JP2020158450A - 2−アミノ−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法 - Google Patents

2−アミノ−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡便に、かつ温和な条件で2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンを製造する方法を提供する【解決手段】ニトリル化合物と塩基とを含む混合物に、グアニジン又はその塩を加えて反応させ、2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンを製造する。また、ニトリル化合物と塩基と溶媒とを含む混合物(又は混合液)に、グアニジン又はその塩と溶媒とを含む混合物(又は混合液)を添加して反応させてもよい。前記塩基は、アルカリ金属水素化物、例えば、水素化ナトリウムであってもよい。また、反応終了後、反応混合物に貧溶媒を加えて析出物を析出させる工程、及び析出した析出物を分離する工程を含んでいてもよい。【選択図】なし

Description

本発明は、ニトリル化合物とグアニジン又はその塩とを反応させて、2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジン化合物を製造する方法に関する。
1,3,5−トリアジン骨格を有する化合物(1,3,5−トリアジン類、s−トリアジン類)は、国際公開第2013/047411号(特許文献1)や国際公開第2013/133367号(特許文献2)に記載されているように、医薬品や紫外線吸収剤などの様々な場面で使用されている。1,3,5−トリアジン類の中でも、2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンは、「有機合成化学協会誌,25(11),1967,1048−1051,「2−アミノ−4,6−ジ置換−s−トリアジン類の合成」」(非特許文献1)に記載されているように、合成中間体として興味がある化合物として知られている。この非特許文献1には、従来の合成法、例えば、J.Org.Chem.1963,28(7),1812−1816,「Preparation and Reactions of N−Cyanoamidines」(非特許文献2)に記載の方法、すなわち、N−シアノアミジンとアミジン塩酸塩とをモル比1:1で用い、175℃で溶融させて反応させる方法では、原料の製造が困難であり、2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンの収率及び純度が低いことが記載されている。そこで、非特許文献1では、酸クロリドとイミドイルグアニジン塩酸塩とを、カセイソーダ水溶液を塩基として氷冷下で反応させる新規合成法により、2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンを高収率で合成したこと;及び反応後に溶媒を留去すると、2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンの結晶がほぼ完全に析出したことが記載されている。
また、2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンの合成方法としては、ニトリル化合物とグアニジン炭酸塩との反応が報告されており、例えば、独国特許出願公開第19735800号(特許文献3)には、ニトリル化合物1当量と、グアニジン炭酸塩0.25当量とを、水素化ナトリウム1当量の存在下、室温で撹拌後、80℃に昇温して反応させる方法が記載されている。
国際公開第2013/047411号 国際公開第2013/133367号 独国特許出願公開第19735800号
有機合成化学協会誌 25(11),1967,1048−1051,「2−アミノ−4,6−ジ置換−s−トリアジン類の合成」 J.Org.Chem.1963,28(7),1812−1816,「Preparation and Reactions of N−Cyanoamidines」
しかしながら、非特許文献1に記載の方法では、原料として、特殊な化合物であるイミドイルグアニジン塩酸塩、及び非常に反応性が高く、取り扱いに注意を要する酸クロリドを用いる必要があるため、2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンを工業的に有利に製造することは困難である。非特許文献2に記載の方法でも、原料として特殊な化合物であるN−シアノアミジンを用いており、さらに、高温に加熱して原料を溶融させるため、反応条件が過酷、かつ操作が煩雑となる。また、生成物の精製には、再結晶を要し、収率も15%程度と低い。また、特許文献3に記載されている反応でも、比較的高温で反応させる必要があり、さらに目的生成物である2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンの他に、副生成物であるニトリル由来のカルボン酸が生成するため、目的化合物を高収率で得ることができない。また、再結晶又はシリカゲルクロマトグラフィーなどの煩雑な精製工程を要する。
従って、本発明の目的は、簡便に、かつ温和な条件で2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンを製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、副生成物の生成を抑制し、高収率で2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンを製造する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、生成物から簡便に精製できる2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ニトリル化合物と塩基とを含む混合物に、グアニジン又はその塩を加えて反応させると、室温でも反応が進行し、かつ副生成物の生成を抑制し、高い収率で、2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンを製造でき、かつ、反応終了後、反応混合物に貧溶媒を加えると、2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンを含む析出物を析出させることができ、前記析出物を分離するという簡便な方法で精製可能であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の製造方法は、ニトリル化合物と塩基とを含む混合物に、グアニジン又はその塩を加えて反応させ、2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンを製造する。