JP2020128319A - メタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、この懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】第一に、1枚1枚に分離したグラフェンが、液体中に分散した懸濁液を製造する。第二に、粘度が高い新たな懸濁液中で1枚1枚のグラフェンを分離する。第三に、新たな懸濁液を、粘度が高い被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する。第四に、1枚1枚のグラフェンを固体の被膜で覆い、1枚1枚のグラフェンを取り出す。【解決策】メタノール中に1枚1枚のグラフェンが分離した懸濁液を作成し、この懸濁液に高粘度の有機化合物を混合して新たな懸濁液を作成し、この新たな懸濁液を粉砕機にかけ、有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離し、この後、このグラフェンの集まりからメタノールを気化させ、さらに、有機化合物の融点より低い温度に晒し、有機化合物の固体の被膜で覆われた扁平粉の集まりを作成する。【選択図】図1
Description
本発明は、メタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、この懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法に関する。なお、グラフェンは、炭素原子が六角形からなる網目構造を二次元的に形成する炭素原子の集まりからなる単結晶材料である。
2004年に英国マンチェスター大学の物理学者が、セロファンテープを使用して、グラファイトから1枚の結晶子、すなわち、炭素原子が六角形からなる網目構造を二次元的に形成する基底面を引きはがし、炭素原子の大きさが厚みとなる平面状の物質を取り出すことに初めて成功した。この新たな物質をグラフェンと呼んだ。この研究成果に対して、2010年のノーベル物理学書が授与されている。
グラフェンは、厚みが炭素原子の大きさに相当する極めて薄い物質で、かつ、質量をほとんど持たない全く新しい炭素材料である。このため、従来の物質とは大きくかけ離れた物性を持ち、新しい量子物質、新しい電子デバイス材料、新しい熱伝導材料、新しい導電材料といった幅広い用途に応用できる材料として注目されている。
例えば、厚みが0.332nmからなる最も薄い材料である。また、単位質量当たりの表面積が3000m2/gである最も広い表面積を持つ。さらに、ヤング率が1020GPaと大きな値を持ち、最も伸長でき、折り曲げができる材料である。また、せん断弾性率が440GPaという大きな数値を持つ最も強靭な物質である。さらに、熱伝導率は19.5W/Cmで、金属の中で最も熱伝導率が高い銀の熱伝導率の4.5倍に相当する。また、電流密度は銅の1000倍を超える。さらに、電子移動度が15000cm2/VSであり、シリコーンの移動度の1400cm2/VSより一桁高い値を持つ。さらに、融点が3000℃を超える単結晶材料で、耐熱性が極めて高い材料である。
こうしたグラフェンの優れた物性を活かして、高周波・高速トランジスタ、イオン・赤外線センサ、電気二重層キャパシタの電極材、タッチパネルや太陽電池の透明電極、リチウムイオン電池の負極材、太陽電池の中間電極材、燃料電池の電極触媒など様々な用途に向けた研究開発が現在進められている。
例えば、厚みが0.332nmからなる最も薄い材料である。また、単位質量当たりの表面積が3000m2/gである最も広い表面積を持つ。さらに、ヤング率が1020GPaと大きな値を持ち、最も伸長でき、折り曲げができる材料である。また、せん断弾性率が440GPaという大きな数値を持つ最も強靭な物質である。さらに、熱伝導率は19.5W/Cmで、金属の中で最も熱伝導率が高い銀の熱伝導率の4.5倍に相当する。また、電流密度は銅の1000倍を超える。さらに、電子移動度が15000cm2/VSであり、シリコーンの移動度の1400cm2/VSより一桁高い値を持つ。さらに、融点が3000℃を超える単結晶材料で、耐熱性が極めて高い材料である。
こうしたグラフェンの優れた物性を活かして、高周波・高速トランジスタ、イオン・赤外線センサ、電気二重層キャパシタの電極材、タッチパネルや太陽電池の透明電極、リチウムイオン電池の負極材、太陽電池の中間電極材、燃料電池の電極触媒など様々な用途に向けた研究開発が現在進められている。
いっぽう、グラフェンは様々な方法で製造される。例えば、前記したマンチェンスター大学の教授は、人の手でグラファイトからグラフェンを物理的に引きはがした。この方法は、大量のグラフェンを短時間に引き剥がすことは困難で、また、剥がされたものが単一層、つまり、グラフェンになるとは限らない。
また、特許文献1に、炭化ケイ素SiCの単結晶を熱分解することでグラフェンを製造する方法が記載されている。つまり、炭化ケイ素を不活性雰囲気で加熱し、表面を熱分解させる。この際、昇華温度が相対的に低いケイ素Siが優先的に昇華され、残存した炭素によってグラフェンが生成される。しかし、炭化ケイ素の単結晶が非常に高価な材料である。さらに、1600℃を超える高温で、かつ、真空度が高い雰囲気でケイ素を昇華させるが、ケイ素が僅かでも残存した場合は、熱分解後の残渣物としてグラフェンが生成されない。このため、SiC単結晶の生成と、SiC単結晶の熱分解処理に係わる費用は非常に高価になる。また、大量のグラフェンを製造するには、さらに高価な費用が掛かる。
さらに、特許文献2に、シート状の単結晶のグラファイト化金属触媒に、炭素系物質を接触させ、還元性雰囲気で熱処理することで、グラフェンを製造する方法が記載されている。しかしながら、この製造方法も、安価な製造方法とは言えず、かつ、量産性に優れた製造方法ではない。第一に、単結晶のグラファイト化金属触媒を製造する製造コストは、炭化ケイ素の単結晶よりさらに高い。第二に、単結晶のグラファイト化金属触媒を炭素系物質に接触させる方法は量産性に劣る。第三に、水素ガスを含む窒素ガスがリッチな雰囲気で、1000℃を超える高温度で、グラファイト化金属触媒を還元処理する方法は、熱処理費用が高価になる。大量のグラフェンを製造するには、さらに高価な費用が掛かる。
また、特許文献1に、炭化ケイ素SiCの単結晶を熱分解することでグラフェンを製造する方法が記載されている。つまり、炭化ケイ素を不活性雰囲気で加熱し、表面を熱分解させる。この際、昇華温度が相対的に低いケイ素Siが優先的に昇華され、残存した炭素によってグラフェンが生成される。しかし、炭化ケイ素の単結晶が非常に高価な材料である。さらに、1600℃を超える高温で、かつ、真空度が高い雰囲気でケイ素を昇華させるが、ケイ素が僅かでも残存した場合は、熱分解後の残渣物としてグラフェンが生成されない。このため、SiC単結晶の生成と、SiC単結晶の熱分解処理に係わる費用は非常に高価になる。また、大量のグラフェンを製造するには、さらに高価な費用が掛かる。
さらに、特許文献2に、シート状の単結晶のグラファイト化金属触媒に、炭素系物質を接触させ、還元性雰囲気で熱処理することで、グラフェンを製造する方法が記載されている。しかしながら、この製造方法も、安価な製造方法とは言えず、かつ、量産性に優れた製造方法ではない。第一に、単結晶のグラファイト化金属触媒を製造する製造コストは、炭化ケイ素の単結晶よりさらに高い。第二に、単結晶のグラファイト化金属触媒を炭素系物質に接触させる方法は量産性に劣る。第三に、水素ガスを含む窒素ガスがリッチな雰囲気で、1000℃を超える高温度で、グラファイト化金属触媒を還元処理する方法は、熱処理費用が高価になる。大量のグラフェンを製造するには、さらに高価な費用が掛かる。
現在までのグラフェンの製造方法はいずれも、第一に、安価な製造方法で大量のグラフェンを同時に製造する方法ではない。第二に、製造したグラフェンが必ずしもグラフェンでない。つまり、グラフェンは、炭素原子が六角形からなる網目構造を二次元的に形成する炭素原子の集まりからなる単結晶材料であり、不純物が全くない雰囲気で、炭素原子の結晶成長ができなければ、グラフェンが生成されない。さらに、生成したグラフェンの厚みが極薄く、極軽量であるため、グラフェンであることを確認する方法が困難を極める。
このため、本発明者は、製造したグラフェンが全て完全なグラフェンで、かつ、極めて簡単な方法で大量のグラフェンを瞬時に製造する方法を見出した(特許文献3)。すなわち、黒鉛の単結晶のみからなり、黒鉛の結晶化が100%進み、さらに、最も安価な炭素材料である、天然の黒鉛粒子を精製した鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子の集まりに対し、電界を印加し、黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶の層間結合の全てを瞬時に破壊し、これによって、黒鉛結晶の基底面からなるグラフェンを大量に製造する製造方法である。この製造方法に依れば、鱗片状黒鉛粒子の1gないしは塊状黒鉛粒子の1gから1.62×1013個に及ぶグラフェンの集まりが得られる。
