以下に、本発明の実施の形態にかかる加湿素子、加湿装置、空気調和機および換気装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる加湿装置1の構成図である。この加湿装置1には、加湿素子2が組み込まれている。加湿装置1には、加湿素子2へ室内の空気を送り込み、再び室内へ吹出すための送風機5が組み込まれている。空気は、図1において白抜き矢印で示す方向に流れる。送風機5は、本実施の形態では加湿素子2よりも通風風上側に組み込まれているが、加湿素子2よりも通風風下側に組み込まれてもよい。
加湿装置1は、加湿素子2と、図示しない水道設備などの給水源に接続されて加湿素子2に加湿用の水を送水する給水管3と、加湿素子2で加湿に用いられずに残った水を外部に排出する排水管4と、加湿素子2に空気流を通過させる送風機5と、を備える。また、加湿装置1は、送風機5、給水弁3aといった機器の操作などを行う制御装置6と、加湿素子2の内部を流下してきた水を受けるドレンパン7と、を備える。
図2は、実施の形態1にかかる加湿装置1が備える加湿素子2の斜視図である。加湿素子2は、ドレンパン7上に一個または複数個が直接設置される。具体的な図示は省略するが、各加湿素子2の天部構造の両側の稜角部は、仕切壁と本体箱体の正面側内壁面とに装架されたガイドレール等により抜き差し可能に保持されている。加湿素子2には、加湿用の水を供給したり遮断したりする給水弁3aを備えた給水系がつながれており、ドレンパン7には排水管4が接続されている。
加湿素子2に加湿用の水を送水する給水系は、送水用の給水管3と、加湿素子2に給水する水の圧力と流量を調整する電磁弁である給水弁3aと、給水管3および給水弁3aへの塵の侵入を防ぐ図示しないストレーナと、を備えている。給水源側との接続部を除く給水系の各接続部分は、全てドレンパン7内に集約されていることが好ましい。
図3は、実施の形態1にかかる加湿素子2の斜視図である。図4は、実施の形態1にかかる加湿素子2の分解斜視図である。図5は、実施の形態1にかかる加湿素子2の正面図である。図6は、図5に示す加湿素子2のVI−VI線に沿った断面図である。加湿素子2は、平板状の加湿体20を多数備える。多数の加湿体20は、図4および図5において矢印Yで示す方向である第1の方向に沿って互いに隙間を空けて並べられている。以下、第1の方向Yと表記する。加湿体20の間の隙間は、空気が通過可能な風路となる。図1に示す送風機5は、風上から風下に向かう空気の流れを生成して加湿体20の間の隙間に空気を通過させる。空気は、図4および図6において矢印Zで示す方向である第2の方向に向かって加湿体20の間の隙間を流れる。以下、第2の方向Zと表記する。つまり、図6の紙面左側から紙面右側に向かって空気が流れる。加湿体20の上部のうち第2の方向Zに沿った中央部には、他の部位よりも下方に窪んだ凹部23が形成されている。凹部23内には、拡散部材30が配置されている。拡散部材30は、第1の方向Yに沿って延びるように配置され、1つの拡散部材30に複数の加湿体20がまとめて接触する。
図6に示すように、加湿体20の上方には、加湿体20に供給するための水を蓄える貯水部12、給水管3からの水を貯水部12へ注入する給水口11がある。ここで、加湿素子2に給水された水を、加湿体20に伝える一連の手段を、給水手段50と呼ぶ。本実施の形態では、給水口11、貯水部12、拡散部材30をまとめて給水手段50と呼ぶ。加湿体20の下方には、加湿体20から加湿されずに残った水を受けて排水するための排水部13、および排水口13aがある。
図3および図4に示すように、加湿体20は、ケーシング10の内部に収納されて固定される。給水口11、排水部13は、ケーシング10に形成される。ケーシング10には、上部構造としての貯水部12と下部構造としての排水部13とを接続する構造壁14が形成される。
