JP2020133600A - 遠心圧縮機 - Google Patents

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洋平 真柄
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Abstract

【課題】ラビリンスシール内における流体の漏れ流れを効果的に抑制しつつ、高速、高圧条件下でも安定した運転が可能とする。【解決手段】ケーシング内の静止部とロータとの間を流体が高圧側から低圧側に漏れることを防止する平行環状歯を有する少なくとも1つのラビリンスシールとを備えた遠心圧縮機であって、ラビリンスシールの平行環状歯により形成される溝の間に、流体の円周方向流れを抑制する凸部17を複数設け、凸部17は、円周方向流れに対向するロータの回転方向上流側17aが、円周方向流れが凸部17を越え回転方向下流側17bに流れるのを抑制する形状であり、円周方向流れに対向するロータの回転方向下流側17bが、凸部17を越えた円周方向流れを減衰させる形状である。【選択図】図4

Description

本発明は遠心圧縮機に係り、特に、流体が高圧側から低圧側に漏れることを防止するラビリンスシールを備えているものに好適な遠心圧縮機に関する。
一般に、遠心圧縮機は、回転する動翼を有するロータと、当該ロータを回転自由に保持すると共に、その内部に流路を形成するケーシングとにより概略構成されている。
ロータとケーシングには隙間が有るため、ロータに沿って作動流体が、高圧側から低圧側に漏れることを防止するために、非接触シールであるラビリンスシールが設けられることが多い。
ラビリンスシールは、通常、ロータとケーシングとの隙間に多数の環状の歯を有して構成されており、多数の環状の歯の先端の隙間を流れる流体の圧力損失により、流体の漏れを減少させている。
上述したラビリンスシールにおいて、ラビリンスシールの漏れ流速が円周方向成分を持った状態でロータがラビリンスシールに対して径方向に変位すると、ラビリンスシール内の円周方向圧力分布に不平衡が生じ、ロータの不安定振動を引き起こす流体力(以降、不安定流体力という)が発生することが知られている。
特に、ロータが高速回転する場合やラビリンスシールの入口と出口との差圧が大きい場合に、前記した不安定流体力は、より大きなものとなる。この不安定流体力は、ラビリンスシールに流入する漏れ流れの円周方向流れによって引き起こされることが知られている。
このような不安定流体力を低減する方法として、特許文献1、2及び3に記載された技術がある。
例えば、特許文献1には、ラビリンスシールの入口に、流体の漏れ流れの円周方向流れを抑制する羽根を設け、流体の流れの円周方向成分を抑制することが記載されている。
また、特許文献2には、ラビリンスシールの途中に高圧の流体を噴きこみ、流体の流れの円周方向成分を相殺することが記載されている。
更には、特許文献3には、ラビリンスシールの各溝に、周方向に複数のポケットを切削で加工し、ラビリンスシール内へ流入した流体の円周方向流れを抑制することが記載されている。
特開平3−288068号公報 特開2008−190487号公報 特開2014−74360号公報
しかしながら、上述した特許文献1に記載された不安定流体力を低減する方法では、ラビリンスシールの入口における静圧が上昇し、流体の漏れ流量が増加する恐れがある。
また、特許文献2に記載された不安定流体力を低減する方法では、ラビリンスシールの途中で高圧の流体を噴きこむため、特許文献1と同様に流体の漏れ流量が増加し、ターボ機械の効率が低下する恐れがある。
更に、特許文献3に記載された不安定流体力を低減する方法では、ポケットを切削で加工することが前提であり、ラビリンスシールに形成された溝の突起部が回転方向上流と下流で対称な形状となっているため、流体の一部の円周方向流れが前記溝内の突起部に沿って流れ、効率的な流体の円周方向流れ抑制の妨げになる恐れがある。
本発明は、上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、ラビリンスシール内における流体の漏れ流れを効果的に抑制しつつ、高速、高圧条件下でも安定した運転が可能な遠心圧縮機を提供することにある。
