JP2020129970A - 多能性幹細胞を培養するための組成物及び方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】bFGF等の添加量を抑え、低価格で多能性幹細胞を培養しうる、培養方法を提供する。【解決手段】式(I)[式中、R1、R2及びR3は、各々独立して、水素、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ又はNH2であり;R4は、水素又はC1−6アルキルであり;R5及びR6は、各々独立して、水素、又は−NR7R8で置換されていてもよいC1−6アルキルであり;R7及びR8は、各々独立して、水素又はC1−6アルキルであり;Xは、C1−6アルキレンであり;Yは、−NR9−又は−O−であり;R9は、水素又はC1−6アルキルであり;nは、0又は1である]の構造を有する化合物、その塩又はそのエナンチオマーを含む、多能性幹細胞を培養するための組成物。【選択図】図1
Description
本発明は、多能性幹細胞を培養するための組成物及び方法に関する。
近年、外傷や病気、加齢等により損傷を受けた組織を人工的に再生させる再生医療が注目されている。再生医療は、ある細胞や組織を人工的に製造・構築し、患者へ移植する点において、従来の移植治療が抱える、ドナー不足やドナー摘出時の組織欠損といった課題を解決できる新たな治療方法として期待されている。また、人工的に構築された組織は、新しい薬物・薬剤の有効性を確認するための創薬支援や、その薬物・薬剤の安全性、薬物動態等を評価するツールとしても期待されている。
それら組織の原料となるのが、幹細胞である。幹細胞は、細胞分裂して同じ細胞を作る能力(自己複製能力)と別の細胞へと分化する能力(分化能)を有しており、際限なく増殖する細胞と定義されている。
幹細胞には、受精卵から作られた胚性幹細胞(以下、「ES細胞」と称することもある。)、皮膚や血液から採取した体細胞から作られる人工多能性幹細胞(以下、「iPS細胞」と称することもある。)等の多能性(pluripotency)幹細胞;骨髄から採取される造血幹細胞、肝臓の前駆細胞である肝幹細胞、間葉系幹細胞、皮膚幹細胞、生殖幹細胞等の複能性(multipotency)幹細胞;等が知られている。特に、多能性幹細胞は、幅広い分野で応用可能なため、その注目度は高い。
再生医療の研究においては、これら幹細胞を増殖させ、直接患部に注入する方法、幹細胞を分化誘導させ、分化した細胞を移植(注入)する方法、又は足場材料と併用して分化誘導した細胞を移植する方法等の治療方法が提案されている。
多能性幹細胞の医療応用を視野に入れた場合、提案されているいずれの治療方法においても、多能性幹細胞を増殖させるプロセスは、重要な工程の一つである。
多能性幹細胞は、適切な培地種、足場材料、成長因子、血清等を適宜選択すれば、通常、際限なく未分化状態を維持したまま増殖することができる。なかでも、塩基性線維芽細胞増殖因子(以下、「bFGF」と称することもある。)等の成長因子は、多能性幹細胞を培養する際によく使用される。しかし、成長因子は、一般的に非常に高価であり、かつ、未分化状態を維持するために必要とされる添加量が多いことが知られている。そのため、多能性幹細胞の医療応用は、多能性幹細胞の培養時の高価格化に起因して、コスト面で大きな課題が生じる。それ故に、多能性幹細胞をいかに安価に培養するかが、多能性幹細胞の医療応用をより拡大するうえで重要となる。
そのような背景の下、特許文献1では、GSK3β阻害剤及びDYRK阻害剤を多能性幹細胞培養用の培地に添加することで、bFGF等の成長因子の添加量を抑え、低価格で調製可能な培地を提供できることを報告している。
しかしながら、多能性幹細胞の培養方法は、使用する多能性幹細胞の種類や、培養の目的に応じて多岐にわたるものであり、上記で報告されているGSK3β阻害剤及びDYRK阻害剤の使用が好ましくない場合もある。そのため、bFGF等の添加量を抑え、低価格で多能性幹細胞を培養しうる、更なる培養方法の開発が望まれている。
上記課題に鑑み、鋭意検討を重ねたところ、本発明者は、意外にも、式(I)の構造を有する化合物を含む多能性幹細胞を培養するための組成物を使用することで、bFGFの添加量を抑えつつも、多能性幹細胞を培養することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明は、要旨、以下のものを提供する。
〔1〕 多能性幹細胞を培養するための組成物であって、
式(I):
[式中、
R1、R2及びR3は、各々独立して、水素、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ又はNH2であり、
R4は、水素又はC1−6アルキルであり、
R5及びR6は、各々独立して、水素、又は−NR7R8で置換されていてもよいC1−6アルキルであり、
R7及びR8は、各々独立して、水素又はC1−6アルキルであり、
Xは、C1−6アルキレンであり、
Yは、−NR9−又は−O−であり、
R9は、水素又はC1−6アルキルであり、
nは、0又は1である]
の構造を有する化合物、その塩又はそのエナンチオマーを含む、組成物。
〔2〕 R1が、水素である、〔1〕に記載の組成物。
〔3〕 R2が、C1−6アルキル又はNH2である、〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
〔4〕 R5が、C1−6アルキルである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の組成物。
〔5〕 nが、0である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の組成物。
〔6〕 Yが、−O−である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の組成物。
〔7〕 式(I)の構造を有する化合物が、以下:
である、〔1〕に記載の組成物。
〔8〕 多能性幹細胞が、ヒト由来の多能性幹細胞である、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の組成物。
〔9〕 多能性幹細胞の未分化状態を維持させるための、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の組成物。
〔10〕 〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の組成物を用いる、多能性幹細胞を培養するための方法。
〔11〕 多能性幹細胞の未分化状態を維持させるための、〔10〕に記載の方法。
〔12〕 〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の組成物を用いて培養してなる、多能性幹細胞。
〔1〕 多能性幹細胞を培養するための組成物であって、
式(I):
[式中、
R1、R2及びR3は、各々独立して、水素、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ又はNH2であり、
R4は、水素又はC1−6アルキルであり、
R5及びR6は、各々独立して、水素、又は−NR7R8で置換されていてもよいC1−6アルキルであり、
R7及びR8は、各々独立して、水素又はC1−6アルキルであり、
Xは、C1−6アルキレンであり、
Yは、−NR9−又は−O−であり、
R9は、水素又はC1−6アルキルであり、
nは、0又は1である]
の構造を有する化合物、その塩又はそのエナンチオマーを含む、組成物。
〔2〕 R1が、水素である、〔1〕に記載の組成物。
〔3〕 R2が、C1−6アルキル又はNH2である、〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
〔4〕 R5が、C1−6アルキルである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の組成物。
〔5〕 nが、0である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の組成物。
〔6〕 Yが、−O−である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の組成物。
〔7〕 式(I)の構造を有する化合物が、以下:
である、〔1〕に記載の組成物。
〔8〕 多能性幹細胞が、ヒト由来の多能性幹細胞である、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の組成物。
〔9〕 多能性幹細胞の未分化状態を維持させるための、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の組成物。
〔10〕 〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の組成物を用いる、多能性幹細胞を培養するための方法。
〔11〕 多能性幹細胞の未分化状態を維持させるための、〔10〕に記載の方法。
〔12〕 〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の組成物を用いて培養してなる、多能性幹細胞。
