JP2020150833A - 捕獲通知システム、捕獲通知方法及び括り罠の通報装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】括り罠にかかった動物の種類を判定してユーザにリアルタイムで通知することを可能とする、捕獲通知システムを提供する。【解決手段】捕獲器及びその周囲の状態情報を取得するセンサ手段と、前記センサ手段により取得されたセンサ情報を圧縮して情報量を減らす圧縮手段と、前記圧縮された前記センサ情報を無線伝送する無線伝送手段と、前記無線伝送手段により無線伝送された前記センサ情報を受信する受信手段と、前記受信手段により受信された前記センサ情報に基づき前記捕獲器が捕えた動物の種別を判断する判断手段と、前記判断手段の出力をユーザに通知する通知手段を持つ捕獲通知システム。【選択図】図1
Description
本発明は、捕獲通知システム、捕獲通知方法及び括り罠の通報装置に関する。
近年、猟師の高齢化と後継者不足に伴って猟師が減り、野山に生息する有害獣(鹿やイノシシなど)の数が増えて社会問題となっている。有害獣による農業への被害が著しく、農家は柵を設置したりしているが完璧ではない。 多くの自治体では有害獣の駆除に交付金を出している状況である。
平成26年5月30日には「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律」が公布され、さらに厚生労働省においては平成26年11月に、「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」が作成されている。 有害獣の被害を重大に捉えているだけでなく、捕えた有害獣を食肉として有効利用することを、我が国として推進している。
鹿の捕獲手段としては近年、猟銃に変わって「括り罠」が多く使われるようになった。この括り罠に鹿が掛かってから時間が経過してしまうと、鹿が暴れまわることにより外傷や炎症が発生し、食肉にならない。 掛かった直後に捕獲できれば、食肉に加工することができる。 猟師にとっては補助金だけでなく、食肉加工業者から追加収入を得ることができる。 そこで括り罠にセンサを取り付け、罠にかかったことを通知する捕獲通知システムが開示されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
特許文献1に記載の鹿報知器は、罠の作動によって作動する発信機と、当該発信機の信号を受けて罠の作動を報知する受信機とを備えた罠報知器であって、上記発信機は、罠の作動によって投入される磁力スイッチと、コード変換手段によってコード化された信号を所定の間隔をおいて瞬間的に発信し、上記受信機は、コード化された信号から元の情報信号を取り出して出力することを特徴としている。
特許文献1に記載の鹿報知器を用いれば、発信機からの電波を遠く離れた場所にある受信機でキャッチし、罠の作動状態を知ることができる。 しかし、磁力スイッチが作動すると発信されるので、罠にかかっている動物が狸などの小動物であるのか、それとも鹿やイノシシなどであるのか、区別をつけることができない。
特許文献2に記載の動物捕獲監視システムは、動物が捕獲されたことを検知する捕獲検知センサと、トラップの位置を検出し位置情報を出力する位置センサ、送信装置、受信装置、情報管理センターとユーザ端末とを備える。
特許文献2に記載の鹿報知器においても、送信装置と受信装置を組み合わせているので、罠から遠く離れた場所において罠の作動状態を知ることができる。また罠の位置情報から獲物が掛かった罠を特定することができるので、多くの罠を仕掛ける猟師には有用である。 しかし、罠にかかっている動物が狸やウサギなどの小動物であるのか、それとも鹿やイノシシであるのか区別をつけることができない。
特許文献3に記載の捕獲通知システムは、捕獲器の振動を検出するセンサ装置により所定値よりも大きい振動が所定回数以上にわたって検出された場合に、捕獲通知がなされるように構成されている。
しかし、特許文献3のシステムにおいても、捕獲通知情報から獲物の種類を特定することができない。
ところで鹿は夜間に行動することが多い。 また狸も夜間行動することが多い。このため特許文献1〜3に記載された捕獲通知システムからは深夜や未明の時刻に捕獲通知のメッセージが発せられることがある。
