JP2020146866A - 不燃シート及び不燃シートの製造方法 - Google Patents

不燃シート及び不燃シートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】環境に配慮した、炭酸カルシウムを用いた不燃シートを提供する。【解決手段】 不燃シート10は、原反層1と、原反層1の第1の面に形成された表面アンカー層2と、原反層1の第1の面とは反対側の面である第2の面に形成された裏面アンカー層5とを備え、原反層1は、熱可塑性樹脂と無機質材料とを含有し、無機質材料は、生物由来の、貝殻、卵殻といった廃棄物に由来する炭酸カルシウム系成分を含有してなる。廃棄物に由来する炭酸カルシム系成分を用いることにより、例えば、山中に埋蔵されている炭酸カルシウムを用いる場合に比較して山林等の自然破壊を抑制することができ、且つ、廃棄物としての貝殻や卵殻を廃棄するための埋め立て地を削減し、また、焼却設備の導入に要する費用等を削減することができ、環境を配慮した炭酸カルシウム系成分を含有する不燃シート10を実現することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、不燃シート及び不燃シートの製造方法に関する。
不燃性または難燃性を備えたシートである不燃シートには、基材となる層である原反層に無機質材料を含んだものがある。そして、このシートに関する技術としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。
特開2018−48229号公報
原反層に含まれる無機質材料の代表的なものとして、炭酸カルシウムがある。炭酸カルシウムは地中の埋蔵量は在るとされるものの、中長期的な視野でみると、山林から採掘するため、自然破壊につながる恐れがある。
また、発電所等、取水設備のような水に接する部材を有する設備では、水に接する部分に貝が付着し、付着した貝によって取水能力が低下する等の悪影響が生じる。このため、取水設備等の施設では、付着した貝の除去作業が行われており、年間数万トンもの貝が廃棄物として生じている。この廃棄物である貝を放置すると貝の腐敗により悪臭が生じる等の問題があることから、このような施設では、除去した貝の大半を、施設敷地内で埋め立てて処分している。同様に、鶏卵等の卵類を扱う工場等においても卵殻を埋め立て処分することが行われている。
しかしながら、貝殻や卵殻の処分量が大量であるために、処分地の確保が年々困難となっている。埋め立て処理できない貝殻や卵殻は、現状においては必然的に焼却処理することになる。しかし、焼却処理は、焼却設備の導入に多額の費用を必要とするだけで得られるものがないため、経済的に不利である。このため、リサイクルを前提とした何等かの貝殻や卵殻の処理方法の開発が望まれている。
そのため、貝殻や卵殻等を有効活用することができ、且つ自然破壊につながることなく実現することのできる、炭酸カルシウムを用いた不燃シートが望まれていた。
本発明は、環境に配慮して実現することのできる、生物由来の廃棄物から抽出した炭酸カルシウムを用いた不燃シート及び不燃シートの製造方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するべく、本発明の一態様に係る不燃シートは、原反層と、前記原反層の第1の面に形成された第1のアンカー層と、前記原反層の前記第1の面とは反対側の面である第2の面に形成された第2のアンカー層とを備え、前記原反層は、熱可塑性樹脂と無機質材料とを含有し、前記無機質材料は、生物由来の廃棄物に由来する炭酸カルシウム系成分を含有することを特徴としている。
また、本発明の一態様に係る不燃シートの製造方法は、熱可塑性樹脂と無機質材料とを含有する原反層と、前記原反層の第1の面に形成された第1のアンカー層と、前記原反層の前記第1の面とは反対側の面である第2の面に形成された第2のアンカー層とを備えた不燃シートの製造方法であって、生物由来の廃棄物から炭酸カルシウム系成分を精製する工程と、精製した炭酸カルシウム系成分を前記無機質材料として、当該無機質材料と前記熱可塑性樹脂とを含有する前記原反層を生成する工程と、を含むことを特徴としている。
本発明によれば、環境に配慮した不燃シートを提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る不燃シート及び不燃材の構成を示す断面図である。 生物由来の炭酸カルシウムの精製手順の一例を示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態の変形例に係る不燃シート及び不燃材の構成を示す断面図である。 本発明の第2実施形態に係る不燃シート及び不燃材の構成を示す断面図である。
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
<第1実施形態>
[不燃シートの構成]
不燃シート10は、図1に示すように、最背面側から最表面側に向かって、プライマー層6と、裏面アンカー層5と、原反層1と、表面アンカー層2と、絵柄模様層3と、トップコート層4とを備えている。また、第1実施形態に係る不燃材12は、第1実施形態にかかる不燃シート10と、基板11とを備えている。
以下、不燃シート10を構成する各層について説明する。
なお、後述する各種材料の含有量は、乾燥状態における対応する層全体の質量に対する含有比率(質量%)を意味する。例えば、後述する本実施形態の無機質材料の含有量は、乾燥状態における原反層1全体の質量に対する含有比率(質量%)を意味する。また、後述する表面アンカー層2における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、乾燥状態における表面アンカー層2全体の質量に対する含有比率(質量%)を意味する。また、後述する裏面アンカー層5における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、乾燥状態における裏面アンカー層5全体の質量に対する含有比率(質量%)を意味する。
(原反層)
原反層1は、不燃シート10の基材となる層(シート)であって、熱可塑性樹脂と、無機質材料とを含んだ層である。
本実施形態の無機質材料の含有量は、原反層1の質量に対して、15質量%以上90質量%以下の範囲内であればよく、20質量%以上80質量%以下の範囲内であればより好ましく、60質量%以上80質量%以下の範囲内であればさらに好ましい。無機質材料の含有量が原反層1の質量に対して、15質量%未満であると、相対的に熱可塑性樹脂の割合が多くなるため、不燃性または難燃性が得にくい傾向がある。また、原反層1の表面をホフマンスクラッチテスターを用いて引っ掻いた際に、視認できる程度の傷が付く、即ち十分な表面硬度が得られないことがある。一方、無機質材料の含有量が原反層1の質量に対して、90質量%を超えると、相対的に熱可塑性樹脂の割合が少なくなる。このため、原反層1表面にアンカー層塗工もしくは印刷等を行った際に原反層1表面に所謂「粉吹き」が発生することがある。ここで、「粉吹き」とは、原反層1に含まれた無機質材料が原反層1の表面に浮き出ることをいう。また、絵柄模様層3の形成時に、原反層1から浮き出た無機質材料によってインキが積層しにくくなる、即ち印刷適性が低下することがある。また、表面アンカー層2、裏面アンカー層5、絵柄模様層3、及びトップコート層4の少なくとも一つを形成したシートをロール状または枚葉で木質系基材及び石系基材にラミネートする際にラミネートしにくくなる、即ちラミネート適性が低下する傾向がある。また、表面アンカー層2、裏面アンカー層5、絵柄模様層3、及びトップコート層4の少なくとも一つを形成したシートを折り曲げて再び開いた際に、折り曲げた部分から割れが発生したり、無機質材料が落ちたりすることがある。また、絵柄模様層3を形成したシートの表面にセロハンテープを圧着した後、強く引き剥がし、絵柄模様層3内または原反層1(表面アンカー層2)と絵柄模様層3との間で剥離が生じる、即ちインキ密着性が低下することがある。
