(構成)
図1は、本発明の実施形態に係る車両の制御装置(以下、「第1装置」とも称呼される。)10の概略システム構成図である。第1装置10は、車両SVに搭載され、当該車両SVの少なくとも前方に存在する立体物(以下、「物標」と称呼する。)を少なくとも2つのセンサにて検出するとともに、少なくとも2つのセンサにてそれぞれ検出された物標が同一の物標であるか否かを判定する。更に、第1装置10は、少なくとも2つのセンサにてそれぞれ検出された物標が同一の物標であると判定すると、それぞれの物標に関する情報(例えば、車両SVに対する位置(相対位置)及び車両SVに対する速度(相対速度))を統合して、記憶部にこの統合された情報(以下、「フュージョン物標情報」と称呼する。)を記録する。加えて、第1装置10は、フュージョン物標情報が記憶部に記録されているときは、車両と物標(障害物)との接触を回避するため、車両SVの運転状態を変更する。
第1装置10は、レーダセンサ20、カメラセンサ30、物標検出ECU40、衝突前制御ECU50、エンジンECU60、ブレーキECU70、ステアリングECU80及び警報ECU90を備える。
レーダセンサ20は、レーダ波送受信部21及び情報処理部22を備えている。レーダ波送受信部21は、ミリ波帯の電磁波(以下、「ミリ波」とも称呼される。)を放射し、放射範囲内に存在する立体物によって反射されたミリ波(反射波)を受信する。なお、レーダ波送受信部21は、ミリ波帯以外の周波数帯の電磁波を用いるレーダ波送受信部(レーザレーダを含む。)であってもよい。
情報処理部22は、放射(送信)したミリ波と受信した反射波との位相差、反射波の減衰レベル及びミリ波を送信してから受信するまでの時間を含む反射点情報に基づいて、車両SVと物標(概ね、物標の中心位置)との間の距離、物標の車両SVに対する方向(方位)及び物標の車両SVに対する速度等を検出する。情報処理部22は、互いに近接している「複数の反射点」をグルーピングし、グルーピングできた反射点の群(以下、「反射点群」と称呼する。)を一つの物標として認識する。情報処理部22は、認識された物標に対して物標を特定/識別するための識別情報として物標IDを付与する。情報処理部22は、反射点群の中の任意の一点(特定反射点)を利用して、レーダセンサ検出情報を演算する。レーダセンサ検出情報は、物標の縦距離Dfx、車両SVに対する物標の方位θp及び車両SVと物標との相対速度Vfx等を含む。
レーダセンサ20は、車両SVの主として前方の領域に存在する立体物に関する情報を取得するために車両SVの前方に備えられる。より具体的に述べると、図2に示したように、レーダセンサ20は、車両SVのフロントバンパFBの車幅方向中心位置に配設される。レーダセンサ20が物標を検出できる領域(検出可能領域)は、図2に示したように、「車両SVの前端部の車幅方向中心位置から前方へ延びる検出軸CL1」を中心として右方向に右境界線RBL1まで、左方向に左境界線LBL1までの扇形の領域である。
検出軸CL1は車両前後軸FRと一致する。「検出軸CL1と右境界線RBL1とのなす角の大きさ」及び「検出軸CL1と左境界線LBL1とのなす角の大きさ」はそれぞれθ1である。従って、レーダセンサ20の検出可能領域である扇形の中心角は(2・θ1)である。なお、レーダセンサ20は、車両SVのそれぞれ異なる位置(例えば、車両SVの前方、右前方及び左前方)に配設される複数のレーダセンサにより構成されていてもよい。レーダセンサ20は、「第1センサ部20」と称呼される場合がある。レーダセンサ検出情報は「第1検出情報」と称呼される場合がある。
カメラセンサ30は、車両SVの前方を撮影するステレオカメラ31及びステレオカメラ31によって撮影された画像を処理する画像処理装置32を備えている。ステレオカメラ31は、図2に示したように、フロントウィンドウの車室内側に配設される。カメラセンサ30の検出可能領域は、「車両SVのフロントウィンドウの車幅方向中心位置から前方へ延びる検出軸CSL」を中心として右方向に右境界線RCBLまで、左方向に左境界線LCBLまでの扇形の領域である。検出軸CSLは車両SVの車両前後軸FRと一致する。「検出軸CSLと右境界線RCBLとのなす角の大きさ」及び「検出軸CSLと左境界線LCBLとのなす角の大きさ」はそれぞれθ2である。よって、カメラセンサ30の画角は(2・θ2)である。
