以下、本発明の「スプリンクラーヘッド」の実施形態としてのスプリンクラーヘッドSについて図面を参照しつつ説明する。本明細書及び特許請求の範囲に「第1」、「第2」、「第3」と記載する場合、それらは、発明の異なる構成要素を区別するために用いるものであり、特定の順序や優劣等を示すために用いるものではない。
スプリンクラーヘッドSの構成〔図1〜図6〕
スプリンクラーヘッドSは、本体1と、フレーム2と、弁体3と、散液部4と、弾発体5と、感熱分解部6とを備えている。図1で示すように、スプリンクラーヘッドSは、円筒状に形成されている。スプリンクラーヘッドSの軸方向は、図1における上下方向に相当する。スプリンクラーヘッドSの軸交差方向は、スプリンクラーヘッドSの軸方向を中心とする放射方向であり、例えば図1における左右方向である。
スプリンクラーヘッドSの軸方向における上側に位置する本体1と、下側に位置するフレーム2とは、スプリンクラーヘッドSの外装を構成している。他方で、弁体3と散液部4と弾発体5とは、フレーム2の内部空間に収容されている。そして、感熱分解部6は、スプリンクラーヘッドSの内部空間と外部とにまたがって配置されており、フレーム2からその一部がスプリンクラーヘッドSの軸方向における下方に向かって突出している。スプリンクラーヘッドSを構成する本体1、フレーム2、弁体3、散液部4、弾発体5及び感熱分解部6のそれぞれの軸心は、全てスプリンクラーヘッドSの軸心と一致するように配置されている。
スプリンクラーヘッドSの本体1は、多重円筒状に形成されている。本体1は、その内部に、スプリンクラーヘッドSの軸方向に伸長する円筒状のノズル11を有している。すなわち、ノズル11の軸方向は、スプリンクラーヘッドSの軸方向と一致している。そして、ノズル11の軸交差方向における軸心(中心)も、スプリンクラーヘッドSの軸心と一致している。ノズル11は、スプリンクラーヘッドSから散布される消火液、例えば消火水の流路である。ノズル11は、その下端に、ノズル11の出口となるノズル端11aを有している。消火液は、ノズル端11aから下方に向かって放出される。ノズル端11aは、弁体3に突き当たるようにして接触しており、火災が無い平時においては、その弁体3によって閉止されている。
本体1の上端側の外周には、消火水を供給する給水配管(図示略)に接続する給水配管接続用ねじ部12が設けられている。本体1の上下方向における中間部分の外周、すなわち、給水配管接続用ねじ部12の下方には、スプリンクラーヘッドSの軸交差方向における外向きに突出する円環状の基端部分と、基端部分からノズル11と同心状に伸長する円筒部分とを有するフランジ部13が形成されている。フランジ部13とノズル11との間には、空隙部が形成されている。そして、フランジ部13の内周面には、フレーム2と接続するフレーム接続用ねじ部14が設けられている。
フレーム2は、フランジ部13の内周と略同じ外径を有する円筒状に形成されている。フレーム2の上端側の外周には、フレーム接続用ねじ部14と接続する本体接続用ねじ部21が設けられている。スプリンクラーヘッドSは、連結部を構成するフレーム接続用ねじ部14と本体接続用ねじ部21とを締結することで、本体1とフレーム2とが連結して一体化するように構成されている。フレーム2の下端の内周には、スプリンクラーヘッドSの軸交差方向における内向きに突出する円環状の段部22が形成されている。段部22は、感熱分解部6が係止するように構成されている。図6及び図7(C)で示すように、段部22の内周面と上面との間には、面どうしが交差する角を欠落することで上側傾斜面23が形成されている。上側傾斜面23は、環状に形成されており、上側傾斜面23よりも下側の段部22の内周面には、フレーム2の外方に向かって湾曲するガイド部24が環状に形成されている。
弁体3は、ディスク3aと凸部材32とを有している。ディスク3aは、円盤状に形成されており、その外縁部3bの側は、ノズル端11aと対向位置している。ディスク3aの軸交差方向における中心は、ノズル11の軸心と一致している。ディスク3aの外縁部3bは、ノズル端11aの内径よりは大きく、ノズル端11aの外径よりは小さく形成されている。すなわち、外縁部3bは、ノズル端11aの内周と外周との間に位置している。ノズル11の先端(ノズル端11a)の内周には環状係止溝11bが形成されている。
