以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る造形装置10の一例を示す。図1(a)は、造形装置10の要部の構成の一例を示す。図1(b)は、造形装置10のおけるヘッド部12の構成の一例を示す。図1(c)は、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドの構成の一例を示す。
尚、以下の説明をする点を除き、造形装置10は、公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。より具体的に、以下の説明をする点を除き、造形装置10は、例えば、造形物50の材料となる液滴(インク滴)をインクジェットヘッドを用いて吐出することで造形を行う公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。また、造形装置10は、図示した構成以外にも、例えば、造形物50の造形や着色等に必要な各種構成を更に備えてよい。
本例において、造形装置10は、積層造形法により造形物50を造形する造形装置(3D造形装置)である。この場合、積層造形法とは、例えば、複数の層を重ねて造形物50を造形する方法である。造形物50とは、例えば、立体的な三次元構造物のことである。また、本例において、造形装置10は、ヘッド部12、造形台14、走査駆動部16、及び制御部20を備える。
ヘッド部12は、造形物50の材料を吐出する部分である。この場合、造形物50の材料を吐出するとは、例えば、造形物50の材料となるインクの液滴(インク滴)を吐出することである。この場合、インクとは、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体のことである。また、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッドと、紫外線光源とを有する。この場合、インクジェットヘッドとは、例えば、インクジェット方式で液滴を吐出する吐出ヘッドのことである。
また、より具体的に、ヘッド部12は、造形物50の材料となる液滴として、複数のインクジェットヘッドから、所定の条件に応じて硬化するインクの液滴を吐出する。そして、着弾後のインクを硬化させることにより、造形物50を構成する各層を重ねて形成する。また、本例では、インクとして、紫外線の照射により液体状態から硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)を用いる。
また、本例において、ヘッド部12は、造形物50の材料に加え、サポート層52の材料を更に吐出する。また、これにより、造形装置10は、造形物50の周囲に、必要に応じて、サポート層52を形成する。この場合、サポート層52とは、例えば、造形中の造形物50の外周を囲むことで造形物50を支持する積層構造物のことである。サポート層52は、造形物50の造形時において、必要に応じて形成され、造形の完了後に除去される。また、ヘッド部12のより具体的な構成については、後に詳しく説明をする。
造形台14は、造形中の造形物50を支持する台状部材であり、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドと対向する位置に配設され、造形中の造形物50を上面に載置する。また、本例において、造形台14は、少なくとも上面が積層方向(図中のZ方向)へ移動可能な構成を有しており、走査駆動部16に駆動されることにより、造形物50の造形の進行に合わせて、少なくとも上面が移動する。この場合、積層方向とは、例えば、積層造形法において造形の材料が積層される方向のことである。また、より具体的に、本例において、積層方向は、主走査方向(図中のY方向)及び副走査方向(図中のX方向)と直交する方向(図中のZ方向)である。
走査駆動部16は、造形中の造形物50に対して相対的に移動する走査動作をヘッド部12に行わせる駆動部である。この場合、造形中の造形物50に対して相対的に移動するとは、例えば、造形台14に対して相対的に移動することである。また、本例において、走査駆動部16は、予め設定された主走査動作(Y走査)、副走査動作(X走査)、及び積層方向走査(Z走査)をヘッド部12に行わせる。
ここで、ヘッド部12に主走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部12が有するインクジェットヘッドに主走査動作を行わせることである。また、主走査動作とは、例えば、主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作である。また、主走査動作は、造形中の造形物50に対して相対的に移動しつつ造形物50の材料を吐出する走査動作の一例である。本例において、走査駆動部16は、主走査方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12の側を移動させることにより、ヘッド部12に主走査動作を行わせる。造形装置10の構成の変形例においては、例えば、主走査方向におけるヘッド部12の位置を固定して、例えば造形台14を移動させることにより、造形物50の側を移動させてもよい。
また、本例の主走査動作時において、走査駆動部16は、ヘッド部12における紫外線光源の駆動を更に行う。より具体的に、走査駆動部16は、例えば、主走査動作時に紫外線光源を点灯させることにより、造形物50の被造形面に着弾したインクを硬化させる。造形物50の被造形面とは、例えば、ヘッド部12により次のインクの層が形成される面のことである。
また、ヘッド部12に副走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部12が有するインクジェットヘッドに副走査動作を行わせることである。副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ造形台14に対して相対的に移動する動作である。副走査動作は、予め設定された送り量だけ副走査方向へ造形台14に対して相対的に移動する動作であってよい。
また、本例において、走査駆動部16は、主走査動作の合間に、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。この場合、走査駆動部16は、例えば、副走査方向におけるヘッド部12の位置を固定して、造形台14を移動させることにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。また、走査駆動部16は、副走査方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12を移動させることにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせてもよい。また、走査駆動部16は、造形しようとする造形物50の大きさに応じて、必要な場合にのみヘッド部12に副走査動作を行わせる。そのため、例えばサイズの小さな造形物50を造形する場合等には、副走査動作を行わずに造形物50を造形してもよい。
また、ヘッド部12に積層方向走査を行わせるとは、例えば、ヘッド部12が有するインクジェットヘッドに積層方向走査を行わせることである。また、積層方向走査とは、例えば、積層方向へヘッド部12又は造形台14の少なくとも一方を移動させることで造形物50に対して相対的に積層方向へヘッド部12を移動させる動作である。この場合、積層方向へヘッド部12を移動させるとは、例えば、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドを積層方向へ移動させることである。また、積層方向へ造形台14を移動させるとは、例えば、造形台14における少なくとも上面の位置を移動させることである。
また、走査駆動部16は、造形の動作の進行に合わせてヘッド部12に積層方向走査を行わせることにより、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドと造形台14との間の距離であるヘッド台間距離を変化させる。ヘッド台間距離とは、例えば、インクジェットヘッドにおいてノズル(ノズル孔)が形成されているノズル面と、造形台14の上面との間の距離であってよい。また、より具体的に、本例において、走査駆動部16は、積層方向におけるヘッド部12の位置を固定して、造形台14を移動させる。走査駆動部16は、積層方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12を移動させてもよい。
制御部20は、例えば造形装置10のCPUであり、造形装置10の各部を制御することにより、造形物50の造形の動作を制御する。制御部20は、例えば造形すべき造形物50の形状情報や、カラー画像情報等に基づき、造形装置10の各部を制御することが好ましい。本例によれば、造形物50を適切に造形できる。
続いて、ヘッド部12のより具体的な構成について、説明をする。本例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッドを有する。また、それぞれのインクジェットヘッドは、造形台14と対向する面に、所定のノズル列方向へ複数のノズルが並ぶノズル列を有する。また、造形装置10は、ヘッド部12における複数のノズル列から材料を吐出することにより、造形物50を造形する。
また、より具体的に、本例において、ヘッド部12は、キャリッジ100と、複数のインクジェットヘッドと、紫外線光源104と、平坦化ローラ106とを有する。キャリッジ100は、複数のインクジェットヘッド、紫外線光源104、及び平坦化ローラ106を保持する保持部材である。また、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッドとして、図1(b)に示すように、複数のインクジェットヘッド102S、インクジェットヘッド102W、インクジェットヘッド102T、インクジェットヘッド102C、インクジェットヘッド102M、インクジェットヘッド102Y、インクジェットヘッド102Kを有する。これらの複数のインクジェットヘッドは、例えば、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。
