JP7231252B2 - ブラスト処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、既設の鋼構造物の防食被膜の補修作業時のブラスト処理で使用される植物系研削材を用いたブラスト処理方法に関する。
従来、既設の道路や鉄道などの橋梁の主要部(特に主桁部分)である鋼構造物として、強度、加工性、経済性に優れるH型、I型及び箱型の鋼材が好適に用いられている。このような鋼構造物は、表面(露出面)に防食(防錆も含む)のための塗装や金属溶射により防食被膜が施される。特に、海上などの過酷な腐食環境にある鋼構造物に対しては、耐用年数の長い防食被膜が塗布される。
つまり、鋼構造物の表面に形成される防食被膜は、鋼構造物の設置場所や要求される耐久性能に応じて行われるものである。塗装や金属溶射により形成される防食被膜は、塗装の場合は、種類の異なる樹脂製(エポキシ樹脂、フッ素樹脂等)の塗料を、鋼構造物の表面に重ね塗りすることにより、多層(例えば、5層)の防食被膜が形成される。また、金属溶射の場合は、金属(亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、およびそれらの合金等)を加熱により溶融して、鋼構造物の表面に金属の溶射皮膜を形成し、この溶射皮膜の上に保護用の塗料を塗装(封孔処理)して溶射被膜を含む多層の防食被膜が形成される。また、溶射皮膜の上に種類の異なる樹脂製の塗料を重ね塗りして多層の防食被膜を形成する場合もある。
特に、高度経済成長期に建設された高速道路等の橋梁の鋼構造物は、概ね50年以上経過しているため防食被膜の経年劣化による腐食が進行しているため、腐食した防食被膜の補修作業を早急に行う必要がある。このような橋梁の鋼構造物は、70万橋梁以上が補修対象となっており、大規模な補修作業が急務となっている。
防食被膜の補修作業では、鋼構造物の表面に形成されている多層の防食被膜を全て除去して素地調整し、再塗装や再金属溶射をすることが一般的である。このため、鋼構造物の鋼材表面の腐食部位に対して素地調整処理の一つの手法であるブラスト処理を行う。このブラスト処理は、ブラスト噴出用ホースから所定圧力(例えば、0.7MPa)で噴出される研削材により、鋼構造物の全面の腐食部位を含む防食被膜を全て除去する素地調整処理である。このような防食被膜に対するブラスト処理では、研削材として、金属製研削材(スティールグリッド、スティールショット、カットワイヤ等)や非金属研削材(天然鉱物、造鉱物(スラグ)、熔融アルミナ等)の研削能力の高い研削材が好適に用いられている。
しかしながら、鋼構造物の表面に形成されている多層の防食被膜の全てが完全に経年劣化しているケースは少なく健全な塗膜が残っている場合も多い。また、腐食部位によっては、多層の防食被膜の層間剥離などにより、下地の防食被膜の防食性能は担保されているが、層間に水分や塩分その他の要因により被膜表面や中塗り層からの被膜の欠落がよく見られる。しかしながら、従来の補修作業におけるブラスト処理では、防食被膜を全て除去するため健全な被膜も除去されてしまう。
このため、多層の防食被膜のうち、防食性能は担保されている健全な被膜があればそれを残しつつ、健全でない防食被膜や錆だけを除去し、補修作業の範囲の削減や再塗装又は再金属溶射の回数を減少することができる効率の良い補修作業が望まれている。そこで、従来の金属製研削材や非金属研削材などの研削能力の高い研削材ではなく、研削能力の低い研削材、すなわち、植物の種や芯等を粉砕した粒子で構成された植物系研削材を使用して、健全な防食被膜を過剰に除去することが無いブラスト処理が考えられる。
植物系研削材を使用したブラスト処理としては、廃液晶パネル等の基板に使用されている透明電極に含まれる稀少金属(酸化インジウム系化合物)を、植物系ブラスト材(植物系研削材)を使用したサンドブラスト法により剥離処理して得られた粉体から回収し、回収した酸化インジウム系化合物からレアメタルの一種であるインジウムを効率よく回収してリサイクルするための方法が開示されている(特許文献1参照)。
特開2012-223729
