JP2020129543A - 蓄電デバイス用外装材、その製造方法、及び蓄電デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】基材層がポリアミドフィルムを有し、所定の厚みを備え、優れた絶縁性を有し、成形によるカールが抑制された蓄電デバイス用外装体を提供する。【解決手段】少なくとも、基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4をこの順に備える積層体から構成されており、基材層は、少なくとも、ポリアミドフィルム層11を有しており、ポリアミドフィルム層の厚みは、10μm以上17μm以下であり、バリア層の厚みは、36μm以上44μm以下であり、積層体の厚みは、83μm以上93μm以下である、蓄電デバイス用外装体10。【選択図】図1

Description

本開示は、蓄電デバイス用外装材、その製造方法、及び蓄電デバイスに関する。
従来、様々なタイプの蓄電デバイスが開発されているが、あらゆる蓄電デバイスにおいて、電極や電解質等の蓄電デバイス素子を封止するために包装材料(外装材)が不可欠な部材になっている。従来、蓄電デバイス用外装材として金属製の外装材が多用されていた。
一方、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話等の高性能化に伴い、蓄電デバイスには、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の蓄電デバイス用外装材では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
そこで、近年、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る蓄電デバイス用外装材として、基材/アルミニウム箔層/熱融着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の外装材が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
このようなフィルム状の外装材においては、一般的に、冷間成形により凹部が形成され、当該凹部によって形成された空間に電極や電解液などの蓄電デバイス素子を配し、熱融着性樹脂層同士を熱融着させることにより、外装材の内部に蓄電デバイス素子が収容された蓄電デバイスが得られる。
特開2008−287971号公報
近年、フィルム状の外装材には、さらなる薄型化が求められている。また、蓄電デバイスのエネルギー密度をより一層高める観点などから、外装材により深い凹部を形成することも求められている。
フィルム状の外装材の成形性を高めるために、例えば、成形性に優れるポリアミドフィルムを基材層に用いることが考えられる。
ところが、本開示者らが検討したところ、ポリアミドフィルムを基材層に用いて、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層を順に積層した蓄電デバイス用外装材とし、これを成形して蓄電デバイス素子を収容する凹部を形成する場合に、蓄電デバイス用外装材の厚みが薄くなると、当該凹部の周縁部が、成形によってカール(湾曲)して、蓄電デバイス素子の収容や熱融着性樹脂層の熱融着を阻害し、蓄電デバイスの生産効率を低下させる場合があることが見出された。
特に、パソコン、カメラ、携帯電話等の小型機器に使用される蓄電デバイスでは、薄い外装材に対して、面積が小さく、かつ、深い凹部を形成することが求められており、成形によるカールが顕著となり得る。
このような状況下、本開示は、基材層がポリアミドフィルムを有しており、所定の厚みを備え、優れた絶縁性を有する蓄電デバイス用外装材の、成形によるカールを抑制する技術を提供することを主な目的とする。
本開示者らは、前記課題を解決すべく、少なくともポリアミドフィルムを有する基材層を用いた蓄電デバイス用外装材において、蓄電デバイス用外装材の積層構成に着目して成形カールを低減することについて鋭意検討を行った。その結果、従来の蓄電デバイス用外装材と比較して、成形カールが格段に抑制された蓄電デバイス用外装材を提供できることを見出した。具体的には、蓄電デバイス用外装材を構成する積層体の総厚みを83μm以上93μm以下という特定の範囲に設定した上で、ポリアミドフィルム層の厚みを10μm以上17μm以下の範囲とし、かつ、バリア層の厚みを36μm以上44μm以下の範囲とすることによって、蓄電デバイス用外装材の厚みが比較的薄く、優れた絶縁性を有するにも拘わらず、成形によるカールが効果的に抑制された蓄電デバイス用外装材となることを見出した。
また、本開示者らは、蓄電デバイス用外装材を構成する積層体の総厚みを83.1μm以上98μm以下という特定の範囲に設定した上で、表面被覆層の厚みを0.1μm以上5μm以下の範囲、ポリアミドフィルム層の厚みを10μm以上17μm以下の範囲とし、さらに、バリア層の厚みを36μm以上44μm以下の範囲とすることによっても、蓄電デバイス用外装材の厚みが比較的薄いにも拘わらず、成形によるカールが効果的に抑制された蓄電デバイス用外装材となることを見出した。
本開示は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。即ち、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記基材層は、少なくとも、ポリアミドフィルム層を有しており、
前記ポリアミドフィルム層の厚みは、10μm以上17μm以下であり、
前記バリア層の厚みは、36μm以上44μm以下であり、
前記積層体の厚みは、83μm以上93μm以下である、蓄電デバイス用外装材。
項2. 前記バリア層と前記熱融着性樹脂層との間に、接着層を備えており、
前記接着層の厚みは、8μm以上22μm以下であり、
前記熱融着性樹脂層の厚みは、8μm以上22μm以下である、項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
項3. 前記バリア層と前記熱融着性樹脂層との間に、接着層を備えており、
前記接着層の厚みは、1μm以上5μm以下であり、
前記熱融着性樹脂層の厚みは、18μm以上34μm以下である、項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
項4. 前記積層体は、引張試験によって測定される「測定荷重(N/15mm)−変位量」の曲線から算出される、MDにおける単位幅1m当りの破断エネルギーと、TDにおける単位幅1m当りの破断エネルギーとの合計が、100J以上である、項1〜3のいずれかに記載の蓄電デバイス用外装材。
項5. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子が、項1〜4のいずれかに記載の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に収容されている、蓄電デバイス。
項6. 少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層がこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
前記基材層は、少なくとも、ポリアミドフィルム層を有しており、
前記ポリアミドフィルム層の厚みは、10μm以上17μm以下であり、
前記バリア層の厚みは、36μm以上44μm以下であり、
前記積層体の厚みは、83μm以上93μm以下である、蓄電デバイス用外装材の製造方法。
項7. 少なくとも、表面被覆層、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記基材層は、少なくとも、ポリアミドフィルム層を有しており、
前記表面被覆層の厚みは、0.1μm以上5μm以下であり、
前記ポリアミドフィルム層の厚みは、10μm以上17μm以下であり、
前記バリア層の厚みは、36μm以上44μm以下であり、
前記積層体の厚みは、83.1μm以上98μm以下である、蓄電デバイス用外装材。
本開示によれば、基材層がポリアミドフィルムを有しており、所定の厚みを備え、優れた絶縁性を有する蓄電デバイス用外装材の、成形によるカールを抑制する技術を提供することができる。また、本開示によれば、蓄電デバイス用外装材の製造方法、及び蓄電デバイスを提供することもできる。
本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。 本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。 本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。 本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。 本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。 本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。 蓄電デバイス用外装材の成形によるカールの評価方法を説明するための模式図である。 蓄電デバイス用外装材の成形によるカールの評価方法を説明するための模式図である。 実施例における成形後の試験サンプルのバリア層の模式図である。 蓄電デバイス用外装材の引張試験で得られる測定荷重(N/15mm)−変位量の曲線(MD)の模式図である。 測定荷重(N/15mm)−変位量の曲線のデータの積分を行った部分を示した模式図である。
本開示には、以下の第1の開示及び第2の開示が包含される。以下の説明において、第1の開示と第2の開示とで異なる事項については、何れの開示についての説明であるかを明示し、第1の開示及び第2の開示に共通する事項については、第1の開示と第2の開示を区別せずに説明する。
第1の開示の蓄電デバイス用外装材は、少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、前記基材層は、少なくとも、ポリアミドフィルム層を有しており、前記ポリアミドフィルム層の厚みは、10μm以上17μm以下であり、前記バリア層の厚みは、36μm以上44μm以下であり、前記積層体の厚みは、83μm以上93μm以下であることを特徴とする。
また、第2の開示の蓄電デバイス用外装材は、少なくとも、表面被覆層、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、前記基材層は、少なくとも、ポリアミドフィルム層を有しており、前記表面被覆層の厚みは、0.1μm以上5μm以下であり、前記ポリアミドフィルム層の厚みは、10μm以上17μm以下であり、前記バリア層の厚みは、36μm以上44μm以下であり、前記積層体の厚みは、83.1μm以上98μm以下であることを特徴とする。
以下、本開示の蓄電デバイス用外装材について詳述する。なお、本明細書において、「〜」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2〜15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。また、本明細書において、積層体を構成する各層の厚みは、小数点第一位を四捨五入した値とする。
1.蓄電デバイス用外装材の積層構造
第1の開示の蓄電デバイス用外装材10は、例えば図1に示すように、基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4をこの順に備える積層体から構成されている。また、第2の開示の蓄電デバイス用外装材10は、例えば図6に示すように、表面被覆層6、基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4をこの順に備える積層体から構成されている。本開示の蓄電デバイス用外装材において、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層4は最内層になる。蓄電デバイス用外装材10と蓄電デバイス素子を用いて蓄電デバイスを組み立てる際に、蓄電デバイス用外装材10の熱融着性樹脂層4同士を対向させた状態で、周縁部を熱融着させることによって形成された空間に、蓄電デバイス素子が収容される。
基材層1は、少なくとも、ポリアミドフィルム層11を有していればよく、図1に示されるようにポリアミドフィルム層11のみによって構成されていてもよいし、図2,3に示されるように、例えば、ポリアミドフィルム層11及びポリエステルフィルム層12を有していてもよい。本開示の蓄電デバイス用外装材の成形によるカールをより一層効果的に抑制する観点から、基材層1は、ポリアミドフィルム層11のみによって構成されていることが好ましい。
なお、基材層1が、後述の通り、ポリアミドフィルム層11及びポリエステルフィルム層12を有する場合、ポリアミドフィルム層11及びポリエステルフィルム層12のいずれが最外層側に位置していてもよいが、蓄電デバイス用外装材の外表面における耐電解液性を高める観点などからは、バリア層3側から順に、ポリアミドフィルム層11及びポリエステルフィルム層12が積層されていることが好ましい。
例えば図2に示されるように、ポリアミドフィルム層11とポリエステルフィルム層12とは、互いに接面するように積層されていてもよいし、例えば図3に示されるように、ポリアミドフィルム層11とポリエステルフィルム層12とが接着剤により接着されており、これらの層間に接着剤層13を備えていてもよい。
本開示の蓄電デバイス用外装材は、例えば図4〜6に示すように、基材層1とバリア層3との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて接着剤層2を有していてもよい。また、図5,6に示すように、バリア層3と熱融着性樹脂層4との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて接着層5を設けてもよい。また、第1の開示においても、第2の開示と同じく、図6に示すように、基材層1の外側(熱融着性樹脂層4とは反対側)には、必要に応じて表面被覆層6などが設けられていてもよい。
第1の開示の蓄電デバイス用外装材を構成する積層体の厚みは、83〜93μmという特定の範囲に設定されている。第1の開示の蓄電デバイス用外装材においては、積層体の厚みを当該範囲に設定した上で、後述のポリアミドフィルム層11及びバリア層3の厚みを、それぞれ特定の範囲に設定することにより、蓄電デバイス用外装材の厚みが比較的薄いにも拘わらず、成形によるカールが抑制されている。積層体の厚みを可能な限り薄くしつつ、成形によるカールを効果的に抑制する観点からは、積層体の厚みは、下限については、好ましくは85μm以上、より好ましくは86μm以上、さらに好ましくは87μm以上が挙げられ、上限については、好ましくは91μm以下、より好ましくは約90μm以下、さらに好ましくは約89μm以下が挙げられ、好ましい範囲としては、83〜91μm程度、83〜90μm程度、83〜89μm程度、85〜93μm程度、85〜91μm程度、85〜90μm程度、85〜89μm程度、86〜93μm程度、86〜91μm程度、86〜90μm程度、86〜89μm程度、87〜93μm程度、87〜91μm程度、87〜90μm程度、87〜89μm程度が挙げられる。積層体の厚みが前記の下限値以上であることにより、成形性及び絶縁性を高め、さらに、成形によるカールをより一層効果的に抑制し得る。また、積層体の厚みがこれらの上限値以下であることにより、蓄電デバイス用外装材の成形によるカールを抑制し、絶縁性を高めつつ、蓄電デバイス用外装材を薄くし、蓄電デバイス素子の体積を増加させて、エネルギー密度を高めることができる。