本発明によれば、多能性幹細胞を培養するための組成物を提供することができる。また、本発明によれば、多能性幹細胞を培養するための方法を提供することができる。更に、本発明によれば、本明細書中に記載の組成物を用いて培養してなる多能性幹細胞を提供することができる。
本発明は、多能性幹細胞を培養するための組成物であって、
式(I):
[式中、
R1、R2及びR3は、各々独立して、水素、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ又はNH2であり、
R4は、水素又はC1−6アルキルであり、
R5及びR6は、各々独立して、水素、又は−NR7R8で置換されていてもよいC1−6アルキルであり、
R7及びR8は、各々独立して、水素又はC1−6アルキルであり、
Xは、C1−6アルキレンであり、
Yは、−NR9−又は−O−であり、
R9は、水素又はC1−6アルキルであり、
nは、0又は1である]
の構造を有する化合物、その塩又はそのエナンチオマーを含む、組成物を提供する。
式(I):
[式中、
R1、R2及びR3は、各々独立して、水素、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ又はNH2であり、
R4は、水素又はC1−6アルキルであり、
R5及びR6は、各々独立して、水素、又は−NR7R8で置換されていてもよいC1−6アルキルであり、
R7及びR8は、各々独立して、水素又はC1−6アルキルであり、
Xは、C1−6アルキレンであり、
Yは、−NR9−又は−O−であり、
R9は、水素又はC1−6アルキルであり、
nは、0又は1である]
の構造を有する化合物、その塩又はそのエナンチオマーを含む、組成物を提供する。
本発明はまた、多能性幹細胞を培養するための方法であって、有効量の式(I)の構造を有する化合物、その塩又はそのエナンチオマーを添加することを含む、方法を提供する。
本発明はまた、多能性幹細胞の培養において使用するための式(I)の構造を有する化合物、その塩又はそのエナンチオマーを提供する。
本発明はまた、多能性幹細胞を培養するための組成物を製造するための、式(I)の構造を有する化合物、その塩又はエナンチオマーの使用を提供する。
本明細書中で用いられる「C1−6アルキル」とは、1〜6個の炭素原子を含む飽和の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基(これらに限定されるものではないが、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ペンチル、へキシル等を含む)を意味する。好ましいC1−6アルキルは、C1−4アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル等を含む)であり、より好ましくは、メチル、エチルである。
本明細書中で用いられる「C1−6アルコキシ」とは、式「−O−C1−6アルキル」の構造を有する基(これらに限定されるものではないが、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ等を含む)を意味する。好ましいC1−6アルコキシは、メトキシ、エトキシ又はプロポキシであり、より好ましくは、メトキシである。
本明細書中で用いられる「ハロゲン」とは、これらに限定されるものではないが、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を意味する。好ましいハロゲンは、塩素である。
本明細書中で用いられる「塩」とは、これらに限定されるものではないが、例えば、無機酸(これらに限定されるものではないが、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等)又は有機酸(これらに限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アントラニル酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、エンボン酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等)との酸付加塩;有機塩基(これらに限定されるものではないが、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロへキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン類、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン等)との塩等が挙げられる。
式(I)の構造を有する化合物には、その溶媒和物、その結晶多形等も包含される。
本明細書中で用いられる「溶媒和物」とは、1つ以上の溶媒分子と式(I)の構造を有する化合物との会合体、複合体等を意味する。溶媒としては、これらに限定されるものではないが、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、DMSO、酢酸、酢酸エチル等が挙げられる。
本発明の一実施態様では、R1が、水素である、本明細書中に記載の組成物である。
本発明の一実施態様では、R2が、C1−6アルキル又はNH2である、本明細書中に記載の組成物である。
本発明の好ましい実施態様では、R2が、メチル又はNH2である、本明細書中に記載の組成物である。
本発明のより好ましい実施態様では、R2が、NH2である、本明細書中に記載の組成物である。
本発明の一実施態様では、R5が、C1−6アルキルである、本明細書中に記載の組成物である。
本発明の好ましい実施態様では、R5が、エチルである、本明細書中に記載の組成物である。
本発明の一実施態様では、R6が、C1−6アルキルである、本明細書中に記載の組成物である。
本発明の好ましい実施態様では、R6が、エチルである、本明細書中に記載の組成物である。
本発明のより好ましい実施態様では、R5が、C1−6アルキルであり、R6が、C1−6アルキルである、本明細書中に記載の組成物である。
本発明の更に好ましい実施態様では、R5が、エチルであり、R6が、エチルである、本明細書中に記載の組成物である。
本発明の好ましい実施態様では、nが、0である、本明細書中に記載の組成物である。
本発明の好ましい実施態様では、Yが、−O−である、本明細書中に記載の組成物である。
本発明の一実施態様では、式(I)の構造を有する化合物が、以下:
である、本明細書中に記載の組成物である。
である、本明細書中に記載の組成物である。
式(I)の構造を有する化合物は、市販されているか、或いは本明細書中に後述される方法により、公知若しくは周知の方法により、又はこれらに類似する方法により製造することができる。例えば、式(I)の構造を有する化合物は、Selena Chemicals社から購入することができる。
本明細書中で用いられる「多能性幹細胞」とは、生体を構成する全ての組織や細胞へ分化し得る能力を有する細胞を意味する。多能性幹細胞としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ES細胞;核移植により得られるクローン胚由来の胚性幹細胞(ntES細胞);精子幹細胞(GS細胞);多能性生殖幹細胞(mGS細胞);胚性生殖細胞(EG細胞);iPS細胞;培養線維芽細胞又は骨髄幹細胞由来の多能性細胞(Muse細胞);ヒトES細胞と体細胞との融合細胞;ストレスや細胞刺激によって誘導・選抜される多能性幹細胞;体細胞の核を核移植することによって作成された初期胚を培養することによって樹立した多能性幹細胞(Nature,385,810(1997);Science,280,1256(1998);Nature Biotechnology,17,456(1999);Nature,394,369(1998);Nature Genetics,22,127(1999);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96,14984(1999);Nature Genetics,24,109(2000));等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、好ましくはES細胞又はiPS細胞であり、より好ましくはiPS細胞である。したがって、本発明の一実施多様では、多能性幹細胞が、ES細胞又はiPS細胞である、本明細書中に記載の組成物を提供する。更に、本発明の好ましい実施態様では、多能性幹細胞が、iPS細胞である、本明細書中に記載の組成物を提供する。
iPS細胞の場合には、その作製に使用される体細胞としては、これらに限定されるものではないが、例えば、神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、歯髄幹細胞等の組織幹細胞(体性幹細胞);組織前駆細胞;リンパ球、上皮細胞、内皮細胞、筋肉細胞、線維芽細胞(皮膚細胞等)、毛細胞、肝細胞、胃粘膜細胞、腸細胞、脾細胞、膵細胞(膵外分泌細胞等)、脳細胞、肺細胞、腎細胞及び脂肪細胞等の分化した細胞;等が挙げられ、これらは、初代培養細胞であっても、継代細胞であっても、株化細胞であってもよい。