特許文献1に記載の技術は、あくまで、ガラス基板の表面にスパッタすることにより形成された酸化インジウム系化合物を含む透明導電膜を、研削能力の低い植物系研削材でブラスト処理をすることによりガラス基盤から剥離し、レアメタルの一種であるインジウムを効率よく回収してリサイクルするためのものである。つまり、植物系研削材でブラスト処理をすることにより、透明導電膜に化学変化を起こすことなく処理することができる。
しかしながら、ガラス基板の表面に形成された透明導電膜をガラス基板から剥離するためには、研削能力の低い植物系研削材を使用してブラスト処理しても十分な剥離効果を得ることはできるが、耐用年数の長い多層の防食被膜の腐食部位に対して、十分な剥離効果を得ることができるかは不明であり、十分な素地調整が行えるか担保できない。
本発明は、上記課題を解決するために、多層の防食被膜のうち健全でない被膜や錆のみを除去し、補修作業の範囲の削減や再塗装や再金属溶射の回数を減らした効率の良い補修作業において、素地調整を担保することができるブラスト処理で使用可能な植物系研削材を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下の技術を提供する。
本発明は、鋼構造物の表面に形成された塗装や金属溶射による防食被膜の補修作業時に、局部的に発生した防食被膜の腐食部位、錆、および層間剥離を除去するための素地調整処理として行われるブラスト処理方法であって、防食被膜の腐食部位、錆、および層間剥離を研削する研削材を所定範囲の粒度に形成された天然植物系素材からなる植物系研削材を主成分として腐食部位に占める錆面積の割合に応じて配合研削材としての金属製研削材又は非金属研削材を所定の比率で配合して形成し、腐食部位に占める錆面積の割合が1%未満の場合、前記研削材に占める金属製研削材又は非金属研削材の割合を第1の割合とし、腐食部位に占める錆面積の割合が1%以上5%未満の場合、前記研削材に占める金属製研削材又は非金属研削材の割合を前記第1の割合より大きい第2の割合とし、腐食部位に占める錆面積の割合が5%以上10%未満の場合、前記研削材に占める金属製研削材又は非金属研削材の割合を前記第2の割合より大きい第3の割合とした前記研削材を用いてブラスト処理することを特徴とするブラスト処理方法とした。
また、前記天然植物系素材からなる研削材の吐出圧力は、多層の防食被膜の劣化状態に応じて通常のブラスト処理で吐出される吐出圧力よりも高圧にすることを特徴とする。
本発明は、鋼構造物の表面に形成された塗装や金属溶射による防食被膜の補修作業時に、局部的に発生した防食被膜の腐食部位、錆、および層間剥離を除去するための素地調整処理として行われるブラスト処理方法であって、劣化した防食被膜のみを研削するために、所定範囲の粒径に形成された天然植物系素材からなる粒体を研削材の主成分とすることを特徴とするブラスト処理方法である。
これにより、従来の金属製研削材や非金属研削材などの研削能力の高い研削材を使用したブラスト処理に対して、本発明の植物系研削材を使用したブラスト処理方法では、天然植物系素材からなる植物系研削材を使用してブラスト処理を行うことにより、錆落とし時の粉塵の発生を可及的に低く抑えることできる。つまり、従来の有害物質を含む劣化した防食被膜や錆び落としにかかる大量の粉塵の飛散対策のため、作業者が十分な機能を有する防塵マスク等の装着を必要とせず、作業者の安全を担保するとともに、作業時の作業者の負担を軽減することができる。
また、天然植物系素材は、胡桃の殻、杏や桃の種、トウモロコシの穂芯である。この天然植物系素材は、通常は処分(破棄)される素材である。このように、天然植物系素材をブラスト処理における研削材として有効に活用することで、人体に優しく安価であるばかりか、例えば、この天然植物系素材からなる植物系研削材がブラスト処理の現場から外部に漏れたとしても、自然環境の保全を図ることができる。
