JP2020159435A - 滑り軸受構造 - Google Patents

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和香奈 井上
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Abstract

【課題】チタン合金製の軸受部品の耐疲労性の不足を改善し、しかもこれら部品の摺動面における耐摩耗性を向上させて、疲労強度と耐摩耗性のいずれをも改良された滑り軸受構造とすることである。【解決手段】プライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒が含まれるα+β型またはα型のチタン合金製の内輪1の外周に凸型球面の摺動面2を設け、この摺動面2に自己潤滑性を有するライナー3を介して摺接する凹型球面を有する外輪4を組み合わせて構成される球面滑り軸受構造Aなどからなる滑り軸受構造とする。ライナー3は、光硬化性樹脂に、四フッ化エチレン樹脂を添加した潤滑性樹脂組成物の成形体等で形成する。【選択図】図1

Description

この発明は、回転軸を保持する滑り軸受構造に関し、特に軽量化と共に耐久性の求められる航空宇宙などの技術分野で適用できるチタン合金を用いた滑り軸受構造に関する。
一般に、人工衛星、ロケット等に用いられる機器は、輸送中の燃料消費量の削減などを目的に、可及的に軽量化することが求められる。
鋼等の一般的な機械構成部材に代えて、軽量化に有効な機械構成部材としてチタン合金が周知である。
チタン合金は、軽量でありかつ耐食性や重量比強度に優れているが、鋼と比較して硬度が低いので、耐摩耗性が低いという欠点がある。
チタン合金製の機械部品の硬さを高めるための熱処理としては、溶体化処理が挙げられる。溶体化処理においては、加熱工程が行われる。加熱工程においては、機械部品は、機械部品を構成するチタン合金のβ変態開始点よりも低い温度に加熱される。これにより、機械部品を構成するチタン合金中のα相の一部が、β相へと相変態する。
溶体化処理においては、加熱工程の次に冷却工程が行われる。冷却工程においては、加熱工程で生じたβ相が、セカンダリα相へ相変態する。これにより、チタン合金製の機械部品の硬さが改善される。
溶体化処理のみによっては、チタン合金製の機械部品の表面における硬さが十分ではない場合がある。そのため、チタン合金製の機械部品の表面における硬さを、さらに改善するためにチタン合金製の機械部品の表面に酸素を固溶させる表面処理(浸酸処理)を採用する場合がある(非特許文献1)。
また、航空機器等に用いられる滑り軸受構造においては、メンテナンスに所要の頻度や費用を削減するために、耐摩耗性に優れたライナーを採用することが適切である。
耐摩耗性に優れたライナーとしては、光硬化性樹脂に固体潤滑剤の四フッ化エチレン樹脂(PTFE)を添加したLCR(Light-Curing Resin)−PTFEとも称される樹脂製の自己潤滑性のライナーが知られている(非特許文献2)。
また、自己潤滑性のライナーに用いる紫外線硬化性樹脂組成物として、(メタ)アクリレート(すなわち、アクリレートまたはメタアクリレート)化合物と、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートとシラン基を有する(メタ)アクリレートと、ポリチオール化合物と、PTFEを含む樹脂組成物が知られている(特許文献1)。
特開2017−218572号公報
F. Borogioli et. al., Improvement of wear resistance of Ti-6Al-4V alloy by means of thermal oxidation, Materials Letters, 59 (2005), pp.2159-2162 遠山裕隆、他3名「航空機用無潤滑すべり軸受における摩擦摩耗特性」,社団法人日本トライポロジー学会、平成28年10月12日、トライボロジー会議2016 秋新潟 予稿集、D4、第288−289頁
しかし、上記したチタン合金製の滑り軸受構造の部品の表面に、表面処理を行なって酸素を固溶させると、表面の硬さ、すなわち耐摩耗性は改善されるが、表面のチタン合金結晶粒の粗大化が起こり、その結果として疲労強度が低下してしまうという問題点がある。
また、耐摩耗性を改善するには、チタン合金製の摺動面の硬さを向上させることばかりでなく、厚みが充分にあって接着性もよいライナーの耐摩耗性も向上させる必要がある。
そこで、この発明の課題は、滑り軸受の内輪、外輪または回転軸を含む滑り軸受の構造において、これらのチタン合金製の軸受部品の耐疲労性不足という問題を解決し、しかもライナーも含めて軸受部品の摺動面の耐摩耗性を向上させて、疲労強度と耐摩耗性のいずれについても改良された滑り軸受構造とすることである。