このため、本発明者は、製造したグラフェンが全て完全なグラフェンで、かつ、極めて簡単な方法で大量のグラフェンを瞬時に製造する方法を見出した(特許文献3)。すなわち、黒鉛の単結晶のみからなり、黒鉛の結晶化が100%進み、さらに、最も安価な炭素材料である、天然の黒鉛粒子を精製した鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子の集まりに対し、電界を印加し、黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶の層間結合の全てを瞬時に破壊し、これによって、黒鉛結晶の基底面からなるグラフェンを大量に製造する製造方法である。この製造方法に依れば、鱗片状黒鉛粒子の1gないしは塊状黒鉛粒子の1gから1.62×1013個に及ぶグラフェンの集まりが得られる。
3段落で説明したように、グラフェンが従来の素材とは全くかけ離れた驚異的な物性を持つため、グラフェンを用いた様々な部品やデバイの研究開発が行われている。従って、安価な製造方法で製造したグラフェンの集まりから、1枚1枚のグラフェンを容易に取り出す方法が見いだせれば、グラフェンを用いた安価な部品やデバイスの実用化に貢献できる。いっぽう、特許文献3による製造方法で大量のグラフェンを瞬時に製造できるが、グラフェンの集まりから、1枚1枚のグラフェンを取り出す方法は見出されていない。
さらに、グラフェンは、炭素原子が六角形からなる網目構造を二次元的に形成する、単一の結晶子からなる極めて厚みが薄い物質であり、極めて軽量で、殆ど質量を持たない。このため、特許文献3における電界の印加によって、黒鉛粒子における黒鉛結晶の層間結合を同時に破壊して製造したグラフェンは、製造時と製造後において、極めて容易に飛散する。さらに、グラフェンは厚みが極めて薄く、厚みに対する結晶面の大きさの比率であるアスペクト比が極めて大きい扁平面を持つ。また、黒鉛粒子が一定の形状を持つため、黒鉛粒子における黒鉛結晶の層間結合を破壊して製造したグラフェンのアスペクト比は、殆どのグラフェンで異なる。従って、特許文献3における製造方法で製造したグラフェンは、容易に扁平面同士で重なり合う。さらに、重なり合ったグラフェンの枚数は一定でない。いっぽう、グラフェンが極めて厚みが薄く、極めて軽量であるため、扁平面同士で重なり合ったグラフェンを、1枚1枚のグラフェンに分離することは、極めて困難である。
従って、グラフェンの集まりから、1枚1枚のグラフェンを取り出す方法を見出す、本発明の解決すべき課題は、次の6つの課題である。
第一に、液体中でグラフェンの集まりを製造する。この方法によれば、グラフェンの製造時と製造後において、グラフェンは飛散しない。しかし、一部のグラフェンは、扁平面同士で重なり合う。
第二に、グラフェンの集まりを、液体中で1枚1枚のグラフェンに分離させ、分離したグラフェンを、液体中に分散した当初の懸濁液を製造する。この処理によって、その後の処理においては、グラフェンは扁平面同士で再び重なり合わない。
第三に、当初の懸濁液中に分散した1枚1枚のグラフェンを、粘度が高い新たな懸濁液中に分散した1枚1枚のグラフェンとする。この処理は、グラフェンの集まりから、1枚1枚のグラフェンを取り出す前処理になる。
第四に、新たな懸濁液におけるグラフェンの集まりを、粘度が高い被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する。この処理によって、新たな懸濁液におけるグラフェンの集まりから、1枚1枚のグラフェンを取り出す処理が容易になる。
第五に、新たな懸濁液を昇温し、当初の懸濁液における液体を気化させ、さらに、新たな懸濁液を、粘度が高い物質の融点より低い温度に晒す。この処理によって、1枚1枚のグラフェンが固体の被膜で覆われ、1枚1枚のグラフェンを、グラフェンの集まりから取り出すことができる。
第六に、上記した5つの処理が何れも極めて簡単な処理である。これによって、安価な黒鉛粒子の集まりを用いて、安価なグラフェンの集まりが製造でき、安価なグラフェンの集まりから、1枚1枚のグラフェンを安価に取り出すことができる。
本発明が解決しようとする課題は、上記の6つの課題である。
さらに、グラフェンは、炭素原子が六角形からなる網目構造を二次元的に形成する、単一の結晶子からなる極めて厚みが薄い物質であり、極めて軽量で、殆ど質量を持たない。このため、特許文献3における電界の印加によって、黒鉛粒子における黒鉛結晶の層間結合を同時に破壊して製造したグラフェンは、製造時と製造後において、極めて容易に飛散する。さらに、グラフェンは厚みが極めて薄く、厚みに対する結晶面の大きさの比率であるアスペクト比が極めて大きい扁平面を持つ。また、黒鉛粒子が一定の形状を持つため、黒鉛粒子における黒鉛結晶の層間結合を破壊して製造したグラフェンのアスペクト比は、殆どのグラフェンで異なる。従って、特許文献3における製造方法で製造したグラフェンは、容易に扁平面同士で重なり合う。さらに、重なり合ったグラフェンの枚数は一定でない。いっぽう、グラフェンが極めて厚みが薄く、極めて軽量であるため、扁平面同士で重なり合ったグラフェンを、1枚1枚のグラフェンに分離することは、極めて困難である。
従って、グラフェンの集まりから、1枚1枚のグラフェンを取り出す方法を見出す、本発明の解決すべき課題は、次の6つの課題である。
第一に、液体中でグラフェンの集まりを製造する。この方法によれば、グラフェンの製造時と製造後において、グラフェンは飛散しない。しかし、一部のグラフェンは、扁平面同士で重なり合う。
第二に、グラフェンの集まりを、液体中で1枚1枚のグラフェンに分離させ、分離したグラフェンを、液体中に分散した当初の懸濁液を製造する。この処理によって、その後の処理においては、グラフェンは扁平面同士で再び重なり合わない。
第三に、当初の懸濁液中に分散した1枚1枚のグラフェンを、粘度が高い新たな懸濁液中に分散した1枚1枚のグラフェンとする。この処理は、グラフェンの集まりから、1枚1枚のグラフェンを取り出す前処理になる。
第四に、新たな懸濁液におけるグラフェンの集まりを、粘度が高い被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する。この処理によって、新たな懸濁液におけるグラフェンの集まりから、1枚1枚のグラフェンを取り出す処理が容易になる。
第五に、新たな懸濁液を昇温し、当初の懸濁液における液体を気化させ、さらに、新たな懸濁液を、粘度が高い物質の融点より低い温度に晒す。この処理によって、1枚1枚のグラフェンが固体の被膜で覆われ、1枚1枚のグラフェンを、グラフェンの集まりから取り出すことができる。
第六に、上記した5つの処理が何れも極めて簡単な処理である。これによって、安価な黒鉛粒子の集まりを用いて、安価なグラフェンの集まりが製造でき、安価なグラフェンの集まりから、1枚1枚のグラフェンを安価に取り出すことができる。
本発明が解決しようとする課題は、上記の6つの課題である。
メタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法は、2枚の平行平板電極のうちの一方の平行平板電極の表面に、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは塊状黒鉛粒子の集まりを引き詰め、該平行平板電極を容器に充填されたメタノール中に浸漬する、さらに、他方の平行平板電極を前記一方の平行平板電極の上に重ね合わせ、前記メタノール中で、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりを介して、前記2枚の平行平板電極を離間させる、この後、該2枚の平行平板電極の間隙に電位差を印加する、これによって、該電位差を前記2枚の平行平板電極の間隙の大きさで割った値に相当する電界が、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりに印加され、前記鱗片状黒鉛粒子ないしは前記塊状黒鉛粒子を形成する全ての黒鉛結晶の層間結合が同時に破壊され、前記2枚の平行平板電極の間隙にグラフェンの集まりが製造される、この後、前記2枚の平行平板電極の間隙を拡大し、該2枚の平行平板電極を前記メタノール中で傾斜させ、さらに、前記容器に3方向の振動を加え、前記グラフェンの集まりを、前記2枚の平行平板電極の間隙から、前記メタノール中に移動させる、この後、前記容器から前記2枚の平行平板電極を取り出し、さらに、前記容器内のメタノール中でホモジナイザー装置を稼働させ、該ホモジナイザー装置の稼働によって、前記メタノールを介して前記グラフェンの集まりに衝撃を繰り返し加え、該グラフェンの集まりを、前記メタノール中で1枚1枚のグラフェンンに分離し、該1枚1枚のグラフェンンに分離したグラフェンの集まりが、前記メタノールに分散した懸濁液を作成する、この後、融点が10℃より高く、かつ、メタノールに溶解する高粘度の有機化合物を、前記懸濁液を構成するメタノールの粘度が30−40倍に増大する割合として前記懸濁液に混合し、該有機化合物がメタノールに溶解した溶解液中に、1枚1枚のグラフェンンが分離して分散した新たな懸濁液を作成する、この後、該新たな懸濁液を粉砕機に供給し、該粉砕機の稼働によって、前記新たな懸濁液同士を連続して衝突させ、該新たな懸濁液を、前記有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する、この後、該1枚1枚に分離されたグラフェンからなるグラフェンの集まりから、1枚1枚のグラフェンを取り出す際に、該グラフェンの集まりを昇温して前記メタノールを気化し、さらに、該グラフェンの集まりを前記有機化合物の融点より低い温度に晒す、これによって、該グラフェンの集まりが、前記有機化合物からなる固体の被膜で覆われたグラフェンからなるグラフェンの集まりとなり、該グラフェンの集まりから1枚1枚のグラフェンを取り出す、メタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法である。