このように、本実施形態の無機質材料の含有量が原反層1の質量に対して、15質量%以上90質量%以下、好ましくは20質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは60質量%以上80質量%以下の範囲内であれば、不燃性または難燃性を得つつ、粉吹きの発生を低減し、印刷適性を向上させ、ラミネート適性を向上させ、且つシートの折り曲げ部における割れの発生を低減することができ、さらに十分な表面硬度を得ることができ、インキ密着性を向上させることできる。
無機質材料は、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩等の炭酸カルシウム系成分のうちの少なくとも一つを含有した粉末である。
炭酸カルシウム系成分としては、生物由来の炭酸カルシウム系成分の粉末が適用される。生物由来の炭酸カルシウム系成分として、例えば、発電所の取水設備等に付着した貝殻や、廃棄物として廃棄される貝殻等の、生物由来の廃棄物から精製した炭酸カルシウム系成分の粉末が適用される。これら炭酸カルシウム系成分は、取水設備等に付着した貝殻や、廃棄物としての貝殻に対し、これら貝殻を貝殻粉に粉砕する粉砕工程と、粉砕工程で粉砕した貝殻粉を、酸を含有する水に浸して貝殻粉中の有機質を分離する分解工程と、分解された有機質を貝殻粉から分離して炭酸カルシウム系成分を主成分とする粉末を得る分離工程と、を施すことにより、炭酸カルシウム系成分を精製することができる。
また、生物由来の炭酸カルシウム系成分として、卵殻粉、例えば、鶏卵粉等を適用することができる。大量供給が可能であり、且つ安価に得られるという観点から、生物由来の炭酸カルシウム系粒子としては、卵殻粉を適用することが好ましい。
炭酸カルシウム系成分は、前述のように、粉末形状(粉体形状)であることが好ましく、その平均粒子径が1μm以上3μm以下の範囲であり、且つ最大粒子径が50μm以下であることが好ましい。無機質材料の平均粒子径及び最大粒子径が上記数値範囲内であれば、熱可塑性樹脂に対する無機質材料の分散性を向上させつつ、原反層1表面の平坦性を維持することができる。無機質材料の平均粒子径が1μm未満であると、無機質材料同士の凝集力が高まり、熱可塑性樹脂への分散性が低下することがある。
また、無機質材料の平均粒子径が3μmを超えると、原反層1表面の平坦性が低下し、表面アンカー層2または裏面アンカー層5の厚みが不均一となったり、ムラや欠けが発生したりすることがある。また、無機質材料の最大粒子径が50μmを超えると、原反層1表面の平坦性が低下し、表面アンカー層2または裏面アンカー層5の厚みが不均一となったり、ムラや欠けが発生したりすることがある。なお、本実施形態において、「平均粒子径」とは、モード径を意味する。
本発明の第1実施形態に係る熱可塑性樹脂は、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン及び又はプロピレンとこれらと共重合可能な他のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体及びエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群、つまり、ポリオレフィン系樹脂の中から選択される少なくとも1種である。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等を用いることが可能であり、ポリプロピレンが最も好ましい。
また、熱可塑性樹脂と無機質材料との合計含有量は、原反層1の質量に対して、90質量%以上100質量%以下の範囲内であることが好ましい。熱可塑性樹脂と無機質材料との合計含有量が上記数値範囲内であれば、十分な不燃性または十分な難燃性を得つつ、印刷適性やラミネート適性を向上させ、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを低減することができる。熱可塑性樹脂と無機質材料との合計含有量が原反層1の質量に対して、90質量%未満であると、十分な不燃性または十分な難燃性が得られないことがある。また、印刷適性やラミネート適性が低下したり、シートの折り曲げ部に割れが発生したりすることがある。
なお、熱可塑性樹脂と無機質材料との合計含有量は、原反層1の質量に対して、100質量%である場合には、熱可塑性樹脂の含有量を10質量%以上85質量%以下の範囲内とし、無機質材料の含有量を15質量%以上90質量%以下の範囲内とすることが好ましい。また、熱可塑性樹脂の含有量を20質量%以上80質量%以下の範囲内とし、無機質材料の含有量を20質量%以上80質量%以下の範囲内とすることがより好ましい。また、熱可塑性樹脂の含有量を20質量%以上40質量%以下の範囲内とし、無機質材料の含有量を60質量%以上80質量%以下の範囲内とすることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂と無機質材料との合計含有量が上記数値範囲内であれば、十分な不燃性または十分な難燃性を確実に得つつ、印刷適性やラミネート適性を確実に向上させ、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを確実に低減することができる。
また、原反層1の厚みは、50μm以上250μm以下の範囲内であることが好ましく、70μm以上200μm以下の範囲内であることがより好ましい。原反層1の厚みが上記数値範囲内であれば、ラミネート適性を向上させ、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを低減することができる。原反層1の厚みが50μm未満であると、ラミネート適性が低下する傾向がある。また、原反層1の厚みが250μmを超えると、シートの折り曲げ部に割れが発生することがある。
また、原反層1は、1軸延伸または2軸延伸の原反層であることが好ましい。原反層1が1軸延伸または2軸延伸の原反層であれば、不燃シート10の汎用性を高めることができる。
なお、原反層1の表面(第1の面)及び裏面(第2の面)の少なくとも一方に、例えば、後述する表面アンカー層(第1のアンカー層)2及び裏面アンカー層(第2のアンカー層)5を形成する前に、コロナ処理やプラズマ処理等の表面処理を施すことが好ましい。原反層1の表面及び裏面の少なくとも一方に、コロナ処理やプラズマ処理等の表面処理を施すことで、表面アンカー層2及び裏面アンカー層5と、原反層1との接着性(密着性)が向上する。
また、表面アンカー層2及び裏面アンカー層5を形成する前に、例えば、原反層1の表面及び裏面の少なくとも一方をブラッシングして、粉吹きした無機質材料を事前に落とすようにしてもよい。
(表面アンカー層)
表面アンカー層2は、原反層1の表面全体を覆うように形成された層であって、原反層1に含まれる無機質材料の粉落ちを防止するための層である。印刷時や樹脂塗工時に原反層1に含まれる無機質材料が印刷系内、具体的には印刷装置内で粉落ちすると、その印刷系内を汚染することがある。また、原反層1に含まれる無機質材料が粉落ちすると、インキ抜け等の不具合が発生する可能性がある。ここで、「インキ抜け」とは、インキが部分的に印刷されないことをいう。
また、表面アンカー層2は、原反層1と、後述する絵柄模様層3を形成するインキとの密着性を向上させるための機能も備えている。表面アンカー層2を備えない場合には、絵柄模様層3を形成するインキが原反層1に密着せずに剥離してしまうことがある。
表面アンカー層2は、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂を含有していることが好ましい。ここで、「塩酢ビ」とは、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体を意味する。また、「塩酢ビを含むウレタン系樹脂」とは、塩酢ビとウレタン系樹脂とを含んだ組成物であり、塩酢ビの含有量とウレタン系樹脂の含有量との比(塩酢ビの含有量(質量)/ウレタン系樹脂の含有量(質量))は80/20〜1/99の範囲内であればよく、50/50〜5/95の範囲内であれば好ましく、20/80〜10/90の範囲内であればさらに好ましい。
