JP2020138963A - 脳由来神経栄養因子に対するモノクローナル抗体およびその抗体を産生するハイブリドーマ - Google Patents
脳由来神経栄養因子に対するモノクローナル抗体およびその抗体を産生するハイブリドーマ Download PDFInfo
- Publication number
- JP2020138963A JP2020138963A JP2020029569A JP2020029569A JP2020138963A JP 2020138963 A JP2020138963 A JP 2020138963A JP 2020029569 A JP2020029569 A JP 2020029569A JP 2020029569 A JP2020029569 A JP 2020029569A JP 2020138963 A JP2020138963 A JP 2020138963A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- bdnf
- antigen
- antibody
- monoclonal antibody
- binding fragment
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
- 108010025020 Nerve Growth Factor Proteins 0.000 title 1
- 102000007072 Nerve Growth Factors Human genes 0.000 title 1
- 210000004556 brain Anatomy 0.000 title 1
- 210000004408 hybridoma Anatomy 0.000 title 1
- 239000003900 neurotrophic factor Substances 0.000 title 1
- 102000004219 Brain-derived neurotrophic factor Human genes 0.000 abstract 2
- 108090000715 Brain-derived neurotrophic factor Proteins 0.000 abstract 2
- 239000002243 precursor Substances 0.000 abstract 2
- 125000003275 alpha amino acid group Chemical group 0.000 abstract 1
- 150000001413 amino acids Chemical class 0.000 abstract 1
- 239000000427 antigen Substances 0.000 abstract 1
- 102000036639 antigens Human genes 0.000 abstract 1
- 108091007433 antigens Proteins 0.000 abstract 1
- 239000012634 fragment Substances 0.000 abstract 1
Landscapes
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
- Peptides Or Proteins (AREA)
- Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
Abstract
Description
また、BDNFは脳以外に臓器や体液に存在することも報告されている(非特許文献7〜9)。BDNFのシグナルと脳腫瘍や肺がんの関係、血液や脳脊髄液に存在するBDNFをうつ病等の診断バイオマーカーの候補とする研究である。
このような背景と近年の研究展開を考えたとき、BDNFに対する抗体は重要な研究試薬としてさらには創薬や診断技術への応用などが期待される。
〔1〕配列番号1で示されるアミノ酸配列の129〜176番目のアミノ酸からなる領域に含まれるエピトープを認識する、成熟型BDNFおよびその前駆体に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
〔2〕上記〔1〕に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号1で示されるアミノ酸配列の203〜247番目のアミノ酸からなる領域を認識しない、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、前記エピトープが配列番号1で示されるアミノ酸配列の165〜176番目のアミノ酸からなる領域に含まれる、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
〔4〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託番号:NITE P-02652または受託番号:NITE P-02653として寄託されたハイブリドーマより産生される、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
