JP2020152969A - 搬送性に優れた内面螺旋溝付き鋼管およびその製造方法 - Google Patents

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秋月 誠
Makoto Akizuki
誠 秋月
翔平 三町
Shohei Mimachi
翔平 三町
黒部 淳
Atsushi Kurobe
淳 黒部
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Abstract

【課題】溶接部に割れの発生がなく、内面において複数の凹部が長手方向へ連続直線的な形状で存在する内面溝付き鋼管を提供する。【解決手段】内面螺旋溝付き鋼管は、C:0.2質量%以上1.2質量%以下、およびP:0.03質量%以下を含み、溶接部の金属組織が、再加熱処理されたフェライトおよび炭化物を含むとともに、前記溶接部も含めた鋼管に含まれる非金属介在物の粒径は20μm以下であり、内面に複数の凹部が長手方向に連続螺旋形状で形成されている。【選択図】なし

Description

本発明は、流体や粉体の搬送性に優れた内面螺旋溝付き鋼管およびその製造方法に関する。
鋼管の内部を通して流体や粉体を搬送する溶接鋼管は、一般的に、鋼板または鋼帯などを溶接することで製造される。また、溶接鋼管の内面に、溶接鋼管の長手方向に連続的に形成された凹部を有する内面螺旋溝付き溶接鋼管も流体や粉体を搬送する鋼管として使用されている。
例えば、特許文献1には、炭素量が0.6質量%である高炭素鋼板を高周波溶接した後、冷間絞り圧延および熱間縮径圧延を施して、溶接鋼管の一種である電縫鋼管を製造する方法が開示されている。特許文献1に記載されているような高炭素鋼板または高炭素鋼帯を溶接すると、溶接部などにおいて溶接割れが発生する。そのため、特許文献1に記載されているような高炭素溶接鋼管は、通常、溶接割れを潰すために、冷間絞り圧延および熱間縮径圧延などの製造工程をさらに必要とする。このように、高炭素の溶接鋼管は、効率的に製造することができないという問題がある。また、溶接鋼管内面に凹部を形成する場合には、凹部加工時に溶接部の微細な割れやピットを起因とした割れが発生するという問題がある。
特許文献2には、アルミニウムあるいはアルミニウム合金の押出し加工素管の内面に、前記素管の長手方向へ螺旋状に連続形成した内面溝付管が提案されている。前記溝付管は、前記素管の内側に芯金を挿入し、前記素管を回転させながら前記芯金を移動させて塑性変形させることによって溝を形成している。しかし、押出し加工素管を基にしているため溶接鋼管に存在する溶接部を考慮していない。通常、鋼板や鋼帯を溶接して形成した溶接部は、母材部よりも硬くなるため溝付き加工の際に溶接部に割れが発生するという問題がある。
特開2015−062920号公報 特許6316697号公報
本発明は、かかる問題を解決するために、内面に複数の凹部を長手方向へ連続的に形成した溶接鋼管であって、凹部を形成しても溶接部に割れの発生がない高炭素の螺旋溝付き鋼管を提供することを目的とする。また、本発明の内面螺旋溝付き鋼管は、内面に複数の凹部が長手方向へ螺旋状に形成されたものである。前記凹部を形成することで、流体が粉体が前記鋼管内側に投入されて搬送する際に、凹部に流体や粉体が圧入される。そして、流動性の物体は接触した面の沿って流れる特性があるため、これによって螺旋状の凹部に沿って移動することからエネルギー損失を少なくして効率的に搬送することができる。
上記の課題を解決するために、本発明に係る内面螺旋溝付き鋼管は、C:0.2質量%以上1.2質量%以下、およびP:0.03質量%以下を含み、溶接部の金属組織が、再加熱処理されたフェライトおよび炭化物を含むとともに、前記溶接部も含めた鋼管に含まれる非金属介在物の粒径は20μm以下であり、内面に複数の凹部が長手方向に連続螺旋形状で形成されていることを特徴とする。
また、本発明に係る内面螺旋溝付き鋼管の製造方法は、C:0.2質量%以上1.2質量%以下、およびP:0.03質量%以下を含み、溶接部の金属組織が、再加熱処理されたフェライトおよび炭化物を含むとともに、前記溶接部も含めた溝付き鋼管に含まれる非金属介在物の粒径は20μm以下である金属組織である溝付き鋼管の製造方法であって、鋼板または鋼帯をロール成形により管状に成形する成形工程と、前記成形工程後、相対する前記鋼板の端面同士、または相対する前記鋼帯の端面同士を溶接して鋼管を製造する溶接工程と、前記溶接工程後の鋼管に、焼入処理を施す焼入工程と、前記焼入工程後、前記鋼管に焼戻処理を施す焼戻工程と、前記焼戻工程後の鋼管の内側に溝付きの芯金を挿入して複数の凹部を長手方向へ螺旋状に形成する工程を含むことを特徴とする。
本発明によれば、多くの製造工程を必要とせず、溶接部に割れの発生がなく、内面において複数の凹部が長手方向へ連続螺旋形状で存在する内面螺旋溝付き鋼管を提供することができる効果を奏する。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
<素材となる鋼管>