図3に示したように、レーダセンサ20の上下方向の検出可能領域は、上境界線UBL1から下境界線DBL1までの扇形の領域である。更に、カメラセンサ30の上下方向の検出可能領域は、上境界線UCBLから下境界線DCBLまでの扇形の領域である。図3から理解されるように、レーダセンサ20の上下方向の検出可能領域と、カメラセンサ30の上下方向の検出可能領域と、は車両SVの前方且つ遠方においては略一致する(重なっている)。しかし、レーダセンサ20の上下方向の検出可能領域と、カメラセンサ30の上下方向の検出可能領域と、が重なる割合は車両SVに近いほど小さくなる。
ステレオカメラ31は、一定時間が経過する毎に撮影した画像を表す画像信号を画像処理装置32に送信する。画像処理装置32は、受信した画像信号に基づき、撮影領域(検出可能領域)に存在する物標の有無を判定する。画像処理装置32は、物標が撮影領域に存在すると判定した場合、その物標の位置を算出するとともに、物標の種類(自動車、二輪車及び歩行者等)を周知のパターンマッチングにより識別する。なお、物標の位置は、物標の車両SVに対する方向(方位)及び物標と車両SVとの間の距離によって特定される。更に、画像処理装置32は、物標の左側の端点(左端点)と、右端点とを抽出(特定)し、これら端点の車両SVに対する位置についての情報を取得する。
カメラセンサ30は、物標の位置(概ね、物標の中心位置であり、例えば、物標の左端点と右端点との中心)を示す情報及び物標の種類を示す情報を一定時間が経過する毎にECU40に出力する。更に、カメラセンサ30は、物標の左端点及び右端点の車両SVに対する位置(相対位置)についての情報を一定時間が経過する毎にECU40に出力する。ECU40は、カメラセンサ30から受け取った物標の位置を示す情報に基づいて物標の位置の推移を特定する。そして、ECU40は、特定した物標の位置の推移に基づいて物標の車両SVに対する速度(相対速度)及び移動軌跡を把握する。
なお、カメラセンサ30は、ステレオカメラ31の代わりに単眼カメラが用いられてもよい。カメラセンサ30は、「第2センサ部30」と称呼される場合がある。カメラセンサ検出情報は「第2検出情報」と称呼される場合がある。
物標検出ECU40は、レーダセンサ20及びカメラセンサ30と電気的に接続されている。ECUは、エレクトロニックコントロールユニットの略称であり、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM(又は不揮発性メモリ)及びインタフェースI/F等を含むマイクロコンピュータを主要構成部品として有する電子制御回路である。CPUは、メモリ(ROM)に格納されたインストラクション(ルーチン)を実行することにより後述する各種機能を実現する。
衝突前制御ECU(以下、「PCSECU」とも称呼する。)50は、物標検出ECU40、エンジンECU60、ブレーキECU70、ステアリングECU80及び警報ECU90とCAN(Controller Area Network) 通信により相互にデータ交換可能に電気的に接続されている。従って、PCSECU50は、物標検出ECU40の記憶部43に記録されたフュージョン物標情報を参照しながらエンジンECU60、ブレーキECU70及びステアリングECU80と連携して車両SVの運動状態を制御することができる。
PCSECU50は、以下のセンサとそれぞれ電気的に接続され、それらのセンサの検出信号又は出力信号を受信するようになっている。なお、各センサは、PCSECU50以外のECUに接続されていてもよい。その場合、PCSECU50は、センサが接続されたECUからCANを介してそのセンサの検出信号又は出力信号を受信する。
アクセルペダル操作量センサ51は、車両SVのアクセルペダル51aの操作量(アクセル開度)を検出し、アクセルペダル操作量APを表す信号を出力するようになっている。ブレーキペダル操作量センサ52は、車両SVのブレーキペダル52aの操作量を検出し、ブレーキペダル操作量BPを表す信号を出力するようになっている。車速センサ53は、車両SVの走行速度(車速)を検出し、車速SPDを表す信号を出力するようになっている。ヨーレートセンサ54は、車両SVのヨーレートを検出し、実ヨーレートYrtを出力するようになっている。
エンジンECU60は、エンジンアクチュエータ61に接続されている。エンジンアクチュエータ61は、火花点火・ガソリン燃料噴射式内燃機関(E/G)62のスロットル弁の開度を変更するスロットル弁アクチュエータを含む。エンジンECU60は、エンジンアクチュエータ61を駆動することにより内燃機関62が発生する駆動トルクを変更することができる。内燃機関62が発生する駆動トルクは、図示しない変速機を介して図示しない車輪に伝達されるようになっている。従って、エンジンECU60は、エンジンアクチュエータ61を制御することにより車両SVの駆動力を制御し、加速状態(加速度)を変更することができる。なお、車両SVがハイブリッド車両である場合、エンジンECU60は、駆動源としての「内燃機関及び電動機」の何れか一方又は両方によって発生する駆動力を制御することができる。更に、車両SVが電気自動車である場合、エンジンECU60は、駆動源としての電動機によって発生する駆動力を制御することができる。
