JP2020151740A - レーザ加工装置およびレーザ加工方法 - Google Patents
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Abstract
Description
レーザピーニングに用いられる光源としては、波長1064nmのYAGレーザ基本波や波長532nmのYAGレーザを基本波長の1/2にした高調波が用いられ、パルス幅はナノ秒のレーザ発振器が使用されることが多い。なお、サブナノ秒やフェムト秒といった超短パルスレーザを用いたレーザピーニングの事例も見受けられる。
本発明は、レーザピーニングの施工条件の設定の容易化を図ったレーザ加工装置およびレーザ加工方法を提供することを目的とする。
(第1の実施形態)
図1〜図7を用いて第1の実施形態を説明する。図1は第1の実施形態に係るレーザピーニング装置10を示す概念図である。
レーザピーニング装置10は、レーザ発振器11、光伝送部12、集光部13、保持・移動部14、制御部15(入力部16、DB記憶部17、算出部18、駆動部19)を有する。
レーザ発振器11を制御することで、パルスエネルギーを調節できる。
但し、ジャイアントパルスYAGレーザ発振器以外のレーザ発振器11も利用可能である。レーザ発振器11から照射されるパルスレーザによって、施工対象Oの表面上にプラズマが形成され、レーザアブレーションが行えれば良い。
なお、光伝送部12が光ファイバを有し、レーザ光Lを長距離伝送してもよい。
集光部13を制御する(例えば、レンズと施工対象Oの距離を変化させる)ことで、レーザ光Lのスポット径を調節できる。
施工対象Oの表面に液体(例えば、水)が0.1mm以上あることが好ましい。レーザアブレーションにより発生したプラズマを閉じ込めるためである。
このため、施工対象Oの表面に液体(水等)を供給するノズル等を設けてもよい。
また、集光部13の先端に液体を噴出するノズルを設けてもよい。ノズルから噴出する液体をレーザ光Lと同軸で、施工対象Oまで送ることで、安定的なレーザピーニングが容易となる。
既述のように、液体が水の場合、YAGレーザの第2高調波を用いることが好ましい。
保持・移動部14を用いることで、図2に示すように、レーザスポットSpをレーザ光駆動軌跡Tに沿って移動し、施工範囲Aをレーザで処理できる。
保持・移動部14の移動速度を変えることで、施工範囲Aでの照射密度(パルス密度:単位面積当たりにパルスレーザを照射する密度)を調節できる。レーザ発振器11のパルス周期および施工対象Oの移動速度によって、照射密度(パルス密度)が定まる。
入力部16は、DB記憶部17へのデータ(例えば、残留応力測定データ)の入力にも用いることができる。
データベースは、次のような情報を含む。
・物性データ(図3参照)
・残留応力データ(残留応力プロファイル、図4〜図6参照)
これらの材料の物性は、後述の衝撃圧力からの残留応力の算出(図7のステップS22)に用いることができる。
なお、物性データは、降伏応力を含むことが好ましい。後述の衝撃圧力の選択(図7のステップS21)において、降伏応力の情報を用いるためである。
尚、施工対象Oの深さ方向の残留応力は、X線法(エッチング併用)、穿孔法などにより測定できる。前者では、電解研磨を用いて、施工対象Oの表面を応力解放が極力発生しないように研磨し、X線回折により残留応力を求める。
図4では、12Cr鋼について、パルスエネルギー、スポット径、照射密度を変化している(グラフG11,G12)。
G11:パルスエネルギー70mJ、スポット径φ0.7mm、照射密度27パルス/mm2でレーザピーニングした12Cr鋼の応力測定結果
G12:パルスエネルギー70mJ、スポット径φ0.7mm、照射密度45パルス/mm2でレーザピーニングした12Cr鋼の応力測定結果
図6では、706合金について、パルスエネルギー、スポット径を固定し、照射密度を変化している(グラフG31〜G34)。但し、パルスエネルギーを比較的低エネルギーとしている。
G22:パルスエネルギー300mJ、スポット径φ0.8mm、照射密度100パルス/mm2でレーザピーニングした706合金の応力測定結果
