JP2020147637A - 樹脂組成物および成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】微細繊維状セルロースの含有量が少ない場合であっても増粘性に優れた分散液とすることができる樹脂組成物、および引張特性に優れた成形体を提供する。【解決手段】繊維幅が1000nm以下の亜リン酸基を有する微細繊維状セルロース、水酸基およびオキソ酸基から選ばれる1種以上の官能基を有する樹脂、両性金属、並びに有機溶媒を含有し、水の含有量が10質量%未満である樹脂組成物および成形体である。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物および成形体に関する。
環境意識の高まりから再生可能な天然繊維として、木材由来の繊維状セルロースが幅広く使用されている。繊維状セルロースをナノサイズに微細化した微細繊維状セルロースは、優れた強度や増粘性等の特性を有することが知られている。
繊維状セルロースを微細化するためには、機械処理と合わせて化学処理・生物処理により前処理を行うことは公知である。特に、化学処理により、セルロース表面のヒドロキシ基に親水性の官能基(たとえば、カルボキシ基、カチオン基、リン酸基等)を導入すると、イオン同士の電気的な反発力およびイオンが水和することで、特に水系溶媒への分散性を著しく向上させることができ、繊維状セルロースの微細化に有用である。
また、微細繊維状セルロースは、環境に優しく強度、増粘性および軽量等の特性から、増粘剤の他にフィルム等の材料として好適に用いられている。
そこで、微細繊維状セルロースを含有したフィルムや、増粘性を有する組成物としてさらなる物性の向上のための技術改良が行われている(たとえば、特許文献1〜4参照)。
特許文献1では、塗料等に用いられる増粘剤組成物として、微細繊維状セルロース、アクリル酸系ポリマーおよび水を含有することが記載されている。特許文献2では、微細繊維状セルロースおよびポリビニルアルコールを用いたフィルムの製造方法が記載されている。特許文献3では、微細繊維状セルロース、両性金属イオンを含む化合物および水酸化テトラアルキルオニウムを含む分散液が記載されている。特許文献4では、優れた耐水性および十分な強度を有する樹脂複合体として、ポリビニルアルコール等の樹脂、微細繊維状セルロース、およびアルミニウムイオン等の多価イオンを含有することが記載されている。
特許第5795094号公報 特許第5901815号公報 特開2017−52943号公報 国際公開第2017/135413号
しかしながら、特許文献1では、増粘効果としては十分満足できるものではない。また、特許文献2では、ポリビニルアルコール100質量部に対し微細繊維状セルロースの含有量は30〜55質量部であるが、微細繊維状セルロースは高価なためその含有量は少ないことが望まれており、特許文献2に開示の技術では、微細繊維状セルロースの含有量が少ない場合であっても良好な引張特性を有するフィルムを得ることは困難である。
また、特許文献3では、水分量が多く増粘性や引張特性に改善の余地があり、また分散液に混合することができる具体的な樹脂および樹脂と混合することによる効果について開示はない。また、特許文献4では、樹脂複合体における多価イオンは陽イオンとして存在しており、増粘性や引張特性に関する記載はされていない。
したがって、組成物における微細繊維状セルロースの含有量が少ない場合であっても、分散液やフィルムとした場合の増粘性や引張特性のさらなる向上のためには改善の余地がある。
本発明の課題は、微細繊維状セルロースの含有量が少ない場合であっても、増粘性に優れた分散液とすることができる樹脂組成物を提供することである。
また本発明の他の課題は、引張特性に優れた成形体を提供することである。
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは下記本発明に想到し、当該課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1] 繊維幅が1000nm以下の亜リン酸基を有する微細繊維状セルロース、水酸基およびオキソ酸基から選ばれる1種以上の官能基を有する樹脂、両性金属、並びに有機溶媒を含有し、水の含有量が10質量%未満である樹脂組成物。
[2] さらに有機オニウム塩を含有する、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 前記有機オニウム塩が第4級アンモニウム塩である、[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 前記樹脂のJIS K 0070:1992に準拠して測定した水酸基価または酸価が1〜10000mgKOH/gである、[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] 前記両性金属がアルミニウムである、[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] 前記両性金属が陰イオンである、[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] 前記樹脂組成物が分散液である、[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] 繊維幅が1000nm以下の亜リン酸基を有する微細繊維状セルロース、水酸基およびオキソ酸基から選ばれる1種以上の官能基を有する樹脂、並びに両性金属を含有する成形体。
[9] さらに有機オニウム塩を含有する、[8]に記載の成形体。
[10] 前記有機オニウム塩が第4級アンモニウム塩である、[9]に記載の成形体。
[11] 前記樹脂のJIS K 0070:1992に準拠して測定した水酸基価または酸価が1〜10000mgKOH/gである、[8]〜[10]のいずれかに記載の成形体。
[12] 前記両性金属がアルミニウムである、[8]〜[11]のいずれかに記載の成形体。
[13] 前記両性金属が陰イオンである、[8]〜[12]のいずれかに記載の成形体。
本発明によれば、微細繊維状セルロースの含有量が少ない場合であっても、増粘性に優れた分散液とすることができる樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば引張特性に優れた成形体を提供することができる。
図1は、本発明の樹脂組成物の結合形態の一例を示す模式図である。 図2は、リンオキソ酸基を有する微細繊維状セルロース含有スラリーに対するNaOH滴下量とpHとの関係を示すグラフである。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、繊維幅が1000nm以下の亜リン酸基を有する微細繊維状セルロース(単に「微細繊維状セルロース」と称すことがある)、水酸基およびオキソ酸基から選ばれる1種以上の官能基を有する樹脂(単に「樹脂」と称すことがある)、両性金属、並びに有機溶媒を含有し、水の含有量が10質量%未満であることを特徴とする。
本発明の樹脂組成物において、微細繊維状セルロースと樹脂とは両性金属を介して架橋していると考えられる。
具体的には、図1に示す本発明の樹脂組成物の結合形態の一例を示す模式図により説明する。微細繊維状セルロース1は水酸基aを有しており、樹脂2は水酸基およびオキソ酸基から選ばれる1種以上の官能基bを有している。すなわち、微細繊維状セルロースおよび樹脂のいずれも水素結合が可能である官能基を有している。また樹脂組成物中において両性金属Mはアルミン酸イオン等の水酸化物イオンcとして水素結合が可能である官能基を有し、陰イオン化されている。
そして、樹脂組成物中において、微細繊維状セルロース1、樹脂2および両性金属Mがそれぞれ上記官能基を有することによって互いに水素結合が可能となり、両性金属Mを介して微細繊維状セルロース1および樹脂2が架橋された結合形態を形成していると考えられる。
さらに、本発明の樹脂組成物は、水の含有量が10質量%未満であることにより、上記水素結合がより強固となり優れた増粘性を発現することができると考えられる。
したがって本発明の樹脂組成物は、上記結合形態を有することにより、微細繊維状セルロースおよび樹脂のいずれか一方のみを含む分散液では得られない程の増粘性に優れた分散液を与えることができる。
本発明の樹脂組成物の粘度は、固形分量が1.0質量%である場合、5mPa・s以上となり、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは100mPa以上、さらに好ましくは1000mPa・s以上を実現することができる。
なお、本発明において粘度はB型粘度計により測定することができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
また、本発明の樹脂組成物を用いることにより、比引張エネルギー吸収量が大きく優れた引張特性を有する成形体を成形することも可能である。理由は定かではないが、樹脂組成物中の水の含有量が10質量%未満と少ないことにより、引張特性を向上させることが可能となる。
[微細繊維状セルロース]
(微細繊維状セルロース)
本発明において用いられる微細繊維状セルロースは、セルロースを含む繊維原料(単に「繊維原料」ともいう)から製造することができる。