図2で示すように、ディスク3aの中心には、ノズル11の内部に向けて突出する「柱部」としての円柱状の突起31が形成されている。そして、突起31には、「保持部材」としての凸部材32が固定されている。本実施形態の凸部材32は、ドーム状の樹脂成形体にて形成されている。凸部材32は、樹脂成形体であるため、ディスク3aへの取付けを容易に行うことができる。凸部材32には、中心軸に沿って突起31を圧入して保持する「柱部圧入孔」としてのディスク取付孔32aが形成されている。凸部材32には、ディスク取付孔32aと外部とを連通させる脱気孔32bが形成されている。突起31をディスク取付孔32aに圧入する際には、脱気孔32bからディスク取付孔32aの空気を逃がすことができるため、突起31がディスク取付孔32aの奥壁に当接するまで圧入して、凸部材32をディスク3aに対して確実に取付けることができる。また、凸部材32とディスク3aの接続部である突起31とディスク取付孔32aがノズル11内に配置されており、突起31とディスク取付孔32aの圧入による強度が若干弱くてもノズル11に充填されている水が接続部の隙間から外部に漏れることは無い。
ディスク3aの「ノズル側表面」としての上面には、「シート状止水部材」としての止水シート33が設けられている。止水シート33は、ノズル端11aとディスク3aとの間からノズル11内の消火水が漏れ出すことを阻止する。止水シート33には、環状内縁33aと環状外縁33bが形成されている。環状内縁33aは、突起31を挿通する突起挿通孔として形成されている。また、環状内縁33aは、ディスク3aと凸部材32との間に位置している。即ち、凸部材32の底面と対向して位置している。環状外縁33bは、ノズル端11aとディスク3aの外縁部3bとの間に位置している。環状外縁33bは、ノズル端11aの環状係止溝11bとディスク3aの外縁部3bとの間に押圧状態で挟持される。止水シート33は、ノズル端11aと接触する範囲に位置していれば良く、その外径はノズル11の内径以上でありディスク3aの外径以下とする。本実施形態の止水シート33の裏面には、粘着剤による粘着層が形成されている。止水シート33は、粘着層によりディスク3aの表面に貼着されている。止水シート33の環状内縁33aの側は、ディスク3aと凸部材32の底面との間に挟持されて保持される「被保持部」となっている。したがって、経年劣化により粘着層の粘着力が低下しても、凸部材32がディスク3aから分離しない限り、止水シート33がディスク3aと凸部材32との間から外れることはない。よって、止水シート33は、粘着層の粘着力が低下しても、安定してディスク3aに保持される。
ディスク3aの裏面の中央には、上方に向かってくぼんだピン受け凹部34が形成されている。ピン受け凹部34は、その中心が上方に向かって押し込まれることによって、ディスク3aをノズル端11aに対して均等に押しつけるように構成されている。これによって、弁体3はノズル端11aを液密に閉止することができる。ピン受け凹部34の軸交差方向における外側には、円筒状の周壁35が形成されている。周壁35は、ディスク3aよりも小さな外径を有している。弁体3は、ノズル11と散液部4との間に位置しており、ノズル11及び散液部4に対してスプリンクラーヘッドSの軸心周りに回転可能に構成されている。
図2で示すように、散液部4は、デフレクター41と、サポートリング42と、支柱43と、ガイドリング44とを備えている。図1で示すように、散液部4は、火災を感知しない平時においてノズル11とフレーム2との間の空隙部に収容されている。
デフレクター41は、弁体支持部41aと複数の羽46とを有する。弁体支持部41aの中心部には、取付孔41a1が形成されている。取付孔41a1には、弁体3の周壁35が回転可能な状態で挿通されている。弁体3の周壁35の外側部分は、弁体支持部41aの内周側上面に載置される。これによって、デフレクター41は、弁体3に対して回転可能に一体化される。ディスク3aの外縁部3bの外方に突出する弁体支持部41aの環状突出部41a2は、本発明の「受け面」として形成されている。環状突出部41a2は、デフレクター41の内側底面を構成しており、ノズル端11aと対向して位置している。環状突出部41a2は、ノズル11から放出された消火水を受け止めて、デフレクター41の内側に溜めるように構成されている。
スプリンクラーヘッドSは、周囲からの熱を受けた場合に分解作動して、スプリンクラーヘッドSの本体1の四方八方(ノズル11(スプリンクラーヘッドS)の軸交差方向)に消火水を散布する必要がある。本実施形態では、デフレクター41がスプリンクラーヘッドSの分解作動に伴って変位して、フレーム2からつり下げられた状態となることで、消火水を四方八方に散布させる。そして、デフレクター41をそのような配置とするためには、フレーム2と係合する支柱43が必要となる。
