JP2020142635A - エアバッグ用耐熱補強部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】小型化及び軽量化を図りつつ、膨張用ガス及び残渣の熱によるエアバッグのダメージを低減する。【解決手段】耐熱補強部材40は、ガス発生器15のガス噴出部18と、同ガス噴出部18から噴出される膨張用ガスにより展開及び膨張するエアバッグ30との間に配置される。耐熱補強部材40は、同部材が用いられない場合に、エアバッグ30のうち、少なくとも膨張用ガス及び残渣が接触する部分の耐熱性を補強する。耐熱補強部材40は、ゴム材料により板状に形成された基板部41と、基板部41のガス噴出部18側に設けられた凹凸部とを備え、凹凸部が設けられない場合よりも、ガス噴出部18側の面の表面積が増加されている。凹凸部は、基板部41のガス噴出部18側の面から突出する複数の突起部42を備えている。【選択図】図3

Description

本発明は、インフレータから噴出される膨張用ガスにより展開及び膨張するエアバッグの耐熱性を補強するエアバッグ用耐熱補強部材に関する。
衝突等により車両に衝撃が加わった場合に乗員をその衝撃から保護する装置として、ガス発生器のガス噴出部から膨張用ガスを発生させ、その膨張用ガスにより乗員に接近した箇所でエアバッグを展開及び膨張させて衝撃を緩和するエアバッグ装置が有効である。
上記エアバッグ装置においては、ガス発生器として、ガス発生剤と高圧ガスの両方を使ったハイブリッドタイプがよく知られている。ハイブリッドタイプのガス発生器では、最初に点火薬に着火され、その点火薬が発生する熱によりガス発生剤に着火される。ガス発生剤の燃焼に伴い発生するガスの熱により高圧ガスが加熱されて圧力が上昇し、その昇圧した高圧ガスが膨張用ガスとしてガス噴出部から噴出される。
このタイプのガス発生器では、噴出される膨張用ガスの温度がさほど高くない反面、高圧ガスを収容するための容器として強度の高いものが用いられるため、大型で重くなりやすい。
一方、近年では、エアバッグ装置の小型化及び軽量化の観点から、発熱を伴う化学反応により、ガス発生剤から膨張用ガスを発生させるとともに、残渣をフィルタで捕捉するパイロタイプと呼ばれるガス発生器も採用されるようになってきている。パイロタイプのガス発生器は、ハイブリッドタイプのガス発生器よりも小型化及び軽量化を図ることができる反面、温度の高い膨張用ガス及び残渣を発生する。そのため、エアバッグのうち、ガス噴出部の周辺部分を、高温の膨張用ガス及び残渣の熱から保護する対策が必要となる。この対策として、ガス噴出部を金属部材で取り囲んだり、ガス噴出部とエアバッグとの間に配置される補強布の枚数を増やしたりすることが行われるが、大型となり、重量が増加してしまう。
そこで、例えば、特許文献1ではゴムシートを、また、特許文献2では非溶融繊維を含む布状部材を、ガス噴出部の周りに配置することで、小型化及び軽量化を図ろうとしている。
特開2013−241073号公報 国際公開第2011/105142号
上記特許文献1ではゴムシートによって、また、特許文献2では布状部材によって、膨張用ガス及び残渣の熱がエアバッグのうちガス噴出部の周りの部分に伝わることが抑制される。そのため、エアバッグのうち、ガス噴出部の周辺部分では、熱によるダメージを低減することが可能である。しかし、上記ゴムシート又は上記布状部材に当たった膨張用ガスが、それらのゴムシート又は布状部材に沿って流れる。膨張用ガス中の残渣が、ゴムシート又は布状部材を通過した後にエアバッグに触れ、残渣の熱によってエアバッグがダメージを受けるおそれがある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、小型化及び軽量化を図りつつ、膨張用ガス及び残渣の熱によるエアバッグのダメージを低減することのできるエアバッグ用耐熱補強部材を提供することにある。
上記課題を解決するエアバッグ用耐熱補強部材は、ガス発生器のガス噴出部と、前記ガス噴出部から噴出される膨張用ガスにより展開及び膨張するエアバッグとの間に配置される部材であり、同部材が用いられない場合に、前記エアバッグのうち、少なくとも前記膨張用ガス及び残渣が接触する部分の耐熱性を補強するエアバッグ用耐熱補強部材であって、ゴム材料により板状に形成された基板部と、前記基板部の前記ガス噴出部側に設けられた凹凸部とを備え、前記凹凸部が設けられない場合よりも、前記ガス噴出部側の面の表面積が増加されている。
上記の構成によれば、ガス噴出部とエアバッグとの間に、凹凸部が基板部よりもガス噴出部側に位置するように耐熱補強部材が配置されると、ゴム材料によって形成されていて、高い耐熱性を有する基板部は、熱遮蔽能力を発揮し、膨張用ガス及び残渣の熱がエアバッグのうちガス噴出部の周辺部分に伝わるのを抑制する。そのため、エアバッグが熱から受けるダメージが低減される。
また、残渣を伴った膨張用ガスは耐熱補強部材に当たると、基板部の面に沿う方向へ流れようとするところ、その途中で、残渣が凹凸部に当たって捕捉される。その捕捉される分、耐熱補強部材を通過して、エアバッグに到達する残渣が少なくなる。従って、高温の残渣の熱がエアバッグに伝わることが抑制され、エアバッグが熱から受けるダメージが低減される。
さらに、凹凸部が設けられることで、設けられない場合よりも、耐熱補強部材におけるガス噴出部側の面の表面積が増加し、多くの量の残渣が捕捉される。
なお、ゴム材料によって形成された基板部を有する耐熱補強部材は、金属材料によって形成された場合よりも比重が小さく、可撓性を有していて弾性変形可能である。そのため、金属材料によって基板部が形成された場合に比べ、耐熱補強部材を小型で軽量なものとすることが可能である。
上記エアバッグ用耐熱補強部材において、前記凹凸部は、前記基板部の前記ガス噴出部側の面から突出する複数の突起部を備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、残渣を伴った膨張用ガスが耐熱補強部材に当たって、基板部の面に沿う方向へ流れる途中には、残渣が突起部の壁面に当たって捕捉される。捕捉される分、耐熱補強部材を通過して、エアバッグに到達する残渣が少なくなる。
また、突起部が設けられることで、設けられない場合よりも、耐熱補強部材におけるガス噴出部側の面の表面積、すなわち残渣を捕捉し得る面が増加する。
上記エアバッグ用耐熱補強部材において、前記突起部は柱状に形成されていることが好ましい。
上記の構成によるように、突起部が柱状に形成されることで、突起部の表面積が効果的に増大され、突起部に当たる残渣の量、ひいては、突起部によって捕捉される残渣の量を多くすることが可能である。
上記エアバッグ用耐熱補強部材において、前記突起部は非金属材料により形成されていることが好ましい。
