JP2020151043A - 除染方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な方法で内毒素(エンドトキシン)の活性を低下させて、処理対象物を除染する方法を提供する。【解決手段】本発明に係る除染方法は、処理対象物に対して200nm未満の波長の紫外線を照射することで、処理対象物に付着した内毒素の活性を低下させる工程(a)を含む。【選択図】 図1
Description
本発明は、除染方法に関し、特に処理対象物に付着した内毒素の活性を低下させる方法に関する。
内毒素(「エンドトキシン」とも称される。)は、血中に入ることで、その量が微量であっても、発熱などの種々の生体反応を引き起こす。このため、医療機器、特に体内に埋入される医療機器に付着したエンドトキシンの活性を低下させてことが必要である。
従来、エンドトキシンの活性を低下させる方法として、乾熱処理法、ガンマ線などの放射線を照射する方法、過酸化水素とオゾンを複合して処理する方法、又は、プラズマを用いて処理する方法などが知られている。
下記特許文献1には、窒素雰囲気中で電極対に対して電気パルスを印加してファインストリーマ放電を生じさせ、パルス電界、窒素ラジカル、及びファインストリーマ放電に起因して窒素雰囲気が発する250nm付近の波長の紫外線を、エンドトキシンに対して複合的に作用させて、エンドトキシンを不活化する方法が開示されている。
下記特許文献2には、被処理物が収容されたチャンバー内に、過酸化水素蒸気とオゾンガスとを導入することで、ヒドロキシラジカルを被処理物に作用させて、殺菌処理とエンドトキシンの不活化処理を同時期に実行する方法が開示されている。
土谷, "Taking of LAL 第2話 エンドトキシン", Wako News No.2, 1990, 10月
従来の乾熱処理法は、処理温度が250℃程度とされている。これは、エンドトキシンが耐熱性毒素であるためである。例えば、非特許文献1においても、乾熱滅菌によって十分に不活化するためには、250℃以上、30分以上の処理が必要であると記載されている。
一方で、例えば、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂のガラス転移温度は約140℃であり、ポリカーボネート(PC)樹脂のガラス転移温度は、約150℃である。すなわち、上記の乾熱処理法は、金属やセラミックスなどの無機材料からなる処理対象物に対するエンドトキシンの不活化には利用できるものの、樹脂材料からなる処理対象物に対するエンドトキシンの不活化には利用が困難である。
また、ガンマ線などの放射線を処理対象物に照射する方法の場合、処理時にガンマ線を遮蔽するための遮蔽物を設置する必要があるため、装置規模が拡大すると共に、取扱いに慎重さが要求される。
また、特許文献1の方法の場合、プラズマを生成するために真空環境を構築する必要があるところ、これに付帯したポンプ、恒温槽、ガス除去装置などの各種装置が必要となるため、装置規模が拡大するという問題がある。
また、特許文献2の方法の場合、過酸化水素蒸気発生装置やオゾンガス発生装置、減圧装置を必要とし、装置の大型化が予想される。
また、処理対象物に対して、エンドトキシンそのものではなく、菌体が付着している場合において、この菌体を構成する成分であるエンドトキシンを、簡易且つ短時間で不活化する方法は、いまだ実用化されていないのが現状である。
本発明は、上記の事情に鑑み、簡易な方法で内毒素(エンドトキシン)の活性を低下させて、処理対象物を除染する方法を提供することを目的とする。
本発明に係る除染方法は、処理対象物に対して200nm未満の波長の紫外線を照射することで、前記処理対象物に付着した内毒素の活性を低下させる工程(a)を含むことを特徴とする。
本発明者らの鋭意研究により、200nm未満の波長の紫外線を照射することで、内毒素(エンドトキシン)の活性を低下させる作用が奏されることが確認された。特に、「発明の詳細な説明」の項で後述されるように、内毒素そのものに紫外線を照射した場合のみならず、内毒素を構成する菌体に対して紫外線を照射した場合にも、内毒素の活性を低下させる作用が奏されることが確認された。つまり、前記処理対象物は、表面に前記内毒素そのものが付着しているものであっても構わないし、前記内毒素を構成する菌体が付着しているものであっても構わない。
すなわち、上記方法によれば、200nm未満の波長の紫外線を出射する光源装置を準備し、この光源装置から前記紫外線を処理対象物に対して照射するという簡易な方法で、内毒素の活性を低下させることができる。
また、「発明の詳細な説明」の項で後述されるように、上記方法は、室温環境下においても効果的であることが確認された。このため、従来の乾熱処理法のように、処理対象物を250℃程度の高温下に置く必要がない。従って、処理対象物が樹脂などからなる場合においても、内毒素の活性を低下できる。例えば、実験研究機関では、細胞培養にマイクロプレート、シャーレ、プレパラートなどが利用される。近年、これらの材料としては合成樹脂が利用されている。このような器具に対する内毒素の活性を低下させる際にも、本発明の方法を適用することが可能である。
前記工程(a)は、大気雰囲気で実行されるものとしても構わない。本発明者らの鋭意研究の結果、大気雰囲気下で紫外線を処理対象物に照射することによっても、処理対象物に付着した内毒素の活性を低下させる効果が確認された。すなわち、かかる方法によれば、窒素雰囲気下など、特定の雰囲気環境を所定の密閉空間内に構築した上で、当該密閉空間内に処理対象物を封印し、処理後前記密閉空間から処理対象物を取り出す、という工程を経る必要がなく、単に例えば室内に設置された処理対象物に対して紫外線を照射するだけでよい。