また、第2の開示の蓄電デバイス用外装材を構成する積層体の厚みは、83.1〜98μmという特定の範囲に設定されている。第2の開示の蓄電デバイス用外装材においては、積層体の厚みを当該範囲に設定した上で、後述の表面被覆層6、ポリアミドフィルム層11及びバリア層3の厚みを、それぞれ特定の範囲に設定することにより、蓄電デバイス用外装材の厚みが比較的薄いにも拘わらず、優れた絶縁性を有し、成形によるカールが抑制されている。積層体の厚みを可能な限り薄くしつつ、優れた絶縁性を発揮し、成形によるカールを効果的に抑制する観点からは、積層体の厚みは、下限については、好ましくは約85.1μm以上、より好ましくは87μm以上、さらに好ましくは89μm以上が挙げられ、上限については、好ましくは約96μm以下、より好ましくは約94μm以下、さらに好ましくは約92μm以下が挙げられ、好ましい範囲としては、83.1〜96μm程度、83.1〜94μm程度、83.1〜92μm程度、85.1〜96μm程度、85.1〜94μm程度、85.1〜92μm程度、87〜98μm程度、87〜96μm程度、87〜94μm程度、87〜92μm程度、89〜98μm程度、89〜96μm程度、89〜94μm程度、89〜92μm程度が挙げられる。積層体の厚みが前記の下限値以上であることにより、成形性及び絶縁性を高め、さらに、成形によるカールをより一層効果的に抑制し得る。また、積層体の厚みがこれらの上限値以下であることにより、蓄電デバイス用外装材の成形によるカールを抑制しつつ、蓄電デバイス用外装材を薄くし、蓄電デバイス素子の体積を増加させて、エネルギー密度を高めることができる。
第1の開示及び第2の開示の蓄電デバイス用外装材において、蓄電デバイス用外装材を構成する積層体の厚み(総厚み)に対する、基材層1、必要に応じて設けられる接着剤層2、バリア層3、必要に応じて設けられる接着層5、熱融着性樹脂層4、必要に応じて設けられる表面被覆層6の合計厚みの割合は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。具体例としては、本開示の蓄電デバイス用外装材が、基材層1、接着剤層2、バリア層3、接着層5、及び熱融着性樹脂層4を含む場合、蓄電デバイス用外装材10を構成する積層体の厚み(総厚み)に対する、これら各層の合計厚みの割合は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。また、本開示の蓄電デバイス用外装材が、基材層1、接着剤層2、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4を含む場合についても、蓄電デバイス用外装材10を構成する積層体の厚み(総厚み)に対する、これら各層の合計厚みの割合は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。
また、第1の開示及び第2の開示の蓄電デバイス用外装材において、バリア層3よりも内側(熱融着性樹脂層4側)に位置する層の合計厚みは、好ましくは約16μm以上、より好ましくは約19μm以上、さらに好ましくは約25μm以上である。また、当該合計厚みは、好ましくは約44μm以下、より好ましくは約39μm以下、さらに好ましくは約33μm以下である。当該合計厚みの好ましい範囲としては、16〜44μm程度、16〜39μm程度、16〜33μm程度、19〜44μm程度、19〜39μm程度、19〜33μm程度、25〜44μm程度、25〜39μm程度、25〜33μm程度が挙げられる。
なお、本開示の蓄電デバイス用外装材の各層の厚み又は積層体の厚みは、それぞれ、例えばミクロトーム(大和光機工業製:REM−710リトラトーム)を用いて蓄電デバイス用外装材を厚み方向に裁断し、蓄電デバイス用外装材を2分割し、得られた断面を例えばレーザー顕微鏡(キーエンス製:VK−9700)で観察して計測することができる。
また、本開示の蓄電デバイス用外装材は、後述のバリア層3の厚みが20μmとなる成形深さ(すなわち、本開示の蓄電デバイス用外装材を成形に供した場合に、蓄電デバイス用外装材のバリア層3の厚みが20μmになる時の成形深さ)が、下限については好ましくは4.5mm以上、より好ましくは5.0mm以上であり、上限については好ましくは10.0mm以下、より好ましくは8.0mm以下であり、好ましい範囲については4.5〜10.0mm程度、4.5〜8.0mm程度、5.0〜10.0mm程度、5.0〜8.0mm程度が挙げられる。当該成形深さは、冷間成形の方法によって、成形深さを2.0mmから0.5mmずつ増加させた条件で蓄電デバイス用外装材の成形を順次行い、成形後の試験サンプルのバリア層の角部Pの厚みa(図9を参照)と、成形深さとの関係をプロットして、近似直線を引いてグラフを作成し、当該グラフから、バリア層3の角部Pの厚みaが20μmとなる成形深さを求めたものである。具体的には、実施例に記載の方法により測定される値である。当該成形深さが前記の下限値以上であることにより、蓄電デバイス用外装材の成形によるカールを抑制しつつ、成形によるピンホールを低減することができる。
また、本開示の蓄電デバイス用外装材の限界成形深さは、下限については好ましくは4.0mm以上、より好ましくは5.5mm以上であり、上限については好ましくは12.0mm以下、より好ましくは10.0mm以下であり、好ましい範囲については4.0〜12.0mm程度、4.0〜10.0mm程度、5.5〜12.0mm程度、5.5〜10.0mm程度が挙げられる。当該限界成形深さは、蓄電デバイス用外装材を矩形状の成形金型を用いて、押さえ圧(面圧)0.25MPaで0.5mmの成形深さから0.5mm単位で成形深さを変えて、それぞれ20個のサンプルについて冷間成形(引き込み1段成形)を行い、バリア層にピンホール、クラックが20個のサンプル全てにおいて発生しない最も深い成形深さをAmm、バリア層にピンホール等が発生した最も浅い成形深さにおいてピンホール等が発生したサンプルの数をB個とし、以下の式により算出される値を蓄電デバイス用外装材の限界成形深さとしたものである。限界成形深さ=Amm+(0.5mm/20個)×(20個−B個)。具体的には、実施例に記載の方法により測定される値である。当該限界成形深さが前記の下限値以上であることにより、蓄電デバイス用外装材を高容量の蓄電デバイスに適用し得る。
本開示の蓄電デバイス用外装材を構成する積層体は、引張試験によって測定される「測定荷重(N/15mm)−変位量」の曲線から算出される単位幅1m当りの破断エネルギー(MD(Machine Direction)における単位幅1m当りの破断エネルギーとTD(Transverse Direction)における単位幅1m当りの破断エネルギーを合計)が、下限については好ましくは100J以上、より好ましくは150J以上、より成形性に優れる観点からさらに好ましくは260J以上、さらに好ましくは280J以上であり、上限については好ましくは650J以下、より好ましくは450J以下、さらに好ましくは400J以下、さらに好ましくは380J以下であり、好ましい範囲については100〜650J程度、100〜450J程度、100〜400J程度、100〜380J程度、150〜650J程度、150〜450J程度、150〜400J程度、150〜380J程度、260〜650J程度、260〜450J程度、260〜400J程度、260〜380J程度、280〜650J程度、280〜450J程度、280〜400J程度、280〜380J程度が挙げられる。当該破断エネルギーは、具体的には、実施例に記載の方法により測定される値である。なお、本開示において、引張試験とは、引張特性の試験を意味する。当該破断エネルギーが前記の下限値以上であることにより、蓄電デバイス用外装材の成形によるカールを抑制しつつ、成形性及び絶縁性を高めることができる。また、当該破断エネルギーが前記の上限値以下であることにより、蓄電デバイス用外装材の成形によるカールをより一層効果的に抑制することができる。
前記破断エネルギーを前記の値とする方法としては、積層体を構成する基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4の材料及び厚みなどを調整する。当該破断エネルギーの大きさに最も寄与する層としては、基材層1が挙げられる。基材層1を構成する素材として、後述のものを用い、さらに、基材層1の製造過程において、例えば、製膜法の種類や製膜時の条件(例えば、製膜温度、延伸倍率、冷却温度、冷却速度、延伸後の熱固定温度)を適宜調整する。製膜法としては、例えば、Tダイ法、カレンダー法、チューブラー法などが挙げられる。また、各層を積層した後の積層体の加熱工程(例えば、基材層/接着剤層/バリア層の積層体を得た後の加熱工程や、さらに当該積層体のバリア層上に接着層/熱融着性樹脂層を積層した後の加熱工程など)において、適切な温度、適切な時間の条件で加熱することが好ましい。適切な温度、時間を採用することにより、積層体の特に基材層へのダメージを抑制しつつ各層の密着性を向上することができる。加熱工程における加熱温度の上限としては、好ましくは約185℃以下、より好ましくは約180℃以下、さらに好ましくは178℃以下が挙げられ、加熱温度の下限としては、好ましくは150℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは165℃以上が挙げられる。加熱工程における加熱温度の好ましい範囲としては、150〜185℃程度、150〜180℃程度、150〜178℃程度、160〜185℃程度、160〜180℃程度、160〜178℃程度、165〜185℃程度、160〜180℃程度、160〜178℃程度が挙げられる。また、加熱工程における加熱時間の上限としては、好ましくは30分以下、より好ましくは15分以下、さらに好ましくは10分以下が挙げられ、下限としては、好ましくは0.1分以上、より好ましくは0.5分以上、さらに好ましくは1分以上が挙げられる。加熱工程における加熱温度と加熱時間は、これらの中から組み合わせることが好ましい。
なお、蓄電デバイス用外装材において、後述のバリア層3については、通常、その製造過程におけるMD(Machine Direction)とTD(Transverse Direction)を判別することができる。例えば、バリア層3がアルミニウム箔により構成されている場合、アルミニウム箔の圧延方向(RD:Rolling Direction)には、アルミニウム箔の表面に、いわゆる圧延痕と呼ばれる線状の筋が形成されている。圧延痕は、圧延方向に沿って伸びているため、アルミニウム箔の表面を観察することによって、アルミニウム箔の圧延方向を把握することができる。また、積層体の製造過程においては、通常、積層体のMDと、アルミニウム箔のRDとが一致するため、積層体のアルミニウム箔の表面を観察し、アルミニウム箔の圧延方向(RD)を特定することにより、積層体のMDを特定することができる。また、積層体のTDは、積層体のMDとは垂直方向であるため、積層体のTDについても特定することができる。
2.蓄電デバイス用外装材を形成する各層
[基材層1]
本開示において、基材層1は、蓄電デバイス用外装材の基材としての機能を発揮させることなどを目的として設けられる層である。基材層1は、蓄電デバイス用外装材の外層側に位置する。基材層1は、少なくとも、ポリアミドフィルム層11を有している。前記の通り、基材層1は、ポリアミドフィルム層11のみによって構成されていてもよいし、ポリアミドフィルム層11及びポリエステルフィルム層12を有していてもよい。
基材層1において、ポリアミドフィルム層11、ポリエステルフィルム層12としては、それぞれ、樹脂フィルムを用いてもよいし、樹脂を塗布して形成してもよい。樹脂には後述の添加剤が含まれていてもよい。
樹脂フィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムとしては、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムが挙げられ、二軸延伸フィルムが好ましい。二軸延伸フィルムを形成する延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、インフレーション法、同時二軸延伸法等が挙げられる。樹脂を塗布する方法としては、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、押出コーティング法などがあげられる。
ポリアミドフィルム層11を構成しているポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66との共重合体等の脂肪族ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸−テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミドPACM6(ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンアジパミド)等の脂環式ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4'−ジフェニルメタン−ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等のポリアミドが挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリアミドフィルム層11は、延伸ポリアミドフィルム、さらには二軸延伸ポリアミドフィルム、特に二軸延伸ナイロンフィルムにより構成されていることが好ましい。
基材層1は、単層であってもよいし、2層以上により構成されていてもよい。基材層1が2層以上により構成されている場合、基材層1は、樹脂フィルムを接着剤などで積層させた積層体であってもよいし、樹脂を共押出しして2層以上とした樹脂フィルムの積層体であってもよい。また、樹脂を共押出しして2層以上とした樹脂フィルムの積層体を、未延伸のまま基材層1としてもよいし、一軸延伸または二軸延伸して基材層1としてもよい。
本開示の蓄電デバイス用外装材においては、ポリアミドフィルム層11の厚みが、10〜17μmという特定の範囲に設定されていることを特徴の1つとしている。蓄電デバイス用外装材の成形によるカールをより一層好適に抑制しつつ成形性及び絶縁性を高める観点から、ポリアミドフィルム層11の厚みの下限としては、好ましくは約11μm以上、より好ましくは約12μm以上、または約13μm以上が挙げられ、上限値としては、好ましくは約17μm以下、より好ましくは16μm以下、さらに好ましくは15μm以下が挙げられ、好ましい範囲としては、10〜16μm程度、10〜15μm程度、11〜17μm程度、11〜16μm程度、11〜15μm程度、12〜17μm程度、12〜16μm程度、12〜15μm程度、13〜17μm程度、13〜16μm程度、13〜15μm程度が挙げられる。ポリアミドフィルム層11の厚みが前記の下限値以上であることにより、蓄電デバイス用外装材の成形によるカールを抑制しつつ、成形性を高めることができ、前記の上限値以下であることにより、蓄電デバイス用外装材を薄くしつつ、成形によるカールを効果的に抑制することができる。
また、ポリエステルフィルム層12を構成しているポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等が挙げられる。また、共重合ポリエステルとしては、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル−ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリエステルフィルム層12は、二軸延伸ポリエステルフィルム、特に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにより構成されていることが好ましい。