セルロースを含む繊維原料としては、特に限定されないが、入手しやすく安価である点からパルプを用いることが好ましい。パルプとしては、たとえば木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえば広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)および酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)およびケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)およびサーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえばコットンリンターおよびコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わらおよびバガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、特に限定されないが、たとえば古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
上記パルプの中でも、入手のしやすさという観点からは、たとえば木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、木材パルプの中でも、セルロース比率が大きく解繊処理時の微細繊維状セルロースの収率が高い観点や、パルプ中のセルロースの分解が小さく軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる観点から、たとえば化学パルプがより好ましく、クラフトパルプ、サルファイトパルプがさらに好ましい。なお、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースを用いると粘度が高くなる傾向がある。
セルロースを含む繊維原料としては、たとえばホヤ類に含まれるセルロースや、酢酸菌が生成するバクテリアセルロースを利用することもできる。
また、セルロースを含む繊維原料に代えて、キチン、キトサン等の直鎖型の含窒素多糖高分子が形成する繊維を用いることもできる。
(繊維幅)
本発明において用いられる微細繊維状セルロースの繊維幅は1000nm以下である。上記繊維幅が1000nmを超えると増粘性が低下し、本発明の効果を奏することができない。
微細繊維状セルロースの繊維幅は、好ましくは2nm以上、より好ましくは3nm以上であり、そして、1000nm以下であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは10nm以下、よりさらに好ましくは8nm以下である。微細繊維状セルロースの繊維幅を2nm以上とすることにより、セルロース分子として水に溶解することを抑制し、微細繊維状セルロースによる強度や剛性、寸法安定性の向上という効果をより発現しやすい。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば単繊維状のセルロースである。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、好ましくは2nm以上、より好ましくは3nm以上であり、そして、好ましくは1000nm以下であり、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは100nm以下、よりさらに好ましくは50nm以下、よりさらに好ましくは30nm以下、よりさらに好ましくは10nm以下、よりさらに好ましくは8nm以下である。微細繊維状セルロースの平均繊維幅を2nm以上とすることにより、セルロース分子として水に溶解することを抑制し、微細繊維状セルロースによる強度や剛性、寸法安定性の向上という効果をより発現しやすくすることができる。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば単繊維状のセルロースである。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば電子顕微鏡観察を用いて以下のようにして測定される。まず、濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の微細繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。次いで、観察対象となる繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。ただし、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。このようにして、少なくとも互いに重なっていない表面部分の観察画像を3組以上得る。次いで、各画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。これにより、少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。そして、読み取った繊維幅の平均値を、微細繊維状セルロースの平均繊維幅とする。
微細繊維状セルロースの繊維長は、特に限定されないが、たとえば0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、0.1μm以上800μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上600μm以下であることがさらに好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制できる。また、微細繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることも可能となる。なお、微細繊維状セルロースの繊維長は、たとえばTEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
微細繊維状セルロースの軸比(繊維長/繊維幅)は、特に限定されないが、好ましくは20以上、より好ましくは50以上であり、そして、好ましくは10,000以下、より好ましくは1,000以下である。軸比を前記範囲内とすることにより、繊維層の形成に適したスラリー粘度が得られる。軸比を上記下限値以上とすることにより、微細繊維状セルロースを含有するシートを形成しやすく、また、溶媒分散体を作製した際に十分な増粘性が得られやすい。軸比を上記上限値以下とすることにより、たとえば微細繊維状セルロースを水分散液として扱う際に、希釈等のハンドリングがしやすくなる点で好ましい。
微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造を有することは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。これにより、耐熱性と低線熱膨張率に優れさせることも期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
また、微細繊維状セルロースの結晶化度は、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上であり、そして、好ましくは100%以下、より好ましくは95%以下、さらに好ましくは90%以下である。
本実施形態における微細繊維状セルロースは、たとえば結晶領域と非結晶領域をともに有している。特に、結晶領域と非結晶領域をともに有し、かつ軸比が高い微細繊維状セルロースは、後述する微細繊維状セルロースの製造方法により実現されるものである。
(亜リン酸基)
上記微細繊維状セルロースは、亜リン酸基または亜リン酸基に由来する置換基(単に「亜リン酸基」ともいう)を有する。繊維状セルロースの解繊処理において解繊効率を高める観点から、繊維原料と亜リン酸基を有する化合物とを反応させることにより、繊維状セルロースに亜リン酸基が導入される。
亜リン酸基または亜リン酸基に由来する基は、たとえば下記式(1)で表される基である。
式(1)中、bは自然数であり、mは任意の数である(ただし、b×m=1である)。αは、各々独立に、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、不飽和−環状炭化水素基、芳香族基、およびこれらの誘導基を表す。中でも、αは水素原子であることが特に好ましい。なお、式(1)におけるαには、セルロース分子鎖に由来する基は含まれない。
式(1)のαで表される飽和−直鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、またはn−ブチル基等が挙げられるが、特に限定されない。飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロピル基、またはt−ブチル基等が挙げられるが、特に限定されない。飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和−直鎖状炭化水素基としては、ビニル基、またはアリル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロペニル基、または3−ブテニル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられるが、特に限定されない。芳香族基としては、フェニル基、またはナフチル基等が挙げられるが、特に限定されない。
また、前記αにおける誘導体としては、前記各種炭化水素基の主鎖または側鎖に対し、カルボキシ基、ヒドロキシ基、またはアミノ基等の官能基のうち、少なくとも1種類が付加または置換した状態の官能基が挙げられるが、特に限定されない。また、前記αの主鎖を構成する炭素原子数は特に限定されないが、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。αの主鎖を構成する炭素原子数を上記範囲とすることにより、亜リン酸基の分子量を適切な範囲とすることができ、繊維原料への浸透を容易にし、微細繊維状セルロースの収率を高めることもできる。