また、「塩酢ビを含むウレタン系樹脂」は、前述の塩酢ビ及びウレタン系樹脂以外に硬化剤を含んでいてもよい。この硬化剤は、塩酢ビを含むウレタン系樹脂を確実に硬化させるために添加されるものであり、その含有量については特に限定されない。例えば、塩酢ビを含むウレタン系樹脂の含有量と、硬化剤の含有量との比(塩酢ビを含むウレタン系樹脂の含有量(質量)/硬化剤の含有量(質量))は99/1〜1/99の範囲内であればよく、99/1〜50/50の範囲内であれば好ましく、95/5〜90/10の範囲内であればさらに好ましい。
表面アンカー層2における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、表面アンカー層2の質量に対し、15質量%以上100質量%以下の範囲内が好ましく、80質量%以上100質量%以下の範囲内がより好ましく、85質量%以上95質量%以下の範囲内がさらに好ましい。表面アンカー層2における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が上記数値範囲内であれば、表面アンカー層2と絵柄模様層3との層間強度を十分なものにしつつ、均一でムラや欠けのない表面アンカー層2を形成することができる。表面アンカー層2における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が表面アンカー層2の質量に対し、15質量%未満であると、表面アンカー層2と絵柄模様層3との層間強度が不十分となることがある。また、表面アンカー層2における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が表面アンカー層2の質量に対し、乾燥状態で80質量%未満であると、使用上何ら問題はないが、表面アンカー層2の原反層1への食い込み比率が低下し、表面アンカー層2と原反層1との層間強度が低下することが僅かながらある。なお、表面アンカー層2における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が表面アンカー層2の質量に対し、100質量%以下であれば使用上何ら問題はないが、95質量%、より正確には98質量%を超えると、硬化不足で表面アンカー層2に欠けが生じたり、表面アンカー層2と原反層1、もしくは表面アンカー層2と絵柄模様層3との層間強度が低下したりすることがある。
また、表面アンカー層2における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、後述する裏面アンカー層5における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量と同じであってもよい。即ち、表面アンカー層2における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、裏面アンカー層5における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量の1.0倍(0.95倍以上1.04倍以下の範囲内)であってもよい。表面アンカー層2における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が、裏面アンカー層5における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量と同じである場合には、表面アンカー層2の物性と裏面アンカー層5の物性がほぼ同じになるため、原反層1が表面アンカー層2及び裏面アンカー層5を備えた状態において、歪みや反り等の発生を低減することができる。そのため、不燃シート全体の歪みや反り等の発生を低減することができる。また、表面アンカー層2を形成するための塗工液と、裏面アンカー層5を形成するための塗工液とを共通化することができるため、製造コストを低減するとともに、作業効率を向上させることができる。
また、表面アンカー層2における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、裏面アンカー層5における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量よりも多くてもよいし、少なくてもよい。表面アンカー層2における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が、裏面アンカー層5における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量よりも多い、または少ない場合には、表面アンカー層2の物性と裏面アンカー層5の物性が異なるため、表面アンカー層2及び裏面アンカー層5を備えた原反層1に、歪みや反り等を付与することができる。このように、表面アンカー層2及び裏面アンカー層5を備えた原反層1に歪みや反り等を付与することで、その原反層1を湾曲した表面を備える基材等に隙間なく貼り合せることができる。例えば、表面アンカー層2における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、裏面アンカー層5における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量の1.1倍以上10倍以下であってもよく、0.1倍以上0.9倍以下であってもよい。
表面アンカー層2の厚みは、例えば、0.5μm以上20μm以下の範囲内であり、好ましくは、0.5μm以上10μm以下の範囲内である。また、表面アンカー層2の厚みは、裏面アンカー層5の厚みと同じであってもよい。表面アンカー層2の厚みが裏面アンカー層5の厚みと同じである場合には、表面アンカー層2の物性と裏面アンカー層5の物性がほぼ同じになるため、原反層1が表面アンカー層2及び裏面アンカー層5を備えた状態において、歪みや反り等の発生を低減することができる。
また、表面アンカー層2の厚みは、裏面アンカー層5の厚みよりも厚くてもよいし、薄くてもよい。表面アンカー層2の厚みと裏面アンカー層5の厚みを異なるものとすることで、光沢差が生じるため、原反層1の表面側と裏面側とを容易に視認することができる。そうすることで、原反層1の表面に、例えば印刷面であることを表示する識別マーク等を形成することなく、絵柄模様層3を印刷することができる。その結果、原反層1の裏面(非印刷面)側に絵柄模様層3を形成することで生ずる製品ロスを低減することができる。
(絵柄模様層)
絵柄模様層3は、不燃シート10に絵柄を付与する層であり、表面アンカー層2上に形成されている。
絵柄模様層3が形成する絵柄模様の種類には、特に制約はなく、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学図形、文字、記号等を単独で、または、2種類以上を組み合わせて形成してもよい。
絵柄模様層3は、アクリル系樹脂をバインダーとして含むインキ(以下、絵柄模様層形成用インキとも称する)を、表面アンカー層2の一方の面に塗布して形成した層である。絵柄模様層形成用インキにバインダーとして含まれるアクリル系樹脂としては、例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体樹脂(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体樹脂(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂(EAA)、アイオノマー樹脂、またはそれらの混合物等のアクリレート系共重合体樹脂を主成分とするものを使用することができる。ここで、「主成分」とは、絵柄模様層3を構成する成分のうち、最も含有量が多い成分をいう。
