実施形態に係る車両データ収集システムを、図1から図7を参照して説明する。
図1に示すように、実施形態に係る車両データ収集システムは、車載器1及びサーバ2を含む。図1では、車載器1は説明の便宜上一つのみ図示されているが、車載器1は多数の車両に夫々車載されており、複数の車載器1及びサーバ2が、無線通信によるネットワークに収容されている。
図1において、各車両に搭載される車載器1は、データ受信部101、データ収集判定部102、通信部103及び記憶部104を備えて構成されている。
データ受信部101は、各種の走行データ、各種の車両情報等を含む車両データを受信すると共に該受信した車両データを記憶部104に一時的に記憶するように構成されている。記憶部104は、データ受信部101で受信された車両データを常時保存し、その容量が一杯になった場合には、データ収集判定部102から後述の如き制御指示が特に無ければ、例えば古い車両データから上書きするように構成されている。なお、本実施形態では、車両データのデータ受信部101による「受信」及びその記憶部104への「記憶」に係る動作或いは処理を、車両データの「取得」と呼ぶ。
ここに「走行データ」は、例えば、車両に搭載された各種センサや各種部位等で発生、検知、取得、算出等される、速度、加速度、走行距離、高度等の当該車両の走行に係るデータである。
他方「車両情報」は、例えば、識別情報と車両状態情報とを含んでなる。「識別情報」は、例えば各車両或いは各ドライバに固有の車両識別情報或いはドライバ識別情報などの、当該車両を識別する情報である。「車両状態情報」は、例えば車両の各種センサや各種部位の動作状態(即ち、正常動作しているか或いは異常若しくは故障か否か)を示す情報、車載ストレージの空き状態(即ち、書込みの可否)を示す情報、都市部や郊外や特定エリア内に位置するか否か或いは高速道路上か一般道路上か更にはGPSによる緯度経路を示す現在位置情報、現在の時刻や昼夜を示す情報、現在の天候や季節或いは温度や湿度を示す情報などの、車両自身の現在の状態や車両が現在置かれている状態等(以下適宜「車両状態」と称する)を示す情報である。
データ収集判定部102は、実施形態に係る「制御部」の一例として構成されており、記憶部104から現在の車両データを参照し、特定のデータ取得タイミングを判断する。データ収集判定部102は、記憶部104の記憶領域中の取得対象データ(例えば、当該取得対象データをなす車両データの前後X秒間の車両データ)が消去されないように保護又は保存する。このように、データ収集判定部102は、データ受信部101を経て記憶部104に記憶された車両データを特定のデータ取得タイミングで取得或いは収集するか否かを、通信部103から渡されるデータ収集条件に従って判定するように構成されている。より具体的には、データ収集判定部102は、データ収集要件書に従ってサーバ2側でデータ収集が行われるように、データ受信部101で車両データを受信するか否か或いは記録部104に一時記憶された車両データを廃棄するか若しくは通信部103に渡すか否かを制御したり、通信部103で車両データを随時に送信するか若しくは一時保存した後に送信するか又はサーバ2側からの指示待ちとするか若しくは一時保存後に破棄するか否かなど、通信部103における送信や一時記録を制御する。
通信部103は、サーバ2側から当該車両に対して選択された1種類の要件書を、ネットワークを介して受信可能であると共に、受信された要件書により示されるデータ収集要件をデータ収集条件としてデータ収集判定部102に渡し、更に記憶部104に一時的に記憶された車両データを、データ収集条件に従って適宜に或いは選択的にサーバ2側へ送信する(より具体的には随時に送信する又は一時保存した後に送信若しくは破棄する)ように構成されている。
サーバ2は、DB(データベース)200と、走行データを受信する走行データ受信部201と、車両情報を受信する車両情報受信部202と、複数カテゴリ別の複数の要件書データ203aの中から要件書を自動選択する要件書自動選択部203とを備えて構成されている。
走行データ受信部201は、車載器1側にある通信部103からネットワークを介して送信された車両データのうち走行データを受信し、該受信された走行データをDB200に適宜格納すると共にそのうち要件書の自動選択に必要なデータ部分を、要件書自動選択部203に適宜渡すように構成されている。車両情報受信部202は、車載器1側にある通信部103からネットワークを介して送信された車両データのうち車両情報(即ち、車両識別情報や車両状態情報)を受信し、該受信された車両情報をDB200に適宜格納すると共に、そのうち要件書の自動選択に必要なデータ部分を要件書自動選択部203に適宜渡すように構成されている。