複数のインクジェットヘッド102Sは、サポート層52の材料を吐出するインクジェットヘッド(サポート層用ヘッド)である。本例において、サポート層52の材料としては、造形物50の材料よりも紫外線による硬化度が弱い紫外線硬化型インクを用いる。この場合、複数のインクジェットヘッド102Sのそれぞれは、サポート層52の材料となる紫外線硬化型インクを、ノズル列における各ノズルから吐出する。
尚、サポート層52とは、例えば、造形物50のオーバーハング形状を下から支えて造形を可能にするための層である。また、造形動作の開始前に、造形台14における造形エリアにサポート層52の材料を吐出し、サポート層52を板状に形成すること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、造形台14の表面の凹凸を補正して、平面性をより適切に確保できる。サポート層52の材料としては、造形物50の造形後に水で溶解可能な水溶性の材料を用いることが好ましい。また、この場合、造形物50を構成する材料よりも硬化度が弱く、分解しやすい材料を用いることが好ましい。また、サポート層52の材料としては、例えば、サポート層用の公知の材料を好適に用いることができる。このように構成すれば、例えば、造形の完了後に溶解除去等によりサポート層52を適切に除去できる。
また、ヘッド部12において、複数のインクジェットヘッド102S以外のインクジェットヘッドは、造形物50の造形に用いる造形物用ヘッド(造形材吐出ヘッド)である。また、造形物用ヘッドのうち、インクジェットヘッド102Wは、白色(W)のインクを吐出するインクジェットヘッドであり、白色のインクを、ノズル列における各ノズルから吐出する。また、本例において、白色のインクは、光反射性のインクの一例であり、例えば造形物50において光を反射する性質の領域(光反射領域)を形成する場合に用いられる。この光反射領域は、例えば、造形物50表面に対して減法混色によるフルカラー表現を行うための領域である。白色のインクとしては、例えば、成分に無機顔料を含む紫外線硬化型インクを好適に用いることができる。また、白色のインクは、光反射領域の材料以外に、例えば、造形物50の形状を構成する内部材料の一つとしても使用可能である。この場合、白色のインクは、造形用のインクとして使用される。造形用のインクとは、例えば、造形物50の内部等の形成に用いるインクのことである。また、白色のインクは、白色の造形物50の造形時に唯一使用する材料でもある。更には、他の色のインクとの混合での淡色を表現するためのカラー材料にもなる。
インクジェットヘッド102Tは、クリアインクを吐出するインクジェットヘッドであり、クリアインクを、ノズル列における各ノズルから吐出する。クリアインクとは、例えば、無色の透明色(T)であるクリア色のインクのことである。また、クリアインクは、透明色のインクの一例である。クリアインクは、例えば、造形物50の形状を構成する内部材料の一つとして使用可能である。また、クリアインクは、透明な造形物50の造形時に唯一使用する材料でもある。また、他の色のインクとの混合での淡色を表現するためのカラー材料にもなる。
また、本例においては、クリアインクについて、例えば、造形物50の表面をフルカラーで着色する表面加飾を行う場合に、着色用のインクの密度の変化を補填してインク密度を一定にする用途でも使用する。また、表面加飾で着色を行う場合、クリアインクは、光反射領域と着色領域(カラー層)とを分離する材料としても使用できる。また、造形物50の最外層に配置する保護(カラー退色、傷、汚れ)領域(保護膜)の形成用にも使用できる。
インクジェットヘッド102C、インクジェットヘッド102M、インクジェットヘッド102Y、インクジェットヘッド102K(以下、インクジェットヘッド102C〜Kという)は、着色された造形物50の造形時に用いる着色用のインクジェットヘッド(加飾用ヘッド)であり、着色に用いる複数色の着色用のインク(加飾インク)のそれぞれのインクを、ノズル列における各ノズルからそれぞれ吐出する。より具体的に、インクジェットヘッド102Cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102Mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102Yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102Kは、ブラック色(K色)のインクを吐出する。また、この場合、CMYKの各色は、フルカラーの表現に用いるプロセスカラーの一例である。また、フルカラーの表現とは、例えば、プロセスカラーのインクによる減法混色の可能な組合せで行う色の表現のことである。
紫外線光源104は、インクを硬化させるための光源(UV光源)であり、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発生する。紫外線光源104としては、例えば、UVLED(紫外LED)等を好適に用いることができる。また、紫外線光源104として、メタルハライドランプや水銀ランプ等を用いることも考えられる。平坦化ローラ106は、造形物50の造形中に形成されるインクの層を平坦化するための構成である。平坦化ローラ106は、例えば主走査動作時において、インクの層の表面と接触して、硬化前のインクの一部を除去することにより、インクの層を平坦化する。
以上のような構成のヘッド部12を用いることにより、造形物50を構成するインクの層を適切に形成できる。また、複数のインクの層を重ねて形成することにより、造形物50を適切に造形できる。
尚、ヘッド部12の具体的な構成については、上記において説明をした構成に限らず、様々に変形することもできる。例えば、ヘッド部12は、着色用のインクジェットヘッドとして、インクジェットヘッド102C〜Kに加え、各色の淡色や、R(赤)G(緑)B(青)やオレンジ等の色用のインクジェットヘッド等を更に有してもよい。また、造形物50の内部領域の造形用のインクとして、白色のインクを用いるのではなく、造形専用のインクを用いてもよい。この場合、ヘッド部12は、例えば、所定の色の造形用インク(モデル材MO)を吐出するインクジェットヘッドを更に有する。また、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッドの並べ方についても、様々に変形可能である。例えば、一部のインクジェットヘッドについて、他のインクジェットヘッドと副走査方向における位置をずらしてもよい。
また、ヘッド部12は、複数の紫外線光源104を有してもよい。この場合、複数のインクジェットヘッドの並びを主走査方向において挟むように複数の紫外線光源104を配設することが好ましい。また、ヘッド部12は、複数の平坦化ローラ106を有してもよい。
続いて、ヘッド部12のおける各インクジェットヘッドの構成について、更に詳しく説明をする。本例において、ヘッド部12は、上記において説明をした複数のインクジェットヘッドのそれぞれとして、同一の構成のインクジェットヘッド(以下、インクジェットヘッド102と記載する)を有する。インクジェットヘッド102としては、例えば、公知のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。
本例において、インクジェットヘッド102は、図1(c)に示すように、副走査方向と平行なノズル列方向へ複数のノズル202が並ぶノズル列200を有する。また、より具体的に、それぞれのインクジェットヘッド102は、図中に第1ノズル列及び第2ノズル列として示すように、2列のノズル列200を有する。それぞれのノズル列200においては、図中に第1ノズル、第2ノズル、及び第nノズル等として示すように、複数のノズル202が副走査方向へ並んでいる。また、それぞれのノズル列200は、副走査方向における各ノズル202の位置が半ピッチ分ずれるように並んでいる。この場合、半ピッチとは、一のノズル列200におけるノズル間隔の半分の距離のことである。
また、更に具体的に、図示した構成において、それぞれのノズル列200は、200dpiの解像度で複数のノズル202が並ぶ列である。この場合、それぞれのノズル列200において、ノズル202の間隔は、1/200インチになる。また、2列のノズル列200の間で各ノズル202の副走査方向における位置を半ピッチ分(1/400インチ)ずらした場合、一のインクジェットヘッド102での1回の主走査動作で実現可能な副走査方向の解像度(X方向の記録密度)は、400dpiになる。そのため、ヘッド部12における各インクジェットヘッド102は、1回の主走査動作において、副走査方向における解像度が400dpiになる密度でインクのドットの並びを形成する。
ここで、上記においても説明をしたように、本例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッドにより、互いに異なる複数種類の材料を吐出する。また、複数のインクジェットヘッドのそれぞれは、2列のノズル列200を有する。そして、この場合、ヘッド部12における複数のノズル列について、同じ色のインクを吐出するノズル列毎にグループ分けしたノズル列群に分けて考えることができる。この場合、ノズル列群とは、同じ色のインクを吐出する1個以上のノズル列200から構成されるグループ(群)である。
また、より具体的に、本例において、ヘッド部12は、サポート層52の材料となるインクを吐出するノズル列200として、2個のインクジェットヘッド102S分の4個のノズル列200を有する。そして、この場合、これらの4個のノズル列200について、サポート層52の材料用のノズル列群であるサポート用ノズル列群と考えることができる。