上記の課題を解決するために、この発明においては、滑り軸受構造の内輪、外輪または回転軸の表面に、プライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒が含まれるα+β型またはα型のチタン合金製の摺動面を設け、この摺動面に表面からの深さに応じて酸素濃度が連続的に減少する酸素拡散層を設け、前記内輪、外輪または回転軸は、これらそれぞれに対向配置される外輪、内輪またはスリーブと一体に設けられた自己潤滑性を有するライナーを介して前記摺動面に摺接させた滑り軸受構造としたのである。
上記したように構成されるこの発明の滑り軸受構造は、α+β型またはα型のチタン合金製の摺動面に、プライマリα結晶粒と共に、プライマリα結晶粒より微細なセカンダリα結晶粒が含まれており、微細化した結晶粒径によって耐疲労強度が改善され、滑り軸受として充分な摺動面における靭性が確保される。さらに、結晶粒径の微細化に伴って疲労強度が改善されたチタン合金製滑り軸受に対し、酸素拡散層を設けて耐疲労強度の改善を維持すると共に摺動面の硬さを高める。
酸素拡散層は、チタン合金からなる摺動面に、酸素濃度が表面からの深さに応じて連続的に減少するので、密着性よくチタン合金の内部と一体化して剥離し難い状態に設けられ、また結晶粒径の微細化により改善された疲労強度を低下させない。すなわち、酸素拡散層は、チタン合金の表面の強度,硬さ,耐食性,耐摩耗性を向上させ、しかもチタン合金全体の疲労強度を低下させない。
自己潤滑性を有するライナーは、内輪、外輪または回転軸にそれぞれ摺接する外輪、内輪またはスリーブに介在し、特有の潤滑性を発揮して各部品の耐摩耗性をさらに向上させることができる。
特に上記自己潤滑性を有するライナーが、光硬化性樹脂に、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)を添加した潤滑性樹脂組成物からなるライナーであれば、光硬化性樹脂の分子構造の特性として、分子鎖同士が架橋した三次元網目構造を有しているので、熱によって分子構造を変化させず、特に加熱されても軟化せず、ライナー全体に優れた固体潤滑剤のPTFEを安定して均一に保持し、かつ安定した速度で摺動面に供給可能である。
滑り軸受構造の耐摩耗性は、上記所定の潤滑性樹脂組成物からなるライナーによって、温度変化に関わらず向上させることができる。
また、自己潤滑性を有するライナーを構成する光硬化性樹脂が、極性官能基を有するアクリレートが配合されたアクリレート系紫外線硬化性樹脂であることが好ましい。極性官能基によってアクリレート系紫外線硬化性樹脂製のライナーを金属に密着させることができるので、接着剤を用いてライナーを金属製の外輪、内輪またはスリーブと強く接着して一体化できる。
そのような極性官能基を有するアクリレートの例としては、樹脂や繊維などのライナーの素材へ添加の容易な低分子量の液状のものであって、好ましくは多官能アクリレート及び単官能アクリレートのいずれかまたは両方を添加したアクリレートを採用できる。
上記光硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂に代えて、赤外線硬化性のある熱硬化性樹脂を採用することもできる。熱硬化性樹脂も分子鎖同士が架橋した三次元網目構造を有しているので、熱によって分子構造を変化させない。
また、上記自己潤滑性を有するライナーとしては、四フッ化エチレン繊維(PTFE繊維)を含む混紡繊維製の編織布に、熱硬化性樹脂を含浸した素材からなるライナーを採用することもできる。混紡繊維は、PTFE繊維を含み、かつよりPTFE繊維より自己潤滑性の低い繊維とから構成されており、混紡繊維製のライナーは、接着剤を用いて金属製の外輪、内輪またはスリーブと接着させて強く一体化でき、しかも含まれているPTFE繊維によって高温での耐摩耗性にも優れている。
上記混紡繊維に含まれるPTFE繊維以外の繊維の具体例としては、芳香族ポリアミド繊維、ガラス繊維およびポリエステル繊維から選ばれる1種以上の繊維を採用することが、ライナーの高温耐久性に優れているので好ましい。
上記のように構成される滑り軸受構造は、球面滑り軸受構造やスリーブ状滑り軸受構造に適用できる。
そして、上記の滑り軸受構造は、耐摩耗性の向上に加え、チタン合金製部品の耐疲労性不足という問題も解決できるので、航空・宇宙機器用の滑り軸受構造として適用できるものになる。
この発明の滑り軸受構造は、プライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒が含まれるα+β型またはα型のチタン合金製の摺動面を有しているので、微細化した結晶粒径によって疲労強度が改善され、滑り軸受として充分な摺動面における靭性が確保され、また自己潤滑性を有するライナーも備えていることにより、所定の部品表面の耐摩耗性も改善された滑り軸受構造となる利点がある。