また、ニトリル化合物と塩基と溶媒とを含む混合物(又は混合液)に、グアニジン又はその塩と溶媒とを含む混合物(又は混合液)を添加(例えば、滴下)して反応させてもよい。前記塩基は、アルカリ金属水素化物、例えば、水素化ナトリウムであってもよい。前記ニトリル化合物は、下記式(1)
Figure 2020158450
(式中、Rは、一価の有機基を示す。)
で表される化合物であってもよく、生成した2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンは、下記式(2)で表される化合物であってもよい。
Figure 2020158450
(式中、Rは式(1)に同じ)。
本発明の方法では、反応終了後、反応混合物に貧溶媒を加えて2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンを含む析出物を析出させる工程をさらに含んでいてもよく、析出した析出物を分離する工程をさらに含んでいてもよい。
なお、本願明細書及び特許請求の範囲においては、置換基の炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば、炭素数が1のアルキル基は「Cアルキル」で示し、炭素数が6〜10のアリール基は「C6−10アリール」で示す。
本発明では、ニトリル化合物と塩基とを含む混合物に、グアニジン又はその塩を加えて反応させると、温和な条件で反応が進行し、かつ副生成物の生成を抑制し、2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンを簡便かつ高収率で製造できる。さらに、反応終了後、反応混合物に貧溶媒を加えると、2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンを含む析出物を析出させることができ、前記析出物を分離するという簡便な精製方法により、目的生成物である2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンを高い純度で得ることができる。
本発明では、ニトリル化合物と塩基とを含む混合物に、グアニジン又はその塩を加えて反応させ、2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジン化合物(以下、単にトリアジン化合物と称する場合がある)を製造する。
[原料]
(ニトリル化合物)
ニトリル化合物は、ニトリル基を有していれば特に制限されず、例えば、下記式(1)
Figure 2020158450
(式中、Rは、一価の有機基を示す。)
で表される化合物であってもよい。
前記式(1)において、Rで表される一価の有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロ環基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基などが挙げられ、ヘテロ環基は、非芳香族環基であってもよく、ヘテロアリール基であってもよい。好ましい有機基は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基であり、生成物の分離精製が容易である観点から、特にアリール基、ヘテロアリール基が好ましい。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−16アルキル基が例示でき、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、特に直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基である。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基などのC5−10シクロアルキル基が例示でき、好ましくはC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−6シクロアルキル基である。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などのC6−20アリール基が例示でき、好ましくはC6−12アリール基、さらに好ましくはC6−10アリール基である。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基などのC6−20アリール−C1−4アルキル基であってもよく、好ましくはC6−10アリール−C1−4アルキル基である。
ヘテロ環基(複素環基)としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を環の構成原子として含むヘテロ環(複素環)基を含み、複素環基に対応する複素環は、単環式複素環、縮合多環式複素環であってもよく、通常、5又は6員環である。また、前記複素環は、複素非芳香族環であっても、複素芳香族環であってもよい。複素非芳香族環基に対応する複素環としては、ピロリジン環、イミダゾリン環、ピペリジン環、モルホリン環、オキソラン環、テトラヒドロピラン環などが挙げられる。ヘテロアリール基(複素芳香族環基)に対応するヘテロアレーン環(複素芳香族環)としては、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環などの窒素含有単環式芳香族環;インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、カルバゾール環、フェナトリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環などの窒素含有縮合多環式芳香族環基;フラン環などの酸素含有単環式芳香族環基;クロメン環、イソクロメン環、キサンテン環などの酸素含有縮合多環式芳香族環;チオフェン環などの硫黄含有単環式芳香族環;ベンゾチオフェン環、アルキレンジオキシチオフェン環、チアントレン環などの硫黄含有縮合多環式芳香族環;オキサゾール環、チアゾール環、などの複数のヘテロ原子を含む単環式芳香族環;フェノチアジン環、フェノキサジン環などの複数のヘテロ原子を含む縮合多環式芳香族環などが挙げられる。これらのヘテロ環基のうち、ヘテロアリール基(複素芳香族環基)が好ましい。
