JP2020169763A - 空調システム - Google Patents

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Abstract

【課題】空気中の放射性物質が、当該放射性物質に関して設定された許容量を超えて存在していることを検知した時点で、施設内への放射性物質の流入を防ぐ。【解決手段】空調システムが、通常時用空調機3および非常時用空調機4と、非常時用空調機4に内蔵されている、放射性物質を除去するエアフィルタ機構8〜10と、少なくとも通常時用空調機3の外気取り入れ口近傍に設けられている、大気中の放射線量と放射線核種とを検知する放射線検出器13と、放射線検出器13の検出結果に基づいて、少なくとも1つの種類の放射性物質が当該放射性物質に関して設定された大気中における許容量を超えていることが検知されると、通常時用空調機3が作動して非常時用空調機4が非作動の状態から、非常時用空調機4が作動して通常時用空調機3が非作動の状態に切り換える、空調機切り替え手段6と、を有する。【選択図】図1

Description

本発明は空調システムに関する。
原子力事故の際に用いられる一時避難施設等では、放射性物質によって汚染された空気が施設内に流入することを防ぐ必要がある。このように汚染防止の対象となる施設において汚染防止を実現するために、大気中の放射性物質の有無を常に検知する場合がある。具体的には、大気中の単位時間あたりの放射線量を測定する空間線量モニタや、対象の空気を一定時間吸引して放射能濃度を測定するダスト放射線モニタなどを含むモニタリングポストにより、環境放射線を常時検知する。
特許文献1には、原子力施設を取り囲むように配置された複数の放射性物質検出装置と、複数の放射性物質検出装置の検出結果を送受信する通信装置と、通信装置を介して得た検出結果に基づいて、原子力施設から放出された放射性物質による放射性プルームの拡散状況を監視する情報処理システムと、を含む放射性プルーム監視システムについて記載されている。
特許文献2には、空気中の放射性核種の濃度が低いレベルであっても、その増加傾向を察知するために、演算部、判定部、評価部、情報発信部を備えた放射線測定装置について記載されている。
特許文献3には、モニタリングポストと建物内の通常時用空調器および非常時用空調機とを連動させ、モニタリングポストによって大気中における放射性物質の飛散が検知されると、建物内の空調機が自動的に切り替わって陽圧化することで建物内への放射性物質の流入を防ぐ技術について記載されている。
特開2016−53534号公報 特開2002−181947号公報 特開2016−8752号公報
原子力事故の際に放射性物質を含んでいる外気の流入を阻止すべき施設に設けられた空調システムにおいては、空間線量の測定の迅速さおよび精度が求められる。特許文献1,2の技術を活用すると、高い精度で環境放射線量を測定することが見込めるものの、大気中への放射性物質の飛散を確認した後に手動または自動的に非常時用空調機を稼働しても、タイムラグにより施設内への放射性物質の流入を完全に防ぐことは困難である。
特許文献3に記載されたモニタリングポストを活用すると、空間線量の推移を把握して空間線量が基準値を超えた場合に施設内への放射性物質の流入を防ぐことができる。ただし、この方法では、放射線量は測定されるが放射性核種を把握することはできず、どの種類の放射性物質がどの程度大気中に飛散しているかは把握できない。
そこで、本発明の目的は、空気中の放射性物質が、当該放射性物質の許容量を超えて存在している場合に、施設内への放射性物質の流入を防ぐことができる空調システムを提供することにある。
本発明の空調システムは、汚染防止の対象である施設に設けられた通常時用空調機および非常時用空調機と、非常時用空調機に内蔵されている、放射性物質を除去するエアフィルタ機構と、少なくとも通常時用空調機の外気取り入れ口近傍に設けられている、大気中の放射線量と放射線核種とを検知する放射線検出器と、放射線検出器の検出結果に基づいて、少なくとも1つの種類の放射性物質が当該放射性物質に関して設定された大気中における許容量を超えていることが検知されると、通常時用空調機の送風機が作動して非常時用空調機の送風機が非作動の状態から、非常時用空調機の送風機が作動して通常時用空調機の送風機が非作動の状態に切り換える切り替え手段と、を有することを特徴とする。
