JP2020163298A - 複合半透膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高い水透過性と高い溶質除去性を有する複合半透膜を提供する。【解決手段】基材と、前記基材上に形成された多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に形成された分離機能層とを備えた複合半透膜であって、 前記分離機能層は架橋ポリアミドを含有し、前記分離機能層において、多孔性支持層側の面および該多孔性支持層とは反対側の面のそれぞれの官能基比率を(アゾ基のモル当量+フェノール性水酸基のモル当量+アミノ基のモル当量) /(アミド基のモル当量)と表した時、(多孔性支持層とは反対側の面の官能基比率)/(多孔性支持層側の面に官能基比率)AがA<1.1を満たすことを特徴とする複合半透膜。【選択図】なし

Description

本発明は、液状混合物の選択的分離に有用な複合半透膜に関する。本発明によって得られる複合半透膜は、例えば海水やかん水の淡水化に好適に用いることができる。
混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には様々なものがあるが、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして膜分離法の利用が拡大している。膜分離法に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがあり、これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などに用いられている。
特に、逆浸透膜およびナノろ過膜にとしては、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応によって得られる架橋ポリアミドからなる分離機能層で支持層を被覆して得られる複合半透膜が、透過性や選択分離性の高い分離膜として広く用いられている。これらの複合半透膜は、使用したときに得られる水質の向上および運転コストの削減のために、高い溶質除去性と透水性を両立させることが重要である。
膜の溶質除去性および透水性を向上させる手段としては、界面重縮合によりポリアミドの分離機能層を形成させた後に、該分離機能層を改質する方法が汎用性の面から有効である。このような改質方法として、例えば特許文献1に、第一級アミノ基を含む分離機能層を有する半透膜を、第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する試薬に1秒以上60分以内接触させる方法が開示されている。しかしながら、さらに高い溶質除去性と透水性の両立が望まれている。
特開2005−177741号公報
本発明は、高い溶質除去性と高い透水性を併せ持つ複合半透膜を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下の(1)〜(3)の構成をとる。
(1)基材と、前記基材上に形成された多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に形成された分離機能層とを備えた複合半透膜であって、
前記分離機能層は架橋ポリアミドを含有し、
前記分離機能層において、多孔性支持層側の面および該多孔性支持層とは反対側の面のそれぞれの官能基比率を(アゾ基のモル当量+フェノール性水酸基のモル当量+アミノ基
のモル当量)/(アミド基のモル当量)と表した時、(多孔性支持層とは反対側の面の官能基比率)/(多孔性支持層側の面に官能基比率)AがA<1.1を満たすことを特徴とする複合半透膜。
(2)基材と、前記基材上に形成された多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に設けられ、架橋ポリアミドを含有する分離機能層とを備えた複合半透膜であって、
分離機能層の形成工程として、
(a)多官能アミンの水溶液と多官能酸ハライドの有機溶媒溶液とを多孔性支持層上で接触させることで、界面重縮合によって前記架橋ポリアミドを含む層を形成する工程と、
(b)該層に、第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する試薬およびSP値7〜15(cal/cm1/2の化合物を接触させる工程と
を有することを特徴とする複合半透膜の製造方法。
(3)該SP値7〜15(cal/cm1/2の化合物が、アルコール、アセテート、エステル、エーテルまたはケトン基を含む、請求項(2)記載の複合半透膜の製造方法。
本発明法によれば、高い水透過性と高い溶質除去性を併せ持つ複合半透膜を得ることができる。
本発明の複合半透膜は、基材と、多孔性支持層と、分離機能層とがこの順に積層されており、分離機能層は架橋全芳香族ポリアミドを含有する複合半透膜である。
1.複合半透膜
(1−1)微多孔性支持膜
本発明において微多孔性支持膜は、実質的にイオン等の分離性能を有さず、実質的に分離性能を有するポリアミド分離機能層に強度を与えるためのものである。微多孔性支持膜の孔のサイズや分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいはポリアミド分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、ポリアミド分離機能層が形成される側の表面で微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような微多孔性支持膜が好ましい。
微多孔性支持膜に使用する材料やその形状は特に限定されないが、例えば、基材に多孔性支持体を形成した膜を例示することができる。上記基材としては、例えば、ポリエステルまたは芳香族ポリアミドから選ばれる少なくとも一種を主成分とする布帛が例示される。
基材に用いられる布帛としては、長繊維不織布や短繊維不織布を好ましく用いることができる。基材上に高分子重合体の溶液を流延した際にそれが過浸透により裏抜けしたり、基材と多孔性支持体が剥離したり、さらには基材の毛羽立ち等により膜の不均一化やピンホール等の欠点が生じたりすることがないような優れた製膜性が要求されることから、長繊維不織布をより好ましく用いることができる。
長繊維不織布としては、熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布などが挙げられる。基材が長繊維不織布からなることにより、短繊維不織布を用いたときに起こる、毛羽立ちによって生じる高分子溶液流延時の不均一化や、膜欠点を抑制することができる。また、複合半透膜を連続製膜する工程においては、基材の製膜方向に張力がかけられることからも、基材としては、寸法安定性に優れる長繊維不織布を用いることが好ましい。