上記の構成によるように、突起部が非金属材料によって形成されれば、金属材料によって形成された場合に比べ、熱が突起部によって吸収及び放出されにくく、膨張用ガスの温度が低下しにくい。
上記エアバッグ用耐熱補強部材において、前記非金属材料は、前記基板部と同一種類のゴム材料であることが好ましい。
上記の構成によれば、基板部の成形工程で突起部を一緒に成形することが可能となり、耐熱補強部材の製造工程が少なくなる。
上記エアバッグ用耐熱補強部材において、前記突起部は、前記基板部に植えられ、かつ非金属材料により形成された繊維により構成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、残渣を伴った膨張用ガスが耐熱補強部材に当たって、基板部の面に沿う方向へ流れようとすると、その途中で残渣が繊維に当たって捕捉される。捕捉される分、耐熱補強部材を通過して、エアバッグに到達する残渣が少なくなる。また、基板部に繊維が植えられることで、植えられない場合よりも、耐熱補強部材におけるガス噴出部側の面の表面積が増加する。さらに、繊維が非金属材料によって形成されることで、金属材料によって形成される場合に比べ、熱が突起部によって吸収及び放出されにくく、膨張用ガスの温度が低下しにくい。
上記エアバッグ用耐熱補強部材において、前記凹凸部は、前記基板部の前記ガス噴出部側の面に設けられ、かつ前記ガス噴出部から遠ざかる側へ凹む凹部を備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、残渣を伴った膨張用ガスが耐熱補強部材に当たって、基板部の面に沿う方向へ流れようとすると、その途中で残渣が凹部の壁面に当たって捕捉される。捕捉される分、耐熱補強部材を通過して、エアバッグに到達する残渣が少なくなる。また、凹部が設けられることで、設けられない場合よりも、耐熱補強部材におけるガス噴出部側の面の表面積、すなわち残渣を捕捉し得る面が増加する。
上記エアバッグ用耐熱補強部材において、前記ゴム材料はEPDMであることが好ましい。
EPDMは、市販されているゴム材料の中でも特に比重が小さく、しかも廉価である。そのため、耐熱補強部材をより一層、軽量にすることが可能である。また、耐熱補強部材の低コスト化を図ることも可能である。
上記エアバッグ用耐熱補強部材によれば、小型化及び軽量化を図りつつ、膨張用ガス及び残渣の熱によるエアバッグのダメージを低減することができる。
耐熱補強部材をサイドエアバッグ装置に適用した第1実施形態を示す図であり、同装置が設けられた車両用シートを乗員とともに示す側面図。 第1実施形態において、エアバッグモジュールがサイドフレーム部に取付けられた状態を示す部分平断面図。 図3(a)は第1実施形態において、エアバッグモジュールがサイドフレーム部に取付けられた状態を示す部分縦断面図、図3(b)は図3(a)の一部を拡大して示す部分縦断面図。 第1実施形態における耐熱補強部材及びその周辺部分の部分縦断面図。 第1実施形態における耐熱補強部材の部分斜視図。 耐熱補強部材を運転席用エアバッグ装置に適用した第2実施形態を示す図であり、図6(a)は、耐熱補強部材の適用箇所を示す部分断面図、図6(b)は図6(a)の一部を拡大して示す部分断面図。 耐熱補強部材をカーテンエアバッグ装置に適用した第3実施形態を示す図であり、図7(a)はエアバッグモジュールの部分正面図、図7(b)は図7(a)の一部を拡大して示す部分正面図。 第1実施形態における耐熱補強部材の取り付け態様の変形例を示す図であり、図2に対応する部分平断面図。 同じく耐熱補強部材の取り付け態様の変形例を示す図であり、図3(b)に対応する部分縦断面図。 耐熱補強部材を、第1実施形態とは異なる形態のガス発生器が用いられたサイドエアバッグ装置に適用した変形例を示す図であり、図3(b)に対応する部分縦断面図。 第1実施形態における耐熱補強部材の取り付け態様の変形例を示す図であり、図3(b)に対応する部分縦断面図。 第1実施形態における耐熱補強部材の変形例を示す図であり、図12(a)は図3(b)に対応する部分縦断面図、図12(b)は図12(a)の一部を拡大して示す部分縦断面図。 第1実施形態における耐熱補強部材の変形例を示す図であり、図4に対応する部分縦断面図。
(第1実施形態)
以下、エアバッグ用耐熱補強部材をサイドエアバッグ装置に適用した第1実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、エアバッグ用耐熱補強部材を、単に「耐熱補強部材」というものとする。また、車両の前進方向を前方として説明し、車両の後進方向を後方として説明する。また、車両の幅方向(車幅方向)における中央部を基準とし、その中央部に近づく側を車内側とし、中央部から遠ざかる側を車外側とする。さらに、車両用シートには、衝突試験用のダミーと同様の体格を有する乗員が、予め定められた正規の姿勢で着座しているものとする。これらの点は、後述する第2及び第3実施形態や、種々の変形例についても同様である。
図1に示すように、車両において、側壁部の車内側の近傍には、車両用シート11が配置されている。ここで、側壁部とは、車両の側部に配置された車両構成部材を指し、主としてドア、ピラー部等がこれに該当する。前席に対応する側壁部は、フロントドア、センターピラー部等である。また、後席に対応する側壁部は、リヤドアの後部、リヤピラー部、タイヤハウスの前部、リアクォータ等である。
車両用シート11におけるシートバック12内には、その骨格をなすシートフレームが配置されている。シートフレームの一部は、図2及び図3(a)に示すように、シートバック12内の車外側部分に配置されたサイドフレーム部13によって構成されている。
シートバック12内であってサイドフレーム部13に対し車外側に隣接する箇所には収納部14が設けられ、サイドエアバッグ装置10の主要部を構成するエアバッグモジュールABMがこの収納部14に収容されてサイドフレーム部13に取付けられている。エアバッグモジュールABMは、ガス発生器15、エアバッグ30及び耐熱補強部材40を構成部材として備えている。次に、これらの構成部材の各々について説明する。
<ガス発生器15>
ガス発生器15は、その主要部をなす発生器本体16と、発生器本体16をエアバッグ30及び耐熱補強部材40とともにサイドフレーム部13に取付けるためのボルト24とを備えている。