デフレクター41には、スプリンクラーヘッドSの軸方向に沿うように弁体支持部41a側から本体1側に向けて伸長する支柱43が設けられている。支柱43は、デフレクター41の外周上に所定間隔で複数設けられており、デフレクター41をつり下げた状態で支持するように構成されている。
デフレクター41の構造は、金属平板を曲げ加工することで形成される。図3はデフレクター41の曲げ加工前の展開状態での平面図である。平板状に展開した状態のデフレクター41の弁体支持部41aは、円形である。弁体支持部41aの環状突出部41a2には、放射状に伸長する4本の支柱43が90°間隔で形成されている。隣接する支柱43の間には、複数の羽46が環状突出部41a2から放射状に突出するように形成されている。複数の羽46は、その基端側で屈曲されることで、本体1側に向けて伸長する。隣接する支柱43と羽46との間、また隣接する羽46の間には、溝45が形成されている。これにより各支柱43と各羽46は、それぞれ独立して環状突出部41a2に繋がっており、それぞれ任意の位置で本体1に向けて屈曲させることができる。
羽46は、ノズル11から放出されて凸部材32に当接した消火水を、ノズル11の軸交差方向で外向きに飛散させるものである。図2で示すように、ノズル11(スプリンクラーヘッドS)の軸方向にそれぞれ伸長する複数の羽46は、弁体3を取り囲むように、デフレクター41の外周面41bを形成している。さらに、隣接する2つの羽46の間には溝45による流液スペース45Bが形成される(図4参照)。
複数の羽46と同じように、図3で示す支柱43の基端側を屈曲させることで、本体1側に伸長するデフレクター41の支柱43が形成される。支柱43の基端側における屈曲位置は、図3の破線で示す位置である。これに対して複数の羽46の基端側における屈曲位置は、図3の二点鎖線で示す位置である。したがって、図4(b)で示すように、支柱43の屈曲位置は、複数の羽46の屈曲位置よりも、デフレクター41の中心側となっている。これによって、支柱43は、複数の羽46よりも、スプリンクラーヘッドSの軸交差方向で軸寄りにずれた位置で、デフレクター41の弁体支持部41aから本体1側に向けて伸長している。すなわち、支柱43は、デフレクター41の外周面41bよりも内側に位置することとなる。
支柱43(支柱43の屈曲位置)が羽46(羽46の屈曲位置)よりもデフレクター41の中心側に位置する構成によって、ノズル11から放出された消火水は、弁体3に衝突してデフレクター41の環状突出部41a2を流れて支柱43の側縁を通過し、支柱43と隣接する羽46から支柱43の裏側(外側面)に回り込むことができる。ここで例えば、支柱43の屈曲位置が、図3の二点鎖線で示す羽46の屈曲位置と同じ位置とする場合を比較例として想定する。この場合には、支柱43と羽46が軸交差方向で段差のない一連の内周面を形成し、支柱43は羽46よりも高い壁となる。このため消火水は支柱43の裏側(外面側)に十分に流れることができず、支柱43の裏側(外面側)について必要な消火水の散布量を確保できなくなる。しかしながら、支柱43が羽46よりもデフレクター41の中心側に位置しているため、軸交差方向で支柱43と羽46との間に段差ができる。この段差ができることで、消火水を支柱43の裏側(外面側)に回り込ませることができる。図4(b)には、そのような消火水の流れを二点鎖線で示している。したがって、デフレクター41は、消火水が流れる際に支柱43が壁となって散布量が不足しがちな支柱43の裏側(外面側)への消火水の散布量を増やすことができる。よって、スプリンクラーヘッドSは、その全周方向に亘って消火水をむらなく散布することができる。
また、羽46の構成を工夫することで、支柱43の裏側(外面側)への散布量を改善することもできる。図3及び図4で示すように、複数の羽46のうち、デフレクター41の周方向において支柱43と隣接する第1の羽46Aは、支柱43と対向する側に第1の側縁部46Bを有している。そして、図4(a)で示すように、第1の側縁部46Bには、本体1側の角が欠落した角縁欠落部46bが形成されている。この角縁欠落部46bを有する第1の羽46Aは、角縁欠落部46bが無い羽と比べて、支柱43と第1の羽46Aの第1の側縁部46Bの本体側(角縁欠落部46b)との間に、より幅広の拡張流路45Aを形成することができる。ノズル11から流れてデフレクター41に溜まる消火水は、高さの低い角縁欠落部46b(拡張流路45A)を通じて支柱43の裏側(外面側)に流れやすくなる。こうしてデフレクター41は、支柱43の裏側(外面側)への散布量を改善することもできる。