特に、基材の多孔性支持体と反対側に配置される繊維の配向が、製膜方向に対して縦配向であることにより、基材の強度を保ち、膜破れ等を防ぐことができるので好ましい。ここで、縦配向とは、繊維の配向方向が製膜方向と平行であることを言う。逆に、繊維の配向方向が製膜方向と直角である場合は、横配向と言う。
不織布基材の繊維配向度としては、多孔性支持体と反対側における繊維の配向度が0°以上25°以下であることが好ましい。ここで繊維配向度とは、支持膜を構成する不織布基材の繊維の向きを示す指標であり、連続製膜を行う際の製膜方向を0°とし、製膜方向と直角方向、すなわち不織布基材の幅方向を90°としたときの、不織布基材を構成する繊維の平均の角度のことを言う。よって、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
複合半透膜の製造工程やエレメントの製造工程には、加熱工程が含まれるが、加熱により支持膜または複合半透膜が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において、幅方向には張力が付与されていないので、幅方向に収縮しやすい。支持膜または複合半透膜が収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。
不織布基材において多孔性支持体と反対側に配置される繊維と、多孔性支持体側に配置される繊維との配向度差が10°以上90°以下であると、熱による幅方向の変化を抑制することができ好ましい。
基材の通気度は2.0cc/cm/sec以上であることが好ましい。通気度がこの範囲だと、複合半透膜の透過水量が高くなる。これは、支持膜を形成する工程で、基材上に高分子重合体を流延し、凝固浴に浸漬した際に、基材側からの非溶媒置換速度が速くなることで多孔性支持体の内部構造が変化し、その後の分離機能層を形成する工程においてモノマーの保持量や拡散速度に影響を及ぼすためと考えられる。
なお、通気度はJIS L1096(2010)に基づき、フラジール形試験機によって測定できる。例えば、200mm×200mmの大きさに基材を切り出し、サンプルとする。このサンプルをフラジール形試験機に取り付け、傾斜形気圧計が125Paの圧力になるように吸込みファン及び空気孔を調整し、このときの垂直形気圧計の示す圧力と使用した空気孔の種類から基材を通過する空気量、すなわち通気度を算出することができる。フラジール形試験機は、カトーテック株式会社製KES−F8−AP1などが使用できる。
また、基材の厚みは、10μm以上200μm以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは30μm以上120μm以下の範囲内である。
多孔性支持体の素材としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシド、AS(アクリロニトリル‐スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン)樹脂などを単独であるいはブレンドして使用することができる。
中でもポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。中でも、ポリスルホン、酢酸セルロース及びポリ塩化ビニル、またはそれらを混合したものが好ましく使用され、化学的、機械的、熱的に安定性の高いポリスルホンを使用するのが特に好ましい。
また、多孔性支持体の厚みは、10〜200μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは20〜100μmの範囲内である。多孔性支持体の厚みが10μm以上であることで、良好な耐圧性が得られると共に、欠点のない均一な支持膜を得ることができるので、このような多孔性支持体を備える複合半透膜は、良好な塩除去性能を示すことができる。多孔性支持体の厚みが200μm以内であることで、製造時の未反応物質の残存量が増加せず、透過水量が低下することによる耐薬品性の低下を防ぐことができる。
上記基材に上記多孔性支持体を形成した微多孔性支持膜の厚みは、複合半透膜の強度およびそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。本発明の複合半透膜が、十分な機械的強度および充填密度を得るためには、微多孔性支持膜の厚みは30〜300μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは50〜250μmの範囲内である。
微多孔性支持膜の形態は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡及び原子間顕微鏡等により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材から多孔性支持体を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3〜6kVの加速電圧で、高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)で観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。
本発明に使用する微多孔性支持膜は、ミリポア社製“ミリポアフィルターVSWP”(商品名)や、東洋濾紙社製“ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することもできるが、“オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って製造することもできる。
上記基材や多孔性支持体、複合半透膜の厚みは、デジタルシックネスゲージによって測定することができる。また、後述するポリアミド分離機能層の厚みは微多孔性支持膜と比較して非常に薄いので、複合半透膜の厚みを微多孔性支持膜の厚みとみなすこともできる。従って、複合半透膜の厚みをデジタルシックネスゲージで測定し、複合半透膜の厚みから基材の厚みを引くことで、多孔性支持体の厚みを簡易的に算出することができる。デジタルシックネスゲージとしては、尾崎製作所株式会社のPEACOCKなどが使用できる。デジタルシックネスゲージを用いる場合は、20箇所について厚みを測定して平均値を算出する。