ブレーキECU70は、ブレーキアクチュエータ71に電気的に接続されている。ブレーキアクチュエータ71は、ブレーキペダル52aの踏力によって作動油を加圧する図示しないマスタシリンダと、車輪(左前輪、右前輪、左後輪及び右後輪)に設けられる摩擦ブレーキ機構72との間の油圧回路に設けられている。ブレーキアクチュエータ71は、ブレーキECU70からの指示に応じて、摩擦ブレーキ機構72のブレーキキャリパ72bに内蔵されたホイールシリンダに供給する油圧を調整する。その油圧によってホイールシリンダが作動することによりブレーキパッドがブレーキディスク72aに押し付けられる。その結果、摩擦制動力が発生する。従って、ブレーキECU70は、ブレーキアクチュエータ71を制御することにより車両SVの制動力を制御し、加速状態(減速度、即ち、負の加速度)を変更することができる。
ステアリングECU80は、モータドライバ81を介してアシストモータ(M)82に電気的に接続されている。アシストモータ82は、図示しない車両SVの「操舵ハンドル、操舵ハンドルに連結されたステアリングシャフト及び操舵用ギア機構等を含むステアリング機構」に組み込まれている。ステアリングECU80は、ステアリングシャフトに設けられた操舵トルクセンサ(図示せず)によって、運転者が操舵ハンドルに入力した操舵トルクを検出し、この操舵トルクに基づいてモータドライバ81を用いてアシストモータ82を駆動する。ステアリングECU80は、このアシストモータ82の駆動によってステアリング機構に操舵トルクを付与し、これにより、運転者の操舵操作をアシストすることができる。
警報ECU90は、ブザー91及び表示器92に電気的に接続されている。警報ECU90は、PCSECU50からの指示に応じて、ブザー91に「車両SVと衝突する可能性が高い物標に対する運転者の注意を喚起する警報音」を出力させる。更に、警報ECU90は、PCSECU50からの指示に応じて、表示器92に注意喚起のマーク(例えば、ウォーニングランプ)を表示させる。
(作動の概要)
第1装置10は、レーダセンサ20及びカメラセンサ30を用いて車両SVの前方の立体物(物標)をそれぞれ検出し、後述する手法を用いて、レーダセンサ20により検出された物標情報と、カメラセンサ30により検出された物標情報と、を統合(フュージョン)する。統合された物標情報(フュージョン物標情報)には、立体物(物標)の車両SVに対する距離及び速度が含まれる。
更に、第1装置10は、統合された物標の物標情報が所定時間継続して取得された場合に、フュージョン物標情報を記憶部43に記録する。加えて、第1装置10は、フュージョン物標情報が記憶部43に記録されている場合において、レーダセンサ20を用いて検出された立体物の物標情報から算出される相対速度と、カメラセンサ30を用いて検出された立体物の物標情報から算出される相対速度と、の差が所定値以上となった場合、記憶部に記録されている当該物標情報を削除する。
加えて、第1装置10は、フュージョン物標情報が記憶部43に記録されている間は、物標がレーダセンサ20の検出可能領域及びカメラセンサ30の検出可能領域の何れか一方から離脱した場合であっても、他方のセンサにて検出された情報に基づいて衝突前制御(接触回避制御)を実行する。以下、その手順について説明する。
レーダセンサ検出情報及びカメラセンサ検出情報の何れもが取得されている場合、物標検出ECU40のフュージョン物標情報取得部41は、図4に示したように、カメラセンサ検出情報により特定される物標(c)が存在する領域を示す物標領域201を定義する。物標領域201は、上述したx−y座標上の領域であって物標(c)の周囲を囲う領域である。次に、フュージョン物標情報取得部41は、レーダセンサ検出情報により特定される物標(r)に対応する反射点群の少なくとも一部が物標領域201に含まれる場合、カメラセンサ検出情報に基づく物標(c)及びレーダセンサ検出情報に基づく物標(r)を同一の物標(n)として取り扱う。より具体的に述べると、フュージョン物標情報取得部41は、「レーダセンサ検出情報」及び「カメラセンサ検出情報」を以下に述べる手法を用いて統合(フュージョン)する。