また、局部的に発生した防食被膜の錆びの発生状況に応じて、金属製研削材又は非金属研削材を所定の配合比率(例えば、重量比)で前記天然植物系素材に配合する。具体的には、鋼構造物の所定範囲の劣化した防食被膜に発生している錆の発生面積に応じて、主成分である植物系研削材に、金属製研削材又は非金属研削材を所定の比率で配合する。このように、主成分である植物系研削材と、植物系研削材よりも相対的に研削能力の高い研削材(金属製研削材又は非金属研削材)とを所定の比率で配合することにより、植物系研削材だけでは十分な研削を行えない金属表面の錆びを完全に研削できるブラスト処理に適した植物系研削材を構成することができる。
なお、本発明に用いられる胡桃の殻、杏や桃の種、トウモロコシの穂芯等の天然植物系素材で構成される植物系研削材の粒径の所定範囲は、例えば、4番~80番(♯4~♯80、5.25mm~0.22mm)の範囲のものが好適に用いられる。つまり、粒径の大きい4番(5.24mm)から粒径の小さい80番(0.22mm)の中から、劣化した防食被膜の劣化状態に応じた粒径の天然植物系素材が植物系研削材として用いられる。具体的には、防食被膜の腐食部位に所定範囲(例えば、10%)未満の錆びが発生している場合は、硬度が高く粒径の大きい天然植物系素材により植物系研削材を構成する。基本的に、ブラスト処理においては、所定圧力(例えば、0.7MPa)で劣化した防食被膜に研削材が吐出されるので、粒径を大きくすることにより防食被膜の腐食部位に発生した錆の研削効果を高くすることができる。なお、植物系研削材としては、防食被膜の劣化状態に応じて、単一種類の同じ粒径の天然植物系素材により植物系研削材を構成してもよいし、単一種類の異なる粒径の天然植物系素材により植物系研削材を構成してもよい。また、異なる天然植物系素材及び異なる粒径の天然植物系素材を配合して植物系研削材を構成することもできる。
本発明の植物系研削材は、鋼構造物の表面の防食被膜が部分的に軽度(例えば、多層の防食被膜のうち表層のみが腐食、又は所定範囲(例えば、10%)未満の錆びの発生等)な劣化状態である場合に好適に用いられるものである。つまり、鋼構造物の表面に形成されている多層の防食被膜の全てが完全に経年劣化している場合や、防食被膜に占める錆の発生面積が所定範囲(例えば、10%)以上の場合は、従来の金属製研削材(スティールグリッド、スティールショット、カットワイヤ等)や非金属研削材(天然鉱物、造鉱物(スラグ)、熔融アルミナ等)の研削能力の高い研削材を用いて、鋼構造物の表面に形成されている多層の防食被膜を全て除去する素地調整を行った後、補修作業(再塗装や再金属溶射)を行うことが望ましい。
つまり、本発明の植物系研削材は、鋼構造物の多層の防食被膜のうち、防食性能は担保されている健全な防食被膜が残っている場合に、この健全な防食被膜を残しつつ、健全でない防食被膜や錆のみを部分的に除去することで、補修作業の範囲の削減や再塗装や再金属溶射の回数の減少を実現するためのものである。
また、本発明の植物系研削材をブラスト処理の研削材として使用する場合は、通常のブラスト処理で吐出される研削材の吐出圧力よりも高圧にすることができる。例えば、通常のブラスト処理における研削材の吐出圧力は0.7MPaであるが、腐食部位の状態によっては1MPaまで研削材の吐出圧力を高圧にするのである。従来の金属製研削材や非金属研削材などの研削能力の高い研削材を使用したブラスト処理では、研削材の吐出圧力を高圧にすると有害物質を含む旧塗装や錆び落としにかかる粉塵の飛散量も吐出圧力に応じて増大する。これに対して、植物系研削材をブラスト処理の研削材として使用した場合は、研削材の吐出圧力を高圧にしても、従来の金属製研削材や非金属研削材よりも粉塵の飛散量の増大を相対的に低く抑えることができるため、研削能力だけを向上することができる。
上述したように、研削能力の低い植物系研削材を使用してブラスト処理を行っても、鋼構造物の多層の防食被膜の局部的な腐食部位の補修作業において、健全な防食被膜を残しつつ、健全でない防食被膜や錆に対して十分な剥離効果を得ることができ、素地調整を担保するとともに、補修作業の範囲の削減や再塗装や再金属溶射の回数の減少をすることができる。
本実施形態に係る植物系研削材として用いられる天然植物系素材の一例を説明する図である。 本実施形態に係る植物系研削材に配合される配合研削材の配合比率を説明する図である。 本実施形態に係る植物系研削材を用いたブラスト処理の補修工法を示すフローチャートである。 本実施形態に係る鋼構造物の表面の腐食状態とブラスト処理後の状態を説明する斜視図である。 本実施形態に係る鋼構造物の表面のブラスト処理後の防食処理を説明する断面図である。