なお、絵柄模様層3は、ウレタン系樹脂をバインダーとして含むインキを、表面アンカー層2の一方の面に塗布して形成した層であってもよい。そのウレタン系樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートとを反応させて得られるウレタン系のものを用いてもよい。イソシアネートには、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルヘキサンジイソシアネート(HTDI)、メチルシクロヘキサノンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などから適宜選択することができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を用いることが好ましい。
絵柄模様層形成用インキは、上記アクリル系樹脂とともに、そのアクリル系樹脂を架橋する架橋剤を含んでいてもよい。この架橋剤は、アクリル系樹脂を架橋して絵柄模様層3全体に機械強度を付与する機能を有することから、一般に「硬化剤」とも称される。絵柄模様層形成用インキに添加可能な架橋剤(硬化剤)としては、例えばウレタン硬化剤が挙げられる。より詳しくは、絵柄模様層形成用インキに添加可能なウレタン硬化剤としては、例えばIPDA(イソフオロンジアミン)やHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)が挙げられる。本実施形態では、これらを単体またはそれらを混合して用いることができる。
絵柄模様層形成用インキが架橋剤を含む場合、その架橋剤の含有量は、絵柄模様層3におけるアクリル系樹脂の含有量を100質量部とした場合、0質量部超10質量部以下の範囲内であることが好ましい。架橋剤の含有量が上記数値範囲内であれば、絵柄模様層形成用インキの塗工性が向上する。なお、好ましくは、架橋剤の含有量は、絵柄模様層3におけるアクリル系樹脂の含有量を100質量部とした場合、3質量部である。
絵柄模様層形成用インキは、上記バインダー以外に、例えば、有機又は無機の染料又は顔料や、必要に応じて体質顔料、充填剤、粘着付与剤、分散剤、消泡剤、安定剤その他の添加剤を適宜添加してもよい。また、絵柄模様層形成用インキは、適当な希釈溶剤で所望の粘度に調整されている。
絵柄模様層3の形成方法には、特に制約はなく、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、凸版印刷法、インクジェット印刷法等の任意の印刷方法を用いることが可能である。
また、下地着色を目的として、表面アンカー層2と絵柄模様層3との間にベタインキ層(図示せず)を設ける場合には、ベタインキ層の形成方法として、上記各種の印刷方法の他に、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、スプレーコート法、リップコート法、ダイコート法等、任意のコーティング方法を用いることが可能である。
(トップコート層)
不燃シート10の最表面には、表面の保護や艶の調整としての役割を果たすトップコート層4が設けられている。トップコート層4の厚みは、2μm以上10μm以下が好ましい。トップコート層4の厚みが上記範囲内であれば、耐摩耗性や表面の硬さなどの機械特性を十分に得つつ、柔軟性を維持することができる。トップコート層4の厚みが2μm未満であると、耐摩耗性や表面の硬さなどの機械特性を十分に得られないことがある。また、トップコート層4の厚みが10μmを超えると、柔軟性が低下することがある。
トップコート層4の主成分となる樹脂材料としては、例えば、ポリウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系などの樹脂材料から適宜選択して用いることができる。樹脂材料の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系など特に限定されるものではない。硬化法についても1液タイプ、2液タイプ、紫外線硬化法など適宜選択して行うことができる。
トップコート層4の主成分となる樹脂材料としては、イソシアネートを用いたウレタン系のものが作業性、価格、樹脂自体の凝集力などの観点から好適である。イソシアネートには、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などの誘導体であるアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体などの硬化剤より適宜選定して用いることができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースとする硬化剤が好適である。この他にも、表面硬度の向上を図る場合には、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることが好ましい。なお、これらの樹脂は相互に組み合わせて用いることが可能であり、例えば、熱硬化型と光硬化型とのハイブリッド型とすることにより、表面硬度の向上、硬化収縮の抑制および密着性の向上を図ることができる。
また、不燃シート10の耐候性を向上させるために紫外線吸収剤および光安定化剤を適宜添加してもよい。また各種機能を付与するために抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤の添加も任意に行える。さらに、表面の意匠性から艶の調整のため、あるいはさらに耐摩耗性を付与するために、アルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズ等の添加も任意に行える。
なお、トップコート層4は、不燃シート10の用途によっては設けなくともよい。例えば、無機質感を出したい場合には、トップコート層4を設けなくともよい。
(裏面アンカー層)
裏面アンカー層5は、原反層1の裏面全体を覆うように形成された層であって、原反層1に含まれる無機質材料の粉落ちを防止するための層である。印刷時や樹脂塗工時に原反層1に含まれる無機質材料が印刷系内、具体的には印刷装置内で粉落ちすると、その印刷系内を汚染することがある。
また、裏面アンカー層5は、原反層1と、後述するプライマー層6との密着性を向上させるための機能も備えている。裏面アンカー層5を備えない場合には、プライマー層6を形成する塗液が原反層1に密着せずに剥離してしまうことがある。
裏面アンカー層5は、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂を含有していることが好ましい。
裏面アンカー層5における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、例えば、裏面アンカー層5の質量に対し、15質量%以上100質量%以下の範囲内が好ましく、80質量%以上100質量%以下の範囲内がより好ましく、85質量%以上95質量%以下の範囲内がさらに好ましい。裏面アンカー層5における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が上記数値範囲内であれば、裏面アンカー層5とプライマー層6との層間強度を十分なものにしつつ、均一でムラや欠けのない裏面アンカー層5を形成することができる。裏面アンカー層5における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が裏面アンカー層5の質量に対し、15質量%未満であると、裏面アンカー層5とプライマー層6との層間強度が不十分となることがある。また、裏面アンカー層5における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が裏面アンカー層5の質量に対し、80質量%未満であると、使用上何ら問題はないが、裏面アンカー層5の原反層1への食い込み比率が低下し、裏面アンカー層5と原反層1との層間強度が低下することが僅かながらある。なお、裏面アンカー層5における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が裏面アンカー層5の質量に対し、100質量%以下であれば使用上何ら問題はないが、95質量%、より正確には98質量%を超えると、硬化不足で裏面アンカー層5に欠けが生じたり、裏面アンカー層5と原反層1、もしくは裏面アンカー層5と絵柄模様層3との層間強度が低下したりすることがある。