要件書自動選択部203は、実施形態に係る「条件設定部」の一例として構成されており、車両情報(即ち、車両識別情報や車両状態情報)に基づいて、予め想定される各種の車両或いは各種の車両状況に対して或いは予め実績データとしての収集された車両データの分布や偏りからして各種の車両に対して或いは各種の車両状況に対して効率的なデータ収集がなされることが想定されている、予め用意された複数カテゴリ(即ち、カテゴリ1〜カテゴリN)別の複数の要件書データ203aの中から、当該車両情報で示される固有の車両及び固有の車両状態に対応する一種類の要件書を自動的に選択するように構成されている。ここに要件書203aのカテゴリによる分類としては、例えば、位置別或いは地域別、故障のモード或いは故障の種類別、目的地別等の車両状態の別を軸に対して、車両データの各値をもとに振り分けるなどがある。
次に図2から図6を参照しながら、以上のように構成された車載器1及びサーバ2の構成及び機能について更に詳述する。
図2に示すように、要件書自動選択部203が自動選択する「データ収集要件書」の一例では、予め設定された複数種類のトリガ条件別に、トリガID(即ち、0×01〜0×06)、取得On/Off、送信On/Off、アップロードタイミング(即ち、随時、一時保存又はセンター指示待ち)、データパターンID、及びしきい値(即ち、各トリガ条件が成立する場合における、トリガ条件に対応する車両データ値がトリガ発火となる際のしきい値)が配列されたテーブルとして構成されている。更に特定地点なるトリガ条件に関する欄については、そのしきい値は図中右端寄りに例示されているように、位置#別の(即ち、#=0000〜0800別の)緯度及び経度からなる取得位置リストが付属される形で構成されている。
データ収集要件書を構成する「トリガ条件」は、例えば、「急減速」、「急加速」、「ニアミスシーン」、「白線未検出」、「雨」、「特定地点」或いは「特定エリア内」、更に「システムエラー検知」、「車載器内における伝送エラー検知」、「車載器内での部位におけるエラー検知」、「車両に設けられた各センサにおけるエラー検知」などの、特定の車両状態に対応する条件である。
具体的には、トリガ条件=「急減速」では、使用する車両データが加速度センサのセンサデータであり且つ該データの値が、しきい値=0.6[G]を上回る場合に相当し、トリガ条件=「急加速」では、使用する車両データが加速度センサのセンサデータであり且つ該データの値が、しきい値=−0.6[G]を下回る場合に相当する。トリガ条件=「ニアミスシーン」では、車両データが障害物接近データであり且つ該データの値が、しきい値=2[TTC]を下回る(即ち、より接近した)場合に相当し、トリガ条件=「白線未検出」では、車両データが白線検出データであり且つ該データの値が、しきい値=30%を下回る(即ち、より検出できない)場合に相当する。トリガ条件「雨」では、車両データが降雨データであり且つ該データの値が、しきい値=90を上回る(即ち、より雨が多い)場合に相当する。トリガ条件=「特定地点」では、車両データは、GPS等による緯度・経度データであり、しきい値=取得位置リストに含まれる各経度・緯度(例えば、北緯34.1度、東経135.4度)に一致或いはその地点の周囲所定距離内まで接近した場合に相当する。
データ収集要件書を構成する「データパターンID」は、トリガ条件が成立した場合に、カメラ画像やドライバ関連データの有無など如何なるデータを収集するかも予めパターン化し、ある程度指定可能であることから、トリガ条件に依存して予め決められたデータパターンを示すIDである。データパターンIDは、取得のオンオフや送信のオンオフとは異なり、トリガ条件が同じであれば変更されることはない。言い換えれば、車載器1上で所定種類の車両データの取得がパターン化され、そのパターンIDとしてID化されたのが、データパターンIDということになる。
例えば、データパターンID1は、CAN(Control Area Network)信号等の車両情報、車載カメラAの映像情報及び車載カメラBの映像情報を所定期間X1秒間だけアップロードするパターンを示す。また例えば、データパターンID2は、CAN信号等の車両情報及び車載カメラAの低画質の映像情報を所定期間X2秒間だけアップロードするパターンを示し、データパターンID3は、CAN信号等の車両情報及び車載カメラAの高画質の映像情報を所定期間X2秒間だけアップロードするパターンを示す。
