以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明のセンサ配置構造の一実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、本発明のセンサ配置構造は、ネジ2とセンサモジュール3と
41とを有する。ネジ2はネジ本体21とネジ蓋22とを有する。このネジ2は、部材の一例に相当する。ネジ本体21は、先端側に形成されたネジ部211と後端側に形成された頭部212とから構成されている。これらネジ部211と頭部212は一体に形成されている。ネジ部211は、先端211aが閉塞した中空円筒状をしている。ネジ部211の外周面211bにはネジ山が形成されている。また、ネジ部211の内部には内周面211cによって画定された第1内部空間SAが形成されている。
頭部212は、ネジ部211よりも大径な中空円筒状に形成されている。頭部212の内部には頭部212の内周面212aによって画定された第2内部空間SBが形成されている。第2内部空間SBは第1内部空間SAに連通している。以下の説明では、第1内部空間SAと第2内部空間SBを合わせて称するときは、収容空間Sと称する。第2内部空間SBの後端は開放されている。頭部212の外周面212bには、外周面212b全周に渡って円周溝212e(図3(b)参照)が形成されている。この円周溝212eには、頭部212とネジ蓋22との隙間から水等が侵入しないように防水手段としてOリング213がはめ込まれている。
ネジ蓋22は円筒状の側壁部221と円盤状の上板部222とが一体に形成されたものである。なお、このネジ蓋22とOリング213は、水や薬品などがセンサモジュール3に達する心配のない箇所にネジ本体21を設置する場合には省略してもよいが、センサモジュール3の劣化を防ぐために使用することが望ましい。ネジ本体21にネジ蓋22を取り付けた状態では、頭部212の後端面は、ネジ蓋22の上板部222によって覆われている。ネジ蓋22は、Oリング213を挟んで頭部212の後端側部分に圧入されることで、ネジ本体21に固定されている。なお、ネジ蓋22の側壁部221の内周面に雌ネジを形成し、ネジ本体21の頭部212の外周面に雄ネジを形成してネジ蓋22とネジ本体21とをネジ締結してもよい。ネジ締結することで、振動等によってネジ蓋22がネジ本体21から外れてしまうことを抑制することができる。上板部222の中央には孔222aが形成されている。その孔222aにはグロメット23が固定されている。
センサモジュール3は、ネジ2の内部に配置されている。このセンサモジュール3は、線状検出体31とセンサ基板32とから構成されている。なお、図1では、センサ基板32の一部(図1における右下部分)を切り欠いて示している。線状検出体31は、圧電体312(図2参照)を有する線状のセンサであり、自身の変形状態に応じた強度の信号を発生するものである。具体的には、線状検出体31のうち変形した部分の長さおよび変形速度に応じた電圧を発生する。ただし、変形した部分の長さおよび変形量に応じた電圧を発生するものでもよく、電圧以外の信号を出力するものであってもよい。線状検出体31の後端は、はんだによりセンサ基板32に接続されている。この線状検出体31の構成については後に詳述する。
線状検出体31は、サポート線41に撚り合わされている。このサポート線41は、張力付与部材の一例に相当する。本実施形態におけるサポート線41は、7本のステンレスワイヤをその断面において最密構造に配置した上で撚り合わせたものである。サポート線41の表面はナイロンなどの樹脂によって被覆されている。この被覆により、ネジ2が振動等したときに、サポート線41を構成する堅いステンレスによって線状検出体31の表面を擦ることがなくなるので、線状検出体31を長寿命化できる。また、線状検出体31とサポート線41相互の滑りが良くなるので線状検出体31が変形しやすくなる。サポート線41の直径は、樹脂による被覆分も含めて0.46mmである。なお、サポート線41として、銅線などの他の金属線を用いても良く、樹脂製の線材を用いても良い。さらに、サポート線41は単線で構成されていてもよい。また、金属線を用いた場合の樹脂による被覆も必須ではない。
後述するように、線状検出体31は内部に金属線を含んだ可撓性を有する線である。また、サポート線41も可撓性を有するので、線状検出体31にサポート線41を撚り合わせると、線状検出体31とサポート線41とがそれぞれ撚り戻ろうとする。これにより、線状検出体31に張力が付与され、線状検出体31にたるみが生じることを防止できる。線状検出体31にたるみが生じていると、たるんでいる部分では振動等が吸収されて線状検出体31における検出感度が低下してしまう。たるみを防止することで、線状検出体31が振動等に対応した変形をしやすくなる。また、振動等が生じていない初期状態における線状検出体31の形状がサポート線41によって一定形状に維持されるので、線状検出体31から出力される信号の再現性が高まる。すなわち、ネジ2に同じ振動等が生じた場合には同一波形の信号が出力される。また、撚り合わされた線状検出体31とサポート線41は、2つの線の結合体全体としてしなることができるので線状検出体31に変形が生じやすい。従って、ネジ2に振動等が生じたときに感度よく信号を出力することができる。さらに、第1内部空間SAが細長い空間であっても容易に挿入することができるので、細長いネジ2であっても第1内部空間SAの奥まで線状検出体31を挿入して設置することができる。なお、サポート線41の剛性が、線状検出体31の剛性未満であると、サポート線41の剛性不足によってサポート線41が線状検出体31の支えにならずに線状検出体31にたるみが生じてしまう場合がある。このため、線状検出体31よりも剛性の高いサポート線41を用いることが好ましい。
