JP2020158618A - 精製油脂の製造方法、及び、トコフェロール類の製造方法 - Google Patents

精製油脂の製造方法、及び、トコフェロール類の製造方法 Download PDF

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    • C11B3/00Refining fats or fatty oils
    • C11B3/12Refining fats or fatty oils by distillation

Abstract

【課題】本発明の課題は、グリシドー等の含量を低減でき、かつ、トコフェロール類の含量の低減を抑制できる精製油脂の製造方法、及び、不純物の少ないトコフェロール類の製造方法を提供することである。【解決手段】本発明は、原料油脂を、第1の条件下で薄膜蒸留処理する第1の蒸留工程と、前記第1の蒸留工程後に得られた第1の留出分を第2の条件下で薄膜蒸留処理する第2の蒸留工程と、前記第2の蒸留工程後に得られた第2の残留分を第3の条件下で薄膜蒸留処理する第3の蒸留工程と、前記第1の蒸留工程後に得られた第1の残留分と、前記第3の蒸留工程後に得られた第3の留出分とを混合することで混合油を得る混合工程と、を含み、前記第1〜3の条件は、所定の温度条件及び圧力条件を含む、精製油脂の製造方法を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、精製油脂の製造方法、及び、トコフェロール類の製造方法に関する。
油脂中には生理活性に関係すると考えられる微量成分が存在する。このような微量成分としては、例えば、グリシドール、3−クロロプロパン−1,2−ジオール及びこれらの脂肪酸エステル等が挙げられる。上記微量成分については、栄養学上の問題がある可能性が指摘されているが、長年にわたって食事等から摂取されてきた植物油等の油脂中に存在するレベルであれば、健康に直ちに影響を及ぼすとは考えられず、摂取基準等も定められていない。しかし、より安全性の高い油脂に対するニーズがあるため、油脂中における上記成分を低減する方法が各種提案されている。
グリシドール、3−クロロプロパン−1,2−ジオール及びこれらの脂肪酸エステル等は脱臭工程等によって生成することが知られており、脱臭なたね油等の通常の植物油にわずかに含まれることもある。また、3−クロロプロパン−1,2−ジオール等の原因物質としてジグリセリドが知られており(非特許文献1)、ジグリセリドの多い油脂、特に精製パーム系油脂(パーム油やパーム核油等)に高濃度で存在している傾向が認められる。そのため、例えば、特許文献1においては、薄膜蒸留処理を含む精製パーム系油脂の製造方法において、薄膜蒸留処理の温度条件を調整することで、上記成分の含量を低減することが提案されている。
国際公開第2017/154638号
LWT−Food Science and Technology 42(2009)1751−1754
しかしながら、従来の方法では、グリシドール、3−クロロプロパン−1,2−ジオール及びこれらの脂肪酸エステル等の含量を低減できたとしても、油脂中に含まれる有用成分の含量をも低減させてしまう可能性があった。このような有用成分としてはトコフェロール類が挙げられる。
また、従来の方法によって油脂から除かれる諸成分(グリシドール、3−クロロプロパン−1,2−ジオール及びこれらの脂肪酸エステル等、並びに、トコフェロール類等の有用成分)から、有用成分のみを取り出すことは困難だった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、グリシドール、3−クロロプロパン−1,2−ジオール及びこれらの脂肪酸エステルの含量を低減でき、かつ、トコフェロール類の含量の低減を抑制できる精製油脂の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、不純物の少ないトコフェロール類の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、薄膜蒸留処理を含む精製油脂の製造方法において、複数回の薄膜蒸留処理を行い、かつ、各薄膜蒸留処理の温度条件を調整することで上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) 原料油脂を、第1の条件下で薄膜蒸留処理する第1の蒸留工程と、
前記第1の蒸留工程後に得られた第1の留出分を第2の条件下で薄膜蒸留処理する第2の蒸留工程と、
前記第2の蒸留工程後に得られた第2の残留分を第3の条件下で薄膜蒸留処理する第3の蒸留工程と、
前記第1の蒸留工程後に得られた第1の残留分と、前記第3の蒸留工程後に得られた第3の留出分とを混合することで混合油を得る混合工程と、
を含み、
前記第1の条件は、温度が250℃以上290℃以下であり、かつ、真空度が0.1Pa以下であり、
前記第2の条件及び前記第3の条件は、いずれも、前記第1の条件よりも温度が低く、かつ、真空度が0.1Pa以下であり、
前記第2の条件は、前記第3の条件よりも温度が5℃以上15℃以下低い、
精製油脂の製造方法。
(2) 原料油脂を、第1の条件下で薄膜蒸留処理する第1の蒸留工程と、
前記第1の蒸留工程後に得られた第1の留出分を第3の条件下で薄膜蒸留処理する第3の蒸留工程と、