〔5〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、受託番号:NITE P-02652のハイブリドーマ、または、受託番号:NITE P-02653のハイブリドーマより産生されるモノクローナル抗体と同じエピトープと反応する、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
〔6〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のモノクローナル抗体または抗原結合断片であって、哺乳動物由来の成熟型BDNFおよびその前駆体を認識する、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
〔7〕成熟型BDNFおよびその前駆体を検出するためのキットであって、上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む、キット。
〔8〕独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託番号:NITE P-02652またはNITE P-02653として寄託されたハイブリドーマ。
〔9〕上記〔8〕に記載のハイブリドーマを培養してモノクローナル抗体を産生させる工程を含む、成熟型BDNFおよびその前駆体に特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法。
〔10〕試料中の成熟型BDNFおよびその前駆体を検出する方法であって、上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片と前記試料とを反応させる工程と、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と結合した成熟型BDNFおよびその前駆体を検出する工程とを含む方法。
〔11〕上記〔10〕に記載の方法であって、前記検出工程がELISAにより行われる方法。
目的
従来の抗体作製技術であるハイブリドーマ法を用いて、ヒト成熟型BDNFおよびその前駆体に対するマウスモノクローナル抗体の作製を行った。
(1)抗原
pET-32b(+)ベクター(Novagen社製)にヒトBDNF(配列番号1のアミノ酸における129番目から247番目のアミノ酸配列)のcDNAを導入したプラスミドを大腸菌に導入し、発現させた組換えヒトBDNFを免疫抗原として用いた。
(2)マウスへの免疫
免疫は以下の方法で行った。PBSを用いて1.0 mg/mLに調製した免疫抗原を完全フロイントアジュバンド(FCA;Freund’s Adjuvant, Complete, SIGMA)と等量混合した。エマルジョンを形成させたものを370 μLずつマウスの背部皮下に投与し、その後2週間間隔で1.0 mg/mLの免疫抗原と不完全フロイントアジュバンド(FIA;Freund’s Adjuvant, Incomplete, SIGMA)と等量混合し、エマルジョンを形成させたものを140 μLずつマウスの背部皮下に投与した。最終的に合計3回抗原を投与した。3回免疫7日後にマウスより血清を回収し、ELISAにより抗体価を確認した。抗体価の高かったものに対して、1.0 mg/mLの免疫抗原50 μLと生理食塩水450 μLを混合したものをマウスの腹腔内に最終投与し、その3日後に細胞融合用に脾臓を摘出した。
摘出した脾臓をすりつぶし、抗BDNF抗体産生細胞を含む脾臓細胞を調製したところ、1匹あたり約1×108個の脾臓細胞を調製できた。一方で、ミエローマ細胞であるP3U1を培養し、細胞融合当日に生細胞率が90%以上のP3U1を調製した。これら脾臓細胞とP3U1を5:1で混ぜ、50%濃度の分子量1,450のポリエチレングリコールにより細胞融合を行った。融合後、培地で洗浄し、HAT培地に懸濁したものを、96穴培養プレートの各ウェルに1×105個/ウェルとなるように細胞を播きこんだ。
細胞融合後、10日目の培養上清を回収し、抗体産生陽性ウェルのスクリーニングを後述の実験例2の方法で行った。1712ウェル中126ウェルでELISAにおける吸光度が0.1以上の値を示した。これらのうち、吸光度が高値のもの、またはウェスタンブロッティング法による組換えヒトBDNFに対する反応性を高いもの(5ウェル分)を最終的に選択した。
選択した5ウェル分について、限界希釈法によるクローニングを行った。すなわち、細胞を10%のFCSを含むRPMI培地で5個/mLに調製し、96穴培養プレート2枚分の各ウェルに200 μLずつ添加した。10日後、後述の実験例2の方法で培養上清中のBDNFに対する抗体価を測定し、陽性であることを確認し、それぞれのウェルに由来するクローンを2クローン得た。それぞれの樹立クローンを「2D7」、「3C8」とした。