なお、これらのRで表される一価の有機基は、置換基を有していなくてもよく、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、本発明の効果を害しない限り特に限定されず、アルキル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アルキルチオ基などが挙げられる。
アルキル基としては、前記例示のアルキル基が挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。ハロアルキル基としては、前記例示のアルキル基の少なくとも1つの水素原子が、前記例示のハロゲン原子で置換された基、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、1−フルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、2−クロロエチル基、1−クロロエチル基、2,2−ジクロロエチル基、1,2−ジクロロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、3−クロロプロピル基などの(モノ乃至トリ)ハロC1−4アルキル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などの前記例示のアルキル基に対応する直鎖状又は分岐鎖状C1−20アルコキシ基などが挙げられる。
ハロアルコキシ基としては、フルオロメトキシ基、クロロエトキシ基などの前記例示のハロアルキル基に対応するハロC1−4アルコキシ基などが挙げられる。
アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基などの前記例示のアルキル基に対応する直鎖状又は分岐鎖状C1−20アルキルチオ基などが挙げられる。
なお、置換基の数は、有機基Rの種類などに応じて適宜選択でき、例えば、1〜6であってもよく、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2、特に1である。
有機基Rが、芳香族環(アレーン環、ヘテロアレーン環)を有していると、芳香族環の結晶性が高いためか、反応終了後、生成したトリアジン化合物を含む析出物を析出させて、析出した析出物を分離することにより精製できる。そのため、再結晶やシリカゲルクロマトグラフィーなどの煩雑な精製工程を経ずに、簡便に精製できる。
(塩基)
本発明で用いられる塩基は、特に制限されず、有機塩基であっても、無機塩基であってもよい。有機塩基としては、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン;ピリジン、N−メチルモルホリンなどの複素環式3級アミンなどが挙げられる。無機塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物などが挙げられる。
本発明で用いられる塩基としては無機塩基が好ましく、アルカリ金属水素化物がさらに好ましく、水素化ナトリウムが特に好ましい。
塩基の割合は、ニトリル化合物1モルに対して、1.5〜10モル程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、2〜10モル、3〜8モルであって、さらに好ましくは3.5〜5モルである。本発明の方法では、ニトリル化合物に対して、比較的多量の塩基を使用しても、副生成物の生成を抑制できるため、高温に加熱することなく、室温などの温和な条件でも反応が進行できる。
(グアニジン又はその塩)
グアニジン又はその塩としては、グアニジン;グアニジンの塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩などの無機酸塩;酢酸塩などの有機酸塩などが挙げられ、これらのグアニジン又はその塩は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。グアニジンは、通常、塩の形態で使用され、好ましいグアニジン塩は、グアニジン塩酸塩、グアニジン硫酸塩、グアニジン硝酸塩、グアニジン炭酸塩、さらに好ましくはグアニジン塩酸塩、グアニジン炭酸塩、特に好ましくはグアニジン塩酸塩である。これらのグアニジン又はその塩は、市販品を用いることができる。
グアニジン(又はその塩)の割合は、ニトリル化合物1モルに対して、0.5〜10モル程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、0.8〜5モル、1〜4モルであって、さらに好ましくは1.5〜3モル、特に2〜2.5モルである。本発明の方法では、ニトリル化合物に対して、過剰量のグアニジン(又はその塩)を用いても、副生成物の生成を抑制できるため、高温に加熱することなく、室温などの温和な条件でも反応が進行できる。
[製造方法]
本発明の方法では、ニトリル化合物と塩基とを含む混合物に、グアニジン又はその塩を加えて反応させて、トリアジン化合物を得る。
(反応)
本反応は、下記式(A)の反応式で表されるように、ニトリル化合物と塩基との共存系に、グアニジン又はその塩を加えて反応を行う。
Figure 2020158450
(式中、Rは、一価の有機基を示す)。
従来の方法、例えば、ニトリル化合物とグアニジン(又はその塩)と塩基とが共存した状態で反応させたり、ニトリル化合物とグアニジン(又はその塩)とを含む混合物に、塩基を加えて反応させたり、グアニジン(又はその塩)と塩基とを含む混合物に、ニトリル化合物を加えて反応させると、副生成物が生成して、精製工程が煩雑になったり、収率が低下する虞がある。一方、本発明の方法、すなわち、ニトリル化合物と塩基との混合物に、グアニジン(又はその塩)を加えて反応させると、室温などの温和な条件でも反応が進行するため、副生成物の生成を抑制でき、高い収率でトリアジン化合物が得られる。