すなわち、上記の方法は、内毒素の活性が高いレベルで低下された器具を製造する場合に有用である。例えば、製造工場内において、製造対象物である器具をベルトコンベアなどの搬送装置で流しながら、順次、光源装置から200nm未満の波長の紫外線を照射させることで、製造ラインの一工程に、内毒素の活性を低下させる工程を容易に組み込むことができる。
また、上記の方法によれば、250℃といった高温環境下に処理対象物を設置する必要がないため、樹脂からなる処理対象物に対しても、内毒素の活性を低下できる。一例として、前記処理対象物は、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、シリコーン、ABS、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)からなる群に含まれるいずれか1種以上からなる樹脂材料で構成されるものとしても構わない。
このとき、前記工程(a)は、室温以上、前記樹脂材料のガラス転移温度未満の温度下で、前記紫外線を照射する工程としても構わない。本発明者らの鋭意研究によれば、例えば130℃の温度下において、紫外線を照射した場合、室温(20℃)下で紫外線を照射した場合によりも、更に内毒素の活性を低下させる効果が高まることが確認された。上述したように、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂のガラス転移温度は約140℃であり、ポリカーボネート(PC)樹脂のガラス転移温度は、約150℃である。このため、処理対象物がこれらの樹脂材料で構成されていた場合には、130℃の温度下に設置しても、ガラス転移現象が生じることはない。つまり、上記方法によれば、処理対象物の材料特性に影響を生じさせない範囲内で、内毒素の活性を低下させる効果を更に高めることができる。
前記工程(a)は、Xeを含む放電用ガスが封入された管体を含むエキシマランプから前記処理対象物に対して前記紫外線を照射する工程であるものとしても構わない。このとき、主たる発光波長が160nm以上180nm以下の、より詳細には主たる発光波長が172nm近傍の紫外線が処理対象物に照射される。
前記工程(a)は、前記内毒素を不活化する工程であるものとしても構わない。本明細書において、「不活化する」とは、内毒素(エンドトキシン)の残存活性率を0.1%以下(3 Log以下)にすることを意味する。「発明の詳細な説明」の項で後述されるように、200nm未満の波長の紫外線を照射させることで、内毒素を不活化できることが確認された。
本発明によれば、簡易な方法で内毒素(エンドトキシン)の活性を低下させて、処理対象物を除染する方法が実現される。
本発明に係る除染方法につき、以下において適宜図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る除染方法の一態様を模式的に示す図面である。図1は、内毒素(エンドトキシン)が付着した処理対象物3の内毒素の活性を低下させることで、処理対象物3を除染する方法を模式的に示している。図1に示す例では、除染方法を実行するに際し、所定の設置面2上に設置された処理対象物3に対して、エキシマランプ5を含む光源装置1から、紫外線L1が照射される。光源装置1は、紫外線L1を照射させるための光照射窓6を有する。この光照射窓6は、紫外線L1を透過させる部材(例えば石英ガラスからなる)で構成されていても構わないし、単なる開口であっても構わない。
図2は、エキシマランプ5の構造の一例を模式的に示す断面図である。エキシマランプ5は、紫外線に対して透過性を有する材料(例えば合成石英ガラス)からなる、発光管10を備える。発光管10は、円筒状の外側管11と、外側管11の内側おいて外側管11と同軸上に配置され、外側管11の内径より小さい外径を有する円筒状の内側管12とを有する。外側管11と内側管12とは、それぞれ管軸方向に係る両端が封止壁14によって接合されている。これにより、外側管11と内側管12との間には、円環状の発光空間LSが形成されている。
発光空間LS内には、エキシマ分子を形成する放電用ガスが封入されている。放電用ガスは、一例として、キセノン(Xe)を含んで構成され、より詳細な一例としては、キセノン(Xe)単体や、キセノン(Xe)とネオン(Ne)を所定の比率(例えば3:7)で混在させたガスで構成される。また、放電用ガスは、キセノン(Xe)とネオン(Ne)以外に、酸素や水素を微量に含むものとしても構わない。
エキシマランプ5は、外側管11の外側面に密接し、例えばステンレス鋼などの導電性材料からなる網目形状又は線形状の第一電極15と、内側管12の内側面上に密接し、例えばアルミニウムなどの導電性材料からなる膜状の第二電極16とを有する。すなわち、第一電極15と第二電極16とは、互いに発光空間LSを隔てて対向している。図2の構成では、第一電極15が外側電極を構成し、第二電極16が内側電極を構成する。
エキシマランプ5は、発光管10の延伸方向に係る端部に、発光管10の外側面を取り囲むように形成されたベース17を備える。ベース17は、有底筒形状を呈しており、ベース17の内側面と、外側管11の外側面とが例えば接着剤などを介して接触することで、ベース17と発光管10とが固定される。ベース17は、例えばセラミックスからなる。
第一電極15及び第二電極16は、共に電源18と電気的に接続されている。例えば、ベース17の底面を貫通する孔部を通じて電源線が這わせられることで、各電極(15,16)と電源18とが電気的に接続される。エキシマランプ5において、電源18から、第一電極15と第二電極16との間に高周波の交流電圧が印加されると、発光空間LSにおいて放電が発生し、放電用ガスの種類に応じたエキシマ光が生成される。上述したように、放電用ガスとしてキセノン(Xe)を用いる場合には、主たる波長が172nmを示す紫外線L1が生成される。この紫外線L1は、直接、又は第二電極16によって反射された後、外側管11の外側面から放射される。この紫外線L1は、光源装置1の外側に設置された処理対象物3に対して照射される。