なお、基材や多孔性支持体、複合半透膜の厚みを上述した顕微鏡で測定してもよい。1つのサンプルについて任意の5箇所における断面観察の電子顕微鏡写真から厚みを測定し、平均値を算出することで厚みが求められる。なお、本発明における厚みや孔径は平均値を意味するものである。
(1−2)ポリアミド分離機能層
本発明の複合半透膜において、実質的にイオン等の分離性能を有するのは、分離機能層である。分離機能層の組成および厚み等の構成は、複合半透膜の使用目的に合わせて設定される。
本発明における分離機能層は、ポリアミドを主成分とし含有する。分離機能層を構成するポリアミドは、例えば、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との界面重縮合により形成することができる。ここで、多官能性アミンまたは多官能性酸ハロゲン化物の少なくとも一方が3官能以上の化合物を含んでいることが好ましい。
ポリアミド分離機能層の厚みは、十分な分離性能および透過水量を得るために、通常0.01〜1μmの範囲内、好ましくは0.1〜0.5μmの範囲内である。
ここで、多官能性アミンとは、一分子中に少なくとも2個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有し、そのアミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基であるアミンをいい、例えば、2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したフェニレンジアミン、キシリレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミンなどの芳香族多官能アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族アミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4−アミノピペリジン、4−アミノエチルピペラジンなどの脂環式多官能アミン等を挙げることができる。
中でも、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有する芳香族多官能アミンであることが好ましい。このような多官能芳香族アミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン等が好適に用いられる。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさから、m−フェニレンジアミン(以下、m−PDAと記す)を用いることがより好ましい。これらの多官能性アミンは、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。2種以上を同時に用いる場合、上記アミン同士を組み合わせてもよく、上記アミンと一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンを組み合わせてもよい。一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンとして、例えば、ピペラジン、1,3−ビスピペリジルプロパン等を挙げることができる。
多官能性酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物をいう。例えば、3官能酸ハロゲン化物としては、例えば、トリメシン酸クロリド、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリクロリド、1,2,4−シクロブタントリカルボン酸トリクロリドなどを挙げることができ、2官能酸ハロゲン化物としては、例えば、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの芳香族2官能酸ハロゲン化物、アジポイルクロリド、セバコイルクロリドなどの脂肪族2官能酸ハロゲン化物、シクロペンタンジカルボン酸ジクロリド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド、テトラヒドロフランジカルボン酸ジクロリドなどの脂環式2官能酸ハロゲン化物を挙げることができる。
多官能性アミンとの反応性を考慮すると、多官能性酸ハロゲン化物は多官能性酸塩化物であることが好ましく、また、膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能性芳香族酸塩化物であることが好ましい。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさの観点から、トリメシン酸クロリドを用いるとより好ましい。これらの多官能性酸ハロゲン化物は、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。
また、添加物として単官能性酸ハロゲン化物あるいは1つの酸クロリド基が加水分解したトリメシン酸クロリド、あるいは2つの酸クロリド基が加水分解したトリメシン酸クロリドを用いても良い。このような単官能性酸ハロゲン化物としては、例えば、ベンゾイルフルオリド、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、メタノイルフルオリド、メタノイルクロリド、メタノイルブロミド、エタノイルフルオリド、エタノイルクロリド、エタノイルブロミド、プロパノイルフルオリド、プロパノイルクロリド、プロパノイルブロミド、プロペノイルフルオリド、プロペノイルクロリド、プロペノイルブロミド、ブタノイルフルオリド、ブタノイルクロリド、ブタノイルブロミド、ブテノイルフルオリド、ブテノイルクロリド及びブテノイルブロミドなどを挙げることができる。これらの添加物は、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。
本発明において、ポリアミド分離機能層は、多官能アミンと多官能ハロゲン化物との界面重縮合により形成することができるものである。そのため、該分離機能層は、該分離機能層を形成するポリアミドの部分構造または末端官能基として第一級アミノ基を有する。第一級アミノ基を有する該ポリアミド分離機能層に第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する試薬を接触させることにより、ジアゾニウム塩またはその誘導体が生成され、それが水と反応することにより、フェノール性水酸基へと変換される。よって、該ポリアミド分離機能層中にはアミド基、アミノ基、カルボキシ基、アゾ基、フェノール性水酸基を含む。
