以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る充電装置及び充電方法を具体的に開示した実施形態である車載用の充電器を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
(実施形態1)
図1は、実施形態1における充電器1の構成を示すブロック図である。充電器1は、例えば、車両に搭載され、車載バッテリからバッテリ電圧(入力電圧の一例)が供給されて動作する。車載バッテリは、例えば12V〜16Vのバッテリ電圧を充電器1に供給可能である。充電器1は、筐体1zに配置された2個のUSB(Universal Serial Bus)コネクタ11,12を有する。充電器1は、バッテリ電圧を使用し、2個のUSBコネクタ11,12にそれぞれ接続された2台のモバイルデバイス21,21を、USBケーブルを介して充電する。充電器1及びモバイルデバイス21,22等の装置側の接続部分(USBコネクタ)は、USBレセプタクルとなり、USBケーブル側の接続部分は、USBプラグとなる。
モバイルデバイス21,21は、充電される電子機器の一例であり、例えばカーナビゲーション等のアプリを実行可能なスマートフォン等の端末でよい。電子機器としては、スマートフォンに限らず、タブレット端末、スマートスピーカ、デジタルフォトフレーム、デジタルカメラ、ノートPC等、特に限定されない。また、充電器1は、バッテリの電極端子に接続されてバッテリ電圧の供給を直接受けてもよいし、車のシガーソケットを介してバッテリ電圧の供給を受けてもよい。
充電器1は、USBコネクタ11,12、検知部13、制御部14、通信部15、給電部16、及び記憶部18を含む構成である。USBコネクタが2個であることを主に例示するが、3個以上でもよい。
USBコネクタ11,12は、USB Type−CのUSBに対応するコネクタである。USB Type−CのUSBコネクタのピン配列及び機能については後述する。USBコネクタ11,12は、USB Type−Cに従い、PD(Power Delivery)機能を有しても有しなくてもよい。
検知部13は、USBコネクタ11,12にそれぞれ接続されるモバイルデバイス21,22の接続の有無を検知する。検知部13は、USBコネクタ11,12を介して、モバイルデバイス21,22がそれぞれ充電器1から引き込む電流を検知する。検知部13は、例えば、検知抵抗を有し、引き込む電流を検知する際、検知抵抗を流れる電流を検知してよい。
制御部14は、充電器1の各部の動作を制御する。制御部14は、例えば、プロセッサが記憶部18に保持されたプログラムを実行することで、各種機能を実現する。プロセッサは、MPU(Micro processing Unit)、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、等を含んでよい。
制御部14は、モバイルデバイス21,22によって引き込まれる電流の合計が最大許容電流Imaxを超える場合、各モバイルデバイス21,22に供給可能な最大の電流である最大供給電流Iamax,Ibmaxを算出してよい。制御部14は、各モバイルデバイス21,22との間で電力供給(充電)に関するネゴシエーションを行った結果、PD契約が成立すると、給電部16を制御し、各モバイルデバイス21,22への充電を開始させてよい。PD契約では、充電器1から各モバイルデバイス21,22への供給電圧や最大供給電流が決定されてよい。
記憶部18は、各種データ、情報、プログラム、等を記憶してよい。記憶部18は、一次記憶装置(例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory))を含む。記憶部18は、二次記憶装置(例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive))や三次記憶装置(例えば光ディスク、SDカード)を含んでよい。
通信部15は、外部装置との間で各種データ、情報を通信する。通信部15は、USBコネクタ11,12の通信ラインCCを用いて、それぞれモバイルデバイス21,22とPD通信を行う。通信部15は、PDプロトコルに則って、各モバイルデバイス21,22とネゴシエーションを行う。通信部15は、各モバイルデバイス21,22に対して、供給電圧や最大供給電流の情報を含むPDリストを送信してよい。PDリストは、供給可能な最大供給電流Iamax,Ibmaxの情報を含んでよい。PDリストは、PDプロトコルに含まれるSource_Capabilitiesを用いて通信されてよい。PDリストの送信は、供給電力(例えば供給電圧、最大供給電流)の告知に相当する。各モバイルデバイス21,22は、充電器1からのPDリストを受信し、PDリストに基づいて、充電器1に対して要求する供給電圧及び最大供給電流を決定する。通信部15は、各モバイルデバイス21,22から、供給電圧及び最大供給電流の要求情報を含むリクエストメッセージを受信してよい。なお、供給電圧や最大供給電流の導出(例えば算出)や決定は、制御部14により行われてよい。
また、通信部15は、USBコネクタ11,12に接続されたモバイルデバイス21,22がPD通信不能なレガシータイプのUSBを有する場合、USBコネクタ11,12のD−/D+ラインを用いて、モバイルデバイスの種別を認識してよい。通信部15は、モバイルデバイス21,22への供給電圧を例えば5Vにするか9Vにするかのリクエストを、モバイルデバイス21,22に送信し、このリクエストに対し、モバイルデバイス21,22から供給電圧を5Vにする等のレスポンスを受信してよい。
給電部16は、DCDCコンバータ17を有する。DCDCコンバータ17は、バッテリ電圧の直流電圧変換を行い、モバイルデバイス21,22に供給可能な出力電圧(供給電圧)を生成する。給電部16は、DCDCコンバータ17で生成された出力電圧を用いて、モバイルデバイス21,22を充電する。給電部16は、各モバイルデバイス21,22に設定された最大供給電流Iamax,Ibmaxの範囲内で、モバイルデバイス21,22に対し、設定された供給電圧を供給する。
給電部16は、モバイルデバイス21,22へ、所望の供給電力で電力供給(充電)を行う。供給電力(供給電圧、最大供給電流)は、例えば制御部14によりPD契約で決定されてよい。給電部16は、一定電流を供給してモバイルデバイス21,22を充電させてよい(定電流充電)。給電部16は、一定電圧を供給してモバイルデバイス21,22を充電させてよい(定電圧充電)。
図2は、USBの種別(USBタイプ)に対応する電力仕様が登録された電力供給テーブルTb1の登録内容を示す図である。電力供給テーブルTb1は、記憶部18に保持されてよい。