また、ヘッド部12は、サポート層52の材料以外の各色のインクを吐出するノズル列200として、1個のインクジェットヘッド分の2個のノズル列200を有する。そして、この場合、各色用の2個のノズル列200について、各色のインク用のノズル列群と考えることができる。この場合、各色のインク用のノズル列群とは、例えば、白色のインク用のノズル列群である白インク用ノズル列群、クリアインク用のノズル列群であるクリアインク用ノズル列群、C色のインク用のノズル列群であるC色用ノズル列群、M色のインク用のノズル列群であるM色用ノズル列群、Y色のインク用のノズル列群であるY色用ノズル列群、及びK色のインク用のノズル列群であるK色用ノズル列群である。
尚、上記においても説明をしたように、本例において、一のインクジェットヘッド102が有する2個のノズル列200は、副走査方向の位置がずれている。そのため、2個のノズル列200をまとめて、実質的に1個のノズル列であると考えることもできる。この場合、それぞれのノズル列群を構成するノズル列の数は、この実質的なノズル列の数であってよい。
また、上記のように複数のノズル列をノズル列群に分けた場合、それぞれのノズル列群に対し、材料吐出能力を考えることができる。この場合、材料吐出能力とは、例えば、1回の主走査動作において単位時間に吐出可能な材料の最大値のことである。1回の主走査動作において単位時間に吐出可能な材料とは、例えば、主走査動作中の単位時間の間に、その間にノズル列群が通過する領域に対して吐出可能な材料のことである。そのため、材料吐出能力について、例えば、この領域の面積に対して吐出可能な材料の最大値と考えてもよい。そして、この材料吐出能力については、造形しようとする造形物50の特徴に合わせて設定することが好ましい。
より具体的に、本例のように様々な材料を用いて造形物50を造形する場合、1回の主走査動作において吐出すべき量が材料によって異なることも考えられる。そして、このような場合、いずれかの材料について対応するノズル列群の材料吐出能力が不十分であると、そのままでは適切に造形物50を造形できなくなる。そのため、このような場合には、そのノズル列群でも各回の主走査動作で十分な量の吐出が可能になるように、例えば、マルチパス動作でのパス数を増やすことや、主走査動作時のヘッド部12の移動速度を低下させること等が必要になる。しかし、このような変更を行うと、造形速度が低下し、造形に要する時間が大きく増大するおそれがある。
これに対し、材料吐出能力の不足が生じないようにして、高速に造形を行うためには、例えばそれぞれの材料用のインクジェットヘッドの個数を増やし、それぞれのノズル列群の材料吐出能力を大きくすることも考えられる。しかし、この場合、ヘッド部12が大型化し、造形装置10の大型化や高価格化が避けられなくなる。そのため、それぞれのノズル列群の材料吐出能力について、安易に大きくすることは好ましくない。
そこで、本願の発明者は、必要以上にヘッド部12が大型化することを避けつつ造形速度を高速化する方法について、鋭意研究を行った。そして、ヘッド部12の小型軽量化と造形速度の向上とを両立するという点において、ヘッド部12におけるノズル列群のうち、サポート用ノズル列群の材料吐出能力を大きくすることが好ましいことを見出した。
より具体的に、造形装置10においては、例えば、造形の目的に応じて複数の造形モードからいずれかをユーザが選択して造形を行う場合がある。そして、この場合、例えば、より高速に造形を行うことを優先する造形モードと、造形の精度を優先してあえて低速で造形を行う造形モードとを選択可能にすること等が考えられる。また、より高速に造形を行うことを優先する造形モードでは、例えば、造形物50の各領域の形成に複数のノズル列群を用いること等が考えられる。また、より具体的に、この場合、例えば、着色用のCMYKの各色のインクについて、本来の用途である着色用ではなく、造形用のインクとして用いること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、より多くのノズル列群を利用して造形を行うことで、より高速に造形を行うことができる。また、造形の精度を優先してあえて低速で造形を行う造形モードとしては、例えば、着色用のCMYKの各色のインクで着色を行いつつ造形を行う造形モードが考えられる。この場合、例えば、造形物50において外部から視認できる表面の領域について、CMYKの各色のインクで着色を行うこと等が考えられる。
そして、このような様々な造形モードで造形を行う場合、それぞれの造形モードでの造形の速度の上限は、例えば、その造形モードで使用するノズル列群の材料吐出能力に応じて決まる。そのため、この場合、それぞれの造形モードにおいて、使用するノズル列群の材料吐出能力を適切に設定することが好ましい。また、この場合、特に、より高速に造形を行う造形モードについて、いずれかのノズル列群の材料吐出能力の影響で造形の速度が低下することを適切に防ぐことが望ましい。
また、この点について、本願の発明者は、サポート用ノズル列群とその他のノズル列群との違いに着目した。より具体的に、本例において、サポート用ノズル列群以外のノズル列群は、造形の成果物となる造形物50の材料を吐出する。これに対し、サポート用ノズル列群は、造形物50を構成する材料ではなく、造形後に除去されるサポート層52の材料を吐出する。そのため、サポート用ノズル列群は、他のノズル列群とは性質の異なる材料を吐出することになる。また、その結果、いずれの造形モードにおいても、サポート層52の形成は、実質的にサポート用ノズル列群のみで行うことが必要になる。より具体的に、図1に示した造形装置10で造形を行う場合、例えば、インクジェットヘッド102Sのみを用いてサポート層52を形成することが必要になる。
尚、サポート層52の形成を実質的にサポート用ノズル列群のみで行うとは、例えば、少なくともサポート層52の主要部について、サポート用ノズル列群のみで行うことである。そのため、例えばサポート層52の一部について、サポート用ノズル列群以外のノズル列群を用いること等も考えられる。より具体的に、サポート層52の形成を実質的にサポート用ノズル列群のみで行うとは、例えば、サポート層52のうちの60%以上、好ましくは80%以上をサポート用ノズル列群のみで行うことであってよい。
一方、造形物50を造形する動作に着目した場合、例えばより高速に造形を行う造形モードにおいては、サポート用ノズル列群の全てを用いて造形物50の造形を行うことも考えられる。より具体的に、図1に示した造形装置10の構成の場合、造形物用ヘッドとして示したインクジェットヘッド102W、インクジェットヘッド102T、インクジェットヘッド102C、インクジェットヘッド102M、インクジェットヘッド102Y、インクジェットヘッド102Kを用いて造形物50を造形することが可能になる。
そして、この場合、より高速に造形を行う造形モードでの造形速度は、例えば、サポート用ノズル列群の材料吐出能力が律速の条件になって決まると考えられる。そのため、より高速に造形を行う造形モードにおいて、十分に高速に造形を行うためには、サポート用ノズル列群の材料吐出能力を適切に大きくすることが好ましいといえる。
これに対し、本例においては、ヘッド部12における様々な用途のインクジェットヘッドのうち、インクジェットヘッド102Sのみを複数個用い、サポート用ノズル列群の材料吐出能力を大きくしている。また、その結果、本例において、サポート用ノズル列群の材料吐出能力は、他のいずれの色のインクを吐出するノズル列群の材料吐出能力よりも大きくなっている。そのため、本例によれば、例えば、高速な造形をより適切に行うことができる。
尚、図1に示した構成において、サポート層用ヘッドであるインクジェットヘッド102Sの個数は、2個である。これに対し、インクジェットヘッド102S以外の全てのインクジェットヘッドからなる造形物用ヘッドの個数は、6個である。そのため、造形の速度をより高速化するためには、例えば、インクジェットヘッド102Sの個数を更に増やし、サポート用ノズル列群の材料吐出能力を更に大きくすることも考えられる。しかし、インクジェットヘッド102Sの個数を多くし過ぎると、ヘッド部12の大型化等の問題が生じる場合もある。また、例えば他の造形モードにおいて、サポート用ノズル列群の材料吐出能力が必要以上に大きくなるおそれもある。そのため、インクジェットヘッド102Sの個数については、ヘッド部12のサイズとのバランス等を考慮して、適宜決定することが好ましい。この場合も、サポート用ノズル列群の材料吐出能力を他のノズル列群の材料吐出能力よりも大きくすることにより、造形速度を適切に高速化できる。
また、この場合、サポート用ノズル列群以外のノズル列の数を変化させることなく造形速度を高速化できるため、ノズル列の数の大幅な増加等を防ぐことができる。また、これにより、例えば、ヘッド部12の小型軽量化と造形速度の向上とを適切に両立させることができる。
ここで、本例の特徴についてより一般化して考えた場合、サポート用ノズル列群以外のノズル列群のうちのいずれかについて、第1ノズル列群と考えることができる。この場合、第1ノズル列群とは、例えば、造形物50の材料として第1の色の材料を吐出する一個以上のノズル列からなるノズル列群である。また、他のいずれかのノズル群について、第2ノズル列群と考えることができる。この場合、第2ノズル列群とは、例えば、造形物50の材料として第1の色と異なる第2の色の材料を吐出する一個以上のノズル列からなるノズル列群である。また、この場合、造形装置10は、例えば、予め設定された造形モードに基づいて造形の動作を行い、少なくともいずれかの造形モードの動作において、第1ノズル列群及び第2ノズル列群を用いて造形物50の少なくとも一部を形成する。また、造形物50の周囲の少なくとも一部にサポート層52を形成する。そして、この場合において、サポート用ノズル列群の材料吐出能力について、少なくとも第1ノズル列群の材料吐出能力よりも大きくすることが好ましいといえる。
このように構成すれば、例えば、第1ノズル列群及び第2ノズル列群により複数種類の材料を用いて造形物の少なくとも一部を形成することにより、造形速度を適切に高速化できる。また、サポート用ノズル列群の材料吐出能力を大きくすることにより、サポート用ノズル列群の材料吐出能力によって造形速度が低下することを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、より適切な方法で造形速度を高速化できる。