ポリアミド分離機能層中の官能基量は、例えば、X線光電子分光法(ESCA)を用いて分析することができる。具体的には、「ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス(Journal of Polymer Science)」, Vol.26, 559-572 (1988)および「日本接着学会誌」,Vol.27, No.4 (1991)で例示されているX線光電子分光法(ESCA)を用いることにより求めることができる。
データ処理は中性炭素(CHx)のC1sピーク位置を284.6eVに合わせる。ピーク分割により窒素原子または酸素原子が結合した炭素とカルボニル炭素の比率を求める。アミド基では窒素原子が結合した炭素とカルボニル炭素が1:1の比率であらわれる。
芳香族ポリアミドにおいては、窒素原子または酸素原子に結合した炭素の比率からカルボニル炭素の比率を差し引いた数値が(アゾ基のモル当量+フェノール性水酸基のモル当量+アミノ基のモル当量)の比率となる。この数値とカルボニル炭素の比率の比を「(アゾ基のモル当量+フェノール性水酸基のモル当量+アミノ基のモル当量)/アミド基のモル当量」とする。
前記ESCAの測定サンプルは、乾燥させた複合半透膜から基材を剥離・除去し、分離機能層・多孔性支持層をシリコンウエハ上に、分離機能層または多孔性支持層を表面にして固定し、ジクロロメタンにより多孔性支持層を溶解・除去することで、それぞれ複合半透膜表面に相当する面(多孔性支持層とは反対側の面)および多孔性支持層側の面を測定できる。なお分離機能層を転写する基板は、ポリアミドと相互作用せず、分析に支障をきたさない限り、シリコンウエハに限定されるものではない。
(2)製造方法
以上に説明した本発明の複合半透膜の製造方法の一例を以下に示す。
(2−1)分離機能層の形成
次に、複合半透膜を構成する分離機能層の形成工程の一例として、ポリアミドを主成分とする層(つまりポリアミド分離機能層)の形成を挙げて説明する。ポリアミド分離機能層の形成工程では、前述の多官能アミンを含有する水溶液と、多官能酸ハロゲン化物を含有する水と非混和性の有機溶媒溶液とを用い、支持膜の表面で界面重縮合を行うことにより、ポリアミド骨格を形成することができる。
多官能アミン水溶液における多官能アミンの濃度は0.1質量%以上20質量%以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下の範囲内である。この範囲であると十分な塩除去性能および透水性を得ることができる。
多官能アミン水溶液には、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や有機溶媒、アルカリ性化合物、酸化防止剤などが含まれていてもよい。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン構造、脂肪酸エステル構造又は水酸基を有する化合物が挙げられ、ポリオキシアルキレン構造としては、例えば、−(CHCHO)−、−(CHCH(CH)O)−、−(CHCHCHO)−、−(CHCHCHCHO)−などを挙げることができる。脂肪酸エステル構造としては、長鎖脂肪族基を有する脂肪酸が挙げられる。長鎖脂肪族基としては、直鎖状、分岐状いずれでもよいが、脂肪酸としては、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、およびその塩などが挙げられる。また、油脂由来の脂肪酸エステル、例えば牛脂、パーム油、ヤシ油等も挙げられる。スルホ基を有する界面活性剤としては、1−ヘキサンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸などが挙げられる。水酸基を有する界面活性剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖、ショ糖等が挙げられる。界面活性剤は、微多孔性支持膜表面の濡れ性を向上させ、アミン水溶液と非極性溶媒との間の界面張力を減少させる効果がある。
有機溶媒としては、例えば、鎖状アミド化合物や環状アミド化合物等が挙げられる。鎖状アミド化合物として、例えば、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N,−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミドが挙げられる。環状アミド化合物として、例えば、N−メチルピロリジノン、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム等が挙げられる。有機溶媒は、界面重縮合反応の触媒として働くことがあり、添加することにより界面重縮合反応を効率良く行える場合がある。
アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩及び炭酸水素塩無機化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドやテトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の有機化合物等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)及びテトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。アミン系酸化防止剤としては、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。リン系酸化防止剤としては、トリフェニルフォスファイト、オクタデシルフォスファイト及びトリノニルフェニルフォスファイト等が挙げられる。その他の酸化防止剤としては、例えば、アスコルビン酸又はそのアルカリ金属塩、ジブチルヒドロキシトルエンやブチルヒドロキシアニソール等の立体障害フェノール化合物、クエン酸イソプロピル、dl−α−トコフェロール、ノルジヒドログアイアレチン酸、没食子酸プロピル等が挙げられる。
界面重縮合を支持膜上で行うために、まず、上述の多官能アミン水溶液を支持膜に接触させる。接触は、支持膜面上に均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、多官能アミン水溶液を支持膜にコーティングする方法や支持膜を多官能アミン水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。支持膜と多官能アミン水溶液との接触時間は、5秒以上10分以下の範囲内であることが好ましく、10秒以上3分以下の範囲内であるとさらに好ましい。