また、裏面アンカー層5の厚みは、例えば、0.5μm以上20μm以下の範囲内であり、好ましくは、0.5μm以上10μm以下の範囲内である。
(プライマー層)
プライマー層6の材料としては、例えば、バインダーとしての硝化綿、セルロース、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変性物の中から適宜選定して用いることができる。これらは水性、溶剤系、エマルジョンタイプなど特にその形態を問わない。また、硬化方法についても、単独で硬化する1液タイプ、主剤と合わせて硬化剤を使用する2液タイプ、紫外線や電子線等の照射により硬化させるタイプなどから適宜選択して用いることができる。一般的な硬化方法としては、ウレタン系の主剤に対して、イソシアネート系の硬化剤を合わせることによって硬化させる2液タイプが用いられており、この方法は作業性、価格、樹脂自体の凝集力の観点から好適である。上記のバインダー以外には、顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤などが添加されている。特に、プライマー層6においては、不燃シート10の最背面に位置するため、不燃シート10を連続的なプラスチックフィルム(ウエブ状)として巻き取りを行うことを考慮すると、フィルム同士が密着して滑りにくくなることや、剥がれなくなるなどのブロッキングが生じることを避けるとともに、接着剤との密着を高めるために、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウムなどの無機充填剤を添加してもよい。層厚は、後述する基板11との密着性を確保することが目的であるので、0.1μm以上3.0μm以下の範囲内とすることが好ましい。
(接着性樹脂層)
本実施形態の不燃シート10は、絵柄模様層3と、トップコート層4または後述する透明樹脂層7との間に、接着性樹脂層(図示せず)を備えてもよい。接着性樹脂層を設けることによって、絵柄模様層3とトップコート層4との密着性を向上させることができる。接着性樹脂層の材質は特に限定されるものではないが、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系などから適宜選択して用いることができる。塗工方法は接着剤の粘度などに応じて適宜選択することができるが、一般的には、グラビアコートが用いられ、絵柄模様層3上にグラビアコートによって塗布された後、トップコート層4または透明樹脂層7とラミネートするようにして形成される。
[炭酸カルシウム系成分を含有した粉末の精製方法]
次に、炭酸カルシウム系成分を含有した粉末の精製方法を説明する。ここでは、貝殻から炭酸カルシウム系成分を含有した粉末を精製する方法を、図2のフローチャートを伴って説明する。
まず、貝肉を除去した貝殻を、粉砕する(ステップS1)。例えば、粉砕機を用いて100〜200メッシュ程度の大きさに粉砕する。
次いで、粉砕した貝殻を、殻皮層と、角柱層と、真珠層と、に分別する(ステップS2)。例えば、分別槽を利用し、ブロモホルム・エタノールの重液を用いた比重分離法等を用いて分別する。
次いで、分別した角柱層及び真珠層から、コンキオリンを含むタンパク質等の有機質を分解する(ステップS3)。例えば、角柱層及び真珠層に、分解液として酸水溶液X1を加えること等により、有機質を分解する。これにより、アミノ酸等を含む有機質の分解物は、酸水溶液X1中に溶出する。この有機質の分解は、例えば分解槽を利用すればよい。分解槽は、例えば、分解に用いる分解液を貯蔵する分解液容器と分解処理後の貝殻粉と分解液とを分離する分離装置とを有する。
次いで、酸水溶液X1中に有機質の分解物が溶出した酸水溶液X2と、角柱層及び真珠層とを分離する(ステップS4)。これにより、角柱層及び真珠層から、有機質が除去される。
次いで、ステップS4で有機質が除去された真珠層に水W1を加えて加熱し、金属及びハロゲンを水W1中に溶出させる(ステップS5)。この溶出は、例えば、水W1を貯蔵する容器を備えた溶出槽を利用して行う。
次いで、ステップS5の処理で、金属及びハロゲンが溶出した水W2と、真珠層とを分離する(ステップS6)。
次いで、真珠層とステップS2で分離した角柱層とを必要に応じて水洗いした後(ステップS7)、例えば乾燥機を用いて乾燥する(ステップS8)。これにより、高精度の炭酸カルシウム系成分の粉末が得られる。ここで、ステップS1の処理が粉砕工程に対応し、ステップS2からステップS4の処理が分解工程に対応し、ステップS5からステップS6の処理が分離工程に対応している。
なお、必要に応じて貝殻粉の洗浄処理を行うようにしてもよく、この場合には、分解槽及び溶出槽を用いて行うことができる。
炭酸カルシウム系成分を含有した粉末の精製方法は上述の方法に限るものではなく、不燃シート10の原反層1に含まれる無機質材料として使用可能な高純度の炭酸カルシウム系成分を得ることができれば、どのような方法で精製してもよい。
なお、鶏卵等、卵殻から炭酸カルシウム系成分を含有した粉末を精製する場合にも、同様の手順で行えばよい。
[不燃シートの製造方法]
次に、不燃シート10の製造方法の一例について、簡単に説明する。
まず、原反層1の一方の面である表面に、表面アンカー層2を形成するための表面アンカー層形成用インキを塗工して、表面アンカー層2を形成する。
次に、表面アンカー層2の表面上に、絵柄模様層3を形成するための絵柄模様層形成用インキを塗工して、絵柄模様層3を形成する。
次に、絵柄模様層3の表面上に、トップコート層4を形成するためのトップコート層形成用インキを塗工して、トップコート層4を形成する。
次に、原反層1の他方の面である裏面に、裏面アンカー層5を形成するための裏面アンカー層形成用インキを塗工して、裏面アンカー層5を形成する。
最後に、裏面アンカー層5の表面上に、プライマー層6を形成するためのプライマー層形成用インキを塗工して、プライマー層6を形成する。
なお、原反層1は、貝殻や卵殻等から精製した炭酸カルシウム系成分を含有する粉末と熱可塑性樹脂とを用いて生成する。原反層1は、例えば、炭酸カルシウム系成分と、熱可塑性樹脂とを主成分として混合した後、押出し成形によりシート状に形成すればよい。
以上の手順により、本実施形態に係る不燃シート10を製造する。
なお、裏面アンカー層5は、表面アンカー層2と同時に形成してもよい。また、プライマー層6は、絵柄模様層3及びトップコート層4を形成する前に形成してもよい。
[不燃材の構成]
次に、図1を用いて、不燃材12の構成を説明する。
図1に表すように、不燃材12は、基板11と、上述の不燃シート10とを備えている。そこで、以下、基板11について説明し、上述の不燃シート10については説明を省略する。
(基板)
本実施形態の基板11は、例えば、金属系の材料、木質系の材料、または無機質系の材料を用いて形成した板状の部材である。
金属系の材料としては、例えば、アルミ、鋼、ステンレス、複合パネル等を用いることが可能である。
複合パネルとしては、例えば、芯材となる樹脂層と、樹脂層の両面それぞれに貼り付けられた金属板(アルミニウム、ガルバリウム、ステンレス等)を備えたものを用いることが可能である。
木質系の材料としては、例えば、MDF(Medium Density Fiberboard)、合板、パーティクルボード等を用いることが可能である。
無機質系の材料としては、例えば、石こうボード、繊維混入ケイ酸カルシウム板等を用いることが可能である。
[不燃材の製造方法]
不燃材12の製造方法の一例について、簡単に説明する。
まず、不燃シート10のプライマー層6を基板11側に向けて配置する。
次に、この積層体を、例えば熱ラミネートする。
こうして、プライマー層6と基板11とを溶着させて、不燃材12を製造する。
上記積層体を熱ラミネートするための方法としては、金属板を当接して平圧プレスする方法の他に、円圧式の連続ラミネート方式を用いることも可能である。特に、金属製無端ベルト、あるいは金属製や硬化型樹脂製のヒートドラムを使用した連続ラミネート方式を用いると、表面の反りや波打ち等が無く、さらに、層間の密着性がよく、稠密に硬化一体化された高品質の不燃材12を、高速度で連続的に製造可能な利点がある。
