JP2020128572A - 金属構造物表面調整方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】湿潤ブラスト処理とレーザー照射処理とを合わせた金属構造物表面調整方法を提供する。【解決手段】金属構造物表面調整方法は、まず研掃材を水で浸して形成された湿潤ブラストを金属構造物の表面に噴射する湿潤ブラスト処理S1が行われる。湿潤ブラスト処理S1が行われた後に、金属構造物の表面の水分を乾燥又は除去する乾燥処理S2が行われる。乾燥処理S2が行われた後に、金属構造物の表面にレーザービームの照射を行うレーザー照射処理S3が行われる。さらに、湿潤ブラスト処理S1と乾燥処理S2との間に、金属構造物の表面5に防錆剤を噴霧し又は塗布する防錆剤処理が行われてもよい。【選択図】図1

Description

本発明は、鋼橋、建設インフラ、或いは各種プラントにおける金属構造物において、塗装の塗り替え、塗装の下地処理、各種ライニング、溶射及びメッキ等の下処理、洗浄等に用いられる金属構造物の表面調整方法に関する。
従来、金属構造物の表面調整方法として、湿潤ブラスト処理が知られている。例えば、特許文献1に記載の素地調整方法及び溶射被膜形成方法は、素地調整をしようとする被処理材の表面に、研掃材と、水に錆抑制剤を添加した湿潤材を吹き付けて研掃処理を行う。その後、研掃処理面に溶射或いは塗装を行って溶射皮膜を形成するものである。
湿潤ブラスト処理は、タンク内において予め研掃材を水で浸して湿粒化し、これを高圧空気の圧力で噴射して鋼材表面に高速で投射し、その打撃力で塗膜等を除去し、かつ鋼材面に適切な凹凸を形成して「1種ケレン」を実現する技術である。「ケレン」とは、一般的に主に鉄部に生じた錆びや付着汚れを落したりして被塗装面を清浄にする作業のことである。ケレンには1種から4種のグレードがある。1種ケレンはブラスト法により、黒皮、赤さび、旧塗膜を完全に除去し、清浄な金属面とすることである。
湿潤ブラスト処理は、水に包まれた研掃材が打撃することで、打撃力によって発生する塗膜や研掃材の細片は水分に包まれるので、その重さで浮遊できず落下する。よって、空中に浮遊する粉塵は大幅に抑制され、粉塵対策上、安全性が大幅に向上する優れた工法である。
湿潤ブラスト処理は、発生する粉塵量が大変少ないので、乾式ブラスト工法のような粉塵の拡散防止のための強固な密閉養生設備を省くことができる。また、湿潤ブラスト処理は、集塵装置や換気装置が必要なく、水分を使用するので、鋼材表面の有害塩分も併せて洗浄除去できる特長もある。
ただし、湿潤ブラスト処理は、水分を使用するので、研掃後に早期に有害錆びが発生する問題がある。そのため、その優れた特長があるにもかかわらず、建設分野においては、現在は広く使われることなく造船等の一部の業界での利用に留まっている。その対策として、特許文献1では、錆の発生を防ぐために研掃材と、水に錆抑制剤を添加した湿潤剤とを吹き付けて研掃処理することが提案されている。錆抑制剤としての気化性防錆剤は、高濃度であればあるほど確実に鋼材表面の錆の発生を長時間にわたって抑制できる。また気化性防錆剤は、噴霧または塗布すれば、反射したり気流に乗って狭隘な部位にも届いて効果を発揮する。
一方、金属構造物の表面調整方法として、レーザークリーニング方法が知られている。例えば、特許文献2に記載のレーザークリーニング方法及び装置は以下の構成である。レーザークリーニング方法及び装置は、レーザー発振ユニットから出力される連続性の短パルスレーザービームが、光伝送チューブを介してレーザー照射器に供給される。照射器から短パルスレーザービームが被クリーニング物の表面に照射される。短パルスレーザービームが被クリーニング物の表面に照射されることにより、表面には断続的に熱衝撃波が生ずる。そして、熱衝撃波が微少共鳴を生起し、この共鳴作用により被クリーニング物の表面から付着物が剥離除去されるものである。
レーザークリーニング方法は、高出力の波長1070nm程度のレーザービームを照射させて、鋼材表面の塗膜や錆などの酸化物、油脂等をアブレーションによって蒸発させ除去し、健全な鋼材表面を露出させる技術である。レーザークリーニング方法は、消耗品を必要とせず、電気だけで作動するので、ランニングコストが掛からないという長所がある。レーザービームを照射すると、鋼材の表面が改質され、錆びにくくなる特性も報告されている。鋼材の表面は、安定した黒錆びが形成されるとの報告もある。
特開2001−181815号公報 特開平9−122939号公報
しかしながら、気化性防錆剤を使用して防錆効果を発揮させるためには以下の課題がある。錆抑制剤として一般的に使用される気化性防錆剤は高価であり、防錆効果を発揮するために十分な量又は高濃度の気化性防錆剤を使用するとコストがかかるといった大きな問題がある。また、気化性防錆剤は、高濃度であればその成分が鋼材表面に残存しやすく、1種ケレンの後工程である塗装や溶射等に何らかの影響が心配される。気化性防錆剤は、低濃度にして費用を抑えたいが、塗布ムラ等により部分的に初期錆びが発生するといった問題が発生する。