線状検出体31の後端部分とサポート線41の後端部分は、不図示の樹脂によってセンサ基板32に固定されている。線状検出体31の後端部分がセンサ基板32に対して揺れ動くと線状検出体31の、センサ基板32への取り付け部分で断線してしまう可能性があるが、樹脂で固定することで断線の可能性を低下させることができる。また線状検出体31の後端部分とサポート線41の後端部分が固定されることで初期状態における線状検出体31の姿勢が一定になるので、線状検出体31から出力される信号の再現性が高まる。なお、サポート線41が固定されていない状態で線状検出体31に撚り合わされているだけでも線状検出体31に張力を付与することはできるが、サポート線41を固定することで線状検出体31の初期状態における姿勢をより安定させることが可能になる。
センサ基板32は、頭部212の内周面212aに形成された切欠溝212cに挿入されることでネジ2の内部に固定されている。このセンサ基板32の固定構造については後述する。センサ基板32は、センサ回路321を備えている。また、センサ基板32には、先端側パターン配線322および後端側パターン配線323が形成されている。この先端側パターン配線322は信号線の一例に相当する。線状検出体31は、先端側パターン配線322よりも先端側に配置された検出機能を有する部分である。線状検出体31が変形することで発生した信号(電圧)は、センサ基板32に形成された先端側パターン配線322を通じてセンサ回路321に入力される。センサ回路321は、オペアンプを有する回路である。センサ回路321で処理された信号は、後端側パターン配線323を介して配線9に送られて図示しない解析装置に伝達される。配線9は、先端部分がグロメット23に固定された保護チューブ90によって覆われている。なお、センサ基板32にA/D変換器と無線通信モジュールを設け、センサ回路321とA/D変換器によって処理された信号を無線通信モジュールによって無線で解析装置に送信してもよい。
次に、線状検出体31の構造について説明する。図2は、線状検出体の構造を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、線状検出体31は、圧電センサ線310と、その外周を覆うシース314を有する。圧電センサ線310は、内部導体311と圧電体312と外部導体313とから構成されている。内部導体311は、圧電センサ線310の中心に配置されており、7本の導体線3110で構成されている。圧電体312は、内部導体311の外周に設けられている。外部導体313は、圧電体312の外周に設けられている。
7本の導体線3110は、いずれも直径が10μmのものであって、このうち4本はステンレス製の導体線3110Sであり、残りの3本は銅製の導体線3110Cである。図2では、ステンレス製の導体線3110Sが左下がりのハッチングで、また銅製の導体線3110Cが右下がりのハッチングでそれぞれ示されている。図2に示す内部導体311では、中心に配置される導体線には、ステンレス製の導体線3110S(ステンレスワイヤ)が用いられており、外周に配置される導体線には、ステンレス製の導体線3110Sと銅製の導体線3110Cが交互に用いられている。銅製の導体線3110Cは、ステンレス製の導体線3110Sに比べて、電気抵抗が低く、かつ柔らかい。反対に、ステンレス製の導体線3110Sは、銅製の導体線3110Cに比べて、電気抵抗は高くなるが、機械的強度(例えば、引張強度等)および剛性は高くなる。
7本の導体線3110は、正六角形の各頂点およびその正六角形の中心に配置された状態となっている。これらの7本の導体線3110は、一本に撚り合わされた状態のものである。すなわち、内部導体311は、7本の導体線3110をその断面において最密構造に配置した上で撚り合わせたものである。なお、この場合の内部導体311の太さは最大30μmとなる。このように複数本の導体線3110を甘撚、あるいは中撚程度に撚っておくことで、撚りの方向とは逆方向の緩みを許容し、この緩みによって圧電センサ線310、ひいては線状検出体31に柔軟性を与えることができる。
なお、導体線3110の直径は10μmに限られず、8μm以上40μm以下であってもよく、8μm以上30μm以下にすることが好ましい。導体線3110は、細ければ細いほど柔軟性は高められるが強度および剛性が低下し、太ければ太いほど柔軟性は低下するが強度および剛性が高められる。また、導体線3110の太さが20μm以上であれば、低コストで製造することができ、且つ製造も容易である。また、導体線3110の太さを同じにする構成に限られるものではなく、異なる太さの導体線3110を撚り合わせて内部導体311を構成してもよい。
なお、図2に示す内部導体311は、7本の導体線3110を撚り合わせたものであったが、この数については7本でなくてもよい。複数の導体線3110を撚り合わせることにより、圧電センサ線310、ひいては線状検出体31の柔軟性を高めることができる。また例えば、複数本を撚り合わせた束を複数用意し、これらをさらに撚り合わせる、といったように複数段階に分けて撚り合わせものであってもよい。例えば、7本の細い導体線3110を撚り合わせた束を7本用意し、その束をさらに撚り合わせた構成にしてもよい。複数段階に分けて撚り合わせることで、線状検出体31の柔軟性がより高まるので、振動等に応じて線状検出体31が変形しやすくなる。その結果、線状検出体31における検出感度を高めることができる。なお、複数段階に分けて撚り合わせる場合のように、撚り合わせの工程が複数回ある場合には、撚り合わせる方向を異ならせてもよい。一方、複数の導体線3110を撚り合わせずに、直線状に束にしたものを用いてもよい。また、例えば、撚り合わせない複数の導体線3110の束と、撚り合わせた複数の導体線3110を撚り合わせる、といったように、これらの構成を組み合わせてもよい。これらの場合であっても、圧電材料を塗布することで、複数の導体線3110が互いに接着されて束ねられ、一本の圧電性繊維を製造することができる。