多官能アミン水溶液を支持膜に接触させた後は、膜上に液滴が残らないように十分に液切りする。十分に液切りすることで、複合半透膜形成後に液滴残存部分が欠点となって複合半透膜の塩除去性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、例えば、特開平2−78428号公報に記載されているように、多官能アミン水溶液接触後の支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させて水溶液の水分を一部除去することもできる。
次いで、多官能アミン水溶液接触後の支持膜に、多官能酸ハロゲン化物を含む水と非混和性の有機溶媒溶液を接触させ、界面重縮合により架橋ポリアミド分離機能層を形成させる。
有機溶媒溶液中の多官能酸ハロゲン化物濃度は、0.01質量%以上10質量%以下の範囲内であると好ましく、0.02質量%以上2.0質量%以下の範囲内であるとさらに好ましい。多官能酸ハロゲン化物濃度が0.01質量%以上であることで十分な反応速度が得られ、また、10質量%以下であることで副反応の発生を抑制することができる。さらに、この有機溶媒溶液にDMFのようなアシル化触媒を含有させると、界面重縮合が促進され、さらに好ましい。
有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ多官能性酸ハロゲン化物を溶解し、微多孔性支持膜を破壊しないものが好ましく、多官能性アミン化合物および多官能性酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。好ましい例として、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液の多官能性アミン化合物水溶液相への接触の方法は、上記の多官能性アミン水溶液の微多孔性支持膜への被覆方法と同様に行えばよい。特に、多孔性支持層上に溶液を塗布する方法、多孔性支持層を溶液でコーティングする方法が好適である。
本発明の界面重縮合工程においては、支持膜上を架橋ポリアミド薄膜で十分に覆い、かつ、接触させた多官能酸ハロゲン化物を含む水と非混和性の有機溶媒溶液を支持膜上に残存させておくことが肝要である。このため、界面重縮合を実施する時間は、0.1秒以上3分以下が好ましく、0.1秒以上1分以下であるとより好ましい。界面重縮合を実施する時間が0.1秒以上3分以下であることで、支持膜上を架橋ポリアミド薄膜で十分に覆うことができ、かつ多官能酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液を支持膜上に保持することができる。
多官能性アミン水溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液とを接触させた直後の膜面の温度は25〜60℃の範囲内であることが好ましく、30〜50℃の範囲内であるとさらに好ましい。温度が25℃未満では、比表面積が大きくならず、透過流束の低下につながり、温度が60℃より高温では、除去率が低下する傾向があるためである。多官能性アミン水溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液とを接触させた直後の膜面の温度を25〜60℃の範囲内にすることにより、微多孔性支持膜1μm長さあたりの分離機能層の実長を2μm以上5μm以下にすることができ、高い透過流束と塩除去率を得ることができる。
温度付与方法は、微多孔性支持膜を加温してもよく、加温した多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液を接触させてもよい。多官能性アミン水溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液とを接触させた直後の膜面の温度は、放射温度計のような非接触型温度計により測定することができる。
界面重縮合によって支持膜上にポリアミド分離機能層を形成した後は、余剰の溶媒を液切りする。液切りの方法は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法を用いることができる。この場合、垂直方向に把持する時間としては、1分以上5分以下であることが好ましく、1分以上3分以下であるとより好ましい。短すぎると分離機能層が完全に形成せず、長すぎると有機溶媒が過乾燥となってポリアミド分離機能層に欠損部が発生し、膜性能が低下する。
上記方法により得られた複合半透膜は、50〜150℃、好ましくは70〜130℃で、1秒〜10分間、好ましくは1分〜8分間熱水処理する工程などを付加することにより、複合半透膜の除去性能および透水性を向上させることができる。
(2−2)多孔性支持層の形成
本形態の製造方法は、多孔性支持層の形成工程を含んでもよい。基材についてはすでに例示したとおりである。
支持膜の形成工程は、多孔性基材に高分子溶液を塗布する工程、多孔性基材に高分子溶液を含浸させる工程、および前記溶液を含浸した前記多孔性基材を、高分子の良溶媒と比較して前記高分子の溶解度が小さい凝固浴に浸漬させて前記高分子を凝固させ、三次元網目構造を形成させる工程を含んでもよい。また、支持膜の形成工程は、多孔性支持層の成分である高分子を、その高分子の良溶媒に溶解して高分子溶液を調製する工程を、さらに含んでいてもよい。
基材上に高分子溶液を塗布した後、凝固浴に浸漬させるまでの時間は、通常0.1〜10秒間の範囲であることが好ましい。凝固浴に浸漬するまでの時間がこの範囲であれば、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。なお、凝固浴に浸漬するまでの時間の好ましい範囲は、用いる高分子溶液の粘度などによって適宜調整すればよい。
多孔性支持層が第1層および第2層を含む多層構造を備える場合、第1層を形成する高分子溶液Aの組成と第2層を形成する高分子溶液Bとは、互いに組成が異なっていてもよい。ここで「組成が異なる」とは、含有する高分子の種類およびその濃度、添加物の種類およびその濃度、並びに溶媒の種類のうち、少なくとも1つの要素が異なることを意味する。
以上に述べた「固形分濃度」は、「高分子濃度」に置き換えることができる。また、多孔性支持層を形成する高分子がポリスルホンである場合、以上に述べた「固形分濃度」は、「ポリスルホン濃度」に置き換えることができる。