本発明における、メタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、この懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法は、次の5つの処理からなる。
第一に、メタノール中で、黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造する。すなわち、2枚の平行平板電極の間隙に引き詰められた鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは塊状黒鉛粒子の集まりを、絶縁体であるメタノール中に浸漬させ、2枚の平行平板電極間に電位差を印加させる。これによって、電位差を2枚の平行平板電極の間隙の大きさで割った値に相当する電界が、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは塊状黒鉛粒子の集まりが存在する電極間隙に発生する。この電界は、前記した黒鉛粒子の全てに対し、黒鉛結晶の層間結合を破壊させるのに十分なクーロン力として、黒鉛結晶の層間結合の担い手である全てのπ電子に同時に与える。これによって、π電子はπ軌道上の拘束から解放され、全てのπ電子がπ軌道から離れて自由電子となる。つまり、π電子に作用するクーロン力が、π軌道の相互作用より大きな力としてπ電子に与えられると、π電子はπ軌道の拘束から解放されて自由電子になる。この結果、黒鉛結晶の層間結合の担い手である全てのπ電子が、π軌道上に存在しなくなり、黒鉛粒子の全てについて、黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶の層間結合の全てが同時に破壊される。この結果、2枚の平行平板電極の間隙に、グラフェンの集まりが瞬時に製造される。これによって、7段落に記載した6つの課題のうち、第1の課題が解決された。
なお、絶縁体であるメタノール中に浸漬した2枚の平行平板電極間に、電位差を印加させると、2枚の平行平板電極の間隙に電界が発生する。すなわち、メタノールは比抵抗が3MΩcm以上で、誘電率が33の絶縁体である。また、エタノールも誘電率が24からなる絶縁体である。なお、エタノールの電気導電率は7.5×10−6S/mで、鱗片状黒鉛粒子の電気伝導度が43.9S/mである。従って、エタノールは、導電体である鱗片状黒鉛粒子に比べ、電気導電度が1.7×107倍低い絶縁体である。
第二に、1枚1枚のグラフェンンに分離したグラフェンの集まりが、メタノール中に分散した当初の懸濁液を作成する。すなわち、前記した2枚の平行平板電極の狭い間隙に析出したグラフェンの集まりは、一部のグラフェンが扁平面同士で重なり合うため、グラフェンの集まりを、メタノール中で、1個1個のグラフェンに分離する必要がある。このため、2枚の平行平板電極の間隙を、メタノール中で拡大させ、さらに、メタノール中で傾斜させ、この後、メタノールが充填された容器に3方向の振動を加えると、グラフェンの集まりが、2枚の平行平板電極の間隙から、メタノール中に移動する。この後、2枚の平行平板電極を容器から取り出し、さらに、ホモジナイザー装置をメタノール中で稼働させ、メタノールを介してグラフェンの集まりに衝撃を繰り返し加える。これによって、グラフェンの集まりが、メタノール中で1枚1枚のグラフェンに分離され、分離されたグラフェンの集まりがメタノールに分散した当初の懸濁液が製造される。なお、超音波方式のホモジナイザー装置を用いると、グラフェンの扁平面よりさらに1桁以上小さい極微細で莫大な数からなる気泡の発生と消滅とが、超音波の振動周波数の周期に応じてメタノール中で連続して繰り返され(この現象をキャビテーションという)、気泡がはじける際の衝撃波がグラフェンの集まりに繰り返し加わり、グラフェンの集まりが、短時間で1枚1枚のグラフェンにメタノール中で分離する。この結果、1枚1枚のグラフェンンに分離されたグラフェンの集まりが、メタノール中に分散した当初の懸濁液が製造される。これによって、7段落に記載した6つの課題のうち、第2の課題が解決された。
第三に、融点が10℃より高く、メタノールに溶解する高粘度の有機化合物を、前記した当初の懸濁液に、懸濁液の粘度が30−40倍の粘度に増大する割合として混合し、メタノールに溶解した有機化合物の溶解液中に、1枚1枚のグラフェンンが分離して分散した新たな懸濁液を作成する。つまり、有機化合物がメタノールに溶解するため、当初の懸濁液に有機化合物を混合すると、懸濁液を構成するメタノールが、有機化合物のメタノール溶解液になる。従って、当初の懸濁液においては、1枚1枚のグラフェンンに分離したグラフェンがメタノールと接していたが、有機化合物を当初の懸濁液に混合すると、メタノールが有機化合物のメタノール溶解液になり、1枚1枚のグラフェンンに分離したグラフェンが有機化合物のメタノール溶解液と接し、1枚1枚のグラフェンンに分離したグラフェンの集まりが、有機化合物のメタノール溶解液に分散した新たな懸濁液になる。これによって、7段落に記載した6つの課題のうち、第3の課題が解決された。
第四に、新たな懸濁液を粉砕機に供給し、粉砕機の稼働によって、新たな懸濁液同士を連続して衝突させ、有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する。すなわち、新たな懸濁液を粉砕機で処理すると、新たな懸濁液同士が衝突を繰り返し、徐々に小さな懸濁液の集まりになる。いっぽう、新たな懸濁液における粘度が、当初の懸濁液の粘度の30−40倍より低い場合は、メタノール溶解液とグラフェンとの粘着力が小さいため、衝突の際にメタノール溶解液がグラフェンから解離する。これに対し、新たな懸濁液における粘度が、当初の懸濁液の粘度の30−40倍より高い場合は、新たな懸濁液の大きさが大きい場合は、新たな懸濁液同士が衝突する際の衝撃力が大きいため、新たな懸濁液の微細化が進む。しかし、その後衝突を繰り返しても、新たな懸濁液同士の粘着力が大きいため、小さくなった新たな懸濁液同士が粘着し、新たな懸濁液の微細化が進まない。つまり、グラフェンを覆う新たな懸濁液の粘度を、メタノールの粘度の30−40倍に設定すると、新たな懸濁が一定の粘着力を持ち、衝突の際にメタノール溶解液がグラフェンの表面から解離せず、また、衝突の際にメタノール溶解液同士が粘着しない。また、新たな懸濁液が粉砕機内で循環する速度が、連続的に小さくなるように、つまり、新たな懸濁液同士が衝突する際の衝突力が、徐々に小さくなるように粉砕機を稼働させると、新たな懸濁液の微細化が確実に進む。こうした条件で新たな懸濁液同士の衝突を繰り返し、新たな懸濁液の微細化を進め、有機化合物のメタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する。これによって、7段落に記載した6つの課題のうち、第4の課題が解決された。
第五に、有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離したグラフェンの集まりを昇温し、前記メタノールを気化し、この後、有機化合物の融点より低い温度に晒す。これによって、1枚1枚のグラフェンが、有機化合物からなる固体の被膜で覆われた扁平粉になる。この扁平粉の集まりから、1枚の扁平粉を取り出し、扁平粉の表面の有機化合物の被膜を脱落、ないしは、気化させると、1枚のグラフェンが得られる。これによって、7段落に記載した6つの課題のうち、第5の課題が解決された。
なお、黒鉛粒子が一定の大きさを持つため、黒鉛粒子における黒鉛結晶の層間結合を破壊して製造したグラフェンの扁平面は一定の面積を持つ。従って、第五の処理を行った扁平粉の集まりから、1枚1枚の扁平粉を取り出し、1枚の扁平粉から有機化合物の固体の被膜を脱落ないしは気化させれば、1枚のグラフェンであるか否かが判別できる。このため、第四の処理において、新たな懸濁液の粘度を様々な粘度に変え、その都度新たな懸濁液を粉砕機にかけた。また、粉砕機内で新たな懸濁液が循環する速度を変えた。こうした実験を繰り返し、また、実験のたびごとに、1枚1枚の扁平粉を取り出し、この扁平粉から、有機化合物の固体の被膜を脱落ないしは気化させ、グラフェンの扁平面同士が重なり合わず、1枚のグラフェンであるか否かを判別した。この結果、第四の処理において、新たな懸濁液の粘度が大きく影響し、新たな懸濁液の粘度を、メタノールの粘度の30−40倍に設定すると、新たな懸濁液が、有機化合物のメタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離できることが分かった。なお、グラフェンを覆う有機化合物のメタノール溶解液の厚みを、グラフェンの厚みの100倍を超える厚みにすれば、有機化合物の固体の被膜で覆われたグラフェンが、扁平粉として扱うことができる。なお、メタノールは、20℃で0.59mPa秒の粘度を持つ。