図4に示したように、フュージョン物標情報取得部41は、物標(n)の最終的な縦距離Dfx(n)として、レーダセンサ検出情報に含まれる縦距離Dfxを採用する。一方、フュージョン物標情報取得部41は、レーダセンサ検出情報に含まれる縦距離Dfxと、カメラセンサ検出情報に含まれる物標(n)の方位θpの正接tanθp との積を計算することにより物標(n)の最終的な横位置Dfy(n)を決定する(Dfy(n)=Dfx・tanθp)。
なお、レーダセンサ20及びカメラセンサ30の何れもが検出している物標は、以下、「両センサ検出物標」とも称呼される。
更に、フュージョン物標情報取得部41は、物標(n)の最終的な相対速度Vfx(n)として、レーダセンサ検出情報に含まれる相対速度Vfxを採用する。更に、フュージョン物標情報取得部41は、レーダセンサ検出情報に基づいて検出された物標(n)と、カメラセンサ検出情報に基づいて検出された物標(n)と、に対して同じ物標IDを付与する。このように「レーダセンサ20及びカメラセンサ30双方の検出結果を用いて決定される物標情報」は、以下、「フュージョン物標情報」と称呼される。
従って、フュージョン物標情報取得部41は、物標(n)が「レーダセンサ検出情報」及び「カメラセンサ検出情報」の両方に基づいて検出されたとき、フュージョン物標情報を物標(n)の物標情報として決定する。
これに対し、物標(n)が「レーダセンサ検出情報」及び「カメラセンサ検出情報」の何れか一方のみに基づいて検出された場合、フュージョン物標情報取得部41は、その検出できている情報のみに基づいて物標(n)の最終的な物標情報を取得する(決定する)。この場合、フュージョン物標情報取得部41は、既存の物標IDと重複しないように物標(n)に対して物標IDを付与する。なお、このように「レーダセンサ検出情報」及び「カメラセンサ検出情報」の何れか一方のみの情報に基づいて決定される物標情報は、「単独センサ物標情報」と称呼される場合がある。
フュージョン物標情報取得部41はフュージョン物標情報に基づいて物標が認識されたとき、このフュージョン物標情報に基づいて認識(特定)された物標(以下、「フュージョン物標」と称呼される。)に関する情報(フュージョン物標情報)をメモリ(例えば、ECU40内のRAM)に格納する。
<フュージョン物標情報の詳細>
図5に示したように、フュージョン物標情報400は、物標ID401、検出(認識)時刻402、X方向の相対距離403、Y方向の相対距離404、X方向の相対速度405及びY方向の相対速度406等を構成項目として含んでいる。
物標ID401は、前述したように、物標を特定/識別するための識別情報である。検出時刻402は、物標ID401に対応する物標が初めて認識された時刻である。つまり、検出時刻402とは、物標検出ECU40が、2つの物標を同一の物標と認識し、物標IDを付与した時刻である。X方向の相対距離403は、前述したように、車両SVに対する物標のX方向の距離(縦距離)Dfx(n)である。
Y方向の相対距離404は、車両SVに対する物標のY方向の距離(横距離)Dfy(n)である。X方向の相対速度405は、車両SVに対する物標のX方向の速度Vfx(n)である。Y方向の相対速度406は、車両SVに対する物標のY方向の速度Vfy(n)である。
<フュージョン物標情報の記憶部への記録>
ところで、前述したように、レーダセンサ20の上下方向の検出可能領域とカメラセンサ30の上下方向の検出可能領域とは、車両SVに近いほど重なる割合が小さい。従って、特に、図3に破線L1にて示した領域に物標が存在する場合、その物標はレーダセンサ20によっては検出可能であるが、カメラセンサ30によっては検出が困難である。
このように、レーダセンサ20及びカメラセンサ30は車両SVに配設される位置がそれぞれ異なるので、物標の位置によっては、一方のセンサでは検出可能であるが、他方のセンサでは検出困難となる場合がある。
ところで、例えば、物標が誤検出された場合、フュージョン物標情報が繰り返し取得される確率は低い。よって、フュージョン物標情報が取得された後、所定時間の間、フュージョン物標情報の取得が継続した場合、そのフュージョン物標情報の確からしさ(信頼度)は高いと言える。
そこで、第1装置10は、フュージョン物標情報取得部41によりフュージョン物標情報が初めて取得された後、所定時間の間、フュージョン物標情報が一定時間毎に連続して取得されたときに限り、記憶部43にフュージョン物標情報を記録する。これにより、PCSECU50はフュージョン物標情報を利用可能となる。