本発明の遠心圧縮機は、上記目的を達成するために、ケーシングと、該ケーシングに回転可能に設置されたロータと、前記ケーシング内の静止部と前記ロータとの間を流体が高圧側から低圧側に漏れることを防止する平行環状歯を有する少なくとも1つのラビリンスシールとを備えた遠心圧縮機であって、前記ラビリンスシールの平行環状歯により形成される溝の間に、前記流体の円周方向流れを抑制する凸部を複数設け、前記凸部は、前記円周方向流れに対向する前記ロータの回転方向上流側が、前記円周方向流れが前記凸部を越え回転方向下流側に流れるのを抑制する形状であり、前記円周方向流れに対向する前記ロータの回転方向下流側が、前記凸部を越えた前記円周方向流れを減衰させる形状であることを特徴とする。
本発明によれば、ラビリンスシール内における流体の漏れ流れを効果的に抑制しつつ、高速、高圧条件下でも安定した運転が可能となる。
本発明の遠心圧縮機の実施例1を示す全体構造図である。 本発明の遠心圧縮機の実施例1におけるバランスピストン部ラビリンスシールを示す斜視図である。 本発明の遠心圧縮機の実施例1におけるバランスピストン部ラビリンスシールの平行環状歯の歯高さとロータ径の配置関係を示す概略図である。 本発明の遠心圧縮機の実施例1におけるバランスピストン部ラビリンスシールを軸方向から見た場合の凸部の断面図である。
以下、図示した実施例に基づき本発明の遠心圧縮機を説明する。なお、各図において、同一構成部品には同符号を使用する。
本発明の遠心圧縮機の実施例1を図1、図2及び図3を用いて説明する。
図1に示すように、本実施例の遠心圧縮機1は、円筒状などに形成され静止部となるケーシング2と、このケーシング2内に反駆動機側ラジアル軸受3、駆動機側ラジアル軸受4及びスラスト軸受5により回転可能に設けられた回転軸6と、この回転軸6に装着された複数段(図1では5段)の羽根車7とを備えて概略構成され、回転軸6と羽根車7により、ロータ(回転体)8を構成している。
なお、本実施例では、1本の回転軸6に羽根車7を多段に設けた一軸多段遠心圧縮機を例に説明するが、羽根車7が1段のみの単段遠心圧縮機にも同様に適用できる。
前記ケーシング2には、1段目の羽根車7に作動流体である気体を導入する吸込流路9と、各段の羽根車7から出た気体の運動エネルギーを圧力エネルギーに変換するディフューザ10と、このディフューザ10からの圧縮された気体を次段の羽根車7に導入する戻り流路11と、最終段の羽根車7から出た気体をケーシング2の外に吐出するための吐出流路12などが設けられている。
また、ロータ8の回転軸6は、ケーシング2の吸込側(図1の左側)端部及び吐出側(図1の右側)端部に設けられた反駆動機側ラジアル軸受3、駆動機側ラジアル軸受4を介し回転可能に支持されている。また、回転軸6の吸込側端部には、スラスト荷重を受けるスラスト軸受5が設けられ、回転軸6における最終段の羽根車7の吐出側には、スラスト荷重を相殺するバランスピストン13が設けられている。
更に、回転軸6の吐出側端部には、モータ等の駆動機(図示せず)が連結されており、この駆動機によってロータ8が回転するように構成されている。また、ロータ8が回転することにより、気体が吸込流路9から吸い込まれて、複数段の羽根車7で順次圧縮され、最終的に吐出流路12から吐出されるようになっている。
また、各段の羽根車7の口金とケーシング2との隙間には、羽根車口金ラビリンスシールが設けられており、この羽根車口金ラビリンスシールにより、羽根車7から出た気体がその隙間を通って羽根車7の入口側に戻ることを抑制するようになっている。また、前段の羽根車7と後段の羽根車7との間におけるロータ8とケーシング2との隙間には、中間段シールが設けられており、この中間段シールにより、戻り流路11の気体がその隙間を通って前段の羽根車7の出口側に戻ることを抑制するようになっている。
また、ロータ8のバランスピストン13とケーシング2との隙間には、バランスピストン部ラビリンスシール14が設けられており、このバランスピストン部ラビリンスシール14により、最終段の羽根車7から出た高圧の気体(流体)が低圧部に漏れることを抑制するようになっている。
図2に、本実施例の遠心圧縮機1に採用されるバランスピストン部ラビリンスシール14を示す。
該図に示すように、本実施例の遠心圧縮機1に採用されるバランスピストン部ラビリンスシール14は、円筒形状を半分に分割した半割れ構造となっており、2つの部品により構成されている。なお、図2は、バランスピストン部ラビリンスシール14の円筒形状を半分に分割した半割れ構造の一方を示しており、このバランスピストン部ラビリンスシール14は、3Dプリンタで製作可能である。