前記第3の蒸留工程後に得られた第3の留出分を第2の条件下で薄膜蒸留処理する第2の蒸留工程と、
前記第1の蒸留工程後に得られた第1の残留分と、前記第2の蒸留工程後に得られた第2の残留分とを混合することで混合油を得る混合工程と、
を含み、
前記第1の条件は、温度が250℃以上290℃以下であり、かつ、真空度が0.1Pa以下であり、
前記第2の条件及び前記第3の条件は、いずれも、前記第1の条件よりも温度が低く、かつ、真空度が0.1Pa以下であり、
前記第2の条件は、前記第3の条件よりも温度が5℃以上15℃以下低い、
精製油脂の製造方法。
(3) 前記第2の条件は温度が175℃以上185℃以下である、(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4) 前記第3の条件は温度が185℃以上195℃以下である、(1)から(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5) 前記原料油脂が、少なくとも脱臭工程を経た油脂である、(1)から(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6) 前記原料油脂が、パーム系油脂である、(1)から(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7) 前記薄膜蒸留処理は短行程蒸留処理である、(1)から(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8) 原料油脂を、第1の条件下で薄膜蒸留処理する第1の蒸留工程と、
前記第1の蒸留工程後に得られた第1の留出分を第2の条件下で薄膜蒸留処理する第2の蒸留工程と、
前記第2の蒸留工程後に得られた第2の残留分を第3の条件下で薄膜蒸留処理する第3の蒸留工程と、
前記第3の蒸留工程後に得られた第3の留出分を回収する回収工程と、
を含み、
前記第1の条件は、温度が250℃以上290℃以下であり、かつ、真空度が0.1Pa以下であり、
前記第2の条件及び前記第3の条件は、いずれも、前記第1の条件よりも温度が低く、かつ、真空度が0.1Pa以下であり、
前記第2の条件は、前記第3の条件よりも温度が5℃以上15℃以下低い、
トコフェロール類の製造方法。
(9) 原料油脂を、第1の条件下で薄膜蒸留処理する第1の蒸留工程と、
前記第1の蒸留工程後に得られた第1の留出分を第3の条件下で薄膜蒸留処理する第3の蒸留工程と、
前記第3の蒸留工程後に得られた第3の留出分を第2の条件下で薄膜蒸留処理する第2の蒸留工程と、
前記第2の蒸留工程後に得られた第2の残留分を回収する回収工程と、
を含み、
前記第1の条件は、250℃以上290℃以下であり、かつ、真空度が0.1Pa以下であり、
前記第2の条件及び前記第3の条件は、いずれも、前記第1の条件よりも温度が低く、かつ、真空度が0.1Pa以下であり、
前記第2の条件は、前記第3の条件よりも5℃以上15℃以下低い、
トコフェロール類の製造方法。
本発明によれば、グリシドール、3−クロロプロパン−1,2−ジオール及びこれらの脂肪酸エステルの含量を低減でき、かつ、トコフェロール類の含量の低減を抑制できる精製油脂の製造方法、及び、不純物の少ないトコフェロール類の製造方法が提供される。
第1の態様に係る本発明の製造方法の概要を示す図である。 第2の態様に係る本発明の製造方法の概要を示す図である。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<精製油脂の製造方法>
本発明の精製油脂の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)は、複数回の薄膜蒸留処理を含む。本発明における「薄膜蒸留処理」とは、処理対象を薄膜にして減圧下で加熱し、蒸発を行うことをいう。このような処理により、処理対象から、留出分及び残留分を得ることができる。「留出分」とは、処理対象から蒸発分離された成分であり、「残留分」とは、処理対象から留出分が分離された残りの成分である。
本発明者の検討の結果、高温(例えば、250℃以上290℃以下)で原料油脂を薄膜蒸留処理すると、グリシドール、3−クロロプロパン−1,2−ジオール(以下、「3−MCPD」ともいう。)及びこれらの脂肪酸エステルの含量が低減された残留分が得られることが見出され、該残留分が精製油脂として有用であることが見出された。他方で、この精製油脂(残留分)においては、有用成分であるトコフェロール類が留出分として分離されてしまうため、トコフェロール類の含量が顕著に低減していることがわかった。なお、本発明において「トコフェロール類」とは、トコフェロールの異性体(α−トコフェロール,β−トコフェロール,γ−トコフェロール、及びδ−トコフェロール)及びトコトリエノールの異性体(α−トコトリエノール,β−トコトリエノール,γ−トコトリエノール、及びδ−トコトリエノール)の総称を意味する。
そこで、本発明者が鋭意検討した結果、高温で原料油脂を薄膜蒸留処理した後に、得られた留出分をさらに温度条件の異なる薄膜蒸留処理に供し、その結果得られた成分を精製油脂(残留分)と混合すれば、グリシドール等の含量が低減され、かつ、トコフェロール類の含量の低減が抑制された精製油脂が得られることが見出された。
