JP2020126795A - 量子ドット発光素子及び表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】漏れ電流が小さく、素子特性に優れた量子ドット発光素子、並びに、かかる量子ドット発光素子を具え、発光特性に優れた表示装置を提供する。【解決手段】陰極3と、発光層5と、陽極8とを具え、前記発光層5が、前記陰極3と前記陽極8との間に位置する量子ドット発光素子1であって、前記発光層5が、量子ドットと、電子輸送材料とを含むことを特徴とする量子ドット発光素子1、並びに、該量子ドット発光素子1を具えることを特徴とする表示装置である。【選択図】図1

Description

本発明は、量子ドット発光素子及び表示装置に関するものである。
表示装置に求められる重要な特性の一つとして、色再現性がある。特に、2018年に放送が開始されたスーパーハイビジョンの表色系は、自然界に実在するほぼすべての物体色及び既存表色システムの色域を包含することを目指しており、スーパーハイビジョンを表示する表示装置には、広い色域の色再現性が求められる。ここで、自発光型の表示装置の場合、青、緑、赤の各色の発光材料の色純度を高くする必要がある。
近年、下記特許文献1や非特許文献1に開示されているように、半導体ナノ結晶からなる量子ドットを発光材料として用いた電界発光素子(量子ドット発光素子)が提案されている。量子ドットは、結晶粒径を変えることにより発光色を制御することができ、粒径分布を均一にすることにより発光スペクトルの半値幅を小さくすることができる。この特徴を生かして、量子ドットは、表示色域の広い表示装置用の発光材料として利用できる可能性がある。また、量子ドットを電界発光素子に応用する研究開発が行われており、量子ドットを用いた電界発光素子の中には、半値幅30nm以下、外部量子効率で約15%を実現した例も存在する(非特許文献2)。
特許第4948747号公報
シラサキら(Y.Shirasaki et.al),ネイチャー・フォトニクス(Nature Photonics),Vol.7,pp.13−23(2013) Y.ヤンら(Y.Yang et al.),ネイチャー・フォトニクス(Nature Photonics),Vol.9,pp.259−266(2015)
上記の量子ドットを用いた電界発光素子の発光性能を高めるためには、量子ドットを電荷の輸送や注入を行うための各種材料と適切に組み合わせて素子化する必要がある。ここで、素子化にあたっては、量子ドットを含む発光層に対して、電荷を注入し易い材料を用いることが基本であるが、発光に寄与できない漏れ電流が増加してしまうと、発光効率の低下や不安定な動作につながる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、漏れ電流が小さく、素子特性に優れた量子ドット発光素子を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかる量子ドット発光素子を具え、発光特性に優れた表示装置を提供することを更なる課題とする。
本発明者らは、量子ドット発光素子の漏れ電流を低減するために鋭意検討したところ、量子ドット発光素子の発光層に量子ドットと共に電子輸送性の材料を含ませることで、電圧印加時の漏れ電流を低減できることを見出し、本発明に到達したものである。
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
本発明の量子ドット発光素子は、陰極と、発光層と、陽極と、を具え、前記発光層が、前記陰極と前記陽極との間に位置する量子ドット発光素子であって、
前記発光層が、量子ドットと、電子輸送材料と、を含むことを特徴とする。
かかる本発明の量子ドット発光素子は、漏れ電流が抑制されており、素子特性に優れる。
本発明の量子ドット発光素子の好適例においては、前記電子輸送材料が、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、1,3,5−トリ(m−ピリド−3−イル−フェニル)ベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種である。この場合、量子ドット発光素子の漏れ電流が更に抑制され、素子特性が向上する。
ここで、前記電子輸送材料が、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボランであることが好ましい。この場合、量子ドット発光素子の漏れ電流が更に抑制され、素子特性が更に向上する。