ケーシング10は、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、ポリスチレン(polystyrene:PS)樹脂、またはポリプロピレン(polypropylene:PP)樹脂を含む熱可塑性のプラスチックを材料として、射出成型などで形成されている。ケーシング10は、2つの部品である第一ケーシング10aと第二ケーシング10bとに分かれている。第一ケーシング10aおよび第二ケーシング10bで加湿体20を挟み込み、第一ケーシング10aおよび第二ケーシング10bの係合部15同士を合わせることにより、第一ケーシング10aと第二ケーシング10bとが一体化し、加湿体20を収納する構造となっている。なお、ケーシング10は加湿体20を収納できればよく、金属または金属と樹脂からなるものでもよい。
第一ケーシング10aおよび第二ケーシング10bにはそれぞれ、排水口13aとなる部分が設けられている。また、第二ケーシング10bには、貯水部12へ水を供給するための給水口11、および加湿体20へ被加湿空気を導入する開口部10cが設けられている。ケーシング10の内側には、加湿体20を収納する収納空間が設けられている。
第一ケーシング10aおよび第二ケーシング10bのうち加湿体20と接触する部分には、加湿体20の位置を規制するための位置決め用の突起10dがそれぞれ設けられている。加湿体20は含水により、水の重さで変形するものもあるため、第一ケーシング10aおよび第二ケーシング10bと接触する加湿体20の外周部分で加湿体20の位置を規制して加湿体20全体が歪まないようにすることで、加湿体20間の風路の寸法を確保し、加湿体20間の風路に均一に空気が流れるようにすることができる。これにより、加湿素子2の圧力損失の低下が抑えられ、加湿体20の全面が有効に加湿面として使用されるので、加湿体20が歪んだ場合に比べて加湿量が増加する効果が期待できる。
給水口11の形状は給水管3に合わせた形状とし、容易に抜けないように凸状の帯、いわゆるかえし構造を給水口11の外周面に形成したり、給水口11と給水管3をホースバンドで縛ったりしてもよい。給水口11は、加湿体20の上部から水を供給できる構造であれば位置等に制約はないが、給水管3と給水口11とのつなぎ目から水漏れが発生した場合を考慮すると、空気流の風上側に配置することが好ましい。このようにすることで、給水管3と給水口11とのつなぎ目から漏れた水は、気流に乗り、風下側、すなわち加湿素子2側へ導かれて加湿体20に吸収されるため、加湿素子2の風下側への水の飛散を少なくすることができる。
加湿体20の表面からの加湿量に対して加湿体20への給水量が過剰な場合には、加湿に用いられずに排水部13から排水される排水量が多くなり、無駄な水量が増大する。このため、給水口11には、水量を絞るための機構を設けて、貯水部12へ供給する水の水量を調整することが好ましい。水量を絞るための機構は、例えば図6で示すオリフィス部40である。オリフィス部40は、給水口11の内周面の一部を他の部位よりも狭めて形成されている。水量調整の際には、加湿素子2の最大加湿量よりも多い水量を供給できるようにする必要がある。なお、オリフィス部40は、水量調整が可能であればよく、金属メッシュまたは多孔質材料を用いて水量を調整するものでも機能上問題ない。
貯水部12は、拡散部材30の上方に設けられている。貯水部12の底面には、拡散部材30へ水を注水する注水部である複数の注水孔12aが形成されている。貯水部12の内部には、貯水部12の水位を検知する水位検知センサー8が設置されてもよい。水位検知センサー8によって検知された水位をフィードバックして、図1に示す制御装置6によって給水弁3aの開閉を制御してもよい。
貯水部12は、ABS樹脂、PS樹脂またはPP樹脂を含む熱可塑性のプラスチックを材料として、射出成型などの成型法によって形成されている。樹脂製の貯水部12を用いて、貯水部12の表面を平滑にすると、接触角が概ね90度以上となる。ここでは、疎水性は接触角が90度以上、親水性は接触角が40度以上90度未満、超親水性は接触角が40度未満とする。本実施の形態では、貯水部12の表面における接触角が概ね90度以上となるように設定している。これにより、貯水部12の表面が疎水性となるため、貯水部12の表面に水が残りにくくなり貯水部12内の衛生性に優れるという利点がある。なお、貯水部12は水を貯めて加湿体20に水を供給できればよく、円管、矩形管などで形成されていても機能上問題ない。また、貯水部12の材料は金属でもよい。
