JP2020138455A - 金属部材と樹脂部材との接合方法および接合装置 - Google Patents

金属部材と樹脂部材との接合方法および接合装置 Download PDF

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Abstract

【課題】金属部材と樹脂部材との間に接着剤が介在する場合であっても、より良好な接合強度が得られる金属部材と樹脂部材との接合方法および接合装置を提供すること。【解決手段】金属部材11と樹脂部材12とを、両者間に接着剤3を介在させた状態で、重ね合わせ、押圧部材16により圧力および熱を金属部材側から付与することにより前記樹脂部材を溶融させて金属部材と樹脂部材とを接合する熱圧式接合方法による金属部材と樹脂部材との接合方法であって、前記樹脂部材12の金属部材側表面121が非溶融の状態で、前記圧力により、平面視において前記金属部材側表面121の押圧部材直下領域120からその外側に向けての前記接着剤3の移動を促進する、金属部材と樹脂部材との接合方法。【選択図】図4

Description

本発明は、金属部材と樹脂部材との接合方法および接合装置に関する。
従来、自動車、鉄道車両、航空機等の分野では軽量化が求められている。例えば、自動車の分野では、ハイテン材の利用により薄鋼板化が進められ、またスチール材の代替材としてアルミ合金材が用いられ、さらには樹脂材の利用も進んでいる。このような分野において金属部材と樹脂部材との接合技術の開発は、単に車体の軽量化に留まらず、接合部材の高強度化や高剛性化、生産性の向上を実現させる観点からも重要である。これまで、金属部材と樹脂部材との接合方法として、いわゆる摩擦撹拌接合(FSW:friction stir welding)方法が提案されている。摩擦撹拌接合方法とは、金属部材と樹脂部材とを重ね合わせ、回転ツールを回転させつつ、金属部材に押圧して摩擦熱を発生させ、この摩擦熱で樹脂部材を溶融させた後、固化させて金属部材と樹脂部材とを接合する方法である。
これまで、金属部材と樹脂部材との接合方法として、摩擦撹拌接合方法のほか、抵抗加熱接合方法(通電加熱接合方法)、誘導加熱接合方法、超音波加熱接合方法等のような、加圧しながら加熱を行う熱圧式接合方法が知られている。
一方、Zn−Fe合金メッキ鋼板とアルミニウム合金板との間に接着剤層を介在させて重ね合わせ、回転ツールの回転および押圧により、接着剤層を粘度低下させつつ接合部の外側(例えば外周側)に押し出す、接合方法が知られている(特許文献1)。
特開2009−113077号公報
本発明の発明者等は、従来の熱圧式接合方法による金属部材と樹脂部材との接合に際し、両者間に接着剤等のような第3成分が介在すると、介在しない場合と比較して接合強度の低下が生じる課題があることを見出した。
例えば、摩擦撹拌接合方法においては、図9Aに示すように、金属部材211と樹脂部材212とを、これらの間に接着層203を介在させて重ね合わせ、回転ツール216を金属部材211に押し込む。次いで、図9Bに示すように、回転ツール216をさらに押し込み、その回転動作を継続する。その結果、接着剤が介在しない場合と比較して、接合強度が大きく低下した。金属部材211と樹脂部材212との間に接着層203由来の接着剤が残存し、両者の接合を阻害するため、接合強度が大きく低下したものと考えられる。
摩擦撹拌接合方法以外の他の熱圧式接合方法においても、金属部材と樹脂部材とを重ね合わせると共に、両者間に接着剤を介在させると、接着剤が介在しない場合と比較して、接合強度が大きく低下した。
そこで、従来の熱圧式接合方法により金属部材と樹脂部材とを、これらの間に接着剤を介在させて接合を行うに際し、特許文献1のZn−Fe合金メッキ鋼板とアルミニウム合金板との接合方法のように、接着剤層を接合部の外側に押し出す技術を適用しても、やはり、接着剤が介在しない場合と比較して、接合強度が大きく低下した。
本発明は、金属部材と樹脂部材との間に接着剤が介在する場合であっても、接合強度の低下を十分に防止することができる、金属部材と樹脂部材との接合方法および接合装置を提供することを目的とする。
本発明は、
金属部材と樹脂部材とを、両者間に接着剤を介在させた状態で、重ね合わせ、押圧部材により圧力および熱を金属部材側から付与することにより前記樹脂部材を溶融させて金属部材と樹脂部材とを接合する熱圧式接合方法による金属部材と樹脂部材との接合方法であって、
前記樹脂部材の金属部材側表面が非溶融の状態で、前記圧力により、平面視において前記金属部材側表面の押圧部材直下領域からその外側に向けての前記接着剤の移動を促進する、金属部材と樹脂部材との接合方法に関する。
本発明の接合方法によれば、あらゆる熱圧式接合方法において、金属部材と樹脂部材との間に接着剤が介在する場合であっても、接合強度の低下を十分に防止することができる。
本発明にかかる金属部材と樹脂部材との接合方法に好適な摩擦撹拌接合装置の一部の一例を示す模式図である。 本発明の接合方法に使用される押圧部材としての回転ツールの一例の先端部の拡大図である。 本発明の第1ステップにおける重ね合わせ工程の一例を説明するための概略断面図である。 本発明の第2ステップにおける接着剤の移動促進工程の一例を説明するための概略断面図である。 本発明の押込み撹拌工程および撹拌維持工程の一例を説明するための概略断面図である。 本発明の押込み撹拌工程および撹拌維持工程の一例を説明するための概略断面図である。 実施例における接合強度の測定方法を説明するための概略図である。 本発明の接合方法で得られた接合体から金属部材を強制的に剥離させ、樹脂部材の金属部材側表面を観察したときの樹脂部材の表面写真である。 従来技術の接合方法で得られた接合体から金属部材を強制的に剥離させ、樹脂部材の金属部材側表面を観察したときの樹脂部材の表面写真である。 従来技術の第1ステップにおける重ね合わせ工程の一例を説明するための概略断面図である。 従来技術の押込み撹拌工程および撹拌維持工程の一例を説明するための概略断面図である。
本発明の接合方法は、金属部材と樹脂部材とを、これらの間に接着剤を介在させて重ね合わせ、押圧部材による金属部材側からの押圧により樹脂部材に圧力を付与するとともに、熱を付与して樹脂部材を軟化および溶融させた後、固化させて金属部材と樹脂部材とを接合する熱圧式接合方法である。熱および圧力は好ましくは局所的に付与される。本発明の熱圧式接合方法は、押圧部材により圧力を付与しつつ、押圧部材または別の手段により熱を付与する方法である。熱圧式接合方法は、圧力および熱を付与して、金属部材と樹脂部材との接合を行うことができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、摩擦撹拌接合方法、超音波加熱接合方法、レーザー加熱接合方法、抵抗加熱接合方法、誘導加熱接合方法等であってもよい。好ましくは押圧部材により圧力および熱を金属部材側から局所的に付与する方法であり、より好ましくは摩擦撹拌接合方法が採用される。
摩擦撹拌接合方法とは、後で詳述するように、金属部材と樹脂部材とを重ね合わせ、押圧部材としての回転ツールを回転させつつ、金属部材に押圧して摩擦熱を発生させ、この摩擦熱で樹脂部材を軟化および溶融させた後、固化させて金属部材と樹脂部材とを接合する方法である。
超音波加熱接合方法とは、金属部材と樹脂部材とを重ね合わせ、押圧部材により金属部材を加圧しながら、超音波(熱付与手段)により押圧部材および金属部材に超音波振動を起こさせ、該振動により生じる樹脂部材/金属部材の摩擦熱で樹脂部材を軟化および溶融させた後、固化させて金属部材と樹脂部材とを接合する方法である。
レーザー加熱接合方法とは、金属部材と樹脂部材とを重ね合わせ、押圧部材による加圧によりこれらを拘束した状態で、レーザー(熱付与手段)を金属部材に照射することにより熱を発生させ、この熱で樹脂部材を軟化および溶融させた後、固化させて金属部材と樹脂部材とを接合する方法である。レーザーとしては、YAGレーザー、ファイバーレーザーまたは半導体レーザーなどが使用される。
抵抗加熱接合方法とは、金属部材と樹脂部材とを重ね合わせ、押圧部材による加圧によりこれらを拘束した状態で、金属部材に、直接電流(熱付与手段)を流すことにより生じる熱を利用して樹脂部材を軟化および溶融させた後、固化させて金属部材と樹脂部材とを接合する方法である。