式(1)におけるβ b+は有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。有機物からなる1価以上の陽イオンとしては、脂肪族アンモニウム、または芳香族アンモニウムが挙げられ、無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、ナトリウム、カリウム、若しくはリチウム等のアルカリ金属のイオンや、カルシウム、若しくはマグネシウム等の2価金属の陽イオン、または水素イオン等が挙げられるが、特に限定されない。これらは1種または2種類以上を組み合わせて適用することもできる。有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、βを含む繊維原料を加熱した際に黄変しにくく、また工業的に利用し易いナトリウム、またはカリウムのイオンが好ましいが、特に限定されない。
なお、微細繊維状セルロースは、亜リン酸基または亜リン酸基由来の置換基に加えて、さらにリン酸基またはリン酸基に由来する基を有していてもよい。リン酸基またはリン酸基に由来する基は、たとえば、下記式(2)もしくは(3)で表される置換基であってもよい。なお、リン酸基またはリン酸基に由来する基は、下記式(3)で表されるような縮合リンオキソ酸基であってもよい。
式(2)中、aおよびb’は自然数であり、mは任意の数である(ただし、a=b’×mである)。αおよびα’のうちa個がOであり、残りはORである。ここで、Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、不飽和−環状炭化水素基、芳香族基、またはこれらの誘導基である。なお、式(2)におけるαは、セルロース分子鎖に由来する基であってもよい。
式(3)中、a’およびb’’は自然数であり、mは任意の数であり、nは2以上の自然数である(ただし、a’=b’’×mである)。α ,α ,・・・,α およびα’のうちa’個がOであり、残りはRまたはORのいずれかである。ここで、Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、不飽和−環状炭化水素基、芳香族基、またはこれらの誘導基である。なお、式(3)におけるαは、セルロース分子鎖に由来する基であってもよい。
式(2)および(3)における各基の具体的例示は、式(1)における各基の具体的例示と同様である。また、式(2)におけるβ b’+および式(3)におけるβ b’’+の具体的例示は、式(1)におけるβ b+の具体的例示と同様である。
微細繊維状セルロースが亜リン酸基を置換基として有することは、微細繊維状セルロースを含有する分散液について赤外線吸収スペクトルの測定を行い、1210cm−1付近に亜リン酸基の互変異性体であるホスホン酸基のP=Oに基づく吸収を観察することで確認できる。また、微細繊維状セルロースがリン酸基を置換基として有することは、微細繊維状セルロースを含有する分散液について赤外線吸収スペクトルの測定を行い、1230cm−1付近にリン酸基のP=Oに基づく吸収を観察することで確認できる。また、微細繊維状セルロースが亜リン酸基やリン酸基を置換基として有することは、NMRを用いて化学シフトを確認する方法や、元素分析に滴定を組み合わせる方法などでも確認できる。
微細繊維状セルロースに対する亜リン酸基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることが特に好ましい。また、微細繊維状セルロースに対する亜リン酸基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり、5.20mmol/g以下であることが好ましく、3.65mmol/g以下であることがより好ましく、3.50mmol/g以下であることがさらに好ましく、3.00mmol/g以下であることがよりさらに好ましい。
亜リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易とすることができ、微細繊維状セルロースの安定性を高めることが可能となる。また、亜リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースを含む樹脂組成物の増粘剤等としての種々用途において良好な特性を発揮することができる。
微細繊維状セルロースに対する亜リン酸基の導入量は、たとえば中和滴定法により測定することができる。中和滴定法による測定では、得られた微細繊維状セルロースを含有するスラリーに、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリを加えながらpHの変化を求めることにより、亜リン酸基の導入量を測定する。
微細繊維状セルロースに対するリンオキソ酸基(亜リン酸基を含む)の導入量は、たとえば中和滴定法により測定することができる。中和滴定法による測定では、得られた微細繊維状セルロースを含有するスラリーに、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリを加えながらpHの変化を求めることにより、導入量を測定する。
図2は、リンオキソ酸基を有する微細繊維状セルロース含有スラリーに対するNaOH滴下量とpHとの関係を示すグラフである。
微細繊維状セルロースに対するリンオキソ酸基の導入量は、次のように測定することができる。
まず、微細繊維状セルロースを含有するスラリーを強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。
次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながらpHの変化を観察し、図2の上側部に示すような滴定曲線を得る。図2の上側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットしており、図2の下側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対するpHの増分(微分値)(1/mmol)をプロットしている。この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が二つ確認される。これらのうち、アルカリを加えはじめて先に得られる増分の極大点を第1終点と呼び、次に得られる増分の極大点を第2終点と呼ぶ。滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中に含まれる微細繊維状セルロースの第1解離酸量と等しくなり、第1終点から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中に含まれる微細繊維状セルロースの第2解離酸量と等しくなり、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中に含まれる微細繊維状セルロースの総解離酸量と等しくなる。そして、滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量を滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して得られる値が、リンオキソ酸基導入量(mmol/g)となる。なお、単にリンオキソ酸基導入量(またはリンオキソ酸基量)と言った場合は、第1解離酸量のことを表す。
なお、図2において、滴定開始から第1終点までの領域を第1領域と呼び、第1終点から第2終点までの領域を第2領域と呼ぶ。たとえば、リンオキソ酸基がリン酸基の場合であって、このリン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上、リンオキソ酸基における弱酸性基量(本明細書では第2解離酸量ともいう)が低下し、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、リンオキソ酸基における強酸性基量(本明細書では第1解離酸量ともいう)は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致する。また、リンオキソ酸基が亜リン酸基の場合は、リンオキソ酸基に弱酸性基が存在しなくなるため、第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなるか、第2領域に必要としたアルカリ量はゼロとなる場合もある。この場合、滴定曲線において、pHの増分が極大となる点は一つとなる。
なお、上記リンオキソ酸基導入量(mmol/g)は、分母の“g”が酸型の微細繊維状セルロースの質量を示すことから、酸型の微細繊維状セルロースが有するリンオキソ酸基量(「リンオキソ酸基量(酸型)」と称すことがある)を示している。一方で、リンオキソ酸基の対イオンが電荷当量となるように任意の陽イオンCに置換されている場合は、分母を当該陽イオンCが対イオンであるときの微細繊維状セルロースの質量に変換することで、陽イオンCが対イオンである微細繊維状セルロースが有するリンオキソ酸基量(「リンオキソ酸基量(C型)」と称すことがある)を求めることができる。
すなわち、下記計算式によって算出する。
リンオキソ酸基量(C型)=リンオキソ酸基量(酸型)/{1+(W−1)×A/1000}
A[mmol/g]:微細繊維状セルロースが有するリンオキソ酸基由来の総アニオン量(リンオキソ酸基の強酸性基量と弱酸性基量を足した総解離酸量)
W:陽イオンCの1価あたりの式量(たとえば、Naは23、Alは9)
なお、滴定法によるリンオキソ酸基量の測定においては、水酸化ナトリウム水溶液1滴の滴下量が多すぎる場合や、滴定間隔が短すぎる場合、本来より低いリンオキソ酸基量となるなど正確な値が得られないことがある。適切な滴下量、滴定間隔としては、たとえば、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を5〜30秒ごとに10〜50μLずつ滴定することなどが望ましい。また、微細繊維状セルロース含有スラリーに溶解した二酸化炭素の影響を排除するため、たとえば、滴定開始の15分前から滴定終了まで、窒素ガスなどの不活性ガスをスラリーに吹き込みながら測定することなどが望ましい。