一方、レーザークリーニング方法によって金属構造物の表面調整を行う場合、以下の課題がある。鋼橋等、建設インフラに採用されている重防食塗装などは、0.1〜0.4mm程度の厚い塗装膜や層状になっている厚い強固な錆びがある。レーザークリーニング方法のみで効率的に除去するには、レーザークリーニング装置が1000W程度以上の高出力であることを必要とする。効率を考慮すると、レーザークリーニング装置はさらに2kwや3kwの高出力型にする必要がある。レーザークリーニング装置は、高出力型となると、大きな電力が必要で、専用の大出力のエンジン発電機が必要となる。よって、レーザークリーニング方法は、高額な初期投資が必要となるといった課題がある。
また、レーザークリーニング装置は、高出力型の場合、設備が大掛かりになり重量がかさむとともに、大きな発電設備が必要となる。よって、レーザークリーニング装置は、工事現場の足場上で手軽に設置して使用することができない。さらに、レーザークリーニング方法はレーザービームという非接触性の作用を使うため、ブラスト工法とは異なって鋼材表面に適切な凹凸を形成できないという欠点がある。レーザークリーニング方法では、鋼材面に適切な凹凸を形成することができないので、1種ケレンを実現することができない。1種ケレンは、材料表面の微細な凹凸に塗料を入り込ませてしっかり定着させる投錨効果(アンカー効果)がある。1種ケレンは、この機械的性質を利用して、塗膜を長期間、美しくキープさせる。1種ケレンは、余分な汚れを取るのと同時にわざと被塗面に凹凸をつけていく。つまり、1種ケレンは、被塗面に凹凸を付けて、塗料の付着をよくすることが目的の一つであるが、レーザークリーニング方法のみではこの目的を達成できないという課題がある。
本発明の目的は、従来の課題を解決すべくなされたものであり、湿潤ブラスト処理とレーザー照射処理とを合わせた金属構造物表面調整方法を提供することにある。
本発明の第一の態様に係る金属構造物表面調整方法は、研掃材を水で浸して形成された湿潤ブラストを金属構造物の表面に噴射する湿潤ブラスト処理と、前記湿潤ブラスト処理が行われた後に、前記金属構造物の表面の水分を乾燥又は除去する乾燥処理と、前記乾燥処理が行われた後に、前記金属構造物の表面にレーザービームの照射を行うレーザー照射処理とを有する。
これによれば、第一の態様に係る金属構造物表面調整方法は、湿潤ブラスト処理によって金属構造物の表面にあった塗装膜、錆、及び汚れを取り除き、微細な凹凸を形成することができる。乾燥処理は、湿潤ブラスト処理が行われた後、金属構造物の表面に残った水分を乾燥或いは除去するので錆の発生を抑止できる。さらに、レーザー照射処理によって、湿潤ブラスト処理されたあとの金属構造物の表面が清浄される。また、湿潤ブラスト処理の後に錆が発生した場合は、レーザー照射処理によって、錆が取り除かれるとともに錆の発生を防止する効果も期待できる。すなわち、金属構造物の表面において、湿潤ブラスト処理によって1種ケレンを実現し、レーザー照射処理との相乗効果によって清浄されるとともに、錆を取り除く効果を有する金属構造物表面調整方法を提供することができる。
本発明の第二の態様に係る金属構造物表面調整方法は、研掃材を水で浸して形成された湿潤ブラストを金属構造物の表面に噴射する湿潤ブラスト処理と、前記金属構造物の表面に、防錆剤を噴霧し又は塗布する防錆剤処理と、前記防錆剤処理が行われた後に、前記金属構造物の表面の水分を乾燥又は除去する乾燥処理と、前記乾燥処理が行われた後に、前記金属構造物の表面にレーザービームの照射を行うレーザー照射処理とを有する。
これによれば、第二の態様に係る金属構造物表面調整方法は、湿潤ブラスト処理によって金属構造物の表面にあった塗装膜、錆、及び汚れを取り除き、微細な凹凸を形成することができる。また、湿潤ブラスト処理の後に防錆剤処理が行われるので、錆の発生を抑止する効果がある。乾燥処理は、防錆剤処理が行われた後、金属構造物の表面に残った水分を乾燥又は除去するので錆の発生を抑止できる。さらに、レーザー照射処理によって、湿潤ブラスト処理されたあとの金属構造物の表面が清浄される。また、乾燥処理又は防錆剤処理の後に錆が発生した場合は、レーザー照射処理によって、錆が取り除かれるとともに錆の発生を防止する効果も期待できる。
すなわち、第二の態様に係る金属構造物表面調整方法は、金属構造物の表面において、湿潤ブラスト処理によって1種ケレンを実現し、レーザー照射処理との相乗効果によって清浄される。さらに、レーザー照射処理と防錆剤処理との相乗効果により錆を取り除く効果を有する金属構造物表面調整方法を提供することができる。
また、本発明の第二の態様に係る金属構造物表面調整方法は、前記防錆剤処理が前記湿潤ブラスト処理を行った後の10分以内に行われてもよい。この場合、金属構造物の表面に錆の発生が顕著になる前に防錆剤処理が行われるので、より防錆効果が高い。
また、本発明の第二の態様に係る金属構造物表面調整方法は、前記防錆剤処理が前記湿潤ブラスト処理と同時に行われてもよい。この場合、金属構造物の表面に錆が発生する前に防錆剤処理が行われるので、より防錆効果が高い。
また、本発明の第二の態様に係る金属構造物表面調整方法は、前記防錆剤が気化性防錆剤であり、前記気化性防錆剤の濃度が1重量%から4重量%の範囲内であってもよい。この場合、防錆剤処理とレーザー照射処理とを併用することにより防錆剤である気化性防錆剤の濃度を低くすることができ、防錆剤に要する費用を低減することができる。