拡散部材30は、多孔質の板材で形成される。拡散部材30は、注水孔12aの直下に配置されている。拡散部材30は、貯水部12から滴下した水を吸収し、加湿体20へ水を送る。このため、拡散部材30の表面は極力親水性が高いほうが、浸透性が良好になり通水できる流量が増加する。また、拡散部材30は、常に水に触れるため、水によって劣化しにくい材料で形成されることが好ましい。水によって劣化しにくい材料で形成された拡散部材30には、樹脂であるポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate:PET)樹脂といったポリエステル、セルロースで作られた多孔質板、金属であるチタン、銅、ステンレスで作られた多孔質板が挙げられる。また、拡散部材30の表面の親水度を増すため、拡散部材30に親水化処理を施してもよい。
拡散部材30の下端と加湿体20の上端とは、部分的に接触して設置されている。拡散部材30と加湿体20とが接触していれば、加湿体20の毛細管力の作用により水が淀みなく加湿体20に流下する。拡散部材30と加湿体20との組み立て時のばらつき、および輸送中の振動の影響を加味し、拡散部材30の下端と加湿体20の上端とを互いに差込むようにして、拡散部材30と加湿体20とを連結してもよい。
図7は、図6に示す加湿素子2の変形例を示す断面図である。図8は、図6に示す加湿素子2の他の変形例を示す断面図である。給水手段50の構成は、加湿体20に水を供給できれば特に制限されない。例えば、図7に示すように拡散部材30が注水孔12a内に挿入されても機能上問題ない。この場合には、拡散部材30が加湿体20へ水を注水する注水部になる。また、図8に示すように拡散部材30で貯水部12内の水を吸い上げて加湿体20に水を流下させる構造でも機能上問題ない。図8に示す貯水部12は、加湿体20の第2の方向Zに沿った中心よりも給水口11寄りにずれて配置されている。拡散部材30は、貯水部12内に挿入される吸上部31と、吸上部31の上端から給水口11と反対側に向けて水平に延びる延出部32と、延出部32の延出端から加湿体20に向けて下方へ延びる流下部33と、を有する。流下部33の下端は、加湿体20の内部に挿入されている。この場合には、流下部33が加湿体20へ水を注水する注水部になる。また、図示は省略するが、貯水部12を水密のヘッダー部として形成し、ヘッダー部に設けた複数の注水孔12aから拡散部材30に水を滴下してもよい。
なお、拡散部材30は、上方に位置する貯水部12から滴下する水を、第1の方向Yに均等に拡散するため、すなわち第1の方向Yに並べて配置された複数の加湿体20に均一に水を供給するために設けられている。したがって、複数の加湿体20が一体化されて、複数の加湿体20同士の間で第1の方向Yに水を拡散する構造、または、隣り合う加湿体20同士の上部を接触させる構造でも機能上問題ない。このような構造にすることで、加湿体20自体が拡散部材30と同様の水の拡散機能を有することになる。例えば、図7に示す拡散部材30に代えて、加湿体20の一部を注水孔12a内に直接挿入してもよいし、図8に示す拡散部材30に代えて、加湿体20の一部を貯水部12内に直接挿入してもよい。これらの場合には、加湿体20の一部が加湿体20の本体部へ水を注水する部分が注水部になる。このようにすると、拡散部材30を用いずに、貯水部12から加湿体20の本体部に直接水を滴下させることができる。
加湿体20は、拡散部材30と同様に多孔質の板材で形成される。加湿体20の材料の好適な条件は、拡散部材30と同一であり、加湿体20の材料に拡散部材30と同一の材料を用いてもよい。ただし、拡散部材30よりも吸水性の良い材料を加湿体20に用いると、拡散部材30の内部に水が十分拡散する前に加湿体20が水を吸ってしまうため、各加湿体20への水の供給の均一度が落ちることがある。この場合は、拡散部材30の鉛直方向の寸法を大きくすることで対策できる。なお、加湿素子2全体の高さ方向に寸法の制約がある場合、拡散部材30の鉛直方向への寸法にも制約が加わるので、拡散部材30よりも吸水性が低い材料を加湿体20に使用して、拡散部材30の鉛直方向への寸法を小さくできるようにすることが好ましい。