第1実施形態の球面滑り軸受構造の断面図 第2実施形態のスリーブ状滑り軸受構造の断面図 第3実施形態のスリーブ状滑り軸受構造の一部切り欠きの断面図
この発明の実施形態を以下に、添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、第1実施形態は、無給油式のチタン合金製の球面滑り軸受構造Aであり、プライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒が含まれるα+β型またはα型のチタン合金製の内輪1の外周に凸型球面の摺動面2を有し、この摺動面2に自己潤滑性を有するライナー3を介して摺接する凹型球面の内周を有する外輪4を組み合わせて構成されている。なお、図中の符号6は、回転軸を示している。
ライナー3の接するチタン合金製の摺動面2には、プライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒が含まれており、摺動面2の表面からの深さに応じて酸素濃度が連続的に減少する酸素拡散層5を設けている。ライナー3は、外輪4に接着や嵌め合い等の周知の手段で保持されて一体化している。
ライナー3は、自己潤滑性を有する樹脂組成物の成形体または自己潤滑性を有する繊維からなる編織布またはそれらの複合素材からなる。ライナー3が、自己潤滑性を有する樹脂組成物の成形体からなる場合には、光硬化性樹脂に四フッ化エチレン樹脂を添加した潤滑性樹脂組成物の成形体からなるライナーであることが好ましい。
光硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂または赤外線硬化性(熱硬化性樹脂と別称される。)が用いられる。これらの樹脂は、三次元網目状の分子構造が熱によって変化しないので、耐熱性の良い低摩擦係数である固体潤滑性に優れたPTFEの特性が安定的に発揮されるように、低温から高温まで広い温度条件においてPTFEを安定して均一に保持し、かつ安定した速度で摺動面に潤滑剤を供給可能である。
紫外線硬化性樹脂としては、アクリレート系樹脂とエポキシ系樹脂などがあるが、樹脂設計の自由度の大きいアクリレート系の紫外線硬化性樹脂を採用することが好ましい。アクリレート系樹脂としては、例えばエポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、シリコーン変性アクリレート樹脂が挙げられるが、エポキシ変性アクリレート樹脂は剛直であるので、ライナー3に割れが生じない程度に適量添加して用いることが好ましい。
また、アクリレート系樹脂としては、航空機に必要な耐熱性として163℃以上を確保できるように、イソシアヌル酸環を有するアクリレートまたはメタアクリレートを採用することが好ましい。
さらに、上記のライナー3を耐摩耗性の向上を図ることが可能な程度に、充分な厚みで形成することが好ましいので、紫外線硬化性樹脂に硬化(重合)反応促進剤を添加することも適切である。
その場合に硬化(重合)反応促進剤としてポリチオール化合物を採用すると、これは紫外線と熱のいずれによっても反応し、(メタ)アクリレートと反応した際に発生する熱で紫外線の到達しない樹脂成形体の内部まで硬化反応を促進することができる。そのため、ライナー3に含有させるPTFE量の可及的な増量を図ることができる。
ライナー3の金属との接着性向上のためには、アクリレート系樹脂に極性官能基を有するアクリレートを添加することが好ましく、そのようなアクリレートとしては、多官能アクリレート及び単官能アクリレートいずれか、またはこれらの官能基の両方を併有するものである。極性官能基を有するアクリレートとしては、例えばリン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートやシラン基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記光硬化性樹脂が、赤外線硬化性の熱硬化性樹脂である場合には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
またライナー3が、PTFE繊維と強化繊維との混紡繊維からなる編織布に、熱硬化性樹脂を含浸した複合素材からなるライナーである場合には、PTFE繊維以外の繊維として、芳香族ポリアミド繊維、ガラス繊維、ポリエステル繊維などを用いることができる。これらを用いた混紡繊維製の編み物や織物からなる編織布は、所要の厚みに重ねて加熱・加圧等により成形し、所定形態のライナーとすることができる。
