JP6225092B2 - ラビリンスシール、遠心圧縮機及び過給機 - Google Patents
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Description
流体が半径方向に流れる羽根車と、前記羽根車の背面側に設けられる静止部材とを備える遠心圧縮機に用いられるラビリンスシールであって、
前記羽根車の背面上の複数の半径方向位置において周方向に沿ってそれぞれ設けられる複数の第1凸部と、
隣接する前記第1凸部間に先端部が侵入するように前記静止部材に周方向に沿って設けられる複数の第2凸部と、を備え、
前記羽根車の前記背面と前記静止部材との間には、前記第1凸部と前記第2凸部との間に形成される複数の最小クリアランス部を含むラビリンス状の流路が前記半径方向に沿って形成されており、
前記第1凸部と前記第2凸部との間に形成される最小クリアランス部を通過する漏れ流れの流れ方向において、前記最小クリアランス部の上流側に前記静止部材が位置し、前記最小クリアランス部の下流側に前記羽根車の前記背面が位置することを特徴とする。
上記(1)の構成は、本発明者らによるこの知見に基づいて着想されたものであり、最小クリアランス部を通過する漏れ流れの流れ方向において、最小クリアランス部の上流側に静止部材が位置し、且つ、最小クリアランス部の下流側に羽根車の背面が位置するようになっている。このため、最小クリアランス部を通過する際に加速された流体は、静止部材側ではなく羽根車の背面に衝突した後、羽根車の背面に沿って流れる。よって、羽根車側からみて相対全温の高い静止部材の壁面近傍の流体が、最小クリアランス部を通過した流速の高い流体に随伴されて羽根車側に移送されてしまう事態を抑制できる。したがって、ラビリンスシールを通過する流体から羽根車への入熱量を低減し、羽根車の温度上昇を抑制することができる。
上記(2)の構成によれば、半径方向内側に向かう漏れ流れをシールするラビリンスシールにおいて、最小クリアランス部の下流側において流体の羽根車背面に向かう流れを実現できる。これにより、ラビリンスシールを通過する流体から羽根車への入熱量を低減し、羽根車の温度上昇を抑制することができる。
上記(3)の構成によれば、静止部材側の第2凸部にシール剣先を設けたので、最小クリアランス部の下流側において、最小クリアランス部を通過した流体の流れから静止部材の壁面(第2凸部の壁面)が遠ざかっている。このため、最小クリアランス部を通過した流速が高い流体に随伴されて羽根車側に移送されてしまう事態を効果的に抑制できる。よって、ラビリンスシールを通過する流体から羽根車への入熱量を効果的に低減し、羽根車の温度上昇をより一層抑制することができる。
上記(4)の構成によれば、最小クリアランス部のクリアランス幅方向が半径方向に沿っているため、羽根車が軸方向にずれても、最小クリアランス部のクリアランス幅は影響を受けにくい。よって、羽根車の軸方向位置のずれによるシール性能低下を抑制することができる。
上記(5)の構成によれば、羽根車側の第1凸部のシール剣先と、静止部材の第2凸部の径方向外側の面との間に形成される最小クリアランス部を通過した流体を、羽根車背面に向かわせることができる。これにより、ラビリンスシールを通過する流体から羽根車への入熱量を低減し、羽根車の温度上昇を抑制することができる。
上記(6)の構成によれば、最小クリアランス部のクリアランス幅方向が半径方向に沿っているため、羽根車が軸方向にずれても、最小クリアランス部のクリアランス幅は影響を受けにくい。よって、羽根車の軸方向位置のずれによるシール性能低下を抑制することができる。
流体が半径方向に流れる羽根車と、
前記羽根車の背面側に設けられる静止部材と、
前記羽根車の前記背面と前記静止部材との間に設けられる上記(1)乃至(6)の何れかの構成に記載のラビリンスシールと、を備えることを特徴とする。
上記(7)の構成によれば、ラビリンスシールを通過する流体から羽根車への入熱量を低減し、羽根車の温度上昇を抑制することができる。よって、羽根車の高温化に起因したクリープ寿命の低下を抑制でき、遠心圧縮機の高圧力比化を実現することが可能になる。
上記(7)の構成に記載の遠心圧縮機を含んで構成され、内燃機関への吸気を圧縮するための圧縮機と、
内燃機関の排気ガスによって駆動されて、前記圧縮機を駆動するように構成されたタービンと、を備える。
