JP2020156355A - 乳酸菌検出プライマーセットおよび該プライマーセットを用いた検出方法 - Google Patents

乳酸菌検出プライマーセットおよび該プライマーセットを用いた検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】乳酸菌ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)H61株(NITE P−92)を特異的に迅速かつ簡便に識別できるプライマーセットおよび該プライマーセットを用いた検出方法を提供すること。【解決手段】配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号2または3の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなる、乳酸菌ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)H61(NITE P−92)株検出用プライマーセット。【選択図】なし

Description

本発明は、特定の乳酸菌の検出方法に関する。詳しくは、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)H61株(NITE P−92)の検出用プライマーセットおよび該プライマーセットを用いた検出方法に関する。
乳酸菌は、様々な作用を有することが昔から知られており、近年はプロバイオティクスとして消化管内の細菌叢の改善による整腸効果、免疫力向上効果、抗腫瘍効果などの種々の健康保持効果を有することから、人類にとって健康に深く関わる有用な微生物資源として利用されている。
乳酸菌ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)H61株(NITE P−92)(以下、「乳酸菌H61株」という。)は、老化実験用のマウスを用いた試験から、骨密度の減少や潰瘍発生などの老化抑制効果を有することが報告(特許文献1)されている。また、乳酸菌H61株の加熱処理菌体を摂取することにより、50〜60歳代の肌への保湿効果を向上することも報告(非特許文献1)されている。さらに、乳酸菌H61株またはその抽出物は、メラニン産生抑制効果、育毛・発毛効果と脱毛抑制効果を有することも報告(特許文献2)されている。このように、乳酸菌H61株は、様々な健康効果を有する機能性乳酸菌である。
乳酸菌H61株を含む発酵乳やチーズ等の食品、サプリメント、ペットフードなどにおいて、機能性乳酸菌として乳酸菌H61株の菌数を確保することが重要である。また、ヒトやマウスなどの実験動物の腸内において、摂取した乳酸菌H61株を正確に識別し、菌数を把握することも、乳酸菌H61株の有効性を評価するうえで重要である。上述の乳酸菌H61株が発揮する効果は、菌株特異的なものであるから、腸内細菌と乳酸菌H61株とを区別して検出することが求められている。さらに、乳酸菌H61株は加熱処理菌体(死菌)でも効果があることが知られており、加熱処理した乳酸菌H61株含有の有無を検出することも求められている。
近年、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって特定の微生物を検出する方法が報告されており、例えば、ハウスキーピング遺伝子の塩基配列の違いを利用したプライマーを用いて、種特異的なPCR産物を検出することで菌種の同定を行うことができるが、同属同種の異株間の識別は困難である。菌株の識別方法として、Restriction Fragment Length Polymorphism(RFLP)法(非特許文献2)や、10塩基程度のオリゴヌクレオチドを用いてPCR法を行い、ランダムに増幅されたPCR産物の電気泳動パターンを比較するRandom Amplified Polymorphic DNA(RAPD)法(非特許文献3)などが報告されている。
しかしながら、RFLP法やRAPD法は何れも定量性がなく、RFLP法は高精度であるものの工程が複雑で時間がかかること、RAPD法は迅速な検出が可能であるものの、使用する機器により結果が異なり再現性に問題があった。また、生菌であれば純粋培養により菌体を増やし、遺伝子レベルの解析を行うことは容易であるが、死菌の場合、質の高いDNAを調製することは困難という問題もあった。
特開2006−256993号公報 特開2015−098442号公報
日本畜産学会報、2012年、83巻、307〜311頁 腸内細菌学雑誌、2005年、19巻、193〜198頁 Letters in Applied Microbiology、35巻、370〜374頁
本発明は、乳酸菌H61株を特異的に迅速かつ簡便に識別できるプライマーセットおよび該プライマーセットを用いた検出方法を提供することを課題としている。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、乳酸菌H61株に特異的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを含む検出用プライマーセットを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号2または3の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなる、乳酸菌ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)H61(NITE P−92)株検出用プライマーセット。
