以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の光量調節装置の第1の実施形態である絞り装置100の分解斜視図である。
図1において、絞り装置100のベースとなるベース部材4(開口形成部材)は、中央にレンズの光路に対応して光を通過させる固定開口である開口部4aを有する。開口部4aの外側には、外側係合部4bと係合ピン(固定ピン)4dが配置(立設)されている。ベース部材4は、樹脂の成形加工により作成される。ベース部材4には、例えば、ステッピングモータ、ガルバノメータなどを用いた駆動部5が取り付けられ、駆動部5の回転軸には、ピニオンギア6が取り付けられる。
後述する絞り羽根を駆動する駆動リング7は、内側係合部7bと、カムピン7cと、被駆動部7eを有する。駆動リング7は、樹脂の成形加工により作成されるが、例えば、樹脂フィルム(PETシート材等)をプレス加工して作成されてもよい。
駆動リング7の内側係合部7bは、ベース部材4の外側係合部4bと係合する。駆動リング7を回転可能に保持するベース部材4の外側係合部4bは、駆動リング7の回転中心を中心とする円形状に形成されている。また、図1では、外側係合部4bは連続した円周状に形成されているが、複数の凸部で構成されて、駆動リング7の内側係合部7bと係合するように形成されていてもよい。
なお、第1の実施形態では、駆動リング7をベース部材4の外側係合部4bの外側に係合させているが、駆動リング7に外側係合部を形成し、ベース部材4に内側係合部を形成し、駆動リング7をベース部材4の内側に係合させてもよい。
また、駆動リング7には、被駆動部7eであるギア部が形成されている。被駆動部7eは、ピニオンギア6と噛み合い、駆動部5で発生した回転力がピニオンギア6から被駆動部7eに伝達され、駆動リング7が回転される。
駆動リング7の上方には、絞り羽根群10が配置されている。また、絞り羽根群は後述するように7枚の羽根で構成されているが、複数枚の絞り羽根で構成されていれば、何枚でも構わない。
絞り羽根群10は、複数の絞り羽根1によって構成される。本実施形態では、7枚の絞り羽根1を開口部4aの周囲に、環状に互いに表裏を重ね合わせ、先端部が一方向に編み上がるように並べることで、絞り羽根群10が形成される。図2は、1枚の絞り羽根1の形状を示す図である。
絞り羽根1は、回転中心となる回転係合部(係合穴1d)と駆動係合部(被駆動部であるカム溝1c)が設けられた根元部と、前記光通過開口に出入りする開口形成部(絞り開口形成縁部1r)と、根元部とは反対側の端部である先端部1tと、を有する。絞り開口形成縁部1rは、複数の異なる大きさの絞り開口縁部1r1(先端内縁部)、絞り開口縁部1r2(中間内縁部)を含む。係合穴1dとは反対側を先端側とし、絞り開口縁部の曲率半径を先端側から1r1、1r2の順番としたとき、絞り開口縁部の曲率半径の大きさは、1r1>1r2の順となる。
また、絞り羽根1は、係合穴1dから先端部1tまでの直線的な長さが、ベース部材4の開口部4aの直径より長く、また、後述するカバー部材8の開口部8aの直径より長い。すなわち、絞り羽根1は、開口部4aや開口部8aを横断する長さを有する。
絞り羽根1は、例えば、PETシート材等をプレス加工して作成される。また、絞り羽根1には、遮光処理、反射防止処理、摺動処理等が施されていると望ましい。なお、本実施形態では、シート材をプレス加工する都合上、絞り羽根1に、係合穴1dとカム溝1cを形成するように説明したが、羽根側にピンが形成もしくは固定されており、ベース部材4や駆動リング7に穴やカム溝が形成されていても構わない。
絞り羽根群10の上方には、中央に開口部8aが形成されたカバー部材8(開口形成部材)が配置される。ベース部材4とカバー部材8で形成された空間の中で、駆動リング7と絞り羽根群10が駆動される。