G23:パルスエネルギー200mJ、スポット径φ0.6mm、照射密度100パルス/mm2でレーザピーニングした706合金の応力測定結果
G24:パルスエネルギー200mJ、スポット径φ0.6mm、照射密度50パルス/mm2でレーザピーニングした706合金の応力測定結果
G32:パルスエネルギー20mJ、スポット径φ0.3mm、照射密度360パルス/mm2でレーザピーニングした706合金の応力測定結果
G33:パルスエネルギー20mJ、スポット径φ0.3mm、照射密度200パルス/mm2でレーザピーニングした706合金の応力測定結果
G34:パルスエネルギー20mJ、スポット径φ0.3mm、照射密度100パルス/mm2でレーザピーニングした706合金の応力測定結果
すなわち、材料、施工条件(パルスエネルギー、スポット径、照射密度)を変化させた複数の残留応力プロファイルを用いることで、施工対象Oの材料および所望の残留応力条件(所望の残留応力、所望の深さ)に応じた施工条件を決定(選択)できる。
算出部18は、プロセッサ(例えば、CPU: Central Processing Unit)等のハードウェアとプログラム等のソフトウェアから構成できる。
駆動部19が、レーザ発振器11、光伝送部12、集光部13、保持・移動部14を駆動、制御することで、施工条件(パルスエネルギー、スポット径、照射密度など)を変更することができる。
場合により、a)識別情報のみ、b)識別情報と物性情報、c)物性情報のみを適宜に選択して入力できる。入力部16が、例えば、施工対象Oの材料の識別情報を受け取る。
場合により、a)残留応力のみ、b)残留応力および深さ、c)深さのみを適宜に選択して入力できる。入力部16が、例えば、所望の残留応力(必要に応じて、所望の深さ)の情報を受け取る。
例えば、入力した材料情報が識別情報の場合、物性データ中の識別情報がサーチされる。
この判断が「Yes」であれば、入力した材料情報が用いられる。一方、この判断が「No」であれば、入力した材料情報に近接する材料の情報が物性データから選択される(ステップS14)。
施工対象Oと密度が近い材料が複数ある場合、他の物性値を用いて、材料間の近接の程度を判断できる。
材料が12Cr鋼の場合、最大圧縮応力値が−500MPa以上なら、図4のグラフG11,G12の条件いずれかを用いればよい。一方、圧縮応力の深さが1000μmの場合、残留応力データの範囲内では施工条件がない。
図5に示す条件範囲であれば深さ1000μm以上の条件が選定できる。
また、図6に示す条件範囲であれば圧縮応力深さ500μm以下で−1000MPa以上の圧縮応力を付与できる条件を選定できる。例えば、施工対象Oの厚さが薄くレーザピーニングによる変形を防止したい場合などに有用である。
なお、必要に応じて、選択あるいは決定された施工条件、設定条件をユーザに提示してもよい。すなわち、レーザピーニング装置10は、このような推奨する情報を表示する表示装置を備えることができる。
算出部18は、施工対象Oの降伏応力以上の衝撃圧力を選択する。
この衝撃圧力は、レーザアブレーション中に、施工対象Oの表面に印加される圧力をいう。施工対象Oに衝撃圧力を印加する結果、レーザアブレーションの終了後(衝撃圧力の消失後)、施工対象Oに応力が残留する(残留応力の付与)。
すなわち、当初選択される衝撃圧力は、初期値であり、その精度は問われない。例えば、降伏応力に1より大きい定数を乗じて、衝撃圧力としてもよい。
算出部18は、衝撃圧力に基づいて、残留応力を算出する。
この算出は、線形の力学モデルを用いた数値計算により行うことができる。すなわち、レーザピーニングで材料に導入されるエネルギーは小さく局所的である。従い、材料に誘起されるひずみは微小であり、マクロ的な変形は発生しない。このため、近似的な線形演算によって残留応力を算出できる。
算出部18は、算出された残留応力が残留応力条件(所望の残留応力、深さ)を満たすかを判断する。
一方、この判断が「No」であれば、衝撃圧力を変更して(ステップS24)、残留応力を算出し、残留応力条件を満たすかを再度判断する(ステップS21〜S23)。