なお、図1に示すように、光源装置1が、光照射窓6が設けられている側から紫外線L1を取り出す構成である場合には、エキシマランプ5から発せされた紫外線L1のうち、光照射窓6とは反対側に進行する紫外線L1を、光照射窓6側、すなわち処理対象物3側に反射させるための反射部材(不図示)が備えられていても構わない。
図3は、発光空間LS内に封入された放電用ガスがXeを含む場合において、光源装置1から照射される紫外線L1のスペクトルを示す図面である。紫外線L1は、主たる発光波長が200nm未満のスペクトルを示す。より詳細には、紫外線L1は、主たる発光波長が172nmのスペクトルを示す。ただし、放電用ガスのガス種類や、発光空間LSから光照射窓6までの光路内に蛍光体を配置することで、スペクトルは適宜変更可能である。ただし、本発明において、処理対象物3に対して照射される紫外線L1は、主たる発光波長が200nm未満であり、より好ましくは主たる発光波長が160nm以上180nm以下である。
かかる方法によれば、処理対象物3に付着された内毒素(エンドトキシン)の活性を高いレベルで低下できる。以下、実施例を参照して説明する。
本明細書において、残存活性率とは、処理前の活性状態の内毒素(エンドトキシン)の量に対する、処理後に残存する活性状態の内毒素の量の比率を指す。
(検証1)
照射する紫外線L1の波長と、内毒素(エンドトキシン)の活性の低下の程度との関連性について、検証を行った。
照射する紫外線L1の波長と、内毒素(エンドトキシン)の活性の低下の程度との関連性について、検証を行った。
紫外線L1を発する光源装置1と、処理対象物3とを準備した。光源装置1としては、後述するように、出射される紫外線L1の波長が異なる6種類の光源ユニット#1〜#6が採用された。異なる光源ユニット#1〜#6を用いることで光源装置1から出射される紫外線L1の波長を異ならせて、処理対象物3に含まれる内毒素(エンドトキシン)の活性の低下評価の検証を行った。具体的には、以下の手順で評価検証を行った。
(ステップS1)
250℃で2時間乾熱滅菌したガラス試験片(8mm×10mm×1mm)にエンドトキシン単体(LPS:リボ多糖)を100EU塗布し、3時間にわたって乾燥させた。なお、単位の「EU」とはエンドトキシン活性単位を指し、米国FDAによって定められた単位である。なお、単位「EU」は、WHOが規定している「IU」(エンドトキシン国際単位)と等価である。
250℃で2時間乾熱滅菌したガラス試験片(8mm×10mm×1mm)にエンドトキシン単体(LPS:リボ多糖)を100EU塗布し、3時間にわたって乾燥させた。なお、単位の「EU」とはエンドトキシン活性単位を指し、米国FDAによって定められた単位である。なお、単位「EU」は、WHOが規定している「IU」(エンドトキシン国際単位)と等価である。
なお、250℃で2時間乾熱滅菌する処理は、ガラス試験片に初期時からエンドトキシンが付着することで、測定誤差が生じるのを抑制する目的で実行される。また、樹脂片ではなくガラス試験片が用いられているのは、現段階で実用化されているエンドトキシンの不活化方法が乾熱処理法であるところ、250℃という高温下でも試験片の材料の特性を変化させることのない材料がガラス材料であるためである。
(ステップS2)
ステップS1で得られたガラス試験片を処理対象物3とし、下記表1に記載のように、各光源ユニット(#1〜#6)から異なる波長の紫外線L1を処理対象物3に照射させた。なお、本ステップS2は、大気雰囲気、室温条件下で実行された。
ステップS1で得られたガラス試験片を処理対象物3とし、下記表1に記載のように、各光源ユニット(#1〜#6)から異なる波長の紫外線L1を処理対象物3に照射させた。なお、本ステップS2は、大気雰囲気、室温条件下で実行された。
各光源ユニット#1〜#6の構成の詳細は、以下の通りである。
《光源ユニット#1》
光源ユニット#1としては、172nm付近に発光ピークを有するエキシマランプ(ウシオ電機株式会社製)が組み込まれているものが利用された。具体的には、このエキシマランプは、172nm付近に発光ピークを実現させるために、発光管内にキセノンを主成分とする放電用ガスが封入されていた。
光源ユニット#1としては、172nm付近に発光ピークを有するエキシマランプ(ウシオ電機株式会社製)が組み込まれているものが利用された。具体的には、このエキシマランプは、172nm付近に発光ピークを実現させるために、発光管内にキセノンを主成分とする放電用ガスが封入されていた。
《光源ユニット#2》
光源ユニット#2としては、190nm付近に半値幅の広い発光ピークを有する蛍光エキシマランプ(ウシオ電機株式会社製)が組み込まれているものが利用された。具体的には、誘電体バリア放電によって生成されるエキシマから放出される光を励起光として蛍光体に照射し、その蛍光体が励起することによって得られる特定の波長範囲の紫外線を放射する蛍光エキシマランプが利用された。この蛍光エキシマランプは、190nm付近に半値幅の広い発光ピークを実現させるために、発光管内にキセノンを主成分とする放電用ガスが封入され、リン酸イットリウムを結晶母体としNdの3価で付活したY0.98Nd0.02PO4からなる蛍光体を備えていた。
光源ユニット#2としては、190nm付近に半値幅の広い発光ピークを有する蛍光エキシマランプ(ウシオ電機株式会社製)が組み込まれているものが利用された。具体的には、誘電体バリア放電によって生成されるエキシマから放出される光を励起光として蛍光体に照射し、その蛍光体が励起することによって得られる特定の波長範囲の紫外線を放射する蛍光エキシマランプが利用された。この蛍光エキシマランプは、190nm付近に半値幅の広い発光ピークを実現させるために、発光管内にキセノンを主成分とする放電用ガスが封入され、リン酸イットリウムを結晶母体としNdの3価で付活したY0.98Nd0.02PO4からなる蛍光体を備えていた。