絞り羽根1の係合穴1dは、ベース部材の係合ピン4dに係合する。絞り羽根1のカム溝1cは、駆動リング7のカムピン7cに係合する。このように、絞り羽根1はカムピン7cからの駆動力を受けて回動可能なようにベース部材4に保持される。ピニオンギア6が回転すると、駆動リング7の被駆動部7eに駆動力が伝達され、駆動リング7が回転する。駆動リング7が回転すると、駆動リング7のカムピン7cから絞り羽根1のカム溝1cに駆動力が与えられ、絞り羽根1は、ベース部材4の開口部4aに対して進入及び退出する(出入りする)。すなわち、開口部4aを通過する光路に対して進退する。絞り羽根群10は、絞り開口形成内縁部1r(開口縁部1r1,1r2)により、絞り全開から最小絞りまで、絞り開口形状を形成する。
また、本実施形態では、駆動部5を駆動源にしているが、駆動リング7を手動で回転させてもよい。さらに、本実施形態では、駆動部5の駆動力をピニオンギア6により駆動リング7に伝達しているが、駆動部5に駆動ピンを有するアーム部材を取り付け、駆動リング7にこの駆動ピンに係合する係合溝を設け、駆動力を伝達させるようにしてもよい。
また、本実施形態では、ベース部材4の係合ピン4dよりも駆動リング7のカムピン7cが内側に位置している。そして、ベース部材4の係合ピン4dに絞り羽根の係合穴1dを係合させ、駆動リング7のカムピン7cに絞り羽根のカム溝1cを係合させている。しかし、これらの関係を相対的に反対にしてもよい。例えば、駆動リング7に係合ピンを設け、その係合ピンの半径方向内側でベース部材4にカムピンを設け、絞り羽根の係合穴1dを駆動リング7の係合ピンに係合させ、絞り羽根のカム溝1cをベース部材のカムピンに係合させ、駆動リング7を回転させて駆動してもよい。
図3は、本実施形態における絞り開口形状を示し、カバー部材8を外した状態の図である。絞り開口形状は、絞り開口径が大きい順に、(A)、(B)、(C)、(D)で表す。図4は、図3の拡大図を示す。
図3(A)、図4(A)は第1の開口形状を示す。(A)の開口形状は、絞り羽根群10の開口縁部1r1で形成される。(A)では、円弧状の開口縁部1r1全体で絞り開口を形成しており、真円の絞り開口を形成する。(B)は第2の開口形状を示す。(B)の開口形状は、開口縁部1r1と1r2によって、協働して形成される。(C)は第3の開口形状を示す(C)の開口形状は、絞り羽根群10の開口縁部1r2で形成される。(C)では、円弧状の開口縁部1r2全体で絞り開口を形成しており、真円の絞り開口を形成する。(D)は第4の開口形状を示す。(D)の開口形状は、開口縁部1r2の一部分によって形成される。絞り開口形状は、このように図3、4の(A)、(C)のそれぞれの状態で円にすることが可能である。
ここで、本実施形態の構成により、1種類の絞り羽根群で数種類の円を形成することが可能な理由について説明する。
図5、6は、絞り装置に絞り羽根群10のうちの隣接する絞り羽根を2枚だけ組み込んだ状態を示す図である。一方の絞り羽根を絞り羽根1(a)とし、他方の絞り羽根を絞り羽根1(b)としたとき、図6(A)に示すように、絞り羽根1(a)の曲率の大きい開口縁部1r1(a)で、絞り羽根(b)の曲率の小さい開口縁部1r2(b)を覆い隠す。絞り羽根を環状に並べた時、隣接する絞り羽根が同様の状態になるため、(A)の状態のときに、曲率の小さい開口縁部1r2は、曲率の大きい開口縁部1r1で全域が覆い隠される。そのため(A)の状態のときは、大きな曲率の開口縁部1r1の部分だけで開口が形成され、開放付近に円形の開口を実現することが出来る。
さらに小絞り状態に移行した図6(C)のときは、曲率の小さな開口縁部1r2により、中間絞り径となる開口を形成することで、絞り開口を円にすることができる。すなわち、絞り羽根群10は、開口状態(A)と(C)の両方で絞り開口を円にすることができる。なお、絞り羽根群10の先端側の開口縁部1rを開口縁部1r1、1r2、1r3として、3種類の円を形成することができるようにしてもよいし、また、4種類以上の円を形成することができるようにしてもよい。絞り羽根の長さを長くするほど、円形を形成しやすくなる。