また、亜リン酸基に加えて、リン酸基、縮合リン酸基のいずれかまたは両方を含む場合において検出されるリンオキソ酸が、亜リン酸、リン酸、縮合リン酸のどれに由来するか区別する方法としては、たとえば、酸加水分解などの縮合構造を切断する処理を行ってから上述した滴定操作を行う方法や、酸化処理などの亜リン酸基をリン酸基へ変換する処理を行ってから上述した滴定操作を行う方法などが挙げられる。
[微細繊維状セルロースの製造方法]
繊維状セルロースに亜リン酸基を導入して微細化する方法としては、公知の技術を用いることができ、たとえば繊維原料に亜リン酸基を導入する亜リン酸基導入工程、洗浄工程、アルカリ処理工程(中和工程)、解繊処理工程を経て、亜リン酸基が導入された微細繊維状セルロースを含む分散液として得ることができる。得られた微細繊維状セルロースを含む分散液は、後述する本発明の樹脂組成物の製造にそのまま用いることができる。
なお、亜リン酸基導入工程の前に前処理工程を有していてもよい。また、洗浄工程の代わりに、または洗浄工程に加えて、酸処理工程を有していてもよい。
(亜リン酸基導入工程)
上記亜リン酸基導入工程としては、たとえば、セルロースを含む繊維原料と亜リン酸基を導入できる化合物(以下、「化合物A」ともいう)を、尿素およびその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」ともいう)の存在下で加熱しながら反応させて行うことができる。一方で、化合物Bが存在しない状態において、セルロースを含む繊維原料と化合物Aとの反応を行ってもよい。
化合物Aを化合物Bとの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態、湿潤状態またはスラリー状の繊維原料に対して、化合物Aと化合物Bを混合する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料を用いることが好ましく、特に乾燥状態の繊維原料を用いることが好ましい。繊維原料の形態は、とくに限定されないが、たとえば綿状や薄いシート状であることが好ましい。化合物Aおよび化合物Bを添加する方法としては、それぞれ、粉末状、溶媒に溶解させた溶液状または融点以上まで加熱して溶融させた状態で繊維原料に添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、溶媒に溶解させた溶液状、特に水溶液の状態で添加することが好ましい。また、化合物Aと化合物Bは繊維原料に対して同時に添加してもよく、別々に添加してもよく、混合物として添加してもよい。化合物Aと化合物Bの添加方法としては、とくに限定されないが、化合物Aと化合物Bが溶液状の場合は、繊維原料を溶液内に浸漬し吸液させたのちに取り出してもよいし、繊維原料に溶液を滴下してもよい。また、必要量の化合物Aと化合物Bを繊維原料に添加してもよいし、過剰量の化合物Aと化合物Bをそれぞれ繊維原料に添加した後に、圧搾や濾過によって余剰の化合物Aと化合物Bを除去してもよい。
本実施態様で使用する化合物Aは、亜リン酸基を有する化合物およびその塩から選択される少なくとも1種である。亜リン酸基を有する化合物としては亜リン酸を挙げることができ、亜リン酸としては、たとえば99%亜リン酸(ホスホン酸)が挙げられる。亜リン酸基を有する化合物の塩としては、亜リン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられ、これらは種々の中和度とすることができる。これらのうち、リンオキソ酸基の導入の効率が高く、後述する解繊処理工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、亜リン酸、亜リン酸のナトリウム塩、亜リン酸のカリウム塩、または、亜リン酸のアンモニウム塩が好ましく用いられる。
繊維原料に対する化合物Aの添加量は、上述の微細繊維状セルロースに対する亜リン酸基の導入量となるよう適宜決定すればよい。
本実施形態で使用する化合物Bは、上述のとおり尿素およびその誘導体から選択される少なくとも1種である。化合物Bとしては、尿素、チオ尿素、ビウレット、1−フェニル尿素、1−ベンジル尿素、1−メチル尿素、および1−エチル尿素、ジメチル尿素、ジエチル尿素、テトラメチル尿素等が挙げられる。化合物Bは、上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
反応の均一性を向上させる観点から、化合物Bは水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性をさらに向上させる観点からは、化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。
繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は、特に限定されないが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは100質量%以上であり、そして、好ましくは500質量%以下、より好ましくは400質量%以下、さらに好ましくは350質量%以下である。
セルロースを含む繊維原料と化合物Aとの反応においては、化合物Bの他に、アミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、特にトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
亜リン酸基導入工程においては、繊維原料に化合物A等を添加または混合した後、当該繊維原料に対して加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度としては、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、亜リン酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。加熱処理温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。
また、加熱処理は、種々の熱媒体を有する機器を利用することができ、撹拌乾燥装置、回転乾燥装置、円盤乾燥装置、ロール型加熱装置、プレート型加熱装置、流動層乾燥装置、気流乾燥装置、減圧乾燥装置、赤外線加熱装置、遠赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置、高周波乾燥装置が例示される。
加熱処理においては、たとえば薄いシート状の繊維原料に化合物Aを含浸等の方法により添加した後、加熱する方法や、ニーダー等で繊維原料と化合物Aを混練または撹拌しながら加熱乾燥する方法を採用することができる。これにより、繊維原料における化合物Aの濃度ムラを抑制して、繊維原料に含まれるセルロース繊維表面へより均一に亜リン酸基を導入することが可能となる。これは、乾燥に伴い水分子が繊維原料表面に移動する際、溶存する化合物Aが表面張力によって水分子に引き付けられ、繊維原料表面に移動してしまう(すなわち、化合物Aの濃度ムラを生じてしまう)ことを抑制できることによるものと考えられる。
また、加熱処理に用いる加熱装置としては、スラリーが保持する水分および化合物Aと繊維原料中のセルロース等が含む水酸基等との脱水縮合(亜リン酸エステル化)反応に伴って生じる水分を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましい。このような加熱装置としては、たとえば送風方式のオーブン等が挙げられる。装置系内の水分を常に排出することにより、亜リン酸エステル化の逆反応である亜リン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもできる。このため、所望の軸比の微細繊維状セルロースを得ることが可能となる。
加熱処理の時間は、繊維原料から実質的に水分が除かれてから、好ましくは1秒以上、より好ましくは10秒以上であり、そして、好ましくは300分以下、より好ましくは1,000秒以下、さらに好ましくは800秒以下である。加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、亜リン酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
上記亜リン酸基導入工程は、少なくとも1回行えばよいが、2回以上繰り返して行ってもよい。
(洗浄工程)
上記洗浄工程としては、たとえば水や有機溶媒により亜リン酸基を導入した繊維状セルロースを洗浄することにより行われ、洗浄回数は特に限定されない。
(アルカリ処理工程(中和工程))
上記アルカリ処理工程(中和工程)としては、特に限定されないが、たとえばアルカリ溶液中に、亜リン酸基を導入した繊維状セルロースを浸漬する方法が挙げられる。アルカリ溶液としては、汎用性が高いことから、水酸化ナトリウム水溶液および水酸化カリウム水溶液等が好ましい。
(酸処理工程)
微細繊維状セルロースの製造において、亜リン酸基導入工程と、後述する解繊処理工程との間に、亜リン酸基導入繊維原料に対して、酸処理を行ってもよい。微細繊維状セルロースの製造方法の一例としては、亜リン酸基導入工程、酸処理工程、アルカリ処理工程、および解繊処理工程をこの順で行う態様が挙げられる。
酸処理の方法としては、特に限定されないが、酸を含有する酸性液中に繊維原料を浸漬する方法が挙げられる。酸性液に含まれる酸としては、無機酸、スルホン酸、カルボン酸等が例示され、塩酸または硫酸を用いることが特に好ましい。
(解繊処理工程)
上記解繊処理工程としては、解繊処理装置を用いて行うことができる。解繊処理装置の中でも、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミネーションのおそれが少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。また、解繊処理工程においては、亜リン酸基を導入した繊維状セルロースを分散媒に希釈して分散液にすることが好ましい。分散媒としては、水、および極性有機溶剤等の有機溶媒から選択され、上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