なお、高粘度の有機化合物は、吸湿性がなく、酸化されず、化学的に安定な物質であるため、有機化合物のメタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンの集まりは、長期間の保管ができる。従って、グラフェンが必要になった際に、必要な量の新たな懸濁液を取り出し、この新たな懸濁液からメタノールを気化し、さらに、有機化合物の融点より低い温度に晒すと、グラフェンが有機化合物の固体の被膜で覆われた扁平紛になる。この扁平粉の集まりから、1個1個の扁平粉を取り出す。さらに、この扁平粉から有機化合物を気化する、ないしは、有機化合物の被膜を脱落すれば、扁平粉がグラフェンになり、一枚のグラフェンを部品やデバイスの研究開発に用いることができる。
また、本方法で用いる有機化合物は、汎用的な工業用薬品である。また、黒鉛粒子も安価な工業用素材である。さらに、前記した5つの処理は極めて簡単な処理である。従って、本方法に依れば、安価な黒鉛粒子を原料として用い、極めて簡単な5つの処理を連続して実施すると、扁平粉として扱えるグラフェンが安価に製造でき、扁平粉の集まりから1個1個の扁平粉を取り出せる。これによって、7段落に記載した6つの課題のうち第6の課題が解決され、すべての課題が解決された。
ここで、第一の処理において、2枚の平行平板電極の間隙に印加された電界によって、2枚の平行平板電極の間隙に引き詰められた黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶の層間結合が、同時に破壊される現象を以下に説明する。
黒鉛粒子における黒鉛結晶を形成する炭素原子は4つの価電子を持つ。このうちの3つの価電子は、黒鉛結晶の基底面、すなわち、グラフェンを形成するσ電子である。このσ電子は、基底面上で隣り合う3つの炭素原子が持つσ電子と互いに120度の角度をなして共有結合し、六角形の強固な網目構造を2次元的に形成する。残り一つの価電子はπ電子であり、基底面に垂直な方向に伸びるπ軌道上に存在する。このπ電子は、基底面に垂直な上下方向で隣り合う炭素原子が持つπ電子と弱い結合力で結合し、この弱い結合力に基づいて基底面同士が層状に積層される。つまり基底面、すなわちグラフェンは、弱い結合力であるπ軌道の相互作用によって互いに層状に結合されている。このため、黒鉛粒子は、黒鉛結晶からなる基底面で剥がれ易い性質、すなわち、機械的な異方性を持つ。この機械的な異方性は、黒鉛粒子の潤滑性として良く知られている。
こうした黒鉛粒子に電界を印加させると、全てのπ電子に電界によるクーロン力が作用する。π電子に作用するクーロン力が、π電子に作用しているπ軌道の相互作用より大きな力としてπ電子に作用すると、π電子はπ軌道上の拘束から解放される。この結果、全てのπ電子がπ軌道から離れて自由電子となる。これによって、黒鉛結晶の層間結合の担い手である全てのπ電子がπ軌道上にいなくなるため、黒鉛結晶の全ての層間結合は同時に破壊される。このように、安価な黒鉛粒子の集まりに電界を印加するという極めて簡単な製造方法によって、グラフェンの集まりが安価に製造できる。また、全ての黒鉛結晶の層間結合が同時に破壊するため、得られる微細な物質の集まりは、確実に黒鉛結晶の基底面であるグラフェンの集まりになる。
なお、ここで言う黒鉛粒子の集まりとは、1gから100g程度の比較的少量の黒鉛粒子の集まりを言う。つまり、鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子は、嵩密度が0.2−0.5g/cm3で、粒子の大きさが1−300ミクロンの分布を持つ微細な粒子である。従って、黒鉛粒子の集まりを2枚の平行平板電極の間隙に引き詰めることは容易で、2枚の平行平板電極に電位差を印加することも容易である。2枚の平行平板電極の間隙に電位差を印加すると、黒鉛粒子が引きつめられた全ての領域に電界が発生する。この電界が、π軌道の相互作用より大きなクーロン力としてπ電子に作用し、π電子はπ軌道上の拘束から解放され、自由電子になる。この結果、黒鉛粒子における黒鉛結晶の層間結合の全てが同時に破壊され、2枚の平行平板電極の間隙に、グラフェンの集まりが製造される。
ここで、当初の懸濁液中に分散されるグラフェンの数を算術で求める。ここでは、全ての黒鉛粒子が、直径が25ミクロンの球から構成されると仮定し、黒鉛の真密度が2.25×103kg/m3であるから、黒鉛粒子の1個の重さは僅かに1.84×10−8gになる。また、黒鉛粒子の厚みの平均値が10ミクロンと仮定すると、層間距離が3.354オングストロームであるので、10ミクロンの厚みを持つ鱗片状黒鉛粒子には297,265個のグラフェンが積層されている。従って、黒鉛結晶の層間結合を全て破壊することで、僅か1個の球状の黒鉛粒子から297,265個のグラフェンの集まりが得られる。このため、球状の黒鉛粒子の僅か1gの集まりについて、全ての黒鉛結晶の層間結合を破壊した際に、1.62×1013個からなるグラフェンの集まりが得られる。従って、本製造方法によって製造した懸濁液は、僅かな量の黒鉛粒子の集まりから、莫大な数からなるグラフェンの集まりの1個1個がメタノールに分散された懸濁液になる。
第一に、メタノール中で、黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造する。すなわち、2枚の平行平板電極の間隙に引き詰められた鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは塊状黒鉛粒子の集まりを、絶縁体であるメタノール中に浸漬させ、2枚の平行平板電極間に電位差を印加させる。これによって、電位差を2枚の平行平板電極の間隙の大きさで割った値に相当する電界が、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは塊状黒鉛粒子の集まりが存在する電極間隙に発生する。この電界は、前記した黒鉛粒子の全てに対し、黒鉛結晶の層間結合を破壊させるのに十分なクーロン力として、黒鉛結晶の層間結合の担い手である全てのπ電子に同時に与える。これによって、π電子はπ軌道上の拘束から解放され、全てのπ電子がπ軌道から離れて自由電子となる。つまり、π電子に作用するクーロン力が、π軌道の相互作用より大きな力としてπ電子に与えられると、π電子はπ軌道の拘束から解放されて自由電子になる。この結果、黒鉛結晶の層間結合の担い手である全てのπ電子が、π軌道上に存在しなくなり、黒鉛粒子の全てについて、黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶の層間結合の全てが同時に破壊される。この結果、2枚の平行平板電極の間隙に、グラフェンの集まりが瞬時に製造される。これによって、7段落に記載した6つの課題のうち、第1の課題が解決された。
なお、絶縁体であるメタノール中に浸漬した2枚の平行平板電極間に、電位差を印加させると、2枚の平行平板電極の間隙に電界が発生する。すなわち、メタノールは比抵抗が3MΩcm以上で、誘電率が33の絶縁体である。また、エタノールも誘電率が24からなる絶縁体である。なお、エタノールの電気導電率は7.5×10−6S/mで、鱗片状黒鉛粒子の電気伝導度が43.9S/mである。従って、エタノールは、導電体である鱗片状黒鉛粒子に比べ、電気導電度が1.7×107倍低い絶縁体である。
第二に、1枚1枚のグラフェンンに分離したグラフェンの集まりが、メタノール中に分散した当初の懸濁液を作成する。すなわち、前記した2枚の平行平板電極の狭い間隙に析出したグラフェンの集まりは、一部のグラフェンが扁平面同士で重なり合うため、グラフェンの集まりを、メタノール中で、1個1個のグラフェンに分離する必要がある。このため、2枚の平行平板電極の間隙を、メタノール中で拡大させ、さらに、メタノール中で傾斜させ、この後、メタノールが充填された容器に3方向の振動を加えると、グラフェンの集まりが、2枚の平行平板電極の間隙から、メタノール中に移動する。この後、2枚の平行平板電極を容器から取り出し、さらに、ホモジナイザー装置をメタノール中で稼働させ、メタノールを介してグラフェンの集まりに衝撃を繰り返し加える。これによって、グラフェンの集まりが、メタノール中で1枚1枚のグラフェンに分離され、分離されたグラフェンの集まりがメタノールに分散した当初の懸濁液が製造される。なお、超音波方式のホモジナイザー装置を用いると、グラフェンの扁平面よりさらに1桁以上小さい極微細で莫大な数からなる気泡の発生と消滅とが、超音波の振動周波数の周期に応じてメタノール中で連続して繰り返され(この現象をキャビテーションという)、気泡がはじける際の衝撃波がグラフェンの集まりに繰り返し加わり、グラフェンの集まりが、短時間で1枚1枚のグラフェンにメタノール中で分離する。この結果、1枚1枚のグラフェンンに分離されたグラフェンの集まりが、メタノール中に分散した当初の懸濁液が製造される。これによって、7段落に記載した6つの課題のうち、第2の課題が解決された。
第三に、融点が10℃より高く、メタノールに溶解する高粘度の有機化合物を、前記した当初の懸濁液に、懸濁液の粘度が30−40倍の粘度に増大する割合として混合し、メタノールに溶解した有機化合物の溶解液中に、1枚1枚のグラフェンンが分離して分散した新たな懸濁液を作成する。つまり、有機化合物がメタノールに溶解するため、当初の懸濁液に有機化合物を混合すると、懸濁液を構成するメタノールが、有機化合物のメタノール溶解液になる。従って、当初の懸濁液においては、1枚1枚のグラフェンンに分離したグラフェンがメタノールと接していたが、有機化合物を当初の懸濁液に混合すると、メタノールが有機化合物のメタノール溶解液になり、1枚1枚のグラフェンンに分離したグラフェンが有機化合物のメタノール溶解液と接し、1枚1枚のグラフェンンに分離したグラフェンの集まりが、有機化合物のメタノール溶解液に分散した新たな懸濁液になる。これによって、7段落に記載した6つの課題のうち、第3の課題が解決された。