《光源ユニット#3》
光源ユニット#3としては、185nm付近と254nm付近に発光ピークを示す紫外線が放射される低圧水銀ランプが組み込まれているものが利用された。
光源ユニット#3としては、185nm付近と254nm付近に発光ピークを示す紫外線が放射される低圧水銀ランプが組み込まれているものが利用された。
《光源ユニット#4》
光源ユニット#4としては、クリプトンクロライドエキシマランプ(ウシオ電機株式会社製)が組み込まれているものが利用された。具体的には、このエキシマランプは、222nm付近に発光ピークを実現させるために、発光管内にクリプトン及び塩素を主成分とする放電用ガスが封入されていた。
光源ユニット#4としては、クリプトンクロライドエキシマランプ(ウシオ電機株式会社製)が組み込まれているものが利用された。具体的には、このエキシマランプは、222nm付近に発光ピークを実現させるために、発光管内にクリプトン及び塩素を主成分とする放電用ガスが封入されていた。
《光源ユニット#5》
光源ユニット#5としては、254nm付近に発光ピークを示す紫外線が放射される低圧水銀ランプが組み込まれているものが利用された。なお、この光源ユニット#5に組み込まれている低圧水銀ランプは、185nmの紫外線を透過しないガラス材料からなる発光管を備えていた。
光源ユニット#5としては、254nm付近に発光ピークを示す紫外線が放射される低圧水銀ランプが組み込まれているものが利用された。なお、この光源ユニット#5に組み込まれている低圧水銀ランプは、185nmの紫外線を透過しないガラス材料からなる発光管を備えていた。
《光源ユニット#6》
光源ユニット#6としては、320nm付近に半値幅の広い発光ピークを有する蛍光エキシマランプ(ウシオ電機株式会社製)が組み込まれているものが利用され、光源ユニット#2と比較して、蛍光体の材料のみが異なっている。具体的には、この蛍光エキシマランプは、320nmに半値幅の広い発光ピークを実現させるために、リン酸ランタンを結晶母体とするCeの3価で付活したLa0.75Ce0.25PO4からなる蛍光体を備えていた。
光源ユニット#6としては、320nm付近に半値幅の広い発光ピークを有する蛍光エキシマランプ(ウシオ電機株式会社製)が組み込まれているものが利用され、光源ユニット#2と比較して、蛍光体の材料のみが異なっている。具体的には、この蛍光エキシマランプは、320nmに半値幅の広い発光ピークを実現させるために、リン酸ランタンを結晶母体とするCeの3価で付活したLa0.75Ce0.25PO4からなる蛍光体を備えていた。
本ステップS2では、各光源ユニット#1〜#6を用いて、表1に記載された照射条件で処理対象物3に対して紫外線L1を照射した。
(ステップS3)
ステップS2を実行後のガラス試験片(処理対象物3)を、エンドトキシンフリー水に浸漬し、氷で冷やしながら、10〜30分間にわたって超音波洗浄を行った。洗浄後の抽出液にライセート試薬(エンドスペシーES50M:生化学工業株式会社製)を混合し、カイネティック比色法によって活性状態のエンドトキシン量を測定した。
ステップS2を実行後のガラス試験片(処理対象物3)を、エンドトキシンフリー水に浸漬し、氷で冷やしながら、10〜30分間にわたって超音波洗浄を行った。洗浄後の抽出液にライセート試薬(エンドスペシーES50M:生化学工業株式会社製)を混合し、カイネティック比色法によって活性状態のエンドトキシン量を測定した。
なお、ステップS3は、国立医薬品食品衛生研究所で推奨されている方法であり、第十七改正日本薬局方で推奨されている方法に準拠した方法である。
図4A〜図4Fは、ステップS2で紫外線L1の光源として利用された各光源ユニット#1〜#6別に、照射時間と処理対象物3の残存活性率との関係をグラフ化したものである。なお、縦軸は対数目盛で表されており、縦軸に示す残存活性率[%]とは、初期における活性状態のエンドトキシン濃度を100%としたときの、活性状態のエンドトキシン濃度の相対値である。なお、各結果に示された値は、検証の再現性を確認する観点から、同一の条件下でステップS1〜S2が実行されることで得られた3個のサンプルに対して、ステップS3が実行されたことで得られたそれぞれの値の平均値に対応する。
図4Aによれば、ステップS2において、主たる発光波長が172nmの紫外線L1を出射する光源ユニット#1を用いた場合、1分間の照射でエンドトキシンの残存活性率が1%以下に低下していることが確認される。また、照射時間を10分とすると、初期時と比較してエンドトキシンの残存活性率が0.1%以下に低下しており、初期時と比較して3Log以下に低下できていることが確認される。このことから、光源ユニット#1によれば、処理対象物3に含まれるエンドトキシンが不活化できていることが確認された。更に、照射時間を30分とした場合、初期時と比較してエンドトキシンの残存活性率が約0.01%に低下していることが確認された。
ステップS2において、光源ユニット#2、#3、又は#4を用いた場合、30分間の照射によって、初期時と比べるとエンドトキシンの残存活性率を低下する作用が確認された。しかし、その低下の程度は、光源ユニット#1よりは極めて少ないことが確認された。
図4Bによれば、光源ユニット#2を用いた場合、10分間の紫外線照射によって、エンドトキシンの残存活性率は約8%に低下した。また、30分間の紫外線照射によって、エンドトキシンの残存活性率は約3%に低下した。照射時間が10分以内の場合におけるエンドトキシンの残存活性率の低下傾向と、照射時間が10分以上30分以下の場合におけるエンドトキシンの残存活性率の低下傾向とを対比すると、前者の方が低下傾向が高いことが確認される。この結果から、照射時間を30分よりも長くした場合であっても、エンドトキシンの残存活性率が著しく低下することは予想されにくいことが分かる。