また、本例において、白インク用ノズル列群は、第1ノズル列群の一例である。また、より一般化して考えた場合、白色以外のいずれか1色のインクに着目して、その1色のインクを吐出するノズル列群を第1ノズル列群と考えてもよい。すなわち、白インク用ノズル列群以外のいずれかのノズル列群について、第1ノズル列群と考えてもよい。この場合、第1ノズル列群は、例えば、高速に造形を行ういずれかの造形モードにおいて単独では領域形成を行わないインクを吐出するノズル列群であってよい。また、単独では領域形成を行わないインクとは、例えば、このインクを用いて形成する領域について、このインク以外の他の色のインクを更に用いて形成するインクのことである。また、造形装置10の構成の変形例において、例えば白色以外の所定の色の造形用インク(例えば、造形専用のインク)を用いる場合、このインクを吐出するノズル列群について、第1ノズル列群と考えることもできる。
また、着色用のノズル列群であるC色用ノズル列群、M色用ノズル列群、Y色用ノズル列群、及びK色用ノズル列群のそれぞれは、第2ノズル列群の一例である。この場合、第2ノズル列群に含まれるノズル列は、複数色の着色用のインクのうちのいずれかのインクを吐出する。また、サポート用ノズル列群の材料吐出能力は、第2ノズル列群の材料吐出能力よりも大きくすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、造形速度をより適切に高速化できる。
また、本例においては、クリアインク用ノズル列群について、第2ノズル列群の一例と考えてもよい。C色用ノズル列群、M色用ノズル列群、Y色用ノズル列群、及びK色用ノズル列群のそれぞれについて、第1ノズル列群の一例と考えることもできる。この場合、例えば、C色用ノズル列群、M色用ノズル列群、Y色用ノズル列群、及びK色用ノズル列群のいずれかを第1ノズル列群の一例と考え、他のいずれかを第2ノズル列群の一例と考えてもよい。
続いて、本例の造形装置10により行う造形の動作について、更に詳しく説明をする。図2は、造形装置10により行う造形の動作の一例を示す。本例において、造形装置10は、予め設定された複数の造形モードでの造形が可能な装置である。また、これらの造形モードとして、造形装置10は、少なくとも、着色用のノズル列群を用いて着色された造形物50を造形する造形モードである着色モードでの造形が可能である。
図2(a)は、造形装置10により実行可能な着色モードの一例を示す。本例において、造形装置10は、少なくとも、フルカラーで造形物50の表面を着色する造形モードである表面加飾モードと、単色で造形物50の内部及び表面を着色する造形モードである単色・色付けモードとを実行可能である。
表面加飾モードでの造形時において、造形装置10は、例えば、造形物50の造形データとして入力されるデータに基づき、フルカラーでの自動着色を行いつつ、造形物50を造形する。この場合のデータとしては、造形物表面のカラーデータを用いることが考えられる。また、カラーデータとして、例えば、造形物が人物である場合は、肌色や着衣等の色や模様を示すデータを用いることが考えられる。また、造形物が構造物である場合は、素材の模様や文字の色等を示すデータを用いることが考えられる。また、表面加飾モードでの造形時において、造形装置10は、ユーザにより選択された色(選択色)によって造形物表面を単色で着色してもよい。また、単色・色付けモードでの造形時において、造形装置10は、例えば、インク残量に応じて自動的に設定された色で造形装置10の内部及び表面を着色しつつ、造形を行う。この場合、例えば、使用するインクの種類及びインクの使用比率のうちの少なくとも一方を自動設定することが好ましい。また、単色・色付けモードでの造形時において、造形装置10は、ユーザにより選択された色(選択色)による単色での着色を行ってもよい。
尚、本例において、表面加飾モードは、複数色の着色用のインクを用いて少なくとも造形物50の表面を着色する造形モードの一例である。この場合、造形物50の表面とは、例えば、造形物50において外部から視認できる領域のことである。また、表面加飾モードは、造形物50の表面をフルカラーで加飾するフルカラー着色モードの一例でもある。また、単色・色付けモードは、造形物50の内部の造形に着色用インクを用いる内部着色モードの一例である。また、この場合、内部着色モードは、例えば、造形物50の内部の造形に少なくともいずれかの着色用インクを用いることで表面加飾モードよりも高速に造形を行う造形モードである。また、単色・色付けモードは、造形物50を単色で着色する単色カラー着色モードの一例でもある。
図2(b)は、表面加飾モードにより造形する楕円形状の造形物50の構成の一例を示す断面図であり、造形物50の構成の一例をサポート層52と共に示す。本例において、表面加飾モードでの造形を行う場合、造形装置10は、内部領域302、光反射領域304、分離領域306、着色領域308、及び保護領域310を有する造形物50を造形する。内部領域302、光反射領域304、分離領域306、着色領域308、及び保護領域310は、造形物50の内部から外側へ向かって、この順番で並ぶように形成される。また、造形装置10は、保護領域310の外側に、サポート層52を形成する。
尚、表面加飾機能を実現する光反射領域304、分離領域306、着色領域308の3つの層の合計の厚さは、例えば、造形物の表面の内側の法線方向に200μm〜1mm程度である。また、表面加飾の解像度の点から考えた場合、この厚さは、300μm以下の、より薄い厚さであることが好ましい。また、この中で、内部領域302と光反射領域304は、例えば、同一の白色インクで形成してもよい。更に、分離領域306、保護領域310は必須のものではなく、それぞれ、吐出位置精度や、造形物の使用目的によって層を形成してよい。
内部領域302は、造形物50の内部を構成する領域である。本例において、内部領域302は、造形物50の造形用のインクで形成されたインクの層である造形層が積層された領域であり、造形物50の形状を構成する。表面加飾モードでの造形時において、内部領域302は、1種類のインク(単一のインク)のみで形成してもよく、複数種類のインクを用いて形成してもよい。例えば、内部領域302の形成は、白色のインクで形成することが考えられる。また、白色のインクに加え、少なくともいずれかの着色用のインクを更に用いて内部領域302を形成してもよい。また、例えば、複数色の着色用のインクを用いて内部領域302を形成してもよい。この場合、例えば、白色のインクを用いずに、着色用のインクのみで内部領域302を形成してもよい。
光反射領域304は、内部領域302の外側において光反射性のインクを用いて形成される領域である。本例において、造形装置10は、白色のインクで形成されたインクの層を重ねて形成することにより、光反射領域304を形成する。この場合、着色領域308よりも内側に光反射領域304を形成することにより、減法混色方でのフルカラー表現が可能になる。また、これにより、例えば、着色された造形物50を適切に造形できる。
尚、光反射領域304の厚さは、100μm〜1mm程度で均一の厚さにすることが好ましい。この場合、領域の厚さとは、例えば、領域の表面における法線方向の厚さのことである。また、本例において、造形装置10は、白色のインクのみを用いて、光反射領域304を形成する。造形装置10の構成の変形例において、例えばより高速に造形を行う場合等には、白色のインク以外にクリアインクを更に用いて光反射領域304を形成すること等も考えられる。
分離領域306は、光反射領域304と着色領域308との間にクリアインクにより形成される領域である。本例において、造形装置10は、クリアインクのみで形成されたインクの層を重ねて形成することにより、分離領域306を形成する。分離領域306を形成することにより、光反射領域304における白色のインクと着色領域308における着色用のインクが混じることを適切に防ぐことができる。分離領域306の厚さは、例えば50〜500μm程度で均一の厚さにすることが好ましい。
着色領域308は、造形物50の表面において着色がされる領域である。本例において、造形装置10は、CMYKの各色の着色用のインクとクリアインクとを用いて形成されたインクの層である加飾層を重ねて形成することにより、着色領域308を形成する。この場合、着色用インクに加えてクリアインクを用いることにより、表現する色の違いによる着色用のインクの使用量の変化分を補填することができる。また、これにより、分離領域306を構成するそれぞれの加飾層を一定の厚さで適切に形成することができる。このように構成すれば、フルカラーの表現を適切に行うことができる。着色領域308の厚さは、例えば50〜500μm程度で均一の厚さにすることが好ましい。また、例えば着色画像の解像度の点では、150μm以下にすることがより好ましい。
保護領域310は、造形物50の表面を保護するための透明な領域である。本例において、造形装置10は、クリアインクのみで形成されたインクの層を重ねて形成することにより、保護領域310を形成する。保護領域310を形成することにより、造形物50における着色領域308の表面が擦れることや、退色に対する保護を適切に行うことができる。保護領域310の厚さは、例えば10〜500μm程度で均一の厚さにすることが好ましい。
また、サポート層52は、造形中の造形物50を支持するための層である。本例において、造形装置10は、サポート層52の材料となるインクで形成された層を重ねて形成することにより、サポート層52を形成する。造形時にサポート層52を形成するとは、例えば、造形しようとする造形物50の形状に応じて、必要な場合に造形物50の周囲の少なくとも一部にサポート層52を形成することであってよい。
図2(c)は、単色・色付けモードにより造形する造形物50の構成の一例を示す断面図であり、造形物50の構成の一例をサポート層52と共に示す。本例において、単色・色付けモードでの造形を行う場合、造形装置10は、単色着色領域312のみで構成される造形物50を造形する。また、単色着色領域312の外側に、サポート層52を形成する。