また、本発明の表示装置は、上記の量子ドット発光素子を具えることを特徴とする。かかる本発明の表示装置は、発光特性に優れる。
本発明によれば、漏れ電流が小さく、素子特性に優れた量子ドット発光素子を提供することができる。
また、本発明によれば、かかる量子ドット発光素子を具え、発光特性に優れた表示装置を提供することができる。
本発明の量子ドット発光素子の構造の一例を示した概略図である。 量子ドットの構造の一例を示した模式図である。 実施例1及び比較例1の量子ドット発光素子の電圧−電流密度特性を示すグラフである。 実施例1及び比較例1の量子ドット発光素子の電流密度−外部量子効率特性を示すグラフである。
以下に、本発明の量子ドット発光素子及び表示装置を、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
<<量子ドット発光素子>>
本発明の量子ドット発光素子は、陰極と、発光層と、陽極と、を具え、前記発光層が、前記陰極と前記陽極との間に位置する量子ドット発光素子であって、前記発光層が、量子ドットと、電子輸送材料と、を含むことを特徴とする。
本発明の量子ドット発光素子においては、発光層が、発光材料として、量子ドットを含むと共に、更に、電子輸送材料を含む。該電子輸送材料は、陰極側から発光層に注入される電子の流れを妨げず、且つ、陽極側から発光層に注入される正孔を陰極側へと通過させない作用(即ち、発光層から流れ出る正孔電流をブロックする作用)を有する。そのため、本発明の量子ドット発光素子は、漏れ電流が抑制されており、素子特性にも優れる。
次に、本発明の量子ドット発光素子の一態様を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の量子ドット発光素子の構造の一例を示した概略図である。図1に示す量子ドット発光素子1は、基板2上に、陰極3、電子注入層4、発光層5、正孔輸送層6、正孔注入層7及び陽極8を、この順に積層した構成を有する。なお、図1に示す量子ドット発光素子1は、下部に配置した陰極3側より電子を注入し、上部に配置した陽極8より正孔を注入する構成となっているが、本発明の量子ドット発光素子は、これに限定されるものではなく、上下を逆転した構造であってもよい。
<基板>
前記基板2は、当該基板2側より光を取り出すボトムエミッション型素子の場合は、透明な材料からなることが好ましい。かかる透明な材料としては、ガラス、プラスチックフィルム等を例示することができる。ここで、プラスチックフィルムの材質としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等が挙げられる。
一方、上部電極側から光を取り出すトップエミッション型素子の場合には、基板2の材料は、必ずしも透明な材料である必要はない。基板2として、不透明基板を用いる場合、該不透明基板としては、例えば、着色したプラスチックフィルム基板、アルミナのようなセラミックス材料からなる基板、ステンレス鋼のような金属板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成した基板等が挙げられる。
また、基板2として、例えば、プラスチックフィルム等の可撓性基板を用い、その上に量子ドット発光素子を形成した場合には、画像表示部を容易に変形することのできるフレキシブル量子ドット発光素子とすることができる。
前記基板2の平均厚さは、特に限定されるものではないが、0.001〜30mmが好ましく、0.01〜3mmがより好ましい。
<陰極>
前記陰極3は、基板2側より光を取り出すボトムエミッション型素子の場合は、透明で導電性の高い材料からなることが好ましい。陰極3としては、例えば、インジウム−錫−酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛−酸化物(IZO)等の導電性透明酸化物を用いることができる。
一方、上部電極側から光を取り出すトップエミッション型素子の場合には、陰極3の材料は、必ずしも透明な材料である必要はないため、陰極3として、金属電極を用いてもよい。該金属電極に用いる金属としては、Ca、Mg、Al、Sn、In、Cu、Ag、Au、Pt等が挙げられる。
前記陰極3の平均厚さは、特に限定されるものではないが、10〜500nmが好ましく、50〜200nmが更に好ましい。
<電子注入層>