具体的には、本発明者の検討の結果、グリシドール、3−MCPD及びこれらの脂肪酸エステル、並びに、トコフェロール類が、それぞれ異なる温度条件の薄膜蒸留処理によって分離できることが見出された。すなわち、グリシドール、3−MCPD及びこれらの脂肪酸エステル、並びに、トコフェロール類は、高温(後述する第1の温度条件)下の薄膜蒸留処理により油脂から分離できる。グリシドール及びその脂肪酸エステルは、低温(後述する第2の温度条件)下の薄膜蒸留処理により油脂から分離できる。3−MCPD及びその脂肪酸エステルは、中温(後述する第3の温度条件)下の薄膜蒸留処理により油脂から分離できる。本発明の製造方法は、このような関係を利用して、異なる温度条件下で段階的に薄膜蒸留処理を行う。
本発明の製造方法の概要を図1及び2に示す。以下、本発明における薄膜蒸留処理や原料油脂等について詳述する。
(原料油脂)
本発明において「原料油脂」とは、本発明の製造方法に供され、トコフェロール類を含む任意の油脂を意味する。
原料油脂としては、トコフェロール類を含有する以下の油脂;植物油脂、グリセリンと脂肪酸とから合成した油脂及びそれらの分別油、エステル交換油、水素添加油等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて混合油として使用してもよい。
植物油脂としては、例えば、パーム系油脂、大豆油、なたね油、ハイオレイックなたね油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、米油、ゴマ油、エゴマ油、亜麻仁油、落花生油、グレープシード油、牛脂、乳脂、魚油、ヤシ油等が挙げられる。
グリセリンと脂肪酸とから合成した油脂としては、例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等が挙げられる。
分別油としては、パーム油、パーム核油、ヤシ油等を原料とした分別油等が挙げられる。
エステル交換油としては、例えば、パーム系油脂と他の油脂とのエステル交換油、中鎖脂肪酸油(MCT)と植物油脂等とのエステル交換油が挙げられる。
水素添加油としては、動植物油や動植物油の分別油の水素添加油、エステル交換油の水素添加油等が挙げられる。
なお、原料油脂は、本発明の効果が奏されやすいという観点から、ジグリセリドや3−MCPDを比較的多く含み得る油脂が好ましい。具体的には、パーム系油脂、米油、エステル交換油等が挙げられる。
パーム系油脂としては、パーム由来の油脂が挙げられる。具体的なパーム系油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、パーム油の分別油、パーム核油の分別油、パーム油の水素添加油、パーム核油の水素添加油、パーム油の分別油の水素添加油、パーム核油の分別油の水素添加油、これらのエステル交換油等が挙げられる。なお、パーム油の分別油としてはスーパーオレイン、パームオレイン、パームミッドフラクション、パームステアリンが挙げられ、パーム核油の分別油としては、パーム核オレイン、パーム核ステアリンが挙げられる。
パーム系油脂の特性等は、特に限定されないが、不飽和脂肪酸が少なく、トランス脂肪酸が発生しにくく、酸化安定性が高いという観点から、ヨウ素価が65以下であるものが好ましく、58未満であるものがより好ましい。
原料油脂は、特に限定されないが、薄膜蒸留処理以外の精製工程(脱ガム工程、脱酸工程、水洗工程、脱色工程、脱臭工程、分別工程等)を経た油脂であってもよく、未精製の油脂であってもよい。油脂の精製方法としては、特に限定されないが、ケミカル精製(ケミカルリファイニング)、フィジカル精製(フィジカルリファイニング)のいずれであってもよい。ケミカル精製においては、原料である植物を圧搾・抽出して得られた原油を、脱ガム処理、アルカリ脱酸処理、脱色処理、脱ろう処理、脱臭処理することで精製し、精製油脂を得る。フィジカル精製においては、原油を、脱ガム処理、蒸留等によるアルカリを使用しない脱酸処理、脱色処理、脱臭処理することで精製し、精製油脂を得る。なお、脱ガム工程、脱色工程、脱臭工程を経た油脂はRBD(Refined Bleached Deodorized)油と呼ばれる。
グリシドール、3−MCPD及びこれらの脂肪酸エステルを低減できるという本発明の効果が奏されやすいという観点から、原料油脂は、グリシドール、3−MCPD及びこれらの脂肪酸エステル等の含量が多い油脂であることが好ましい。このような油脂としては、脱臭工程(好ましくは、200〜280℃での脱臭工程)を経た油脂が挙げられる。原料油脂は、RBD油であることがより好ましい。
純度の高いトコフェロール類を得るという観点からは、原料油脂がどのような工程を経たものであるかは特に限定されない。
原料油脂はグリセリドを主成分として含み、かつ、トコフェロール類を含む。それ以外の成分として、例えば、植物ステロール、レシチン、抗酸化成分、色素成分等が含まれてもよい。
(第1の蒸留工程)
第1の蒸留工程は、原料油脂を、第1の条件下で薄膜蒸留処理する工程である。第1の蒸留工程の主な目的は、原料油脂からグリシドール、3−MCPD及びこれらの脂肪酸エステル、並びに、トコフェロール類を分離することである。