誘導加熱接合方法とは、金属部材と樹脂部材とを重ね合わせ、押圧部材による加圧によりこれらを拘束した状態で、電磁誘導作用により金属部材に、誘導電流(熱付与手段)を生じさせ、該電流により生じる熱を利用して樹脂部材を軟化および溶融させた後、固化させて金属部材と樹脂部材とを接合する方法である。
以下、摩擦撹拌接合方法を採用した本発明の接合方法について、図面を用いて詳しく説明するが、後述するような接着剤の移動促進工程を含む方法により、接合を行う限り、上記した他の接合方法を用いても本発明の効果が得られることは明らかである。図面に示す各種の要素は、本発明の理解のために模式的に示したにすぎず、寸法比や外観などは実物と異なり得ることに留意されたい。尚、本明細書で直接的または間接的に用いる「上下方向」は、図中における上下方向に対応した方向に相当する。また特記しない限り、これらの図において、共通する符号は同じ部材、部位、寸法または領域を示すものとする。
[摩擦撹拌接合方法による金属部材と樹脂部材との接合方法]
本発明の接合方法(摩擦撹拌接合方法)について図1〜図6を用いて具体的に説明する。
(1)接合装置
まず図1は、本発明の接合方法を実施するのに適した摩擦撹拌接合装置の一部の一例を模式的に示す図である。図1に示される摩擦撹拌接合装置1は、金属部材11と樹脂部材12とを摩擦撹拌接合する装置として構成されており、押圧部材としての円柱状の回転ツール16を具備している。
回転ツール16は、図示したように、金属部材11が上、樹脂部材12が下になるように重ね合わされたワーク10に対し、図外の駆動源により、矢印A1のように該回転ツール16の中心軸線X(図2参照)回りに回転しつつ、矢印A2のように下方に向けて移動する。このとき、回転ツール16は金属部材11表面における押圧領域P(押圧予定領域)において圧力を付与する。この回転ツール16の押圧により摩擦熱が発生し、この摩擦熱が樹脂部材12に伝導して樹脂部材12が軟化および溶融し、その後、溶融樹脂が固化する。その結果、金属部材11と樹脂部材12とが接合される。
図2は、回転ツール16の一例の先端部の拡大図である。図2において、右半分は回転ツール16の外観を示し、左半分は断面を示している。図2に示すように、円柱状の回転ツール16は、金属部材と接触する先端部(図2では下端部)にピン部16aおよび該ピン部を支持するショルダ部16bを有している。ショルダ部16bは、回転ツール16の円形の先端面を含む回転ツール16の先端の部分である。ピン部16aは、回転ツール16の中心軸線X上において、回転ツール16の円形の先端面から外方(図2では下方)に突設された、ショルダ部16bよりも小径の円柱状の部分である。ピン部16aは、回転している回転ツール16をワーク10に最初に接触させて押圧するときに回転ツール16を位置決めするためのものである。
回転ツール16の素材および各部の寸法は、主として、回転ツール16が押圧する金属部材11の金属の種類に応じて設定される。例えば、金属部材11がアルミニウム合金よりなる場合、回転ツール16は工具鋼(例えばSKD61等)で作製され、ショルダ部16bの直径D1は10mm、ピン部16aの直径D2は2mm、ピン部16aの突出長さhは0.3〜0.5mmに設定される。また、例えば、金属部材11がスチールよりなる場合、回転ツール16は窒化珪素やPCBN(立方晶窒化ホウ素焼結体)等で作製され、ショルダ部16bの直径D1は10mm、ピン部16aの直径D2は3mm、ピン部16aの突出長さhは0.3〜0.5mmに設定される。もっとも、これらは例示に過ぎず、これらに限定されないことはいうまでもない。
回転ツール16は、ピン部16aを必ずしも有さなければならないというわけではない。本発明においては、接着剤の移動のさらなる促進およびこれによる溶融固化領域60および61(特に回転ツールの直下領域の溶融固化領域60)内に存在する接着剤のさらなる低減、ならびに接合強度の低下のより十分な防止の観点から、回転ツールは、ピン部16aを有さないことが好ましい。ピン部16aを有さない回転ツール(「フラットツール」ともいう)は、例えば、D2=0mmおよびh=0mmの寸法を有すること以外、図2の回転ツール16と同様の回転ツールである。
回転ツール16の下方には、回転ツール16と同径又は回転ツール16よりも大径の円柱状の受け具17が回転ツール16と同軸に配置されている。受け具17は、上記ワーク10に対し、図外の駆動源により、矢印A3のように上方に移動される。受け具17は、遅くとも回転ツール16がワーク10の押圧を開始するまでに、上端面がワーク10の下面(より詳しくは樹脂部材12の下面)に当接する。そして、受け具17は、回転ツール16との間にワーク10を挟んで、回転ツール16による押圧期間中、つまり摩擦撹拌接合中、上記押圧力に抗してワーク10を下方から支持する。なお、受け具17は必ずしも矢印A3方向へ移動させる必要はなく、受け具17にワーク10を載せた後に回転ツール16を矢印A2の方向に移動させる方法を採用することもできる。
摩擦撹拌接合装置1は、樹脂部材の金属部材側表面が非溶融の状態で、圧力により、平面視において金属部材側表面の押圧部材直下領域からその外側(例えば外周方向)に向けての接着剤の移動を促進するように、押圧部材としての回転ツールの駆動、特に押圧駆動および/または回転駆動、好ましくは押圧駆動および回転駆動、を制御する駆動制御装置(図示せず)を含む。本明細書中、平面視とは、金属部材11と樹脂部材12との重ね合わせ方向に基づくそれらの厚み方向に沿って金属部材11および樹脂部材12を上側または下側からみたときの状態(上面図または下面図)のことである。
駆動制御装置は、後で詳述するように、回転ツールの座標位置(例えば進入量)とその座標位置までの移動速度、および回転数を制御する位置制御方式を採用してもよいし、または回転ツールの金属部材への加圧力および加圧時間および回転数を制御する圧力制御方式を採用してもよい。
なお、図1には図示を省略したが、摩擦撹拌接合装置1は、予めワーク10を固定し、また回転ツール16を押圧したときの金属部材11の浮き上がりを防止するためのスペーサやクランプ等の治具を備えている。
(2)接合方法
本発明の接合方法によれば、金属部材11と樹脂部材12との界面13において、樹脂部材12の溶融および固化により溶融固化領域60および61(図6参照;斜線領域60および網線領域61)が形成され、当該溶融固化領域60および61が金属部材11と樹脂部材12との接合に寄与する。溶融固化領域60(斜線領域)は、接合境界面13において回転ツールの直下領域で溶融していた樹脂部材表面の溶融樹脂120が当該直下領域内で固化した領域である。溶融固化領域61(網線領域)は、接合境界面13において回転ツールの直下領域で溶融していた樹脂部材表面の溶融樹脂120が当該直下領域を超えて、その外周側領域(すなわちその外側領域)まで流動し、固化した領域である。本発明においては、このような溶融固化領域60および61(特に回転ツールの直下領域の溶融固化領域60)内に存在する接着剤が低減されるように接合を行う。詳しくは、樹脂部材12の金属部材側表面121が非溶融の状態で、圧力により、平面視において金属部材側表面121の押圧部材直下領域120からその外側(例えば外周方向)に向けての接着剤の移動を促進するように接合を行う。これにより、樹脂部材と金属部材との接合強度の低下を十分に防止することができる。樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)が溶融している状態で、圧力により、平面視において金属部材側表面121の押圧部材直下領域120からその外側(例えば外周方向)に向けての接着剤の移動を促進するように接合を行っても、接合強度の低下を十分に防止できない場合がある。溶融固化領域60および61(特に回転ツールの直下領域の溶融固化領域60)内の接着剤が十分に低減されないためである。
本発明においては、圧力のみにより、上記のように接着剤の移動を促進してもよいが、より好ましい態様においては、圧力だけでなく、圧力と摩擦熱との組み合わせにより、接着剤の移動をより一層、十分に促進することができる。摩擦熱は、接着剤の移動促進のとき、接着剤が特定の温度状態にあるように生じさせる摩擦熱である。詳しくは、接着剤は、当該接着剤の移動促進のとき、樹脂部材の融点以下であって、かつ当該接着剤の軟化点以上の温度状態にあることがより好ましい。これにより、接着剤の移動をより一層、十分に促進することができる。
本発明に係る摩擦撹拌接合方法による金属部材と樹脂部材との接合方法は具体的には、少なくとも以下のステップ:
金属部材11と樹脂部材12とを重ね合わせる第1ステップ;および