2.1.記載のプライマーセットを含むことを特徴とする、H61株検出用キット。
3.以下の工程を含む、乳酸菌ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)H61(NITE P−92)株の検出方法。
(1)1.記載のプライマーセットを用いて核酸断片を増幅する工程
(2)工程(1)で得られた核酸断片を検出する工程
4.配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号2の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなる、乳酸菌ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)H61(NITE P−92)株検出用プライマーセットで増幅されることを特徴とする、配列番号4の塩基配列を含むポリヌクレオチド。
5.配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号3の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなる、乳酸菌ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)H61(NITE P−92)株検出用プライマーセットで増幅されることを特徴とする、配列番号5で表されるポリヌクレオチド。
本発明により、乳酸菌H61株を簡便かつ迅速に、かつ、同亜種の乳酸菌ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス菌と交差反応を示すことなく、検出することが可能となり、非常に有用である。
請求項4に特定する配列番号4の塩基配列を含むポリヌクレオチドである。 請求項5に特定する配列番号5の塩基配列を含むポリヌクレオチドである。 実施例1におけるPCR産物のアガロースゲル電気泳動の写真である。 実施例3における加熱処理菌体から得たDNAを用いたPCR産物のアガロースゲル電気泳動の写真である。
本発明のプライマーセットは、乳酸菌H61株に特異的な塩基配列を有する染色体DNA領域をPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)により増幅することができ、乳酸菌H61株に近縁の菌株を認識することなく、乳酸菌H61株を特異的に認識し、乳酸菌H61株を特異的に検出することが可能である。
なお、本発明における乳酸菌H61株とは、乳酸菌ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)H61(寄託番号:NITE P−92)株を意味する。
本発明のプライマーセットは、以下の方法で設計した。
まず、乳酸菌H61株の完全長ゲノム配列を、第3世代シーケンサーであるPacBio RSII(デジタルバイオロジー社製)を用いて決定した。このゲノム配列と、乳酸菌ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス菌4株(全ゲノム配列解読済み:MG1363株、SK11株、NZ9000株、Scaffoldsレベルでのゲノム配列解読済み:JM1株)を比較して、タンパク質をコードするコーディングシーケンス(CDS)を検索し、相同性の認められない領域を検出した。これらの領域の核酸配列を、NCBI(National Center for Biotechnology Information)でBLAST検索し、全細菌種に対しても相同性の認められない領域を絞り込んだ。これらの配列から、GC含量が40%以上になるような領域の250bpから350bpの長さのPCR産物が得られるPCRプライマーを作成した。標準株であるラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスATCC 19257株、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門保有のラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス菌10株、および亜種ラクティス菌8株とH61株から調製したゲノムDNAを鋳型に用いて、当該プライマーによるPCRを行ない、H61株のみ相当する鎖長のPCR産物が得られ、他の菌株のDNAを鋳型に用いてもPCR産物は得られないプライマーセットを選抜した。
<本発明のプライマーセットについて>
本発明のプライマーセットは、下記表1に示す、配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号2または3の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるものである。
また、本発明の検出方法において使用できるプライマーセットは、塩基長やPCR条件等に依存して、配列番号1〜3の塩基配列と実質的に相同な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドからなるプライマーセットも含まれる。ここで、実質的に相同とは、PCR用プライマー等として機能し得る程度の断片長と相同性を有することを意味する。