多能性幹細胞は、これらに限定されるものではないが、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類;ウサギ等のウサギ目;ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄目;イヌ、ネコ等のネコ目;ヒト、サル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジー等の霊長類;等の由来の多能性幹細胞であり、好ましくは、多能性幹細胞は、霊長類由来の多能性幹細胞であり、より好ましくは、多能性幹細胞は、ヒト由来の多能性幹細胞である。したがって、本発明の一実施態様では、多能性幹細胞が、ヒト由来の多能性幹細胞である、本明細書中に記載の組成物を提供する。
本明細書中で互換可能に用いられる「多能性幹細胞を培養する」及び「多能性幹細胞の培養」は、例えば、多能性幹細胞の初代培養であっても、継代培養であってもよいし、多能性幹細胞の細胞株の培養(継代培養を含む)であってもよいし、或いは、多能性幹細胞を樹立するための培養であってもよい。
本発明の一実施態様では、多能性幹細胞の未分化状態を維持させるための、本明細書中に記載の組成物を提供する。
本明細書中で用いられる「未分化状態」とは、多能性幹細胞が、多能性及び/又は増殖能を有している状態であることを意味する。
本明細書中で用いられる「多能性」とは、多能性幹細胞が、分化能を有していることを意味する。
多能性幹細胞が未分化状態を維持していることは、これらに限定されるものではないが、例えば、OCT−3/4(OCT−3又はOCT−4)、NANOG、SOX2、SSEA−1、SSEA−3、SSEA−4、TRA−1−60、TRA−1−81等のタンパク質の発現を指標として確認してもよいし、或いは、これらの遺伝子の発現を指標として確認してもよい。タンパク質の測定は、例えば、免疫染色法、フローサイトメトリー等により実施してもよい。また、遺伝子の測定は、例えば、定量的PCR(qPCR)等を用いて実施してもよい。
本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための組成物には、式(I)の構造を有する化合物の他に、基礎培地を加えることができる。
基礎培地としては、本発明の目的を達成できる限り特段限定されるものではないが、例えば、DMEM、EMEM、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、GMEM(Glasgow’s MEM)、RPMI−1640、α−MEM、Ham’s medium F−10、Ham’s medium F−12、Ham’s medium F12K、Medium 199、ATCC−CRCM30、DM−160、DM−201、BME、Fischer、McCoy’s 5A、Leibovitz’s L−15、RITC80−7、MCDB105、MCDB107、MCDB131、MCDB153、MCDB201、NCTC109、NCTC135、Waymouth’s MB752/1、CMRL−1066、Williams’ medium E、Brinster’s BMOC−3 medium、E8 medium(Nature Methods,2011,8,424−429)、ReproFF、ReproFF2等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための組成物には、式(I)の構造を有する化合物の他に、必要に応じて、例えば、血清、成長因子、鉄源、ポリアミン、微量金属、糖類、有機酸、アミノ酸及びその誘導体、還元剤、ビタミン、ステロイド、抗生物質、緩衝剤、無機塩、pH調整剤、タンパク質(酵素等を含む)、各種の活性化剤・阻害剤等の添加剤を加えることができる。添加剤の添加量は、本発明の目的を達成できる限り特段限定されるものではなく、当業者が適宜選択することができる。
血清としては、本発明の目的を達成できる限り特段限定されるものではないが、例えば、ウシ胎仔血清、仔ウシ血清、ウマ血清、ヒト血清等の哺乳類動物由来の血清が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、多能性幹細胞を医療目的で使用する場合等には、異種由来成分が血液媒介病原菌の感染源や異種膠原となる可能性があることから、本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための組成物に血清を加えないことが好ましいこともある。本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための組成物に血清を加えない場合には、例えば、Knockout Serum Replacement(KSR)(Invitrogen社)、Chemically−defined Lipid concentrated(Gibco社)、Glutamax(Gibco社)等の血清を代替する添加剤を加えてもよい。
なお、多能性幹細胞を医療目的で使用する場合等には、異種由来成分が血液媒介病原菌の感染源や異種膠原となる可能性があることから、本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための組成物に血清を加えないことが好ましいこともある。本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための組成物に血清を加えない場合には、例えば、Knockout Serum Replacement(KSR)(Invitrogen社)、Chemically−defined Lipid concentrated(Gibco社)、Glutamax(Gibco社)等の血清を代替する添加剤を加えてもよい。
成長因子としては、これらに限定されるものではないが、例えば、インスリン、インスリン様成長因子(IGF)、上皮成長因子(EGF)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、肝細胞増殖因子(HGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF−β)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
鉄源としては、これらに限定されるものではないが、例えば、トランスフェリン、フェリチン、硫酸鉄(II)等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリアミンとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、スペルミン、スペルミジン、ノルスペルミン、ノルスペルミジン、ホモスペルミン、ホモスペルミジン、カダベリン、プトレシン、アグマチン、オルニチン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
微量金属としては、これらに限定されるものではないが、例えば、マグネシウム、亜鉛、コバルト、スズ、モリブデン、ニッケル、セレン、亜セレン酸ナトリウム等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
糖類としては、これらに限定されるものではないが、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、スクロース等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機酸としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ピルビン酸、乳酸、リノレイン酸、リノール酸等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミノ酸及びその誘導体としては、これらに限定されるものではないが、例えば、グリシン、L−アラニン、L−セリン、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−アルギニン、L−リシン、L−アスパラギン、L−グルタミン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−メチオニン、L−システイン、L−プロリン、L−スレオニン、L−ヒスチジン、L−トリプトファン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−カルニチン、L−オルニチン、グルタチオン(還元型を含む)等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