(微細繊維状セルロースの含有量)
本発明の樹脂組成物中における微細繊維状セルロースの含有量は、0.0001〜50質量%が好ましく、0.001〜30質量%がより好ましく、0.01〜10質量%がさらに好ましい。本発明の樹脂組成物は、微細繊維状セルロースの含有量が少ない場合であっても優れた増粘性を有する分散液を与えることができ、上記範囲内であれば該増粘性を十分に発現させることができる。
また、本発明の樹脂組成物中における、微細繊維状セルロースと後述の樹脂との質量比での含有割合〔微細繊維状セルロース/樹脂〕は、0.1/99.9〜50/50が好ましく、1/99〜30/70がより好ましく、5/95〜20/80がさらに好ましい。
[樹脂]
本発明において用いられる樹脂は、水酸基およびオキソ酸基から選ばれる1種以上の官能基を有するものである。前述したとおり、上記官能基を有することにより、樹脂は両性金属を介して微細繊維状セルロースと架橋構造が形成され、優れた増粘性および引張特性が発現されると考えられる。
上記オキソ酸基としては、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基、硫酸基等が挙げられる。上記官能基の中でも、両性金属との水素結合のしやすさの観点から、好ましくは水酸基およびカルボキシ基、より好ましくは水酸基である。水酸基はアルコール性水酸基およびフェノール性水酸基のいずれでもよいが、好ましくはアルコール性水酸基である。
上記樹脂は、水酸基およびオキソ酸基から選ばれる1種以上の官能基を有するモノマーの単独重合体、該官能基を有するモノマーと該官能基を有さないモノマーとの共重合体、該官能基の種類がそれぞれ異なる複数のモノマーの共重合体であってもよい。
水酸基を有する樹脂としては、水酸基を有していれば特に制限はなく、ポリビニルアルコール系樹脂、水酸基を有するポリエステル系樹脂、水酸基を有するウレタン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。
カルボキシ基を有する樹脂としては、カルボキシ基を有していれば特に制限はなく、ポリアクリル酸、メタクリル酸アルキル・アクリル酸コポリマー等のカルボキシ基を有するアクリル酸系樹脂、カルボキシビニル樹脂、ポリグリコール酸、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
上記樹脂の中でも、増粘性および引張特性の観点から、好ましくはポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸およびカルボキシビニル樹脂であり、より好ましくはポリビニルアルコールである。
水酸基およびオキソ酸基から選ばれる1種以上の官能基を有する樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
上記樹脂のJIS K 0070:1992に準拠して測定した水酸基価または酸価は、好ましくは1〜10000mgKOH/g、より好ましくは2〜5000mgKOH/g、さらに好ましくは5〜2000mgKOH/gである。上記範囲内であれば架橋点を十分に形成することができ、より増粘性に優れた樹脂組成物が得られる。
本発明の樹脂組成物中における樹脂の含有量は、十分な量の架橋点による増粘性の観点から、0.0001〜99.9質量%が好ましく、0.001〜99質量%がより好ましく、0.01〜95質量%がさらに好ましい。
[両性金属]
本発明の樹脂組成物に含まれる両性金属は、アルミニウム、亜鉛、スズおよび鉛が挙げられ、上記の1種単独でもよく、2種以上が含まれていてもよい。両性金属の中でも原子量あたりの価数が多いため少ない量で増粘性を高められる観点から、好ましくはアルミニウムおよび亜鉛、より好ましくはアルミニウムである。
両性金属は、前述のとおり樹脂組成物において陰イオンとして存在しており、両性金属を含む化合物を用いて後述の方法により本発明の樹脂組成物を製造することができる。両性金属を含む化合物としては、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸スズ、塩化スズ、硫酸鉛、塩化鉛等が挙げられる。両性金属を含む化合物は、上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
本発明の樹脂組成物中における両性金属の含有量は、十分な量の架橋点による増粘性の観点から、0.000001〜5質量%が好ましく、0.00001〜3質量%がより好ましく、0.0001〜1質量%がさらに好ましい。
なお、上記両性金属の含有量は、後述する実施例に記載の方法に従って算出することができる。
[有機溶媒]
本発明の樹脂組成物に含まれる有機溶媒は、水酸基およびオキソ酸基を有しないことが好ましい。
有機溶媒としては、たとえば、ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド;ジメチルアセトアミド;2−ピロリドン;N−メチル−2−ピロリドン;アセトンおよびメチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチルおよび酢酸ブチル等のエステル類:ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテルおよびエチレングリコールモノt−ブチルエーテル等のエーテル類、ピリジン;アニリン;ヘキサン;シクロヘキサン;ベンゼン;トルエン;p−キシレン;ジクロロメタン;クロロホルム;四塩化炭素等が挙げられる。上記有機溶媒の中でも樹脂の溶解性の観点から、ジメチルスルホキシドが好ましい。有機溶媒は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
本発明の樹脂組成物中における有機溶媒の含有量は、優れた増粘性を発現させる観点から、固形分濃度が好ましくは0.01〜90質量%、より好ましくは0.05〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%となるように調整することができる。
[水の含有量]
本発明の樹脂組成物中の水の含有量は10質量%未満であり、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.6質量%以下であり、0質量%であってもよい。上記水の含有量が10質量%以上であると優れた増粘性を発現することができない。
[有機オニウム塩]
本発明の樹脂組成物には、有機オニウム塩が含まれることが好ましい。
有機オニウム塩のオニウム塩としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、フルオロニウム塩、クロロニウム塩、ブロモニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられ、好ましくはアンモニウム塩およびホスホニウム塩であり、より好ましくはアンモニウム塩であり、さらに好ましくは第4級アンモニウム塩である。
有機オニウム塩の中でも、微細繊維状セルロースを疎水化させる観点から、テトラアルキルオニウムヒドロキシド等が好ましく、特にテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドおよびテトラアルキルホスホニウムヒドロキシドが好ましく、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドがより好ましい。
テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドとしては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘプチルアンモニウムヒドロキシド、ラウリルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ステアリルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクチルジメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、ラウリルジメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、ジデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムヒドロキシド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、ジ−n−アルキルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ベヘニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドとしては、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド、テトラプロピルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、トリエチルメチルホスホニウムヒドロキシド、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド、テトラオクチルホスホニウムヒドロキシド、アセトニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、アリルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、アミルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、エチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド等が挙げられる。有機オニウム塩は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