例えば、本発明のプライマーセットは、使用目的や条件によっては、必ずしも配列番号1〜3の塩基配列と100%の相同性を有している必要はなく、目的とする領域のプライマーの5’末端付近で数塩基が異なっていてもよい。そのようなプライマーを使用しても、アニーリング温度等を検討することによって目的DNA断片を適宜増幅させることは可能である。
詳しくは、乳酸菌H61株の検出に際し、高い特異性が要求される場合には、完全に相同な配列部位(配列番号1〜3の塩基配列)を使用し、かつ、そのような配列でしかアニーリングしないPCR条件を選択すればよい。その反面、比較的特異性の低い条件が許容される場合には、配列番号1〜3の塩基配列とは数塩基異なる配列を使用し、かつ、それでもアニーリングするようなPCR条件を選択することができる。
本発明のプライマーセットは、当業者によく知られた通常のDNAの合成法により、例えば、DNA合成機を用いて合成することができる。また、DNA合成業者に合成を委託することによっても、本発明のプライマーを得ることができる。
本発明のプライマーセットを用いて、試料に含まれる被検菌の染色体DNAを鋳型とするPCRを行い、増幅産物の有無を決定することにより、試料中の乳酸菌H61株を検出することができる。すなわち、プライマーの配列に特異的なPCRの反応が起こると、乳酸菌H61株の染色体DNA内の、対となる各プライマーの配列に相当する配列に挟まれた領域(標的領域)が増幅される。
したがって、本発明のプライマーセットを用いて増幅産物が得られれば、被検菌は乳酸菌H61株であると同定されるか、または、被検菌に乳酸菌H61株が含まれていると判定される。
また、増幅産物が得られる場合は、増幅産物の有無の決定には、増幅産物の長さの決定が含まれてもよい。例えば、配列番号1および配列番号2、または配列番号1および3の各組み合わせからなるオリゴヌクレオチドを含む乳酸菌H61株検出用プライマーセットを用いた場合、被検菌に乳酸菌H61株が含まれていれば、通常は各々343bp、251bpの増幅産物が得られる。
本発明のオリゴヌクレオチドを含む乳酸菌H61株検出用プライマーセットを用いた場合に得られる、請求項4に特定する343bpの増幅産物である配列番号4の塩基配列を含むポリヌクレオチドを下記図1に、請求項5に特定する251bpである配列番号5の塩基配列を含む増幅産物のポリヌクレオチドを下記図2に示す。図1、2中の下線は、乳酸菌H61株の特異的検出のための本発明のプライマーセットが、ハイブリダイズする部位を示す。
配列番号1〜5の塩基配列は、乳酸菌H61株に特異的な配列であることから、これらの一部の配列をDNAプローブとしたFISH法やサザンハイブリダイゼーション、ドットハイブリダイゼーションなどを実施することも可能である。
なお、本発明において、乳酸菌H61株の検出とは、試料中に乳酸菌H61株が存在するか否かを検出すること、および、被検菌が単一種である場合には、同被検菌が乳酸菌H61株であるか否かを同定することを含む。
ここで、乳酸菌H61株の検出に用いる試料としては、乳酸菌H61株が存在し得る試料であればいずれのものであってもよく、例えば、乳酸菌の混合培養物、ヨーグルトやチーズなどの微生物を含む食品、マウスやラットなどの実験動物やヒトの糞便、土壌等の環境中に存在する細菌等を挙げることができる。被検菌は、分離された単一種であってもよく、複数の菌種を含む混合物であってもよい。
死菌であれば、試料からそのままDNAを調製してPCRに用いてもよく、また生菌であれば、試料からコロニー分離等により被検菌体を分離して、被検菌体からDNAを調製してからPCRに供してもよい。これらの試料から核酸を抽出する方法は、例えば、一般的に乳酸菌のゲノムDNA調製に用いるような、細胞壁をLysozymeなどの酵素で分解またはビーズなどで物理的に破壊したのちに、市販の抽出キット(DNeasy Blood&Tissue kit(QIAGEN社製)、Isogenなど)を使用することが可能であり、特に限定されるものではない。
<本発明の検出方法について>
本発明の乳酸菌H61株の検出方法は、(1)本発明のプライマーセットを用いて核酸断片を増幅する工程と、(2)工程(1)で得られた核酸断片を検出する工程を含むものである。
本発明の検出方法として、具体的には、例えば、PCR法、FISH法、サザンハイブリダイゼーションやドットハイブリダイゼーション等を挙げることができる。中でも、PCR法が好ましい。
このうち、PCR法による乳酸菌H61株の検出方法では、本発明のプライマーセットを用いる以外は、通常用いられるDNAポリメラーゼ等のPCR試薬および機器を使用することも可能であり、特に限定されるものではない。
PCRに用いるDNAポリメラーゼとしては、特に限定はされないが、例えば、ExTaq(タカラバイオ社製) 、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡社製)、KOD−plus−ポリメラーゼ(東洋紡社製)等が好ましい。
PCR反応条件については、用いるDNAポリメラーゼの最適温度、合成するDNAの長さや種類等により適宜設定すればよいが、サイクル条件であれば「90〜98℃で5〜30秒(熱変性・解離)→56℃で5〜30秒(アニーリング)→65〜80℃で30〜60秒(合成・伸長)」を1サイクルとして合計20〜40サイクル行う条件が好ましい。この場合、鋳型DNAとプライマーの量比は、10〜30ngのゲノムDNA量に対し、各プライマーを0.24μM程度が好ましい。
