JP2020164918A - 方向性電磁鋼板の製造方法および方向性電磁鋼板 - Google Patents
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Abstract
Description
まず、4.5質量%以下程度のSiと、MnS、MnSe、AlNなどのインヒビター成分とを含有する鋼スラブを加熱して、インヒビター成分を一旦固溶させる。加熱した鋼スラブを熱間圧延して熱延鋼板を得る。熱延鋼板には、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。次いで、熱延鋼板に、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して、最終板厚の冷延鋼板を得る。得られた冷延鋼板に、湿潤水素雰囲気中で、一次再結晶焼鈍を施して、一次再結晶および脱炭を行なう。その後、一次再結晶焼鈍後の冷延鋼板に、酸化マグネシウム(MgO)を主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶およびインヒビター成分の純化のために、1200℃で5時間程度の最終仕上焼鈍を行なう。
このような工程を経て、方向性電磁鋼板は製造される(特許文献1を参照)。
しかし、機械研磨では、良好な磁気特性が得られない場合がある。これは、機械研磨に用いる研磨用工具から鋼板にかかる応力によって、鋼板の結晶組織が塑性変形するためと考えられる。
これに対して、電解液を用いる電解研磨では、鋼板に応力はかからないが、機械研磨と比較して、十分な研磨速度が得られない。これは、電解液中に溶けだした鉄イオンが鋼板の表面近傍に存在し、鋼板の表面近傍では局所的にFe+2e−→Fe2+の右辺の鉄イオン濃度が高まり、電解が進みにくくなるためと考えられる。研磨速度を高めるためには、高電圧の印加などが必要となる場合がある。
その結果、砥粒を含む電解液(pH:6)を用いて複合電解研磨を施した場合、研磨後に被研磨材を電解液から取り出して乾燥させるまでの極短時間の間に、被研磨材の表面に、褐色の酸化物層が形成され、良好な表面状態が得られなかった(図1を参照)。具体的には、研磨後の被研磨材は、表面粗さRaが0.43μm、酸素目付量が0.08g/m2であった。
もっとも、本発明者が、この研磨後の被研磨材を更に調査したところ、研磨用工具を用いて機械研磨を施しているにも拘わらず、被研磨材の内部には、ほとんど塑性変形領域がないことが分かった。
このため、良好な表面状態が得られる条件を見出せば、複合電解研磨は、良好な磁気特性が得られる手法となり得ると判断した。
また、本発明は、上記方法により得られる方向性電磁鋼板の提供も目的とする。
[1]表面粗さRaが0.30μm以下であり、かつ、酸素目付量が0.05g/m2以下である方向性電磁鋼板を製造する方法であって、二次再結晶後の鋼板を被研磨材とし、上記被研磨材に対して、砥粒を含むpH7超の電解液を供給し、電圧を印加することにより電解研磨を行ないつつ、機械研磨を行なう、方向性電磁鋼板の製造方法。
[2]上記被研磨材の表面に3mA/cm2以上160mA/cm2以下の電流が流れるように上記電圧を印加する、上記[1]に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
[3]上記被研磨材に上記電解研磨および上記機械研磨を行なう前に、あらかじめ、上記被研磨材の酸素目付量を0.5g/m2以下にする、上記[1]または[2]に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
[4]表面粗さRaが0.30μm以下であり、酸素目付量が0.05g/m2以下であり、かつ、励磁磁束密度1.7Tでのヒステリシス損が0.26W/kg以下である方向性電磁鋼板。
より詳細には、本発明の製造方法は、表面粗さRaが0.30μm以下であり、かつ、酸素目付量が0.05g/m2以下である方向性電磁鋼板を製造する方法であって、二次再結晶後の鋼板を被研磨材とし、上記被研磨材に対して、砥粒を含むpH7超の電解液を供給し、電圧を印加することにより電解研磨を行ないつつ、研磨用工具を用いて機械研磨を行なう、方向性電磁鋼板の製造方法である。
二次再結晶までの工程は、特に限定されず、従来公知の工程どおりに行なえばよい。具体的には、例えば、以下のような工程が多い。
まず、C:0.08質量%以下、Si:2.0〜5.0質量%、Mn:0.005〜0.5質量%、Al、N、Cu、S、Seなどのインヒビター形成元素、補助インヒビター等として機能するNi、Sn、Sb、Cr、P、Bi、B、Nb、Teなどの成分を含有する鋼スラブを熱間圧延して、熱延鋼板を得る。得られた熱延鋼板に、必要に応じて熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して、冷延鋼板を得る。次いで、得られた冷延鋼板(鋼板)に、脱炭を伴う一次再結晶を行ない、その後、MgOを含有する焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶のために最終仕上焼鈍を施す。
このようにして、二次再結晶後の鋼板(被研磨材)を得る。
塩化物の含有量は、酸化マグネシウム100質量部に対して、例えば、0.5〜50質量部であり、2〜40質量部が好ましく、3〜20質量部がより好ましい。
焼鈍分離剤には、更に、酸化チタン(TiO2)などの添加剤を、酸化マグネシウム100質量部に対して、0.5〜5質量部配合してもよい。
この機械研磨を行なう場合、機械研磨後における被研磨材の酸素目付量は0.5g/m2以下に低減されることが好ましい。