この場合、単色着色領域312は、造形物50の造形用のインクで形成されたインクの層である造形層が積層された領域であり、造形物50の形状を構成する。また、本例において、造形装置10は、サポート層52の材料以外のインクである各色(W、T、C、M、Y、K)のインクのいずれかを用いて形成されたインクの層を重ねて形成することにより、単色着色領域312を形成する。また、この場合、使用するインクの組み合わせに応じて、単色着色領域312を単色に着色する。
このように構成すれば、例えば、内部及び表面が単色に着色された造形物50を適切に造形できる。また、より具体的に、例えば、白色(W)のインクが40%、クリアインク(T)が20%、C色のインクが20%、M色のインクが20%となる比率で、内部領域302内において3次元方向に均一になるように各色のインクを吐出した場合、淡い青色の造形物50を造形することができる。また、単色・色付けモードでの造形時においても、必要に応じて、造形物50の周囲の少なくとも一部にサポート層52を形成する。
ここで、単色・色付けモードでの造形時において、造形装置10は、複数色のインクを用いて単色着色領域312を形成することにより、1色のインクのみで単色着色領域312を形成する場合と比べ、より高速に造形物50を造形することができる。また、この特徴について、より一般化して考えた場合、ヘッド部12(図1参照)における第1ノズル列群及び第2ノズル列群を用いて造形物50の少なくとも一部を形成する動作と考えることができる。また、この場合、図1に関連して説明をしたように、サポート用ノズル列群の材料吐出能力を大きくした構成を用いることで、サポート用ノズル列群の材料吐出能力が造形速度の律速条件になることを適切に防ぐことができる。そのため、本例によれば、例えば、単色・色付けモードにおいて高速な造形を適切に行うことができる。
また、上記のように、単色・色付けモードでの造形時において、本例の造形装置10は、例えば、インク残量に応じて自動的に設定された色で造形装置10の内部及び表面を着色しつつ、造形を行う。より具体的には、例えば、造形装置10のインクカートリッジやインクタンクにおいて残量が少ないインクがある場合に、そのインクを避けるように使用するインクを決定することが考えられる。このように構成すれば、例えば、インクを効率的に使用して造形物50の造形を行うことができる。また、例えば黒色の単色の造形物50を造形する場合に、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の組み合わせにより黒色を表現して造形してもよい。このように構成すれば、例えば、黒色(K色)のみで造形を行う場合と比べ、より高速に造形を行うことができる。
また、単色・色付けモードにおいては、例えば、W、T、C、M、Y、Kの各色の中から任意の比率で組み合わせた色の造形物50を造ることが可能である。例えば、透明、無彩色の白、黒、更に透明との組み合わせによる中間濃度のグレー、C、M、Y及びその2次(2つの色の組み合わせ)色であるR,G,B、C,M,Yと透明、白との組み合わせによる淡色などが表現可能である。
尚、着色用のインクを造形の目的にも使用できることは、例えば、紫外線硬化型インク等を用いて造形を行う場合に特有の特徴である。そのため、本例においては、紫外線硬化型インク等を用いて造形を行う場合に特有の特徴を利用して造形の速度を高速化していると考えることもできる。また、造形速度を高速化すること等を考えずに、より一般化して考えた場合、単色着色領域312について、1種類のインク(単一インク)のみを用いて形成すること等も考えられる。そのため、例えば高速化をせずに単色の造形物50を造形する造形モード等において、造形装置10は、ユーザの選択する色に応じて、1種類のインクのみで単色着色領域312を形成してもよい。
続いて、造形物50の内部や表面に対する着色用のインクの吐出の仕方について、更に詳しく説明をする。図3は、表面加飾モードでの造形時における各領域に対する各色のインクの吐出の仕方の一例を示す図であり、ドーナツ形状の造形物50を造形する場合について、各領域の詳細な構成の一例を示す。
ドーナツ形状の造形物50を造形する場合、造形物50を構成する一つの層における立体画素(ボクセル、voxel)の構成を模式的に表すと、図3に示すようになる。この場合、一つの層とは、例えば、積層方向に垂直な面である断面(スライス面)における一つのインクの層のことである。また、立体画素とは、例えば、造形物50を構成する最小単位のことである。また、本例において、立体画素は、例えば、一つのインク滴により形成される領域である。
ここで、図3においては、内部領域302について、複数色の着色用のインクで形成した場合の構成を図示している。また、光反射領域304については、上記においても説明をしたように、白色(W)のインクのみで形成した構成を図示している。分離領域306については、クリアインク(T)のみで形成した構成を図示している。また、着色領域308については、着色する色に応じて着色用の各色のインク(プロセスカラーのインク)とクリアインクとを用いて形成した構成を図示している。また、この構成においては、光反射領域304、分離領域306、及び着色領域308を含む部分について、表面着色部と考えることができる。また、図示の便宜上、保護領域310(図2参照)は省略している。
また、着色領域308においては、造形物50の表面に着色すべき色の情報に基づき、例えば層の面内方向(X方向及びY方向)に対して誤差拡散法を適用して、2次元の画像をインクジェット方式で印刷する場合と同一又は同様にしてインクの層を形成することが好ましい。誤差拡散法を用いる場合、演算時間が必要になるが、高い解像度で高い品質の着色(加飾)を行うことができる。また、他にフルカラーを表現する方法として、例えば、ディザ法、Bayer法等を用いてもよい。これらの場合、マスクを用いて量子化を行うことにより、例えば解像度が低くなる場合もあるが、画像処理を簡単かつ高速に行うことができる。また、いずれの方式を用いる場合においても、例えば、モアレが発生しないよう、層毎に誤差拡散法での拡散の演算位置やディザ法でのマスク位置をずらすことが好ましい。この場合、例えば、層の面内方向(X方向及びY方向)へマスクをずらすことが好ましい。
また、色が互いに異なる複数種類のインクを用いて造形物50の内部等を造形する場合、それぞれのインクの吐出の仕方の組み合わせとして、様々な組み合わせを用いることが考えられる。図4は、造形物50の内部へのインクの吐出の仕方の様々な例を示す。
図4(a)は、同じ色のインクで形成される立体画素が主走査方向(Y方向)へ連続し、副走査方向(X方向)において隣接する立体画素が異なる色のインクで形成されるようにインクを吐出する例(Y方向連続の例)を示す。図4(b)は、同じ色のインクで形成される立体画素が副走査方向へ連続し、主走査方向において隣接する立体画素が異なる色のインクで形成されるようにインクを吐出する例(X方向連続の例)を示す。
図4(c)は、4色のインクのそれぞれにより形成される立体画素が2次元平面内で分散するようにインクを吐出する例(4ヘッドで2次元分散の例)を示す。この場合、4色のインクとして、CMYKの4色のインクとクリアインクとを合わせた5種類のインクのうちの4色のインクを用いることが考えられる。また、図においては、XY平面内で各色の立体画素を分散させた場合の例を図示している。各色の立体画素の分散については、XY平面ではなく、例えばYZ平面内で行ってもよい。
図4(d)は、5色のインクのそれぞれにより形成される立体画素が2次元平面内で分散するようにインクを吐出する例(5ヘッドで2次元分散の例)を示す。この場合、5色のインクとして、CMYKの4色のインクとクリアインクとを合わせた5種類のインクを用いることが考えられる。また、この場合も、図においては、XY平面内で各色の立体画素を分散させた場合の例を図示している。各色の立体画素の分散については、XY平面ではなく、例えばYZ平面内で行ってもよい。
ここで、図4(a)〜(d)に示した例は、例えば、表面加飾モードでの造形時に内部領域302(図2参照)を形成する場合におけるインクの吐出の仕方の例である。また、例えば単色・色付けモードでの造形時においては、例えば図4(a)〜(d)に示した例と同一又は同様にして、単色着色領域312(図2参照)を形成してよい。
また、表面加飾モードでの造形時の内部領域302や、単色・色付けモードでの造形時の単色着色領域312の形成は、例えば、予め設定された所定の色を表現するように行うことも考えられる。図4(e)は、所定の色を表現するように造形物50の内部等を形成する場合のインクの吐出の仕方の例を示す。この例は、例えば、造形物50の内部を所定の色の着色する場合の吐出の仕方の例である。また、より具体的に、図示した例は、炎緑色の単色の造形物50を造形する場合の例である。
上記の各例のように構成すれば、例えば、造形物50の内部等について、複数色のインクを用いて適切に形成できる。また、これにより、造形物50を適切に造形することができる。また、各例において、隣り合う層で同一の位置に同一のインクジェットヘッドのノズルからの吐出が重ならないように走査することで、インク滴の吐出量のバラツキが平均化されて、精度のよい造形物が得られる。
続いて、複数色のインクを用いて一のインクの層を形成する動作について、更に詳しく説明をする。図5は、複数色のインクを用いて一のインクの層を形成する動作の一例を示す図であり、互いに異なる色のインクを吐出する複数のインクジェットヘッドによりインクを吐出する位置の例を示す。
図示した場合において、複数のインクジェットヘッドとしては、互いに異なる色のインクを吐出する3個のインクジェットヘッドである第1ヘッド、第2ヘッド、及び第3ヘッドを用いる。より具体的に、例えば、図3に示したようにインクを吐出する場合、第1ヘッド、第2ヘッド、及び第3ヘッドのそれぞれは、C色用、M色用、Y色用のいずれかのインクジェットヘッドに対応する。また、図5に示した動作は、ドーナツ形状の造形物50を構成する一つの層における各立体画素を形成する動作に対応する。