また、従来、複数のr形状で開口縁部を形成する絞り羽根が知られているが、絞り羽根の長さに限界があった。従来の絞り羽根は、絞り羽根の先端部が開口形成部材の開口内部に進入する。絞り羽根を長くした状態で、小絞り状態にした場合、開口内部に進入した絞り羽根の先端部が開口形成部材の開口縁部に衝突する懸念があった。従って、衝突を回避するために、絞り羽根の長さを短くするか、絞り羽根の回転量を小さく(光量調整の領域を小さく)する必要があった。
それに対し、本実施形態では、絞り羽根1の長さをベース部材4の開口部4aの直径より長くし開口部4aを横断させることで、絞り羽根1の先端部1tが開口部4aの内部に進入しないことを特徴とする。絞り羽根1の先端部1tは、開口部4aの周囲を可動する。絞り羽根1の先端部1tが、開口部4aの内部に進入しないため、先端部1tが開口部4aの縁部に衝突する危険がない。そのため、絞り羽根1の長さに制限されることなく、開口縁部を形成することができる。
ここで、絞り羽根1が開口部4aを横断するとは、図5に示すように、絞り羽根1のカム溝1cや係合穴1dが設けられる基部側に対し、開口部4aの中心を挟んで反対側まで絞り羽根1の先端部1tが延在することを意味している。具体的には、少なくともカム溝1cに対して開口部4aの中心を挟んで反対側の周縁部まで先端部1tが延在することが好ましく、また、係合穴1dに対して開口部4aの中心を挟んで反対側の周縁部まで先端部1tが延在することがより好ましい。図5には、係合穴1dと開口部4aの中心を通る直線Lを示しており、先端部1tは直線Lと交差する位置まで延在し、開口部4aの周縁部と光軸方向(光路方向)で重なっている様子を示している。
本実施形態では、説明を分かり易くするために、絞り羽根1の開口縁部を1r1、1r2の2つで表したが、1r1と1r2のつなぎ部をなだらかにしておくとよい。多角形の形状をできるだけ軽減させておくと、絞り開口状態の図3(A)、(C)以外の絞り開口状態の図3(B)、(D)や、それらの移行時の絞り開口がより円形に近くなる。
図7は、円形度の定義を示す図である。ここで、円形度=(開口形状の内接円の直径)/(開口形状の外接円の直径)と定義する。開口形状が真円であれば、円形度は1となり、開口形状が角の少ない多角形形状になるほど、値は1から小さい方向へ離れていく。一般的に、絞り開放から最小絞りに変化する過程において、円形度は、徐々に悪化していく。本実施形態の円形度は、絞り状態(A)、(C)で1となるため、絞り開放から最小絞りに変化する過程において、円形度は悪化し続けることはなく、絞り状態(C)にて一度改善する。
本実施形態は、絞り羽根同士の編み上がり量に対して、効果的である。図8は、本実施形態における小絞りでの羽根の状態を示す斜視図である。図8(A)は、全体図、図8(B)は、カバー8を外した状態図、図8(C)は、カバー8と絞り羽根1を透かした状態図、図8(D)は、絞り羽根1を1枚だけ組み込んだ図である。
絞り羽根1は、カバー8側に先端部1tが編み上がるように組み込む。本実施形態の絞り羽根1は、長さが開口部4a(開口部8a)より長いことが1つの特徴である。絞り羽根1の先端部1tは、絞り全開から最小絞りの範囲おいて、開口部4a(開口部8a)の内部に進入することは無く、常に、絞り羽根1の先端部1tは、開口部4a(開口部8a)の周囲を移動する。そのため、絞り羽根1の先端部1tは、カバー部材8(開口形成部材)に摺接する。絞り羽根1の先端部1tは、カバー部材8によって、押圧されるため、絞り羽根同士による編み上がりは、カバー部材8から突出することは無い。図10に従来の小絞り状態での斜視図を示す。従来技術では、羽根先端が開口内部に進入するため、絞り羽根同士の編み上がりが一方向に突出していた。本実施形態は、カバー8から羽根先端が編み上がることがないため、装置の薄型化、小型化に極めて有効である。