回転ツール16を金属部材11に押圧して接着剤の移動を促進した後、回転ツール16の回転により摩擦熱を発生させ、この摩擦熱により樹脂部材12を軟化および溶融させて金属部材11と樹脂部材12とを接合する第2ステップ:
を含むものである。
第1ステップにおいては、図1および図3に示すように、金属部材11と樹脂部材12とを所望の接合部位にて両者間に接着剤3を介在させた状態で重ね合わせる。図3は、図1におけるX−X断面を矢印方向で見たときの概略断面図である。
接着剤3は、図3等において、流動性を有し接着層を形成しているが、本発明は、接着剤3が塗布および乾燥により流動性を消失していることを妨げるものではない。本発明においては、溶融固化領域60および61(特に回転ツールの直下領域の溶融固化領域60)内に存在する接着剤の低減の観点から、後述する金属部材11と樹脂部材12との重ね合わせ時において、流動性を有することが好ましい。
接着剤3は、金属部材11と樹脂部材12との重ね合わせ時において、両者間に介在する限り、樹脂部材12における金属部材11との対向面に塗布されていてもよいし、または金属部材11における樹脂部材12との対向面に塗布されていてもよい。接着剤3は、金属部材11および樹脂部材12のいずれの対向面にも形成されず、これらの対向面から独立して、接着剤シートの形態で金属部材11と樹脂部材12との間に介在してもよい。
接着剤3は、従来から金属部材11と樹脂部材12との接着に寄与し得るあらゆる接着剤を包含する。従って、接着剤3は、接着剤として使用される材料だけでなく、金属部材11と樹脂部材12との間のシーリングに使用されているシール材(またはシーラント)も包含する概念で用いるものとする。接着剤3を構成する材料として、例えば、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂およびこれらの混合物等の熱硬化性樹脂、合成ゴム系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂およびこれらの混合物等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
接着剤3の軟化点は通常、40〜10℃、特に50〜80℃である。
接着剤(層)の厚みk(図3参照)は通常、金属部材11と樹脂部材12との重ね合わせ時において、0.1〜2mmであり、溶融固化領域60および61(特に回転ツールの直下領域の溶融固化領域60)内に存在する接着剤の低減の観点から、好ましくは0.1〜1.0mm、より好ましくは0.1〜0.5mmである。
第2ステップにおいては、回転ツール16を金属部材11に押圧して、樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)が非溶融の状態で、接着剤の移動を促進した後、回転ツール16の回転により摩擦熱を発生させ、この摩擦熱により樹脂部材12を軟化および溶融させるように、回転ツールの駆動を制御する。第2ステップにおいては、上記したように、回転ツールの座標位置(例えば進入量)とその座標位置までの移動速度、および回転数を制御する位置制御方式、または回転ツールの加圧力、加圧時間および回転数を制御する圧力制御方式を採用する。以下、位置制御方式を採用する第2ステップを第1実施態様として説明し、圧力制御方式を採用する第2ステップを第2実施態様として説明する。
<第1実施態様:位置制御方式>
本実施態様の第2ステップにおいては、接着剤の移動を促進する移動促進工程C0、および回転ツール16を金属部材11と樹脂部材12との接合境界面13に達しない深さまで進入させる押込み撹拌工程C2を少なくとも行うことが好ましい。
本実施態様の第2ステップにおいては、移動促進工程C0の後であって、押込み撹拌工程C2の前に、後述する圧力制御方式における予熱工程C1を行ってもよいが、位置制御方式を採用するため、行わなくてもよい。
前記押込撹拌工程C2の後に、回転ツール16を前記押込み撹拌工程で進入させた位置で、回転ツール16の回転動作を継続させる撹拌維持工程C3を必要に応じて行う。
以下、本実施態様におけるこれらの工程について詳しく説明する。
(移動促進工程C0)
本実施態様の移動促進工程C0においては、図4に示すように、回転ツール16を金属部材11に押圧して、接着剤3の移動を促進する。接着剤の移動とは、図4に示すように、樹脂部材12の金属部材側表面121の押圧部材直下領域120からその外側に向けて(図4の矢印方向)の接着剤3の移動のことである。接着剤の移動を、樹脂部材12の金属部材側表面121の押圧部材直下領域120からの接着剤の排出と捉えると、本工程は接着剤の排出促進工程とも称することができる。本実施態様においては、接着剤3の移動促進を、樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)が非溶融の状態で行う。換言すると、樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)が非溶融の状態にあるときに、回転ツール16を金属部材11に押圧して、接着剤3の移動を促進する。樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)が溶融状態にあるときに、回転ツール16を金属部材11に押圧して、接着剤3の移動を促進すると、接着剤3の移動が十分に促進されないため、押圧部材直下領域120に存在する接着剤の量が十分に低減されない。このため、接合強度の低下を十分に防止できない。
接合強度のさらなる向上の観点から、接着剤3の移動促進は、樹脂部材12の金属部材側表面121(特にその押圧部材直下領域120)が非軟化の状態にあるときに行うことが好ましい。
樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)が非溶融の状態にあるとは、溶融していない状態にあるという意味であり、非溶融の状態は、軟化している状態および軟化さえもしていない状態(すなわち、非軟化の状態)を包含する。
具体的には、樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)が非溶融または非軟化の状態にあるとは、それぞれ樹脂部材12における当該表面121(特に押圧部材直下領域120)の温度が樹脂部材(特に樹脂部材を構成する熱可塑性ポリマー)の融点未満の温度または軟化点未満の温度であるという意味である。
具体的には、本実施態様の移動促進工程C0において、回転ツールの回転数、進入量および進入速度は、樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)を非溶融状態(好ましくは非軟化状態)としつつ、接着剤の移動をさらに促進する観点から、金属部材11の厚みおよび素材の種類および樹脂部材12の融点等に依存して決定される。例えば、1mm以上2mm以下の厚みのアルミニウム合金製金属部材11および150〜190℃の融点の樹脂部材12を使用する場合、回転ツールの回転数、進入量および進入速度は例えば、以下の通りである。本実施態様の移動促進工程C0において、回転ツールは回転させなくてもよいし(回転数0)、または回転させてもよい。好ましくは、接着剤が、樹脂部材の融点以下であって、かつ当該接着剤の軟化点以上の温度状態にあるように、回転ツールを回転させる。回転ツールを回転させる場合、回転ツールの回転数は、例えば、4000rpm以下(特に10〜4000rpm)であり、接着剤の移動のさらなる促進の観点から、好ましくは10〜2000rpmであり、より好ましくは10〜500rpmである。本実施態様の移動促進工程C0において、達成される回転ツールの進入量は、樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)が非溶融状態(好ましくは非軟化状態)のときに接着剤の移動が促進される限り、特に限定されず、0mmではない進入量を設定し、圧力、もしくは圧力と樹脂溶融を起こさない範囲での摩擦熱を発生させる。回転ツールの進入量は、接着剤の移動のさらなる促進の観点から、好ましくは0.2×T以下(特に0.01×T以上0.2×T以下)、より好ましくは0.1×T以下(特に0.01×T以上0.1×T以下)である。本明細書中、回転ツールの進入量は、回転ツールが進入した量であって、回転ツール先端と金属表面の接触位置からの回転ツールの移動量のことである。回転ツールの進入量は、回転ツールがピン部を有する場合、ピン部の先端が進入した量のことである。回転ツールがピン部を有さない場合、回転ツールの進入量は、ショルダ部16bが進入した量のことである。なお、以降の工程において、回転ツールの進入量は、各工程でのその時点での総進入量のことであり、換言すると、累積(または積算)進入量である。本実施態様の移動促進工程C0において、回転ツールが金属部材11に進入するときの、進入速度は、樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)が非溶融状態(好ましくは非軟化状態)のときに接着剤の移動が促進される限り、特に限定されない。回転ツールの進入速度は、接着剤の移動のさらなる促進の観点から、好ましくは100mm/分以下(特に1〜100mm/分)、より好ましくは50mm/分以下(特に1〜50mm/分)である。本工程において、回転数、進入量および進入速度はそれぞれ上記範囲内で調整されてもよい。