これによれば、記憶部43に記録されたフュージョン物標情報の信頼度は極めて高い。従って、その後、対応する物標が仮に、一方のセンサの検出可能領域から離脱した場合であっても、フュージョン物標情報が記憶部43に記録されている間は、PCSECU50は、他方のセンサのみによる物標の検出結果に基づいて、衝突前制御を実行する。
物標検出ECU40のフュージョン物標情報管理部42(図1を参照。)は、フュージョン物標情報取得部41によってフュージョン物標情報が取得されると、フュージョン物標情報が取得されてからの経過時間を計測するため、タイマを起動する。例えば、フュージョン物標情報管理部42は、フュージョン物標情報が取得されると、カウンタの値Cを「1」だけインクリメントする。
タイマの起動から所定時間経過後(カウンタの値Cが所定の閾値Cthとなったとき)まで「フュージョン物標情報」が取得され続けたと判定すると、フュージョン物標情報管理部42は、フュージョン物標情報をPCSECU50が参照できるデータとして、物標検出ECU40内の記憶部(例えば、RAM)43に記録する。
<フュージョン物標情報の削除>
このように、記憶部43に記録されるフュージョン物標情報は、信頼度が高い情報であるが、異なる2つの物標が近接していたために同一の物標であると誤認識されている可能性も考えられる。そこで、物標検出ECU40は、フュージョン物標情報が記憶部43に記録された後、レーダセンサ20によって検出された物標の移動する方向とカメラセンサ30によって検出された物標の移動する方向とが異なることが検出されると、フュージョン物標情報管理部42は、この物標に対応するフュージョン物標情報を記憶部43から削除する。
(実際の作動)
次に、本支援装置の実際の作動について説明する。
<フュージョン物標情報記録ルーチン>
物標検出ECU40のCPU(以下、単に「CPU」とも称呼される。)は、一定時間(例えば、20ms)が経過する毎に図6にフローチャートにより示した「フュージョン物標情報記録ルーチン」を実行するようになっている。以下、場合分けをして説明する。なお、カウンタの値Cは、別途実行される図示しないイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されている。
(1)フュージョン物標情報が継続して取得されている場合
CPUは所定のタイミングにてステップ600から処理を開始してステップ610に進み、レーダセンサ20及びカメラセンサ30により「物標情報」を取得する。次いで、CPUは、ステップ620に進み、レーダセンサ20及びカメラセンサ30がそれぞれ検出した物標が同一の物標であるか否かを判定する。言い換えると、CPUは、ステップ620にてフュージョン物標情報が取得されたか否かを判定する。
上記仮定によれば、複数センサがそれぞれ検出した物標は同一の物標であるので、フュージョン物標情報が取得される。従って、CPUはステップ620にて「Yes」と判定してステップ630に進み、カウンタの値Cを「1」だけインクリメントする。次いで、CPUはステップ640に進み、カウンタの値Cが所定の閾値Cth以上となったか否かを判定する。なお、所定の閾値Cthは、例えば、50程度の大きさである。現時点において、カウンタの値Cは「1」である。従って、CPUはステップ640にて「No」と判定し、ステップ695に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
次に、一定時間が経過した時点において、CPUは再びステップ600から処理を開始する。そして、CPUはステップ610乃至ステップ630を順に実行してステップ640に進む。現時点において、カウンタの値Cは2であり、所定の閾値Cthよりも小さい。従って、CPUはステップ640にて「No」と判定してステップ695に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。このように、フュージョン物標情報が継続して取得されている場合、CPUはカウンタの値Cが所定の閾値Cth以上となるまで、ステップ610乃至ステップ640を一定時間毎に繰り返す。
その後、カウンタの値Cが所定の閾値Cth以上となったとき、CPUはステップ640にて「Yes」と判定してステップ650に進み、フュージョン物標情報を記憶部43に記録するとともにカウンタの値Cを「0」に設定する(リセットする)。次いで、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
(2)フュージョン物標情報が取得された後、フュージョン物標情報が記憶部に記録される前に物標が同一物標であると認識されなくなった場合