前記電子注入層4は、陰極3からの電子注入を容易にする目的で用いる。該電子注入層4の材料としては、無機材料、或いは電子注入性の低分子材料又は高分子材料からなる有機材料を用いることができる。電子注入層4の材料として、より具体的には、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化タングステン(WO3)、酸化タンタル(Ta23)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al23)等の金属酸化物が好ましく、これらの中でも、電子注入性の観点から、酸化亜鉛、酸化チタンが更に好ましく、酸化亜鉛が特に好ましい。
電子注入層4の形成には、ナノ粒子を用いることが好ましい。該ナノ粒子の粒径は、1nm〜100nmが好ましく、1nm〜10nmが更に好ましく、1nm〜5nmがより一層好ましい。好ましくは、酸化亜鉛ナノ粒子等の金属酸化物のナノ粒子をスピンコート法によって成膜した薄膜を、電子注入層4として用いることができる。
前記電子注入層4の平均厚さは、特に限定されるものではないが、5〜200nmが好ましく、10〜100nmが更に好ましい。
<発光層>
前記発光層5は、量子ドットと、電子輸送材料と、を含む。該発光層5では、陽極8から注入された正孔と陰極3から注入された電子とが再結合し、量子ドットからの発光が得られる。ここで、発光層5が、量子ドットと、電子輸送材料と、を含むことで、電圧印加時の漏れ電流を低減させる効果が得られる。
発光層5の発光色は、発光層5に含まれる量子ドットの結晶粒径や種類(材質)によって変化させることができる。ここで、量子ドットの結晶粒径は、所望の発光色に応じて選択でき、例えば、1〜10nmが好ましい。該量子ドットは、半導体微粒子からなるコアと呼ばれる中心部分と、コアの表面(又は後述するシェルの表面)を覆うリガンドと呼ばれる有機物と、からなることが好ましい。
前記量子ドットのコア部分を構成する半導体の例としては、II−VI族の化合物、II−V族の化合物、III−VI族の化合物、III−V族の化合物、IV−VI族の化合物、I−III−VI族の化合物、II−IV−VI族の化合物、及びII−IV−V族の化合物、例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、InN、InP、InAs、InSb、CuInS等が挙げられる。これらの中でも、量子ドットのコアとしては、合成の容易さ、所望の波長の発光を得るための粒径及び/又は粒径分布の制御のし易さ、発光の量子効率の観点から、CdSe、InPが好ましい。
前記量子ドットは、コアの周りを取り囲むようにシェルと呼ばれる一層または複数層の半導体層を有してもよい。ここで、シェル部分を構成する半導体も、コア部分を構成する半導体と同様の組成の半導体を用いることができる。量子ドットのシェルは、被覆するコアに用いられる半導体に応じて選択することが好ましく、シェルとしては、コアよりも大きなバンドギャップを有する半導体を用いることが好ましい。この場合、コアの励起エネルギーが、シェルによって効率よくコア内に閉じ込められる。具体的には、例えば、コアがCdSe、InPからなる場合、シェルには、より大きなバンドギャップを有するZnSを用いることが好ましい。
前記量子ドットにおいては、半導体表面を安定化すると共に、半導体微粒子の凝集を抑制するため、半導体微粒子表面をリガンドとよばれる有機配位子によりキャッピングを行うことが好ましい。キャッピングするためのリガンド部分に親油性の長鎖アルキル基等が含まれると有機溶剤に対しての溶解性が向上し、量子ドットを有機溶媒に溶解させた量子ドット溶液を調製することができる。前記リガンド(有機配位子)としては、炭化水素基の結合したアミン、炭化水素基の結合したカルボン酸、炭化水素基の結合したホスフィン、炭化水素基の結合した酸化ホスフィン、炭化水素基の結合したチオール等が挙げられる。前記炭化水素基は、親油性の鎖状炭化水素基であることが好ましい。親油性の鎖状炭化水素基の結合したアミンとしては、ヘキサデシルアミン、オレイルアミン等が挙げられる。親油性の鎖状炭化水素基の結合したカルボン酸としては、オレイン酸等が挙げられる。親油性の鎖状炭化水素基の結合したホスフィンとしては、トリオクチルホスフィン等が挙げられる。親油性の鎖状炭化水素基の結合した酸化ホスフィンとしては、トリ−n−オクチルホスフィンオキシド等が挙げられる。親油性の鎖状炭化水素基の結合したチオールとしては、ドデカンチオール等が挙げられる。
図2に、本発明の量子ドット発光素子に好適に用いることができる量子ドットの構造の一例を示す。図2に示す量子ドット9は、コア10と、コア10の周りを取り囲むシェル11と、シェル11の表面を覆うリガンド12と、を具える。該量子ドット9は、化学的安定性が高く、凝集が生じ難い。また、該量子ドット9は、溶液として調製し易く、スピンコート法等によって成膜し易いという利点がある。