基材層1がポリエステルフィルム層12をさらに有する場合、ポリエステルフィルム層12の厚みとしては、蓄電デバイス用外装材を構成している積層体の厚み、ポリアミドフィルム層11の厚み、さらにはバリア層3の厚みが本開示の前記所定範囲に設定されれば、特に制限されず、例えば、約17μm以下、好ましくは17〜8μm程度、より好ましくは17〜10μm程度が挙げられる。ポリエステルフィルム層12の厚みが前記の下限値以上であることにより、蓄電デバイス用外装材の成形によるカールを抑制しつつ、絶縁性を高めることができる。また、ポリエステルフィルム層12の厚みが前記の上限値以下であることにより、蓄電デバイス用外装材を薄くしつつ、成形によるカールを効果的に抑制することができる。
基材層1において、ポリアミドフィルム層11とポリエステルフィルム層12の積層順としては、特に制限されないが、蓄電デバイス用外装材の耐電解液性を向上させる観点からは、後述のバリア層3側から順に、ポリアミドフィルム層11及びポリエステルフィルム層12がこの順に積層されていることが好ましい。
前述の通り、例えば図2に示されるように、ポリアミドフィルム層11とポリエステルフィルム層12とは、互いに接面するように積層されていてもよいし、例えば図3に示されるように、接着剤により接着され、これらの層の間に接着剤層13を備えていてもよい。接着剤を介さず接着させる場合には、例えば、共押出し法、サンドラミネート法、サーマルラミネート法等の熱溶融状態で接着させる方法が挙げられる。また、接着剤を介して接着させる場合、使用する接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型、紫外線硬化型や電子線硬化型等のいずれであってもよい。
ポリアミドフィルム層11及びポリエステルフィルム層12の間に位置する接着剤層13の厚みとしては、好ましくは0.1〜5μm程度、より好ましくは0.5〜3μm程度が挙げられる。
なお、接着剤層13には、後述の接着剤層2と同様の着色剤を含んでいてもよい。
基材層1は、ポリアミドフィルム層11、必要に応じて設けられるポリエステルフィルム層12に加えて、さらに他の層を備えていてもよい。他の層を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。他の層を形成する素材としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール系樹脂、ポリエーテルイミド、ポリイミド、及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。他の層を備える場合、他の層の厚みとしては、好ましくは1〜20μm程度、より好ましくは1〜10μm程度が挙げられる。
また、基材層1の表面及び内部の少なくとも一方には、滑剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、耐電防止剤等の添加剤が存在していてもよい。添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
本開示において、蓄電デバイス用外装材の成形性を高める観点からは、基材層1の表面には、滑剤が存在していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくは後述の熱融着性樹脂層4において例示するアミド系滑剤が挙げられる。
基材層1の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、好ましくは約3mg/m2以上、より好ましくは4〜15mg/m2程度、さらに好ましくは5〜14mg/m2程度が挙げられる。
基材層1の表面に存在する滑剤は、基材層1を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、基材層1の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
基材層1の全体の厚さとしては、蓄電デバイス用外装材の総厚みを薄くしつつ、成形によるカールを抑制しつつ成形性及び絶縁性を高め、さらに絶縁性に優れた蓄電デバイス用外装材とする観点からは、下限については、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは12μm以上または13μm以上が挙げられ、上限については、好ましくは約20μm以下、より好ましくは19μm以下、さらに好ましくは17μm以下が挙げられ、好ましい範囲としては、10〜20μm程度、10〜19μm程度、10〜17μm程度、12〜20μm程度、12〜19μm程度、12〜17μm程度、13〜20μm程度、13〜19μm程度、13〜17μm程度が挙げられる。基材層1の全体の厚さが前記の下限値以上であることにより、蓄電デバイス用外装材の成形によるカールを抑制しつつ、絶縁性を高めることができる。また、基材層1の全体の厚さが前記の上限値以下であることにより、蓄電デバイス用外装材を薄くしつつ、成形によるカールを効果的に抑制することができる。なお、本開示において、基材層1が2層以上により構成されており、これらの層間が接着剤層13などの接着剤の層で接着されている場合、基材層1の全体の厚さには、当該接着剤の層の厚みは含まれないものとする。
[接着剤層2]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、接着剤層2は、基材層1とバリア層3との接着性を高めることなどを目的として、必要に応じて、これらの間に設けられる層である。
接着剤層2は、基材層1とバリア層3とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層2の形成に使用される接着剤は限定されないが、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。また、2液硬化型接着剤(2液性接着剤)であってもよく、また1液硬化型接着剤(1液性接着剤)であってもよく、硬化反応を伴わない樹脂でもよい。更に、接着剤層2の形成に使用される接着剤は、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。また、接着剤層2は単層であってもよいし、多層であってもよい。
接着剤に含まれる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等のポリエステル;ポリエーテル;ポリウレタン;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド;ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;セルロース;(メタ)アクリル樹脂;ポリイミド;ポリカーボネート;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、好ましくはポリウレタン接着剤が挙げられる。また、これらの接着成分となる樹脂は適切な硬化剤を併用して接着強度を高めることができる。前記硬化剤は、接着成分の持つ官能基に応じて、ポリイソシアネート、多官能エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリアミン樹脂、酸無水物などから適切なものを選択する。
ポリウレタン接着剤としては、例えば、ポリオール化合物を含有する主剤と、イソシアネート化合物を含有する硬化剤とを含むポリウレタン接着剤が挙げられる。好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオール等のポリオールを主剤として、芳香族系又は脂肪族系のポリイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン接着剤が挙げられる。また、ポリオール化合物としては、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオールを用いることが好ましい。接着剤層2がポリウレタン接着剤により形成されていることで蓄電デバイス用外装材に優れた電解液耐性が付与され、側面に電解液が付着しても基材層1が剥がれることが抑制される。
また、接着剤層2は、接着性を阻害しない限り他成分の添加が許容され、着色剤や熱可塑性エラストマー、粘着付与剤、フィラーなどを含有してもよい。接着剤層2が着色剤を含んでいることにより、蓄電デバイス用外装材を着色することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
顔料の種類は、接着剤層2の接着性を損なわない範囲であれば、特に限定されない。有機顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、インジゴチオインジゴ系、ペリノン−ペリレン系、イソインドレニン系、ベンズイミダゾロン系等の顔料が挙げられ、無機顔料としては、カーボンブラック系、酸化チタン系、カドミウム系、鉛系、酸化クロム系、鉄系等の顔料が挙げられ、その他に、マイカ(雲母)の微粉末、魚鱗箔等が挙げられる。
着色剤の中でも、例えば蓄電デバイス用外装材の外観を黒色とするためには、カーボンブラックが好ましい。
顔料の平均粒子径としては、特に制限されず、例えば、0.05〜5μm程度、好ましくは0.08〜2μm程度が挙げられる。なお、顔料の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
接着剤層2における顔料の含有量としては、蓄電デバイス用外装材が着色されれば特に制限されず、例えば5〜60質量%程度、好ましくは10〜40質量%が挙げられる。
接着剤層2の厚みは、基材層1とバリア層3とを接着し、さらに、蓄電デバイス用外装材を構成している積層体の厚み、ポリアミドフィルム層11の厚み、バリア層3の厚みが本開示の前記所定範囲に設定されれば、特に制限されず、下限については、例えば、約1μm以上、約2μm以上が挙げられ、上限については、約10μm以下、約5μm以下が挙げられ、好ましい範囲については、1〜10μm程度、1〜5μm程度、2〜10μm程度、2〜5μm程度が挙げられる。接着剤層2の厚みが前記の下限値以上であることにより、基材層1とバリア層3との接着性を効果的に高めることができる。また、接着剤層2の厚みが前記の上限値以下であることにより、蓄電デバイス用外装材を薄くしつつ、成形によるカールを抑制し、さらに短い時間での乾燥や硬化が可能となり生産性に優れる。また、接着剤層2の厚みが大きくなりすぎてクラックが入ることによる接着性の低下を効果的に抑制することができる。
[着色層]
着色層は、基材層1とバリア層3との間に必要に応じて設けられる層である(図示を省略する)。接着剤層2を有する場合には、基材層1と接着剤層2との間、接着剤層2とバリア層3との間に着色層を設けてもよい。また、基材層1の外側に着色層を設けてもよい。着色層を設けることにより、蓄電デバイス用外装材を着色することができる。
着色層は、例えば、着色剤を含むインキを基材層1の表面、接着剤層2の表面、またはバリア層3の表面に塗布することにより形成することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
着色層に含まれる着色剤の具体例としては、[接着剤層2]の欄で例示したものと同じものが例示される。
[バリア層3]
蓄電デバイス用外装材において、バリア層3は、少なくとも水分の浸入を抑止する層である。
バリア層3としては、例えば、バリア性を有する金属箔、蒸着膜、樹脂層などが挙げられる。蒸着膜としては金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜などが挙げられ、樹脂層としてはポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。また、バリア層3としては、これらの蒸着膜及び樹脂層の少なくとも1層を設けた樹脂フィルムなども挙げられる。バリア層3は、複数層設けてもよい。バリア層3は、金属材料により構成された層を含むことが好ましい。バリア層3を構成する金属材料としては、具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン鋼などが挙げられ、金属箔として用いる場合は、アルミニウム合金箔及びステンレス鋼箔の少なくとも一方を含むことが好ましい。
アルミニウム合金箔は、蓄電デバイス用外装材の成形性を向上させる観点から、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム合金などにより構成された軟質アルミニウム合金箔であることがより好ましく、より成形性を向上させる観点から、鉄を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。鉄を含むアルミニウム合金箔(100質量%)において、鉄の含有量は、0.1〜9.0質量%であることが好ましく、0.5〜2.0質量%であることがより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた成形性を有する蓄電デバイス用外装材を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた蓄電デバイス用外装材を得ることができる。軟質アルミニウム合金箔としては、例えば、JIS H4160:1994 A8021H−O、JIS H4160:1994 A8079H−O、JIS H4000:2014 A8021P−O、又はJIS H4000:2014 A8079P−Oで規定される組成を備えるアルミニウム合金箔が挙げられる。
また、ステンレス鋼箔としては、オーステナイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト系、マルテンサイト系、析出硬化系のステンレス鋼箔などが挙げられる。さらに成形性に優れた蓄電デバイス用外装材を提供する観点から、ステンレス鋼箔は、オーステナイト系のステンレス鋼により構成されていることが好ましい。
ステンレス鋼箔を構成するオーステナイト系のステンレス鋼の具体例としては、SUS304、SUS301、SUS316Lなどが挙げられ、これら中でも、SUS304が特に好ましい。
本開示の蓄電デバイス用外装材においては、バリア層3の厚みが36〜44μmという特定の範囲に設定されていることを特徴の1つとしている。蓄電デバイス用外装材の成形によるカールをより一層好適に抑制する観点から、バリア層3の厚みの下限としては、好ましくは38μm以上、より好ましくは約39μm以上が挙げられ、上限値としては、好ましくは42μm以下、より好ましくは41μm以下が挙げられ、好ましい範囲としては、36〜42μm程度、36〜41μm程度、38〜44μm程度、38〜42μm程度、38〜41μm程度、39〜44μm程度、39〜42μm程度、39〜41μm程度が挙げられる。バリア層3の厚みが前記の下限値以上であることにより、蓄電デバイス用外装材の成形性を高めることができる。また、バリア層3の厚みが前記の上限値以下であることにより、蓄電デバイス用外装材を薄くしつつ、成形によるカールを効果的に抑制することができる。