このようなトリガ条件のしきい値を与えるところの本実施形態に係る「車両データ」は、より一般には、前述のように「走行データ」及び「車両情報」を含み、例えば、(1)各車両に固有の車両識別情報或いはドライバに固有のドライバ識別情報を示す車両データ、(2)センサの動作状態(即ち、故障か異常か正常か等)、車載ストレージの空き状態(即ち、書込みの可否)、都市部や郊外或いは高速道路上か一般道路上か等の現在位置、天候や季節或いは日時や昼夜などの車両自身の現在の状態、車両が現在置かれている状態等(即ち車両状態)に係る車両データ、(3)特定のトリガ条件が成立した旨のデータ、該トリガ条件が成立した際に或いは該トリガ条件が成立するのに相前後して各車両にて発生、取得、検知等される各種CANデータ、速度や加速度或いは走行距離センサによる各種走行データ、各種位置データ、各種時刻データ、車載カメラによる低画質や高画質の各種映像データ、天候データ、或いは各種センサデータなどの、特定のトリガ条件が成立した車両に係る車両データなど、広範な車両データを含んでよい。より一般的に言えば、特定のトリガ条件に関連付けられる可能性のある、或いはディープマイニング可能なビッグデータの一部を成し得るような当該車両に係る任意の車両データを含んでよい。更に、いずれの場合も、トリガ条件成立の際における車両データを構成するデータとして、 “データパターンID”で種類や単位等が規定されるデータは、トリガ条件別に車載器1側からサーバ2側へ適宜送信されることになる。
例えば、ある車両に対して選択された要件書におけるトリガ条件が成立する場合に関し、データ収集量が十分でない、他のトリガ条件が成立する場合或いは他の車両と比較してデータ収集量が相対的に少ないと分析された「急減速」なるトリガ条件に対しては、そのデータ収集が優先的に行われるように、取得がオン(On)とされ、送信もオン(On)とされ、アップロードタイミングも随時(言い換えれば、一時保存することのなく即時にアップロードされるもの)とされている。例えば、当該車両或いはそのドライバの場合には、運転がマイルドで、加減速の幅が小さいことから、優先的にデータ取得がオンとされたものなどと考えらえる。これは、運転が荒い車両或いはドライバよりも、運転がマイルドな当該車両或いはそのドライバが急減速をする場面程、危険な場面に遭遇したと判断できるので、そのように危険な場面のデータ収集を優先させる趣旨となる。
また例えば、「急減速」なるトリガ条件に対して取得をオンとしつつ、他の一又は複数のトリガ条件に対する取得をオフにすることで、収集が望ましい当該急減速なるトリガ条件の車両データを優先的に収集できる。なお、「急減速」なるトリガ条件に対して、データパターンID“1”が付与されており、例えば、急減速なるトリガ条件が成立した場合には、データパターンID1に従って、CAN信号等の車両情報、車載カメラAの映像情報及び車載カメラBの映像情報を所定期間X1秒間だけアップロードされる。
これに対し例えば、ある車両に対して選択された要件書におけるトリガ条件が成立する場合に関し、データ収集量が十分である、他のトリガ条件が成立する場合或いは他の車両と比較してデータ収集量が相対的に多いと分析された「ニアミスシーン」なるトリガ条件に対しては、そのデータ収集が優先的に行われることがないように(即ち、他のデータ収集が優先的に行われるように)、取得がオフ(Off)とされ、送信はオン(On)とされつつもアップロードタイミングは一時保存(言い換えれば、即時でなく一定期間保持した後に、アップロード又は廃棄するもの)とされている。例えば、ニアミスシーンが多い車両或いはそのドライバの場合、基本的にニアミスシーンが頻繁に行われるので、優先的にそのようなシーンのデータ取得がオフされたものなどと考えられる。
更に、ある車両に対して選択された要件書におけるトリガ条件が成立する場合に関し、データ収集量が十分である、他のトリガ条件が成立する場合或いは他の車両と比較してデータ収集量が相対的に少ないと分析された「雨」なるトリガ条件に対しては、そのデータ収集が相応に優先的に行われるように、取得がオン(On)とされつつも、送信はオフ(Off)とされ、アップロードタイミングはセンター指示(即ち、サーバ2側から送信する旨の指示があるまで、記憶部104で一時保持し続ける旨の指示)とされている。