本発明によると、空気中の放射性物質が、当該放射性物質の許容量を超えて存在している場合に、施設内への放射性物質の流入を防ぐことができる空調システムが提供される。
本発明の一実施形態の空調システムを示す概略図である。 本発明の他の実施形態の空調システムの一部を示す概略図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に本発明の第1の実施形態の空調システムの要部を模式的に示している。この空調システムは、通常時にも原子力事故等の非常時にも用いることができる。すなわち、この空調システムは、通常時には一般的な空調システムとして機能し、原子力事故等によって空気中に放射性物質が飛散または浮遊している非常時には、換気や温度調節といった空調機能に加えて、放射性物質によって汚染された空気が流入することを防止する機能を有する。この空調システムは、一例としては、原子力事故等の非常時に要救護者や周辺地域住民が避難する一時避難施設に適している。
この空調システムにおいて、汚染防止の対象となる施設、例えば一時避難施設1には、非常時用排気口2と、通常時用空調機3と、非常時用空調機4とが設けられている。非常時用排気口2と、通常時用空調機3と、非常時用空調機4には、それぞれ切り替えダンパ7が設けられている。本実施形態のダンパ7は、ダクト内に設けられた空気流量制御弁であり、ダクトの閉鎖が可能であれば、その形状などは特に限定されるものではない。なお、非常時用排気口2は非常時用空調機4の一部として構成されることも可能である。通常時用空調機3と非常時用空調機4とには、それぞれ送風機が内蔵されている。
一時避難施設1には、通常時用空調機3と非常時用空調機4とのそれぞれの送風機に接続されて両空調機3,4のそれぞれの送風機の切り替えを行うスイッチである切り替え手段6と、一時避難施設1への人の出入口となるエアロック室5がさらに設けられている。非常時用排気口2と、通常時用空調機3と、非常時用空調機4と、エアロック室5は、いずれも一端が一時避難施設1の内部に位置し、他端が一時避難施設1の外部に位置している。
通常時用空調機3は、原子力事故等が発生していない通常時に一時避難施設1の空調(換気や冷暖房など)を行うものである。通常時用空調機3の外気取入口には、大気塵などを捕捉するプレフィルタや中高性能フィルタ(図示せず)が設けられているが、放射性物質を捕捉する手段は有していない。
これに対し、非常時用空調機4は、原子力事故等により周囲の環境に放射性物質が飛散または浮遊している非常時において空調を行うものである。そのため、非常時用空調機4には、プレフィルタ8とHEPAフィルタ9と放射性物質除去用活性炭フィルタ10とを含むエアフィルタ機構が内蔵されている。放射性物質のうち、固体および液体の物質は主にHEPAフィルタ9にて吸着する。例えば、放射性セシウムなどの放射性物質が付着した微小な大気塵は、微小粒子の捕集が可能なHEPAフィルタ9によって放射性物質とともに捕集される。一方、ガス状の放射性物質は、ガス吸着性に富んだ活性炭、例えば非放射性のヨウ素やヨウ化カリウムを添着させた活性炭などを含む放射性物質除去用活性炭フィルタ10で除去する。放射性物質除去用活性炭フィルタ10の形状は、放射性ヨウ素の吸着量を踏まえ、トレイ状の容器に粒状の放射性ヨウ素除去用活性炭を充填したユニットをジグザグ状に設置した箱型であることが好ましい。プレフィルタ8は、材質や形状は特に限定されるものではないが、放射性物質を除去するものではなく、後段のHEPAフィルタ9および放射性物質除去用活性炭フィルタ10の早期目詰まりを回避するために、粉塵保持容量の高いガラス繊維製ろ材からなることが好ましい。