加湿体20の表面には、凸部21が設けられている。凸部21によって、加湿体20同士の間隔の保持が図られる。凸部21は、加湿体20に冶具を押し当て、冶具を押し当てた部分を塑性変形させることで形成することができる。加湿体20上の凸部21の配列位置が異なる2種類の加湿体20を交互に配列することで、加湿体20の間隔を一定に保つ機能が得られる。なお、加湿体20は、第1の方向Yに沿って間隔が一定に保たれていればよい。例えば、一定間隔に加湿体20の板厚分の切れ込みが入った櫛を加湿体20に噛み合わせて間隔を保持したものでもよい。また、波状に成形された加湿体20をハニカム状に積層することで間隔を保持する構造でもよいし、スペーサーを加湿体20の間に入れて間隔を保持する構造でもよい。
図6に示すように、加湿体20には、空気の流れ方向に沿った風上を向く風上側端面20aと、風上側端面20aと反対側を向く風下側端面20bとが形成されている。また、加湿体20には、加湿体20の内部を流下する水の流れを抑制する水流抑制部22が形成されている。水流抑制部22は、風上側端面20aと風下側端面20bとの間であって、風上側端面20aと風下側端面20bとの間となる給水手段50よりも下方に配置されている。水流抑制部22は、風上側端面20aおよび風下側端面20bと第2の方向Zに互いに離れて配置されている。水流抑制部22は、本実施の形態では加湿体20を第1の方向Yに沿って貫通する孔である。水流抑制部22は、加湿体20の内部を流下する水の流れを抑制可能な構成であれば特に制限されない。水流抑制部22は、加湿体20に孔開け加工を施すことで形成される。孔開け加工は、例えば、加湿体20の素材製造工程で予め行ってもよい。
水流抑制部22の形状は、本実施の形態では第2の方向Zに沿って水平に延びる長方形状である。なお、水流抑制部22は、加湿体20の内部を流れる水の方向および分配量を調整可能であれば、長円形状、楕円形状、円弧形状、多角形状などの他の形状でも機能上問題ない。水流抑制部22の開口面積は、加湿体20の表面積よりも十分に小さいことが好ましい。これは、加湿体20のうち水流抑制部22の開口面積が占める割合が過度に大きいと、加湿体20の加湿面積が減少し、加湿能力が低下するからである。
図9は、図6に示す加湿素子2の拡大断面図であって、給水手段50および水流抑制部22を拡大した図である。図10は、図9に示す加湿素子2のX−X線に沿った断面図である。図10に示す加湿体20の第1の方向Yに沿った板厚は、第2の方向Zに亘って一定である。図9に示す水流抑制部22の内壁には、給水手段50を向く第1壁22aと、第1壁22aと反対側を向く第2壁22bと、空気の流れ方向に沿った風上を向く風上側壁22cと、風上側壁22cと反対側を向く風下側壁22dと、が形成されている。風上側壁22cと風上側端面20aとの第2の方向Zに沿った距離は、上下方向に亘って一定である。風下側壁22dと風下側端面20bとの第2の方向Zに沿った距離は、上下方向に亘って一定である。ここで、水流抑制部22のうち水流抑制部22よりも風上側を流れる水の流量と、水流抑制部22よりも風下側を流れる水の流量とを分ける点を風上側の端点P1、風下側の端点P2とする。また、加湿体20のうち水流抑制部22よりも風上側を流下した水が浸透する領域を風上側浸透領域と称する。一方、加湿体20のうち水流抑制部22よりも風下側を流下した水が浸透する領域を風下側浸透領域と称する。
図9に示す第1直線Mは、水流抑制部22のうち風上側の端点P1から風上側端面20aまでの第2の方向Zに沿った距離を示している。第2直線Nは、水流抑制部22のうち風下側の端点P2から風下側端面20bまでの第2の方向Zに沿った距離を示している。第1直線Mは、風上側浸透領域のうち最も上方に位置する部位である。第2直線Nは、風下側浸透領域のうち最も上方に位置する部位である。水流抑制部22のうち風上側の端点P1から風上側端面20aまでの距離は水流抑制部22のうち風下側の端点P2から風下側端面20bまでの距離よりも長く、加湿体20の第1の方向Yに沿った板厚は第2の方向Zに亘って一定である。このため、図10に示すように、水流抑制部22と風上側端面20aとの間の上下方向と直交する方向に沿った断面積は、水流抑制部22と風下側端面20bとの間の上下方向と直交する方向に沿った断面積よりも大きい。これにより、水流抑制部22の風下側よりも風上側に多くの水を流すことができる。