本発明の第一の態様に係る金属構造物表面調整方法の各処理を示したフローチャートである。 本発明の第二の態様に係る金属構造物表面調整方法の各処理を示したフローチャートである。 発錆状況を示した図であり、(a)は湿潤ブラスト処理S1後の経過時間と発錆状況との関係を示した図であり、(b)は発錆状況の各レベルにおける錆の発生、残存状況の内容を示した図である。 発錆状況を示した図であり、気化性防錆剤41aの濃度と発錆状況との関係を示した図である。 第一湿潤ブラスト処理装置1を示した模式図である。 レーザー照射装置20を示した模式図である。 第二湿潤ブラスト処理装置30を示した模式図である。 防錆剤噴霧装置40を示した模式図である。 本発明の第二の態様に係る金属構造物表面調整方法において、レーザー照射処理S3後の錆の残存レベルを示した図であり、気化性防錆剤41aの濃度に対してレーザー出力を変化させたときの錆の残存レベルを示した図である。
以下、図面を参照し、本発明を具現化した金属構造物表面調整方法を説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。図面に記載されているフローチャート、装置の構成、その他は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
<第一の態様に係る金属構造物表面調整方法>
図1を参照して、本発明の第一の態様に係る金属構造物表面調整方法の概要を説明する。第一の態様に係る金属構造物表面調整方法は、まず研掃材11を水で浸して形成された湿潤ブラスト12を金属構造物の表面50に噴射する湿潤ブラスト処理S1が行われる。湿潤ブラスト処理S1が行われた後に、金属構造物の表面50の水分を乾燥又は除去する乾燥処理S2が行われる。乾燥処理S2が行われた後に、金属構造物の表面50にレーザービームの照射を行うレーザー照射処理S3が行われる。
湿潤ブラスト処理S1は、前述のように、タンク内において予め研掃材11を水で浸して湿粒化する。湿粒化した研掃材11は、高圧空気の圧力で噴射して鋼材表面に高速で投射し、その打撃力で塗膜等を除去し、かつ鋼材面に適切な凹凸を形成して「1種ケレン」を実現する。湿潤ブラスト処理S1は、JISZ0310に定められている以下の湿式ブラストを含む。すなわち湿潤ブラスト処理S1は、モイスチュアブラスト、湿式エアーブラスト、スラリーブラスト、及びウォータージェットブラストを含むものである。
次に、図5を参照して、金属構造物表面調整方法において使用される第一湿潤ブラスト処理装置1の一例を説明する。第一湿潤ブラスト処理装置1は、加圧タンク3の上部に研掃材投入ホッパー2を備える。研掃材11は、研掃材投入ホッパー2から投入され、加圧タンク3に挿入される。加圧タンク3は、配管10によって内蔵ポンプ4が接続されている。配管10は、さらに先端6が水道に直結されているか或いはロータリータンクに接続され、水が加圧タンク3に注入される。研掃材11のサイズは、例えば直径が0.5mm〜1.5mmの範囲のものが使用される。研掃材11の材質は、例えばニッケルスラグ、溶融アルミナスラグ、鋼スラグ、鉄鋼スラグ等が用いられるが、これら以外のものでもよい。研掃材11のサイズと材質は、湿潤ブラスト処理S1による研掃効果、又は金属構造物の種類に応じて適宜選択される。
加圧タンク3は、配管8が接続されブラストノズル7に繋がっている。配管8は、一方が外付けコンプレッサー5に接続された配管9に接続され、他方はブラストノズル7に接続されている。外付けコンプレッサー5は約7気圧(約0.7MPa)の圧力を発生する。なお、ここで説明した第一湿潤ブラスト処理装置1は、本発明の第二の態様に係る金属構造物表面調整方法においても使用される。
次に、図6を参照して第一の態様に係る金属構造物表面調整方法において使用されるレーザー照射装置20の一例を説明する。レーザー照射装置20は、発振器を内蔵した筐体21と、筐体21に接続された光伝送チューブ23と、光伝送チューブ23の先端に接続されたレーザーヘッド24を備える。筐体21は、レーザー照射処理S3の操作を行うためのタッチパネル22を備える。
レーザー照射装置20は、タッチパネル22の操作により以下の操作が可能である。すなわち、レーザービーム照射の開始と停止、レーザー出力の設定、照射回数、スキャン方向及びスキャン範囲、送り速度、レンズの焦点距離等の設定を行うことができる。なお、ここで説明したレーザー照射装置20は、本発明の第二の態様に係る金属構造物表面調整方法においても使用される。また、図6で示したレーザー照射装置20は一例であり、他の形式又は構成の装置が使用されても良い。
次に、図1及び図5を参照して、本発明の第一の態様に係る金属構造物表面調整方法における具体的な方法を説明する。まず、湿潤ブラスト処理S1を説明する。第一湿潤ブラスト処理装置1において、研掃材11が、研掃材投入ホッパー2から加圧タンク3に投入され、水と混合される。加圧タンク3は、研掃材11と水とが混合された状態で、約12気圧(約1.2MPa)に加圧されて湿潤ブラスト12が形成される。湿潤ブラスト12は、加圧タンク3から配管8を通じて排出される。外付けコンプレッサー5にて発生させた圧力が、配管9を通じて配管8に繋がったブラストノズル7を加圧し、湿潤ブラスト12が金属構造物の表面50に噴射される。なお、加圧タンク3において加圧される圧力は、使用する研掃材11の種類、水の量、その他の条件によって変更可能である。