(予熱工程C1)
本実施態様において予熱工程C1は行ってもよいし、または行わなくてもよい。本実施態様において予熱工程C1を行う場合、予熱工程C1は、回転ツール16(例えば先端部)を金属部材11に接触させた状態で回転ツールを回転させる。これにより、回転ツール16と金属部材11との間で摩擦熱が発生する。摩擦熱は金属部材11の内部に伝わり、金属部材11の押圧領域P(回転ツール16による押圧領域)の範囲および押圧領域Pの近傍の範囲が予熱される。その結果として、次の押込み撹拌工程C2で、回転ツール16を金属部材11に押込み易くなる。
具体的には、本実施態様の予熱工程C1において、回転ツールの回転数、進入量および進入速度は、回転ツール16の押込み易さ、樹脂部材12の軟化・溶融し易さおよび生産性の観点から、金属部材11の厚みおよび素材の種類および樹脂部材12の融点等に依存して決定される。例えば、1mm以上2mm以下の厚みのアルミニウム合金製金属部材11および150〜190℃の融点の樹脂部材12を使用する場合、回転ツール16の押込み易さの観点から、回転ツールを、移動促進工程で進入させたツール位置で、5秒以下(特に0.1〜5秒)の保持時間にて、1000rpm以上4000rpm以下の回転数で保持することが好ましい。本工程において、回転数および保持時間はそれぞれ上記範囲内で調整されてもよい。
(押込み撹拌工程C2)
本実施態様の押込み撹拌工程C2では、図5および図6に示すように、回転ツール16を、所定回転数で回転させつつ、所定の深さまで進入させる。
押込み撹拌工程C2では、詳しくは、図5および図6に示すように、回転ツール16を回転させつつ、金属部材11に押し込んで、金属部材11と樹脂部材12との接合境界面に達しない深さまで進入させる。回転ツール16を所定の深さまで進入した時点で、回転ツール16の押込み移動を停止する。回転ツール16を当該深さまで進入させることにより、回転ツール直下領域で樹脂部材表面120が溶融するとともに、金属部材11の回転ツール直下部110において、金属部材11と樹脂部材12との接合境界面が受け具側(図例では下側)に移動し、当該直下部110が樹脂部材12側に突出変形する。これにより、接合境界面13において回転ツールの直下領域で樹脂部材表面の溶融樹脂120の溶融が促進されると共に、該直下領域を超えて、その外側に向けて(図5および図6の矢印方向へ)流動する。溶融樹脂は回転ツール直下領域を中心とする略円形状で広がる。このとき、移動促進工程C0で外側に移動していた接着剤は、溶融した樹脂120と共に、さらに外側に向けて流動する。その結果、押圧部材直下領域120に存在する接着剤の量が十分に低減され、接合強度の低下を十分に防止できる。
仮に、回転ツール16がさらに押し込まれると(つまり回転ツールの進入量が金属部材11の厚みT超になると)、回転ツール16のショルダ部16bが上記接合境界面を超える。すなわち、回転ツール16が金属部材11を貫通し、回転ツール16の外周部が樹脂部材12に接触する。すると、金属部材11に回転ツール16が通過した孔が開いた孔開き状態となり、接合不良が起きる場合があるため、回転ツールの進入量が金属部材11の厚みT超になることは避けるのが好ましい。
具体的には、本実施態様の押込み撹拌工程C2において、回転ツールの回転数、進入量および進入速度は、樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)を溶融状態とする観点から、金属部材11の厚みおよび素材の種類および樹脂部材12の融点等に依存して決定される。例えば、1mm以上2mm以下の厚みのアルミニウム合金製金属部材11および150〜190℃の融点の樹脂部材12を使用する場合、回転ツールの回転数、進入量および進入速度は例えば、以下の通りである。回転ツールの回転数は、例えば、2000rpm以上4000rpm以下である。本実施態様の押込み撹拌工程C2において、達成される回転ツールの進入量は、樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)の溶融および接着剤のさらなる移動の観点から、金属部材の厚みをT(mm)としたとき、好ましくは0.4×T〜0.9×T(mm)、より好ましくは0.5×T〜0.9×T(mm)、さらに好ましくは0.7×T〜0.9×T(mm)である。本実施態様の押込み撹拌工程C2において、回転ツールが金属部材11に進入するときの、進入速度は、樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)の溶融および接着剤のさらなる移動の観点から、好ましくは1mm/分以上である。回転ツールの進入速度は、接着剤の移動のさらなる促進の観点から、好ましくは1〜300mm/分、より好ましくは10〜300mm/分、さらに好ましくは10〜100mm/分である。本工程において、回転数、進入量および進入速度はそれぞれ上記範囲内で調整されてもよい。
(撹拌維持工程C3)
本実施態様において撹拌維持工程C3は行ってもよいし、または行わなくてもよい。本実施態様において撹拌維持工程C3を行う場合、撹拌維持工程C3では、回転ツール1を金属部材11にさらに押し込むことなく、回転ツール16を前記押込み撹拌工程C2で進入させた位置で、回転ツール16の回転動作を継続させる。これにより、多量の摩擦熱が発生し、発生した摩擦熱がより多く樹脂部材12に移動する。そのため、樹脂部材12は、押圧領域P直下の領域の範囲を超えて、広い範囲で十分に軟化および溶融し、接合強度のさらなる向上が達成される。
具体的には、本実施態様の撹拌維持工程C3において、回転ツールの進入量は上記押込み撹拌工程C2で達成された進入量が維持され、このため回転ツールの進入速度は0mm/秒である。本実施態様の撹拌維持工程C3において、回転ツールの回転数および保持時間は、樹脂部材12のより広い範囲での十分な軟化および溶融の観点から、金属部材11の厚みおよび素材の種類および樹脂部材12の融点等に依存して決定される。例えば、1mm以上2mm以下の厚みのアルミニウム合金製金属部材11および150〜190℃の融点の樹脂部材12を使用する場合、回転ツールの回転数および保持時間は例えば、以下の通りである。回転ツールの回転数は、例えば、2000rpm以上4000rpm以下である。本実施態様の撹拌維持工程C3において、保持時間は、樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)の溶融の観点から、好ましくは1秒間以上(特に1〜5秒)、より好ましくは2〜5秒間である。保持時間が0秒であることは、本実施態様において撹拌維持工程C3は行わないことを意味する。本工程において、回転数および保持時間はそれぞれ上記範囲内で調整されてもよい。
本実施態様において撹拌維持工程C3を行う場合、撹拌維持工程C3を行った後は、通常、放置冷却することにより、固化が達成される。
本実施態様において撹拌維持工程C3を行わない場合、押込み撹拌工程C2を行った後、通常、放置冷却することにより、固化が達成される。
<第2実施態様:圧力制御方式>
本実施態様の第2ステップにおいては、接着剤の移動を促進する移動促進工程C0、および回転ツール16を金属部材11と樹脂部材12との接合境界面13に達しない深さまで進入させる押込み撹拌工程C2を少なくとも行うことが好ましい。
本実施態様の第2ステップにおいては、移動促進工程C0の後であって押込み撹拌工程C2の前に、回転ツール16を金属部材11に接触させた状態で上記回転ツール16を回転させる予熱工程C1を行うことが好ましいが、必ずしも行わなければならないというわけではない。