96穴マイクロタイタープレートの各ウェルに、固相化抗原としてリン酸緩衝生理食塩水(PBS(pH7.0))で1μg/mLに調製した組換えヒトBDNFを50μLずつ添加し、25°Cで1時間放置した。次に、0.05% Tween20を含むPBS(pH7.0)(PBST)で3回洗浄後、0.5%ゼラチンを含むPBST(ブロッキング液)を各ウェルに200μLずつ添加し、25°Cで1時間静置した。洗浄後、培養上清を原液のまま各ウェルに50μLずつ添加し、25°Cで1時間静置した。次に、PBSTで3回洗浄後、各ウェルに2500倍希釈したHRP標識抗マウスIgG抗体(KPL社)を50μLずつ添加し、25°Cで1時間静置した。次に、PBSTで3回洗浄後、各ウェルに0.02%の過酸化水素を含む0.1Mクエン酸リン酸緩衝液(pH5.0)で0.5 mg/mLに調製したo-フェニレンジアミン溶液100μLを添加し、25℃で10分間静置した後に、1M硫酸溶液100μLを各ウェルに添加し、呈色反応を停止した。その後490 nmの吸光度をELISAリーダーによって測定した。
GANP マウスに対して、免疫抗原(組換えヒトBDNF)を背部皮下に3回免疫した。3回免疫後、抗血清力価の上昇を、組換えヒトBDNFを用いたELISAで確認した。有意な力価上昇がもっとも高値であったマウスから脾臓を摘出し、マウスミエローマP3U1と細胞融合させた。融合脾細胞を96ウェルプレートに播種し、HAT選択培養を行った。播種9日後の培養細胞をサンプルとして、組換えヒトBDNFを用いたELISAを実施した。培養上清評価の結果を元に、組換えヒトBDNFに対する反応性が最も高い2D7および3C8ウェルに関して、2回の限界希釈法によるクローニングおよびスクリーニングを行い2D7および3C8の2クローンのハイブリドーマを樹立した。
ハイブリドーマは、細胞凍結保存液(セルバンカー、ゼノアック)およびプログラムフリーザーを用いて凍結し、液体窒素タンク内で保管した。凍結ハイブリドーマを、37℃恒温槽に浸し、素早く解凍した。5%CO2のインキュベーション条件で、9%ウシ血清含有培地を用いて拡大培養した。拡大培養後、同インキュベーション条件下で培地を無血清培地(Hybridoma-SFM, GIBCO)50mLに置換し培養した。無血清培養開始7日後、培養上清を回収し遠心分離後、フィルターでろ過し、タンパク質精製用培養上清とした。1.5mLのprotein G-sepharose(GE healthcare)カラムを用いて50mLの培養上清中の抗体と結合させ、カラムをPBSで洗浄後、グリシン緩衝液(pH3.0)で溶出し、1 mLずつフラクションを採取した。中和後、A280を測定し、抗体を含むフラクションを回収し、PBSにて透析した。透析後濃縮し、BCA法試薬(Thermo Fisher Scientific)で抗体濃度を測定した。組換えヒトBDNFを用いたELISAにて精製抗体力価を確認し、精製抗体を得た。
目的
マウス由来抗ヒトBDNFモノクローナル抗体2D7および3C8のBDNFに対する結合能を表面プラズモン共鳴分析で検証し、BDNF抗体としての評価を行った。
表面プラズモン共鳴分析に用いるセンサーチップCM5はセンサーチップ表面がカルボキシル基で修飾されている。そのためリガンドの固定化はリガンド表面のアミノ基を利用したアミンカップリング法を行った。具体的には、2D7および3C8の抗体溶液(20μg/ml)を10mM Acetate (pH4.7) で10倍希釈することで正に荷電させ、センサーチップCM5にGE社のAmine Coupling kitを用いたアミンカップリング法により結合させた。
結合実験の準備として、HBS-EP buffer(10mM HEPES, 0.15M NaCl, 3 mM EDTA, 0.005 % Surfactant P 20 ( pH 7.4 ))に溶解した組換えBDNF(15nM)を調整し、以下の測定パラメーターの条件により結合実験を行った。
<測定パラメータ>
Temperature: 20℃
Flow: 20 μg/min
Detection volume: 120 μL
Dissociation time: 600 sec
センサーチップ上の2D7または3C8抗体とBDNFとの分子間相互をセンサーグラムという形で観測した。BIACOREでは一定流速でランニングバッファーをセンサーチップ表面に流し、ここにアナライト(本実施例ではBDNF)を15nMの濃度でロードすると、センサーチップ上の2D7または3C8との結合を経時的に計測したセンサーグラムを取得できる。その後、アナライトの添加が終了するとHBS-EP bufferに切り替わり、このときセンサーチップ内のアナライト濃度は瞬時にゼロになり、2D7または3C8からの解離過程が観測される。
目的
得られた2D7および3C8抗体について、BDNFのアミノ酸配列中のエピトープを同定するために、成熟型BDNF由来のペプチド断片hBD-m1、hBD-m2およびhBD-m3を調製し、各断片と2D7および3C8抗体との結合反応性をウェスタンブロッティング法により確認した。
実験1:hBD-m1, hBD-m2およびhBD-m3発現プラスミドの構築(図4、図5)
ヒトpreproBDNF(配列番号1)の129〜176番目のアミノ酸からなる断片(hBDNF-m1 (129-176)断片、図中「hBD-m1」と表記)のN末端にチオレドトキシンタグ(TRX)、Hisタグおよび切断配列(PCS)をN末端に融合させたペプチドをコードするDNA配列をpET32b(+)発現ベクターに組み込んだpET32b(+)-hBDNF-m1 (129-176)を、以下の手順により作製した。
ヒトBDNF断片は、pcDNA-hBDNF-EGFP(Journal of Neuroscience Research, 64: 1-10 (2001))を鋳型とし、下記の合成PCRプライマーによるPCR反応により調製した。