仮に通常時用空調機3を非常時においても使い続けると、放射性物質を含む空気が一時避難施設1の内部に進入して汚染してしまう。これに対し、仮に非常時用空調機4を常時使い続けると、放射性物質の一時避難施設1への進入を防ぐことができ、内部の汚染が防止できる。しかし、エアフィルタ機構に外気を通気し続けるため、大気塵などがエアフィルタのろ材面に付着してろ材面が目詰まりを起こし、フィルタとしての機能が経時的に低下する。また、活性炭に通風し続けると、大気中の水分を吸着してフィルタとしての寿命が短くなる。
そこで、本実施形態では、一時避難施設1において通常時用空調機3と非常時用空調機4とを使い分ける。すなわち、通常時は放射性物質を捕捉するフィルタを持たない通常時用空調機3を用いて一時避難施設1の空調を行い、エアフィルタ機構を備えた非常時用空調機4は使用しない。そして、原子力事故等により周囲環境において大気中に放射性物質が飛散または浮遊している場合にのみ、非常時用空調機4を用いて空調を行うとともに、外気が流入しにくいように一時避難施設の内部を陽圧に保つ。非常時用空調機4は通常時には使用されないので、非常時に使用する際にエアフィルタが既に目詰まりを起こしていて陽圧の維持が困難になるおそれは小さい。
すなわち、本発明では、通常時用空調機3と非常時用空調機4とを分けて使用することにより、非常時において、非常時用空調機4によって放射性物質の除去と陽圧状態の維持とを実現する信頼性が高い。
本実施形態のエアロック室5は、一時避難施設1への人の出入りの際に外気が一時避難施設1内に進入しないように、一時避難施設1と外部との間に介在する、互いに区切られた3つの室からなる。これらの3つの室を通過することで、一時避難施設1への人の出入りが可能になる。3つの室のそれぞれにおいて、それぞれの圧力や風の流れを適宜に設定することにより、外気は少なくともこの3つの室において遮断されて、一時避難施設1へは進入しない。
本実施形態の空調システムでは、通常時用空調機3の外気取入れ口の近傍と、非常時用空調機4の外気取り入れ口の近傍、より詳しくはエアフィルタ機構よりも空気流入側の位置に、放射線検出器13がそれぞれ設けられている。すなわち、通常時の空調のために外気を取り入れる部分と、非常時の空調のために外気を取り入れる部分にそれぞれ放射線検出器13が設けられている。この放射線検出器13は、ガイガー検出器とシンチレーション検出器を組み合わせたものである。また、この空調システムは、一時避難施設1の外部であって、主に原子力施設の周辺に配置された複数のモニタリングポスト11を有している。モニタリングポスト11は、空気中の放射線を常時監視し続ける、原子力施設の周辺に配置された測定地点である。各モニタリングポスト11は、通常時用空調機3および非常時用空調機4と同様に、ガイガー検出器とシンチレーション検出器を組み合わせた放射線検出器13を有している。
本実施形態の空調システムでは、通常時用空調機3の外気取入れ口近傍と、非常時用空調機4のエアフィルタ機構の空気流入側の位置と、モニタリングポスト11とに位置する放射線検出器13が、空間放射線量の測定と放射線におけるスペクトル分析とを同時に行う。その結果、放射線検出器13の周囲においてどの種類の放射線がどの程度存在するかを継続的に求めることができる。予め、放射線の種類ごとに許容量が決められており、少なくとも1つの放射線検出器13によって、少なくとも1つの種類の放射線が許容量以上に存在することが検知されると、非常時とみなして非常時の処理を行う。
少なくとも1つの放射線検出器13において、少なくとも1つの種類の放射線が許容量を超えて存在することが検知されると、予め用意された動作プログラムに基づいて、一時避難施設1内の全吸気口に設けられたダンパ7と全排気口に設けられたダンパ7が自動的に閉鎖する。このとき、予め閉じられているダンパ7は閉鎖したままにする。そして、外気の取り入れを行う空調機3,4が一斉に停止される。その結果、一時避難施設1内への外気の給気および一時避難施設1から屋外への排気は一切行われなくなる。それから、切り替え手段6によって、許容量を超える放射線が検知されなかった通常時における通常時用空調機3の作動状態かつ非常時用空調機4の非作動状態から、非常時用空調機4の作動状態かつ通常時用空調機3の非作動状態に自動的に切り換えられる。