ここで、建築基準法施工令に規定の不燃材料の技術的基準においては、ISO5660−1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において下記の要件を満たしている必要がある(建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号)。本実施形態の不燃シート10が不燃材料として認定されるためには、不燃性基材と貼り合わせた状態で50kW/mの輻射熱による加熱にて20分間の加熱時間において下記の1〜3の要求項目をすべて満たす必要がある。
1.総発熱量が8MJ/m以下
2.最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えない
3.防炎上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が生じない
なお、不燃性基材としては、石こうボード、繊維混入ケイ酸カルシウム板または亜鉛メッキ鋼板から選択して用いることができる。
そして、前述の原反層1を具備する本実施形態の不燃シート10は、前述の不燃性基材と貼り合わせた状態でのISO5660−1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、前述の施工令第108条の2第1号および第2号に記載の要件をともに満たす不燃材料を実現している。
[効果]
以上説明したように、上記第1実施形態に係る不燃シート10は、無機質材料及び熱可塑性樹脂を含む原反層1を、無機質材料として貝殻又は卵殻を用いて生成している。そして、貝殻や卵殻等は、廃棄される物である。このため、地中に埋蔵されている炭酸カルシウムを用いる場合に比較して、自然破壊につながることを抑制することができ、逆に、これら貝殻や卵殻は廃棄物であるため、廃棄物である貝殻や卵殻を有効に活用することができ、環境に配慮した不燃シート10を作成することができる。
特に、発電所等、取水設備のような水に接する部材を有する設備、また漁港や漁港関連設備等では、水に接する部分に付着した貝の貝殻や食品として処理された後の貝殻の処理を行う必要があり、同様に、食品工場等においても鶏卵等の卵殻の処理を行う必要があり、大量の貝殻や卵殻を処理する必要がある。
上述のように、第1実施形態に係る不燃シート10は、貝殻や卵殻から炭酸カルシウム系成分を精製しているため、廃棄物としての貝殻や卵殻を有効に活用することができる。そのため、その分、埋め立て処分や焼却処分となる貝殻や卵殻の量を削減することができる。そのため、貝殻や卵殻等の埋め立て用地の確保や、焼却設備の導入に係る費用を削減することができる。
<変形例>
本実施形態では、トップコート層4が単層の場合について説明したが、複層であってもよい。そこで、以下、トップコート層4が、第1のトップコート層4aと、第2のトップコート層4bとの2層を備えた場合について説明する。
図3に示すように、第1のトップコート層4aは、絵柄模様層3の表面側に設けられ、絵柄模様層3の全体を被覆する層である。第1のトップコート層4aは、第1のトップコート層4aを通して、絵柄模様層3の絵柄を透視できる程度に透明または半透明な材料(樹脂)で形成されている。第1のトップコート層4aは、単層でもよく、複数の層を重ねてなる層でもよい。また、第1のトップコート層4aの厚みは、例えば、2μm以上10μm以下の範囲内にあることが好ましい。
第2のトップコート層4bは、第1のトップコート層4aの表面側に部分的に設けられ、第1のトップコート層4aの表面の一部を被覆する層である。第1のトップコート層4aの表面の一部としては、例えば、絵柄模様層3の印刷インキと対向する部分が挙げられる。また、第2のトップコート層4bの材料としては、例えば、第1のトップコート層4aと同じ樹脂を採用できる。第2のトップコート層4bには、フィラーを添加するようにしてもよい。フィラーを添加することにより、第1のトップコート層4aと異なる光沢や触感、質感、表面強度、摩擦等の機械的物性を付与できる。フィラーとしては、例えば、燃焼時において酸素の消費量が少ない材料が好ましく、例えば、炭酸カルシウム、三酸化アンチモン、アンチモンソーダ、珪酸ジルコン、酸化ジルコンなどのジルコニウム化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、硼砂、ホウ酸亜鉛、三酸化モリブデンあるいはジモリブデン酸アンチモンと水酸化アルミニウムの錯体など、三酸化アンチモンとシリカの錯体、三酸化アンチモンと亜鉛華の錯体、ジルコニウムのケイ酸、ジルコニウム化合物と三酸化アンチモンの錯体などが挙げられる。特に、炭酸カルシウムは製造手法による粒径のコントロールや表面処理によるポリオレフィン系樹脂との相溶性の制御が容易であり、また、材料コストとしても安価であるため化粧シートの低廉化の観点からも好適である。また、アクリル、ポリオレフィン、シリコーン等の樹脂のビーズや不定形粒子や、シリカ(特に中空シリカ)、アルミナ、金属酸化物等の無機物のビーズや不定形粒子を用いることができる。また、第2のトップコート層4bの形成方法は、特に限定されるものではなく、既知の印刷手法を採用できる。なお、第2のトップコート層4bは、一般に「触感コート層」や「マット導管印刷層」とも称される。
<第2実施形態>
[不燃シートの構成]
第2実施形態の不燃シート10は、図4に示すように、最背面側から最表面側に向かって、プライマー層6と、裏面アンカー層5と、原反層1と、表面アンカー層2と、絵柄模様層3と、透明樹脂層7と、トップコート層4とを備えている。第2実施形態のトップコート層4は、第1のトップコート層4aと、第2のトップコート層4bとを備えている。また、第2実施形態の不燃材12は、第2実施形態の不燃シート10と、基板11とを備えている。つまり、第2実施形態の不燃シート10は、第1実施形態の不燃シート10と比較して、透明樹脂層7と、複数層からなるトップコート層4とを備えている点で異なる。そこで、以下、この異なる部分である透明樹脂層7と、複数層からなるトップコート層4とについて説明し、その他の層については説明を省略する。
(透明樹脂層)
透明樹脂層7は、絵柄模様層3の絵柄が透けて見えるように、透明な樹脂を用いて形成されたシート状の層であり、絵柄模様層3の上面に積層されて形成されている。
透明樹脂層7を積層する方法としては、例えば、原反層1、表面アンカー層2及び絵柄模様層3を含む積層体に対し、ラミネート加工により透明樹脂層7を積層する方法を用いることが可能である。
透明樹脂層7を形成する透明な樹脂は、特に限定されるものではなく、既知の透明な樹脂を用いることが可能である。
したがって、透明樹脂層7を形成する透明な樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、またはその鹸化物、ポリオレフィン系共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン系樹脂、繊維素誘導体、塩素系樹脂、フッ素系樹脂等を単体で、または、これらの材料から選択した2種類以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を適宜使用することが可能である。
特に、溶融押し出し装置を用いた製造では、生産性、環境適合性、機械強度、耐久性、価格等を考慮すると、透明樹脂層7を形成する透明な樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂を用いることがより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等を用いることが可能であり、ポリプロピレンが最も好ましい。また、ポリオレフィン系共重合体としては、例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体等を用いることが可能である。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル(代表的には、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂である通称PET−G)等を用いることが可能である。