図4Cによれば、光源ユニット#3を用いた場合、光源ユニット#2と同様に、10分間の紫外線照射によって、エンドトキシンの残存活性率は約10%に低下した。しかし、30分間の紫外線照射によって、エンドトキシンの残存活性率は照射量を10mJ/cm2とした場合よりも上昇していることが確認された。この理由は定かではないが、この結果からは、少なくとも照射時間を30分よりも長くした場合であっても、エンドトキシンの残存活性率が著しく低下することは予想されにくいことが分かる。
図4Dによれば、光源ユニット#4を用いた場合、10分間の紫外線照射によって、エンドトキシンの残存活性率は約7%に低下した。そして、また、30分間の紫外線照射によって、エンドトキシンの残存活性率は約2%に低下した。照射時間が10分以内の場合におけるエンドトキシンの残存活性率の低下傾向と、照射時間が10分以上30分以下の場合におけるエンドトキシンの残存活性率の低下傾向とを対比すると、前者の方が低下傾向が高いことが確認される。この結果から、照射時間を30分よりも長くした場合であっても、エンドトキシンの残存活性率が著しく低下することは予想されにくいことが分かる。
一方、図4E及び図4Fによれば、光源ユニット#5及び光源ユニット#6を用いた場合には、照射量にかかわらず、エンドトキシンの残存活性率はほとんど変化していないことが確認された。
以上の結果から、少なくとも主たる発光波長が200nmの紫外線L1を、エンドトキシンが付着した処理対象物3に照射することで、エンドトキシンの残存活性率が低下できること、すなわち活性状態のエンドトキシンの量を低下できることが確認される。また、主たる発光波長が172nmの紫外線L1をエンドトキシンが付着した処理対象物3に10分間以上照射することで、エンドトキシンの残存活性率を0.1%以下にでき、不活化できることが確認される。
(検証2)
紫外線L1を照射するときの環境温度と、エンドトキシンの活性の低下の程度との関連性について、検証を行った。なお、この検証2及び後述される検証3〜5では、いずれも主たる発光波長が172nmの紫外線L1を用いて検証が行われた。
紫外線L1を照射するときの環境温度と、エンドトキシンの活性の低下の程度との関連性について、検証を行った。なお、この検証2及び後述される検証3〜5では、いずれも主たる発光波長が172nmの紫外線L1を用いて検証が行われた。
《サンプルA1》
上記ステップS1〜S2を実行して得られたサンプルをサンプルA1とした。なお、ステップS2では、光源ユニット#1(波長172nm)を用いて室温(20℃)下で紫外線L1が照射された。このときの、紫外線L1の、処理対象物3の面上における照度は14mW/cm2であり、照射時間を1分間とした。
上記ステップS1〜S2を実行して得られたサンプルをサンプルA1とした。なお、ステップS2では、光源ユニット#1(波長172nm)を用いて室温(20℃)下で紫外線L1が照射された。このときの、紫外線L1の、処理対象物3の面上における照度は14mW/cm2であり、照射時間を1分間とした。
《サンプルA2》
ステップS1に代えて下記ステップS1Aを実行し、その後、ステップS2に代えて下記ステップS2Aを実行して得られたサンプルをサンプルA2とした。
ステップS1に代えて下記ステップS1Aを実行し、その後、ステップS2に代えて下記ステップS2Aを実行して得られたサンプルをサンプルA2とした。
(ステップS1A)
250℃で2時間乾熱滅菌したガラス試験片(6mm×6mm×1mm)にエンドトキシン単体(LPS)を50EU塗布し、一晩にわたって乾燥させた。
250℃で2時間乾熱滅菌したガラス試験片(6mm×6mm×1mm)にエンドトキシン単体(LPS)を50EU塗布し、一晩にわたって乾燥させた。
(ステップS2A)
ステップS1Aで得られたガラス試験片を、90℃に設定されたホットプレート上に設置し、この状態の下で光源ユニット#1からガラス試験片に対して、波長172nmの紫外線L1を1分間照射させた。このときの処理対象物3の面上、すなわちガラス試験片上における照度を14mW/cm2とした。
ステップS1Aで得られたガラス試験片を、90℃に設定されたホットプレート上に設置し、この状態の下で光源ユニット#1からガラス試験片に対して、波長172nmの紫外線L1を1分間照射させた。このときの処理対象物3の面上、すなわちガラス試験片上における照度を14mW/cm2とした。
《サンプルA3》
設定温度を130℃とした点を除き、サンプルA2を作製する場合と同様の方法で、ステップS1A及びステップS2Aを実行して得られたサンプルをサンプルA3とした。
設定温度を130℃とした点を除き、サンプルA2を作製する場合と同様の方法で、ステップS1A及びステップS2Aを実行して得られたサンプルをサンプルA3とした。
(ステップS3)
各サンプルA1〜A3に対して、検証1で行ったステップS3と同様の方法で、エンドトキシンの残存活性率を測定した。この結果を下記表2及び図5に示す。なお、比較のために、温度条件を各サンプル同一として紫外線L1を照射せずに作製したサンプル(以下、「比較用サンプル」と呼ぶ。)についても、同様にステップS3を実行した。表1において、「紫外線照射前」と記載している項内に記載されたデータは、この比較用サンプルに基づく結果に対応している。
各サンプルA1〜A3に対して、検証1で行ったステップS3と同様の方法で、エンドトキシンの残存活性率を測定した。この結果を下記表2及び図5に示す。なお、比較のために、温度条件を各サンプル同一として紫外線L1を照射せずに作製したサンプル(以下、「比較用サンプル」と呼ぶ。)についても、同様にステップS3を実行した。表1において、「紫外線照射前」と記載している項内に記載されたデータは、この比較用サンプルに基づく結果に対応している。