なお、図示は省略したが、第1実施形態の球面滑り軸受構造Aに代えて、ライナー3を内輪1で保持してもよく、その場合にはチタン合金で形成した外輪4の内周面にプライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒が含まれるように熱処理を行なって摺動面として、その表面からの深さに応じて酸素濃度が連続的に減少する酸素拡散層を設けた別形態の滑り軸受構造とすることもできる。
この発明のチタン合金製滑り軸受構造は、以下のように他の形態の滑り軸受の構造を採用することが可能である。
図2に示されるように、第2実施形態のスリーブ状(円筒形)の滑り軸受構造Bは、外輪4および内輪1が、外輪4と周知の保持手段により一体に設けられた自己潤滑性を有するライナー3を介して摺接している。
滑り軸受構造Bは、チタン合金製の内輪1の外周に摺動面2を有し、この摺動面2にはプライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒が含まれており、この摺動面に表面からの深さに応じて酸素濃度が連続的に減少する酸素拡散層5を所定の熱処理によって形成している。
なお、図示は省略したが、第2実施形態の滑り軸受構造Bに代えて、ライナー3を内輪1で保持し、チタン合金で形成した外輪4の内周面にプライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒が含まれるように熱処理を行ない、これを摺動面として、その表面からの深さに応じて酸素濃度が連続的に減少する酸素拡散層5を設けて別形態の滑り軸受構造を構成することもできる。
図3に示されるように、第3実施形態のスリーブ型の滑り軸受構造Cは、回転軸6の表面に、プライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒が含まれるチタン合金製の摺動面2を設け、この摺動面2に酸素拡散層5を設け、回転軸6に対向配置される円筒形のスリーブ7の内周面にライナー3を一体に設け、ライナー3の内周面を摺動面2に摺接させた滑り軸受構造Cであってもよい。
上記いずれの実施形態においても摺動面を形成するチタン合金は、α+β型またはα型のチタン合金を用いている。
例えば、α+β型チタン合金の例として、Ti-6Al-4VやTi-6Al-2Sn-4Zr-6Mo等を挙げることができ、またα型チタン合金の例として、Ti-5Al-2.5SnやTi-8Al-1Mo-1V等を挙げることができる。
上記のようなチタン合金製滑り軸受の摺動面は、最終的にα+β型またはα型のチタン合金に酸素を浸酸処理工程で固溶させることにより、表面硬さを高めて強化するが、酸素を固溶させる表面のチタン合金は、複数のα結晶粒を含んでいる。
α結晶粒とは、α相で構成されている結晶粒である。α結晶粒には、プライマリα結晶粒及びセカンダリα結晶粒が含まれている。プライマリα結晶粒は、プライマリα相で構成される結晶粒である。セカンダリα結晶粒は、セカンダリα相で構成される結晶粒である。
プライマリα相は、後述する溶体化処理工程、時効処理工程及び浸酸処理工程のいずれにおいてもβ相に変態することなく残存したα相である。
また、セカンダリα相は、一旦β相に変態した後に冷却される際に、マルテンサイト変態又はマッシブ変態により形成される相である。セカンダリα相には、hcp構造のα’相と、斜方晶構造のα’’相とがある。
プライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒とは、形状により識別することができる。プライマリα結晶粒は楕円形状を有しており、セカンダリα結晶粒は針状の形状を有している。
各々のα結晶相は、結晶方位により識別される。より具体的には、あるα結晶相の結晶方位と当該α結晶相に隣接する別のα結晶相の結晶方位とのずれが15°以上である場合には、それらのα結晶相は別々のα結晶粒と見做される。
結晶方位の測定(各々のα結晶粒界の特定)は、例えば、EBSD(Electron Back Scatter Diffraction)法を用いて行われ、摺動面の表面のEBSDの観察画像から、結晶方位差15°以上を結晶粒界とみなし、前記観察画像の全領域に対し、結晶粒の面積が大きい結集粒から降順に面積を足し合わせ、前記観察画像領域中の全結晶粒面積の70%に到達した結晶粒までの結晶粒径の平均値を求めた際の平均粒径が15μm以下の結晶粒子で構成されていることが確認できる。
チタン合金は、表面において、0.8質量パーセント以上の酸素(O)を含有していることが好ましく、より好ましくは、チタン合金は、表面において、1.4質量パーセント以上の酸素を含有している。さらに好ましくは、チタン合金は、表面において、1.8質量パーセント以上の酸素を含有している。なお、チタン合金中における酸素の濃度は、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)により測定される。