さらに、本実施形態の絞り装置は、レンズ鏡筒内などの光学機器に組み込む際、レンズとの距離を小さくすることができる。図9は、レンズ鏡筒内のレンズ同士の間に本実施形態の絞り装置を組み込んだ状態を示す図である。一方、図11は、レンズ鏡筒内に従来の絞り装置を組み込んだ図である。この図においては、絞り羽根群10が図9に比べて編み上がり量hだけ編み上がった状態を示している。これらの図から分かるように、本実施形態では、絞り装置とレンズの距離を小さくすることが出来る。
本実施形態の絞り羽根は編み上がりが無いため、絞り装置に対して、レンズを極端に近づけることが可能である。従来の絞り装置の場合は、羽根の編み上がり量hのスペースを考慮し、レンズを配置しなければならず、薄型化に不利であった。本実施形態は従来の絞り装置に対して、絞り羽根の編み上がり量が極めて少ない。すなわち、本実施形態の絞り装置は、レンズとの距離を少なくすることができるため、光学設計の自由度を向上させることができ、光学特性の向上、光学装置の小型化、薄型化に寄与する。
さらに、本実施形態の絞り装置では、絞り開口形成位置の光軸方向への変動が少ない。従来の絞り装置では、絞り径を小さくさせていくと、絞り羽根が編み上がり、絞り開口形成位置の光軸方向の位置が、絞り羽根の編み上がる方向に移動する傾向があった。絞り径が小さい場合、絞り開口形成位置がカバー部材より突出した位置になることもあった。本実施形態では、絞り開放から最小絞りにかけて、絞り開口形成位置は、ベース部材4とカバー部材8の間で形成される。これは、羽根先端に開口部4aを横断させることによって、従来技術のように羽根先端がカバー部材8側あるいはベース部材4側に編み上がる現象を防げるためである。
また、従来技術として、羽根同士を編み込まず、順番に羽根を重ねて形成された、ベース部材側およびカバー部材側への編み上がりの無い光量調節装置も知られている。しかし、羽根同士を順番に重ねた場合、各羽根で形成される開口縁部の光軸方向の位置が異なる構成となる。それに対し、本実施形態では、羽根同士を編み込んでいるため、各羽根で形成される開口縁部の光軸方向の位置を同一位置にすることができる。すなわち、本実施形態では、絞り開口形成位置の光軸方向の変化を従来よりも抑えることができる。
<第2の実施形態>
図12、図13は、本発明の光量調節装置の第2の実施形態である絞り装置200の分解斜視図である。なお、以下の説明においては、第1の実施形態と同様の構成については説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
図12において、絞り装置200のベースとなるベース部材204(開口形成部材)は、中央にレンズの光路に対応して光を通過させる開口部204aを有する。開口部204aの外側には、外側係合部204bと係合ピン(固定ピン)204d(1)、204d(2)が配置(立設)されている。ベース部材204は、樹脂の成形加工により作成される。ベース部材204には、例えば、ステッピングモータ、ガルバノメータなどを用いた駆動部205が取り付けられ、駆動部205の回転軸には、ピニオンギア206が取り付けられる。
後述する絞り羽根を駆動する駆動リング207は、内側係合部207bと、カムピン207c(1)、207c(2)と、被駆動部207eを有する。駆動リング207は、一般的には、樹脂の成形加工により作成されるが、例えば、樹脂フィルム(PETシート材等)をプレス加工して作成されてもよい。
駆動リング207の内側係合部207bは、ベース部材204の複数の外側係合部204bと係合する。
なお、第2の実施形態では、駆動リング207をベース部材204の外側係合部204bの外側に係合させているが、駆動リング207に外側係合部を形成し、ベース部材204に内側係合部を形成し、駆動リング207をベース部材204の内側に係合させてもよい。
また、駆動リング207には、被駆動部207eであるギア部が形成されている。被駆動部207eは、駆動部205で発生した回転力がピニオンギア206から中間ギア209を介して、被駆動部207eに伝達され、駆動リング207が回転される。