先に述べたように、鹿はできるだけ早く捕獲しなければ食肉としての価値が下がってしまう。 従って猟師は、特許文献1〜3に記載された捕獲通知システムから通知が発せられれば、深夜や未明であっても罠に急行することになる。 猟師にとっては極めて負担が大きいが、その結果、罠に掛かった動物が狸であった場合は徒労に終わってしまうことになる。 そこで、どのような動物が掛かっているのか、できる限り把握することが切望される。
特許文献4に記載の野生動物捕獲システムは、捕獲設備の内部へ侵入した野生動物を撮影し、その撮影した静止画又は動画を電子メールとして、インターネット経由でユーザ情報端末へ送信するネットワークカメラを備えている。 特許文献4に記載のシステムであれば、インターネット経由で捕獲動物の種類を判別することが可能となる。
しかし、カメラで撮影された画像データは情報量が数10Kバイト〜数100Kバイトと大きくなり、このような画像データを伝送する無線通信には携帯電話回線などの高速伝送性能が求められる。 一方で有害獣の罠は山中に設置される場合が殆どで、携帯電話回線が使えず、ネットワークカメラの画像を伝送することができない。 またネットワークカメラは消費電力が大きく、商用電源が来ていない山中に設置するのは難しい問題点もある。
そこで、本発明は、括り罠にかかった動物の種類を判定してユーザにリアルタイムで通知することを可能とする、捕獲通知システム、捕獲通知方法及び括り罠の通報装置を提供することを目的とする。
本発明の捕獲通知システムは、捕獲器及びその周囲の状態情報を取得するセンサ手段と、前記センサ手段により取得されたセンサ情報を圧縮して情報量を減らす圧縮手段と、前記圧縮された前記センサ情報を無線伝送する無線伝送手段と、前記無線伝送手段により無線伝送された前記センサ情報を受信する受信手段と、前記受信手段により受信された前記センサ情報に基づき前記捕獲器が捕えた動物の種別を判断する判断手段と、前記判断手段の出力をユーザに通知する通知手段を持つものである。
本発明の捕獲通知方法は、センサにより捕獲器及びその周囲の状態を反映したセンサ情報を入手し、前記センサ情報を圧縮して情報量を減らし、前記圧縮された前記センサ情報を無線伝送し、前記無線伝送されたセンサ情報を受信し、前記受信された前記センサ情報に基づき前記捕獲器が捕えた動物の種別を判断し、前記判断結果をユーザに通知するものである。
本発明の括り罠の通報装置は、捕獲器及びその周囲の状態情報を取得するセンサ手段と、前記センサ手段により取得されたセンサ情報を圧縮して情報量を減らす圧縮手段と、前記圧縮された前記センサ情報を無線伝送する無線伝送手段を持つものである。
本発明の捕獲通知システム、捕獲通知方法及び括り罠の通報装置においては、センサ情報(括り罠のワイヤーにもたらされる張力など)を検出し、その測定結果を情報圧縮してLPWA(Low Power Wide Area)無線でクラウドコンピュータに伝送する。LPWA無線は、伝送する情報量が少ない(概ね100ビット程度)場合に適用できる無線通信技術で、長距離の無線伝送を低消費電力で可能とする技術である。
クラウドコンピュータは、圧縮されたセンサ情報から信号処理により判断を行い、獲物の種類を特定し、メールなどの手段でユーザに通知する。 またクラウドコンピュータは、捕獲動物により罠や張力センサが破壊された場合は、破壊されていることを通知する。
本発明の捕獲通知システム、捕獲通知方法及び括り罠の通報装置によれば、情報量が少ないので長距離・低消費電力で動作する無線技術(LPWA)が適用可能となり、携帯電話が届かない山中でも罠にかかった獲物を捕獲することができる。 また罠が作動した時に、猟師は獲物の種類に関する事前情報を得てから罠の見守りに行くことができる。 即ち獲物が小動物(狸やウサギなど)と解った場合には、括り罠の見守りを翌朝まで延期することが可能となる。獲物が鹿であると解れば、罠に急行して鹿を確保することにより、食肉として提供する可能性を高めることができる。 また獲物が熊であった場合は、麻酔銃を持つなど、自分の身を守るために必要な事前準備を可能とする。
以下、本発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明する。
<全体構成>
図1は、実施例1に係る捕獲通知システム1の全体構成を説明する図である。 捕獲通知システム1は、図1に示すように、動物の生息域に設置された括り罠32及び33による動物の捕獲をユーザ端末8へ通知する捕獲通知サービスを提供するものである。
図1は、実施例1に係る捕獲通知システム1の全体構成を説明する図である。 捕獲通知システム1は、図1に示すように、動物の生息域に設置された括り罠32及び33による動物の捕獲をユーザ端末8へ通知する捕獲通知サービスを提供するものである。