このように本実施形態において、トリガ条件の一つとして、「取得」が「オン(On)」にされるとは、対応する車両データのデータ受信部101(図1参照)による取得をオンにするという意味である。即ち、取得がオンにされていると、当該トリガ条件の成立の際に或いは当該トリガ条件の成立に相前後して発生等される車両データが、データ受信部101により取得されることになる。逆に、「取得」が「オフ(Off)」にされるとは、対応する車両データのデータ受信部101(図1参照)による取得をオフにするという意味である。即ち、取得がオフにされていると、当該トリガ条件の成立の際に或いは当該トリガ条件の成立に相前後して発生等される車両データは、データ受信部101により取得されない(破棄される)ことになる。これは、車両データが記憶部104に一時記憶された後における破棄により実行されてもよいし、対応するセンサがオフにされることで実行されてもよい。このように、当該取得が「オフ」の場合には、データ収集のためのデータ受信部101に関連する資源や時間などは、当該データのデータ収集に費やされることはなくなり、他の優先されるべきデータ収集に費やされることになる。
また、トリガ条件の他の一つとして、「送信」が「オン(On)」にされるとは、対応する車両データの送信をオンにするという意味である。送信がオンにされると、データ送信部108(図1参照)からのデータ送信が行われることになる。逆に、「送信」が「オフ(Off)」にされるとは、対応する車両データの送信をオフにするという意味である。例えば、サーバ2側に関して一時的な通信用制限(例えば、XGB/日)に達した場合や、各車載器1及びサーバ2間における通信負荷が集中していて当該車載器1側からサーバ2側へアップロードできる状態ではない場合などに、送信がOffに設定されつつ、その期間内における車両データを取りこぼすことのないように取得はOnに設定される。このように、当該送信が「オフ」の場合には、データ取得や送受信のための諸動作や諸処理更にそれに関連する資源や時間などは、当該収集する価値のない車両データのために費やされることはなくなり、他の優先されるべき車両データのために費やされることになる。
更にまた、「アップロードタイミング」が「随時」にされるとは、対応する車両データの通信部103からの送信を随時に行うという意味であり、逆に、「アップロードタイミング」が「一時保存」にされるとは、対応する車両データの通信部103からの送信を一時保存してから適宜に行うという意味である。加えて、「アップロードタイミング」が「センター指示」にされるとは、サーバ2側からの送信指示又は不送信指示等に応じて適宜に通信部103からの送信を行うという意味である。よって、送信する優先度は、「随時」、「一時保存」、「センター指示」の順に高いことになる。これらの結果、データ収集のための通信部103に関連する資源や時間などは、当該データのデータ収集に費やされることは少なくなり、他の優先されるべきデータ収集により多く費やされることになる。
以上のように構成された複数カテゴリ別の複数の要件書は、要件書自動選択部203により、当該車両別の車両情報に対応する或いは相応しい一種が選択されることになる。更に、ここで選択された一種は、当該車両におけるデータ収集判定部102に渡されて、該取得された一種の要件書に従ってのデータ収集条件で以降のデータ収集が行われることになる。
次に、図3に例示するデータ収集条件要件書において、点線で囲んだ取得On/Offの列、及び送信On/Offの列は、例えば、要件書自動選択部203において、対応するデータを発生させるセンサや部位に“故障”或いは“異常”があるものと車両情報から認められる場合には、該“故障”或いは“異常”が認められるセンサや部位で取得或いは発生等された車両データについては、対応する欄がOffとされた一種が、要件書自動選択部203により自動選択される。よって、 “故障”或いは“異常”が認められるセンサや部位で取得或いは発生等された、収集するに値しない車両データについては、車載器1にある段階で、取得や送信されることなく破棄される。
例えば、車両が現在位置する一の地点におけるトリガ条に対応する車両データが、サーバ2側でDB200に既に大量に蓄積されている場合、当該一の地点に対応するデータ収集条件については、点線で囲んだ取得On/Offの列がOffにされている要件書が、要件書自動選択部203により選択される。また例えば、記憶部104等の車載ストレージが取得済のデータでその容量一杯まで満たされている等のため、書き込み不可の場合、データ収集条件については、点線で囲んだ取得On/Offの列がOffにされている要件書が、要件書自動選択部203により選択される。
このように、車両状態に応じて取得のOn/Off或いは送信のOn/Off等が切り替えられることで、車載器1側からサーバ2側への収集に値しない車両データの無駄な送信や、サーバ2における収集に値しない車両データの破棄作業をしないで済み、価値ある車両データを、サーバ2側で効率よく収集可能となる。