5’-CACTCTGACCCTGCCCGC-3’ (配列番号5)
5’ TTGGCCTTTTGATACAGGGACC-3’ (配列番号6)
得られた増幅産物をpCR2.1-TOPO TAベクター(Thermo Fisher Scientific)に導入し、プラスミドpCR2.1-TOPO TA- hBDNF -m1(129-176)を構築した。さらにpET-32b(+)ベクター(Novagen社製)に移し替えることにより、pET32b(+)-hBDNF (129-176)を得た。
5’-ACAGTCCTTGAAAAGGTCCCT-3’ (配列番号7)
5’-GTACGACTGGGTAGTTCGGCA-3’ (配列番号8)
5’-CATTGGAACTC CCAGTGCCG-3’ (配列番号9)
5’-CTATCTTCCCCTTTTAATGGTCAA-3’ (配列番号10)
1)細胞抽出液の調製
上記実験1で構築した各プラスミドを大腸菌株RosettaTM 2(DE3) (Novagen社)に導入した。得られたシングルコロニーをLB培地で振とう培養し、終濃度0.1M IPTGの添加後4時間追培養した。遠心分離によって回収した大腸菌をサンプルバッファー(2X; 125mM Tris 10% (v/v)メルカプトエタノール 4%(w/v)SDS, 30%(v/v)グルセロール 0.005%(g/v)ブロモフェノールブルー)で懸濁して細胞抽出液を作製した。また、ネガティブコントロールとしてIPTG無添加の細胞抽出液を調整した。
各細胞抽出液をウェスタンブロッティング法で解析した。各細胞抽出液をSDS-PAGE後(ゲル濃度:5-20%)、ブロットしたメンブレンと抗BDNF抗体2D7または3C8それぞれを用いて4℃で一晩3% BSA-TBSTバッファー(3% BSA、20mM Tris、322mM NaCl、0.1% Tween-20、pH7.4)中で振とうし、抗原抗体反応を行った。二次抗体としてHRP標識された抗マウス抗体(Millipore, AB3517)を用いて室温1時間反応後、発光シグナルを検出した。IPTGによる融合タンパク質の発現誘導を確認するために抗マウスHis-tag抗体を用いたウェスタンブロッティングも行った。
・2D7のエピトープ解析
2D7抗体は、配列番号1のアミノ酸配列における129から176番目のアミノ酸から構成されるhBD-m1断片(配列番号2)と結合することが確認された。一方、配列番号1のアミノ酸配列における165から213番目のアミノ酸から構成されるhBD-m2断片(配列番号3)および配列番号1のアミノ酸配列における203から247番目のアミノ酸から構成されるhBD-m3断片(配列番号4)との結合は見られなかった。つまり、マウスモノクローナル抗BDNF抗体2D7のエピトープは、BDNFタンパク質のアミノ酸配列の129番目から176番目の領域内に存在することが判明した。
3C8抗体は、配列番号1のアミノ酸配列における129から176番目のアミノ酸から構成されるhBD-m1断片(配列番号2)および配列番号1のアミノ酸配列における165から213番目のアミノ酸から構成されるhBD-m2断片(配列番号3)と結合することが確認された。一方、配列番号1のアミノ酸配列における203から247番目のアミノ酸から構成されるhBD-m3断片(配列番号4)との結合は見られなかった。つまり、マウスモノクローナル抗BDNF抗体3C8のエピトープは、BDNFタンパク質のアミノ酸配列の165番目から176番目の領域内に存在することが判明した。
目的
生物学的活性やそのための構造を有するタンパク質を認識する抗体は有用である。このような用途への2D7および3C8抗体の適用可能性を検証すべく、免疫沈降を行い、その沈降物についてウェスタンブロッティング解析を行った。
実験
以下の参考文献の手順により、BDNF遺伝子欠損マウスその同腹の野生型マウス(BDNF遺伝子を両アレルに持つ)の各2匹の海馬組織のライセートと、2D7または3C8のモノクローナル抗体を一晩回転混合し、翌日、ProteinGとの回転混合をさらに行うことにより、モノクローナル抗体への結合分子の回収を行った。結合分子の解析のためにはウェスタンブロッティング法を用い、BDNFの検出には抗BDNFマウス由来市販抗体(#3C11, Icosagen)を用いた。
参考文献:
S. Dieni, T. Matsumoto, M. Dekkers, S. Rauskolb, M. Ionescu, R. Deogracias, E. D.Gundelfinger, M. Kojima, S. Nestel, M. Frotscher, Y.-A. Barde, BDNF and its pro-peptide are stored in presynaptic dense core vesicles in brain neurons, Journal of Cell Biology, 2012, vol. 196, no. 6, 775-788.