前記押込撹拌工程C2の後に、回転ツール16を前記押込み撹拌工程C2で進入させた位置で、回転ツール16の回転動作を継続させる撹拌維持工程C3を行うことが好ましいが、当該工程も必ずしも行わなければならないというわけではない。
以下、本実施態様におけるこれらの工程について詳しく説明する。
(移動促進工程C0)
本実施態様の移動促進工程C0では、以下に示すように圧力制御方式を採用すること以外、第1実施態様の移動促進工程C0と同様である。本実施態様の移動促進工程C0では、図4に示すように、回転ツール16を金属部材11に押圧して、接着剤3の移動を促進する。本実施態様の移動促進工程C0においても、第1実施態様の移動促進工程C0と同様に、接着剤3の移動促進を、樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)が非溶融の状態、好ましくは非軟化の状態で行う。樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)が溶融状態にあるときに、回転ツール16を金属部材11に押圧して、接着剤3の移動を促進すると、接着剤3の移動が十分に促進されないため、押圧部材直下領域120に存在する接着剤の量が十分に低減されない。このため、接合強度の低下を十分に防止できない。図4は、図1におけるX−X断面を矢印方向で見たときの概略断面図である。
本実施態様の移動促進工程C0では、回転ツール16を、第1の加圧力および第1の回転数で、第1の加圧時間だけ金属部材11に押圧する。本工程の第1の加圧力および第1の回転数は、本実施態様の後述の予熱工程C1の第2の加圧力および第2の回転数との関係で通常、以下の条件(1)〜(3)のうち、いずれか1つの条件を満たし、接着剤の移動のさらなる促進の観点から、条件(3)を満たすことが好ましい。
(1)第1の加圧力は第2の加圧力よりも小さい;
(2)第1の回転数は第2の回転数よりも小さい;または
(3)第1の加圧力は第2の加圧力よりも小さく、かつ第1の回転数は第2の回転数よりも小さい。
第1の加圧時間は、本実施態様の後述の予熱工程C1の第2の加圧時間と同等であってもよい。
具体的には、本実施態様の移動促進工程C0において、回転ツールの回転数(すなわち第1の回転数)、第1の加圧力および第1の加圧時間は、樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)を非溶融状態(好ましくは非軟化状態)としつつ、接着剤の移動をさらに促進する観点から、金属部材11の厚みおよび素材の種類および樹脂部材12の融点等に依存して決定される。例えば、1mm以上2mm以下の厚みのアルミニウム合金製金属部材11および150〜190℃の融点の樹脂部材12を使用する場合、回転ツールの第1の回転数、第1の加圧力および第1の加圧時間は例えば、以下の通りである。本実施態様の移動促進工程C0において、回転ツールは回転させなくてもよいし(回転数0rpm)、または回転させてもよい。好ましくは、接着剤が、樹脂部材の融点以下であって、かつ当該接着剤の軟化点以上の温度状態にあるように、回転ツールを回転させる。回転ツールの第1の回転数は、例えば、4000rpm以下(0rpmを含む)であり、接着剤の移動のさらなる促進の観点から、好ましくは10〜2000rpm、より好ましくは10rpm以上500rpm未満である。本実施態様の移動促進工程C0において、第1の加圧力は、樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)が非溶融状態(好ましくは非軟化状態)のときに接着剤の移動が促進される限り、特に限定されず、例えば500N以下(特に10〜500N)であり、接着剤の移動のさらなる促進の観点から、好ましくは10〜200Nである。本実施態様の移動促進工程C0において、第1の加圧時間は、樹脂部材12の金属部材側表面121(特に押圧部材直下領域120)が非溶融状態(好ましくは非軟化状態)のときに接着剤の移動が促進される限り、特に限定されず、通常は0.5秒以上2.0秒未満であり、接着剤の移動のさらなる促進の観点から、好ましくは0.5秒以上1.5秒以下である。本工程において、回転数、加圧力および加圧時間はそれぞれ上記範囲内で調整されてもよい。
(予熱工程C1)
本実施態様において予熱工程C1は行ってもよいし、または行わなくてもよい。本実施態様において予熱工程C1を行う場合、予熱工程C1は、回転ツール16(例えば先端部)を金属部材11に接触させた状態で回転ツールを回転させる。これにより、回転ツール16と金属部材11との間で摩擦熱が発生する。摩擦熱は金属部材11の内部に伝わり、金属部材11の押圧領域P(回転ツール16による押圧領域)の範囲および押圧領域Pの近傍の範囲が予熱される。その結果として、次の押込み撹拌工程C2で、回転ツール16を金属部材11に押込み易くなる。
本実施態様において予熱工程C1は、以下に示すように圧力制御方式を採用すること以外、第1実施態様の予熱工程C1と同様である。
本実施態様の予熱工程C1は、回転ツール16を、第2の加圧力および第2の回転数で、第2の加圧時間だけ金属部材11に押圧する。本工程の第2の加圧力および第2の回転数は、本実施態様の前述の移動促進工程C0の第1の加圧力および第1の回転数との関係で通常、上記した条件(1)〜(3)のうち、いずれか1つの条件を満たし、接着剤の移動のさらなる促進の観点から、上記した条件(3)を満たすことが好ましい。
本実施態様の予熱工程C1では、回転ツール16の金属部材11との接着により金属部材11の表面部(図例では上面部)で摩擦熱が発生する。摩擦熱は金属部材11の内部に伝わり、金属部材11の押圧領域P(回転ツール16による押圧領域)の範囲および押圧領域Pの近傍の範囲が予熱される。これにより、次の押込み撹拌工程C2で、回転ツール16を金属部材11に押込み易くなる。
具体的には、本実施態様の予熱工程C1において、回転ツールの回転数(すなわち第2の回転数)、第2の加圧力および第2の加圧時間は、金属部材11の厚みおよび素材の種類および樹脂部材12の融点等に依存して決定される。例えば、1mm以上2mm以下の厚みのアルミニウム合金製金属部材11および150〜190℃の融点の樹脂部材12を使用する場合、回転ツールの第2の回転数、第2の加圧力および第2の加圧時間は例えば、以下の通りである。回転ツールの第2の回転数は、例えば、2000rpm以上4000rpm以下であり、回転ツール16の押込み易さの観点から、好ましくは2500rpm以上3500rpm以下である。本実施態様の予熱工程C1において、第2の加圧力は通常、600N以上1300N未満であり、次の押込み撹拌工程C2での回転ツール16の押込み易さの観点から、好ましくは800N以上1100N以下である。本実施態様の予熱工程C1において、第2の加圧時間は通常、0.5秒以上2.0秒未満であり、次の押込み撹拌工程C2での回転ツール16の押込み易さの観点から、好ましくは0.5秒以上1.5秒以下である。本工程において、回転数、加圧力および加圧時間はそれぞれ上記範囲内で調整されてもよい。
(押込み撹拌工程C2)
本実施態様において押込み撹拌工程C2は、以下に示すように圧力制御方式を採用すること以外、第1実施態様の押込み撹拌工程C2と同様である。本実施態様においても、押込み撹拌工程C2では、回転ツール16と受け具17とを相互に近接させることにより、図5および図6に示すように、回転ツール16を金属部材11に押し込む。押込み撹拌工程C2を予熱工程C1に次いで行う場合には、回転ツール16と受け具17とをさらに相互に近接させることにより、図5および図6に示すように、回転ツール16を金属部材11に押し込む。これにより、回転ツール16を金属部材11と樹脂部材12との接合境界面13に達しない深さまで進入させる。このとき、金属部材11の回転ツール直下部110を、図5および図6に示すように、樹脂部材12側に突出変形させることが好ましい。これにより、回転ツールの直下領域で溶融している樹脂部材表面の溶融樹脂120について、その溶融と該直下領域から外側に向けて(図5および図6の矢印方向へ)の流動を促進させ、移動促進工程C0で外側に移動していた接着剤をさらに外側に向けて流動させ得る。その結果、押圧部材直下領域120に存在する接着剤の量が十分に低減され、接合強度の低下を十分に防止できる。