次に、乾燥処理S2を説明する。乾燥処理S2は、湿潤ブラスト処理S1が行われた後に行われる。乾燥処理S2の第一の方法は、自然乾燥或いは熱風等を吹き付ける乾燥方法である。乾燥時間は、通常数時間〜数日間である。なお、乾燥時間は、乾燥の方法と乾燥状況によって適宜設定され、条件によっては1時間以内でも良い。乾燥処理S2は、風通しが良く、空気の流れが生じている状態で行われるのが望ましい。
乾燥処理S2の第二の方法は、湿潤ブラスト処理S1が行われた後に、金属構造物の表面50の水分を強制的に除去する処理である。具体的には、金属構造物の表面50に高圧空気を噴射させて付着した水分を除去する処理である。使用される高圧空気洗浄機、及び噴射する空気の圧力は、金属構造物の表面50の水分の状況その他の条件によって適宜設定される。高圧空気洗浄機は、発生する圧力が0.4MPa〜6Mpa程度のものが市場に流通しており、乾燥処理S2において必要な圧力に応じて選択できる。乾燥処理S2は、第一の方法を選択しても良いし第二の方法を選択しても良いし、或いは第一の方法と第二の方法を併用してもよい。
次に、図6を参照して、レーザー照射処理S3を説明する。レーザー照射処理S3は、金属構造物の表面50に対してレーザービームを照射して、錆を除去し或いは清浄する処理である。レーザービームは、筐体21に内蔵された発信器から出力されて、光伝送チューブ23を介してレーザーヘッド24に供給される。レーザービームは、波長が1070nm程度であり、レーザーヘッド24から照射される。レーザー照射処理S3が行われるときは、レーザーヘッド24が金属構造物の表面50に向けられてレーザービームが照射される。レーザービームは、金属構造物の表面50の全体に対して照射されてもよいし、錆が発生している部分に対してのみ照射されてもよい。
金属構造物の表面50は、レーザービームが照射されると断続的に熱衝撃波が生じて微少共鳴が生起され、錆その他の付着物が剥離除去される。レーザービームを照射する出力は、錆の発生状況に応じて調整される。一般的にレーザービームの照射出力は、大きいほど錆の除去性能及び清浄効果が向上する。
<第一の態様に係る金属構造物表面調整方法の効果>
以上説明した、第一の態様に係る金属構造物表面調整方法は種々の効果を奏する。金属構造物の表面50は、湿潤ブラスト処理S1によって塗装膜、錆、汚れが取り除かれ、微細な凹凸が形成されることにより1種ケレンが実現される。湿潤ブラスト処理S1が行われた後の乾燥処理S2によって、金属構造物の表面50に残った水分が乾燥又は除去されるので錆の発生を抑止できる。さらに、レーザー照射処理S3によって、湿潤ブラスト処理S1がなされた後の金属構造物の表面50が清浄される。
また、乾燥処理S2の条件によっては、金属構造物の表面50に錆が発生する場合がある。或いは、湿潤ブラスト処理S1後の乾燥処理S2が行われている最中又は乾燥処理S2の後に、金属構造物の表面50に錆を発生させる要因となる塩分等の物質が付着する場合がある。仮に錆が発生した場合は、レーザー照射処理S3によって、錆が取り除かれるとともに錆の発生を防止する効果も期待できる。また、レーザー照射処理S3は、湿潤ブラスト処理S1の後に金属構造物の表面50に付着した塩分等の物質を清浄する効果がある。よって、第一の態様に係る金属構造物表面調整方法は、金属構造物の表面50において、湿潤ブラスト処理S1によって1種ケレンが実現され、レーザー照射処理S3との相乗効果によって清浄されるとともに、錆を取り除く効果を奏する。さらに、レーザー照射処理S3は、金属構造物の表面50に錆が発生する要因を取り除くことができるので、後工程である塗装等が行われるとき、或いは塗装等の作業後に錆が発生することを防止する効果を奏する。
なお、湿潤ブラスト処理S1が行われた後、金属構造物の表面50に錆が発生した場合であっても、層の厚い錆が発生するのではなく表面に薄く発生する場合が多い。よって、レーザービームの出力は、比較的低くても錆を除去できる場合が多い。
<第二の態様に係る金属構造物表面調整方法>
次に、図2を参照して、本発明の第二の態様に係る金属構造物表面調整方法の概要を説明する。第二の態様に係る金属構造物表面調整方法は、研掃材11を水で浸して形成された湿潤ブラスト12を金属構造物の表面50に噴射する湿潤ブラスト処理S1が行われる。湿潤ブラスト処理S1が行われた後に、金属構造物の表面50に、防錆剤41を噴霧し又は塗布する防錆剤処理S12が行われる。防錆剤処理S12が行われた後に、金属構造物の表面50の水分を乾燥又は除去する乾燥処理S2が行われる。乾燥処理S2が行われた後に、金属構造物の表面50にレーザービームの照射を行うレーザー照射処理S3が行われる。なお、第一湿潤ブラスト処理装置1とレーザー照射装置20は、第一の態様に係る金属構造物の表面調整方法と同様なので説明は省略する。
次に、図8を参照して、第二の態様に係る金属構造物表面調整方法において、防錆剤処理S12に使用される防錆剤噴霧装置40の一例を説明する。防錆剤噴霧装置40は、防錆剤41が貯蔵される防錆剤タンク42と、エンジン部43を備える。防錆剤41を導出する防錆剤管44の一方がエンジン部43に接続され、他方が、作動レバー45を有するコントロール部46に接続されている。コントロール部46には、ノズル47が取り付けられている。作動レバー45を押し込むと、エンジン部43が動作して防錆剤タンク42から防錆剤41が導出され、防錆剤管44を通じてノズル47から防錆剤41が噴霧される。なお、防錆剤噴霧装置40は、エンジン部43を備えない手動ポンプ式であっても良い。