なお、角縁欠落部46bは、斜め直線状に角を欠落する例を示したが、円弧状に欠落してもよい。
さらに、複数の羽46のうち、デフレクター41の周方向において他の羽46と隣接する第2の羽46Cは、隣接する他の羽46と対向する側に、弁体支持部41a側から本体1側に向けて伸長する第2の側縁部46Dを有している。そして、第2の側縁部46Dは、隣接する他の羽46に対する距離が、弁体支持部41a側よりも本体1側において近い。このため、隣接する2つの羽46の間に形成される消火水の流液スペース45Bは、本体1側が狭く、デフレクター41の内側底面を構成する弁体支持部41a側が広い、くさび状(逆テーパ状)となる。
そして、流液スペース45Bにおけるデフレクター41の内側底面の側では、消火水が広幅の流路を通過することで、スプリンクラーヘッドSの軸交差方向において比較的近い位置に散布される。他方、流液スペース45Bの羽46の本体1側では、消火液の流路が狭く絞られて散布が抑制されるため、デフレクター41内の消火水の水位が上昇して羽46を乗り越える。この羽46を超えて流れる消火水は、流路底となる弁体支持部41aとの摩擦の影響が小さい位置での流れであるため、比較的大きな流速を有している。また、羽46の本体1側を超えて流れる消火水は、流液スペース45Bの影響を受けにくい。このため、羽46の本体1側を超えて流れる消火水は、スプリンクラーヘッドSの軸交差方向でより遠い位置に散布される。よって、スプリンクラーヘッドSは、その軸交差方向における遠い位置と近い位置とに消火水をむらなく散布することができる。
さらに、第2の側縁部46Dが、弁体支持部41aの平面を基準として羽46の半分程度の高さまで垂直に形成され、そこから本体1側に向けて次第に羽46の幅が拡がるようなテーパー形状となるように、羽46を構成することもできる。こうした場合には、前述の構成と同様に流液スペース45Bの影響をより大きくすることができる。
なお、仮に、図4(a)に示す流液スペース45Bの幅を羽46の本体1側と弁体支持部41a側とで同じにした場合(互いに隣接する羽46の側縁部が平行となる場合)には、本実施形態の構成と比較すると、流液スペース45Bを通過する消火水の量が増え、それと相対的に羽46を乗り越える消火水の量は減少する。このため、スプリンクラーヘッドSに対して近い位置の散布量が増え、遠い位置への散布量が減少する。さらに、流液スペース45Bの幅を羽46の本体1側を広くして弁体支持部41a側を狭くした場合には、流液スペース45Bの影響がより大きくなり、羽46の先端を乗り越えて流れる消火水が少なくなるのでスプリンクラーヘッドSから遠い位置の散布量がさらに減る傾向にある。
支柱43は、弁体支持部41a側から本体1側に向けて伸長する第3の側縁部43Aを有している。ここで、金属平板から、支柱43及び羽46となる部位を屈曲させた際に、デフレクター41の軸交差方向でそれぞれを平行に伸長させるのが、従来技術のデフレクターの構成である。これを実現するためには、支柱43の第3の側縁部43Aと羽46の第1の側縁部46Bとは、図3で示す展開時において、平板の内周側から外周側に向かって離間する放射状に構成される必要がある。
これに対し、本実施形態においては、図3で示すように、支柱43及び羽46を展開した平板の状態では、第1の側縁部46Bと第3の側縁部43Aとは平行に伸長している。
言い換えると、支柱43と隣接する溝45aは、支柱43及び羽46と平行に形成されている。このような平板の外周側である支柱43及び羽46の部位を屈曲させると、図4で示すように、弁体支持部41a側が広幅であり、本体1側が狭幅となる消火水の流路を形成することができる。よって、スプリンクラーヘッドSは、その軸交差方向における遠い位置と近い位置とに消火水を、よりむらなく散布することができる。
図1で示すように、弁体3のディスク3aの外縁部3bは、支柱43及び複数の羽46に対して離間して配置されている。これによって、スプリンクラーヘッドSが衝撃を受けても、ノズル11に対する弁体3のずれの発生を防ぐことができる。そして、羽46とディスク3aの外周の間にはノズル11の先端が挿通されている。このように、弁体3のディスク3aの外縁部3bは、支柱43及び複数の羽46に対して離間して配置されていることによって、弁体3の外縁部3bと羽46との間にノズル11の先端を配置する空間を確保することができる。