上記(8)の構成によれば、ラビリンスシールを通過する流体から羽根車への入熱量を低減することで、遠心圧縮機の高圧力比化が実現可能となり、過給機の性能を向上させることができる。
同図に示すように、一実施形態に係る過給機1は、内燃機関(例えば舶用ディーゼル機関)からの排ガスによって駆動されるように構成された軸流タービン(以下、タービンと称する)2と、このタービン2によって駆動され、内燃機関に供給される吸気を圧縮するように構成された遠心圧縮機3と、を備える。
このタービン2においては、内燃機関からの排気ガスが入口通路27から導入されて、軸方向通路28を流れる排気ガスによって動翼24に連結されたロータ5が回転するようになっている。動翼24を通過した排気ガスは、出口通路29を通って排出される。
このラビリンスシール10によって、主として、軸受台4の内部の潤滑油を含む空気が遠心圧縮機3の圧縮空気に混入することを防止している。軸受台4の内部空間には、潤滑油が飛散したミストが充満していることがある。このミストが遠心圧縮機3の圧縮空気に混入することを防止するために、羽根車32を通過した高圧の圧縮空気の一部を、ラビリンスシール10を介して羽根車32の背面に流すことで、遠心圧縮機3の圧縮空気の流路と軸受台4の内部空間との間をシールしている。
複数の第1凸部11は、羽根車32の背面35上の複数の半径方向位置において周方向に沿ってそれぞれ設けられている。例えば図2Bに示すように、複数の第1凸部11は、ロータ5の回転軸Oを中心として環状に複数設けられている。すなわち、複数の第1凸部11が同心円上に形成されている。
複数の第2凸部12は、隣接する第1凸部11間に先端部が侵入するように静止部材46に周方向に沿って設けられている。例えば、複数の第2凸部12は、図2Bに示す複数の第1凸部11に対応するように、ロータ5の回転軸Oを中心として環状に複数設けられている。すなわち、複数の第2凸部12が同心円上に形成されている。
また、図2A及び図2B〜図5においては、羽根車32の背面35が、ロータ5の回転軸Oに直交するように形成されている。この場合、複数の第1凸部11の半径方向における配列方向、及び、複数の第2凸部12の半径方向における配列方向は、いずれもロータ5の回転軸Oに直交する方向となっている。ただし、複数の第1凸部11又は複数の第2凸部12の配列方向は、回転軸Oに直交する面に対して傾斜した方向であってもよい。例えば、複数の第1凸部11又は複数の第2凸部は、半径方向外側から内側へ向かうにつれて、軸方向において羽根車32の入口側から離れるように傾斜した方向に沿って配列されていてもよい。
本発明者らは、比較例としてラビリンスシール50を用いて流動解析を行い、ラビリンスシール50の流路51内における流速分布と温度分布を算出した。
図6は、ラビリンスシール50における流動解析結果のうち子午面内流速分布を示す図である。図7は、ラビリンスシール50における流動解析結果のうち相対全温分布を示す図である。なお、比較例であるラビリンスシール50は、図6及び図7に示すように、羽根車32の背面側の第1凸部52と静止部材46の第2凸部53とが半径方向に交互に配置されている。また、第1凸部52と第2凸部53との間の流路51は、第1凸部52の半径方向の外側の面と、第2凸部53の先端部との間に最小クリアランス部54が形成されている。
一方、図7に示すように、流路51内において相対全温が比較的高い領域は静止部材46側に存在する。その理由は、静止部材46付近の流体は絶対系における流速が小さく、羽根車32とともに回転する回転座標系における流速が大きいことから、静止部材46付近の流体は、回転壁面側(羽根車32の背面側)の流体に対して相対全温が高くなるためである。
ここで、図6に戻り、比較例におけるラビリンスシール50では、流路51内において、最小クリアランス部54を通過した流速の高い流体が静止部材46側の壁面56に衝突し、羽根車32側へ戻る比較的高流速な流路が存在する。そのため、最小クリアランス部54を通過した流速の高い流体が静止部材46側の壁面56に衝突してこの壁面56に流れる際、羽根車32側からみて相対全温が高い静止部材46の壁面56近傍の流体を随伴して羽根車32側に移送してしまうことが考えられる。本発明者らは、これがラビリンスシール50における羽根車32への入熱増大の原因の一つであることを見出した。