以上説明した圧電センサ線310では、内部導体311を構成する導体線3110として、機械的強度や電気抵抗が異なる複数種類の導体線が用いられているが、柔軟性をさらに高める場合や、電気抵抗をさらに低くする場合には、中心の導体線3110を、銅製の導体線3110Cに代えてもよく、あるいは、7本の導体線3110の全てを銅製の導体線3110Cにしてもよい。反対に、機械的強度および剛性をさらに高める場合には、7本の導体線3110の全てをステンレス製の導体線3110Sにしてもよい。また、ステンレス製の導体線3110Sに代えて、タングステン製の導体線や、タングステン及びその合金等の高張力鋼材あるいは超高張力鋼からなる導体線を用いてもよいし、銅製の導体線3110Cに代えて、チタン製の導体線や、チタン合金あるいはマグネシウムやマグネシウム合金等からなる導体線を用いてもよい。さらには、カーボンナノチューブを含む導体線であってもよいし、ピッチ系炭素繊維を含む導体線であってもよい。あるいは、弾性変形しやすいバネ鋼材からなる導体線を用いてもよい。
圧電体312は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電材料を内部導体311に塗布することによって形成されたものである。ポリフッ化ビニリデンは、圧電効果が発生する軽量の高分子材料であり、これに圧力を加えると電圧が発生し、電圧を加えると歪が発生する特性を備えている。圧電体312には分極処理が施されており、圧電体312に変形が生じたときに内部導体311と外部導体313の間に電圧が誘起される。図1に示したネジ2を工作機械やロボットなどの稼働体やビルなどの構造物に配置すると、稼働することで生じた稼働体の振動等や構造物に地震などの外力が加わった際に生じる振動等がネジ2に伝わる。そして、そのネジ2に伝わった振動等によって圧電体312が変形することで、内部導体311と外部導体313の間に電圧が誘起される。
図2に示す圧電体312を構成する圧電材料としては、ポリフッ化ビニリデンの他に、トリフルオロエチレン(TrEF)や、PVDFとTrEFの混晶材料や、ポリ乳酸、ポリ尿酸、ポリアミノ酸等の双極子モーメントをもつ高分子材料があげられる。また、圧電材料を塗布する方式としては、浸漬(ドブ付け)塗装であってもよいしスプレー等による吹き付け塗装であってもよいしハケ塗りであってもよいし、コーター等による塗布装置による塗布であってもよい。なお、塗布する構成に限らず、例えば、帯状のPVDFフィルムを内部導体311に螺旋状に巻き付けた構成であってもよい。
圧電体312の厚みは、導体線3110の直径以上であることが好ましい。図2に示す圧電体312の厚さは、最も薄い箇所で10μmであるが、10μm以上50μm以下であればよい。なお、圧電体312の厚さは、厚ければ厚いほど検出感度が良好になるが、圧電体312の厚さの限界値は、塗布する圧電材料の粘度や塗布方法によって決まってくる。また、圧電体312の厚さが厚すぎると圧電センサ線310、ひいては線状検出体31が硬くなりすぎてしまい柔軟性に欠けてしまうといった欠点もある。
図2に示す内部導体311では、複数の導体線3110を撚り合わせているため、導体線3110同士の境目に窪みがある。この窪みの部分では、より多くの圧電材料を担持することができ、圧電材料の体積が大きく(厚く)なるため、検出感度が他の部分よりも良好になる。内部導体311には、こうした窪みによって圧電材料が他の部分よりも厚い部分が6か所、周方向に均等間隔で存在するため、どの方向に曲げられても高感度な圧電性繊維として機能する要因になる。
なお、図2に示す隣り合う導体線3110は互いにほぼ接しているが、わずかな隙間から毛細管現象によって圧電材料が浸透し、隣り合う導体線3110同士の隙間(内部導体311の内部)が圧電材料によって埋められた状態になっている。しかし、圧電材料の粘度や塗布方法によっては、隣り合う導体線3110同士の隙間に圧電材料が浸透しない場合もあるが、少なくとも内部導体311の外周に面した部分に圧電材料が担持された状態となっていればよい。なお、上述した帯状のPVDFフィルムを圧電体312として用いた構成では、隣り合う導体線3110同士の隙間に圧電材料が浸透していない線状検出体31になる。この線状検出体31では、隣り合う導体線3110同士の隙間に圧電材料が浸透しているものと比較して線状検出体31の柔軟性が高まるので、線状検出体31における検出感度が高まる。
図2に示す外部導体313は、圧電体312の外周に、カーボンナノチューブ等のカーボンを含む高分子導電性材料が塗布されることで形成された層である。外部導体313を形成する導電性材料としては、銀の微粒子を含む高分子導電性材料や銀ペースト等であってもよい。また、この導電性材料を塗布する方式としては、浸漬(ドブ付け)塗装であってもよいしスプレー等による吹き付け塗装であってもよいしハケ塗りであってもよいし、コーター等による塗布装置による塗布であってもよい。外部導体313の厚さは、導体線3110の直径以下であることが好ましく、また、圧電体312の厚さ以下であることも好ましい。図2に示す外部導体313の厚さは、5μmであるが、5μm以上50μm以下であればよい。また、外部導体313に導電性材料を用いずに導線を用いてもよい。
シース314は、耐摩耗性、耐薬品性、防錆性を高めるために圧電センサ線310の外周を覆っている。このシース314は、厚さがそれぞれ6μmの内層3141と外層3142とからなる2層構造をしている。内層3141は、外層3142に比べて柔らかい材料で構成されている。この内層3141は、ポリアミド合成樹脂を塗布することで形成されているが、ポリ塩化ビニル樹脂を塗布することで形成してもよい。外層3142は、内層3141に比べて耐摩耗性が高い材料で構成されている。この外層3142は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を塗布することで形成されている。ただし、4フッ化・6フッ化プロピレン フッ素樹脂(FEP)、4フッ化エチレンエチレン共重合(EPFE)、または4フッ化エチレンパーフロロアルコキシエチレン共重合 フッ素樹脂(PFA)を塗布することで形成してもよい。ここにいう塗布とは、浸漬(ドブ付け)塗装であってもよいし吹き付け塗装であってもよいしハケ塗りであってもよいし、コーター等による塗布装置による塗布であってもよい。また、ピンホールが発生することを考慮して複数回塗布することが好ましい。また、外層3142は、内層3141よりも厚くてもよい。さらに、内層3141は、可燃性材料で形成されていてもよいが、外層3142は、難燃性材料、不燃性材料、耐炎性材料で形成されていることが好ましい。また、シース314全体の厚みは5μm以上50μm以下とすることが好ましい。さらに、ポリエステルテープタイプやチューブタイプ(単層、複層いずれも)を用いてシース314を構成してもよい。これらのタイプを用いる場合のシース314の厚みは、20μm以上50μm以下であればよい。なお、シース314の外側にシールド線を配置し、さらにその外側に第2のシースを配置してもよい。