2D7、3C8ともに、野生型マウスの脳海馬組織ライセートからはBDNFを回収することができ、BDNFを示すバンドが検出された(図7中「Wild」)。一方で、BDNF遺伝子欠損マウスの脳海馬組織ライセートからはBDNFを示すバンドは検出されなかった(図7中「KO」)。この結果から、2D7および3C8抗体はいずれもBDNFに対して高い特異的結合性を有することが示された。ここで、ライセートは低濃度Tween-20を加えた溶解バッファーを用いて調製されたものであり、BDNFは生体内での立体構造を保持しているものと考えられる。つまり、この結果からは、2D7および3C8抗体が脳組織内や体液中で活性型として存在する成熟型BDNFと結合できることが示唆され、2D7および3C8抗体がELISAのような検出系に使用できることが期待された。
目的
BDNFが脳だけでなく末梢血にも含まれることや、末梢血でも神経系に類似したメカニズムによりBDNFが産生されることが報告されており(P Chacon-Fernandez et al., Journal of Biological Chemistry (2016) 291: 9872-9881)、血中BDNFの診断系への応用が期待されている。そこで本実施例では、ELISAに2D7および3C8抗体を適用できるかどうかを検証した。
組換えBDNFの希釈系列を作り、一次抗体として2D7抗体(1:1000希釈)、二次抗体としてBiotin Labeling Kit - NH2(DOJINDO, LK03)を用いてビオチン標識した3C8抗体(1:500希釈)を用いた以外はPromega社のBDNF ELISA kit(BDNF Emax ImmunoAssay Systems)に添付されている試薬(抗体は除く)とプロトコールにしたがってサンドイッチELISA解析を行った。
最初にCarbonate coating buffer(0.025 M Sodium bicarbonate, 0.025 M Sodium carbonate, pH 9.7)を用いて1 μg/mLの2D7抗体液を準備し、ELISA用96穴プレートに100 μLずつ添加して4℃で一晩静置した。
翌日、100μL TBSTで各ウェルを1回洗浄後、各ウェルに200μL のBlock & Sample 1X Buffer(Promega社 BDNF Emax(登録商標)ImmunoAssay System)を加え、1時間ブロッキング反応を行った。その後、100μL TBSTを用いて各ウェルを1回洗浄した。ヒトBDNF(Promega社 BDNF Emax(登録商標)ImmunoAssay System, G7610)の希釈系列(250 pg/mL, 125 pg/mL, 62.5 pg/mL, 31.25 pg/mL, 15.625 pg/mL, 7.813 pg/mL)およびBDNFを含まない溶液をBlock & Sample 1X Buffer で調整し、各濃度につき100 μLを2ウェルずつ準備した。このプレートを2時間室温で振盪することにより、当該マウスモノクローナル抗体とBDNFとの結合反応を行った。反応が終わったプレートについて、各ウェルにつき100μL TBSTによる洗浄を5回行った。ELISAの二次抗体反応は、3C8抗体200 ngをBiotin Labeling Kit - NH2(DOJINDO, LK03)の添付プロトコールに従ってビオチン標識したものをBlock & Sample 1X Buffer で1/500倍希釈したものを、ウェルあたり100μL添加し1時間室温で振盪することにより行った。続いて100μL TBSTで各ウェルを 5回洗浄した。続いて、TMB One Solution(プロメガ社)をウェルあたり100μL加え発色反応を行った。発色反応の停止は1N HCl溶液100μLの添加により行い、その後、450 nmの吸光度に基づいて発色を決定した。
上記サンドイッチELISAの結果、ヒトBDNF組換えタンパク質の濃度依存的な検量線が得られた(図8A)。一方、ヒトBDNF組換えタンパク質に代えて、BDNFのファミリータンパク質であるNGF、NT-3およびNT-4(各1ng/mL、ヒト配列を有する)について行った同サンドイッチELISAの結果、結合は検出されなかった(図8B)。さらに、ヒトBDNF組換えタンパク質に代えて、実施例4と同様の手順により調製されたBDNFノックアウトマウス(同腹1週齢)および野生型マウスの海馬組織ライセートを同サンドイッチELISAにより解析した結果、野生型マウスの脳海馬組織ライセートに含まれるBDNFの濃度を決定できたが、同腹のノックアウトマウスの脳海馬組織ライセートではBDNFは検出感度以下であった(図8B)。これらの結果から、2D7および3C8抗体がBDNFに対して特異的結合性を有し、BDNFの検出および/または定量に利用可能なものであることが示された。
目的
2D7および3C8抗体がBDNF前駆体に対しても特異的結合性を有するかどうかを確認するために、組換えproBDNFの希釈系列を用いてサンドイッチELISA解析を行った。
ヒトBDNF(Promega社 BDNF Emax(登録商標)ImmunoAssay System, G7610)に代えてヒトproBDNF(Alomone Labs, #B-256)を用いた以外は、実施例5と同様の手順によりサンドイッチELISA解析を行った。