還元剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、2−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ビタミンとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、ビタミンA及びその誘導体(ビタミンA酢酸エステル等を含む)、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE及びその誘導体(酢酸DL−α−トコフェロール等を含む)、ビタミンK、ビオチン、葉酸等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ステロイドとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、β−エストラジオール、プロゲステロン、コルチコステロン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
抗生物質としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
緩衝剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、HEPES等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機塩としては、これらに限定されるものではないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、硫酸銅、硝酸鉄(II)、硫酸鉄、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
pH調整剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
タンパク質(酵素等を含む)としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ヒトアルブミン、ウシ血清アルブミン、スーパーオキシドジムスターゼ、カタラーゼ等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
各種の活性化剤・阻害剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、Wnt−3a、Wnt−5a、塩化リチウム、補体分子C1q等のWntシグナル活性化剤;Y−27632、K−115(リパスジル塩酸塩水和物)、HA1077(塩酸ファスジル)等のRhoキナーゼ(ROCK)阻害剤等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための組成物のpHは、本発明の目的を達成できる限り特段限定されるものではないが、例えば、約4〜約10、好ましくは約5〜約9、より好ましくは約6〜約8、更に好ましくは約6.5〜約7.5であり得る。
本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための組成物は、コンタミネーション等を防止する目的で、滅菌されたものであってもよい。滅菌する方法は、これらに限定されるものではないが、例えば、紫外線照射、放射線照射、加熱、ろ過等が挙げられる。
本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための組成物は、多能性幹細胞培養用の培地として使用してもよい。
本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための組成物は、例えば、溶液の形態であっても、乾燥した固体(例えば、固形状、粉末状等)の形態であってもよい。
溶液の形態である場合には、そのまま多能性幹細胞培養用の培地として用いてもよいし、溶媒で希釈し、必要に応じて上述した添加剤を加えたものを、多能性幹細胞培養用の培地として用いてもよい。希釈する際に用いる溶媒としては、例えば、水、緩衝液、生理食塩水、上述した基礎培地等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
乾燥した固体の形態である場合には、例えば、水、緩衝液、生理食塩水、上述した基礎培地等の溶媒に溶解し、必要に応じて上述した添加剤を加えたものを、多能性幹細胞培養用の培地として用いてもよい。
溶液の形態である場合には、そのまま多能性幹細胞培養用の培地として用いてもよいし、溶媒で希釈し、必要に応じて上述した添加剤を加えたものを、多能性幹細胞培養用の培地として用いてもよい。希釈する際に用いる溶媒としては、例えば、水、緩衝液、生理食塩水、上述した基礎培地等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
乾燥した固体の形態である場合には、例えば、水、緩衝液、生理食塩水、上述した基礎培地等の溶媒に溶解し、必要に応じて上述した添加剤を加えたものを、多能性幹細胞培養用の培地として用いてもよい。
本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための組成物中、又はこれから得られた多能性幹細胞用の培地中の式(I)の構造を有する化合物の含有量は、例えば、組成物全量又は培地全量に対して、最終濃度として、約0.001〜約1000μg/mL、好ましくは約0.05〜約500μg/mL、より好ましくは約0.1〜約250μg/mL、更に好ましくは約1〜約100μg/mL、なお更に好ましくは、約1〜約40μg/mLであり得る。或いは、式(I)の構造を有する化合物の含有量は、例えば、組成物全量又は培地全量に対して、最終濃度として、約0.1〜約100000nmol/L、好ましくは約5〜約50000nmol/L、より好ましくは約10〜約25000nmol/L、更に好ましくは約100〜約10000nmol/L、なお更に好ましくは約100〜約4000nmol/Lであり得る。
本発明の別の実施態様では、本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための組成物を用いる、多能性幹細胞を培養するための方法を提供する。
本発明の更に別の実施態様では、本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための組成物を用いる、多能性幹細胞の未分化状態を維持するための方法を提供する。
多能性幹細胞の培養に用いられる培養器は、多能性幹細胞の培養が可能なものであれば特段限定されるものではないが、例えば、フラスコ、組織培養用フラスコ、ディッシュ、ペトリデッシュ、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウェルプレート、マルチプレート、マルチウェルプレート、マイクロスライド、チャンバースライド、シャーレ、チューブ、トレイ、培養バック、ローラーボトル等が挙げられる。
多能性幹細胞の培養に用いられる培養器は、細胞接着性であっても、細胞非接着性であってもよく、目的に応じて適宜選ばれる。細胞接着性の培養器は、培養器の表面上での細胞との接着性を向上させる目的で、任意の細胞支持用基質でコーティングされたものであってもよい。細胞支持用基質は、多能性幹細胞の接着又は場合により用いられるフィーダー細胞の接着を目的とする任意の物質であってもよい。
本明細書中で用いられる「フィーダー細胞」とは、多能性幹細胞等がその上にプレートされる幹細胞をいい、プレートされた多能性幹細胞等の増殖等の助けとなる環境を提供するものを意味する。
本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための組成物を用いる、多能性幹細胞を培養するための方法においては、フィーダー細胞を用いてもよいし、用いなくてもよい。
細胞支持用基質としては、天然由来のものであっても、人工物(例えば、組換え体等)であってもよく、これらに限定されるものではないが、例えば、コラーゲン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、テネイシン、エンタクチン、エラスチン、フィブリリン、ラミニン、又はこれらの断片等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多能性幹細胞の培養温度は、多能性幹細胞を培養することができる限り特段限定されるものではないが、例えば、約30〜約40℃、好ましくは約37℃であり得る。該方法は、CO2含有空気の雰囲気下で培養することができ、CO2濃度は、例えば、約1〜約10%、好ましくは約2〜約5%であり得る。
本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための又は多能性幹細胞の未分化状態を維持するための方法において、培養する多能性幹細胞の数は、特段限定されるものではないが、例えば、溶液状態の培地中、約50〜約100000cells/mL、好ましくは約100〜約50000cells/mL、より好ましくは約500〜約30000cells/mLであり得る。或いは、該方法において培養する多能性幹細胞の数は、特段限定されるものではないが、例えば、溶液状態の培地中、約50〜約100000cells/cm2、好ましくは約100〜約50000cells/cm2、より好ましくは約500〜約30000cells/cm2であり得る。