幾つかの実施形態において、羽根車32の背面35と静止部材46との間には、第1凸部11と第2凸部12との間に形成される複数の最小クリアランス部16を含むラビリンス状の流路15が半径方向に沿って形成されている。
また、第1凸部11と第2凸部12との間に形成される最小クリアランス部16を通過する漏れ流れの流れ方向において、最小クリアランス部16の上流側に静止部材46が位置し、最小クリアランス部16の下流側に羽根車32の背面35が位置する。
上記構成によれば、半径方向内側に向かう漏れ流れをシールするラビリンスシール10において、最小クリアランス部16の下流側において流体の羽根車32の背面35に向かう流れを実現できる。これにより、ラビリンスシール10を通過する流体から羽根車32への入熱量を低減し、羽根車32の温度上昇を抑制することができる。
なお、ラビリンスシール10は、流路15内を流体が半径方向内側から外側へ向けて流れるように構成されてもよい。その場合、第1凸部11における半径方向の外側の面又はこの面側の先端(剣先)と、第2凸部12における半径方向の内側の面又はこの面側の先端(剣先)とによって、最小クリアランス部16が形成される。
図4に示すように、一実施形態において、ラビリンスシール10の第2凸部12の先端にはシール剣先12aが設けられている。また、最小クリアランス部16は、第1凸部11の半径方向の内側の面と、第2凸部12のシール剣先12aとの間に形成される。
具体的構成例として、第1凸部11の半径方向の内側の面は、軸方向に沿って形成されている。また、第1凸部11の半径方向の外側の面は、軸方向に対して傾斜して形成されている。その際、第1凸部11の半径方向の外側の面は、半径方向外側から内側へ向かうにつれて、軸方向において羽根車32の入口側から離れる方向に傾斜していてもよい。第1凸部11は、羽根車32の背面35側の基部よりも静止部材46側の先端部の方が、半径方向における幅が大きくなっている。また、第1凸部11は、半径方向における角部にRがつけられていてもよいし、角部がテーパ状に面取りされていてもよい。これにより、軽量化の観点からアルミ合金等の材料で形成される場合に、耐久性を向上させることができる。
一方、第2凸部12は、半径方向の内側の面及び外側の面がいずれも軸方向に対して傾斜して形成されており、これらの面が互いに平行である。この際、第2凸部12の半径方向の内側の面及び外側の面は、半径方向外側から内側へ向かうにつれて、軸方向において羽根車32の入口側から離れる方向に傾斜していてもよい。また、第2凸部12も、半径方向における角部にRがつけられていてもよいし、角部がテーパ状に面取りされていてもよい。
上記構成によれば、最小クリアランス部16のクリアランス幅方向が半径方向に沿っているため、羽根車32が軸方向にずれても、最小クリアランス部16のクリアランス幅は影響を受けにくい。よって、羽根車32の軸方向位置のずれによるシール性能低下を抑制することができる。
具体的構成例として、第1凸部11の半径方向の内側の面、及び、第1凸部11の半径方向の外側の面は、軸方向に対して傾斜して形成されている。その際、第1凸部11の半径方向の内側の面、及び、第1凸部11の半径方向の外側の面は、半径方向外側から内側へ向かうにつれて、軸方向において羽根車32の入口側から離れる方向に傾斜していてもよい。また、第1凸部11の半径方向の内側の面と、第1凸部11の半径方向の外側の面との傾斜角度は異なっていてもよい。この場合、第1凸部11は、羽根車32の背面35側の基部よりも静止部材46側の先端部の方が、半径方向における幅が大きくなっている。また、第1凸部11は、半径方向における角部にRがつけられていてもよいし、角部がテーパ状に面取りされていてもよい。これにより、軽量化の観点からアルミ合金等の材料で形成される場合に、耐久性を向上させることができる。
一方、第2凸部12は、半径方向の内側の面及び外側の面がいずれも軸方向に沿って形成されており、これらの面が互いに平行である。また、第2凸部12も、半径方向における角部にRがつけられていてもよいし、角部がテーパ状に面取りされていてもよい。
上記構成によれば、最小クリアランス部16のクリアランス幅方向が半径方向に沿っているため、羽根車32が軸方向にずれても、最小クリアランス部16のクリアランス幅は影響を受けにくい。よって、羽根車32の軸方向位置のずれによるシール性能低下を抑制することができる。