第四に、新たな懸濁液を粉砕機に供給し、粉砕機の稼働によって、新たな懸濁液同士を連続して衝突させ、有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する。すなわち、新たな懸濁液を粉砕機で処理すると、新たな懸濁液同士が衝突を繰り返し、徐々に小さな懸濁液の集まりになる。いっぽう、新たな懸濁液における粘度が、当初の懸濁液の粘度の30−40倍より低い場合は、メタノール溶解液とグラフェンとの粘着力が小さいため、衝突の際にメタノール溶解液がグラフェンから解離する。これに対し、新たな懸濁液における粘度が、当初の懸濁液の粘度の30−40倍より高い場合は、新たな懸濁液の大きさが大きい場合は、新たな懸濁液同士が衝突する際の衝撃力が大きいため、新たな懸濁液の微細化が進む。しかし、その後衝突を繰り返しても、新たな懸濁液同士の粘着力が大きいため、小さくなった新たな懸濁液同士が粘着し、新たな懸濁液の微細化が進まない。つまり、グラフェンを覆う新たな懸濁液の粘度を、メタノールの粘度の30−40倍に設定すると、新たな懸濁が一定の粘着力を持ち、衝突の際にメタノール溶解液がグラフェンの表面から解離せず、また、衝突の際にメタノール溶解液同士が粘着しない。また、新たな懸濁液が粉砕機内で循環する速度が、連続的に小さくなるように、つまり、新たな懸濁液同士が衝突する際の衝突力が、徐々に小さくなるように粉砕機を稼働させると、新たな懸濁液の微細化が確実に進む。こうした条件で新たな懸濁液同士の衝突を繰り返し、新たな懸濁液の微細化を進め、有機化合物のメタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する。これによって、7段落に記載した6つの課題のうち、第4の課題が解決された。
第五に、有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離したグラフェンの集まりを昇温し、前記メタノールを気化し、この後、有機化合物の融点より低い温度に晒す。これによって、1枚1枚のグラフェンが、有機化合物からなる固体の被膜で覆われた扁平粉になる。この扁平粉の集まりから、1枚の扁平粉を取り出し、扁平粉の表面の有機化合物の被膜を脱落、ないしは、気化させると、1枚のグラフェンが得られる。これによって、7段落に記載した6つの課題のうち、第5の課題が解決された。
なお、黒鉛粒子が一定の大きさを持つため、黒鉛粒子における黒鉛結晶の層間結合を破壊して製造したグラフェンの扁平面は一定の面積を持つ。従って、第五の処理を行った扁平粉の集まりから、1枚1枚の扁平粉を取り出し、1枚の扁平粉から有機化合物の固体の被膜を脱落ないしは気化させれば、1枚のグラフェンであるか否かが判別できる。このため、第四の処理において、新たな懸濁液の粘度を様々な粘度に変え、その都度新たな懸濁液を粉砕機にかけた。また、粉砕機内で新たな懸濁液が循環する速度を変えた。こうした実験を繰り返し、また、実験のたびごとに、1枚1枚の扁平粉を取り出し、この扁平粉から、有機化合物の固体の被膜を脱落ないしは気化させ、グラフェンの扁平面同士が重なり合わず、1枚のグラフェンであるか否かを判別した。この結果、第四の処理において、新たな懸濁液の粘度が大きく影響し、新たな懸濁液の粘度を、メタノールの粘度の30−40倍に設定すると、新たな懸濁液が、有機化合物のメタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離できることが分かった。なお、グラフェンを覆う有機化合物のメタノール溶解液の厚みを、グラフェンの厚みの100倍を超える厚みにすれば、有機化合物の固体の被膜で覆われたグラフェンが、扁平粉として扱うことができる。なお、メタノールは、20℃で0.59mPa秒の粘度を持つ。
なお、高粘度の有機化合物は、吸湿性がなく、酸化されず、化学的に安定な物質であるため、有機化合物のメタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンの集まりは、長期間の保管ができる。従って、グラフェンが必要になった際に、必要な量の新たな懸濁液を取り出し、この新たな懸濁液からメタノールを気化し、さらに、有機化合物の融点より低い温度に晒すと、グラフェンが有機化合物の固体の被膜で覆われた扁平紛になる。この扁平粉の集まりから、1個1個の扁平粉を取り出す。さらに、この扁平粉から有機化合物を気化する、ないしは、有機化合物の被膜を脱落すれば、扁平粉がグラフェンになり、一枚のグラフェンを部品やデバイスの研究開発に用いることができる。
また、本方法で用いる有機化合物は、汎用的な工業用薬品である。また、黒鉛粒子も安価な工業用素材である。さらに、前記した5つの処理は極めて簡単な処理である。従って、本方法に依れば、安価な黒鉛粒子を原料として用い、極めて簡単な5つの処理を連続して実施すると、扁平粉として扱えるグラフェンが安価に製造でき、扁平粉の集まりから1個1個の扁平粉を取り出せる。これによって、7段落に記載した6つの課題のうち第6の課題が解決され、すべての課題が解決された。
ここで、第一の処理において、2枚の平行平板電極の間隙に印加された電界によって、2枚の平行平板電極の間隙に引き詰められた黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶の層間結合が、同時に破壊される現象を以下に説明する。
黒鉛粒子における黒鉛結晶を形成する炭素原子は4つの価電子を持つ。このうちの3つの価電子は、黒鉛結晶の基底面、すなわち、グラフェンを形成するσ電子である。このσ電子は、基底面上で隣り合う3つの炭素原子が持つσ電子と互いに120度の角度をなして共有結合し、六角形の強固な網目構造を2次元的に形成する。残り一つの価電子はπ電子であり、基底面に垂直な方向に伸びるπ軌道上に存在する。このπ電子は、基底面に垂直な上下方向で隣り合う炭素原子が持つπ電子と弱い結合力で結合し、この弱い結合力に基づいて基底面同士が層状に積層される。つまり基底面、すなわちグラフェンは、弱い結合力であるπ軌道の相互作用によって互いに層状に結合されている。このため、黒鉛粒子は、黒鉛結晶からなる基底面で剥がれ易い性質、すなわち、機械的な異方性を持つ。この機械的な異方性は、黒鉛粒子の潤滑性として良く知られている。
こうした黒鉛粒子に電界を印加させると、全てのπ電子に電界によるクーロン力が作用する。π電子に作用するクーロン力が、π電子に作用しているπ軌道の相互作用より大きな力としてπ電子に作用すると、π電子はπ軌道上の拘束から解放される。この結果、全てのπ電子がπ軌道から離れて自由電子となる。これによって、黒鉛結晶の層間結合の担い手である全てのπ電子がπ軌道上にいなくなるため、黒鉛結晶の全ての層間結合は同時に破壊される。このように、安価な黒鉛粒子の集まりに電界を印加するという極めて簡単な製造方法によって、グラフェンの集まりが安価に製造できる。また、全ての黒鉛結晶の層間結合が同時に破壊するため、得られる微細な物質の集まりは、確実に黒鉛結晶の基底面であるグラフェンの集まりになる。
なお、ここで言う黒鉛粒子の集まりとは、1gから100g程度の比較的少量の黒鉛粒子の集まりを言う。つまり、鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子は、嵩密度が0.2−0.5g/cm3で、粒子の大きさが1−300ミクロンの分布を持つ微細な粒子である。従って、黒鉛粒子の集まりを2枚の平行平板電極の間隙に引き詰めることは容易で、2枚の平行平板電極に電位差を印加することも容易である。2枚の平行平板電極の間隙に電位差を印加すると、黒鉛粒子が引きつめられた全ての領域に電界が発生する。この電界が、π軌道の相互作用より大きなクーロン力としてπ電子に作用し、π電子はπ軌道上の拘束から解放され、自由電子になる。この結果、黒鉛粒子における黒鉛結晶の層間結合の全てが同時に破壊され、2枚の平行平板電極の間隙に、グラフェンの集まりが製造される。
ここで、当初の懸濁液中に分散されるグラフェンの数を算術で求める。ここでは、全ての黒鉛粒子が、直径が25ミクロンの球から構成されると仮定し、黒鉛の真密度が2.25×103kg/m3であるから、黒鉛粒子の1個の重さは僅かに1.84×10−8gになる。また、黒鉛粒子の厚みの平均値が10ミクロンと仮定すると、層間距離が3.354オングストロームであるので、10ミクロンの厚みを持つ鱗片状黒鉛粒子には297,265個のグラフェンが積層されている。従って、黒鉛結晶の層間結合を全て破壊することで、僅か1個の球状の黒鉛粒子から297,265個のグラフェンの集まりが得られる。このため、球状の黒鉛粒子の僅か1gの集まりについて、全ての黒鉛結晶の層間結合を破壊した際に、1.62×1013個からなるグラフェンの集まりが得られる。従って、本製造方法によって製造した懸濁液は、僅かな量の黒鉛粒子の集まりから、莫大な数からなるグラフェンの集まりの1個1個がメタノールに分散された懸濁液になる。
8段落に記載したメタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法は、前記有機化合物が、炭素原子数が8−12の飽和脂肪酸であり、該飽和脂肪酸を前記有機化合物として用い、8段落に記載したメタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法に従って、1枚1枚のグラフェンを取り出す、8に記載したメタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法である。