括り罠は、図1及び後述する図3に示すように、ワイヤー33、踏み板32、図示しないスプリングで構成される。 踏み板32が動物の足によって踏まれると、留め具が外れて動物の足がワイヤー33によって拘束される。ワイヤー33の他端は樹木4に固定されているので動物は逃げることができない。
本実施例においては、ワイヤー33の途中に張力センサ30を挿入することにより、拘束された動物がワイヤー33を引っ張る力を検出する。 張力センサ30の出力は、ケーブル34により樹上センサ送信機20に伝送される。
後述するように、樹上センサ送信機20は、GPS(Global Positioning System)受信機24、音声センサ22と臭気センサ23を搭載している。 樹上センサ送信機20は、これらセンサから得られる情報(張力センサ30、GPS受信機24、音声センサ22と臭気センサ23)を情報圧縮し、128ビットのペイロードデータにまとめ、LPWA無線として送信する。
市街地などに設置されたLPWA受信機7は、樹上センサ送信機20から送信されたペイロードデータを受信して復号し、インターネット上のクラウドコンピュータ10に伝送する。クラウドコンピュータ10は、各種センサから得られた圧縮データをデータベース12に保管していく。 クラウドコンピュータ10はまた、各種センサから得られた圧縮データを判断エンジン11に供給し、括り罠に掛かっている動物の状況を判断する。 判断エンジン11はクラウドコンピュータ10で実行される認識プログラムであって、例えばニューラルネットワークにより実現される。 判断エンジン11により、括り罠に動物が掛かっていると判断された場合には、ユーザ端末8にメールを伝送することにより、猟師に罠に動物が掛かっていることを知らせる。 このメールには、GPSによる位置情報と、判断エンジン11が判断した動物の種別情報(鹿、狸、熊など)が含まれる。
ユーザ端末8に表示された情報を参考にして、猟師は括り罠に掛かっている動物の捕獲をおこなう。 ユーザ端末8に表示された動物が掛かっていることが期待されるが、場合によっては判断エンジン11の判断ミスにより、ユーザ端末8に表示されたのとは異なる動物が掛かっている可能性もある。 このとき猟師は、実際に掛かっていた動物の種別情報(鹿、熊、狸など)をユーザ端末8を操作してクラウドコンピュータ10にフィードバックする。 クラウドコンピュータ10は、フィードバックされた情報を教師データとしてデータベース12に蓄積していく。
このようにしてデータベース12に蓄積された過去の教師データと過去の圧縮データにより、クラウドコンピュータ10は判断エンジン11の更新(学習)をおこなう。 このようにして判断エンジン11は、猟師からのフィードバックによりその判断性能を向上させていく。 本システムはこのようにして判断エンジン11の性能を順次改善(学習)させることにより、最終的に高い精度で獲物の種類を特定できるシステムを構築する。
<括り罠周辺の構成>
図2は、樹上センサ送信機20及び張力センサ30の回路構成を示す図である。図2において、罠の周辺に設置される電子回路の詳細を説明する。 樹上センサ送信機20は、括り罠が設置された樹木4の幹において、高さ1〜2m程度の場所にマジックテープ(登録商標)などで固定される。 樹上センサ送信機20は、電源としてバッテリー21を内蔵し、樹上センサ送信機20及び張力センサ30に長期間の動作電源を供給する。 音声センサ22は、小型のマイクロフォンとAD変換器で構成され、動物の鳴き声など周囲の音声情報を検出してマイクロコントローラ25に送る。 臭いセンサ23は、硫黄化合物ガスなどを検出する所謂、悪臭感知センサであり、その検出出力をAD変換してマイクロコントローラ25に送る。 臭いセンサ23は、例えば熊のように強い体臭を持つ動物と、臭いを出さない動物(例えば鹿など)と区別するために有用である。
図2は、樹上センサ送信機20及び張力センサ30の回路構成を示す図である。図2において、罠の周辺に設置される電子回路の詳細を説明する。 樹上センサ送信機20は、括り罠が設置された樹木4の幹において、高さ1〜2m程度の場所にマジックテープ(登録商標)などで固定される。 樹上センサ送信機20は、電源としてバッテリー21を内蔵し、樹上センサ送信機20及び張力センサ30に長期間の動作電源を供給する。 音声センサ22は、小型のマイクロフォンとAD変換器で構成され、動物の鳴き声など周囲の音声情報を検出してマイクロコントローラ25に送る。 臭いセンサ23は、硫黄化合物ガスなどを検出する所謂、悪臭感知センサであり、その検出出力をAD変換してマイクロコントローラ25に送る。 臭いセンサ23は、例えば熊のように強い体臭を持つ動物と、臭いを出さない動物(例えば鹿など)と区別するために有用である。