次に、図2を参照して、本発明の第二の態様に係る金属構造物表面調整方法における具体的な方法を説明する。図2に示すように、第二の態様に係る金属構造物表面調整方法は、第一の態様に係る金属構造物表面調整方法に対して、湿潤ブラスト処理S1と乾燥処理S2との間に防錆剤処理S12が行われる。防錆剤処理S12は、湿潤ブラスト処理S1が行われた後に、金属構造物の表面50に対して行われる。図8に示すように、防錆剤噴霧装置40のノズル47が金属構造物の表面50に向けられ、防錆剤41が噴霧される。
次に、防錆剤41を説明する。防錆剤41は、気化性防錆剤41aを使用することが望ましい。気化性防錆剤41aは噴霧又は塗布した後に気化するため特に防錆効果が高いためである。例として次のものが選択される。対象となる金属構造物の材質によって適切な種類が選択される。気化性防錆剤41aの例として以下のものが挙げられる。金属構造物の材質が鉄鋼の場合に選択されるのは、アミン類の亜硝酸塩類、アミン類のカルボン酸塩類、アミン類のクロム酸塩類、カルボン酸のエステル類、及びこれらの混合物である。また、鉄鋼の場合は、気化性の早い安息香酸モノエタノールアミン塩を併用することができる。
金属構造物の材質が銅及び銅合金の場合に選択されるのは、複素環状化合物、チオ尿素類、及びメルカプト基を有するものがある。気化性防錆剤41aは、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。なお、気化性防錆剤41aは、他の種類を選択することができるのはもちろんである。
また、防錆剤41は、金属構造物の表面50の全体に噴霧される。さらに、防錆剤41は、凹部或いは壁部の裏側まで到達するように、一方向のみからではなく複数の方向から噴霧されるとより効果的である。防錆剤処理S12は、気化性防錆剤41aを噴霧する例について説明したが、噴霧する代わりに塗布しても良い。なお、防錆剤41は気化性防錆剤41a以外の種類を選択してもよい。防錆剤41の噴霧又は塗布は、金属構造物の表面50の全体に対してではなく、錆が発生している部分のみに行われてもよい。湿潤ブラスト処理S1と乾燥処理S2は、第一の態様に係る金属構造物の表面調整方法と同様なので説明は省略する。
次に、レーザー照射処理S3について説明する。第一の態様に係る金属構造物表面調整方法に対して、レーザー照射処理S3においてレーザー照射装置20から照射されるレーザービームは、より低出力で足りる。具体的には、後述するように、レーザービームの出力は、100W程度の低出力である。レーザービームの波長は1070nm程度である。なお、レーザービームの照射方法は第一の態様と同様なので説明は省略する。
<第二の態様に係る金属構造物表面調整方法の効果>
以上説明した、第二の態様に係る金属構造物表面調整方法は種々の効果を奏する。第二の態様に係る金属構造物表面調整方法は、湿潤ブラスト処理S1によって金属構造物の表面50にあった塗装膜、錆、及び汚れを取り除き、微細な凹凸を形成することができる。湿潤ブラスト処理S1による効果は、第一の態様に係る金属構造物の表面調整方法と同様である。さらに、湿潤ブラスト処理S1の後に防錆剤処理S12が行われるので、錆の発生を抑止する効果がある。乾燥処理S2は、防錆剤処理S12が行われた後、金属構造物の表面50に残った水分を除去するので錆の発生を抑止できる。また、乾燥処理S2又は防錆剤処理S12を行った後において錆が発生しても、レーザー照射処理S3によって錆を取り除くとともに錆の発生を防止することができる。すなわち、防錆剤処理S12とレーザー照射処理S3とを併用することで、防錆剤41の濃度を従来よりも低くすることができる。
また、レーザー照射処理S3は、錆を取り除くための負荷が低減されるので、防錆剤処理S12が行われない場合に比べて、低出力のレーザービームの照射であっても防錆効果を発揮できる。合わせて、レーザー照射装置20は小型のものを使用できるので、工事現場等での設置及び搬送が容易となる。レーザー照射装置20は低出力であれば、例として数十kgの重量で電源は100Vの交流電源であり、制約の多い足場等の工事現場でも取り回しが楽になる。レーザー照射装置20は、消費電力を低減でき、装置の価格を安くすることができる。
また、レーザー照射処理S3は、レーザービームの特性上、直進する範囲においてのみ作用し、直進性を妨げる隠れた部分にはレーザービームが届かないという欠点がある。これに対して、防錆剤処理S12は、防錆剤41を凹部或いは壁部の裏側まで到達させることができる。よって、防錆剤処理S12は、レーザー照射処理S3の欠点を補うことができる。すなわち、第二の態様に係る金属構造物表面調整方法は、湿潤ブラスト処理S1、防錆剤処理S12、及びレーザー照射処理S3とを併用することにより各処理の課題をお互いに克服できる。防錆剤処理S12とレーザー照射処理S3は共に防錆効果が期待できるので、異なる二つの方法を合わせることにより、より高い防錆効果を発揮できる。