本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための又は多能性幹細胞の未分化状態を維持するための方法においては、当業者に公知又は周知の方法により、適宜、培地の交換を行うことができる。培地の交換は、例えば、約1日〜約7日ごとに、好ましくは約1〜約4日ごとに、より好ましくは約1日ごとに行うことができる。
また、本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための又は多能性幹細胞の未分化状態を維持するための方法においては、当業者に公知又は周知の方法により、適宜、多能性幹細胞を継代することできる。継代は、例えば、約1〜約7日ごとに、好ましくは約2〜約5日ごとに、より好ましくは約3〜約4日ごとに行うことができる。
本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための又は多能性幹細胞の未分化状態を維持するための方法により培養された多能性幹細胞は、多能性を有する未分化状態の多能性幹細胞であり得る。このような多能性幹細胞は、そのまま、又は所望の細胞に分化させて、研究材料として又は再生医療等製品の製造等に使用することができる。
本発明の別の実施態様では、本明細書中に記載の多能性幹細胞を培養するための組成物を用いて培養してなる、多能性幹細胞を提供する。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、これら実施例は、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
[実施例1]
ナミキ商事株式会社(サプライヤー:Selena Chemicals社)から購入したものを使用した。
ナミキ商事株式会社(サプライヤー:Selena Chemicals社)から購入したものを使用した。
[実施例2]
東京化成工業株式会社製のものを使用した。
東京化成工業株式会社製のものを使用した。
[共通事項]
培地の調製
DMEM/F−12(Sigma D−6421)に、Non Essential Amino Acid (Sigma M−7145、最終濃度 1×)、L−glutamine(Sigma G−7513、最終濃度 1mM)、N2(Gibco #17502048、最終濃度 1×)、B27(Gibco #17504044、最終濃度 1×)、及び2−ME(Gibco #21985−023、最終濃度 0.1mM)を添加したもの(Liu et al.,(2006)BBRC,346,131−139)を、基本培地として用いた。この基本培地に、実施例1又は2の化合物(DMSO中に溶解(DMSOの最終濃度 0.1%)、最終濃度 1μg/mL〜35μg/mL)を添加したもの(以下、「培地(test)」と称することもある。)、DMSO(最終濃度 0.1%)を添加したもの(以下、「培地(−)」と称することもある。)、並びにDMSO(最終濃度 0.1%)及びbFGF(最終濃度 20〜100ng/mL)を添加したもの(以下、「培地(+)」と称することもある。)を調製した。
ディッシュのコーティング
ディッシュ(#353043、Falcon社製)の表面を覆う程度の量の250μg/mL マトリゲル(Growth factor reduced,Corning #354230)溶液を該ディッシュに添加し、37℃で2時間、室温で3時間以上、又は4℃で一晩静置し、ディッシュをコーティングした。多能性幹細胞に対するマトリゲルの影響を最小限度にするため、コーティングしたディッシュをDMEM/F−12又は上記で調製した培地等で1回洗浄してから使用した。
培地の調製
DMEM/F−12(Sigma D−6421)に、Non Essential Amino Acid (Sigma M−7145、最終濃度 1×)、L−glutamine(Sigma G−7513、最終濃度 1mM)、N2(Gibco #17502048、最終濃度 1×)、B27(Gibco #17504044、最終濃度 1×)、及び2−ME(Gibco #21985−023、最終濃度 0.1mM)を添加したもの(Liu et al.,(2006)BBRC,346,131−139)を、基本培地として用いた。この基本培地に、実施例1又は2の化合物(DMSO中に溶解(DMSOの最終濃度 0.1%)、最終濃度 1μg/mL〜35μg/mL)を添加したもの(以下、「培地(test)」と称することもある。)、DMSO(最終濃度 0.1%)を添加したもの(以下、「培地(−)」と称することもある。)、並びにDMSO(最終濃度 0.1%)及びbFGF(最終濃度 20〜100ng/mL)を添加したもの(以下、「培地(+)」と称することもある。)を調製した。
ディッシュのコーティング
ディッシュ(#353043、Falcon社製)の表面を覆う程度の量の250μg/mL マトリゲル(Growth factor reduced,Corning #354230)溶液を該ディッシュに添加し、37℃で2時間、室温で3時間以上、又は4℃で一晩静置し、ディッシュをコーティングした。多能性幹細胞に対するマトリゲルの影響を最小限度にするため、コーティングしたディッシュをDMEM/F−12又は上記で調製した培地等で1回洗浄してから使用した。
[試験例1:多能性幹細胞の増殖性の評価]
ヒト多能性幹細胞の準備
培地(20% KSR(Invitrogen #10828−028)、Non−essential amino acid solution(Sigma #M7145、最終濃度 1×)、2mM L−glutamine(Sigma #G7513)、0.1mM 2−ME(Sigma #M−7522)、及び5ng/ml bFGF(Wako#060−04543)を含むDMEM/F−12(Sigma D6421))中、フィーダー細胞(使用したフィーダー細胞:マウス胎仔繊維芽細胞;フィーダー細胞の培養に用いた培地:10% FBS(Cell Culture Bioscience #171012)及びNon−essential amino acid solution(Sigma #M7145、最終濃度 1×)を含むDMEM(Sigma D5796))上で培養し、コンフルエントになったヒト多能性幹細胞(KhES−1(京都大学再生医科学研究所))を用意した。培地を除去し、剥離液(CTK溶液(リプロセル RCHETP002))を添加し、ディッシュの底面になじませた。コロニーの周辺がある程度剥がれるまで、インキュベータ内(37℃、5% CO2)で3〜7分間処理した。剥離液を除去した後、培地を加え、P1000チップ等を使用して、ピペッティングにより遠心管に回収した。培地を加え、コロニーを懸濁し、5〜10分間静置した。この間、フィーダー細胞は浮遊している一方、KhES−1のコロニーは早く沈むため、この性質の差を利用してフィーダー細胞とKhES−1を分離した。これを3回程度繰り返すことにより、フィーダー細胞をほぼ除去した。最後にコロニーをピペッティングにより20〜50個程度の細胞塊にほぐした後、遠心(100rpm、5分間)することによりKhES−1を回収した。上清を除去し、培地中にKhES−1を懸濁し、上記でコーティングしたディッシュに約1×104cells/cm2となるように播種した。播種した翌日以降、KhES−1がマトリゲル上に十分に接着していることを確認した後に、培地を、培地(test)、培地(−)又は培地(+)に交換し、化合物の評価培養をスタートした。以後、後述する増殖性の評価を実施するまで培地交換を毎日行い、5〜6日間培養した。
増殖性の評価
ヒト多能性幹細胞のマーカーとしてよく知られているOCT4の発現により、KhES−1を検出した。なお、OCT4の発現は核内で検出できるため、培養下の状態にある細胞でも容易に判定できる。
はじめに、培地を除去し、DMEM/F−12で細胞を1回洗浄した後、4%パラホルムアルデヒド(Nakarai #26126−25)/PBSにより、室温で15〜20分間固定した。その後、PBSによる洗浄(室温、10分間)を3回行った。抗体の透過性を高めるため、室温で10分間、0.2% TritonX−100(Nakarai #35501−15)/PBSによる処理を行った。更に、内在性のHRPを不活化するために、室温で10分間、0.3% H2O2(過酸化水素)/PBSによる処理を行った。続いて、PBSによる洗浄(室温、10分間)を2回行った後、ブロッキング溶液(PBS中に3% Normal Goat Serum(Merck Millipore S26−100ML)及び2% BSA(Sigma #A9418−50G)を含むもの)によるブロッキング処理を室温で1時間行った。次に、一次抗体としてのOCT4抗体(C−10;Santa Cruz SC−5279)(ブロッキング溶液で1:200に希釈)と共に、4℃で一晩インキュベートした。翌日、PBSによる洗浄(室温、10分間)を3回行った後、Anti−mouse IgG HRP(Santa Cruz)(ブロッキング溶液で1:500に希釈)と共に、室温で1時間インキュベートした。PBSによる洗浄(室温、10分間)を3回行った後、DAB発色(Sigma 4293−50SET、15分間発色)を行った。その後、PBSで3回洗浄し、ディッシュにおける発色画像をスキャナー(エプソン ES−2000)にて取り込んだ。得られた画像(450×450pixels)中の細胞の面積(発色部分の面積)を、フリーソフトであるOpenCVを用いて、得られた画像全体に対する占有率として算出した(n=2で実施し、その平均値として表した)。結果を表1及び図1に示す。