駆動リング207の上方には、第一の絞り羽根群210(1)が配置される。第一の絞り羽根群210(1)の上方には、仕切り部材203が配置され、仕切り部材203の上方には、第二の絞り羽根群210(2)が配置される。第一の絞り羽根群210(I)と第二の絞り羽根群210(2)は、仕切り部材203によって、駆動スペース(作動空間)が分けられる。各絞り羽根群はそれぞれ6枚の羽根で構成されているが、複数枚の絞り羽根で構成されていれば、何枚でも構わない。
仕切り部材203は、開口部203aを有する。仕切り部材203は、例えば、PETシート材等をプレス加工して作成される。仕切り部材203は、隣接する絞り羽根201と同等の材質、材料で、且つ、同等の遮光処理、反射防止処理、摺動処理等が施されていると望ましい。理由は、絞り羽根群210(1)の絞り羽根201(1)は、小絞り形成時に編み上がり、仕切り部材203に押圧される。このときに、仕切り部材203と絞り羽根201の摺接によって発生する静電気を防止することができるためである。また、仕切り部材203の厚みは、薄い方が望ましい。第一の絞り羽根群210(1)と第二の絞り羽根群210(2)の位置を近づけることができるためである。一例としては絞り羽根201と同等の厚みであっても良い。
第二の絞り羽根群210(2)の上方には、中央に開口部208aが形成されたカバー部材208が配置される。ベース部材204とカバー部材208で形成された空間の中で、駆動リング207と第一の絞り羽根群210(1)、第二の絞り羽根群210(2)が駆動される。
図14は、1枚の絞り羽根201の形状を示す図である。絞り羽根201は、回転係合部(係合穴201d)と駆動係合部(被駆動部であるカム溝201c)が設けられた根元部と、前記光通過開口に出入りする開口形成部(絞り開口形成内縁部201r)と、根元部とは反対側の端部である先端部201tと、を有する。絞り開口形成内縁部201rは、複数の異なる大きさの絞り開口縁部201r1、201r2を含む。係合穴201dとは反対側を先端側とし、絞り開口縁部の曲率半径を先端側から201r1、201r2の順番としたとき、絞り開口縁部の曲率半径の大きさは、201r1>201r2の順となる。
また、絞り羽根201は、係合穴201dから先端部201tまでの直線的な長さが、ベース部材204の開口部204aの直径より長く、また、後述する仕切り部材203の開口部203a、カバー部材208の開口部8aの直径より長い。すなわち、絞り羽根201は、開口部204aや開口部203a、開口部208aを横断する長さを有する。
絞り羽根201は、例えば、PETシート材等をプレス加工して作成される。また、絞り羽根には、遮光処理、反射防止処理、摺動処理等が施されていると望ましい。なお、本実施形態では、シート材をプレス加工する都合上、絞り羽根201に、係合穴201dとカム溝201cを形成するように説明したが、羽根側にピンが形成されており、ベース部材204や駆動リング207に穴やカム溝が形成されていてもかまわない。
第一の絞り羽根群210(1)と第二の絞り羽根群210(2)は、それぞれ、複数の絞り羽根201によって構成される。本実施形態では、それぞれの絞り羽根群として、6枚の絞り羽根201を開口部204aの周囲に環状に互いに表裏を重ね合わせ、先端部が一方向に編み上がるように並べることで、絞り羽根群が形成される。なお、第2の実施形態では、第一の絞り羽根群210(1)と第二の絞り羽根群210(2)の編み上がりの方向を同一の方向にしているが、編み上がりの方向は、それぞれの絞り羽根群が向かい合う方向にしても、反対の方向を向く構成にしてもよい。
ここで、図15(1)に第一の絞り羽根群210(1)を、図15(2)に第二の絞り羽根群210(2)を示しており、(A)から(E)は、図16の(A)から(E)の状態に対応している。