電力供給テーブルTb1に示すように、USBタイプがUSB2.0の場合、供給電圧5.0V、最大供給電流500mA(0.5A)(つまり最大供給電流以下の供給電流)で電力供給が可能である。USBタイプがUSB3.1の場合、供給電圧5.0V、最大供給電流900mA(0.9A)で電力供給が可能である。USBタイプがUSB BC1.2の場合、供給電圧5.0V、最大供給電流1.5Aで電力供給が可能である。
また、USBタイプがUSB Type−C Current@1.5Aの場合、供給電圧5.0V、最大供給電流1.5Aで電力供給が可能である。USBタイプがUSB Type−C Current@3.0Aの場合、供給電圧5.0V、最大供給電流3.0Aで電力供給が可能である。なお、@1.5A及び@3.0Aは、供給可能な最大供給電流を示している。USBタイプがUSB Type−C Currentの場合、CC1端子又はCC2端子のプルアップ抵抗Rpを変えることで、充電器1は、最大供給電流を調整可能である。例えば、プルアップ抵抗Rpを標準値の56kΩから22kΩに変更することで、最大供給電流が1.5Aになる。例えば、プルアップ抵抗Rpを標準値の56kΩから10kΩに変更することで、最大供給電流が3.0Aになる。
また、USBタイプがUSB PDの場合、最大供給電圧20V(つまり最大供給電圧以下の供給電圧)、最大供給電流5Aで電力供給が可能である。USB PDは、PD通信のネゴシエーションやPD契約可能なUSBである。USB PDは、USB Type−Cの一種である。
図3は、USBコネクタ11,12のピン配列の一例を示す図である。USB Type−Cでは、通信速度10Gbpsの高速通信が可能である。また、USBコネクタでは、PD機能として、最大供給電圧20V、最大供給電力100Wの電力供給が可能であり、供給可能な電力が可変である。また、USB Type−Cでは、オルタネートモード(制御モード)により他のコネクタと互換性がある。
USB Type−Cのコネクタは、ピン端子A1〜A12、ピン端子B1〜B12の上下2段、24ピンのピン配列を有する。ピン端子A1〜A12は、それぞれGND(接地用)、SSTXp1(SuperSpeed信号線1番、TX、正極)、SSTXn1(SuperSpeed信号線1番、TX、負極)、VBUS(バス電源)、CC1(接続コンフィグ用)、D+(Dp1、非SuperSpeed信号線1番、正極)、D−(Dn1、非SuperSpeed信号線1番、負極)、SBU(サイドバンド(SBU))、VBUS(バス電源)、SSRXn2(SuperSpeed信号線4番、RX、負極)、SSRXp2(SuperSpeed信号線4番、RX、正極)、GND(接地用)の端子である。ピン端子B1〜B12は、それぞれGND(接地用)、SSTXp2(SuperSpeed信号線3番、TX、正極)、SSTXn2(SuperSpeed信号線3番、TX、負極)、VBUS(バス電源)、CC2(接続コンフィグ用)、D+(Dp2、非SuperSpeed信号線2番、正極)、D−(Dn2、非SuperSpeed信号線2番、負極)、SBU2(サイドバンド(SBU))、VBUS(バス電源)、SSRXn1(SuperSpeed信号線2番、RX、負極)、SSRXp1(SuperSpeed信号線2番、RX、正極)、GND(接地用)の端子である。
これらのピン端子のうち、D+端子とD−端子は、データを伝送する信号線の端子である。CC1端子及びCC2端子は、レガシータイプのUSB(USB PD以外のUSB)を認識するために使用され、PD通信に使用される。
充電器1のUSBコネクタ11,12のVBUS端子とモバイルデバイス21,22のUSBコネクタのVBUS端子を通って、VBUSラインLsが形成される。VBUSラインLsは、充電器1からスマートフォン3へ電力を供給するためのラインである。充電器1のUSBコネクタ11,12のCC1端子又はCC2端子とモバイルデバイス21,22のUSBコネクタのCC1端子又はCC2端子とを通って、通信ラインCCが形成される。充電器1のUSBコネクタ11,12のD+端子又はD−端子とモバイルデバイス21,22のUSBコネクタのD+端子又はD−端子とを通って、D+/D−ラインが形成される。
充電器1にUSBコネクタ11,12及びUSBケーブル(図示せず)を介してモバイルデバイス21,22が接続される場合、充電器1が電力を供給する側、つまりDFP(Downstream-Facing Port)側となり、モバイルデバイス21,22が電力を受ける側、つまりUFP(Upstream-Facing Port)側となる。
USBケーブルがDFP側のUSBコネクタ11,12及びUFP側のUSBコネクタに接続されていない場合、DFP側のCC1端子又はCC2端子は、プルアップ抵抗Rpにより例えば5Vである。一方、UFP側のCC1端子及びCC2端子は、プルダウン抵抗Rdによりいずれも0Vである。
USBケーブルがDFP側のUSBコネクタ11,12、UFP側のUSBコネクタそれぞれに接続されると、DFP側のCC1端子又はCC2端子は、USBケーブルを通して、自身のプルアップ抵抗RpとUFP側のプルダウン抵抗RdでUFP側のCC1端子又はCC2端子に接続される。したがって、DFP側のCC1端子又はCC2端子は、プルアップ抵抗Rpとプルダウン抵抗Rdの抵抗分圧により一定の電圧にセットされる。DFP側である充電器1とUFP側であるモバイルデバイス21,22との接続が確立する。PD通信では、充電器1及びモバイルデバイス21,22間で通信ラインCCを介した電力供給(充電)に関するデータ通信(リクエストやレスポンス)が行われてよい。
次に、最大許容電流Imaxの導出例について説明する。最大許容電流の導出は、制御部14により行われてよい。
最大許容電流Imaxは、充電器1が複数のモバイルデバイス21,22に対して全体で(合計で)供給可能な電流を表す。最大許容電流Imaxは、ICモジュールで構成されるDCDCコンバータ17の仕様によって決定される。最大許容電流Imaxは、DCDCコンバータ17のICモジュールで規定されるジャンクション温度Tj(ICモジュールが取り付けられる放熱器の接合温度)が最大値(例えば、人が触れても火傷しない程度の高温)を超えないように、設定される。ジャンクション温度Tjは、雰囲気温度Ta、雰囲気及びジャンクション間の熱抵抗θj-aを用いて、例えば式(1)で表されてよい。
Tj[℃] = Ta[℃] + Pw[W] × θj-a[℃/W] …… (1)
ここで、損失Pwは、ICモジュールの損失を表す。損失Pwは、出力電力Pout[W]を入力電力Pin[W]で除することで得られる効率ηを用いて、式(2)で表されてよい。なお、実施形態1では、出力電圧が固定(例えば5V)であるので、効率ηは、ほぼ一定の値である。
Pw = Pout × (1−η)/η ……(2)