高分子溶液塗布時の高分子溶液の温度は、例えばポリスルホンであれば、通常10〜60℃の範囲内が好ましい。この範囲内であれば、高分子溶液が析出することなく、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。その結果、アンカー効果により支持膜が基材に強固に接合し、本発明の支持膜を得ることができる。なお、高分子溶液の温度範囲は、用いる高分子溶液の粘度などによって適宜調整すればよい。
基材上への高分子溶液の塗布は、種々のコーティング法によって実施できるが、正確な量のコーティング溶液を供給できるダイコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング等の前計量コーティング法が好ましく適用される。さらに、多層構造を有する多孔性支持層の形成においては、第1の層を形成する高分子溶液と第2の層を形成する高分子溶液を同時に塗布する二重スリットダイ法がさらに好ましく用いられる。
多層支持膜の形成においては、基材上に第1層を形成する高分子溶液Aを塗布すると同時に第2層を形成する高分子溶液Bを塗布することが好ましい。高分子溶液Aの塗布後に硬化時間を設けた場合には、高分子溶液Aの相分離によって第1層の表面に密度の高いスキン層が形成され、透過流速を大幅に低下させる場合がある。そのため、高分子溶液Aが相分離により密度の高いスキン層を形成しない程度に同時に、高分子溶液Bを塗布することが好ましく、その後凝固浴に接触し相分離することで多孔性支持層が形成されることが好ましい。例えば、「同時に塗布される」とは、高分子溶液Aが、基材に到達する前に、高分子溶液Bと接触している状態、つまり、高分子溶液Aが基材に塗布されたときには、高分子溶液Bが高分子溶液A上に塗布されている状態である。
なお、高分子溶液Aおよび高分子溶液Bが含有する高分子は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。適宜、製造する支持膜の強度特性、透過特性、表面特性などの諸特性をより広い範囲で調整することができる。
なお、高分子溶液Aおよび高分子溶液Bが含有する溶媒は、高分子の良溶媒であれば同一の溶媒でも、異なる溶媒でも良い。適宜、製造する支持膜の強度特性、高分子溶液の基材への含浸を勘案して、より広い範囲で調製することができる。
良溶媒とは、多孔性支持層を形成する高分子を溶解するものである。良溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP);テトラヒドロフラン;ジメチルスルホキシド;テトラメチル尿素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド;アセトン、メチルエチルケトン等の低級アルキルケトン;リン酸トリメチル、γ−ブチロラクトン等のエステルおよびラクトン;並びにこれらの混合溶媒が挙げられる。
前記高分子の非溶媒としては、例えば水、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、トリクロルエチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、低分子量のポリエチレングリコール等の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。
また、上記高分子溶液は、支持膜の孔径、空孔率、親水性、弾性率などを調節するための添加剤を含有してもよい。孔径および空孔率を調節するための添加剤としては、水;アルコール類;ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等の水溶性高分子またはその塩;塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸リチウム等の無機塩;ホルムアルデヒド、ホルムアミド等が例示されるが、これらに限定されるものではない。親水性や弾性率を調節するための添加剤としては、種々の界面活性剤が挙げられる。
凝固浴としては、通常水が使われるが、高分子を溶解しないものであればよい。また、凝固浴の温度は、−20℃〜100℃が好ましい。さらに好ましくは10〜30℃である。温度が100℃以下であることで、熱運動による凝固浴面の振動の大きさが抑えられ、膜表面を平滑に形成することができる。また、温度が−20℃以上であることで、凝固速度を比較的大きく保つことができ、良好な製膜性が実現される。
次に、このような好ましい条件下で得られた支持膜を、膜中に残存する製膜溶媒を除去するために熱水洗浄する。このときの熱水の温度は50〜100℃が好ましく、さらに好ましくは60〜95℃である。この範囲より高いと、支持膜の収縮度が大きくなり、透水性が低下する。逆に、低いと洗浄効果が小さい。
(2−3)後処理
(a)第一級アミノ基のジアゾニウム塩またはその誘導体への置換
複合半透膜の製造方法は、上記(2−1)の工程の後、複合半透膜を、第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物(I)(以下、ジアゾニウム塩化化合物と略記する)およびSP値7〜15(cal/cm) 1/2の化合物に接触させることでジアゾニウム塩を形成させる工程を含む。
接触させるジアゾニウム塩化化合物(I)としては、亜硝酸およびその塩、ニトロシル化合物などの水溶液が挙げられる。亜硝酸やニトロシル化合物の水溶液は気体を発生して分解しやすいので、例えば、亜硝酸塩と酸性溶液との反応によって亜硝酸を逐次生成するのが好ましい。一般に、亜硝酸塩は水素イオンと反応して亜硝酸(HNO)を生成するが、水溶液のpHが7以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下で効率よく生成する。中でも、取り扱いの簡便性から水溶液中で塩酸または硫酸と反応させた亜硝酸ナトリウムの水溶液が特に好ましい。
前記ジアゾニウム塩化化合物(I)を含む液中の亜硝酸や亜硝酸塩の濃度の合計は、好ましくは0.01〜1重量%の範囲である。この範囲であると十分なジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する効果が得られ、溶液の取扱いも容易である。
該化合物の温度は15℃〜45℃が好ましい。この範囲だと反応に時間がかかり過ぎることもなく、亜硝酸の分解が早過ぎず取り扱いが容易である。
該化合物との接触時間は、ジアゾニウム塩および/またはその誘導体が生成する時間であればよく、高濃度では短時間で処理が可能であるが、低濃度であると長時間必要である。そのため、上記濃度の溶液では10分間以内であることが好ましく、3分間以内であることがより好ましい。また、接触させる方法は特に限定されず、該化合物の溶液を塗布(コーティング)しても、該化合物の溶液に該複合半透膜を浸漬させてもよい。該化合物を溶かす溶媒は該化合物が溶解し、該複合半透膜が侵食されなければ、いかなる溶媒を用いてもかまわない。また、溶液には、第一級アミノ基と試薬との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や酸性化合物、アルカリ性化合物などが含まれていてもよい。