また、バリア層3が金属箔の場合は、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも基材層1と反対側の面に耐腐食性皮膜を備えていることが好ましい。バリア層3は、耐腐食性皮膜を両面に備えていてもよい。ここで、耐腐食性皮膜とは、例えば、ベーマイト処理などの熱水変成処理、化成処理、陽極酸化処理、コーティング剤を塗工する腐食防止処理をバリア層3の表面に行い、バリア層3に耐腐食性を備えさせる薄膜をいう。耐腐食性皮膜を形成する処理としては、1種類を行ってもよいし、2種類以上を組み合わせて行ってもよい。また、これらの処理のうち、熱水変成処理及び陽極酸化処理は、処理剤によって金属箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れる金属化合物を形成させる処理である。なお、これらの処理は、化成処理の定義に包含される場合もある。また、バリア層3が耐腐食性皮膜を備えている場合、耐腐食性皮膜を含めてバリア層3とする。
耐腐食性皮膜は、蓄電デバイス用外装材の成形時において、バリア層3(例えば、アルミニウム合金箔)と基材層1との間のデラミネーション防止、電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、バリア層3表面の溶解、腐食、特にバリア層3がアルミニウム合金箔である場合にバリア層3表面に存在する酸化アルミニウムが溶解、腐食することを防止し、かつ、バリア層3表面の接着性(濡れ性)を向上させ、ヒートシール時の基材層1とバリア層3とのデラミネーション防止、成形時の基材層1とバリア層3とのデラミネーション防止の効果を示す。
化成処理によって形成される耐腐食性皮膜としては、種々のものが知られており、主には、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物、及び希土類酸化物のうち少なくとも1種を含む耐腐食性皮膜などが挙げられる。希土類酸化物としては、セリウム化合物が好ましく、中でも酸化セリウムが好ましい。リン酸塩、クロム酸塩を用いた化成処理としては、例えば、クロム酸クロメート処理、リン酸クロメート処理、リン酸−クロム酸塩処理、クロム酸塩処理などが挙げられ、これらの処理に用いるクロム化合物としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどが挙げられる。また、これらの処理に用いるリン化合物としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などが挙げられる。また、クロメート処理としてはエッチングクロメート処理、電解クロメート処理、塗布型クロメート処理などが挙げられ、塗布型クロメート処理が好ましい。この塗布型クロメート処理は、バリア層3(例えばアルミニウム合金箔)の少なくとも内層側の面を、まず、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法等の周知の処理方法で脱脂処理を行い、その後、脱脂処理面にリン酸Cr(クロム)塩、リン酸Ti(チタン)塩、リン酸Zr(ジルコニウム)塩、リン酸Zn(亜鉛)塩などのリン酸金属塩及びこれらの金属塩の混合体を主成分とする処理液、または、リン酸非金属塩及びこれらの非金属塩の混合体を主成分とする処理液、あるいは、これらと合成樹脂などとの混合物からなる処理液をロールコート法、グラビア印刷法、浸漬法等の周知の塗工法で塗工し、乾燥する処理である。処理液は例えば、水、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤など各種溶媒を用いることができ、水が好ましい。また、このとき用いる樹脂成分としては、フェノール系樹脂やアクリル系樹脂などの高分子などが挙げられ、下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。アクリル系樹脂は、ポリアクリル酸、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸マレイン酸共重合体、アクリル酸スチレン共重合体、またはこれらのナトリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等の誘導体であることが好ましい。特にポリアクリル酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はアミン塩等のポリアクリル酸の誘導体が好ましい。本開示において、ポリアクリル酸とは、アクリル酸の重合体を意味している。また、アクリル系樹脂は、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体であることも好ましく、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体のアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はアミン塩であることも好ましい。アクリル系樹脂は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
一般式(1)〜(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基またはベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一または異なって、ヒドロキシ基、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)〜(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)〜(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)〜(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシ基またはヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500〜100万程度であることが好ましく、1000〜2万程度であることがより好ましい。アミノ化フェノール重合体は、例えば、フェノール化合物又はナフトール化合物とホルムアルデヒドとを重縮合して上記一般式(I)又は一般式(III)で表される繰返し単位からなる重合体を製造し、次いでホルムアルデヒド及びアミン(R12NH)を用いて水溶性官能基(−CH2NR12)を上記で得られた重合体に導入することにより、製造される。アミノ化フェノール重合体は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
耐腐食性皮膜の他の例としては、希土類元素酸化物ゾル、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するコーティング剤を塗工するコーティングタイプの腐食防止処理によって形成される薄膜が挙げられる。コーティング剤には、さらにリン酸またはリン酸塩、ポリマーを架橋させる架橋剤を含んでもよい。希土類元素酸化物ゾルには、液体分散媒中に希土類元素酸化物の微粒子(例えば、平均粒径100nm以下の粒子)が分散されている。希土類元素酸化物としては、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ネオジウム、酸化ランタン等が挙げられ、密着性をより向上させる観点から酸化セリウムが好ましい。耐腐食性皮膜に含まれる希土類元素酸化物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。希土類元素酸化物ゾルの液体分散媒としては、例えば、水、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤など各種溶媒を用いることができ、水が好ましい。カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノ化フェノールなどが好ましい。また、アニオン性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩、あるいは(メタ)アクリル酸またはその塩を主成分とする共重合体であることが好ましい。また、架橋剤が、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、オキサゾリン基のいずれかの官能基を有する化合物とシランカップリング剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、前記リン酸またはリン酸塩が、縮合リン酸または縮合リン酸塩であることが好ましい。
耐腐食性皮膜の一例としては、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをバリア層3の表面に塗布し、150℃以上で焼付け処理を行うことにより形成したものが挙げられる。
耐腐食性皮膜は、必要に応じて、さらにカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの少なくとも一方を積層した積層構造としてもよい。カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーとしては、上述したものが挙げられる。
なお、耐腐食性皮膜の組成の分析は、例えば、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて行うことができる。
化成処理においてバリア層3の表面に形成させる耐腐食性皮膜の量については、特に制限されないが、例えば、塗布型クロメート処理を行う場合であれば、バリア層3の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で例えば0.5〜50mg程度、好ましくは1.0〜40mg程度、リン化合物がリン換算で例えば0.5〜50mg程度、好ましくは1.0〜40mg程度、及びアミノ化フェノール重合体が例えば1.0〜200mg程度、好ましくは5.0〜150mg程度の割合で含有されていることが望ましい。
耐腐食性皮膜の厚みとしては、蓄電デバイス用外装材を構成している積層体の厚み、ポリアミドフィルム層11の厚み、さらにバリア層3の厚みが本開示の前記所定範囲に設定されれば、特に制限されないが、皮膜の凝集力や、バリア層や熱融着性樹脂層との密着力の観点から、好ましくは1nm〜20μm程度、より好ましくは1nm〜100nm程度、さらに好ましくは1nm〜50nm程度が挙げられる。なお、耐腐食性皮膜の厚みは、透過電子顕微鏡による観察、または、透過電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線分光法もしくは電子線エネルギー損失分光法との組み合わせによって測定することができる。飛行時間型2次イオン質量分析法を用いた耐腐食性皮膜の組成の分析により、例えば、CeとPとOからなる2次イオン(例えば、Ce2PO4 +、CePO4 -などの少なくとも1種)や、例えば、CrとPとOからなる2次イオン(例えば、CrPO2 +、CrPO4 -などの少なくとも1種)に由来するピークが検出される。
化成処理は、耐腐食性皮膜の形成に使用される化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、バリア層3の表面に塗布した後に、バリア層3の温度が70〜200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、バリア層3に化成処理を施す前に、予めバリア層3を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、バリア層3の表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。また、脱脂処理にフッ素含有化合物を無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、金属箔の脱脂効果だけでなく不動態である金属のフッ化物を形成させることが可能であり、このような場合には脱脂処理だけを行ってもよい。
[熱融着性樹脂層4]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、熱融着性樹脂層4は、最内層に該当し、蓄電デバイスの組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して蓄電デバイス素子を密封する機能を発揮する層(シーラント層)である。
熱融着性樹脂層4を構成している樹脂については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン骨格を含む樹脂が好ましい。熱融着性樹脂層4を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能である。また、熱融着性樹脂層4を構成している樹脂を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。熱融着性樹脂層4が無水マレイン酸変性ポリオレフィンより構成された層である場合、赤外分光法にて測定すると、無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;プロピレン−αオレフィン共重合体;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンが好ましい。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ポリオレフィンは、環状ポリオレフィンであってもよい。環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。
酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンを酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。酸変性されるポリオレフィンとしては、前記のポリオレフィンや、前記のポリオレフィンにアクリル酸若しくはメタクリル酸等の極性分子を共重合させた共重合体、又は、架橋ポリオレフィン等の重合体等も使用できる。また、酸変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸またはその無水物が挙げられる。
酸変性ポリオレフィンは、酸変性環状ポリオレフィンであってもよい。酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、酸成分に代えて共重合することにより、または環状ポリオレフィンに対して酸成分をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、酸変性に使用される酸成分としては、前記のポリオレフィンの変性に使用される酸成分と同様である。
好ましい酸変性ポリオレフィンとしては、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリオレフィン、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
熱融着性樹脂層4は、1種の樹脂単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらに、熱融着性樹脂層4は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂によって2層以上で形成されていてもよい。
本開示において、蓄電デバイス用外装材の成形性を高める観点からは、熱融着性樹脂層4の表面には、滑剤が存在していることが好ましい。熱融着性樹脂層4の表面に滑剤が存在し、滑剤層を形成していることにより、蓄電デバイス用外装材の成形によるカールを抑制しつつ、蓄電デバイス用外装材の成形性を高めることができる。滑剤としては、特に制限されず、公知の滑剤を用いることができる。滑剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、滑剤層の厚みについても、本開示の蓄電デバイス用外装材を構成する積層体の厚みに含まれる。
滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N'−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N'−ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族ビスアミドの具体例としては、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N'−ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
熱融着性樹脂層4の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、蓄電デバイス用外装材の成形性を高める観点からは、好ましくは10〜50mg/m2程度、さらに好ましくは15〜40mg/m2程度が挙げられる。
熱融着性樹脂層4の表面に存在する滑剤は、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、熱融着性樹脂層4の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
また、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、蓄電デバイス用外装材を構成している積層体の厚み、ポリアミドフィルム層11の厚み、さらにバリア層3の厚みを本開示の前記所定範囲に設定しつつ、接着層5の有無や、接着層5の厚みなどに応じて設定することができる。熱融着性樹脂層4の厚みの上限については、例えば約34μm以下、好ましくは約33μm以下、より好ましくは32μm以下が挙げられ、下限については、例えば約8μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは12μm以上が挙げられ、好ましい範囲としては、8〜34μm程度、8〜33μm程度、8〜32μm程度、10〜34μm程度、10〜33μm程度、10〜32μm程度、12〜34μm程度、12〜33μm程度、12〜32μm程度が挙げられる。
とりわけ、後述の接着層5の厚みが8〜22μmの範囲内である場合には、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、上限については、好ましくは約22μm以下、より好ましくは約21μm以下、さらに好ましくは約20μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは約8μm以上、より好ましくは約9μm以上、さらに好ましくは約10μm以上が挙げられ、好ましい範囲としては、8〜22μm程度、8〜21μm程度、8〜20μm程度、9〜22μm程度、9〜21μm程度、9〜20μm程度、10〜22μm程度、10〜21μm程度、10〜20μm程度が挙げられる。また、後述の接着層5の厚みが1〜5μmの範囲内である場合には、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、上限については、好ましくは約34μm以下、より好ましくは約33μm以下、さらに好ましくは約32μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは約18μm以上、より好ましくは約19μm以上、さらに好ましくは約20μm以上が挙げられ、好ましい範囲としては、18〜34μm程度、18〜33μm程度、18〜32μm程度、19〜34μm程度、19〜33μm程度、19〜32μm程度、20〜34μm程度、20〜33μm程度、20〜32μm程度が挙げられる。
[接着層5]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、接着層5は、バリア層3と熱融着性樹脂層4を強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
接着層5は、バリア層3と熱融着性樹脂層4とを接着可能である樹脂によって形成される。接着層5の形成に使用される樹脂としては、前述の熱融着性樹脂層4で例示したポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂が好適に使用できる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、環状ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、酸変性環状ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂が好適に使用できる。この場合、熱融着性樹脂層4と接着層5とは、押出成形により好適に形成することができる。
また、接着層5の形成に使用される樹脂として、接着剤層2で例示した接着剤と同様のものも使用できる。
バリア層3と熱融着性樹脂層4との密着性に優れる観点から、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリオレフィン及び酸変性ポリオレフィンが好ましく、ポリプロピレン及び酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。すなわち、接着層5を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を含んでいても含んでいなくてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。接着層5を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。また、接着層5を構成している樹脂を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
バリア層3(又は耐酸性皮膜(耐腐食性皮膜))と熱融着性樹脂層4との密着性を向上させる観点から、接着層5は、酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。酸変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンをカルボン酸などの酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのカルボン酸又はその無水物が挙げられる。また、変性されるポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)などのポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマーなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
接着層5において、酸変性ポリオレフィンの中でも、特に無水マレイン酸変性ポリオレフィン、さらには無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。
さらに、蓄電デバイス用外装材の厚みを薄くしつつ、成形後の形状安定性に優れた蓄電デバイス用外装材とする観点からは、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、好ましくは、前記のものが例示できる。
また、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましく、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが特に好ましい。また、接着層5は、ウレタン樹脂、エステル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含むことがより好ましい。エステル樹脂としては、例えばアミドエステル樹脂が好ましい。アミドエステル樹脂は、一般的にカルボキシル基とオキサゾリン基の反応で生成する。接着層5は、これらの樹脂のうち少なくとも1種と前記酸変性ポリオレフィンを含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。接着層5が酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合、当該樹脂組成物を塗布し、加熱等により硬化させることにより、接着層5を形成することができる。なお、接着層5に、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、エポキシ樹脂などの硬化剤の未反応物が残存している場合、未反応物の存在は、例えば、赤外分光法、ラマン分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)などから選択される方法で確認することが可能である。
また、バリア層3(又は耐酸性皮膜(耐腐食性皮膜))と熱融着性樹脂層4と接着層5との密着性をより高める観点から、接着層5は、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC−O−C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。複素環を有する硬化剤としては、例えば、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C=N結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、イソシアネート基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C−O−C結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤、ウレタン樹脂などが挙げられる。接着層5がこれらの硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることは、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)、赤外分光法(IR)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)、X線光電子分光法(XPS)などの方法で確認することができる。
イソシアネート基を有する化合物としては、特に制限されないが、耐酸性皮膜(耐腐食性皮膜)と接着層5との密着性を効果的に高める観点からは、好ましくは多官能イソシアネート化合物が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、ペンタンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。
接着層5における、イソシアネート基を有する化合物の含有量としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。
オキサゾリン基を有する化合物は、オキサゾリン骨格を備える化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物の具体例としては、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するものなどが挙げられる。また、市販品としては、例えば、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
接着層5における、オキサゾリン基を有する化合物の割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層3(又は耐酸性皮膜(耐腐食性皮膜))と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
エポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは50〜2000程度、より好ましくは100〜1000程度、さらに好ましくは200〜800程度が挙げられる。なお、本開示において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
エポキシ樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層5における、エポキシ樹脂の割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層3(又は耐酸性皮膜(耐腐食性皮膜))と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
なお、本開示において、接着層5が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、前記酸変性ポリオレフィンとを含む樹脂組成物の硬化物である場合、酸変性ポリオレフィンが主剤として機能し、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂は、それぞれ、硬化剤として機能する。
カルボジイミド系硬化剤は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を少なくとも1つ有する化合物であれば、特に限定されない。カルボジイミド系硬化剤としては、カルボジイミド基を少なくとも2つ以上有するポリカルボジイミド化合物が好ましい。
接着層5によるバリア層3と熱融着性樹脂層4との密着性を高めるなどの観点から、硬化剤は、2種類以上の化合物により構成されていてもよい。
接着層5を形成する樹脂組成物における硬化剤の含有量は、0.1〜50質量%程度の範囲にあることが好ましく、0.1〜30質量%程度の範囲にあることがより好ましく、0.1〜10質量%程度の範囲にあることがさらに好ましい。
さらに、接着層5は、例えば、接着剤を用いて好適に形成することもできる。接着剤としては、例えば、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)と、多官能イソシアネート化合物(B)と、多官能イソシアネート化合物(B)と反応する官能基を有さない3級アミン(C)を含有し、カルボキシル基の合計1モルに対して、イソシアネート基の量が0.3〜10モルとなる範囲で多官能イソシアネート化合物(B)を含有し、カルボキシル基の合計1モルに対して、3級アミン(C)を1〜10モルとなる範囲で含有する、接着剤組成物から形成されたものが挙げられる。また、接着剤としては、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と、粘着付与剤(B)と、ポリイソシアネート(C)とを含有し、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と、粘着付与剤(B)との合計100重量%中に、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(A)を20〜90重量%、前記粘着付与剤(B)を10〜80重量%含み、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)は、0.003〜0.04mmol/gのアミノ基または水酸基に由来する活性水素を有し、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)由来の前記活性水素1モルに対して、前記粘着付与剤(B)の官能基由来の活性水素が0〜15モルであり、ポリイソシアネート(C)は、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(A)由来の活性水素と、粘着付与剤(B)由来の活性水素との合計1モルに対して、イソシアネート基が3〜150モルとなる範囲で含まれているものからなる接着剤組成物により形成されたものなども挙げられる。