本実施形態に係る素材となる鋼管(以下、素鋼管と記す)は、C:0.2質量%以上1.2質量%以下、およびP:0.03質量%以下を含み、溶接部の金属組織が、再加熱処理されたフェライトおよび炭化物を含むとともに、前記溶接部も含めた鋼管に含まれる非金属介在物の粒径は20μm以下である金属組織である。ここで、再加熱処理とは、例えば、後述する焼戻処理を挙げることができる。また、ここで言うフェライトおよび炭化物を含む金属組織とは、例えば、焼戻マルテンサイト、ベイナイトおよびパーライトのことを指す。なお、溶接部の金属組織が再加熱処理されたフェライトおよび炭化物を含む金属組織となる高炭素溶接鋼管は、例えば、鋼板または鋼帯がロール成形により管状に成形された後、相対する鋼板の端面同士、または相対する該鋼帯の端面同士が溶接されることにより溶接部が形成され、溶接部の形成後、焼入処理および焼戻処理が施されることによって製造される。このような製造方法によれば、本実施形態に係る素鋼管は、Cの含有量が多い高炭素溶接鋼管であるにも関わらず、溶接割れが発生しない。そのため、溶接割れを潰すために、冷間絞り圧延および熱間縮径圧延などの製造工程を必要とせず、効率的に製造可能である。また、後述する内面の凹部螺旋加工においても、溶接部の割れを発生させず複数の凹部を形成することができる。
なお、ここでいう「溶接部」とは、鋼板または鋼帯が溶接されている部分を指す。
また、本実施形態に係る素鋼管に硫化物および酸素などの非金属介在物が含まれていてもよい。非金属介在物のうち、硫化物、なかでもMnSが素鋼管表面に凝集および析出することで、非金属介在物を起点とする割れの原因となる。そのため、硫化物などの非金属介在物の粒径は、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
〔鋼板および鋼帯〕
鋼板および鋼帯は、本実施形態に係る素鋼管の素形材として好適に用いられる。鋼板および鋼帯は、ロール成形を施されることで管状に形成され、溶接、焼入処理および焼戻処理を施されることで、本実施形態に係る素鋼管となる。
(ロール成形)
本実施形態におけるロール成形では、ローラーの間に鋼板または鋼帯を通すことで鋼板
または鋼帯を管状に成形加工する。ここで、鋼帯を素形材として用いたほうがロール成形
しやすくなるため、ロール成形前に鋼に熱間圧延などを施すことでコイル状の鋼帯にする
ことが好ましい。また、鋼板または鋼帯をロール成形する前に、酸で洗浄したり、600
℃以上800℃以下、1時間以上50時間以下の条件で焼鈍したりしてもよい。これによ
り、よりロール成形しやすくなる。
(溶接)
本実施形態における溶接では、管状に変形された鋼板の端面同士または鋼帯の端面同士
を突合せ溶接する。これにより、本実施形態に係る素鋼管が得られる。本実施形態における溶接の方法としては、例えば、抵抗溶接、レーザービーム溶接および電子ビーム溶接などの高密度エネルギー溶接を挙げることができるが、抵抗溶接が好ましく、抵抗溶接のなかでも高周波溶接が好ましい。鋼板または鋼帯を高周波溶接によって溶接することで、効率的かつ低コストで鋼板または鋼帯を溶接することができる。また、溶接は1300℃以上1600℃以下で行うことが好ましい。
(焼入れ)
本実施形態に係る素鋼管には、溶接の後、焼入処理が施されている。特に、溶接直後に焼入れすることで、溶接部の溶接割れを好適に防止することができる。焼入処理では、得られた素鋼管のA3変態点またはAcm変態点に対して50℃以上高い温度から、素鋼管の温度がMs点(マルテンサイト変態開始温度)に対して50℃以上200℃以下低い温度となるように冷却を施すことが好ましく、Ms点に対して100℃以上200℃以下低い温度となるように冷却を施すのがより好ましい。この場合、例えば、素鋼管外面から水冷または油冷することで冷却することが好ましい。冷却処理が施された素鋼管の温度が上
述の好ましい範囲の温度であることにより、当該素鋼管の溶接部における金属組織がマルテンサイト中心の金属組織となる。これにより、素鋼管に焼戻処理を施した際に、溶接部における、マルテンサイト変態に伴って発生した引張応力を好適に軽減することができる。その結果、溶接割れや加工時の溶接部割れを防止するという焼戻しの効果を最大限に発揮させることができる。
(焼戻し)
また、本実施形態では、焼入処理を行った素鋼管に対して、焼戻処理が施されている。焼戻処理の温度としては、500℃以上A1変態点に対して50℃高い温度以下が好ましく、600℃以上750℃以下がより好ましく、700℃以上730℃以下がさらに好ましい。また、焼戻処理の時間としては、5秒以上5分以下が好ましく、10秒以上1分以下がより好ましい。このように、焼戻処理の時間が短時間であることで、溶接割れを防止することができる。また、焼戻処理は、焼入後速やかに素鋼管に対して施されることが好ましい。例えば、焼戻処理は、焼入後、5分以内に行うことが好ましく、1分以内に行うことがより好ましい。
(螺旋凹部加工)
本実施形態では、焼戻処理を行った素鋼管に対して、素鋼管の内面に複数の凹部を長手方向に連続螺旋形状で形成する螺旋凹部加工が施される。螺旋凹部加工は、所定寸法の凹部と同じ寸法の凸部を、形成する凹部と同じ個数で円周方向に設けた芯金を焼戻処理した素鋼管の内側に挿入して、前記素鋼管を長手方向に回転させながら移動させる塑性加工で実施される。凹部の寸法や螺旋角度および個数は特に限定されることはなく、素鋼管の内径や搬送効率などで決定される。