次に、準備した被研磨材(二次再結晶後の鋼板)に複合電解研磨を行なう。具体的には、被研磨材に対して、砥粒を含むpH7超の電解液を供給する。そして、被研磨材の表面に所定量の電流が流れるようにして、研磨用工具と被研磨材との間に電圧を付加する。これにより、電気化学的な研磨(電解研磨)を行なう。この電解研磨と同時に、研磨用工具を用いて、被研磨材に対して機械的な研磨(機械研磨)も行なう。複合電解研磨では、機械研磨も行なうため、電解研磨のみを行なう場合と比較して、効率が良い。
これにより、研磨後に被研磨材を電解液から取り出して乾燥させるまでの間に、被研磨材の表面に酸化物層が形成されず、良好な表面状態が得られる。この理由は明らかではないが、被研磨材の表面にヒドロキシ基が付き、表面が保護されるためと考えられる。
電解液から取り出した後の被研磨材は、十分に水洗し、表面に残る電解液および砥粒を除去する。その後、十分に乾燥させる。
電解液の種類は、pHが上記範囲内であれば特に限定されないが、硝酸ナトリウムを主な液組成とする電解液が好ましい。
電解液に含ませる砥粒の成分としては、例えば、Al2O3、SiO2等が挙げられる。このような砥粒を電解液中に分散させて用いる。
このため、所望する表面状態が得られやすいという理由から、被研磨材の表面に流す電流量は、3mA/cm2以上が好ましく、4mA/cm2以上がより好ましく、5mA/cm2以上が更に好ましい。
一方、この電流量が多すぎると、被研磨材の表面の鉄イオン濃度が上昇し、効率が低下する場合がある。また、酸化物層が形成されることにより、研磨後に被研磨材を電解液から取り出して乾燥させるまでの間に、表面状態が不十分になる場合がある。
このため、所望する表面状態が得られやすいという理由から、被研磨材の表面に流す電流量は、160mA/cm2以下が好ましく、130mA/cm2以下がより好ましく、100mA/cm2以下が更に好ましい。
まず、Si:3.2質量%、Mn:0.03質量%、Al:0.02質量%、N:0.006質量%、および、Se:0.005質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを準備した。準備した鋼スラブを、1350℃に加熱した後、熱間圧延して、板厚2.0mmの熱延鋼板を得た。
得られた熱延鋼板に、1000℃で60秒の熱延板焼鈍を施してから、酸洗を施し、次いで、1回の冷間圧延を施して、板厚0.23mmの冷延鋼板を得た。
得られた冷延鋼板に、均熱温度830℃、均熱時間2分間とする一次再結晶焼鈍を施した。一次再結晶焼鈍は、全工程で、水素50体積%+窒素50体積%、露点55℃の湿潤雰囲気中で行なった。脱炭も同時に行なった。
一次再結晶焼鈍後の冷延鋼板(鋼板)に、焼鈍分離剤を塗布した。焼鈍分離剤としては、酸化マグネシウム(MgO)100質量部に、2質量部の酸化チタン(TiO2)と、所定量の塩化マグネシウム(MgCl2)とを配合した焼鈍分離剤を用いた。酸化マグネシウム(MgO)100質量部に対する塩化マグネシウム(MgCl2)の量(単位:質量部)を、下記表1に示す。
その後、二次再結晶のために、1150℃で5時間の均熱を行なう最終仕上焼鈍を施した。こうして、被研磨材である二次再結晶後の鋼板を得た。
得られた被研磨材の酸素目付量(研磨前の酸素目付量、単位:g/m2)を上述した方法により測定した。測定結果を下記表1に示す。
例Aでは、得られた被研磨材に対して、スコッチペーパーを用いて、単なる機械研磨を行なった。
一方、例B〜例Gでは、得られた被研磨材に対して、砥粒を含む電解液を用いて、複合電解研磨を行なった。より詳細には、硝酸ナトリウムを含有する電解液中に、Al2O3砥粒を分散させたものを用いた。更に、下記表1には、電解液のpHおよび電流密度(被研磨材の表面に流した電流量、単位:mA/cm2)を記載した。
研磨後における被研磨材について、外観を観察した。例A〜例Gの外観写真を、それぞれ、図3〜図9に示す。外観の状態(「鏡面」など)を下記表1に記載した。
また、研磨後における被研磨材について、表面粗さRa(単位:μm)および酸素目付量(単位:g/m2)を上述した方法により測定した。測定結果を下記表1に示す。
更に、ヒステリシスループから、励磁磁束密度1.7Tでのヒステリシス損(単位:W/kg)を求めた。この結果も下記表1に示す。
まず、複合電解研磨を行なった例B〜例Gを対比する。例B〜例Gは、機械研磨を伴う複合電解研磨を行なっているため、単なる電解研磨と比較して、効率は良好である。
もっとも、電解液のpHが7である例Gにおいては、研磨後の被研磨材は、外観が「再酸化」しており、表面粗さRaが0.5μmであり、酸素目付量が0.08g/m2であった。ヒステリシス損は0.30W/kgであった。すなわち、表面状態および磁気特性が不十分であった。
Claims (4)
- 表面粗さRaが0.30μm以下であり、かつ、酸素目付量が0.05g/m2以下である方向性電磁鋼板を製造する方法であって、
二次再結晶後の鋼板を被研磨材とし、
前記被研磨材に対して、砥粒を含むpH7超の電解液を供給し、電圧を印加することにより電解研磨を行ないつつ、機械研磨を行なう、方向性電磁鋼板の製造方法。 - 前記被研磨材の表面に3mA/cm2以上160mA/cm2以下の電流が流れるように前記電圧を印加する、請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記被研磨材に前記電解研磨および前記機械研磨を行なう前に、あらかじめ、前記被研磨材の酸素目付量を0.5g/m2以下にする、請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 表面粗さRaが0.30μm以下であり、酸素目付量が0.05g/m2以下であり、かつ、励磁磁束密度1.7Tでのヒステリシス損が0.26W/kg以下である方向性電磁鋼板。
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