CPUは一定時間が経過する毎にステップ610乃至ステップ650のルーチンを繰り返し、カウンタの値Cがインクリメントされる。その後、カウンタの値Cが所定の閾値Cthに達する前に2つのセンサがそれぞれ検出した物標が同一物標であると認識できなくなると(例えば、レーダセンサ20により検出された物標の位置とカメラセンサ30により検出された物標の位置が異なると)、CPUはステップ620にて「No」と判定してステップ660に進む。CPUはそのステップ660にてカウンタの値Cを「0」に設定してステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、カウンタはリセットされ、再び初めからフュージョン物標情報記録ルーチンを実行する。
<フュージョン物標情報削除ルーチン>
CPUは、一定時間(例えば、20ms)が経過する毎に図7にフローチャートにより示した「フュージョン物標情報削除ルーチン」を実行するようになっている。
CPUは、所定のタイミングにてステップ700から処理を開始してステップ710に進み、レーダセンサ20及びカメラセンサ30を用いて物標情報を取得する。
次いで、CPUは、レーダセンサ20及びカメラセンサ30の双方にて物標情報が取得されたか否かを判定する。レーダセンサ20及びカメラセンサ30の何れか一方でのみ物標情報が取得された場合(例えば、物標が一方のセンサの検出可能領域から離脱した場合)、CPUは、ステップ720にて「No」と判定してステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。つまり、記憶部43にフュージョン物標情報が記録されている場合、その記録されたフュージョン物標情報は保持される。
一方、レーダセンサ20及びカメラセンサ30の双方で物標情報が取得された場合、CPUは、ステップ720にて「Yes」と判定してステップ730に進み、記憶部43にフュージョン物標情報が記録されているか否かを判定する。フュージョン物標情報が記憶部43に記録されていない場合、CPUはステップ730にて「No」と判定してステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
フュージョン物標情報が記憶部43に記録されている場合、CPUはステップ730にて「Yes」と判定してステップ740に進み、各センサがそれぞれ検出した物標のX方向速度差が所定値Vxth未満であるか否かを判定する。各センサがそれぞれ検出した物標のX方向速度差が所定値Vxth未満である場合、CPUはステップ740にて「Yes」と判定してステップ750に進み、各センサがそれぞれ検出した物標のY方向速度差が所定値Vyth」未満であるか否かを判定する。各センサがそれぞれ検出した物標のY方向速度差が所定値Vyth未満である場合、CPUはステップ750にて「Yes」と判定してステップ795に進み、本ルーチンを一旦終了する。
一方、各センサがそれぞれ検出した物標のX方向速度差ΔVxが所定値Vxth以上である場合、CPUはステップ740にて「No」と判定してステップ760に進み、記憶部43からフュージョン物標情報を削除する。更に、各センサがそれぞれ検出した物標のY方向速度差ΔVyが所定値Vyth以上である場合、CPUはステップ750にて「No」と判定してステップ760に進み、記憶部43からフュージョン物標情報を削除する。
<衝突前制御>
PCSECU50のCPU(以下、単に「CPU」とも称呼される。)は、一定時間(例えば、20ms)が経過する毎に図8にフローチャートにより示した「衝突前制御ルーチン」を実行するようになっている。
CPUは所定のタイミングにてステップ800から処理を開始してステップ810に進み、衝突余裕時間TTCが所定の閾値Tth以下であるか否かを判定する。衝突余裕時間TTCは、車両SVと物標とが衝突するまでの余裕度を時間で表した指標であり、車両SVと物標との相対距離を車両SVと物標との相対速度にて除した値である。従って、衝突余裕時間TTCが小さいほど衝突までの余裕度が小さい。衝突余裕時間TTCが所定の閾値Tthより大きい場合、CPUはステップ810にて「No」と判定してステップ895に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、この場合、衝突前制御は実施されない。
一方、衝突余裕時間TTCが所定の閾値Tth以下である場合、CPUはステップ810にて「Yes」と判定してステップ820に進み、車速SPDが所定の速度閾値SPth以上であるか否かを判定する。例えば、所定の速度閾値SPthは7km/hに設定される。車速SPDが所定の速度閾値SPth以上である場合、CPUはステップ820にて「Yes」と判定してステップ830に進み、アクセルペダル操作量APが所定の操作量閾値APth未満であるか否かを判定する。
