチウムイオン二次電池に対して、0.2mAで0.01Vまで充電し、0.2mAで1.0Vまで放電を行うとの充放電を行った。さらに、各リチウムイオン二次電池に対して、0.5mAで0.01Vまで充電し、0.5mAで1.0Vまで放電を行うとの充放電を行った。
レート特性を以下の式で算出した。結果を表3に示す。
レート特性(%)=100×(0.5mAでの放電容量)/(0.2mAでの放電容量)
Figure 2020170686
表3から、1,3−ジメトキシプロパンを含有する実施例1の電解液がイオン伝導度に優れるため、当該電解液を備えるリチウムイオン二次電池はレート特性に優れるといえる。
本発明の電解液を備える二次電池は、急速な充放電にも対応可能といえる。
(評価例4)
実施例1−P〜実施例3−P、比較例1−P〜比較例3−P、比較例5−P、比較例7−P、比較例8−Pのリチウムイオン二次電池に対して、0.5mAで4.35Vまで充電し、0.5mAで3.0Vまで放電を行うとの充放電サイクルを50回繰り返した。
以下の式で、初期効率と容量維持率を算出した。結果を表4に示す。
初期効率(%)=100×(1サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の充電容量)
容量維持率(%)=100×(50サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)
Figure 2020170686
表4から、実施例1−P〜実施例3−Pのリチウムイオン二次電池が容量維持率に著しく優れることがわかる。この結果から、本発明の電解液は、高電位に曝される正極の充放電環境下で、高い耐久性を示すといえる。
他方、非水溶媒として1,2−ジメトキシエタンを含有する電解液を備える比較例1−P〜比較例3−Pのリチウムイオン二次電池は、容量維持率に劣ることがわかる。1,2−ジメトキシエタンは、高電位に曝される正極の充放電環境下での耐久性に劣るといえる。
明細書中で詳細に述べたとおり、1,2−ジメトキシエタンのC−H結合のHOMOが酸化反応に関与しやすいため、正極側での酸化反応が容易に進行する環境下において、1,2−ジメトキシエタンの分解速度は速いと考えられる。
なお、比較例5−P及び比較例7−Pのリチウムイオン二次電池の放電容量及び容量維持率が低かったのは、比較例5及び比較例7の電解液の低いイオン伝導度に因るものと考えられる。
(評価例5)
実施例1−N〜実施例3−N、比較例1−N〜比較例3−N、比較例5−N、比較例7−N、比較例8−Nのリチウムイオン二次電池に対して、0.2mAで0.01Vまで充電し、0.2mAで1.0Vまで放電を行うとの初回充放電を行った。さらに、各リチウムイオン二次電池に対して、0.5mAで0.01Vまで充電し、0.5mAで1.0Vまで放電を行うとの充放電サイクルを50回繰り返した。
以下の式で、初期効率と容量維持率を算出した。結果を表5に示す。
初期効率(%)=100×(初回放電容量)/(初回充電容量)
容量維持率(%)=100×(50サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)
Figure 2020170686
表5から、実施例1−N〜実施例3−Nのリチウムイオン二次電池が容量維持率に著しく優れることがわかる。この結果から、本発明の電解液は、負極の充放電環境下においても、高い耐久性を示すといえる。
以上の結果から、一般式(A)で表される鎖状エーテルは、二次電池の充放電環境下での安定性に優れるといえる。

Claims (5)

  1. 電解質及び下記一般式(A)で表される鎖状エーテルを含有することを特徴とする電解液。
    一般式(A) R(OCH(CH)CH)OR
    及びRはそれぞれ独立にフッ素で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基である。mは1又は2である。nは1以上の整数である。
  2. アルキル基で置換されていてもよい6員環の環状エーテルを含有する請求項1に記載の電解液。
  3. 正極、負極、及び、請求項1又は2に記載の電解液を備える二次電池。
  4. 前記正極に具備される正極活物質が、リチウム基準で4V以上の電位にて充放電を行うものである請求項3に記載の二次電池。
  5. 前記負極に具備される負極活物質が、Si含有負極活物質である請求項3又は4に記載の二次電池。
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