上記のように摺動面にプライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒が含まれているチタン合金製滑り軸受の製造工程では、以下のように準備工程、溶体化処理工程、時効処理工程、浸酸処理工程、後処理工程を経て行なわれる。
準備工程においては、α+β型チタン合金またはα型チタン合金のいずれかの摺動面を備えた内輪または外輪について、最終製品の寸法に近い寸法と形状にまで切削加工を行なう。
溶体化処理工程では、前記準備工程にて一定形状まで加工された内輪または外輪等の部品を所定の温度と時間、炉中で加熱保持する。この時、炉内は常圧下で、不活性ガスとしてアルゴン等を導入する。不活性ガスは希ガスであるヘリウムや窒素ガス等を用いても良い。
溶体化処理工程では、保持工程と、冷却工程とを必須工程とする。
保持工程においては、処理対象材が炉内で所定の保持温度(以下に「第1温度」という)において、所定の時間(以下、「第1時間」という)保持される。
溶体化処理工程においては、対象材を構成するチタン合金中のα相の一部が、β相へと変態する。
第1温度は、対象材を構成するチタン合金のβ単相変態点よりも低い。
β単相変態点とは、対象材を構成するチタン合金中のα相の全てがβ相へと変態する温度である。
冷却工程は、保持工程の後に行われる。
冷却工程においては、保持工程を経た対象材の冷却が行われる。これにより、保持工程においてβ相に変態したα相がセカンダリα相となる。
時効処理工程は、溶体化処理工程が行われた後にプライマリα結晶粒より微細なセカンダリα結晶粒を析出させることを目的として行われる。
時効処理工程おいては、対象材が、所定の温度(以下、「第2温度」という)において所定の時間(以下、「第2時間」という)保持された後に、冷却される。時効処理工程により、冷却工程においてα相に変態していないβ相から、微細なセカンダリα結晶粒が析出する。
第2温度は、対象材を構成するチタン合金のβ変態開始点よりも低い。β変態開始点とは、対象材を構成するチタン合金中のα相の少なくとも一部が、β相への変態を開始する温度である。
なお、加熱保持する際に、炉内は、常圧下で不活性ガスとしてアルゴン、希ガスであるヘリウムや窒素ガス等を導入する。
浸酸処理工程においては、溶体化処理工程及び時効処理工程の後、高硬度を有する酸素拡散層を形成するために浸酸処理を行なう。
浸酸処理工程は、対象材を、所定の保持温度(以下、「第3温度」という)において、所定の時間(以下、「第3時間」という)保持することにより行われる。
第3温度は、対象材を構成するチタン合金に含まれる結晶粒の粗大化を抑制する観点からβ単相変態点未満が好ましい。
浸酸処理工程は、二酸化炭素(CO)を含む雰囲気ガス中において行われる。この雰囲気ガスは、不活性ガスをさらに含んでいてもよい。不活性ガスは、例えばアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の希ガスである。不活性ガスは、窒素(N)であってもよい。雰囲気ガスの圧力は、常圧(大気圧)であることが好ましい。
上記一連の処理工程は、内輪や外輪等の処理対象材の全表面に対して行なってもよく、また摺動面のみを浸酸処理する時には、処理対象材の一部にマスキングを施して酸素拡散層を設けてもよい。
浸酸処理の条件をより詳細に説明すれば以下の通りである。
すなわち、常圧下の炉内にアルゴンガスをベースとしたCOガスを導入し,チタン合金製の部材を炉内にて加熱保持後、冷却する。チタン合金をCOガス雰囲気下で加熱すると,チタン合金製部材の表面でCOガスがOとCに解離し、これらの元素が表面から内部に拡散浸透する。なお、炭素は、酸素と比較してチタン中での固溶限が狭いため、対象材の固溶強化に殆ど影響しない。
後処理工程として、前記の浸酸処理工程の後、内輪や外輪等の部品の素材を特定の寸法精度に仕上げるための旋削や研磨等の機械加工を行ない、さらにライナーを成形および接着し、その他の組立加工を行なう。
すなわち、浸酸処理後のチタン合金の表層部には、TiC、TiOまたはTiOからなる化合物層が形成されるが、この化合物層は、硬さは高いものの脆性的であるため、後処理工程の機械加工にて表層を除去する。また、浸酸処理後、特定の寸法精度に仕上げるため、旋削や研磨等の機械加工が実施される。