支柱43の本体側端部43Bは、円環状のサポートリング42に固定されている。図2で示すように、支柱43は、本体1側に、弁体支持部41a側よりもデフレクター41の周方向に沿った幅(距離)が広い広幅部を有している。さらに、広幅部よりも本体1側には、周方向両側に向かって突出する鍔部43aが形成されている。サポートリング42には、鍔部43aに対応して、サポートリング42を軸方向に貫通する係合孔42aが形成されている。支柱43は、鍔部43aよりも本体1側がサポートリング42の係合孔42aに挿通されており、鍔部43aでサポートリング42の下面を保持するように構成されている。そして、支柱43の本体側端部43Bは、かしめ加工によってサポートリング42に固定されている。支柱43は、サポートリング42に支持されていれば良く、支柱43のサポートリング42への取付方法についての制限はない。
図2で示すように、デフレクター41には、円環状のガイドリング44が取り付けられている。ガイドリング44は、ノズル11の軸方向に沿って変位する支柱43を干渉しないように誘導するガイド凹部47を有している。図5で示すように、ガイド凹部47は、ガイドリング44の内縁側に、軸交差方向における外方に向かって欠落するように形成されている。これによって、感熱分解部6の本体1からの離脱に伴ってデフレクター41がノズル11の軸方向に沿って変位する際に、支柱43をガイドリング44のガイド凹部47に沿わせて変位させることができる。よって、ガイドリング44は、スプリンクラーヘッドSが作動してデフレクター41及び支柱43が変位する際の傾きを防ぎ、消火液が散布される所定の位置、すなわちフレーム2の下方の外部までデフレクター41を確実に変位させることができる。
ガイドリング44は、羽46に載置するように構成されている。これによってコイルスプリング48を配置する空間を削減してスプリンクラーヘッドSの軸方向における全長を短くすることができる。
ガイドリング44は、サポートリング42と支柱43とを組み合わせる前の段階で支柱43に挿通される。その際に、支柱43は、ガイド凹部47に収容された状態となっている。
なお、ガイド凹部47は、ガイドリング44の内縁側でなく、外縁側において、軸交差方向における内方に向かって欠落するように形成されていても良い。この場合には、コイルスプリング48は、ガイドリング44の内縁側に配置される。
支柱43は、上端である本体側端部43Bが、下端であるデフレクター側端部43Cよりも軸交差方向で外方に位置するように、支柱43の長手方向における中間部分に屈曲部43Dを有している。このように、支柱43は、本体1側が軸交差方向における外方に位置している。このため、支柱43は、ガイドリング44との間の距離が、弁体支持部41a側で広く、本体1側では狭くなっている。よって、デフレクター41が感熱分解部6の本体1からの離脱に伴ってノズル11に沿って変位する際に、ガイドリング44は、変位の初期段階では支柱43とガイド凹部47の隙間が大きくスムーズに支柱43に沿って変位(摺動)する。他方で、ガイドリング44は、変位の末期段階ではガイド凹部47と支柱43の間隔が狭くなりデフレクター41の横ずれや傾きを防止できる。
なお、支柱43は、本体側端部43Bがデフレクター側端部43Cよりも軸交差方向で外方に位置するように構成されていれば良く、屈曲部43Dを有さずに、本体側端部43Bとデフレクター側端部43Cとの間が斜め直線状に構成されていても良い。
サポートリング42、支柱43及びガイドリング44は、ノズル11の外周とフレーム2の内周との間の空隙部に配置されている。さらに、ガイドリング44と本体1との間には「弾性部材」としてのコイルスプリング48が取り付けられている。コイルスプリング48はガイドリング44の外縁側に配置されている。図1に示すように、コイルスプリング48の内側には、サポートリング42と支柱43が収容された状態となる。
コイルスプリング48は、ガイドリング44を介してデフレクター41をノズル11の軸方向における下方、すなわち本体1から離間する方向に付勢している。よって、感熱分解部6の本体1からの離脱の際に、仮にノズル11の内部が負圧であっても、弁体3をノズル11から引き離してノズル端11aを開放できる。
弾発体5は、ノズル端11aを閉止するために弁体3をノズル11側に付勢するものである。図1で示すように、弾発体5には例えば金属皿ばね51が用いられる。ここでの皿ばね51は、図6で示すように、フレーム2の内部において、スプリンクラーヘッドSの軸方向における上側に位置する皿ばね51aと、下側に位置する皿ばね51bとからなる。皿ばね51aと皿ばね51bとは、いわゆる直列組合せで、互いの外縁が重なるように配置されている。皿ばね51a及び皿ばね51bの孔には、スプリンクラーヘッドSの軸方向における上側から円柱状のセットピン52が挿通されている。皿ばね51a及び皿ばね51b並びにセットピン52は、弁体3と感熱分解部6の間に介在している。