図15(1)は、第一の絞り羽根群210(1)で形成された絞り開口の形状を示す。第一の絞り羽根群210(1)を形成する絞り羽根201(1)の係合穴201d(1)は、ベース部材204の係合ピン204d(1)に係合する。絞り羽根201(1)のカム溝201c(1)は、駆動リング207のカムピン207c(1)に係合する。ピニオンギア206が回転し、中間ギア209を介して、駆動リング207の被駆動部207eに駆動力が伝達され、駆動リング207が回転する。駆動リング207が回転すると、駆動リング207のカムピン207c(1)から絞り羽根201(1)のカム溝201c(1)に駆動力が与えられ、絞り羽根201(1)は、ベース部材204の開口部204aに対して進入及び退出する(出入りする)。
図15(2)は、第二の絞り羽根群210(2)で形成された絞り開口の形状を示す。第二の絞り羽根群210(2)を形成する絞り羽根201(2)の係合穴201d(2)は、ベース部材204の係合ピン204d(2)に係合する。絞り羽根201(2)のカム溝201c(2)は、駆動リング207のカムピン207c(2)に係合する。ピニオンギア206が回転し、中間ギア209を介して、駆動リング207の被駆動部207eに駆動力が伝達され、駆動リング207が回転する。駆動リング207が回転すると、駆動リング207のカムピン207c(2)から絞り羽根201(2)のカム溝201c(2)に駆動力が与えられ、絞り羽根201(2)は、ベース部材204の開口部204aに対して進入及び退出する(出入りする)。
ベース部材204の係合ピン204dには、第一の絞り羽根群210(1)の絞り羽根201(1)の係合穴201d(1)と、第二の絞り羽根群210(2)の絞り羽根201(2)の係合穴201d(2)が交互に係合する。また、駆動リング207の係合ピン207cには、第一の絞り羽根群210(1)の絞り羽根201(1)の係合穴201c(1)と、第二の絞り羽根群210(2)の絞り羽根201(2)の係合穴201c(2)が交互に係合する。すなわち、第一の絞り羽根群210(1)で形成する絞り開口(図15−(1))と、第二の絞り羽根群210(2)で形成する絞り開口(図15−(2))は、絞り開口形状の周方向における位相が異なる。本実施形態においては、具体的には、絞り開口の周方向に沿って、第一の絞り羽根群210(1)の絞り羽根201(1)の開口縁部201rの同じ部分が現れる周期に対し、第二の絞り羽根群210(2)を半周期ずらして配置している。換言すると、第一の絞り羽根群210(1)と第二の絞り羽根群210(2)の位相は、半周期ずれている。
図16は、第一の絞り羽根群210(1)と第二の絞り羽根群210(2)で形成された絞り開口を重ね合わせた図である。すなわち、本実施形態の絞り開口の形状である。絞り羽根群(1)と絞り羽根群(2)で形成した絞り開口は、互いに位相が異なるため、一方の絞り開口の角部を他方の絞り開口の開口縁部で覆うことが可能である。そのため、第一の絞り羽根群210(1)と第二の絞り羽根群210(2)で形成した絞り開口は、円形に近い絞り開口にすることが可能である。より具体的には、同形状の絞り羽根を同枚数で構成した2つの絞り羽根群を半周期ずらして配置することによって、一方の絞り羽根群で形成される絞り開口の角部を他方の絞り羽根群で形成される絞り開口の開口縁部で覆うことが可能となり、円形度を高く保ちつつ、摺動負荷を減らすことができて小径の小絞りを形成することができる。
図17は、第一の絞り羽根群210(1)と第二の絞り羽根群210(2)の絞り羽根で、周方向で隣り合う絞り羽根をそれぞれ1枚ずつ組み込んだ状態を示す図である。各絞り羽根は、仕切り部材203によって、可動範囲が光軸方向に分けられている。図18は、図17(A)の拡大図を周方向に回転させて示している。第一の絞り羽根群210(1)の絞り羽根201(1)の曲率の大きい開口縁部201r1(1)で、第二の絞り羽根群210(2)の絞り羽根201(2)の曲率の小さい開口縁部201r2(2)を覆い隠している様子を示している。第一の絞り羽根群210(1)と第二の絞り羽根群210(2)を重ね合わせたとき、周方向で隣り合う別の絞り羽根群の絞り羽根同士がこれらと同様の状態になるため、図16(A)の状態のときには、曲率の小さい開口縁部201r2(1)は、曲率の大きい開口縁部201r1(2)で全域が覆い隠され、逆も同様である。そのため、(A)の状態のときは、大きな曲率の開口縁部201r1の部分だけで開口が形成され、円形の開口を実現することが出来る。