紫外線L1を照射する前同士のサンプルA1とサンプルA2とを比較すると、90℃に加熱しただけではエンドトキシンの活性を低下させる効果はほとんど得られないことが分かる。また、紫外線L1を照射する前同士のサンプルA1とサンプルA3とを比較すると、130℃に加熱した場合、エンドトキシンの残存活性率が約46%程度には低下していることが確認されるが、不活化には程遠い結果であることが分かる。
また、サンプルA1とサンプルA2とを比較すると、90℃に加熱して紫外線L1を照射することによる効果は、室温下(20℃)で紫外線L1を照射した場合とほとんど差がないことが確認される。一方で、サンプルA1とサンプルA3とを比較すると、室温下では紫外線L1を照射することで残存活性率が0.93%に低下するのに対し、130℃に加熱して紫外線を照射した場合には残存活性率が0.169%を示し、紫外線L1を照射せずに130℃に加熱した場合に示された残存活性率46.0%と比較して、0.37%も更に低下することが分かる。更に、室温下での紫外線L1の照射前の状態と比較すると、130℃に加熱して紫外線L1を照射した場合には、残存活性率が0.17%まで低下することが分かる。
このことは、処理対象物3に対して、130℃に加熱した状態で紫外線L1を照射することで、エンドトキシンの活性を低下させる速度が向上することを意味する。すなわち、130℃に加熱することで、紫外線L1の短時間照射によって、処理対象物3に付着したエンドトキシンの残存活性率を大きく低下できることが分かる。
上述したように、従来の乾熱処理法では、処理温度が250℃程度とされていた。これは、250℃程度にまで加熱しなければ、エンドトキシンの活性を充分に低下させる作用が得られないと考えられていたためである。しかし、上記検証2によれば、紫外線L1の照射と併用した場合には、130℃程度の加熱であっても、エンドトキシンの活性を低下させる作用を大きく高めることができることが確認される。この方法は、特に処理対象物3が樹脂からなる場合において、好適に利用できるものである。
(検証3)
紫外線L1を照射するときの処理雰囲気と、エンドトキシンの活性の低下の程度との関連性について、検証を行った。
紫外線L1を照射するときの処理雰囲気と、エンドトキシンの活性の低下の程度との関連性について、検証を行った。
上記検証1及び検証2では、ステップS2を大気雰囲気で実行した。これに対し、ステップS1を実行後に、窒素雰囲気でステップS2を実行して得られたサンプル(サンプルA4)と、ステップS1を実行後に、1%酸素、99%窒素の雰囲気でステップS2を実行して得られたサンプル(サンプルA5)をそれぞれ作製し、検証1で行ったステップS3と同様の方法で、エンドトキシンの残存活性率を測定した。この結果を図6A及び図6Bに示す。図6A及び図6Bは、紫外線L1の照射量(照度と照射時間の積)とエンドトキシンの残存活性率との関係をグラフ化したものである。なお、図6Bは、図6Aのグラフから、横軸の範囲を0〜15J/cm2までに拡大したグラフである。
なお、図6A及び図6Bでは、比較のために、検証2で利用されたサンプルA1の場合の結果を併せて示している。また、ステップS2で照射された紫外線L1の波長、及び処理温度については、検証2のサンプルA1と同様とした。
上述したように、本検証3においては、主たる発光波長が172nmである紫外線L1が用いられた。この紫外線L1は、酸素による吸収が大きいため、雰囲気の酸素濃度によってサンプルの表面上における照度に差が生じる。例えば、大気雰囲気で14mW/cm2、1%酸素、99%窒素の雰囲気で約37mW/cm2、窒素雰囲気で約40mW/cm2となる。
図6Bによれば、ステップS2で紫外線L1を照射する際の処理対象物3の雰囲気が、窒素である場合、1%酸素である場合、大気である場合を比較すると、この順にエンドトキシンの残存活性率が低下している。そして、図6Bによれば、これらの3つの雰囲気の中では、大気雰囲気の下では、約8J/cm2という最も少ない照射量の紫外線L1をエンドトキシンに照射することで、エンドトキシンの残存活性率が0.1%を下回り、不活化できていることが分かる。
この結果からも、大気雰囲気で処理対象物3に対して、より少ない照射量の紫外線L1を照射することで、エンドトキシンを不活化させられることが示唆される。なお、図6Aによれば、エンドトキシンに対して照射する紫外線L1の照射量を上昇させていくと、窒素雰囲気下など、酸素濃度が大気よりは低濃度である雰囲気下においても、残存活性率が0.1%を下回り、エンドトキシンを不活化できることが示唆される。
(検証4)
エンドトキシン単体ではなく、エンドトキシンを構成する菌体に対して紫外線L1を照射した場合における、エンドトキシンの活性の低下の程度について、検証を行った。
エンドトキシン単体ではなく、エンドトキシンを構成する菌体に対して紫外線L1を照射した場合における、エンドトキシンの活性の低下の程度について、検証を行った。
従来技術においては、入手のし易さに鑑み、エンドトキシン単体に対する活性量の評価を行うことをもって、毒素の不活化の指標とされていた。しかし、エンドトキシンそのものが処理対象物3に付着する場合は少なく、実際には、エンドトキシンを構成する菌体が処理対象物3に付着する場合がほとんどである。すなわち、エンドトキシンを構成する菌体が付着した処理対象物3に対して、エンドトキシンの活性を低下させる(又は不活化する)という観点からは、実際の菌体に近似した状態・環境で評価を行うことが重要である。