セットピン52の上下方向における中間部分の外周には、外向きに突出する円環状のフランジ53が形成されている。フランジ53は、皿ばね51aの内縁側の上面に当たるように配置されている。図1で示すように、セットピン52は、その上端に、ピン受け凹部34に挿通される頭部54を有している。頭部54の先(上)端は、ピン受け凹部34の平坦面の中心に対して常に点接触で押圧するように曲面状に形成されている。このように、スプリンクラーヘッドSは、皿ばね51の付勢力による押圧荷重が、フランジ53及び頭部54を介してピン受け凹部34の平坦面の中心、すなわち弁体3の中心に印加されるように構成されている。よって、スプリンクラーヘッドSは、弁体3の周縁部において荷重が均一に加わり、ノズル端11aを確実に閉止するように構成されている。
図6で示すように、セットピン52の下端は、その軸心からの寸法が小さな細径部55となっている。細径部55の上方には、セットピン52の上側に向かって大径となる斜面56が形成されている。
感熱分解部6は、複数のボール61と、スライダー62と、バランサー63と、プランジャー64と、シリンダー65とを備えている。感熱分解部6は、ノズル11に対する弁体3の閉止状態を保持し、スプリンクラーヘッドSの分解作動時に閉止状態を開放するものである。
ボール61は、鋼製の球体であり、同じサイズのものが複数用いられている。ボール61は、その下部が、フレーム2の段部22の上側傾斜面23に接触するように配置されている。
スライダー62は円環平板状に形成されている。スライダー62は、皿ばね51bの下面の内縁と接触するように配置されている。スライダー62は、その下側の面における周縁に保持凹部62aを有している。保持凹部62aは、それぞれ周縁に向かって板厚が薄くなるように傾斜している。保持凹部62aは、ボール61と同数設けられており、スライダー62の周方向に均等間隔で配置されている。複数の保持凹部62aのそれぞれには、複数のボール61のそれぞれが収容されている。
スライダー62は、皿ばね51bからの付勢力を受けてボール61を上方から押圧している。ボール61は、上側傾斜面23に接触するように配置されているため、ボール61には、下方かつスプリンクラーヘッドSの軸心側に移動する力が常時作用することとなる。このとき、複数のボール61がスライダー62の周方向に均等間隔で配置されているため、ボール61に印加される押圧荷重が均等になる。これによって、一部の部品へ押圧荷重が集中することを防いで部品の損傷を防止するとともに、押圧荷重の不均一によるスライダー62の傾きが防がれる。そして、スライダー62上に設けられた弾発体5によるノズル端11aを閉止する閉止荷重が、セットピン52を介して弁体3の中心に印加されるので、ノズル端11aに均一に閉止荷重が印加され、ノズル11からの液漏れを防止できる。
スライダー62の孔には雌ねじが形成されている。フレーム2の内部空間に、弾発体5、セットピン52及び複数のボール61とともに配置されたスライダー62に対し、バランサー63及びシリンダー65の取り付けられたプランジャー64が締結される。これによって、弾発体5に付勢力を生じさせて弁体3がノズル端11aを閉止状態にするとともに、感熱分解部6が下方に押圧されながらフレーム2に取り付けられている。
バランサー63は円筒状に形成されている。バランサー63の上面の外周部には、円環状に欠落した段部63bが形成されている。バランサー63は、段部63bでボール61と接触しており、下方かつスプリンクラーヘッドSの軸心側への力が作用するボール61の移動を阻止している。バランサー63がボール61の移動を押さえ込むことによって感熱分解部6はフレーム2と結合している。バランサー63の軸心付近には、プランジャー64の挿通される貫通孔が形成されている。
プランジャー64は円筒状に形成されている。プランジャー64の上端側の外周には、スライダー62に接続する雄ねじが形成されている。プランジャー64は、スライダー62と接続した際に、スライダー62の上に位置する皿ばね51bの孔を挿通するように構成されている。プランジャー64は、スライダー62と接続した際のスライダー62の上面からプランジャー64の上端までの長さが、皿ばね51bの厚さと同じか、それよりも僅かに長く形成されていると良い。この構成によって、感熱分解部6が作動してフレーム2から脱落する際に皿ばね51bが支持され続け、プランジャー64から抜けてしまうことが防止される。