算出部18は、求められた衝撃圧力に基づいて、施工条件を算出する。
この算出には、衝撃圧力とレーザピーニング施工条件との関係を示す様々な計算式(後述の式(1)〜(4))を用いることができる。
P = 860×(I/1014W/cm2)2/3×(λ/1μm)−2/3
・・式(1)
ここで、I: レーザ光Lの集光強度(1014W/cm2)
λ: レーザの波長(μm)
レーザ強度: 3×10−6〜7×1013W/cm2
パルス幅: 1.5ms〜500ps
波長:10.6μm〜248nm
パルスエネルギー:100mJ〜10kJ
ここで、I’: レーザ強度(GW/cm2)
λ: レーザ波長(μm)
τ: レーザのパルス幅(ns)
b、n: 材料定数(物質によって変化する)
P’ = 0.01×(α/(2α+3))1/2×Z1/2×I1/2 ・・・式(3)
Z(g/cm2s): 衝撃インピーダンス
α: レーザ照射により物質が得る内部エネルギーのうち熱エネルギーに変換される割合
P’W = 1.02×I1/2 ・・・式(4)
すなわち、水中でのレーザピーニング施工は、レーザ強度を決めれば材料表面から導入可能な衝撃圧力を算出できる。また、この計算式に基づいて、媒質に応じた衝撃圧力を算出できる。
算出部18は、このようにして算出された施工条件がレーザピーニング装置10のハードウェア(レーザ発振器11、光伝送部12、集光部13、保持・移動部14)で施工可能かを判断する。
より具体的には、制約条件は、レーザ発振器11のエネルギー、施工対象Oとレーザ光Lの相対位置や角度の変更速度、施工対象Oとレーザ光Lの移動可能な範囲や取り得る姿勢、レーザ照射ヘッドの施工対象Oや周辺構造物との干渉、等が挙げられる。施工対象Oが板材等の場合は可動範囲や干渉はあまり問題にならないが、施工対象Oの複雑形状面に施工する場合や、施工対象Oが現場に設置された装置等の場合には、可動範囲や干渉が制約条件となり得る。
一方、判断が「No」であれば、ステップS12に戻り、残留応力条件が再入力される。すなわち、ユーザに対して、当初入力された残留応力条件を付与する施工は不可能であることを提示し、異なる残留応力条件を入力するように促す(残留応力の見直しの要求)。
例えば、レーザ発振器11の最大パルスエネルギーが400mJの場合、ステップS17において、400mJ以下の範囲でユーザが入力可能とする(400mJを超える値を選択できないように、制約を加える)。
図7を用いて第2の実施形態に係るレーザピーニングシステムを説明する。
レーザピーニングシステムは、複数のレーザピーニング装置10(1)、10(2)がインターネット回線Cでマスター制御部31と接続されている。
図7を用いて第3の実施形態に係るレーザピーニングシステムを説明する。本実施形態は、特にステップS12、ステップS26の処理が第1の実施形態と異なる。
また、同じ残留応力を付与しようとする場合でも、施工対象Oが途中で性状や材質が異なる(例えば溶接部)場合や、制約条件が異なる(例えば、大半は垂直角度でレーザ光Lを照射できるものの、一部部位が周辺環境等の都合で斜めにレーザ光Lを照射する必要があり、同一のスポット形状とできない場合等)場合も有り得る。
これらのような場合は、施工の途中で施工条件を変化させる必要がある。施工の途中で施工条件を変化させるには、例えば、施工対象Oとレーザ光Lの相対位置変化速度を変化させることで照射密度を変更させる、レーザ光Lの照射角度変更や集光部13の制御によりスポット径を変化させるといったことを行う。
例えば、施工条件AからBへの変更を照射角度の変更によって行う場合、角度の変更速度や、過渡期の条件において実現不可能な角度(レーザ照射ヘッドの可動範囲や、レーザ照射ヘッドと施工対象Oの干渉)でないかを判断する。また、施工条件AからBに移行する途中の施工条件で付与される圧縮残留応力が問題ないか(例えばあらかじめ設定した許容範囲から外れないか)を判断する。
Claims (12)
- パルスレーザを施工対象に照射して残留応力を付与するレーザ照射装置と、
前記施工対象の材料および所望の残留応力の情報を受け取る入力部と、