発生器本体16は、パイロタイプのインフレータ17と、そのインフレータ17を覆うリテーナ22とを備えており、全体として略上下方向へ延びる長尺状をなしている。インフレータ17は略円柱状(シリンダ状)をなしており、膨張用ガスを発生するガス発生剤と、膨張用ガスとともに発生する残渣を捕捉するフィルタ(いずれも図示略)とが内蔵されている。インフレータ17は、下端部にガス噴出部18を有している。ガス噴出部18の外周部には、膨張用ガスを同ガス噴出部18の径方向外方へ向けて噴出する複数のガス噴出孔18aが開口されている。また、インフレータ17の上端部には、同インフレータ17への作動信号の入力配線となるハーネス19が、コネクタ21を介して接続されている。
一方、リテーナ22は発生器本体16の外周部分を構成している。リテーナ22は、膨張用ガスの噴出する方向を制御するディフューザとして機能するとともに、インフレータ17をエアバッグ30等と一緒にサイドフレーム部13に取付ける機能を有する部材である。リテーナ22の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって略筒状に形成されている。リテーナ22は、その上端部が縮径するように、かしめられることにより、インフレータ17の上端部に係止されている。リテーナ22の下端部であって、ガス噴出部18に対向する箇所及びその近傍部分には、孔22aが形成されている。リテーナ22の下端は、ガス噴出部18の下端よりも低い箇所に位置している。
ボルト24は、リテーナ22の上下方向に互いに離間した2箇所から車内側へ向けて突出している。下側のボルト24は、ガス噴出部18の上方近傍に位置している。
なお、発生器本体16は、インフレータ17とリテーナ22とが一体になったものであってもよい。また、発生器本体16は、インフレータ17のみによって構成されてもよい。この場合には、ボルト24はインフレータ17に直接固定される。
<エアバッグ30>
図1の二点鎖線は、膨張用ガスを充填させることなく平面状に展開させられた状態のエアバッグ30を示している。図1及び図2に示すように、エアバッグ30の外殻部分は本体布部31によって構成されている。本体布部31は、強度が高く、かつ可撓性を有する素材であるポリアミド繊維又はポリエステル繊維を用いて織成した織布によって形成されている。本体布部31は、車幅方向に重ね合わされた一対の布部32,33を結合することにより形成されている。両布部32,33の上記結合は、それらの周縁部に設けられた周縁結合部34においてなされている。図2では、周縁結合部34の図示が省略されている。周縁結合部34は、第1実施形態では縫製によって形成されているが、他の手段、例えば接着によって形成されてもよい。エアバッグ30は、図示はしないが、本体布部31のほかにも、同本体布部31の内部を複数の膨張室に区画する区画部、膨張用ガスの整流部等を、構成部材として備えている。
エアバッグ30は、これに供給される膨張用ガスにより展開及び膨張する。エアバッグ30は、車両用シート11と側壁部との間で展開及び膨張したときに、乗員P1の上半身の多くの部分を衝撃から保護することのできる形状及び大きさに形成されている。
<耐熱補強部材40>
図3(a),(b)に示すように、耐熱補強部材40は、ガス噴出部18とエアバッグ30との間に配置される部材である。耐熱補強部材40は、同部材が用いられない場合に、エアバッグ30のうち、少なくとも膨張用ガス及び残渣が接触する部分の耐熱性を補強するために用いられている。耐熱補強部材40は、基板部41及び凹凸部によって構成されている。
基板部41は、耐熱性の高い材料であるゴム材料によって板状に形成されている。ゴム材料としては、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、VQM(ビニルメチルシリコーンゴム)、フッ素系ゴム、SBR(スチレンブタジエンゴム)等が好適に用いられる。第1実施形態では、市販されているゴム材料の中でも特に比重が小さく、廉価であるEPDMがゴム材料として用いられている。また、第1実施形態では、図4に示すように、基板部41として、0.5mmの厚みT1を有するものが用いられているが、厚みT1は上記値に限定されるものではない。
凹凸部は、基板部41のガス噴出部18側に設けられている。図3(a)及び図5に示すように、凹凸部は、基板部41のガス噴出部18側の面から突出する複数の突起部42によって構成されている。突起部42は円柱状に形成されている。これらの突起部42は、縦横に互いに離間した状態で規則的に配列されている。突起部42は、非金属材料によって形成されている。第1実施形態では、非金属材料として、基板部41と同一種類のゴム材料であるEPDMが用いられている。図4に示すように、基板部41のガス噴出部18側の面からの突起部42の突出高さH1は、0.5mm〜5.0mmであることが好ましい。本実施形態では、この突出高さH1は、0.5mmに設定されている。
上記のように基板部41に複数の突起部42が設けられることで、耐熱補強部材40のガス噴出部18側の面の表面積は、同突起部42(凹凸部)が設けられない場合よりも増加している。
上記耐熱補強部材40は、図2では二点鎖線で示されている。図2及び図3(a)に示すように、耐熱補強部材40は、リテーナ22と本体布部31との間であって、少なくともガス噴出部18の側方となる箇所に位置している。第1実施形態では、基板部41の下端部は、ガス噴出部18の下端及びリテーナ22の下端よりも低い箇所に位置している。基板部41の上端部は、上側のボルト24よりも高い箇所に位置している。
複数の突起部42は、少なくともガス噴出部18の側方となる箇所に位置している。最下端の突起部42は、ガス噴出部18の下端及びリテーナ22の下端よりも低い箇所に位置している。最上端の突起部42は、下側のボルト24よりも高い箇所に位置している。耐熱補強部材40のうち、最上端の突起部42よりも上方部分は、基板部41のみによって構成されている。
図1に示すように、上記ガス発生器15及び耐熱補強部材40は、上部ほど後側に位置するように傾斜した姿勢にされて、本体布部31の後端部内に挿入されている。
図3(a)に示すように、リテーナ22から突出して耐熱補強部材40に挿通された各ボルト24は、車内側の布部32に挿通されている。この挿通により、ガス発生器15及び耐熱補強部材40が、本体布部31に対し位置決めされた状態で係止されている。
上記エアバッグ30は、発生器本体16よりも前側部分が折り畳まれることにより、図2において二点鎖線で示すようにコンパクトな形態にされている。これは、エアバッグ30を、シートバック12における限られた大きさの収納部14に対し、収納に適したものとするためである。上記エアバッグ30は、結束テープ(図示略)によって折り畳まれた形態に保持されている。