次に、図4に例示するデータ収集条件要件書において、点線で囲んだしきい値の列は、当該トリガ条件において収集される各項目の車両データのデータ収集量が、理想的なデータ量に比して相対的に多ければ(即ち、過大或いは余剰であれば)、要件書自動選択部203により、しきい値が、トリガ条件がより成立し難い側に異なる要件書を自動選択する。逆に、当該トリガ条件において収集される各項目の車両データのデータ収集量が、理想的なデータ量に比して相対的に少なければ(即ち、不足していれば)、要件書自動選択部203により、しきい値が、トリガ条件がより成立し易い側に異なる要件書を自動選択する。
例えば、交通量の多い都市部に現在位置する車両に対しては、「急減速」或いは「急加速」なるトリガ条件が成立し易く、その場合における車両データが大量に集まり易いので、点線で囲んだしきい値の列は、要件書自動選択部203により、しきい値が、当該トリガ条件がより成立し難い側(言い換えれば、より厳しい側)に異なる要件書が自動選択される。また例えば、白線のかすれが多い或いは未整備の道路が多いエリア内に現在位置する車両に対しては、「白線未検出」なるトリガ条件が成立し易いので、点線で囲んだしきい値の列については、要件書自動選択部203により、しきい値が、当該トリガ条件がより成立し難い側に異なる要件書が自動選択され、逆に、整備された道路が多いエリア内に現在位置する車両に対しては、トリガ条件の「白線未検出」が成立し難いので、点線で囲んだしきい値の列については、要件書自動選択部203により、しきい値が、当該トリガ条件がより成立し易い側に異なる要件書が自動選択される。
このように、トリガ条件の成否を決定するしきい値を異ならしめることで、車載器1側からサーバ2側への収集に値しない車両データの無駄な送信や、サーバ2における収集に値しない車両データの破棄作業をしないで済み、価値ある車両データを、サーバ側で効率よく収集可能となる。
次に、図5及び図6に夫々例示する位置情報リストは、データ収集要件書における「特定地点」なるトリガ条件の「しきい値」を構成する取得位置リスト(図2参照)に夫々相当するものであり、ここでは、車両別且つエリア別の位置情報リストとして構築されている。
図5において、より具体的には、固有の車両識別情報が付与された車両Aに関する位置情報リストが、東京都内について規定されている。例えば、各取得位置#は、東京都内で、事故の多い交差点などに割り当てられた識別番号であり、各位置が緯度・経度(例えば、北緯35.1度、東経139.4度)により特定されている。この際、車両Aは、車両情報の一つであるその現在位置に基づいて、要件書自動選択部203で選択され車両Aの周辺エリア或いは行き先をカバーする必要最低限の取得位置リスト(即ち、ここでは東京都のみに係る取得位置リスト)を、要件書で示されるデータ取得条件に従って車載器1側で適時に保持すればよい。即ち、広範囲エリアについての取得位置リストや他の車両(例えば、車両B)が位置するエリアについての取得位置リスト(例えば、図6の位置情報リスト)を、車両A側で保持しておく必要はなくなり、そこでの記憶や管理に係るハードウエア的な及びソフトウエア的な負担が大きく軽減される。
図6において、より具体的には、固有の車両識別情報が付与された車両Bに関する位置情報リストが、大阪府内について規定されている。例えば、各取得位置#は、大阪府内で、事故の多い交差点などに割り当てられた識別番号であり、各位置が緯度・経度(例えば、北緯34.1度、東経135.4度)により特定されている。この際、車両Bは、車両情報の一つであるその現在位置に基づいて、要件書自動選択部203で選択され車両Bの周辺エリア或いは行き先をカバーする必要最低限の取得位置リスト(即ち、ここでは大阪府のみに係る取得位置リスト)を、要件書で示されるデータ取得条件に従って車載器1側で適時に保持すればよい。即ち、広範囲エリアについての取得位置リストや他の車両(例えば、車両A)が位置するエリアについての取得位置リスト(例えば、図5の位置情報リスト)を、車両B側で保持しておく必要はなくなり、そこでの記憶や管理に係るハードウエア的な及びソフトウエア的な負担が大きく軽減される。
図5及び図6の位置情報リストに夫々示された如き特定地点(取得位置#0000〜0800)を、トリガ条件とする要件書が、サーバ2側で要件書自動選択部203により自動選択されれば、これを受けて車載器1側では、データ収集判定部102による制御下で、各取得位置で取得された車両データが、データパターンIDの形式及び単位で送受信され、有効性の高い車両データとして、データベーDB200データベースに蓄積される。更に、その後におけるデータ解析、特にビックデータ解析やデータマイニングに、有効性の高い車両データとして効率良く活用されることが可能となる。