図2に示す圧電センサ線310の太さ(内部導体311、圧電体312、および外部導体313を合わせた太さ)は最大60μmであるので、厚さ10μmの二重構造のシース314を設けた場合でも、0.1mm以下の太さの線状検出体31になる。ここで、製造が容易で低コストに得ることができる線状検出体31の例として、直径20μmの導体線3110を用いた太さが60μmの内部導体311に、厚さが最大20μmの圧電体312と、厚さが10μmの外部導体313を形成したものが考えられる。この構成では、外部導体313までの太さが0.12mmである。これに、二重構造のシース314を設けても0.16mm以下の圧電センサ線310を実現することができる。なお、シース314は単層で構成してもよい。単層で構成する場合、上述の外層3142を構成する材料として例示したものの他、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)などの材料を用いてシース314を構成してもよい。
図3(a)は、ネジ本体とセンサ基板とを図1における上方から見た平面図である。
上述したように、ネジ本体21の頭部212の内部には第2内部空間SBが形成されている。図3(a)に示すように、頭部212の内周面212aには、互いに対向して配置され、平面視でコの字状および逆コの字状に形成された一対の切欠溝212cが形成されている。切欠溝212cの深さは、センサ基板32の高さとほぼ一致している。この切欠溝212cには、センサ基板32幅方向(図3(a)における左右方向)の両端部32aがはめ込まれている。センサ基板32が切欠溝212cにはめ込まれることで、センサモジュール3(図1参照)はネジ本体21に保持されている。すなわち、この両端部32aは、被保持部の一例に相当する。この図3(a)では、切欠溝212cの形状が理解できるように、センサ基板32と切欠溝212c間にセンサ基板32厚み方向の隙間が存在しているように示しているが、実際にはセンサ基板32の厚み方向の隙間は存在していない。すなわち、センサ基板32は一対の切欠溝212cに圧入されている。このため、ネジ本体21内にセンサ基板32が挿入された状態では、センサ基板32はその状態で固定されている。なお、この実施形態では、センサ基板32が厚み方向に挟み込まれて保持されているが、センサ基板32の幅方向で挟み込まれて保持されるようにしてもよい。さらに、センサ基板32は、ネジ本体21とネジ蓋22(図1参照)との間で挟み込まれるようにして保持されていてもよい。センサ基板32がネジ本体21とネジ蓋22との間で挟み込まる場合には、センサ基板32の上下端部が被保持部の一例に相当する。
図3(b)は、ネジ本体を図3(a)における右方向からみた右側面図である。
図3(b)に示すように、頭部212の外周面212bの下側部分には、一対の平面部212dが形成されている。この一対の平面部212dは、図1に示したネジ2を工作機械等の装置やビルなどの構造物に取り付ける際に、ネジ2を回転させるためのスパナやレンチ等の工具がかみ合う部分である。工具とかみ合う部分をネジ蓋22に形成した場合、工具でネジ蓋22に回転力を加えても、ネジ本体21にはめ込まれたOリング213とネジ蓋22との間で滑りが生じてしまいネジ本体21が回転しない虞がある。本実施形態のように、工具とかみ合う部分をネジ本体21に形成することで、工具によって加えられた回転力をネジ部211に直接伝えることができる。
図4は、図1に示したネジとセンサモジュールを組み立てる前の分解図である。また、図5は、ネジにセンサモジュールを配置する配置方法を示すフローチャートである。
図4および図5に示すように、先ず、収容空間Sを有するネジ本体21、センサモジュール3、Oリング213、およびネジ蓋22を用意する(ステップS1)。本実施形態において用意するセンサモジュール3は、あらかじめ線状検出体31に撚り合わせられたサポート線41と配線9がセンサ基板32に固定されている。ただし、サポート線41および配線9を、センサモジュール3とは別に用意してもよい。別に用意した場合は、それらをセンサモジュール3に固定する固定工程を設けてもよい。また、センサモジュール3とサポート線とを別に用意した場合は、それらを撚り合わせる撚り合わせ工程を設けても良い。
次に、サポート線41と配線9が固定されたセンサモジュール3を、線状検出体31の先端(図4における下端)を先頭にしてセンサ基板32が頭部212の切欠溝212cの底部に突き当たるまで収容空間S内に挿入する(ステップS2)。これにより、線状検出体31およびサポート線41のほとんどの部分は第1内部空間SAに配置される。また、センサ基板32は、第2内部空間SBに配置され、切欠溝212cに挟まれることでネジ本体21に保持される。センサ基板32が保持されることで、線状検出体31は所定の位置に所定の形状で配置される。なお、図1に示したように、この実施形態では、線状検出体31とサポート線41は、ネジ部211の内周面211cとは間隔を開けて配置されているが、これらの一方または両方が内周面211cに接触していても構わない。また、線状検出体31とサポート線41のうちの一方または両方を図1に示したものよりも長く形成し、線状検出体31とサポート線41のうちの一方または両方の先端が内周面211cの底部に接するように構成しても構わない。
その後、Oリング213を円周溝212eに嵌め込み、ネジ蓋22を頭部212にかぶせる(ステップS3)。これらのステップにより、センサモジュール3が内部に配置されたネジ2が得られる。なお、Oリング213は、上述のステップS2においてセンサモジュール3を収容空間S内に挿入する前に、円周溝212eに嵌め込んでおいても構わない。