また、図5において、それぞれのインクジェットヘッドによる吐出位置を示す各マスは層内でのインクによる記録位置を表す。また、本例において、この記録位置は、1/400インチピッチでX方向及びY方向に並ぶ位置(X,Y座標位置)である。また、それぞれのインクジェットヘッドは、主走査方向(Y方向)へ移動しながら、着色を制御するデータに応じてインクを吐出する。また、図示した場合において、それぞれのインクジェットヘッドは、主走査方向における間隔が3ピッチ間隔になるようにインクを吐出する。
また、マス内の数字は、ノズル列番号(L)と、ノズル並び番号(n)を表す。例えば、マス内の数字Lnは、第Lノズル列の第nノズルからの吐出を表す。また、空白のマスはデータに無関係にインクを吐出しない位置を表す。図5に示すように各インクジェットヘッドでインクを吐出することにより、複数色のインクを用いて一のインクの層を形成する動作を適切に行うことができる。
また、図5においては、一つのノズル列による吐出位置がX方向へ一列に連なるように吐出を行う場合を示している。しかし、各ノズル列からの吐出の仕方については、図5に示した構成に限らず、様々に変更することもできる。
図6は、各ノズル列からの吐出の仕方の変形例を示す。このように構成した場合、一つのノズル列による吐出位置が一列に連なることがないため、インクジェットヘッド間のインクの吐出量のバラツキの影響を低減することができる。また、これにより、例えば、高い精度での造形をより適切に行うことができる。
ここで、積層造形法で造形を行う場合、異なるインクの層の間で、通常、各層の同じ位置(X,Y座標位置)のマスがZ軸方向に重なることになる。これに対し、例えば、各層において同じノズル列で形成する位置を層が変わる毎にシフトさせること等により、同じノズルで立体画素を形成する位置(同一のノズルによる吐出位置)を層毎に変化させてもよい。この場合、例えば、層が変わる毎に吐出位置をY方向にシフトさせること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、積層方向に重なる立体画素を複数のノズルで形成することができる。また、これにより、例えば、ノズル毎のインクの吐出量のバラツキの影響を適切に抑えることができる。
図7は、同じノズル列で立体画素形成する位置を層毎に異ならせる場合の動作の一例を示す図であり、積層方向(Z方向)において連続して重なる3層である第n層、第n+1層、第n+2層について、各位置に立体画素を形成するノズルの一例を示す。
この場合、少なくとも連続する2層の間で、同じノズルから同じXY座標位置に吐出しないように、吐出位置の変更を行う。より具体的に、例えば、図中の座標(Y5、X3)のマスに着目した場合、第n層の形成時には第3ノズル列の2番目のノズルで立体画素を形成し、第n+1層及び第n+2層では、それ以外のノズルで立体画素を形成している。そのため、この座標位置では、この3層について、3つの異なるノズルからインクが吐出されることになる。また、他の各座標でも同様である。
ここで、インクジェット方式でインクを吐出する場合、各ノズルからのインクの吐出量(一のインク滴あたりの容量)については、通常、ある程度のバラツキが存在する。より具体的に、吐出量のノズル間のバラツキは、例えば、10%程度である。そのため、同一のノズルにより同じ位置へ重ねてインクを吐出した場合、吐出量の多いノズルでは積層方向に厚く、逆に吐出量の少ないノズルでは積層方向に薄くなり、全体的に凹凸のある精度の悪い造形になる。これに対し、図7に示すようにしてインクを吐出する場合、複数のインクジェットヘッドを用いて連続するインクの層(造形層等)を形成する動作において、X、Y座標の同じ位置に同じインクジェットヘッドでインクを吐出しないことになる。そして、この場合、吐出量のノズル間のバラツキは、インクの層が積層されることで平均化されることになる。より具体的に、例えば図示した3層に着目した場合、同じ位置に対して3つの異なるインクジェットヘッドからインクを吐出することにより、インクの高さを平均化することができる。また、この場合、積層の高さがより均一になるため、平坦化ローラ106(図1参照)による表面均(なら)しでの削り量(インクの除去量)を低減することもできる。また、これにより、インクの使用量を節約することができる。
また、造形装置10により行う具体的な造形の仕方については、上記において説明をした方法に限らず、更なる様々な変更を行うこともできる。例えば、それぞれのノズル群を構成するノズル列の数については、様々に変更可能である。この場合、例えば、ノズル列の数を多くすることにより、造形の精度を高めることや造形の高速化が可能になる。また、一のインクジェットヘッドが有するノズル列の数についても、様々に変更可能である。
また、上記においては、造形物50の内部等について、図7を用いて、連続する2層の間で同じノズルから同じXY座標位置に吐出しない構成について説明をした。この点について、本例のように複数のインクジェットヘッド102S(図1参照)を用いる場合等には、サポート層52の形成時においても、同様に、連続する2層の間で同じノズルから同じXY座標位置に吐出しない構成にしてもよい。
また、造形物50を構成する各領域の形成の仕方についても、様々に変更することができる。例えば透明度の低いクリアインク(T色)を用いて表面加飾モードで造形を行う場合等においては、光反射領域304と分離領域306との境界を明確にしないで造形を行うこと等も考えられる。
図8は、光反射領域304と分離領域306との境界を明確にしないで造形を行う場合の例を示す。この場合、光反射領域304及び分離領域306として機能する領域について、白色(W)のインクとクリアインク(T)との濃度に勾配つけて形成することが考えられる。このように構成した場合も表面加飾モードでの造形を適切に行うことができる。
また、上記においては、主に、サポート用ノズル列群の材料吐出能力を大きくする構成について、説明を行った。しかし、造形装置10において実行する造形モードの特徴によっては、サポート用ノズル列群以外のノズル列群についても材料吐出能力を大きくすることが好ましい場合がある。より具体的に、例えば、ヘッド部12における造形物用ヘッドで用いるインクには、無色で透明なクリアインクが含まれている。また、クリアインクは、例えば造形物50における保護領域310(図2参照)のように、透明な領域を形成する場合に使用される。そして、このような透明な領域を形成するためには、他の有色のインクを用いずに、クリアインクのみを使用する必要がある。そのため、造形装置10において実行する造形モードによっては、クリアインク用ノズル列群の材料吐出能力を大きくすることが好ましい場合もある。そこで、以下、このような造形モードの例について、説明をする。
図9は、クリアインク用ノズル列群の材料吐出能力を大きくすることが好ましい造形モードについて説明をする図である。尚、以下に説明をする点を除き、図9において、図1〜8と同じ符号を伏した構成は、図1〜8における構成と同一又は同様の特徴を有する。
図9(a)は、クリアインク用ノズル列群の材料吐出能力を大きくした場合のヘッド部12の構成の一例を示す。この構成において、ヘッド部12は、図1(b)に示したヘッド部12と比べ、クリアインク用のインクジェットヘッド102Tを1個多く有する。また、これにより、クリアインク用ノズル列群の材料吐出能力について、造形物50の造形用の各インクを吐出する他のノズル列群よりも大きくしている。より具体的に、この場合、クリアインク用ノズル列群の材料吐出能力は、白インク用ノズル列群、C色用ノズル列群、M色用ノズル列群、Y色用ノズル列群、及びK色用ノズル列群のそれぞれの材料吐出能力よりも大きくなっている。
また、この場合も、ヘッド部12は、2個のインクジェットヘッド102Sを有している。そのため、クリアインク用ノズル列群の材料吐出能力は、サポート用ノズル列群以外のノズル列群の材料吐出能力と等しくなっている。材料吐出能力が等しいとは、例えば、材料吐出能力が実質的に等しいことである。また、材料吐出能力が実質的に等しいとは、例えば、設計上の材料吐出能力が等しいことであってよい。
図9(b)、(c)は、図9(a)に図示したヘッド部12を用いて造形を行う造形モードの一例を示す。この構成において、造形装置10は、造形物50を造形する造形モードとして、少なくとも、造形の速度が互いに異なる複数種類の表面加飾モードを実行可能である。また、より具体的に、造形装置10は、図2(b)等を用いて説明をした場合と同一又は同様にして造形物50の表面に対して複数色の着色用のインクを用いて着色を行う第1の表面加飾モードと、造形物50の表面に対して複数色の着色用のインクを用いて着色を行いつつ第1の表面加飾モードよりも高速に造形を行う第2の表面加飾モードとを実行可能である。
図9(b)は、第1の表面加飾モードでの造形の動作の一例を示す。上記においても説明をしたように、第1の表面加飾モードは、図2(b)等を用いて説明をした場合と同一又は同様にして造形を行う造形モードである。この場合、造形装置10は、例えば図2及び図3を用いて説明をした造形の動作と同一又は同様にして、造形物50の各領域を形成する。
また、図9(b)においては、図示の簡略化のため、分離領域306(図2参照)を省略して造形物50を造形する場合の構成を図示している。しかし、この場合も、光反射領域304と着色領域308との間に分離領域306を更に形成してもよい。また、内部領域302について、着色用のインク(CMYKの各色のインク)ではなく、白色のインクで形成する場合を図示している。そのため、図示した構成において、内部領域302は、光反射領域304と連続して白色のインクで形成されている。この場合も、内部領域302、光反射領域304、及び着色領域30について、造形物50の内側から外側へ向かってこの順番で並ぶと考えることができる。また、着色領域308の外側には、クリアインクのみを用いて、保護領域310を形成する。内部領域302については、例えば図2及び図3で説明した場合と同様に、着色用のインクを用いて形成してもよい。