式(1)に従って、ジャンクション温度Tjが最大値を超えないように、DCDCコンバータ17のICモジュールの損失Pwが設定されると、制御部14は、式(21)に従って、損失Pwと効率ηを基に、出力電力Pout(供給電力)を決定してよい。制御部14は、出力電力Poutを基に、出力電圧(例えば5V)(供給電圧)に対応する最大許容電流Imaxを決定してよい。なお、最大許容電流Imaxは、このような算出により導出されるのではなく、通信部15を介して外部装置から取得されてもよい。
なお、ここでは、最大許容電流Imaxは、ジャンクション温度Tjが高温にならないように、ジャンクション温度Tjを基準に設定されることを示したが、放熱器が人に触れないように配置されている場合、雰囲気温度Taを基準に設定されてもよい。
なお、充電器1は、放熱器との接合部におけるジャンクション温度Tjや、雰囲気温度Taを検知可能な温度センサを含んでもよい。最大許容電流は、雰囲気温度Taによっても変化するので、温度センサによって検知される温度で補正されてもよい。
上記構成を有する充電器1の動作を示す。本実施形態では、充電器1がモバイルデバイス21,22を同じ電圧(例えば5V)の電圧で充電する場合を示す。第1動作例では、モバイルデバイス21,22のいずれも充電器1との間でPD通信可能である場合を示す。第2動作例では、モバイルデバイス21,22のうち、モバイルデバイス21はPD通信可能であるが、モバイルデバイス22はPD通信不能(非対応)である場合を示す。
図4は、充電器1と2台のモバイルデバイス21,22との間における充電制御に関する通信手順を示すシーケンス図である。なお、図4(図4以外でも適用され得る)では、PDリストを単にリストとも記載する。また、供給電圧の値X1と最大供給電流の値Y1との組み合わせを、単にリスト(X1,Y1)とも記載する。また、モバイルデバイスによる供給電圧の要求値X2と最大供給電流の要求値Y2との組み合わせを、単に要求(X2,Y2)とも記載する。
モバイルデバイス21が充電器1のUSBコネクタ11に接続されると、検知部13は、モバイルデバイス21の接続を検知する(T1)。通信部15は、モバイルデバイス21にPDリストを送信する(T2)。このPDリストは、充電器1がモバイルデバイス21に対して供給可能な供給電圧(出力電圧)5V,最大供給電流(最大出力電流)3Aであることを示す情報を含む。
モバイルデバイス21は、充電器1からPDリストを取得し、PDリストに含まれる供給電圧5V,最大供給電流3Aの電力供給が自機の充電に適している場合、充電器1に対し、供給電圧5V,最大供給電流3Aの電力供給を要求するリクエストメッセージを送信する(T3)。充電器1の通信部15は、モバイルデバイス21からの要求(リクエストメッセージ)を受信する。給電部16は、この要求に応じ、USBコネクタ11を介して、供給電圧5V,最大供給電流3Aの電力供給(モバイルデバイス21の充電)を開始する(T4)。なお、最大供給電流の電力供給は、最大供給電流以下の電流を用いた電力供給である。
モバイルデバイス21の充電中、別のモバイルデバイス22が充電器1のUSBコネクタ12に接続されると、検知部13は、モバイルデバイス22の接続を検知する(T5)。通信部15は、手順T2と同様、モバイルデバイス22にPDリストを送信する(T6)。
モバイルデバイス22は、充電器1からPDリストを取得し、PDリストに含まれる供給電圧5V,最大供給電流3Aの電力供給が自機の充電に適している場合、充電器1に対し、供給電圧5V,最大供給電流3Aの電力供給を要求するリクエストメッセージを送信する(T7)。充電器1の通信部15は、モバイルデバイス22からの要求を受信する。給電部16は、この要求に応じ、USBコネクタ12を介して、供給電圧5V,最大供給電流3Aの電力供給(モバイルデバイス22の充電)を開始する(T8)。
検知部13は、モバイルデバイス21,22がそれぞれ引き込む電流Ia,Ibを検知する(T9)。制御部14は、例えば式(3)に従い、モバイルデバイス21,22にそれぞれ供給可能な最大供給電流Iamax,Ibmaxを算出する(T10)。
Iamax = Imax × Ia/(Ia+Ib)
Ibmax = Imax × Ib/(Ia+Ib) …… (3)
T10では、例えば、モバイルデバイス21が引き込む電流が2.8Aであり、モバイルデバイス22が引き込む電流が0.7Aである場合、制御部14は、例えば式(3)に従い、モバイルデバイス21の最大供給電流2.4A及びモバイルデバイス22の最大供給電流0.6Aを算出する。
通信部15は、供給電圧5V,最大供給電流2.4Aで電力供給可能である旨のPDリストをモバイルデバイス21に送信する(T11)。モバイルデバイス21は、受信したPDリストを基に、供給電圧5V,最大供給電流2.4Aの電力供給を要求する(T12)。給電部16は、この要求に応じ、USBコネクタ11を介して、供給電圧5V,最大供給電流2.4Aの電力供給(モバイルデバイス21の充電)を開始する(T13)。
また、通信部15は、供給電圧5V,最大供給電流0.6Aで電力供給可能である旨のPDリストをモバイルデバイス22に送信する(T14)。モバイルデバイス22は、受信したPDリストを基に、供給電圧5V,最大供給電流0.6Aの電力供給を要求する(T15)。給電部16は、この要求に応じ、USBコネクタ12を介して、供給電圧5V,最大供給電流0.6Aの電力供給(モバイルデバイス22の充電)を開始する(T16)。
モバイルデバイス21,22の充電中、モバイルデバイス22が充電器1のUSBコネクタ12から外されると、検知部13は、モバイルデバイス22の充電器1への接続の切断を検知する(T17)。
通信部15は、供給電圧5V,最大供給電流3Aで電力供給可能である旨を示すPDリストをモバイルデバイス21に送信する(T18)。つまり、いずれかのモバイルデバイスの接続の切断が検知されると、通信部15は、PDリストを用いて切断されていないモバイルデバイス21との間で再度ネゴシエーションを行い、制御部14は、切断されていないモバイルデバイス21への供給電圧及び最大供給電流を再決定する。
モバイルデバイス21は、充電器1から受信したPDリストを基に、充電器1に対し、供給電圧5V,最大供給電流3Aの電力供給を要求する(T19)。通信部15は、モバイルデバイス21からの要求を受信すると、給電部16は、この要求に応じ、USBコネクタ11を介して、供給電圧5V,最大供給電流3Aの電力供給(モバイルデバイス21の充電)を開始する(T20)。
図5は、実施形態1の第1動作例における充電器1の充電動作手順を示すフローチャートである。図5では、1台目のモバイルデバイスをモバイルデバイス21、2台目のモバイルデバイスをモバイルデバイス22、として例示する。第1動作例では、モバイルデバイス21、22が共にPD通信可能であることを例示する。