すなわち、切り替え手段6により、通常時用空調機3の送風機が停止されて通常時用空調機3への外気の導入が停止し、非常時用空調機4の送風機が作動されて非常時用空調機4への外気の導入が開始される。非常時用空調機4に導入される外気は、エアフィルタ機構のプレフィルタ8とHEPAフィルタ9と放射性物質除去用活性炭フィルタ10とを通過することにより、放射性物質や大気塵等を除去される。このように、放射線検出器13によって、大気中に飛散または浮遊する放射性物質を含むガスが原子力施設または一時避難施設1の周辺に存在または通過していることが確認された場合には、切り替え手段6により、非常時用空調機4の外気取り入れ用の送風機が起動され、非常時用空調機4を介して一時避難施設1内に外気を取り入れるように空調システムを切り替える。それにより、例えば大気塵に付着して地面に降り注いだおそれがある放射性物質が一時避難施設1内に流入することを防ぐことができる。
このように、非常時用空調機4を介して一時避難施設1の内部に外気が送り込まれる際に、一時避難施設1の壁面等に存在する何らかの隙間から放射性物質が付着した大気塵が流入することを防止するために、一時避難施設1の内部を陽圧状態に保つことが好ましい。そのため、一時避難施設1からの空気の排気口を非常時用排気口2に限定し、非常時用空調機4の給気用の送風機の起動と同時に、非常時用排気口2の切り替えダンパ7を開放するとともに、非常時用空調機4と非常時用排気口2以外の、通常時用空調機3の切り替えダンパ7を閉鎖する。そして、一時避難施設1の内部へ供給する風量を調整することによって、一時避難施設1内を陽圧状態に維持する。本実施形態では、一時避難施設1の内部と屋外との気圧差を50Pa〜120Paにして、施設の構造によっては90Pa〜100Paにすることがより好ましい。このように、一時避難施設1の内部を外部に比べて高い気圧にすることにより外気の流入を抑えることができ、外気に含まれる放射性物質の進入を抑えて汚染を防止することができる。
より好ましくは、非常時用空調機4の稼働時には、一時避難施設1の内部と屋外との気圧差をデジタル信号に変換し、非常時用空調機4の送風機をインバーターにて制御して、一時避難施設1の内部の屋外との気圧差(陽圧度)が予め規定された範囲の下限値である50Pa(より好ましくは90Pa)より低下した場合には自動的にその気圧差を探知して外気導入量を増加させ、一時避難施設1の内部と屋外との気圧差を予め規定された範囲内に保つ。このように、自動的に気圧差を探知して外気導入量を増加させることは、建物の経年劣化に係る密閉度の低下や、地震などの外的要因によって、一時避難施設1の隙間(開口部)が拡大した場合などにも、常に適切な陽圧状態を維持することができ、特に効果的である。
また、非常時において、非常時用空調機4のみから一時避難施設1内に外気が給気されている時には、一時避難施設1内への人の出入りは、気圧差を有する3室構造のエアロック室5に限定される。エアロック室5の各室および一時避難施設1のそれぞれの内圧の差によって、外部からエアロック室5を通って一時避難施設1の内部まで外気および放射性物質が進入することが抑えられる。
本実施形態の非常時用空調機4は、常に一時避難施設1に接続された状態にある。ただし、非常時用空調機4の送風機が稼働するまでは、非常時用空調機4の切り替えダンパ7は完全に閉鎖されており、一時避難施設1を密閉して外気を取り入れない状態である。すなわち、通常時用空調機3が稼働して一時避難施設1の給気および排気を行っている状態では、非常時用空調機4に通気されることはない。そのため、非常時用空調機4が急遽稼働することとなったとしても、非常時用空調機4のエアフィルタ機構が大気粉塵などの影響によって既に目詰まりを起こしていることはなく、有事の際に放射性物質が捕集されない状況を回避することができる。
図2に示す他の実施形態の空調システムでは、音声警告部(スピーカー)14と警告表示部(ディスプレイやタブレット端末)15が設けられている。この構成では、放射線検出器13により、少なくとも1つの種類の放射線がその許容量以上に存在することが検知されると、通常時用空調機3から非常時用空調機4への切り替えに加えて、音声警告部14から警告音や避難指示を発したり、警告表示部15によって視覚的な警告を表示したりする。