上記エアバッグモジュールABMは収納部14に配置されている。そして、両ボルト24が、サイドフレーム部13に対し、それぞれ車外側から挿通されている。各ボルト24に対しサイドフレーム部13の車内側からナット25が締付けられることにより、ガス発生器15及び耐熱補強部材40が本体布部31と一緒にサイドフレーム部13に取付けられている。表現を変えると、本体布部31及びガス発生器15をサイドフレーム部13に取り付けるためのボルト24及びナット25が、耐熱補強部材40を本体布部31及びサイドフレーム部13に取り付けるために利用されている。耐熱補強部材40は、本体布部31及びガス発生器15とともにサイドフレーム部13に共締めされている。
次に、上記のように構成された第1実施形態の作用及び効果について説明する。
車両の走行中等に、側突等により側壁部に対し、側方等から衝撃が加わったことが検出されると、又は衝撃が加わることが予測されると、インフレータ17は、高温の膨張用ガスをガス噴出部18から径方向外方へ噴出する。このときの膨張用ガスの温度(400℃程度)は、本体布部31の融点(260℃程度)よりも高い。また、このときには、フィルタによって捕捉されなかった高温の残渣が、膨張用ガスと一緒にガス噴出部18から噴出される。膨張用ガス及び残渣のそれぞれの一部は、リテーナ22の下部の孔22aを通過して耐熱補強部材40に当たり、基板部41のガス噴出部18側の面に沿って流れようとする。
上記膨張用ガスが供給された本体布部31は膨張を開始する。本体布部31は、自身の後部をガス発生器15及び耐熱補強部材40とともに収納部14に残した状態で、シートバック12から前方へ飛び出す。その後も膨張用ガスが供給される本体布部31は、図1において二点鎖線で示すように、側壁部と乗員P1の上半身との間で前方へ向けて折り状態を解消(展開)しながら膨張する。
このように展開及び膨張した本体布部31が、乗員P1の上半身と、車内側へ進入してくる側壁部との間に介在する。この本体布部31によって上半身が車内側へ押圧されて拘束される。そして、側壁部を通じて上半身に伝わる側方からの衝撃が、本体布部31によって緩和されて、同上半身が保護される。
ところで、膨張用ガス及び残渣のそれぞれの熱が本体布部31に伝わると、同本体布部31がダメージを受けるおそれがある。熱によるダメージとは、例えば、本体布部31が溶けたり破れたりすることである。
この点、第1実施形態によれば、ガス噴出部18と本体布部31との間に耐熱補強部材40が介在されている。この耐熱補強部材40における基板部41は、耐熱性の高い材料であるゴム材料によって形成されていて、高い耐熱性を有している。基板部41は、熱遮蔽能力を発揮し、膨張用ガス及び残渣のそれぞれの熱が本体布部31に伝わるのを抑制する。そのため、本体布部31が熱から受けるダメージが低減される。
また、残渣を伴った膨張用ガスが基板部41のガス噴出部18側の面に沿う方向へ流れる際、仮に耐熱補強部材40に突起部42が設けられておらず、基板部41のガス噴出部18側の面が平滑であるとすると、残渣を伴った膨張用ガスはその平滑な面に沿って流れて耐熱補強部材40を通過する。高温の残渣の熱が本体布部31に伝わるおそれがある。
この点、耐熱補強部材40に突起部42が設けられた第1実施形態によれば、残渣を伴った膨張用ガスGは、図4において矢印で示すように、基板部41のガス噴出部18側の面に沿う方向へ流れる途中で、突起部42に当たる。膨張用ガスG中の残渣の一部は、突起部42によって捕捉される。その捕捉される分、耐熱補強部材40を通過して、本体布部31に到達する残渣が少なくなる。従って、高温の残渣の熱が本体布部31に伝わることが抑制され、本体布部31が熱から受けるダメージが低減される。
さらに、突起部42が設けられることで、設けられない場合よりも、耐熱補強部材40におけるガス噴出部18側の面の表面積が増加する。そのため、多くの量の残渣を捕捉することが可能となる。特に、突起部42が柱状に形成された第1実施形態では、突起部42の表面積が効果的に増大され、突起部42に当たる残渣の量、ひいては、突起部42によって捕捉される残渣の量を多くすることができる。
ここで、仮に、突起部42が金属材料によって形成されていると、一般に金属材料の比熱が非金属材料の比熱に比べて小さいことから、膨張用ガスや残渣の熱が突起部42によって吸収及び放出されて、膨張用ガスの温度が低くなるおそれがある。
この点、第1実施形態では、突起部42が非金属材料であるEPDMによって形成されている。そのため、突起部42が金属材料によって形成された場合に比べ、熱が突起部42によって吸収及び放出されにくく、膨張用ガスの温度が低下しにくい。表現を変えると、膨張用ガスの温度低下を抑制しつつ、残渣の捕捉量を多くすることができる。
なお、ゴム材料によって形成された基板部41を有する耐熱補強部材40は、可撓性を有していて弾性変形可能である。そのため、金属材料等の硬質材料によって基板部41が形成された場合に比べ、耐熱補強部材40を弾性変形させることで、小型で軽量なものとすることができる。
EPDMは、上述したように、市販されているゴム材料の中でも特に比重が小さい。そのため、EPDMをゴム材料として用いて耐熱補強部材40を形成することで、耐熱補強部材40をより一層、軽量にすることが可能である。
また、EPDMは、特殊なゴム材料ではなく市場に多く流通しているものであり、廉価で入手しやすい。そのため、材料費を低く抑えることができる。
従って、ガス噴出部18を金属部材で取り囲んだり、ガス噴出部18と本体布部31との間に配置される補強布の枚数を増やしたりすることによる問題、すなわち、エアバッグ30が折り畳みにくくなる、重量が増える、折り畳んだときの嵩が大きくなって搭載性が低下する等の問題を解消することができる。
第1実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・仮に、突起部42が基板部41と異なる材料によって形成されると、基板部41及び突起部42を別々に成形した後に、突起部42及び基板部41を連結する工程が必要となる。
この点、突起部42が基板部41と同一種類のゴム材料であるEPDMによって形成されている第1実施形態では、基板部41を成形する工程で、突起部42を一緒に成形することができ、耐熱補強部材40の製造工程を少なくすることができる。
(第2実施形態)
次に、運転席用エアバッグ装置に用いられる耐熱補強部材に具体化した第2実施形態について、図6(a),(b)を参照して説明する。
図6(a)は、車両におけるステアリングホイールのパッド部(図示略)の内部に配置された運転席用エアバッグ装置50の一部を示している。図6(a)中の前後方向は、ステアリングホイールにおけるステアリングシャフト(図示略)に沿う方向を示しており、車両の前後方向に対し若干傾斜している。
運転席用エアバッグ装置50は、バッグホルダ51、ガス発生器、エアバッグ57及びリングリテーナ64を備えている。バッグホルダ51は、ステアリングホイールの芯金(図示略)に支持されている。バッグホルダ51の中心部分には、開口部49が形成されている。