かかる観点に鑑み、実態の菌体を付着させた処理対象物3に対して、紫外線L1を照射することで、エンドトキシンの活性の低下の程度を検証した。具体的な手順は以下の通りである。
(ステップS4)
250℃で2時間乾熱滅菌したガラス試験片(10mm×26mm×1mm、又は6mm×6mm×1mm)に、大腸菌由来の乾燥死菌体を塗布した。このときの塗布量として、1.9ng/mm2、4.8ng/mm2、14ng/mm2、140ng/mm2の4種類とした。その後、ガラス試験片を一晩にわたって乾燥させた。ステップS4で得られたガラス試験片を、処理対象物3とした。なお、より詳細には、死菌体の塗布量を1.9ng/mm2、及び4.8ng/mm2としたサンプルを作製する際には、10mm×26mm×1mmのガラス試験片を用い、死菌体の塗布濃度を14ng/mm2、及び140ng/mm2としたサンプルを作製する際には、6mm×6mm×1mmのガラス試験片を用いた。
250℃で2時間乾熱滅菌したガラス試験片(10mm×26mm×1mm、又は6mm×6mm×1mm)に、大腸菌由来の乾燥死菌体を塗布した。このときの塗布量として、1.9ng/mm2、4.8ng/mm2、14ng/mm2、140ng/mm2の4種類とした。その後、ガラス試験片を一晩にわたって乾燥させた。ステップS4で得られたガラス試験片を、処理対象物3とした。なお、より詳細には、死菌体の塗布量を1.9ng/mm2、及び4.8ng/mm2としたサンプルを作製する際には、10mm×26mm×1mmのガラス試験片を用い、死菌体の塗布濃度を14ng/mm2、及び140ng/mm2としたサンプルを作製する際には、6mm×6mm×1mmのガラス試験片を用いた。
(ステップS2)
検証1のステップS2と同様に、光源ユニット#1を用いて、波長172nmの紫外線を、室温、大気雰囲気下で、照度14mW/cm2で処理対象物3に照射させた。
検証1のステップS2と同様に、光源ユニット#1を用いて、波長172nmの紫外線を、室温、大気雰囲気下で、照度14mW/cm2で処理対象物3に照射させた。
(ステップS3)
検証1のステップS3と同様の方法で、ステップS2を実行後のガラス試験片(処理対象物3)に含まれるエンドトキシンの残存活性率を測定した。この結果を、図7に示す。図7は、紫外線L1の照射時間とエンドトキシンの残存活性率との関係をグラフ化したものである。
検証1のステップS3と同様の方法で、ステップS2を実行後のガラス試験片(処理対象物3)に含まれるエンドトキシンの残存活性率を測定した。この結果を、図7に示す。図7は、紫外線L1の照射時間とエンドトキシンの残存活性率との関係をグラフ化したものである。
図7の結果によれば、エンドトキシンそのものではなく、死菌体に対して紫外線L1を照射することによっても、エンドトキシンの残存活性率を低下できることが確認された。これにより、菌体が付着した処理対象物3に対して紫外線L1を照射することのみで、菌体を構成するエンドトキシンの活性を低下できることが実験的に確認された。
(検証5)
例えば処理対象物3が樹脂材料からなる場合において、処理対象物3に対して紫外線L1を照射したことで、毒性を示す別の材料が生成されるような場合には、実用上の問題が生じるおそれがある。特に、医療機器に対しては、サンプルからの溶出物の毒性試験を評価する試験である細胞毒性試験の実施が義務付けられている。
例えば処理対象物3が樹脂材料からなる場合において、処理対象物3に対して紫外線L1を照射したことで、毒性を示す別の材料が生成されるような場合には、実用上の問題が生じるおそれがある。特に、医療機器に対しては、サンプルからの溶出物の毒性試験を評価する試験である細胞毒性試験の実施が義務付けられている。
そこで、厚生労働省が定める『医療機器の生物学的安全性試験法ガイダンス(薬食機発0301第20号)』に記載されている、コロニー形成法に基づいて細胞毒性試験を行った。具体的な手順は以下の通りである。
(ステップS8)
表3に後述する樹脂材料からなるサンプルA11〜A18を準備し、検証1のステップS2と同様の方法で、波長172nmの紫外線L1を照射した。このステップS8で実行される紫外線L1の照射時間は、検証4における最大照射時間の2倍である60分間とした。この時間は、紫外線L1を用いて処理を行うのに充分な長さである。
表3に後述する樹脂材料からなるサンプルA11〜A18を準備し、検証1のステップS2と同様の方法で、波長172nmの紫外線L1を照射した。このステップS8で実行される紫外線L1の照射時間は、検証4における最大照射時間の2倍である60分間とした。この時間は、紫外線L1を用いて処理を行うのに充分な長さである。
(ステップS9)
ステップS8を実行後の各サンプルA11〜A18を、2×15mm程度の大きさに裁断した後、表面積60cm2、又は1gあたり10mLの培地を添加し、24時間にわたって抽出した。その後、抽出培地を用いて、V79細胞(チャイニーズハムスター由来)を6日間培養し、コロニー数を計測した。計測したコロニー数より、コロニー形成率を算出し、この値に基づいてIC50値(50%阻害濃度)を算出した。そして、通常培地と比較して、30%を超えてコロニー形成率が低下した場合をもって、細胞毒性作用があると判定した。
ステップS8を実行後の各サンプルA11〜A18を、2×15mm程度の大きさに裁断した後、表面積60cm2、又は1gあたり10mLの培地を添加し、24時間にわたって抽出した。その後、抽出培地を用いて、V79細胞(チャイニーズハムスター由来)を6日間培養し、コロニー数を計測した。計測したコロニー数より、コロニー形成率を算出し、この値に基づいてIC50値(50%阻害濃度)を算出した。そして、通常培地と比較して、30%を超えてコロニー形成率が低下した場合をもって、細胞毒性作用があると判定した。