図9に示すように、第1の方向Yに沿って見たときに、水流抑制部22は、注水孔12aを下方に延長した延長線Lを横切って設けられている。なお、複数の注水孔12aが第2の方向Zに沿って互いにずれて配置される場合には、水流抑制部22は、少なくとも一つの注水孔12aを下方に延長した延長線Lを横切って設ければよい。
なお、水流抑制部22は、加湿体20のうち他の部位に比べて水が流れにくくなれば、孔に限定されるものではない。例えば、プレス加工または加熱により、加湿体20の一部を第1の方向Yに潰して閉塞部または高密度部を形成し、閉塞部または高密度部を水流抑制部22としてもよい。また、溶融した蝋、プラスチックなどを加湿体20の繊維内に流し込んで固めて障害物を形成し、障害物を水流抑制部22としてもよい。
次に、加湿装置1の動作について説明する。
図2に示す給水口11には、給水弁3aで制御された一定流量の水が供給される。図6に示すように、給水口11から流入した水は、貯水部12内に流れる。貯水部12内に流入した水は、貯水部12の底面の複数の注水孔12aから滴下し、拡散部材30に吸水される。拡散部材30に吸水された水は、拡散部材30の内部に広がりながら流下し、拡散部材30の下端に到達する。
拡散部材30の下端と加湿体20の上端は接触しているため、流下した水は加湿体20の毛細管力の作用でこの接触部から加湿体20に伝わり流下する。水は、加湿体20の内部に浸透して流下する。図9において矢印Sで示す注水孔12aから水流抑制部22に向けて流下した水は、矢印Tで示す水流抑制部22よりも風上側に向かう水の流れと、矢印Uで示す水流抑制部22よりも風下側に向かう水の流れとに分流される。このとき、水流抑制部22と風上側端面20aとの間の上下方向と直交する方向に沿った断面積が、水流抑制部22と風下側端面20bとの間の上下方向と直交する方向に沿った断面積よりも大きいため、水流抑制部22の風下側よりも風上側に多くの水を流すことができる。また、第1の方向Yに沿って見たときに、注水孔12aを下方に延長した延長線Lを横切って水流抑制部22が設けられることで、矢印Tで示す水流抑制部22の風上側に向かう水の流れを風上側端面20aに近づけて流すことができる。
加湿体20の内部を水が流下する際に、加湿体20の間の隙間に通風される空気によって、加湿体20の表面から水分が奪われて、加湿された空気として加湿素子2から排気される。すなわち、加湿体20の表面では、加湿体20の間の隙間を流れる空気と、加湿体20に保水された水の水蒸気分圧差により、空気への加湿が行われる。一方、加湿体20で加湿に用いられずに残った水は、加湿体20の下端から滴下して図6に示す排水部13からケーシング10の外部に排出される。このため、加湿体20の下端から排水される流量は、給水口11から供給される水量から加湿体20で加湿に用いられた水量を差し引いた水量となる。
次に、加湿装置1の作用効果について説明する。
図9に示すように、本実施の形態では、水流抑制部22と風上側端面20aとの間の上下方向と直交する方向に沿った断面積は、水流抑制部22と風下側端面20bとの間の上下方向と直交する方向に沿った断面積よりも大きいことで、加湿体20のうち水流抑制部22の風下側よりも風上側に多くの水を流すことができる。また、第1の方向Yに沿って見たときに、注水孔12aを下方に延長した延長線Lを横切って水流抑制部22が設けられることで、水流抑制部22の一部が延長線Lよりも風上側に位置するため、水流抑制部22よりも風上側に向かう水を風上側端面20aに近づけて流すことができる。このため、加湿体20のうち加湿量が多くなる水流抑制部22よりも風上側の乾燥を防いで、スケール成分の析出を抑制することができる。これにより、加湿体20のうち水流抑制部22よりも風上側へのスケール成分の付着を抑制して加湿素子2の加湿能力の低下を防止することができる。