プランジャー64の下端には、スプリンクラーヘッドSの軸交差方向における外向きに突出する円環状の鍔部64aが形成されている。鍔部64aの上面には、リング状に形成された低融点合金66が載置されている。そして、この低融点合金66を覆うようにシリンダー65がプランジャー64に取り付けられている。
シリンダー65は有底筒状に形成されている。シリンダー65は、熱伝導率の高い材料として銅、銅合金等が用いられており、シリンダー65の表面から吸収した熱を低融点合金66に伝わりやすくしている。シリンダー65は、その下(底)部の中心付近に上方に向かってくぼんだ凹み65aを有している。低融点合金66は、凹み65aと鍔部64aとの間に収容されている。凹み65aの中心付近には、プランジャー64の挿通される貫通孔が形成されている。凹み65aの縁には、外向きに伸長する円盤部65bが形成されており、円盤部65bの外縁には、フレーム2の方向に起立するように伸長する側面部65cが形成されている。
側面部65cには、凹み65aの外周面と連通する長孔状の開口部65dが複数形成されている。このため、火災の際に、外部の気流(自然対流)は、開口部65dを通過して、低融点合金66のすぐそばに位置する凹み65aの外周面に到達して熱を伝達することができる。このように、感熱分解部6は、凹み65aの内部に収容された低融点合金66に気流からの熱が伝わりやすく構成されている。
凹み65aの上面とバランサー63の下端との間には、リング状に形成された断熱材67が載置されている。断熱材67は、シリンダー65に伝わった火災の熱がバランサー63に伝わるのを阻止している。
プランジャー64の内側には、収容孔64bが形成されている。収容孔64bには、セットピン52の細径部55及び斜面56が収容されている。スプリンクラーヘッドSは、細径部55及び斜面56が収容孔64bの変位を規制することによって、感熱分解部6が作動する際に、感熱分解部6が過度に傾くことを抑制できるように構成されている。
プランジャー64の上下方向における中間よりも下側の外周と内周(収容孔64b)との間には薄肉部64cが設けられている。薄肉部64cは、プランジャー64の上部や鍔部64aと比較して断面積が小さいため熱伝導効率が良くない。プランジャー64は、薄肉部64cを有することで、鍔部64a(下)側で吸収した熱が雄ねじ(上)側に伝わりにくく構成されている。薄肉部64cは、鍔部64aの上端から上方に向かって断熱材67を越えてフレーム2の下端の高さ位置付近まで形成されている。
スプリンクラーヘッドSの動作〔図7〕
次に、スプリンクラーヘッドSの動作を図7により説明する。図7(a)〜(e)は、スプリンクラーヘッドSの作動過程を示す図である。
(a)スプリンクラーヘッドSの監視状態(平時)においては、本体1のノズル11には、給水配管を通じて加圧された消火水が供給されており、弁体3には消火水の圧力が継続的に作用している(図7(a)参照)。
(b)火災が発生し、その熱気流(自然対流)がシリンダー65に当たると熱が低融点合金66に伝わる。そして、低融点合金66が周囲から加熱されて融解し始めると、液体となった低融点合金66はプランジャー64とシリンダー65の凹み65aとの間に形成された隙間から流出する。この結果として、鍔部64aとシリンダー65との間を占める低融点合金66の体積が減少する(図7(b)参照)。
低融点合金66が融解して凹み65aの外部に流出すると、シリンダー65は、低融点合金66の流出量に対応して降下する。シリンダー65が降下すると、シリンダー65の上に配置されている断熱材67及びバランサー63が降下する。このとき、スライダー62に印加された弾発体5の弾性力によりボール61がスプリンクラーヘッドSの中心軸方向(内側)に移動してバランサー63が下方に移動する。バランサー63は、フレーム2の下部内周に形成されたガイド部24により移動時の傾きが抑制される。またセットピン52の細径部55は、プランジャー64の上端側の内周面にガイドされ傾きが抑制される(図7(b)参照)。
さらに低融点合金66が凹み65aの外部に流出してバランサー63が降下すると、バランサー63とスライダー62との間隙が広がる。その近くにあるボール61は、スプリンクラーヘッドSの中心軸方向(内側)に付勢されていることから、上側傾斜面23から外れて、落下するバランサー63の段部63bを越えて内側に移動し、フレーム2の段部22と一つのボール61との係合が解かれる。その後、そのボール61は、上側傾斜面23の下方に形成されたガイド部24に到達し、一次的にバランサー63の段部63bとガイド部24との間に配置される(図7(c)参照)。