図2において、本実施例の遠心圧縮機1に採用されるバランスピストン部ラビリンスシール14は、ロータ8に対向する内径側表面に設けられた複数の平行環状歯15と、この平行環状歯15間に形成された平行環状溝16とを有し、更に、平行環状溝16内に気体(流体)の円周方向流れを抑制する凸部17を複数設けている。ロータ8に対向しない外径側には、バランスピストン部ラビリンスシール14をケーシング2に固定するための支持構造18がある。
また、図2において、漏れ流れ上流側(高圧側)では、凸部17の周方向の配置数を漏れ流れ下流側(低圧側)よりも多く設けている。これにより、より大きな不安定流体力が発生しやすい漏れ流れ上流においては、より効果的に周方向流れを抑制することができる。
なお、本実施例の遠心圧縮機1に採用されるバランスピストン部ラビリンスシール14は、万が一、平行環状歯15がロータ8と接触した場合に、ロータ8を傷つけないようにロータ8よりも柔らかい材質(例えば、アルミニウム合金)で形成されている。
バランスピストン部ラビリンスシール14における気体(流体)の漏れ流れ上流側(高圧側)には、バランスピストン部ラビリンスシール14に流入する円周方向流れを防止するための突起19を円周方向に複数設けている。この突起19は、漏れ流れ上流側(高圧側)の高さを高くし、下流側(低圧側)を低くしている。
これにより、より効果的にバランスピストン部ラビリンスシール14に流入する気体(流体)の円周方向流れを防止することができる。
また、バランスピストン部ラビリンスシール14の平行環状歯15の高さを軸方向に交互に変えている。ロータ8に段差を設けて、平行環状歯15の歯高さが高い歯に対向するロータ径は細く、歯高さが低い歯に対向するロータ径は太くし、これを軸方向に繰り返すことにより、気体(流体)の漏れ流れを効果的に抑制することができる。
即ち、図3に示すように、バランスピストン部ラビリンスシール14の平行環状歯15の歯高さを、高い歯15aと低い歯15bとなるように軸方向に交互に変え、平行環状歯15の歯高さが高い歯15aに対向するロータ8の径8aは細く、歯高さが低い歯15bに対向するロータ8の径8bは太くし、これを軸方向に繰り返すことで、気体(流体)の漏れ流れを効果的に抑制している。
図4は、本実施例の遠心圧縮機1におけるバランスピストン部ラビリンスシール14を軸方向から見た場合の凸部17の断面図である。
図4に示すように、本実施例では、凸部17の形状を、気体(流体)の円周方向流れに対向するロータ回転方向の上流側17aと下流側17bで変えている。
即ち、本実施例での凸部17は、気体(流体)の円周方向流れに対向するロータ回転方向の上流側17aが、気体(流体)の円周方向流れが凸部17を越えロータ回転方向の下流側17bに流れるのを抑制する形状であり、気体(流体)の円周方向流れに対向するロータ回転方向の下流側17bが、凸部17の頂部を越えた気体(流体)の円周方向流れを減衰させる形状である。
具体的には、気体(流体)の円周方向流れが凸部17の頂部を越えロータ回転方向の下流側17bに流れるのを抑制する凸部17の形状は、凸部17のロータ回転方向の上流側17aが、バランスピストン部ラビリンスシール14の内径面20と成す角θ1が直角を成す形状か、若しくは図4に点線で示すように、バランスピストン部ラビリンスシール14の内径面20と成す角θ1が鋭角(60−90度の範囲)を成し、ロータ回転方向の上流側17aに傾斜した形状である(この場合、ロータ回転方向の下流側17bのバランスピストン部ラビリンスシール14の内径面20と成す角θ2は、鈍角となっている)。
一方、凸部17の頂部を越えた気体(流体)の円周方向流れを減衰させる凸部17の形状は、凸部17の頂部からロータ回転方向の下流側17bに向うに従い順次細くなる形状であり、しかも、凸部17の頂部からロータ回転方向の下流側17bに向うに従い順次細くなる形状は、その表面がなだらかな曲面状に形成されている。
なお、本実施例での角度θ1及びθ2は、凸部17とバランスピストン部ラビリンスシール14の内径面20との接続部近傍を指すのではなく、ロータ回転方向の上流側17a若しくは下流側17bの平均的な角度を意味する。
このように、ロータ回転方向の上流側17aとバランスピストン部ラビリンスシール14の内径面20と成す角θ1を直角、若しくはバランスピストン部ラビリンスシール14の内径面20と成す角θ1が鋭角を成し、ロータ回転方向の上流側17aに傾斜した形状とすることにより、気体(流体)の円周方向流れが、ロータ回転方向の上流側17aに沿って凸部17の頂部越えてロータ回転方向の下流側17bに流れることを効果的に抑制することができる。