図11は、比較例に係る加湿素子2を示す断面図であって、給水手段50および水流抑制部22を拡大した図である。図11において矢印S1で示す注水孔12aから下方に向けて流下した水は、矢印T1で示す水流抑制部22よりも風上側に向かう水の流れと、矢印U1で示す水流抑制部22よりも風下側に向かう水の流れとに分流される。図11に示す水流抑制部22は、第1の方向Yに沿って見たときに、注水孔12aを下方に延長した延長線Lを横切って配置されていない。比較例では、水流抑制部22の全体が延長線Lよりも風下側に位置する。矢印T1で示す水流抑制部22よりも風上側に向かう水は、図9において矢印Tで示す水の流れに比べて、風上側端面20aから風下側に離れた位置を流れる。つまり、本実施の形態では、水流抑制部22の一部が延長線Lよりも風上側に位置するため、水流抑制部22の全体が延長線Lよりも風下側に位置する場合に比べて、水流抑制部22よりも風上側に向かう水を風上側端面20aに近づけて流すことができる。これにより、加湿体20の風上側端面20aまで水が浸透しやすくなる。
本実施の形態では加湿体20に水流抑制部22が形成されることで、加湿体20に水流抑制部22が形成されない場合に比べて、加湿体20の内部を流れる水の方向および分配量を調整することができる。
実施の形態2.
図12は、本発明の実施の形態2にかかる加湿素子2を示す断面図であって、図5に示すVI−VI線に沿った断面図に相当する図である。なお、実施の形態2では、前記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
水流抑制部22は、上下方向に沿って間隔を空けて複数設けられている。水流抑制部22の数は、特に制限されないが、本実施の形態では2つである。ここで、2つの水流抑制部22を区別する場合には、上方に位置する一方の水流抑制部22を「第1水流抑制部22A」と称し、下方に位置する他方の水流抑制部22を「第2水流抑制部22B」と称する。2つの水流抑制部22は、第2の方向Zに沿った長さが互いに異なる。第2水流抑制部22Bの第2の方向Zに沿った長さ寸法は、第1水流抑制部22Aの第2の方向Zに沿った長さ寸法よりも大きい。第2水流抑制部22Bのうち風上側の端点P1bから風上側端面20aまでの第2の方向Zに沿った距離は、第1水流抑制部22Aのうち風上側の端点P1aから風上側端面20aまでの第2の方向Zに沿った距離よりも短い。つまり、複数の水流抑制部22は、下方に位置するものほど風上側端面20aとの第2の方向Zに沿った距離が短くなっている。
第1水流抑制部22Aのうち風上側の端点P1aから風上側端面20aまでの距離は第1水流抑制部22Aのうち風下側の端点P2aから風下側端面20bまでの距離よりも長く、加湿体20の第1の方向Yに沿った板厚は第2の方向Zに亘って一定である。このため、第1水流抑制部22Aと風上側端面20aとの間の上下方向と直交する方向に沿った断面積は、第1水流抑制部22Aと風下側端面20bとの間の上下方向と直交する方向に沿った断面積よりも大きい。
第2水流抑制部22Bのうち風上側の端点P1bから風上側端面20aまでの距離は第2水流抑制部22Bのうち風下側の端点P2bから風下側端面20bまでの距離よりも長く、加湿体20の第1の方向Yに沿った板厚は第2の方向Zに亘って一定である。このため、第2水流抑制部22Bと風上側端面20aとの間の上下方向と直交する方向に沿った断面積は、第2水流抑制部22Bと風下側端面20bとの間の上下方向と直交する方向に沿った断面積よりも大きい。
本実施の形態では、加湿体20には複数の水流抑制部22が設けられている。これにより、水流抑制部22が1つの場合に比べて、加湿体20の内部の水の流れを細かく調整することができる。また、複数の水流抑制部22の大きさおよび配置を変えることで、加湿体20の内部の水の流れを自在に制御することができる。
第2水流抑制部22Bは、第1水流抑制部22Aよりも風上側端面20aに近い位置に配置されている。このため、第1水流抑制部22Aよりも風上側から流下してきた水を、第2水流抑制部22Bで風上側端面20aにさらに近づけて流すことができる。これにより、加湿体20の風上側端面20aまで水が一層浸透しやすくなる。
実施の形態3.