本発明の樹脂組成物中における有機オニウム塩の含有量は、十分な量の架橋点による増粘性の観点から、0.001〜10質量%が好ましく、0.005〜5質量%がより好ましく、0.01〜1質量%がさらに好ましい。
また、微細繊維状セルロースの良好な分散による増粘性の観点から、微細繊維状セルロースに導入されたアニオン量および両性金属イオンの合計量に対する有機オニウム塩の含有量は、モル比で、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.5〜5である。
[他の成分]
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、微細繊維状セルロース、樹脂および両性金属以外の他の成分を添加してもよい。他の成分としては、界面活性剤、有機イオン、カップリング剤、無機層状化合物、無機化合物、レベリング剤、防腐剤、消泡剤、有機系粒子、潤滑剤、帯電防止剤、紫外線防御剤、染料、顔料、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、分散剤、および架橋剤等が挙げられる。他の成分は、上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物は、亜リン酸基を有する微細繊維状セルロースを含む分散液を用いて、微細繊維状セルロースの濃縮物を得る濃縮工程、該濃縮物を回収する回収工程、微細繊維状セルロースを再分散させる再分散工程、樹脂と混合する工程を経ることにより製造することができる。
また、本発明の樹脂組成物は、当該工程を経ることにより分散液の状態で得ることができる。
(濃縮工程)
濃縮工程は、前述した微細繊維状セルロースを含む分散液に、前述した両性金属を含む化合物を添加して微細繊維状セルロースの濃縮物を得る工程である。本工程により、微細繊維状セルロースに導入された亜リン酸基の対イオンである陽イオンが両性金属の陽イオンに置換される。該陽イオンの置換により微細繊維状セルロースは凝集され、微細繊維状セルロースの濃縮物を得ることができる。
前述した微細繊維状セルロースを含む分散液に、前述した両性金属を含む化合物を添加する方法に特に制限はない。たとえば、微細繊維状セルロースを含む分散液を撹拌しながら、両性金属を含む化合物を添加すればよい。両性金属を含む化合物は、固体で添加してもよく、溶媒を用いて溶液または分散液として添加してもよい。撹拌時間は微細繊維状セルロースおよび両性金属が混合されれば特に制限されないが、通常1分〜8時間程度であり、好ましくは1〜8時間である。
(回収工程)
回収工程は、上記濃縮物を、たとえばろ過、洗浄および乾燥して回収する工程である。回収方法に特に制限はなく、公知の方法により行えばよい。
たとえば、ろ過はろ紙、不織布、メンブランフィルター等のフィルターを用いてもよく、自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心分離等によりろ過してもよい。
また、洗浄は、水や有機溶媒等の洗浄液を用いて行われ、洗浄液を常温または30〜70℃程度に加熱して行ってもよい。乾燥は、減圧乾燥、加熱乾燥等により行えばよく、加熱する場合は通常30〜70℃程度で、通常1〜60分間程度で行うことができる。
上記洗浄および乾燥は行っても行わなくてもよく、またそれぞれ繰り返し行ってもよく、順番についても制限はない。
また、対イオンの両性金属への置換を十分に進める観点から、上記ろ過におけるろ液の電気伝導度は、好ましくは130μS/cm以下である。
(再分散工程)
再分散工程は、回収した濃縮物に有機オニウム塩を添加して微細繊維状セルロースを有機溶媒中に再分散させる工程である。
再分散工程により、微細繊維状セルロースを凝集させている陽イオンの両性金属が離脱し、微細繊維状セルロースを再び分散させることができる。このとき、両性金属は添加された有機オニウム塩により陰イオン化される。また、微細繊維状セルロースの亜リン酸基と有機オニウムの陽イオンにより微細繊維状セルロースが疎水化され、後に混合する樹脂と微細繊維状セルロースとの相溶性を良好なものとすることができる。
本工程において用いられる有機オニウム塩としては、前述の本発明の樹脂組成物の説明で、樹脂組成物に含まれ得る有機オニウム塩として例示したものが挙げられる。
本工程における有機オニウム塩の添加量は、微細繊維状セルロースの良好な分散による増粘性の観点から、微細繊維状セルロースに導入されたアニオン量および両性金属イオンの合計量に対し、モル比で、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.5〜5である。
また、有機溶媒としては、前述の本発明の樹脂組成物の説明で、樹脂組成物に含まれる有機溶媒として例示したものを用いることができる。
本工程における有機溶媒の添加量は、均一に分散させる観点から、再分散溶液中の微細繊維状セルロースの含有量が、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%となるように調整することが好ましい。
再分散に用いる分散装置としては、特に限定されないが、たとえば高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーター等を使用することができる。
(樹脂と混合する工程)
上記再分散溶液へ前述した樹脂を添加して混合する工程を経ることにより本発明の樹脂組成物を製造することができる。
樹脂は、予め有機溶媒に溶解または分散させてから添加してもよい。該有機溶媒としては、上記再分散工程において例示したものを用いることができ、好ましくは分散工程で用いた有機溶媒と同一のものである。
また本工程において再分散溶液に、本発明の効果を損なわない限りにおいて、微細繊維状セルロース、樹脂および両性金属以外の他の成分を添加してもよい。他の成分としては、前述のとおりである。
上記より製造された樹脂組成物が有機オニウム塩を含有するか否かは、イオンクロマトグラフィーによる測定のほか、水酸化テトラアルキルアンモニウムの場合は、微量窒素分析法、水酸化テトラアルキルホスホニウムの場合は、モリブデンブルー法等により測定することができる。
上記より製造された樹脂組成物が水酸化テトラアルキルアンモニウムを含有する場合、樹脂組成物の窒素含有量は、樹脂組成物が含有する両性金属の量に対し、モル比で、1〜10が好ましく、2〜6がより好ましい。
上記より製造された樹脂組成物が水酸化テトラアルキルホスホニウムを含有する場合、樹脂組成物のリン含有量は、樹脂組成物が含有する両性金属の量に対し、モル比で、2〜12が好ましく、4〜8がより好ましい。
<成形体>
本発明は、繊維幅が1000nm以下の亜リン酸基を有する微細繊維状セルロース、水酸基およびオキソ酸基から選ばれる1種以上の官能基を有する樹脂、並びに両性金属を含有する成形体を提供する。
本発明の成形体は比引張エネルギー量が大きいといった引張特性に優れる特性を有するものである。本発明の成形体の比引張エネルギー量は、0.5mJ/g以上となり、好ましくは3.5mJ/g以上、より好ましくは5.0mJ/g以上である。
なお、本発明において比引張エネルギー量は、JIS P 8113:2006に準拠して測定することができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
また、成形体に含まれる上記微細繊維状セルロース、樹脂、および両性金属は、前述の樹脂組成物に含まれる微細繊維状セルロース、樹脂、および両性金属と同等とすることができ、各含有量も同等とすることができる。さらに、本発明の成形体は有機オニウム塩を含有することができ、前述の樹脂組成物に含まれ得る有機オニウム塩およびその含有量も同等とすることができる。
上記成形体の製造方法としては特に限定されないが、たとえば、前述の樹脂組成物を用いて成形することで上記成形体を製造することができる。
前述の樹脂組成物を成形して成形体とする際の成形方法としては、特に制限はなく所望する成形体に応じて、圧縮成型、トランスファー成形、押出し成型、射出成形、キャスト法、インフレーション成形等の公知の方法を採用すればよい。成形体をシートとする場合の製膜法としては、キャスト法、インフレーション法等が好ましく、ドラムロールを用いて行ってもよい。
<用途>
本発明の樹脂組成物は、増粘剤として食品、化粧品、セメント、塗料、およびインク等の各種用途への添加物等に使用することができる。また、本発明の樹脂組成物は公知の方法により成形して成形体とすることもでき、樹脂組成物を製膜して各種シートを作製してもよい。
本発明の成形体は補強材および各種シートとして用いることもできる。シートは、各種のディスプレイ装置、各種の太陽電池等の光透過性基板の用途に適している。また、電子機器の基板、家電の部材、各種の乗り物や建物の窓材、内装材、外装材、包装用資材等の用途にも適している。さらに、シートそのものを補強材として使う用途にも適している。
また、本発明の樹脂組成物および成形体は、糸、フィルター、織物、緩衝材、スポンジ、研磨材等の用途にも好適である。
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<製造例1−1>
〔微細繊維状セルロース分散液の製造〕
原料パルプとして、王子製紙(株)製の針葉樹クラフトパルプ(固形分93質量%、坪量245g/mシート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700ml)を使用した。