ヒト多能性幹細胞の準備
培地(20% KSR(Invitrogen #10828−028)、Non−essential amino acid solution(Sigma #M7145、最終濃度 1×)、2mM L−glutamine(Sigma #G7513)、0.1mM 2−ME(Sigma #M−7522)、及び5ng/ml bFGF(Wako#060−04543)を含むDMEM/F−12(Sigma D6421))中、フィーダー細胞(使用したフィーダー細胞:マウス胎仔繊維芽細胞;フィーダー細胞の培養に用いた培地:10% FBS(Cell Culture Bioscience #171012)及びNon−essential amino acid solution(Sigma #M7145、最終濃度 1×)を含むDMEM(Sigma D5796))上で培養し、コンフルエントになったヒト多能性幹細胞(KhES−1(京都大学再生医科学研究所))を用意した。培地を除去し、剥離液(CTK溶液(リプロセル RCHETP002))を添加し、ディッシュの底面になじませた。コロニーの周辺がある程度剥がれるまで、インキュベータ内(37℃、5% CO2)で3〜7分間処理した。剥離液を除去した後、培地を加え、P1000チップ等を使用して、ピペッティングにより遠心管に回収した。培地を加え、コロニーを懸濁し、5〜10分間静置した。この間、フィーダー細胞は浮遊している一方、KhES−1のコロニーは早く沈むため、この性質の差を利用してフィーダー細胞とKhES−1を分離した。これを3回程度繰り返すことにより、フィーダー細胞をほぼ除去した。最後にコロニーをピペッティングにより20〜50個程度の細胞塊にほぐした後、遠心(100rpm、5分間)することによりKhES−1を回収した。上清を除去し、培地中にKhES−1を懸濁し、上記でコーティングしたディッシュに約1×104cells/cm2となるように播種した。播種した翌日以降、KhES−1がマトリゲル上に十分に接着していることを確認した後に、培地を、培地(test)、培地(−)又は培地(+)に交換し、化合物の評価培養をスタートした。以後、後述する増殖性の評価を実施するまで培地交換を毎日行い、5〜6日間培養した。
増殖性の評価
ヒト多能性幹細胞のマーカーとしてよく知られているOCT4の発現により、KhES−1を検出した。なお、OCT4の発現は核内で検出できるため、培養下の状態にある細胞でも容易に判定できる。
はじめに、培地を除去し、DMEM/F−12で細胞を1回洗浄した後、4%パラホルムアルデヒド(Nakarai #26126−25)/PBSにより、室温で15〜20分間固定した。その後、PBSによる洗浄(室温、10分間)を3回行った。抗体の透過性を高めるため、室温で10分間、0.2% TritonX−100(Nakarai #35501−15)/PBSによる処理を行った。更に、内在性のHRPを不活化するために、室温で10分間、0.3% H2O2(過酸化水素)/PBSによる処理を行った。続いて、PBSによる洗浄(室温、10分間)を2回行った後、ブロッキング溶液(PBS中に3% Normal Goat Serum(Merck Millipore S26−100ML)及び2% BSA(Sigma #A9418−50G)を含むもの)によるブロッキング処理を室温で1時間行った。次に、一次抗体としてのOCT4抗体(C−10;Santa Cruz SC−5279)(ブロッキング溶液で1:200に希釈)と共に、4℃で一晩インキュベートした。翌日、PBSによる洗浄(室温、10分間)を3回行った後、Anti−mouse IgG HRP(Santa Cruz)(ブロッキング溶液で1:500に希釈)と共に、室温で1時間インキュベートした。PBSによる洗浄(室温、10分間)を3回行った後、DAB発色(Sigma 4293−50SET、15分間発色)を行った。その後、PBSで3回洗浄し、ディッシュにおける発色画像をスキャナー(エプソン ES−2000)にて取り込んだ。得られた画像(450×450pixels)中の細胞の面積(発色部分の面積)を、フリーソフトであるOpenCVを用いて、得られた画像全体に対する占有率として算出した(n=2で実施し、その平均値として表した)。結果を表1及び図1に示す。
表1及び図1の結果より、実施例1の化合物を含む培地では、濃度依存的に発色している部分が増加していることから、KhES−1のコロニー数及びその大きさが増加したことが分かる。したがって、実施例1の化合物を含む多能性幹細胞を培養するための組成物は、KhES−1の増殖能を維持するか又は促進するものである。即ち、実施例1の化合物を含む多能性幹細胞を培養するための組成物は、KhES−1を培養することができるものである。
更に、実施例1の化合物を含む培地は、KhES−1の増殖能を維持するか又は促進することから、KhES−1の未分化状態を維持することができるといえる。したがって、実施例1の化合物を含む多能性幹細胞を培養するための組成物は、KhES−1の未分化状態を維持することができるものである。
また、実施例1の化合物を含む培地では、bFGFの非存在下でも、KhES−1の増殖能を維持するか又は促進することが分かる。したがって、実施例1の化合物を含む多能性幹細胞を培養するための組成物は、bFGFの添加量を抑えることができるものである。
更に、実施例1の化合物を含む培地は、KhES−1の増殖能を維持するか又は促進することから、KhES−1の未分化状態を維持することができるといえる。したがって、実施例1の化合物を含む多能性幹細胞を培養するための組成物は、KhES−1の未分化状態を維持することができるものである。
また、実施例1の化合物を含む培地では、bFGFの非存在下でも、KhES−1の増殖能を維持するか又は促進することが分かる。したがって、実施例1の化合物を含む多能性幹細胞を培養するための組成物は、bFGFの添加量を抑えることができるものである。
[試験例2:多能性幹細胞の継続的な培養]
培地(20% KSR(Invitrogen #10828−028)、Non−essential amino acid solution(Sigma #M7145、最終濃度 1×)、2mM L−glutamine(Sigma #G7513)、0.1mM 2−ME(Sigma #M−7522)、及び5ng/ml bFGF(Wako#060−04543)を含むDMEM/F−12(Sigma D6421))中、フィーダー細胞(使用したフィーダー細胞:マウス胎仔繊維芽細胞;フィーダー細胞の培養に用いた培地:10% FBS(Cell Culture Bioscience #171012)及びNon−essential amino acid solution(Sigma #M7145、最終濃度 1×)を含むDMEM(Sigma D5796))上で培養し、コンフルエントになったヒト多能性幹細胞(KhES−1(京都大学再生医科学研究所))を用意した。培地を除去し、PBSで洗浄後、剥離液(Gentle Cell Dissociation Reagents(STEMCELL Technologies #ST−07174))を添加し、室温で2〜3分間処理した。ここに培地を加え、洗浄した後に、培地を除去した。培地(test)、培地(−)又は培地(+)を加え、ピペッティングにより、又はセルスクレーパー(スミロン MS−93100)等を用いることにより、細胞をディッシュから剥がし、回収した。回収した細胞を15mLのコニカルチューブ(Falcon #352196)に入れ、細胞を均一に懸濁した後、その1/3〜1/10を、マトリゲルでコーティングしたディッシュに播種した。播種時には、培地にY−27632(Wako、最終濃度 10μM)を添加した。培地交換は、翌日又は翌々日以降から、毎日行った。その際には、Y−27632を添加しない培地を用いた。継代は、4〜5日毎に行い、継代の回数に応じ、p1、p2、p3・・・pnと命名した。なお、試験例2で使用する培地(test)には、実施例1の化合物(最終濃度 25μg/mL)に加え、bFGF(最終濃度 20ng/mL)を添加した。結果を図2A及び2Bに示す。