さらに小絞り状態に移行した図16(C)のときは、曲率の小さな開口縁部201r2により、開口を形成することで、絞り開口を円にすることができる。すなわち、第一の絞り羽根群210(1)と第二の絞り羽根群210(2)を組み合わせて絞り開口を形成することによって、開口状態(A)と(C)の両方で絞り開口を円にすることができる。なお、絞り羽根201の先端側の開口縁部201rを開口縁部201r1、201r2、201r3として、3種類の円を形成することができるようにしてもよいし、また、4種類以上の円を形成することができるようにしてもよい。絞り羽根の長さを長くするほど、円形を形成しやすくなる。
また、従来、複数のr形状で開口縁部を形成する絞り羽根が知られているが、絞り羽根の長さに限界があった。従来技術の絞り羽根は、絞り羽根の先端部が開口形成部材の開口内部に進入する。絞り羽根を長くした状態で、小絞り状態にした場合、開口内部に進入した絞り羽根の先端部が開口形成部材の開口縁部に衝突する懸念があった。衝突を回避するために、絞り羽根の長さを短くするか、絞り羽根の回転量を小さく(光量調整の領域を小さく)する必要があった。
それに対し、本実施形態では、絞り羽根201の長さをベース部材204の開口部204aの直径より長くし、絞り羽根201の先端部201tが開口部204aの内部に進入しないことを特徴とする。絞り羽根201の先端部201tは、開口部204aの周囲を可動する。絞り羽根201の先端部201tが、開口部204aの内部に進入しないため、先端部201tが開口部204aの縁部に衝突する危険がない。そのため、絞り羽根201の長さに制限されることなく、開口縁部を形成することができる。
さらに、従来の、絞り羽根群を2群、3群に分けた絞り装置において、絞り羽根の先端が開口部204aの内部に進入する構造では、絞り羽根の編み上がりによって、絞り羽根の先端が他の絞り羽根群の羽根の端面に衝突する危険があった。そのため、衝突を回避するために、絞り羽根の長さを短くしたり、絞り羽根が編み上がらない程度までしか一方の絞り羽根群を使用することができなかった。従って、絞り羽根の長さが短いため、絞り開口縁部の形状で絞り開口を円形に調整することが難しく、また、編み上がりが高くなる小絞り径まで、一方の絞り羽根群を絞り込むことができなかったため、小絞り径まで絞り開口を円形にすることが難しかった。
本実施形態の光量調節装置では、絞り羽根207の先端207tは、仕切り部材203の開口部203aの中に進入することはなく、開口部203aの周囲を移動する。そのため、絞り羽根207の先端207aは、絞り開放から最小絞りの範囲において、他方の絞り羽根群に衝突することは無い。
図19は、本実施形態の断面図である。第一の絞り羽根群210(1)で形成する開口と、第二の絞り羽根群210(2)で形成する開口は、光軸方向の位置が異なるが、仕切り部材203の厚みが薄いほど、光軸方向の位置を近づけることができる。仕切り部材203の厚みは、絞り羽根201の厚みの2倍以下であることが望ましい。さらには、絞り羽根201と実質的に同等の厚みであることが望ましい。仕切り部材203を薄くすることで、絞り開口の光軸方向の位置を小さくすることができる。例えば、絞り羽根同士を編み込まず、順番に羽根を重ねて形成され(各羽根で形成される開口縁部の光軸方向の位置が異なる構成)、ベース部材側およびカバー部材側への編み上がりの無い光量調節装置に比べて、ズレを小さくすることができる。