反応は、通常、反応に不活性な溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、ケトン類、エーテル類、スルホキシド類、アミド類などの非プロトン性有機溶媒が挙げられる。ケトン類としては、アセトンなどの非プロトン性水溶性有機溶媒;エーテル類としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル類など;スルホキシド類としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)など;アミド類としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて混合溶媒として使用できる。
本発明で用いられる溶媒としては、スルホキシド類が好ましく、ジメチルスルホキシド(DMSO)がさらに好ましく、通常、DMSOが単独で使用される。
溶媒の使用量は、ニトリル化合物、塩基、グアニジン又はその塩などの原料混合物を可溶化(又は分散)でき、反応を損なわない範囲であれば特に制限されず、例えば、ニトリル化合物1モルに対して、0.5〜50L程度の範囲から選択でき、好ましくは1〜20L、さらに好ましくは2〜15L、特に好ましくは5〜10Lである。
ニトリル化合物と塩基とを含む混合物は、溶媒を含まなくてもよいが、通常、ニトリル化合物と溶媒とを含む混合物(又は混合液)に、塩基を加えて調製する。
グアニジン(又はその塩)は、ニトリル化合物と塩基とを含む混合物に、直接的に加えてもよいが、通常、グアニジン(又はその塩)と溶媒とを含む混合液(又は混合溶液)の形態で添加できる。グアニジン(又はその塩)と溶媒とを含む混合液は、通常、グアニジン(又はその塩)を溶媒に溶解させた溶液を用いる場合が多い。
前記グアニジン(又はその塩)と溶媒とを含む混合液は、ニトリル化合物と塩基とを含む混合物に一度に加えてもよいが、連続的又は間欠的に添加することが好ましく、連続的に滴下して添加することがさらに好ましい。添加時間は、例えば、15分間程度、好ましくは30分間、さらに好ましくは1時間、特に1時間以上である。
反応温度は、特に制限されず、例えば、−30〜100℃の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、0〜80℃、3〜60℃、5〜50℃であって、さらに好ましくは以下段階的に、10〜40℃、15〜30℃であって、特に好ましくは20〜25℃、通常、室温である。本発明の方法では、高温に加熱した状態で反応させることなく、室温などの温和な条件で反応が進行するため、副生成物の生成を抑制でき、高い収率でトリアジン化合物が得られる。
反応時間は、特に制限されず、例えば、反応の進行度合いを種々の分析手法(例えば、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、核磁気共鳴(NMR)など)で分析し、原料の消失が確認されるまで反応させてもよく、例えば、1〜48時間の範囲であってもよく、好ましくは1〜24時間、さらに好ましくは1.5〜12時間、特に好ましくは2〜6時間である。
本反応は、大気又は不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、希ガス(例えば、アルゴンガスなど)などが挙げられる。また、本反応は、減圧下で行ってもよいが、通常、加圧下又は常圧で行う場合が多い。
(2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジン化合物)
このような反応により、トリアジン環の4,6位に、ニトリル化合物のRで表される一価の有機基が置換された2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジン化合物が生成する。前記トリアジン化合物は、下記式(2)で表される。
Figure 2020158450
(式中、Rは一価の有機基を示す)。
前記式(2)中のRで表される一価の有機基は、前記ニトリル化合物の項に記載した一価の有機基Rと同様であり、好ましい態様も同様である。
式(2)で表される具体的なトリアジン化合物としては、Rがアルキル基である2−アミノ−4,6−ジアルキル−1,3,5−トリアジン、Rがシクロアルキル基である2−アミノ−4,6−ジシクロアルキル−1,3,5−トリアジン、Rがアリール基である2−アミノ−4,6−ジアリール−1,3,5−トリアジン、Rがアラルキル基である2−アミノ−4,6−ジ(アラルキル)−1,3,5−トリアジン、Rがヘテロアリール基である2−アミノ−4,6−ジ(ヘテロアリール)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
Rがアルキル基である2−アミノ−4,6−ジアルキル−1,3,5−トリアジンとしては、2−アミノ−4,6−ジメチル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジエチル−1,3,5−トリアジンなどの2−アミノ−4,6−ジC1−6アルキル−1,3,5−トリアジン;Rがシクロアルキル基である2−アミノ−4,6−ジシクロアルキル−1,3,5−トリアジンとしては、2−アミノ−4,6−ジシクロペンチル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジシクロヘキシル−1,3,5−トリアジンなどの2−アミノ−4,6−ジC5−8シクロアルキル−1,3,5−トリアジン;Rがアリール基である2−アミノ−4,6−ジアリール−1,3,5−トリアジンとしては、2−アミノ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジナフチル−1,3,5−トリアジンなどの2−アミノ−4,6−ビス(C6−20アリール)−1,3,5−トリアジン);Rがアラルキル基である2−アミノ−4,6−ジ(アラルキル)−1,3,5−トリアジンとしては、2−アミノ−4,6−ジベンジル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジフェネチル−1,3,5−トリアジンなどの2−アミノ−4,6−ビス(C6−20アリール−C1−4アルキル)−1,3,5−トリアジン);Rがヘテロアリール基である2−アミノ−4,6−ジ(ヘテロアリール)−1,3,5−トリアジンとしては、2−アミノ−4,6−ジ(チオフェン)−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジ(フラン)−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジ(ピリジン)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