ガス発生器としては、パイロタイプのインフレータ52が用いられている。ここでのインフレータ52は、略円盤状(ディスク状)をなす本体部53と、本体部53の外周面に形成されたフランジ部54とを備えている。本体部53には、膨張用ガスを発生するガス発生剤と、膨張用ガスとともに発生する残渣を捕捉するフィルタ(いずれも図示略)とが内蔵されている。
本体部53のうちフランジ部54よりも後側の部分は、ガス噴出部55を構成している。ガス噴出部55の外周面には、膨張用ガスを径方向外方へ噴出する複数のガス噴出孔56が開口されている。
エアバッグ57の外殻部分は本体布部58によって構成されている。本体布部58としては、第1実施形態の本体布部31と同様の素材によって形成されたものが用いられている。本体布部58には、上記ガス噴出部55を挿入するための挿入口59が開口されている。エアバッグ57は、図示はしないが、本体布部58のほかにも、ガス噴出部55から噴出された膨張用ガスを整流するための整流布等を、構成部材として備えている。
運転席用エアバッグ装置50は、上記インフレータ52及びエアバッグ57に加え、耐熱補強部材60を備えている。耐熱補強部材60は、同部材が用いられない場合に、本体布部58のうち、少なくとも膨張用ガス及び残渣が接触する部分の耐熱性を補強するためのものであり、ガス噴出部55と本体布部58との間に配置されている。図6(b)に示すように、耐熱補強部材60としては、第1実施形態と同様に、基板部61及び複数の突起部62を備え、全体がEPDM等のゴム材料によって形成されたものが用いられている。
図6(a)に示すように、上記耐熱補強部材60は、上記ガス噴出部55を挿入するための挿入口63を、自身の中心部分に有している。耐熱補強部材60は、挿入口63を本体布部58の挿入口59に合致させた状態で、本体布部58に対し内側から重ねられている。
本体布部58の内部であって挿入口59,63の近傍には、金属製のリングリテーナ64が配置されている。リングリテーナ64は、バッグホルダ51の開口部49と同様の形状をなす開口部65を有している。また、リングリテーナ64は、周方向に互いに離間した複数箇所に取り付けねじ66を備えている。
そして、ガス噴出部55が開口部49,65及び挿入口59,63に対し前側から挿入されている。フランジ部54がバッグホルダ51に対し前側から重ねられている。エアバッグ57の多くの部分は、図示はしないが、折り畳まれることによりコンパクトな形態にされて、パッド部とバッグホルダ51との間に収容されている。
複数の取り付けねじ66は、耐熱補強部材60、本体布部58、バッグホルダ51及びフランジ部54に対し、後側から挿通されている。この挿通により、耐熱補強部材60の本体布部58に対する位置決めがなされている。さらに、挿通後の各取り付けねじ66に対し前側からナット67が締付けられることにより、本体布部58及び耐熱補強部材60がリングリテーナ64を介してバッグホルダ51に固定されるとともに、インフレータ52がフランジ部54においてバッグホルダ51に固定されている。
次に、上記のように構成された第2実施形態の作用及び効果について説明する。
車両の走行中等に、前突等により車両に対し前方から衝撃が加わると、慣性により運転者が前傾しようとする。一方、車両に衝撃が加わったことが検出されると、又は衝撃が加わることが予測されると、インフレータ52は、高温の膨張用ガスをガス噴出孔56からガス噴出部55の径方向外方へ噴出する。このときには、フィルタによって捕捉されなかった高温の残渣も膨張用ガスと一緒に噴出される。膨張用ガス及び残渣のそれぞれの一部は耐熱補強部材60に当たり、基板部61のガス噴出部55側の面に沿って流れる。
上記膨張用ガスが供給された本体布部58が展開及び膨張を開始する。本体布部58により、パッド部に加わる押圧力が増大していくと、同パッド部が破断される。破断により生じた開口を通じて本体布部58が後方へ向けて引き続き展開及び膨張する。前突等の衝撃により前傾しようとする運転者の前方に、展開及び膨張した本体布部58が介在し、運転者の頭部を拘束し、衝撃から保護する。
ここで、ガス噴出部55と本体布部58との間に配置されたゴム製の耐熱補強部材60における基板部61は、熱遮蔽能力を発揮し、膨張用ガス及び残渣のそれぞれの熱が本体布部58に伝わるのを抑制する。そのため、本体布部58が熱から受けるダメージが低減される。
また、残渣を伴った膨張用ガスは、基板部61の面に沿う方向へ流れる途中で、複数の突起部62に当たる。膨張用ガス中の残渣の一部は、これらの突起部62によって捕捉される。その捕捉される分、耐熱補強部材60を通過して、本体布部58に到達する残渣が少なくなる。従って、突起部62がなく、基板部61のガス噴出部55側の面が平滑な面によって構成されている場合とは異なり、高温の残渣の熱が本体布部58に伝わることが抑制され、同本体布部58が熱から受けるダメージが低減される。
さらに、突起部62が設けられることで、設けられない場合よりも、耐熱補強部材60におけるガス噴出部55側の面の表面積が増加し、多くの量の残渣を捕捉することができる。特に、突起部62が柱状に形成された第2実施形態でも、第1実施形態と同様、突起部62の表面積を効果的に増大し、突起部62に当たる残渣の量、ひいては、突起部62によって捕捉される残渣の量を多くすることができる。
第2実施形態によれば、上述した事項以外にも、第1実施形態で説明した種々の効果と同様の効果が得られる。
(第3実施形態)
次に、耐熱補強部材をカーテンエアバッグ装置に適用した第3実施形態について、図7(a),(b)を参照して説明する。
図7(a)に示すように、カーテンエアバッグ装置70の主要部を構成するエアバッグモジュールABMは、ガス発生器、エアバッグ75及び耐熱補強部材90を備えており、車体の天井部分に配置されている。
次に、エアバッグモジュールABMを構成する上記部材の各々について説明する。
<ガス発生器>
ガス発生器は、第1実施形態と同様のパイロタイプのインフレータ71によって構成されている。ただし、第3実施形態では、第1実施形態と異なり、ガス発生器の構成部材としてリテーナ及びボルトが用いられていない。インフレータ71は第1実施形態と同様に略円柱状(シリンダ状)をなしており、ガス発生剤及びフィルタ(ともに図示略)が内蔵されている。インフレータ71は、前後方向に延びる姿勢で配置されている。インフレータ71は、前端部にガス噴出部72を有している。ガス噴出部72の外周部には、膨張用ガスを径方向外方へ噴出する複数のガス噴出孔(図示略)が開口されている。また、インフレータ71の後端部には、同インフレータ71への作動信号の入力配線となるハーネス(図示略)が接続されている。インフレータ71は、車体の天井部分に取付けられている。