つまり、炭素原子数が8−12の飽和脂肪酸は、融点が10℃より高く、メタノールに任意の割合で溶け、メタノールの50倍より高い粘度を持つ。すなわち、炭素原子数が8のカプリル酸(オクタン酸とも言う)は、融点が16.7℃で、沸点が239.7℃で、メタノールに任意の割合で溶ける。炭素原子数が9のペラルゴン酸(ノナン酸とも言う)は、融点が11−13℃で、沸点が247−259℃で、メタノールに任意の割合で溶ける。炭素原子数が10のカプリン酸(デカン酸とも言う)は、融点が31℃で、沸点が270℃で、メタノールに任意の割合で溶ける。炭素原子数が12のラウリン酸(ドデカン酸とも言う)は、融点が44−46℃で、沸点が296℃で、メタノールに任意の割合で溶ける。従って、これらの飽和脂肪酸は、融点以下の固体であっても、メタノールに溶解するため、メタノールの粘度の30―40倍の粘度となって溶解液し、新たな懸濁液が作成できる。また、融点が10℃より高いため、融点より低い温度に晒すと、飽和脂肪酸の固体の被膜で、グラフェンが被覆できる。さらに、沸点が300℃より低く、飽和脂肪酸を気化する費用は安価で済む。さらに、吸湿性がなく、酸化もせず、化学的に安定な物質であるため、飽和脂肪酸の固体の被膜で覆われたグラフェンの集まりを、経時変化させずに、長期間保管ができる。また、前記した飽和脂肪酸は、界面活性剤、洗剤、石鹸などを製造する際の原料として用いられている汎用的な工業用薬品である。
従って、炭素原子数が8−12の飽和脂肪酸は、8段落に記載したグラフェンの集まりから1枚1枚のグラフェンを取り出す方法において、安価な有機化合物になる。なお、上記の飽和脂肪酸は、エタノールにも任意の割合で溶けるため、メタノールより高価であるが、飽和脂肪酸の溶剤としてエタノールを用いることもできる。
いっぽう、高粘度の有機化合物としてグリコール類がある。しかし、エチレングリコールを除くグリコール類の粘度は、メタノールの50倍を超えるが、融点が−10℃より低い。例えば、エチレングリコールは、グリコール類の中で粘度が最も低く、20℃でメタノールの粘度の27倍の16.1mPa秒であり、グリコール類の中で融点が最も高く、融点は−12.9℃と低い。従って、グリコール類の固体の被膜でグラフェンを覆う場合は、グラフェンの集まりを極低温に保管することが必要になり、保管費用が高価になる。
従って、炭素原子数が8−12の飽和脂肪酸は、8段落に記載したグラフェンの集まりから1枚1枚のグラフェンを取り出す方法において、安価な有機化合物になる。なお、上記の飽和脂肪酸は、エタノールにも任意の割合で溶けるため、メタノールより高価であるが、飽和脂肪酸の溶剤としてエタノールを用いることもできる。
いっぽう、高粘度の有機化合物としてグリコール類がある。しかし、エチレングリコールを除くグリコール類の粘度は、メタノールの50倍を超えるが、融点が−10℃より低い。例えば、エチレングリコールは、グリコール類の中で粘度が最も低く、20℃でメタノールの粘度の27倍の16.1mPa秒であり、グリコール類の中で融点が最も高く、融点は−12.9℃と低い。従って、グリコール類の固体の被膜でグラフェンを覆う場合は、グラフェンの集まりを極低温に保管することが必要になり、保管費用が高価になる。
8段落に記載したメタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法は、前記粉砕機が、ジェットミル装置であり、該ジェットミル装置を前記粉砕機として用い、8段落に記載したメタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法に従って、1枚1枚のグラフェンを取り出す、8段落に記載したメタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法である。
つまり、ジェットミルの装置内に8段落に記載した新たな懸濁液を供給し、循環気流に乗せて新たな懸濁液を装置内で循環させるとともに、ノズルから噴出させた圧縮気流によって、新たな懸濁液を加速させ、これによって、新たな懸濁液同士が繰り返して衝突し、新たな懸濁液の粉砕が進む。このジェットミル装置は、次の3つの特徴を持つ。第一に、圧縮空気の断熱膨張によって温度が降下し、粉砕室内の温度が上昇しないため、新たな懸濁液は一定の粘度に保たれ、新たな懸濁液の微細化が確実に進む。第二に、新たな懸濁液が小さくなるほど、新たな懸濁液の数が増え、新たな懸濁液同士が衝突する頻度が高まり、新たな懸濁液の微細化が確実に進む。第三に、新たな懸濁液同士が衝突する際の衝突エネルギーは、循環する気流速度と、圧縮気流の供給速度とに依存する。従って、新たな懸濁液が大きいほど、新たな懸濁液の質量が大きいため、新たな懸濁液を粉砕するに当たり、大きな衝突エネルギーが必要になる。従って、新たな懸濁液を粉砕する当初は、循環する気流速度と圧縮気流の供給速度との双方が、最大になるように装置を稼働させ、この後、循環する気流速度と圧縮気流の供給速度との双方が、徐々に小さな値になるように装置を稼働させると、新たな懸濁液の微細化が確実に進む。
これら3つの特徴を持つジェットミル装置は、8段落に記載した新たな懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法において、次の3つの作用効果をもたらす。このため、新たな懸濁液を、有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離させる処理に適した粉砕装置である。第一に、圧縮空気の断熱膨張によって、粉砕室内の温度が上昇しないため、新たな懸濁液は一定の粘度に保たれる。これによって、新たな懸濁液の粘度が、有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離させる処理に適した粘度に保たれる。第二に、新たな懸濁液の微細化が進むほど、新たな懸濁液同士が衝突する頻度が高まる。これによって、新たな懸濁液の粉砕が確実に進み、装置の稼働を続けると、新たな懸濁液が、有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離される。第三に、新たな懸濁液同士が衝突する際の衝突エネルギーは、循環する気流速度と圧縮気流の供給速度とに依存する。一方、新たな懸濁液の質量が大きいほど、大きな衝突エネルギーが必要になる。このため、両者の速度を、当初の最大値から連続的に減少させ、衝突エネルギーを連続して低減させると、新たな懸濁液が、確実に有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離分離される。この結果、ジェットミル装置による新たな懸濁液の粉砕によって、新たな懸濁液は、有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離される。
なお、有機化合物の固体の被膜で覆われた1枚の扁平粉から、被膜を脱落ないしは気化すれば、グラフェンであるか否かが判別できる。この結果から、新たな懸濁液をジェットミル装置に供給する単位時間当たりの最適な量と、気流の最適な循環速度と、圧縮気流の最適な供給速度とを見出し、これら3つの最適な条件でジェットミル装置を稼働させれば、有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離されたグラフェンの集まりが安価な費用で製造できる。また、装置内に供給する気流は、グラフェンが有機化合物のメタノール溶解液で覆われているため、乾燥した大気がよい。
これら3つの特徴を持つジェットミル装置は、8段落に記載した新たな懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法において、次の3つの作用効果をもたらす。このため、新たな懸濁液を、有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離させる処理に適した粉砕装置である。第一に、圧縮空気の断熱膨張によって、粉砕室内の温度が上昇しないため、新たな懸濁液は一定の粘度に保たれる。これによって、新たな懸濁液の粘度が、有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離させる処理に適した粘度に保たれる。第二に、新たな懸濁液の微細化が進むほど、新たな懸濁液同士が衝突する頻度が高まる。これによって、新たな懸濁液の粉砕が確実に進み、装置の稼働を続けると、新たな懸濁液が、有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離される。第三に、新たな懸濁液同士が衝突する際の衝突エネルギーは、循環する気流速度と圧縮気流の供給速度とに依存する。一方、新たな懸濁液の質量が大きいほど、大きな衝突エネルギーが必要になる。このため、両者の速度を、当初の最大値から連続的に減少させ、衝突エネルギーを連続して低減させると、新たな懸濁液が、確実に有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離分離される。この結果、ジェットミル装置による新たな懸濁液の粉砕によって、新たな懸濁液は、有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離される。