Rが置換を有する有機基である具体的なトリアジン化合物としては、例えば、Rがアルキル基を有するアリール基である2−アミノ−4,6−ジトリル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジキシリル−1,3,5−トリアジンなどの2−アミノ−4,6−ビス(C1−6アルキル−C6−10アリール)−1,3,5−トリアジン;Rがハロゲン原子を有するアリール基である2−アミノ−4,6−ビス(4−クロロフェニル)−1,3,5−トリアジンなどの2−アミノ−4,6−ビス(ハロC6−10アリール)−1,3,5−トリアジン;Rがハロアルキル基を有するアリール基である2−アミノ−4,6−ビス[4−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,3,5−トリアジンなどの2−アミノ−4,6−ビス[(モノ乃至トリ)ハロC1−4アルキルC6−10アリール)]−1,3,5−トリアジン;Rがアルコキシ基を有するアリール基である2−アミノ−4,6−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンなどの2−アミノ−4,6−ビス(C1−20アルコキシC6−12アリール)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
(精製方法)
このような反応により生成したトリアジン化合物は、例えば、濃縮、デカンテーション、再沈殿、再結晶、クロマトグラフィー、抽出、及びこれらの組み合わせなどの慣用の方法により分離精製してもよいが、本発明の方法では、生成したトリアジン化合物を析出(又は沈殿)させることにより容易に生成物を分離精製できる。前記析出による分離精製は、トリアジン化合物を含む反応混合物に貧溶媒を加えて、析出物(又は沈殿物)を析出(又は沈殿)させる析出工程と、析出した析出物を分離する分離工程とを含む。
貧溶媒は、生成したトリアジン化合物に対する溶解性が低い溶媒であればよく、例えば、水などの水系溶媒;メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒;ヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶媒(又は酢酸エステル系溶媒)などが挙げられる。これらの貧溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて混合溶媒として使用できる。好ましい貧溶媒は水系溶媒であり、通常、水である。
貧溶媒の添加量は、反応溶媒の20℃における体積(又は反応混合液の体積)に対して、好ましくは0.5〜10倍、さらに好ましくは1〜5倍、特に好ましくは1〜3倍である。
貧溶媒を添加した後、撹拌してもよく、好ましくは5分間〜5時間、さらに好ましくは10分間〜3時間、特に30分間〜2時間である。
分離工程では、前記析出工程で析出した固体の析出物を液体から分離(固液分離)して、トリアジン化合物を含む析出物を得ることができる。固液分離の方法としては、ろ過方式、圧力方式、遠心分離方式などの慣用の分離方法が挙げられ、通常、吸引ろ過などのろ過方式である。
分離工程で得られた析出物は、水などの貧溶媒で洗浄してもよく、通常、貧溶媒で洗浄後、真空乾燥などの方法により乾燥させる。
このようにして得られたトリアジン化合物の質量割合(純度)は、例えば80〜100%であってもよく、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、反応溶媒は常法に従い蒸留精製したものを用いた。すべての合成反応は、断りがない限り乾燥させたガラス器具を用いて、窒素中で行った。また、試薬は、断りがない限り購入したものをそのまま用いた。また、得られた2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジン化合物の同定には、以下の分析方法を用いた。
(赤外吸収スペクトル)
赤外分光光度計(日本分光(株)製、「JASCO FT/IR−460 Plus」)を用い、臭素カリウム(KBr)錠剤法にて測定した。
(核磁気共鳴スペクトル)
日本電子(株)製、「JEOL ECX−500(H NMR:500MHz、13C NMR:125MHz)」を用いて測定した。測定溶媒は、重クロロホルム、又は重ジメチルスルホキシドを用い、内部標準は、テトラメチルシラン(H:0ppm)、重クロロホルム(13C:77ppm)、又は重ジメチルスルホキシド(H:2.5ppm、13C:40ppm)を用いて測定した。
(質量分析)
質量分析は、液体クロマトグラフィー質量分析装置(日本電子(株)製、「JEOL JMS−T1000LP ESI、SHIMADZU JMS−T100GCEI、FD FI、高分解能マススペクトル」)を用いて測定した。
(薄層クロマトグラフィー(TLC)分析)
Merck(株)製、「シリカゲル60F254」が塗布されたアルミニウムシートを用いた。展開溶媒は、ヘキサン/酢酸エチル、酢酸エチル、又はメタノールを用い、発色試薬は、リンモリブデン酸溶液を用いてRf(retardation factor)値を測定した。
(融点)
融点は、微量融点測定装置((株)アナテック・ヤナコ製、「MP−S3」)を用い、熱板加熱方式で、キャピラリー管に試料を入れて測定した。
(純度)
得られたトリアジン化合物の質量割合(純度)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。