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る遠心圧縮機によれば、ラビリンスシール10を通過する流体から羽根車32への入熱量を低減し、羽根車32の温度上昇を抑制することができる。よって、羽根車32の高温化に起因したクリープ寿命の低下を抑制でき、遠心圧縮機の高圧力比化を実現することが可能になる。
さらに、本発明の少なくとも一実施形態に係る過給機1によれば、ラビリンスシール10を通過する流体から羽根車32への入熱量を低減することで、遠心圧縮機の高圧力比化が実現可能となり、過給機1の性能を向上させることができる。
上記実施形態では一例として、ラビリンスシール10が過給機1における遠心圧縮機3に適用された場合について説明したが、ラビリンスシール10の適用先は過給機の遠心圧縮機3に限定されるものではなく、他の遠心圧縮機に用いられてもよい。
また、上記実施形態では一例として、遠心圧縮機の適用先として過給機1について説明したが、本実施形態に係る遠心圧縮機の適用先はこれに限定されるものではない。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
2 タービン
3 遠心圧縮機
4 軸受台
5 ロータ
10 ラビリンスシール
11 第1凸部
11a,12a シール剣先
12 第2凸部
15 流路
16 最小クリアランス部
21 タービンケーシング
24 動翼
31 圧縮機ケーシング
32 羽根車
33 ハブ
35 背面
41 スラスト軸受
42 ラジアル軸受
43 ラジアル軸受
44 潤滑油供給通路
46 静止部材
50 ラビリンスシール
51 流路
52 第1凸部
53 第2凸部
54 最小クリアランス部
55 膨張領域
56 壁面
O 回転軸
Claims (7)
- 羽根車と、前記羽根車の背面側に設けられる静止部材とを備える遠心圧縮機に用いられるラビリンスシールであって、
前記羽根車の背面上の周方向に沿ってそれぞれ設けられる複数の第1凸部と、
隣接する前記第1凸部間に先端部が侵入するように前記静止部材に周方向に沿って設けられる複数の第2凸部と、を備え、
前記羽根車の背面と前記静止部材との間には、前記第1凸部と前記第2凸部との間に形成される複数の最小クリアランス部を含むラビリンス状の流路が形成されており、
前記第1凸部と前記第2凸部との間に形成される最小クリアランス部を通過する流れの流れ方向において、前記最小クリアランス部の上流側に前記静止部材が位置し、前記最小クリアランス部の下流側に前記羽根車の前記背面が位置するとともに、
前記ラビリンスシールは、前記羽根車の前記背面と前記静止部材との間を半径方向の内側に向かう前記流れをシールするように構成され、
前記最小クリアランス部は、前記第1凸部の先端と前記第2凸部との間、または前記第1凸部と前記第2凸部の先端との間に形成されることを特徴とするラビリンスシール。 - 前記第2凸部の先端にはシール剣先が設けられており、
前記最小クリアランス部は、前記第1凸部と、前記第2凸部の前記シール剣先との間に形成されることを特徴とする請求項1に記載のラビリンスシール。 - 前記第1凸部は、前記遠心圧縮機の軸方向に沿って延在するシール面を形成しており、
前記第2凸部は、前記羽根車の前記背面側かつ前記半径方向の外側に向かって前記静止部材から突出して設けられていることを特徴とする請求項2に記載のラビリンスシール。 - 前記第1凸部の先端にはシール剣先が設けられており、
前記最小クリアランス部は、前記第1凸部の前記シール剣先と、前記第2凸部との間に形成されることを特徴とする請求項1に記載のラビリンスシール。 - 前記第2凸部の前記半径方向の外側の面は、前記遠心圧縮機の軸方向に沿って延在するシール面を形成しており、
前記第1凸部は、前記静止部材側かつ前記半径方向の内側に向かって前記羽根車の前記背面から突出して設けられていることを特徴とする請求項4に記載のラビリンスシール。 - 流体が半径方向に流れる羽根車と、
前記羽根車の背面側に設けられる静止部材と、
前記羽根車の前記背面と前記静止部材との間に設けられる請求項1乃至5の何れか一項に記載のラビリンスシールと、を備えることを特徴とする遠心圧縮機。 - 請求項6に記載の遠心圧縮機と、
内燃機関の排気ガスによって駆動されて、前記遠心圧縮機を駆動するように構成されたタービンと、を備えることを特徴とする過給機。
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