詳しくは、本実施態様の押込み撹拌工程C2では、回転ツール16を、第2の加圧力より大きい第3の加圧力で、第2の加圧時間より短い第3の加圧時間だけ、所定回転数で回転させる。
本実施態様において押込み撹拌工程C2では、加圧力が予熱工程C1よりも大きくなることにより、回転ツール16が金属部材11に押し込まれる。すなわち、回転ツール16が金属部材11の内部に深く進入する。好ましくは、この回転ツール16の押込みにより、金属部材11の回転ツール直下部110において、金属部材11と樹脂部材12との接合境界面13が受け具17側(図例では下側)に移動し、当該直下部110が樹脂部材12側に突出変形する。本押込み撹拌工程C2およびこの後に好ましく行われる撹拌維持工程C3により、接合境界面13において回転ツールの直下領域で溶融している樹脂部材表面の溶融樹脂120の溶融が促進されると共に、該直下領域を超えて、その外側領域まで流動する(図5の矢印方向)。溶融樹脂は回転ツール直下領域を中心とする略円形状で広がり、移動促進工程C0で外側に移動していた接着剤をさらに外側に流動させ得る。
仮に、回転ツール16がさらに押し込まれると(つまり加圧力が高過ぎおよび/又は加圧時間が長過ぎると)、回転ツール16のショルダ部16bが上記接合境界面を超える。すなわち、回転ツール16が金属部材11を貫通し、回転ツール16の外周部が樹脂部材12に接触する。すると、金属部材11に回転ツール16が通過した孔が開いた孔開き状態となり、接合不良が起きる。
そこで、この押込み撹拌工程C2において、回転ツール16のショルダ部16bが上記接合境界面に達しない深さまで進入した時点で、回転ツール16の押込みを停止する。換言すれば、回転ツール16を上記接合境界面に達しない深さまで進入させる。これにより、次の撹拌維持工程C3で、樹脂部材12に近い基準位置で摩擦熱が発生し、多量の摩擦熱が樹脂部材12に伝わり、樹脂部材12の軟化および溶融が促進される。
具体的には、本実施態様の押込み撹拌工程C2において、回転ツールの回転数(すなわち第3の回転数)、第3の加圧力および第3の加圧時間は、金属部材11の厚みおよび素材の種類および樹脂部材12の融点等に依存して決定される。例えば、1mm以上2mm以下の厚みのアルミニウム合金製金属部材11および150〜190℃の融点の樹脂部材12を使用する場合、回転ツールの第3の回転数、第3の加圧力および第3の加圧時間は例えば、以下の通りである。回転ツールの第3の回転数は、例えば、2000rpm以上4000rpm以下であり、回転ツール16の押込み易さの観点から、好ましくは2500rpm以上3500rpm以下である。本実施態様の押込み撹拌工程C2において、第3の加圧力は通常、1300N以上2200N未満であり、回転ツール16の押込み易さの観点から、好ましくは1400N以上2000N以下である。本実施態様の押込み撹拌工程C2において、第3の加圧時間は通常、0.1秒以上0.5秒未満であり、回転ツール16の押込み易さの観点から、好ましくは0.1秒以上0.4秒以下である。本工程において、回転数、加圧力および加圧時間はそれぞれ上記範囲内で調整されてもよい。
(撹拌維持工程C3)
本実施態様において撹拌維持工程C3は、以下に示すように圧力制御方式を採用すること以外、第1実施態様の撹拌維持工程C3と同様である。本実施態様においても、撹拌維持工程C3では、回転ツール16と受け具17との相互近接を停止することにより、上記接合境界面13に達しない深さまで進入させた位置(これを「基準位置」という)で回転ツール16の回転動作を継続させる工程である。撹拌維持工程C3では、回転ツール16を、第2の加圧力より小さい第4の加圧力(例えば、600N未満)で、第2の加圧時間より長い第4の加圧時間(例えば、2.75〜6.75秒)だけ、所定回転数(例えば、3000rpm)で回転させる。
詳しくは本実施態様の撹拌維持工程C3では、回転ツールを、第2の加圧力より小さく、かつ第1の加圧力以上の第4の加圧力で押圧しつつ第2の加圧時間より長い第4の加圧時間だけ回転させる。本撹拌維持工程C3において加圧力(すなわち第4の加圧力)が予熱工程C1の加圧力(すなわち第2の加圧力)よりも小さくなることにより(もちろん押込み撹拌工程C2よりも小さくなることにより)、回転ツール16が上記基準位置にほぼ維持される。この樹脂部材12に近い基準位置で回転ツール16の回転動作が継続されるため、多量の摩擦熱が発生し、発生した摩擦熱の大部分が樹脂部材12に移動する。そのため、樹脂部材12は、押圧領域P直下の領域の範囲を超えて、広い範囲で十分に軟化および溶融する。本撹拌維持工程C3では、加圧力(すなわち第4の加圧力)は通常、移動促進工程C0の加圧力(すなわち第1の加圧力)以上である。
具体的には、本実施態様の撹拌維持工程C3において、回転ツールの回転数(すなわち第4の回転数)、第4の加圧力および第4の加圧時間は、金属部材11の厚みおよび素材の種類および樹脂部材12の融点等に依存して決定される。例えば、1mm以上2mm以下の厚みのアルミニウム合金製金属部材11および150〜190℃の融点の樹脂部材12を使用する場合、回転ツールの第4の回転数、第4の加圧力および第4の加圧時間は例えば、以下の通りである。回転ツールの第4の回転数は、例えば、2000rpm以上4000rpm以下であり、樹脂部材12の溶融の観点から、好ましくは2500rpm以上3500rpm以下である。本実施態様の撹拌維持工程C3において、第4の加圧力は通常、600N未満(特に100N以上600N未満)であり、樹脂部材12の溶融の観点から、好ましくは200N以上500N以下である。本実施態様の撹拌維持工程C3において、第4の加圧時間は通常、2.0秒以上8.5秒未満であり、樹脂部材12の溶融の観点から、好ましくは2.0秒以上8.0秒以下である。本工程において、回転数、加圧力および加圧時間はそれぞれ上記範囲内で調整されてもよい。
本実施態様においても、撹拌維持工程C3を行う場合、撹拌維持工程C3を行った後は、通常、放置冷却することにより、固化が達成される。
本実施態様において撹拌維持工程C3を行わない場合、押込み撹拌工程C2を行った後、通常、放置冷却することにより、固化が達成される。
本実施態様(圧力制御方式)において、特に各工程の加圧力は、好ましくは、以下の関係を有する。
第1の加圧力(移動促進工程)≦第4の加圧力(撹拌維持工程)<第2の加圧力(予熱工程)<第3の加圧力(押込み撹拌工程)
(3)金属部材
本発明において使用される金属部材11は、図1等において、全体形状として略平板形状を有しているが、これに限定されるものではなく、少なくとも樹脂部材12と重ね合わせる部分が略平板形状を有する限り、いかなる形状を有していてもよい。金属部材11における樹脂部材12と重ね合わせる部分は両面ともに通常、平面から構成されている。
金属部材11において樹脂部材12と重ね合わせる略平板形状部分の厚みT(接合処理前の厚み;図3参照)は通常、0.5〜4mmであるがこれに限定されるものではない。
金属部材11を構成する金属としては、融点が、樹脂部材12を構成する熱可塑性ポリマーよりも高いあらゆる金属が使用可能である。中でも、自動車の分野で使用されている以下の金属および合金が好ましく使用される:
アルミニウム;
5000系、6000系などのアルミニウム合金;
スチール;
マグネシウムおよびその合金;
チタンおよびその合金。
金属部材11を構成する好ましい金属はアルミニウムおよびアルミニウム合金である。
(4)樹脂部材
本発明において使用される樹脂部材12は熱可塑性ポリマーを含み、強化繊維をさらに含んでもよい。
樹脂部材12を構成する熱可塑性ポリマーとしては、熱可塑性を有するあらゆるポリマーが使用可能である。中でも、自動車の分野で使用されている熱可塑性ポリマーが好ましく使用される。そのような熱可塑性ポリマーの具体例として、例えば、以下のポリマーおよびそれらの混合物が挙げられる:
ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂およびその酸変性物;
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル系樹脂;
ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)などのポリアクリレート系樹脂;
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンエーテル(PPE)などのポリエーテル系樹脂;
ポリアセタール(POM);