培地(20% KSR(Invitrogen #10828−028)、Non−essential amino acid solution(Sigma #M7145、最終濃度 1×)、2mM L−glutamine(Sigma #G7513)、0.1mM 2−ME(Sigma #M−7522)、及び5ng/ml bFGF(Wako#060−04543)を含むDMEM/F−12(Sigma D6421))中、フィーダー細胞(使用したフィーダー細胞:マウス胎仔繊維芽細胞;フィーダー細胞の培養に用いた培地:10% FBS(Cell Culture Bioscience #171012)及びNon−essential amino acid solution(Sigma #M7145、最終濃度 1×)を含むDMEM(Sigma D5796))上で培養し、コンフルエントになったヒト多能性幹細胞(KhES−1(京都大学再生医科学研究所))を用意した。培地を除去し、PBSで洗浄後、剥離液(Gentle Cell Dissociation Reagents(STEMCELL Technologies #ST−07174))を添加し、室温で2〜3分間処理した。ここに培地を加え、洗浄した後に、培地を除去した。培地(test)、培地(−)又は培地(+)を加え、ピペッティングにより、又はセルスクレーパー(スミロン MS−93100)等を用いることにより、細胞をディッシュから剥がし、回収した。回収した細胞を15mLのコニカルチューブ(Falcon #352196)に入れ、細胞を均一に懸濁した後、その1/3〜1/10を、マトリゲルでコーティングしたディッシュに播種した。播種時には、培地にY−27632(Wako、最終濃度 10μM)を添加した。培地交換は、翌日又は翌々日以降から、毎日行った。その際には、Y−27632を添加しない培地を用いた。継代は、4〜5日毎に行い、継代の回数に応じ、p1、p2、p3・・・pnと命名した。なお、試験例2で使用する培地(test)には、実施例1の化合物(最終濃度 25μg/mL)に加え、bFGF(最終濃度 20ng/mL)を添加した。結果を図2A及び2Bに示す。
bFGFの添加量が100ng/mLでは、略円状〜略楕円状のコロニーを形成しているため、細胞が未分化状態を維持しており、分化細胞がほとんど出現していないことが分かる(図2A)。しかしながら、bFGFの添加量を下げていくと、それに伴い未分化細胞の周辺から分化細胞が出現してくる(図2A)。特に、bFGFを含まない培地(0ng/mL、培地(−))では、p1でほぼ全ての細胞が分化し、継代維持はできなかった(図2A)。一方、培地中に実施例1の化合物を添加したものは、bFGFの添加量が通常の1/5である20ng/mLであっても、分化細胞の出現がほとんど抑えられた。形態的な観察からは、100ng/mL bFGFを含む培地と20ng/mL bFGF及び実施例1の化合物を含む培地との間で差が認められなかった(図2B)。したがって、実施例1の化合物を含む多能性幹細胞を培養するための組成物は、bFGFの添加量が少なくとも通常の1/5以下であっても、KhES−1の未分化状態を維持することができることが分かる。即ち、実施例1の化合物を含む多能性幹細胞を培養するための組成物は、bFGFの添加量を少なくとも通常の1/5以下に抑えることができるものである。
[試験例3:多能性幹細胞の未分化状態の評価1]
試験方法
試験例2において培養した、p5の細胞を用いて評価した。細胞をPBSで1又は2回洗浄した後、accutase(ICT #AT104)と共に37℃で5分間反応させた。細胞をピペッティングにより回収し、遠心(1000rpm、5分)により細胞を沈殿させた。細胞をPBS(100mL)中に再懸濁し、細胞数を測定し、約6×106個の細胞を用意した。細胞を遠心(1000rpm、5分)により沈殿させ、以下に記載のキットに同封されているCytofix Fixation Buffer 600μLを用いて、室温で20分間固定した。PBSで2回洗浄し、3mLのPBS中に再懸濁し、セルストレーナー(FALCON #352235、35ミクロン)に通し、1mLずつに分け、以下に記載のそれぞれのキットの取扱説明書に従い、フローサイトメトリー(BD FACSAria II)を行った。評価マーカーとしては、多能性幹細胞のマーカーとして一般的によく用いられている、転写因子のNANOG、OCT4及びSOX2、並びに細胞表面マーカーのTRA1−1−60、TRA−1−81及びSSEA−3を用いた。なお、試験例3で使用する培地(test)には、実施例1の化合物(最終濃度 25μg/mL)に加え、bFGF(最終濃度 20又は100ng/mL)を添加した。結果を図3に示す。
使用したキット
・Human Pluripotent Stem Cell Sorting and Analysis Kit(BD #560461)
・Human And Mouse Pluripotent Stem Cell Analysis Kit(BD #560477)
・Human Pluripotent Stem Cell Transcription Factor Analysis Kit(BD #560589)
なお、BD #560477のキットでは、BD #560477に同封されているAlexa647−SSEA4 antibodyとBD #560193に同封されているPE−TRA−1−60 antibodyを使用した。また、isotypeとしては、PE−isotypeとAlexa647−isotypeを使用した。
試験方法
試験例2において培養した、p5の細胞を用いて評価した。細胞をPBSで1又は2回洗浄した後、accutase(ICT #AT104)と共に37℃で5分間反応させた。細胞をピペッティングにより回収し、遠心(1000rpm、5分)により細胞を沈殿させた。細胞をPBS(100mL)中に再懸濁し、細胞数を測定し、約6×106個の細胞を用意した。細胞を遠心(1000rpm、5分)により沈殿させ、以下に記載のキットに同封されているCytofix Fixation Buffer 600μLを用いて、室温で20分間固定した。PBSで2回洗浄し、3mLのPBS中に再懸濁し、セルストレーナー(FALCON #352235、35ミクロン)に通し、1mLずつに分け、以下に記載のそれぞれのキットの取扱説明書に従い、フローサイトメトリー(BD FACSAria II)を行った。評価マーカーとしては、多能性幹細胞のマーカーとして一般的によく用いられている、転写因子のNANOG、OCT4及びSOX2、並びに細胞表面マーカーのTRA1−1−60、TRA−1−81及びSSEA−3を用いた。なお、試験例3で使用する培地(test)には、実施例1の化合物(最終濃度 25μg/mL)に加え、bFGF(最終濃度 20又は100ng/mL)を添加した。結果を図3に示す。
使用したキット
・Human Pluripotent Stem Cell Sorting and Analysis Kit(BD #560461)
・Human And Mouse Pluripotent Stem Cell Analysis Kit(BD #560477)
・Human Pluripotent Stem Cell Transcription Factor Analysis Kit(BD #560589)
なお、BD #560477のキットでは、BD #560477に同封されているAlexa647−SSEA4 antibodyとBD #560193に同封されているPE−TRA−1−60 antibodyを使用した。また、isotypeとしては、PE−isotypeとAlexa647−isotypeを使用した。
100ng/mL bFGFを含む培地では、ほぼ100%の細胞が多能性幹細胞マーカーを発現していたが、20ng/mL bFGFを含む培地では、多能性幹細胞マーカーを発現する細胞が全体の20〜30%まで減少した。一方、20ng/mL bFGFと実施例1の化合物とを含む培地では、ほぼ100%の細胞が多能性幹細胞のマーカーを発現していた。したがって、試験例3の結果からも、実施例1の化合物を含む多能性幹細胞を培養するための組成物は、bFGFの添加量が少なくとも通常の1/5以下であっても、KhES−1の未分化状態を維持することができることが分かる。
[試験例4:多能性幹細胞の未分化状態の評価2]
ヒト多能性幹細胞の準備
培地(20% KSR(Invitrogen #10828−028)、Non−essential amino acid solution(Sigma #M7145、最終濃度 1×)、2mM L−glutamine(Sigma #G7513)、0.1mM 2−ME(Sigma #M−7522)、及び5ng/ml bFGF(Wako#060−04543)を含むDMEM/F−12(Sigma D6421))中、フィーダー細胞(使用したフィーダー細胞:マウス胎仔繊維芽細胞;フィーダー細胞の培養に用いた培地:10% FBS(Cell Culture Bioscience #171012)及びNon−essential amino acid solution(Sigma #M7145、最終濃度 1×)を含むDMEM(Sigma D5796))上で培養し、コンフルエントになったヒト多能性幹細胞(KhES−1(京都大学再生医科学研究所))を用意した。培地を除去し、剥離液(CTK溶液(リプロセル RCHETP002))を添加し、ディッシュの底面になじませた。コロニーの周辺がある程度剥がれるまで、インキュベータ内(37℃、5% CO2)で3〜7分間処理した。剥離液を除去した後、培地を加え、P1000チップ等を使用して、ピペッティングにより細胞を遠心管に回収した。培地を加え、コロニーを懸濁し、5〜10分間静置した。この間、フィーダー細胞は浮遊している一方、KhES−1のコロニーは早く沈むため、この性質の差を利用してフィーダー細胞とKhES−1を分離した。これを3回程度繰り返すことにより、フィーダー細胞をほぼ除去した。最後にコロニーをピペッティングにより20〜50個程度の細胞塊にほぐした後、遠心(100rpm、5分間)することによりKhES−1を回収した。上清を除去し、培地中にKhES−1を懸濁し、上記でコーティングしたディッシュに約1×104cells/cm2となるように播種した。播種した翌日以降、KhES−1がマトリゲル上に十分に接着していることを確認した後に、培地を、培地(test)、培地(−)又は培地(+)に交換し、化合物の評価培養をスタートした。以後、培地交換を毎日行い、5日間培養した。