また、二つの方法を併合するため、防錆剤処理S12とレーザー照射処理S3のそれぞれが発揮すべき防錆効果のレベルを下げることができる。すなわち、防錆剤処理S12に要する気化性防錆剤41aの費用と、レーザー照射処理S3に要する出力(電力)費用及び設備費用とを低減させることができる。よって、金属構造物の表面50は、湿潤ブラスト処理S1によって1種ケレンが実現され、レーザー照射処理S3との相乗効果によって清浄される。さらに、防錆剤処理S12との相乗効果によって錆を取り除く効果を有する金属構造物表面調整方法を提供することができる。気化性防錆剤41aの濃度に対して、レーザー出力を変化させたときの錆の残存レベルについては、図9を参照して後述する。
また、第一の態様に係る金属構造物の表面調整方法と同様であるが、以下の効果を奏する。湿潤ブラスト処理S1が行われた後に、金属構造物の表面50に錆を発生させる要因となる塩分等の物質が付着する場合がある。しかしながら、レーザー照射処理S3は、湿潤ブラスト処理S1の後に金属構造物の表面50に付着した塩分等の物質を清浄する効果がある。よって、第二の態様に係る金属構造物の表面調整方法は、レーザー照射処理S3が金属構造物の表面50に錆が発生する要因を取り除くことができるので、後工程である塗装等が行われるとき、或いは塗装等の作業後において錆が発生することを防止できる。
<防錆剤処理における第一の実施形態の説明と効果>
次に、本発明の第二の態様に係る金属構造物表面調整方法において、防錆剤処理S12における第一の実施形態について説明する。図3を参照して、湿潤ブラスト処理S1後の経過時間と発錆状況との関係を説明する。図3(a)は、湿潤ブラスト処理S1を行った後、乾燥処理S2を行わない状態で、経過時間に応じて発生する錆の程度を目視した実験の結果と、発明者等が過去に経験的に認識している錆の発生状況とを加味してまとめたものである。図3(b)は、発錆状況の各レベルにおける錆の発生、残存状況の内容を示した図である。レベルは、A〜Fの6段階に分けて示されている。レベルはAが最も錆が少ない状態であり、Fが最も錆が多い状態である。なお、図3(b)に示された各レベルは、後述する図4、及び図9においても使用する。
図3に示した結果を基に、湿潤ブラスト処理S1後の何分以内に防錆剤処理S12が行われるかが決定される。湿潤ブラスト処理S1後の経過時間が10分未満であれば発錆は目視できないレベルAか、或いは極僅かに斑な薄い黄色部(錆)を目視できるレベルBである。湿潤ブラスト処理S1後の経過時間が20分未満であっても、一部に斑な薄い黄色部(錆)を目視できるレベルCである。20分以上になると、発錆状況は一部に斑な黄色部(錆)を目視できるレベルDでありから斑な黄色部(錆)を目視できるレベルEであり、30分以上になると広範囲に黄色部を目視できるレベルFである。これにより、防錆剤処理S12は、発錆状況のレベルをA〜Bにするために、湿潤ブラスト処理S1が行なわれた後の10分以内に行われる。
なお、図3をまとめるために行った、湿潤ブラスト処理S1後の経過時間と発錆状況との関係を求めた実験は、屋外で行ったものであり、特定の環境条件にコントロールされた状態のものではない。特に、積極的な乾燥効果を目的として、風通しを良くして空気の流れを生じさせた条件で行ったものではない。つまり、環境条件である温度、湿度等が異なれば結果が異なったものとなる可能性がある。ただし、発明者等は、湿潤ブラスト処理S1が行われた後の金属構造物の表面50は、温度又は湿度が変化しても極端な錆が発生するのではなく、斑な黄色部が認識できる層が薄い錆が発生する程度であることを経験的に認識している。よって、通常屋外で作業を行う環境下においては、環境条件に差が生じたとしても結果に大きな差は無いと考えられる。
また、防錆剤41として気化性防錆剤41aを使用した場合、仮に金属構造物の表面50が乾燥した状態で防錆剤処理S12が行われると、噴霧された気化性防錆剤41aが斑に付着し、気化性防錆剤41aの付着が不十分な部位が残ってしまう。気化性防錆剤41aは、金属構造物の表面50がまだ濡れた状態であれば粒状に着水付着した後に、水分中で拡散されて均一に分布する。つまり、防錆剤処理S12は、金属構造物の表面50の水分が残存した状態で行った方が良いので、湿潤ブラスト処理S1が行なわれた後の10分以内に行われるのが好ましい。よって、防錆剤処理S12は、錆が発生しないか或いは極僅かに錆が発生した状態で行われることと、気化性防錆剤41aが金属構造物の表面50に均一に分布するので、錆の発生を抑止する効果がある。
<防錆剤処理における第二の実施形態の説明と効果>
次に、本発明の第二の態様に係る金属構造物表面調整方法において、防錆剤処理S12における第二の実施形態について説明する。図7を参照して、第二の実施形態の金属構造物表面調整方法で使用される第二湿潤ブラスト処理装置30を説明する。なお、図5と同様の要素及び機能を有する部材は同様の符号を付し、説明を省略する。
図7に示すように、第二湿潤ブラスト処理装置30は、図5に示す第一湿潤ブラスト処理装置1に対して防錆剤処理装置31が付加されている。防錆剤処理装置31は、コンプレッサーとタンクを備えた防錆剤タンク32に防錆剤41が蓄えられている。配管33は一端が防錆剤タンク32に接続され、他端がブラストノズル7に接続されている。防錆剤41は、湿潤ブラスト12と共にブラストノズル7から噴射される。第二湿潤ブラスト処理装置30は、防錆剤処理S12と湿潤ブラスト処理S1とが同時に行われる。