アクセルペダル操作量APが所定の操作量閾値APth未満である場合、CPUはステップ830にて「Yes」と判定してステップ840に進み、警報ECU90を用いて警報の発報のみを行う。その後、CPUはステップ895に進み、本ルーチンを一旦終了する。
これに対し、アクセルペダル操作量APが所定の操作量閾値APth以上である場合、CPUはステップ830にて「No」と判定してステップ895に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。つまり、この場合、衝突前制御は実施されない。
なお、CPUがステップ820に進んだ時点において車速SPDが所定の速度閾値SPth未満である場合、CPUはそのステップ820にて「No」と判定してステップ850に進み、アクセルペダル操作量APが所定の操作量閾値APth以上であるか否かを判定する。アクセルペダル操作量APが所定の操作量閾値APth未満である場合、CPUはステップ850にて「No」と判定してステップ895に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。つまり、この場合、衝突前制御は実施されない。
一方、アクセルペダル操作量APが所定の操作量閾値APth以上である場合、CPUはステップ850にて「Yes」と判定してステップ860に進み、選択物標のフュージョン物標情報が記憶部43に記録されているか否かを判定する。選択物標のフュージョン物標情報が記憶部43に記録されている場合、CPUはステップ860にて「Yes」と判定する。次いで、CPUはステップ870に進み、警報ECU90を用いて警報を発報する(ブザー91から警報音を出力させ、表示器92にウォーニングランプを点灯させる)とともにエンジンECU60及び/又はブレーキECU70を用いて車両SVの制駆動力を制御する。その後、CPUはステップ895に進み、本ルーチンを一旦終了する。
これに対し、選択物標のフュージョン物標情報が記憶部43に記録されていない場合、CPUは、ステップ860にて「No」と判定してステップ840に進み、警報ECU90を用いて警報の発報のみを実行する。その後、CPUはステップ895に進み、本ルーチンを一旦終了する。
このように、ステップ820にて「No」と判定し(SPD<SPth)且つステップ850にて「Yes」と判定する(AP≧APth)状況においては、運転者がブレーキペダル52aの代わりに、誤ってアクセルペダル51aを踏んでいる可能性が高い。従って、衝突前制御を実行することが好ましい。しかし、選択物標が単独センサ物標情報により認識された物標である場合、選択物標が誤認識された物標である可能性も否定できない。
ところで、選択物標のフュージョン物標情報が記憶部43に記録されている場合、その選択物標は車両SVの周囲に実際に存在している可能性が高いと推定できる。従って、選択物標のフュージョン物標情報が記憶部43に記録されている場合、第1装置10は、警報の発報及び制駆動力の制御)を実行する。これにより、車両SVと選択物標との衝突(接触)回避性を向上させることができる。
一方、選択物標のフュージョン物標情報が記憶部43に記録されていない場合、その選択物標は車両SVの周囲に実際に存在している可能性が低いと推定できる。従って、選択物標のフュージョン物標情報が記憶部43に記録されていない場合、第1装置10は、警報ECU90を用いて警報を発報させる。これにより、車両SVの不要な制駆動力制御が実行されることを回避できる。
言い換えると、第1装置10は、選択物標が単独センサ物標情報により認識された物標であっても、当該物標についてのフュージョン物標情報が記憶部43に記録されている場合、その物標が車両SVの周囲に実際に存在している可能性が高いと推定する。
以上、説明したように、第1装置10は、2つの周囲センサ(レーダセンサ20及びカメラセンサ30)と、フュージョン物標情報取得部41と、記憶部43と、フュージョン物標情報管理部42と、車両運動状態制御部50と、を備える。