ここで、第1の表面加飾モードでの造形時において、造形装置10は、図2及び図3で説明した場合と同様に、白色のインクのみを用いて、光反射領域304を形成する。また、図2及び図3で説明した場合と同様に、着色用のインクとクリアインクとを用いて、着色領域308を形成する。この場合、例えば、各色のインクとクリアインクとの組み合わせにより、色や濃度の調整を行う。
これに対し、第2の表面加飾モードでの造形時には、光反射領域304等の形成の仕方について、第1の表面加飾モードでの造形時と異ならせる。これにより、造形装置10は、第2の表面加飾モードにおいて、第1の表面加飾モードとは一部が異なる条件で造形を行い、造形物の造形物50に対して着色を行いつつ、第1の表面加飾モードよりも高速に造形を行う。
図9(c)は、第2の表面加飾モードでの造形の動作の一例を示す。第2の表面加飾モードにおいては、1回の主走査動作で吐出するインクの合計量を第1の表面加飾モードよりも多くすることにより、第1の表面加飾モードよりも高速に造形を行う。
より具体的に、第1の表面加飾モードでの造形時には、上記のように、白色のインクのみを用いて、光反射領域304等を形成する。そのため、光反射領域304を形成すべき位置へ1回の主走査動作で吐出可能なインクの最大量は、白インク用ノズル列群の材料吐出能力に応じて決まることになる。また、そのため、白インク用ノズル列群の材料吐出能力は、造形速度の上限を決定する要因になる。
これに対し、第2の表面加飾モードの造形時には、第1の表面加飾モードでは1種類のインク(白色のインク)のみで形成していた光反射領域304について、白色のインクに加えてクリアインクを更に用いて形成する。そして、この場合、光反射領域304を形成すべき位置へ1回の主走査動作で吐出可能なインクの最大量が増えるため、より高速に造形を行うことが可能になる。
また、図示した場合のように、第1の表面加飾モードにおいて白色のインクのみで内部領域302を形成する場合、第2の表面加飾モードの造形時には、内部領域302についても、白色のインクとクリアインクとを用いて形成する。また、例えば複数色の着色用のインクを用いて内部領域302を形成する場合には、クリアインクを用いずに内部領域302を形成してもよい。
また、第2の表面加飾モードの造形時には、着色領域308の形成の仕方についても、第1の表面加飾モードと異ならせることが好ましい。この場合、例えば、第2の表面加飾モードにおいて、第1の表面加飾モードでの造形時と比べてより大きな比率でクリアインクを用いて、着色領域を形成する。
より具体的に、第2の表面加飾モードの造形時には、第1の表面加飾モードの場合に吐出するインクに対し、追加のインクを吐出するようにして、各領域を形成する。この場合、第1の表面加飾モードの場合に吐出するインクとは、図9(c)において符号Aを付してした構成のように各領域へ吐出するインクである。また、追加のインクとは、図9(c)において符号Bを付してした構成のように各領域へ吐出するインクである。
ここで、図9(c)では、図示の便宜上、1回の主走査動作で吐出するインクについて、符号Aの構成と符号Bの構成とに分けて図示している。しかし、実際の造形時には、造形データに基づき、符号A、Bの両方に対応するインクを、1回の主走査動作の中で吐出する。そのため、第2の表面加飾モードでの1回の主走査動作で吐出可能なインクの最大量は、第1の表面加飾モードの場合の2倍になる。
また、第2の表面加飾モードにおいては、1回の主走査動作で吐出するインクの量の増加に合わせて、積層方向走査(Z走査)での移動量について、第1の表面加飾モードよりも大きくする。この場合、より具体的に、第2の表面加飾モードでの積層方向走査の移動量について、第1の表面加飾モードでの移動量の2倍にすることが考えられる。このように構成すれば、例えば、第2の表面加飾モードでの造形速度を適切に高速化できる。また、これにより、例えば、フルカラーでの着色を行う造形を高速かつ適切に行うことができる。
また、上記においても説明をしたように、第2の表面加飾モードにおいて、保護領域310について、インクジェットヘッド102Tから吐出するクリアインクのみで形成している。また、サポート層52について、インクジェットヘッド102Sから吐出するサポート層52の材料のみで形成している。そのため、クリアインク用ノズル列群やサポート用ノズル列群の材料吐出能力が不十分であると、第2の表面加飾モードでの造形速度を適切に高速化できなくなる。これに対し、図9に示した構成では、上記のように、クリアインク用ノズル列群やサポート用ノズル列群の材料吐出能力を他のノズル群の材料吐出能力よりも大きくしている。また、これにより、第2の表面加飾モードでの造形速度の高速化が可能になっているといえる。
尚、第2の表面加飾モードについては、高速な造形が可能になる一方で、光反射領域304や着色領域308の形成の仕方が第1の表面加飾モードとは異なっている。また、その結果、例えば造形物50に着色される色の見え方等が第1の表面加飾モードと異なることも考えられる。例えば、着色領域308の色について、第2の表面加飾モードでの造形時の色の濃度が第1の表面加飾モードでの造形時よりも薄くなること等が考えられる。また、クリアインクを追加して光反射領域304を形成することにより、例えば光反射領域304の色味に黄色成分等が生じること等も考えられる。
そのため、より高速な造形モードである第2の表面加飾モードについては、例えば、色の再現性等の品質よりも造形速度の向上を重視する用途等で用いることが考えられる。また、この場合、高い色再現性が求められる用途においては、より色再現性が高い造形モードである第1の表面加飾モードで造形を行うことが好ましい。また、造形装置10においては、第1の表面加飾モード及び第2の表面加飾モードのそれぞれを用途等に応じて選択可能にすることが好ましい。
また、上記のように、この構成において、クリアインク用ノズル列群の材料吐出能力は、サポート用ノズル列群の材料吐出能力と等しい。また、クリアインク用ノズル列群及びサポート用ノズル列群の材料吐出能力は、それ以外のノズル列群である着色用の各色のノズル列群等よりも大きい。そのため、クリアインク用ノズル列群の材料吐出能力をCT、サポート用ノズル列群以外のノズル列群の材料吐出能力をCSP、1色分の着色用のノズル列群の材料吐出能力をCcとした場合、CT=CSP>Ccになっているといえる。この場合、1色分の着色用のノズル列群とは、C色用ノズル列群、M色用ノズル列群、Y色用ノズル列群、K色用ノズル列群のうちの一つのことである。また、この場合、CT及びCSPについて、Ccの2倍以上にすることが好ましい。また、ヘッド部12のサイズが大きくなりすぎない範囲で第2の表面加飾モードでの造形速度を高速化することを考えた場合、実用上、CT及びCSPをCcの2倍程度にすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、第2の表面加飾モードでの造形速度を第1の表面加飾モードでの造形速度の2倍程度に適切に高速化できる。
尚、積層造形法で造形を行う場合、造形物50の断面形状を示すスライスデータに対応するインクの層(単位層)を造形の単位として、層を重ねることで造形物50を造形する。そして、単位層の形成時には、単位面積あたりのインク量が一定になるように、インクを吐出する。より具体的に、例えば第1の表面加飾モードで造形を行う場合、一例として、例えば、単位面積に対して5ドロップ相当のインク滴(液滴)が着弾するようにして、単位層を形成する。また、この場合、フルカラーに着色される部分である着色領域308に対しては、例えば、着色用のインクのインク滴を2ドロップ着弾させ、クリアインクのインク滴を3ドロップ着弾させるようにして、合計の着弾数を一定にする。また、この場合、着色領域308に着弾させるインク滴のドロップ数の比率は、色や濃度に応じて変化させる。また、サポート層52や光反射領域304等については、その領域の形成に用いる1種類(単独)のインクのみで、必要なドロップ数(例えば5ドロップ)分のインク滴を着弾させる。
また、この場合、例えば一定の厚さの単位層を形成するためには各領域でのインクの吐出量(ドロップ数)を揃える必要がある。そのため、いずれかの領域の形成に用いるノズル列群の材料吐出能力が小さいと、その領域を形成可能な条件に引きずられて、単位層の厚み(ピッチ)を大きくすることができなくなる。また、その結果、高速に造形を行うことが困難になる。また、この場合、例えば全てのノズル列群の材料吐出能力を大きくすれば、造形の高速化も可能である。しかし、この場合、上記においても説明をしたように、ヘッド部12や造形装置10の大型化や高価格化の問題が生じる。
これに対し、上記のように構成した場合、全てのノズル列群の材料吐出能力を大きくするのではなく、一部のノズル列群のみの材料吐出能力を大きくすることで、フルカラーでの高速な造形を可能にしている。そのため、このように構成すれば、例えば、ヘッド部12や造形装置10の大型化や高価格化の問題を適切に抑えつつ、フルカラーでの造形をより高速かつ適切に行うことができる。
また、図9に示した構成について、より一般化して考えた場合、いずれかの造形モードで造形物50における一部の領域を1種類のインクのみで形成し、他の一部の領域を複数種類のインクで形成する場合において、この1種類のインクを吐出するノズル列群の材料吐出能力について、上記他の一部の領域の形成のみに使用するインクを吐出するノズル列群の材料吐出能力よりも大きくすることが好ましいと考えることもできる。このように構成すれば、この造形モードでの造形速度を適切に高速化できる。
続いて、ノズル列群の材料吐出能力を大きくする方法に関し、変形例等を説明する。図10は、ノズル列群の材料吐出能力を大きくする方法について説明をする図である。図10(a)は、ノズル列群の材料吐出能力を大きくする方法の一例を示す。
ヘッド部12(図9参照)における各インクジェットの配置については、図9(a)等に示した構成に限らず、様々に変更可能である。図10(a)は、ノズル列の配置の仕方の変形例を示す図であり、ヘッド部12が有する複数のノズル列の並べ方の一例について、簡略化して示す。図において、記号S、T、W、C、M、Y、Kを付して示した点線は、インクジェットヘッド102S、インクジェットヘッド102T、インクジェットヘッド102W、インクジェットヘッド102C、インクジェットヘッド102M、インクジェットヘッド102Y、インクジェットヘッド102Kのそれぞれにおけるノズル列を簡略化して示したものである。図中に示すノズル列は、例えば、一のインクジェットヘッドが有する複数のノズル列をまとめて示したノズル列であってよい。