前記電子輸送材料は、例えば、前記量子ドットと混合され、発光層5において、量子ドットの隙間を埋める形で存在する。発光層5において、量子ドットと共に使用する材料は、例えば、電子注入層4から発光層5へと注入される電子の流れを妨げず、さらに正孔輸送層6から発光層5へと注入される正孔を電子注入層4へと通過させないために、電子輸送性の材料が好ましく、本発明においては、電子輸送材料を使用する。また、該電子輸送材料は、量子ドットと混合して使用する場合は、量子ドットの分散液に溶解する材料であることが好ましい。該電子輸送材料としては、有機溶媒への溶解性を有し、且つ電子輸送性を有する無機材料あるいは有機材料を好適に用いることができる。該電子輸送材料は、好ましくは電子輸送性の有機材料であり、電子輸送性の有機材料としては、例えば、ピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体等が挙げられる。好適な電子輸送材料として、具体的には、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン(3TPYMB)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)、1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(TPBI)、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(Bphen)、1,3,5−トリ(m−ピリド−3−イル−フェニル)ベンゼン(TmPyPB)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、量子ドット発光素子の漏れ電流を抑制する効果、及び素子特性の観点から、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン(3TPYMB)が好ましい。
前記発光層5における、量子ドットと、電子輸送材料と、の質量比(量子ドット/電子輸送材料)は、特に限定れるものではないが、1/2〜20/1の範囲が好ましく、2/1〜10/1の範囲が更に好ましい。量子ドットと電子輸送材料との質量比が上記の範囲内であれば、量子ドット発光素子の漏れ電流を抑制する効果、及び素子特性を向上させる効果が更に向上する。
前記発光層5の平均厚さは、特に限定されるものではないが、5〜200nmが好ましく、10〜100nmが更に好ましい。
<正孔輸送層>
前記正孔輸送層6は、陽極8から注入した正孔を発光層5まで輸送するために用いる。正孔輸送層6を構成する材料としては、正孔輸送性の無機材料あるいは有機材料を用いることができる。正孔輸送層6を構成する材料は、好ましくは正孔輸送性の有機材料であり、例えば、2,2’−ビス(N−カルバゾール)−9,9’−スピロビフルオレン(CFL)、4,4’,4”−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TCTA)、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)、4,4’,4”−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD3)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、正孔輸送性の観点から、2,2’−ビス(N−カルバゾール)−9,9’−スピロビフルオレン(CFL)が好ましい。
前記正孔輸送層6の平均厚さは、特に限定されるものではないが、10〜500nmであることが好ましく、20〜100nmが更に好ましい。
<正孔注入層>
前記正孔注入層7は、陽極8からの正孔注入を容易にするために形成する。正孔注入層7には、有機材料、無機材料いずれも用いることができる。正孔注入層7に用いる代表的な材料としては、三酸化モリブデン(MoO3)、酸化バナジウム(V25)、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化レニウム、酸化タングステン、酸化マンガン等の金属酸化物が挙げられる。また、正孔注入層7に用いる有機材料としては、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリル(HAT−CN)、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノ−キノジメタン(F4−TCNQ)、ヘキサフルオロテトラシアノナフトキノジメタン(F6−TNAP)等が挙げられる。正孔注入層7には、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、正孔注入層7に用いる材料としては、正孔注入性の観点から、三酸化モリブデンが好ましい。