フュージョン物標情報取得部41は、第1センサ部20及び第2センサ部30の何れもが検出している物標である両センサ検出物標についての第1検出情報及び第2検出情報を統合したフュージョン物標情報を取得する。フュージョン物標情報管理部42は、少なくともフュージョン物標情報取得部41がフュージョン物標情報を取得しているとの条件(特定条件)が所定時間に亘って成立したとき、フュージョン物標情報を記憶部43に記録する。フュージョン物標情報管理部42は、フュージョン物標情報が記録された後、第1検出情報から取得される車両SVに対する物標の速度と、第2検出情報から取得される車両SVに対する物標の速度と、の差が所定値以上となったとき、記録されたフュージョン物標情報を記憶部43から削除する。車両運動状態制御部50は、記憶部43にフュージョン物標情報が記録されている間は、当該フュージョン物標に対応する物標と車両SVとの接触を回避するために車両SVの運動状態を変更する。
このような構成により、信頼度の高いフュージョン物標情報が記憶部43に記録される。更に、第1検出情報から取得される物標の速度と第2検出情報から取得される物標の速度との差が所定値以上となったとき、記憶部43に記録されたフュージョン物標情報を削除する。このようにして、記憶部43に記録されるフュージョン物標情報の信頼度をより向上させることができる。
更に、第1装置10は、フュージョン物標情報が記憶部43に記録されている間は、車両SVと物標との接触を回避するために車両SVの運動状態を制御することができる。従って、仮に物標がレーダセンサ20及びカメラセンサ30の何れか一方の検出可能領域から離脱した場合であっても、車両SVと物標との接触を回避するために車両の運動状態(制駆動力)を制御することができる。
<他の実施形態>
他の実施形態に係る車両の制御装置(以下、「第2装置」とも称呼する。)10Aは、特定条件の一つとして車両SVと物標との相対距離が所定距離以下であるという条件が加わっている点において、第1装置10と異なっている。従って、以下、上記相違点を中心に説明する。
レーダセンサ20は物標により反射する反射波がセンサに到達する時間から相対距離を算出するので、車両SVと物標との相対距離を比較的正確に検出できる。これに対し、カメラセンサ30は、画像情報に基づき距離を算出しているので、物標が車両SVに対して遠隔であるほど相対距離を正確に検出できない傾向がある。そこで、第2装置10Aは、「フュージョン物標情報管理部42がフュージョン物標情報を記憶部43に記録している」との条件(第1条件)に加え、「車両SVと物標との相対距離が所定の距離閾値Dth以下である」との条件(第2条件)を設定する。例えば、所定の距離閾値Dthは60mに設定される。
(具体的作動)
物標検出ECU40のCPUは、一定時間が経過する毎に図9にフローチャートにより示した「フュージョン物標情報記録ルーチン」を実行するようになっている。なお、図9において、図6に示したステップと同じステップには同一のステップ番号が付されている。
CPUは所定のタイミングにてステップ900から処理を開始してステップ610に進み、2つのセンサ(レーダセンサ20及びカメラセンサ30)を用いて物標情報を取得してステップ620に進む。2つのセンサが同一の物標を認識した場合、CPUはステップ620にて「Yes」と判定してステップ910に進み、車両SVと物標との相対距離が所定の距離閾値Dth以下であるか否かを判定する。
車両SVと物標との相対距離が所定の距離閾値Dth以下である場合、CPUはステップ910にて「Yes」と判定してステップ630に進み、カウンタの値Cを「1」だけインクリメントする。その後、CPUは、カウンタの値Cが所定の閾値Cth以上となるまでステップ610乃至ステップ640の処理を繰り返し、カウンタの値Cの値が所定の閾値Cth以上となると、フュージョン物標情報を記憶部43に記録する。その後、CPUは、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、車両SVと物標との相対距離が所定の距離閾値Dthより大きい場合、CPUはステップ910にて「No」と判定してステップ660に進み、カウンタの値Cを「0」に設定する(つまり、カウンタをリセットする)。その後、CPUは、ステップ995に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
このような構成により、第2装置10Aは、異なる物標を同一の物標と誤認識する確率を小さくすることができる。
<変形例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
上記実施形態においては、第1センサ部20には、レーダセンサ20が用いられていたが、これに代えて超音波センサが用いられてもよい。
上記実施形態においては、衝突前制御として、エンジンECU60による駆動力制御及びブレーキECU70による制動力制御が実行されていたが、これらの制駆動力制御に加え、ステアリングECU80によるステアリング制御が実行されてもよい。