GPS受信機24は、地球を周回する複数のGPS衛星からの電波を受信し、樹上センサ送信機20が設置された場所の緯度・経度情報を算出して、マイクロコントローラ25に送る。 メモリ27は、音声センサ22、臭いセンサ23そして張力センサ30から送られるセンサ情報を一時的に蓄積し、マイクロコントローラ25に供給する。 無線送信機26は、マイクロコンピュータ25により生成された128ビットのペイロードデータをLPWA無線として送信する。
マイクロコントローラ25は、後述するアルゴリズムにより、3つのセンサ情報を圧縮し、GPS緯度経度情報と樹上センサ送信機20の識別符号(ID)を付加し、128ビットのペイロードデータを作成し無線送信機26に送る。 マイクロコントローラ25はまた、張力センサ30内部に設置されたマイクロコントローラ39と通信を行い、張力センサ30が正しく接続されているか否かを判断し、1ビットのAlive情報とする。
張力センサ30は、ケーブル34によって樹上センサ送信機20から電源供給を受ける。また張力センサ30はワイヤー33の張力を測定し、ケーブル34を経由して樹上センサ送信機20に伝送する。 張力センサ30の電子回路は、圧力センサ38とマイクロコントローラ39により構成される。 圧力センサ30は図3に示す構成により、ワイヤー33に与えられた張力を圧力に変換して検出する。 圧力センサ30が検出した張力は、マイクロコントローラ39に内蔵されるAD変換器によりデジタル信号に変換され、ケーブル34を通して樹上センサ送信機20に伝送される。 マイクロコントローラ39はまた、ケーブル34が断線していないかどうか判断できるように、マイクロコントローラ25からの通信確認に応答する。
図3は張力センサ30の機械的構成を示す図である。 ワイヤー33は、リング押さえ35、36、37によって曲げられる。 この結果ワイヤー33に張力が発生すると、リング押さえ36が図の上方に押し上げられることになる。 この押し上げる力を圧力センサ38で電気信号に変換することで、ワイヤー33にかけられた張力を検出する構成となっている。 このような構成により、ワイヤー33をリング押さえ35,36,37に通すことで張力センサとして動作する。この結果、猟師が既に持っている括り罠をそのまま使うことが可能となる。
図4はマイクロコントローラ25の動作アルゴリズムを示すフローチャートである。 ステップSP1において、マイクロコントローラ25は3分毎に後述する信号処理アルゴリズムを実行し、後述する処理とLPWA送信を行うように構成されている。 ステップSP2において、マイクロコントローラ25は、GPS受信機24と通信を行い、樹上センサ送信機20が置かれた場所の緯度及び経度情報を取得する。 例えば、北緯36.030160度、東経138.155298度といった情報がGPS受信機24から得られる。 マイクロコントローラ25は、緯度及び経度の小数点以下6桁の情報(上の例では“030160”、“155298”)をBCD(Binary Coded Decimal)で表すことにより、それぞれ24ビットの緯度情報と経度情報に圧縮する。
緯度と経度の小数点より上の桁(北緯36度、東経138度)は、受信機7において復元することができるので、このように削除して構わない。
ステップSP3において、マイクロコントローラ25は音声センサ22の情報を圧縮処理する。先に述べたように音声センサ22は、小型のマイクロフォンとAD変換器で構成され、動物の鳴き声など周囲の音声情報を検出している。例えばAD変換レート10kHz、量子化数が10ビットの場合、3分間で18メガビットものデータになってしまう。このデータをそのままLPWAで伝送することはできないので、マイクロコントローラ25はデータ圧縮を行う。
マイクロコントローラ25は3分間の音声情報をフーリエ変換することによりスペクトルを算出し、スペクトルピークとなる信号レベル(Rpeak)と、スペクトルでピークを生ずる周波数(Rfreq)の二つの情報を求める。