前記正孔注入層7の平均厚さは、特に限定されるものではないが、1〜500nmが好ましく、3〜50nmが更に好ましい。
<陽極>
前記陽極8の材料としては、仕事関数が比較的大きい金属が好ましい。仕事関数の大きい金属を用いることにより、陽極から有機層への正孔注入障壁を低くすることができ、正孔を注入させ易くすることができる。陽極8に用いる金属としては、例えば、Al、Au、Pt、Ni、W、Cr、Mo、Fe、Co、Cu等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、陽極8に透明な材料を用いると、上部電極から光を取り出すトップエミッション型素子とすることができる。
前記陽極8の平均厚さは、特に限定されるものではないが、10〜500nmが好ましく、30〜150nmが更に好ましい。
上述した電子注入層4、発光層5、正孔輸送層6、正孔注入層7は、それぞれ1層ずつでもよいし、それぞれの層が複数の役割を受け持つ構造となっていてもよい。また、電子注入層4と、発光層5との間に、電子輸送層が存在していてもよい。また、例えば、一つの層で、正孔注入層と正孔輸送層を兼用したりすることも可能である。
<各層の形成方法>
前記陰極3、電子注入層4、電子輸送層、発光層5、正孔輸送層6、正孔注入層7、陽極8の形成方法は、特に限定されるものではなく、真空蒸着法、電子ビーム法、スパッタリング法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等の方法を用いることができる。また、これらの方法を用いて、前記陰極3、電子注入層4、電子輸送層、発光層5、正孔輸送層6、正孔注入層7、陽極8の厚さを、目的に応じて適宜調整することができる。また、これらの方法は、各層の材料の特性に応じて選択するのが好ましく、層ごとに作製方法が異なっていてもよい。
以上により、図1に示される量子ドット発光素子1が完成する。
<<表示装置>>
本発明の表示装置は、上述の量子ドット発光素子を具えることを特徴とする。本発明の表示装置は、上述した漏れ電流が小さく、素子特性に優れた量子ドット発光素子を具えるため、発光特性に優れる。本発明の表示装置は、上述した量子ドット発光素子の他に、表示装置に一般に用いられる他の部品を具えることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<量子ドットの合成>
J.カクら(J.Kwak et al.),ナノ・レターズ(Nano Letters),12,2362−2366(2012)に開示されている方法に従って、緑色発光を示す量子ドットCdSe/ZnS(コア/シェル型の量子ドット)を合成した。具体的な合成方法を以下に示す。
0.257gの酸化カドミウム、7.34gの酢酸亜鉛、30.13gのオレイン酸、150mlのオクタデセンをフラスコに投入した。減圧下、150℃で30分加熱後、アルゴンにてリークし、アルゴンフロー下で280℃まで昇温した(溶液1)。0.079gのセレン、1.122gの硫黄を20mlのトリオクチルホスフィンに溶解させた溶液を用意し、溶液1に投入した。280℃で10分間混合した後、室温まで冷やした(溶液2)。この溶液2にエタノールを加えて、析出物を遠心分離で回収した。回収物をトルエンに分散させて、濃度を10mg/mlとなるように調整した。
<酸化亜鉛ナノ粒子の合成>
J.カクら(J.Kwak et al.),ナノ・レターズ(Nano Letters),12,2362−2366(2012)に開示されている方法に従って、酸化亜鉛ナノ粒子を合成した。具体的な方法を以下に示す。
6.7mmolの酢酸亜鉛を55mlのメタノールに溶解させ、0.12mol/lの溶液を得た。8.6mmolの水酸化カリウムを25mlのメタノールに溶解させ、0.34mol/lの溶液を得た。窒素雰囲気下で、酢酸亜鉛メタノール溶液を60℃に加熱し、撹拌しながら水酸化カリウムメタノール溶液を滴下し、2時間反応させると液は白濁状態となった。得られた白濁液から遠心分離により回収した酢酸亜鉛をメタノールで洗い、最終的にブタノールに再分散させて、15mg/mlの酸化亜鉛ナノ粒子ブタノール分散液を得た。
<量子ドット発光素子の作製>