以上説明したように、本発明によると、原子力事故等の非常時に、放射性物質によって汚染された空気が一時避難施設1の内部に流入することを防止することができる。具体的には、放射線検出器13が大気中の放射性物質の種類と放射線量を検知する。そして、少なくとも1つの種類の放射性物質が、当該放射性物質に関して予め設定された許容量を超えて存在することが検知されると、直ちに通常時用空調機3のダンパ7が閉鎖し、放射性物質捕集用のエアフィルタ機構を含む非常時用空調機4の外気取り入れ口へと、屋外からの流入空気の流れが変更される。エアフィルタ機構によって放射性物質を除去できるため、非常時用空調機4を介して一時避難施設1の内部に放射性物質が進入することが抑えられ、一時避難施設1の内部の汚染が防止できる。特に、通常時用空調機3と非常時用空調機4の外気取入口付近に放射線検出器13を配置しているため、一時避難施設1の内部に進入する直前の放射性物質の種類と放射線量を的確に検知することができ、非常時と判断された場合には即座に放射性物質を含む外気の進入を手段できる。従って、一時避難施設1の汚染防止の信頼性が高い。
前述した実施形態では、ガイガー検出器とシンチレーション検出器とを組み合わせた放射線検出器13を用いることにより、放射線量のみならず放射性核種を把握することができる。従って、放射性物質の種類ごとに許容量をそれぞれ設定して、各種の放射性物質がそれぞれに関して設定された許容量以下であるかどうかを個別に判断することができ、効果的な汚染防止を実現することができる。これは、例えば特に危険性の高い放射性物質である放射性ヨウ素(β線、γ線)が検知されれば、たとえどんなに微量であっても、切り替え手段6が直ちに自動的に通常時用空調機3の送風機の作動状態から非常時用空調機4の送風機の作動状態に切り替えるような場合も含む。
また、少なくとも1つの放射線検出器13が放射性希ガスを検知した場合には、切り替え手段6は、通常時用空調機3の送風機と非常時用空調機4の送風機をいずれも作動させず、一時避難施設1の内部に外気を一切取り込まずに一時避難施設1の内部での空気循環のみを行うようにする。これは、放射性希ガスは、HEPAフィルタ9及び放射性物質除去用活性炭フィルタ10では捕集が困難であるからである。放射性希ガスが一時避難施設1の周囲に存在する時には、各切り替えダンパ7が稼働し、一時避難施設1内への外気の取り入れを停止し、本空調システムは室内循環に切り替わる。
さらに、放射線の種類に関わらず通常時用空調機3の送風機の作動状態から非常時用空調機4の送風機の作動状態に切り替える放射線量の閾値を設定しておいてもよい。その場合、いかなる種類の放射線であっても閾値を超える放射線量を検知すると、切り替え手段6が自動的に空調機3,4の切り替えを行う。例えば、全種類の放射線を対象とした放射線量の閾値を0.5μSv/hに設定する。少なくとも1つの放射線検出器13がこの閾値を超える放射線量を検知した時点で、その放射線の種類が何であれ、切り替え手段6が自動的に通常時用空調機3の送風機の作動状態から非常時用空調機4の送風機の作動状態に切り替える。
切り替え手段6は、手動での操作も可能なスイッチとして構成されていてもよい。その場合、一時避難施設1の内部にいる人が、例えばニュース放送等の外部情報に基づいて手動で切り替え手段6を操作して、通常時用空調機3の送風機の作動状態から非常時用空調機4の送風機の作動状態に切り替えることができる。
本発明における空調システムを構成する2つの空調機3,4の具体的な構成や、非常時用空調機4に内蔵されたエアフィルタ機構に含まれるフィルタの具体的な構成および数や、非常時の判定基準となる放射性物質の種類と許容量との組み合わせ等は、特に限定されるものでは無く、適宜に設定すればよい。空調機3,4は、必要に応じて施設内で空気を循環させるものであってもよい。その場合、循環用空気取り入れ口12を用いて空気を取り入れることができる。