第1の条件は温度が250℃以上290℃以下である。このような高温で原料油脂を処理することにより、原料油脂から、グリシドール、3−MCPD及びこれらの脂肪酸エステル、並びに、トコフェロール類を分離でき、その結果、第1の残留分、及び、第1の留出分が得られる。第1の残留分は、油脂(トリグリセリド)を主に含み、好ましくは油脂(トリグリセリド)からなる。第1の留出分は、グリシドール、3−MCPD及びこれらの脂肪酸エステル、並びに、トコフェロール類を含む。
第1の条件の温度の下限は、好ましくは265℃、より好ましくは270℃である。第1の条件の温度の上限は、好ましくは285℃、より好ましくは280℃である。
第1の条件の温度範囲は、250℃以上285℃以下、250℃以上280℃以下、265℃以上290℃以下、265℃以上285℃以下、265℃以上280℃以下、270℃以上290℃以下、270℃以上285℃以下、270℃以上280℃以下のいずれかが好ましい。
第1の温度条件が相対的に高いほど、原料油脂からグリシドール、3−MCPD及びこれらの脂肪酸エステルを分離しやすくなる。
以下、本発明において、薄膜蒸留処理の温度条件は、薄膜蒸留機の蒸発面の温度に対応する。つまり、本発明において、「薄膜蒸留処理の温度条件が250℃以上290℃以下である」とは、薄膜蒸留機の蒸発面の温度が250℃以上290℃以下であることを意味する。例えば、薄膜蒸留処理を短行程蒸留装置で行う場合、薄膜蒸留処理の温度条件は、蒸発缶温度に対応する。
第1の条件における真空度は0.1Pa以下である。第1の条件における真空度は、蒸留装置内で十分な平均自由行程が得られ、さらには、高沸点物質等を除去しやすいという観点から、0(ゼロ)Paに近いことが好ましい。第1の条件における真空度は、好ましくは0.05Pa以下、さらに好ましくは0.01Pa以下である。
なお、本発明における「真空度」は、絶対圧基準で表記される。この値は、絶対真空をゼロとして、理想的な真空の状態(絶対真空)にどの程度接近しているかを示す。
第1の蒸留工程後、所定の条件で薄膜蒸留処理する第2の蒸留工程及び第3の蒸留工程を行う。第2の蒸留工程及び第3の蒸留工程の順序はいずれが先でもよい。以下、第1の蒸留工程、第2の蒸留工程、及び第3の蒸留工程の順で行う態様を「第1の態様」、第1の蒸留工程、第3の蒸留工程、及び第2の蒸留工程の順で行う態様を「第2の態様」という。第1の態様の概要を図1に示す。第2の態様の概要を図2に示す。
(第1の態様における第2の蒸留工程)
第1の態様における第2の蒸留工程は、第1の蒸留工程後に得られた第1の留出分を、第2の条件下で薄膜蒸留処理する工程である。第2の蒸留工程の主な目的は、第1の留出分からグリシドール及びその脂肪酸エステルを分離することである。
第1の態様における第2の条件は、第1の条件よりも温度が低く、かつ、第3の条件(後述する)よりも温度が5℃以上15℃以下低い。第2の条件は第3の条件よりも温度が8℃以上12℃以下低いことが好ましい。このような低温で第1の留出分を処理することにより、脂肪酸、グリシドール及びその脂肪酸エステルを留出分として分離でき、その結果、第2の残留分、及び、第2の留出分が得られる。第2の残留分は、トコフェロール類、3−MCPD及びその脂肪酸エステルを主に含む。第2の留出分は、脂肪酸、グリシドール及びその脂肪酸エステルを主に含む。
第1の態様における第2の条件の温度の下限は、好ましくは175℃、より好ましくは178℃である。第2の条件の温度の上限は、好ましくは185℃、より好ましくは184℃、さらに好ましくは183℃である。
第1の態様における第2の条件の温度範囲は、175℃以上185℃以下、175℃以上184℃以下、175℃以上183℃以下、178℃以上185℃以下、178℃以上184℃以下、178℃以上183℃以下のいずれかが好ましい。第2の残留分にトコフェロール類をより確実に含有させるため、第2の条件の温度は、178℃以上183℃以下が特に好ましい。
第1の態様における第2の条件と第3の条件との差の下限は、好ましくは8℃、より好ましくは10℃である。該差の上限は、好ましくは14℃、より好ましくは12℃である。
第1の態様における第2の条件の真空度は、0.1Pa以下である。第2の条件における真空度は、蒸留装置内で十分な平均自由行程が得られ、さらには、高沸点物質等を除去しやすいという観点から、0(ゼロ)Paに近いことが好ましい。第2の条件における真空度は、好ましくは0.05Pa以下、さらに好ましくは0.01Pa以下である。
(第1の態様における第3の蒸留工程)
第1の態様における第3の蒸留工程は、第2の蒸留工程後に得られた第2の残留分を、第3の温度条件下で薄膜蒸留処理する工程である。第3の蒸留工程の主な目的は、第2の残留分から3−MCPD及びその脂肪酸エステルを分離することである。
第1の態様における第3の条件は、第1の条件よりも温度が低く、かつ、第2の条件よりも温度が5℃以上15℃以下高い。第3の条件は第2の条件よりも温度が8℃以上12℃以下高いことが好ましい。このような中程度の温度で第2の残留分を処理することにより3−MCPD及びその脂肪酸エステルを残留分として分離でき、その結果、第3の残留分、及び、第3の留出分が得られる。第3の残留分は、3−MCPD及びその脂肪酸エステルを主に含む。第3の留出分は、トコフェロール類を主に含む。
第1の態様における第3の条件の温度の下限は、好ましくは185℃、より好ましくは186℃、さらに好ましくは188℃である。第3の条件の温度の上限は、好ましくは195℃、より好ましくは193℃である。