こうした1つのボール61の移動によってスライダー62が傾いて感熱分解部6を支持していた各部品のバランスが崩れる。そして、感熱分解部6を構成する部品間の係合が解除され、個々の部品が移動可能となる。これにより残りのボール61の移動が促され、速やかに弾発体5及び感熱分解部6が降下する。
ボール61が段部22から外れて弾発体5及び感熱分解部6がフレーム2から脱落するまでの間、弾発体5の作用により、弁体3は、ノズル端11aに圧接されてノズル11の閉止状態を維持し続ける。すなわち、弾発体5のばね力がセットピン52を介して弁体3に印加されており、感熱分解部6が完全に落下するまで弁体3がノズル端11aを閉止し続ける。また、感熱分解部6はセットピン52の斜面56によってある程度の傾きが許容される。細径部55の下端は感熱分解部6がフレーム2から脱落するまでの間、プランジャー64の内部に収容された状態にある。
(d)弁体3の下に配置されていた弾発体5及び感熱分解部6が落下すると、コイルスプリング48がガイドリング44を付勢してデフレクター41の傾きを抑制しながら弁体3が降下してノズル端11aを開放する。また、弁体3に取り付けられているデフレクター41と、デフレクター41に取り付けられているサポートリング42と、ガイドリング44も降下する(図7(d)参照)。このときガイドリング44の外周面はフレーム2の内周面に沿って移動して、デフレクター41の横ずれを防止している。
(e)ガイドリング44がフレーム2の段部22まで降下すると、その上部にあるサポートリング42はさらに降下を続けてガイドリング44の上で止まり、弁体3及びデフレクター41が支柱43によりフレーム2からつりさげられた状態になる。以上のようにして弁体3が降下すると前述のようにノズル端11aは開放され、加圧された消火液がデフレクター41に衝突して四方へ飛散され火災を消火する(図7(e)参照)。
その際に、支柱43は、複数の羽46よりも軸交差方向でノズル11の軸寄りにずれた位置で、弁体支持部41a側から本体1側に向けて伸長するように構成されている。このため、スプリンクラーヘッドSでは、図4(b)において二点鎖線で示すように、支柱43に当たった消火水を支柱43の裏側(外面側)に回り込ませることができる。したがって、デフレクター41は、消火水が流れる際に支柱43が壁となって散布量が不足しがちな支柱43の裏側(外面側)への消火水の散布量を増やすことができる。よって、スプリンクラーヘッドSは、その全周方向に亘って消火水をむらなく散布することができる。また、ノズル11から流れてデフレクター41に溜まる消火水は、高さの低い角縁欠落部46b(拡張流路45A)を通じて支柱43の裏側(外面側)に流れやすくなる。こうしてデフレクター41は、支柱43の裏側(外面側)への散布量を改善することもできる。
実施形態の変形例
次に前記実施形態の変形例を説明する。前記実施形態では、「保持部材」としての凸部材32に「柱部圧入孔」としてのディスク取付孔32aを形成し、ディスク3aに「柱部」としての突起31を設ける例を示したが、凸部材32に「柱部」を設け、ディスク3aに「柱部圧入孔」を設けてもよい。但し、この変形例では、ディスク取付孔32aと同等の深さのディスク取付孔を形成できるように、ディスクの板厚を前記実施形態よりも厚くする必要がある。この変形例でディスク取付孔を深くする理由は、凸部材がノズル11からの消火水の流圧を受ける部分であり、凸部材が容易にディスクから外れないようにする必要があるからである。
前記実施形態では、4本の支柱43を設ける例を示したが、1本以上であれば、それ以外の本数でもよい。また隣接する支柱43間に配置する羽46の数を3本とする例を示したが、1本以上であれば、それ以外の本数でもよい。
前記実施形態では、凸部材32を樹脂成形体とする例を示したが、金属製としてもよい。また、ディスク3aを金属製とする例を示したが、樹脂成形体としてもよい。
前記実施形態では、ディスク3aの突起31を凸部材32のディスク取付孔32aに圧入して固定する例を示したが、ねじによる螺合により固定してもよい。また変形例のように凸部材32に「柱部」を設け、ディスク3aに「柱部圧入孔」を設けた場合においてもねじによる螺合により固定してもよい。こうすることで凸部材32とディスク3aとを強固に固定できる。
前記実施形態では、凸部材32の中心軸上に脱気孔32bを設ける例を示したが、突起31の外周面に長手方向に沿う脱気溝を設け、凸部材32の底面に軸交差方向に沿う脱気溝を設けるような構成としてもよい。