<エアバッグ75>
図7(a)では、エアバッグ75が膨張用ガスを充填させることなく平面状に展開させられた状態で図示されている。エアバッグ75の外殻部分は、本体布部76によって構成されている。本体布部76としては、第1実施形態の本体布部31と同様の素材によって形成されたものが用いられている。本体布部76は、その外形形状が、前後方向に延びる横長の長方形状となるように、袋縫いにより形成されている。本体布部76は、ガス供給路77、ガス導入部78、前チャンバ81及び後チャンバ82を備えている。
ガス供給路77は、本体布部76の上部において前後方向に直線状に延びている。ガス導入部78は、ガス供給路77よりも上側に位置している。ガス導入部78の下端部は、前後方向におけるガス供給路77の略中央部に対し連通した状態で接続されている。ガス導入部78の後端部は開口されている。前チャンバ81及び後チャンバ82は、ガス供給路77の下側に位置している。前チャンバ81はガス供給路77の前部に連通し、後チャンバ82はガス供給路77の後部に連通している。
本体布部76において、ガス供給路77、ガス導入部78、前チャンバ81及び後チャンバ82とは異なる部分は、膨張用ガスが供給されず、膨張しない非膨張部83を構成している。
本体布部76の上縁部において前後方向に互いに離間した複数箇所には、取り付け片84が縫製等により結合されている。エアバッグモジュールABMは、これらの取り付け片84において車体の天井部分に取付けられている。また、本体布部76の前端部には、ストラップ状のテンションベルト85の後端部が取付けられている。テンションベルト85は本体布部76の前端部から前方へ向けて延びており、自身の前端部においてフロントピラー部に取付けられている。
エアバッグ75は、さらにインナチューブ86を構成部材として備えている。インナチューブ86は、入口部87、前流出部88及び後流出部89を備え、上記本体布部76と同様の素材によって形成されている。入口部87は筒状をなし、ガス導入部78内に配置されている。入口部87の後端部は開口されている。前流出部88は筒状をなし、入口部87の下端からガス供給路77内を前方に向けて延びている。後流出部89は筒状をなし、入口部87の下端からガス供給路77内を後方に向けて延びている。前流出部88の前端部及び後流出部89の後端部は、ともに開口されている。
そして、ガス導入部78及び入口部87には、それらの後端部の上記開口部分を通じ、上記インフレータ71のうち、ガス噴出部72を含む前側部分が挿入されている。ガス導入部78及び入口部87は、同ガス導入部78の後端部の周りに装着されたクランプ73によって、インフレータ71に締結されている。
<耐熱補強部材90>
図7(b)に示すように、耐熱補強部材90は、同部材が用いられない場合に、エアバッグ75の構成部材のうち、少なくとも膨張用ガス及び残渣が接触する部分、本実施形態ではインナチューブ86における入口部87、の耐熱性を補強するためのものであり、ガス噴出部72と入口部87との間に配置されている。耐熱補強部材90としては、図示はしないが、第1及び第2実施形態と同様に、基板部及び複数の突起部を備え、全体がEPDM等のゴム材料によって形成されたものが用いられている。
耐熱補強部材90は、突起部が内周側に位置し、かつ基板部が外周側に位置するように、前後両端が開放された筒状に形成されている。耐熱補強部材90は、インナチューブ86の入口部87内において、インフレータ71の少なくともガス噴出部72を取り囲んだ状態で、同ガス噴出部72と入口部87の内壁面との間に配置されている。耐熱補強部材90の前端はガス噴出部72の前端よりも前方に位置し、同耐熱補強部材90の後端はガス導入部78及び入口部87の各後端部に位置している。耐熱補強部材90は、上記クランプ73によって、ガス導入部78及び入口部87と一緒にインフレータ71に締結されている。
上記エアバッグモジュールABMは、車両に搭載される前の状態では、本体布部76が折り畳まれて前後方向に細長い長尺状の部材としてアッセンブリ化されている。本体布部76は、テープ材等の締結材(図示略)によって折り畳まれた形態に保持されている。締結材としては、エアバッグ75が展開及び膨張するときに破断されるものが用いられている。
次に、上記のように構成された第3実施形態の作用及び効果について説明する。
車両の走行中等に、側突等により側壁部に対し、側方等から衝撃が加わったことが検出されると、又は衝撃が加わることが予測されると、インフレータ71は、高温の膨張用ガスをガス噴出部72から径方向外方へ噴出する。このときには、フィルタによって捕捉されなかった高温の残渣が膨張用ガスと一緒に噴出される。膨張用ガス及び残渣のそれぞれの一部は耐熱補強部材90に当たった後、基板部に沿って流れる。
上記膨張用ガスは、インナチューブ86の入口部87を通った後、前流出部88を流れるものと後流出部89を流れるものとに分けられる。前流出部88から流出した膨張用ガスは、ガス供給路77を前方に向けて流れることで前チャンバ81に供給される。後流出部89から流出した膨張用ガスは、ガス供給路77を後方に向けて流れることで後チャンバ82に供給される。供給された膨張用ガスにより、前チャンバ81及び後チャンバ82が膨張を開始する。エアバッグ75は天井部分から下方へ飛び出す。エアバッグ75は、サイドウインドウに沿ってカーテン状に展開及び膨張する。前チャンバ81は、前席の乗員P1の頭部PHと前側のサイドウインドウとの間で展開及び膨張し、その乗員P1の頭部PHを衝撃から保護する。後チャンバ82は、後席の乗員P1の頭部PHと後側のサイドウインドウとの間で展開及び膨張し、その乗員P1の頭部PHを衝撃から保護する。
ここで、ガス噴出部72と入口部87との間に配置されたゴム製の耐熱補強部材90における基板部は、熱遮蔽能力を発揮し、膨張用ガス及び残渣のそれぞれの熱が入口部87に伝わるのを抑制する。そのため、入口部87が熱から受けるダメージが低減される。
また、残渣を伴った膨張用ガスは、耐熱補強部材90における基板部の面に沿う方向へ流れる途中で複数の突起部に当たる。膨張用ガス中の残渣の一部は、これらの突起部によって捕捉される。その捕捉される分、耐熱補強部材90を通過して、入口部87に到達する残渣が少なくなる。従って、突起部が設けられず、基板部のガス噴出部側の面が平滑な面によって構成されている場合とは異なり、高温の残渣の熱が入口部87に伝わることが抑制され、同入口部87が熱から受けるダメージが低減される。
さらに、突起部が設けられることで、設けられない場合よりも、耐熱補強部材90におけるガス噴出部側の面の表面積が増加し、多くの量の残渣を捕捉することが可能となる。特に、突起部が柱状に形成された第3実施形態でも、第1実施形態と同様、突起部の表面積を効果的に増大し、突起部に当たる残渣の量、ひいては、突起部によって捕捉される残渣の量を多くすることが可能である。