この原料パルプに対して亜リン酸化処理を次のようにして行った。まず、上記原料パルプ100質量部(絶乾質量)に、亜リン酸(ホスホン酸)と尿素の混合水溶液を添加して、亜リン酸33質量部、尿素120質量部、水150質量部となるように調整し、薬液含浸パルプを得た。次いで、得られた薬液含浸パルプを165℃の熱風乾燥機で250秒加熱し、パルプ中のセルロースに亜リン酸基を導入し、亜リン酸化パルプを得た。
次いで、得られた亜リン酸化パルプに対して洗浄処理を行った。洗浄処理は、亜リン酸化パルプ100g(絶乾質量)に対して10Lのイオン交換水を注いで得たパルプ分散液を、パルプが均一に分散するよう撹拌した後、濾過脱水する操作を繰り返すことにより行った。ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下となった時点で、洗浄終点とした。
洗浄後の亜リン酸化パルプに対して、さらに上記亜リン酸化処理、上記洗浄処理をこの順に1回ずつ行った。
次いで、洗浄後の亜リン酸化パルプに対してアルカリ処理(中和処理)を次のようにして行った。まず、洗浄後の亜リン酸化パルプを10Lのイオン交換水で希釈した後、撹拌しながら1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加することにより、pHが12以上13以下の亜リン酸化パルプスラリーを得た。次いで、当該亜リン酸化パルプスラリーを脱水して、中和処理が施された亜リン酸化パルプを得た。次いで、中和処理後の亜リン酸化パルプに対して、上記洗浄処理を行った。
これにより得られた亜リン酸化パルプに対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1210cm−1付近に亜リン酸基の互変異性体であるホスホン酸基P=Oに基づく吸収が観察され、パルプに亜リン酸基(ホスホン酸)が付加されていることが確認された。
また、得られた亜リン酸化パルプを供試して、X線回折装置にて分析を行ったところ、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置にセルロースI型結晶に典型的なピークが確認され、セルロースI型結晶を有していることが確認された。
得られた亜リン酸化パルプは、後述する測定方法で測定される亜リン酸基量(第1解離酸量)が1.51mmol/gだった。なお、総解離酸量は、1.54mmol/gであった。
上記アルカリ処理工程を経て得られた亜リン酸化パルプにイオン交換水を添加して攪拌し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、湿式微粒化装置((株)スギノマシン製、スターバースト)で200MPaの圧力にて6回処理し、微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液Aを得た。
X線回折により、この微細繊維状セルロースがセルロースI型結晶を維持していることが確認された。また、微細繊維状セルロースの繊維幅を、透過型電子顕微鏡を用いて測定したところ、3〜5nmであった。
〔濃縮工程〕
上記解繊処理工程を経て得られた微細繊維状セルロース分散液A100gを分取し、撹拌しながら0.21gの硫酸アルミニウムを添加した。さらに5時間撹拌を続けたところ、微細繊維状セルロースの凝集が認められた。
〔回収工程〕
次いで、微細繊維状セルロース分散液をろ過した後、ろ紙で圧搾し、微細繊維状セルロース濃縮物を得た。得られた微細繊維状セルロース濃縮物を、イオン交換水で微細繊維状セルロースの含有量が2.0質量%となるよう再懸濁した。その後、再びろ過と圧搾を行う操作を繰り返すことで洗浄し、微細繊維状セルロース濃縮物Aを得た。
洗浄終点は、ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下となった点とした。得られた微細繊維状セルロース濃縮物Aの固形分濃度は15質量%であった。得られた微細繊維状セルロース濃縮物Aに含まれるアルミニウム量を後述の方法で測定したところ、固形分100gあたり1.2gであった。
なお、測定された微細繊維状セルロース濃縮物Aに含まれるアルミニウム量C[mmol]は、式(4)から計算されるアルミニウム量Ccalとほぼ一致していた。
cal=A×B/X (4)
ここで上記式(4)中、A、B、Xは次を示す。
A:微細繊維状セルロースに導入された亜リン酸基に由来するアニオン量[mmol/g]
B:供試した微細繊維状セルロース量[g]
X:アルミニウムイオンの価数(=3)
なお、以降の製造例でアルミニウム以外の金属を使用する場合には、アルミニウム量およびアルミニウムイオンの価数は、当該金属量と当該金属イオンの価数に読み替えるものとする。
<製造例1−2>
製造例1−1で得られた微細繊維状セルロース分散液A500gに対し、0.5質量%に希釈した塩化カルシウム水溶液を250g加えて、ゲル化させた。得られたゲルをろ過した後、ろ紙で圧搾し、微細繊維状セルロース濃縮物を得た。
この微細繊維状セルロース濃縮物を0.1N塩酸水溶液250gに30分間浸漬した後、これをろ過し、さらにろ紙にて圧搾した。次いで、この微細繊維状セルロース濃縮物を、ミキサー(岩谷産業(株)製、ミルサー800DG)を用いて粉砕することで、微細繊維状セルロース濃縮物Bを得た。
微細繊維状セルロース濃縮物Bの固形分濃度は20質量%であった。得られた微細繊維状セルロース濃縮物Bに含まれるアルミニウム量を上述の方法で評価したところ、検出可能量に満たなかった。
<実施例1>
〔再分散工程〕
微細繊維状セルロース濃縮物A20.0gに、55質量%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液3.53gを添加し、微細繊維状セルロースの含有量が0.5質量%となるようジメチルスルホキシドを添加した。次いで、超音波ホモジナイザー(hielscher製、UP400S)で10分間処理し、微細繊維状セルロース再分散液を得た。
なお、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドの添加量D[mmol]は、下記式(5)で得られる値とした。
D=(A+C)×B (5)
ここで上記式(2)中、A、B、Cは次を示す。
A:微細繊維状セルロースに導入された亜リン酸基に由来するアニオン量[mmol/g]
B:供試した微細繊維状セルロース量[g]
C:微細繊維状セルロース濃縮物に含まれるアルミニウムイオン量[mmol/g]
なお、以降の実施例でアルミニウムの代わりにアルミニウム以外の金属を使用している場合には、アルミニウム量およびアルミニウムイオンの価数は、当該金属量と当該金属イオンの価数に読み替えるものとする。
〔樹脂の混合工程〕
(樹脂の溶解)
ポリビニルアルコール(PVA、(株)クラレ製、ポバール117、重合度1700、ケン化度98〜99mol%)の濃度が20質量%となるように、ジメチルスルホキシドを加え、95℃で1時間撹拌し、ポリビニルアルコール溶液を得た。
(分散液の調製)
微細繊維状セルロース10質量部に対しポリビニルアルコールが90質量部となるよう、得られた微細繊維状セルロース再分散液にポリビニルアルコール溶液を添加し、固形分濃度が1.0%となるように、さらにジメチルスルホキシドを加えることで、樹脂含有微細繊維状セルロース分散液を得た。
得られた分散液中の微細繊維状セルロースの含有量は0.093質量%、ポリビニルアルコールの含有量は0.845質量%、アルミニウムの含有量は0.001質量%、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドの含有量は0.061質量%であった。
また、得られた分散液の水含有量は、供試した微細繊維状セルロース濃縮物Aと55%テトラブチルアンモニウム水溶液の添加量から計算したところ、100gあたり0.58gであった。
〔シート化〕
上記で得られた樹脂含有微細繊維状セルロース分散液を、シートの仕上がり坪量が40g/mとなるように計量して、ステンレス板(SUS304)上に展開し、110℃の熱風乾燥機で24時間乾燥させた。なお、所定の坪量となるようステンレス板上には堰き止め用の板を配置した。以上の手順により、厚み92μmのシートが得られた。
得られた樹脂含有微細繊維状セルロース分散液の粘度、および得られたシートの比引張エネルギー吸収量を後述の方法で評価した。また、使用したポリビニルアルコールの水酸基価を後述の方法で測定した。
評価および測定結果を表1に示す。
<実施例2>
カルボマー(カルボキシビニル樹脂、ハイビスワコー103、富士フィルム和光純薬(株))の濃度が0.6質量%となるように、ジメチルスルホキシドを加えて1時間撹拌し、カルボマー溶液を得た。
得られたカルボマー溶液を、ポリビニルアルコール溶液の代わりに用いて、樹脂含有微細繊維状セルロース分散液の固形分濃度を0.5質量%となるよう希釈した以外は実施例1と同様にして、樹脂含有微細繊維状セルロース分散液を得た。
得られた分散液中の微細繊維状セルロースの含有量は0.046質量%、カルボマーの含有量は0.423質量%、アルミニウムの含有量は0.001質量%、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドの含有量は0.03質量%であった。
得られた分散液の水含有量は、供試した微細繊維状セルロース濃縮物と55%テトラブチルアンモニウム水溶液の添加量から計算したところ、100gあたり0.29gであった。
さらに、得られた分散液の粘度を後述の方法で評価した。また、使用したポリアクリル酸の酸価を後述の方法で測定した。
評価および測定結果を表1に示す。なお、シートの比引張エネルギー吸収量の測定は行わなかった。
<比較例1>
微細繊維状セルロース濃縮物Aの代わりに、微細繊維状セルロース濃縮物Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂含有微細繊維状セルロース分散液とシートを得た。