なお、実施例1又は2の化合物に加えて、100ng/mLのbFGFを添加したものも試験例4で使用した。
RNAの精製
RNeasy Micro Kit(QIAGEN社)を用い、取扱説明書に従って、上記で培養したKhES−1からRNAを精製した。精製したRNAは、NanoVue(Biochrom)により純度及び濃度を測定した。
cDNAの調製
精製したRNA 2μgをテンプレートにし、random primer(東洋紡株式会社)を用いて、取扱説明書に従って、Omniscript(QIAGEN社)によりcDNAを調製した。
qPCRの実施
5ng RNA相当のcDNAを用い、Fast SYBR(登録商標) Green Master Mix(Thermo Fisher Scientific社)を用いて試薬を調整し、StepOnePlus(商標)(Thermo Fisher Scientific社)によりリアルタイムPCRを行った。プログラムは、酵素の活性化(95℃、20秒)→PCR(95℃、3秒→60℃、30秒のサイクルを、40サイクル)で行った。内在性のコントロールとして一般的に用いられているGAPDH、β−Actin及び18s rRNAを用い、比較Ct法により評価を行った。なお、qPCRに使用したプライマーの配列を以下の表2に示す。結果を図4に示す。
ヒト多能性幹細胞の準備
培地(20% KSR(Invitrogen #10828−028)、Non−essential amino acid solution(Sigma #M7145、最終濃度 1×)、2mM L−glutamine(Sigma #G7513)、0.1mM 2−ME(Sigma #M−7522)、及び5ng/ml bFGF(Wako#060−04543)を含むDMEM/F−12(Sigma D6421))中、フィーダー細胞(使用したフィーダー細胞:マウス胎仔繊維芽細胞;フィーダー細胞の培養に用いた培地:10% FBS(Cell Culture Bioscience #171012)及びNon−essential amino acid solution(Sigma #M7145、最終濃度 1×)を含むDMEM(Sigma D5796))上で培養し、コンフルエントになったヒト多能性幹細胞(KhES−1(京都大学再生医科学研究所))を用意した。培地を除去し、剥離液(CTK溶液(リプロセル RCHETP002))を添加し、ディッシュの底面になじませた。コロニーの周辺がある程度剥がれるまで、インキュベータ内(37℃、5% CO2)で3〜7分間処理した。剥離液を除去した後、培地を加え、P1000チップ等を使用して、ピペッティングにより細胞を遠心管に回収した。培地を加え、コロニーを懸濁し、5〜10分間静置した。この間、フィーダー細胞は浮遊している一方、KhES−1のコロニーは早く沈むため、この性質の差を利用してフィーダー細胞とKhES−1を分離した。これを3回程度繰り返すことにより、フィーダー細胞をほぼ除去した。最後にコロニーをピペッティングにより20〜50個程度の細胞塊にほぐした後、遠心(100rpm、5分間)することによりKhES−1を回収した。上清を除去し、培地中にKhES−1を懸濁し、上記でコーティングしたディッシュに約1×104cells/cm2となるように播種した。播種した翌日以降、KhES−1がマトリゲル上に十分に接着していることを確認した後に、培地を、培地(test)、培地(−)又は培地(+)に交換し、化合物の評価培養をスタートした。以後、培地交換を毎日行い、5日間培養した。
なお、実施例1又は2の化合物に加えて、100ng/mLのbFGFを添加したものも試験例4で使用した。
RNAの精製
RNeasy Micro Kit(QIAGEN社)を用い、取扱説明書に従って、上記で培養したKhES−1からRNAを精製した。精製したRNAは、NanoVue(Biochrom)により純度及び濃度を測定した。
cDNAの調製
精製したRNA 2μgをテンプレートにし、random primer(東洋紡株式会社)を用いて、取扱説明書に従って、Omniscript(QIAGEN社)によりcDNAを調製した。
qPCRの実施
5ng RNA相当のcDNAを用い、Fast SYBR(登録商標) Green Master Mix(Thermo Fisher Scientific社)を用いて試薬を調整し、StepOnePlus(商標)(Thermo Fisher Scientific社)によりリアルタイムPCRを行った。プログラムは、酵素の活性化(95℃、20秒)→PCR(95℃、3秒→60℃、30秒のサイクルを、40サイクル)で行った。内在性のコントロールとして一般的に用いられているGAPDH、β−Actin及び18s rRNAを用い、比較Ct法により評価を行った。なお、qPCRに使用したプライマーの配列を以下の表2に示す。結果を図4に示す。
実施例1又は2の化合物を含む培地では、bFGFを全く含まない培地(0ng/mL、培地(−))と比較して、NANOG及びOCT4の発現量が増加した。そして、実施例1又は2の化合物を含む培地によるNANOG及びOCT4の発現量の増加は、100ng/mL bFGFを含む培地における増加と同程度であった。したがって、実施例1又は2の化合物を含む多能性幹細胞を培養するための組成物は、KhES−1の未分化状態を維持することができるものである。
以上、試験例1〜4の結果より、式Iの構造を有する化合物を含む多能性幹細胞を培養するための組成物は、多能性幹細胞を培養することができるものである。また、これらの組成物は、多能性幹細胞の未分化状態を維持することができるものである。更に、これらの組成物は、bFGFの添加量を少なくとも通常の1/5以下に抑えることができるものである。
Claims (12)
- 多能性幹細胞を培養するための組成物であって、
式(I):
[式中、
R1、R2及びR3は、各々独立して、水素、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ又はNH2であり、
R4は、水素又はC1−6アルキルであり、
R5及びR6は、各々独立して、水素、又は−NR7R8で置換されていてもよいC1−6アルキルであり、
R7及びR8は、各々独立して、水素又はC1−6アルキルであり、
Xは、C1−6アルキレンであり、
Yは、−NR9−又は−O−であり、
R9は、水素又はC1−6アルキルであり、
nは、0又は1である]
の構造を有する化合物、その塩又はそのエナンチオマーを含む、組成物。 - R1が、水素である、請求項1に記載の組成物。
- R2が、C1−6アルキル又はNH2である、請求項1又は2に記載の組成物。
- R5が、C1−6アルキルである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
- nが、0である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
- Yが、−O−である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
- 式(I)の構造を有する化合物が、以下:
である、請求項1に記載の組成物。 - 多能性幹細胞が、ヒト由来の多能性幹細胞である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
- 多能性幹細胞の未分化状態を維持させるための、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物を用いる、多能性幹細胞を培養するための方法。
- 多能性幹細胞の未分化状態を維持させるための、請求項10に記載の方法。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物を用いて培養してなる、多能性幹細胞。
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JP2019023274A JP2020129970A (ja) | 2019-02-13 | 2019-02-13 | 多能性幹細胞を培養するための組成物及び方法 |
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CN115786238A (zh) * | 2022-10-28 | 2023-03-14 | 广东唯泰生物科技有限公司 | 使间充质干细胞分化成子宫内膜细胞的诱导培养基及方法 |
-
2019
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