第1の態様における第3の条件の温度範囲は、185℃以上195℃以下、185℃以上193℃以下、184℃以上195℃以下、184℃以上193℃以下、188℃以上195℃以下、188℃以上193℃以下のいずれかが好ましい。第3の残留分にトコフェロール類をより確実に含有させるため、第3の条件の温度は、188℃以上193℃以下が特に好ましい。
第1の態様における第3の条件の真空度は、0.1Pa以下である。第3の条件における真空度は、蒸留装置内で十分な平均自由行程が得られ、さらには、高沸点物質等を除去しやすいという観点から、0(ゼロ)Paに近いことが好ましい。第3の条件における真空度は、好ましくは0.05Pa以下、さらに好ましくは0.01Pa以下である。
(第2の態様における第3の蒸留工程)
第2の態様における第3の蒸留工程は、第1の蒸留工程後に得られた第1の留出分を第3の条件下で薄膜蒸留処理する工程である。第3の蒸留工程の主な目的は、第1の留出分から3−MCPD及びその脂肪酸エステルを分離することである。
第2の態様における第3の条件は、第1の条件よりも温度が低く、かつ、第2の条件よりも温度が5℃以上15℃以下高い。第3の条件は第2の条件よりも温度が8℃以上12℃以下高いことが好ましい。このような中程度の温度で第1の留出分を処理することにより3−MCPD及びその脂肪酸エステルを残留分として分離でき、その結果、第3の残留分、及び、第3の留出分が得られる。第3の残留分は、3−MCPD及びその脂肪酸エステルを主に含む。第3の留出分は、脂肪酸、グリシドール及びその脂肪酸エステル、並びに、トコフェロール類を主に含む。
第2の態様における第3の条件の温度の下限は、好ましくは185℃、より好ましくは186℃、さらに好ましくは188℃である。第3の条件の温度の上限は、好ましくは195℃、より好ましくは193℃である。
第2の態様における第3の条件の温度範囲は、185℃以上195℃以下、185℃以上193℃以下、184℃以上195℃以下、184℃以上193℃以下、188℃以上195℃以下、188℃以上193℃以下のいずれかが好ましい。第3の残留分にトコフェロール類をより確実に含有させるため、第3の条件の温度は、188℃以上193℃以下が特に好ましい。
第2の態様における第3の条件の真空度は、0.1Pa以下である。第3の条件における真空度は、蒸留装置内で十分な平均自由行程が得られ、さらには、高沸点物質等を除去しやすいという観点から、0(ゼロ)Paに近いことが好ましい。第3の条件における真空度は、好ましくは0.05Pa以下、さらに好ましくは0.01Pa以下である。
(第2の態様における第2の蒸留工程)
第2の態様における第2の蒸留工程は、第3の蒸留工程後に得られた第3の留出分を第2の条件下で薄膜蒸留処理する工程である。第2の蒸留工程の主な目的は、第3の留出分からグリシドール及びその脂肪酸エステルを分離することである。
第2の態様における第2の条件は、第1の条件よりも温度が低く、かつ、第3の条件よりも温度が5℃以上15℃以下低い。第2の条件は第3の条件よりも温度が8℃以上12℃以下低いことが好ましい。このような低温で第3の留出分を処理することによりグリシドール及びその脂肪酸エステルを留出分として分離でき、その結果、第2の残留分、及び、第2の留出分が得られる。第2の残留分は、トコフェロール類を主に含む。第2の留出分は、脂肪酸、グリシドール及びその脂肪酸エステルを主に含む。
第2の態様における第2の条件の温度の下限は、好ましくは175℃、より好ましくは178℃である。第2の条件の温度の上限は、好ましくは185℃、より好ましくは184℃、さらに好ましくは183℃である。
第2の態様における第2の条件の温度範囲は、175℃以上185℃以下、175℃以上184℃以下、175℃以上183℃以下、178℃以上185℃以下、178℃以上184℃以下、178℃以上183℃以下のいずれかが好ましい。第2の残留分にトコフェロール類をより確実に含有させるため、第2の条件の温度は、178℃以上183℃以下が特に好ましい。
第2の態様における第2の温度条件と第3の温度条件との差の下限は、好ましくは8℃、より好ましくは10℃である。該差の上限は、好ましくは14℃、より好ましくは12℃である。
第2の態様における第2の条件の真空度は、0.1Pa以下である。第2の条件における真空度は、蒸留装置内で十分な平均自由行程が得られ、さらには、高沸点物質等を除去しやすいという観点から、0(ゼロ)Paに近いことが好ましい。第2の条件における真空度は、好ましくは0.05Pa以下、さらに好ましくは0.01Pa以下である。
(蒸留工程におけるその他の条件)
各蒸留工程は、第1の態様及び第2の態様のいずれにおいても、上記の要件を満たせば、その他の条件は特に限定されない。各蒸留工程に共通する事項として、以下に、本発明において採用し得るその他の条件を例示する。
各蒸留工程の間には、他の精製工程(脱色等)が含まれていてもよいが、含まれないこと(つまり、各蒸留工程を連続的に行うこと)が好ましい。
薄膜蒸留処理の処理時間は、薄膜蒸留機の蒸発面に処理対象が存在する時間を意味し、特に限定されないが、十分な蒸留を行うという観点から、好ましくは1秒以上、より好ましくは3秒以上としてもよい。また、処理対象への熱影響を抑制するという観点から、薄膜蒸留処理の処理時間は、好ましくは5分以下、より好ましくは3分以下、さらに好ましくは1分以下、最も好ましくは30秒以下としてもよい。