この結果を、表3に示す。なお、表3内において、サンプルA11で用いられた評価材料の型式に含まれる「ZEONEX」、サンプルA15及びA16で用いられた評価材料の型式に含まれる「TPS」、並びに、サンプルA17で用いられた評価材料の型式に含まれる「コモグラス」は、いずれも登録商標である。
表3に示す結果によれば、ポリメタクリル酸メチル樹脂からなるサンプルA17の場合には、紫外線L1の照射によってIC50値が低下していることが確認され、弱い細胞毒性が示された。ただし、低下した値は30%よりは小さく、細胞毒性作用はないと結論付けられる。
一方、サンプルA11〜A16においては、全てIC50値に変化が見られなかった。また、サンプルA18については、紫外線L1の照射前の時点で中程度の細胞毒性が認められるが、紫外線L1を照射したことによりIC50値は低下しておらず、毒性は増加していない。この結果からは、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、シリコーン、ABS、ポリアミド(PA)、及びポリ塩化ビニル(PVC)からなる各種樹脂材料に対しては、本発明の方法によって除染を行った場合でも、細胞毒性試験の点では問題がないことが示される。
[別実施形態]
以下、別実施形態について説明する。
以下、別実施形態について説明する。
〈1〉本発明において、紫外線L1を照射する光源装置1の構造は、図2の例に限定されない。例えば、光源装置1がエキシマランプで構成される場合においても、図2に図示されるようないわゆる「二重管構造」の他、いわゆる「一重管構造」や「扁平管構造」の発光管10を備えるものとしても構わない。
図8は、いわゆる「一重管構造」を呈したエキシマランプ5の構造を、長手方向(管軸方向)に沿って見たときの模式的な図面である。図8に示すエキシマランプ5は、図2に示すエキシマランプ5とは異なり、1つの管体からなる発光管10を有している。発光管10は、長手方向に係る端部において封止されており(不図示)、内側に発光空間LSが構成され、当該空間S1内には放電用ガスが封入される。そして、発光管10の管体の内側には第二電極16が配設され、発光管10の外壁面には、網目形状又は線形状の第一電極15が配設される。
図9は、いわゆる「扁平管構造」を呈したエキシマランプ5の構造を、図8にならって模式的に図示した図面である。図9に示すエキシマランプ5は、長手方向から見たときに矩形状を呈した1つの管体からなる発光管10を有する。そして、エキシマランプ5は、発光管10の外表面に配置された第一電極15と、発光管10の外表面であって第一電極15と対向する位置に配置された第二電極16とを有する。第一電極15及び第二電極16は、発光管10内で発生した紫外線L1が発光管10の外側に出射することへの妨げにならないよう、いずれもメッシュ形状(網目形状)又は線形状を呈している。
図8には、エキシマランプ5を長手方向から見たときの形状が円形である場合を示した。これは図2に示す構成のエキシマランプ5においても同様である。また、図9には前記形状が長方形状である場合を示した。しかし、エキシマランプ5を長手方向から見たときの形状は、円形、長方形には限定されず、種々の形状が採用され得る。
〈2〉本発明に係る方法は、処理対象物3が上記検証5において列挙した樹脂材料からなる場合に限定されず、ガラス材料、金属材料、又はセラミックス材料などからなる場合においても適用可能である。
1 : 光源装置
2 : 設置面
3 : 処理対象物
5 : エキシマランプ
6 : 光照射窓
10 : 発光管
11 : 外側管
12 : 内側管
14 : 封止壁
15 : 第一電極
16 : 第二電極
17 : ベース
18 : 電源
L1 : 紫外線
LS : 発光空間
2 : 設置面
3 : 処理対象物
5 : エキシマランプ
6 : 光照射窓
10 : 発光管
11 : 外側管
12 : 内側管
14 : 封止壁
15 : 第一電極
16 : 第二電極
17 : ベース
18 : 電源
L1 : 紫外線
LS : 発光空間
Claims (7)
- 処理対象物に対して200nm未満の波長の紫外線を照射することで、前記処理対象物に付着した内毒素の活性を低下させる工程(a)を含むことを特徴とする、除染方法。
- 前記処理対象物は、表面に前記内毒素そのもの、又は前記内毒素を構成する菌体が付着していることを特徴とする、請求項1に記載の除染方法。
- 前記工程(a)は、大気雰囲気で実行されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の除染方法。
- 前記処理対象物は、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリスチレン、シリコーン、ABS、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、及びポリメタクリル酸メチルからなる群に含まれるいずれか1種以上からなる樹脂材料で構成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の除染方法。
- 前記工程(a)は、室温以上、前記樹脂材料のガラス転移温度未満の温度下で、前記紫外線を照射する工程であることを特徴とする、請求項4に記載の除染方法。
- 前記工程(a)は、Xeを含む放電用ガスが封入された管体を含むエキシマランプから前記処理対象物に対して前記紫外線を照射する工程であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の除染方法。
- 前記工程(a)は、前記内毒素を不活化する工程であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の除染方法。
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