(実施例1)4,6−ジ(ナフタレン−2−イル)−1,3,5−トリアジン−2−アミン(2a)の合成
三方コック、冷却管、玉栓をつけた100mL三口フラスコに2−ナフトニトリル(381.9mg、2.5mmol)及びジメチルスルホキシド(DMSO)(10mL)を加えた。さらに、前記三口フラスコに水素化ナトリウム(NaH)(431.2mg、11mmol)を水浴中で加え、撹拌した。また、滴下漏斗に、グアニジン塩酸塩(522.0mg、5.5mmol)を10mLのDMSOに加え、撹拌して完全に溶解させた。この滴下漏斗中のグアニジン塩酸塩を含む溶液を、前記三口フラスコ内の2−ナフトニトリルとNaHとDMSOとの薄黄色の懸濁液に、1時間以上かけてゆっくりと滴下し、その後、20℃で12時間撹拌して反応させた。反応終了後、反応混合物に水(30mL)を加え、析出物を析出させ、その後1時間撹拌を続けた。撹拌後、析出した析出物を吸引ろ過で分離し、前記析出物を水で洗浄後、デシケーターを用いて真空乾燥することにより、下記式(2a)で表されるトリアジン化合物(クリームイエロー固体(cream yellow solid)、416.3mg、1.2mmol)を収率96%(純度99%)で得た。得られたトリアジン化合物(2a)の融点は、224.5〜225.4℃であった。
Figure 2020158450
IR(KBr):3330,3183,1659,1535,1503,1398,1382,812cm−1
H−NMR(500MHz,DMSO−d):δ9.16(s,2H),8.62(d,J=8.8Hz,2H),8.17(d,J=7.4Hz,2H),8.09(d,J=8.8Hz,2H),8.02(d,J=7.4Hz,2H),7.78(br,2H),7.64(dd,J=7.4,6.4Hz,2H),7.61(dd,J=7.4,6.4Hz,2H);
13C−NMR(125MHz,DMSO−d):δ170.6,167.6,134.9,133.8,132.6,129.3,128.8,128.1,127.9,127.7,126.7,124.8;
HRMS(ESI+)Calcd for C2316:349.14532[M+H]+; Found:349.14416;
TLC(ヘキサン:酢酸エチル=8:2(体積比)):Rf=0.18(リンモリブデン酸ナトリウム)。
(比較例1)
玉栓、冷却管をつけた50mL二口フラスコに2−ナフトニトリル(309.1mg,2.0mmol)、グアニジン塩酸塩(49.0mg,0.5mmol)、水素化ナトリウム(98.0mg,2.0mmol)を加え、DMSO(5mL)中、室温で2時間撹拌した。その後、オイルバスを用いて80℃で12時間反応させた。反応終了後、室温まで冷ましてから水(10mL)を加え、析出物を析出させ、その後1時間撹拌を続けた。撹拌後、析出した析出物を吸引ろ過で分離し、前記析出物を水で洗浄後、デシケーターを用いて真空乾燥させると、目的とするトリアジン化合物(2a)と、副生成物である2−ナフトエ酸との混合物が得られた。なお、前記混合物中のトリアジン化合物(2a)の純度は96%であった。
(実施例2)4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−アミン(2b)の合成
2−ナフトニトリルに代えて、ベンゾニトリル(0.52mL,5.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(2b)で表される目的化合物(白色固体(white solid)、567.0mg,2.3mmol)を収率91%で得た。
Figure 2020158450
H−NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.48(d,J=8.5Hz,4H),7.68(br,2H),7.61−7.53(m,6H);
13C−NMR(125MHz,DMSO−d):δ170.5,167.5,136.2,132.0,128.5,128.1;
TLC(ヘキサン:酢酸エチル=8:2(体積比)):Rf=0.25(リンモリブデン酸ナトリウム)。
(実施例3)4,6−ジ(チオフェン−2−イル)−1,3,5−トリアジン−2−アミン(2c)の合成
2−ナフトニトリルに代えて、2−チオフェンカルボニトリル(0.23mL,2.5mmol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(2c)で表される目的化合物(茶色固体(brown solid)、179.8mg,0.69mmol)を収率55%で得た。
Figure 2020158450
H−NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.03(d,J=4.2Hz,2H),7.83(d,J=4.5Hz,2H),7.63(br,2H),7.23(dd,J=4.5,4.2Hz,2H);
13C−NMR(125MHz,DMSO−d):δ166.8,166.8,141.6,132.1,130.4,128.4;
TLC(ヘキサン:酢酸エチル=8:2(体積比)):Rf=0.20(リンモリブデン酸ナトリウム)。
(実施例4)4,6−ジ(フラン−2−イル)−1,3,5−トリアジン−2−アミン(2d)の合成
2−ナフトニトリルに代えて、2−フロニトリル(0.22mL,2.5mmol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(2d)で表される目的化合物(ネープルスイエロー固体(naples yellow solid),156.9mg,0.69mmol)を収率55%で得た。
Figure 2020158450
H−NMR(500MHz,DMSO−d):δ7.94(d,J=1.4Hz,2H),7.66(br,2H),7.37(d,J=3.4Hz,2H),6.70(dd,J=3.4,1.4Hz,2H);
13C−NMR(125MHz,DMSO−d):δ129.7,126.4,113.7,109.5,78.5,75.4;
TLC(ヘキサン:酢酸エチル=5:5(体積比)):Rf=0.15(リンモリブデン酸ナトリウム)。
(実施例5)4,6−ジ(ピリジン−2−イル)−1,3,5−トリアジン−2−アミン(2e)の合成