薄膜蒸留の種類としては、高真空(0.1Pa以下)で行われ、凝集器が蒸発分子の平均自由行程よりも短い距離内に配置される分子蒸留と、凝集器が蒸発分子の平均自由行程と等距離前後に配置される短行程蒸留処理とがあるが、蒸留の効率が高いという観点から、本発明においては短行程蒸留処理を行うことが好ましい。
薄膜蒸留処理において使用される薄膜蒸留機は、特に限定されないが、流下液膜式、遠心式、上昇液膜式、ワイプトフィルム式等の蒸発機を使用できる。処理対象の薄膜蒸留機内滞留時間が短く、処理対象への熱影響を少なくできる等の観点から、ワイプトフィルム式の蒸発機が好ましい。薄膜蒸留機の蒸発面の材質は特に限定されず、ガラス製やステンレス製のものを使用できる。
(混合工程)
第1の態様において、混合工程は、第1の残留分と、第3の留出分とを混合することで混合油を得る工程である。第2の態様において、混合工程は、第1の残留分と、第2の残留分とを混合することで混合油を得る工程である。本発明において、このような混合油を「精製油脂」という。
第1の態様において、第1の残留分は油脂(トリグリセリド)を主に含み、第3の留出分はトコフェロール類を主に含む。第2の態様において、第1の残留分は油脂(トリグリセリド)を主に含み、第2の残留分はトコフェロール類を主に含む。したがって、これらをそれぞれ混合することで、グリシドール、3−クロロプロパン−1,2−ジオール及びこれらの脂肪酸エステルの含量が低減され、かつ、トコフェロール類の含量の低減が抑制された精製油脂が得られる。
精製油脂はそのまま流通させてもよいし、さらなる精製工程に供してもよい。例えば、精製油脂は、例えば、脱臭工程(好ましくは、200℃以下の比較的低温の脱臭温度で行われる工程)に供してもよい。
精製油脂は、適宜公知の成分(抗酸化剤、色素、乳化剤等)を配合してもよい。
<精製油脂中のグリシドール、3−クロロプロパン−1,2−ジオール、及びこれらの脂肪酸エステルの含量の特定>
本発明の製造方法によれば、グリシドール、3−クロロプロパン−1,2−ジオール、及びこれらの脂肪酸エステルの含量が低減された精製油脂を得ることができる。
さらに、本発明の製造方法によれば、精製油脂の酸価、過酸化物価も低下させ得る。したがって、本発明の製造方法によれば、精製度の高い油脂が提供され得る。
油脂中のグリシドール、3−クロロプロパン−1,2−ジオール、及びこれらの脂肪酸エステルの含量、酸価、過酸化物価は実施例に記載された方法で特定する。
<精製油脂中のトコフェロール類の含量の特定>
本発明の製造方法によれば、トコフェロール類の含量の低減が抑制された精製油脂を得ることができる。
油脂中のトコフェロール類の含量は実施例に記載された方法で特定する。
<トコフェロール類の製造方法>
上記のとおり、第1の態様において、第3の蒸留工程後に得られた第3の留出分はトコフェロール類を主に含む。第2の態様において、第2の蒸留工程後に得られた第2の残留分はトコフェロール類を主に含む。したがって、本発明によれば、第1の態様における第3の留出分、又は、第2の態様における第2の残留分のみを回収することで、純度の高いトコフェロール類を得ることができる。
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<精製油脂の作製>
原料油脂としてパーム系油脂(ヨウ素価=52、以下「原料パーム系油脂」ともいう。)を用いて、以下の方法で精製パーム系油脂を作製した。なお、原料パーム系油脂は、RBDパーム油を脱色処理(脱色条件;対油0.65%で白土添加)、次いで脱臭処理(脱臭条件;245℃、真空度5〜6Torr)して得られたものである。なお、本例は、第1の態様の1例である。
(第1の蒸留工程)
原料パーム系油脂を、短行程蒸留装置KDL5型(UIC GmbH社製、蒸発面480cm、凝集面650cm、最大流量1L/hr)の蒸発面へ導入し、表1に示す条件で薄膜蒸留処理(本例においては、短行程蒸留処理)を行った。なお、短行程蒸留装置の蒸発面における原料パーム系油脂の滞留時間(つまり、薄膜蒸留処理の処理時間)は5秒以上30秒以下の範囲に設定した。
以上の条件で短行程蒸留処理した後の残留分(第1の残留分)及び留出分(第1の留出分)を採取した。なお、留出分率(採取した残留分及び留出分の総量のうち、留出分の割合)は11.8%だった。
(第2の蒸留工程)
第1の蒸留工程において得られた第1の留出分を、短行程蒸留装置KDL5型(UIC GmbH社製、蒸発面480cm、凝集面650cm、最大流量1L/hr)の蒸発面へ導入し、表1に示す条件で薄膜蒸留処理(本例においては、短行程蒸留処理)を行った。なお、短行程蒸留装置の蒸発面における原料パーム系油脂の滞留時間(つまり、薄膜蒸留処理の処理時間)は5秒以上30秒以下の範囲に設定した。
以上の条件で短行程蒸留処理した後の残留分(第2の残留分)及び留出分(第2の留出分)を採取した。なお、留出分率は0.24%だった。
(第3の蒸留工程)
第2の蒸留工程において得られた第2の残留分を、短行程蒸留装置KDL5型(UIC GmbH社製、蒸発面480cm、凝集面650cm、最大流量1L/hr)の蒸発面へ導入し、表1に示す条件で薄膜蒸留処理(本例においては、短行程蒸留処理)を行った。なお、短行程蒸留装置の蒸発面における原料パーム系油脂の滞留時間(つまり、薄膜蒸留処理の処理時間)は5秒以上30秒以下の範囲に設定した。