なお、有機化合物の固体の被膜で覆われた1枚の扁平粉から、被膜を脱落ないしは気化すれば、グラフェンであるか否かが判別できる。この結果から、新たな懸濁液をジェットミル装置に供給する単位時間当たりの最適な量と、気流の最適な循環速度と、圧縮気流の最適な供給速度とを見出し、これら3つの最適な条件でジェットミル装置を稼働させれば、有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離されたグラフェンの集まりが安価な費用で製造できる。また、装置内に供給する気流は、グラフェンが有機化合物のメタノール溶解液で覆われているため、乾燥した大気がよい。
実施例1
本実施例は、8段落に記載した製造方法に従って、1枚1枚に分離されたグラフェンからなるグラフェンの集まりが、メタノール中に分散した懸濁液を製造する。
このため、2枚の平行平板電極の間隙に電界が発生する電極の有効面積を1m×1mとし、2枚の平行平板電極が100μmの間隙で組み合わせ、この電極間に鱗片状黒鉛粒子の集まりを満遍なく平らに引き詰めた場合、黒鉛粒子を粒径が25μmの球とし、黒鉛粒子の厚みの平均値が10μmとした場合、2枚の並行平板電極で作られる100μmの間隙に、黒鉛粒子が満遍なく一列に整列した場合は、6.4×107個の黒鉛粒子が存在する。これらの黒鉛粒子に、10.6キロボルト以上の直流電圧を印加すれば、全ての黒鉛粒子の層間結合は同時に破壊される。黒鉛粒子の形状と大きさを、前記した条件である場合、1個の黒鉛粒子が持つグラフェンの数を297,265個とした場合、1.9×1013個のグラフェンの集まりを得ることができる。この時に用いた鱗片状黒鉛粒子の集まりの重量は、わずかに1.18gである。
最初に、電界が発生する電極の有効面積が1m×1mである平行平板電極の表面に、鱗片状黒鉛粒子(例えば、伊藤黒鉛工業株式会社のXD100)の10gを重ねて引き詰めた。この平行平板電極を、容器に充填した1000ccのメタノールに浸漬し、さらに、もう一方の平行平板電極を前記の平行平板電極の上に重ね合わせ、2枚の平行平板電極を100μmの間隙で離間させ、12キロボルトの直流電圧を電極間に加え、グラフェンの集まりを製造した。次に、2枚の平行平板電極の間隙を拡大し、さらに、2枚の平行平板電極をメタノール中で傾斜させ、0.2Gからなる3方向の振動加速度を容器に加え、この後、容器から2枚の平行平板電極を取り出した。この後、容器内のメタノールに、超音波ホモジナイザー装置(ヤマト科学株式会社の製品LUH300)によって20kHzの超音波振動を2分間加え、1枚1枚に分離されたグラフェンからなるグラフェンの集まりが、メタノール中に分散した懸濁液を作成した。
本実施例は、8段落に記載した製造方法に従って、1枚1枚に分離されたグラフェンからなるグラフェンの集まりが、メタノール中に分散した懸濁液を製造する。
このため、2枚の平行平板電極の間隙に電界が発生する電極の有効面積を1m×1mとし、2枚の平行平板電極が100μmの間隙で組み合わせ、この電極間に鱗片状黒鉛粒子の集まりを満遍なく平らに引き詰めた場合、黒鉛粒子を粒径が25μmの球とし、黒鉛粒子の厚みの平均値が10μmとした場合、2枚の並行平板電極で作られる100μmの間隙に、黒鉛粒子が満遍なく一列に整列した場合は、6.4×107個の黒鉛粒子が存在する。これらの黒鉛粒子に、10.6キロボルト以上の直流電圧を印加すれば、全ての黒鉛粒子の層間結合は同時に破壊される。黒鉛粒子の形状と大きさを、前記した条件である場合、1個の黒鉛粒子が持つグラフェンの数を297,265個とした場合、1.9×1013個のグラフェンの集まりを得ることができる。この時に用いた鱗片状黒鉛粒子の集まりの重量は、わずかに1.18gである。
最初に、電界が発生する電極の有効面積が1m×1mである平行平板電極の表面に、鱗片状黒鉛粒子(例えば、伊藤黒鉛工業株式会社のXD100)の10gを重ねて引き詰めた。この平行平板電極を、容器に充填した1000ccのメタノールに浸漬し、さらに、もう一方の平行平板電極を前記の平行平板電極の上に重ね合わせ、2枚の平行平板電極を100μmの間隙で離間させ、12キロボルトの直流電圧を電極間に加え、グラフェンの集まりを製造した。次に、2枚の平行平板電極の間隙を拡大し、さらに、2枚の平行平板電極をメタノール中で傾斜させ、0.2Gからなる3方向の振動加速度を容器に加え、この後、容器から2枚の平行平板電極を取り出した。この後、容器内のメタノールに、超音波ホモジナイザー装置(ヤマト科学株式会社の製品LUH300)によって20kHzの超音波振動を2分間加え、1枚1枚に分離されたグラフェンからなるグラフェンの集まりが、メタノール中に分散した懸濁液を作成した。
実施例2
本実施例は、カプリン酸(試薬一級品)を有機化合物として用い、カプリン酸の97gを、実施例1で製造した100ccの懸濁液に混合し、新たな懸濁液を作成した。この溶解液の25℃の粘度は16.7mPa秒で、メタノールの粘度の31倍に相当する。なお、カプリン酸は、香料、潤滑剤、グリース、ゴム、染料、合成繊維、食品添加物、医薬品などを製造する際の原料として用いられる、汎用的な工業薬品である。
さらに、新たな懸濁液を、ジェットミル装置(株式会社セイシン企業の製品で型式A−O JET MILL)で20分間処理し、新たな懸濁液をカプリン酸のメタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離させた。このジェットミル装置は、縦型ジェット粉砕機で、装置の下部の粉砕ゾーンに設置された多数のグラインディングノズルから、0.69MPaの圧力で、0.12m2/分の風量の圧縮空気が噴出される。この際、新たな懸濁液同士が衝突し、新たな懸濁液が微細化される。微細化された新たな懸濁液は、装置内を循環し、再び装置下部の粉砕ゾーンに戻り、再度新たな懸濁液が衝突し、新たな懸濁液が微細化される。なお、圧縮空気の風量は、装置稼働時の0.12m2/分の風量から徐々に低減させた。
処理した新たな懸濁液を回収し、65℃に昇温してメタノールを気化させ、この後、カプリン酸の融点31.6℃より低い25℃に放置した。こうして作成した扁平紛の集まりから、1枚ずつの扁平紛を取り出し、扁平粉の側面の端部に付着した粉体を脱落させ、複数の扁平粉の側面を電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社が所有する極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる。反射電子線の1kVから900Vの間にある2次電子線を取り出し、これを画像として映し出し、複数の扁平粉の側面を観察した。極めて薄いグラフェンが、35−38nmの厚みからなるカプリン酸の固体の被膜で覆われていた。図1に、この状態を拡大して模式的に示す。1はグラフェンで、2はカプリン酸の固体の被膜である。
以上に説明したように、8段落に記載した有機化合物としてカプリン酸を用い、8段落に記載した、メタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法に従って、メタノール中に1枚1枚のグラフェンが分離した懸濁液を作成し、この懸濁液にカプリン酸を混合して新たな懸濁液を作成し、この新たな懸濁液を粉砕機にかけ、カプリン酸のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離し、このグラフェンの集まりからメタノールを気化させ、さらに、カプリン酸の融点より低い温度に晒し、カプリン酸の固体の被膜で覆われた扁平粉の集まりを作成した。これらの処理によって作成した扁平粉の集まりから、1枚1枚の扁平粉を取り出し、1枚の扁平粉からカプリン酸の固体の被膜を除去すれば、1枚のグラフェンが取り出せることが実証された。
本実施例は、カプリン酸(試薬一級品)を有機化合物として用い、カプリン酸の97gを、実施例1で製造した100ccの懸濁液に混合し、新たな懸濁液を作成した。この溶解液の25℃の粘度は16.7mPa秒で、メタノールの粘度の31倍に相当する。なお、カプリン酸は、香料、潤滑剤、グリース、ゴム、染料、合成繊維、食品添加物、医薬品などを製造する際の原料として用いられる、汎用的な工業薬品である。
さらに、新たな懸濁液を、ジェットミル装置(株式会社セイシン企業の製品で型式A−O JET MILL)で20分間処理し、新たな懸濁液をカプリン酸のメタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離させた。このジェットミル装置は、縦型ジェット粉砕機で、装置の下部の粉砕ゾーンに設置された多数のグラインディングノズルから、0.69MPaの圧力で、0.12m2/分の風量の圧縮空気が噴出される。この際、新たな懸濁液同士が衝突し、新たな懸濁液が微細化される。微細化された新たな懸濁液は、装置内を循環し、再び装置下部の粉砕ゾーンに戻り、再度新たな懸濁液が衝突し、新たな懸濁液が微細化される。なお、圧縮空気の風量は、装置稼働時の0.12m2/分の風量から徐々に低減させた。