図5は音声情報をフーリエ変換することにより得られるスペクトラムの一例を示す図である。 図5において、約160Hzの周波数において、音声レベルのピーク44dBが観測されている。そこでRpeak(6ビット)として“44”、Rfreq(12ビット)として“160”を採用する。 Rpeakにより、罠に掛かっている動物が発している音量が解り、Rfreqにより、罠に掛かっている動物が発している音程(高い音か低い音か)が解る。このようにして得られるRpeakとRfreqを合わせた音声情報(Roar)として18ビットに圧縮することができる。
ステップSP4において、臭いセンサ23のデータを処理する。計測している3分間において、臭いセンサの出力値が最も高くなったレベルを検出し、そのレベルを64段階のレベルであらわすことにより、臭いレベルSCENTとして6ビットの情報に圧縮する。熊は、独特の体臭が強いので、罠に掛かっていた動物が熊であった場合はSCENTとして伝送される値が大きくなる。
罠に掛かった動物が暴れてケーブル34を切断する場合がある。 この場合、張力センサ30は切断され、正しい張力が測定できない。 そこでステップSP5において、マイクロコントローラ25は、張力センサ30内部に設置されたマイクロコントローラ39と通信を行い、通信応答があるか否かを判定することにより、張力センサ30が正しく接続されているか否かを判断する。 正しく接続されている場合は、1ビットのAlive情報として“1”をセットし、接続が切れている場合は“0”をセットする。
張力センサ30が正しく接続されていると判断された場合は、ステップSP7において張力センサ30から得られた張力データの圧縮処理を行う。 図6は、張力センサ30から出力される波形データの模式図である。すなわち、図6は、動物が掛かった場合の張力波形を推定し、モデル化した波形を示す。 罠に掛かった直後にはワイヤー33の弛みがあるので、動物は自由に走り、ワイヤー33が伸び切った瞬間に引き戻される。 従って、早い動きで走り回る動物(鹿など)は、図6(A)のように波形の先頭部分にピークが現れると予想される。 これに対して力の強い動物(熊など)は、図6(B)のように、波形全体として高い張力が観測されることが予想される。 このように張力波形には動物の種別に関する情報が含まれている可能性が高い。 しかし張力波形をそのまま伝送すると、大量のデータ量になってしまうのでLPWA無線を適用することができない。
そこで本実施例では、閾値Thをノイズにより発生する微小な変動を上回る閾値として事前に設定する。 次に張力センサ30からの波形が閾値Thを超えた場合に、そのピーク値(Dpeak)、平均値(Dave)、継続時間(Dd)の3つの数値だけで張力波形を表す。 それぞれを10bitで表現すると、張力データを30ビットに圧縮することができる。
ステップSP8において、圧縮された各データを128ビットのペイロードデータとして図7に示すように構成する。図7は、128ビットのペイロードデータの構成を示す図である。 ペイロードデータの先頭は16ビットのID情報であり、マイクロコントローラ25の内部不揮発メモリに記録されている固有番号を使う。 次に樹上センサ送信機20のステータス情報(Status:10ビット)、GPSの緯度(24ビット)及び経度情報(24ビット)、鳴き声をあらわすRoar情報(18ビット)、臭いをあらわすSCENT情報(6ビット)、そして張力情報(30ビット)で、ペイロードデータが構成される。
図7左下に示すように、ステータス情報はTEST(1ビット)、張力センサ30が切断されていないことを示すAlive情報(1ビット)、電池残量を8段階で表すBAT情報(3ビット)及び周辺温度の情報Temp(5ビット)で構成される。 樹上センサ送信機20にはテストスイッチ28が搭載されている。 システムが正しく動作することを確認する場合は、テストスイッチ28(図2参照。)を押すことにより、ペイロードデータのTEST情報が“1”とされることにより、システムの動作試験をおこなうことができる。
ステップSP9において、ペイロードデータをLPWA無線により送信する。 この無線信号は、市街地などに設置されたLPWA受信機7により受信され、クラウドコンピュータ10に伝送される。クラウドコンピュータ10は判断エンジン11によって括り罠に掛かっている動物の状況を判断し、ユーザ端末8にメールを送ることにより、猟師に動物が掛かっていることを知らせる。 このメールには、GPSによる位置情報と、判断エンジン11が判断した動物の種別情報(鹿、狸、熊など)が含まれる。
<判断エンジン11の構成>