第3実施形態によれば、上述した事項以外にも、第1実施形態で説明した種々の効果と同様の効果が得られる。
なお、上述した各実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<第1実施形態に関する事項>
・上記耐熱補強部材40は、サイドエアバッグ装置10に限らず、膝保護用エアバッグ装置にも適用可能である。
膝保護用エアバッグ装置は、車両のインストルメントパネル等に設けられた収納部に収納されるエアバッグを備える。膝保護用エアバッグ装置は、前突等により車両に対し前方から衝撃が加わったことが検出された場合、又は衝撃が加わることが予測される場合に、エアバッグを膨張用ガスにより展開及び膨張させ、乗員の膝部が前方へ動くことを拘束して同膝部を保護する装置である。この膝保護用エアバッグ装置でも、上記サイドエアバッグ装置10と同様の略円柱状(シリンダ状)のインフレータが用いられる。
・図10に示すように、リテーナ22として、その下端がガス噴出部18の上端よりも高い箇所に位置していて、ガス噴出部18を覆っていないものが用いられてもよい。ボルト24は、リテーナ22及びインフレータ17のそれぞれに設けられてもよい。この場合には、ガス噴出部18から径方向外方へ噴出された膨張用ガス及び残渣のそれぞれの一部は、リテーナ22を通過することなく、耐熱補強部材40に当たる。膨張用ガス及び残渣のそれぞれの熱が本体布部31に伝わることは、基板部41によって抑制される。
・耐熱補強部材40が上記第1実施形態とは異なる態様で取り付けられてもよい。
(a)図8及び図9に示すように、本体布部31の内部に袋部35が設けられ、その中に耐熱補強部材40が収容されてもよい。
同図8及び図9では、本体布部31に対し、その内側から布片36が重ねられた状態で配置され、その布片36の周縁部が結合部37によって本体布部31に結合されている。布片36としては、例えば、本体布部31と同様の素材によって形成されたものが用いられている。結合部37は、縫糸で縫合することによって形成されているが、他の手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。これらの本体布部31、布片36及び結合部37によって袋部35が構成されている。そして、本体布部31と布片36との間であって、結合部37によって囲まれた空間に耐熱補強部材40が収容されることにより、同耐熱補強部材40が位置決めされた状態で本体布部31に取り付けられている。
さらに、上記図8及び図9に示すように、袋部35に収容された耐熱補強部材40がボルト24によってサイドフレーム部13に取り付けられてもよい。この場合、一方(下方)のボルト24が、布片36、耐熱補強部材40、本体布部31及びサイドフレーム部13に挿通され、そのボルト24にナット25が締め付けられることにより、上記の取り付けがなされてもよい。
なお、図8及び図9とは異なり、ボルト24が耐熱補強部材40に挿通されずに、同耐熱補強部材40が袋部35に収容されることのみによって本体布部31に取り付けられてもよい。
(b)図11に示すように、下側のボルト24の下方近傍において、本体布部31と発生器本体16との間に耐熱補強部材40が配置されてもよい。この場合、本体布部31及びサイドフレーム部13に挿通されたボルト24にナット25が締め付けられる。この締め付けに伴い、耐熱補強部材40が発生器本体16によって、本体布部31を介してサイドフレーム部13に押し付けられる。この押し付けにより、耐熱補強部材40が本体布部31を介してサイドフレーム部13に取り付けられる。ボルト24は耐熱補強部材40に挿通されない。耐熱補強部材40は、発生器本体16と、本体布部31及びサイドフレーム部13との間で挟み込まれるのみである。
該当する場面としては、上記図11に示すように、ガス噴出部18がリテーナ22によって囲まれている場合と、図示しないが、囲まれていない場合とがある。
前者の場合には、耐熱補強部材40はリテーナ22によって本体布部31を介してサイドフレーム部13に押し付けられて、同サイドフレーム部13に取り付けられる。
後者の場合には、インフレータ17にボルト24が固定されている(図10参照)。本体布部31及びサイドフレーム部13に挿通されたボルト24にナット25が締め付けられることにより、耐熱補強部材40がインフレータ17によって本体布部31を介してサイドフレーム部13に押し付けられて、同サイドフレーム部13に取り付けられる。
<第2実施形態に関する事項>
・耐熱補強部材60は、運転席用エアバッグ装置50に限らず、助手席用エアバッグ装置にも適用可能である。
助手席用エアバッグ装置は、インストルメントパネルのうち助手席の前方部分に組込まれ、前突等により車両に対し前方から衝撃が加わったことが検出された場合、又は衝撃が加わることが予測される場合にエアバッグを助手席の前方で展開及び膨張させて、助手席の乗員を衝撃から保護する装置である。この助手席用エアバッグ装置でも、運転席用エアバッグ装置50と同様の略円盤状(ディスク状)のインフレータが用いられる。
<第1〜第3実施形態に共通する事項>
・耐熱補強部材は、同耐熱補強部材が用いられない場合に、エアバッグの構成部材のうち膨張用ガス及び残渣が接触する部分と、ガス噴出部との間に配置されることが必要である。エアバッグの構成部材のうち、膨張用ガス及び残渣が接触しない部分とガス噴出部との間には、耐熱補強部材が配置されてもよいし、配置されなくてもよい。
例えば、第1実施形態を例に取ると、耐熱補強部材40は発生器本体16の周方向の一部のみを取り囲む態様で配置されてもよいし、これとは異なり、発生器本体16の全周を取り囲む態様で配置されてもよい。
また、耐熱補強部材40として、第1実施形態よりも上下方向に短いものが用いられてもよい。ただし、図3(a)における耐熱補強部材40の上端は、ガス噴出部18及び下側のボルト24よりも高所に設定されることが好ましい。これは、本体布部31のうち、ガス噴出部18の周辺部分に膨張用ガス及び残渣の熱を伝わりにくくするとともに、耐熱補強部材40を本体布部31に係止するためである。例えば、耐熱補強部材40の上端は、両ボルト24の間に設定されてもよい。
また、第3実施形態を例に取ると、耐熱補強部材90は、インフレータ71の周方向の一部のみを取り囲む態様で配置されてもよい。
・突起部42,62は、円柱状とは異なる柱状、例えば、角柱状、楕円柱状等に形成されてもよい。
・突起部42,62が基板部41,61と異なる材料によって形成されてもよい。この場合、突起部42,62と基板部41,61とが別々に形成され、その後に両者が連結されてもよい。