上記サンドイッチELISAの結果、ヒトproBDNF組換えタンパク質の濃度依存的な検量線が得られた(図9)。この結果から、2D7および3C8抗体がBDNFと同様にproBDNFに対しても特異的結合性を有し、proBDNFの検出および/または定量に利用可能なものであることが示された。
目的
2D7および3C8抗体がBDNFの作用機能を阻害または亢進するような機能性を有するかどうかを調べるために、2D7および3C8抗体の存在下または非存在下でBDNF/TrkBシグナル経路を刺激した場合のTrkBのリン酸化状態をウェスタンブロッティングにより解析した。
既報文献(Suzuki S, et al., "Brain-derived neurotrophic factor regulates cholesterol metabolism for synapse development", J. Neurosci., 2007, 27(24):6417-27)に記載の手順に従って、胎生18日齢ラット由来大脳皮質神経細胞の初代培養(5x105細胞/cm2)を調製し、2%(vol/vol)のB27サプリメントを含有する Neurobasal medium(Thermo Fisher Scientific)中で培養した。培養14日目にNeurobasal mediumに培地を交換し、その翌日にヒトBDNF組換えタンパク質(10ng/ml)および/または2D7もしくは3C8抗体(3.6μg/ml)を投与し、30分後に細胞を回収し、ライセートを調製した。なお、BDNFおよび抗体のいずれも投与しなかったものを陰性対照とした。
得られたライセートを、上記鈴木らの報文に記載の手順に従って、ウェスタンブロッティングにより解析した。簡単には、各ライセートから調製したサンプル(5μgタンパク質/レーン)をSDS-PAGEに供し、PVDF膜に転写後、抗リン酸化Trk-B抗体(C35G9, Cell Signaling Technology)または抗TrkB抗体(80E3, Cell Signaling Technology)でブロットした。
図10の左パネルはリン酸化Trk-Bの検出結果を示し、BDNFと2D7または3C8抗体とを共投与した場合に、BDNFのみを投与した場合に比べてリン酸化Trk-Bの検出バンドが薄くなっており、リン酸化Trk-Bが減少していることが確認された(図10左パネル、丸印)。また、図10の右パネルはTrk-Bの検出結果を示し、BDNFのみを投与した場合には、Trk-Bがリン酸化され、分子量の増加によりTrk-Bの検出バンドが上方向にシフトするが、BDNFと2D7または3C8抗体とを共投与した場合には、上方向へのシフトが若干減少していることが確認された(図10右パネル、*印)。以上の結果から、2D7および3C8抗体はいずれもBDNFの機能を抑制できるものである可能性が示された。
Claims (11)
- 配列番号1で示されるアミノ酸配列の129〜176番目のアミノ酸からなる領域に含まれるエピトープを認識する、成熟型BDNFおよびその前駆体に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
- 請求項1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号1で示されるアミノ酸配列の203〜247番目のアミノ酸からなる領域を認識しない、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
- 請求項1または2に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、前記エピトープが配列番号1で示されるアミノ酸配列の165〜176番目のアミノ酸からなる領域に含まれる、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託番号:NITE P-02652または受託番号:NITE P-02653として寄託されたハイブリドーマより産生される、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託番号:NITE P-02652または受託番号:NITE P-02653として寄託されたハイブリドーマより産生されるモノクローナル抗体と同じエピトープと反応する、モノクローナル抗体または抗原結合断片。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合断片であって、哺乳動物由来の成熟型BDNFおよびその前駆体を認識する、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
- 成熟型BDNFおよびその前駆体を検出するためのキットであって、請求項1〜6のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む、キット。
- 独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託番号:NITE P-02652または受託番号:NITE P-02653として寄託されたハイブリドーマ。
- 請求項8に記載のハイブリドーマを培養してモノクローナル抗体を産生させる工程を含む、成熟型BDNFおよびその前駆体に特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法。