また、図10(a)に図示した構成は、1個のインクジェットヘッドあたりの材料吐出能力が等しい場合において、インクジェットヘッド102S及びインクジェットヘッド102Tの個数を増やすことでサポート用ノズル列群及びクリアインク用ノズル列群の材料吐出能力を他のノズル列群よりも大きくした場合の例である。より具体的に、この場合、インクジェットヘッド102S及びインクジェットヘッド102Tの個数を2個とし、他のインクジェットヘッドの個数は1個としている。このように構成すれば、例えば、サポート用ノズル列群及びクリアインク用ノズル列群が含むノズル列の数について、他のズル列群が含むノズル列の数よりも多くすることができる。また、これにより、サポート用ノズル列群及びクリアインク用ノズル列群の材料吐出能力を他のノズル列群よりも大きくできる。
また、この場合、2個のインクジェットヘッド102Sのそれぞれについては、主走査方向において間に他のインクジェットヘッドを挟むように、いわゆるミラー配置で配設している。また、2個のインクジェットヘッド102Tのそれぞれについても、それぞれのインクジェットヘッド102Sの内側で他のインクジェットヘッドを挟むように、ミラー配置で配設している。このように構成した場合も、第1の表面加飾モード及び第2の表面加飾モードでの造形を適切に行うことができる。
図10(b)は、ノズル列群の材料吐出能力を大きくする方法の他の例を示す。ノズル列群の材料吐出能力を大きくするためには、例えば、単位時間あたりにノズル列群から吐出するインク滴の数(液滴数)を増やすことも考えられる。例えば、主走査動作において単位時間あたりに一のノズルから吐出可能な最大の液滴数を単位時間液滴数と定義した場合、サポート用ノズル列群及びクリアインク用ノズル列群に含まれるノズル列における各ノズルの単位時間液滴数について、その他のノズル列群に含まれるノズル列における各ノズルの単位時間液滴数よりも多くすることが考えられる。この場合、サポート用ノズル列群及びクリアインク用ノズル列群を構成するノズル列の数については、他のノズル列群と同じであってよい。
より具体的に、図10(b)においては、それぞれのノズル列群が含むノズル列の数が同じ場合について、サポート用ノズル列群及びクリアインク用ノズル列群のノズルが単位時間あたり5ドロップ(5drop)のインク滴を吐出し、その他のノズル列群のノズルが単位時間あたり3ドロップのインク滴を吐出する場合の例を示している。このように構成した場合も、例えば、サポート用ノズル列群及びクリアインク用ノズル列群の材料吐出能力について、他のノズル列群よりも大きくできる。また、これにより、第1の表面加飾モード及び第2の表面加飾モードでの造形を適切に行うことができる。
尚、この場合、主走査動作時のヘッド部12の移動速度については、単位時間あたり5ドロップの吐出を行うインクジェットヘッドの能力に合わせて遅くなることが考えられる。この場合、移動速度の低下によりインク滴の着弾精度が向上するため、より高い精度で造形を行うことが可能になる。
図10(c)は、ノズル列群の材料吐出能力を大きくする方法の更なる他の例を示す。ノズル列群の材料吐出能力を大きくするためには、例えば、ノズル列を構成するノズルの数を増やすことも考えられる。例えば、サポート用ノズル列群及びクリアインク用ノズル列群におけるそれぞれのノズル列を構成するノズルの数について、その他のノズル列群におけるそれぞれのノズル列を構成するノズルの数よりも多くすることが考えられる。このように構成した場合も、例えば、サポート用ノズル列群及びクリアインク用ノズル列群の材料吐出能力について、他のノズル列群よりも大きくできる。また、これにより、第1の表面加飾モード及び第2の表面加飾モードでの造形を適切に行うことができる。
続いて、造形装置10の構成等に関し、補足説明等を行う。まず、本例の造形装置10において高速な造形が可能になる理由に関し、補足説明を行う。インクジェットヘッドを用いて積層造形法で造形を行う場合において、例えば単色で造形のみを行うのであれば、単色の造形用のインク(造形用インク)用と、サポート層の材料(サポート材)用のインクのみを用いればよい。そのため、この場合、例えば2種類のインクジェットヘッドのみを用いて造形を行うことができる。
一方、造形物50の表面をフルカラー着色する場合には、通常、少なくともプロセスカラーの各色(例えば、C、M、Y、Kの4色分)のインクを用いる必要がある。そのため、例えば単色で造形のみを行う造形装置と比べて、使用する着色用のインク(カラーインク)の数の分だけ、インクジェットヘッドが余分に必要になる。
しかし、フルカラーでの着色が可能な造形装置を用いる場合にも、着色が不要な造形物や単色での着色のみを行う造形物を造形する場合もある。そして、本願の発明者は、このような場合に着色用のインクジェットヘッドを有効利用して造形速度を高めることを考えた。より具体的には、上記においても説明をしたように、造形装置10において複数の造形モードを実行可能にし、フルカラーで造形物50の表面を着色する造形モードである表面加飾モードの他に、より高速な造形が可能な単色・色付けモードのような造形モードでの造形を可能にしている。また、このような高速な造形を行う造形モードについて、サポート用ノズル列群の材料吐出能力を大きくすることで、造形速度を適切に高速化している。
尚、この場合、表面加飾モードでのフルカラーの着色(フルカラー加飾)に用いるのと同一のインクジェットヘッドを用いて、単色・色付けモードでの着色を行う。また、単色・色付けモードでは、例えば、造形物の表面及び内部の両方について、同一のインクジェットヘッドから同一のパターンでインク吐出することが好ましい。
続いて、造形装置10の構成に関し、補足説明を行う。造形装置10の構成について、より一般化して考えた場合、例えば、造形物50の材料(造形材)となるインクと、サポート層52の材料(サポート材)となるインクとを吐出する構成と考えることができる。この場合、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッドについて、図1(b)にも示すように、サポート層用ヘッド(サポート材吐出用)と、造形物用ヘッド(造形材吐出用)の2種類に大別することができる。また、この場合、例えば、C、M、Y、K、T、Wのいずれかの色のインクを造形物50の材料として用いる。また、少なくとも造形物用ヘッドでは、紫外線硬化型インクを用いることが好ましい。
また、造形装置10の構成について、例えば、同一のインクを吐出する、第1の方向に配列した1以上の数のインクジェットヘッドから構成された複数のノズル列を有する構成と考えることもできる。第1の方向とは、例えば副走査方向である。また、この場合、例えば、第1の方向に対して所定の角度をなす第2の方向に走査しつつ、複数のインクジェットヘッドの複数のノズル列から造形データに基づいてインクを吐出する。第2の方向とは、例えば主走査方向である。また、この場合、第2の方向の走査において、複数のノズル列からの吐出インクが同じ位置に重ならないようにインクを吐出して、1層の形成を行うことが好ましい。また、この場合、少なくとも一部の隣接する層の間で、複数のノズル列の同一のノズルからの吐出インクが同じ位置に重ならないようにすることが好ましい。
続いて、サポート用ノズル列群の材料吐出能力等に関し、補足説明を行う。サポート用ノズル列群の材料吐出能力に関する特徴については、例えば図10(a)等を用いて説明をしたように、造形物用ヘッドにおける1種類(単一)のインク用のインクジェットヘッドの個数よりもサポート層用ヘッドの数を多くすることが考えられる。また、例えば、図10(b)等を用いて説明をしたように、単位時間あたりに吐出するインク滴の数を増やすことや、図10(c)等を用いて説明をしたように、サポート層用ヘッドのノズル列におけるノズルの数を造形物用ヘッドにおける一のインクジェットヘッドのノズル列におけるノズル数よりも多くすること等も考えられる。
また、上記においても説明をしたように、サポート層52の材料としては、造形後の水で溶解除去することができるように、例えば、水溶性の材料を用いる。これに対し、造形物50の材料としては、非水溶性の材料を用いることが好ましい。また、この場合において、インクジェットヘッド102S以外の造形物用のインクジェットヘッドを更に用いてサポート層52を形成すると、造形の完了後にサポート層52を除去するのが困難になるおそれがある。そのため、サポート層52を形成する動作については、他の用途のインクジェットヘッドを用いて高速化することが難しい。そのため、本例においては、上記のように、サポート用ノズル列群の材料吐出能力を大きくすることで、サポート層52をより高速に形成可能にしている。
より具体的に、例えば、造形物50の各領域を形成する動作の場合、色を考慮しなければ、サポート層52の材料以外の全てのインクを使用できる。そして、この場合、使用可能なインクの数、すなわち、インクジェットヘッド(又はノズル列群)の数だけ造形の速度を高めることができる。そのため、例えば、造形物50の各領域について、インクジェットヘッド102S以外の造形物用ヘッドのうちの2個を用いて形成すれば、1個のみを用いる場合の2倍の速度での造形が可能になる。
しかし、この場合、サポート層52の形成に用いるインクジェットヘッド102Sの個数が1個のみであると、サポート層52の形成速度が遅くなり、造形動作全体を2倍にすることができなくなる。これに対し、本例のように、インクジェットヘッド102Sの個数を2個にしておけば、造形動作全体を2倍にすることも可能になる。また、より一般化して考えた場合、同一の解像度及び同一のノズル数のN種のインクを用いて造形物50を造形する場合、すなわち、造形物用ヘッドとしてN個のインクジェットヘッドを用いる場合、同一の解像度及び同一のノズル数のインクジェットヘッド102SをN個用いれば、造形動作全体の速度をN倍の速度で行うことが可能となる。