・耐熱補強部材が、基板部と、突起部として、基板部のガス噴出部側の面に植えられ、かつ非金属材料により形成された繊維とによって構成されてもよい。非金属材料としては、例えば、セラミックスが挙げられる。
図12(a),(b)には、上記変形例の耐熱補強部材がサイドエアバッグ装置10に適用された例が図示されている。この耐熱補強部材40は、基板部41と、セラミックスによって形成され、かつ基板部41のガス噴出部18側の面から突出する繊維91とによって構成されている。基板部41のガス噴出部18側の面からの各繊維91の突出高さH1は、0.5mm〜5.0mmであることが好ましい。また、基板部41としては、第1実施形態と同様、0.5mmの厚みT1を有するものが用いられてもよいが、厚みT1はこの値に限定されるものではない。
上記の変形例では、残渣を伴った膨張用ガスが耐熱補強部材40に当たって、基板部41の面に沿う方向へ流れようとすると、その途中で残渣が繊維91に当たって捕捉される。捕捉される分、耐熱補強部材40を通過して、本体布部31に到達する残渣が少なくなる。
また、基板部41に繊維91が植えられることで、植えられない場合よりも、耐熱補強部材40におけるガス噴出部18側の面の表面積が増加する。
さらに、繊維91が非金属材料であるセラミックスによって形成されることで、金属材料によって形成された場合に比べ、熱が繊維91によって吸収及び放出されにくく、膨張用ガスの温度が低下しにくい。表現を変えると、膨張用ガスの温度低下を抑制しつつ、残渣の捕捉量を多くすることが可能となる。
従って、上記変形例によっても第1実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
なお、突起部が繊維によって構成される上記耐熱補強部材は、図示しないが、第2及び第3実施形態においても適用可能である。
・耐熱補強部材における凹凸部は、基板部のガス噴出部側の面に設けられ、かつ同ガス噴出部から遠ざかる側へ凹む凹部によって構成されてもよい。
図13には、上記変形例の耐熱補強部材がサイドエアバッグ装置10に適用された例が図示されている。基板部41のガス噴出部18側(図13の右側)の面には、複数の凹部92が形成されている。これらの凹部92は、縦横に互いに離間した状態で規則的に配列されることが好ましい。基板部41のガス噴出部18側の面からの各凹部92の深さD1は、0.5mm〜5mmであることが好ましい。
上記の変形例では、図13において矢印で示すように、残渣を伴った膨張用ガスGが耐熱補強部材40に当たって、基板部41のガス噴出部18側の面に沿う方向へ流れようとすると、その途中で残渣が凹部92の壁面に当たって捕捉される。捕捉される分、耐熱補強部材40を通過して、本体布部31に到達する残渣が少なくなる。
また、凹部92が設けられることで、設けられない場合よりも、耐熱補強部材40におけるガス噴出部18側の面の表面積、すなわち残渣を捕捉し得る面が増加する。
・複数の部材によって構成されるエアバッグでは、それらの部材のうち、耐熱補強部材が用いられない場合に、膨張用ガス及び残渣が接触する部材の1又は複数が補強対象部材とされ、この補強対象部材とガス噴出部との間に耐熱補強部材が配置されてもよい。
・耐熱補強部材は、上述したサイドエアバッグ装置、膝保護用エアバッグ装置、運転席用エアバッグ装置、助手席用エアバッグ装置及びカーテンエアバッグ装置とは異なる形態のエアバッグ装置に用いられてもよい。
・上記耐熱補強部材は、自家用車に限らず各種産業車両に装備されるエアバッグ装置にも適用可能である。
また、上記耐熱補強部材は、車両以外の乗物、例えば航空機、船舶等に装備されて、乗員を衝撃から保護するエアバッグ装置にも適用可能である。
・上記各種耐熱補強部材は、高温の膨張用ガスが残渣を伴って噴出されるパイロタイプのガス発生器が用いられたエアバッグ装置に適用されると、特に大きな効果が得られる。しかし、上記耐熱補強部材は、ハイブリッドタイプのガス発生器が用いられたエアバッグ装置に適用されてもよい。
15…ガス発生器、18,55,72…ガス噴出部、30,57,75…エアバッグ、40,60,90…耐熱補強部材、41,61…基板部、42,62…突起部、52,71…インフレータ(ガス発生器)、91…繊維、92…凹部、G…膨張用ガス。

Claims (8)

  1. ガス発生器のガス噴出部と、前記ガス噴出部から噴出される膨張用ガスにより展開及び膨張するエアバッグとの間に配置される部材であり、同部材が用いられない場合に、前記エアバッグのうち、少なくとも前記膨張用ガス及び残渣が接触する部分の耐熱性を補強するエアバッグ用耐熱補強部材であって、
    ゴム材料により板状に形成された基板部と、
    前記基板部の前記ガス噴出部側に設けられた凹凸部と
    を備え、
    前記凹凸部が設けられない場合よりも、前記ガス噴出部側の面の表面積が増加されているエアバッグ用耐熱補強部材。
  2. 前記凹凸部は、前記基板部の前記ガス噴出部側の面から突出する複数の突起部を備えている請求項1に記載のエアバッグ用耐熱補強部材。
  3. 前記突起部は柱状に形成されている請求項2に記載のエアバッグ用耐熱補強部材。
  4. 前記突起部は非金属材料により形成されている請求項3に記載のエアバッグ用耐熱補強部材。
  5. 前記非金属材料は、前記基板部と同一種類のゴム材料である請求項4に記載のエアバッグ用耐熱補強部材。
  6. 前記突起部は、前記基板部に植えられ、かつ非金属材料により形成された繊維により構成されている請求項2に記載のエアバッグ用耐熱補強部材。
  7. 前記凹凸部は、前記基板部の前記ガス噴出部側の面に設けられ、かつ前記ガス噴出部から遠ざかる側へ凹む凹部を備えている請求項1に記載のエアバッグ用耐熱補強部材。
  8. 前記ゴム材料はEPDMである請求項1〜7のいずれか1項に記載のエアバッグ用耐熱補強部材。
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Citations (3)

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JP2007216755A (ja) * 2006-02-15 2007-08-30 Nippon Plast Co Ltd エアバッグ
JP2017065507A (ja) * 2015-09-30 2017-04-06 豊田合成株式会社 エアバッグ
JP2018172103A (ja) * 2017-03-31 2018-11-08 豊田合成株式会社 エアバッグ用耐熱補強布

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