材料、施工条件、および残留応力の対応関係を表す残留応力データを記憶する記憶部と、
前記残留応力データに基づいて、前記施工対象の材料および前記所望の残留応力に対応する施工条件を選択する選択部と、
を具備するレーザ加工装置。 - 前記入力部が、前記施工対象の材料、前記所望の残留応力、および残留応力が付与される所望の深さの情報を受け取り、
前記残留応力データが、材料、施工条件、残留応力、および深さの対応関係を表し、
前記選択部が、前記残留応力データに基づいて、前記施工対象の材料、前記所望の残留応力、および前記所望の深さに対応する施工条件を選択する
請求項1記載のレーザ加工装置。 - 前記選択部は、
前記残留応力データ内に、前記施工対象の材料を見出せない場合、前記残留応力データ内から前記施工対象の材料に近接する材料を選択する
請求項1または2に記載のレーザ加工装置。 - 前記選択部が、前記残留応力データ内に前記材料および前記所望の残留応力に対応する施工条件を見出せない場合、前記所望の残留応力に対応する衝撃圧力を算出し、前記衝撃圧力に基づいて施工条件を決定する算出部
をさらに具備する請求項1または2記載のレーザ加工装置。 - 前記算出部が、
前記施工対象の降伏応力以上の衝撃圧力を選択し、
前記衝撃圧力に基づいて、前記施工対象に付与される残留応力を算出し、
前記算出された残留応力が前記所望の残留応力に対応するかを判断し、
前記算出された残留応力が前記所望の残留応力に対応する場合に、前記衝撃圧力を前記所望の残留応力に対応する衝撃圧力とする
請求項4に記載のレーザ加工装置。 - 前記算出部が、
前記算出された残留応力が前記所望の残留応力に対応しない場合、前記衝撃圧力を変更し、
前記変更された衝撃圧力に基づいて、前記施工対象に付与される残留応力を再算出し、
前記再算出された残留応力が前記所望の残留応力に対応する場合に、前記変更された衝撃圧力を前記所望の残留応力に対応する衝撃圧力とする
請求項5に記載のレーザ加工装置。 - 前記記憶部が、材料と物性を対応して表す物性データをさらに記憶し、
前記算出部が、
前記物性データに基づいて、前記施工対象の材料に対応する物性を選択し、
前記衝撃圧力および前記選択された物性に基づいて、前記施工対象に付与される残留応力を算出する、
請求項5または6に記載のレーザ加工装置。 - 前記算出部は、
前記物性データ内に、前記施工対象の材料を見出せない場合、前記物性データ内から前記施工対象の材料に近接する材料の物性を選択する
請求項7に記載のレーザ加工装置。 - 前記算出部は、決定した前記施工条件を、制約条件と照合して施工可否を判定し、施工可と判定した場合は当該施工条件による施工を実行し、施工否と判定した場合は、当該施工条件の見直し、または前記入力部に入力された前記所望の残留応力の見直しを要求する、
請求項4乃至8のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。 - 前記算出部は、前記施工対象の第1施工部位に対する前記施工条件として第1施工条件を決定し、前記施工対象の前記第2施工部位に対する前記施工条件として第2施工条件を決定し、前記第1施工条件、前記第2施工条件、および前記第1施工条件から前記第2施工条件へ移行する途中の施工条件について、制約条件と照合して施工可否を判定する、
請求項9記載のレーザ加工装置。 - 前記残留応力データ内に前記施工対象の材料がない場合に、前記残留応力データに前記施工対象での残留応力の測定結果を追加する
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。 - レーザ光を施工対象に照射して、残留応力を付与するレーザ加工方法であって、
前記施工対象の材料および所望の残留応力の情報を入力する工程と、
材料、施工条件、および残留応力の関係を表す残留応力データに基づいて、前記施工対象の材料および前記所望の残留応力に対応する施工条件を選択する工程と、
を具備するレーザ加工方法。
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