本発明は、鋼構造物の表面に形成された塗装や金属溶射による防食被膜の補修作業時に、劣化した防食被膜の素地調整処理として行われるブラスト処理に用いる研削材であって、劣化した防食被膜のみを研削するために、所定範囲の粒径に形成された天然植物系素材からなる粒体を研削材の主成分とすることを特徴とする植物系研削材に関するものである。
以下、図1~図5を参照して、本発明における植物系研削材を用いた鋼構造物の劣化した防食被膜の補修作業における素地調整処理としてのブラスト処理で研削材として使用される植物系研削材及び補修作業の実施形態の一例を説明する。図1は、本実施形態に係る植物系研削材として用いられる天然植物系素材の一例を説明する図である。図2は、本実施形態に係る植物系研削材に配合される配合研削材の配合比率を説明する図である。図3は、本実施形態に係る植物系研削材を用いたブラスト処理の補修工法を示すフローチャートである。図4は、本実施形態に係る鋼構造物の表面の腐食状態とブラスト処理後の状態を説明する斜視図である。図5は、本実施形態に係る鋼構造物の表面のブラスト処理後の防食処理を説明する断面図である。
以下、上部に鉄道や道路が設けられた橋梁の主桁の主要構成部材である鋼構造物(I型、H型や箱型の鋼材等)の表面に塗布された耐用年数の長い多層の防食被膜に対する補修作業を行う場合を一例として説明する。なお、以下の説明では、耐用年数の長い防食被膜として種類の異なる樹脂製の塗料により複数の下塗(例えば、3層)、中塗(1層)、上塗(1層)との合計5回の重ね塗りが行われて形成された5層の防食被膜が腐食したときの腐食部位の補修作業を行うことを想定して説明する。
図1に示すように、本実施形態において植物系研削材として好適に用いられる天然植物系素材は、粒状にあらかじめ加工された胡桃殻、トウモロコシ穂芯、杏種、桃種の4種類である。植物系研削材として加工された胡桃殻は、比重1.28、硬度(モース硬度)2.5~3.0、水分の含有量8.7%、脂肪(油脂)分の含有量0.5(±0.1)、粒径(大きさ)♯4(4番)~♯80(80番)、5.25mm~0.22mmのものが好適に用いられる。
トウモロコシ穂芯は、比重1.15、硬度(モース硬度)2.0~2.5、水分の含有量5.4%、(油脂)分の含有量0.3(±0.1)、粒径♯4(4番)~♯80(80番)、5.25mm~0.22mmに加工されたものが好適に植物系研削材として用いられる。杏種は、比重1.40、硬度(モース硬度)3.0~3.5、水分の含有量7.7%、(油脂)分の含有量0.2(±0.1)、粒径♯24(24番)~♯60(60番)、0.98mm~0.30mmに加工されたものが好適に植物系研削材として用いられる。桃種は、比重1.41、硬度(モース硬度)3.0~3.5、水分の含有量7.2%、(油脂)分の含有量0.1(±0.05)、粒径♯8(8番)~♯60(60番)、3.48mm~0.22mmに加工されたものが好適に植物系研削材として用いられる。
上述したように、本実施形態においては、比重、硬度、水分の含有量、(油脂)分の含有量、粒径の異なる複数(4種)の天然植物系素材(粒状にあらかじめ加工された胡桃殻、トウモロコシ穂芯、杏種、桃種)を素地調整処理の一つのブラスト処理の植物系研削材として用いる。そして、鋼構造物の防食被膜の腐食状態に応じて、4種の天然植物系素材のなかから最適なものを選択して植物系研削材として使用する。具体的には、劣化した防食被膜に所定範囲(例えば、10%)未満の錆びが発生している場合は、相対的に硬度が高く粒径の大きい天然植物系素材により植物系研削材を構成する。これにより、ブラスト処理においては、所定圧力(例えば、0.7MPa)で劣化した防食被膜に粒径が大きく硬度の高い植物系研削材が吐出されるので、劣化した防食被膜や錆の研削効果を高くすることができる。