前述したように、検知部13がUSBコネクタ11を介してモバイルデバイス21の接続を検知すると、通信部15は、モバイルデバイス21にPDリストを送信する。このPDリストでは、例えば、供給電圧5V、最大供給電流3A、である。モバイルデバイス21は、このPDリストを基に、充電器1に電力供給を要求する。この要求は、例えば、供給電圧5V、最大供給電流3A、の要求情報を含む。通信部15は、モバイルデバイス21からの要求を受信する。制御部14は、モバイルデバイス21からの要求を基に、モバイルデバイス21への供給電圧及び最大供給電流を決定する。決定された供給電圧及び最大供給電流は、例えば、5V、3A、である。このような手順でPD通信のネゴシエーションが行われ、ネゴシエーションの結果、電力供給に関するPD契約が成立する。
ネゴシエーションの後、給電部16は、決定された供給電圧及び最大供給電流で、モバイルデバイス21を充電する(S1)。モバイルデバイス21の充電中、検知部13は、モバイルデバイス22がUSBコネクタ12を介して充電器1に接続されたか否かを判別する(S2)。モバイルデバイス22が接続されていない場合、給電部16は、S1に戻り、モバイルデバイス21の充電を継続する。
モバイルデバイス22が新たに接続された場合、通信部15は、モバイルデバイス22とネゴシエーションを行い、モバイルデバイス22とPD契約を行う(S3)。このPD契約では、例えば、供給電圧5V,最大供給電流3A、である。給電部16は、PD契約で決定された供給電圧、最大供給電流で、モバイルデバイス22への充電を開始する(S3)。よって、給電部16は、モバイルデバイス21,22の双方に5Vの電圧を供給する。
検知部13は、モバイルデバイス21,22の充電において、モバイルデバイス21,22がそれぞれ引き込む電流Ia,Ibを検知する(S4)。制御部14は、電流Iaと電流Ibを加算した値が最大許容電流Imaxを超えるか否かを判別する(S5)。最大許容電流Imaxを超える場合、制御部14は、例えば式(3)に従い、モバイルデバイス21,22にそれぞれ供給する最大供給電流Iamax,Ibmaxを算出する。通信部15は、算出した最大供給電流Iamaxの情報を含むPDリストをモバイルデバイス21に送信する(S6)。通信部15は、算出した最大供給電流Ibmaxの情報を含むPDリストをモバイルデバイス22に送信する(S6)。
通信部15によりモバイルデバイス21,22からPDリストに基づく電力供給の要求を受信し、PD契約が成立した場合、給電部16は、モバイルデバイス21,22に対し、PD契約で決定された最大供給電流Iamax,Ibmaxで、モバイルデバイス21,22への充電を行う(S7)。
一方、S5において、電流Iaと電流Ibを加算した値が最大許容電流Imaxを超えない場合、給電部16は、現状の最大供給電流を変更せずに、モバイルデバイス21,22への充電を継続する(S8)。
S7又はS8の処理後、検知部13は、モバイルデバイス22の充電器1への接続が切断されたか否かを判別する(S9)。モバイルデバイス22の充電器1への接続が切断されていない場合、給電部16は、S9の動作を繰り返し、モバイルデバイス21,22への充電を継続する。
一方、S9でモバイルデバイス22の充電器1への接続が切断された場合、通信部15は、モバイルデバイス21とネゴシエーションを行い、モバイルデバイス22を考慮しないPD契約をモバイルデバイス21との間で行う。給電部16は、モバイルデバイス21に対し、PD契約に示された条件(例えば供給電圧5V,最大供給電流3A)で、電力供給を行う(S10)。この後、充電器1は、本動作を終了する。
実施形態1の第1動作例によれば、充電器1は、最初には電流制約を設けずに、モバイルデバイス21,22への充電を開始できる。充電器1は、モバイルデバイス21,22が引き込む電流の合計値が最大許容電流Imaxを超える場合には、各モバイルデバイス21,22への最大供給電流Iamax,Ibmaxを制限できる。よって、充電器1は、各モバイルデバイス21,22に対して、最大許容電流Imax以下でなるべく多くの電力供給を可能にできる。
図6は、実施形態1の第2動作例における充電器1の充電動作手順を示すフローチャートである。第2動作例において、第1動作例と同一の処理については、同一の番号を付すことでその説明を省略又は簡略化する。
図6では、1台目のモバイルデバイスをモバイルデバイス21、2台目のモバイルデバイスをモバイルデバイス22、として例示する。また、第2動作例では、モバイルデバイス21はPD通信可能であり、モバイルデバイス22は、例えばレガシータイプのUSB2.0のUSB通信を行いPD通信不能であることを例示する。
ネゴシエーションの後、給電部16は、決定された供給電圧(例えば5V)及び最大供給電流(例えば3A)の電力供給でモバイルデバイス21を充電する(S1)。モバイルデバイス21の充電中、検知部13は、モバイルデバイス22がUSBコネクタ12を介して充電器1に接続されたか否かを判別する(S2)。モバイルデバイス22が接続されていない場合、給電部16は、S1に戻り、モバイルデバイス21の充電を継続する。
モバイルデバイス22が新たに接続された場合、通信部15は、例えば通信ラインCCを用いて、モバイルデバイス22側のUSBの種別を認識する。通信部15は、例えば通信ラインCCを用いて、PD通信が可能か否かに応じてモバイルデバイス22側のUSBの種別を認識してもよい。通信部15は、例えば、通信ラインCCを用いたUSBの種別の認識後に、D+/D−ラインを用いて、SDP(Standard Downstream Port)、CDP(Charging Downstream Port)、DCP(Dedicated Charging Port)の種別を認識してもよい。通信部15がモバイルデバイス22側のUSBの種別を通知して、制御部14が、検知部13により検知されたモバイルデバイス22と接続するためのUSBの種別を認識してよい。ここでは、モバイルデバイス22のUSBの種別は、一例としてUSB2.0である。なお、モバイルデバイス22のUSBの種別は、USB2.0以外でもよい。
通信部15は、USBの種別によりモバイルデバイス22がPD通信不能であることを認識し、PD通信のネゴシエーションを行わずに、所定の供給電圧、所定の最大供給電流で、モバイルデバイス22への充電を開始する(S3A)。この場合、制御部14は、電力供給テーブルTb1を参照し、USBの種別(USB2.0)に対応する充電情報を取得する。この充電情報は、所定の供給電圧5V、所定の最大供給電流500mA(0.5A)であることを示す情報を含む。
検知部13は、モバイルデバイス21,22の充電において、モバイルデバイス21が引き込む電流Iaを検知する(S4A)。制御部14は、電流Iaが最大許容電流Imaxから所定の電流Ibを差し引いた値を超えるか否かを判別する(S5A)。ここでの所定の電流Ibは、モバイルデバイス22への所定の最大供給電流(例えば0.5A)でよい。