ペイロードデータから抽出された各種センサの情報(SCENT, Roar, Dpeak, Dave, Dd)を処理する判断エンジン11の構成を図8に示す。図8は、判断エンジン11の構成例を示す模式図である。 各種センサの情報を、所謂フィードフォワード型のニューラルネットワークに入力することにより、動物の種別判断などが可能となる。 このとき、ニューラルネットワークの内部設定は、データベース12に格納された過去のセンサ情報と、猟師がインプットした教師データを使った学習(バックプロパゲーション)により設定することができる。 フィードフォワード型のニューラルネットワークに関しては詳細説明を省略する。
ペイロードデータから抽出された各種センサの情報(SCENT, Roar, Dpeak, Dave, Dd)を処理する判断エンジン11の構成を図8に示す。図8は、判断エンジン11の構成例を示す模式図である。 各種センサの情報を、所謂フィードフォワード型のニューラルネットワークに入力することにより、動物の種別判断などが可能となる。 このとき、ニューラルネットワークの内部設定は、データベース12に格納された過去のセンサ情報と、猟師がインプットした教師データを使った学習(バックプロパゲーション)により設定することができる。 フィードフォワード型のニューラルネットワークに関しては詳細説明を省略する。
<先行特許との差異>
図9は、特許文献3に記載の括り罠の構成図である。 罠に動物が掛かったかどうかを知るために、特許文献3においては振動センサ300が使われ、樹木4に固定されたワイヤー305の振動を検出するように構成されている。
図9は、特許文献3に記載の括り罠の構成図である。 罠に動物が掛かったかどうかを知るために、特許文献3においては振動センサ300が使われ、樹木4に固定されたワイヤー305の振動を検出するように構成されている。
ところで括り罠301の周辺に人工物があると、鹿などの野生動物はその匂いを検出して近寄らない。 また括り罠301に動物が掛かると、動物は周囲を動き回って、周囲にある人工物を踏み壊してしまう。 匂いによる回避行動を防ぐため、そして破壊されることを防ぐために、猟師は振動センサ300を樹木4の近傍に設置する。 すなわち、猟師が設置する場所(樹木4の直近)では、振動センサ300の検出出力が小さくなってしまう問題点がある。 このように振動センサを用いた場合には、検出感度が樹木からの距離に依存して大きく変わってしまう。
以上の理由により、特許文献3のように振動センサを用いた場合は、罠にかかっていても検出されない可能性がある。 さらに、罠にかかっている動物が狸やウサギなどの小動物であるのか、それとも鹿やイノシシであるのか、といった区別をつけることが難しい。
[発明の効果]
本発明の捕獲通知システム及び捕獲通知方法によれば、センサ情報を圧縮して伝送するので、長距離・低消費電力で動作する無線技術が適用可能となり、携帯電話が届かない山中でも罠にかかった獲物を捕獲することができる。 本発明の括り罠の通報装置は、張力センサなどの情報を圧縮して伝送することにより、動物の種別を判定することが可能となる。 本発明によれば、猟師には罠の作動情報に加えて獲物の種類に関する事前情報が伝送されるので、獲物に応じて罠の見守りに行くことができる。 即ち獲物が小動物(狸やウサギなど)と解った場合には、括り罠の見守りを翌朝まで延期することが可能となる。獲物が鹿であると解れば、罠に急行して鹿を確保することにより、食肉として提供する可能性を高めることができる。 また本発明では猟師からのフィードバックを得て、獲物の判断がより正確になるように改善(学習)することが可能となっている。
本発明の捕獲通知システム及び捕獲通知方法によれば、センサ情報を圧縮して伝送するので、長距離・低消費電力で動作する無線技術が適用可能となり、携帯電話が届かない山中でも罠にかかった獲物を捕獲することができる。 本発明の括り罠の通報装置は、張力センサなどの情報を圧縮して伝送することにより、動物の種別を判定することが可能となる。 本発明によれば、猟師には罠の作動情報に加えて獲物の種類に関する事前情報が伝送されるので、獲物に応じて罠の見守りに行くことができる。 即ち獲物が小動物(狸やウサギなど)と解った場合には、括り罠の見守りを翌朝まで延期することが可能となる。獲物が鹿であると解れば、罠に急行して鹿を確保することにより、食肉として提供する可能性を高めることができる。 また本発明では猟師からのフィードバックを得て、獲物の判断がより正確になるように改善(学習)することが可能となっている。