また、防食被膜の劣化状態が、例えば、防食被膜の劣化範囲の面積が小さく、多層の防食被膜のうちの一層の表層(上塗)及び同じく一層中層(中塗)のみが腐食劣化していた場合は、相対的に硬度が低く粒径の小さい天然植物系素材により植物系研削材を構成する。この場合は、腐食部位を研削するとともに、腐食部位の研磨や艶出し効果を高くすることができる。また、水分や脂肪分の含有量の小さい天然植物系素材により植物系研削材を構成することで、腐食部位の乾燥や脱脂の効果を高くすることもできる。本実施形態においては、基本的に植物系研削材は粒径が同じ1種類の天然植物系素材や粒径の異なる1種類の天然植物系素材で構成されるが、複数種類の粒径が同じ又は粒径の異なる天然植物系素材を配合して使用することもできる。なお、図1に示す4種類の植物系研削材は、あくまで一例であり、他の好適な天然植物系素材があれば植物系研削材として用いてもよい。
また、鋼構造物の防食被膜の腐食部位の劣化状態に応じて、金属製研削材(スティールグリッド、スティールショット、カットワイヤ等)や非金属研削材(天然鉱物、造鉱物(スラグ)、熔融アルミナ等)の相対的に研削能力の高い研削材を配合研削材として、所定の比率(例えば、重量比)で植物系研削材に配合することができる。具体的には、図2に示すように、鋼構造物の所定範囲の防食被膜の腐食部位に発生している錆の面積に応じて、主成分である植物系研削材に、配合研削材である金属製研削材又は非金属研削材を所定の比率で配合するのである。
一例として、図2に示すように、腐食部位に発生している錆の面積が0%(錆が無い)の場合は、配合研削材は配合せず、100%植物系研削材のみとする。腐食部位に発生している錆の面積が1%未満の場合は、2%の配合研削材を植物系研削材に配合する。つまり、植物系研削材と配合研削材の配合比率は98:2となる。腐食部位に発生している錆の面積が1%以上~5%未満の場合は、5%の配合研削材を植物系研削材に配合する。つまり、植物系研削材と配合研削材の配合比率は95:5となる。腐食部位に発生している錆の面積が5%以上~10%未満の場合は、10%の配合研削材を植物系研削材に配合する。つまり、植物系研削材と配合研削材の配合比率は9:10となる。
このように、本実施形態の研削材の主成分である植物系研削材に、植物系研削材よりも相対的に研削能力の高い研削材(金属製研削材又は非金属研削材)を所定の比率で配合することにより、植物系研削材だけでは十分な研削を行えない腐食部位に発生した錆びを完全に研削できる植物系研削材を構成することができる。
以下、図3~図5を参照して、本実施形態における鋼構造物に発生した防食被膜に対する補修作業の工程の一例を説明する。なお、橋梁の主桁等の主要構成部材である鋼構造物(I型、H型や箱型の鋼材等)Hの表面Haには、耐用年数の長い防食被膜として、樹脂製(エポキシ樹脂、フッ素樹脂等)の異なる塗料による5層の防食被膜が形成されており、この5層の塗膜で形成された防食被膜が腐食した場合の補修作業を一例として説明する。
この5層の防食被膜は、図5に示すように、鋼構造物Hの表面Haから順に、3層の第一下塗塗膜CF1、第二下塗塗膜CF2、第三下塗塗膜CF3、1層の中塗塗膜CF4、1層の上塗塗膜CF5の順で形成されている。第一下塗塗膜CF1としては、有機ジンクリッチペイントが好適に用いられ、第二下塗塗膜CF2及び第三下塗塗膜CF3としては、弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料が好適に用いられる。1層の中塗塗膜CF4及び上塗塗膜CF5としては、弱溶剤形フッ素樹脂塗料が好適に用いられる。
また、各塗膜の膜厚は、第一下塗塗膜CF1の膜厚H1は75μm、第二下塗塗膜CF2の膜厚H2及び第三下塗塗膜CF3の膜厚H3は60μm、中塗塗膜CF4の膜厚H4は30μm、上塗塗膜CF5の膜厚H5は25μmである。なお、防食被膜に用いられる樹脂製の塗料の種類や層の数、及び、塗膜の膜厚は、あくまで一例でありこれに限定されるものではなく、鋼構造物Hの設置環境に応じたものであればよい。