電流Iaが最大許容電流Imaxから所定の電流Ibを差し引いた値を超える場合、制御部14は、モバイルデバイス21に供給する最大供給電流Iamaxを、最大許容電流Imaxから電流Ib(0.5A)を差し引いた値に決定する。通信部15は、決定した最大供給電流Iamaxの情報を含むPDリストをモバイルデバイス21に送信する(S6A)。
通信部15によりモバイルデバイス21からPDリストに基づく電力供給の要求を受信し、PD契約が成立した場合、給電部16は、決定された(要求された)最大供給電流Iamaxで、モバイルデバイス21への充電を行う(S7A)。一方、S5Aで電流Iaが最大許容電流Imaxから所定の電流Ibを差し引いた値を超えない場合、現状の最大供給電流を変更せずに、充電を継続する(S8)。
S7A又はS8の処理後、検知部13は、モバイルデバイス22の充電器1への接続が切断されたか否かを判別する(S9)。モバイルデバイス22の充電器1への接続が切断されていない場合、給電部16は、S9の動作を繰り返し、モバイルデバイス21,22への充電を継続する。
一方、S9でモバイルデバイス22の充電器1への接続が切断された場合、通信部15は、モバイルデバイス21とネゴシエーションを行い、モバイルデバイス22を考慮しないPD契約をモバイルデバイス21との間で行う。給電部16は、モバイルデバイス21に対し、PD契約に示された条件(例えば供給電圧5V,最大供給電流3A)で、電力供給を行う(S10)。この後、充電器1は、本動作を終了する。
実施形態1の第2動作例によれば、充電器1は、最初には電流制約を設けずに、モバイルデバイス21,22への充電を開始できる。充電器1は、USB PDに適応不能なモバイルデバイス22が引き込む所定の電流と、USB PDに適応可能なモバイルデバイス21が引き込む電流との合計値が最大許容電流Imaxを超える場合には、USB PDに適応可能なモバイルデバイス21への最大供給電流Iamaxを制限できる。よって、充電器1は、USB PDに適応可能なモバイルデバイス21に対して、最大許容電流Imax以下でなるべく多くの電力供給を可能にできる。
なお、実施形態1の第1動作例及び第2の動作例では、モバイルデバイス21、モバイルデバイス22の順で充電が開始され、充電途中でモバイルデバイス22が外された場合を示したが、モバイルデバイス22、モバイルデバイス21の順に充電が開始されてもよいし、モバイルデバイス21,22が同時に充電開始されてもよい。また、充電途中でモバイルデバイス21の充電器1への接続が切断され、モバイルデバイス22の充電器1への接続が切断されなくてもよい。
以上のように、充電器1(充電装置の一例)は、2台(複数の一例)のモバイルデバイス21,22を充電する。充電器1は、モバイルデバイス21,22の充電器1への接続を検知し、接続されたモバイルデバイス21,22毎に、モバイルデバイス21,22が引き込む引込電流を検知する検知部13(第1検知部の一例、第2検知部の一例)を備えてよい。充電器1は、モバイルデバイス21,22への充電を制御する制御部14を備えてよい。制御部14は、モバイルデバイス21,22を充電するための最大許容電流Imaxを取得してよい。制御部14は、各モバイルデバイスの引込電流の合計値が最大許容電流Imaxより大きい場合、各モバイルデバイス21,22へ供給される最大供給電流Iamax,Ibmaxの合計値が最大許容電流Imax以下となるように、各モバイルデバイス21,22への最大供給電流Iamax,Ibmaxを決定してよい。
これにより、充電器1は、限られた充電器1の供給電力を、各モバイルデバイス21,22の引込電流を基に、分配できる。よって、充電器1は、例えば各モバイルデバイス21,22が実行するアプリが要求する電流の供給を満足でき、各アプリの実行を継続できる。また、充電器1は、各モバイルデバイス21,22への最大供給電流の合計値が最大許容電流Imax以上の大電流となることを抑制できる。また、放熱のために大きな空間を設けて充電器1が大型化することを抑制でき、サーマルシャットダウンを発生することを抑制できる。また、電力を供給する給電部16の供給電力量を増やしたり、給電部16の数を増やしたりすることが不要である。
また、制御部14は、各モバイルデバイス21,22の引込電流の比に基づいて、各モバイルデバイス21,22への最大供給電流Iamax,Ibmaxを決定してよい。
これにより、充電器1は、各モバイルデバイス21,22の引込電流に応じて、最大供給電流Iamax,Ibmaxを比例配分して電流を供給できる。よって、例えば、モバイルデバイス21,22が必要とする電流の大きなアプリを実行するモバイルデバイス、必要とする電流の小さなアプリを実行するモバイルデバイス、等を考慮して、最大供給電流Iamax,Ibmaxを決定できる。
また、制御部14は、検知部13により新たにモバイルデバイス22(第1のモバイルデバイスの一例)を検知した場合、モバイルデバイス22を含む検知部13により検知された各モバイルデバイス21,22への最大供給電流Iamax,Ibmaxを再決定してよい。
新たなモバイルデバイス22が接続されることで、各最大供給電流Iamax,Ibmaxの合計値が最大許容電流Imaxを超えるために継続して既に決定された各最大供給電流Iamaxを供給することが困難となることも想定される。この場合でも、充電器1は、最大供給電流Iamax,Ibmaxを再配分することで、各最大供給電流Iamax,Ibmaxの合計値が最大許容電流Imax以下となる電流を供給できる。
制御部14は、検知部13によりモバイルデバイス22(第2のモバイルデバイスの一例)が新たに検知されなくなった場合、つまりモバイルデバイス22の接続が切断された場合、モバイルデバイス22を除く検知部13により検知された各モバイルデバイス21への最大供給電流Iamaxを再決定してよい。
新たなモバイルデバイス22の接続が終了することで、接続が継続された各モバイルデバイスの最大供給電流Iamaxの合計値が最大許容電流を大きく下回る可能性があり、充電効率が低下することも想定される。この場合でも、充電器1は、各モバイルデバイスへの最大供給電流を再配分することで、充電効率の低下を抑制できる。
制御部14は、検知部13により検知された各モバイルデバイス21,22との接続の種別(例えばUSBタイプ)を認識してよい。制御部14は、認識されたモバイルデバイスに充電制御のためのネゴシエーションを行わないモバイルデバイス22(第3のモバイルデバイスの一例)が含まれる場合、モバイルデバイス22への所定の最大供給電流(例えば0.5A)と、ネゴシエーションを行う各モバイルデバイス(例えばモバイルデバイス21)の引込電流(例えば2.8A)、とに基づいて、ネゴシエーションにより決定される各モバイルデバイス21への最大供給電流(例えば2.5A)を決定してよい。