次に、以上のように構成された実施形態の構成及び機能について、図7のフローチャートを参照しながら更に詳述する。
図7において先ず、車載器1側において、ドライバ操作によりIG_ON(イグニション_オン)状態に遷移すると(ステップS101)、これを検知したデータ収集判定部102(図1参照)は、従前にサーバ2側からネットワークを介して受信済であるか或いはデフォールトである既存の要件書を取得する(ステップS102)。
続いて、車両側では、データ収集判定部102によって、サーバ接続が可能であるか否かを判定する(ステップS102a)。
ステップS102aでの判定においてサーバ接続が可能であれば(ステップS102a:Yes)、データ収集判定部102は、ネットワークを介して要件書の取得をサーバ2側に要求すると共に車両情報を含む車両データをサーバ2側に送信し、これを受けて、サーバ2側では、要件書自動選択部203によって、受信された車両情報に基づいて、要件書の自動選択を実行する(ステップS103)。言い換えれば、要件書自動選択部203は、車両データに含まれる車両情報の内容を考慮して、車両毎に適切な要件書を選択する。ここに「適切な要件書」とは、例えば、車両毎に或いはドライバ毎に収集された車両データを元に、当該車両で収集すべきと判断した車両データに対し積極的に収集オン(即ち、取得オン、送信オンなど)とし、逆に当該車両で収集すべきでないと判断した車両データに対し収集オフ(即ち、取得オフ、送信オフなど)とするなどの要件書である。
車載器1側では、このように自動選択され送信された要件書を通信部103で受信し、該受信された要件書でデータ取得条件或いはデータ収集条件を更新する(ステップS104)。これらのステップS103及びS104の処理を経た後、実際に車両データを収集する処理(ステップS105)へ進む。なお、この場合に取得される要件書は、例えば図2から図4に例示した如きであり、固有の車両や車両状態、更には車両が置かれた環境或いは時期の相違に依存して基本的に内容が異なる。
他方、ステップS102aでの判定においてサーバ接続が不可能であれば(ステップS102a:No)、これらのステップS103及びS104の処理を経ることなく、実際に車両データを収集する処理(ステップS105)へ進む。この場合、車載器1に組み込まれたデフォールトの要件書に沿ってデータ取得条件を更新してもよいし、車載器1に残されていた直近にサーバ2側から取得した従前の要件書に沿ってデータ取得条件を更新してもよい。なお、この場合に用いられる要件書は、例えば図2から図4に例示した如きであり、やはり固有の車両や車両状態、更には車両が置かれた環境或いは時期の相違に依存して基本的に内容が異なる。
次にステップS105の処理では先ず、データ収集判定部102によって、トリガ発火が検出され、即ちトリガ条件の成立が検出され(ステップS106)、該検出されたトリガ発火に対応する車両データのデータ受信部101によるデータ取得及び通信部103による一時保存等が実行される(ステップS107)。
図7において、続いて、データ収集判定部102による制御下で、通信部103は要件書にあるデータ収集条件に従って、当該車載器1に内包されたトリガ条件に係る車両データの収集ロジック或いは送信ロジックにおけるオンオフ等を切り替えることで、最終的には該取得された車両データを適宜に適切な項目及び分量だけ、ネットワークを介してサーバ2側へ送信する(ステップS108)。サーバ2側では、DB(データベース)200に、車載器1側から送信され走行データ受信部201や車両情報受信部202で受信された車両データを蓄積する(ステップS109)。
ここで車両データの送受信では、各種センサの情報(例えば、カメラ画像、ミリ波、CAN信号に係る情報など)を、収集すべき車両データの一部として、パッケージング(即ち、送信を容易とするように圧縮集約)して、一時的に記憶部104に保存した後に選択的に送受信する。この際、記憶部104に一時的に保存される車両データは、トリガ発火の際に検出される車両データの他、トリガ発火に相前後して検出される車両データを含んでよい。
なお、記憶部104に一時的に保存する理由は、データ収集時に外部に(具体的には、ネットワークを介してサーバ2に)通信可能な状態にある保証がないから、及びデータ送信にも処理リソースが必要であり、車載器1が構築されている車両のECU(Engine Control Unit)上で、制御にかかわる優先的な他の処理が動作している可能性があるからである。