2−ナフトニトリルに代えて、2−シアノピリジン(0.24mL,2.5mmol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(2e)で表される目的化合物(黄色固体(naples yellow solid)、296.0mg,1.2mmol)を収率95%で得た。
Figure 2020158450
H−NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.82(d,J=4.3Hz,2H),8.47(d,J=8.0Hz,2H),8.01(dd,J=8.0,7.5Hz,2H),7.95(br,2H),7.59(dd,J=7.5,4.3Hz,2H);
13C−NMR(125MHz,DMSO−d):δ170.8,168.1,153.8,149.7,137.1,126.1,124.0;
TLC(CHOH):Rf=0.43(リンモリブデン酸ナトリウム)。
(実施例6)4,6−ジ(ピリジン−3−イル)−1,3,5−トリアジン−2−アミン(2f)の合成
2−ナフトニトリルに代えて、3−シアノピリジン(0.26mL,2.5mmol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(2f)で表されるで目的化合物(レモンイエロー固体(lemon yellow solid),84.3mg,0.34mmol)を収率27%得た。
Figure 2020158450
H−NMR(500MHz,DMSO−d):δ9.57(s,2H),8.76(br,2H),8.72(d,J=6.2Hz,2H),7.58−7.55(m,4H);
13C−NMR(125MHz,DMSO−d):δ169.3,167.0,152.0,149.0,135.0,131.3,123.1;
TLC(酢酸エチル):Rf=0.10(リンモリブデン酸ナトリウム)。
(実施例7)4,6−ジ(ピリジン−4−イル)−1,3,5−トリアジン−2−アミン(2g)の合成
2−ナフトニトリルに代えて、4−シアノピリジン(266.3mg,2.6mmol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(2g)で表される目的化合物(白色固体(white solid),306.2mg,1.2mmol)を収率98%で得た。
Figure 2020158450
H−NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.78(d,J=4.6Hz,4H),8.28(d,J=4.6Hz,4H),8.01(br,2H);
13C−NMR(125MHz,DMSO−d):δ169.9,167.9,150.8,143.6,122.1;
TLC(酢酸エチル):Rf=0.10(リンモリブデン酸ナトリウム)。
(実施例8)4,6−ジエチル−1,3,5−トリアジン−2−アミン(2h)の合成
2−ナフトニトリルに代えて、プロピオニトリル(0.18mL,2.6mmol)を用いて、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、酢酸エチル(50mL×4)で抽出した後、有機層を全部合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL×2)、次いで飽和食塩水(30mL×1)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させた。有機層を濃縮、減圧乾燥し、得られた残渣をヘキサン(3mL×3)でデカンテーションし、真空乾燥することにより、下記式(2h)で表される目的化合物(ブロンド固体(blond solid),63.2mg,0.42mmol)が収率33%で得られた。
Figure 2020158450
H−NMR(500MHz,CDCl):δ6.03(br,2H),2.63(q,J=7.9Hz,4H),1.25(t,J=7.9Hz,6H);
13C−NMR(125MHz,CDCl):δ180.3,166.8,32.0,11.8;
TLC(酢酸エチル):Rf=0.30(リンモリブデン酸ナトリウム)。
(実施例9)4,6−ビス(4−クロロフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−アミン(2i)の合成
2−ナフトニトリルに代えて、4−クロロベンゾニトリル(344.3mg,2.5mmol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(2i)で表される目的化合物(白色固体(white solid),364.6mg,1.1mmol)を収率92%で得た。
Figure 2020158450
H−NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.44(d,J=5.7Hz,4H),7.77(br,2H),7.60(d,J=5.7Hz,4H);
13C−NMR(125MHz,DMSO−d):δ169.7,167.4,136.9,135.0,129.9,128.7;
TLC(ヘキサン:酢酸エチル=8:2(体積比)):Rf=0.20(リンモリブデン酸ナトリウム)。
(実施例10)4,6−ビス(4−(トリフルオロメチル)フェニル)−1,3,5−トリアジン−2−アミン(2j)の合成
2−ナフトニトリルに代えて、4−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(0.26mL,2.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(2j)で表される目的化合物(クリームイエロー固体(cream yellow solid),451.9mg,1.2mmol)を定量的に得た。得られたトリアジン化合物の融点は、196.1〜197.5℃であった。
Figure 2020158450
IR(KBr):3497,3320,3211,1650,1537,1401,1381,1324,865,818cm−1
H−NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.63(d,J=8.5Hz,4H),7.95(br,2H),7.92(d,J=8.5Hz,4H);