図3に示すように、本実施形態における補修作業の工程では、まず、作業者は鋼構造物Hの表面Haに発生した防食被膜の腐食部位F(図4(a)参照)に応じた植物性研削材として使用する天然植物系素材(胡桃殻、トウモロコシ穂芯、杏種、桃種)の種類及び粒径を選択する(ステップS10)。具体的には、防食被膜の腐食部位Fに健全な塗膜を残しつつ、所定範囲(例えば、10%)未満の錆びが発生している場合は、硬度が高く粒径の大きい天然植物系素材により植物系研削材を構成する。また、防食被膜の腐食部位Fに錆等が発生しておらず、なおかつ、上塗塗膜CF5又は中塗塗膜CF4の表層の一部のみが劣化し、三層の第一下塗塗膜CF1、第二下塗塗膜CF2及び第三下塗塗膜CF3等は健全な状態を保っていた場合は、硬度が低く粒径の小さい天然植物系素材により植物系研削材を構成する。つまり、防食被膜における腐食部位Fの腐食(つまり、剥離)度合いや錆の発生状態等を考慮して最適な硬度や粒径の天然植物系素材を決定する。
次に、鋼構造物Hの表面Haに発生した防食被膜の腐食部位Fに発生した、錆面積Rに応じて、植物系研削材に配合する配合研削材の比率を決定する(ステップS12)。つまり、図4(a)に示す用に、腐食部位Fに占める錆面積Rに応じて、所定の比率(図2参照)で、主成分である植物系研削材に配合研削材である金属製研削材又は非金属研削材を配合する。図4(a)の場合は、腐食部位Fに発生した略錆面積Rが5%と判断され、植物系研削材に5%の配合研削材が配合される。
そして、上述したステップS10及びステップS12で決定された植物系研削材を主成分とする研削材を用いて、腐食部位Fの素地調整処理としてブラスト処理を行う(ステップS13)。これにより、図4(b)に示すように、腐食部位Fの剥離した塗膜や錆が研削されて除去される。一般に、植物系研削材は研磨・つや出し効果に優れ、腐食部位Fの油分や水分を吸収する効果が高いため、素地調整処理として十分な効果を発揮することができる。
また、本実施形態においては、上述したブラスト処理において、吐出される研削材の吐出圧力を変更することができる。具体的には、図4(a)に示す用に、腐食部位Fに所定面積未満(10%未満)の錆面積Rが発生し、三層の第二下塗塗膜CF2の一部にまで劣化状態が進行していた場合は、通常のブラスト処理で吐出される研削材の吐出圧力(例えば、0.7MPa)よりも高圧(例えば、1MPa)に変更してブラスト処理を行う。一方、防食被膜の腐食部位Fに錆等が発生しておらず、なおかつ、上塗塗膜CF5又は中塗塗膜CF4の表層の一部のみが劣化するような軽微な劣化状態の場合は、通常のブラスト処理で吐出される研削材の吐出圧力(例えば、0.7MPa)でブラスト処理を行う。このように、本実施形態においては、植物系研削材をブラスト処理の研削材として使用しているので、研削材の吐出圧力を高圧にしても、従来の金属製研削材や非金属研削材よりも粉塵の飛散量の増大を相対的に低く抑えた状態で研削能力だけを向上させることができる。
最後に、ブラスト処理(素地調整処理)が終了した腐食部位Fの防食処理を行う(ステップS13)。この防食処理では、図5に示すように、ブラスト処理で研削・研磨した5層の塗膜に応じた再塗装が行なわれる。つまり、図5(a)に示すように、ブラスト処理後の防食被膜は、鋼構造物Hの表面Haに形成された5層の塗膜のうち、腐食部位Fの素地調整として表層の上塗塗膜CF5、中塗塗膜CF4、三層の第三下塗塗膜CF3及び第二下塗塗膜CF2の表面の一部が研削されて素地調整されている。
そして、図5(b)に示すように、鋼構造物Hの表面Haに形成された5層の塗膜のうち、第二下塗塗膜CF2の表面の一部、第三下塗塗膜CF3、中塗塗膜CF4、上塗塗膜CF5を所定の厚みで再塗装することで、鋼構造物Hの表面Haに発生した腐食部位Fの防食被膜を再生することができる。この場合、鋼構造物Hの表面Haの第一下塗塗膜CF1は、防食性能は担保されている健全な塗膜であるため、この第一下塗塗膜CF1は研削されることなく有効に残した状態で、腐食部位Fの補修作業に係る防食処理(再塗装)を完了することができる。
なお、図5に示す実施形態では、第二下塗塗膜CF2の表面の一部まで腐食した状態を一例として説明してきたが、例えば、5層の防食被膜のうち表層の上塗塗膜CF5、中塗塗膜CF4の表面の一部のみが腐食した状態であれば、中塗塗膜CF4の表面の一部、表層の上塗塗膜CF5のみを再塗装するだけで、腐食部位Fの補修作業に係る防食処理(再塗装)を完了することができる。