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー系樹脂(ABS);
ポリフェニレンサルファイド(PPS);
PA6、PA66、PA11、PA12、PA6T、PA9T、MXD6などのポリアミド系樹脂(PA);
ポリカーボネート系樹脂(PC);
ポリウレタン系樹脂;
フッ素系ポリマー樹脂;および
液晶ポリマー(LCP)。
樹脂部材12を構成する熱可塑性ポリマーとしては、安価で機械特性に優れるポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレンが好ましく使用される。
熱可塑性ポリマーの分子量は特に限定されるものではなく、例えば230℃でのMFR(メルトフローレート値)が2〜200g/10分間、特に2〜55g/10分間となるような分子量であればよい。
本明細書中、ポリマーのMFRはJIS K 7210により測定された値を用いている。
樹脂部材12は、図1等において、全体形状として略平板形状を有しているが、これに限定されるものではなく、接合のために金属部材11と重ね合わせたときに、金属部材11直下の部分が略平板形状を有する限り、いかなる形状を有していてもよい。樹脂部材12における金属部材11直下の部分は両面ともに通常、平面から構成されている。
樹脂部材12における金属部材11直下の部分の厚みt(接合処理前の厚み;図3参照)は通常、2〜10mm、特に2〜5mmであるがこれに限定されるものではない。
樹脂部材12に含有されてもよい強化繊維の種類としては、特に制限されず、例えば、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。強化繊維は、ポリマー含有複合材料の分野で、強度向上のために、ポリマー中に均一に含有および分散される繊維であり、一般に、連続繊維と不連続繊維とに大別されるが、本発明において強化繊維は、いずれの繊維であってもよい。
強化繊維の含有量は通常、樹脂部材全量に対して1重量%以上、特に10〜50重量%であり、好ましくは20〜50重量%、より好ましくは30〜50重量%である。
樹脂部材12には、強化繊維以外の添加剤、例えば安定剤、難燃剤、着色材、発泡剤などがさらに含有されてもよい。
樹脂部材12は、熱可塑性ポリマーおよび強化繊維ならびに所望の添加剤を含む混合物を、射出成形法、プレス成形法などの成形法に供することにより、製造することができる。
樹脂部材12の融点Tmは樹脂部材12の種類によって異なり、通常、130〜350℃、特に150〜200℃である。樹脂部材12の融点Tmは樹脂部材12を構成する熱可塑性ポリマーの融点であってもよい。
樹脂部材12の融点Tmは、JIS7121により測定された値を用いている。
[樹脂部材]
炭素繊維を40重量%含むポリプロピレンペレット(PP−CF40−11;ダイセルポリマー社製)を用いて射出成形法により、縦100mm×横30mm×厚み3mm寸法の樹脂部材12を製造した。樹脂部材において炭素繊維の平均繊維長は3mm、平均繊維径は7μmであった。樹脂部材の融点Tmは170℃であった。樹脂部材において炭素繊維はランダムに配向していた。
[金属部材]
金属部材としては、6000系のアルミニウム合金製の平板状部材(縦100mm×横30mm×厚さ1.2mm)を用いた。
[回転ツール]
回転ツールは、ピン部16aを有さない回転ツール、詳しくは、図2においてD1=10mm、D2=0mmおよびh=0mmの寸法を有する回転ツール16(工具鋼製)を用いた。
[実施例A1](位置制御方式)
以下の方法により、金属部材11と樹脂部材12との接合体を製造した。
第1ステップ:
金属部材11の端部と樹脂部材12の端部とを、図1および図3に示すようにそれらの間に接着剤3を介在させた状態で、重ね合わせた。このとき、接着剤(層)3の厚みは0.3mmであった。接着剤3として、エポキシ系加熱硬化型接着剤(硬化温度:約150℃、最軟化点:50℃)を使用した。
第2ステップ:
まず、回転ツール16で金属部材11を押圧して、接着剤3の移動促進工程C0を行った。詳しくは、図4に示すように、回転ツール16で金属部材11を押圧して、樹脂部材12の金属部材側表面121の押圧部材直下領域120からその外側に向けて(図4の矢印方向へ)接着剤3の移動を促進した。金属部材側表面121は非軟化状態であった。移動促進工程C0:進入量0.1mm、進入速度30mm/秒、ツール回転数100rpm。
次いで、予熱工程C1を行うことなく、図5および図6に示すように、回転ツール16を金属部材11に押し込んで、金属部材11と樹脂部材12との接合境界面13に達しない深さまで進入させた。このとき、回転ツールの直下領域で溶融している樹脂部材表面の溶融樹脂120が、押圧部材直下領域120からその外側に向けて(図5および図6の矢印方向へ)、接着剤と共に流動した。押込み撹拌工程C2:進入量1.8mm、進入速度30mm/秒、ツール回転数3000rpm。
その後、回転ツール16を金属部材11から離間させ、放置冷却を行い、接合体を得た。
[実施例A2〜A4および比較例A1〜A4]
接合条件を表1に記載のように変更したこと以外、実施例A1と同様の方法により、樹脂部材と金属部材との接合を行った。
[接合強度S]
図7に示すように、金属部材11と樹脂部材12との接合体を治具100内に配置した。治具100は、該治具100を下方へ引っ張ることにより樹脂部材12の上端部に下方への力が働くように構成されたものである。治具100を固定し、かつ金属部材11を上方へ引っ張ることにより、樹脂部材12の上端部に下方への力が働き、樹脂部材12の母材強度に影響を受けることなく接合部の剪断引張強度Sを測定した。なお、接合強度(剪断引張強度)の測定は、各実施例/比較例の接合操作終了後、10分以内に行った。本実施例/比較例には加熱硬化型接着剤を使用しているが、接合中の加熱では接着剤の硬化には至らない。また、常温硬化型接着剤を使用する場合でも本試験方法により接着剤の硬化前の接合強度を測定することができる。このため、当該接合強度にとって、接着剤の介在による効果は悪影響のみに基づいている。しかしながら、いずれの実施例においても、接着剤を追加熱もしくは室温放置により十分に硬化させた後に測定した接合強度は、溶融固化領域61外に排出された接着剤による接合強度が発現することにより、硬化前の接合強度より大きな値となり、結果として接着剤が介在しない場合の接合強度よりも大きな値を示した。これらの結果より、接着剤と他の接合手法を組み合わせて使用する場合に大きな問題となる、接着剤が十分硬化しない状態における接合への接着剤の悪影響に対し、本発明が効果を発揮することが明らかである。
Figure 2020138455
表1において、一見すると、実施例の中には、比較例よりも接合強度が低い実施例が存在する。しかし、実施例は押込み撹拌工程C2の工程時間が近似する比較例と比較するべきである。すなわち、実施例A1およびA3は比較例A1と比較するべきであり、実施例A2およびA4は比較例A2と比較するべきである。従って、実施例A1およびA3の接合強度を比較例A1の接合強度に対する割合(上昇率)で示した。実施例A2およびA4の接合強度Sを比較例A2の接合強度に対する割合(上昇率)で示した。これらの上昇率について評価した。
◎:140%以上(最良);
〇:130%以上140%未満(良好);
△:110%以上130%未満(合格);
×:110%未満(不合格)。
実施例A1で得られた接合体から金属部材を強制的に剥離させ、樹脂部材の金属部材側表面を観察したときの樹脂部材の表面写真を図8Aに示す。
比較例A1で得られた接合体から金属部材を強制的に剥離させ、樹脂部材の金属部材側表面を観察したときの樹脂部材の表面写真を図8Bに示す。
図8Aおよび図8Bにおいて、中央の白変色領域(樹脂凝集破壊領域)が接合領域Aであり、樹脂溶融範囲の中で白変色が生じていない外周領域が、接着剤成分が残存し、接合強度が低い領域Bである。図8Aおよび図8Bより、本発明の接合方法により、領域Bの範囲が小さくなり、領域Aの範囲が拡大していることが確認できる。
本発明に係る接合方法は、自動車、鉄道車両、航空機、家電製品等の分野における金属部材と樹脂部材との接合に有用である。
1:摩擦撹拌接合装置
10:ワーク
11:金属部材
12:樹脂部材
13:金属部材と樹脂部材との接合境界面
16:回転ツール
17:受け具
100:接合強度を測定するための治具
110:金属部材の回転ツール直下部
P:押圧領域(押圧予定領域)
120:樹脂部材における回転ツール直下領域の表層部