以上説明した実施形態によれば、線状検出体31は、サポート線41と撚り合わされることで張力が付与された状態で変形可能に収容空間Sに配置されているので、ネジ2の振動等に対応して変形しやすい。従って、高い検出感度で振動等を検出することができる。また、初期状態における線状検出体31が所定の形状に維持されるので、線状検出体31から出力される信号の再現性が高まる。
続いて、本実施形態の変形例について説明する。以下の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ構成要素の名称には、これまで用いた符号と同じ符号を付すことがあり、重複する説明は省略する。
図6は、図1に示したセンサ配置構造の第1変形例を示す、図1と同様の断面図である。
この第1変形例では、サポート線41が設けられておらず、代わりに重り42が配置されている点が、図1に示した例と異なる。この第1変形例は、ネジ2の先端211aが下方を向くようにネジ2を設置する場合に適した例である。なお、この第1変形例のネジ2において、ネジ2の先端211aが下方以外を向くように配置されることが予想される場合は、線状検出体31の先端を、ネジ部211の内周面211cの底部に固定することが望ましい。図6に示すように、重り42は、中心に貫通孔42aを有する球形をした鉛製のものである。重り42の材質は鉛に限らず、真鍮や銅など他の金属や樹脂でもよい。また、形状は球形以外でも構わない。この重り42は、張力付与部材の一例に相当する。線状検出体31は、この貫通孔42aを貫通し、貫通した先の先端部分に結び目31cをつけることで重り42と結合している。これにより、重り42は、線状検出体31の延在方向には線状検出体31に対して移動自在に、その他の方向には線状検出体31に対して移動不能に線状検出体31に取り付けられている。ただし、重り42と線状検出体31とが全ての方向において相対移動できないように、線状検出体31と重り42を接着剤などで固定してもよい。重り42を設けることで、線状検出体31に適度な張力を付与し、初期状態を一定にすることができる。さらに、重り42により線状検出体31の先端部分の慣性質量が大きくなるのでネジ2が振動等した際に線状検出体31の変形が大きくなる。これにより、高い検出感度で前記部材の動きを検出できるようになる。重り42の重さは、線状検出体31の剛性や想定される振動等の振幅に応じて適宜設定することができる。なお、結び目43cには、結び目43cがほどけないように、接着剤等を塗布してもよい。また、貫通孔42a付きの重り42の代わりに、環付きの重り42を用いて、線状検出体31をその環に結び付けてもよく、割れ目の入った重り42を用いて、線状検出体31を割れ目に挿入してから重り42を塑性変形させて線状検出体31を重り42で挟み込んでもよい。
図7は、図1に示したセンサ配置構造の第2変形例を示す、図1と同様の断面図である。
この第2変形例では、サポート線41が設けられておらず、代わりにつる巻バネ43が配置されている点が、図1に示した例と異なる。このつる巻バネ43は弾性部材の一例に相当する。図7に示すように、つる巻バネ43は、バネ後端43bがセンサ基板32に固定されている。また、つる巻バネ43のバネ先端43aは移動自在な自由端である。バネ先端43aには、軸心方向に突出し、突出端に線状検出体31を通すための環を有する不図示の突出部が形成されている。つる巻バネ43を少しだけ圧縮した状態で、突出部の環に線状検出体31の先端を巻き付け、環を押しつぶして塑性変形させることでバネ先端43aに線状検出体31の先端が固定されている。これにより、線状検出体31には、つる巻バネ43のバネ性による張力が付与されている。この第2変形例では、ネジ2が振動等した際につる巻バネ43のバネ先端43aが揺れ動くことで、ネジ2の振動等を検出できるようになる。つる巻バネ43のバネ定数は、線状検出体31の剛性や想定される振動等の振幅に応じて適宜設定することができる。なお、この第2変形例では、線状検出体31が直線状になるようにつる巻バネ43に固定したが、線状検出体31の長手方向の中央部分をつる巻バネ43に巻き付けて、線状検出体31が中央部分で折れ曲がるような形状で配置しても構わない。また、バネ先端43aとバネ後端43bの間の複数箇所でつる巻バネに巻き付けて線状検出体31がジグザグになるように配置しても構わない。
図8は、図1に示したセンサ配置構造の第3変形例を示す、図1と同様の断面図である。
この第3変形例では、サポート線41が設けられていない点と、線状検出体31が螺旋状に成形されたものである点とが、図1に示した例と異なる。図8に示すように、線状検出体31は、第1内部空間SA内において、先端がネジ部211の内周面211cの底部に接するように螺旋状に配置されている。なお、線状検出体31の先端が内周面211cの底部から離間するように配置しても構わない。線状検出体31を螺旋状にすることで、第1内部空間SAに収容可能な線状検出体31の長さが増加する上に線状検出体31が変形しやすくなるので、高い検出感度で前記部材の振動等を検出することができる。また、線状検出体31の螺旋の最外部は、第1内部空間SAを画定する内周面211cに接触している。線状検出体31と内周面211cとを接触させることで、ネジ2の振動等を線状検出体31に直接伝達させることができるため、検出感度をより向上させることができる。ただし、線状検出体31と内周面211cとが離間していても構わない。
この第3変形例では、図2に示す7本の導体線3110を撚り合わせた後、圧電材料を塗布する前に、内部導体311を螺旋状に成形し、熱処理を行って導体線3110の形状を安定させた後に圧電体312、外部導体313、シース314それぞれの材料を塗布することで螺旋状の線状検出体31を得ている。第3変形例では、螺旋形状を長期間維持するために、図2に示した7本の導体線3110の全てまたは一部にバネ鋼を用いることが望ましい。バネ鋼を用いない場合は、導体線3110の全てをステンレス製にして太さを20μmの導体線3110Sとするなど、剛性の高い導体線3110を用いることが望ましい。なお、この第3変形例では線状検出体31の作成時に線状検出体31が螺旋状になるようにしているが、直線状の線状検出体31を用意してから螺旋状に成形しても構わない。すなわち、直線状の線状検出体31を螺旋状に成形する成形工程を備えていてもよい。ただし、成形時における圧電体312のダメージを考慮すると圧電体312が塗布される前に成形することが望ましい。また、螺旋溝が形成された棒を用意し、直線状の線状検出体31をその螺旋溝に沿って巻き付け、その棒とともに線状検出体31を第1内部空間SAに挿入してもよい。その場合、螺旋溝内で線状検出体31が変形可能なように、螺旋溝の溝幅および溝深さは線状検出体31の直径のよりも大きくすることが望ましい。