- 試料中の成熟型BDNFおよびその前駆体を検出する方法であって、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片と前記試料とを反応させる工程と
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と結合した成熟型BDNFおよびその前駆体を検出する工程と
を含む方法。 - 請求項10に記載の方法であって、前記検出工程がELISAにより行われる、方法。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019031623 | 2019-02-25 | ||
JP2019031623 | 2019-02-25 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020138963A true JP2020138963A (ja) | 2020-09-03 |
JP7481733B2 JP7481733B2 (ja) | 2024-05-13 |
Family
ID=72279894
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2020029569A Active JP7481733B2 (ja) | 2019-02-25 | 2020-02-25 | 脳由来神経栄養因子に対するモノクローナル抗体およびその抗体を産生するハイブリドーマ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP7481733B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114660296A (zh) * | 2020-12-23 | 2022-06-24 | 深圳市安群生物工程有限公司 | 一种脑源性神经营养因子测定试剂盒及其应用和脑源性神经营养因子特异性抗体 |
Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0949836A (ja) * | 1995-08-08 | 1997-02-18 | Hitachi Ltd | 抗体による蛋白質構造の評価方法 |
-
2020
- 2020-02-25 JP JP2020029569A patent/JP7481733B2/ja active Active
Patent Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0949836A (ja) * | 1995-08-08 | 1997-02-18 | Hitachi Ltd | 抗体による蛋白質構造の評価方法 |
Non-Patent Citations (3)
Title |
---|
"AB1534SP Sigma-Aldrich Anti-Brain Derived Neurotrophic Factor Antibody", MERCK, ホーム > LIFE SCIENCE RESEARCH > ANTIBODIES AND ASSAYS > PRIMARY ANTIBODIES > ANTI-BRAIN DERI, JPN6023043874, 2023, pages 1 - 3, ISSN: 0005183922 * |
"RABBIT ANTI-BRAIN DERIVED NEUROTROPHIC FACTOR (IgG Fraction) POLYCLONAL ANTIBODY", CATALOG NO: AB1534SP, MILLIPORE, JPN6023043875, 13 September 2011 (2011-09-13), pages 1 - 3, ISSN: 0005183921 * |
THE JOURNAL OF HISTOCHEMISTRY AND CYTOCHEMISTRY, vol. 41, no. 4, JPN6023043876, 1993, pages 521 - 533, ISSN: 0005183920 * |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114660296A (zh) * | 2020-12-23 | 2022-06-24 | 深圳市安群生物工程有限公司 | 一种脑源性神经营养因子测定试剂盒及其应用和脑源性神经营养因子特异性抗体 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP7481733B2 (ja) | 2024-05-13 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5439176B2 (ja) | Tdp−43凝集物に特異的に結合する抗体 | |
RU2521669C2 (ru) | Способ иммунологического анализа белка cxcl1 человека | |
RU2769568C2 (ru) | REP белок в качестве белкового антигена для диагностических анализов | |