本実施形態に係る素鋼管は、鋼管におけるCの含有量が多い高炭素溶接鋼管である。そのため、溶接により急速に加熱された溶接部の金属組織にマルテンサイト変態が生じ、当該溶接部の金属組織は硬質なマルテンサイトとなることがある。このマルテンサイト変態に伴って発生した引張応力と、ロール成形により鋼中に残留している加工ひずみ(引張応力)とにより、溶接部において溶接割れが発生する虞がある。これに対し、上述のよう
に、溶接後に焼入処理および焼戻処理が施されていることで、溶接部の金属組織にマルテンサイト変態に伴って発生した引張応力を軽減することができる。これにより、素鋼管の溶接部において靱性を高めることができるため、溶接割れや螺旋凹部加工時の溶接部の割れが発生することを防止することができる。
<内面螺旋溝付き鋼管の製造方法>
本実施形態における鋼管の製造方法は、成形工程と溶接工程と焼入工程と焼戻工程と螺旋凹部加工工程を含む。成形工程、溶接工程、焼入工程、焼戻工程および螺旋凹部加工工程は、それぞれ上述のロール成形、溶接、焼入処理、焼戻処理および螺旋凹部加工と同様である。これらの工程によって、本実施形態に係る内面溝付き鋼管が製造される。
〔鋼の製造〕
まず、表1に示す成分組成の鋼を製造した。
Figure 2020152969
〔素鋼管の製造〕
表1の各種鋼のスラブを1250〜1300℃に加熱し熱間圧延することにより、厚み
6.0mmの熱延コイル(鋼帯)を製造した。得られた熱延コイルを酸洗し、鋼種Eに対しては700℃の条件下で25時間焼鈍し、鋼種A、B、C、Dに対しては750℃の条件下で10時間の焼鈍を施した。その後、熱延コイルを長手方向にスリットし、ロール成形した。ロール成形後、相対する熱延コイルの端面同士を溶接温度1350℃以上の条件で高周波溶接して、直径34mm、厚み6.0mmの鋼管を製造した。
また、表2に示すように、実施例1〜3については、溶接後、さらに素鋼管に焼入処理および焼戻処理を施した。焼戻処理は、680℃1分の条件で行った。
〔素鋼管の評価〕
上述の素鋼管について、以下のように、ロール成形性、溶接割れの有無および溶接部の曲げ加工性を確認し、評価した。
(ロール成形性)
表2に示すように、造管時に、ロール成形ができた場合には「可」と評価し、ロール成
形ができなかった場合には「不可」と評価した。ロール成形ができたものについてのみ、
以下の評価を行った。
(溶接割れ)
各実施例および比較例の素鋼管に対し、高周波溶接によって形成された溶接部の溶接割れの有無を調べた。表2に示すように、溶接部の溶接割れがある場合には「あり」と評価し、溶接割れがない場合には「なし」と評価した。なお、表2に示すように、造管時にロール成形ができ、かつ、溶接割れがない素鋼管を実施例として記載した。また、それ以外の素鋼管を比較例として記載した。
(溶接部の曲げ加工性)
各実施例および比較例の素鋼管に対して、高周波溶接によって形成された溶接部の曲げ加工性を調査した。曲げ加工性は、素鋼管を長さ70mmに切り出して、溶接部の反対側を長手方向に切断し、オープン管の試験片を得た。前記試験片の溶接部を曲げ部の頂点として、溶接部の内面を内側に曲げる方法と外側に曲げる方法で、溶接部内面の割れ有無を調査した。溶接部内面に割れがある場合には「あり」と評価し、ない場合には「なし」と評価した。また、曲げは密着曲げとした。曲げ性を調査するのは、螺旋凹部加工をした際に溶接部が圧縮か引張の加工力を受けるが、その状態を模擬して耐割れ性を評価するためである。
〔非金属介在物粒径の測定〕
溶接部の溶接割れがない実施例1〜3の鋼管について、鋼管内面の溶接部について非金属介在物粒径を測定した。鋼管を長さ70mmに切り出して、溶接部の反対側を長手方向に切断し、オープン管の試験片を得た。当該試験片のうち、鋼管の内面を溶接ビード部も含めて非金属介在物である硫化物(MnS)の粒径を以下のように求めた。100倍の倍率の光学顕微鏡を用いて鋼管の内面を観察した。1視野の面積1.44mm中における非金属介在物のうち、一番粒径の大きい硫化物の円相当径を、画像処理を用いて求め、当該円相当径を非金属介在物の粒径とした。これを60視野測定し、極値統計によって、30000mmにおける最大介在物粒径の予測を行った。結果を表2に示す。
上記の調査結果を表2に示す。
Figure 2020152969
表1、2に示すように、C:0.2質量%以上1.2質量%以下およびP:0.03質
量%以下を含み、溶接部の金属組織が、焼戻処理されたフェライトおよび炭化物を含む金属組織である焼戻マルテンサイトの実施例1〜3に係る高炭素溶接鋼管は、溶接割れが発生していなかった。また、非金属介在物の粒径も20μm以下であった。
〔螺旋凹部加工の結果〕
表2の実施例1〜3の素鋼管に対して、内面に螺旋凹部加工を行った。凹部の寸法は、深さ2mm、幅5mmで、螺旋角度は10°であり、凸部の幅も5mmとした。また、凹部の個数は、7個を形成した。形成方法は、前記凹部と同じ寸法の芯金を素鋼管内側に挿入し、素鋼管の溶接部が凹形状になる場合と凸形状になる場合について、素鋼管を回転させながら、長手方向に移動させて形成した。形成した結果、何れの加工においても溶接部内面に割れは発生していなかった。