図9は、図1に示したセンサ配置構造の第4変形例を示す、図1と同様の断面図である。
この第4変形例では、サポート線41が設けられておらず、代わりに支持線45が配置されている点と、線状検出体31がダブルコイル状に成形されたものである点とが、図1に示した例と異なる。図9に示すように、支持線45は、表面が厚み0.05mmのナイロンなどの樹脂によって被覆され、被覆を含めた直径が0.5mmのバネ鋼を螺旋状に成形したつる巻バネである。被覆を設けることで、ネジ2が振動等したときに、支持線45を構成するバネ鋼によって線状検出体31の表面を擦ることがなくなるので、線状検出体31を長寿命化できる。この支持線45は螺旋状弾性部材の一例に相当する。支持線45は、その先端がネジ部211の内周面211cの底部に接している。ただし、支持線45の先端が内周面211cの底部から離間するように配置しても構わない。支持線45の後端部は直線状に成形され、後端はセンサ基板32に固定されている。支持線45の螺旋の外径は、第1内部空間SAを画定する内周面211cの径よりも線状検出体31の線径の2倍分だけ小さく設定されている。これにより、線状検出体31の螺旋の最外部は、ネジ本体21の内周面211cに接触している。線状検出体31を内周面211cに接触させることで、ネジ2の振動等を線状検出体31に直接伝達させることができる。ただし、線状検出体31と内周面221cは離間していても構わない。
線状検出体31は、支持線45の周囲を小さな螺旋を描いて周回している。以下、この小さな螺旋状に周回した線をスパイラル線と称する。スパイラル線が支持線45の形状に沿った大きな螺旋状を描くことで、線状検出体31は全体としていてダブルコイル状をしている。すなわち、この第4変形例では、線状検出体31は、スパイラル線の軸心をさらに螺旋状に周回させたダブルコイル状をしている。この線状検出体31の先端は、支持線45の先端の座巻部分に挟まれることで保持されている。なお、線状検出体31の先端を、接着剤または金具で支持線に固定してもよい。
本実施形態では支持線45を設けているが、この支持線45を設けずに、線状検出体31単体でダブルコイル状の形状が維持できるように成形してもよい。しかし、ダブルコイル状の形状が維持できるように成形するには加工に手間がかかるため、支持線45を設けることが好ましい。支持線45を設けることで、素線である直線状の線状検出体31を支持線45の周囲に巻き付けるだけで容易にダブルコイル状の線状検出体31を得ることができる。また、支持線45をバネ鋼で構成する例を示したが、支持線45をステンレス等の他の金属や樹脂などで構成してもよい。この第4変形例のでは線状検出体31をダブルコイル状にしているので、第1内部空間SAに収容可能な線状検出体31の長さを大幅に増加させることができる。また、線状検出体31が変形しやすくなるので、より高い検出感度でネジ2の振動等を検出することが可能になる。さらに、支持線45につる巻バネを用いることで、ネジ2が振動等したときにつる巻バネがそのバネ性により線状検出体31とともに変形するので、検出感度を高めることができる。
次に、第2実施形態のセンサ配置構造について説明する。これより後の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
図10は、第2実施形態のセンサ配置構造の一実施形態に相当する主軸とセンサモジュールを模式的に示した断面図である。なお、この図10では、図面を見やすくするため、チャック54と、先端側ベアリング55と、後端側ベアリング56のハッチングは省略している。
第2実施形態のセンサ配置構造は、マシニングセンターの主軸5にセンサモジュール3を配置している点が先の実施形態とは異なる。図10に示すように、主軸5は、外筒51と、回転体52と、内筒53と、チャック54と、先端側ベアリング55と、後端側ベアリング56と、ロータリーブッシュ57とを有する。この主軸5は、部材の一例に相当する。外筒51は、図示しない主軸台に固定された円筒状のものである。この外筒51は、NC制御によってプログラムされた位置に、主軸台とともに移動する。内筒53は、円筒部531と固定部532とから構成されている。円筒部531と固定部532は一体に形成されている。円筒部531は、固定部532が外筒51に固定されることで、外筒51と軸心を一致させて外筒51の内部に配置されている。
外筒51の内周面51aには、先端側ベアリング55と後端側ベアリング56が圧入されている。回転体52は、これらの先端側ベアリング55と後端側ベアリング56によって回転自在に外筒51に支持されている。回転体52は、内部に空間を有する円筒状をしており、後端部分には歯車521が形成されている。この歯車521には図示しないモータに固定されたピニオンが噛み合っている。そのモータが回転することで回転体52も回転する。回転体52の先端側にはチャック54が設けられている。チャック54は、先端側部分541と後端側部分542とを有する。チャック54の先端側部分541には、ドリルやエンドミル等の工具58が把持されている。チャック54の後端側部分542は、図示しない把持機構により回転体52に着脱可能に把持されている。回転体52が回転すると、チャック54および工具58は、回転体52とともに回転する。
内筒53の円筒部531と回転体52の間には、ロータリーブッシュ57が配置されている。このロータリーブッシュ57は、保持器571と複数のボール572とを有する。ボール572は、回転体52の内周面52aと円筒部531の外周面531aそれぞれに接触している。回転体52が回転すると、ボール572も回転する。なお、回転体52とロータリーブッシュ57それぞれは、不図示の規制具によって外筒51に対する軸方向の相対移動が規制されている。
円筒部531の内側には、円筒部531の内周面531bによって画定された第3内部空間SCが形成されている。この第3内部空間SCは、収容空間の一例に相当する。センサモジュール3は、螺旋状に成形された線状検出体31と、直線状の信号線33とから構成されている。線状検出体31は、第3内部空間SC内に配置されている。信号線33は、先端側部分が第3内部空間SC内に配置され、後端側部分は第3内部空間SCよりも外側に延びている。
線状検出体31は、信号線33よりも先端側に配置されている。この線状検出体31は、図8に示した線状検出体31と同様の方法で螺旋状に成形されたものである。線状検出体31の螺旋の外径は、円筒部531の内周面531bの径と同一である。このため、線状検出体31の螺旋の最外部は、円筒部531の内周面531bに接触している。なお、線状検出体31の螺旋の外径を、内周面531bの径よりもほんの少しだけ大きくしてもよく、内周面531bの径よりも小さくしてもよい。線状検出体31は、チャック54の後端側部分542に先端が当接することで、先端側への移動が防止されている。そして、線状検出体31は、円筒部531に固定された止め輪5311によって後端側への移動が防止されている。本実施形態では、この止め輪5311に当接した線状検出体31の後端部分が、被保持部の一例に相当する。線状検出体31は、軸心方向に多少圧縮された状態で、チャック54の後端側部分542と止め輪5311に挟みこまれている。従って、線状検出体31自身の弾性により、線状検出体31の先端部分は、チャック54の後端側部分542に押し付けられている。
工具58が劣化してくると、加工の際に工具58およびその工具58を把持しているチャック54に生じる振動等が増大する。この第2実施形態では、チャック54に生じた振動等が線状検出体31に直接加わるので、線状検出体31が変形して振動等に応じた強度の信号を出力する。この信号を解析することで工具58の劣化状況を診断することができる。また、被加工物に適した工具58が用いられていない場合にもチャック54に生じる振動等が大きくなる。線状検出体31は、この振動等に応じた信号を出力するので、信号を解析することで不適切な工具58が用いられているか否かも判断できる。さらに、先端側ベアリング55または後端側ベアリング56が摩耗してくると、回転体52を回転させたときの振動等が増加する。回転体52に生じた振動等は、ロータリーブッシュ57を介して内筒53に伝わり、内筒53に接触している線状検出体31に伝達し、線状検出体31が変形して振動等に応じた強度の信号を出力する。線状検出体31が出力した信号のうち、先端側ベアリング55に設けられた球552および後端側ベアリング56に設けられた球562に生じている回転数に応じた周波数の信号を解析することで先端側ベアリング55および後端側ベアリング56の劣化状況も診断することができる。
信号線33は、図2に示した圧電体312の代わりに、内部導体311と外部導体313の間に絶縁体が用いられている以外は線状検出体31と同一の構造を有している。この絶縁体は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムで構成されている。ただし、PVCフィルムや、シース314の内層3141または外層3142と同じ材料を用いてもよい。つまり、絶縁材料であれば他の材料を用いて構成されていてもよい。また、絶縁体として、圧電体312に熱を加えて圧電機能を取り除いたものを用いてもよい。この信号線33は、線状検出体31が出力した信号を送るためのものである。
図10に示すように、円筒部531の内側の第3内部空間SCには、潤滑油を供給するためのオイルパイプ59が設けられている。信号線33は、そのオイルパイプ59内を通って線状検出体31の直前まで敷設されている。オイルパイプ59内を通すことで、信号線33が稼働部に接触して断線してしまうことを防止できる。ただし、オイルパイプ59とは別のパイプを設けてその中を通してもよく、円筒部531の内周面531bに沿って信号線33を這わせてもよい。信号線33の後端は、マシニングセンターの制御装置8に接続されている。この制御装置8は、振動解析機能を有している。送信された信号は、制御装置8によって解析される。その解析結果に基づいて、マシニングセンターの表示部には、不適切な工具58が用いられているか否かを示す情報、部品交換時期、メンテナンスが必要な時期、故障予測等が表示される。なお、制御装置8に無線通信モジュールを設け、線状検出体31が出力した信号または解析結果を無線で部品メーカ、メンテナンスメーカ、マシニングセンターの製造メーカ等に送信してもよい。
この第2実施形態によれば、主軸5に線状検出体31を配置したので、回転体52の回転数に対応した周波数の振動の他、先端側ベアリング55が有する球552および後端側ベアリング56が有する球562や、ロータリーブッシュ57が有するボール572の回転に応じた周波数の振動を得ることもできる。これらの周波数における振動の変化を解析することで適切な工具58の使用有無や工具58の寿命以外に、先端側ベアリング55、後端側ベアリング56、およびロータリーブッシュ57の劣化状況も把握することができる。
図11は、図10に示したセンサ配置構造の変形例を示す、図10と同様の断面図である。なお、この図11でも、図面を見やすくするため、チャック54と、先端側ベアリング55と、後端側ベアリング56のハッチングは省略している。