また、接着層5の厚みとしては、蓄電デバイス用外装材を構成している積層体の厚み、ポリアミドフィルム層11の厚み、さらにバリア層3の厚みが本開示の前記所定範囲に設定しつつ、熱融着性樹脂層4の厚みなどに応じて設定することができる。接着層5の厚みの上限については、例えば約22μm以下、好ましくは約21μm以下、より好ましくは20μm以下が挙げられ、下限については、例えば約1μm以上、好ましくは2μm以上が挙げられ、好ましい範囲としては、1〜22μm程度、1〜21μm程度、1〜20μm程度、2〜22μm程度、2〜21μm程度、2〜20μm程度が挙げられる。
とりわけ、前述の熱融着性樹脂層4の厚みが8〜22μmである場合には、接着層5の厚みは、下限については、好ましくは約8μm以上、より好ましくは約9μm以上が挙げられ、上限については、好ましくは約22μm以下、より好ましくは約21μm以下が挙げられ、好ましい範囲としては、8〜22μm程度、8〜21μm程度、9〜22μm程度、9〜21μm程度が挙げられる。この場合、接着層5としては、熱融着性樹脂層4で例示したポリオレフィン樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。また、前述の熱融着性樹脂層4の厚みが18〜34μmである場合には、接着層5の厚みは、下限については、好ましくは約1μm以上、より好ましくは約2μm以上が挙げられ、上限については、好ましくは約5μm以下、より好ましくは約4μm以下が挙げられ、好ましい範囲としては、1〜5μm程度、1〜4μm程度、2〜5μm程度、2〜4μm程度が挙げられる。この場合、接着層5としては、酸変性ポリオレフィンと硬化剤との硬化物や、接着剤層2で例示した接着剤と同様のものを用いることが好ましい。
[表面被覆層6]
第1の開示の蓄電デバイス用外装材は、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性などの向上を目的として、必要に応じて、基材層1の上(基材層1のバリア層3とは反対側)に、表面被覆層6を備えていてもよい。また、第2の開示の蓄電デバイス用外装材は、表面被覆層6を備えている。表面被覆層6は、蓄電デバイス用外装材を用いて蓄電デバイスを組み立てた時に、蓄電デバイスの最外層側に位置する層である。
表面被覆層6は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂により形成することができる。
表面被覆層6を形成する樹脂が硬化型の樹脂である場合、当該樹脂は、1液硬化型及び2液硬化型のいずれであってもよいが、好ましくは2液硬化型である。2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ポリウレタン、2液硬化型ポリエステル、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。
表面被覆層6は、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、粒径が0.5nm〜5μm程度の微粒子が挙げられる。
添加剤の材質については、特に制限されず、無機物及び有機物のいずれであってもよい。また、添加剤の形状についても、特に制限されず、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状などが挙げられる。
表面被覆層6の厚みとしては、表面被覆層6としての上記の機能を発揮し、蓄電デバイス用外装材を構成している積層体の厚み、ポリアミドフィルム層11の厚み、さらにバリア層3の厚みが本開示の前記所定範囲に設定されれば特に制限されないが、好ましい下限としては、約0.1μm以上、約0.5μm以上、約1μm以上、約2μm以上が挙げられ、好ましい上限としては、約5μm以下、約4μm以下、約3μm以下が挙げられ、好ましい範囲としては、0.1〜5μm程度、0.1〜4μm程度、0.1〜3μm程度、0.5〜5μm程度、0.5〜4μm程度、0.5〜3μm程度、1〜5μm程度、1〜4μm程度、1〜3μm程度、2〜5μm程度、2〜4μm程度、2〜3μm程度が挙げられる。
添加剤の具体例としては、タルク、シリカ、グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、高融点ナイロン、アクリレート樹脂、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケルなどが挙げられる。添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の中でも、分散安定性やコストなどの観点から、好ましくはシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、添加剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理などの各種表面処理を施しておいてもよい。また、表面被覆層6の表面及び内部の少なくとも一方には、該表面被覆層6やその表面に備えさせるべき機能性等に応じて、必要に応じて、滑剤、アンチブロッキング剤、マット化剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、耐電防止剤、エラストマー樹脂等の添加剤を含んでいてもよい。滑剤の具体例としては、例えば前述した滑剤が挙げられる。また、上述した微粒子は滑剤、アンチブロッキング剤、マット化剤として機能してもよい。
表面被覆層6を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、表面被覆層6を形成する樹脂を塗布する方法が挙げられる。表面被覆層6に添加剤を配合する場合には、添加剤を混合した樹脂を塗布すればよい。
3.蓄電デバイス用外装材の製造方法
本開示の蓄電デバイス用外装材の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されない。すなわち、第1の開示の蓄電デバイス用外装材の製造方法においては、少なくとも、基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4がこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、基材層1が、少なくとも、ポリアミドフィルム層11を有しており、ポリアミドフィルム層11の厚みが10〜17μmであり、バリア層3の厚みが36〜44μmであり、積層体の厚みが83〜93μmである。また、第2の開示の蓄電デバイス用外装材の製造方法においては、少なくとも、表面被覆層6、基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4がこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、基材層1が、少なくとも、ポリアミドフィルム層11を有しており、表面被覆層の厚みが0.1〜5μmであり、ポリアミドフィルム層11の厚みが10〜17μmであり、バリア層3の厚みが36〜44μmであり、積層体の厚みが83.1〜98μmである。
本開示の蓄電デバイス用外装材の製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、基材層1、接着剤層2、バリア層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1上又は必要に応じて表面が化成処理されたバリア層3に接着剤層2の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該バリア層3又は基材層1を積層させて接着剤層2を硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。
次いで、積層体Aのバリア層3上に、接着層5及び熱融着性樹脂層4をこの順になるように積層させる。例えば、(1)積層体Aのバリア層3上に、接着層5及び熱融着性樹脂層4を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネート法)、(2)別途、接着層5と熱融着性樹脂層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層3上にサーマルラミネート法により積層する方法、(3)積層体Aのバリア層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングし、高温で乾燥さらには焼き付ける方法等により積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4をサーマルラミネート法により積層する方法、(4)積層体Aのバリア層3と、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aと熱融着性樹脂層4を貼り合せる方法(サンドイッチラミネート法)等が挙げられる。
第2の開示のように、表面被覆層6を設ける場合には、基材層1のバリア層3とは反対側の表面に、表面被覆層6を積層する。表面被覆層6は、例えば表面被覆層6を形成する上記の樹脂を基材層1の表面に塗布することにより形成することができる。なお、基材層1の表面にバリア層3を積層する工程と、基材層1の表面に表面被覆層6を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層1の表面に表面被覆層6を形成した後、基材層1の表面被覆層6とは反対側の表面にバリア層3を形成してもよい。
上記のようにして、第1の開示では必要に応じて設けられ、第2の開示では設けられる表面被覆層6/基材層1/必要に応じて設けられる接着剤層2/必要に応じて表面が化成処理されたバリア層3/必要に応じて設けられる接着層5/熱融着性樹脂層4からなる積層体が形成されるが、接着剤層2または接着層5の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近赤外線式又は遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、前述の通りである。
本開示の蓄電デバイス用外装材において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
4.蓄電デバイス用外装材の用途
本開示の蓄電デバイス用外装材は、正極、負極、電解質等の蓄電デバイス素子を密封して収容するための包装体に使用される。すなわち、本開示の蓄電デバイス用外装材によって形成された包装体中に、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子を収容して、蓄電デバイスとすることができる。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子を、本開示の蓄電デバイス用外装材で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、蓄電デバイス素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、蓄電デバイス用外装材を使用した蓄電デバイスが提供される。なお、本開示の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に蓄電デバイス素子を収容する場合、本開示の蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂部分が内側(蓄電デバイス素子と接する面)になるようにして、包装体を形成する。
本開示の蓄電デバイス用外装材は、電池(コンデンサー、キャパシター等を含む)などの蓄電デバイスに好適に使用することができる。また、本開示の蓄電デバイス用外装材は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本開示の蓄電デバイス用外装材が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本開示の蓄電デバイス用外装材の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
以下に実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明する。但し本開示は実施例に限定されるものではない。
<蓄電デバイス用外装材の製造>
実施例1
基材層としての二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)の上に、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H−O、厚さ40μm)からなるバリア層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔の一方面に、2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)を塗布し、アルミニウム箔上に接着剤層(硬化後の厚み3μm)を形成した。次いで、アルミニウム箔上の接着剤層と二軸延伸ナイロンフィルムを積層した後、エージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/バリア層の積層体を作製した。
次に、得られた積層体のバリア層の上に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(厚さ15μm)と、熱融着性樹脂層としてのポリプロピレン(厚さ15μm)とを共押出しすることにより、バリア層上に接着層/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体をエージングし、加熱することにより、二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(40μm)/接着層(15μm)/熱融着性樹脂層(15μm)がこの順に積層された蓄電デバイス用外装材(総厚み88μm)を得た。蓄電デバイス用外装材の積層構成を表1に示す。
なお、得られた蓄電デバイス用外装材の両面には、滑剤としてエルカ酸アミドを存在させて、滑剤層を形成した。
実施例2
基材層としての二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ12μm)の上に、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H−O、厚さ40μm)からなるバリア層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔の一方面に、2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)を塗布し、アルミニウム箔上に接着剤層(硬化後の厚み3μm)を形成した。次いで、アルミニウム箔上の接着剤層と二軸延伸ナイロンフィルムを積層した後、エージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/バリア層の積層体を作製した。