得られた分散液中の微細繊維状セルロースの含有量は0.1質量%、ポリビニルアルコールの含有量は0.86質量%、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドの含有量は0.04質量%、カルシウムの含有量は0.001質量%未満であり、微細繊維状セルロースの亜リン酸基の対イオンはH(水素イオン)であった。
また、得られた分散液の水含有量は、供試した微細繊維状セルロース濃縮物と55%テトラブチルアンモニウム水溶液の添加量から計算したところ、100gあたり0.42gであった。
さらに、得られた分散液の粘度と得られたシートの比引張エネルギー吸収量を後述の方法で評価した。
評価および測定結果を表1に示す。
<比較例2>
微細繊維状セルロース濃縮物A20.0gに、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液3.53gを添加し、微細繊維状セルロースの含有量が0.5質量%となるようメチルエチルケトンを添加した。次いで、超音波ホモジナイザー(hielscher製、UP400S)で10分間処理し、微細繊維状セルロース再分散液を得た。
ポリメタクリル酸メチル(PMMA、DSM製、NeoCryl B−811、分子量40000)の濃度が20質量%となるように、メチルエチルケトンを加えて1時間撹拌し、ポリメタクリル酸メチル溶液を得た。
微細繊維状セルロース10質量部に対しポリメタクリル酸メチルが90質量部となるよう、得られた微細繊維状セルロース再分散液にポリメタクリル酸メチル溶液を添加し、固形分濃度が4.0質量%となるようさらにメチルエチルケトンを加えることで、樹脂含有微細繊維状セルロース分散液を得た。
樹脂含有微細繊維状セルロース分散液を、シートの仕上がり坪量が100g/mとなるように計量して、ステンレス板(SUS304)上に展開し、50℃の熱風乾燥機で24時間乾燥させた。なお、所定の坪量となるようステンレス板上には堰き止め用の板を配置した。以上の手順により、厚み164μmのシートが得られた。
得られた分散液中の微細繊維状セルロースの含有量は0.371質量%、ポリメタクリル酸メチルの含有量は3.381質量%、アルミニウムの含有量は0.005質量%、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドの含有量は0.243質量%であった。
また、得られた分散液の水含有量は、供試した微細繊維状セルロース濃縮物と55%テトラブチルアンモニウム水溶液の添加量から計算したところ、100gあたり2.33gであった。
得られた樹脂含有微細繊維状セルロース分散液の粘度を後述の方法で評価した。また、得られたシートの比引張エネルギー吸収量を後述の方法で評価した。さらに、使用したポリメタクリル酸メチルの酸価と水酸基価を後述の方法で測定した。
評価および測定結果を表1に示す。なお、表1には上記酸価と水酸基価の合計を示す(参考例1も同様)。
<参考例1>
上記分散液の調製工程で、分散液の水含有量が10質量%となるようにイオン交換水を加えた以外は、実施例1と同様にして樹脂含有微細繊維状セルロース分散液とシートを得た。
得られた分散液中の微細繊維状セルロースの含有量は0.094質量%、ポリビニルアルコールの含有量は0.845質量%、アルミニウムの含有量は0.001質量%、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドの含有量は0.061質量%であった。
さらに、得られた分散液の粘度と得られたシートの比引張エネルギー吸収量を後述の方法で評価した。
評価および測定結果を表1に示す。
[測定方法]
上記実施例および比較例の各測定方法は次のとおりである。
〔リンオキソ酸基量の測定〕
微細繊維状セルロースの亜リン酸基量は、対象となる微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液をイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈して作製した微細繊維状セルロース含有スラリーに対し、イオン交換樹脂による処理を行った後、アルカリを用いた滴定を行うことにより測定した。
イオン交換樹脂による処理は、上記微細繊維状セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ(株)、コンディショング済)を加え、1時間振とう処理を行った後、目開き90μmのメッシュ上に注いで樹脂とスラリーを分離することにより行い、リンオキソ酸基を酸型へ変換した。
また、アルカリを用いた滴定は、イオン交換樹脂による処理後の微細繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を5秒に10μLずつ加えながら、スラリーが示すpHの値の変化を計測することにより行った。なお、滴定開始の15分前から窒素ガスをスラリーに吹き込みながら滴定を行った。
この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点を二つ与えた。これらのうち、アルカリを加えはじめて先に得られる増分の極大点を第1終点と呼び、次に得られる増分の極大点を第2終点と呼ぶ。滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の第1解離酸量と等しくなる。また、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の総解離酸量と等しくなる。なお、滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除した値の第1解離酸量(mmol/g)を亜リン酸基量(mmol/g)とした。また、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除した値を総解離酸量(mmol/g)とした。
〔アルミニウム含有量の測定〕
微細繊維状セルロース濃縮物中のアルミニウム量をJIS G 1257−10−1:2013に準拠して測定した。
〔水酸基価あるいは酸価の測定〕
使用した樹脂の水酸基価あるいは酸価を、JIS K 0070:1992に準拠して測定した。
[評価方法]
上記実施例、比較例及び参考例の各評価方法は次のとおりである。
〔分散液の粘度の測定〕
微細繊維状セルロース分散液の粘度は、B型粘度計(BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T−LVT)を用いて測定した。測定条件は、回転速度12rpmとし、測定開始から3分後の粘度値を当該分散液の粘度とした。また、測定対象の分散液は測定前に23℃、相対湿度50%の環境下に24時間静置した。測定時の分散液の液温は23℃であった。
評価結果を表1に示す。
〔シートの比引張エネルギー吸収量の測定〕
シートの比引張エネルギー吸収量は、JIS P 8113:2006に準拠し、引張試験機テンシロン((株)エー・アンド・デイ製)を用いて測定した。なお、比引張エネルギー吸収量を測定する際には、23℃、相対湿度50%で24時間調湿したものを試験片として用いた。
評価結果を表1に示す。
本発明の樹脂組成物は、微細繊維状セルロースの含有量が少ない場合であっても増粘性に優れた分散液とすることができ、さらに該樹脂組成物を用いることにより引張特性に優れた成形体とすることも可能であることから、食品、化粧品、セメント、塗料およびインク等への増粘剤、各種のディスプレイ装置および各種の太陽電池等に用いられるシート、糸、フィルター、織物、緩衝材、スポンジ、研磨材等に好適である。
1:微細繊維状セルロース
2:樹脂
a:水酸基
b:官能基
c:水酸化物イオン
M:両性金属

Claims (13)

  1. 繊維幅が1000nm以下の亜リン酸基を有する微細繊維状セルロース、水酸基およびオキソ酸基から選ばれる1種以上の官能基を有する樹脂、両性金属、並びに有機溶媒を含有し、水の含有量が10質量%未満である樹脂組成物。
  2. さらに有機オニウム塩を含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記有機オニウム塩が第4級アンモニウム塩である、請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記樹脂のJIS K 0070:1992に準拠して測定した水酸基価または酸価が1〜10000mgKOH/gである、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
  5. 前記両性金属がアルミニウムである、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
  6. 前記両性金属が陰イオンである、請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
  7. 前記樹脂組成物が分散液である、請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
  8. 繊維幅が1000nm以下の亜リン酸基を有する微細繊維状セルロース、水酸基およびオキソ酸基から選ばれる1種以上の官能基を有する樹脂、並びに両性金属を含有する成形体。
  9. さらに有機オニウム塩を含有する、請求項8に記載の成形体。
  10. 前記有機オニウム塩が第4級アンモニウム塩である、請求項9に記載の成形体。
  11. 前記樹脂のJIS K 0070:1992に準拠して測定した水酸基価または酸価が1〜10000mgKOH/gである、請求項8〜10のいずれかに記載の成形体。
  12. 前記両性金属がアルミニウムである、請求項8〜11のいずれかに記載の成形体。
  13. 前記両性金属が陰イオンである、請求項8〜12のいずれかに記載の成形体。
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