この変形例は、チャック54の構造および線状検出体31の保持構造が、図10に示したものと異なる。チャック54は、先端側部分541のみで構成されており、後端側は回転体52と一体化している。この変形例では、止め輪5311が設けられておらず、線状検出体31は、先端部分が接着剤により円筒部531の先端部分に保持されている。この円筒部531に保持されている線状検出体31の先端部分は、被保持部の一例に相当する。なお、線状検出体31の先端を配線クランプ等の保持具によって円筒部531に保持してもよい。また、線状検出体31よりも先端側と線状検出体31よりも後端側それぞれに止め輪を配置して線状検出体31を挟み込むことで、線状検出体31を円筒部531に保持させてもよい。先端側と後端側に止め輪を配置した場合、線状検出体31の先端部分と後端部分の、止め輪に接触した部分が被保持部の一例に相当する。この変形例では、回転体52に生じた振動等は、ロータリーブッシュ57を介して内筒53に伝わり、内筒53に直接接触、または止め輪等を介して内筒53に間接接触している線状検出体31に伝達する。このため、内筒53に伝わった振動等によって線状検出体31が変形して振動等に応じた強度の信号を出力する。
次に、第3実施形態のセンサ配置構造について説明する。この第3実施形態の説明では、主に第2実施形態と異なる構造について説明する。
図12は、第3実施形態のセンサ配置構造を示す、図10と同様の断面図である。なお、この図12でも、図面を見やすくするため、チャック54と、先端側ベアリング55と、後端側ベアリング56のハッチングは省略している。
第3実施形態のセンサ配置構造は、図10に示した内筒53およびロータリーブッシュ57が省略されている点および先端側ベアリング55に線状検出体31を配置している点が第2実施形態とは異なる。図12に示すように、先端側ベアリング55は、外輪551と球552と保持器553と内綸554とを有する。第3実施形態では、外輪551の外周面551aに螺旋状の溝5511が形成されている。この溝5511と外筒51の内周面51aによって第4内部空間SDが形成されている。この第4内部空間SDは、収容空間の一例に相当する。
センサモジュール3は、第4内部空間SD内に配置された線状検出体31と、第4内部空間SDの外に延在した信号線33とから構成されている。すなわち、線状検出体31は、信号線33よりも先端側に配置され、溝5511に沿った螺旋状をしている。線状検出体31の先端は、不図示の金具によって溝5511に保持されている。この溝5511に保持されている線状検出体31の先端は、被保持部の一例に相当する。なお、線状検出体31の先端を溝5511に接着剤で保持してもよい。線状検出体31は、直線状のものを溝5511に巻き付けることで螺旋状の第4内部空間内に配置されいる。ただし、線状検出体31は、螺旋状に成形されたものであってもよい。溝5511の溝幅および溝深さは線状検出体31の直径よりも大きい。これにより、線状検出体31は、第4内部空間SD内で変形することができる。また、線状検出体31は先端が溝5511に保持され、螺旋状に溝5511に巻き付けられているため溝5511に接触している。回転体52に生じた振動等は、内綸554と球552を介して外輪551に伝わり、外輪551に接触している線状検出体31に伝達する。このため、外輪551に伝わった振動等によって線状検出体31が変形して振動等に応じた強度の信号を出力する。
外筒51の内周面51aには、外筒51の軸線方向に沿って先端側ベアリング55が圧入されている部分から外筒51の後端まで延在した長溝51bが形成されている。信号線33は、先端側部分が長溝51bによって形成された空間内に配置され、後端側部分は主軸5の外側に延在している。そして、信号線33の後端は、制御装置8に接続されている。なお、信号線33を、長溝51bによって形成された空間内を通す代わりに、制御装置8の近傍から先端側ベアリング55の手前まで、図12では不図示のオイルパイプの中を通してもよい。この場合、長溝51bを形成しなくて良いので主軸5を安価に構成できるといった効果がある。
この第3実施形態によっても、第2実施形態と同様に、工具58の寿命並びに先端側ベアリング55および後端側ベアリング56の劣化状況を把握することができる。また、第3実施形態では、線状検出体31を先端側ベアリング55に配置しているので、後端側ベアリング56に配置した場合と比較して、工具58に近い位置で振動等を検出できる。これにより、工具58の劣化による振動等の変化をより把握しやすいという効果もある。
本発明は上述の実施形態や変形例に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことが出来る。たとえば、本実施形態では、内部導体と外部導体との間に圧電体を担持した線状検出体31を例に説明したが、線状検出体31は、変形状態に応じた強度の信号を出力するものであれば、ピエゾ抵抗線であってもよく、抵抗線であってもよく、キャパシタ線であってもよく、光学的な信号出力線であってもよい。また、第2変形例に示した重り42を、第3変形例に示した螺旋状の線状検出体31または第4変形例に示したダブルコイル状の線状検出体31の先端に取り付けてもよい。また、第2の実施形態および第3の実施形態では、主軸5にセンサモジュール3を配置する例を示したが、工具58を着脱可能に主軸5に固定するためのツールホルダに収容空間を形成し、その収容空間に線状検出体31と無線通信装置とから構成されたセンサモジュール3を配置してもよい。このセンサモジュール3をツールホルダに配置する場合、センサモジュール3にバッテリーを搭載し、複数の工具58を格納する工具マガジンに、そのバッテリーへの充電機能を搭載することが望ましい。工具58が取り付けられたツールホルダが工具マガジンに格納されたときにセンサモジュール3のバッテリーを充電することができるので、複数の工具を切り替えながら加工を実行するマシニングセンターにおいて、加工を止めることなくセンサモジュール3に充電することができる。さらに、他の工作機械やロボット、農業機械、車、家電などの装置に用いられる部材にセンサモジュール3を配置してもよい。例えば、ロボットの関節、耕運機の刃の回転部、車の車軸、電気自動車のモータ軸やモータ筐体、掃除機のファン、洗濯機の回転部等の、回転軸や軸受けを有する部材にセンサモジュール3を配置してもよい。
以上説明した実施形態や変形例によれば、線状検出体31を用いて高い検出感度の検出が可能になる。
なお、以上説明した実施形態や各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態や他の変形例に適用してもよい。