処理した新たな懸濁液を回収し、65℃に昇温してメタノールを気化させ、この後、カプリン酸の融点31.6℃より低い25℃に放置した。こうして作成した扁平紛の集まりから、1枚ずつの扁平紛を取り出し、扁平粉の側面の端部に付着した粉体を脱落させ、複数の扁平粉の側面を電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社が所有する極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる。反射電子線の1kVから900Vの間にある2次電子線を取り出し、これを画像として映し出し、複数の扁平粉の側面を観察した。極めて薄いグラフェンが、35−38nmの厚みからなるカプリン酸の固体の被膜で覆われていた。図1に、この状態を拡大して模式的に示す。1はグラフェンで、2はカプリン酸の固体の被膜である。
以上に説明したように、8段落に記載した有機化合物としてカプリン酸を用い、8段落に記載した、メタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法に従って、メタノール中に1枚1枚のグラフェンが分離した懸濁液を作成し、この懸濁液にカプリン酸を混合して新たな懸濁液を作成し、この新たな懸濁液を粉砕機にかけ、カプリン酸のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離し、このグラフェンの集まりからメタノールを気化させ、さらに、カプリン酸の融点より低い温度に晒し、カプリン酸の固体の被膜で覆われた扁平粉の集まりを作成した。これらの処理によって作成した扁平粉の集まりから、1枚1枚の扁平粉を取り出し、1枚の扁平粉からカプリン酸の固体の被膜を除去すれば、1枚のグラフェンが取り出せることが実証された。
実施例3
本実施例は、ラウリン酸(試薬一級品)を有機化合物として用い、ラウリン酸の79gを実施例1で製造した100ccの懸濁液に混合し、新たな懸濁液を作成した。この溶解液の25℃の粘度は20.3mPa秒で、メタノールの粘度の38倍に相当する。なお、ラウリン酸は、石鹸やシャンプーなどを製造する際の原料となるラウリルアルコールの原料である。
さらに、新たな懸濁液を、実施例2と同様に、ジェットミル装置で20分間処理した。処理した新たな懸濁液を回収し、65℃に昇温してメタノールを気化させ、この後、ラウリン酸の融点43.2℃より低い25℃に放置した。こうして作成した扁平紛の集まりから、1枚ずつの扁平紛を取り出し、実施例2と同様に、扁平粉の側面の端部に付着した粉体を脱落させ、複数の扁平粉の側面を電子顕微鏡で観察した。
極めて薄いグラフェンが、34−36nmの厚みからなる有機化合物の固体の被膜で覆われていた。従って、実施例2と同様に、扁平粉の集まりからの扁平粉を取り出し、扁平粉から有機化合物の微細結晶の集まりを除去すれば、扁平粉がグラフェンになる。
以上に説明した2つの実施例によって、8段落に記載した、メタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法における5つの処理を実施すると、扁平粉の集まりが作成できる。この扁平粉の集まりから1枚1枚の扁平粉を取り出し、1枚の扁平粉から有機化合物の固体の被膜を除去すれば、1枚のグラフェンが取り出せることが実証された。また、本発明におけるグラフェンを取り出す方法に依れば、簡単な5つの処理を実施するだけで、有機化合物の固体の被膜で覆われたグラフェンからなるグラフェンの集まりが製造できる。従って、本発明は、グラフェンを用いた安価な部品やデバイスの実用化に貢献できる。
本実施例は、ラウリン酸(試薬一級品)を有機化合物として用い、ラウリン酸の79gを実施例1で製造した100ccの懸濁液に混合し、新たな懸濁液を作成した。この溶解液の25℃の粘度は20.3mPa秒で、メタノールの粘度の38倍に相当する。なお、ラウリン酸は、石鹸やシャンプーなどを製造する際の原料となるラウリルアルコールの原料である。
さらに、新たな懸濁液を、実施例2と同様に、ジェットミル装置で20分間処理した。処理した新たな懸濁液を回収し、65℃に昇温してメタノールを気化させ、この後、ラウリン酸の融点43.2℃より低い25℃に放置した。こうして作成した扁平紛の集まりから、1枚ずつの扁平紛を取り出し、実施例2と同様に、扁平粉の側面の端部に付着した粉体を脱落させ、複数の扁平粉の側面を電子顕微鏡で観察した。
極めて薄いグラフェンが、34−36nmの厚みからなる有機化合物の固体の被膜で覆われていた。従って、実施例2と同様に、扁平粉の集まりからの扁平粉を取り出し、扁平粉から有機化合物の微細結晶の集まりを除去すれば、扁平粉がグラフェンになる。
以上に説明した2つの実施例によって、8段落に記載した、メタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法における5つの処理を実施すると、扁平粉の集まりが作成できる。この扁平粉の集まりから1枚1枚の扁平粉を取り出し、1枚の扁平粉から有機化合物の固体の被膜を除去すれば、1枚のグラフェンが取り出せることが実証された。また、本発明におけるグラフェンを取り出す方法に依れば、簡単な5つの処理を実施するだけで、有機化合物の固体の被膜で覆われたグラフェンからなるグラフェンの集まりが製造できる。従って、本発明は、グラフェンを用いた安価な部品やデバイスの実用化に貢献できる。
1 グラフェン 2 カプリン酸の固体の被膜
Claims (3)
- メタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法は、2枚の平行平板電極のうちの一方の平行平板電極の表面に、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは塊状黒鉛粒子の集まりを引き詰め、該平行平板電極を容器に充填されたメタノール中に浸漬する、さらに、他方の平行平板電極を前記一方の平行平板電極の上に重ね合わせ、前記メタノール中で、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりを介して、前記2枚の平行平板電極を離間させる、この後、該2枚の平行平板電極の間隙に電位差を印加する、これによって、該電位差を前記2枚の平行平板電極の間隙の大きさで割った値に相当する電界が、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりに印加され、該鱗片状黒鉛粒子ないしは該塊状黒鉛粒子を形成する全ての黒鉛結晶の層間結合が同時に破壊され、前記2枚の平行平板電極の間隙にグラフェンの集まりが製造される、この後、前記2枚の平行平板電極の間隙を拡大し、該2枚の平行平板電極を前記メタノール中で傾斜させ、さらに、前記容器に3方向の振動を加え、前記グラフェンの集まりを、前記2枚の平行平板電極の間隙から、前記メタノール中に移動させる、この後、前記容器から前記2枚の平行平板電極を取り出し、さらに、前記容器内のメタノール中でホモジナイザー装置を稼働させ、該ホモジナイザー装置の稼働によって、前記メタノールを介して前記グラフェンの集まりに衝撃を繰り返し加え、該グラフェンの集まりを、前記メタノール中で1枚1枚のグラフェンンに分離し、該1枚1枚のグラフェンンに分離したグラフェンの集まりが、前記メタノールに分散した懸濁液を作成する、この後、融点が10℃より高く、かつ、メタノールに溶解する高粘度の有機化合物を、前記懸濁液を構成するメタノールの粘度が30−40倍に増大する割合として前記懸濁液に混合し、該有機化合物がメタノールに溶解した溶解液中に、1枚1枚のグラフェンンが分離して分散した新たな懸濁液を作成する、この後、該新たな懸濁液を粉砕機に供給し、該粉砕機の稼働によって、前記新たな懸濁液同士を連続して衝突させ、該新たな懸濁液を、前記有機化合物のメタノール溶解液の被膜で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する、この後、該1枚1枚に分離されたグラフェンからなるグラフェンの集まりから、1枚1枚のグラフェンを取り出す際に、該グラフェンの集まりを昇温して前記メタノールを気化し、さらに、該グラフェンの集まりを前記有機化合物の融点より低い温度に晒す、これによって、該グラフェンの集まりが、前記有機化合物からなる固体の被膜で覆われたグラフェンからなるグラフェンの集まりとなり、該グラフェンの集まりから1枚1枚のグラフェンを取り出す、メタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法。
- 請求項1に記載したメタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法は、前記有機化合物が、炭素原子数が8−12の飽和脂肪酸であり、該飽和脂肪酸を前記有機化合物として用い、請求項1に記載したメタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法に従って、1枚1枚のグラフェンを取り出す、請求項1に記載したメタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法。
- 請求項1に記載したメタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法は、前記粉砕機が、ジェットミル装置であり、該ジェットミル装置を前記粉砕機として用い、請求項1に記載したメタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法に従って、1枚1枚のグラフェンを取り出す、請求項1に記載したメタノール中に1枚1枚のグラフェンンが分離した懸濁液を作成し、該懸濁液から1枚1枚のグラフェンを取り出す方法。
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