図1に示す構造の本発明に従う量子ドット発光素子を次のようにして作製した。
まず、ガラス基板にITOからなる透明電極(陰極、厚さ:100nm)を形成し、これをライン状にパターニングした。
次に、電子注入層として前項にて合成した酸化亜鉛ナノ粒子の層を形成した。酸化亜鉛ナノ粒子は、スピンコート法によって成膜し、180℃で30分間加熱した(電子注入層、厚さ:40nm)。
次に、前項にて合成した量子ドットCdSe/ZnSのトルエン分散液に、電子輸送材料として、下記式(1):
Figure 2020126795
で示される構造式を有する材料[トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン(3TPYMB)]を混合し、量子ドット(CdSe/ZnS)6mg/ml、電子輸送材料(3TPYMB)1.5mg/mlとなるようにトルエン分散液の濃度を調整した(量子ドット電子輸送材料混合液)。得られた量子ドット電子輸送材料混合液をスピンコート法によって成膜した(発光層、厚さ:20nm)。窒素雰囲気下、130℃にて30分間加熱した。
次に、基板を真空蒸着成膜装置に入れ、真空蒸着法によって、下記式(2):
Figure 2020126795
で示される構造式を有する材料[2,2’−ビス(N−カルバゾール)−9,9’−スピロビフルオレン(CFL)]からなる正孔輸送層を成膜した(厚さ:40nm)。
続いて、真空蒸着により、三酸化モリブデンからなる正孔注入層(厚さ:10nm)、アルミニウムからなる電極(陽極、厚さ:70nm)を成膜した。
なお、図1には示していないが、量子ドット発光素子は、窒素ガスで満たされたグローブボックス中で、封止用ガラスの周縁部に紫外線硬化樹脂を塗布した後、量子ドット発光素子を形成した前記基板の周縁部に貼り合せて、封止を行った。
(比較例1)
上記実施例1と同様に量子ドットCdSe/ZnS、酸化亜鉛ナノ粒子の合成を実施した。これらの材料を用いて実施例1と同様に発光素子を作製した。このときに、発光層には、電子輸送材料を混合せず、量子ドットのみの発光層とした。
<素子の評価>
上記の実施例1、比較例1の量子ドット発光素子のITO電極側に負、アルミニウム電極側に正となるように電圧を印加すると、それぞれ発光が得られた。
実施例1、比較例1の、それぞれの量子ドット発光素子の電圧−電流密度特性を図3に示す。図3から、2V以下の領域で見られる漏れ電流には、各素子で差が見られることが分かる。具体的には、実施例1の素子は、2Vでの電流密度が7.1×10-4mA/cm2であり、漏れ電流を低く抑えることができている。それに対して、比較例1の素子は、2Vでの電流密度が9.4×10-3mA/cm2となり、多くの電流が発光に寄与せずに流れてしまっている。
次に、実施例1と比較例1の量子ドット発光素子の電流密度−外部量子効率特性を図4に示す。図4から、実施例1の素子は、比較例1の素子に比べて、低電流密度領域での外部量子効率が高いことが分かる。これは、混合した電子輸送材料が漏れ電流を抑えたことにより得られた効果である。
以上の結果から、電子輸送材料を発光層に混合した、本発明に従う量子ドット発光素子が、漏れ電流を抑えて発光特性を改善できることが分かる。
1:量子ドット発光素子
2:基板
3:陰極
4:電子注入層
5:発光層
6:正孔輸送層
7:正孔注入層
8:陽極
9:量子ドット
10:コア
11:シェル
12:リガンド

Claims (4)

  1. 陰極と、発光層と、陽極と、を具え、前記発光層が、前記陰極と前記陽極との間に位置する量子ドット発光素子であって、
    前記発光層が、量子ドットと、電子輸送材料と、を含むことを特徴とする、量子ドット発光素子。
  2. 前記電子輸送材料が、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、1,3,5−トリ(m−ピリド−3−イル−フェニル)ベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の量子ドット発光素子。
  3. 前記電子輸送材料が、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボランである、請求項2に記載の量子ドット発光素子。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の量子ドット発光素子を具えることを特徴とする、表示装置。
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