WO2013035799A1 (ja) | ペリオスチンの特定領域に結合する抗体及びこれを用いたペリオスチンの測定方法 | |
JP5002001B2 (ja) | インスリンレセプターαサブユニットの測定方法 | |
CN105548561B (zh) | 阿尔茨海默病的诊断药和诊断方法 | |
WO2015004163A1 (en) | Anti-tau monoclonal antibodies | |
KR102245938B1 (ko) | 진단 분석에 사용하기 위한 개선된 rep 단백질 | |
JP2020510841A (ja) | ヒトエリスロフェロン抗体及びその使用 | |
BR112021005669A2 (pt) | anticorpos contra bcma solúvel | |
JP2022031783A (ja) | APP669-xのN末端を特異的に認識する抗体、及び免疫測定法 | |
JP7481733B2 (ja) | 脳由来神経栄養因子に対するモノクローナル抗体およびその抗体を産生するハイブリドーマ | |
JP6742590B2 (ja) | 抗体又はその抗原結合性フラグメント及びハイブリドーマ | |
US11174310B2 (en) | Disulfide-type HMGB1-specific antibody, method for measuring disulfide-type HMGB1 and kit for said measurement, and measurement method capable of quantitating all of HMGB1 molecules including reduced HMGB1, disulfide-type HMGB1 and thrombin-cleavable HMGB1 and kit for said measurement | |
JP2010536715A (ja) | Nesfatin−1特異的抗体およびその用途、ならびにNesfatin特異的抗体およびその用途 | |
CN118255883B (zh) | 针对人视锥蛋白样蛋白1的单克隆抗体、抗体对和试剂盒及其应用 | |
JP7051096B2 (ja) | ウシプロカルシトニンを特異的に認識する抗体、その抗原結合断片、および、その使用 | |
WO2024157993A1 (ja) | シアル酸修飾o-結合型糖鎖を有するディスアドヘリンに特異的に結合する抗体 | |
CN103261221B (zh) | 肌动蛋白丝切蛋白1蛋白质的免疫学测定方法 | |
US20240385190A1 (en) | Anti-epha4 antibody | |
US6982322B1 (en) | Monoclonal antibodies against human apoptosis inhibitory protein naip and method for assaying naip | |
WO2018194134A1 (ja) | 抗ペリオスチン抗体固定化担体、ペリオスチン測定試薬、及び抗ペリオスチン抗体固定化担体における抗体の安定化方法 | |
WO2004063750A1 (ja) | 育毛活性評価方法 | |
JPWO2005056597A1 (ja) | 免疫グロブリンFc受容体タンパク質 | |
CN120173107A (zh) | 抗sST2抗体及其用途 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
AA64 | Notification of invalidation of claim of internal priority (with term) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A241764 Effective date: 20200313 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20200313 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20221201 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20231025 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20231027 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20231220 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20240219 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20240416 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20240419 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 7481733 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |