JP2020132820A - 中空樹脂粒子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】架橋性単量体の含有割合が大きい単量体組成物を用いて懸濁重合を行った場合でも、得られた前駆体粒子の中空部に非反応性溶媒として含まれている炭化水素系溶剤を短時間で除去することが可能であるとともに、乾燥処理時に発生する粒子の凝集を抑制することが可能な中空樹脂粒子の製造方法を提供する。【解決手段】中空樹脂粒子の製造方法は、非架橋性単量体及び架橋性単量体を含む重合性単量体、炭化水素系溶剤、並びに、水系媒体を含む懸濁液を調製する工程、前記懸濁液を重合反応に供することにより、中空部を有し炭化水素系溶剤を内包する前駆体粒子を含む前駆体組成物を調製する工程、前記前駆体組成物の連続相である水系媒体を極性溶剤に置換することにより極性溶剤系分散体を調製する工程、及び、前駆体粒子に内包される炭化水素系溶剤を除去する工程を含み、前記混合液中に、前記重合性単量体の総質量100質量部に対し前記架橋性単量体を35〜95質量部含む。【選択図】図1A

Description

本開示は、空隙率が高い中空樹脂粒子の製造方法に関する。
中空樹脂粒子は、内部に実質的に空隙を有しない樹脂粒子と比べて、光を良く散乱させ、光の透過性を低くできるため、不透明度、白色度などの光学的性質に優れた有機顔料や隠蔽剤として水系塗料、紙塗被用組成物などの用途で汎用されている。
ところで、水系塗料、紙塗被用組成物などの用途においては、塗料や紙塗被用組成物等の軽量化、断熱化、及び不透明化等の効果を向上させるため、配合する中空樹脂粒子の空隙率を高めることが望まれている。しかし、従来知られている製造方法では、所望の物性が得られるような製造条件を満たしながら、空隙率が高い中空樹脂粒子を安定して製造することは困難であった。
例えば、特許文献1には、中空ポリマー粒子を簡易なプロセスによって容易に製造することを目的とし、親水性モノマー5〜70重量部および架橋性モノマー1〜40重量部を含むモノマー成分100重量部と、油性物質1〜1000重量部とが共存する懸濁液を調製し、この懸濁液において前記モノマー成分を重合させ、前記油性物質を内部に含むカプセル状のポリマー粒子を製造する工程、及び、油性物質を除去する工程からなる中空ポリマー粒子の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、シェルが単層構造であって、空隙率の大きい中空高分子微粒子を提供することを目的とし、架橋性モノマーと単官能性モノマーとの共重合体からなる単層構造のシェルを有し、かつ、シェルを形成している前記共重合体が、前記単官能性モノマーと前記架橋性モノマーとの合計量に対して前記架橋性モノマーが59.2重量%以上含まれる混合物を重合して得られるものである中空高分子微粒子が開示されている。
また、特許文献3には、光の均一拡散性、断熱性等に優れ、更に、下地に対する隠蔽性に優れる椀型中空ポリマー粒子を提供することを目的とし、モノマー成分と非反応性溶媒とを含有するモノマー溶液を、水性媒体中で懸濁重合してなるポリマー粒子懸濁液を用い、該ポリマー粒子懸濁液中に分散してなるポリマー粒子中に内包されている非反応性溶媒を除去する工程を含むことを特徴とする椀型中空ポリマー粒子の製造方法が開示されている。
特開昭61−87734号公報 特許第4448930号公報 特開2018−95737号公報
一般に、モノマー液滴内に芯材となる非反応性溶剤を比較的多量に含ませ、当該モノマー液滴を重合した後、非反応性溶剤を除去することにより、空隙率が大きい中空樹脂粒子とすることができる。しかし、粒子の内部に含まれている多量の非反応性溶剤を除去しにくいという問題がある。
また、中空樹脂粒子の空隙率を大きくすると、粒子のシェルが薄くなるためシェル強度が小さくなりやすく、ひいては中空樹脂粒子が潰れやすくなる。シェルの強度を大きくするためには、シェルを形成する重合性単量体中の架橋性単量体の量を増やすという手法が考えられる。しかし、重合性単量体中の架橋性単量体の量を増やすと、重合プロセスにおいてシェル中の架橋網目構造が緻密になるため、得られた中空粒子を乾燥する際に、粒子の中空部内に含まれている非反応性成分を除去しにくくなるという問題がある。
特許文献1に開示された製造方法は、簡易なプロセスで中空ポリマー粒子を製造することができる。しかし、この製造方法においては、モノマー成分100重量部中の架橋性モノマー含有量が40重量部以下であるため、得られる中空ポリマー粒子が充分な強度を有しているとはいえない。また、特許文献1の製造方法においては、懸濁液中に形成されたマイクロカプセル(内部に油性物質を含んでいる状態の中空ポリマー粒子)を分散媒から分離して乾燥処理を実施した場合に、凝集が発生するという問題もある。乾燥処理の過程で、マイクロカプセル表面に存在する分散媒の液架橋力によって、粒子間を引きつける力が働く。これが中空粒子の凝集の主要因になる。
また、特許文献2に開示された中空高分子微粒子は、単官能性モノマーと架橋性モノマーとの合計量に対して前記架橋性モノマーが59.2重量%以上含まれる混合物を重合して得られるシェルを有している。この中空高分子微粒子は、架橋性モノマーを多く含むモノマーを重合してシェルを形成するため、粒子強度の点では好ましいが、重合反応により得られた粒子の中空部内に含まれている水難溶性の溶剤が多く残留するという問題がある。
また、特許文献3に開示された製造方法は、椀型中空ポリマー粒子を提供するが、球状の中空樹脂粒子を提供することができない。
本開示の課題は、架橋性単量体の含有割合が大きい単量体組成物を用いて懸濁重合を行った場合でも、得られた前駆体粒子の中空部に非反応性溶媒として含まれている炭化水素系溶剤を短時間で除去することが可能であるとともに、乾燥処理時に発生する粒子の凝集を抑制することが可能な中空樹脂粒子の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、重合反応後の懸濁液中に含まれる水系分散媒体を極性溶剤に置換した場合には、架橋性単量体に使用量が多い前駆体粒子から短時間で炭化水素系溶剤を除去することができることに着目した。
本開示によれば、少なくとも1つの非架橋性単量体及び少なくとも1つの架橋性単量体を含む重合性単量体、炭化水素系溶剤、並びに、水系媒体を含む混合液を懸濁させることにより、炭化水素系溶剤を含むモノマー液滴が水系媒体中に分散した懸濁液を調製する工程、
前記懸濁液を重合反応に供することにより、中空部を有し且つ当該中空部に炭化水素系溶剤を内包する前駆体粒子が水系媒体中に分散している前駆体組成物を調製する工程、
前記前駆体組成物の連続相である水系媒体を極性溶剤に置換することにより、前駆体粒子を含む極性溶剤系分散体を調製する工程、及び、
前記の極性溶剤系分散体調製工程を行った後、前駆体粒子に内包される炭化水素系溶剤を除去する工程を含み、
前記混合液中に、前記重合性単量体の総質量100質量部に対し前記架橋性単量体を35〜95質量部含むことを特徴とする中空樹脂粒子の製造方法が提供される。
本開示の上記製造方法においては、前記中空樹脂粒子の体積平均粒径を0.9〜9.0μmとすることができる。
本開示の上記製造方法においては、前記中空樹脂粒子の空隙率を55〜95%とすることができる。
本開示の上記製造方法においては、前記炭化水素系溶剤として、少なくとも1つの炭素数4〜7の炭化水素化合物を用いることができる。
本開示の上記製造方法においては、前記極性溶剤として、少なくとも1つの炭素数1〜4のアルコールを用いることができる。
上記の如き本開示の製造方法によれば、架橋性単量体の含有割合が大きい単量体組成物を用いて懸濁重合を行った場合でも、得られた前駆体粒子の中空部に非反応性溶媒として含まれている炭化水素系溶剤を短時間で除去することが可能であるとともに、乾燥処理時に発生する粒子の凝集を抑制することが可能である。
本開示の製造方法の一例を説明する図である。 本開示の製造方法の一例を説明する図である。 懸濁液調製工程における懸濁液の一実施形態を示す模式図である。 従来の乳化重合用の分散液を示す模式図である。
以下、本開示において「中空」とは、一般的な観察方法により、粒子内部において、液体部、気体部、並びに液体及び気体の混合部からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つの存在が確認できる状態を意味する。本開示でいう「液体部」とは、液体で満たされた連続部分を意味する。本開示でいう「気体部」とは、気体で満たされた連続部分を意味する。本開示でいう「液体及び気体の混合部」とは、液体及び気体で満たされた連続部分を意味する。
本開示において「中空部」とは、粒子内部に中空が占める部分を意味するものとする。粒子が中空部を有するか否かは、例えば、対象となる粒子の断面のSEM観察等により、又は対象となる粒子をそのままTEM観察等することにより、確認することができる。
粒子における樹脂のシェルが連通孔を有さず、本開示における「中空部」が粒子のシェルによって粒子外部から隔絶されていてもよい。
粒子における樹脂のシェルが1又は2以上の連通孔を有し、本開示における「中空部」が当該連通孔を介して粒子外部と繋がっていてもよい。
本開示において「前駆体粒子」とは、重合工程で得られる中間体であって、中空部を有する樹脂粒子であって、その中空部が、重合工程において中空部を形成するために用いた炭化水素系溶剤により満たされた粒子を意味する。本開示において「前駆体組成物」とは、前駆体粒子を含む組成物を意味する。
本開示において「中空樹脂粒子」は、その中空部が気体部、液体部、又は液体及び気体の混合部により満たされているが、特に中空部が気体部によって満たされている中空樹脂粒子を「気体で満たされた中空樹脂粒子」と称する場合がある。
本開示における中空樹脂粒子の製造方法は、少なくとも1つの非架橋性単量体及び少なくとも1つの架橋性単量体を含む重合性単量体、炭化水素系溶剤、並びに、水系媒体を含む混合液を懸濁させることにより、炭化水素系溶剤を含むモノマー液滴が水系媒体中に分散した懸濁液を調製する工程、
前記懸濁液を重合反応に供することにより、中空部を有し且つ当該中空部に炭化水素系溶剤を内包する前駆体粒子が水系媒体中に分散している前駆体組成物を調製する工程、
前記前駆体組成物の連続相である水系媒体を極性溶剤に置換することにより、前駆体粒子を含む極性溶剤系分散体を調製する工程、及び、
前記の極性溶剤系分散体調製工程を行った後、前駆体粒子に内包される炭化水素系溶剤を除去する工程を含み、
前記混合液中に、前記重合性単量体の総質量100質量部に対し前記架橋性単量体を35〜95質量部含むことを特徴とする。
上記方法は、基本的に混合液調製工程、懸濁液調製工程、重合工程(前駆体組成物を調製する工程)、極性溶剤への置換工程、及び、炭化水素系溶剤除去工程を含むが、これら以外の工程を含んでもよい。
例えば、重合工程後に固液分離を行い、炭化水素系溶剤除去工程を空気雰囲気下で行ってもよい。
1.中空樹脂粒子の製造方法
本開示における製造方法の好ましい一例は以下の工程を含む。
(1)混合液調製工程
少なくとも1つの非架橋性単量体及び少なくとも1つの架橋性単量体を含む重合性単量体、炭化水素系溶剤、並びに、水系媒体を含む混合液を調製する工程
(2)懸濁液調製工程
前記混合液を懸濁させることにより、炭化水素系溶剤を含むモノマー液滴が水系媒体中に分散した懸濁液を調製する工程
(3)重合工程
前記懸濁液を重合反応に供することにより、中空部を有し且つ当該中空部に炭化水素系溶剤を内包する前駆体粒子が水系媒体中に分散している前駆体組成物を調製する工程
(4)極性溶剤への置換工程
前記前駆体組成物の連続相である水系媒体を極性溶剤に置換することにより、前駆体粒子を含む極性溶剤系分散体を調製する工程
(5)固液分離工程
前記極性溶剤系分散体を固液分離することにより前記前駆体粒子を回収する工程
(6)炭化水素系溶剤除去工程
前記前駆体粒子に内包される炭化水素系溶剤を気中にて除去することにより、気体で満たされた中空樹脂粒子を得る工程
図1A及び図1Bは、本開示の製造方法の一例を示す模式図である。図1A及び図1B中の(1)〜(6)は、上記各工程(1)〜(6)に対応する。各図の間の白矢印は、各工程の順序を指示するものである。なお、これらの図は説明のための模式図に過ぎず、本開示の製造方法は図に示すものに限定されない。また、本開示の各製造方法に使用される材料の構造、寸法及び形状は、これらの図における各種材料の構造、寸法及び形状に限定されない。
図1Aの(1)は、混合液調製工程における混合液の一実施形態を示す断面模式図である。この図に示すように、混合液は、水系媒体1、及び当該水系媒体1中に分散する低極性材料2を含む。ここで、低極性材料2とは、例えば炭化水素系溶剤等の、極性が低く水系媒体1と混ざり合いにくい材料を意味する。
図1Aの(2)は、懸濁液調製工程における懸濁液の一実施形態を示す断面模式図である。懸濁液は、水系媒体1、及び当該水系媒体1中に分散するミセル10(モノマー液滴)を含む。ミセル10は、油溶性の単量体組成物4(油溶性重合開始剤5等を含む)の周囲を、懸濁安定剤3(例えば、界面活性剤等)が取り囲むことにより構成される。
図1Aの(3)は、重合工程後の前駆体組成物の一実施形態を示す断面模式図である。前駆体組成物は、水系媒体1、及び当該水系媒体1中に分散する前駆体粒子20を含む。この前駆体粒子20の外表面を形成するシェル6は、上記ミセル10中の単量体等の重合により形成されたものである。シェル6内部の中空部は、炭化水素系溶剤7を内包する。
図1Aの(4)は、前駆体組成物の連続相である水系媒体1を極性溶剤9に置換した後の、極性溶剤系分散体の一実施形態を示す断面模式図である。極性溶剤系分散体は、極性溶剤9、及び当該極性溶剤9中に分散する前駆体粒子20を含む。
図1Bの(5)は、固液分離工程後の前駆体粒子の一実施形態を示す断面模式図である。この図は、上記図1Aの(4)の状態から極性溶剤9を分離した状態を示す。
図1Bの(6)は、炭化水素系溶剤除去工程後の中空樹脂粒子の一実施形態を示す断面模式図である。この図は、上記図1Bの(5)の状態から炭化水素系溶剤7を除去した状態を示す。その結果、シェル6の内部に中空部8を有する中空樹脂粒子100が得られる。
以下、上記6つの工程及びその他の工程について、順に説明する。
(1)混合液調製工程
本工程は、少なくとも1つの非架橋性単量体及び少なくとも1つの架橋性単量体を含む重合性単量体、炭化水素系溶剤、並びに、水系媒体を含む混合液を調製する工程である。
本開示においては、重合性単量体として、少なくとも1つの非架橋性単量体及び少なくとも1つの架橋性単量体を組み合わせて用いる。重合性単量体とは、重合可能な官能基を有する化合物である。非架橋性単量体は重合可能な官能基を1つだけ有する重合性単量体であり、架橋性単量体は重合可能な官能基を2つ以上有し、重合反応により樹脂中に架橋結合を形成する重合性単量体である。重合性単量体としては、重合可能な官能基としてエチレン性不飽和結合を有する化合物が一般に用いられる。
混合液中には、さらに油溶性重合開始剤や懸濁安定剤等の他の材料を含有させても良い。混合液の材料について、(A)重合性単量体、(B)油溶性重合開始剤、(C)炭化水素系溶剤、(D)懸濁安定剤、(E)水系媒体の順に説明する。
(A)重合性単量体
[非架橋性単量体]
非架橋性単量体としては、モノビニル単量体が好ましく用いられる。モノビニル単量体とは、重合可能なビニル官能基を1つ有する化合物である。モノビニル単量体としては、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも1つのアクリル酸系モノビニル単量体;アクリレート及びメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1つのアクリル系モノビニル単量体;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のモノオレフィン単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド単量体及びその誘導体;ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル単量体;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン単量体;ビニルピリジン単量体;等が挙げられる。モノビニル単量体は、アクリレート及びメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1つのアクリル系モノビニル単量体であってもよい。
アクリル系モノビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。本開示において(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各々を意味する。
上記アクリル系モノビニル単量体のうち、好適には、メタクリル酸及びメタクリル酸メチルからなる群より選ばれる少なくとも1つを使用する。
これらのモノビニル単量体は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[架橋性単量体]
本開示においては、架橋性単量体を非架橋性単量体と組み合わせて用いることにより、得られる中空樹脂粒子シェルの機械的特性を高めることができる。
架橋性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルオキシエチレン、マレイン酸ジアリル、テトラアリルオキシエタン等のアリル基を2個以上有するモノマー;アリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、このうちジビニルベンゼン及びエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
混合液中の重合性単量体(非架橋性単量体と架橋性単量体の全て)の含有量は、水系媒体を除く混合液中成分の総質量を100質量部としたとき、通常6質量部以上とし、より好適には12質量部以上とする。重合性単量体の含有量が6質量部以上であることにより、得られる中空樹脂粒子の中空構造を維持できる程度に当該中空樹脂粒子の機械的特性を従来よりも向上させることができる。
本開示においては、非架橋性単量体及び架橋性単量体の総質量を100質量部としたとき、架橋性単量体の含有量を35〜95質量部とし、好適には38〜93質量部とし、より好適には40〜90質量部とする。架橋性単量体の含有量が35〜95質量部であれば、得られる中空樹脂粒子の空隙率を高くした場合でも十分な粒子強度を維持し粒子のへこみを抑制するだけでなく、耐熱性も向上する。
(B)油溶性重合開始剤
本開示においては、混合液中に油溶性重合開始剤を含有させることが好ましい。混合液を懸濁後にモノマー液滴を重合する方法として、水溶性重合開始剤を用いる乳化重合法と、油溶性重合開始剤を用いる懸濁重合法があるが、油溶性重合開始剤を用いることにより懸濁重合を行うことができる。
油溶性重合開始剤は、水に対する溶解度が0.2質量%以下の親油性のものであれば特に制限されない。油溶性重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシド−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
混合液中の重合性単量体の総質量を100質量部としたとき、油溶性重合開始剤の含有量は、好適には0.1〜10質量部であり、より好適には0.5〜7質量部であり、さらに好適には1〜5質量部である。油溶性重合開始剤の含有量が0.1〜10質量部であることにより、重合反応を十分進行させ、かつ重合反応終了後に油溶性重合開始剤が残存するおそれが小さく、予期せぬ副反応が進行するおそれも小さい。
(C)炭化水素系溶剤
炭化水素系溶剤は、非重合性の炭化水素系有機溶剤であり、粒子内部に中空部を形成する芯材として働く。後述する懸濁液調製工程において、炭化水素系溶剤を含むモノマー液滴が水系媒体中に分散した懸濁液が得られる。懸濁液調製工程においては、モノマー液滴の内部で相分離が発生する結果、極性の低い炭化水素系溶剤がモノマー液滴の中心部に集まりやすくなる。最終的に、モノマー液滴においては、その中心部に炭化水素系溶剤が、その周縁に炭化水素系溶剤以外の他の材料が各自の極性に従って分布することとなる。
そして、後述する重合工程において、炭化水素系溶剤を内包した前駆体粒子が水系媒体中に分散してなる前駆体組成物が得られる。すなわち、得られる前駆体粒子の内部に、炭化水素系溶剤が充填された中空部が形成される。
炭化水素系溶剤の種類は、特に限定されない。炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ブタン、ペンタン、オクタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の比較的揮発性が高い溶剤が挙げられる。
本開示に使用される炭化水素系溶剤は、20℃における比誘電率が3以下であることが好ましい。比誘電率は、化合物の極性の高さを示す指標の1つである。炭化水素系溶剤の比誘電率が3以下と十分に小さい場合には、モノマー液滴中で相分離が速やかに進行し、中空が形成されやすいと考えられる。
20℃における比誘電率が3以下の炭化水素系溶剤の例は、以下の通りである。カッコ内は比誘電率の値である。
ヘプタン(1.9)、シクロヘキサン(2.0)、ベンゼン(2.3)、トルエン(2.4)、ヘキサン(1.9)、オクタン(1.9)。
20℃における比誘電率に関しては、公知の文献(例えば、日本化学会編「化学便覧基礎編」、改訂4版、丸善株式会社、平成5年9月30日発行、II−498〜II−503ページ)に記載の値、及びその他の技術情報を参照できる。20℃における比誘電率の測定方法としては、例えば、JISC 2101:1999の23に準拠し、かつ測定温度を20℃として実施される比誘電率試験等が挙げられる。
本開示に使用される炭化水素系溶剤は、炭素数4〜7の炭化水素化合物であることが好ましい。炭素数4〜7の炭化水素化合物からなる炭化水素系溶剤は、重合工程時に前駆体粒子中に容易に内包され、かつ溶剤除去工程時に前駆体粒子中から容易に除去することができる。中でも、炭化水素系溶剤は、炭素数6の炭化水素化合物であることが好ましい。
混合液中の重合性単量体の総質量を100質量部としたとき、炭化水素系溶剤の含有量は、好適には100〜900質量部であり、より好適には150〜700質量部であり、さらに好適には200〜500質量部である。炭化水素系溶剤の前記含有量が100〜900質量部であることにより、得られる中空樹脂粒子の空隙率が従来よりも高くなるとと共に、中空を維持できる程度に当該中空樹脂粒子の機械的特性を向上させることができる。
(D)懸濁安定剤
懸濁安定剤は、後述する懸濁重合法における懸濁液中の懸濁状態を安定化させる剤である。懸濁安定剤は、界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤は、後述する懸濁重合法において、非架橋性単量体、架橋性単量体、油溶性重合開始剤及び炭化水素系溶剤などの親油性成分を含むミセルを形成する材料である。
界面活性剤としては、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれも用いることができ、それらを組み合わせて用いることもできる。これらの中でも、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤が好ましく、陰イオン性界面活性剤がより好ましい。
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物塩等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等が挙げられる。
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
懸濁安定剤は、難水溶性無機化合物や水溶性高分子等を含有していてもよい。
混合液中の重合性単量体の総質量を100質量部としたとき、懸濁安定剤の含有量は、好適には0.1〜4質量部であり、より好適には0.5〜3質量部である。懸濁安定剤の前記含有量が0.1質量部以上の場合には、水系媒体中にミセルを形成しやすい。一方、懸濁安定剤の前記含有量が4質量部以下の場合には、炭化水素系溶剤を除去する工程において発泡による生産性の低下が起きにくい。
(E)水系媒体
本開示において水系媒体とは、水、親水性溶媒、及び、水と親水性溶媒との混合物からなる群より選ばれる媒体を意味する。
本開示における親水性溶媒は、水と十分に混ざり合い相分離を起こさないものであれば特に制限されない。親水性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン(THF);ジメチルスルフォキシド(DMSO)等が挙げられる。
水系媒体の中でも、その極性の高さから、水を用いることが好ましい。水と親水性溶媒の混合物を用いる場合には、モノマー液滴を形成する観点から、当該混合物全体の極性が低くなりすぎないことが重要である。この場合、例えば、水と親水性溶媒との混合比(質量比)を、水:親水性溶媒=99:1〜50:50等としてもよい。
前記の各材料及び必要に応じ他の材料を単に混合し、適宜攪拌等することによって混合液が得られる。当該混合液においては、上記(A)重合性単量体、(B)油溶性重合開始剤、及び(C)炭化水素系溶剤などの親油性材料を含む油相が、(E)懸濁安定剤及び(F)水系媒体などを含む水相中において、粒径数mm程度の大きさで分散している。混合液におけるこれら材料の分散状態は、材料の種類によっては、肉眼でも観察が可能である。
混合液調製工程は、親油性材料を含む油相と親水性材料を含む水相とを混合する工程であってもよい。このように油相と水相を予め別に調製した上で、これらを混合することにより、シェル部分の組成が均一な中空樹脂粒子を製造することができる。
(2)懸濁液調製工程
本工程は、上述した混合液を懸濁させることにより、炭化水素系溶剤を含むモノマー液滴が水系媒体中に分散した懸濁液を調製する工程である。
モノマー液滴を形成するための懸濁方法は特に限定されないが、例えば、攪拌、膜乳化などの方法を行うことができる。
攪拌による懸濁処理は、例えば、(インライン型)乳化分散機(大平洋機工社製、商品名:マイルダー)、高速乳化分散機(プライミクス株式会社製、商品名:T.K.ホモミクサー MARK II型)等の強攪拌が可能な装置を用いて行うことができる。
膜乳化による懸濁処理は、例えば、水相と油相を調製した後、これらを混合せずに、分散相である油相を細孔膜を介して連続相である水相に押し出すことにより行うことができる。
本工程で調製される懸濁液においては、上記親油性材料を含みかつ0.1μm〜9.0μm程度の粒径を持つモノマー液滴が、水系媒体中に均一に分散している。このようなモノマー液滴は肉眼では観察が難しく、例えば光学顕微鏡等の公知の観察機器により観察できる。
本工程においては、モノマー液滴中に相分離が生じるため、極性の低い炭化水素系溶剤がモノマー液滴の中心部に集まりやすくなる。その結果、得られるモノマー液滴は、その中心部に炭化水素系溶剤が、その周縁に炭化水素系溶剤以外の材料が分布することとなる。
上述したように、本開示においては、乳化重合法ではなく懸濁重合法を採用する。そこで以下、乳化重合法と対比しながら、懸濁重合法及び油溶性重合開始剤を用いる利点について説明する。
図3は、乳化重合用の分散液を示す模式図である。図3中のミセル60は、その断面を模式的に示すものとする。
図3には、水系媒体51中に、ミセル60、ミセル前駆体60a、溶媒中に溶出した単量体53a、及び水溶性重合開始剤54が分散している様子が示されている。ミセル60は、油溶性の単量体組成物53の周囲を、界面活性剤52が取り囲むことにより構成される。単量体組成物53中には、重合体の原料となる単量体等が含まれるが、重合開始剤は含まれない。
一方、ミセル前駆体60aは、界面活性剤52の集合体ではあるものの、その内部に十分な量の単量体組成物53を含んでいない。ミセル前駆体60aは、溶媒中に溶出した単量体53aを内部に取り込んだり、他のミセル60等から単量体組成物53の一部を調達したりすることにより、ミセル60へと成長する。
水溶性重合開始剤54は、水系媒体51中を拡散しつつ、ミセル60やミセル前駆体60aの内部に侵入し、これらの内部の油滴の成長を促す。したがって、乳化重合法においては、各ミセル60は水系媒体51中に単分散しているものの、ミセル60の粒径は数百nmまで成長することが予測される。
図2は、本工程における懸濁液の一実施形態を示す模式図である。図2中のミセル10は、その断面を模式的に示すものとする。なお、図2はあくまで模式図であり、本開示における懸濁液は、必ずしも図2に示すものに限定されない。図2の一部は、上述した図1Aの(2)に対応する。
図2には、水系媒体1中に、ミセル10及び水系媒体中に分散した重合性単量体4a(非架橋性単量体及び架橋性単量体を含む。)が分散している様子が示されている。ミセル10は、油溶性の単量体組成物4の周囲を、界面活性剤3が取り囲むことにより構成される。単量体組成物4中には油溶性重合開始剤5、並びに、重合性単量体(非架橋性単量体及び架橋性単量体を含む。)及び炭化水素系溶剤(いずれも図示せず)が含まれる。
図2に示すように、本工程においては、ミセル10の内部に単量体組成物4を含む微小油滴を予め形成した上で、油溶性重合開始剤5により、重合開始ラジカルが微小油滴中で発生する。したがって、微小油滴を成長させ過ぎることなく、目的とする粒径の前駆体粒子を製造することができる。
また、懸濁重合(図2)と乳化重合(図3)とを比較すると分かるように、懸濁重合(図2)においては、油溶性重合開始剤5が、水系媒体1中に分散した重合性単量体4aと接触する機会は存在しない。したがって、油溶性重合開始剤を使用することにより、目的とする中空部を有する樹脂粒子の他に、余分なポリマー粒子が生成することを防止できる。
(3)重合工程
本工程は、上述した懸濁液を重合反応に供することにより、中空部を有し且つ当該中空部に炭化水素系溶剤を内包する前駆体粒子が水系媒体1中に分散している前駆体組成物を調製する工程である。ここで、前駆体粒子とは、主に上述した非架橋性単量体と架橋性単量体との共重合により形成される粒子である。
重合方式に特に限定はなく、例えば、回分式(バッチ式)、半連続式、連続式等が採用できる。重合温度は、好ましくは40〜80℃であり、更に好ましくは50〜70℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜15時間である。
炭化水素系溶剤を内部に含むモノマー液滴を用いるため、前駆体粒子の内部には、炭化水素系溶剤を含む中空が形成される。
(4)極性溶剤への置換工程
本工程は、重合工程を経て得られた前駆体組成物中に含まれる水系分散媒体を極性溶剤に置換することにより、前駆体粒子を含む極性溶剤系分散体を調製する工程である。
重合反応工程を経て得られた前駆体組成物の連続相である水系媒体を極性溶剤に置換した場合には、その後の炭化水素系溶剤除去工程において、前駆体粒子の中空部に含まれている炭化水素系溶剤を短時間で除去することが可能であるとともに、乾燥処理時に発生する粒子の凝集を抑制することが可能である。極性溶剤がシェルを可塑化することで、炭化水素系溶剤の透過性を高めると推測される。また、水系分散媒に比べて、極性溶剤の表面張力は低いため、乾燥過程において粒子間を引きつける液架橋力が小さくなることで、凝集を抑制できると考えられる。
本工程で用いられる極性溶剤とは、極性が高い有機溶媒である。より具体的には、20℃における比誘電率が4から50の範囲であり、前駆体組成物との反応性がない、常温で液体の有機化合物が用いられる。
極性溶剤としては、酸素原子を含む有機化合物が好ましく用いられ、炭素原子数が8以下の酸素原子含有有機化合物がさらに好ましい。酸素原子含有有機化合物としては、例えば:メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)などのアルコール;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;酢酸エチルなどのエステル;テトラヒドロフラン(THF)などの環状エーテルなどが挙げられる。これらのなかでも、炭素原子数1〜4の低級アルコールが特に好ましい。極性溶剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる
重合工程により、水系分散体の状態となった前駆体組成物が得られる。この前駆体を、ろ過、遠心分離、静置分離などの方法で固液分離し、前駆体粒子を多量に含む固形分を得る。この固形分に極性溶剤を加えることにより、前駆体組成物の水系分散媒体が極性溶剤に置換され、極性溶剤系分散体が得られる。
前駆体組成物に固液分離処理を行った後、極性溶剤を用いて洗浄処理を行ってもよい。この場合、前駆体組成物を濾過し、得られた固形分に最初の極性溶剤を洗液として加え、固形分を洗浄し、洗液を除去し、その後、必要に応じ同様の洗浄工程を繰り返してから、新鮮な極性溶剤を加えることで、極性溶剤系分散体が得られる。
(4)固液分離工程
本工程は、上述した極性溶剤系分散体を固液分離することにより前駆体粒子を回収する工程である。
極性溶剤系分散体に空気や窒素ガスを吹き込む方法や、極性溶剤系分散体を減圧環境下に置くことにより、極性溶剤系分散体の前駆体粒子から徐々に炭化水素系溶剤を除去することもできる。しかし、極性溶剤系分散体の状態で炭化水素系溶剤を除去する場合には、除去の時間がかかる。また、前駆体粒子の中空部内に極性溶剤が入りこむため、気体で満たされた中空樹脂粒子を直接得ることができない。
これに対し、極性溶剤系分散体を固液分離し、得られた固形分を気中で乾燥する場合には、前駆体粒子内部から抜けた炭化水素系溶剤と同体積の空気が容易に粒子内に入り込むため、炭化水素系溶剤を短時間で除去することができる。
極性溶剤系分散体を固液分離する方法は、前駆体粒子に内包される炭化水素系溶剤を除去することなく、前駆体粒子を含む固形分と、極性溶剤を含む液体分を分離する方法であれば特に限定されず、公知の方法を用いることができる。固液分離の方法としては、例えば、遠心分離法、ろ過法、静置分離等が挙げられ、この中でも遠心分離法又はろ過法であってもよく、操作の簡便性の観点から遠心分離法を採用してもよい。
固液分離工程後、後述する溶剤除去工程を実施する前に、予備乾燥工程等の任意の工程を実施してもよい。予備乾燥工程としては、例えば、固液分離工程後に得られた固形分を、乾燥機等の乾燥装置や、ハンドドライヤー等の乾燥器具により予備乾燥する工程が挙げられる。
(5)溶剤除去工程
本工程は、前駆体粒子に内包される炭化水素系溶剤を気中にて除去することにより、気体で満たされた中空樹脂粒子を得る工程である。
本工程における「気中」とは、厳密には、前駆体粒子の外部に液体分が全く存在しない環境下、及び、前駆体粒子の外部に、炭化水素系溶剤の除去に影響しない程度のごく微量の液体分しか存在しない環境下を意味する。「気中」とは、前駆体粒子がスラリー中に存在しない状態と言い替えることもできるし、前駆体粒子が乾燥粉末中に存在する状態と言い替えることもできる。すなわち、本工程においては、前駆体粒子が外部の気体と直に接する環境下で炭化水素系溶剤を除去することが重要である。
前駆体粒子中の炭化水素系溶剤を気中にて除去する方法は、特に限定されず、公知の方法が採用できる。当該方法としては、例えば、減圧乾燥法、加熱乾燥法、気流乾燥法又はこれらの方法の併用が挙げられる。
特に、加熱乾燥法を用いる場合には、加熱温度は炭化水素系溶剤の沸点以上、かつ前駆体粒子のシェル構造が崩れない最高温度以下とする必要がある。したがって、前駆体粒子中のシェルの組成と炭化水素系溶剤の種類によるが、例えば、加熱温度を50〜200℃としてもよく、70〜180℃としてもよく、100〜150℃としてもよい。
気中における乾燥操作によって、前駆体粒子内部の炭化水素系溶剤が、外部の気体により置換される結果、中空部を気体が占める中空樹脂粒子が得られる。
乾燥雰囲気は特に限定されず、中空樹脂粒子の用途によって適宜選択することができる。乾燥雰囲気としては、例えば、空気、酸素、窒素、アルゴン等が考えられる。また、いったん気体により中空樹脂粒子内部を満たした後、減圧乾燥することにより、一時的に内部が真空である中空樹脂粒子も得られる。
(6)その他
上記(1)〜(6)以外の工程としては、例えば、中空部の再置換工程を付加しても良い。
[中空部の再置換工程]
中空樹脂粒子内部の気体を、他の気体や液体により置換する工程が考えられる。このような置換により、中空樹脂粒子内部の環境を変えたり、中空樹脂粒子内部に選択的に分子を閉じ込めたり、用途に合わせて中空樹脂粒子内部の化学構造を修飾したりすることができる。
2.中空樹脂粒子
ア.中空樹脂粒子の形状(モルホロジー)
中空樹脂粒子の形状は、内部に中空部が形成されていれば特に限定されず、例えば、球形、楕円球形、不定形等が挙げられる。これらの中でも、製造の容易さから球形が好ましい。
粒子内部は、1又は2以上の中空部を有していてもよく、多孔質状となっていてもよい。粒子内部は、中空樹脂粒子の高い空隙率と、中空樹脂粒子の機械強度との良好なバランスを維持するために、中空部を1つのみ有するものが好ましい。
中空樹脂粒子は、平均円形度が、0.950〜0.995であってもよい。
中空樹脂粒子の形状のイメージの一例は、薄い皮膜からなりかつ気体で膨らんだ袋であり、その断面図は、後述する図1Bの(6)中の中空樹脂粒子100の通りである。この例においては、外側に薄い1枚の皮膜が設けられ、その内部が気体で満たされる。
粒子形状は、例えば、SEMやTEMにより確認することができる。また、粒子内部の形状は、粒子を公知の方法で輪切りにした後、SEMやTEMにより確認することができる。
イ.中空樹脂粒子の空隙率
本開示の製造方法において、中空樹脂粒子の空隙率は、50%以上とすることができ、より好適には55%以上、さらに好適には60%以上、さらに好適には70%以上とすることができる。粒子の強度を維持する観点から、中空樹脂粒子の空隙率は、好適には95%以下、さらにより好適には93%以下、さらに好適には90%以下とする。
[空隙率の計算方法]
中空樹脂粒子の空隙率(%)は、中空樹脂粒子の見かけ密度Dと真密度Dにより、下記式(I)により算出される。
式(I)
空隙率(%)=100−(見かけ密度D/真密度D)×100
[見かけ密度Dの測定法]
中空樹脂粒子の見かけ密度Dの測定法は以下の通りである。まず、容量100cmのメスフラスコに約30cmの中空樹脂粒子を充填し、充填した中空樹脂粒子の質量を精確に秤量する。次に、中空樹脂粒子の充填されたメスフラスコに、気泡が入らないように注意しながら、イソプロパノールを標線まで精確に満たす。メスフラスコに加えたイソプロパノールの質量を精確に秤量し、下記式(II)に基づき、中空樹脂粒子の見かけ密度D(g/cm)を計算する。
式(II)
見かけ密度D=[中空樹脂粒子の質量]/(100−[イソプロパノールの質量]÷[測定温度におけるイソプロパノールの比重])
見かけ密度Dは、中空部が中空樹脂粒子の一部であるとみなした場合の、中空樹脂粒子全体の比重に相当する。
[真密度Dの測定法]
中空樹脂粒子の真密度Dの測定法は以下の通りである。中空樹脂粒子を予め粉砕した後、容量100cmのメスフラスコに中空樹脂粒子の粉砕片を約10g充填し、充填した粉砕片の質量を精確に秤量する。あとは、上記見かけ密度の測定と同様にイソプロパノールをメスフラスコに加え、イソプロパノールの質量を精確に秤量し、下記式(III)に基づき、中空樹脂粒子の真密度D(g/cm)を計算する。
式(III)
真密度D=[中空樹脂粒子の粉砕片の質量]/(100−[イソプロパノールの質量]÷[測定温度におけるイソプロパノールの比重])
真密度Dは、中空樹脂粒子のうちシェル部分のみの比重に相当する。上記測定方法から明らかなように、真密度Dの算出に当たっては、中空部は中空樹脂粒子の一部とはみなされない。
中空樹脂粒子の空隙率は、中空樹脂粒子の比重において中空部が占める割合であると言い替えることができる。
ウ.中空樹脂粒子の圧縮強度(耐圧性)
本開示の中空樹脂粒子は、粒子強度が強いため、強い外力が付加された場合でもその外形及び内部形状が崩れにくく、中空を維持することができる。
[圧縮強度の測定法]
圧縮強度は、例えば、以下の方法で測定することができる。
微小圧縮試験機(例えば、MCTM−500、島津製作所社製等)を用いて、下記試験条件の下、粒子の10%圧縮強度を測定する。
(試験条件)
圧子の種類:FLAT50
対物レンズ倍率:50
負荷速度:0.8924 mN/sec
中空樹脂粒子の用途にもよるが、例えば、中空樹脂粒子の圧縮強度が5.0MPa以上であれば、その中空樹脂粒子は高い圧縮強度を有すると評価できる。
エ.中空樹脂粒子中の揮発性有機化合物量
炭化水素系溶剤除去工程を経て得られた中空樹脂粒子中に残留している揮発性有機化合物量を測定することにより、炭化水素系溶剤の除去しやすさ、除去の時間効率を評価することができる。
[揮発性有機化合物量の測定法]
中空樹脂粒子中の揮発性有機化合物量は、例えば、以下の方法で測定することができる。
30mLねじ口付きガラス瓶に、中空樹脂粒子約100mgを入れ、精確に秤量する。続いてテトラヒドロフラン(THF)を約10g入れ、精確に秤量する。ガラス瓶中の混合物を、スターラーにより1時間攪拌して、中空樹脂粒子に含有されている揮発性有機化合物(炭化水素系溶剤等)を抽出する。攪拌を停止し、THFに不溶な中空樹脂粒子の樹脂成分を沈殿させたのち、フィルター(アドバンテック社製、商品名:メンブランフィルター25JP020AN)を注射筒に装着して沈殿物をろ過したサンプル液を得、そのサンプル液をガスクロマトグラフィー(GC)に注入して分析した。中空樹脂粒子に含有されている単位質量あたりの揮発性有機化合物量(質量%)を、GCのピーク面積と予め作成した検量線から求める。詳細な分析条件は以下の通りである。
(分析条件)
装置:GC−2010(株式会社島津製作所製)
カラム:DB−5(アジレント・テクノロジー株式会社製)
df=0.25μm 0.25mm I.D. ×30m
検出器:FID
キャリアガス:窒素(線速度:28.8cm/sec)
注入口温度:200℃
検出器温度:250℃
オーブン温度:40℃から10℃/分の速度で230℃まで上昇させ、230℃で2分保持する。
サンプリング量:2μL
オ.中空樹脂粒子の体積平均粒径及び分散性
本開示の製造方法において、中空樹脂粒子の体積平均粒径は、0.9〜9.0μmとすることができ、より好適には1.0〜6.0μmとすることができる。
固液分離して得られた前駆体粒子を大気中で乾燥することにより粒子の中空部から炭化水素系溶剤を除去するときに、粒子が凝集する場合がある。その場合、溶剤除去前の前駆体粒子の体積平均粒径と比べて、溶剤除去後の中空樹脂粒子の体積平均粒径は大きくなる。従って、炭化水素系溶剤を除去する前後の体積平均粒径の比(分散性)は、中空樹脂粒子の凝集の程度を評価する指標となる。
[体積平均粒径の測定法]
中空樹脂粒子及び前駆体粒子の体積平均粒径は、例えば、以下の方法で測定することができる。
測定対象の粒子を濃度が7質量%になるように、1%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを添加した水に入れた後、インライン型乳化分散機(大平洋機工社製、商品名:マイルダー)により、回転数15,000rpmの条件下で10分間攪拌して分散液を作製する。そして、分散液中の粒子の粒径を、レーザー回析式粒度分布測定器(堀場製作所社製、商品名:LA−960)を用いて測定し、体積平均粒径を算出する。
[分散性の計算法]
分散性は、溶剤除去前体積平均粒径に対する溶剤除去後体積平均粒径の比であり、下式により算出される。この値が大きいほど、溶剤除去後の粒子が凝集しており、分散性が悪いことを示す。
分散性=溶剤除去後体積平均粒径/溶剤除去前体積平均粒径
3.中空樹脂粒子の用途
中空樹脂粒子の用途としては、例えば、感熱紙のアンダーコート材等が考えられる。一般的に、アンダーコート材には断熱性、緩衝性(クッション性)が要求され、これに加えて感熱紙用途に即した耐熱性も要求される。本開示の中空樹脂粒子は、その高い空隙率、潰れにくい中空形状、比較的小さい個数平均粒径、及び高い耐熱性により、これらの要求に応えることができる。
また、中空樹脂粒子は、例えば、光沢、隠ぺい力等に優れたプラスチックピグメントとして有用である。また、内部に香料、薬品、農薬、インキ成分等の有用成分を浸漬処理、減圧または加圧浸漬処理等の手段により封入して得られる中空樹脂粒子は、内部に含まれる成分に応じて各種用途に利用することができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は、特に断りのない限り質量基準である。
1.中空樹脂粒子の製造
[実施例1]
(1)混合液調製工程
まず、下記材料(a1)〜(d1)を混合し、油相を調製した。
(a1)メタクリル酸 40部
(b1)エチレングリコールジメタクリレート 60部
(c1)2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(油溶性重合開始剤、和光純薬社製、商品名:V−65) 3部
(d1)シクロヘキサン 310部
次に、イオン交換水800部に、(e)界面活性剤3.0部を加え、水相を調製した。
そして、水相と油相を混合することにより、混合液を調製した。
(2)懸濁液調製工程
上記混合液調製工程で得られた混合液を、インライン型乳化分散機(大平洋機工社製、商品名:マイルダー)により、回転数15,000rpmの条件下で5分間 攪拌して懸濁させ、シクロヘキサンを内包したモノマー液滴が水中に分散した懸濁液を調製した。
(3)重合工程
上記懸濁液調製工程で得られた懸濁液を、窒素雰囲気で65℃の温度条件下で4時間攪拌し、重合反応を行った。この重合反応により、シクロヘキサンを内包した前駆体粒子を含む前駆体組成物を調製した。
(4)極性溶剤への置換工程
上記重合工程で得られた前駆体組成物をろ過し、固形分を得た。得られた固形分に対して2倍量のメタノールに入れ、1時間以上撹拌して分散させたのち、ろ過することで固形分を得た。再度、固形分を2倍量のメタノールに入れ、1時間以上撹拌して分散させ、シクロヘキサンを内包した前駆体粒子を含む極性溶剤系分散体を得た。
(5)固液分離工程
上記置換工程で得られた極性溶剤系分散体をろ過し、前駆体粒子を得た。
(6)溶剤除去工程
前駆体粒子を、真空乾燥機にて、140℃で6時間真空条件下で加熱処理することで、粒子の中空部からシクロヘキサンを除去し、実施例1の中空樹脂粒子を得た。この中空樹脂粒子の中空部は空気で満たされている。
[実施例2〜6]
実施例1の「(1)混合液調製工程」及び「(4)極性溶剤への置換工程」において、表1に示す材料及び添加量を採用したこと以外は、実施例1と同様の手順で、実施例2〜6の中空樹脂粒子を得た
[実施例7〜9]
実施例1の「(1)混合液調製工程」において、表1に示す材料及び添加量を採用し、かつ、水相と油相を混ぜることなく次の「(2)懸濁液調製工程」に供し、さらに、実施例1の「(2)懸濁液調製工程」において、インライン型乳化分散機を用いた懸濁方法の代わりに、膜乳化システム(型番:MN−20、SPGテクノ社製)及び細孔径3μmのシラス多孔質ガラス膜(SPG膜、直径10mm、長さ20mm、SPGテクノ社製)を用いて、油相を分散相とし、水相を連続相として膜乳化を行うことで懸濁液を調製したこと以外は、製造例1と同様の手順で、実施例7〜9の粒子を得た。
[比較例1]
実施例1の「(3)重合工程」で得られた前駆体組成物を、ろ過し固形分を得た後、「(4)極性溶剤への置換工程」を経ることなく、実施例1と同様の「(6)溶剤除去工程」を行い、比較例1の粒子を得た。
[比較例2]
実施例1の「(3)重合工程」で得られた前駆体組成物をろ過し固形分を得た後、「(4)極性溶剤への置換工程」において極性溶剤の代わりに非極性溶剤であるトルエンを使用した以外は実施例1と同様の「(6)溶剤除去工程」を行い、比較例2の粒子を得た。
[比較例3〜4]
比較例1の「(1)混合液調製工程」において、表1に示す材料及び添加量を採用したこと以外は、比較例1と同様の製造方法により、比較例2〜3の粒子を得た。
[比較例5]
実施例7(膜乳化)の「(1)混合液調製工程」において、表1に示す材料及び添加量を採用し、(4)極性溶剤への置換工程を経ない以外は、比較例1と同様の製造方法により、比較例4の粒子を得た。
2.試験及び評価方法
本実施例及び比較例において、以下の試験及び評価を行った。
(1)炭化水素系溶剤除去前後の体積平均粒径の測定、及び、分散性の算出
極性溶剤系分散体を固液分離して得られた前駆体粒子の体積平均粒径を前記方法に従って測定し、炭化水素系溶剤除去前の体積平均粒径(脱溶剤前体積平均粒径)とした。
また、前駆体粒子から炭化水素系溶剤を除去して得られた中空樹脂粒子の体積平均粒径を前記方法に従って測定し、炭化水素系溶剤除去後の体積平均粒径(脱溶剤御体積平均粒径)とした。
そして、脱溶剤前体積平均粒径の値と脱溶剤後体積平均粒径の値から分散性を算出した。
(2)粒子密度の測定、及び、空隙率の算出
前記方法に従って、中空樹脂粒子の見かけ密度D及び真密度Dを測定し、空隙率を算出した。
(3)中空樹脂粒子中の揮発性有機化合物量の測定
前記方法に従って中空樹脂粒子中の揮発性有機化合物量を測定し、炭化水素系溶剤の残留量とした。
(4)中空樹脂粒子の圧縮強度(耐圧性)の測定
前記方法に従って、中空樹脂粒子の圧縮強度を測定した。
3.結果
表1に、各実験例で用いた材料の種類、使用量、及び試験結果を示す。なお表中、置換用極性有機溶剤の略称IPAはイソプロパノールであり、略称THFはテトラヒドロフランである。
[考察]
以下、表1を参照しながら、各実験例の評価結果について検討する。
比較例1においては、空隙率、圧縮強度は良好であり、前駆体粒子から炭化水素系溶剤を除去する前の体積平均粒径は問題なく制御されていた。しかし、中空構造の粒子を重合形成する際に芯材として用いた炭化水素系溶剤の残留量が17.1質量%と多く、また、前駆体粒子から炭化水素系溶剤を除去する前の体積平均粒径(2.8μm)に比べて除去後の体積平均粒径(43.0μm)が大きくなったため分散性の値が15.36と大きくなった。
比較例1においては、実施例1又は2の手順において極性溶剤への置換を行わないように変更したため、炭化水素系溶剤が除去されにくくなり、また、炭化水素系溶剤を除去する工程中に粒子の凝集が起こったと考えられる。
比較例2においては、空隙率、圧縮強度は良好であり、前駆体粒子から炭化水素系溶剤を除去する前の体積平均粒径は問題なく制御されていた。しかし、中空構造の粒子を重合形成する際に芯材として用いた炭化水素系溶剤の残留量が16.6質量%と多く、また、前駆体粒子から炭化水素系溶剤を除去する前の体積平均粒径(2.8μm)に比べて除去後の体積平均粒径(37.4μm)が大きくなったため分散性の値が13.36と大きくなった。
比較例2においては、実施例1又は2の手順において極性溶剤も用いる代わりに非極性溶剤であるトルエンを用いて水系媒体を置換したため、炭化水素系溶剤が除去されにくくなり、また、炭化水素系溶剤を除去する工程中に粒子の凝集が起こったと考えられる。
比較例3においては、空隙率、圧縮強度は良好であり、前駆体粒子から炭化水素系溶剤を除去する前の体積平均粒径は問題なく制御されていた。しかし、中空構造の粒子を重合形成する際に芯材として用いた炭化水素系溶剤の残留量が10.8質量%と多く、また、前駆体粒子から炭化水素系溶剤を除去する前の体積平均粒径(4.2μm)に比べて除去後の体積平均粒径(57.0μm)が大きくなったため分散性の値が13.57と大きくなった。
比較例3においては、実施例5又は6の手順において極性溶剤への置換を行わないように変更したため、炭化水素系溶剤が除去されにくくなり、また、炭化水素系溶剤を除去する工程中に粒子の凝集が起こったと考えられる。
比較例4においては、空隙率、圧縮強度は良好であり、前駆体粒子から炭化水素系溶剤を除去する前の体積平均粒径は問題なく制御されていた。特に、架橋性単量体の使用量が90部と多かったため圧縮強度が高く(13.9MPa)、また、芯材として用いた炭化水素系溶剤(ノルマルヘキサン)の使用量が600部と多かったため空隙率が高くなった(88%)と考えられる。
しかし、炭化水素系溶剤の残留量が23.8質量%と多く、また、前駆体粒子から炭化水素系溶剤を除去する前の体積平均粒径(4.2μm)に比べて除去後の体積平均粒径(37.2μm)が大きくなったため分散性の値が8.86と大きくなった。
比較例4においては、重合工程後に極性溶剤への置換を行わなかったため、炭化水素系溶剤が除去されにくくなり、また、炭化水素系溶剤を除去する工程中に粒子の凝集が起こったと考えられる。さらに、架橋性単量体の使用量が90部と多く、且つ、芯材として用いた炭化水素系溶剤の使用量が多かった(600部)ため、炭化水素系溶剤の残留量が特に多かったと考えられる。炭化水素系溶剤の残留量は比較例4が最も多かった。
比較例5においては、芯材として用いた炭化水素系溶剤の残留量は少なく、前駆体粒子から炭化水素系溶剤を除去する前の体積平均粒径は問題なく制御されていた。しかし、空隙率は小さく(30%)、圧縮強度は小さく(2.3MPa)、前駆体粒子から炭化水素系溶剤を除去する前の体積平均粒径(6.8μm)に比べて除去後の体積平均粒径(109.0μm)が大きくなったため分散性の値が16.03と大きくなった。
比較例5においては、重合工程後に極性溶剤への置換を行わなかったため、炭化水素系溶剤を除去する工程中に粒子の凝集が起こったと考えられる。さらに、架橋性単量体の使用量が30部と少なくてシェル内の架橋網目構造が不足したため、圧縮強度が小さくなるとともに、潰れた粒子が発生し空隙率が小さくなったと考えられる。なお、比較例5においては、重合工程後に極性溶剤への置換を行わなかったにもかかわらず、炭化水素系溶剤の残留量は少なかった。これは、架橋性単量体の使用量が少なくてシェル内の架橋網目構造が不足した分だけ、炭化水素系溶剤が除去されやすくなったためだと考えられる。
一方、実施例1〜実施例9においては、空隙率及び圧縮強度が良好で、中空構造の粒子を重合形成する際に芯材として用いた炭化水素系溶剤の残留量が少なく、前駆体粒子から炭化水素系溶剤を除去する前の体積平均粒径は問題なく制御されており、炭化水素系溶剤を除去した後の体積平均粒径はほとんど増加が見られず、分散性の数値も小さかった。
特に、極性溶剤として炭素数1〜4の酸素原子含有有機溶剤を用い、重合性単量体100質量部に対し架橋性単量体を40〜60質量部用いた実施例1〜6は、空隙率が67〜80%、圧縮強度が7.2〜11.3MPa、炭化水素系溶剤の残留量が0.06〜0.68質量%、炭化水素系溶剤除去前後での体積平均粒径の分散性の値が1.04〜1.74であり、各特性がバランスよく向上していた。
極性溶剤としての炭素数1〜4の酸素原子含有有機溶剤のなかでも、特に炭素数1〜4のアルコールを用いる場合には、炭化水素系溶剤の残留量が少なくなることが、実施例3(エタノールを使用)と実施例4(アセトンを使用)の対比、及び、実施例5(エタノールを使用)と実施例6(テトラヒドロフランを使用)の対比により示された。
実施例7は、極性溶剤として炭素数3であるイソプロパノールを用い、重合性単量体100質量部に対し架橋性単量体を90質量部と多量に用い、樹脂粒子の中空構造を形成する芯材である炭化水素系溶剤(シクロヘキサン)を600質量部と多量に用いた結果、空隙率が86%と特に大きく、耐圧性も13.1MPaと特に大きかった。しかし、炭化水素系溶剤の残留量が0.74質量%となり、実施例のなかでは残留が若干多かった。これは、架橋性単量体の使用量が多く架橋網目構造が緻密になったことと、芯材である炭化水素系溶剤の使用量も多かったことの影響により、炭化水素系溶剤が除去されにくくなったためと考えられる。
実施例8は、極性溶剤として炭素数2であるエタノールを用い、重合性単量体100質量部に対し架橋性単量体を90質量部と多量に用い、樹脂粒子の中空構造を形成する芯材である炭化水素系溶剤(ノルマルヘキサン)を80質量部と少量用いた結果、耐圧性は13.8MPaと特に大きかった。しかし、炭化水素系溶剤の残留量が1.13質量%となり、実施例のなかでは残留が若干多く、空隙率が54%となり、50%は超えていたが実施例の中で最も小さかった。炭化水素系溶剤の残留量が多かったのは、架橋性単量体の使用量が多く架橋網目構造が緻密になったため、炭化水素系溶剤が除去されにくくなったためと考えられる。また、空隙率が若干小さかったのは、中空構造を形成する芯材である炭化水素系溶剤の使用量が少なかったためだと考えられる。
実施例9は、極性溶剤として炭素数3であるイソプロパノールを用い、重合性単量体100質量部に対し架橋性単量体を90質量部と多量に用い、樹脂粒子の中空構造を形成する芯材である炭化水素系溶剤(オクタン)を600質量部と多量に用いた結果、空隙率が88%と特に大きく、耐圧性も13.8MPaと特に大きかった。しかし、炭化水素系溶剤の残留量が1.25質量%となり、実施例のなかでは残留が若干多かった。これは、架橋性単量体の使用量が多く架橋網目構造が緻密になったことと、芯材である炭化水素系溶剤の炭素数が8と多く、また、使用量も多かったことの影響により、炭化水素系溶剤が除去されにくくなったためと考えられる。
1 水系媒体
2 低極性材料
3 懸濁安定剤
4 単量体組成物
4a 水系媒体中に分散した単量体
5 油溶性重合開始剤
6 シェル
7 炭化水素系溶剤
8 中空部
9 極性溶剤
10 ミセル
20 前駆体粒子
51 水系媒体
52 界面活性剤
53 単量体組成物
53a 水系媒体中に溶出した単量体
54 水溶性重合開始剤
60 ミセル
60a ミセル前駆体
100 中空樹脂粒子

Claims (5)

  1. 中空樹脂粒子の製造方法であって、
    少なくとも1つの非架橋性単量体及び少なくとも1つの架橋性単量体を含む重合性単量体、炭化水素系溶剤、並びに、水系媒体を含む混合液を懸濁させることにより、炭化水素系溶剤を含むモノマー液滴が水系媒体中に分散した懸濁液を調製する工程、
    前記懸濁液を重合反応に供することにより、中空部を有し且つ当該中空部に炭化水素系溶剤を内包する前駆体粒子が水系媒体中に分散している前駆体組成物を調製する工程、
    前記前駆体組成物の連続相である水系媒体を極性溶剤に置換することにより、前駆体粒子を含む極性溶剤系分散体を調製する工程、及び、
    前記の極性溶剤系分散体調製工程を行った後、前駆体粒子に内包される炭化水素系溶剤を除去する工程を含み、
    前記混合液中に、前記重合性単量体の総質量100質量部に対し前記架橋性単量体を35〜95質量部含むことを特徴とする中空樹脂粒子の製造方法。
  2. 前記中空樹脂粒子の体積平均粒径が0.9〜9.0μmであることを特徴とする請求項1に記載の中空樹脂粒子の製造方法。
  3. 前記中空樹脂粒子の空隙率が55〜95%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空樹脂粒子の製造方法。
  4. 前記炭化水素系溶剤が、少なくとも1つの炭素数4〜7の炭化水素化合物からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の中空樹脂粒子の製造方法。
  5. 前記極性溶剤が、少なくとも1つの炭素数1〜4のアルコールからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の中空樹脂粒子の製造方法。
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