この場合、湿潤ブラスト処理S1と防錆剤処理S12との間に時間差が無いので、金属構造物の表面50に錆が発生する前に防錆剤処理S12が行われる。よって、防錆剤処理S12における第二の実施形態は、より防錆効果が高い。
<第二の態様に係る防錆剤の詳細説明と効果>
次に、本発明の第二の態様に係る金属構造物表面調整方法において、防錆剤処理S12で使用される防錆剤41の濃度について詳細に説明する。防錆剤41は、気化性防錆剤41aであり、気化性防錆剤41aの濃度は、1重量%から4重量%の範囲内である。以下説明する。
図4を参照して気化性防錆剤41aの濃度と発錆状況との関係を説明する。図4は、湿潤ブラスト処理S1の後に行われる防錆剤処理S12において、気化性防錆剤41aの濃度を変化させたとき、金属構造物の表面50の錆の発生状況がどう変化するかを目視で調べた実験結果である。気化性防錆剤41aは、濃度が増すに従って発錆状況レベルがAに近づいていく。気化性防錆剤41aは濃度が0、すなわち使用されないとき、金属構造物の表面50は、斑な黄色部(錆)が目視できるレベルEである。湿潤ブラスト処理S1が行われた後では、広範囲に黄色部(錆)が目視できるレベルFになることは希であり、錆の発生は一定の範囲に留まることが多い。気化性防錆剤41aの濃度が1重量%のときには、一部に斑な黄色部を目視できるレベルDである。2重量%〜3重量%の範囲では、一部に斑な黄色部(錆)が目視できるレベルCであり、4重量%では極僅かに薄い黄色部(錆)が目視できるレベルBである。5重量%では、錆を目視できないレベルAである。つまり、気化性防錆剤41aは濃度が高いほど防錆効果が高い。
しかしながら、気化性防錆剤41aは高価なため、できるだけ消費量を抑えるため濃度を低くしたい。気化性防錆剤41aは、防錆剤処理S12のみで防錆効果を発揮させるためには濃度が5重量%以上必要である。ただし、第二の態様に係る金属構造物の表面調整方法は、防錆剤処理S12とレーザー照射処理S3とが併用されるので、防錆剤処理S12で発揮すべき防錆効果のレベルを下げることができる。
また、気化性防錆剤41aの濃度は、レーザー照射処理S3によって行われる錆取り作業の負荷が過度にならない程度に選定されれば良い。図4に示すように、気化性防錆剤41aの濃度が2.5%を中心にして1重量%から4重量%の範囲であれば、錆の発生を抑止する効果が見られる。気化性防錆剤41aの濃度が1重量%であっても、錆の発生は一部に斑な薄い黄色部(錆)を目視できるレベルDであって、極端な錆は発生していない。気化性防錆剤41aの濃度をできるだけ低くするという趣旨から、濃度の上限は4重量%とし、1重量%から4重量%の範囲内が適当である。
なお、図4に示した気化性防錆剤41aの濃度と発錆状況との関係を求めた実験は、図3に示したものと同様に、特定の環境条件にコントロールされたものではなく、屋外で行ったものである。よって、環境条件である温度、湿度等が異なれば結果が異なったものとなる可能性はある。ただし、図3における説明と同様に、発明者等は、湿潤ブラスト処理S1が行われた後の金属構造物の表面50は、極端な錆が発生するのではなく斑な黄色部が認識できる薄い錆が発生する程度であることを経験的に認識している。よって、通常屋外で作業を行う環境下においては、環境条件に差が生じたとしても結果に大きな差は無いと考えられる。
図9を参照して、気化性防錆剤41aの濃度(重量%)とレーザー照射処理S3におけるレーザー出力(W)との関係から錆の残存状況を確認する。図9は、防錆剤処理S12における気化性防錆剤41aの濃度(重量%)を0から1重量%刻みで変化させ、レーザー照射処理S3のレーザー出力を変化させたときの錆の残存状況を目視判断した実験結果である。防錆剤処理S12が行われた後、レーザー照射処理S3においてレーザー出力を変化させたときに、錆の残存状況が相対的にどう変化するかをまとめた結果である。実験の条件は、レーザー照射処理S3の出力以外のパラメータは一定である。具体的な数値は省略するが、実験におけるレーザー照射処理S3の出力時間は、想定される現場の所定の作業面積において、通常許容される作業時間に設定したものである。
図9を参照して錆の残存状況を見ると、気化性防錆剤41aの濃度が高いほど錆の残存が少なくなり、レーザー照射処理S3の出力が高いほど錆の残存が少なくなる。また、気化性防錆剤41aの濃度と錆の残存状況との関係を見たとき、錆の残存は、同じ気化性防錆剤41aの濃度に対してレーザー照射処理S3の出力が高くなるに従って減少していることがわかる。
図9を参照して気化性防錆剤41aの濃度とレーザー照射処理S3の出力を設定する場合、錆の残存レベルが錆を目視できないレベルAとなる組合せが望ましい。気化性防錆剤41aの濃度が1重量%から4重量%の場合、レーザー照射処理S3のレーザー出力が100Wであれば、錆を目視できないレベルAとなる。レーザー出力が50Wの場合、気化性防錆剤41aの濃度が1重量%から4重量%の範囲では錆の残存がレベルA〜レベルCの範囲である。また、レーザー出力が500Wであれば、気化性防錆剤41aの濃度にかかわらず錆の残存はすべてレベルAであるが、レーザー照射装置20が大型化し、コストが高くなる。よって、気化性防錆剤41aの濃度は2.5重量%を中心に設定され、レーザー照射処理S3の出力は100Wに設定される。