(b)ジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する化合物との接触
次に、ジアゾニウム塩またはその誘導体が生成した複合半透膜を、ジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)と接触させる。ここでジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)とは、塩化物イオン、臭化物イオン、シアン化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化ホウ素酸、次亜リン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸イオン、芳香族アミン、フェノール類、硫化水素、チオシアン酸等が挙げられる。
亜硫酸水素ナトリウム、および亜硫酸イオンと反応させると瞬時に置換反応が起こり、アミノ基がスルホ基に置換される。
また、芳香族アミン、フェノール類と接触させることでジアゾカップリング反応が起こり膜面に芳香族を導入することが可能となる。これらの化合物は単一で用いてもよく、複数混合させて用いてもよく、異なる化合物に複数回接触させてもよい。接触させる化合物として、好ましくは亜硫酸水素ナトリウム、および亜硫酸イオンである。
ジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)と接触させる濃度と時間は、目的の効果を得るために適宜調節することができる。
ジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)と接触させる温度は10〜90℃が好ましい。この温度範囲であると反応が進みやすく、一方ポリマーの収縮による透過水量の低下も起こらない。
(c)SP値7〜15(cal/cm) 1/2の添加
本発明者による鋭意検討の結果、少なくとも上記工程(a)を、SP値7〜15(cal/cm) 1/2の化合物の存在下で行うことで、効率よく末端基変換を行うことが可能となり、透水性および除去性を向上できることが分かった。この化合物は、上記第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物(I)を含む溶液に添加すればよい。
SP値とは、溶解度パラメータのことであり、溶液のモル蒸発熱ΔHとモル体積Vから(ΔH/V)1/2(cal/cm1/2で定義される値である。7(cal/cm1/2以上であり、かつ15(cal/cm1/2以下であるSP値を示す化合物は、ポリアミドと高い親和性を持つ。
よって、このような化合物が末端基変換の反応場にあると、架橋構造を緩和させ、ポリアミド分離機能層の深部まで効率よく改質を行うことが可能となり、透水性および除去性の向上に寄与する。
SP値7〜15(cal/cm1/2の化合物(以下、「添加物」と称することがある)とは、例えば炭化水素類、エステル類、ケトン類、アミド類、アルコール類、エーテル類などが挙げられる。
ポリアミドとの親和性を考慮するとアルコール類、エーテル類が好ましく、中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールジベンゾアート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールビス(p−トルエンスルホン酸)、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルが特に好ましい。
化合物(I)を含有する水溶液における、前記SP値7〜15(cal/cm1/2の化合物の濃度は、10重量%以下の範囲内であると好ましく、5重量%以下であるとさらに好ましい。
また、工程(b)もSP値7〜15(cal/cm 1/2 の化合物の存在下で行うことが好ましい。この場合も、この化合物は、上記ジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)を含む溶液に添加すればよい。使用する化合物の種類、濃度等の条件は、工程(a)で用いる場合と同様である。
なお、本欄(2−3)の処理を施される前後の膜をいずれも「複合半透膜」と称し、本欄(2−3)の処理を施される前後の膜における支持層上の層をいずれも「分離機能層」と称する。
このようなポリアミド分離機能層に関して、本発明者らは鋭意検討を行った結果、多孔性支持層側の面および該多孔性支持層とは反対側の面のそれぞれの官能基比率を(アゾ基のモル当量+フェノール性水酸基のモル当量+アミノ基のモル当量) /(アミド基のモル当量)と表した時、(多孔性支持層とは反対側の面の官能基比率)/(多孔性支持層側の面に官能基比率)AがA<1.1であることによって、複合半透膜の水透過性および溶質除去性を向上できることを見出した。AがA<1.1であるということは、すなわちポリアミド分離機能層の表面のみならず多孔性支持層側のポリアミド機能層裏面にわたって改質できていることを表し、親水性官能基および電子吸引性官能基が分離機能層全体として増大することで水透過性および溶質除去性を高めることができる。
(3)複合分離膜の利用
このように製造される本発明の複合半透膜は、プラスチックネットなどの原水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜やそのエレメント、モジュールは、それらに原水を供給するポンプや、その原水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
流体分離装置の操作圧力は高い方が塩除去率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、複合半透膜の耐久性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は、0.5 MPa以上、10 MPa以下が好ましい。供給水温度は、高くなると塩除去率が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、5℃以上、45℃以下が好ましい。また、供給水pHは、高くなると海水などの高塩濃度の供給水の場合、マグネシウムなどのスケールが発生する恐れがあり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