上記一連の工程によって製造された内輪や外輪等の部品の摺動面表面の酸素濃度は、約0.8質量パーセント以上になり、摺動面表面の硬度は約550Hv以上になる。また、摺動面表面のEBSD観察画像において、結晶方位差15°以上で粒界として規定し、EBSD画像の全領域に対し、結晶粒の面積が大きい結集粒から降順に面積を足し合わせ、EBSD画像領域中の全結晶粒面積の70%に到達した結晶粒までの結晶粒径の平均値を求めた際の平均粒径が15μm以下の結晶粒子で摺動面の表面を構成する。
上記のように製造される実施形態の比強度が高いチタン合金製の滑り軸受は、溶体化及び時効処理において結晶粒の微細化を行うことで疲労強度を確保しながら、その後の浸酸処理において高硬度の酸素拡散層を設けることができ、高硬度を有すると共に疲労強度に優れた滑り軸受になる。
ASTM B348-13 GR.5準拠のα+β型チタン合金であるTi-6Al-4Vからなる球面滑り軸受の内輪1(図1)を作製した。
最終製品である実施例の球面滑り軸受は、後処理工程として、浸酸処理工程の後、内輪素材を特定の寸法精度に仕上げるための旋削や研磨等の機械加工を行ない、さらにライナーを成形および接着し、その他の組立加工を行なった。
ライナーは、アクリレート系の紫外線硬化性樹脂にPTFEおよびリン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートを添加したLCR−PTFEを採用した。
以上のようにして得られた実施例の球面滑り軸受は、溶体化および時効処理により析出したセカンダリα結晶粒は、EBSD画像から微細な針状の二次α相であることが確認され、α結晶粒の平均粒径は、10.1μmと小さく、その後に浸酸処理されて表面に充分な酸素を固溶しているので、摺動面(表面)の硬さは約550Hv及び酸素濃度は約0.8質量パーセントであった。
このように軽量なチタン合金を用いた滑り軸受構造は、低温から高温まで広い耐熱性を備えたライナーを備えており、ライナーの固体潤滑性によって改善された耐摩耗性と高い疲労強度をも備えており、耐久性がよく強度の求められる使用条件においても適用性のある滑り軸受構造であることが分かった。
航空宇宙機器用の滑り軸受などとして、軽量化および耐久性のよい強度が求められる用途に汎用性のある転がり軸受として利用でき、またそのような優れた特性を有する高頻度の起動と停止を繰り返す使用状態でも使用可能な滑り軸受などにも利用できる。
1 内輪
2 摺動面
3 ライナー
4 外輪
5 酸素拡散層
6 回転軸
7 スリーブ
A 球面滑り軸受構造
B スリーブ状滑り軸受構造
C スリーブ型滑り軸受構造

Claims (10)

  1. 滑り軸受構造の内輪、外輪または回転軸の表面に、プライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒が含まれるα+β型またはα型のチタン合金製の摺動面を設け、この摺動面に表面からの深さに応じて酸素濃度が連続的に減少する酸素拡散層を設け、前記内輪、外輪または回転軸は、これらそれぞれに対向配置される外輪、内輪またはスリーブと一体に設けられた自己潤滑性を有するライナーを介して前記摺動面に摺接させてなる滑り軸受構造。
  2. 上記自己潤滑性を有するライナーが、光硬化性樹脂に、四フッ化エチレン樹脂を添加した潤滑性樹脂組成物からなるライナーである請求項1に記載の滑り軸受構造。
  3. 上記光硬化性樹脂が、極性官能基を有するアクリレートが配合されたアクリレート系紫外線硬化性樹脂である請求項2に記載の滑り軸受構造。
  4. 上記極性官能基を有するアクリレートが、多官能アクリレート及び単官能アクリレートのいずれかまたは両方を含有する極性官能基を有するアクリレートである請求項3に記載の滑り軸受構造。
  5. 上記光硬化性樹脂が、赤外線硬化性のある熱硬化性樹脂である請求項2に記載の滑り軸受構造。
  6. 上記自己潤滑性を有するライナーが、四フッ化エチレン繊維を含む混紡繊維製の編織布に、熱硬化性樹脂を含浸した素材からなるライナーである請求項1に記載の滑り軸受構造。
  7. 上記混紡繊維が、芳香族ポリアミド繊維、ガラス繊維およびポリエステル繊維から選ばれる1種以上の繊維を含む混紡繊維である請求項6に記載の滑り軸受構造。
  8. 上記滑り軸受構造が、球面滑り軸受構造である請求項1〜7のいずれかに記載の滑り軸受構造。
  9. 上記滑り軸受構造が、スリーブ状滑り軸受構造である請求項1〜7のいずれかに記載の滑り軸受構造。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の滑り軸受構造からなる航空・宇宙機器用の滑り軸受構造。
JP2019058396A 2019-03-26 2019-03-26 滑り軸受構造 Pending JP2020159435A (ja)

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