これにより、USBの種別がUSB PD以外であり、このUSBが供給可能な電流が固定値であり、予め定まっている場合でも、充電器1は、各モバイルデバイスの最大供給電流を調整できる。この場合、充電器1は、例えば、USB PD以外のモバイルデバイスへの最大供給電流を除いて、USB PDに適合する各モバイルデバイスへの最大供給電流を決定することで、USB PDに適合する各モバイルデバイスへの最大供給電流を最大化できる。
(実施形態2)
実施形態1では、PD通信のネゴシエーションにおいて複数のモバイルデバイスに対して同じ電圧(例えば5V)を告知する場合を示したが、実施形態2では、複数のモバイルデバイスに対して異なる電圧(例えば5V、9V)を告知する場合を示す。異なる電圧は、2つ存在しても、3つ以上存在してもよい。
実施形態2の充電器1は、実施形態1とほぼ同一の構成を有するので、実施形態1と同一の構成要素については同一の符号を用いることで、その説明を省略又は簡略化する。
図7は、充電器1とモバイルデバイス21A,22との間における充電制御に関する通信手順を示すシーケンス図である。ここでは、モバイルデバイス21Aは、9Vの電圧を要求し、モバイルデバイス22は、5Vの電圧を要求することを例示する。
モバイルデバイス21Aが充電器1のUSBコネクタ11に接続されると、検知部13は、モバイルデバイス21Aの接続を検知する(T31)。通信部15は、モバイルデバイス21AにPDリストを送信する(T32)。このPDリストには、供給電圧5V,最大供給電流3Aの電力供給と、供給電圧9V,最大供給電流3Aの電力供給と、が可能である情報が含まれる。
モバイルデバイス21Aは、充電器1からPDリストを取得し、PDリストに含まれる供給電圧9V,最大供給電流3Aの電力供給が自機の充電に適している場合、充電器1に対し、供給電圧9V,最大供給電流3Aの電力供給を要求する(T33)。充電器1の通信部15は、モバイルデバイス21Aからの要求を受信する。給電部16は、この要求に応じ、USBコネクタ11を介して、供給電圧9V,最大供給電流3Aの電力供給(モバイルデバイス21Aの充電)を開始する(T34)。
モバイルデバイス21Aの充電中、別のモバイルデバイス22が充電器1のUSBコネクタ12に接続されると、検知部13は、モバイルデバイス22の接続を検知する(T35)。通信部15は、手順T32と同様、モバイルデバイス22に電力供給可能なPDリストを送信する(T36)。このPDリストには、供給電圧5V,最大供給電流3Aの電力供給と、供給電圧9V,最大供給電流3Aの電力供給と、が可能である情報が含まれる。
モバイルデバイス22は、充電器1からPDリストを取得し、PDリストに含まれる供給電圧5V,最大供給電流3Aの電力供給と、供給電圧9V,最大供給電流3Aの電力供給のうち、供給電圧5V,最大供給電流3Aの電力供給が自機の充電に適している場合、充電器1に対し、供給電圧5V,最大供給電流3Aの電力供給を要求する(T37)。充電器1の通信部15は、モバイルデバイス22からの要求を受信する。
充電器1の制御部14は、モバイルデバイス21A,22から要求された供給電圧(要求電圧)が異なることを確認すると、低い方の要求電圧(5V)をモバイルデバイス21A,22への共通の供給電圧として決定する。通信部15は、モバイルデバイス21Aに再びPDリストを送信する(T39)。このPDリストには、モバイルデバイス22からの供給電圧の要求(要求電圧)を加味して、供給電圧5V,最大供給電流3Aの電力供給が可能であることが含まれる。ここでは、モバイルデバイス21A,22の供給電圧を、低い方の電圧で同じ電圧にしている。
モバイルデバイス21Aは、充電器1から受信したPDリストを基に、供給電圧5V,最大供給電流3Aの電力供給を要求する(T40)。充電器1の通信部15は、モバイルデバイス21Aからの要求を受信する。
給電部16は、モバイルデバイス21A,22からの電力供給の要求に応じ、USBコネクタ11,12を介して、供給電圧5V,最大供給電流3Aの電力供給(モバイルデバイス21A,22の充電)を開始する(T41)。
検知部13は、モバイルデバイス21A,22がそれぞれ引き込む電流Ia,Ibを検知する(T42)。制御部14は、例えば式(3)に従い、モバイルデバイス21A,22にそれぞれ供給可能な最大供給電流Iamax,Ibmaxを算出する(T43)。
例えば、モバイルデバイス21Aが引き込む電流が2.8Aであり、モバイルデバイス22が引き込む電流が0.7Aである場合、制御部14は、モバイルデバイス21Aの最大供給電流2.4A及びモバイルデバイス22の最大供給電流0.6Aを算出する。
通信部15は、供給電圧5V,最大供給電流2.4Aの電力供給が可能な旨を含むPDリストをモバイルデバイス21Aに送信する(T44)。モバイルデバイス21Aは、受信したPDリストを基に、供給電圧5V,最大供給電流2.4Aの電力供給を要求する(T45)。給電部16は、この要求に応じ、USBコネクタ11を介して、供給電圧5V,最大供給電流2.4Aの電力供給(モバイルデバイス21Aの充電)を開始する(T46)。
また、通信部15は、供給電圧5V,最大供給電流0.6Aの電力供給が可能な旨を含むPDリストをモバイルデバイス22に送信する(T47)。モバイルデバイス22は、受信したPDリストを基に、供給電圧5V,最大供給電流0.6Aの電力供給を要求する(T48)。給電部16は、この要求に応じ、USBコネクタ12を介して、供給電圧5V,最大供給電流0.6Aの電力供給(モバイルデバイス21Aの充電)を開始する(T49)。
モバイルデバイス21A,22の充電中、モバイルデバイス22が充電器1のUSBコネクタ12から外されると、検知部13は、モバイルデバイス22の接続の切断を検知する(T50)。
通信部15は、供給電圧5V,最大供給電流3Aの電力供給と、供給電圧9V,最大供給電流3Aの電力供給と、が可能である旨を含むPDリストをモバイルデバイス21Aに送信する(T51)。
モバイルデバイス21Aは、充電器1から受信したPDリストを基に、充電器1に対し、供給電圧9V,最大供給電流3Aの電力供給を要求する(T52)。通信部15は、モバイルデバイス21Aからの要求を受信すると、給電部16は、この要求に応じ、USBコネクタ11を介して、供給電圧9V,最大供給電流3Aの電力供給(モバイルデバイス21Aの充電)を開始する(T53)。
なお、充電器1の最大許容電流Imaxは、前述したように、例えば、ICモジュールで規定されるジャンクション温度Tjが最大値を超えないように、例えば式(1)、(2)に従って設定される。実施形態1では、供給電圧(例えば5V)が1種類であるので、効率ηは一定であったが、実施形態2では、供給電圧が複数種類(例えば5V,9V)であるので、効率ηが変化する。このため、事前に供給電圧毎に、入力電圧と効率との関係を表すテーブルを作成し、記憶部18に記憶しておいてよい。例えば、テーブルには、入力電圧と効率ηの関係を表す、供給電圧5V用のテーブルや、供給電圧9V用のテーブルが含まれてよい。制御部14は、入力電圧をモニタし、上記テーブルから得られる効率ηと損失Pwを基に、出力電力Pout(供給電力)、さらに最大出力電流(最大許容電流Imax)を導出(例えば算出)してもよい。これにより、充電器1は、最大許容電流Imaxの導出精度を一層向上できる。