本発明の通常時用空調機3と非常時用空調機4はいずれも、常に一時避難施設1に接続されているため、非常時に新たな空調機を一時避難施設1に取り付ける作業を行う必要がない。このように、この空調システムは非常時に新たな空調機の取り付けや空調機の取り換えを行う必要はないので、既存の建設物に対しても広く活用することができる。すなわち、前述した一時避難施設1に限られず、放射性物質による汚染の防止が求められており内部を実質的に密閉することができる様々な施設、例えば原子力災害対策センター(オフサイトセンター)、原子力施設、地下シェルターなどにも本発明の空調システムが広く採用できる。
1 施設(一時避難施設)
2 非常時用排気口
3 通常時用空調機
4 非常時用空調機
5 エアロック室
6 空調機切り替え手段
7 ダンパ
8 プレフィルタ
9 HEPAフィルタ
10 放射性物質除去用活性炭フィルタ
11 モニタリングポスト
12 循環用空気取り入れ口
13 放射線検出器
14 音声警告部
15 警告表示部

Claims (8)

  1. 汚染防止の対象である施設に設けられた通常時用空調機および非常時用空調機と、
    前記非常時用空調機に内蔵されている、放射性物質を除去するエアフィルタ機構と、
    少なくとも前記通常時用空調機の外気取り入れ口近傍に設けられている、大気中の放射線量と放射線核種とを検知する放射線検出器と、
    前記放射線検出器の検出結果に基づいて、少なくとも1つの種類の放射性物質が当該放射性物質に関して設定された大気中における許容量を超えていることが検知されると、前記通常時用空調機が作動して前記非常時用空調機が非作動の状態から、前記非常時用空調機が作動して前記通常時用空調機が非作動の状態に切り換える、空調機切り替え手段と、
    を有することを特徴とする、空調システム。
  2. 前記放射線検出器はガイガー検出器とシンチレーション検出器とを含んでいる、請求項1に記載の空調システム。
  3. 前記空調機切り替え手段は、放射性物質の種類毎にそれぞれ設定された、大気中における許容量に基づいて、前記通常時用空調機および前記非常時用空調機の状態の切り換えの要否を判定する、請求項1または2に記載の空調システム。
  4. 前記通常時用空調機と、前記非常時用空調機と、前記施設への人の出入り口となるエアロック室との開口部にはそれぞれダンパが設けられており、前記放射線検出器の検出結果に基づいて、少なくとも1つの種類の放射性物質が当該放射性物質に関して設定された大気中における許容量を超えていることが検知されると前記通常時用空調機と前記エアロック室の開口部の前記ダンパが閉鎖されて全ての前記ダンパが閉鎖状態になり、それから前記非常時用空調機の開口部の前記ダンパが閉鎖状態から開放される、請求項1から3のいずれか1項に記載の空調システム。
  5. 前記非常時用空調機の作動状態において前記施設の内部からの排気を行う非常時用排気口をさらに有し、前記放射線検出器の検出結果に基づいて、少なくとも1つの種類の放射性物質が当該放射性物質に関して設定された大気中における許容量を超えていることが検知されると全ての前記ダンパが閉鎖状態になり、それから前記非常時用排気口に設けられたダンパと前記非常時用空調機の開口部の前記ダンパとが閉鎖状態から開放される、請求項4に記載の空調システム。
  6. 前記非常時用空調機の作動状態において、前記施設の内部は前記施設の外部に比べて陽圧状態である、請求項1から5のいずれか1項に記載の空調システム。
  7. 前記非常時用空調機に設けられている前記エアフィルタ機構は、少なくとも放射性物質除去用活性炭フィルタとHEPAフィルタとを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の空調システム。
  8. 前記放射線検出器は、前記非常時用空調機の前記エアフィルタ機構の近傍にも配置されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の空調システム。
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