ポリアミド系樹脂としては、例えば、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、12−ナイロン等を用いることが可能である。
スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等を用いることが可能である。
繊維素誘導体としては、例えば、セルロースアセテート、ニトロセルロース等を用いることが可能である。
塩素系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等を用いることが可能である。
フッ素系樹脂等としては、例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体等を用いることが可能である。
透明樹脂層7の厚みは、透明樹脂層7の強度と透明度とをともに良好なものにする点から、20μm以上150μm以下の範囲内にあることが好ましく、45μm以上90μm以下の範囲内にあることがより好ましい。
透明樹脂層7には、必要に応じて既存の熱安定化剤、難燃化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤などの各種添加剤を添加することができる。表面強度の向上を図る場合には、高結晶性のポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。なお、熱安定化剤としては、例えば、フェノール系、硫黄系、リン系、ヒドラジン系などを用いることができる。難燃化剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどを用いることができる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系などを用いることができる。光安定化剤としては、例えば、ヒンダードアミン系などを用いることができる。また、透明樹脂層7の表面には必要に応じて、図4に示すような、所定の凹凸パターンを有するエンボス模様7aを形成してもよい。
(エンボス模様)
エンボス模様7aは、例えば、絵柄模様層3の絵柄と同調した凹部と凸部とからなる模様である。エンボス模様7aの凹部と凸部により、触感による立体感を付与可能となっている。エンボス模様7aと絵柄模様層3の絵柄とのずれは、例えば、絵柄模様の形状に対して長手方向には10mm以下、短手方向(幅方向)には3mm以下の範囲内とすることが好ましい。例えば、絵柄模様が木目である場合には、木目の導管が伸びている方向が「絵柄模様の形状に対する長手方向」となり、長手方向と直交する方向が「絵柄模様の形状に対する短手方向」となる。特に、木目の導管が不燃シート10の長手方向に沿って伸びている場合には、不燃シート10の長手方向が「絵柄模様の形状に対する長手方向」となり、不燃シート10の短手方向(幅方向)が「絵柄模様の形状に対する短手方向」となる。エンボス模様7aは、透明樹脂層7及びトップコート層4が透明であるため、斜光の反射により初めて強く視認されるが、エンボス模様7aと絵柄模様層3の絵柄とのずれが上記範囲内であれば、反射光と同時に絵柄模様層3の透過光を視認することが困難なため違和感がない。エンボス模様7aと絵柄模様層3の絵柄とのずれを一定範囲内へ抑えることにより、パターンの形状と分布を等しくシート全面で精度よく一致させた不燃シート10を得ることができる。また、エンボス模様7aの凹部と凸部との高低差は、例えば、3μm以上200μm以下の範囲内とする。高低差は、目的とする不燃シート10の意匠に適した数値を選ぶことができる。例えば、最大高低差(200μm)内で連続的な多段形状を取ることもできる。特に、巨視的な立体物としての形状を得るために、高低差は、10μm以上150μm以下の範囲がより好ましい。
(トップコート層)
トップコート層4は、第1のトップコート層4aと、第2のトップコート層4bとを備えている。
第1のトップコート層4aは、透明樹脂層7の表面側に設けられ、透明樹脂層7の全体を被覆する層である。第1のトップコート層4aは、第1のトップコート層4aを通して、絵柄模様層3の絵柄を透視できる程度に透明または半透明な材料(樹脂)で形成されている。第1のトップコート層4aは、単層でもよく、複数の層を重ねてなる層でもよい。また、第1のトップコート層4aの厚みは、例えば、エンボス模様7aを完全に埋めて意匠感を損なうことなく透明樹脂層7の表面を保護するに足る強度を得る点から、3μm以上100μm以下の範囲内にあることが好ましい。さらに、第1のトップコート層4aの材料としては、例えば、透明樹脂層7への接着性、不燃シート10の変形追従性、耐擦傷性等の点で、熱硬化型樹脂が好ましい。特に、コスト、汎用性の点からは、2液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を有する熱硬化型樹脂(バインダー)がより好ましい。熱硬化型樹脂には、例えば、シリカ粒子等の艶消剤や耐傷剤を添加してもよい。
2液硬化型ウレタン樹脂としては、例えば、ポリオールを主体とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂を用いることができる。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するものであって、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオールを用いることができる。
また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートを用いることができる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(または脂環式)イソシアネートを用いることができる。また、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体を用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等がある。なお、上記イソシアネートにおいて脂肪族(または脂環式)イソシアネートは、耐候性、耐熱黄変性も良好にできる点で好ましく、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを使用できる。
また、耐擦傷性を重視する場合は、硬度の点から、電離放射線硬化型樹脂が好ましい。電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線硬化型樹脂を用いることができる。例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂を採用できる。紫外線硬化型樹脂を用いることにより、トップコート層4、つまり不燃シート10の最表面層の硬度を向上でき、不燃シート10の耐摩耗性や耐擦傷性、耐溶剤性等の表面物性を向上できる。また、第1のトップコート層4aの材料としては、例えば熱硬化型樹脂と電離放射線硬化型樹脂との混合物を用いてもよい。
第2のトップコート層4bは、第1のトップコート層4aの表面側に部分的に設けられ、第1のトップコート層4aの表面の一部を被覆する層である。第1のトップコート層4aの表面の一部としては、例えば、絵柄模様層3の印刷インキと対向する部分が挙げられる。また、第2のトップコート層4bの材料としては、例えば、第1のトップコート層4aと同じ樹脂を採用できる。第2のトップコート層4bには、フィラーを添加するようにしてもよい。フィラーを添加することにより、第1のトップコート層4aと異なる光沢や触感、質感、表面強度、摩擦等の機械的物性を付与できる。フィラーとしては、例えば、アクリル、ポリオレフィン、シリコーン等の樹脂のビーズや不定形粒子や、シリカ、アルミナ、金属酸化物等の無機物のビーズや不定形粒子を用いることができる。また、第2のトップコート層4bの形成方法は、特に限定されるものではなく、既知の印刷手法を採用できる。なお、第2のトップコート層4bは、一般に「触感コート層」や「マット導管印刷層」とも称される。