Claims (2)

  1. C:0.2質量%以上1.2質量%以下、およびP:0.03質量%以下を含み、溶接部の金属組織が、再加熱処理されたフェライトおよび炭化物を含むとともに、前記溶接部も含めた鋼管に含まれる非金属介在物の粒径は20μm以下であり、内面に複数の凹部が長手方向に連続螺旋形状で形成されていることを特徴とする内面螺旋溝付き鋼管。
  2. C:0.2質量%以上1.2質量%以下、およびP:0.03質量%以下を含み、溶接部の金属組織が、再加熱処理されたフェライトおよび炭化物を含むとともに、前記溶接部も含めた鋼管に含まれる非金属介在物の粒径は20μm以下である金属組織である鋼管の製造方法であって、鋼板または鋼帯をロール成形により管状に成形する成形工程と、前記成形工程後、相対する前記鋼板の端面同士、または相対する前記鋼帯の端面同士を溶接して鋼管を製造する溶接工程と、前記溶接工程後の鋼管に、焼入処理を施す焼入工程と、前記焼入工程後、前記鋼管に焼戻処理を施す焼戻工程と、前記焼戻工程後の鋼管の内側に溝付きの芯金を挿入して複数の凹部を長手方向へ螺旋状に形成する工程を含むことを特徴とする内面螺旋溝付き鋼管の製造方法。



















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