次に、得られた積層体のバリア層の上に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(厚さ18μm)と、熱融着性樹脂層としてのポリプロピレン(厚さ15μm)とを共押出しすることにより、バリア層上に接着層/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体をエージングし、加熱することにより、二軸延伸ナイロンフィルム(12μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(40μm)/接着層(18μm)/熱融着性樹脂層(15μm)がこの順に積層された蓄電デバイス用外装材(総厚み88μm)を得た。蓄電デバイス用外装材の積層構成を表1に示す。
実施例1と同様に、得られた蓄電デバイス用外装材の両面には、滑剤としてエルカ酸アミドを存在させて、滑剤層を形成した。
実施例3
基材層としての二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ12μm)の上に、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H−O、厚さ40μm)からなるバリア層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔の一方面に、2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)を塗布し、アルミニウム箔上に接着剤層(硬化後の厚み3μm)を形成した。次いで、アルミニウム箔上の接着剤層と二軸延伸ナイロンフィルムを積層した後、エージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/バリア層の積層体を作製した。
次に、得られた積層体のバリア層側に、2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)を塗布し、アルミニウム箔上に接着層(硬化後の厚み3μm)を形成した。さらに、接着層の上から、熱融着性樹脂層としての未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP、厚み30μm)をドライラミネート法により積層した。次に、得られた積層体をエージングし、加熱することにより、二軸延伸ナイロンフィルム(12μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(40μm)/接着層(3μm)/熱融着性樹脂層(30μm)がこの順に積層された蓄電デバイス用外装材(総厚み88μm)を得た。蓄電デバイス用外装材の積層構成を表1に示す。
実施例1と同様に、得られた蓄電デバイス用外装材の両面には、滑剤としてエルカ酸アミドを存在させて、滑剤層を形成した。
実施例4
基材層としての二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)の上に、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H−O、厚さ40μm)からなるバリア層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔の一方面に、2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)を塗布し、アルミニウム箔上に接着剤層(硬化後の厚み3μm)を形成した。次いで、アルミニウム箔上の接着剤層と二軸延伸ナイロンフィルムを積層した後、エージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/バリア層の積層体を作製した。
次に、得られた積層体のバリア層側に、2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)を塗布し、アルミニウム箔上に接着層(硬化後の厚み3μm)を形成した。さらに、接着層の上から、熱融着性樹脂層としての未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP、厚み30μm)をドライラミネート法により積層した。次に、得られた積層体をエージングし、加熱することにより、二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(40μm)/接着層(3μm)/熱融着性樹脂層(30μm)がこの順に積層された蓄電デバイス用外装材(総厚み91μm)を得た。蓄電デバイス用外装材の積層構成を表1に示す。
実施例1と同様に、得られた蓄電デバイス用外装材の両面には、滑剤としてエルカ酸アミドを存在させて、滑剤層を形成した。
実施例5
実施例1において、基材層とバリア層とを接着する前記2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)の代わりに、黒色顔料が配合された2液硬化型ウレタン接着剤(黒色顔料とポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)/接着剤層(黒色、3μm)/バリア層(40μm)/接着層(15μm)/熱融着性樹脂層(15μm)がこの順に積層された積層体(総厚み88μm)を得た。次に、得られた積層体の二軸延伸ナイロンフィルムの表面に、グラビアコートで、フィラーとしての平均粒子径1μmの沈降性硫酸バリウムと、エルカ酸アミドと、平均粒子径2μmのアクリレート樹脂とを含む樹脂組成物(硬化後の厚みが3μm)を塗布し、マット調の表面被覆層を形成して、蓄電デバイス用外装材(総厚み91μm)を得た。なお、沈降性硫酸バリウムの平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製の「LA−950」)で測定されたメジアン径である。蓄電デバイス用外装材の積層構成を表1に示す。
実施例1と同様に、得られた蓄電デバイス用外装材の両面には、滑剤としてエルカ酸アミドを存在させて、滑剤層を形成した。
実施例6
実施例1において、基材層とバリア層とを接着する前記2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)の代わりに、黒色顔料が配合された2液硬化型ウレタン接着剤(黒色顔料とポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)/接着剤層(黒色、3μm)/バリア層(40μm)/接着層(15μm)/熱融着性樹脂層(15μm)がこの順に積層された積層体(総厚み88μm)を得た。次に、得られた積層体の二軸延伸ナイロンフィルムの表面に、グラビアコートで、フィラーとしての平均粒子径1.5μmのシリカと、エルカ酸アミドと、平均粒子径2.5μmのアクリレート樹脂とを含む樹脂組成物(硬化後の厚みが3μm)を塗布し、マット調の表面被覆層を形成して、蓄電デバイス用外装材(総厚み91μm)を得た。なお、沈降性硫酸バリウムの平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製の「LA−950」)で測定されたメジアン径である。蓄電デバイス用外装材の積層構成を表1に示す。
実施例1と同様に、得られた蓄電デバイス用外装材の両面には、滑剤としてエルカ酸アミドを存在させて、滑剤層を形成した。
比較例1
基材層としての二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)の上に、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H−O、厚さ35μm)からなるバリア層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔の一方面に、2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)を塗布し、アルミニウム箔上に接着剤層(硬化後の厚み3μm)を形成した。次いで、アルミニウム箔上の接着剤層と二軸延伸ナイロンフィルムを積層した後、エージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/バリア層の積層体を作製した。
次に、得られた積層体のバリア層の上に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(厚さ20μm)と、熱融着性樹脂層としてのポリプロピレン(厚さ15μm)とを共押出しすることにより、バリア層上に接着層/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体をエージングし、加熱することにより、二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(35μm)/接着層(20μm)/熱融着性樹脂層(15μm)がこの順に積層された蓄電デバイス用外装材(総厚み88μm)を得た。蓄電デバイス用外装材の積層構成を表1に示す。
実施例1と同様に、得られた蓄電デバイス用外装材の両面には、滑剤としてエルカ酸アミドを存在させて、滑剤層を形成した。
比較例2
基材層としての二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)の上に、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H−O、厚さ35μm)からなるバリア層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔の一方面に、2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)を塗布し、アルミニウム箔上に接着剤層(硬化後の厚み3μm)を形成した。次いで、アルミニウム箔上の接着剤層と二軸延伸ナイロンフィルムを積層した後、エージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/バリア層の積層体を作製した。
次に、得られた積層体のバリア層の上に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(厚さ14μm)と、熱融着性樹脂層としてのポリプロピレン(厚さ10μm)とを共押出しすることにより、バリア層上に接着層/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体をエージングし、加熱することにより、二軸延伸ナイロンフィルム(25μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(35μm)/接着層(14μm)/熱融着性樹脂層(10μm)がこの順に積層された蓄電デバイス用外装材(総厚み87μm)を得た。蓄電デバイス用外装材の積層構成を表1に示す。
実施例1と同様に、得られた蓄電デバイス用外装材の両面には、滑剤としてエルカ酸アミドを存在させて、滑剤層を形成した。
比較例3
基材層としての二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)の上に、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H−O、厚さ40μm)からなるバリア層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔の一方面に、2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)を塗布し、アルミニウム箔上に接着剤層(硬化後の厚み3μm)を形成した。次いで、アルミニウム箔上の接着剤層と二軸延伸ナイロンフィルムを積層した後、エージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/バリア層の積層体を作製した。
次に、得られた積層体のバリア層の上に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(厚さ22.5μm)と、熱融着性樹脂層としてのポリプロピレン(厚さ22.5μm)とを共押出しすることにより、バリア層上に接着層/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体をエージングし、加熱することにより、二軸延伸ナイロンフィルム(25μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(40μm)/接着層(22.5μm)/熱融着性樹脂層(22.5μm)がこの順に積層された蓄電デバイス用外装材(総厚み113μm)を得た。蓄電デバイス用外装材の積層構成を表1に示す。
実施例1と同様に、得られた蓄電デバイス用外装材の両面には、滑剤としてエルカ酸アミドを存在させて、滑剤層を形成した。
比較例4
基材層としての二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)の上に、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H−O、厚さ40μm)からなるバリア層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔の一方面に、2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)を塗布し、アルミニウム箔上に接着剤層(硬化後の厚み2μm)を形成した。次いで、アルミニウム箔上の接着剤層と二軸延伸ナイロンフィルムを積層した後、エージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/バリア層の積層体を作製した。
次に、得られた積層体のバリア層の上に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(厚さ14μm)と、熱融着性樹脂層としてのポリプロピレン(厚さ10μm)とを共押出しすることにより、バリア層上に接着層/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体をエージングし、加熱することにより、二軸延伸ナイロンフィルム(25μm)/接着剤層(2μm)/バリア層(40μm)/接着層(14μm)/熱融着性樹脂層(10μm)がこの順に積層された蓄電デバイス用外装材(総厚み91μm)を得た。蓄電デバイス用外装材の積層構成を表1に示す。
実施例1と同様に、得られた蓄電デバイス用外装材の両面には、滑剤としてエルカ酸アミドを存在させて、滑剤層を形成した。
比較例5
基材層としての二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)の上に、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H−O、厚さ40μm)からなるバリア層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔の一方面に、2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)を塗布し、アルミニウム箔上に接着剤層(硬化後の厚み3μm)を形成した。次いで、アルミニウム箔上の接着剤層と二軸延伸ナイロンフィルムを積層した後、エージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/バリア層の積層体を作製した。
次に、得られた積層体のバリア層の上に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(厚さ14μm)と、熱融着性樹脂層としてのポリプロピレン(厚さ10μm)とを共押出しすることにより、バリア層上に接着層/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体をエージングし、加熱することにより、二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(40μm)/接着層(14μm)/熱融着性樹脂層(10μm)がこの順に積層された蓄電デバイス用外装材(総厚み82μm)を得た。蓄電デバイス用外装材の積層構成を表1に示す。