図8及び図9は、実施形態2の第1動作例における充電器1の充電動作手順を示すフローチャートである。図8及び図9では、1台目のモバイルデバイスをモバイルデバイス21A、2台目のモバイルデバイスをモバイルデバイス22、として例示する。第1動作例では、モバイルデバイス21A、22が共にPD通信可能であることを例示する。
USBコネクタ11にモバイルデバイス21Aが接続された場合、通信部15は、モバイルデバイス21AとPD通信してネゴシエーションを行い、モバイルデバイス21Aの要求電圧(要求される供給電圧)、最大要求電流(要求される最大供給電流)を取得する。ここでの要求電圧及び最大供給電流は、例えば、供給電圧5V,最大供給電流3A、又は、供給電圧9V,最大供給電流3A、である。ネゴシエーションの後、給電部16は、モバイルデバイス21Aを、例えば供給電圧9V,最大供給電流3Aの電力供給で充電する(S21)。検知部13は、モバイルデバイス22がUSBコネクタ12を介して充電器1に新たに接続されたか否かを判別する(S22)。モバイルデバイス22が接続されていない場合、給電部16は、S21に戻り、モバイルデバイス21Aの充電を継続する。
USBコネクタ12にモバイルデバイス22が新たに接続された場合、通信部15は、モバイルデバイス22とPD通信してネゴシエーションを行い、モバイルデバイス22の要求電圧、最大要求電流を取得する(S23)。ここでの要求電圧及び最大要求電流は、例えば、供給電圧5V,最大供給電流3A、又は、供給電圧9V,最大供給電流3A、である。
制御部14は、モバイルデバイス21A,22の要求電圧が共に9Vであるか否かを判別する(S24)。
モバイルデバイス21A,22の要求電圧のいずれも9Vである場合、通信部15は、供給電圧9V、最大供給電流3AでPD契約し、モバイルデバイス21A,22の充電を開始する(S25)。
検知部13は、モバイルデバイス21A,22がそれぞれ引き込む電流Ia9,Ib9を検知する(S26)。制御部14は、電流Ia9と電流Ib9を加算した値が最大許容電流I9maxを超えるか否かを判別する(S27)。最大許容電流I9maxを超える場合、制御部14は、例えば式(3)と同様の式に従い、モバイルデバイス21A,22にそれぞれ供給する最大供給電流Ia9max,Ib9maxを算出する。
式(3)と同様の式は、電流Ia,Ibをそれぞれ電流Ia9,Ib9とし、最大供給電流Iamax,Ibmaxをそれぞれ最大供給電流Ia9max,Ib9maxとすることで表されてよい。電流Ia9、電流Ib9は、供給電圧9Vでのモバイルデバイス21A,22の引込電流を示す。最大供給電流Ia9max,Ib9maxは、供給電圧9Vでのモバイルデバイス21A,22の最大供給電流を示す。
通信部15は、算出した最大供給電流Ia9max,Ib9maxの情報を含むPDリストを、モバイルデバイス21A,22にそれぞれ送信する(S28)。
通信部15によりモバイルデバイス21A,22からPDリストに基づく電力供給の要求を受信し、PD契約が成立した場合、給電部16は、モバイルデバイス21A,22に対し、PD契約で決定された最大供給電流Ia9max,Ib9maxで、モバイルデバイス21A,22への充電を行う(S29)。
一方、S27において、電流Ia9と電流Ib9を加算した値が最大許容電流I9maxを超えない場合、給電部16は、現状の最大供給電流を変更せずに、モバイルデバイス21A,22への充電を継続する(S30)。
S29又はS30の処理後、検知部13は、モバイルデバイス22の充電器1への接続が切断されたか否かを判別する(S37)。モバイルデバイス22の充電器1への接続が切断されていない場合、給電部16は、S37の動作を繰り返し、モバイルデバイス21A,22の充電を継続する。
一方、モバイルデバイス22の充電器1への接続が切断された場合、通信部15は、モバイルデバイス21Aとネゴシエーションを行い、モバイルデバイス22を考慮しないPD契約をモバイルデバイス21Aとの間で行う。給電部16は、モバイルデバイス21Aに対し、PD契約に示された条件(例えば供給電圧9V,最大供給電流3A)で電力供給を行う(S38)。この後、充電器1は、本動作を終了する。
一方、S24において、モバイルデバイス21A,22の供給電圧の少なくとも一方が9Vでない場合、通信部15は、供給電圧5V,最大供給電流3Aでモバイルデバイス21A,22とPD契約を行い、モバイルデバイス21A,22へ充電する(S31)。
検知部13は、モバイルデバイス21A,22がそれぞれ引き込む電流Ia5,Ib5を検知する(S32)。制御部14は、電流Ia5と電流Ib5を加算した値が最大許容電流I5maxを超えるか否かを判別する(S33)。最大許容電流I5maxを超える場合、制御部14は、例えば式(3)と同様の式に従い、モバイルデバイス21A,22にそれぞれ供給する最大供給電流Ia5max,Ib5maxを算出する。
式(3)と同様の式は、電流Ia,Ibをそれぞれ電流Ia5,Ib5とし、最大供給電流Iamax,Ibmaxをそれぞれ最大供給電流Ia5max,Ib5maxとすることで表されてよい。電流Ia5、電流Ib5は、供給電圧5Vでのモバイルデバイス21A,22の引込電流を示す。最大供給電流Ia5max,Ib5maxは、供給電圧5Vでのモバイルデバイス21A,22の最大供給電流を示す。
通信部15は、算出した最大供給電流Ia5max,Ib5maxの情報を含むPDリストを、モバイルデバイス21A,22にそれぞれ送信する(S34)。
通信部15によりモバイルデバイス21A,22からPDリストに基づく電力供給の要求を受信し、PD契約が成立した場合、給電部16は、モバイルデバイス21A,22に対し、PD契約で決定された最大供給電流Ia5max,Ib5maxで、モバイルデバイス21A,22への充電を行う(S35)。
一方、S33において、電流Ia5と電流Ib5を加算した値が最大許容電流I5maxを超えない場合、給電部16は、現状の最大供給電流を変更せずに、モバイルデバイス21A,22への充電を継続する(S36)。
S35又はS36の処理後、充電器1は、S37の処理に進む。