また、5層の防食被膜のうち健全な塗膜を残すだけではなく、劣化した塗膜においても腐食部位Fのみを研削除去した後再塗装を行うことで、腐食部位Fの周囲の健全な塗膜は研削されることなくそのまま活用できるので、補修作業における再塗装の範囲を削減することができる。
上述してきたように、本実施形態の植物系研削材による鋼構造物Hの表面Haの腐食部位の補修作業によれば、鋼構造物Hの表面Haの多層の防食被膜において、鋼構造物の表面に形成されている多層の防食被膜を全て除去して再塗装する補修作業(再塗装)を行うことなく、鋼構造物の表面に形成されている多層の防食被膜のうち腐食していない健全な塗膜や腐食部位Fの周囲の健全な塗膜を残した状態で、劣化した塗膜や発生した錆のみを研削除去して再塗装を行うことで、補修作業における再塗装の範囲の削減や塗装回数を減らした効率の良い補修作業を行うことができる。
また、上述した実施形態では、鋼構造物Hの表面Haに形成されている種類の異なる樹脂製(エポキシ樹脂、フッ素樹脂等)の塗料による5層の防食被膜の補修作業を一例として説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。金属(亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、およびそれらの合金等)を加熱により溶融して、鋼構造物Hの表面Haに形成される金属溶射皮膜やこの金属溶射皮膜の上に塗装(封孔処理)されて金属溶射被膜を含む多層の防食被膜が形成されている場合でも、同様な植物系研削材を用いたブラスト処理を含む補修作業を行うことができる。つまり、防食被膜の腐食部位Fのみを研削削除し、再塗装や再金属溶射を行うことで、腐食部位F以外の健全な塗膜や金属溶射被膜を活用することができ、補修作業における再塗装や再金属溶射の範囲の削減や塗装回数を減らした効率の良い補修作業を行うことができる。
また、上述した実施形態では、鋼構造物Hの表面Haに塗装して形成されている多層の防食被膜の補修作業に植物系研削材を用いることを一例として説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、防食被膜が行われる鋼構造物Hの表面Haの防食被膜の補修作業であれば、本発明の植物系研削材を用いることができる。
以上、本発明の好ましい各種実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
H 鋼構造物
Ha 表面
F 腐食部位
R 錆面積
CF1 第一下塗塗膜
CF2 第二下塗塗膜
CF3 第三下塗塗膜
CF4 中塗塗膜
CF5 上塗塗膜

Claims (2)

  1. 鋼構造物の表面に形成された塗装や金属溶射による防食被膜の補修作業時に、局部的に発生した防食被膜の腐食部位、錆、および剥離部位を除去する素地調整処理として行われるブラスト処理方法であって、
    防食被膜の腐食部位、錆、および剥離部位を研削する研削材を所定範囲の粒度に形成された天然植物系素材からなる植物系研削材主成分として腐食部位に占める錆面積の割合に応じて配合研削材としての金属製研削材又は非金属研削材を所定の比率で配合して形成し、
    腐食部位に占める錆面積の割合が1%未満の場合、前記研削材に占める金属製研削材又は非金属研削材の割合を第1の割合とし、
    腐食部位に占める錆面積の割合が1%以上5%未満の場合、前記研削材に占める金属製研削材又は非金属研削材の割合を前記第1の割合より大きい第2の割合とし、
    腐食部位に占める錆面積の割合が5%以上10%未満の場合、前記研削材に占める金属製研削材又は非金属研削材の割合を前記第2の割合より大きい第3の割合とした
    前記研削材を用いてブラスト処理することを特徴とするブラスト処理方法
  2. 前記天然植物系素材からなる研削材の吐出圧力は、防食被膜の劣化状態に応じて通常のブラスト処理で吐出される吐出圧力よりも高圧にすることを特徴とする請求項1に記載のブラスト処理方法
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