実施例1と同様に、得られた蓄電デバイス用外装材の両面には、滑剤としてエルカ酸アミドを存在させて、滑剤層を形成した。
比較例6
比較例1において、基材層とバリア層とを接着する前記2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)の代わりに、黒色顔料が配合された2液硬化型ウレタン接着剤(黒色顔料とポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)/接着剤層(黒色、3μm)/バリア層(35μm)/接着層(20μm)/熱融着性樹脂層(15μm)がこの順に積層された積層体(総厚み88μm)を得た。次に、得られた積層体の二軸延伸ナイロンフィルムの表面に、グラビアコートで、フィラーとしての平均粒子径1μmの沈降性硫酸バリウムと、エルカ酸アミドと、平均粒子径2μmのアクリレート樹脂とを含む樹脂組成物(硬化後の厚みが3μm)を塗布し、マット調の表面被覆層を形成して、蓄電デバイス用外装材(総厚み91μm)を得た。なお、沈降性硫酸バリウムの平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製の「LA−950」)で測定されたメジアン径である。蓄電デバイス用外装材の積層構成を表1に示す。
実施例1と同様に、得られた蓄電デバイス用外装材の両面には、滑剤としてエルカ酸アミドを存在させて、滑剤層を形成した。
<積層体の破断エネルギー>
上記で得られた各蓄電デバイス用外装材について、それぞれ、MD及びTDにおける単位幅1m当りの破断エネルギーは、各蓄電デバイス用外装材のMD及びTDについて、それぞれ、下記試験条件にて引張試験を行った際に計測される「測定荷重(N/15mm)−変位量の曲線」のデータを取得し、当該データをcsvファイル形式で保存し、表計算ソフト(マイクロソフト社のExcel(登録商標))を用いて積層体が破断するまでの当該データの積分を行って算出した。このとき、当該表計算ソフトによって、各蓄電デバイス用外装材の1m幅当たりの破断エネルギーに変換(0.015で除する)して算出した。そして、MDにおける単位幅1m当りの破断エネルギーとTDにおける単位幅1m当りの破断エネルギーを合計した。なお、測定対象とする蓄電デバイス用外装材は、それぞれ5つずつ用意し、5つのサンプルについての破断エネルギー値のうち、最大値と最小値を除く3つの値の平均を、積層体の破断エネルギーとした。結果を表2に示す。表2に示された積層体の破断エネルギーの値は、得られた平均値の小数点第二位を四捨五入した値である。
(試験条件)
・引張試験機:島津製作所製の商品名AGS−XPlus
・試験速度:50mm/min
・試験片の幅:15mm
・試験片の長さ:100mm
・標点間距離:30mm
なお、参考のため、蓄電デバイス用外装材の引張試験(MD)で得られる測定荷重(N/15mm)−変位量の曲線の模式図を図10に示す。測定荷重(N/15mm)−変位量の曲線のデータの積分を行った部分は、例えば図11の模式図に示すように、引張試験開始(変位量0)から積層体の破断点までの積分値であり、図11の斜線部分の面積に対応している。
<成形によるカールの評価>
上記で得られた蓄電デバイス用外装材を裁断して、TD(Transverse Direction)150mm×MD(Machine Direction)90mmの短冊片を作製し、これを試験サンプルとした。31.6mm×54.5mmの矩形状の雄型(表面は、JIS B 0659−1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が1.6μmである。コーナーR2.0mm、稜線R1.0mm)とこの雄型とのクリアランスが0.3mmの雌型(表面は、JIS B 0659−1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が3.2μmである。コーナーR2.0mm、稜線R1.0mm)からなる金型を用い、雄型側に熱融着性樹脂層側が位置するように雌型上に上記試験サンプルを載置し、31.6mm(MD)×54.5mm(TD)、成形深さ6mmとなるように当該試験サンプルを0.25MPaの押え圧(面圧)で押えて、冷間成形(引き込み1段成形)した。成形を行った位置の詳細は、図7に示される通りである。図7に示されるように、矩形状の成形部Mと蓄電デバイス用外装材10の端部Pとの最短距離d=70.5mmとなる位置で成形した。成形部Mは、金型によって凹部が形成される位置を示している。次に、成形後の蓄電デバイス用外装材10を、図8に示すようにして水平面20におき、水平面20から端部Pまでの垂直方向yの距離の最大値tをカールしている部分の最大高さとした。成形によるカールは、値が小さいほどカールが小さく、蓄電デバイス用外装材として優れている。表1に示された成形カール(mm)は、最大値tの小数点第二位を四捨五入した値である。
<成形性の評価>
各蓄電デバイス用外装材を長さ(MD)90mm×幅(TD)150mmの長方形に裁断して試験サンプルとした。このサンプルを32mm(MD)×54mm(TD)の口径を有する矩形状の成形金型(雌型、表面は、JIS B 0659−1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が3.2μmである)と、これに対応した成形金型(雄型、表面は、JIS B 0659−1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が1.6μmである)を用いて、押さえ圧(面圧)0.25MPaで0.5mmの成形深さから0.5mm単位で成形深さを変えて、それぞれ20個のサンプルについて冷間成形(引き込み1段成形)を行った。このとき、雄型側に熱融着性樹脂層側が位置するよう、雌型上に上記試験サンプルを載置して成形をおこなった。また、雄型及び雌型のクリアランスは、0.5mmとした。冷間成形後のサンプルについて、暗室の中にてペンライトで光を当てて、光の透過によって、バリア層にピンホールやクラックが生じているか否かを確認した。バリア層にピンホール、クラックが20個のサンプル全てにおいて発生しない最も深い成形深さをAmm、バリア層にピンホール等が発生した最も浅い成形深さにおいてピンホール等が発生したサンプルの数をB個とし、以下の式により算出される値を蓄電デバイス用外装材の限界成形深さとした。結果を表1に示す。表1に示された限界成形深さ(mm)は、算出された値の小数点第二位を四捨五入した値である。
限界成形深さ=Amm+(0.5mm/20個)×(20個−B個)
<バリア層の厚みが20μmとなる成形深さ>
各蓄電デバイス用外装材を裁断して、長さ(MD)90mm×幅(TD)150mmの短冊片を作製し、これを試験サンプルとした。長さ(MD)31.6mm×幅(TD)54.5mmの矩形状の雄型(表面は、JIS B 0659−1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が1.6μmである。コーナーR2.0mm、稜線R1.0mm)と、この雄型とのクリアランスが0.3mmの雌型(表面は、JIS B 0659−1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が3.2μmである。コーナーR2.0mm、稜線R1.0mm)からなるストレート金型を用い、雄型側に試験サンプルの熱融着性樹脂層側が位置するようにして、雌型上に上記試験サンプルを載置し、試験サンプルを0.25MPaの押え圧(面圧)で押えて、冷間成形(引き込み1段成形)した。
この冷間成形の方法によって、成形深さを2.0mmから0.5mmずつ増加させた条件で成形を順次行い、成形後の試験サンプルのバリア層の角部Pの厚みa(図9を参照)と、成形深さとの関係をプロットして、近似直線を引いてグラフを作成した。当該グラフから、バリア層の角部Pの厚みaが20μmとなる成形深さを求めた。表1に示されたバリア層の厚みが20μmとなる成形深さ(mm)は、求めた値の小数点第二位を四捨五入した値である。
成形後の試験サンプルのバリア層の厚みaは、試験サンプルを基材層側から平面視した際、略矩形状に突出している部分の互いに対向する角部Pを結ぶ直線上において、ミクロトーム(大和光機工業製:REM−710リトラトーム)にて厚み方向に裁断して蓄電デバイス用外装材を2分割し、分割された一方の試験サンプルの前記角部Pの断面をレーザー顕微鏡(キーエンス製:VK−9700)で観察することで測定した。分割された一方の試験サンプルには、前記角部が2つ存在しており、前記バリア層の厚みaは、これら角部におけるバリア層の厚みaの平均値とした。成形後の試験サンプルのバリア層の模式図を図9に示す。なお、角部Pの厚みの位置は、成形によって形成された角部P(湾曲部)において曲率半径が最も小さくなるところであり、通常、湾曲の開始から終了の中央部を意味する。
<絶縁性の評価(ワイヤ短絡)>
各蓄電デバイス用外装材を裁断し、幅40mm、長さ100mmの短冊片を作製して、各試験サンプルとした。試験サンプルの熱融着性樹脂層の面に、幅方向の中央に直径13μm、長さ70mmのステンレス製ワイヤーを配置した。さらにその上から、幅30mm、長さ100mm、厚み100μmのアルミニウム板を配置した。このとき、試験サンプルの幅方向の中央と、アルミニウム板の幅方向の中央が一致するようにした。次に、テスターのプラス極をアルミニウム板に、マイナス極を蓄電デバイス用外装材にそれぞれ接続した。テスターのマイナス極については、ワニ口クリップを蓄電デバイス用外装材の基材層側からバリア層に到達するように挟み込み、テスターのマイナス極とバリア層とを電気的に接続させた。テスターは印加電圧100V、抵抗200MΩ以下となったとき導通(短絡)信号が発するよう準備した。次に、テスター間に100Vの電圧をかけ、この状態でステンレス製ワイヤーがアルミニウム板と蓄電デバイス用外装材との間に介在した状態で、ワイヤーに直交するように190℃、1MPa、幅7mmでヒートシールし、短絡信号が発するまでの時間を計測した。5回計測し、最長、最短の1点ずつを排除した3点の平均値を、短絡までの時間とした。短絡するまでの時間が40.0秒以上であった場合をA、40.0秒未満13.0秒以上であった場合をB、13.0秒未満であった場合をCとして判定した。評価がA,Bであれば、絶縁性に優れており、評価がAは特に絶縁性が優れている。
表1において、ONyは二軸延伸ナイロンフィルム、DLはドライラミネート法により形成された接着剤層又は接着層、ALMはアルミニウム箔、PPaは無水マレイン酸変性ポリプロピレンにより形成された接着層、PPはポリプロピレンにより形成された熱融着性樹脂層、CPPは無延伸ポリプロピレン(CPP)により形成された熱融着性樹脂層を意味する。SCは表面被覆層を意味する。また、積層構成における数値は厚み(μm)を意味し、例えば「ONy15」との表記は、厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルムを意味する。
表1に示される結果から明らかな通り、実施例1〜6の蓄電デバイス用外装材は、基材層がポリアミドフィルム層を有しており、ポリアミドフィルム層の厚みが10μm以上17μm以下であり、バリア層の厚みが36μm以上44μm以下であり、さらに、積層体の厚みが83μm以上93μm以下に設定されており、蓄電デバイス用外装材の厚みが比較的薄いにも拘わらず、優れた絶縁性を有し、成形カールが効果的に抑制されていることが分かる。また、実施例1〜5の蓄電デバイス用外層材は、成形性も優れていた。実施例1,4,5の蓄電デバイス用外層材は、バリア層の厚みが20μmとなる成形深さ、及び限界成形深さが大きく、特に成形性が高いことが分かる。
一方、比較例1〜4及び比較例6の蓄電デバイス用外装材は、成形カールが大きかった。また、比較例5の蓄電デバイス用外装材は、厚みが83μmよりも薄く、絶縁性が不十分であり、蓄電デバイス用外装材として適していなかった。
また、表2に示されるように、実施例1〜6の蓄電デバイス用外装材は、単位幅1m当たりの破断エネルギーが大きく、成形性に優れていることが分かる。
1 基材層
11 ポリアミドフィルム層
12 ポリエステルフィルム層
13 接着剤層
2 接着剤層
3 バリア層
4 熱融着性樹脂層
5 接着層
6 表面被覆層
10 蓄電デバイス用外装材

Claims (7)

  1. 少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
    前記基材層は、少なくとも、ポリアミドフィルム層を有しており、
    前記ポリアミドフィルム層の厚みは、10μm以上17μm以下であり、
    前記バリア層の厚みは、36μm以上44μm以下であり、
    前記積層体の厚みは、83μm以上93μm以下である、蓄電デバイス用外装材。
  2. 前記バリア層と前記熱融着性樹脂層との間に、接着層を備えており、
    前記接着層の厚みは、8μm以上22μm以下であり、
    前記熱融着性樹脂層の厚みは、8μm以上22μm以下である、請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
  3. 前記バリア層と前記熱融着性樹脂層との間に、接着層を備えており、
    前記接着層の厚みは、1μm以上5μm以下であり、
    前記熱融着性樹脂層の厚みは、18μm以上34μm以下である、請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
  4. 前記積層体は、引張試験によって測定される「測定荷重(N/15mm)−変位量」の曲線から算出される、MDにおける単位幅1m当りの破断エネルギーと、TDにおける単位幅1m当りの破断エネルギーとの合計が、100J以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の蓄電デバイス用外装材。
  5. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子が、請求項1〜4のいずれかに記載の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に収容されている、蓄電デバイス。
  6. 少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層がこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
    前記基材層は、少なくとも、ポリアミドフィルム層を有しており、
    前記ポリアミドフィルム層の厚みは、10μm以上17μm以下であり、
    前記バリア層の厚みは、36μm以上44μm以下であり、
    前記積層体の厚みは、83μm以上93μm以下である、蓄電デバイス用外装材の製造方法。
  7. 少なくとも、表面被覆層、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
    前記基材層は、少なくとも、ポリアミドフィルム層を有しており、
    前記表面被覆層の厚みは、0.1μm以上5μm以下であり、
    前記ポリアミドフィルム層の厚みは、10μm以上17μm以下であり、
    前記バリア層の厚みは、36μm以上44μm以下であり、
    前記積層体の厚みは、83.1μm以上98μm以下である、蓄電デバイス用外装材。
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