図13は、本発明の実施の形態3にかかる加湿素子2を示す断面図であって、図5に示すVI−VI線に沿った断面図に相当する図である。図14は、図13に示す加湿素子2の拡大断面図であって、給水手段50および水流抑制部22を拡大した図である。なお、実施の形態3では、前記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
水流抑制部22は、空気の流れ方向に沿った風下から風上に向かうほど下り傾斜している。水流抑制部22の内壁には、給水手段50を向く第1壁22aと、第1壁22aと反対側を向く第2壁22bと、空気の流れ方向に沿った風上を向く風上側壁22cと、風上側壁22cと反対側を向く風下側壁22dと、が形成されている。本実施の形態では、水流抑制部22全体が空気の流れ方向に沿った風下から風上に向かうほど下り傾斜しているが、少なくとも第1壁22aが空気の流れ方向に沿った風下から風上に向かうほど下り傾斜していればよい。図14に示すように、水流抑制部22のうち風上側の端点P1から風上側端面20aまでの距離は水流抑制部22のうち風下側の端点P2から風下側端面20bまでの距離よりも長く、加湿体20の第1の方向Yに沿った板厚は第2の方向Zに亘って一定である。このため、水流抑制部22と風上側端面20aとの間の上下方向と直交する方向に沿った断面積は、水流抑制部22と風下側端面20bとの間の上下方向と直交する方向に沿った断面積よりも大きい。
本実施の形態によれば、水流抑制部22の内壁のうち給水手段50を向く第1壁22aが空気の流れ方向に沿った風下から風上に向かうほど下り傾斜することで、水が水流抑制部22の第1壁22aを伝って風上側に流れやすくなる。このため、加湿体20のうち水流抑制部22の風下側よりも風上側に多くの水を流すことができ、加湿体20のうち水流抑制部22よりも風上側の乾燥を防いでスケール成分の析出を抑制することができる。これにより、加湿体20のうち水流抑制部22よりも風上側へのスケール成分の付着を抑制して加湿素子2の加湿能力の低下を防止することができる。
第1の方向Yに沿って見たときに、注水孔12aを下方に延長した延長線Lを横切って水流抑制部22が設けられる場合には、多くの水が水流抑制部22に向けて流れて表面張力で第1壁22aに滞留しやすくなる。この場合、第1壁22aが空気の流れ方向に沿った風下から風上に向かうほど下り傾斜することで、第1壁22aに滞留した水が水流抑制部22の開口部を超えて第2壁22bに達する前に、第1壁22aを伝って風上側に流れやすくなる。このため、水流抑制部22から水が溢れることを防止でき、水流抑制部22における水飛びが発生しにくくなる。
図15は、図14に示す加湿素子2の変形例を示す断面図である。図15に示すように、水流抑制部22の第1壁22aには、空気の流れ方向に沿った風下側から風上側に向かうほど下り傾斜する第1傾斜部22fと、空気の流れ方向に沿った風上側から風下側に向かうほど下り傾斜する第2傾斜部22gとが形成されてもよい。第1傾斜部22fは、第1壁22aの大部分に形成されており、第2傾斜部22gは、第1壁22aの一部分に形成されている。第2傾斜部22gは、延長線Lよりも風下側であって、かつ、第1壁22aのうち風下側端面20bに最も近い部位に形成されることが好ましい。このように水流抑制部22の第1壁22aの一部分に第2傾斜部22gを設けたとしても、図14に示す実施の形態3と同様の作用効果を奏することができる。
実施の形態4.