なお、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
[実施例]
まず、図2に示すフローチャートにしたがって、貝殻から生物由来の炭酸カルシウム系成分を含有した粉末を精製した。精製した炭酸カルシウム系成分と熱可塑樹脂とで構成される原反層を形成した。原反層の厚みは、200μmとした。また、炭酸カルシウム系成分を含有する粉末の粒子径(モード径)が2μmであり、最大粒子径が50μm以下であるものを使用した。
次に、原反層の表面及び裏面をコロナ処理した。
次に、コロナ処理した原反層の表面上及び裏面上に、塩酢ビを含むウレタン系アンカー層形成用インキを塗膜厚みが1μm以上2μm以下となるように塗工し、乾燥温度40℃、乾燥時間30秒間の条件で乾燥させた。こうして原反層の表面上及び裏面上にアンカー層を形成した。
次に、原反層のアンカー層上に、ウレタン系絵柄模様層形成用インキを塗膜厚みが1μm以上2μm以下となるように塗工(印刷)し、乾燥温度40℃、乾燥時間30秒間の条件で乾燥させた。こうして、アンカー層上に絵柄模様層を形成した。
その後、原反層、アンカー層及び絵柄模様層を備えた積層体(シート)を室温で1日エージングし、各評価を行うためのサンプル(実施例)を作成した。
また、従来例として、精製した生物由来の炭酸カルシウム系成分に替えて、山中に埋蔵されている炭酸カルシウム等、石灰石由来の炭酸カルシウム系成分を含有した粉末を用いて、生物由来の炭酸カルシウム系成分を含む積層体を、サンプルとして作成した。従来例としての積層体のサンプルは、実施例における積層体と同一の条件で作成した。
本実施例における評価項目は、以下の通りである。
Figure 2020146866
<インキ密着性>
印刷後のシート表面にセロハンテープを圧着した後、強く引き剥がし、絵柄模様層内部または原反層と絵柄模様層との層間での剥離の有無を評価した。
<印刷適性>
印刷時に原反層から粉落ちせずに、インキが積層できているか否かを評価した。
<印刷後の表面粉吹き>
印刷後のシート表面を手やコットンでドライラビングし、粉吹きや石灰石粉の脱落の有無を評価した。
<不燃性試験>
ISO5660−1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において下記の要件を満たしているか否か評価した。
1.総発熱量が8MJ/m以下
2.最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えない
3.防炎上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が生じない
なお、不燃性基材としては、石こうボードを用いた。
(評価基準)
○:各項目に対し、シート作製時・シート加工時に何ら不具合を生じない。
×:各項目に対し、不具合を生じる。
実施例の積層体及び従来例の積層体における評価結果は、表1に示す通りである。生物由来の炭酸カルシウム系成分を用いて作成した積層体(実施例)は、従来の石灰石由来の炭酸カルシウム系成分を用いて作成した積層体(従来例)と同等の特性を得られることが確認された。
1 原反層
2 表面アンカー層
3 絵柄模様層
4 トップコート層
4a 第1のトップコート層
4b 第2のトップコート層
5 裏面アンカー層
6 プライマー層
7 透明樹脂層
7a エンボス模様
10 不燃シート
11 基板
12 不燃材

Claims (14)

  1. 原反層と、前記原反層の第1の面に形成された第1のアンカー層と、前記原反層の前記第1の面とは反対側の面である第2の面に形成された第2のアンカー層とを備え、
    前記原反層は、熱可塑性樹脂と無機質材料とを含有し、
    前記無機質材料は、生物由来の廃棄物に由来する炭酸カルシウム系成分を含有することを特徴とする不燃シート。
  2. 前記廃棄物は、貝殻及び卵殻の少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項1に記載の不燃シート。
  3. 前記炭酸カルシウム系成分は、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩のうちの少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項2に記載の不燃シート。
  4. 前記無機質材料は、粉末形状であり、平均粒子径が1μm以上3μm以下の範囲内であり、且つ最大粒子径が50μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の不燃シート。
  5. 前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン及びポリメチルペンテンの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の不燃シート。
  6. 前記原反層の厚みは、50μm以上250μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の不燃シート。
  7. 前記第1のアンカー層及び前記第2のアンカー層は、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂を含有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の不燃シート。
  8. 前記原反層と、前記第1のアンカー層と、トップコート層とをこの順に備えたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の不燃シート。
  9. 前記原反層と、前記第1のアンカー層と、絵柄模様層と、トップコート層とをこの順に備えたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の不燃シート。
  10. 前記原反層と、前記第2のアンカー層と、プライマー層とをこの順に備えたことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の不燃シート。
  11. ISO5660−1に準拠する発熱性試験にて不燃認定取得可能要件を満たすことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の不燃シート。
  12. 熱可塑性樹脂と無機質材料とを含有する原反層と、前記原反層の第1の面に形成された第1のアンカー層と、前記原反層の前記第1の面とは反対側の面である第2の面に形成された第2のアンカー層とを備えた不燃シートの製造方法であって、
    生物由来の廃棄物から炭酸カルシウム系成分を精製する工程と、
    精製した炭酸カルシウム系成分を前記無機質材料として、当該無機質材料と前記熱可塑性樹脂とを含有する前記原反層を生成する工程と、
    を含むことを特徴とする不燃シートの製造方法。
  13. 前記廃棄物は、貝殻及び卵殻の少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項12に記載の不燃シートの製造方法。
  14. 前記廃棄物は貝殻であって、
    前記生物由来の廃棄物から炭酸カルシウム系成分を精製する工程は、
    前記貝殻を貝殻粉に粉砕する粉砕工程と、
    前記貝殻粉を酸を含有する水に浸して前記貝殻粉中の有機質を分離する分解工程と、
    分解された有機質を前記貝殻粉から分離して炭酸カルシウム系成分を主成分とする粉末を得る分離工程と、を含むことを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の不燃シートの製造方法。
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