尚、本発明は以上説明してきた実施例に限定されるものではない。例えば、図4においては、3分経過後に必ずLPWAの送信が行われるものとして説明した。張力センサ30の出力が所定の閾値を超えた場合にのみLPWAの無線送信するように構成することにより、無駄な送信を省くことができて樹上センサ送信機20の消費電力を低下させることが可能である。
また本実施例においては、樹上センサ送信機20及と張力センサ30とを、ケーブル34によって接続されるものとして説明した。 この構成では、獲物によってケーブル34を切断される危険性がある。 そこで張力センサ30にも乾電池などの電源を搭載することにより、ケーブル34の代わりに近距離を通信する無線を使うこともできる。近距離通信の無線としては、例えば低消費電力のBLE(Bluetooth Low Energy、Bluetoothは登録商標)を使うことができる。
1 捕獲通知システム、 4 樹木、 7 LPWA受信機、8 ユーザ端末、 10 クラウドコンピュータ、 11 判断エンジン、 12 データベース、20 樹上センサ送信機、21 バッテリー、22 音声センサ、 23 臭いセンサ、 24 GPS受信機、 25 マイクロコントローラ、 26 無線送信機、 27 メモリ、 30 張力センサ、 32 踏み板、33 ワイヤー、 34 ケーブル,38 圧力センサ、 39 マイクロコントローラ
Claims (13)
- 捕獲器及びその周囲の状態情報を取得するセンサ手段と、前記センサ手段により取得されたセンサ情報を圧縮して情報量を減らす圧縮手段と、前記圧縮された前記センサ情報を無線伝送する無線伝送手段と、前記無線伝送手段により無線伝送された前記センサ情報を受信する受信手段と、前記受信手段により受信された前記センサ情報に基づき前記捕獲器が捕えた動物の種別を判断する判断手段と、前記判断手段の出力をユーザに通知する通知手段を持つことを特徴とする捕獲通知システム。
- 前記センサ手段は、前記捕獲器の一部を構成するワイヤーの張力を検出する張力検出手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の捕獲通知システム。
- 前記センサ手段は、前記捕獲器の周辺の音声を検出する音声検出手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の捕獲通知システム。
- 前記判断手段は、前記ユーザからのフィードバックにより前記判断の基準又は手順が更新されることを特徴とする請求項1に記載の捕獲通知システム。
- 前記捕獲通知システムの一部が捕獲動物により破壊されたことを検出し、ユーザに通知する破壊通知手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の捕獲通知システム。
- センサにより捕獲器及びその周囲の状態を反映したセンサ情報を入手し、前記センサ情報を圧縮して情報量を減らし、前記圧縮された前記センサ情報を無線伝送し、前記無線伝送されたセンサ情報を受信し、前記受信された前記センサ情報に基づき前記捕獲器が捕えた動物の種別を判断し、前記判断結果をユーザに通知することを特徴とする捕獲通知方法。
- 前記センサにより入手される情報は、前記捕獲器の一部を構成するワイヤーの張力であることを特徴とする請求項6に記載の捕獲通知方法。
- 前記センサにより入手される情報は、前記捕獲器の周辺の音声情報であることを特徴とする請求項6に記載の捕獲通知方法。
- 前記動物の種別判断方法は、前記ユーザからのフィードバックにより前記判断の基準又は手順が更新されることを特徴とする請求項6に記載の捕獲通知方法。
- 前記捕獲器の一部が破壊されたことを検出し、前記ユーザに破壊通知をおこなうことを特徴とする請求項6に記載の捕獲通知方法。
- 捕獲器及びその周囲の状態情報を取得するセンサ手段と、前記センサ手段により取得されたセンサ情報を圧縮して情報量を減らす圧縮手段と、前記圧縮された前記センサ情報を無線伝送する無線伝送手段を持つことを特徴とする括り罠の通報装置。
- 前記センサ手段は、前記捕獲器の一部を構成するワイヤーの張力を検出する張力検出手段を含むことを特徴とする請求項11に記載の括り罠の通報装置。
- 前記センサ手段は、前記捕獲器の周辺の音声を検出する音声検出手段を含むことを特徴とする請求項11に記載の括り罠の通報装置。
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2019
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