以上の条件で短行程蒸留処理した後の残留分(第3の残留分)及び留出分(第3の留出分)を採取した。
Figure 2020158618
(混合油の作製)
第1の残留分4000g、及び、第3の留出分8gを混合し、混合油(精製パーム系油脂に相当する。)を得た。該混合油を220℃、80分脱臭処理し、脱臭済み混合油(この油脂も精製パーム系油脂に相当する。)を得た。
<組成の検討>
各試料(短行程蒸留処理前の原料パーム系油脂、各蒸留工程後に得られた残留分及び留出分、並びに、混合油)について、下記のように組成を検討した。その結果を表2に示す。
(総トコフェロールの定量)
日本油化学協会編「基準油脂分析試験法 2.4.10−2003 トコフェロール(蛍光検出器−高速液体クロマトグラフ法)」に準拠して、各試料中の総トコフェロール(トコフェロールの異性体の総量)の含有量を測定した。
(総トコトリエノールの定量)
日本油化学協会編「基準油脂分析試験法 2.4.10−2003 トコフェロール(蛍光検出器−高速液体クロマトグラフ法)」に準拠して、各試料中の総トコトリエノール(トコトリエノールの異性体の総量)の含有量を測定した。
(ジグリセリドの定量)
AOCS 「Official Method Cd 11b−91 Determination of Mono− and Diglycerides by Capillary Gas Chromatography」に基づき、各試料中のジグリセリドの含有量を測定した。
(True MCPDの定量)
各精製油脂中の3−MCPD、及び3−MCPDの脂肪酸エステルを3−MCPDとして換算した総量(該総量を「True MCPD」という。)の定量を、ドイツ公定法(DGF Standard Methods C−III 18(09))の変法に準拠して行った。
具体的には、各精製油脂100mgに、50μLの内部標準物質(3−MCPD−d5 20μg/mL溶液)を加えた後、1mLのナトリウムメトキシド溶液(0.5mol/L メタノール)を加え、室温にて反応させ、エステルのけん化分解を行った。次いで、これに酢酸を微量に含んだ3mLの臭化ナトリウム水溶液(50%)と3mLのヘキサンとを加えて混合した後、ヘキサンを除去した。その後、500μLのフェニルホウ酸水溶液(12.5%)により誘導体化し、2mLのヘキサンにて抽出し、ガスクロマトグラフ質量分析装置による測定を行った。
上記ガスクロマトグラフ質量分析装置の測定にて得たクロマトグラムを用い、内部標準である3−MCPD−d5と、3−MCPDのイオン強度を比較し、グリセリド組成中の3−MCPD、及び3−MCPDの脂肪酸エステルの総量を遊離3−MCPD換算にて算出した。
(グリシドールの定量)
まず、下記の方法でMCPD−FSの定量を行った。
[MCPD−FSの定量]
各精製油脂中の3−MCPD、グリシドール及びこれらの脂肪酸エステルを3−MCPDとして換算した総量(該総量を「MCPD−FS」という。)の定量を、ドイツ公定法(DGF Standard Methods C−III 18(09))に準拠して行った。
具体的には、各精製油脂100mgに、50μLの内部標準物質(3−MCPD−d5 20μg/mL溶液)を加えた後、1mLのナトリウムメトキシド溶液(0.5mol/L メタノール)を加え、室温にて反応させ、エステルのけん化分解を行った。次いで、これに酢酸を微量に含んだ3mLの食塩水(20%)と3mLのヘキサンとを加えて混合した後、ヘキサンを除去した。その後、250μLのフェニルホウ酸水溶液(25%)により誘導体化し、2mLのヘキサンにて抽出し、ガスクロマトグラフ質量分析装置による測定を行った。
上記ガスクロマトグラフ質量分析装置の測定にて得られたクロマトグラムを用い、内部標準である3−MCPD−d5と、3−MCPDのイオン強度を比較し、油脂中の3−MCPD、グリシドール及びこれらの脂肪酸エステルの総量を遊離3−MCPD換算にて算出した。
[グリシドール量の算出]
上記の方法で特定したMCPD−FS及びTrue MCPDの値に基づき、各精製油脂中のグリシドール量(グリシドール及びその脂肪酸エステルをグリシドールとして換算した総量)を、下記式に基づき算出した。
グリシドール量=(MCPD−FS−True MCPD)×0.67
なお、上記式中、「0.67」とは、グリシドールの分子量(74.1)を3−MCPDの分子量(110.54)で割った値である。
Figure 2020158618
表2に示されるとおり、混合油、及び、脱臭済み混合油(いずれも精製パーム系油脂に相当する。)は、原料パーム系油脂と比較して、グリシドール、3−クロロプロパン−1,2−ジオール及びこれらの脂肪酸エステルの含量が顕著に低いにもかかわらず、トコフェロール類も十分に含まれていた。
<物性の検討>
各試料(短行程蒸留処理前の原料パーム系油脂、第1の残留分、及び、混合油)について、下記のように物性を検討した。その結果を表3に示す。
(酸価)
日本油化学会制定「基準油脂分析試験法 2.3.1−2013 酸価」に基づき、各試料の酸価を測定した。
(過酸化物価(POV))
日本油化学会制定「基準油脂分析試験法 2.5.2.1−2013 過酸化物価」に基づき、各試料の過酸化物価を測定した。
(CDM値)
日本油化学会制定「基準油脂分析試験法 2.5.1.2−2013 CDM試験」に基づき測定した。なお、恒温槽の温度は120℃で行った。