更に、送信部103からの送信のタイミングは、上述の記憶部104への保存処理の一連の流れとしてではなく、ネットワークを介しての通信状態や当該車両のECU全体の処理リソースの空き状況などを監視した上での、送信に適切なタイミングとされる。よって、一度の送信処理で、複数のデータ送信を行うこともあり得る。言い換えれば、適切なタイミングまで待った後に、単独で又は纏めてデータ送信が行われる。
図7において、続いて破線で囲まれたステップ105の処理が、ステップS106のトリガ発火が起こる毎に繰り返し実行され、最終的には、車両側において、ドライバ操作によりIG_OFF(イグニション_オフ)状態に遷移し(ステップS110)、一連の処理が終了する。なお、以上説明した本実施形態では、データ受信部101及び通信部103(図1参照)が、本実施形態に係る「車両データの発生から収集までを少なくとも部分的に掌る部位」に相当する。また、本実施形態に係る「条件設定部」の一例が、要件書自動選択部203から構成されており、本実施形態に係る「制御部」の一例が、データ収集判定部102から構成されている。
以上に説明した実施形態から導き出される発明の態様を以下に説明する。
本発明の一態様に係る車両データ収集システムは、車両が予め設定された車両状況になった場合に、該車両状況に係る車両データを収集するための車両データ収集システムであって、前記車両の各々について車両別に、前記車両データに含まれる一部データにより示される車両状態に基づいて、前記車両データに対する所望の収集条件を設定する条件設定部と、前記車両別に設定された所望の収集条件で、前記車両の各々から前記車両データが収集されるように、前記車両の各々及び当該車両データ収集システムにおける、前記車両データの発生から収集までを少なくとも部分的に掌る部位を制御する制御部とを備える。
この態様によれば、条件設定部では、車両側から渡される車両状態に基づいて、車両データに対する所望の収集条件を設定する。これを受けて、制御部では、例えば、車両において、優先的に特定項目又は優先的に特定項目且つ特定車両に係る車両データを取得するか否かの制御や、該車両データをサーバ側へ送信するか否かの制御や、該車両データのサーバ側へのアップロードを随時行うか又は一時保存した後に適宜行うかの制御等を、各車両において実行する。すると、車両毎に、設定された所望の収集条件で車両データを収集することが可能となり、特定の車両状況のデータが不足したり過大になったりする事態を効率良く軽減或いは未然防止できる。
このように本態様により、車両毎にその車両状態を考慮して効率的に、言い換えれば、実践上キャパシティ的及びアビリティ的に或いはコスト的に(例えば、通信費やサーバ使用料、サーバ保守費等の観点から)限界があるハードウエア資源を利用しつつ有効性の高い車両データが、車両毎に収集されるように収集条件を変更する仕組みが提供される。
仮に、各車両における車両別の車両状態を考慮することなく各車両に車両データを収集させてしまうと、車両データの項目によってはそのデータ収集量が不足する或いは過大となる虞がある。
即ち、例えば、都市部などデータ収集を行う車両の数が多い場合に、重複した車両データが多く集まって多様性を期待できない。また例えば、仮に都市部で一律のデータ収集条件にしたのでは、急減速や急加速が基本的に多発するので、そのようなトリガ条件の車両データが不必要なまでに過大或いは余剰に集まってしまう。或いは、各車両における車両状態を考慮することなく一律に、車両毎にデータ収集要件書をサーバ側で管理作成するのでは、そのためのコストが無駄に増大してしまいかねない。更に、このような場合に仮にデータ収集条件に取得位置リストを含めると、各車両の現在位置に寄らずに(各車両の周辺エリアのみならず)広範囲エリアの車両データを車載器側で持っておく必要が生じてしまう。加えて、地域毎(例えば、国毎や都道府県等毎)、更に時間帯毎或いは季節毎に、走行環境やドライバの運転傾向が異なる(即ち車両情報が異なる)ので、一の地域では一の車両データが不足したり、他の地域では該一の車両データが過大或いは余剰となったりしかねない。このように、車両別の車両状態を考慮しないでデータ収集条件を設定したのでは、相対的に有効性の高い車両データを効率的に収集或いは取得できない。
しかるに本態様によれば上述したように、車両毎に車両状態に基づいて設定された所望の収集条件で、有効性の高い車両データを効率的に(言い換えれば、適宜各車両に対して要件書或いはその変更をフィードバックすることで、複数台の車両か網羅的に効率良く)収集する(これにより更に、効率的に保存や活用する)ことが可能となる。
本発明の他の態様に係る車両データ収集システムでは、前記条件設定部は、前記車両別に、予め設定された複数カテゴリに分類された収集条件の中から、前記車両状態に基づいて一のカテゴリに属するものを選択することで、該選択されたものを前記所望の収集条件として設定する。