図16は、本発明の実施の形態4にかかる加湿素子2を示す断面図であって、図5に示すVI−VI線に沿った断面図に相当する図である。図17は、図16に示す加湿素子2の拡大断面図であって、給水手段50、水流抑制部22および排水部13を拡大した図である。なお、実施の形態4では、前記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
水流抑制部22は、空気の流れ方向に沿った風下から風上に向かうほど下り傾斜している。本実施の形態の水流抑制部22は、上記した図13に示す水流抑制部22よりも急な角度で傾斜している。水流抑制部22の内壁には、空気の流れ方向に沿った風上を向く風上側壁22cと、風上側壁22cと反対側を向く風下側壁22dと、傾斜方向に沿った最も上方に位置する上壁22eと、が形成されている。上壁22eは、加湿体20のうち上下方向の中心よりも上端に近い位置に達している。水流抑制部22のうち傾斜方向に沿った最も下方に位置する部位は、加湿体20の下端に達している。つまり、水流抑制部22のうち傾斜方向に沿った最も下方に位置する部位は、加湿体20の下端に開口している。水流抑制部22は、加湿体20のうち下端から上端に近い位置までを空気の流れ方向に分断するように設けられている。
水流抑制部22と風上側端面20aとの間の第2の方向Zに沿った距離は、上方から下方に向かうほど短くなっている。一方、水流抑制部22と風下側端面20bとの間の第2の方向Zに沿った距離は、上方から下方に向かうほど長くなっている。水流抑制部22のうち風上側の端点P1から風上側端面20aまでの距離は水流抑制部22のうち風下側の端点P2から風下側端面20bまでの距離よりも長く、加湿体20の第1の方向Yに沿った板厚は第2の方向Zに亘って一定である。このため、最も上方位置における水流抑制部22と風上側端面20aとの間の上下方向と直交する方向に沿った断面積は、最も上方位置における水流抑制部22と風下側端面20bとの間の上下方向と直交する方向に沿った断面積よりも大きい。
水流抑制部22と風上側端面20aとの間では、排水部13に最も近い部位が最も狭くなる。したがって、水流抑制部22よりも風上側を流れる水の流量は、加湿体20のうち排水部13に最も近い部位が律速である。一方、水流抑制部22と風下側端面20bとの間では、給水手段50に最も近い部位が最も狭くなる。したがって、水流抑制部22よりも風下側を流れる水の流量は、加湿体20のうち給水手段50に最も近い部位が律速である。
本実施の形態では、加湿体20を空気の流れ方向に分断するように水流抑制部22が設けられることで、空気の流れ方向に沿う水の流れを抑制することができる。すなわち、水流抑制部22の大きさ、角度、配置などを変えることで、加湿体20の内部の水の流れを容易にコントロールできる。また、加湿体20に付着した菌、カビなどが水流抑制部22を超えて風下側に拡散するのを抑制することができる。
最も上方位置における水流抑制部22と風上側端面20aとの間の上下方向と直交する方向に沿った断面積が、最も上方位置における水流抑制部22と風下側端面20bとの間の上下方向と直交する方向に沿った断面積よりも大きいことで、水流抑制部22の風下側よりも風上側に多くの水を流すことができる。一方、水流抑制部22と風上側端面20aとの間では、排水部13に最も近い部位が最も狭くなることで、水流抑制部22よりも風上側では排水量が抑えられる。これにより、水流抑制部22よりも風上側では、給水量が多く、排水量が少なくなるため、湿った状態を保ちやすくなる。
上記実施の形態1から4で説明した加湿装置1を空気調和機または換気装置に設けることで、長期間に亘って安定した加湿能力を発揮できる空気調和機または換気装置を得ることができる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。