本発明に係る複合半透膜によって処理される原水としては、例えば、海水、かん水、排水等の50mg/L〜100g/Lの塩(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、塩は総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」あるいは「重量比」で表される。定義によれば、0.45ミクロンのフィルターで濾過した溶液を39.5〜40.5℃の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
実施例および比較例における測定は次のとおり行った。
(ポリアミド分離機能層の官能基比率の比)
ポリアミド分離機能層中の官能基量は、X線光電子分光法(ESCA)を用いて定量を行った。ESCA測定結果から、(アゾ基のモル当量+フェノール性水酸基のモル当量+アミノ基のモル当量)、(アミド基のモル当量)を求め、以下の式で表される官能基比率、そしてそれら官能基比率の比を求めた。 上記官能基比率、そしてそれら官能基比率の比については、異なる部位5点について測定し、平均値として求めた。
官能基比率=(アゾ基のモル当量+フェノール性水酸基のモル当量+アミノ基のモル当量)/(アミド基のモル当量)
官能基比率比=(多孔性支持層とは反対側の面の官能基比率)/(多孔質支持層側の面の官能基比率)
装置:ESCALAB220iXL(英国 VG Scientific社製)
励起X線:アルミニウム K α 1、2線(1486.6eV)
X線出力:10kV 20mV
光電子脱出角度:90°
(塩除去率)
pH6.5に調整した塩化ナトリウム溶液500mg/Lを操作圧力0.5 MPaで複合半透膜に供給し、透過水中の塩濃度を測定した。膜による塩の除去率は次の式から求めた。
塩除去率(%)=100×{1−(透過水中の塩濃度/供給水中の塩濃度)}
(膜透過流束)
供給水(塩化ナトリウム溶液)の膜透過水量を、膜面1平方メートルあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)でもって膜透過流束(m/m/d)を表した。
(参考例1)
ポリエステル不織布(通気度0.5〜1cc/cm/sec)上にポリスルホンの15.7重量%DMF溶液を200μmの厚みで、室温(25℃)でキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって微多孔性支持膜(厚さ210〜215μm)を作製した。
得られた微多孔性支持膜を、純水で調整したm−フェニレンジアミン(m−PDA)の1.8重量%水溶液中に10秒間浸漬した後、膜面が鉛直になるようにゆっくりと引き上げた。エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、膜面が水平となるように支持膜を置き、トリメシン酸クロリド(TMC)0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液を膜表面が完全に濡れるように塗布した。
30秒間静置した後、膜から余分な溶液を除去するために膜面を1分間鉛直に保持して液切りし、送風機を使い25℃の空気を吹き付けて乾燥させた。その後、70℃の純水で5分間洗浄することで、複合半透膜を得た。
(比較例1)
参考例1で得られた複合半透膜を、硫酸によりpH3に調整した4,200mg/Lの亜硝酸ナトリウム水溶液(35℃)と40sec間接触させた。その後、精製水で過剰の試薬を洗浄し、亜硫酸ナトリウム水溶液(1,000mg/L)中に2min間浸漬し、複合半透膜を得た。得られた複合半透膜の膜性能を表1に示す。
(実施例1)
4,200mg/Lの亜硝酸ナトリウム水溶液(35℃)中にジエチレングリコール1重量%を加えたこと以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を得た。
(実施例2)
4,200mg/Lの亜硝酸ナトリウム水溶液(35℃)中にジエチレングリコールジメチルエーテル1重量%を加えたこと以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を得た。
(実施例3)
4,200mg/Lの亜硝酸ナトリウム水溶液(35℃)中にジエチレングリコールジアセタート1重量%を加えたこと以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を得た。
Figure 2020163298
本発明の複合半透膜は、特に、海水やかん水の脱塩に好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. 基材と、前記基材上に形成された多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に形成された分離機能層とを備えた複合半透膜であって、
    前記分離機能層は架橋ポリアミドを含有し、
    前記分離機能層において、多孔性支持層側の面および該多孔性支持層とは反対側の面のそれぞれの官能基比率を(アゾ基のモル当量+フェノール性水酸基のモル当量+アミノ基のモル当量)/(アミド基のモル当量)と表した時、(多孔性支持層とは反対側の面の官能基比率)/(多孔性支持層側の面に官能基比率)AがA<1.1を満たすことを特徴とする複合半透膜。
  2. 基材と、前記基材上に形成された多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に設けられ、架橋ポリアミドを含有する分離機能層とを備えた複合半透膜であって、
    前記分離機能層の形成工程として、
    (a)多官能アミンの水溶液と多官能酸ハライドの有機溶媒溶液とを多孔性支持層上で接触させることで、界面重縮合によって前記架橋ポリアミドを含む層を形成する工程と、
    (b)該層に、第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する試薬およびSP値7〜15(cal/cm1/2の化合物を接触させる工程と
    を有することを特徴とする複合半透膜の製造方法。
  3. 該SP値7〜15(cal/cm1/2の化合物が、アルコール、アセテート、エステル、エーテルまたはケトン基を含む、請求項2記載の複合半透膜の製造方法。
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