この態様によれば、予め設定された収集条件の中から一のカテゴリに属するものを選択することで、所望の収集条件を設定するので、当該設定作業を効率的且つ迅速に実行でき、よって、有効性の高い車両データを効率良くデータ収集可能となる。
本発明の他の態様に係る車両データ収集システムでは、前記条件設定部は、前記車両状況の成否に対応するトリガ条件を含む形で、前記所望の収集条件を設定し、前記制御部は、前記トリガ条件が成立した場合に、前記車両別に設定された所望の収集条件で前記車両データが収集されるように前記部位を制御する。
この態様によれば、各車両においてトリガ条件が成立した際に、該各車両において所望の収集条件でデータ収集が行われるので、データ収集を行うことが望まれるトリガ発火の際の車両データを効率良くデータ収集可能となる。
本発明の他の態様に係る車両データ収集システムでは、車両に搭載された車載器及びサーバがネットワークに収容されてなり、前記車両が予め設定された車両状況になった場合に、該車両状況に係る車両データを収集するための車両データ収集システムであって、前記サーバは、前記車載器側から前記ネットワークを介して送信された車両データを受信するサーバ側通信部と、該受信された車両データを収集する収集部と、該収集された車両データに含まれる一部データにより示される車両状態に基づいて、前記車両データに対する所望の収集条件を設定する条件設定部とを備え、前記サーバ側通信部は更に、前記設定された所望の収集条件を前記ネットワークを介して前記車載器側に送信し、前記車載器は、前記車両に設けられており前記車両状況に係る前記車両データを取得可能なデータ取得部と、該データ取得部により取得された車両データを記憶可能な記憶部と、該記憶部により記憶された車両データを前記サーバ側へ送信可能であり且つ前記送信された所望の収集条件を受信する車載器側通信部と、前記受信された所望の収集条件で前記車両データが前記収集部で収集されるように、前記データ取得部による取得、前記記憶部による記憶及び前記車載側通信部による送信のうち少なくとも一つを制御する制御部とを備える。
この態様によれば、ネットワークを介してサーバから各車両に送信される、車両毎のデータ収集条件に基づいて、例えば前述のデータ受信部を含んで構成されるデータ取得部における車両データの取得オン/オフを制御したり、通信部における送信オン/オフを制御したり、通信部におけるアップロードタイミングを制御したりすることにより、有効性の高い車両データを、効率良く収集することが可能となる。
この態様では、前記車両データを収集すべき一の車両状況に対応するトリガ条件が成立する場合として、前記車両データに含まれる一のデータの値が、前記データ収集条件に含まれると共に該一のデータに対して設定された所定閾値を上回る又は下回る場合に、前記一つの車両状況に係る車両データを取得するように、前記制御部は、前記取得、前記記憶及び前記送信のうち少なくとも一つを制御してもよい。
この態様によれば、車両データに含まれる一のデータの値が所定閾値を上回る(即ち、以上になる或いはより大きくなる)又は下回る(即ち、以下になる又はより小さくなる)ことをトリガ条件とする車両状況が発生した際に、設定された所望の収集条件で、有効性の高い車両データを効率的に収集することが可能となる。
本発明の他の態様に係る車両データ収集システムでは、前記車両データは、動的な車両情報に係るデータである。
この態様によれば、車両データが静的な車両情報に係るデータであっても、動的な(即ち、一定でない、或いは、車両の走行や停止、使用、時間経過などに応じて変化し得る)車両情報に係るデータであっても、車両状態に基づいて車両別に設定された所望の収集条件で、有効性の高い車両データを効率的に収集することが可能となる。
なお、当該車両データ収集システムにおける前記条件設定部の少なくとも一部或いは前記制御部の少なくとも一部は、複数の車両と共に通信ネットワークに収容されており、前記通信ネットワークを介して前記車両データを収集し、前記通信ネットワークを介して前記車両に対して前記所望の収集条件を規定する要件書を送信する、車両データ収集用サーバに組み込まれる形で、構築されてもよい。或いは、これら一部は、車両側に即ち車載器に組み込まれる形で構築されてもよい。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両データ収集システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。