この場合、気化性防錆剤41aの濃度は従来よりも低濃度に設定できるので、気化性防錆剤41aの消費量を低減することができる。また、レーザー照射処理S3は、防錆剤処理S12が行われない場合に比べて低出力のレーザー照射で足りる。よって、装置のコスト削減及び省エネの大きな効果を奏しながら、金属構造物の表面50は1種ケレンが実現され、清浄されるとともに、防錆効果を有することができる。
なお、必ずしも気化性防錆剤41aの濃度を1重量%から4重量%とし、レーザー照射処理S3の出力を100Wに固定する必要は無く、他の組み合わせも可能である。例えば、レーザー照射処理S3の出力時間は、想定される現場の所定の作業面積において、通常許容される作業時間で比較を行ったが、同じレーザー出力であっても出力時間を長くすれば錆の残存を少なくすることができる場合がある。すなわち、レーザー出力は、レーザー照射時間を長くすれば100W以下の出力を採用することができる場合がある。気化性防錆剤41aの濃度(重量%)とレーザー出力(W)、及びレーザー照射時間は、それぞれの条件を適宜変更して組み合わせることで、他の設定値を選択することが可能である。また、図9に示した、気化性防錆剤41aの濃度に対してレーザー出力を変化させたときの関係で錆の残存レベルを調べた実験は、図3及び図4と同様に、特定の環境条件にコントロールされたものではなく、屋外で行ったものである。
<変形例>
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、第二の態様に係る金属構造物表面調整方法では、気化性防錆剤41aの濃度は1重量%から4重量%の範囲が適切であると説明したが、この範囲に限定されるものではない。気化性防錆剤41aの濃度は5重量%以上の濃度であってもよい。気化性防錆剤41aの濃度は、錆の発生状況及びレーザー照射処理S3にて選択されるレーザービームの出力との関係で調整が可能である。例えば、図9を参照して、気化性防錆剤41aの濃度が4重量%以上であればレーザー照射処理S3のレーザー出力を低出力(例えば50W未満)にしてもよい。また、レーザー照射処理S3の出力を100W以上にすることで、錆の残存レベルをマクロのレベルでより高めることができる。
また、第二の態様に係る金属構造物表面調整方法において、防錆剤処理S12における第一の実施形態では、湿潤ブラスト処理S1が行われた後10分以内に防錆剤処理S12が行われると説明したが、この範囲に限らない。防錆剤処理S12は、湿潤ブラスト処理S1の後に金属構造物の表面50に顕著な錆の発生が認められない場合は、10分を超えた時間の経過後に行われても良い。
また、第二の態様に係る金属構造物表面調整方法において、防錆剤処理S12における第二の実施形態では、第二湿潤ブラスト処理装置30を使用して湿潤ブラスト処理S1と防錆剤処理S12とが同時に行われる例について説明したが、これに限らない。例えば、第二湿潤ブラスト処理装置30のように、湿潤ブラスト処理S1の機能と防錆剤処理S12の機能が一体となった装置を使用しなくてもよい。例えば、それぞれが単独の機能を有する第一湿潤ブラスト処理装置1と防錆剤噴霧装置40とが使用され、湿潤ブラスト処理S1と防錆剤処理S12とが同時に行われてもよい。
11 研掃材
12 湿潤ブラスト
41 防錆剤
41a 気化性防錆剤
50 金属構造物の表面
S1 湿潤ブラスト処理
S2 乾燥処理
S3 レーザー照射処理
S12 防錆剤処理

Claims (5)

  1. 研掃材を水で浸して形成された湿潤ブラストを金属構造物の表面に噴射する湿潤ブラスト処理と、
    前記湿潤ブラスト処理が行われた後に、前記金属構造物の表面の水分を乾燥又は除去する乾燥処理と、
    前記乾燥処理が行われた後に、前記金属構造物の表面にレーザービームの照射を行うレーザー照射処理と
    を有する金属構造物表面調整方法。
  2. 研掃材を水で浸して形成された湿潤ブラストを金属構造物の表面に噴射する湿潤ブラスト処理と、
    前記金属構造物の表面に、防錆剤を噴霧し又は塗布する防錆剤処理と、
    前記防錆剤処理が行われた後に、前記金属構造物の表面の水分を乾燥又は除去する乾燥処理と、
    前記乾燥処理が行われた後に、前記金属構造物の表面にレーザービームの照射を行うレーザー照射処理と
    を有する金属構造物表面調整方法。
  3. 前記防錆剤処理は、前記湿潤ブラスト処理が行なわれた後の10分以内に行われる、請求項2に記載の金属構造物表面調整方法。
  4. 前記防錆剤処理は、前記湿潤ブラスト処理と同時に行われる、請求項2に記載の金属構造物表面調整方法。
  5. 前記防錆剤は気化性防錆剤であり、前記気化性防錆剤の濃度は、1重量%から4重量%の範囲内である請求項2から4のいずれかに記載の金属構造物表面調整方法。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN112620253A (zh) * 2020-11-30 2021-04-09 杭州中车数字科技有限公司 一种除锈设备

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