実施形態2の第1動作例によれば、充電器1は、複数種類の供給電圧による電力供給が可能である場合、モバイルデバイス21A,22が要求する電圧に基づいて、各モバイルデバイス21A,22がいずれも供給可能な同一の電圧で電力供給できる。また、充電器1は、決定された供給電圧を加味して、モバイルデバイス21A,22が引き込む電流の合計値が最大許容電流を超える場合には、各モバイルデバイス21A,22への最大供給電流を制限できる。よって、充電器1は、複数種類の供給電圧で電力供給が可能である場合でも、各モバイルデバイス21A,22に対して、最大許容電流Imax以下でなるべく多くの電力供給を可能にできる。また、充電器1は、USBコネクタに接続された順番に、迅速に電力供給を実施できる。また、充電器1にデバイスが何台接続されるか予め把握することが困難であっても、電力供給を実施できる。また、充電器1にデバイスが何台接続されるか把握可能な場合であっても、最後のデバイスが接続される前に電力供給を開始できる。
図10及び図11は、実施形態2の第2動作例における充電器1の充電動作手順を示すフローチャートである。実施形態2の第2動作例は、実施形態2の第1動作例と同様の処理を含むので、同じ処理については、同一のステップ番号を付すことでその説明を省略又は簡略化する。
S29の処理後、給電部16が供給電圧9V,最大供給電流Ia9max,Ib9maxでモバイルデバイス21A,22をそれぞれ充電中に、制御部14は、通信部15を介してモバイルデバイス21A,22のいずれから供給電圧5Vとするよう要求があったか否かを判別する(S29A)。供給電圧5Vとするよう要求が無い場合、制御部14は、S29Aの処理を繰り返す。
一方、供給電圧5Vとするよう要求がある場合、充電器1は、S31の処理に進み、通信部15が、モバイルデバイス21A,22とPD通信のネゴシエーションを行い、供給電圧5V,最大供給電流3Aでモバイルデバイス21A,22の双方とPD契約を行う。給電部16は、PD契約で決定された供給電圧5V,最大供給電流3Aで、モバイルデバイス21A,22の充電を開始する。この後の処理は、実施形態2の第1動作例と同様である。
ここで、S29Aで供給電圧5Vの要求があるタイミングとは、例えば、モバイルデバイス21A,22のどちらかが満充電に近い状態に達したタイミングを含んでよい。図12は、モバイルデバイス21A,22の充電時における充電電圧及び充電電流の時間変化を示すグラフである。グラフの横軸は時間を表し、縦軸は充電電圧又は充電電流を表す。
グラフg1は、充電電圧の時間変化を表す。グラフg2は、充電電流の時間変化を表す。充電器1は、充電開始後に定電流充電を行い、モバイルデバイス21A,22の充電電圧が満充電に近い状態にある電圧に達したタイミング、例えば充電電圧が4.25Vに達するタイミングtpで、充電器1からの供給電圧を9Vから5Vに下げ、定電圧充電に切り替える。その後、充電器1は、モバイルデバイス21A,22の充電電圧が満充電に近い状態で一定時間経過したタイミングteで充電を終了する。この後、モバイルデバイス21A,22の充電電圧(充電後のモバイルデバイス21A,22の電圧)は、例えば4.25Vよりも低い緩和した電圧に至る。
つまり、給電部16は、例えば、モバイルデバイス21A,22の充電量が少ない場合には定電流充電とし、モバイルデバイス21A,22の充電量が多い場合、モバイルデバイス21A,22から要求された切替タイミングに従い、定電流充電から、より低い電圧による定電圧充電に切り替えて充電を継続してよい。
実施形態2の第2動作例によれば、充電器1は、複数のモバイルデバイス21A,22への供給電圧の変更要求を受けた場合に、変更要求に合わせて、供給電圧を変更できる。
また、供給電圧の変更に応じて、各モバイルデバイス21A,22への最大供給電流を変更できる。
なお、実施形態2の第1動作例及び第2の動作例では、モバイルデバイス21A、モバイルデバイス22の順で充電が開始され、充電途中でモバイルデバイス22が外された場合を示したが、モバイルデバイス22、モバイルデバイス21Aの順に充電が開始されてもよいし、モバイルデバイス21A,22が同時に充電開始されてもよい。また、充電途中でモバイルデバイス21Aの充電器1への接続が切断され、モバイルデバイス22の充電器1への接続が切断されなくてもよい。
以上のように、制御部14、モバイルデバイス21A,22毎に、モバイルデバイス21A,22の要求電圧を取得し、各モバイルデバイス21A,22の要求電圧が異なる場合、最小の要求電圧を、各モバイルデバイス21A,22への供給電圧に決定してよい。
これにより、USB PDのようにモバイルデバイス21A,22毎に要求電圧が異なり得る場合でも、充電器1は、各モバイルデバイス21A,22へ供給電圧を供給できる。また、各モバイルデバイス21A,22への供給電圧を同じ電圧にすることで、例えば給電部16が備えるDCDCコンバータが1つで済み、充電器1の構成を単純化できる。
制御部14は、決定した供給電圧に基づいて、各モバイルデバイス21A,22への最大供給電流を決定してよい。
これにより、充電器1は、決定された供給電圧に合わせて、最大許容電流以下となるように各モバイルデバイス21A,22への最大供給電流(例えば最大供給電流I5amax,I5bmax)を調整できる。
制御部14は、供給中の供給電圧(例えば9V)とは異なる電圧(例えば5V)の要求を取得した場合、要求された電圧を新たな供給電圧に決定し、新たな供給電圧に基づいて、新たな最大供給電流(例えば最大供給電流I5amax)を決定してよい。
これにより、充電器1は、例えば充電が満充電に近づき定電流充電から定電圧充電に切り替わる場合に、供給電圧の変更要求を受けても、モバイルデバイス21A,22の充電状態に合わせて、供給電圧や最大供給電流を柔軟に調整できる。
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
上記実施形態では、制御部14は、各モバイルデバイスが引き込む電流を基に、各モバイルデバイスへの最大供給電流を配分することを例示したが、他の指標を基に、各モバイルデバイスへの最大供給電流を配分してもよい。例えば、充電器1は、モバイルデバイス毎に、電流を供給すべき優先度を設定しておき、記憶部18に保持しておいてよい。例えば充電の必要性の高いモバイルデバイスの優先度を高くし、充電の必要性の低いモバイルデバイスの優先度を低くしてよい。制御部14は、優先度の低いモバイルデバイスよりも優先度の高いモバイルデバイスへの最大供給電流が大きくなるよう、各モバイルデバイスへの最大供給電流を配分してよい。なお、優先度の低いモバイルデバイスへは、電力供給が行われず、つまり充電されなくてもよい。
上記実施形態では、充電器1に2台のモバイルデバイスが接続される場合を示したが、3台以上のモバイルデバイスが接続される場合も、同様に適用可能である。
上記実施形態では、充電器1は、バッテリ電圧(例えば12V)を降圧して5V又は9Vの電圧を供給する場合を主に示したが、バッテリ電圧を昇圧して15Vや20V等の、より高い電圧を供給してもよい。
上記実施形態では、充電器1に入力される電源として、車載バッテリを示したが、これに限らず、他の電源(例えば、太陽光発電パネル、発電機)を用いてもよい。