PCRにより得られる増幅産物の有無またはその大きさは、通常の核酸の検出法によって、決定することができる。例えば、アガロース電気泳動によって電気泳動した後、エチジウムブロマイドやSYBRGreenIで染色することによって、増幅産物を検出することができる。また、蛍光強度によって増幅産物の量を、分子量マーカーとの比較によって分子量を決定することができる。PCR産物をサイクルシーケンスした後、DNAシーケンサーを用いて塩基配列と長さを測定することによっても、増幅産物の有無を確認することができる。また、リアルタイムPCR法によれば、経時的に増幅反応を検出することができる。
本発明のプライマーセットは、他の要素と併せて、乳酸菌H61株検出用キットとすることができる。前記の他の要素としては、例えば、核酸の抽出、PCR、および増幅産物の検出に必要な試薬類の任意の1種または2種以上が挙げられる。また、この乳酸菌H61株検出用キットは、陽性コントロールとして、乳酸菌H61株の染色体DNAの配列の一部を有し、本発明のプライマーセットにより増幅され得るDNA断片、および/または、陰性コントロールとして、本発明のプライマーセットに対応するが、1塩基または数塩基のミスマッチを有する塩基配列を有するDNA断片を含んでいてもよい。
本発明のプライマーセットは、前記したように、乳酸菌H61株の検出に用いることができる。また、本発明のプライマーセットを用いることにより、乳酸菌H61株菌体または同菌体を含む飲食品等を工業的に製造するに際し、菌数の測定や発酵状態の管理を容易に行うことができる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の技術範囲はこれらにより限定されるものではない。
<実施例1:乳酸菌H61株の検出1>
(1)供試菌株
供試菌株として、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス株を8株(Lcl1〜Lcl8)と、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス株を13株(Lcc1〜Lcc11、乳酸菌H61株、標準株ATCC 19257株)、ラクトバシラス・デキストリニカス株を1株(Lb11)使用した。
(2)乳酸菌DNAの調製種特異的PCR用のDNA調製
この実施例においては、簡便なのでキットを使用しているが、他のDNA調製方法により調製してもよい。精製したDNAを使った方がPCRの再現性が良く好ましい。
(a)MRS液体培地で供試菌株を一晩培養した。
(b)DNeasy Blood&Tissue Kit(QIAGEN社製)のグラム陽性細菌のDNA調製プロトコールに従い、DNAを調製した。詳細は以下のとおりである。
(b−1)培養液1mL(OD 600nm 1.0程度の濁度)を8000rpmで5分間遠心分離し、集菌した。この上清は廃棄した。
(b−2)180μLのリシス溶液(2×TE (20mM Tris−HCl、 2mM EDTA)1mLに20mgリゾチーム、12μL Triton X-100を加えて調製)を、上記の集菌した菌体に加え、懸濁後、37℃、30分間インキュベートした。
(b−3) インキュベート後の上記懸濁液に25μLのProteinase Kと200μLのBuffer ALを加え、混合後、56℃で30分間インキュベートした。
(b−4)これに、200μLの100%エタノールを加えた。
(b−5)上記(b−4)の溶液をスピンカラムに添加し、8000rpmで1分間遠心分離して、DNAをカラムに吸着させた。このカラム通過液とチューブは廃棄した。
(b−6)カラムを新しいチューブにセットし、Buffer AW1 500μLを添加し、8000rpmで1分間遠心分離した。このカラム通過液とチューブは廃棄した。
(b−7)カラムを新しいチューブにセットし、Buffer AW2 500μLを添加し、14000rpmで2分間遠心分離した。
(b−8)カラムを1.5mLのマイクロチューブにセットし、Buffer AE 200μLを添加し、8000rpmで1分間遠心分離した。
(b−9)得られたDNAを含む溶出液のOD260nmの吸光度を測定し、DNA濃度(OD260×50μg/mL)を決定し、これを鋳型DNA溶液とした。
(3)PCR反応
上記(2)において得た供試菌株のDNA溶液を鋳型とし、配列番号1および配列番号3の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットを用い、PCR反応試薬キットであるExTaq(タカラバイオ社製)の方法にしたがってPCR反応を行った。PCR反応液の総量を25μLとすると、キット付属の10xExTaq緩衝液2.5μL、dNTP mixture 2.0μL、20μM プライマー各0.3μL、鋳型DNA10〜20ng、ExTaq DNAポリメラーゼ0.75Uを含む反応液0.15μLを、GeneAmp PCR System 9700(アプライドバイオシステム社製)を用いて、98℃で10秒の予備加熱後、変性を98℃で10秒、アニーリングを56℃で30秒、伸長を72℃で60秒のサイクルを35サイクル行った。
(4)アガロース電気泳動
PCR反応によって得られたPCR産物を、1.8%アガロースゲルで100V、30分電気泳動した。次に、アガロースゲルを臭化エチジウム(0.5μg/mL)で染色後、青色LEDライト下でPCR産物の増幅を示すバンドを観察した。結果を表2と図2に、実施例2の結果とまとめて示す。表中、プライマーと反応して251bp(配列番号1および配列番号3のプライマーを用いた場合)のPCR産物が増幅されたものを「+」、プライマーと反応しなかったものを「−」と表す。