また、ロータ回転方向の下流側17bのように、流路面積の拡大をなだらか(曲面状)にすることにより、凸部17を越えた気体(流体)の円周方向流れをより効率的に減衰させることができる。
これらにより、バランスピストン部ラビリンスシール14における気体(流体)の漏れを抑制しつつ、高速、高圧条件下においても安定した運転が可能な遠心圧縮機を実現できる。
また、凸部17のロータ回転方向の下流側17bのバランスピストン部ラビリンスシール14の内径面20と成す角θ2を鈍角とすることにより、凸部17と凸部17に挟まれた溝内に渦流れが生じ、これにより、効果的に気体(流体)の円周方向流れを抑制することができる。
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換える事が可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加える事も可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をする事が可能である。
1…遠心圧縮機、2…ケーシング、3…反駆動機側ラジアル軸受、4…駆動機側ラジアル軸受、5…スラスト軸受、6…回転軸、7…羽根車、8…ロータ、8a…ロータの細い径、8b…ロータの太い径、9…吸込流路、10…ディフューザ、11…戻り流路、12…吐出流路、13…バランスピストン、14…バランスピストン部ラビリンスシール、15…平行環状歯、15a…平行環状歯の高い歯、15b…平行環状歯の低い歯、16…平行環状溝、17…凸部、17a…凸部のロータ回転方向の上流側、17b…凸部のロータ回転方向の下流側、18…支持構造、19…バランスピストン部ラビリンスシール上流の突起、20…バランスピストン部ラビリンスシールの内径面。

Claims (5)

  1. ケーシングと、該ケーシングに回転可能に設置されたロータと、前記ケーシング内の静止部と前記ロータとの間を流体が高圧側から低圧側に漏れることを防止する平行環状歯を有する少なくとも1つのラビリンスシールとを備えた遠心圧縮機であって、
    前記ラビリンスシールの平行環状歯により形成される溝の間に、前記流体の円周方向流れを抑制する凸部を複数設け、
    前記凸部は、前記円周方向流れに対向する前記ロータの回転方向上流側が、前記円周方向流れが前記凸部を越え回転方向下流側に流れるのを抑制する形状であり、前記円周方向流れに対向する前記ロータの回転方向下流側が、前記凸部を越えた前記円周方向流れを減衰させる形状であることを特徴とする遠心圧縮機。
  2. 請求項1に記載の遠心圧縮機であって、
    前記円周方向流れが前記凸部を越え回転方向下流側に流れるのを抑制する前記凸部の形状は、前記凸部の前記ロータの回転方向上流側が、前記ラビリンスシールの内径面と成す角が直角を成す形状か、若しくは前記ラビリンスシールの内径面と成す角が鋭角を成し前記ロータの回転方向上流側に傾斜した形状であり、
    前記凸部を越えた前記円周方向流れを減衰させる前記凸部の形状は、前記凸部の頂部から前記ロータの回転方向下流側に向うに従い順次細くなる形状であることを特徴とする遠心圧縮機。
  3. 請求項2に記載の遠心圧縮機であって、
    前記凸部の頂部から前記ロータの回転方向下流側に向うに従い順次細くなる形状は、その表面が曲面状に形成されていることを特徴とする遠心圧縮機。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の遠心圧縮機であって、
    前記凸部は、前記ラビリンスシールにおける前記流体の漏れ流れ上流側(高圧側)の周方向の配置数が、漏れ流れ下流側(低圧側)の周方向の配置数よりも多いことを特徴とする遠心圧縮機。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の遠心圧縮機であって、
    前記ロータの最終段羽根車の吐出側には、スラスト荷重を相殺するバランスピストンが設けられ、前記ラビリンスシールは、前記バランスピストンと前記ケーシングとの隙間に設けられているバランスピストン部ラビリンスシールであることを特徴とする遠心圧縮機。
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