また、前記第一の絞り羽根群210(1)と前記第二の絞り羽根群210(2)は、駆動リング207の同一面側に設置された係合部(カムピン207c(1)、207c(2))と係合し、駆動力を受けることで、開口部204aの内部に出入りする。この構成によれば、各絞り羽根群の間に、羽根の支点側突起あるいは自由側突起の突出量と係合する厚さの部材を配置する必要が無く、第一の絞り羽根群210(1)と第二の絞り羽根群210(2)の距離を小さくすることができる。
また、第一の絞り羽根群210(1)と第二の絞り羽根210(2)とは、ベース部材204に対しても、ベース部材204の同一面側に設置された係合部(係合ピン204d(1)、204d(2))と係合するように設けられている。
以上説明した実施形態においては、第一の絞り羽根群210(1)と第二の絞り羽根群210(2)の間に仕切り部材203を配置する構成について説明してきたが、仕切り部材203は無くても構わない。図20に、仕切り部材203を設けない場合の分解図を示す。
このように、絞り羽根201の形状を変更したり、第一の絞り羽根群210(1)、第二の絞り羽根群210(2)の編み上がりの方向を調整したりすることで、互いの絞り羽根群に引っ掛かりが生じないようにすれば、仕切り部材203を廃止できる。仕切り部材203を廃止した場合、第一の絞り羽根群210(1)で形成する開口と第二の絞り羽根群210(2)で形成する開口の光軸方向の位置をさらに近づけることができる。
本実施形態も第1の実施形態と同様に、レンズ鏡筒内などの光学機器に組み込む際、レンズとの距離を小さくすることができるため、光学設計の自由度を向上させることができ、光学特性の向上、光学装置の小型化、薄型化に寄与する。
<第3の実施形態>
図21は、第1乃至第2の実施形態で説明した絞り装置のいずれかを搭載した光学機器としての、一眼レフカメラ用の交換レンズ221、及びその交換レンズが装着されるカメラ本体の内部構成を示している。
交換レンズ221の鏡筒内には、変倍レンズ232、光路を絞る第1乃至第3の実施形態のいずれかの絞り装置100、およびフォーカスレンズ229を含む撮影光学系が収容されている。
CCDセンサやCMOSセンサ等の光電変換素子により構成される撮像素子225はカメラ本体内に配置され、交換レンズ221により形成された被写体像を光電変換して電気信号を出力する。絞り装置100の絞り開口を変化させたり不図示のNDフィルタを進退させたりすることにより、撮像素子225上に形成される被写体像の明るさ(つまりは撮像素子25に到達する光量)を適正に設定することができる。
撮像素子225から出力された電気信号は、画像処理回路226においてデジタル信号に変換されるとともに、種々の画像処理を施される。これにより、画像信号が生成される。
ユーザは、ズームリング231を回転操作することにより、変倍レンズ232を移動させて変倍(ズーミング)を行わせることが出来る。コントローラ222は、画像信号のコントラストを検出し、そのコントラストに応じてフォーカスモータ228を制御し、フォーカスレンズ229を移動させてオートフォーカスを行う。あるいは、コントローラ222は、不図示の位相差検出方式を用いた焦点検出手段の検出信号に基づいて、フォーカスモータ228を制御し、フォーカスレンズ229を移動させてオートフォーカスを行ってもよい。
さらに、コントローラ222は、不図示の測光手段の測光値あるいは画像信号に基づいて、絞り装置100の駆動部5を制御し、光量を調節する。これにより、撮影時のボケやゴーストを自然な形状にすることができ、高画質の画像を記録することができる。
なお、本発明は、上述した一眼レフカメラに限定されず、レンズ一体型のデジタルカメラ、ビデオカメラ等の光学機器にも広く適用可能である。
以上説明したように、上記の実施形態によれば、絞りを絞っていく過程で、絞り羽根同士の重なり合いによる編み上がりを押さえ、且つ、絞り開口が円形な光量調節装置を実現することが可能となる。