<実施例2:乳酸菌H61株の検出2>
供試菌株から調製したゲノムDNAを鋳型とし、配列番号1および配列番号2の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットを用いたこと以外は、すべて実施例1と同様に行った。
結果を表2に、実施例1の結果とまとめて示す。表中、プライマーと反応して343bp(配列番号1および配列番号2のプライマーを用いた場合)のPCR産物が増幅されたものを「+」、プライマーと反応しなかったものを「−」と表す。
表2と図2に示すとおり、乳酸菌H61株のDNAを使用した試験番号6と20のみにバンドが観察され、本発明のプライマーセットにより乳酸菌H61株だけを特異的に検出できることが確認された。同一亜種のクレモリス株であってもH61株以外では増幅が見られず、乳酸菌H61株を特異的に検出できることが明らかとなった。
<実施例3:乳酸菌H61株の検出3(生菌と加熱菌)>
(1)供試菌株と培養条件
乳酸菌H61株(異なる2つの保存ロット1、2を使用)を、MRS液体培地10mLで菌を一晩培養した。
(2)加熱処理条件とDNAの抽出
(2−1)一晩培養した培養液を8000rpmで1分間遠心分離して集菌し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回菌体を洗浄した。
(2−2)菌体にPBSを加えてOD600nmの吸光度が1および5になるように調製した。
(2−3)OD6005の菌体懸濁液0.5mLをマイクロチューブ2本にとり、1本は100℃で30分間煮沸、もう1本は121℃で15分間オートクレーブ処理を行った。
(2−4)OD6001の菌体懸濁液1.0mLをマイクロチューブ2本にとり、1本は100℃で30分間煮沸を行った。もう1本は生菌からのDNA調製に用いた。
(2−5)上記(2−3)、(2−4)により処理済みの菌体を、遠心分離により集菌し、上記実施例1の「乳酸菌DNAの調製種特異的PCR用のDNA調製」と同様の方法でDNA調製を行った。
(2−6)得られたDNAを鋳型に用いて、上記実施例1の「PCR反応」と同様の方法でPCRを行った。
結果を表3と図4に示す。
表3と図4中の試験番号1〜4は上記保存ロット1、試験番号5〜8は上記保存ロット2の乳酸菌H61株である。また、試験番号1、5は生菌から調製した乳酸菌H61株のDNA、試験番号2、6はOD6005に調製し100℃で30分間加熱した乳酸菌H61株から調製したDNA、試験番号3、7はOD6001に調製し100℃で30分間加熱した乳酸菌H61株から調製したDNA、試験番号4、8はOD6005に調製し121℃で15分間オートクレーブ処理した乳酸菌H61株から調製したDNAである。
表3と図3に示すとおり、乳酸菌H61株の生菌のDNAおよび加熱処理菌のDNAを使用した試験番号1〜8全てにバンドが観察され、本発明のプライマーセットは、乳酸菌H61株の生菌のみならず加熱処理菌(死菌)に対しても、特異的な検出能を発揮することが明らかとなった。これは、乳酸菌H61株の生菌を利用した製品等はもとより、加熱処理した乳酸菌H61株を利用した製品等においても、乳酸菌H61株を検出できることを意味する結果であり、非常に有用である。

Claims (5)

  1. 配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号2または3の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなる、乳酸菌ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)H61(NITE P−92)株検出用プライマーセット。
  2. 請求項1記載のプライマーセットを含むことを特徴とする、H61株検出用キット。
  3. 以下の工程を含む、乳酸菌ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)H61(NITE P−92)株の検出方法。
    (1)請求項1記載のプライマーセットを用いて核酸断片を増幅する工程
    (2)工程(1)で得られた核酸断片を検出する工程
  4. 配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号2の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなる、乳酸菌ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)H61(NITE P−92)株検出用プライマーセットで増幅されることを特徴とする、配列番号4で表されるポリヌクレオチド。
  5. 配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号3の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなる、乳酸菌ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)H61(NITE P−92)株検出用プライマーセットで増幅されることを特徴とする、配列番号5で表されるポリヌクレオチド。
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