13C−NMR(125MHz,DMSO−d):δ169.6,167.5,139.9,131.9,131.7,128.8,125.6,125.2,122.9;
HRMS (ESI+) Calcd for C2316:385.08879[M+H]+;Found:385.08883;
TLC(ヘキサン:酢酸エチル=8:2(体積比)):Rf=0.18(リンモリブデン酸ナトリウム)。
(実施例11)4,6−ジ−p−トリル−1,3,5−トリアジン−2−アミン(2k)の合成
2−ナフトニトリルに代えて、p−トルニトリル(0.30mL,2.5mmol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(2k)で表される目的化合物(白色固体(white solid),300.4mg,1.1mmol)を収率87%で得た。
Figure 2020158450
H−NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.36(d,J=7.9Hz,4H),7.56(br,2H),7.34(d,J=7.9Hz,4H),2.38(s,6H);
13C−NMR(125MHz,DMSO−d):δ170.4,167.4,141.9,133.6,129.2,128.1,21.2;
TLC(ヘキサン:酢酸エチル=8:2(体積比)),Rf=0.18(リンモリブデン酸ナトリウム)。
(実施例12)4,6−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−アミン(2l)の合成
2−ナフトニトリルに代えて、p−アニソニトリル(138.4mg,1.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(2l)で表される目的化合物(クリームイエロー固体(cream yellow solid),59.2mg,0.19mmol)を収率38%で得た。
H−NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.42(d,J=7.9Hz,4H),7.46(br,2H),7.07(d,J=7.9Hz,4H),3.84(s,6H);
13C−NMR(125MHz,DMSO−d):δ169.9,167.3,162.4,129.9,128.7,113.9,55.4;
TLC(ヘキサン:酢酸エチル=8:2(体積比)):Rf=0.075(リンモリブデン酸ナトリウム)。
Figure 2020158450
(実施例13)4,6−ジフェネチル−1,3,5−トリアジン−2−アミン(2m)の合成
2−ナフトニトリルに代えて、3−フェニルプロピオニトリル(0.26mL,2.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様に反応させ、反応終了後、カラムクロマトグラフィー(充填剤:関東化学(株)製、SiO[Knto silicaGel(63〜210μm)])で精製し、下記式(2m)で表される目的化合物(白色固体(white solid),43.0mg,0.33mmol)を収率14%で得た。得られたトリアジン化合物(2m)の融点は、83.4〜84.0℃であった。
Figure 2020158450
IR (KBr):3327,3179,1658,1552,1496,1453,1415,815,751cm−1
H−NMR(500MHz,DMSO−d):δ7.29−7.17(m,10H),5.99(br,2H),3.06(t,J=7.0Hz,4H),2.94(t,J=7.5Hz,4H);
13C−NMR(125MHz,DMSO−d):δ178.4,166.6,141.0,128.4,128.3,126.0,40.3,33.5;
HRMS(ESI+)Calcd for C1920:305.17662[M+H]+;Found:305.17729;
TLC(ヘキサン:酢酸エチル=5:5(体積比)):Rf=0.25(リンモリブデン酸ナトリウム)。
本発明により、2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジン化合物を高収率かつ簡便に製造できる。2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジン化合物は、医薬、農薬及びその他の機能性化学品の原料として利用できる。

Claims (7)

  1. ニトリル化合物とグアニジン又はその塩との反応により、2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンを製造する方法であって、ニトリル化合物と塩基とを含む混合物に、グアニジン又はその塩を加えて反応させる方法。
  2. ニトリル化合物と塩基と溶媒とを含む混合物に、グアニジン又はその塩と溶媒とを含む混合物を添加する請求項1に記載の方法。
  3. 塩基が、アルカリ金属水素化物である請求項1又は2に記載の方法。
  4. 塩基が水素化ナトリウムである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. ニトリル化合物が、下記式(1)
    Figure 2020158450
    (式中、Rは、一価の有機基を示す。)
    で表される化合物であり、2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンが、下記式(2)
    Figure 2020158450
    (式中、Rは式(1)に同じ。)
    で表される化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 反応終了後、反応混合物に貧溶媒を加えて2−アミノ−4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジンを含む析出物を析出させる工程をさらに含む請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 析出した析出物を分離する工程をさらに含む請求項6に記載の方法。
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