121:樹脂部材の金属部材側表面

Claims (17)

  1. 金属部材と樹脂部材とを、両者間に接着剤を介在させた状態で、重ね合わせ、押圧部材により圧力および熱を金属部材側から付与することにより前記樹脂部材を溶融させて金属部材と樹脂部材とを接合する熱圧式接合方法による金属部材と樹脂部材との接合方法であって、
    前記樹脂部材の金属部材側表面が非溶融の状態で、前記圧力により、平面視において前記金属部材側表面の押圧部材直下領域からその外側に向けての前記接着剤の移動を促進する、金属部材と樹脂部材との接合方法。
  2. 前記樹脂部材の金属部材側表面が非軟化の状態で、前記圧力により、前記接着剤の移動を促進する、請求項1に記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  3. 前記接着剤の移動促進のとき、該接着剤は、前記樹脂部材の融点以下であって、かつ該接着剤の軟化点以上の温度状態にある、請求項1または2に記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  4. 前記接着剤の移動を促進した後、前記圧力および前記熱により、前記樹脂部材を溶融させ、溶融した樹脂を、前記平面視において前記押圧部材直下領域からその外側に向けて、前記接着剤と共に流動させる、請求項1〜3のいずれかに記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  5. 前記熱圧式接合方法が、
    金属部材と樹脂部材とを両者間に接着剤を介在させた状態で重ね合わせる第1ステップ;および
    前記押圧部材として回転ツールを前記金属部材に押圧して前記接着剤の移動を促進した後、前記回転ツールの回転により摩擦熱を発生させ、該摩擦熱により樹脂部材を軟化および溶融させて金属部材と樹脂部材とを接合する第2ステップを含む摩擦撹拌接合方法である、請求項1〜4のいずれかに記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  6. 前記第2ステップにおいて位置制御方式を採用し、
    前記第2ステップが、
    前記回転ツールを前記金属部材に押圧して前記接着剤の移動を促進する移動促進工程;および
    前記回転ツールを回転させつつ金属部材に押し込んで、前記金属部材と前記樹脂部材との接合境界面に達しない深さまで進入させる押込み撹拌工程
    を含む、請求項5に記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  7. 前記移動促進工程では前記回転ツールを、前記金属部材の厚みをTとしたとき、0.2×T以下の進入量および4000rpm以下の回転数で、前記金属部材に押圧し、
    前記押込み撹拌工程では前記回転ツールを、前記金属部材の厚みをTとしたとき、0.4×T〜0.9×Tの進入量まで、2000〜4000rpmの回転数および1〜300mm/分の進入速度で、前記金属部材に進入させる、請求項6に記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  8. 前記第2ステップが、前記移動促進工程の後であって前記押込み撹拌工程の前に、
    前記回転ツールを前記金属部材に接触させた状態で前記回転ツールを回転させる予熱工程
    をさらに含み、
    前記予熱工程では前記回転ツールを、移動促進工程で進入させたツール位置で、5秒以下の保持時間にて、1000rpm以上4000rpm以下の回転数で保持する、請求項7に記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  9. 前記第2ステップがさらに、
    前記回転ツールを前記押込み撹拌工程で進入させた位置で、回転ツールの回転動作を継続させる撹拌維持工程;
    を含み、
    前記撹拌維持工程では回転ツールを、前記押込み撹拌工程で進入させた位置で、1秒以上の保持時間にて、2000〜4000rpmの回転数で保持する、請求項6〜8のいずれかに記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  10. 前記第2ステップにおいて圧力制御方式を採用し、
    前記第2ステップが、
    前記回転ツールを前記金属部材に押圧して前記接着剤の移動を促進する移動促進工程;
    前記回転ツールを前記金属部材に接触させた状態で前記回転ツールを回転させる予熱工程;
    前記回転ツールを金属部材に押し込んで、金属部材と樹脂部材との接合境界面に達しない深さまで進入させる押込み撹拌工程;および
    前記回転ツールを前記押込み撹拌工程で進入させた位置で、回転ツールの回転動作を継続させる撹拌維持工程
    を含む、請求項5に記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  11. 前記移動促進工程では回転ツールを第1の加圧力および第1の回転数にて金属部材に押圧し、
    前記予熱工程では回転ツールを第2の加圧力および第2の回転数にて金属部材に第2の加圧時間で押圧し、
    前記第1の加圧力、前記第1の回転数、前記第2の加圧力および前記第2の回転数は、以下の条件(1)〜(3)のうち、いずれか1つの条件を満たし、
    前記押込み撹拌工程では回転ツールを前記第2の加圧力より大きい第3の加圧力で押圧しつつ前記第2の加圧時間より短い第3の加圧時間だけ回転させ、
    前記撹拌維持工程では回転ツールを、前記第2の加圧力より小さく、かつ前記第1の加圧力以上の第4の加圧力で押圧しつつ上記第2の加圧時間より長い第4の加圧時間だけ回転させる、請求項10に記載の金属部材と樹脂部材との接合方法:
    (1)第1の加圧力は第2の加圧力よりも小さい;
    (2)第1の回転数は第2の回転数よりも小さい;または
    (3)第1の加圧力は第2の加圧力よりも小さく、かつ第1の回転数は第2の回転数よりも小さい。
  12. 前記移動促進工程において、第1の加圧力を500N以下の範囲で調整し、
    前記予熱工程において、第2の加圧力を600N以上1300N未満の範囲で調整し、
    前記押込み撹拌工程において、第3の加圧力を1300N以上2200N未満の範囲で調整し、
    前記撹拌維持工程において、第4の加圧力を600N未満の範囲で調整する、請求項11に記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  13. 前記移動促進工程において、回転ツールの回転数を4000rpm以下の範囲で調整し、
    前記予熱工程、前記押込み撹拌工程および前記撹拌維持工程において、それぞれ独立して、回転ツールの回転数を2000rpm以上4000rpm以下の範囲で調整する、請求項12に記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  14. 前記金属部材の厚みTが0.5〜4mmである、請求項1〜13のいずれかに記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  15. 前記金属部材がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、
    前記樹脂部材が130〜350℃の融点Tmを有する、請求項1〜14のいずれかに記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  16. 金属部材と樹脂部材とを、両者間に接着剤を介在させた状態で、重ね合わせ、押圧部材により圧力および熱を金属部材側から付与することにより前記樹脂部材を溶融させて金属部材と樹脂部材とを接合する熱圧式接合方法による金属部材と樹脂部材との接合方法であって、
    前記樹脂部材の金属部材側表面が非溶融の状態で、前記圧力により、平面視において前記金属部材側表面の押圧部材直下領域からその外側に向けての前記接着剤の移動が促進されるように押圧部材の駆動を制御する駆動制御装置を含む、金属部材と樹脂部材との接合装置。
  17. 請求項1〜15のいずれかに記載の金属部材と樹脂部材との接合方法を実施するための、請求項16に記載の金属部材と樹脂部材との接合装置。
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