(60℃保存試験)
各試料500gを遮光密閉容器に入れ、2週間、60℃(暗所)で保管した。保管後の、風味、酸価、過酸化物価、色度を測定した。酸価及び過酸化物価の測定方法は上記のとおりである。
[風味評価]
RBDパーム油の風味を標準とし、以下の評価点で評価を行った。
3 :RBDパーム油と同等の風味である。
2+:RBDパーム油より、やや劣化が感じられる。
2 :RBDパーム油より、劣化が感じられる。
1 :劣化が酷く、食油に適さない。
[色度]
日本油化学会編「基準油脂分析試験法 2.2.1.1−2013 色(ロビボンド法)」に基づき測定した。なお、ガラスセルの液層の長さは133.4mmであった。
Figure 2020158618
表3に示されるとおり、混合油、及び、脱臭済み混合油(いずれも精製油脂(精製パーム油脂)に相当する。)は、原料油脂(原料パーム系油脂)と同等の酸化安定性を示した。

Claims (9)

  1. 原料油脂を、第1の条件下で薄膜蒸留処理する第1の蒸留工程と、
    前記第1の蒸留工程後に得られた第1の留出分を第2の条件下で薄膜蒸留処理する第2の蒸留工程と、
    前記第2の蒸留工程後に得られた第2の残留分を第3の条件下で薄膜蒸留処理する第3の蒸留工程と、
    前記第1の蒸留工程後に得られた第1の残留分と、前記第3の蒸留工程後に得られた第3の留出分とを混合することで混合油を得る混合工程と、
    を含み、
    前記第1の条件は、温度が250℃以上290℃以下であり、かつ、真空度が0.1Pa以下であり、
    前記第2の条件及び前記第3の条件は、いずれも、前記第1の条件よりも温度が低く、かつ、真空度が0.1Pa以下であり、
    前記第2の条件は、前記第3の条件よりも温度が5℃以上15℃以下低い、
    精製油脂の製造方法。
  2. 原料油脂を、第1の条件下で薄膜蒸留処理する第1の蒸留工程と、
    前記第1の蒸留工程後に得られた第1の留出分を第3の条件下で薄膜蒸留処理する第3の蒸留工程と、
    前記第3の蒸留工程後に得られた第3の留出分を第2の条件下で薄膜蒸留処理する第2の蒸留工程と、
    前記第1の蒸留工程後に得られた第1の残留分と、前記第2の蒸留工程後に得られた第2の残留分とを混合することで混合油を得る混合工程と、
    を含み、
    前記第1の条件は、温度が250℃以上290℃以下であり、かつ、真空度が0.1Pa以下であり、
    前記第2の条件及び前記第3の条件は、いずれも、前記第1の条件よりも温度が低く、かつ、真空度が0.1Pa以下であり、
    前記第2の条件は、前記第3の条件よりも温度が5℃以上15℃以下低い、
    精製油脂の製造方法。
  3. 前記第2の条件は温度が175℃以上185℃以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記第3の条件は温度が185℃以上195℃以下である、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記原料油脂が、少なくとも脱臭工程を経た油脂である、請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記原料油脂が、パーム系油脂である、請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 前記薄膜蒸留処理は短行程蒸留処理である、請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 原料油脂を、第1の条件下で薄膜蒸留処理する第1の蒸留工程と、
    前記第1の蒸留工程後に得られた第1の留出分を第2の条件下で薄膜蒸留処理する第2の蒸留工程と、
    前記第2の蒸留工程後に得られた第2の残留分を第3の条件下で薄膜蒸留処理する第3の蒸留工程と、
    前記第3の蒸留工程後に得られた第3の留出分を回収する回収工程と、
    を含み、
    前記第1の条件は、温度が250℃以上290℃以下であり、かつ、真空度が0.1Pa以下であり、
    前記第2の条件及び前記第3の条件は、いずれも、前記第1の条件よりも温度が低く、かつ、真空度が0.1Pa以下であり、
    前記第2の条件は、前記第3の条件よりも温度が5℃以上15℃以下低い、
    トコフェロール類の製造方法。
  9. 原料油脂を、第1の条件下で薄膜蒸留処理する第1の蒸留工程と、
    前記第1の蒸留工程後に得られた第1の留出分を第3の条件下で薄膜蒸留処理する第3の蒸留工程と、
    前記第3の蒸留工程後に得られた第3の留出分を第2の条件下で薄膜蒸留処理する第2の蒸留工程と、
    前記第2の蒸留工程後に得られた第2の残留分を回収する回収工程と、
    を含み、
    前記第1の条件は、250℃以上290℃以下であり、かつ、真空度が0.1Pa以下であり、
    前記第2の条件及び前記第3の条件は、いずれも、前記第1の条件よりも温度が低く、かつ、真空度が0.1Pa以下であり、
    前記第2の条件は、前記第3の条件よりも5℃以上15℃以下低い、
    トコフェロール類の製造方法。
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